第8期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第4回) 議事録

1.日時

平成27年9月28日(月曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 15F特別会議室

3.議題

  1. 平成28年度概算要求について
  2. 元素戦略プロジェクト〈研究拠点形成型〉の中間評価について
  3. ナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策について 1.内閣府における第5期科学技術基本計画の検討状況等 2.論点整理等

4.議事録

【三島主査】
 皆様、おはようございます。ほぼ定刻でございますので、今まだ長我部委員がお見えになってないかなというところでございますけれども、定刻になりますので、第4回のナノテクノロジー・材料科学技術委員会を開催させていただきます。本日は大変御多忙のところ、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、更に前回に引き続きまして、今後のナノテクノロジー・材料分野の方向性等についての議論、もう少し具体的に申しますと、第5期の科学技術基本計画がそろそろまとめに入ってまいりますので、その中でこの委員会としてそこの中に盛り込むべき領域・分野といったものをもう少し明確にしていければと思うところでございますので、是非積極的な御議論をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それではまず、事務局から、委員の出欠及び配付資料の確認をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【吉元係長】
 おはようございます。委員の出欠の確認でございますが、本日は、北川委員、小池委員が御欠席です。橋本委員は遅れて御出席されます。
 配付資料の確認でございます。資料1‐1として、概算要求というポンチ絵の紙です。それから、資料2として、研究開発課題の中間評価結果、資料3‐1として、CSTIの研究開発の進め方に対するアプローチの整理についてという資料、資料3‐2として、今後の予定についてという1枚紙です。資料3‐3として、今後のナノテクノロジー・材料科学技術の方向性に係る若手研究者へのアンケートに関する結果の資料、最後ですが、資料3‐4として、議論のためのたたき台という資料を用意しております。
 配付資料に欠落等ございましたら、事務局まで御連絡下さい。以上です。

【三島主査】
 それでは、配付資料の御確認よろしゅうございましょうか。
 それでは、議題(1)から始めたいと思います。平成28年度の概算要求についてということで、尾西補佐から御説明いただけますかね。よろしくお願いいたします。

【尾西補佐】
 おはようございます。尾西でございます。
 それでは、資料1をごらんいただければと思います。来年度平成28年度ナノテクノロジー・物質・材料関係の概算要求としましては、具体的な事業の内容につきましては、次のページ以降個別のページがありますので、またそこで御説明いたしますが、概略としましては、ここに書いていますように、四つの事業と物質・材料研究機構の運営費交付金とがありまして、合計の概算要求額として、右上に書いていますとおり、222億円を計上しておるところでございます。
 まずその一つ目の事業としましては、未来社会を確実に変革する新たな材料開発のための新規事業としまして、統合型材料開発プロジェクトを立ち上げ、これを約13億円要求しておるところでございます。二つ目は、希少元素を用いない革新的な代替材料の創製のための元素戦略プロジェクトとしまして、約25億円を計上しております。三つ目は、右の方になりますけれども、最先端装置の共有化による研究基盤の強化のためにナノテクノロジープラットフォームとしまして、約17億円を要求しております。四つ目は、左下になりますけれども、産学官共同によるナノテク研究開発拠点の形成のための東北発素材技術先導プロジェクトとして、これは復興特会の予算としておりまして、約8億円を計上しております。最後に、右下の方ですけれども、物質・材料研究機構の運営費交付金として約159億円を要求しております。
 それでは、次の2ページ以降から、一般会計予算であるものに関しまして説明いたします。一つ目の事業であります、統合型材料開発プロジェクトにつきましては、本事業については、前回の本委員会において既に事前評価をさせていただいておりますので、内容の詳細については省略させていただきます。本事業は、今年度も既に実施しております、ナノテクノロジーを活用した環境技術開発を発展的に拡充し、新規領域、仕組みを追加して実施するもので、約3.7億円でありましたナノテクノロジーを活用した環境技術開発事業に対して約13億円を要求しています。
 本事業の背景としましては、IoT社会等の未来社会を切り開くため、特定の材料機能の高度化のみを目指すではなく、物質・材料研究によるフォアキャスティングと未来社会からのバックキャスティングの融合・循環を統合的に行う場を構築しまして、未来社会を確実に変革する新たな材料開発を推進するものでして、システム工学やAI等の情報科学を活用し、材料開発に変革をもたらすとともに、これらの取組を展開して、研究者の新たな意識を醸成することを目指すものです。
 その次、3ページ目の元素戦略プロジェクトにつきましては、今年度約20億円でありました事業、これを拡充しまして、約25億円を要求しております。来年度のポイントとしましては、元素機能の理解の更なる深化を目指し、元素戦略の思想とデータ科学の融合により研究を加速すること、SPring‐8等の大型研究施設を活用した特性評価の強化を行うこと、そして、この後の議事にもなっておりますけれども、中間評価等を踏まえながら、各拠点に戦略的に配分するためということで増額要求をしておるところでございます。
 続きまして、4ページ目のナノテクノロジープラットフォームにつきましては、今年度の予算額と同額の17億円を要求しております。本事業の目標としている産業界の技術課題の解決に貢献し、利用機会が平等に開かれ、高い利用満足度を得るための研究支援機能を有する共用システムを構築し、利用者の研究能力や技術支援者の専門能力の向上を引き続き目指すこととしております。
 そして、5ページ目になりますけれども、物質・材料研究機構につきましては、来年度から次期中長期目標・計画期間になりますことから、研究開発成果の最大化のための取組を強化するため、今年度より大幅増額となります159億円を要求しておるところでございます。研究開発成果の最大化のための法人の取組としましては、真ん中の方に書いてありますけれども、五つあります。一つ目はシーズ創出・育成機能の強化、二つ目は人材交流・人材育成の強化、三つ目は研究情報の蓄積・発信体制の強化、四つ目は最先端研究インフラの共用促進、最後五つ目は、内部統制及びマネジメント体制の強化ということを考えておるところでございます。
 また、6ページ目、最後になりますけれども、次期中長期目標・計画期間における重点研究分野としまして、NIMSで何をするかということを挙げております。目指すべきゴールから導き出されるNIMSが取り組むべき研究分野としまして、各材料研究分野から成ります10個の交付金プロジェクトと、一番右下にありますとおり、マテリアルズ・インフォマティクスを実施するということとしております。
 以上で、資料1の説明を終わります。

【三島主査】
 御説明ありがとうございました。
 それでは、ただいまの概算要求に関する御説明でございますが、何か御質問、御意見ございましたら、どうぞ。
 この統合型材料開発プロジェクトは、前回のこの会議で事前評価を頂きましたけれども、やはり統合型、フォアキャスティング、バックキャスティングというような、アプローチ自体はこういうことなんですけれども、じゃ、それで何を目標に、何についてそういう展開をしていくのかというのが一つ大きなこれから考えなければいけないことでございます。それがまさにきょうの議題にも関わっているということでございます。
 いかがでしょうか。特に御質問ございませんでしょうか。
 それでは、次に参りたいと思います。次は、研究開発課題の中間評価でございます。今の御説明ありました元素戦略プロジェクトの中間評価ということでございます。本件につきましては、この委員会から五十嵐委員、射場委員に御参画いただいて、事業の中にございます4拠点の研究代表者等からヒアリングを行った上で、研究計画・評価分科会において最終的に決定する中間評価票の案を作成してございます。お手元に配ってございます。本評価については、各研究拠点の評価というよりは事業全体の評価ということで実施することになりますので、そこに御留意いただきまして、中間評価の案につきまして御説明をお願いしたいと思います。それでは、五十嵐委員にお願いしてよろしいでしょうか。

【五十嵐委員】
 それでは、資料2を用いまして御説明いたします。
 まず3ページに、本プロジェクトの概要が示されております。平成24年度から10年間のプロジェクトで、中間評価が今年度、それから、30年度、事後評価が34年度となります。研究開発概要・目的・必要性等につきましては、後ほど評価の中でも触れますので省略させていただきます。3番、予算の執行額の変遷ですが、24、5、6年度とこのような執行額となりまして、27年度は20.5億円での予算で実施をいたしております。
 それから、4ページをごらんいただきますと、課題実施機関・体制として、4研究領域に対してこのような体制で進めております。これがプロジェクトの概要となりますが、本題の中間評価につきましては、5ページ以降で御説明いたします。
 まず評価結果、2の(1)課題の進捗状況につきまして、事業の概要から記載されております。元素戦略プロジェクト、これは研究拠点形成型となっておりまして、我が国の資源制約を克服し、産業競争力を強化する、その目的に直結する4課題を設定しております。磁性材料、触媒・電池材料、電子材料及び構造材料、この四つに対しまして、元素の理論の機能的解明から新材料の創製、特性評価を一体的に推進する、そういう研究拠点を形成するということを目指し、10年間のプロジェクトでスタートしております。
 まず磁性材料の研究拠点では、磁石の性能に与える元素の役割を基礎物理にさかのぼって解明する。これによって、現在、ハイブリッド自動車で用いられておりますネオジム系の磁石材料、これ、ディスプロシウムという希少元素を使っておりますけれども、それの省資源化を実現すると、そういうテーマで活動いたしております。
 それから、触媒・電池材料拠点につきましては、まずは触媒、これは主に自動車排ガス用の触媒、白金族の触媒を用いておりますが、その白金族の低減、さらには二次電池材料、リチウムイオン電池の代替できるような画期的な材料開発、これを希少元素を用いずに行うということを目指しております。
 電子材料研究拠点につきましては、エレクトロニクス産業の根本を支える部材――半導体、透明電極・伝導体、誘電体等ですが、これを目先の成果にとらわれずに幅広い材料分野に有効な新しい材料科学を明らかにして代替材料を開発すると、そういう目的で研究を推進いたしております。
 構造材料研究拠点ですが、これにつきましては、材料の強度・延性という、組成、変形に関わるところなんですが、その変形理論根本を見直して、例えばニオブとかモリブデンとかレアメタルが多用されている実用材料を、そういう希少元素を抜本的に削減した代替材料の開発につなげようと、そういう研究でございます。
 これらの事業につきまして今回中間評価をしました結果、進捗状況としましては、おおむね良好に進捗していると認めております。
 6ページをお願いいたします。具体的な研究成果ですが、27年度時点でそれぞれ顕著な成果が出始めております。特に磁性材料につきましては、ディスプロシウムの作用機構を明確にしまして、高い磁気物性値ができる物質の存在を電子論でまず予測し、これを薄膜法で実際に創製して、構造解析等を実施して、その実在を検証いたしております。このようにそれぞれの拠点で顕著な成果が出ていると認めております。
 それから、研究開発の体制についてですが、各研究領域では、研究ロードマップの作成、定量的なマイルストーン・目標を設定して事業を推進していると認めております。一部の研究領域においては目標がまだ定性的な段階にとどまっているものもありますので、今後更なる検討が必要であると考えております。また、事前評価でも指摘されました、電子論、物質創製、解析評価のグループの連携につきましては、電子論グループが物質の特性発現の原理説明の位置付けにとどまっている例も見られますので、今後更に3グループの一体化というようなことを検討いただきたいと考えております。また、拠点内だけにとどまらずに、拠点間の連携の在り方も含めた研究推進体制の更なる検討・改善が必要であるというようにも考えております。さらに、経済産業省等との連携につきましては、ガバニングボードにより引き続き関連施策間の連携や情報交換を図ることが必要と考えております。
 次に、研究基盤の活用状況ですが、SPring‐8等の大型施設との連携の推進によりまして、着実に進展していると認めております。また、拠点間での確立した技術の相互活用も一部進んでおります。
 その他と致しまして、構造材料研究拠点につきましては、事業の開始時点で予算規模を他の拠点と比べて小さく抑えて、電子論を主体に取り組んできた背景がございますが、今後、適切な予算規模の配分を含めた検討によって、更なる物質創製に主眼を置いた研究加速が必要であると評価をいたしております。以上が課題の進捗状況となります。
 次に、2点目としまして、各観点での再評価と今後の研究開発の方向性について議論いたし、このような評価をいたしております。まず各観点の再評価として、必要性の観点です。プロジェクトを取り巻く環境につきましては、昨今の世界的な経済情勢の変化もありますが、依然としてレアアースを中心としたレアメタルの供給リスクは解消されていないと認識いたしております。
 このような背景に鑑みまして、「科学技術イノベーション総合戦略2015」におきましても、クリーンで経済的なエネルギーシステム実現のために重点的に取り組むべき課題として、希少元素の代替、使用量削減が位置付けられておりますので、本プロジェクトに関しましては科学技術政策上必須であると考えております。ただし、産業界が真に必要としている材料の持つべき要件に関しましてはまだ十分な情報が得られているとはなっておりませんので、この点につきましては行政側からの支援も含めて改善が必要と判断しております。
 次に、有効性の観点です。研究体制等につきましては、全体としては有効に機能していると判断できるため、引き続き現体制を継続し、プロジェクトを推進すべきと考えております。
 次に、効率性の観点です。まず運営につきましては、プロジェクトの更なる推進・加速のために、プログラムディレクター・オフィサーが方針決定をする際、元素戦略運営統括会議がございますので、その場を活用したロードマップ、マイルストーン、研究進捗を総合的に検討できる体制とすべきであると考えております。各拠点の推進体制につきましては、拠点ごとに推進委員会を開催して、プログラムディレクター・オフィサー及び運営統括会議のメンバーを有識者として招聘し、研究の方向性を検討する体制は適切であると評価しております。ただ、知財運営に関しましては、現在プログラムオフィサーを置いて出願・登録等に関する状況を検討いたしておりますが、これを運営総括会議ごとに確認するなどの知財面での取組の強化を進めることが期待されます。
 最後に、今後の展望です。産業界の先端的なニーズに関しましては、ガバニングボードを活用して、産業界のエンジニア等を招聘して、更にニーズの情報提供を促す等、これについては行政側からの働きかけや、あるいはシンポジウム等での産学官の情報共有活動を更に推進いただきたいと思います。
 また、電子論、物質創製、解析評価の一体化に関しましては、拠点ごとにプログラムディレクター・オフィサーと研究体制の見直しについて継続的に議論を行っていただき、必要に応じた対策を講じていただきたいと考えます。また、情報統合型の材料研究等の手法の活用を促進しまして、各グループをつなぐ研究活動を促進いただきたいと思います。
 また、構造材料研究拠点に関しましては、得られた成果をフィードバックした研究展開を推進するための研究体制変更についても実施いただきたいと評価いたしております。
 さらに、各研究拠点の進捗状況等を踏まえた戦略的な予算配分を行い、効果的な研究推進体制を再構築すべきと考えます。
 今回の中間評価を基に、拠点の再編も含めたロードマップ・目標設定の再定義をプログラムディレクター・オフィサー、研究拠点の間で行っていただきまして、プログラムディレクターからは、研究拠点に対して拠点の評価、研究推進方針、拠点運営方針に係る通知を行うことが必要であると考えます。その通知に基づきまして、運営統括会議による定期的な運営状況の監査を引き続き実施していただきたいと考えます。
 最後に、今回の中間評価結果を踏まえまして、各研究拠点において体制の見直しを積極的に行うことが重要であると考えます。また、それらの対応状況につきましては、次回の中間評価、平成30年度を予定しておりますが、こちらにおきまして、事業の更なる拡大あるいは一部廃止等の可能性も含めて検討することといたしたいと思います。
 以上が、中間評価の結果でございます。

【三島主査】
 御説明ありがとうございました。
 それでは、ただいま御説明いただいた内容につきまして、御意見、御質問がございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。

【瀬戸山委員】
 いいですか。

【三島主査】
 はい、どうぞ。

【瀬戸山委員】
 これ、基本的に中国のレアアースの問題を含めてスタートしているので、どちらかというとこれ、守りの戦略というか、どうやってプロテクトするかという視点が強いかと思うんです。3年5年たってきてそこそこサイエンスが深まってくれば、日本がどうやって産業を発信するかという側の攻めの戦略に変わっていってもいいんじゃないのかなと。そういう意味でいうと、だから、今後の展望のところで、この後ロードマップとか目標設定の再定義とか書いてありますけれども、その中で、日本が世界に向けて日本として強い形を作るにはどうすればいいかというようなことを盛り込むような、そういう攻めの戦略みたいな形のロードマップの作成が必要じゃないのかなと思いますが、いかがでしょうか。

【五十嵐委員】
 おっしゃるとおりかと思います。実際に例えばネオジム磁石に関しましても、ディスプロシウムを削減するという観点でスタートされたと思うんですけれども、ディスプロシウムを使わなくてももっといいものができるんだという、そういう結果が得られつつあります。それは更に攻めの、日本がより強い独自の材料を獲得して世界をリードできると、そういうことにつながりますので、当然こちらに書かれているロードマップの見直しとか目標設定の見直しというのには、より高くより攻めの展開につなげるんだというのが含まれているというふうに私は認識しております。

【小長井委員】
 済みません。

【三島主査】
 どうぞ、小長井さん。

【小長井委員】
 今の御意見と似ているかと思いますが、6ページの一番上のところに大変魅力的な研究成果が書かれているわけですね。今まで考えてきたように、今まで理詰めで攻めて、それから、そこからいいものがあるかどうか考えて、それで出たというふうに書いてあるんですけれども、一つお願いは、ここに具体的にこれ何のことを言っているのか一つ書いていただきたいということです。それともう一つ、今の最初の方のお話と同じで、本当にそんなにいいものが出来ているのであれば、それをどうやって実用化段階に持っていくかということが書かれていないので、予算的に見ても、その次の5年間の中にそれが入っているかどうか見えないんですね。だから、それを含めて一つ何かどこかでコメントしていただけるといいかということです。
 だけど、7ページの上のところには、今度は逆のことが書いてあって、産業界が真に必要としている材料の持つべき要件に関しては十分な情報が得られておらずと書いてあるので、これ、ずっと流して見てしまうと、新しい材料は発見されているけれども、まだやっぱり何か不十分なものがあるのかなというふうにちょっと読めてしまうんですけれども、そこら辺はいかがでしょうか。

【五十嵐委員】
 今御指摘いただきました点につきまして、まず最初の点に関しましては、実際いいものが出来てきている。例えば排ガス触媒につきましてもそうですし、二次電池の関係でもそうなんです。私も最初これ、違和感を感じたんですけれども、具体的に書けない理由として、例えばまだ知財、特許が出願できていないので、物質名を特定するとかそういうのが少し時期尚早かなということで、事務局がそういう配慮をしてくれまして具体的な成果を並べることは控えたという、そういう背景がございます。ですから、実際の電子材料につきましても驚くような物質が見つかっておりますし、そういう意味で各拠点の成果を列挙すれば一番分かりやすいんですけれども、そこはあえて伏せさせていただいたという背景があります。
 それと、二つ目の御指摘は、中間評価の中でも議論になったんです。やはりせっかく得られた成果が実用化に対して、産業側からどれだけのアプローチがあるんだという話があったんですけれども、これに関しては、まず先ほど申し上げた、知財をしっかり固めて、日本の強み技術として確立した上で、産業界と早くコンタクトをとって実用的な目標設定をやっていくと。これに関しては、経産省のSIPとかISMAのプロジェクトとかいろいろなプロジェクトもありますので、そことの情報共有をガバニングボード等で進めていって、これから先は、例えば具体的な応用研究が必要であれば、このプロジェクト内でやるのか、あるいはスピンアウトしてそういうのをやっていくのかというのは、ガバニングボート等で御検討いただくのがいいんじゃないかと考えております。
 補足あれば、お願いします。

【庄司調査員】
 五十嵐委員より御説明いただいたとおりで、我々としても、必要に応じてスピンアウトさせていくということは考えていきたいと思っております。また、今現段階においては、我々行政側がなかなか研究者の方々を支援するというところが少しできていないなというのを感じておりまして、あえて行政側からの支援も含めてもう少し産業界からの意見を聞いていくということをやっていきたいという、ちょっと決意の表れと受け取っていただけるとよろしいかと思います。

【佐藤係長】
 ここでは、ニーズに関する情報提供という、もらうことしか書いていませんでしたので、向こう側に渡すことについても記載については相談して検討してみたいと思います。

【三島主査】
 小長井委員、よろしいですか。

【小長井委員】
 はい、結構です。

【三島主査】
 ほかにいかがでございますか。
 研究計画・評価分科会で大体こういうものの御報告をすると、ここのナノテクに限らずなんですけれども、具体性に欠けるというような指摘は割に多いので気を付けたいとは思いますけれども、知財のことが絡むのであれば、それなりにそういうことを含めて説明をすればいいのかなというふうには思います。
 ほかに、御意見、御質問ございませんでしょうか。

【加藤委員】
 よろしいですか。

【三島主査】
 はい、加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】
 済みません、今お話が出た知財のことで、私もこれを聞いて、7ページの真ん中辺りの運営のところで知財面の今後の取組の強化が必要というふうに評価されているということは、まだ全体にそういうことがうまく動いていないというふうに評価されたということなんですかね。いいものが出ているならどんどん進めるというのは、これから強化すると。その辺はどう評価されたのかもう少しだけ教えてください。

【五十嵐委員】
 プログラムオフィサーの方が例えば特許マップを作成するとかそういうことはやっていただいているんですけれども、やっぱり世界の動きが速いですから、新しい物質が創製されて、それでどんどん競争に今なっているわけです。そうすると、タイムリーに知財を確保していかないと、やっぱりいつの間にかまねされてしまうというようなことが起こりますので、そういうところをもう少し、例えばガバニングボードとか運営統括会議、そういう場でしっかりと議論して定期的にやっていただきたいというのを中間評価委員会ではそういう指摘をさせていただいています。

【加藤委員】
 今、大学や何かでもそういう専門家を入れて強化というのがあって、こういうプロジェクトなんかでもそういう体制をもっと整える必要があるということですか。

【五十嵐委員】
 そう考えております。

【加藤委員】
 分かりました。

【三島主査】
 ほかにいかがでございましょうか。
 山本委員、どうぞ。

【山本委員】
 質問なんですけれども、3ページの全体像の中で28年度のポイントがありまして、そこについてです。元素戦略の思想に併せてデータ科学の融合を図るというところで、具体的にちょうど多分一番ビビットなところだと思うんですけれども、どんなふうなところを考えているのかというのをちょっと知りたいなと思ったんですが、分かりますかしら。

【庄司調査員】
 済みません、具体的な研究戦略に関わるところだと思うんですけれども、例えば一つ言えることは、これまで磁石の方の重希土類を使っていましたと。これを全く使わなくても重希土類と同等の耐熱性、それから、さらには磁化を更に上げるというようなところに対して、今まだ指導原理が見つかっていません。その指導原理を見つけるためにも、様々な元素に置換したときにどういう挙動が起こるのかということをデータでしっかりと計算なり実験なりで作っていって、そこから解析をして新たな指針を得るということを繰り返していくことが肝要かと思っております。そういう意味で、例えば磁石であればそういうやり方になるのかなというのを私個人的には考えております。

【山本委員】
 ありがとうございます。

【三島主査】
 ほか、いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、ただいま頂きました御意見を事務局側と相談いたしまして、少し手を入れさせていただきたいと思いますが、私に一任していただければと思います。10月26日に研究計画・評価分科会がございますので、この委員会の中間評価という形で私から報告させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、議題(3)でございます。ナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策についてというところに参ります。冒頭でも述べましたが、第5期科学技術基本計画の策定に向けて、今後のナノテクノロジー・材料科学技術分野に関する方向性についての議論をしてきたところでございます。まず事務局から、第5期科学技術基本計画策定に向けた内閣府の検討状況、これは基本計画専門調査会がずっと続いております。もう11回目か何かそのぐらいになっておりますけれども、その状況と、それから、今後のスケジュール、この計画の素案作りというようなことから年末へかけてという作業についてのスケジュール等を御説明いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。これは西條参事官にお願いいたします。

【西條参事官】
 参事官の西條でございます。それでは、資料3‐1と、それから、お手元の資料の3‐2に基づきまして、御説明をさせていただきたいと思います。
 前回の本委員会におきましても皆様方から議論いただいているところでございますが、まず最初に、今、三島主査からお話ありましたとおり、現在、総合科学技術・イノベーション会議の方で、基本計画の中間まとめを踏まえて最終的な取りまとめを行うということで議論が行われているところでございます。基本的に本文をどういった形で書いていくかというのは、基本計画専門調査会がございまして、そちらの方で議論されていくところでございますけれども、我々が今まさに議論している基盤技術としてのナノテクノロジー・材料、こういったものについてどう進めていくかということについてもう少し詰めた議論を行うということで、9月4日から、今お手元に配っている資料3‐1がそこで議論された資料でございますけれども、基盤技術の推進の在り方に関する検討会を開いて、この中でまさに基本計画における基盤技術の在り方についてどう進めていくかということを議論しているところでございます。
 2ページ目の参考資料をまず御説明させていただいた方がよろしいかなと思います。2ページ目に参考と致しまして、基盤技術に関して、「第5期科学技術基本計画に向けた中間取りまとめ」、それから、「科学技術イノベーション総合戦略2015」において以下のように記述というように四角で囲んでございます。
 まさに第5期の中間取りまとめのところで、二つの大きなこれから取り組んでいくカテゴリーがあります。一つは、そこに書いてあります4ポツにある、未来の産業創造と社会変革に向けて取組、いわゆる超スマート社会の実現に向けたというようなことを言っております。それと、もう一つの5ポツと致しましては、経済・社会的な課題への対応ということで、こちらは4期からやっている、まさに課題解決型と。この大きな二つの中で、その中でそれぞれ共通基盤技術についても記述がなされているところでございます。
 4ポツの方には、そこに書いてありますように、センサ、ロボティクス云々、素材、ナノテクノロジーも入った形で、我が国の技術面で強みを有し、幅広いビジネス創出の可能性を秘める基盤的な技術を更に強化すると。それとともに、総合的なシステムを支えるIoT、ビッグデータ解析、数理科学、AI、サイバーセキュリティ等の基盤的な技術の強化を図るというような記述がされております。それから、5ポツの方でも、経済・社会的な課題への対応ということで、最後のところにありますように、基盤的な技術の研究開発の推進方策。これについて、中間報告の後に最終の取りまとめに向けて検討を行うというような形になってございます。
 また、総合戦略2015におきましても、第1部の第1章のところに同じような記載がございまして、最後のところに書いてありますように、具体的な推進方策について検討を進め、その内容を第5期基本計画に反映するとされております。
 こういったものを受けまして、こうした基盤技術について、一番下にありますように、今後の強化・重点化の在り方、研究開発の推進方策の在り方等を含めて検討すると、こういった流れの中で今申し上げたようないわゆる検討会が立ち上がって、そこで議論しているという状況になってございます。
 第1回目はこういった形で進めていきますという議論でしたが、第2回目でちょっと整理をしたものが出てきておりますので、その状況を資料3‐1の1ページのところから簡単に御説明したいと思います。この1ページにございますように、基本計画に示すべき研究開発の進め方、特に基盤技術のということでございますけれども、そのアプローチについて以下のように整理ができるのではないかということで、二つのアプローチが提起されております。
 一つが、課題達成型アプローチ。まさに第4期基本計画のアプローチということで、いわゆるタイムスパンとしては今後5年から10年程度を見据えて、解決すべき政策課題、その課題解決ということで、これをスピード感を持って技術的課題や制度改革取組等を抽出して、まさに技術的なもののみならず、制度的なものも含めて、目標、時間軸を含めて明示していって、産学官・関係府省連携の下これを進めていくというアプローチ。
 それからもう一つ、二つ目に、下にありますように未来創生型アプローチということで、課題達成型の上にあるようなアプローチに加えて、第5期基本計画で新たに提起したいアプローチということで位置付けられております。特に将来の不確実性が増している大変革時代における新たな価値を生み出すということで、我が国の未来の姿を共有して、この姿の実現に向けた取組・仕掛けが重要だということです。
 未来の一つの姿としての超スマート社会の形成、こういったものを行っていくために、特にキーワード、この前もちょっと御議論ございましたが、システム化ということで、システム化の取組やプラットフォーム形成の実現に、それを支える基盤的な技術の強化を図るということで、我が国が有する技術、特にその中でも強み、そういったものをしっかりと強化をしていくことが重要だというような形で、いわゆる二つのアプローチ、一つの課題達成型の今までのアプローチに加えて、未来創生型のアプローチが新たに整理として出ているというのが、前回基盤技術の推進の在り方に関する検討会における二つのアプローチが提起されてございます。
 済みません、次、3ページの方に行っていただきますと、未来創生型と課題達成型の関係もここには入っております。課題達成型は、割と分かりやすいというか、課題があって、それに対してどうしていけばいいのかというところでブレークダウンされているので、割と個別具体的なことが書いてございますけれども、未来創生型の取組は、どちらかというと、正直なところ、未来創生であるべき姿というところを、何が起こってくるのかというところが見えない中で、それを支える基盤にちょっと重点を置いた形で整理がされているというのが現状でございます。
 特にその中においてもキーワードになっているのが超スマート社会ということで、4ページの方にそのイメージが提示されております。超スマート社会のイメージということで、上の四角の方では、いわゆる個別のシステムが高度化されて更に結び付いていって、多種多様で大量のデータ、ビッグデータを適切に収集し解析して、横断的に活用ができて、特に必要な物・サービスを必要な人に、必要なときに、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細やかに対応できると。特にあらゆる人が質の高いサービスを受けられて、いろいろと年齢、性別、地域、言語等にかかわらず、生き生きと快適に暮らせる社会というような形で、何となくあったらいいのかなという形にはなっています。
 その生み出す価値みたいなものは、下に四つほどのカテゴリーが例示として挙げられています。一応その議論の中でも、もともと超スマート社会と一言で言ってもなかなかイメージがつかみづらいということで、ここには提示されておりますが、それでも、これをもってイメージがすぐできるかなというところがなかなか難しくて、そこら辺も前回の会議の中でも議論になったというような形になってございます。
 もう一つが、5ページ以降ですが、基盤技術の推進の在り方に関する主要論点ということで、これも前回提示されております。主要論点と致しまして、6ページになりますけれども、丸1で重要な基盤技術の特定要件についてということで、二つの技術に分けて検討を進めていく必要があるのではないかというところが前回提示されているところでございます。
 一つが、超スマート社会の基盤を構築するという形になっています。それから、もう一つが、超スマート社会において幅広いビジネス創出の可能性を秘める基盤技術という二つに分けてございます。前回もこれ、議論があって、最終的に今の基本計画専門調査会が先週の24日に開かれたときには、一つのほうは、超スマート社会の基盤を構築する上で不可欠な基盤技術というのを、超スマート社会を支えるシステムに必要となる基盤技術というような形で多少言い換えをしております。中身的には、特にシステムの構築、高度化、それから、いわゆる大規模化、複雑化を支えるような基盤技術をこの一つのカテゴリーとして挙げている。具体的に言いますと、先ほどの3ページにありましたような、IoT、ビッグデータ解析、AI、サイバーセキュリティみたいなやつを念頭に置いているというところになっています。
 それから、イ)ですけれども、超スマート社会において幅広いビジネス創出の可能性。これ、幅広いビジネスって、全部ビジネスに関わるので、ア)、イ)もビジネスという言葉を使うのはよくないということで、今は、超スマート社会における新たな価値創出のコアとなる基盤技術、コア技術的な書き方をしてございます。もう一つのカテゴリーとして、我が国の強みを有する技術、さらに競争力の源泉となる技術ということで、もう少し広い意味でのということで、ここに素材とかナノテクノロジーを入れた形で整理をするというような形をとっております。
 7ページの方は、進め方の在り方ということで、これは問題提起だけという形になっておりますので、まだ具体的にこう進めるべきというところは出てございませんけれども、一応今回、総合科学技術・イノベーション会議の中で、基盤技術の推進、これを基本計画に書いていくに当たって、先ほど申し上げたような二つのアプローチ、それから、基盤技術のところについては、特に二つのカテゴリーというか、そういうものに分けて考えていくべきではないかというところが議論されているという状況になってございます。
 この後のスケジュールも含めてでございますが、資料3‐2を見ていただきますと、前回スケジュールを整理したところ、かなり細かく入ってきましたので、それを入れた形で再整理をさせていただいております。先ほど申し上げたとおり、基盤技術の検討会につきましては、9月4日にスタートして、先ほどの資料3‐1がまさに9月16日に出てきて議論しているところでございます。
 その後、これ自身は、第3回、それから、一応、第4回ということで、第4回は予備日にはなっていますが、多分使うのではないかと前回言っていましたので、10月13日に第3回、それから、10月19日に第4回ということで進んでおります。実際の基本計画への反映については、前回もちょっと御説明申し上げましたが、おそらく第13回の基本計画専門調査会のところで答申案の討議ということですので、ここではもう書いたものとして出てくるということになりますので、10月中に何らかの形で我々の方も今日御議論いただいたものも向こう側に伝えていく必要があるのかなというように考えているところでございます。
 総合科学技術・イノベーション会議の方で議論している状況についての御説明は以上でございます。

【三島主査】
 御説明ありがとうございました。非常なスピードでいろいろなことが動いておりまして、今の資料3‐1の説明のところもすぐにさっと理解いただけるかどうか私ちょっと心配なんです。先ほど西條参事官言われたように、課題達成型のアプローチというのは分かりやすいんですけれども、未来創生型であるとか、未来の社会のあるべき姿であるとか、それに必要な基盤技術とかということになってくると、若干つかみどころがないようなところがございます。
 資料3‐1の3ページのところに、一応、上段の方に課題達成型の取組があって、その中の真ん中よりちょっと右寄りでしょうか、統合型材料開発システムという、我々のところで出した事業が入っていたりします。その下の未来創生型になると、急に全域に渡ったような形になっていて、幾つかの例は書いてありますけれども、その両方にとって何が必要かという形の議論が進んでいるということと、課題達成型にしろ、未来創生型にしろ、どういう基盤技術を考えるべきかというのが9月から急に始まりまして、9月4日と16日に行われているというところでございます。そこが今の資料でいうと5ページ以降のところということでございます。
 ということで、御質問、御意見を頂きたいと思いますが、今までのところ、資料3‐1とスケジュールの3‐2まで入れたところで、何か御質問、御意見ございましたら、どうぞ。
 はい、どうぞ。

【福島委員】
 未来創生型の取組の中の主眼になっているのは、超スマート社会ということだと思いますけれども、そこで挙げられているのは、IoTから始まってサイバーセキュリティまで、かなり情報科学に分類されるようなアイテムが多く挙げられているのかなと思います。ただ、例えばAIというのは二つの側面があって、もちろん情報科学の進展も必要だけど、例えばIBMなんかは、数ビリオンダラーのプロジェクトとして、SyNAPSEとか、そういう新しいAI向けのデバイスを作ろうとかというプロジェクトをやっています。多分、日本のエレクトロニクス業界はそこのところはもうすっかり空洞化していますので、このままだと多分そこはもうお手上げという状況になってしまうというのを私、ずっと強い危機感を持っております。これからそこの辺りを、情報科学だけで行くのか、あるいはそういうところも含めて御検討いただくのか、これから議論をお進めいただく中では、そういう側面についても十分御議論いただきたいなと考える次第です。

【三島主査】
 ありがとうございます。
 西條さん、何かそのところございますか。

【西條参事官】
 済みません、私は今、内閣府に併任はしていますが、そちらの事務局じゃないので明確なお答えにはならないです。この前の検討会の方での議論の中では、AIの話も当然ございました。それはどちらかというと、今御指摘のあったような、ものづくりとも兼ね合いをしたAI、やっぱり二つの種類ということで、ビッグデータ解析みたいな流れと、それからもう一つは、それは東大の先生の方からもお話があったんですけれども、ビッグデータ解析をするような、ビッグデータの大きな流れの中で使うようなAIという考え方。それはどちらかというと継続的なイノベーション的な今の流れの中でやっていくものと、それから、もう少し破壊的なイノベーションというんですかね、新たな考え方の違いのようなものをちょっと取り入れた形での新しいAIという、その二つの手法があるんじゃないかみたいな御紹介もありました。その中の二つ目のことについては、やはり今あったような、日本のものづくりみたいなものと融合することで日本としても少し強みを生かせるんじゃないかみたいな議論はございました。
 ですから、ここのところの基盤のところでは何となく情報だけに特化しているようには見えるんですが、そういったものだけじゃない議論は一応中ではあることは確かだと思います。ただ、私の方から先ほど御説明した二つのカテゴリーというか二つの基盤技術の分け方ですけれども、どちらかというと、超スマート社会に対してシステムに必要となる基盤技術みたいな言い方になると、どちらかというと情報系がちょっと前に出ているのかなという印象はあるようには思います。

【福島委員】
 先日でしたか、日経新聞でAIの新デバイスに関して非常に大きな記事を書いていただきまして、今、時期としては非常にいい時期だと思いますので、是非御議論いただきたいなと思います。多分、IBMは今、数メガ個のそういったデバイスを組み合わせてというんですけれども、それは多分力わざで数ギガ個まで行くと思うんです。そのときには量が生む新しい知見というのもきっと出てくるので、多分このままほっておくと、多分あのプロジェクトに日本は全然入っていないので、本当に空洞化してしまうかなというのをちょっと心配しています。

【三島主査】
 ありがとうございます。その辺は欧米というか、特にアメリカから見るとかなりビハインドなので。

【福島委員】
 業界のせいでもあるんですけれども、ちょっと心配はしております。

【三島主査】
 ありがとうございます。
 ほかに御意見は。どうぞ。先に湯浅先生、どうぞ。

【湯浅委員】
 今の御意見、私もごもっともだと思うんですが、そういうふうに具体化して課題を考えていくと、上の方の課題達成型と何が違うんだろうということになってしまうような気がするんです。ただ、具体化しないと、システムの未来像と、その一番底辺にある材料基盤技術の間が余りにもリンクがなくて、本当に何をやるのかさっぱり分からんと。具体化すると、上との違いが分からなくなるという、ちょっと矛盾を感じてしまいます。

【三島主査】
 ありがとうございます。それ、おっしゃるとおりかなと思います。
 それから、どうぞ。

【馬場委員】
 少し観点が違うと思いますけれども、今までずっと議論されているのを、ほんとにベースにあるものが、多分人材交流ということを当たり前のようだということであんまり書かれていないと思いますが、今までさんざんやってきてやっぱりうまくいってないのが、例えば産業界とアカデミックの人材交流というのは多分ほとんど達成をされていないといっていいと思います。
 今、プラットフォーム化とか、システムとか、それの基盤技術といっていますが、それを作るのにはやっぱり人材交流をして作らないとできない。そこをもし落とすと、いくら言っても何やっても多分うまくいかないというのが今までの大きな反省だと思います。改めてですけれども、それはきっちり書き込んで、それをやるんだということをもう一度改めて明記しておかないと、言い方悪いですが、やっぱり空回りする可能性は非常に大きいと思います。
 第1回検討会の意見の中には、まだ人事制度の改革についても検討しなければならないというようなことが書かれていますが、今頃という気は非常にするので。でも、やっぱりできていないからこういう意見が出ているんだということはやっぱり忘れてはいけない大きなポイントだと私は思います。

【三島主査】
 ありがとうございます。これは第5期の科学技術基本計画の中では、いわゆるシステム作り、イノベーション創出のためのシステム作りというところで人材育成でとか、それから、産官学の中の壁を取ってどれだけ融合的な開発ができるかというのが非常にキーになるというところは、私、正確に覚えておりませんが、今の4章、5章の課題解決型だとか未来創生型というものの次の章辺りでその辺はかなりしっかりと書き込んであるとは思います。

【馬場委員】
 分かりました。

【三島主査】
 はい、栗原さん。

【栗原委員】
 私は、未来創生型という言葉が出てきたのは大変すばらしいことだと思っております。従来から、課題達成とともに常に新たな価値を生み出すことが必要だということはいつも言われているわけですけれども、それを明確に未来のためにということを、具体的な言葉で何のためにやるんだということをはっきりと示していくのは大変大事なことじゃないかと思っています。
 今、研究成果の最大化ということが、特に研究独法について言われていますけれども、そうすると、極大化はいいんじゃないかという意見もよく聞くんですけれども、やっぱり最大化という中には、未来を見据えてやっていくので、極大ではなくて、常に最大化していくということは未来創生ということにつながると思います。そういう言葉のつながりからも、常に課題達成だけではなくて、その先も見据えながら科学技術を推進していくことが大事だという、この位置付けは大変大事なものだと感じました。

【三島主査】
 どうもありがとうございます。
 片岡委員、どうぞ。

【片岡委員】
 今、栗原先生が言われたのは私も非常に賛成です。課題達成と未来創生、これ、簡単に言うと、課題達成というのは極限追求ですよね。だから、技術者の視点という。未来創生というのは、ですから、おそらくそうではなくて、ごく普通の人がこうあってほしいと考える、それを取り入れるということなのかなというふうに思いました。ですから、技術者のエゴではなくて、未来に生きる普通の人がこうあってほしい、それに対してどう応えるのかと。
 そういう視点で見ると、先ほどやっぱりAIにかなり偏っているんじゃないかとかいろいろな御意見出たわけですが、資料3‐1の4の超スマート社会において実現される価値(イメージ)というのが、これがやっぱり極限追求型のイメージになっているのかなという気がしました。ですから、もし本当にこれが未来創生型の一つのシンボルとしての超スマート社会というものを考えるのであれば、もっと分かりやすいというんですかね、つまり、普通の人が見て、これはいいねという、そういうイメージなり価値で書かれた方が分かりやすいのかなと感じました。
 これだと、要するに、まさにAIの開発みたいな、AIを極限までやるとこうなるよというふうになってしまっているので、それでこれはAIの研究なのではないかというふうなことが大きく出てきてしまっているのかなと。でも、実際お考えになっていることは違うわけですよね。というふうに理解しているんですけれども、それでよろしいんですか。

【三島主査】
 どうぞ。

【西條参事官】
 そうですね、おそらく、先ほどの湯浅先生のお話もありましたけれども、課題解決型と、それから、未来創生といったとき、目標が具体的になればなるほどその区別が付かなくなるというお話にも近くなってくるとは思います。
 ただ、考え方としては、これ、今御説明しているのはどちらかというと総合科学技術・イノベーション会議なので、これを踏まえて我々の方で一応論点ペーパーをお作りしましたので、後でそこの御説明をしたいと思います。考え方としては、やはり課題解決型は、まさに技術でどう解決していくかというところに主眼を置いているのに対して、未来創生型というのは、今御指摘のあるような、あるべき姿に対して、単なる技術だけじゃなくて、それからもう少し、そういう意味では人文社会をどう組み入れていくかという議論に多分つながっていくようなところになると思います。そういった、ちょっと手法の違うアプローチをやっぱりとっていくというところはあるのかなとは考えています。
 おそらくそういう視点の議論は本来されていますが、書き物になってくると、だんだん具体的にという話になってくると、さきほどのお話ではありませんが、どちらかというと、どうしても理系頭ではないんですが、そちらの方にちょっと書き下してきてしまっているのかなというところはあろうかとは思っております。ただ、考え方としては、我々もそこはやはりちょっと違うのではないかということで、後の方のたたき台の方も整理はさせていただいているつもりではございます。

【瀬戸山委員】
 よろしいですか。

【三島主査】
 はい、瀬戸山さん。

【瀬戸山委員】
 課題達成型ということは、何がしかのアウトプットが出てくるわけで、それは多分社会インフラとか産業インフラがある程度変わるということだと思うんです。そうすると、そういうのが一つあって。ただし、それはまだ一番未来社会としてこうあってほしいというところとはまだギャップがある。なので、そういう課題解決型の出てきた社会変革みたいなものでまだ足りない部分をイメージで膨らませて、少なくともこういうふうにあったらいいよなというのが多分、未来創生型アプローチのうちの一部になるんじゃないのかなと思うんです。
 そういう意味でいったときに、この二つは完全に別々のものじゃなくて、今あるベースのもの、社会が変わる、インフラが変わるということをベースにして、まずそれで、じゃあ、もっとよくするという意味でまずいくらかは補完できると思うんです。そういうものがないと、やっぱりそこで整合性がなくなってしまうのでね。だから、ロードマップとかいろいろ考えたときに、それはやっぱりつながっていかなければいけないので、少なくとも上の軸と下の軸が対立しては困るわけです。だから、上の方のやつがあって、それを更に膨らませて、よりよい社会が出来るにはどういうふうなことを考えましょうという、そういう視点で整理すれば、やることも少し見えてくるんじゃないのかなと思います。

【三島主査】
 ありがとうございます。3ページ目の、今の課題達成型と未来創生型の関係というのはそういう絵かもしれませんね、これね。
 どうぞ。

【小長井委員】
 今の3ページ目の一番下のところですけれども、この項目が入ったのは大変よかったなと思います。特に一番下の欄に、センサ、ロボット、光・量子技術、素材、ナノテク、バイオ等と書いてありますけれども、これ、直観的に見ると、センサ以外というものは、基盤的な技術というのはきっとイメージとして浮かんでくると思うんですけれども、センサだけちょっと別物だと思うんです。これだけはやっぱりものすごい多品種で少量必要なものという感じになるので、ここのところで基盤的な技術というのをどう捉えるかってちょっと私自身もイメージがとれないんです。
 例えば今、LSIだととにかく同じものをたくさん作るというような感じになっているんだろうと思うんですけれども、センサ用に向けては、もうすごく少量のものがものすごい何万種類、何十万種類作っていかなければいけないかもしれない。そのときに、この基盤技術って一体何なんだろうと。今はLSIの工場も1台の装置で全部作ってしまうような少量多品種型というのもあるかと思いますが、そういうものを描くのか、ちょっとそこら辺がイメージとして湧かないなと思っています。一応コメントです。

【三島主査】
 分かりました。ありがとうございます。
 はい、五十嵐さん、どうぞ。

【五十嵐委員】
 今、いろいろ議論されたんですけれども、私のセンスでは、未来創生というのは、例えば2050年を目標にしたときに、現状の技術の延長線上で行くのか、あるいは全く違うアイデアを取り込むのかという、そういう形で考えれば分かりやすいんじゃないかなと。特に一般の方には、50年先にどういう社会になってほしいですかという、そういう漠然としたイメージがあるわけですね。あるいは、世の中がこう変わったときにはこうなるんじゃないかというのがあるんです。
 課題達成型というのは、もう既に見えている課題でいかに効率を上げるか、あるいは競争力を付けるかというような、そういう技術開発をやるわけですけれども、もしかしたらそういうのも取っ払って、50年先、2050年にはこういう社会にしたい、そのために必要な技術って何ですかというのを今既存の技術にとらわれずに探索的にやる、チャレンジングにやる、そういうことを描けるのが一番分かりやすいんじゃないかなと思います。

【三島主査】
 今の御説明が多分、この今の二つの相関を一番表している御説明かなと思いました。
 それで、いろいろ御意見を頂きましたけれども、今の3‐1、3‐2における、どういう取組をしていくかということに対する課題達成型、未来創生型という分類がございますが、もう一歩進んで、そういう考え方でこれから整理していくということに関連して、資料3‐3と3‐4で、若手研究者にこれからどんなことをやっていく必要があるかという分野等あるいは進め方等についてのアンケートの結果がございますので、それを参事官に御説明いただいて、その後、課題のポイントの整理のようなことをしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。3‐3と3‐4でございます。

【西條参事官】
 それでは、今、3‐1、3‐2で御説明したのが、まさに総合科学技術・イノベーション会議の中で行われている議論ということで御紹介ではございましたけれども、それを踏まえてと、それから、前回の議論の中で、やはり今後の方向性に関わるものということもあって、若手研究者もどういったことを考えているのかということで、我々事務局の方でアンケートを若手の方々にバーッとまいて、これも余り詰まったものじゃなくて、今、3‐3の後ろのページの7、8ページで、まいた資料を参考として付けてございます。我々もちょっと足らないところもあるんですが、議論していてもあれなので、とにかく皆さん若い人たちにも聞いてみようというのと、もう一つは、こういった議論がなされているということ、それから、こういうことをちょっと頭で考えていただいたらどうかというところも含めて一応こういったアンケートを、ばらまくという言い方おかしいんですけれども、皆さんに送って、結構な数、皆さん時間がない中でも書いてくださったので、それを取りまとめたのが資料3‐3という形になっています。
 先ほど申し上げた資料3‐3の7、8ページにございますように、アンケート自身は大きく二つの項目でお聞きをしております。一つは、基盤技術としてのナノテクノロジー・材料科学の在り方という中で、今後重要となるナノテクノロジーの切り口や材料科学技術の活用方策、こういったものがどうでしょうかというのに加えて、重点的に推進すべき研究開発領域についてあったら書いてくださいというのが一つ目の問い掛けです。
 8ページの方に、もう一つの問い掛けとして、ここでも議論いただいておりますシステム化・統合化の中で求められる物質・材料研究の在り方、特にその下のところに三つのポツで書いてありますけれども、物質・材料研究においてシステム・統合化の取組が有効な具体事例とか、それをやるに当たって、今不足しているものは何でしょうか、それから、逆に言えばそれに具体的にどのような取組が必要となってくるかということについての問い掛けをさせていただいております。
 それが資料3‐3ということで、頂いたアンケートの答えを一応書いてあるというものになっています。これ、ちょっと見ていただければ分かるとおり、6ページにもわたっておりますので、一つ一つということでは御説明する時間もなく、事前に皆様の方にもお送りはしてございまして、目を通してくださった方もいらっしゃるかと思います。
 一つ、基盤技術としてのナノテクノロジー・材料の在り方についてということの最初の、重要となるナノテクノロジーの切り口や材料科学技術の活用方策というところで、例えば一つ目の丸なんかで、前回までの議論でもう出てきたキーワードでありますような先鋭化、それから、融合化、それから、その要素の集積を通じた高度な機能の発現という意味でのシステム化、こういったものについて、例えば先鋭化と融合化は二極化し役割を明確した上で、重み付けをしてシステム化していくことが重要じゃないかというような御意見があります。
 それから、三つ目の丸の最後の2行にありますように、既存の産業技術をナノテクノロジーの視点で見直すことで、機能や性能、施工性等の大幅な改善が期待できると、結構現実的なラインを見ての活用方策みたいなお話。
 その二つ下に、概念として、Nano Tech、True Nano、Realization of Nanoという三つの重要な切り口と書いてありますが、一つのTrue Nanoというのはどちらかというと先鋭化の方につながるのかもしれませんけれども、不連続な進歩が期待されるような創造的な研究開発、それに対してRealization of Nanoというのは、先ほど申し上げたような、もう少しナノテクノロジーの視点で産業応用されているものへの見方を変えていくというような取組も必要じゃないかというような御意見なんかもございます。
 その後ろの方にも、基盤技術としてのナノテクノロジーから使える技術としてのナノテクノロジーにここを変えていく必要性というようなこともございます。
 それから、一番下の丸なんかとか、そこにはまた分野をまたぐ横方向への展開、こういったものもしっかりとやっていく必要があるというような御意見を頂いております。
 それから、重点的に推進すべき研究開発領域、2ページ目のところでございます。どちらかというと、やはりかなりとんがった部分をやるというお話と、それから、例えば生命とエネルギー、情報とエネルギーなどというような融合的なものをやったらどうかというような御意見がやはりちょっと出てきているというのがアンケートの結果というような形になってございます。
 それから、3ページ目の方で、システム化・統合化というところです。こちらの方、なかなかやっぱりイメージしづらいというところもございます。意見、ここ、書いてあるのをザーッと書いてあるだけなのでちょっと見にくくて申し訳ないんですけれども、先ほどもちょっと御意見ございましたようなところでは、例えば異分野交流とか人材の交流みたいなところの重要性、それから、全体的に物事を俯瞰して見られるような人材育成というようなところに加えて、そういったものをやるためにも、まさに前回も議論がありましたけれども、若手を集めて議論するような場の必要性というようなところ、それから、やはり融合化を図れるような話、領域や何かをやっていく必要があるんじゃないかというような御意見を頂いてあるというところがこのアンケートの結果という形になってございます。一つ一つ御説明すると時間がないので、概略としてはそのような形になってございます。
 このようなアンケート、それから、先ほどの資料3‐1でありますような総合科学技術・イノベーション会議の議論を含めて、きょう御議論いただくために、議論のためのたたき台を資料3‐4で用意させていただいております。今まさに総合科学技術・イノベーション会議の方でも、どういったやり方、領域、それから、進め方でやるかという議論が同時並行で進んでいる中で、ちょっとこれは言い訳になりますけれども、我々の方ですぐになかなか具体化をどう図っていくのかというところが整理がまだできていないというのが現状でございます。
 ただ、どういった領域――領域といっても、今回このたたき台で出させていただいているのが、どちらかというと、どういったものを対象にどういう進め方をしたらいいのかというところを、今のある議論の中で整理、整理というところまで行っていないところは申し訳ないですがした上で、きょうは皆さんからざっくばらんに御意見を頂ければということで、その議論をするために一つの考え方として示させていただいているのが資料3‐4でございます。
 現状認識のところ、1ポツのところは、もうこれまでもいろいろと議論されているとおり、一番上にありますような、特に材料分野、ナノテクノロジーにおける優位性、危機感としての優位性が失われてきているんではないか。それから、未来社会を見据えたというときに、先ほども融合のような話もありますが、ナノテクノロジーの応用の可能性の広がりをよく考えていかなければいけない。一方で、不確実な未来の備えとしてのナノテクノロジー・材料科学の在り方。さらに、データ科学とかAIみたいな新しいサイエンス、こういったものが出てくる中で、ナノテクノロジーとか材料科学をどう活用していくのか。さらに最後には、まさに予算も限られているという現状も踏まえた中で、先ほどもちょっと御意見ありましたが、最大化を図るといっても単に大きく、栗原先生がおっしゃったようなお話もありますが、まさに特に質の向上をしていく必要があるんじゃないかと。
 そういうところも現状認識として踏まえた上で、先ほどの第5期の基本計画策定に係る議論と致しまして二つのアプローチということで出てきているのが、一つが課題達成型のアプローチ、第4期基本計画のアプローチということです。課題からのバックキャスティング、いわゆるこういった課題があるので、それに対してどういう技術を適用していくかというところ、それから、ライフ、情報などにおける課題達成。これは一応融合分野とは書いてございますが、課題がありますので、課題自身は分野ごとに分かれているわけではないということでの融合分野における課題達成。それから、時間軸自身は、先ほども書いてありますが、短・中期ということで5年から10年というのを目指していると。
 もう一つ、未来創生型アプローチ、これは先ほど御説明したとおりの、第5期基本計画で提起する新たなアプローチということではあるんですが、この中でも、我々の方としても見たときに二つ切り口があるんじゃないかということで、一つは、ありたい社会、我が国の未来の姿、超スマート社会への対応ということです。これもある意味、ありたい社会からのバックキャスティングによる必要な基盤技術が出てくるのではないかというのと、時間的には当然、上の課題達成型、先ほどもちょっとくっつくようなところがあるんでしょうけれども、未来創生型のアプローチ、課題達成型のアプローチと見たときには、やはりこれはかなり中長期的、20年30年、2050年ぐらいを狙ってとかいうようなお話になってくるんじゃないかなというところが一つあります。
 もう一つは、未来というのを見たときに、やはり不確実性への対応が必要になるんじゃないかと。そういった意味では、いかなる状況、想定外とは書いてありますが、どういった社会が起こってくるか分からない中にも、対応可能な体力としての基盤技術として、まさにナノテクノロジー・材料科学技術、こういったものがちゃんと位置付けられていかなければいけないのではないかと。こうなると、時間軸は、未来とは言いながらもいつ起こるか分からないということで、ここは不定期と書かせていただいていますが、5年から30年というような形で書いてございます。
 もう一つの切り口が、先ほどの重要な二つの基盤技術ということで、超スマート社会の基盤を構築する上で先ほど御説明したような二つになります。一つは、いわゆる超スマート社会を支えるシステムに必要となる技術ということで、ここに書いてありますような、システム構築、高度化、統合化等に必要なプラットフォームの構築に貢献する技術――IoT、ビッグデータ解析、AI、サイバーセキュリティ。それから、もう一つの、超スマート社会において幅広いビジネスの可能性を秘める基盤技術、今の言い方であると、新たな価値創出のコアとなる技術ということで、ここにいわゆるロボット、光・量子技術、材料、ナノテクノロジー、バイオというような形の整理になってございます。
 上記を踏まえて、基盤技術としてのナノテクノロジー・材料科学の在り方の進め方・体制、こういったものを、アプローチと分野、基盤技術、こういったものを分けた上で進め方や体制を考えてみたらということで、3ポツでちょっと整理をさせていただいております。これが一つは、アプローチによる分類と当該類型ごとの進め方・体制ということで、一つは、先ほどもちょっと議論がありましたが、課題達成型アプローチ、それから、未来創生型のアプローチのうちの、ありたい社会への対応、上でいうと2の(1)の丸2の1)のところになります。
 この二つに関しては、次のページ、2ページ目の頭に掛かりますが、いわゆる手法としては、バックキャスティングによる取り組むべき基盤技術の絞り込みという形になるのか。ただ、未来創生型においては特に目的が明確ではなくなるというところはあると思いますので、常にバックキャスティングとフォアキャスティングの融合・循環をしていくというのが必要ではないかというのを手法として挙げさせていただいています。
 資金的には、当然こういう形になりますと、ある程度目的を持ってということですので、プロジェクト型であり、キーワードとしてはシステム化というのを挙げさせていただいております。体制としては、特に出口を見据えた企業とか、システム工学者の参画によるプロジェクト。先ほど申し上げたバックキャスティングとかフォアキャスティング、これをどう融合していくかという観点でのシステム工学みたいなことも入った方々のプロジェクト型でやっていくというところが一つのやり方として考えられるのではないかということです。
 ここは、論点として幾つか挙げさせていただいていますが、文科省という立場から言ったときに、短・中期的な達成型、当然これ、対象とはしていくんですが、フォーカスするという意味で我々が特に力を置いていくのはどこに置いたらいいのかということでの、どちらかといえば、未来創生型というところをよく見据えていく必要があるんじゃないかというところ。
 それから、システム化の観点から、先ほど片岡先生の方からもお話ありましたが、どちらかというと、技術だけではなく、やはりもう少し社会という観点で人文社会系の人材の活用も視野に入れたような取組が必要じゃないかと。
 それから、もう一つ、その次にある、先ほどの若手のアンケートにもありましたし、前回も議論がございましたように、若手研究者がやっぱり参画して、バックキャスティングとフォアキャスティングについてのブレーンストーミングをする場の設定を考えた方がいいんじゃないか。
 それから、これらの取組によって発展が見込まれる領域は何であろうかということ、それから、政策への反映というところを論点で挙げさせていただいております。
 もう一つが、分類2と書かせていただいていますが、未来型アプローチのうちの不確実性への対応ということで、手法としましては、先端技術を極めるというのと、ちょっとこれ、書き漏れもあるんですが、もう一つは、広く不確実性を受け止める融合領域みたいなものを作っていくというのも重要じゃないかと。資金的には、逆に言うと、プロジェクトというよりは、どちらかというと運営費交付金的な型の経営費なのかなというところを資金として書かせていただいております。キーワードは、今申し上げた、一つは世界最先端を目指した先鋭化と、もう一つはやっぱり新領域開拓に係る融合化ということです。体制的には、NIMSとか大学とかの基盤・基礎研究、それを拠点型という形になっていくのかなというところを挙げさせていただいています。
 ただ、論点と致しましては、融合化、先鋭化といっても何でもやっていいのかということは多分ないと思いますので、何かターゲットをやっていく。それから、この分類をすることによって、逆に言うと、この領域だけでやっていればいいんだよねというお話にならないように、やはり分類1と分類2の関係について、分類2の研究をどう分類1につなげていくのか、どうくっつけていくのかというところについてやはりしっかり考えなければいけないのかなということでございます。
 さらに、分類3、分類でいいのかどうか分からないんですが、もう一つのカテゴリーとして、上記いずれの研究開発を支えるプラットフォーム、基盤技術を支えるという基盤という位置付けで今取り組んでおりますマテリアルズ・インフォマティクスのような話、それから、どちらかというとサイバーである基盤と、それから、ナノテクプラットフォームのようなフィジカルな基盤、これ両方をいわゆる基盤技術を支える基盤として、フィジカルとしてのナノプラットフォームと、それから、サイバーとしてのマテリアルズ・インフォマティクス、こういったものをちゃんと融合させていくことが重要じゃないかというところを論点で挙げさせていただいているとともに、この中では当然AIについても、どう活用していくかという観点でちょっとあるのかなということで書かせていただいております。
 それを次のページに具体的な対象として、具体的に余りなっていないかもしれないですが、一応イメージで行くと、それをまとめたのがそこの横の紙になってございます。課題解決型アプローチのところは、課題として割とシャープな課題がある中で、必要となる技術が事例としてやはりこういうものが必要だねというのがあって、それの研究開発を進めていくという手法でいいのかなというところ。
 それに対して、今挙がっている一つ、未来創生型のアプローチのありたい社会や未来の姿への対応ということになると、ありたい社会の姿というのがかなりばくっとしたような、ここでは、エネルギーを高効率に活用する社会みたいな形に書いてございます。そうなってくると、いわゆる求められる技術としても、シャープにどの技術というよりは、もう少し広くこういった領域のこういったものというところの開発になっていくのではないかというのと、それから逆に、それに応えられるのかというところをちゃんとフォアキャストしていくものとの、これを常にすり合わせしながら目標設定を見直すようなやり方というのが必要になってくるんじゃないかというところが、未来創生型のアプローチのところで書いてある丸1の方になります。
 もう一つ、未来創生型のアプローチの不確実性への対応という意味では、先ほど申し上げたような、特にとがった、先鋭化した、世界最先端とかいうのもあるんでしょうが、そういった先鋭化したようなところでの取組とともに、ナノバイオみたいな融合とか、文理融合とか、もう少し幅広くそれを支える融合領域、こういったものへの取組が不確実性の対応ということであり得るんじゃないかということで書いてございます。
 それ全体を支えるということで、重要な基盤ということでプラットフォーム、いわゆるマテリアルズ・インフォマティクスやナノテクノロジープラットフォームだけではないんですけれども、計測機器等のこういったものを支える基盤ツール群、こういうものが一体となった形で支えていくのが重要じゃないかということで、きょうの議論のためのたたき台として提示させていただいております。事務局からの説明は以上です。

【三島主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、御意見を頂く前に、橋本委員がお見えなので、今のような論点、たたき台に対して、方向性として御意見がございましたら伺いたいと思います。

【橋本委員】
 遅れてどうも済みません。CSTIでの議論の状況を少しお話ししたいと思います。今、西條参事官からもお話がありましたけれども、まだ現状、すごく議論をしているところで、揺れ動いているというよりは、大きな骨格は出来ているのですけれども、その中にどういうふうに入れていくかということを、中間報告以降、急速に進めているところなのです。そういう状況の中でここで議論するのは大変難しいという見方もありますけれども、逆に言うと、ここでしっかりとした議論ができれば、シンクロした形で入っていくチャンスがあるというふうに考えていただいた方がいいと思います。
 そうすると、先ほど議論を途中から伺っていたときに、課題達成型と未来創生型の二つのアプローチに対していろいろ御意見頂きましたが、そこはほとんど影響されないところと言えます。それよりは、この意味をしっかり理解して、そこにナノテクがどういうふうに入っていけるのかということを考えていただいた方が分意味があるものになると思います。
 この二つのアプローチに対する考え方は、三島座長もおっしゃいましたけれども、認識としては五十嵐委員のおっしゃったような形です。すわなち、課題達成型の方は、現状あるサイエンスとか技術の延長上で達成できるものをしっかりとやりましょうという話です。一方、未来創生型は、大きく変わるようなそういうテクノロジー、サイエンスが出てくることを誘導するようなそういうアプローチです。
 どうしてこういうふうになっているかというと、これは、産業界からの意見も取り入れているのです。今回第5期の大きな視点は、産業界からの意見をしっかりと入れ込んだ上で作りましょうという、こういう立場で進めています。そのときに、産業界が今あるものをただやってくださいということであれば、あまり第5期に入れる必要はなくそれを重要視するかどうか、意味があるかどうかの問題だと思います。しかし、全くの逆で、世界と戦っている産業界の方は、今は大きな変革期であって、現状思っているようなことだけでは行かないというふうに言われるのです。ある日突然大きく変わってしまうかも分からない、そういう非常に大きな変革が進行しつつあるような感じがしていると。そういう大きな変革期に当たって、科学技術としていかにそれに対応していくか、あるいはそれを先導していくか、そういうことのできる計画を作りたいと、こういうことを強く言われています。そういう意味では、私たちが考えている科学技術の在り方と親和性がいいのではないかと思っています。
 これはまだ途中段階でこれからですけれども、最初にまず、2050年ぐらいに向けてどういうあるべき姿かというのを出します。あるべき姿を明確に出した上で、それを達成するために、この課題解決型と未来創生型の二つのアプローチがあると、こういう位置付けになります。
 未来達成型アプローチがIoTを核としてAIとか目新しいことばかり並んでいるので、何かそちらに引っ張られ過ぎているのではないかと感じられる方もいらっしゃるかもしれません。今、大きな変革がある中で、やっぱりICTがものすごく進化していって、そこにビッグデータなり、あるいはAIなりという新しい学問とか技術が出てきているので、そこの部分の変革がものすごく大きいというのが一つ出ているのですけれども、もう一つ、健康・医療が、これもサイエンスとしてもすごく伸びているし、それから、社会としても極めて重要だというようなところがあります。
今、CSTIの中では議論してきていませんが、私の予想ですけれども、健康・医療を除いた形の第5期の科学技術基本計画というのはあり得ませんので、近いうちに健康・医療分野の議論が追加されると考えられます。なので、ここでのナノテクの議論のときには、単にICTとかAIとかそういうことだけではなくて、健康・医療を支えるためのナノテクバイオなども含めて、基盤技術としてのナノテクをしっかりと議論していただくことが重要ではないかと思います。
 併せて、先ほどの資料では、基盤的技術の中にナノテクノロジーというのが前からたくさんある中に埋没しているようですけれども、これも、ほかのものに比べてナノテクがかなり前面に出てくる可能性があると思っています。これは、いろいろな議論を聞いての私の印象です。ですので、ここの委員会で、抽象論的にナノテクが重要だというのではなくて、もう一歩進めた形で、特に、あるべき社会はこうで、こういうアプローチをしようとしているというようなことを踏まえた上でしっかりとした提案をしていただくと、ナノテクの重要性が明確に出るようなものになるのではないかなと思います。
 まだしっかりとあるべき姿が出てきていない中で厳しいんですけれども、だからこそ、専門家の立場からご提案をいただければと思うのです。重要なことは、今までのようにナノテクが重要だから何とかというような抽象的な論点では、どの分野もみんなそうやって言ってくるので、あまり意味をなさないということです。今、第5期の目標で進むに当たって、それを支えるサイエンス、技術としてナノテクはこのような取組をするんだというふうに持っていくことが意味があると思いますので、大きな流れとしてはこの論点の形でよろしいと思います。いろいろ御不満はあるかと思いますけれども、それはまた別個、別の形でいろいろ表明していただくとして、ここではこれに合わせた形で是非よい提案をしていただければと思います。以上です。

【三島主査】
 ありがとうございます。大変明快な方向性、我々の議論がすべきところを御指摘いただいたかと思いますので、それを踏まえまして、御意見を頂きたいと思います。具体的に課題解決であれ、未来創生であれ、必要となるであろうナノテクの技術に対しての具体的な方向性、これを出していただければと思いますが、いかがでしょうか。
 はい、どうぞ、高梨さん。

【高梨委員】
 意見申し上げる前に一つ確認なんですけれども、この若い人へのアンケートというのは、若手研究者ってどういう定義でやられました? あるいは、どういうサンプリングをされたのか。まず意見を申し上げる前に、それをちょっと確認したい。

【吉元係長】
 若手の定義なんですけれども、基本的には30代、40代の大学、それから、NIMSの研究者に投げています。

【高梨委員】
 全員?

【吉元係長】
 全員じゃなくて、CRDSとかJSTとか文科省の会議に御参画いただいた若手の研究者ということでございます。

【高梨委員】
 そういうことですね。分かりました。その上で意見ですけれども、未来創生型に関してです。もう既に言葉は出ていますけれども、文理融合というか、それはやっぱり非常に重要だと私は思います。というのは、新しい価値を生み出すというより、新しい価値観を生み出すということだと思うんですけれども、既にもういろいろ話は出ていますけれども、価値観とか死生観とか国家観とか幸福観とか全て今、本当に大変革期にあるところで、やっぱりそういう人文社会科学の人たちとの協働というのは欠かせないと思うんですね。
 ただ、それにナノテク・材料がどういうふうに貢献できるかというのはなかなか具体的なところはないんですが、例えばデータ科学が歴史学そのものを非常に根本的に変えようとしているとか、そういうのもあって。もちろん映像というのが出てきたときに、19世紀からのときに、歴史の記録というのが非常に変わったと思うんですけれども、今のビッグデータは、歴史の記録そのものを根本的に変えようとしているので、そういう意味でも歴史学そのものが変わっていく、そういうような文理の融合の仕方とかというのが出てきているというのは話は聞いています。
 それから、私、橋本先生の話を聞いていて思ったんですけれども、健康・医療というのはこれから入れなければいけないと。そういう意味で私ちょっと思ったのは、食料というもの。食料の問題というのは、これ、ナノテク材料。私なんか金属材料研究所にいると食料って全然関係ないなという感じではあるんですが、実際、食料というのは非常に重要な問題だと思っていて。それで、東北大なんかでも例えば農工連携みたいな動きが今いろいろ出てきていますけれども、そういうところでナノテク・材料が貢献できるようなそういうものというのは、スマートフードチェーンシステムというのがここにあるんですが、既に課題としては出ているんですが、未来創生として何か出せないのかなという感じを持ちました。

【橋本委員】
 三島先生、1点言い忘れたのですが、今も出ました人文社会の件は、CSTIの議論でも、この未来創生型アプローチにはそれを入れなければいけないと強く出ております。この資料にたまたま書いてないだけかも分からないですけれども、非常に強く出ています。ですので、ここでは、ナノテクもしっかり人文社会系の人たちと組んで、今までのように自分たちの分野だけでボトムアップ的にやるのではなくて、そういう分野の人たちと組んで新しいアプローチをするんだと出していただくことが重要だと思います。

【三島主査】
 ありがとうございます。
 ほか、いかがでしょうか。
 じゃ、常行さん。

【常行委員】
 資料3‐1なんかでスマート社会というので一つ思い付くのは、個のニーズにどう応えていくか。例えば必要な物を必要に応じて生産するとか、個人とか、あるいは企業とかの分野に合わせた適正なものを作るとか、そういう個別のニーズにどう応えていくかというところがとても気になるところです。もうちょっと具体的に言うと、例えば3Dプリンターで簡便に物を作るとか、それから、加工ですかね、CFRPをどう切るとか、そういう材料の特性と直接加工技術とを組み合わせていく、そういうときに、材料の研究者と、それから、加工分野の研究者、それから、光分野の研究者、そういう複数のいろいろな分野の方が力を合わせるということが必要になるんではないかと思って、それが一つの方向性かなと思います。

【三島主査】
 ありがとうございます。
 じゃ、御手洗さん。

【御手洗委員】
 もしかすると従来の延長のようになるのかもしれないんですけれども、先日アメリカの国際会議でチタンの会議に行ったときに思ったんですけれども、ある一つの金属の会議でありながら、特にアメリカの発表で、航空機メーカー、複数のエンジンメーカーって競合するような産業が組んで、そこで何を研究しているかというと、組織予測とか特性予測とかいう、シミュレーションとかデータマイニングを駆使したような研究をもう始めている。当然そこに大学も入っているわけですけれども、非常に大きな連携というか拠点。なかなか日本だと、利害関係があって同業他社とは共同研究できないというような事情はあるのかもしれないんですけれども、アメリカはそこでそういう基礎研究をやっているというのがすごく脅威に感じました。
 なので、ここで未来創生型のアプローチで不確実性への対応のところは、大学とNIMSというある意味基礎研究をやっているような機関だけなんですけれども、是非そこに産業界も同業他社も巻き込んで入っていただいた上で基礎をやるというのは、もしかすると、そこで喫緊の技術だけではなくて、更にその先を見込んで、本当に海外との競争力を付けられるような研究ができるのではないかなと感じます。
 どういう未来を希望するかというので、やはり仕事があるということが大事かなと思うので、そういう意味で、産業創出というか産業競争力強化という意味で、シミュレーション技術もそうですし、ナノテクでは先端的な解析技術を使って材料の解析をすることによって特性を引き出すという従来やってきたことも含めて、そういうものを大学やNIMISだけでやるのではなくて、産業界も巻き込んで拠点型で進めていくというのがいいのではないかなと思います。以上です。

【三島主査】
 ありがとうございます。
 健康・医療の話の方で何かございますか。

【橋本委員】
 健康・医療が追加されるという話は、私が勝手に思っているという、そういう位置付けで今、お話ししています。

【三島主査】
 はい。ただ、ナノテク・材料にとって非常に重要な分野なので。

【橋本委員】
 そうですね。

【三島主査】
 特に高齢化社会とか。

【橋本委員】
 そうですね。ですので、ここでしっかりと議論していただくことが重要だと思います。

【三島主査】
 そうですね。
 五十嵐委員、どうぞ。

【五十嵐委員】
 ナノテクがいかに重要かという点で一つ例として挙げたいんです。鋼材の潤滑とか焼き付き現象なんですけれども、これは従来からブラックボックスで、要は、経験則、取っかえ引っかえしてきたわけですよね。材料が変わって焼き付くと、潤滑メーカーに、潤滑剤、何か違うのはないかということで取っかえ引っかえやって、いいものを作ってきた。ところが、実は最近はナノテクのおかげで、潤滑とか焼き付きがどういう現象かというのが見えてきたんです。物理が分かってきた。それから、化学反応が分かってきた。
 ですから、これまではエンジニア、工学者の対象だった分野が、物理屋さん、化学屋さんが研究対象としてきたんです。それによって、今まで職人さんがやっていたところにサイエンスが生まれて、更に本当に競争力のある技術開発につながると。それにナノテクというのは非常に貢献していると思うんです。ですから、基盤技術としてナノテクというのは位置付けるんですけれども、本当に学問体系とか、技術と学問の融合とか、そういうものにナノテクというのは不可欠な技術ではないかと、そういうふうに感じています。

【三島主査】
 ちょうど先ほどの資料3‐3のアンケートの1ページ目の上から丸三つ目が、産業応用されている技術の中には作用原理が解明されていないものがあって、そういうものが分かるとというのがあるので、そういう産業界における実際のものづくりの中におけるナノテクの役割というようなことでは確かに重要なことだろうと思います。
 ほか、いかがでしょうか。
 はい、どうぞ。

【栗原委員】
 私も同じような意味で、産業界もありますし、大学の工学分野のいろいろな技術研究の中に、やっぱり従来、実際に材料を使っていながら、材料的視点の入らないような、あるいはナノテク的視点の入らないような技術はたくさんあるわけです。五十嵐さんの言われたのはその一例のわけで、そういう広範なアプローチがあると思います。
 その場合に、今、データ科学をどう使うかということがすごく言われているんですけれども、意外とデータ科学とハードをどうつなぐのかというところが余り見えないので、それの一つのつなぎ方としては、やはり比較的ナノテク・材料は例えばシミュレーションも今、随分進んできているし、もしかするとデータベース化もしやすい領域かもしれないので、そういう一つのアプローチの中に分野として、非常に基盤でかつ先端であるということで、データ科学ともなじみの付きやすいものではないかと思います。
 それともう1点発言させていただきたいのは、未来型アプローチの不確実性への対応のところで、資金としては運営費交付金型と書いてあるんですけれども、ここのところに是非、科研費の確保というのを。基盤の基盤としてやっぱりすごく大事なことだと思うので。将来に対する投資の、こういうふうにますます戦略的にフォーカス型になるということに対するカウンターとして、やっぱり科研費はすごく大事なのではないかと思っているので、戦略的に研究をどんどん推進するということのもう一つのカウンターとしてその重要性というのを皆さん意識していただけると、私は大学の研究者としては、特に若い人たちにこういうところでそういう発言ができると説明できるかなと思うので、よろしくお願いします。

【三島主査】
 ありがとうございます。
 それでは、岡野さん、どうぞ。

【岡野委員】
 課題解決型の研究体制に、日本の大学、産業はそういう仕組みになっています。従いまして、何か問題をしっかりと解決しながら前へ進んでいくということは、今の体制の中で何とか工夫して、最近は非常に広範なテクノロジー結集が必要になってきていますが、これもそういう体制の中で、二つの企業が協働したり、あるいは産学連携をやったりとかいうことで何とか対応できそうになってきています。
 それに対して、未来創生型というのは、現状の延長線上では描けない世界を非連続的なステップアップを、ブレークスルーを起こす、そういうのを狙った新産業創出とか新学問領域の創出とかそういうことを目指していくようなアプローチは、20世紀に我々が作ってきたタテ型の体制では必ずしもできません。横断型・結集型のプロジェクトを従来の体制の中で実行しようとすると、現状のタテ型の体制の中でやれることをやりますから、プロジェクトでみんなが集まって知識や技術を出し合っていくことができず、各会社で自分にメリットがあるときは参加し、議論・結集することなく、アイデアを持って帰って自分の会社でやってしまう対応にすることが多いように思います。なかなか結集型というのは今の仕組みではできないというのが一つの大きな問題だろうと思います。
 未来創生型のプロジェクトをどう作って、そこの中で最高のパフォーマンスを出すように各研究者あるいはリーダーたちが引っ張っていけるような仕組みは、既存の仕組みと少し離れたといいますか、新しい工夫をしないければならないように思います。これこそやっぱり21世紀の新しい基盤を作っていくための仕組みだと思います。文科省が特に大学の人たちに、自分が一所懸命短期的な目の前だけ頑張っていればそれでよかったんですけれども、それを更に社会の中である価値を作る中長期的戦略に立った支援を実行する意味でも、何とかそういう新しい仕組み作りを考えていくことが大切です。
 これ、3‐3を見ていて、一番下から2個目の丸のところに「日本ならではの強みを活かした研究開発戦略を考えることが肝要」とあります。これ、おっしゃるとおりだと思うんですが、その後に、インパクトファクターとかH‐indexのような欧米天下り指標ではなく云々というのがあるんですが、私はこれ、両方が必要であると思います。やっぱり世界の人たちが注目するというのは、1個のフィールドであれば、もう全く新しい理論とか、すさまじいことが起きないとなかなか引用してくれませんが、逆に研究者が多いところでは多少引用もあるかとは思います。引用は発信力の一つの評価であり、世界に引用される斬新な新しい発信力を持った研究者が前へ出ないと、職人的な、日本の中のドメスティックに何かポリティカリーに動くだけでは新しいところを引っ張れないように思います。やっぱり世界への発信力という点では、インパクトファクターとかH‐indexに関しては、100%これで評価できるとは言いませんが、これも重要なポイントであるというふうに考えるべきだと思います。
 そうしますと、大学の研究者たちがやはりもう一度、どちらかというと教えたり、学生たちを育てるという作業から、世界の人たちにどう自分の科学技術を発信していくかという作業の中で、やっぱり未来創生を提案できるプロジェクトリーダーをしっかりと選んでやっていく仕組みこそが重要と思われます。その点、もう一度体制の面から、現状の体制ではなかなかこの未来創生型ができないので、ここに手を入れていただきたいというお願いをしたいと思います。

【三島主査】
 ありがとうございます。これも先ほど申し上げたように、5期の科学技術基本計画では、システム改革、どういう仕組みを作らないとそういう新しい発想が生まれないかということについても大きく議論があるかと思いますので、その中で書き込まれることであろうと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 はい、射場委員、どうぞ。

【射場委員】
 できるだけ具体的な話をしたいので、手段のキーワードから入ると、まずビッグデータに関しては、かなりもう先ほどからの議論にあるように、マテリアルズ・インフォマティクスがよくかみ合う。概算要求の説明でもありましたように、どのプロジェクトにもデータ科学が出てくるので、それ、横串刺してどう進めていくみたいなことをまとめてもらうのといいのかなと思います。
 更に言うと、そこにクローズのデータを、大学とか研究機関とか民間のデータを取り込んでいくためには、サイバーセキュリティは必須なので、具体的にどういうふうなセキュリティが要るのかとか、あるいは新しいデータをどんどん生み出す部分はAIがかんでくるので、具体的にどんなAIをどういうふうに作らないといかんかというのを次々に、既に例えば元素戦略の協定の各々からこういうふうにやりたいというニーズが出ているわけなので、それを引き取って進めてもらえれば、割とボリュームのある重層的な仕組みになるのかと思います。
 厄介なのはIoTの方で、これは正直、私たちの会社の中でもものすごく苦労しています。今、車は、カメラもセンサもいっぱい付いていて、インターネットにもうのっているんですね。その情報を一体どういうふうに活用してどういうビジネスにするかというのは、そういう部を作っているのに、その部の中でもなかなかアイデアがなくて、全社に公募して、何かないかみたいに聞いているような状況です。
 ここの例に示してもらったような、電池の状況を逐一調べて逐次充電みたいなのをしましょうみたいなことも出てきますし、健康・医療だと、車のセンサを、今、ヘルプネットってありますよね。それだけしか活用できていないんだけど、もうちょっと病院とつないでみたいなことはCOIなんかの中でも進められているので、そこはやっぱり難しいですけれども、ちょっとアイデアを出しながら。うちの今、苦労しているところにも聞いてもらうといいと思うんですけどね。今どんなことをアイデアとして取り組みたいと思っているかみたいなこともちょっと情報共有して、一体IoTというのは具体的に何というのを見えるようにしていかないといかんのかなと思います。

【三島主査】
 ありがとうございます。大変重要なところかと思います。
 ほかに。
 はい、吉江委員、どうぞ。

【吉江委員】
 先ほどから融合というキーワードが何度も議論されていて、私もそこのところが非常に重要であると考えています。分野間で何かを融合、一緒になって連携して何かを始めていこうというふうに考えたときに、特に未来創生型のアプローチというところに対してなんですけれども、この分野に本当にいいネタというのは、常にニーズとして意識されていたり、あるいはシーズとして意識されているところまでは達してなくて、もっと、あったらいいなとか、もしかしたらこんなものできるかなとかいうような水面下にあるようなところに眠っているような気がするんです。そういう意味では、先ほど射場先生からもお話ありましたけれども、シーズを探す、ニーズを探すというような、そこにもう少し何らかのそれのためのお金を使えないかなというのが一つ思っていることです。
 もし余りに漠然とした目的に対して使うというのが難しいようであれば、融合型の研究の非常に小さいものに対して、小さいものをたくさんやって、研究者間のコミュニケーションを促すような仕組みが何かうまく作れると少し、特に未来創生というようなところに対して何か新しいことが起きるんじゃないかなということをちょっと考えているんですけれども、いかがでしょうかと。

【三島主査】
 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ。

【瀬戸山委員】
 橋本先生にお聞きしたいんですけれども、安倍さんが産業全体の規模を600兆円ぐらいまで大きくするというときに、今ある産業が発展して膨らむ部分と、新しく作らなければいけない部分ってはっきりあるんじゃないかと思うんです。今600兆円と言っているのは、大体そもそもそこのギャップというのは、まだはっきり分からないんだけど、新しい産業を作らなければそういうものは埋まらないんじゃないのかなと私は思うんですが、そこは何か情報をお持ちでしょうか。

【橋本委員】
 総理が考えているところは分からないのですが、ただ、そこの部分を埋めていくのは、産業競争力会議の方での議論だろうと思っています。今何か決まっているわけではないですが、当然ながら、新しい産業を生み出さないとそういうところには行かないんだと思います。
 その新しい産業を生み出すための手段として今大きく言われているのがベンチャーの活性化です。ベンチャーの企業がIPOをして大きくなっていくようなモデルだけではなくて、ベンチャー企業が既存の大きな企業の最先端の研究開発部門的に動いて、その中のよいものを大企業が取り込んで新規事業として展開していくようなモデル、その二つがあると思うのです。ベンチャー自身が大きくなるのと、それから、ベンチャーの結果を大企業が取り込んで新しい事業に展開していくのと、いずれにしても新規産業を起こすときの一つの大きなキーワードがベンチャーであるというようなことは言われていますので、そういうことが今後議論されていくのではないかなと予想しています。これは全くの予想です。

【瀬戸山委員】
 ありがとうございます。それで、そうなってくると、今、スマート社会とおっしゃるときにこれをどう捉えるかというのがあって、これ、日本が人口が減っていって、老齢化が進んでいって、それで、480が600に内側だけで膨らむはずがない。となってくると、やっぱり世界に向けた大産業を作っていくという視点が必要です。そのときには、さっき言ったように、最先端のIoTだけでやっていく話では僕はないと思っているんです。
 なので、そういう切り口のときに、ナノテクというものが外に向けてどんなふうな新しい産業を作っていくかという視点でやっぱり議論しないと、あくまでマスターベーションみたいに国内だけでのスマート社会というのは、それ、日本よりも遅れて10年後20年後そういう時代が来るかもしれないけれども、それというのはまだほんのカッティングエッジなので、そういうものだけで産業が出来るわけじゃないので、それ全体で膨らませて日本が豊かになるような中でナノテクというのを考えていく視点が多分要るんじゃないのかなと思います。

【橋本委員】
 ちょっとコメントを追加させていただいてもいいでしょうか。

【三島主査】
 はい。

【橋本委員】
 私が先ほど、ナノテクがこの基盤の中でも重要になってくる可能性があると言ったのは、瀬戸山委員がおっしゃったような視点でして、今、産業界で特にそういう議論がされているようなのです。産業界でこれから新しい産業を作っていこうというときに何が重要かということを議論すると、結局、当たり前というか、材料とかナノかそういうもので飛び抜けたものがないと世界で勝っていけない、だから、ここが重要だという議論に収束しつつあるというようなことを聞いています。そういうのを多分CSTIは取り込んで、それが本道なんだと思うのです。
 そのときに、先ほど五十嵐委員もおっしゃいましたけれども、産業界の持っていた課題と、実はそれを突き詰めていったところに新しいサイエンスがあって、そこから新しいテクノロジーが出てくるみたいなことが、どうもあちこちで産業界の方が少しずつ感じておられるようです。それをしっかりとアカデミアが受け止めて、そういうところから新しいサイエンスを作っていくみたいなことをやると、すごく親和性があるし、事実意味のあることになるんじゃないかなと思います。

【三島主査】
 片岡さん、どうぞ。

【片岡委員】
 資料3‐4の分類2の特に未来型アプローチですね。それで、こういう分類、やっぱり何か感じるのは、リニアモデルにやはりまだのっかっているんじゃないかと。つまり、不確実なものがあって、それをやっていいものが出てきたらプロジェクトにして、そして、産業に橋渡しをしていくと。だけど、いつもそうとは限らないといいますかね。だから、今、橋本委員が言われたように、特にバイオの部分なんかはそうですけれども、いわば不確実な基礎研究が一気に産業になるんです。そういうときは、みんなで集まってわいわいやるというよりは、ごく少数の限られた個人が先鋭的な研究をやって、それが一気に新しい産業に進んでいく。
 ですから、この分類2に関しては、拠点型と書いてありますけれども、これは拠点にはならないんじゃないかなという気がするんです。むしろこれは個人にかなり相当ウエートがかかるんじゃないかと。栗原委員が言われたように科研費というのもそうですけれども。ですから、個人にウエートがかかった未来型アプローチが当然あって、それが一気にベンチャー化によって産業になる可能性もありますから、受け渡しで行くというアプローチだけではないようにしておいた方がいいんじゃないかなと思いました。

【三島主査】
 ありがとうございます。
 それでは、いろいろ御意見を頂きましたが、もう時間がなくなってまいりました。それで、今後の進め方でございますけれども、先ほどの3‐2のこれからのスケジュールを見ますと、10月29日のCSTIの基本計画専門調査会でもう重点化する技術領域の提示というようなところになってまいりますので、この委員会としての何らかの案をまとめていかなければいけないというふうに思います。
 やり方としましては、私と事務局でいろいろと今まで出たものを整理した上で、先ほど射場委員もおっしゃってくださいましたけれども、例えば産業界の方でちょっと意見を聞いてみたらいいようなところがあればということと、それから、この委員会の委員の方にまた個別にいろいろなお願い、まとめをお願いしたりするときがあるかもしれませんが、是非そんなような協力の仕方をお願いしまして、10月29日ですかね、これまでに何らかの少し意思表示ができるような形にまとめたいと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。
 それでは、御協力よろしくお願いいたします。
 それでは、事務局から最後、連絡等お願いいたします。

【吉元係長】
 事務局から連絡でございます。本日の議論については、追加で御意見等ありましたら、事務局までメールなり何なりで御連絡いただければと思います。
 次回の正式な委員会、第5回になりますけれども、これは12月1日を予定しております。議題が決まり次第、事務局より御連絡をさせていただきます。
 本日の議事録については、事務局にて案を作成し、委員の皆様にお諮りし、主査に御確認いただいた後、ホームページにて公開いたします。
 また、本日の配付資料につきましては、封筒にお名前を書いていただければ、事務局より郵送いたします。以上です。

【三島主査】
 それでは、大体時間になりましたので、本日の委員会は以上でございます。どうもありがとうございました。

―了―

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