第8期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第5回) 議事録

1.日時

平成28年1月28日(木曜日) 16時~18時

2.場所

文部科学省 3F2特別会議室

3.議題

  1. 平成28年度予算(案)について
  2. 第5期科学技術基本計画とナノテクノロジー・材料科学技術分野の位置づけについて
  3. 統合型材料開発プロジェクトWGについて
  4. 「情報統合型物質・材料開発イニシアティブ」の状況について
  5. 今後の議論の方向性について

4.議事録

【三島主査】
 それでは、定刻になりましたので、今年度第1回目のナノテクノロジー・材料科学技術委員会を開催させていただきます。今年初めてということで、新年の御挨拶は遅いので、とにかく今年もどうぞよろしくということで御挨拶をさせていただきます。
 それでは、本日は御多忙のところ、多数お集まりいただきましてありがとうございました。きょうは、特に第5期科学技術基本計画を受けた今後の議論の方向性について議論をしてまいりたいと思いますので、積極的に御議論いただければと思います。
 早速ですが、事務局から委員の出欠、配付資料の確認をお願いいたします。

【吉元係長】
 事務局でございます。本日、五十嵐委員、射場委員、岡野委員、長我部委員、栗原委員、小長井委員、馬場委員が御欠席です。湯浅委員は少し遅れて参加されます。また、本日、JSTの伊藤先生と九州大学の古山先生にも御参加いただいております。
 配付資料の確認でございます。本日、議題は5つございまして、それぞれ資料を付けてございます。読み分けますれば、まず資料1として、1枚紙ですが、平成28年度予算案という資料、資料2として第5期科学技術基本計画におけるナノテクノロジー・材料科学技術の方向性について、資料3として統合型材料開発プロジェクトWGのまとめ、資料4としてMaterials research by Information Integration Initiative(MI2I)紹介、資料5としてワードの論点という紙を付けております。また、参考資料として第5期科学技術基本計画の概要を付けております。机上には、科学技術基本計画のコピーと、白表紙の予算案の概要という資料を置いております。配付資料に欠落等ございましたら、事務局までお知らせください。
 以上です。

【三島主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、早速議事に入りたいと思います。議事の1番目が平成28年度の予算案についてということでございますので、事務局から御説明をいただきます。尾西補佐からよろしくお願いいたします。

【尾西補佐】
 それでは、事務局より、資料1を用いまして平成28年度予算について説明させていただきます。
 毎年度のことではございますけれども、国家財政はますます厳しくなっている状況ではございますけれども、その中でもナノテクノロジー・物質・材料関係として、全体といたしましては今年度とほぼ同額の169億円を確保させていただいております。右上のところに書かせていただいております。
 個別の事業につきましては、まず1つ目、左上の方になりますけれども、希少元素を用いない革新的な代替材料の創製を目指している元素戦略プロジェクトにつきましては、今年度とほぼ同額の20億円を確保させていただいております。
 2つ目、その下になりますけれども、最先端装置の共有化による研究基盤の強化を目指しているナノテクノロジープラットフォームにつきましても、今年度とほぼ同額の17億円を確保しております。
 さらにその右上に移りますけれども、3つ目の復興特会で行っております産学官協働によるナノテク研究開発拠点の形成を目指す東北発素材技術先導プロジェクトにつきましても、今年度とほぼ同額の8億円を確保しております。
 その下の4つ目になりますけれども、未来社会を志向した新たな材料開発を目指した統合型材料開発プロジェクトにつきましては、本委員会におきましても事前評価をいただいたところでございますけれども、ナノテクノロジーを活用した環境技術開発(GREEN)事業を改組いたしまして拡充要求を行いましたけれども、結果としまして3億円の確保という形になっております。
 しかしながら、NIMSのナノ材料科学環境拠点におきまして現在行っておりますエネルギーフローに関する一連の材料につきまして、材料創製、計算科学及び先端計測の融合した研究開発を推進する目的に加え、未来社会を変え得る材料を、全体を俯瞰したニーズとシーズの科学的な解析や統合により検討する場を構築し、研究開発と適切な目標設定のための技術アセスメントの相互循環を図ることを新たに加えまして、実施することといたしております。
 この新たに付け加えるものにつきましては、本日、御発表いただく九州大学の古山教授を中心に議論いただいたワーキンググループにおける議論を基に検討されたものでございます。詳細につきましては古山教授の御発表に譲らせていただきますけれども、現状では研究拠点側のシーズの延長上の研究となっておりまして、実用化を見据えた際に何が研究開発のボトルネックになっているかという視点を技術アセスメントを行うことにより付与しまして、より早く、より確率高く材料開発を行おうとするものでございます。
 最後の一番下になりますけれども、5つ目の物質・材料研究の中核的機関でありますNIMSにつきましては、昨年12月18日に総合科学技術イノベーションの本会議におきまして、国立研究開発法人の候補として決定いただいておりますけれども、そのNIMSの運営費交付金等につきましては、独法化以降ずっと減少していたところでございますけれども、今年度から増額することができまして、120億円を確保することができました。
 以上、平成28年度予算案についての説明を終わります。

【三島主査】
 御説明ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に御質問ございますでしょうか。統合型材料開発プロジェクトを前回御審査していただいて、今度スタートすることになりましたけれども、3億円という案でございます。物質・材料研究機構の運営費交付金、橋本先生、何かコメントございますか。

【橋本委員】
 いえ。文科省さんにどうもありがとうございますと。引き続き29年度はさらにということでよろしく。

【三島主査】
 この予算関係、何か御質問等よろしゅうございますか。ありがとうございます。
 それでは、議事の2番目でございますが、第6期科学技術基本計画について、本委員会でもこれまでその作成に向けて、今後のナノテクノロジー・材料科学技術に関する方向性についての議論をしてまいったところでございます。先週1月22日に科学技術基本計画第5期が閣議決定されましたので、その中におけるナノテクノロジー・材料科学技術分野の位置付けについて御報告をいただきたいと思います。西條参事官からお願いできますでしょうか。

【西條参事官】
 西條です。御説明させていただきます。
 今、主査からお話しいただきましたとおり、第5期基本計画策定に向けて、この委員会におきましてもいろいろと議論いただきましてどうもありがとうございました。経緯といたしましては、その後、内閣府の事務局にもここで議論した内容をお伝えし、また議論をし、かつ基盤技術、特にスマート社会に向けた基盤技術につきましては、三島主査、橋本先生も議論のベースにしていただいたということで、この22日に閣議決定されました基本計画の中にも盛り込んでいただいているという理解をしております。
 お手元の資料2に基づきまして、科学技術基本計画におけるナノテクノロジー・材料科学技術の方向性について、簡単に御説明させていただきたいと思います。ただ、私が説明するより、橋本先生とか三島主査にそうじゃないぞというところがあったら後で御指摘いただければと思っております。
 まず最初、2ページのところは章立てということで、第1章が基本的な考え方からスタートして、第2章の未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出の取組、第3章として経済・社会的課題への対応、第4章が科学技術イノベーションの基盤的な力の強化、第5章はイノベーション創出に向けた人材、知、資金の好循環システムの構築、第6章は科学技術イノベーションと社会との関係深化、第7章として科学技術イノベーションの推進機能の強化という形になっていまして、それぞれの章立てにつきまして簡単に3ページの方から、それぞれの章で我々のナノテクノロジー・材料科学技術がどういうふうに関係しているかというところを中心に御説明したいと思います。
 めくっていただきまして3ページになります。第1章は基本的な考え方ということですので、そこにあります基本方針でございますけれども、これもこれまでの委員会の中で議論していただいたように、マル1からマル4とある中で、特にマル1の未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創造の取組について、特に未来創出型アプローチという形でお話をさせていただきましたが、その部分と、それからもう一つマル2になりますが、経済・社会的課題への対応、これは4期でもやってきました課題解決型のアプローチ、それに加えて科学技術イノベーションの基盤的な力の強化、イノベーション創出に向けた人材、知、資金の好循環システムの構築、この4本柱を掲げているというところが第1章に書いてあります。それについて、ここでも議論していただきました第2章の未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出の取組でございます。
 4ページに、今回新しい価値やサービスが次々と創出され、社会の主体たる人々に豊かさをもたらす「超スマート社会」を未来社会の姿として共有し、実現のための取組としてSociety5.0を強化するというものが打ち出されております。サービスやシステムをシステム化して、システム間の連携協調を図る共通基盤的なプラットフォーム(超スマート社会サービスプラットフォーム)の構築に必要となる取組を推進するということが書いてございます。
 5ページの方は、その基本計画において描かれる超スマート社会ということで、頭の上の方に超スマート社会というふうに四角で書いてありますけれども、定義といたしまして、必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズに効率的かつきめ細やかに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語等にかかわらず、活き活きと快適に暮らせる社会、これを定義した上で、特にICTを最大限に活用して、サイバー空間とフィジカル空間(現実世界)を融合させた取組によって、人々に豊かさをもたらす未来社会の姿として共有する。この実現に向けた一連の取組をSociety5.0として強力に推進します。
 その実現に向けた取組の中で、特に「超スマート社会」における競争力向上に向けた、また基盤技術等の強化ということで、これもここで議論させていただいたときにも提示させていただきましたが、1つは2つの基盤技術という形で書いてありますが、1つは超スマート社会サービスプラットフォームの構築に必要となる基盤技術。これはIoTシステム構築 技術、ビッグデータ技術、AI技術などですが、さらにもう一つ、その下のレイヤーとでもいいますか、個別のシステムで新たな価値創出のコアとなる強みを有する基盤技術、ここにまさに革新的な構造材料や新機能材料など、様々なコンポーネントの高度化によりシステムの差別化につながる「素材・ナノテクノロジー」という形で位置付けられております。
 また、基盤技術強化の在り方のところですけれども、こういったことをやるに当たって、ここでも議論いただきましたが、特にそこの2つの四角になりますけれども、1つ目は、当然、中長期視野から、各技術において高い達成目標を設定するとともに、特にここで議論いただきました基礎研究から社会実装までのリニアモデルではなくて、相互に刺激し合い、スパイラル的に研究開発をする。これによって新たなサイエンスの創出と革新的技術の実現、実用化及び事業化を同時並行的に進めることができる環境を整備するということで、ここでもいろいろと議論いただいた内容がここら辺に盛り込まれていると理解しております。
 それから、第3章は経済・社会的課題への対応ということで、これまでの課題解決型アプローチということですが、今回、13の重要政策課題ごとに研究開発から社会実装までの取組を一体的に推進するということで、特に我々が今かかわっている事業としては、1つはエネルギーの部分です。そこに省資源化技術や代替素材技術、ここの部分の具体的な我々の取組としては、元素戦略プロジェクトや東北発の素材技術先導プロジェクトが入っております。
 また、13のうちのもう一つ、ものづくり・コトづくりの競争力向上といった中に計算科学・データ科学を駆使した革新的な機能性材料、構造材料等の創製を進めるとともに、その開発期間の大幅な短縮を実現するということで、今進めているマテリアルズ・インフォマティクスの推進というのが入っている形になってございます。
 次、7ページにいきまして、こちらの方は科学技術イノベーションの基盤的な力の強化ということで、人材力の強化が書いてあるところと、あと知の基盤の強化ということで、1つは国際共同研究の推進と世界トップレベルの研究拠点の形成ということで、この話としては基本的にNIMSのMANAが1つ拠点となっておりますので、そこが位置付けられているとともに、研究施設・設備や知的基盤の整備・共用、ネットワーク化ということで、こちらについては我々の事業としてナノテクノロジープラットフォームがこういった中で位置付けられているという形になってございます。
 それから、資金改革の強化、先ほどもちょっとありましたけれども、研究開発法人の基盤的経費、運営費交付金ですけれども、こちらの確実な措置というのもそこに入っております。
 8ページの第5章はイノベーション創出に向けた人材、知、資金の好循環、こちらはきょうも論点として書かせていただいていますが、オープンイノベーションの推進、特に国立研究開発法人におけるオープンイノベーションの推進のための仕組みの強化ということで、企業との連携・橋渡し機能を効果的に発揮できるマネジメント体制の構築や外部資金の積極的確保、クロスアポイントメント制度等の積極的活用、これに対するインセンティブの付与が書かれております。
 最後のところ、第7章はイノベーション推進機能の強化ということでございます。国立研究開発法人改革と機能強化ということで、先ほどもちょっと御紹介がありましたが、特定国立研究開発法人(NIMS)が理研、産総研に加えて、総合科学技術イノベーション会議で昨年の12月に加えられたということもございますので、法律自身は今後、審議ですけれども、そこについても世界最高水準の研究開発成果を創出し、イノベーションシステムを強力に駆動する中核機関としての役割を果たすという形で書かれております。
 全体の基本計画につきましては、机上の方には全体が書いてあるのと、参考資料に内閣府の作っている概要がございますけれども、そこの中のナノテクノロジー・材料科学技術について記載されている関係部分についての御説明は以上でございます。

【三島主査】
 大変コンパクトにうまくまとめていただいたと思います。ナノテク・材料の分野といたしましては、昨年の後半にいろいろと議論いたしましたシステム化といいますか、いろいろなナノテク・材料の基盤的な、あるいは材料そのものの特性をいかに上げるか、それを基礎から応用までというリニアモデルではなく、いろいろな分野の人の意見を聞きながら、システムとしてそれを未来の、バックキャストというやり方もあるかもしれませんけれども、新しい価値を生み出すようなシステムとして作り上げていくということが言われているわけで、ここでも議論したわけですけれども、そういうことが、特に2章の超スマート社会を目指していくような基盤技術でのナノテクの役割が大きいのではないかということが、1つのポイントかと思います。
 それから、あと1つ、第5期にはある程度数値目標のようなものが少し入っていったというのが最後のところでございまして、特に大学の改革に伴ってどうするか、あるいは先ほどもありましたけれども、研発法人や企業との連携に向けてのこと、それからベンチャーがどういうふうにできるかということに対して、ある程度の数値目標を置こうということで、これについては基本計画調整会議でいろいろな議論がございましたけれども、この中身を見ていただくと、いろんなところにこういう数値を目標にするということが書いてあるということもございます。その数字がひとり歩きするのが怖いいという意見もいろいろありましたけれども、ここまで来ますと、ある程度の目標をにらみながら、その実現に向けて新たな取組をどんどん取り入れていかなきゃいけないということが大事なのではないかと私は思っているところでございます。
 ということで、第5期の全体の概要でございますが、御質問、御意見がございましたらどうぞ。

【橋本委員】
 2点ほど申し上げます。幾つかポイントはあるんですけれども、是非ここで御紹介しておいた方がよいと思うのを絞って2点申し上げます。
 1つは、先ほど西條参事官が言われたオープンイノベーションの話です。最後のページに書いていることですが、これは非常に明確にオープンイノベーションの重要性を規定していますので、この関連でいうと、ナノテクプラットフォームはそれの一つの成功事例というか、走っている事例として位置付けられながら議論しているものですので、これはナノテクプラットフォームの今後について非常にいいんじゃないかと思っています。
 それともう一つは、ここにも書いてあるように、研究開発法人をオープンイノベーション推進の場にするということが明確に位置付けられましたので、私、今度移りましたけれども、ナノテクに関してはNIMSがオープンイノベーションの場としてしっかりするようにやっていきたいと思いますので、御協力をお願いしたいと思います。
 もう1点は、Society5.0と言われているものについて、なかなか分かりづらいと思うんです。ポイントですけれども、4ページ目は2つありますけれども、最初の4ページ目を見ると、実は結果的にこの絵は最後になって、IoTプラットフォームという言葉ではなくて、超スマート社会サービスプラットフォームという言葉に入れ替えてもらったものですから、この絵がIoTのようなイメージがそのまま残って、いろんなものがインターネットでつながるというイメージが残っているんですが、そうじゃないんです、今回のは。
 それは既にもうあるわけでして、そういうのが動いているんですけれども、それを取り込んだもっと広い意味での、これも御説明がありましたけれども、結局フィジカルとサイバーの結合によって新しいものが出てくるんだということで、そこにものすごく強調点をしております。実はきょうの午前中に総合科学技術イノベーション会議の有識者会議があったんですが、そこでもどういうことなのかと。実は中身はそれほど詰まっている話ではないので、そのイメージと中身を詰めようということで、今急いでその議論を進めているところであります。
 ポイントは、ですからフィカルな空間とサイバー空間をつなぐと。それでは言葉だけではないか、我が国の強みはどこにあるんだという議論があるんですが、これは三菱ケミカルの経済同友会の小林会長があちこちで言っておられますけれども、複素平面で考えるんだと。aプラスbiと。aがアトムで、虚数部分のbはビットだと、aプラスbiで。価値はルートa二乗プラスb二乗だと、小林さんはいつもあちこちで言っているんですけども。アメリカはbの方に強みがあると。日本はaの方に強みがあるんだと。ただ、aだけで勝負するのではなくて、a二乗プラスb二乗で勝負するんだということを小林さんはあちこちで言っておられたんですけれども、第5期の精神もそういうイメージなんです。
 という中で見たときに、aの強みを生かしてaプラスbiで勝負するといったときに、aの強みは何なのかという議論をこの第5期を作るときに大分進めて、結局、ナノテクとか材料において代表事例として挙がったんです。
 なので、日本の強みは何なのかというところで議論した中で、センサーもそうだし、いろんなものが入って、光技術もそうなんですが、それと並びでナノテク・材料が入っていますが、実は重きはすごく大きいです。これはそういう議論の中で出てきています。ですので、ここに期待されることは極めて大きいと思います。
 ただ、それは日本の強みであるナノテク・材料をこのままやればよいということではない。それをどうやってaプラスbiという視点でaを伸ばすのかということだと。じゃ、それは何なのかというと、アイデアはないんです。なので、こういうところで考えていかなければいけないということ。
 これは前も申し上げたと思うんですけれども、その一つの事例が実はマテリアルズ・インフォマティクスなんです。これは非常に分かりやすくて、かついろんな産業界と話したとき、ここは産業界の皆さん興味を持っているけれども、自分たちでどうやって手を出してよいかなかなか分からないところなので、こういうところこそ国がしっかりとやってもらいたいということを、実はきょうも先ほど経済同友会の会長と会ってきましたけれども、少しこの辺の意見交換をしたときにやはりそういうことを言っておられて、これは産業界共通して、マテリアルズ・インフォマティクスは何が出るか分からないけれども、それは必ず今後の方向としてやらなければいけない。そういうものに国としてはしっかりと力を入れてもらいたいということを強調しておられました。
 なので、きょう伊藤さんと古山さんに来ていただいていますけれども、そういう意味ではそこの議論もある程度議論されていて、きょうここでそのお2人にお話しいただくというのは、今後のナノテクの方向を示す非常にいい機会ではないかと思います。ただし、うわついたものにいくのではなくて、ものづくり・コトづくりの今まで我々が築いてきたものをしっかりと位置付けながら、ただ、その延長だけではなく、新しい視点を入れていく。こういうことかなというのが、今回の第5期の非常に明確に位置付けられたコンセプトであります。
 以上です。

【三島主査】
 大変有意義な御説明だったと思います。サイバー社会とフィジカル社会の連結という具体的なイメージをちょっと語っていただいたかと思いますけれども。
 じゃ、北川さんどうぞ。

【北川委員】
 北川です。連続3回休みましたので、ちょっとちぐはぐなことを言ってしまうかもしれませんが、今、橋本先生がおっしゃった第5章の研究開発法人のオープンイノベーション推進というのは非常にいいことだと私も思います。
 問題は、最近の議論の中心はクロスアポイントメント制度や年俸制などが、人事制度面のことばかりに集中していて、そのような制度改革だけでうまくいくわけではなく、結局、実質的なプラットフォームがないとだめです少し前の話になりますけれども、九州大学に初めて経産省の産総研が大学中に入ってきたことがありますよね。
 また、先端融合イノベーションプログラムで北海道大学に塩野義製薬株式会社が入ってきました。今では大分当たり前になってきているかもしれませんが、欧米に比べたら遅れています。例えばフランス国のCNRSは大学の中に入り込んでいます。他方、NIMSは、連携講座を大学に持っていますけれども、結局はバーチャルで、学生や教員はNIMSにいます。もっと実質的なプラットフォームを作っていかないといけない。
 例えばNIMSも理研も、大きな国家プロジェクトを今後どんどん請け負わないといけないと思います。だから、ビッグデータのことも理研がやる。だけど、理研のみで全部済むわけではないですから、産官学の大きな共通プラットフォームを作らないといけません。だから、形式的な制度改革をしたところでだめで、実質的なプラットフォームを作らないといけない。そのためには国立研究開発法人や大学にしっかりお金を落とさないいけないと、そういうプラットフォーム作りはできませんから、そういうことをしっかりやっていただきたい。クロスアトポイントメントがどうだとかいう人事制度面だけの議論は好きではないですね。我々にとって何のインセンティブもないし、大学の事務も福利厚生の計算をするのが大変ですから嫌がっています。これが1つ目です。
 もう一つは、これは時々直接橋本先生にも言っているんですが、こういう会議で、冒頭に国の財政がしんどくてなんていう話から始まると元気が出ないわけです。大学への運営費交付金は、本来、将来国家を担う人材の育成費なので、将来に対する投資であり、枕言葉に国の財政がないからなんて文科省が言うのは良くないと思います。
 中国は今何やっているかというと、極めて優秀な若手2,000人を選出し、海外から中国へ戻そうということで、それが採択されると、1人研究費が約6,000万円です、日本円に換算して。アワードが出るんですよ、ボーナスが。賞金です。これは2,000万円です、採択されると。私の年収の2年分ですからね。それがぼーんと若い人がもらえるわけです。だから、彼らも必死にやるわけです。やっぱり中国は金があり、勢いがあります。
 だけど、よく考えないといけないのは、中国はトップ1%にしっかりサポートする。人口の確率論ですが、日本はトップ10%にしないとだめなんです。勝てないんです、確率論でいうと。人口は向こうは10倍ですから。だから、トップ10%に中国がやっている以上にやらないとだめなので、国の財政が金がないというところがスタートすると、絶対勝てないと思います、中国には。だから、日本ももっと夢のある明るい議論ができないといけません。NIMSの運営費交付金がずっと下がっていたのがとまったというのは非常にいいことで、これも是非国立大学法人でも実現できればと思います。
 以上です。

【三島主査】
 ありがとうございます。ほかにございましょうか。

【橋本委員】
 ちょっとコメントしておきますね、今のに。
 まず、クロスアポイントメント嫌いと言ったけれども、これは私が仕掛け人ですので、完全に誤解しているので、明確に言っておきますけれども、クロスアポイントメントを作ったから何かできるなんてだれも思ってないんです。これはあくまでも手段としてこういうのを導入しただけです。これを使わなければいけないわけでもないし、実はものすごく使いやすい制度にするようにやっているので、これは使っても使わなくても構わないけれども、手段としてこういうものを、これはクロスアポイントメント1つで幾つも用意しているんです。ですから、そういうものを組み合わせて、みんなに使ってもらうようなことを導入したんです。
 それでオープンイノベーションの場を実際にやらなければいけない。そのとおりです。だから、いろいろなそういう仕組みを作ったので、そういうものを総動員して、しっかりとやっていかなければいけない。これは私、今回、NIMSに移りましたから、NIMSとしてはもちろんそういう方向にするように努力しますので、そこは是非とも応援もしていただきたいし、御意見も頂きたいと思います。
 それで2点目、2点目だったら幾らでも長くなっちゃうからあれだけれども、国のお金がないからというところからスタートすると、やる気が出なくなるというのは全く分かって、僕だってそうだけれども、国立大学の交付金を増やせというところからスタートすると、今度は国は何にも動かなくなります。これは実態で、今、北川さんが研究者は動かなくなるというのと同じ意味において、運営費交付金を増やせというところから始まると、財務省も含めて何にも動かなくなります。これは事実として。だから、いろんなことを考えながらやっているんです。
 だから、研究費1億円の話だってみんな知っています。だけど、日本と中国とは、中国もこれからどうなっていくか分からないけれども、ここ数年の中国とここ数年の日本との状況が違うんだから、もっと状況を見なさいと。これは分かりますよ。
 だけど、そうは言っても、その中でどうやって折り合いをつけていかなければいけないかというところからスタートしないと、何も動かないですよ、これは。そんな要求だけしたって。だから、いろんな知恵を絞りながら、どうやって一生懸命やるかということをやっているんです。だから、北川さんはオピニオンリーダーなんだから、その辺のことは分かって言ってもらわないと。そんなこと言った途端に、だれも言うことを聞かないです、それははっきり言って。

【北川委員】
 私の言い方が悪く、ちょっと誤解があったかと思います。年俸制導入も大事なことです。それでクロスアポも重要。それは分かっています。ただ、それは必要条件であって、十分条件ではないということを言いたかっただけで、例えば卓越研究員制度のワーキングに出席した際に、年俸制のこととクロスアポのことが主に議論されていて、実質的な十分条件の方が議論されてなかったから問題だと言っているだけの話で、必要条件の方が必要だというのは分かっています。
 それと、お金はないというところからスタートするよりは、いかに財務省から金を取ってくるかということで、これは是非文科省に言いたいことです。

【橋本委員】
 文科省にいくら言っても無駄だから。

【北川委員】
 それは分かっています。昔は文科省が言ったら大蔵省は金を付けたわけです。今はだめなんですよ。それは産業界が言っていると言わないとお金が付かないから。

【橋本委員】
 いや、産業界も言っているの、そうやって。

【北川委員】
 経済界や企業のトップ、研究所長等は、例えば経団連の会長の榊原さんは全然そんなこと言ってないですよ。大学は大学の基礎研究をしっかりやるべきで、これは国の将来に対する投資だということをよく分かっているんです。

【橋本委員】
 だから、榊原さんはそれをいつも言っていますよ。

【北川委員】
 だから、何が言いたいかというと、文科省の重要な委員会委員に民間人を起用する時は、効率のみを考える人ではなく、科学技術をよく理解している人を選んでくださいと。要するにいろんな委員会に企業の人を入れるんだったら、変な人を入れないようにということを言っています。そうしないと金がないないというところからスタートしちゃいます。

【橋本委員】
 君は入らないよ、だから。

【西條参事官】
 大分熱い議論を頂いて。この委員会は、まさにそういう意味ではいいメンバーに集まっていただいているというふうに私は理解しておりますけれども、予算のところは、橋本先生の文科省に言ってもだめだという話はちょっとつらいところがあるんですけど。

【橋本委員】
 努力はしてくれているということですよ。

【西條参事官】
 国の財政全体が厳しいというのは、皆さん言わずもがなのところはあると思うんですが、あとは先ほど先生からも指摘がありましたけれども、とりあえずいろいろと文章で書いてきたもので、例えば第1期から第4期、第5期に入っても、その中で書いてきたんだけれども、全然変わってないというところがあるというのは非常に大きな問題として捉えていて、だからこそ今度の第5期がそうならないように、まさに実行フェーズだという形でやるのが重要で、やって見えてきたら、それは多分違うフェーズに入ってくるんじゃないかと思います。
 ある意味、我々も財務省に持っていったら、とりあえずどう役に立ってきたか、これまでの総括をしてくださいという話にしかならないんです。そうじゃないだろうという話も当然我々もしますけれども、ただ、未来への先行投資という言葉だけではなくて、実際にこういうふうに動いているというところを見せていくのが重要かなと思っていまして、そういった意味では今回こういった5期というものが出て、方向性が示されている中で、それを具体的にどう見えるフェーズに持っていくかというところで、後の議論はそういうところをしていただきたいと思っているんですけれども、是非ともそういうところで建設的に、我々もお金がなくて大変ですとあまり言わないようにしますけれども、実際には大変なところもありますけれども、ただ、そこからではなくて、建設的な議論をさせていただければと思っています。

【三島主査】
 ありがとうございました。
 それでは、今の議論はそこまでにいたしまして、次へ進みたいと思いますが、よろしいでしょうか。ほかに何か。
 それでは、きょういろいろと御議論いただきたい2つの御説明を頂きたいと思います。
 まず、議事3でございますが、昨年8月に本委員会で事前評価の議論を行いました統合型材料開発プロジェクトについて、どういう施策の検討をすべきであろうかということを、ワーキンググループを作って検討していただきました。その座長をしていただきました九州大学の古山先生からワーキンググループの活動等について御説明を頂ければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【古山九州大学教授】
 九州大学の古山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 初めての先生も多いので、簡単にレジュメに何者であるかというのを書き記しておきました。出身は化学工学で、その後、応用化学で、今は機械工学、水素エネルギーシステム専攻というところでやっております。
 今回、こういう統合型材料開発プロジェクトというところで呼んでいただいて、座長をさせていただいて取りまとめをやらせていただいたのは、私自身が社会システムから材料のところまで研究室の中で研究をやって、それぞれの分野で少なくとも論文を出しているというところで呼んでいただいたものと思います。きょうは主に全体のところ、どちらかというとシステム寄りのところですけれども、あしたは大阪に行って、ナノ粒子と電池の話をしようとか、そんな感じでやっている人間でございます。
 さて、2ページ目ですけれども、こちらは既に委員会として事前に評価していただいたというところでございますけれども、基本的に今までのところ、ボトムアップ的なところで社会へつなげようということで、特に震災後が顕著ですけれども、社会がすごいスピードで変革していって、社会の課題が次々に変わっていくという中で、社会的な課題を常にフィードバックし続けるという仕組みが要るだろうという形でこの図はでき上がっております。9月に取りまとめの依頼を受けまして、10月に集中的に議論をいたしました内容ございます。
 このワーキンググループのメンバーをここに書き記させていただいていますけれども、これは橋本先生からのお声で、45歳以下という強い意向があって、8割ぐらいが45歳以下になっています。それで、文科省の立場の方にも入っていただいて、ふだん使ってしまう「先生」という呼称はやめてください、全部をさん付けで呼びましょう、という環境で議論しました。
 実際、3回を調整していたのですが、第1回目10月8日、第2回目10月27日でダイブ大分集中的に議論ができました。基本的には今集まっていただいた委員の方というのは、それぞれいろんなプロジェクトにかかわっている方が多かったので、ふだん思っているところとか、こういうところがいい、こういうところが悪いというのを集めていただいたのと、単に材料研究だけをやっている方は基本的にお声掛けをしていなくて、金属の分野、高分子の分野、有機の分野というところで、それぞれにデバイスシステムと材料をつなぐような研究をしている方をお呼びして、それぞれに考えていただいた。3番目の項目は十分な時間をとれたか、少し反省するところがありますけれども、研究の体制、評価軸も少なくともアンケートを含めて取りまとめるということをやりました。
 5ページ目のところで、御存じのように、今、拠点型事業というのがあちこちに走っていて、うまくいっているものとそうでないものと、いろいろあると思います。それらを俯瞰して考えると、基本的には将来社会のビジョンから書き下していって、そこに向かってどういう研究をしようかという戦略を、できれば拠点の中で常にやるのが望ましいだろうと。私自身も研究者として、自分のいる場所から延長で物を考えるというのはついやってしまうんですけれども、そうではなく、社会の課題からバックキャストしていくとか、そのためにシナリオ分析をしていって、フォアキャスティングもしくはフォアサイトとのギャップを明らかにしていって、そこがボトルネックであろうという議論をする。
 局所的な視座ではなくて日本全体、世界の中の日本という形の位置付けで、どういうふうなインフラであったり、物流であったり、そういうところを踏まえつつ議論、解析をしていく。
 材料機能を統合体としてシステム化するというのは、当然やるべきである。ここら辺のところで順番が幾つか前後する部分があるかもしれませんけれども、ここでおそらく問題になってくるのは、評価体制をどうするかというのは非常に難しい、実際にそういうことをやっていったときに、中間評価で何が出るんだろうというのが非常に難しいとの意見が出ています。
 というのは、シナリオの分析をしていって、そのところはここの課題が重要ですとなって、それからその課題に対してどういうアプローチをしていこうといったときに、3年、4年の中で物が出るという姿は描きにくいというのと、例えばそういう議論自体を評価しようとしたときに、評価することをだれができるんだろうというのがなかなか難しいねという議論をいたしました。
 その次の点としては、最初いろいろ議論していったときに、今走っているプロジェクトのここがだめ、あれがだめという方がどうしても数が多く出るんです。そうすると、それがだめだから、新しいこの施策をやろうというのを繰り返すようなサイクルになって、統合型材料開発プロジェクトというのも数年後に人がかわったときに否定されるという形になりかねないので、そこはマインドを変えて、いいところを残す・追加するというマインドにしていただきたいというのを文科省にもお伝えしております。
 あとは、例えば私は九州大学「水素村」のど真ん中の専攻にいるんですけれども、水素ありきで話をすると、なかなかほかの分野の研究者は説得できないので、そうではない議論、例えば競合する技術同士をきちんと比較していく、そういうことをきちんとできるような拠点がいいんじゃないでしょうかということをまとめています。
 6ページ目にお示ししているのは、どんな社会がいいでしょうかというのを限られた数時間ですが、十数名でああだこうだと議論をして、出していったものをまとめたものになります。これはすばらしい社会の姿が出ていますということではなくて、こういう議論をしていく中で初めて出てくるようなものを次々に生み出していくことがいいよねという話でございます。
 7ページ目でお示ししているのは、完全に終わったということではなくて、その当日に行った範囲ということですけれども、例えば先ほどのスライドの中でエネルギーと安全・安心・健康に注目して、その中の要素となるような技術、その技術の中のコンポーネントとなるようなデバイスであったり、そういうところを書き下していって、最後の材料のところまで落としていくという実験的なことをやった内容です。
 こういう議論の重要なところというのは、全体から書き下していっていますので、ボタンの掛け違いというのがなかなかしにくいような仕組みになっています。
 8枚目のところでちょっとだけお出ししていますけれども、我々研究者、特にナノテク・材料というところに落ち込んでいくと、局所的にボタンがよく合っているような絵というのは非常にかけるんですけれども、一歩後ろの方に引いて見てみると、上のボタンが間違っているよと。そんな議論にならないようにこういうところをきちんとやっていく。
 ちなみに、こういう議論というのはワーキンググループの中だけではなくて、学会としてもやろうとしていまして、この絵は多分6月ぐらいに出ると思うんですけれども、Springerからの出版で、この場でいうと瀬戸山さんにも御執筆いただいたんですけれども、各分野の将来展望というのをそれぞれの専門家に書いていただいて、横並びで本にしているものでございます。そういうところのメンバーも、実際にこういう材料のところに書き下していくような議論の中では必要なんだろうと思いました。
 では、材料の解析というものを具体的に考えていったときに、例えばどんなものなのかということで、かなり材料に近いところなんですけれども、その例を9枚目のところにお示しさせていただきました。これは実際、ワーキンググループを始める前に、かなりプロトタイプのものとして30分ぐらいで書いたものだったんですけれども、この間、このワーキンググループとは別に学会の方で、材料研究の人がほとんどですけれども、有志を集めて議論して、ちょっとブラッシュアップしたものです。
 これは水素製造のパスです。再生可能エネルギー水素ですけれども、光触媒で、普通の光触媒系がいいのか、Zスキームがいいのか、光電極系がいいのか、それとも水電解がいいのかという、それぞれの研究者がここがいいんだと信じて、なかなか決着がつかないというものなんですけれども、この図にお示ししている範囲だけで言うと、光触媒系がガソリンや石油の価格と競争するだけのところに効率が上がっていけば、到達するというのを示しています。
 これはどのぐらいのものかというと、NEDOが太陽電池はPV Challengeを出していますけれども、そこの数字で7円というところまで到達して、かつ実際にはあり得ないんですけれども、水電解が9割稼働するとかいうところまでやっても、それだけではこの技術の組み合わせでの水素製造はコスト的にガソリンと競合するレベルに全く到達できないということを示しています。
 ただ、ここで重要なところは、PVと水電解なんてやめてしまえということではなくて、その先にいくために必要な課題の設定とか、システムの組み方って何だろうというふうに研究の在り方を見直すようなフィードバックをかけることだと思っています。
 この図は例えば水素の輸送のところを全く考えてないとか、ほかにもバウンダリーの統一は一切気にしてないとかあるんですけれども、こういうところをそれぞれの要素でやりつつ、社会の中でこういうのを位置付けるというところをやっていくのだろうと私は考えています。
 そういう中で、水素のところだけでもなかなか決着がつかないんですけれども、他の分野でもそういう例をどんどん出していって、現在のところから今の延長線上でどこまでいけますかというところ、そこをさらに格段に高いレベルに挑戦しなくてはいけないということであれは、そこのところを適切な目標設定をするというフィードバックをしていく形で、あるものは例えば一時期縮小して、あるものはさらに加速してということをダイナミックにやっていくのがいいだろうと思っております。
 12ページ目のところは、統合型材料開発PJのイメージ・推進方法という形で書かれています。今、2030年とか、そのぐらいのところというのは課題達成型、課題解決型と呼ばれるもの、もしくは現在の延長プラスアルファというところで達成できるだろうという形で、その先のところに力点を置きましょうと。そこはやらないということではなくて。
 重要な点としてはシステム工学者と材料研究者がきちんと対話できるような環境を作っていかなくてはいけない点があります。言い方を変えると、システム工学者と対話できる材料研究者ってどれだけいるんだろう、その逆がどれぐらいいるんだろうというのが非常に難しいところになります。だけど、そういうところができたとしたら、本当に今のシステムの延長ではないようなところが生まれてくるはずであると期待されます。
 基本的に重要なところはそんなところなわけでして、システム研究のところを既存の材料研究のところに付加していくという形で考えています。
 最初のところなんですけれども、3年程度のシステム解析とありますけれども、3年がいいのかどうか、私はちょっと長いような気もしていますけれども、各テーマでシステム解析をフィージビリティー的な形で実施していって、その中で少しずつ絞っていくという形で、飛びが実現できそうなところに絞っていくような形が1つあるかなと。
 こうしていったときにシステム解析をやると、1年かかって1つのシステムがきっちりでき上がりましたということが想定され、複数のものを並べるというのが全然できなくなりますので、既存のシステム解析を集めていって、それの解析というところから出していくというのを一方でやっていくのが効率的なのではないかと思っています。
 12枚目のところは、最初に予算のところで説明があったこととだんだん関係してきていますけれども、技術のシステム解析、技術アセスメントチームを行っている研究者は、システムの解析とか改良が周りを見ていると多いんですけれども、新規システムの概念設計をするということができる人をきちんと集めないといけない点が重要です。もちろん、きちんと対話ができる、もくしは指示ができる。それは材料研究者がシステム研究者に指示をしてもいいし、システム研究者が材料研究者にしてもいいんですけれども、そういうところを産官学、きちんと貢献してくれそうな方を集める。
 中核の研究者はNIMSの研究者になるわけでしょうけれども、多分そこのところでMulti-disciplineでできる方、橋本先生がきっと差配してくださるんだと思いますが、複数領域におけるシステムと材料両方のところをきちんとつなぐ方が中心に必要であろうと。
 あとは体制として、アドバイザリーボードが必要ではないか、新陳代謝ができる体制、加えて革新的なところに挑戦していくプロジェクトだと、全てそうだと思うんですけれども、失敗をどうやって許容していくのかという、特に学際領域になっていけばなるほど失敗の確率が上がりますから、それらをどうするんだろうというのがちょっと残っているところでございます。
 こちらは最初に尾西補佐の方からありましたけれども、GREENのところに技術アセスメントを含めて拡充という形を最後の14枚目に示させていただいております。
 以上でございます。

【三島主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの御発表に御質問なり、御意見なりを言っていただければと思うんですが、いかがでしょうか。小池委員どうぞ。

【小池委員】
 材料とシステムが適していてすばらしい、非常にあれだと思います。私もそういうことを今も思っているし、昔からもそういうことを、むしろ材料の機能がシステムを変えていくようなことがイノベーションにつながるということを感じておりまして、今、対話をするということがありましたけれども、普通に対話をすると、システムの人の方がこれはこういうものだ。そうすると、それに合わせて材料が開発される。どうしてもそういうふうになりがちで、今までもそうだったんじゃないかと思うんです。材料屋さんが何か言うと、ちょっと突飛な意見だと思われる。
 しかし、今までの産業の歴史を見たときの本当のイノベーションというのは、本質的な材料の機能がシステムを根こそぎ変えていくということが起きる。でも、それは100個のうち1個ぐらいしか起きないかもしれなくて、それこそすごく重要なことであるので、何か会話をしても、それが分かれている間はなかなかできなくて、むしろシステムの人たちから材料をやっている人が非常に影響を受けて、自分の頭の中で融合して、こうやってこうだろうということがすごく重要だと思いまして、是非そういうところへ持っていっていただければというコメントと期待であります。

【三島主査】
 何か。古山先生。

【古山九州大学教授】
 そのマインドは私も同じでして、特に私は今、化学工学と機械工学両方にいるんですけれども、その2つの領域、工学というのは材料はこれですと、物性ありきで議論をすることがシステム屋さんは多いんです。ですので、おっしゃることはよく分かります。
 実際に、先ほど申し上げた応用物理学会エネルギーシステム研究会での議論は、システム屋さんを一切入れていません。私をシステム屋と定義しないのであればですけれども。実際に水素の貯蔵をやっている材料の研究者、太陽電池をNEDOプロでばりばりやっている研究者、そういう人たちを集めてここで議論して、そこのところで彼らにペーパーバックカルキュレーションをしてもらっている形です。実際にプロジェクトを組むとしても、そもそも使えるシステム屋さんはそんなに数多くないですから、材料の人にきっちり入ってもらって、それで議論であったり、情報の収集を一緒にやってもらうのが私はいいだろうと思っております。

【三島主査】
 ありがとうございます。
 ほかに何かございますか。瀬戸山委員いかがですか。

【瀬戸山委員】
 11ページにも絵がありますけれども、材料とシステムというのを見たときに、サイエンスをテクノロジーという軸で見たことはないですか。というのは、僕、最近それを議論するんですけれども、まず材料をいろいろ革新するときに幾つか超えなきゃいけないものがあって、1個ブレークスルーがあったときに、そこからだったらどういうふうな技術開発ができるか、テクノロジーの軸に動かせるかという切り口で見る方が多分よくて、この絵で見ると、何となくこれはまだリニアモデルに近くて、僕から見ると。
 それはあるレベルのところまでサイエンスが上がったときに、どんな絵がかけるかというのを都度都度やっていくような仕組みが、日本が勝っていくのには多分使えるような仕組みになるんじゃないかと思っていて、システムもテクノロジーであるんだけれども、差異化しようと思ったら結構重要ですよね。そのときにどういうふうなところまでサイエンスが高まっていれば、どういうシステムを作るかというのは都度議論できるはずなんです。
 だから、それは一本調子でだあっと上がるんじゃなくて、あるところまでいけばこういう絵がかけるよね、このレベルだったらこういう絵がかけるよねというのは都度都度あるはずなので、そういうのを見ながらやれるような視点の方が、答えが幾つもあるんじゃないかという気もするんですけど。

【古山九州大学教授】
 おっしゃるとおりだと思います。これはまだゼロが1になるような話というのは一切入ってないですし、あくまで縦軸も効率等というふうに書いてあって、軸が取れちゃうというのは問題ではあるんですけれども、おっしゃるような視点をどう取り込むかというのは実際にやるときには重要だと思います。

【瀬戸山委員】
 そういう技術開発しかやったことがない人間というのは、テクノロジー軸でしかやったことがない人間って、サイエンスが入ってないんです。そうすると、到達点でもたかだか知れているんです。そうじゃなくて、サイエンスがこのレベルまでくれば、違った絵がかけるよねということをちゃんと議論して、評価するような仕組みを持って、それをベースにしてどんなふうに進めるかというやり方をしていけば、多分いろんな見方ができるんじゃないかと思うんです。

【古山九州大学教授】
 ありがとうございます。

【三島主査】
 それでは、片岡委員どうぞ。

【片岡委員】
 非常に意欲的な試みだと思います。私も融合領域でやってきて、特に最後のページで2点ほど意見というか、コメントを申し上げます。1つはシステム工学者と材料工学者が対話をする。これは言うのは簡単なんですが、気をつけないとそば屋の出前みたいになるんです。私作る人、私食べる人という。ですから、個人レベルで融合しないといけないし、そういう方向に持っていく。つまり私はシステム工学屋ですとか、私は材料屋ですという発想自体は、まず捨てた方がいいのではないかというか、つまり融合していくような仕掛けを作らないといけないのではないでしょうか。
 それからもう一つは、このGREENの中を見ると分かれていますよね。例えば全固体電池とかペロブスカイトという風に。気をつけないと、横が何にもつながってないとサイロみたいになって、その真ん中に人がいて、あとは相互の関連なしに勝手に動いているような、そういうふうになってしまうとあまりよくないと思います。言ってみれば大浴場式にしないといけません。つまり脱衣所は別でもいいですけれども、みんな一緒に1つのお風呂に入っているような仕組みが作れるかどうかというのが非常に重要ではないかと思いました。
 それからもう一つは、先ほど小池先生が言われていたように、システム工学屋と材料屋が一緒にやったときに、システム工学というのは全体を見ていますから、材料屋はどうしてもシステム工学屋に引きずられるということはあるのかもしれません。しかし、それはそれである程度必要だろうと思うんです、融合するという点からいって。
 ただ、一方において、最後にちょっと議論がありましたけれども、どこかで飛躍がないといけない。その飛躍はどこからくるかというと、おそらくこの中からこない可能性があるんです。つまり限られた空間の中で、限られたメンバーだけで、かなり長期にやるプロジェクトではないかと思うんですが、新陳代謝がないと中でどんどんこもってしまう。何かここでやってきた上で問題点が出てきたり、何かあったときにはそれを外部の情報として出して、外からそういうアイデアを持った人に、そういうことは重要なんだよということを分かってもらうことが必要ですよね。その上でそういうものを入れていく、まさにオープンイノベーションだと思うんですけれども、そういう仕組みをかなり取り入れることが重要なのではないかと思いました。

【三島主査】
 よろしいですか。

【古山九州大学教授】
 おっしゃるとおりだと思います。最初の個人の中でのシステムと材料の融合と大浴場方式というのでいうと、例えば私は1つの研究室、少なくとも私の中でシステムから材料まで全部やっているつもりですけれども、これは計算だからできる、シミュレーションだからできるんです。
 材料研究をやっている人がいろんなところをやるというのは、結構タフだなと思っています。特に年齢が上がれば上がるほどいろんなもので動きにくくなるので、例えば1つの案としては研究員、ポスドクレベルは拠点内留学を義務化するという形で、半年間はこっちでやりなさいとか、何曜日はこれですとか、その状況に合わせてやるというのが一つあって、そうやって横に流れられるような形にしていくというのが一つ重要なんだろうと思います。
 あと、GREENの現在の運営については私は知る立場にありませんので、控えさせていただきます。

【片岡委員】
 それはまさにそのとおりだと思うんですけれども、大体みんなポスドクを動かすという話になるんです。しかし、研究室を主宰する人がたこつぼいに入っていると変わらないと思います。ここに参加するということは、自分の意識を変えるぐらいのつもりでやらないとだめなのではないかと思いますけど。

【古山九州大学教授】
 おっしゃるとおりです。そういうマインドで実践している方が何十人といれば、多分私はここに取りまとめしていないんですよね。

【片岡委員】
 PIレベルと言われる人たちも意識改革をしていかないと。ポスドクにおまえちょっと行ってこいとか、だけど自分は材料屋なんだから、材料しかやらないとか、それだと結局何も変わらないのではないですか。

【古山九州大学教授】
 そう思います。それを現実的にどうやるかという。

【片岡委員】
 それを実際やらないと、このプロジェクトは形だけになってしまう危険性があるのではないかと思います。

【古山九州大学教授】
 なるほど。

【片岡委員】
 その辺は何かお考えですか。

【古山九州大学教授】
 私がどういう立場でしゃべればいいのか難しいんですけど。ただ、橋本先生が総括補佐をされているCREST、さきがけ、相界面領域で私もプレーヤーとして参画させていただいていますけれども、その場を見ていると、外圧でという形でやっていかないと、経験を持った研究者というのはなかなか動かない。動く人は1割、2割いると僕は思っています。ですけど、大多数が動かないと思っています。それは今、九大でいうと、I2CNER-WPIもかなりそうで、所長がかなり外圧をかけて、数年かかって少しずつというような感覚を私は持っています。
 だから、そういうトップダウン的なところはどうしてもいて、憎まれる人が必ずいるんだろうと思っていて、憎まれる人は多分私じゃないので、私はどうしたらいいかというのはちょっとお答えするのは難しいと思います。

【三島主査】
 ありがとうございます。
 それでは、加藤委員からもう一ついただいて、その後、議事4に移って、また御意見を頂頂こうと思います。

【加藤委員】
 素人的な質問で申し訳ありませんが、システム解析ということをもう少し教えていただきたいと思ったんですけれども、11ページのところにあって、さっきもサイエンスの要素とかいう話もありましたけれども、これはあくまでも今までの傾きを、システムを検討することによって、研究加速と書いてありますけれども、傾き、あるいはあれを上げようということをするという意味がシステム解析なんですか。10ページの例で教えていただけるとうれしいんですが。

【古山九州大学教授】
 システム解析の意味ですか。大きな意味でいうと、材料と社会にシステムとして実装されたときの姿をつなぐということですね。その姿をつなぐといったときに、今、例えばいろんなロードマップで書いてあるような形で、材料開発でここまで到達を目指しますという、それが実現されたときに本当にほかの競合技術に対して優位性があるのかとか、それが疑問が結構あるようなものというのはきっとあると思うんです。

【加藤委員】
 だから、システムに組んだときにどうですかというところを明らかにするという意味でしょうか。

【古山九州大学教授】
 そう。それを材料開発の課題設定の方にフィードバックしていくのが、第一義的な位置付けだろうと思います。

【加藤委員】
 ですから、例えばその例に挙がっている、今のこの図だと、解析をすると、それはこうするとこの傾きがあります。例えば光触媒のやつがもっと上がりますよとか、そういうことが可能になってくる。

【古山九州大学教授】
 そうですね。これが可能になった後でどうするかというのは、それぞれのケース・バイ・ケースだと思います。

【加藤委員】
 トータルでどれぐらいということも出てくるのかもしれませんね。

【古山九州大学教授】
 それがいいというふうになるでしょうし、この佐山さんという人は産総研の方ですけれども、光電極は単独ではいかないので、これをハイブリッド化していって、価値を付加していって図で右に到達できるようにしようとか、そういう議論をしていますし、これ全てにかかわりますけれども、水素だけじゃなくて、酸素に価値を見出して別のところに使おうとか。

【加藤委員】
 素材要素はほかの組み合わせとかという話においてよくしていくというのが、システムということと思ってもいいですか。システム解析の結果が。

【古山九州大学教授】
 そうですね。それが1つあって、あとは技術と技術、こっちの技術でこれができるのと、こっちの技術でこれができるのをつなげたら新しい価値が生まれるとか、その使い方はいろいろだと思うんです。

【加藤委員】
 ありがとうございました。

【三島主査】
 それでは、古山先生、どうもありがとうございました。

【古山九州大学教授】
 ありがとうございました。

【三島主査】
 それでは、議事4に移りまして、またそれを今のお話も含めて御議論する時間があればというふうに思いますけれども、情報統合型の物質・材料開発イニシアチブのプログラムマネージャをしていただいております伊藤先生から内容について御説明いただいて、また御意見を頂きたいと思います。伊藤先生、どうぞよろしくお願いいたします。

【伊藤プロジェクトマネージャー】
 ありがとうございます。JSTの伊藤でございます。私はMI2Iのプログラムマネージャを担当しておりまして、このMI2Tに関しましては昨年ここでNIMSの室町理事が内容を御説明したというふうに聞いておりますので、現在、これは昨年の7月1日、JSTのイノベーションハブ構築支援事業というのに採択されて、動いております。そこの状況を少し御説明させていただきたいと思っております。
 これは釈迦に説法で、必要ない絵ですけれども、こちらは常行先生のパワーポイントから拝借しましたけれども、いろんなこういうデバイスを作るときに、今までだったらば結晶構造とか、こういうものから縦方向的にやっていくやり方が一般的だったんだけれども、それだと課題解決になかなか到達しないという、特に産業界側のあれがあって、もうちょっと機能、こういう特性を持っているものが何とか欲しい、逆問題で解けないかと言っている、それがマテリアルズ・インフォマティクスというものであるというのは御承知のとおりであります。
 さて、このMI2Iで今やっていること、これも前回、室町理事がお話になったと思いますが、私なりに視点を書き直したものをお示しいたします。もとはこれはJSTが十五、六年前に作ったものですが、材料データベースというのがありまして、通称MatNaviと呼ばれているものがあります。これは世界最大級の材料データベースになっています。
 これを基にして、実はこのデータベースというのは今人が見るということを前提で運用されているんですけれども、これからこういうマテリアルズ・インフォマティクスをやっていくためには人が見るのではなく、計算機Naviといいますか、ソフトウェアが見れるようにしなきゃいけない。そういう形で機能化していくのが必要です。その上にマテリアルズ・インフォマティクスのいろんなツール群というのを特に作らなければいけなくて、情報のいろんな方に入っていただいて作る。
 それからあと、既に京のプロジェクトで戦略プログラムというのがありまして、特に分野の2とか分野の4と言われているところで、材料系のいろいろなシミュレーションソフトウェアができています。 そういうものもうまくここに活用してツール群を作っていく。それを実際にどこかのところ、具体的なここだけあってもその御利益は分からないので、その御利益がちゃんと分かるように、今はこの拠点では磁性材料とか、これはスピントロニクスのようなものも入りますが、磁石とかそういうものですね。それから電池、LiBとか燃料電池。それから、熱電と書いてありますが、あるいは伝熱制御材料、電気伝導がやたらに低いとかやたらに大きいと、こういうもの3つをまずターゲットとして、実際にどういうふうになるかということをやってみせる。もちろん次々に新しい課題をやっていって、ここから外は当然、各社で取り組んでいただくという課題に展開したい。
 私自身は、ここの青い点々の中はイニシアチブでやると計画に書いているんですが、一番重要なことは、どういうふうにやったらば材料開発が加速されるのかというスキームを作る。つまり、どういうパスを通って、どのデータベースを使って、どういうことをやると、どういう機能のときにいいのかというシナリオがうまく分かればいいのかと。
 そのためには幾つかやってみせる必要がありまして、そういうのをやってみせて、そのシナリオをうまく提供できる。行く行くは、そういうシナリオを知識データベースの仲立ちにまとめられると本当はいいのではないかと思っております。ここは将来的に是非やりたいと考えております。
 さて、これを行うために当然NIMSをハブにして、いろいろな方々に御参加いただくということで、今オールジャパン体制のネットワークをほぼ構築しています。この事業は今年度から5年間で始まっておりますので、特に最初の2年間はアカデミアの方を中心に、まずそういう仕組みをとにかく作って、回すというところが大事なので、今回はアカデミアを中心にまずはネットワークが作られています。ハブの拠点としてはNIMSとJSTで行いまして、北は北大から南というか、西は広島大学。ただ、鹿児島大学の方にもアドバイザーで入っていただいたりもしております。
 それから、それ以外に社会実装サテライトのようなものを阪大に置くということもやっております。さらに、ここはアカデミアですけれども、それ以外に産官学連携の仕組みというのを今構築中であります。ここをこの後、少し御説明いたします。
その前に、このMI2Iはいろんなところと連携しなければいけません。それで、既に既存の事業がいろいろ動いております。例えば元素戦略プログラム、あるいはSIPの革新的構造材料、それから今いらっしゃいますけれども、常行先生が統括をされているさきがけ、こういうところとまず連携をしておりますし、それからこの事業がシミュレーションの事業だとかなり思われているんですけれども、そうではなくて、これは基になる実験データをきちんととってくるというのが極めて重要なわけです。
 ただ、今のMI2Iのプロジェクトの中ではそこまでいっていないので、実は日本には大型研究施設、これはJ-PARCとかSpring-8、あるいはこれは計算機になっちゃいますが、京とか、こういう大型研究施設がありますので、こういうものとの連携を今始めております。
 J-PARCに関しましては、特に研究レベルでMFLと今やろうと思っていますし、Spring-8に関しましては、Spring-8はビームラインがたくさんあってちょっとやりにくいのですけれども、一方で兵庫県がビームラインというのを、24番かな、持っておりまして、そこに産業界の方がみんな集まって結構やっている。もちろんほかにサンビームのようなものもありますけれども、ここは兵庫県がうまくハンドリングできるので、今、兵庫県とMI2Iの方で提携を結んでやろうと考えています。それから、京はCMSI、あるいは理研のAICSのようなところと連携するということも考えております。
 それからあと、これは分野としては既存の分野ではない、物質科学とか何とかにうまく分類できないところですので、当然他分野と連携という意味では数理科学ということで、東北大学のWPIとか統数研、あるいは新たな触媒化学の話。それから、データサイエンスとはこれは非常に密接に関係するべきで、NICT、JST、AIST、産総研、あるいはRDA(Research Data Alliance)はちょうど3月の頭に日本で初めて総会がありますが、こういうところとの連携を現在始めております。
 この事業全体に関して、御承知のようにアメリカでMGIが動いていたり、ヨーロッパのホラインズ2020に入っていたりもあるので、海外のアドバイザーにお願いしておりまして、メリーランド大とかスーニーとか、あとマックスプランクの研究者の方にアドバイザーをお願いしております。
 さて、一番重要なのは産業界との連携であります。産業界との連携も、先ほど橋本理事長からもお話がありましたが、産業界の期待は非常に高いと思っております。自己紹介しませんでしたけれども、私自身は産業界に30年ぐらいおりまして、そこにいらっしゃる福島さんの部下だったんですけれども、30年間ぐらいやっていて、材料開発でこういう仕組みがあったら非常にいいなというふうに思っておりました。
 ただ、どういうものかが分からないので、いろんな仕組みを考えなければいけないと思っています。これはMI2Iに参加できる形というのを今考えています。左側がMI2Iの拠点を構築するための事業です。これはここに拠点で来ていただいて、集中研方式でMI2Iを実際に構築するときに産業界の人も一緒にやってもらうという話であります。これはよくある集中研方式です。
 一方、右の端に方は何かというと、これは課題が企業とか社会の方に非常に近い話。これは当然、研究内容をその特定の企業向けにカスタマイズした話になると思います。これは共同研究契約でやる。これも従来よくやっていたやり方です。
 今回、一番力を入れてやろうと思っているのが、中心のコンソーシアム型のものであります。コンソーシアム型は何かというと、もちろんコンソーシアムというものは今までいろいろありまして、私も幾つかコンソーシアムを作ってきたんですけれども、ちょっと違う、つまりいればいいコンソーシアムではなくて、実際に手をみんなで動かしながら、ある程度汗をかきながらみんなでやろうというコンソーシアムであります。
 具体的にはこういうことを今考えておりまして、コンソーシアムは何をやるかというと、データプラットフォームという、出口じゃなくて、その下のところにデータベースと解析ツールを作りましたけれども、そこの部分のトライアルユースですね、お試しで何ができるかみんなでやりましょうと。それから、コースの中はとにかく情報をみんなで共有して、何ができたよ、こういうのを使ったらこうなったよということをなるだけ共有したい。そのための場はハブの方で作ります。
 それからあと、これがなかなか難しいんですけれども、データプラットフォームにあるデータだけではおもしろい話はできないはずなんです。そこで企業がお持ちになっているいろんなデータを提供していただいて、みんなで突つき合う。先週、元素戦略のシンポジウムでそういうデータでもできるのかというのを、データを直接使うのではなくて、ちょっと違うところに使ってみるということには非常に興味を持たれていて、本業でないところで使われることもあるというので、結構提供していただけるんじゃないかなと思っています。ちなみに、これを提供しなければ参加できないという意味ではありません。それは参画要件ではありません。ただ、こういうことができないかと思っています。
 参加の形式としては、企業は企業単位で参加してもらいたいと思っていますし、もちろんここにアカデミアの人も入っていただきたいと思っています。先ほどの連携のところでちょっとお見せしましたが、今、JSTのさきがけで今年度からマテリアルズ・インフォマティクスの領域が立ち上がりましたけれども、そこで採択されたような方々も是非こういうところに入っていただいて、産業界の人たちとディスカッションしながら自分たちの研究を進めてもらいたいと思っています。
 このコンソーシアムに関しましては、まずは会費なしで何とかしようと。ただ、会費なしといっても、例えばこういうところに来ていただくときがあるんですが、それは自分でそれぞれお金を払ってもらう。ここのところも産業界が一番気にしているところで、いろんな権利の問題ですけれども、基本的に発明者帰属にして、ハブとの共有知財に関しては不実施補償は求めないことにする。
 それから、コンソの中ではなるべく情報を共有したい。ただし、元の出どころが、ある企業が出したデータというのがあるわけで、それもいきなり共有しろというと、これは参加する人に対しては非常に敷居が高い。だから、そういうものに関しては柔軟に考えます。端的に言えば、この情報はコンソーシアムみんなに公開してもいいですよと。だけど、やっぱりこの情報はここにコンペティターがいるので、この人ちょっと困るので、ある特定の人だけだったら出してもいい。出したら、とりあえずはまずは自分だけにしてと。ほかには出しているということは言うんだけれども、何出しているか、あるいはアクセスはできないようにする。そういう仕組みにしたいと思っています。
 これをするために、ちょっとこれは細かいですが、今、データプラットフォームをどういう仕組みにするかというので、既存のMatNaviのところに、APIというのはソフトウェアから直接データベースを呼ぶために付けるインターフェースですけれども、そのインターフェースを付けたようなものを作るんですけれども、それ以外に新しいデータベースも作ります。
 その場所の一角にコンソーシアム会員向けの、例えばインハウスデータベースが置けるとか、データが置けるとか、そういう場を作ります。ここのところにはファイヤーウォールをきちんと掛けて、ここにだれでも入れるんじゃなくて、このIDの者は入ってもいいですよというアクセスコントロールを掛けるようにします。もちろんこう言っても破られますよねとか、そういうことを言う人は必ずいるので、そこまで言っていたら話にならないので、とりあえずこういう形でコントロールをするということを今考えています。
 これは最後のあれですけれども、この事業というのは5年間の事業で、今年度から立ち上がりました。2015年から来年度にかけて、まずデータプラットフォームをきちんと作って、それから先ほど磁石とか電池、熱電材料を言いましたけれども、ここで是非ひな型を創出していただきたいと思っています。
 あと、先ほど言いましたいろんな利用環境、これはきちんと整備します。それから、権利関係もちゃんと作ります。あと、スクールとか、講習会等の開催の準備を今始めているところです。何よりも重要なのは、このコンソーシアムをきちんと立ち上げたいと思っています。今週の月曜日にフォーラムを行いまして、企業の方々向けにこの説明をさせていただきました。約250人の参加がございまして、いろんな方々から御質問がたくさんありました。そういうのを踏まえて、皆さんが参加して、皆さんが活躍できるような場にしたいと思っています。
 後半の3年間、2018年以降は少しこれを見直しまして、データプラットフォームはもちろん試行が始まりますし、この課題に関しては幾つかの成功事例、私は是非2つ出してほしいと言っておりまして、1つだとまぐれと言われますから、2つぐらい出してもらいたいと思っています。
 それから、新規の出口の課題、先ほど3つありましたけれども、それだけでは足りなくて、次の課題を是非作るべきだと。それに関しましては、ハブ拠点のファンデング機能を生かしてやろうかと思っています。
 それから、このあたりから社会実装サテライト、一応皆さんハブで来てやっていただくんですけれども、特にこれは情報系の事業ですので、必ずしも来なくてもいいでしょうと。だけど、やっぱりフェースツーフェースというのは重要なので、例えば関西ですとか、中京ですとか、そういうところに拠点を置くべきだろうと思っています。現在置いてあるのは、大阪の阪大にこの拠点を今置いて、これから活動を始めようと思っているところであります。
 それから、いろんなこういう相談の状況、シナリオ作成ができるためのトライアルを行う。
 それからコンソーシアム、ここも最初はハブ側が立ち上げ、ハブ側が回すんですけれども、重要なことはそれが自立化できる。つまり自分たちでわいわいと議論し、自分たちでやっていく。つまり、ここを通してマテリアルズ・インフォマティクスというもののコミュニティができることを私は一番願って、ここを運営したいと思っています。
 第三期というのは、先ほど申しました、昨年から始まったJSTの事業はここで終わるんです。終わった後から本番が始まって、データプラットフォームは本格的に動かしますし、そういうソリューションができる場を提供したい。こういう材料とか物質のオープンイノベーションのプラットフォームとして、2020年以降きちんと回るように、この5年間を運営していきたいと考えております。
 私からは以上でございます。

【三島主査】
 御説明ありがとうございました。
 それでは、御質問、御意見ございましたらどうぞ。高梨委員どうぞ。

【高梨委員】
 お2人の話を通しでお聞きしていて、意見と質問といいますか、あれなんですけれども、ちょっと前に戻って申し訳ないんですけれども、古山先生のやつで、13ページの事業代表者/中核研究者のところで、複数領域におけるシステム及び材料両方の言語に通暁している人材というのがあるんですけれども、ちょっと私が思ったのは、これができる人間というのはどれだけいるのかなというのを思って、言語だけだったらあれかもしれないけれども、両方に通暁している人材というのは非常に限られてくるだろうとちょっと思っていたんです。
 システムのいろんなニーズがあって、それに対して材料からいろんな特性が出てきていて、だけどこんなもの絶対使わないかなと思うような特性があるシステムのニーズにうまくマッチしてということがあると思うんだけれども、そこら辺をいろいろつなげられるような、両方に精通した人材がおられれば非常にいいと思うんですが、もちろんそういう方は限られた人材としていらっしゃると思うんですけれども、ただ、そういう方は多いわけではないし、とにかく交流する場を作るということは非常に重要だと思うんですが、先ほどの圧力をかけても。
 ただ、人間がやっていくと限られているので、そこの部分を補完するというか、そこをサポートするのが、まさにその後に出てくるマテリアルズ・インフォマティクスなのかというイメージで私は捉えていたんですが、そういうイメージでよろしいのかどうかというところがあるんですけど。
 あと、そういう意味でマテリアルズ・インフォマティクスをやるときに、ちょっと私お聞きしたかったのは、非常に重要なのはデータの集め方なのかなと思っていて、会社の方だと出せないデータもあるでしょうから、それは難しいと思うんですけれども、主要な大学ともこれはジョイントでやっていくわけなので、大学は会社に比べればデータは出しやすいし、ちゃんとうまく整理するというのもデータ科学の力が必要かもしれませんけれども、できるだけデータをうまく作っていただければと思います。
 あともう一つは、これは前にも話が出たかもしれないんですけれども、失敗した事例も非常に重要で、そこの部分をデータの中にどれだけ取り込めるかというのが、今後重要になってくると思うんです。そこら辺もどうお考えになっているか、もう少し具体的なことがあればお聞きしたいと思いました。

【古山九州大学教授】
 MIとの連携という意味だと、当初の図の中でいうと、システム工学と材料科学と情報科学、と情報科学というのは3つ目にあって、御指摘のように情報科学のところをきっちり活用していくのが必要で、そういう意味だとインフォマティクスのことも言語が分からないといけないんだろうと思います。
 そこをつなげる人材ですけれども、例えば今、GREENの拠点の中にいないのであれば、外から理事長の裁量か、拠点長の裁量かで引っ張ってくるんだろうと思っていますが、そこは私の判断の外なのでお答えするのは難しいところです。

【伊藤プロジェクトマネージャー】
 私はデータの収集の話ですけれども、まず大学から御提供いただくのももちろん考えております。ただ、そのときに重要なことは、データフォーマットをまず明らかにする。あまりめちゃめちゃな形でデータを入れられても、後で整理ができなくなるので、まずはこういう形でデータを出してほしいということは提供いたしたいと思っていまして、それをいきなり大学にいく前に、まずNIMSの中にいろんな測定をしている人たちがいるので、そこの方々と調整しながら、こういう形でまずデータを出してくださいというのを作ろうと思っています。
 それから、5ページのところに、先ほど大型施設との連携の話をしました。今のは大変いい御指摘で、失敗というか、要するに使わなかった。間違っていたのでは困るんだけれども、実はこれは使いませんでした、だけどデータとしては正しいというのがありますね。それだと思うんですけれども、それに関して大型研究施設、特にJ-PARCとSpring-8は、今話をしているのはデータログシステムを作ろうと。要するにデータロガーを、特にJ-PARCは新しいところなので、ITの力を使って全部のデータをログできるようになっているんです。ログしておいて、今はそれから結晶構造をやるために解析して、ほかは全部使わないで、最後の結晶構造だけのデータを使って論文を書くわけだけれども、そうじゃなくて、ここのデータもあって、実は見方を変えると、構造じゃなくて、電子情報のもうちょっとデータがありましたね、情報がありましたねということがあるかもしれない。
 昔だったら、そんなものをとっておくためにものすごい容量が必要で、無理だったんだけれども、今、ディスクなんか幾らでも安くなっていますから、それを全部落としたデータログシステムをJ-PARCとSpring-8の方で作れないかという議論を始めているところであり。そういう形で失敗というか、当面使わなかったデータもログできるようにしたいと考えています。

【高梨委員】
 あと、私が思ったのは、こうやったらうまくいかなかったという、失敗と言っている意味はそういう意味なんです。

【伊藤プロジェクトマネージャー】
 分かりました。

【高梨委員】
 それも非常に重要なことで、それは表に出てこないですよね。そこら辺いかにデータにするのかなとちょっと思ったんです。

【伊藤プロジェクトマネージャー】
 それはすごく難しくて、データを取った後、いろんなことをやって、この目的のためにはこれじゃなかったんだという、ここですよね。ここのデータを収集することは、今のところ、ちょっと難しいかなと思っています。それはむしろタグの中でいろいろやって、さっきシナリオを作ると言いましたけれども、シナリオを作るためにはシナリオにならなかったデータを集めることが重要で、それはこのハブの中でやっていくことかなと考えています。

【湯浅委員】
 今の失敗事例について具体的な事例で挙げさせていただきたいんですが、2枚目のスライドにハードディスクの巨大軸系統と書いてありますよね。これはいい事例でして、これは今何が使われているかというと、酸化マグネシウムという材料のトンネル磁気抵抗と。これは2004年に私が発明したものなんですが、ただ、実はこれは2000年に第一原理計算で理論予測されていたんです。
 だから、こういう第一原理計算が本当に役に立っている最初の大きな事例だと思うんですが、ただ、これは成功した酸化マグネシウムだけを見ていてもあまり分からなくて、2000年ごろにほかの結晶性の材料でいろんな第一原理計算が出て、いろんな材料でうまくいくと予言があったんです。ただ、実際、うまくいったのは酸化マグネシウムだけと。いまだにうまくいってない。なぜほかの材料がだめだったか掘り起こさないと。電子計算だけではいろんな材料は実際にうまくいきます。ただ、多分実際には同じものは作れないというのが大きな原因だと思うんですが、その辺はちゃんと掘り起こさないと、この辺がうまくいかないんじゃないかと思いました。

【伊藤プロジェクトマネージャー】
 ありがとうございます。

【山本委員】
 マテリアルズ・インフォマティクスの伊藤さんに質問をお願いします。7ページで企業が使わなかった、本業でないところで意外に使えるデータというお話があったんですが、具体的に例があればお願いします。

【伊藤プロジェクトマネージャー】
 具体的にはなかなか私もなくて、この前聞いただけの話で申しますと、この前伺った話は、その会社はフィルムの会社で、インクとか感光剤のフィルムのいろんな分子のデータを持っておられたらしいんですけれども、実はある医薬品なんですが、薬の構造を見ると、その構造が自分が持っていた色素の構造と非常に似ていたらしいんです。だから、こっちの人たちはフィルムの感光剤を作るためにいろんな染料のデータベースを持っていたんですけれども、その見方を変えると、実は医薬品の方にも使えるということが分かった。
 その会社は今、医薬品事業に展開しているから、これは出さないかもしれないんですけれども、自分の業界以外のところにそういうのを提供して、そこでうまく例えば知財が発生するのであれば、一緒にやれることができるのではないかという気もします。
 具体的にはおっしゃるとおり、まだ私もよく分かってないですし、分かってないというのは確実な当てがあるわけではないですし、先ほど御指摘があった7ページのデータの提供というところは産業界からいろいろな注文を頂いているところで、何かいいアイデアがあれば是非教えていただきたいと思います。
 ただもう一つ言いたいのは、汗をかいた人がメリットがあるような何かにしたいと思っています。一番くだらない言い方をすると、ポイント制にして、いっぱい提供してくれた人はアクセスできるデータベースを多くするとか、そういうゲームのようなポイント制もどうですかって企業からも言われています。

【山本委員】
 確かに「自分たち一企業としては、そんなものは出す必要はないですよ」と終わらずにという仕組みができればいいなとすごく期待します。
 もう一つ、済みません、お聞きします。5ページの方で「データ科学との相性がいい」といいますか、「連携を」ということをおっしゃっている。そのあたりをお願いできますか。

【伊藤プロジェクトマネージャー】
 データ科学との連携というのは、1つは、特にデータベースというのは今、フォーマットが非常に重要で、それを標準化する、よくインターオペラタビリティーと言いますけれども、ここのデータベースもこのデータベースも同じように使えるということが極めて重要だと言われています。そういうところというのはデータ科学というか、標準化の問題ですとか、そういうところできちんと議論していかなきゃいけないということであります。
 これは材料だけではなくて、今、バイオのデータもありますし、いろんなデータもあって、そういうものを統一的にといいますか、標準的に考えようという議論をNICTの中でもやっていますし、先ほど申しましたRDAというのはまさにそういうところで、これはオープンサイエンスの基本になっているという考え方であります。

【山本委員】
 ありがとうございました。

【三島主査】
 瀬戸山委員どうぞ。

【瀬戸山委員】
 イニシアティブのこの絵って、研究をやる仕組みとしては回りますけれども、聞いていると戦略を作る仕組みは全くないというふうに見えます。企業が後から入ってきてということをやっちゃうと結構情報をプロテクトするから、すごくちまい絵になって、大きな課題という意味でいうと、磁性材料、電池、熱電、これは大きいですよ。だから、国の戦略みたいなことを考えていくのであれば、ちゃんとそういう戦略を作れるような技術戦略、事業戦略みたいなことを考えていく仕組みを中にとっていかないと。これは研究の互助組織みたいになっていて、日本としての知財をどうするかという視点を入れていかないと、これはすごくまずいと思います。

【伊藤プロジェクトマネージャー】
 ありがとうございました。知財はたしか、今、一番悩ましいところです。

【御手洗委員】
 5ページに関連するところなんですけれども、データベースをいろいろ集めて、そこからマテリアルズ・インフォマティクスでいろいろ作り出していくというのは非常におもしろいと思うんですけれども、今までのお話とも関連するんですけれども、どういうデータを集めるかというところで、どうしても既存の材料のデータを集めていることになると思いますので、そこからジャンプして新しい特性を出すとか、特性を連続的にではなくて、不連続的にぽんと上げてあげるというところを見つけ出していくというのは、なかなか難しいのかなという感じがしました。
 その前の統合型材料開発の話でも議論されていましたけれども、どういうデータをとれば既存の材料をはるかに凌駕するというか、先ほども言いました新しい特性を見出すとか、そういうものが見つけられるのかという仕組みを是非作っていただきたいと思います。
 以上です。

【三島主査】
 ありがとうございます。それでは、よろしくお願いします。

【福島委員】
 先ほどもちょっとお話ししたんですけれども、例えば磁石だったら融解、スピントロニクスだったら界面というのは、論文の中できちんと記載されているか、またある材料がどういうプロセスを経てきたかとか、そういうところも非常に重要かなと思うんですけれども、例えば今のマットラボのデータベースはそういうところも引き出せるような構造になっているんでしょうか。

【伊藤プロジェクトマネージャー】
 界面なら界面のデータベースというのはあるんですけれども、一方で界面というのは御承知のとおり、どういうプロセスで作ったかで大いに変わってきます。
 実はここでやろうとしていることは、まず材料そのもの、スタティックなことを考えていて、プロセスの設計に対してインフォマティクスがどう使えるかというのは産業界から非常にリクエストがあるんですけれども、そこはなかなか難しい。まず、データが集まらないということもありますし、それからプロセスこそ、つまりこういう新規の物質がありますということは結構みんなでできるかもしれないんですが、どう作るかということを一緒にやれるかというのは結構難しい問題なので、次のフェーズで考えたいと思っています。そこをいきなりやってしまうと、動かなくなってしまうと考えています。

【福島委員】
 そういうこができるかというのも含めて、先ほど御指摘のどういうところを攻めるかという戦略が非常に重要かなと思いますので、そこは企業も含めて御相談をさせていただければと思います。

【伊藤プロジェクトマネージャー】
 是非よろしくお願いいたします。

【三島主査】
 それでは、まだあるかと思いますけれども、ナノテク・材料をどういうふうにシステム化していくかという問題と、それからIoTというか、先ほどの橋本委員のa足すbiの仕組みを、マテリアルズ・インフォマティクスのところを一つ先陣としてやっていくという取組が今始まったところ、かなり手探りなところがあると思いますけれども、そういう御紹介を頂きましたので、最後に議事5のところで、事務局からナノテクノロジー・材料科学技術の方向性について、科学技術基本計画の第5期のものと絡めて論点の整理をしていただいて、今後の議論をそういう観点からまた深くしていきたいと思いますので、これは西條参事官からお願いできますか。

【西條参事官】
 それでは、資料5に基づきまして、簡単に御説明いたします。
 第5期基本計画を踏まえたナノテクノロジー・材料科学技術の今後の議論の方向性についてということで、これまでもこの委員会で、資料5の後ろの方にありますが、参考というところで、これまでのナノテクノロジー・材料科学技術の研究開発方策ということについては、細かい部分にわたっていろいろ御意見も頂いております。こういったものも含めつつ、今回の5期を踏まえたということで、3つほどここでは出させていただいています。ただ、これに当然限る話ではなくて、さらに付け足して議論すべきことがあれば、また御意見いただければと思います。
 論点1といたしましては、既に橋本委員からもお話しいただきましたが、まさに世界に先駆けた「超スマート社会の実現」(Society5.0)、サイバー空間と異次元空間の融合に向けての「素材・ナノテクノロジー」分野の研究開発の今後の在り方と、そのための具体的な方策とは何なのか。我が国のナノテクノロジー・材料科学技術の現状、これは産業面であり、科学の面でもあり、多少方向が弱くなっているという状況も踏まえて、現実的にどういった取組をやっていくべきかというところについてが一つの議論になるかと思っています。
 ただ、単に弱くなってきたので、ここを強化すべきというお話ではなくて、まさに5期の中で議論されているSociety5.0を支える基盤としての、先ほどあった材料・ナノテク技術、サイバーとはいっても革新的な材料がまたそれに新しいシステムを作ってくるという観点から、我が国の強みを生かすという、軸足をそこに置いていく取組とともに、もう一つ材料開発への手法としても、きょうもマテリアルズ・インフォマティクスがありましたが、どう活用していくのかという視点があろうかと思っております。
 それから、論点2といたしましては、これは5期の中での4章、5章の部分におきまして、イノベーションの基盤的な力の強化、また人材、知、資源の好循環のための取組として、ナノテクノロジー・材料科学技術として取り組むべき具体策、例えばということで「国立研究開発法人におけるオープンイノベーションの推進のための仕組みの強化」に関して取り組むべき事項、これは実現するための取り組むべき事項というものは何があるのかということを、論点2として挙げさせていただいております。
 論点3といたしましては、今後の社会的課題の解決に資する基盤技術、一応13の重要課題ということで、エネルギー、ものづくりについてもありますが、これに対して新たな課題が今後出てくる中で、そこに対してナノテクノロジー・材料科学技術として取り組むべきものは何か。またさらには、この下の参考にも書いてありますが、分野間連携・異分野融合の観点からも重点的に取り組むべき分野、特に企業では取り組みにくい分野とか、中長期的に取り組むべきものとして、何かまた新たな課題、領域的なものが議論できればということで論点3を挙げさせていただいております。
 事務局から用意させていただいた資料は以上です。

【三島主査】
 ありがとうございました。論点1、2、3それぞれにきょうのお話がかかわってくるところでございますけれども、この論点につきまして今の時点で何か御意見がございましたら、伺いたいと思います。

【福島委員】
 論点1に入るかと思うんですけれども、先ほど挙げられた、例えば超スマート社会の基盤技術ということで、今よく言われるIoT、ビッグデータ、AIというふうになるわけですが、AIは今はコンピューターサイエンスというか、ソフトウェアでどんどん進歩していて、日本は追い付けないかなという危惧をしているんですけれども、一方、そういうのを新しい材料とかデバイスでやろうと。脳に近いようなコンピューターを作りましょうというのも、例えばIBMは結構一生懸命やっていて、私はその辺に非常に強い危機感を持っていて、こちらもそのままほうっておくと、追い付けなくなっちゃうのかなとちょっと心配しています。それがナノテクノロジー・材料に入るかどうかという議論もあるかと思いますけれども、別にこの場でナノテクノロジー・材料でなくてもいいんですが、そういう議論というのはどこかでやられているのか、あるいは今後進められる御予定があるのか教えていただきたいと思います。

【橋本委員】
 やられています。それはAIの議論においても、AIも2種類あって、今おっしゃったように専門家が2種類に分けてある中の、言葉はちょっと忘れましたけれども、そういう意味での人間の脳の機能を調べることによって、それをしっかり作り上げるということも重要だということで、そういうことに対して我が国としても重点的にやっていくというのは、今度の第5期の各論の中のどこかに入っていたと思いますけれども、その議論は随分やっております。
 そのときに、それを支える技術としてナノテク・材料も重要だという議論もあります。ですので、それはきょうの最初に御説明のあった第5期の中の支える技術という位置付けに入っていますので、きょうの議論の中に今委員のおっしゃったことは含まれると思います。

【福島委員】
 ありがとうございます。私どもも是非積極的に関与させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【生川審議官】
 済みません。若干補足をさせていただきますと、28年度の予算で、文部科学省の科学技術関係予算の一番大きな目玉はAIPと我々言っているんですが、AI(人工知能)とかIoT、ビッグデータも含めた総合的なプロジェクトを立ち上げようということで、54億円の措置をさせていただいたということでございます。これについては文科省だけではなくて、経産省とか総務省もほぼ一体となってやっていこうということで、今、中身の具体的な話を進めているところでありますが、文科省サイドから言うと、文部科学省は研究開発が本職でありますので、AIを研究開発に応用していくという切り口も含めて検討したいと思っておりまして、その具体的な一つとして、まだこれは検討中でありますが、例えば材料開発にAIを活用していくということもできないかという議論もさせていただいているところでございますので、今後、注目を頂ければありがたいと考えております。

【福島委員】
 多分ソフトでやる部分と、材料だったりデバイスの割合が非常に重要なんだろうと思うんですけれども、ナノテク・材料に係るものとしては材料とかデバイスの部分が維持されるように御尽力いただきたいと思っています。

【三島主査】
 ありがとうございます。ほかに御意見ございましょうか。

【橋本委員】
 論点1のところにかかわってくるんですが、きょう古山さんのお話しした統合型材料開発プロジェクトは文科省の方でこういうのを考えていただいていて、それを古山さんのところで若手の人と議論していただくとかいろいろあって、私もずっとそこを考えて、これをどのように位置付けて、現実にどういうものにするのかというのは頭の整理がなかなかできなかったんですけれども、きょうのお話を伺って、それと論点1と絡めて、これは第5期を議論したときに超スマート社会を絵でかかれているのが幾つかありますよ。その中の一つに、左側の方にサイバー空間からフィジカルのところに階層的にいろんなのを書いているのがあると思うんですけれども、古山さんのまとめてくれたのは階層的にやったものの下3分の1ぐらいなんです。
 それは何を言いたいかというと、材料とか物がサイバー空間とつながるためには途中にインターフェースが必要で、これは三島先生がそこで議論された。そのインターフェースをどのように押さえるかというところで勝負が決まるので、その辺がおもしろいと言っておられたんです。その上に全部つながったような、あるいはフィジカルとサイバーの空間のところがある。
 だから、この話というのは、この第5期の超スマート社会の中のある部分をカバーした議論になりますね。そういうふうに見ると、位置付けが僕の頭の中では整理できた。三島先生はそれでちょっと補足いただくといいと思うんですけれども、三島先生がCSTIの会議で、東工大で議論した中で何が重要かというテーマアップした中の話をされたんですけれども、ちょっと是非。

【三島主査】
 それは1つ、いわゆるバイオインターフェースというか、生体からの情報をどう取り入れて、それをサイバーの社会でどういうふうに計測とか、いろんな診断に使うときに、生物から情報がいく間にどういうセンサー、インターフェースが必要かというところ、これがこういうイメージとしては非常に分かりやすい一つの例ではないかということで御紹介して、ちょうどおっしゃっていただいた東工大の中でそこのインターフェースをやろうと思っていますが、なるべくそれを広くとると、そういったいろんな情報を取り入れている、いわゆるフィジカルにあるものとサイバーの間に必要なインターフェースにどういう可能性があるかということをとると、かなり広いところをカバーできるんじゃないかというところでございますけれども、その辺はまた片岡先生のところもそういう話があるんじゃないかと思いますけど。

【橋本委員】
 バイオマテリアルとか全部つながる話ですよね。
 そういう観点で言いたかったのは、論点1は今後の我が国の投資する方向に産業界も含めて、これは産業界との検討の上で出てきたものなので、ただ適当に話して決めたんじゃないんですよね。産業界も30年、50年先を見据えて、こういう方向に我が国としては投資をするんだという中で議論が出てきたことなんです。ですので、ここでやるときには、私たちのナノテクの中長期的な方向性に関しても、これのイメージをしっかりと捉えた上で位置付けに従って、そうすると統合型材料開発プロジェクトもその流れの中で位置付けておく必要があると思ったときに、すごく親和性がよいなと思いました

【三島主査】
 ありがとうございます。ほかに。じゃ、片岡さん。

【片岡委員】
 論点2はすごく大事なところだと思います。イノベーション創出に向けた人材と知と資源の好循環。特に大学の場合は人材育成という目的があるわけです。ここに国立研究開発法人のことが出ていますが、オープンイノベーションをやるということは、大学も含めてこういう人材、大学の場合はもちろん研究者だけでなくて学生もいますよね、特に大学院生。博士課程の大学院生というのは研究が主体ですから、こういう仕組みを活用してどういうふうにいい研究をしてもらって、さっきから話題になっていますけれども、融合型人材につなげていくか。それはすごく重要かと思います。国立研究開発法人だけではなくて、ここで議論するのがいいのかどうかよく分かりませんが、大学も含めてのこういった仕組みの確立、それもどこかで議論した方がいいのではないかと思います。

【三島主査】
 ありがとうございます。大学もオープンイノベーションといいますか、産学連携と研発法人も入ると思いますけれども、どうやって人を動かして、そこに大学がどういう形でかかわるかというのが、今までのかかわり方があまりに断片的、システィマティックでなかったものをどういうふうに作っていくかというのは大学にとって非常に大きくて、それイコール、まさにおっしゃられたように人材育成になりますので、ですからここで言っているようなイノベーション創出のシステム作りの中で人がそうならないと、さっき北川先生がおっしゃったようなシステムだけ作ったからということがあるので、そういうところの人材育成は若い人を育てていく、ちょっと時間はかかるにしても非常に重要な側面だと思います。

【片岡委員】
 そう思います。大きな課題なので、ありとあらゆることをここで議論することはできないと思いますが、例えばここに例として出ている国立研究開発法人、これは先ほどどなたかがおっしゃっていましたけれども、フランスはCNRSが大学の中にあるわけですね。先ほどの話に戻りますけれども、大学院生などの学生さんが、例えばこういう仕組みの中である程度自由に動けるようにするとか、そういう仕組みを作っていった方がいいのかなと。これは議論した方がいいと思います。

【三島主査】
 ありがとうございます。ほかに何かございましょうか。

【北川委員】
 もちろん私も、大学の運営費交付金を減らし続けるのを止めるべきと言っても、そう簡単にいかないことぐらい分かっています。だから、先ほど言った趣旨は、国立研究開発法人と国立大学法人が共通プラットフォームを構築し、そこで強い連携をして、国全体として基礎研究費を確保することが大事であるというのが私の趣旨です。

【三島主査】
 よく分かります。大学改革というのは社会の要請に応える人材をどうやって出すかということではなくて、もっと大きなビューがあって、その辺が大学自体が大学というものをどうやって経営するのかという問題であるとか、人材をどういうふうな幅を持たせて、例えば産学連携の人材育成とか、いろんなことを含めて大学のシステムを変えていく必要があるという意味で、その中で大学の経営を考えたときに研発法人を通してでもいいし、そこから研究費が入ってくるような大学にするというのは、単に運営費交付金を減らされるから、それをやらないと経営できないという意味ではなくて、本当の大学のファンクションとしてそういう形で社会に貢献していかなきゃいけないという時代になっているし、そこに今向かって、本当に変わらなきゃいけないという感じで今していますので、大変な動きになると思いますけれども、これをやる。
 よろしいでしょうか、ほかに。

【常行委員】
 連続的な材料の改善とか変化、連続的な変化を生み出すのはわりといろいろなやり方があり得て、マテリアルズ・インフォマティクスもそれが非常に得意な一つのインフォマティクスの目的だと思うんです。一方で、不連続なぽんと飛ぶような変化を生み出すにはどうすればいいかということは非常に難しくて、その方法論のいいものがない。
 結局、大抵思うのは基礎科学はやっぱり大事ですねとかいう話になるんですけれども、そのときに一つの方向は、これは参考資料の3ページに出ているんですけれども、「基礎から応用へ」と併せて「応用から基礎へ」という循環が大事だということが書いてあるんですが、例えばインフォマティクスみたいなものを使って、材料でたくさんのデータの中から基礎科学の知見みたいなものを、逆方向ですね、知恵を導き出す。そっちの役割も実はインフォマティクスにはあるし、それができるんだろうと私は思っているんです。そういう材料研究から基礎科学へ、本当のベーシックサイエンスに対して貢献をするということは、逆に基礎科学の研究者を材料に目を向かせるといいますか、そちらに貢献できる一番基本的な足場になるんじゃないかと思います。だから、基礎と応用をつなぐということは、応用から基礎に向かうベクトルがとても大事なのではないかと思います。感想です。

【三島主査】
 なるほど。これも随分ここで議論をしてきたところかと思います。
 それでは、そろそろ時間になりますが、特に御発言よろしゅうございますか。
 それでは、事務局から事務連絡等をしていただきたいと思います。

【吉元係長】
 事務連絡でございます。次回の委員会については3月15日(火曜日)を予定しております。議題が決まり次第、事務局より御連絡させていただきます。
 本日の議事録については事務局にて案を作成し、委員の皆様にお諮りの上、ホームページにて公開いたします。
 また、配付資料については、封筒にお名前を書いていただければ、後日、事務局から郵送いたします。
 以上です。

【三島主査】
 それでは、本日のナノテク・材料科学技術委員会はこれまでにさせていただきます。どうもありがとうございました。

‐了‐

お問合せ先

研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付

(研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付)