第7期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第9回) 議事録

1.日時

平成26年11月13日(木曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 3F1特別会議室

3.議題

  1. SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の最新動向について
  2. オープンイノベーション拠点の体制・運営の仕組みについて(現状報告)
  3. 今後のナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策について
  4. その他

4.議事録

【川合主査】
  それでは、定刻になりましたので、ただいまより第9回のナノテクノロジー・材料科学技術委員会を開催いたします。
  本日は、御多忙のところお集まりいただき、ありがとうございます。
  本日も前回に引き続いて、今後のナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策という重要な議題を含んでおりますので、各委員におかれましては積極的に御議論をお願いしたいと思います。
  では、事務局より、委員の出欠及び配付資料の確認をお願いします。

【吉元係長】
  おはようございます。まず、委員の出欠の確認でございますが、本日は、五十嵐委員、長我部委員、片岡委員、北川委員、小長井委員、榊委員、常行委員、橋本委員が御欠席です。
  配付資料の確認です。本日、資料1として、内閣府の資料でございますが、「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の最新動向について」、ポンチ絵の資料が一つと。それから、NIMSからの報告資料として、「オープンイノベーション拠点の体制・運営の仕組みについて(現状報告)」、これもポンチ絵の資料になります。資料3として、事務局からの資料でございますが、「ナノテクノロジー・材料科学技術の研究開発方策について<中間取りまとめ>」、それから、別紙として現状整理と参考資料集が2点、参考資料集1として、すみません、参考資料1として、「今後のナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策について(概要)」、ポンチ絵の1枚の資料になります。
  よろしくお願いします。

【川合主査】
  きょうは議事次第にありますように、3つ議題がありますが、議題の1「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の最新動向について」に入ります。
  はじめに、内閣府より、戦略的イノベーション創造プログラム、SIPの状況について御報告いただきますので、お願いいたします。

【守屋政策企画調査官】
  内閣府の守屋でございます。きょうはよろしくお願いいたします。
  それでは、お手元の資料1「SIPの最新動向」を使いまして、簡単に現状を御説明いたします。
  表紙をおくりいただきまして、スライドの2番目ですけれども、これはもうこれまでにも何度も御説明しておりますが、SIPは予算編成に関する活動と、それから、ImPACTと呼ばれる革新的研究開発推進プログラムと併せて、総合科学技術・イノベーション会議が3本柱と位置付けている重要な施策となっておりまして、当初500億円の予算でスタートしております。このうち、3割ほどは医療関係に行っておりますので、約350億ほどがこれから御説明するテーマに割り当てられているということでございます。
  どういうスケジュールでこれまで来たかということで、スライドの3にございますように、4月から8月にかけて、各テーマそれぞれが公募を行いまして、その対象の案件を絞り込んできたということで、9月から10月にかけて、相次いで各テーマごとにそれぞれの管理法人から採択案件を公開、公表してきております。
  その後、若干の予算の追加配分とありますが、これは飽くまでも当初配分された予算の中で、一部留保分を改めて配分したという意味ですので、500億円に追加という意味ではございませんが、そういう一部柔軟な対応もしつつ、12月の全体シンポジウム開催で国民の皆様に向けたアウトリーチ活動などもやりながら、いよいよ実質的な研究開発がスタートし始めたという状況でございます。
  スライドの4番目、こちらが10課題全体を俯瞰したものでございます。前回ここの場で発表させていただいた際には、個別のテーマごとの予算配分はまだ決まっていなかった段階だったかと思いますけれども、現状、ここにありますように、予算配分が決定しております。
  特にこのナノテク・材料関係に関係するテーマといいますと、上段の右側、パワーエレクトロニクス、そちらには22億円の配分ということで、三菱電機、大森PD、プログラムディレクターの指導のもとに、今、着手がされたと。それから、2段目の左側、革新的構造材料、こちらには追加分も含めまして36億円強の金額が配分されております。それから、きょう、資料を用意したものでもう一つ、インフラの維持管理・更新・マネジメント技術ということで、こちらは横浜国大の藤野先生がPDをされておりまして、36億円の予算が配分されております。
  そのほか、多少なりとも材料等に関係するという意味では、エネルギーキャリアですとか、革新的設計生産なども含まれてきますけれども、きょうは幾つか、時間も限られておりますので、パワエレ、それから、構造材料、インフラ維持管理、この3つについて若干の情報提供をさせていただければと思っています。
  続くスライドから2枚、パワエレについての全体像ということで御説明させていただきます。
  SIPといたしましては、ウエハ・エピ材料の開発から、機器開発・回路設計に至る幅広い領域ではありますけれども、様々な産業界の企業の皆さんに採用いただけるような基盤技術を開発するというコンセプトで研究開発内容を構成しています。
  中心となるのは研究開発領域のこれ、1にありますようなSiC、次世代SiCモジュールにデバイス、ウエハに関する開発、それに加えまして、ガリウム・ナイトライドを中心とした研究開発領域、それと、それらを含めてですけれども、使いこなすための回路技術の開発も行います。さらに、研究開発領域4といたしまして、全く新しい、全くといいますか、既にNIMSさんとか基礎的な開発には着手されておりますが、酸化ガリウム、ダイヤモンド等の新規材料ですとか、新しい発想に基づく回路設計等の技術などもやっています。
  経済産業省さんの方でパワエレに関する国プロが走っておりますけれども、こちらは実用化を主眼に置いた企業をメーンプレーヤーとする研究開発体制を取っておりまして、そこと連携しながら、相互に活用できる技術を融通し合って、全体として早く大きな成果を導きたいと思っているところでございます。
  パワエレの研究体制については次のスライドに説明してあります。研究テーマとしては11のテーマを採択しておりまして、それぞれそこに書いてありますようなプレーヤーの皆様に入っていただいているということでございます。大森PDをサポートしていただくサブPDとしては東大の堀先生にお願いをしています。
  続くスライドが革新的構造材料です。
  御存じのように、岸先生、経済産業省のISMA、革新、新構造材料でしたっけ、すみません、非常に名前が近くて難しいですけれども、革新的新構造材料だったかな、の開発という方でもリーダーを務められていらっしゃいますが、こちらSIPのPDとして現在全体の取りまとめに精力的に当たっていただいています。
  経済産業省のISMAの方が出口を鉄道ですとか自動車に置きながら、主に強い材料を作ると、強くて軽い材料を作るというところにフォーカスを当てていますけれども、SIPにつきましては航空機ですとか、あるいは、その先の応用として発電関連の機器を視野に入れた耐熱性にフォーカスを当てた材料開発を進めていただいています。
  対象の材料は樹脂・FRP、セラミックスコーティング、それから、耐熱合金・金属間化合物といった大きな、大きく3つの領域になっておりまして、さらにそれに共通に使われるプラットフォームとしてマテリアルズインテグレーションという研究テーマを設定していらっしゃいます。
  このマテリアルズインテグレーションというのは、ここに書いてありますように、ちょっと字が直っていませんけれども、計算科学を活用したもの、それから、そこに様々な実験結果を蓄積していってデータベース化していくというような発想をされていらっしゃいます。
  いずれはこのマテリアルズインテグレーションのプラットフォームはそのISMAの方にも活用されるようなことを構想されていらっしゃいまして、言ってみれば、国の材料開発の今後の基礎的な、基盤的なプラットフォームになるのではないかというふうに期待しているところです。
  次のページが革新的材料の運営体制ということで、サブPDとして東大の香川先生、それから、東レの田中さんですね。それから、阪大の北岡先生、3名の方にサブPDとしてサポートをいただきながら、それぞれのテーマを進めていくということです。こちらにつきましては、特にマテリアルズインテグレーションの領域については領域長にNIMSの小関先生に着いていただくなど、かなりNIMSの活躍も強く期待されていると考えております。
  最後にインフラの維持管理・更新・マネジメントです。
  この領域は非常に開発内容が広範にわたっております、スライドの9にありますように、左上は構造材料の開発、それから、劣化の機構の解析ですとか補強技術といったもの、それから、右側は、上段右側に書いてありますのは点検・モニタリング・診断技術、それから、右下に下りていきますと、そのインフラの維持管理に関わるロボット技術ですね。さらに、社会との、社会システムとのつなぎという意味でのその情報・通信技術の研究開発というのも重要になるというとこで、これら広範な研究テーマを設定しております。
  さらに、藤野先生の重視されているのがこの中央に書かれているアセットマネジメント技術の研究開発ということで、こういう開発した技術を実際の社会において点検をしながら、それを更に災害時ですとかに対応したシステムとして回していく、それを更に点検ですとか維持管理を一つの事業として地方公共団体の中に埋め込んでいくというような、そういうところまで発想されていらっしゃいます。
  次のスライドに推進の全体の、今回採用した案件のテーマですか、と、それから、それぞれの登場人物、プレーヤーの皆さんが示されております。テーマも広範であるがゆえに、このテーマに関しては同じSIPの中で「レジリエントな防災・減災機能の強化」というテーマ、あるいは、「自動走行システム」といったテーマとも密接に関わるということで、このテーマに関しては特にSIP間の連携も非常に重要ということで位置付けられています。
  研究テーマとしては、詳細は省きますが、44の課題が今回採択されたというふうに聞いています。アセットマネジメント技術に関しましては地方自治体ですとか民間との連携も非常に重要になるということで、かなり社会実装に向けた活動もこのテーマでは重視されるのではないかというふうに考えています。
  このインフラに関しての推進体制は、サブPDといたしまして、東大の浅間先生、鹿島建設の坂本様、三菱電機、田中様、清水建設の若原様と、かなり民間の方の御協力にも負うところが大きいというふうに考えています。
  以上が、ちょっと簡単ではございますが、特に材料関係、ナノテク関係の強いところの案件の御紹介をさせていただきました。
  最後に、冒頭スケジュールでも簡単に触れましたけれども、12月4日にSIP、10テーマ全体のシンポジウムを内閣府主催で開催することにしています。これは公開のイベントでございまして、数百人入るスペースを用意して、一般国民の皆様に広くお話を聞いていただきたいというふうに思っています。
  きょうは席上の皆様にはこの当日のパンフレットと、それから、簡単なSIPのカタログのようなものを御用意していますが、傍聴の皆様にも持って帰っていただけるように、出入口の近くに置いてありますので、もし御興味あれば、お持ちいただければと思います。
  PDの先生方に10分程度で御説明していただくほか、テーマを決めて、ファシリテーターの方を交えたセッションなども用意しておりまして、できるだけライブ感のあるものにしようと、今、事務局、準備しておりますので、是非御参集いただければと思います。
  私からの説明は以上です。ありがとうございました。

【川合主査】
  どうもありがとうございました。
  それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問などありましたら、お願いします。では、どうぞ。

【射場委員】
  パワエレはそもそもSiCとガリナイがあって、以前はいろんなフェーズ間のプロジェクトがあちこちにあるというのが内閣府でも議論になっていたと思うんですけど、今回このSIPでそれらが全部一枚岩になったと思っていいんですか。

【守屋政策企画調査官】
  私どもとしてはそう考えています。大きく経産省のプロジェクトと内閣府のプロジェクトとはありますけれども、先ほど申し上げましたように、内閣府の方でいろいろな企業の方に共通で使っていただけるような共通的な技術を集約して、ここに集中して今回推進しているというふうに思っていますので、そういう意味では、大森PDが全体を見渡せる環境は用意したと。ここから先が非常に重要になるとは思うんですけれども、無駄のないように、重複も排除しながら、最大の成果を早く出すために、大森PD以下一丸となってやるという、そういう心づもりでおります。

【射場委員】
  一方では、革新的新構造材料は航空機と自動車とで大きく分かれていますよね、SIPとISMAで。これはもう別々に並行してやっていくのか、何かこの7ページの図によると、このインフォマティクスの辺りは共通基盤のような気もするんですけど、両方連携してやっていくのか、どっちなんでしょうか。

【守屋政策企画調査官】
  恐らく当面の研究開発は並行して別々に進んでくと思います。私たちがいろんな場で同じそういう趣旨の質問を受けたときには、基本的にどちらのプロジェクトも岸先生にリードいただいているということで、そこの間の重複ですとか非効率な部分は最小化されるというふうに思っています。
  一方で、このマテリアルズインテグレーションというところでは、岸先生御自身が、将来的には強くて軽い構造材料を目指しているそのISMAの方にも活用したいというふうに思っていらっしゃって、そのマテリアルズインテグレーションの中で作っていく仕組みについてはちょっと前広にといいますかね、広く両方に活用できるようなものを想定した取組をされている、されるというふうに聞いています。

【射場委員】
  何か従来の成功事例を見ると、航空機に使われた先進的な材料を自動車産業が使わせていただくというようなスキームが多かったように思うんで、またその逆もあってもいいと思うので、両方の連携で推進いただければと思います。

【守屋政策企画調査官】
  そうですね。先日、岸先生がガバリングボードの中でも御説明されていたんですけども、例えば航空機の方で、今回のSIPの方で開発するようなセラミックスコーティングの技術などは、場合によっては自動車のエンジン周りに使える可能性もありますし、そこは相互に、出口を限定した発想ではなくて、開発されたものは広く応用できるような発想でこれから取り組むとおっしゃっていました。

【射場委員】
  ありがとうございます。

【川合主査】
  ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【田中委員】
  今回は総合科学技術・イノベーション会議ですか、ここが実際に独立して予算を配分して進めるという新しい試みを始められたわけですが、私が一番心配しているのは今後の人材育成なんですよね。これだけ大きな国の投資をして、それに応えられるだけの基本的な人材がそろっているのか。
  いろいろ、これは日本だけでなくて、OECDその他のデータでもみんなよく分かっていることですけれども、日本の人材というのはどちらかというと今、危機的ですよね。いろいろな意味でグローバリゼーションに対応するような教育システムにはなっていないし、また、日本の内向きとかいうような問題もいろいろあるわけで、そういった中で、こういうプロジェクトを成功させるためには、同時に、内閣府として何か手を打つおつもりがあるかどうか。あるいは、内閣府以外のところと連携をして、人材育成の新しい手を、あるいは、戦略を練るというような、そういうような具体的な動きがあるのかどうかと。大変私、心配をしております。
  そのことについて、何かございましたら、教えていただきたいと思います。

【守屋政策企画調査官】
  非常に難しい御質問なんですけど。ちょっとレイヤを分けてお話しすると、SIPにつきましては、例えばパワエレの大森PDはこのパワエレ周辺の研究者ですとか技術者の方が今非常にある意味少なくて、日本としては弱くなっている、あるいは、もっと強化すべきだという意識が強くて、SIPというプロジェクトを進めていく中で、いろいろな形でワークショップですとか、あるいは、アウトリーチ活動等をやりながら、この領域の研究者を増やす仕組みを作るべく、今いろいろなことを構想されております。
  恐らく、岸先生をはじめ、各PDの皆さんはそういう意識を持って、それぞれのプログラムの運営に際してはいろいろな多様なプレーヤーを集めるような、アカデミア、民間含めて、そういう仕組みを作っていきたいというふうに思われているというふうに思います。
  それから、もう一つレイヤを上げて考えていく、その全体としての人材の強化につきましては、ちょっとここではやや言い訳的になりますが、これから第5期の基本計画を検討していく中で、幹部の議論なども聞いていますと、その部分をどういうふうに新しい方針の中に織り込むかというのをかなり集中的に議論を始めている流れもございまして、皆様の御意見も頂きながら、あるいは、御提言等も頂きながら、是非そういうところに反映させていただきたいというふうに考えています。

【川合主査】
  ほかにいかがでしょうか。
  このSIPで構造材料というのを取り上げられていて、材料の観点からいうと、機能材料、構造材料、構造材料が非常に市場も今後大きいし、重要だという意味で選ばれたんだと。構造材料の中でも、航空機は高温材料ですよね。それから、自動車の方は軽くて強いということで、そこはカバーしていると。
  もう一つすごく重要なのでインフラというのを、インフラのための材料開発とあるんですけど、ここでは一応インフラ管理のところの一部としてされているということで、まず、その3つを総合的に見ているというのは守屋さんあたりがじっと見ているんじゃないかと期待していますけど、そこは共通する点もあるんで、お願いします。
  それから、もう一つ、NIMSや文科省でもこれからインフラの方は少し計画を作ったりしてますよね。そういう意味では、そこら辺もマテリアルズインテグレーションとも併せてうまい体制が組んでいけると、非常に強くなるんじゃないかなと思います。ちょっとコメントですが。

【守屋政策企画調査官】
  ありがとうございます。

【川合主査】
  どうぞ。

【松下委員】
  すいません、ここでよりも、内閣府の方でお伺いした方がいいような気もするのですが、先ほどの田中委員の御質問に関してですけれども、SIPは課題解決を優先する方向性だと理解していたんですね。つまり、人材育成のために広げてしまうと、産業の方が嫌がるのではないかというふうに思っていて、人材育成はImPACTの方でするんだというふうに勝手に思っていたのですが、その辺はどうなっているのか、ちょっと御教授いただければと思うのですが。
  つまり、SIPを始めるに当たって、産業の方が技術を余り公開したくないであろうと。それにすごく配慮したシステムを作ったような気がするんですが、その辺、今どうなっていらっしゃるんでしょうか。

【守屋政策企画調査官】
  ありがとうございます。SIPに関しては、確かに実用化、事業化というのをできるだけ5年間の中で実現するというのが最大の課題です。ただ、それには、それに向けて、知財関連に関してもいろいろと中でも議論して、オープンにできることはその中でオープンして、もともと国の100%の委託研究ですので、企業の中で全部取り込まれてしまっては、100%委託研究の意味がないわけで、とはいえ、企業のモチベーションを下げないためには、隠すところは隠しながら、とはいえ、共有できることはできるだけ共有するような形で知財戦略の中に折り込みながら進めようとしています。
  研究者に関しては、PDの先生方のそれぞれのお考えにもよりますが、できるだけ広くそういうアカデミアの人材ですとか企業の人材を集めて、一緒に共同研究をやるような、そういう機会を提供することで、少しでも増やしたい、人材を増やしたいというふうな、そういう思いは感じられるところです。

【松下委員】
  ありがとうございます。

【川合主査】
  それでは、次の議題に移りたいと思います。議題の2、オープンイノベーション拠点の体制・運営の仕組み構築について、現状報告です。
  NIMSからオープンイノベーションの拠点構築に係る現状について、海外との比較も含めて御報告いただきますが、今まで2回ほど議論もありましたし、それから、総合討論でもまた三島委員も随分、大学との関係でいろいろ言っていましたけど、今回はまたちょっと違った視点でということで、よろしくお願いします。

【室町理事】
  NIMSの室町でございます。今お話にありましたように、この件に関してはもう既に2回、私の方からこの場でお話をしております。
  きょうは、これ、繰り返しても仕方がありませんので、特に企業等との連携ですね、オープンイノベーションの非常に重要なメンバーとして、当然、企業があるわけですが、そことの連携をどう進めようとしているのかと、そういうお話を中心に御説明したいと思います。
  ページをめくっていただきます。そうは言いましても、今までの話を少しおさらい的に、3、4、5ページを使って簡単に総括しておきたいと思います。
  まず、物質・材料研究機構、NIMSのこれから役割でございますけれども、研究開発法人として、そのイノベーションハブの中心になるような、そういう役割を果たしなさいと、こういう国からの要請でございます。自分のところだけで研究しているんじゃなくて、オールジャパンの研究を支援、構築していくような、そういう役割を果たしなさいということだと思います。
  その役割としては大きく二つにあります。一つは先端研究のハブということで、これは研究をオールジャパンで進めるような、そういうハブ機能を果たす。特に物質・材料研究機構、文科省の傘下で基礎基盤を重視するという立場から、シーズ創成、育成というその基盤を強化し、この結果を出口側の研究機関に引き渡していくと、そういう役割を果たすようなハブ機能ということでございます。
  一方で、研究基盤のハブということで、特に共用、設備の共用等、こういうものを充実することで、オールジャパンの研究体制を強化すると、こういう機能もあります。一方で、それに、設備のみならず、最近、インフォマティクスということで、情報も含めてその基盤整備をするということで、インフォマティクス関連のプラットフォーム等の形成も考えております。
  4ページに行っていただきます。3期の中期計画、現在の状況、組織状況が書いてあります。これが4期でどうなるかということなんですが、3期はこの3つの研究部門、及び、一つのセンターに研究者を全部本籍を置きまして、外側にできた拠点、これがハブ拠点ですけれども、そこに併任をするようなある種の二重構造を取っておりますが、4期ではこの外側の拠点というのを内部構造に全て入れまして、NIMSというのはこういう拠点が集まって相互に連携したものがNIMSであると、そういう形の組織設計を今考えております。また、マテリアルズ・インフォマティクスに関してはそれ専用のプラットフォームを作って対応しようというふうに考えております。
  5ページ目に行っていただきます。大きな組織の概要でございます。機能性材料に関しては機能性材料研究拠点、それから、エネルギー関連材料研究拠点、磁性・スピントロニクス材料センターという形で拠点を3つ、それから、構造材料に関しては拠点を一つ、こういうものをベースで支えるものとしてMANAですね。これはナノテクの国際的な拠点と。さらに、その下に、その共通の研究技術のようなものを開発するところとして先端基盤技術研究所、それから、装置等の運用等の技術展開・共用部門というようなものを考えております。
  以上のようなことをしていく上で、企業との連携というのは非常に大事になってくると、当然のことでございます。世界を見たときに、参考となる拠点としては、御承知のとおり、このMINATECH、IMEC、ALBANYというのがあるわけでして、それぞれにいろんな特徴を持ったところがあります。例えばIMECですと、垂直連携型の研究プロジェクトというようなものが非常に特徴的ですし、ALBANYですとどちらかというと最先端の装置を非常に充実させて、それを企業に貸し出すというようなことが一つの特徴になっているかと思います。
  ページをめくっていただきまして、7ページに行きます。正直、日本はこの分野では非常に出遅れてしまいました。しかし、この3つの成功例を基に、2009年につくばにこういう、これに相当するような拠点を作ろうということで、つくばイノベーションアリーナというものが設置されました。
  この中で、つくばにはたくさんの公的機関があります。この公的機関の情報、装置、人材を活用し、それから、同じ場所に様々なオールジャパンの研究者が集まることによるシナジー効果、それから、基礎から応用までの一貫して、しかも、人材育成もセットでやろうと、こういうチャレンジングな試みであったわけです。
  その中で、私どもはナノグリーンという分野を担当いたしまして、ナノグリーン分野の企業連携を進めるために、NIMSオープンイノベーションセンター、NOICというものを立ち上げました。これが2012年です。今まで2年間、非常に正直、苦労してまいりました。この結果をこれから生かしていきたいという状況でございます。
  8ページ目に行っていただきます。IMEC、ALBANY、MINATECHというのはいろんな特徴はあるんですが、基本は個別解決型の2者間の関係を集合したものと、これが基本だと思います。その上に、例えば垂直連携型のグループができているというようなこともあると思います。でも、結局、その2者間の個別課題という、個別課題解決型というのが基本にあると、そういう拠点だと考えております。
  一方で、TIA-nanoはそういう個別課題とともに、共通課題・協業解決型というのを含むと。特に我々のやっているNOICに関してはもう共通課題・協業解決型一本、同業のこの者をも一緒に共通の課題に対して一緒にやっていただくと、それを基本と据えております。そういう意味では、どちらかというと難易度が高いような試みをしているわけです。
  9ページに行っていただきます。我々は今まで企業との様々な連携を進めてまいりました。2者間の共同研究、サンプル貸与、技術指導、ライセンス、ライセンシング、装置利用、これらに関してはほぼできないことはないような状況になっております。
  一方で、この新しく始めたNOICはいわゆる会員制のオープンイノベーションということで、これは今、日々、いろんなことを変えつつ、試行錯誤しながら、いろんなノウハウを蓄積して、少し落ち着いてきたかなという、そういう状況になっております。
  10ページ目に行っていただきます。現状です。企業会員12社、それから、アカデミア会員として産総研、筑波大、広島大、それから、IMECにも入っていただきまして、こういう中で二つのオープンラボを今設けておりまして、そこで、通常なかなか完全にオープンというのは難しいんですけど、できるだけオープン、企業間でもオープンな雰囲気を作るような、そういう運営に心掛けております。
  次に行っていただきます。企業との連携をする際にどうしても必要なのは特許に関する基本的な戦略でございます。この旧方針というふうに書いてありまして、旧来型は、私どもが基本特許を持っておりましても、周辺の特許を戦略的に取るということは余りしておりませんで、ややもすると、このように周辺特許にどこかほかの会社が独占されてしまうような特許が幾つかあるということで、権利関係が非常に複雑になって、なかなか、基本特許を持っているにもかかわらず、ライセンスができないというふうなことが多々起こります。
  それに対して、この右側のように、やっぱり基本特許に、プラス、その周辺特許も基本的には押さえるというような形、こういう特許戦略が可能であるような拠点作りをしないといけないというふうに考えております。
  12ページに行っていただきます。こういうNOICの試み、そのノウハウを是非ほかの拠点にも生かしていきたいということで、10月1日に作られた、発足いたしました構造材料研究拠点の中にTOPASという、そういう仕組みを今、構築しつつあります。これは企業との、それから、大学等との連携をした、NOICに相当するようなオープンイノベーションの組織ということでございます。
  それから、その後に引き続きまして、マテリアルズ・インフォマティクス、あるいは、機能性構造材料拠点に関しても、これに相当するようなオープンな協働、連携組織を作っていきたいというふうに思っております。
  13ページに行きます。先ほど、SIPとの連携でNIMSも役割を果たしなさいというお話がありました。まさにその構造材料研究拠点というのはそのための一つの受け皿の役割を果たそうと考えておりまして、この構造材料研究拠点、オールジャパンの研究者が集まります。最先端の装置、持っています。企業、大学との密接な協働が可能です。それから、人材育成の機能も持ちます。これによって、社会インフラ、産業インフラ、輸送機器と、こういうものに係る構造材料を開発していきたいと思っております。
  その14ページに行っていただきます。TOPASがどこに位置しているかということなんですが、この拠点の中にラボという、これはNIMSの内部組織でございまして、このラボに100名のNIMSのパーマネントの職員が所属しております。このラボから一番最適な人をこのTOPASの方に帰属させまして、そこに大学、企業、研究機関等から集まっていただいた研究者と一緒に、クラスターという組織を作ります。このクラスターがある種のオープンラボと、この中ではオープンに一緒に共同の、共通の課題に対して共同作業をしていただくと。
  現在考えておりますのが、先ほど、SIPの御説明がありました、その受け皿としてのクラスターを作ろうと。インフラ構造材料、それから、革新的構造材料と、こういうものに関して、特にインフラに関しては話がかなり進んでおります。
  次のページに行っていただきます。先ほどお話しししました特許の戦略等ということで、それを少し、どういうスキームになるかというお話をこの図を使ってしたいと思います。構造材料つくばオープンプラザ、TOPASと呼んでおりますが、これがオープンプラザでございます。ここに私どもからも、オールジャパンからも集まっていただいて、ここで研究成果を、研究を行うと。ここでやられた特許は全てNIMSに帰属します。NIMSの一人持ち主という形になります。
  一方で、その基本特許を社会実装していくためには、どうしてもその個別の企業との2者間の連携が必要になります。これがこのクローズの関係ということです、ここで周辺特許を固めるような形で。こういうことによりまして、特許ポートフォリオをちゃんと確立するというのが大事だと思います。
  それから、そのオープンプラザの中で基本特許が得られた場合、その基本特許に関しては、ここに参画している企業の貢献度に応じまして、無償ないしは有償の実施権を与えるというような形を取ろうと考えております。
  16ページ、今後の話ですけれども、まずはその今のオープンプラザの中にクラスターを立ち上げていかなければいけないということで、インフラクラスターに関しては近々ここに一緒に来て協働していただける会員の募集を始めようと考えております。
  この以外にも、様々なクラスターをこの中で立ち上げていかなければいけないということで、その準備作業をしております。NOICの中でいろいろなノウハウを蓄積したということは言えますけれども、今後も特にいろんな柔軟な対応が必要だろうと思いますので、このTOPASを運営しつつ、走りながら、いろんなことを体制を整えていくと、そういう状況になっております。
  以上でございます。

【川合主査】
  どうもありがとうございました。
  それでは、何か御質問など。後で時間を取って議論の中には入れますが、今の御説明に対しての御質問はありますでしょうか。どうぞ。

【田中委員】
  イノベーションハブ拠点として、ここは代表的なものを上げられているんですが、日本以外のアジアの拠点のことはちょっと書いておられないんですが、それはどういうふうに考えておられる、位置付けとしてはですね。

【室町理事】
  例えば中国とかは非常に大きなものができつつあって、正直言って、それは非常に脅威だと思っております。ですから、それはこの3つの世界の拠点に多分続くものになるだろうとは思っております。
  そういう意味でも、私、日本として、やはりそれに匹敵するような、それに負けないような拠点作りというのは絶対にしないといけないと、そういう判断をしております。

【川合主査】
  ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【射場委員】
  幾つかオープンイノベーションの御説明があったんですけれども、私はオープンイノベーションというのはクローズな研究テーマが常にあって、初めて機能するかなと思っていて、例えば拠点の中でそのオープンとクローズの境界線のマネジメントを一体どうやってやっていくかというようなところの基本的な考え方がおありでしたら、お聞かせ願いたいです。

【室町理事】
  基本的には非常に共通性が高くて、プレコンペティティブで、例えば電顕を使って何か観察する技術とか、こういうようなものは一緒にやればいいだろうと思うんですね。
  その上で、しかし、それを個別の材料に適用していくようなスキームに入りますと、これはなかなか一緒に、オープンで一緒にということは難しいと。その段階に行くと、どうしてもある種のクローズ、クローズな関係に行かざるを得ないと。
  ただ、いろんな意味で一緒にできることはかなりあるなと。これはNOICの経験からも、一緒にできることはあると。そういう一緒にやることで明らかにベネフィットはあるんだというふうに私は今考えております。

【射場委員】
  民間サイドもその業界によって事情がいろいろ違っていて、例えば電池の場合で例を挙げると、自動車産業は皆さん、日の丸電池でいいと思っているんですよね、オープンで開発する。だけど、電池メーカーはそれでは困ると。電池メーカーは日の丸材料でいいと思っているんですよね。だけど、材料メーカーはそれでは困るという。そう階層的に事情が違うんで、その業界ごとの相手によってマネジメントを変えるみたいなことも必要になってくるのかなと思います。よろしくお願いします。

【室町理事】
  おっしゃるとおりでして、多分この構造材料のTOPASにおいては比較的オープンの部分は増えるだろうと思っております。一方で、機能性材料のところに行きますと、これはオープンの部分がずっと減ってきて、2者間に近いようなものをやっぱりベースにしないといけないだろうなと思っております。
  ただ、そのクローズなところ、言葉は悪いんだけど、タコつぼみたいなところで研究していただいても結構なんですが、真ん中にやっぱりオープンの場所を作って、時々そこに出てきていただくと。例えば教育とか、あるいは、装置の共用とか、そういうことは一緒にできるだろうと。
  何か、おっしゃったように、やっぱり場合、場合に応じてそこの境界線を動かしていかないと、うまくいかないだろうなとは思っております。

【射場委員】
  ありがとうございます。

【川合主査】
  ほか、いかがですか。どうぞ。

【小池委員】
  オープンイノベーションに向けてのTOPASの今、お聞かせいただいて、非常にすばらしいと思うんですけども、結局そういう外の方が入ってきて一緒にやるというときの知財の扱い方が、今のお話ですと、やはりそれはNIMS側というか、それで単独で取るんだと。そういうことになると、今度新しくそこに参画しようとする人が限定されてくるというか、そこでやった発明なりが全てある意味クローズドというイメージがどうしても出てきてしまう。
  それに対して何か、もちろん権利は持つんだけれども、その来た、新しく入ってきたところ、場合によっては企業関係の方もおられるかもしれない。そういう中で、共願の特許を取っていくような仕組み、そういったことについては何か御意見がございましたら、お願いします。

【室町理事】
  実は独禁法が関係をいたしまして、仮に企業と一緒に共願の特許を取って、その特許の許諾、実施許諾を何かコントロールするということが仮に行われると、どうも独禁法に触れる可能性があるようなのですね。
  そこを避けるために、基本的には特許の帰属はNIMSという形にいたしまして、ただし、その実施権に関しては貢献があったところには無償の実施権を差し上げると。それから、その貢献に応じて有償の場合もあり得るというようなところを一つの着地点と今考えておるわけです。
  その基本特許というか、オープンの場で得られた特許に関してはそのとおりなんですが、その後、今度は実際にそれを社会実装するためにはもっと個別の共同、研究をしなければいけない。そこはクローズでやって、そこは共有の特許になると。今考えておるスキームはそういうところでございます。

【曽根委員】
  ちょっと補足しますと、新しく来た、そこに参加する企業ということですよね。基本的にここに参加する企業に対してはバックグラウンド特許というか、それまでに持っていたNIMSの特許は有償ですけど実施権を与えると。したがって、後から来た人も、それまでにもともとNIMSが持っていた特許、それから、オープンイノベーションで一緒に開発されて生まれた特許、それはバックグラウンド特許ということで、新しく来た人には有償で使っていただくと。じゃないと、そこへ何のために参加して一緒に共同研究するのか分かんなくなりますので。
  それから、あと、あれですよね、射場さんのおっしゃったオープン、クローズ、そこは各社としっかりネゴって、どこを境界線にするかリファインして、オープンの場でやって、それを今度クローズの方へ展開しようとするときには、ちょうどその中間、グレーのところに新しい仕組みを設けて、関連2者間共同研究に。ちょっとその中間の共同研究の形態を作って、確かにオープンとクローズのところは非常に設計が難しいところなんです。
  でも、そこは、やっていくと、IMECとだんだん方針が似てくるなという印象を持っていますけどね、両方詰めてくると。我々は、室町理事が言ったように、協業を中心としてやっていくというスタンスは崩しませんけど。

【射場委員】
  何か平たく言うと、クローズでやっている共同研究の中でできるだけ共通基盤になるようなオープン領域、オープン技術を引き出していくというふうなアプローチがいいのかなと思いますけどね。

【曽根委員】
  おっしゃるとおりですね。だから、そこのところをネゴってと。企業の方はなるべくクローズでやりたい。だけど、同じ会費を使ったら、なるべくその会費で元を取りたいと。そこでプラスマイナスの力学が働いて、適当なところで、じゃあ、ここはオープンのところへこの研究は出しますよと、そういうふうに設計されていくと。そういう仕組みですね。

【栗原委員】
  私も今のところで、やはり特許、とても難しいと思うんですけども、例えばこれはオープンイノベーションのこのオープンラボというのは企業が課題を持ってもし来れば、かなり企業の実際にノウハウ的なものもほんとは、だけど、そこまでできないのかもしれませんけど、実際に作業をする人が誰なのかとかいうようなことでも、意外と特許の扱いは難しくなると思うんですけど、この今書いて、11ページに書いておれるような姿がうまく動くためには、NIMSの研究者の方々がかなりリーダー的に知財を生み出していって、その周辺に課題解決とかそういう人が集まってこないと、なかなか難しいのじゃないかなと。
  だから、全員が同じように貢献していくんだと、やっぱりどうしても企業さんの方の知財を囲みたいという意欲が強くなるんじゃないかなと思うんですよね。

【室町理事】
  もうおっしゃるとおりで、このオープンラボはNIMSが非常に強くて、そういう分野じゃないと成立しないと思います。それは今現実にそうなっておりまして、やっぱりここのラボ長が非常にいろんな意味で強い立場にいると、そういったいろんなコーディネーションをしていけると、そういうベースがNIMSにあるという部分について、このクラスターを、オープンラボを作っていくと、そういうことでございます。

【川合主査】
  この材料分野のオープンイノベーション、総合的な話でもありますので、一応今、NIMSの御説明はここにして、議題3に入って、その後の総合討論で、また今の話、それから、前回は大学との関係というのがありましたけど、恐らく大学の方からも御意見があると思うので、またそこでしたいと思います。
  それでは、議事の3、「今後のナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策について」で、前回に続きまして、この推進方策についての検討を行おうと思います。
  今までの議論をさせていただきましたので、現時点の案について御説明をいただきたいと思いますが、多分、長野参事官からもお話が出ると思いますけど、一応これが一応最後のというか、まとめ的な議論になると思いますので、御説明を聞かれて、それから、全体的な観点で是非コメントを頂ければと思います。よろしくお願いします。

【長野参事官】
  それでは、資料3に基づきまして説明を申し上げます。この資料3の方の構成としまして、資料3がこれまで先生方に御議論いただいたことの、中間的なと書いてあります、まとめという本文になります。
  それから、その次の資料、別紙3-1となっていますけれども、これはたしか夏頃、9月の回ですか、そのときにお出しさせていただいた、前回、前期のナノ・材委員会での検討まとめからの重点について明記したものと、それから、最近のものとして、今年、「科学技術イノベーション総合戦略2014」で関係の部分をピックアップしたものというものを現状整理したものが別紙3-1です。
  それから、別紙3-2としては、これらの議論をしていく上で、これまで委員会にお出ししたものを中心に、基本資料となるようなもの、参考になるようなものとして資料集をまとめさせていただいております。
  それから、その後ろの紙に1枚紙、横紙になっていますけれども、これは参考資料1としていますが、これは資料3でこれでお求めいただく内容を先んじてですけれども、概要にまとめますとこういうものになるのではないかということで、参考資料1としてまとめております。
  本日はこの資料3-1を中心に、最終的な取りまとめに向けまして御議論いただきたいと思っております。
  まず、その構成としましては、前回までの委員会までは論点案としまして、各委員からの御意見を基に、箇条書き風になっておりました。これを最終的な報告書のような形でまとめていくために、文章化しております。これが大きな変更点です。
  それから、構成としましては、1枚目の目次にありますように、ナノテク・材料をめぐる現状認識と、2番目にその推進の考え方、基本的な考え方、3番目に推進体制と方策、各研究機関における推進体制と方策という、この構成は変えておりません。
  大きく変えておりますのが、前回の委員会で人材の問題について相当御意見がございましたので、2.の(5)のところに人材の育成・確保ということで一つ項目を新しく付け加えさせていただいたというのが構成上の変更点で、それ以外の構成は変えてございません。
  内容につきましては2ページ目以降になります。

【川合主査】
  皆さん、分かりますか。資料3、資料3です。

【長野参事官】
  失礼しました、資料3の2ページ目になります。
  まず、最初に、現状認識の(1)ですけれども、ナノテク・材料が果たす役割として、これは基本的な中身の部分は変えてございませんが、全体を構造化させるために文章化しております。
  かいつまみますと、いろんな社会的課題の解決に資する鍵ということで、大きな期待を背負う国家技術、国家基盤技術になっているということ、それから、我が国の基幹産業を支える要ということで、高い国際競争力を有していると。また、広範で多様な研究領域、応用分野を支える基盤ということで、その横串的な性格ということから、異分野融合、技術融合により、不連続なイノベーションをもたらす鍵として、科学技術の発展に向けた新たな可能性を切り開き、先導する役割も担っているということ、これが1点目です。
  それから、最近の動きとして、様々、シェールガス革命の進展、安全保障問題、再生医療への期待といった社会的課題が多様化する中で、分野横断的な基盤技術としてこれから新たな課題の解決に資するツールとしての役割も期待されているということ、それから、Internet of Thingsといった経済社会の新たな潮流というのも踏まえた革新が期待されるということが2点目です。
  それから、3点目として、これまでの基本計画での位置付けですけれども、第2期、第3期においては重点推進分野として位置付けられておりました。第4期では、社会的課題の解決に向けた基盤、研究開発の基盤として支えてきました。ただ、明確な位置付けということは不明瞭でした。
  それから、今年のイノベーション総合戦略2014ではナノテクノロジーが分野横断的技術として重要な役割を果たす旨、明記されております。第5期においてもこの位置付けについて明確にした上で、一層の強化を図ることが求められるということで書いております。
  それから、(2)の各国の戦略・動向ですけれども、これも基本的には大きく中身としては変えてございません。新興国の台頭により、世界が多極化し、研究開発競争が激化すると。そういった中で、各国の戦略、動向というのは以下のとおりということで、欧米では重点的投資が過去十数年にわたり継続的に行われていると。先ほどもありましたように、ALBANY、MINATECHといった大規模な集中拠点化を、官とともに産学が牽引しているという状況、中国、韓国をはじめとしたアジアではナノテクノロジーの国家的なイニシアチブということで、政府投資、劇的に増大して、人材、技術も台頭しています。アメリカでは基礎研究から実用化に至る期間を半分に短縮するということで、「マテリアル・ゲノム・イニシアティブ」を開始しております。
  それから、次のページになりますけれども、各国とも、先端共用施設のネットワーク化というのも継続的に推進しています。欧米、アジアともに国家標準戦略、EHS、ELSIといった対策・体制構築というのを、研究開発の初期段階から官主導で推進しているということでまとめてみました。
  それから、次のページ、4ページでございます。これから推進に向けた基本的考え方ですけれども、基礎的、基盤的研究しての振興、広範な分野の先端を切り開くためにナノテク・材料というのは必須であるということで、その広がりを意識した研究振興方策を取るべきであると。
  その中で、3つですけれども、アジア各国の追い上げといった研究開発競争が激化する中でやっていくために、新たな指導原理に基づく材料開発により、世界をリードし続けることが重要であると。
  2点目、セレンディピティを生み出しやすい環境を全体として整えていくことが重要と。また、ハイリスクの研究を根気強く支援することも効果的であるといった点。
  3点目として、横断的、横串的という特徴を生かして、異分野融合研究を触発することが重要であると。それから、若手研究者のフレキシブルな発想、能力を十分に活用することが肝要であるという点が3点目です。
  それから、二つ目の柱としまして、社会的課題の解決に資する研究開発の推進ということで、ナノテク・材料はこれまでも当然のことながら社会的課題の解決に資する基盤技術ということで重要視されてきました。推進されてもきました。ただ、近年、その技術の高度化、科学技術の高度化ということ、それから、その高度化によって広範な分野での普遍的な活用ということがなされるようになったということで、これまでにない応用先を開拓して、様々な未解決の社会的課題に革新的なアプローチを提供し、解決に導くことが期待されるということで、例えばということで例を挙げております。
  一つ目の例としては、将来の省エネ化、エネルギー源の多様化を推進するという目的で革新的な熱電変換材料、圧電変換材料、触媒といった一層の高効率なエネルギー変換を可能とする材料の研究の推進、それから、二つ目の例として、課題、先進国、高齢化という問題の中で、非侵襲治療、高精度診断などの高付加価値な医療が広く普及した社会の実現ということに向けて、ナノテクである微細加工技術、分子合成技術といった技術を駆使して、医療分野のニーズを踏まえたナノテク・材料の研究開発を強力に推進するということを挙げております。
  加えて、これは前回の委員会で御議論がありましたけれども、昔から認識されていつつも解決されていない課題・命題というものがございますので、そういったものへの対応ということで、近年の進展したナノテク・材料科学技術で解決に導くことが可能なものであると、ものもあるという認識に立った研究の推進がなされるべきであるということでまとめてみてございます。
  それから、3番目の柱として、我が国の強みを伸ばす研究開発の推進戦略でございますけれども、我が国の高い国際競争力を有するナノテク・材料の強みを最大限発揮するためとして、戦略的に研究開発を推進すべきと、そのための基本的な考え方をまとめてみてございます。
  当然のことながら、個別の研究テーマに応じた推進方策というのが更なる詳細な検討が必要であるということも明記しております。機能性材料については、その材料の革新的な材料の創成ということで、機能に着目しながら、材料横断的に研究を推進することが重要。構造材料については老朽化対策と、特にインフラですけれども、インフラ、社会インフラの老朽化対策のための材料と創成というのに加えまして、様々な技術のパッケージ化されたインフラ、維持管理マネジメントシステムの構築への期待と、そういったことを念頭に置いた総合的なアプローチが必要である。
  3番目に、材料データについて、材料データ群の計算機解析といった形で、新たなデータ駆動型の材料設計手法を確立して、革新的機能を有する材料の開発を加速することが重要と。その際、これは委員からの意見を踏まえて書き加えておりますけれども、先行的に取組が進んでいる欧米に比べて、先端的な、我が国では先端的な研究成果のデータが存在する一方で、実用的なデータベースの構築といった点、また、フォーマットを意識したデータ取得といった点、こういった取組が十分でない点というのを認識すべきであると。併せて、豊富な計算機資源により、普遍化された高度なシミュレーションというものも積極的に活用することが肝要であるということを追加しております。
  それから、希少元素をめぐる動向を見極めつつ、希少元素を全く用いないことを至上主義とせず、あらゆる元素の無限の組合せの中から、未知なる革新的機能を探索した上で、汎用元素への代替を図るといった新たな政策アプローチというのも検討されるべきであるというのを記述しました。
  それから、4番目の柱として、「基礎から応用」、「応用から基礎へ」の循環ということで、循環研究が行われるということが課題の解決とサイエンスの発展の双方にとって重要であるということで、ここで挙げていますのが、その循環研究を推進する人材育成ということで、グローバルな環境、大学内の学部の壁を取り払うといった形で異分野が融合資料環境によってそういったクリエイティブな能力を養う必要があるということ。
  それから、2点目として、国際競争力強化のための戦略作りを産学官総掛かりで実施するということ、また、プロジェクトについても初期段階から産学官がともに議論・協働を行うということが重要ということを書きました。
  それから、フォワードキャスティング、それから、バックキャスティングといったものをすり合わせてプロジェクト立案、研究チーム編成をするということが鍵であるということを記述してございます。
  次のページ、6ページ目ですけれども、特にバックキャスティングについてはということで、これ、前回の委員会での議論を基に追記しています。デバイスやシステムを理解する研究者層が必須であり、産業界のみならず、学術界においてもこういった人材を育成することが必要であると。その際、論文によらない適切な研究評価がなされることが肝要であるという点。それから、最後に、国際標準化戦略、EHS、ELSI、国際連携といった取組について、研究開発の初期段階から並行して推進することが重要であるとしております。
  それから、最後、5番目の柱の人材育成・確保、ここは新しく付け加えております。分野横断的な特徴を生かして、一つの専門分野で論文を執筆する能力と、これが十分に備わっているということに加えまして、広範な分野の基礎的素養を身に着け、俯瞰的視野を持った上で研究を推進できる人材を育成することが重要であるということ。それから、産業競争力の要として、ナノテク・材料、これに関わる若手研究者に意欲的に産業界のインターンシップですとか海外での研究活動の経験を持たせながら、産学官にわたりグローバルに活躍できるリーダーを育成することが重要であると。
  それから、国際化の中で、特に今、院では海外からの留学生も増えているという状況で、その修了後も我が国の研究開発力・産業競争力の持続的な向上につながっていくと、そういったことを促すような仕組みが必要であるということで追記してございます。
  それから、最後の3番目の柱の推進体制と方策についてですけれども、まず、大学関係ですが、大学のポテンシャルを最大限に発揮できるような体制の構築ということで、分野、組織を超えた新たな知への挑戦ということのために、様々な形で部局や学協会の壁を打破した教育研究環境を構築することが重要であるという点。
  それから、産業界の課題や戦略について、学術界も交えて議論するようなラウンドテーブルの設定、また、学術界から産業界への人材流動が比較的少数である現状を踏まえた双方向の人材交流の活性化といったことによって、新たな価値を創造する研究推進体制の構築が必要であるということ。
  3番目、これは追記しております。日本学術会議におけるロードマップや大型研究計画に係る提言といったことを通じて、学術界からの発信を得て、産学官における議論へつなげるということが重要であるということ。
  4番目の丸も追記しております。海外での研究経験のある学生、研究者の育成や海外からの留学生の卒業・修了後の我が国での活躍を促進する仕組みの構築といったことにより、グローバルな視点での人材育成・確保の取組が必要であるということを記述しております。
  それから、2番目に、研究開発法人を核としてイノベーションハブの構築ということで、NIMSが有するポテンシャルを産学官で最大限活用するということの期待をもとに、NIMSをイノベーションハブとしてオールジャパン体制によって科学的に深掘りし、課題の解決に向けた技術シーズを絶えず生み出すことが重要であるということで、具体のものとして、下に箇条書きにしております。
  最初のポツですけれども、オープンイノベーションによる基礎研究及び人材育成を徹底して、クローズドな段階のシーズに持っていけるような技術シーズを創出するということ。それから、その際には国内外の優秀な人材を引き付けると、個々人の専門分野を超えた異分野融合・技術融合が推進されるような、産学官、いずれにも魅力のあるものとすることが重要ということ。
  それから、2ポツ目として、我が国における各地の中核的大学、共同研究拠点と、そういった研究ポテンシャルをネットワーク化することによって、オールジャパン体制でのハブの機能を確立して、世界に伍して産学官が協働する拠点となることが重要。
  3ポツ目として、仕組みとしてはクロスアポイントメント制度、年俸制といった制度的な整備を早急に進めて、研究者の配置にそういったクロスアポイントメントを積極的に活用することが必要という点。
  それから、次のポツでは、実際に進める研究としては構造材料研究、機能性材料、また、データ駆動型の材料設計手法の確立といったことを推進して、先端的研究を展開するということ。それから、基盤としては人材育成、先端研究設備の共用、材料データの情報集約・発信といった我が国の研究基盤としての機能も整備することが重要であるということでまとめてみております。
  最後になりますけれども、関係機関の総力を挙げた推進体制の構築ということで、グローバル社会の中で国内外においてネットワーク型で研究を推進することが重要といったことで、そのとき、国内で見ると、地方大学の有するオンリーワン技術との連携といったことなど、ポテンシャルが高い機関同士の連携や互いの機関の強みを補完し合う連携が期待されると。
  二つ目として、ナノテクプラットフォームの取組というのは非常に地方を含めた日本各地で強固な研究基盤を形成する非常に重要な取組ということで改めて記述しております。
  参考に掲げておりますのは様々なほかの共用のフレームワークといったものを積極的に活用して、研究資金を効果的・効率的に活用した研究開発が実施されることが期待されるということ。
  それから、3番目に、産学官の力を結集して、育成、人材育成をする取組ということや、その人材交流の活性化ということが必要であると。その際、卓越した研究者の育成ということに加えて、ここを追加、追記しておりますが、システムや産業応用までを視野に入れつつ、組織的・戦略的に研究プロジェクトを統括できるプログラムマネジャーの育成に向けた人材育成方策というのも検討されるべきであるということで書いてみてございます。
  それから、次に、ここも追記してございますが、学術界の先端的な研究成果の社会実装に向けた挑戦をするフェーズということを考えたときには、学術界の枠組みにとどまることなく、ベンチャー企業の枠組みなどを積極的に活用することが重要であると。そのための意識の醸成ですとか環境整備が必要であるということ。
  それから、最後になりますけれども、本日御説明がありましたSIPが主導するといった形で、府省連携の取組が進んでおりますけれども、各省が所管する施策についても、府省の枠を超えて有機的な連携が可能となるような仕組み作りが期待されるということで、現時点での取りまとめの案としてまとめてみてございます。
  御議論、よろしくお願いいたします。

【川合主査】
  この後、総合討論はありますが、今の説明に対しての直接的なまず御質問があれば、是非お願いします。どうぞ。

【岡野委員】
  こういう総合的な拠点を作ってイノベーションを創出していくような活動という価値がどういうところにあるのかというのはよくまとめられていると思うんですが、人材の育成とか確保という、ここを、後ろの部分ではあるんですが、リーダーを養成していくというようなことが書いてありますが、ここのポイントは今までの人材育成を超えた新しいタイプの研究者とかリーダーの養成が行くんだという、そこがちょっと、もうちょっと、後ろには書いてあるんですが、ちょっとこの養成の中で、学生、若い研究者を養成していくという言い方にとどまっているんですが、もう少し、この国に今欠けているのは総合的にやっぱり個々の技術を統合して、それをイノベーションのところまで持っていくような、そういうリーダーが欠けているわけですね。
  これは縦型の学問社会の中で、それぞれのタコつぼといいますか、それぞれの領域のリーダーは作ってきたんですが、それを産業につなげていくとか、新産業を創出していくとか、もうイノベーションまで持ち込んでいくというような、そういうタイプの人を作るためには、環境を整備して、その中でオン・ザ・ジョブ・トレーニングといいますか、環境の中で作り上げていかないとできないことを今まさにこの中でやろうとしているようなポイントをもうちょっと、この6ページの(5)番のところに書いていただいた方がいいんじゃないかなと。
  後ろに書いてあるので、読んでいくとあれなんですが、ちょっと総合的に見て、今までの学問の縦型の仕組みから、こういうイノベーションを作り出していくような大型のプロジェクトが出てくるとか、そういうことの価値がもうちょっとそういう中で見えてくると、単なる産業創出という議論じゃなくて、この国にやっぱり新しい力を出す人材、あるいは、新技術創出にとどまらないで、それを社会的価値にするのにどうするかという、そういうチャレンジなということを少し入れていただけるといいなと思うんですが。

【川合主査】
  岡野先生、何か文章をちょこっと書かれているみたいなので、後、それを送るといいかと。

【長野参事官】
  是非先生の文章を頂ければと。

【川合主査】
  ほかに直接的な今の御説明に対する質問をという、思いますが。
  それも含めて、もう移っちゃってよろしいですかね。
  それでは、総合討論ということで、最初のSIPのようなそういうシステムの話、それから、特に研究開発法人に今後なっていくということで、きょうはそのオープンイノベーションの一つの拠点としてNIMSからの提案がありましたが、そこら辺も、例えば大学との役割なんか、そういうところも良いのかどうか。それから、今、長野参事官から御説明があったような、各項目で第5期の基本計画に対して、ナノテク・材料科学技術の推進方策として十分書かれているかどうか、何か足りない点があるかどうか、若しくは、今の岡野先生のあったように、書かれているけど、もうちょっと強調してきちんと書いた方がいいんじゃないか、そういった点を是非、きょうは中間取りまとめとしては最後のディスカッションですので、是非皆さん、これから40分ですね、40分時間がありますので、いろいろ御意見を頂ければと思います。どなたでも。どうぞ。

【三島委員】
  今の岡野委員の御発言は非常に私も重要だと思います。それで、私、前回のこの委員会をどうしても欠席しましたので、その後、この人材の育成・確保が(5)で2.に入ったのは非常に良かったなというふうに思っておりますが、更に強調すべきとすれば、今、岡野委員がおっしゃったポイントだと思います。
  それで、基本的にNIMSの今の体制作りというのはこれは大変大きな体制作りをしていただいてすばらしいと思いますが、やはり人材が、大学での学生、若手研究者を含めた人材育成の部分、あるいは、大学発のものをどういうふうにその仕組みの中に入れていくかというところにまだ工夫が要るのかなという感じがいたします。
  それで、やはり、産学、NIMSと産業界とのつながりの部分というのはこういう形になるんだろうなと。そして、その中で、射場委員がおっしゃったように、オープンのものとクローズのものをどういうふうな仕組みで育てていくのかなというようなことになろうと思いますが、そのもう一つ前のシーズのところで大学側がどう関わるかというところになると、これはやはり大学でもある意味同じようなことを考えて、今、若手の研究者を中心に、年齢の高い方は頭が固いということもありますけれども、若手の研究者の方を中心に、伸び盛りの人にいろんなことをディスカッションさせて、その中から何か新しいものが生めるような大学発のそういった新しいシーズを作っていこうということを一生懸命これから努力をしていこうというところでございます。
  それで、そういったようなもの、仕組みを今の例えばNIMSの中で若手研究者、大学の若手研究者から出てきたものをどうやって取り込んでいくかという仕組みを組み込むにはどうしたらいいか、これ、具体的には私にはまだ提案ありませんけれども、それから、逆に言うと、大学の中で学生も含めて科学技術が社会を変えることができるんだというような、自分の専門を持つことと、それから、科学技術を使って人間の社会をどう変えていくかということに対する興味を持たせる教育を学生のときからしていかなきゃいけない。そのためには、縦割りの基礎は大事かもしれませんけれども、基礎力を付けながら視野を広げる教育を大学の中できちっとしていきながら、大学発の若手研究者を育てないと、そういうある程度の道のりがあるなというふうに思います。
  その辺のところの流れを、大学での人材育成と、例えばこのNIMSとTOPASのようなものの中に、構造材料で言えばですけれども、その若手の大学発のものがどう乗っていって、しかも、そのプラットフォームに入ることで大学の人間が育っていくというんですかね。そういうふうになるといいなというふうに思います。
  その辺のところが多分、岡野委員がおっしゃったような、もう少しそういう意味の人材育成のところをしっかりこの中で、日本の中でイノベーションを生むにはどういう人材育成が必要だということをもうちょっと書いてもいいのかなというふうには思いました。
  ちょっとまとまりのない意見になりましたけれども、ここで止めておきます。

【川合主査】
  参事官、いかがですか。

【長野参事官】
  そうですね、6ページのその全体の人材育成・確保のところでの考え方に加えていくということと、もう一つは、具体の体制のところで、今ちょっと大学のポテンシャルの部分と研究開発のイノベーションハブがそれぞれ何となくばらばらな感じになっているので、そこのつながりの部分を少し、もっと少し強調するのかなというふうに思いました。

【川合主査】
  7ページでイノベーションハブでNIMSのことが随分たくさん書かれているんですが、その割にアカデミアの大学の記述が非常に少なくて、8ページのところで地方大学のオンリーワン技術とか書いてあるんですけど、7帝大も結構力持ってますので、是非。やっぱりそこ、基礎的なところの底力はナノテク・材料、非常に重要ですので、書かれるといいかなと。
  ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【伊丹委員】
  今、座長がおっしゃられた大学のことの記述が少ないなというのが、この会議、もう何年目になるんでしょうか、5年目で、随分だんだん減ってきているんですね。それは大学に対する社会全体の評価の実は面白い現れかとも思いますが、やっぱりもうちょっと大学の持っている実力のようなことをちゃんと評価した上でやらないと、こういうまとめですから、全体の俯瞰ですから、いけないんじゃないかというふうに、全く賛成です。
  今回のこの資料で私、一番関心しましたのは、セレンディピティを生み出しやすい環境と。私の博士の学生が今、セレンディピティの構造研究をやっているんですけれど、なぜトランジスタがベル研で生まれたかとか、そんなことをやっているんですが、このセレンディピティが生み出されやすい環境というのはすばらしい言葉で、是非これをもっと強調していただきたい。
  その観点で、先ほどNIMSのオープンイノベーションの試みを考えてみますと、あれだけ知財をNIMSが持つぞ、持つぞとやっちゃった途端に、みんな集まらなくなると。だから、NIMSは大家さんに徹したらどうかと。イノベーション、セレンディピティが置きやすい環境整備をやりますと、成果はどうぞクローズドでやってくださいという、それぐらいの思い切った方針でないと、せっかくのNIMSに人が集まらない。そういうふうにすると、国の税金を使って生まれた成果が国に帰属せんのはなぜだという一方で議論が出ることを承知の上で、しかし、それぐらい割り切ったことをやらないと、オープンイノベーションというのは本当に難しいんですよ。成功例なんて本当にない。その難しいことにわざわざ挑戦するんだったら、それぐらい思い切った方針を持たなきゃいけないんじゃないかと。それが第2点です。
  第3点は、人材の確保のところで6ページに書いてあることは一般論として物すごく誰でも納得すると思うんですが、一体誰がやるんだと、それを、人材の育成を。それについてもう少し、ナノテクの分野というような極めて幅の広い基礎的な分野を利用した社会につながるイノベーションの人材育成というのはどういうことかということをもうちょっと考えて書いた方がいいように思います。
  現行の大学の普通の研究大学院の制度の中で、そういう人を育てるような科目を設けたらいいという程度の対策では絶対に間に合わない。一旦社会へ出られて、企業の現場で研究をなさった方が社会人再教育のような形で優秀な方が集まられるような場をどうやって国が用意するか。そういうようなタイプのことでないと、この種の人材は私は育たないと思います。
  私はたまたま社会科学の一橋大学にずっといて、マネジメントの研究をやっていて、今、理科大でMOTみたいなことをやっていますので、そこへ来る学生たちを見ていますと、つくづくそれを感じます。普通の25歳、28歳程度の人たちにこういうことを教えたって無駄です。むしろ、それは平均年齢35歳とか、そのぐらいの人たちがもう一回戻ってくれば、どれぐらい大きくしてやるかということが一番肝要なことのように思います。
  以上です。

【川合主査】
  今、幾つかの点がありましたが、2番目のオープンイノベーションの仕組み的なところ、そこ、ちょっと関係ありましたので、御意見が、栗原委員も大体同じようなことを言ってたと思うので。

【室町理事】
  NIMSが全く無関係に、NIMSで何か研究をやって、そのNIMSが関係なく研究をやったところで、特許を全部どうぞという、一般的にはそれはなかなかちょっと難しいところはあるんですが、ただ、ある種のそういう考え方のシステムを持っておるんです。
  例えば装置みたいなものについてはかなりリーズナブルなお金を出していただいて使ってください、その結果はもう自分のところに持ち帰っていただいて、特許化していただいて結構ですと。場合によってはそういう試み、そういう仕組みも持っておりますし、それから、先ほど申し上げましたように、必ずしも特許自体が欲しいというよりは実施権が欲しいんだということが往々にしてあるんですね。
  それから、特許を、個別の特許をばらばらばらと取っていきますと、なかなか難しいことが起こるということも先ほど説明したとおりです。一定の面として特許を押さえないと、なかなかその実施が難しいという点もあります。そういうことをいろいろ考慮して、先ほど申し上げたようなスキームになっているということでございます。
  ただ、一番最初に申し上げましたとおり、これは場面、場面に応じて、できるだけ柔軟に対応したいというふうに思っています。

【川合主査】
  何か国の議論としては、今までバイドール的に結構個々にしていたら、防衛特許とか死蔵する例が多くて、何か有効に使われていなかったと。それで、思い切って今度は逆に国の方で肝心なのは持ってということでは、の流れでは理解、みんなしているみたいなんですが、特に中小やベンチャーからすると、特許を個々に持つことが活力の源泉なので、物すごく困っているという話も聞きますね。
  ですから、そこら辺は、やはり伊丹委員が言うように、この活力という意味だと思い切ったことも必要だと思うんで、うまく場合、場合でやっていただく必要かあるかなと思います。
  それから、3番目の教育の、社会人教育も含めて、具体的な本気で戻ってくるようなところというの、それも、もし伊丹委員、うまい文章がありましたら、せっかくこの研究開発。

【伊丹委員】
  いや、私が作りますと不適切な文章になりそうなんで、是非、意図はくんでいただいて、どうぞお任せします。

【川合主査】
  じゃあ、ちょっと勢いがあり過ぎるので、少しずつ詰めて。
  じゃあ、どうぞ。

【栗原委員】
  今の、私、伊丹委員のおっしゃったこと、非常に共感するんですけども、企業の方はこういうもう少しインターディシプリナリーな環境に来て研究をされて、それぞれ企業さんに何年かいると、それぞれの会社の何となくカラーの付いた研究者、技術者というふうになってくるのが、いろいろな会社のカラーの人が集まる所で大分勉強したりとか、少し幅広くなったり、あるいは、全然違う経験をお互いに教え合ったりというのがリーダーの育成に非常に役立つのではないかと。
  私は昔、エラートの研究をやっていたときに、その領域は個人参加の人が非常に少なくて、ほとんどの方が企業から出向していて、もう20年も前になりますけど、今、研究所長や会社の役員をされているような方がすごく多くて、そのときによかったというのが、お互いに少しずつ教え合ったところとか、個性的な方が来て、このぐらい変わった人がいるとか、私は個人参加として……、ちょっとこれ、長くなってすいません、雑談的なんですが、いや、こんなにそれぞれの会社では教育をされて、それぞれのある意味では型に入れた人たちを育成しているんだなと、すごくある意味、思いました。
  それで、何となく同じ会社から来られた方は何となく似ているんですよね。だから、そういう場があると非常に、NIMSのようなところで会社から来られた方々が研究する場があるというのは非常に再教育としてはいいんじゃないかというふうに思います。
  それだけに限らず、いろいろなプロジェクトをやっている中で、そういう場というのはできてくるんじゃないかと思いますけど。

【川合主査】
  どうぞ。

【松下委員】
  すいません、各先生方の補足になるんですけれども、先日、IBMかどこかの試算で、50年後にある産業は今ない産業が7割を占めるというふうに試算が出ておりました。つまり、これからの50年間は特許戦争になるというふうに考えてもいいと思うんですね。
  そうしますと、こちらの中に、今、知財に関連するお話ですが、4番目の最後に国際標準化戦略というふうなものがあるだけのように、ちょっと、私、国語力がなくて分かってないのかもしれないんですけれども、そこに書かれるよりも、むしろ(3)に上に、知財に関しては、「我が国の強みを伸ばす研究開発の推進戦略」のところに、知財ポートフォリオの重要性を書かれた方がよろしいのではないかなというふうに認識いたしました。
  以上です。

【川合主査】
  すいません、何ページのどこら辺に書いてあるんですか。

【松下委員】
  失礼いたしました。こちら、資料3の、今、6ページの上ポツに、「応用研究への展開や実用化の上では欠かせない国際標準化戦略をはじめ」というところでちょっとだけ書かれているんですが、これはむしろ、我が国の強みを伸ばしていかないといけないと思いますので。

【川合主査】
  5ページのところですね。

【松下委員】
  はい。5ページの(3)の方に上げられてはいかがかなというふうに思いました。以上です。

【川合主査】
  では、検討してみましょう。
  ほかに。どうぞ。

【福島委員】
  きょうはちょっと知財の話が少し多めに出たので一言、企業サイドから述べさせていただきますと、私ども、ずっと前からいろんな国プロとかに入ってきて、知財を取る、特許を出す方に関しては割合と定義をはっきりさせてきていただいているかなと思います。ただ、実際には特許というのはお金をそれで得たり、ほかの会社の制限をするというのが目的で、権利行使という方が実は非常に大事。
  それは多分、業界によって様々なんですけれども、私どもエレクトロニクス業界で実際にはちょっと特殊な権利行使の仕方をしていて、個々の特許に対してそれを権利を争うということはほとんどいたしません。例えばIBMと東芝の間でしたら、何年かに一遍、包括的な特許力というのを基にしてお金を多少やり取りすると。サムスンとの間もそう。実際には、例えばフラッシュメモリなんて1兆円以上の売上げがあるのに対して、数百億というようなあれなので、特許的研勢力というのがどれだけあるかというのは一つは疑問だということ。
  ましてや、例えばNIMSと一緒にやらせていただいて、無償で頂く実施権が自社の特許力になるかというと、多分それは幾ばくかの価値もないかなというふうに思います。
  そうなりますと、多分、NIMSが、先ほど御説明いただいたスキームの中では、NIMSがお持ちになっている特許の保有権をどう権利行使されるかと。例えばそれは参加している会社に対しては優遇するという格好になるんだけど、じゃあ、そこに外国企業が来たら、入っている場合にはどうするか。
  そこで日本の産業競争力を高めるためにどのようにされるかとかという議論は多分余りしたことがなくて、これからオープンイノベーション、今オープンと申し上げたのは私ども会社から言う、外でやってる研究という意味のオープンですけれども、そういうときの権利行使の仕方というのは非常に重要であって、これから少しそういうところも含めていろいろ、企業も交えていろいろ研究させていただきたいなというふうに思っています。
  そこはちょっと実際にどういうふうにやって、多分業界によっても違うので、業界によっても、それから、デバイスとテレビはまた違うとか、いろいろごちゃごちゃしていますので、是非いろいろ御研究をいただきたいなというふうに思っています。

【川合主査】
  どうぞ、もし何かあったら。

【室町理事】
  後ほど曽根さんからちょっと補足していただければいいと思うんですけど。まさにおっしゃったように、取った特許の実施に関して一定のコントロールをしたいと。そのためには、NIMSが単独で持っているということが一定の条件として必要になるということだろうと思います。
  おっしゃるように、その実際に取った特許をどうやって運用していくかということに関しては非常に重要な問題だという意識は我々、あります。おっしゃるような方向にこれから検討を進めていきたいと思っております。

【福島委員】
  是非、企業側も交えて、方向性を議論させていただきたいなと、大変有り難いと。

【曽根委員】
  NIMSのそのオープンイノベーションのところは非常に企業の意見が強くて、企業連絡会というのをやって、そこでいろんな仕組みをそこで構築していく。これまでもたくさんの意見を頂いて、どんどん仕組みを変えていっているところであります。
  それから、あと、知財は、ここで生まれた知財をずっとNIMSが持ち続けるというのは資金的にも無理なんで、どっかで外へ出していく。その仕組みもあります。第一優先でその人が、NIMSがもう持ち切れない、つまり、もう不要と判断した特許を次々と企業の方に回していく、所有を移していく、そういう仕組みも持っています。
  それから、あと、やはり、こういう国研が持っている強みというのはありますよね、特許。いろんなとこでばさばさして、今、日本の中でこのたくさんの特許をむしろプール化してどっかで、そこにアクセスすればその技術がもう使えるようになる、そういう仕組みも、NIMSは今やっていないけど、日本としてはこれから真剣に考えていかないといけないと思います。
  それから、あと、企業さんに渡すと、その特許はどうなるのか分からないんですよね。すぐ企業というのはもう数年で事業を変えちゃったりしますから、使わなくなっちゃうと。そのときに、また戻していただければいいんですけど、もうそれはその企業さんが事業をやめると、その特許は死んでしまうと。あるいは、海外の企業に転売していってしまうと。そういう意味では、国がしっかり重要な特許はキープして、世の中へライセンスしていく、そういうのも重要なんじゃないのかなというふうに思います。

【川合主査】
  あと、いかがでしょうか、この中間取りまとめのいろんな項目で。まだ大林委員、発言してないので、是非。

【大林委員】
  同じ話になっちゃうんで恐縮なんですけれども、今、システムとかデバイスの方々の特許に対する考え方と、材料メーカーの特許の考え方は全く違いましてね。材料の場合はもう差止め請求になっちゃって、せっかく作った整備が使えないとか、その材料、やめてしまえという争いになるし、それから、何ていうか、今、代理でおっしゃってました、要するに包括で特許のクロスライセンスをやって、それで相殺するなんていうシステムはないんですよ。もう生きるか死ぬかの戦いになるし。
  それから、逆に今度は、今おっしゃる権利行使ですけど、戦争をしなくちゃいけないんですよ。その相手の特許を、あるいは、自分のところの特許で相手の行為を止めるという闘いですよね。それから、逆に、亜流の技術をやられないための闘いとかね。そういう特許の債権者じゃないとできないじゃないですか。
  それ、もしNIMSさんがお持ちになって、それを私どもがライセンスをもらって、実、ものを作ったと。似たようなものが隣の国から出てきたと。そのときに、NIMSさんが戦争してくれるんですかという話になっちゃうんですよ、ほんとの話はね。
  だから、一つ、別に私、ある世界でシステム、トータル、材料も含めてシステムトータルのプロジェクトってやったことあって、そのときにはそこに参画した企業がそれぞれに貢献度に応じて特許を保有するんだけれど、プール制にして、お互いに、何ていうか、ライセンス料を、プール制にしてね。それ、貢献度に対してライセンス料を分配するとかいうシステムをやって、うまくいった例もあるんで。
  そういう特許プール制というのは一つの考え方で、全てを、何ていうか、NIMSさんと御一緒にやったら、NIMSさんのパテントですよと言われたら、伊丹先生が言われるように、行きたくないと。いろんなことが起こるのでとか、いろんなことが起こるので、特許の考え方についてはいま少し御議論をいただければというふうに思うんですね。

【曽根委員】
  NIMSは公的機関なので、もうそれが最優先でいろんな特許のことについても考えていますし、それから、多分ここは多分ほかの機関と全然違うと思うんですけど、NIMSは訴訟はおそれず、がんがん闘っています、もう、そういったものに関しては海外に対しても。

【大林委員】
  いや、だから……。まあ、いいや。

【室町理事】
  1点だけ確認していただきたいんですが、2者間で、クローズのところでやる特許については当然共有特許になります。今、NIMSだけのになるというのはオープンで複数のところが関係して、それについてはNIMSが管理させてくださいと、そういうお話です。ですから、ほとんどの特許は企業との2者間で持っているという形に現在もなっております。

【大林委員】
  一つの技術体系を考えたときに、そこの非常にベーシックな部分、根幹になるような、誰もがみんなベースにはそれを使わないと、その技術体系の中に入り込めないという、そのパテントについては、おっしゃられるとおり、どっかが一元管理されて、それをライセンスを頂いてやるというのはあり得るし、それから、もしそこのパテントを作るときに大きな貢献度があったら、やはりそれに対してそれなりのリターンが欲しいなということはありますね。
  それから、それに対して、今度は派生特許で分野が限られたところに応用していくという、そういうサテライトのパテントについては、それはやはり、何ていうか、それをおやりになった個別企業さんに権利をある程度持たせていただくような、そういうようなシステムだと思うんですね。

【室町理事】
  繰り返しですけど、その部分に対してはもう2者間で共有特許を持つと。そのほんとのベースのところだけ、ハンドルしやすいようにNIMSが持つと、そういう考え方でございます。

【川合主査】
  大事な点ではありますけど、どうもそこに集中していますので。表現としてはあれですね、知財に関して、日本の産業活力が増すような、そういう知財システム、それを進めていくことが、構築することが重要だと、そんな文章になりますね。
  全般としてはいかがですか。小林委員。

【小林委員】
  4ページの一番下の……。

【川合主査】
  すいません、何ページですか。

【小林委員】
  4ページです。一番下の3行のところなんですけど、「加えて、昔から認識されていつつも解決されていない課題・命題に対して」という、そこの文章なんですけれども、ナノテクノロジーが解決できるという可能性を持つということで、私が非常に強く認識したのは、前回のこの会議の小池委員が液晶のことについて、ディスプレーなどは少しずつ、何ていうか、解決しなければいけないことを積み重ねて、それでやってきたものが、今、何かある複屈折だか何かの研究によって一気に解決できるかもしれない。それがまさに何かナノテクノロジーなんだというような、そういうようなお話で、非常に、そういうものだったんだという強い認識を持ちました。
  ですから、加えて、それから、可能性があるとの認識に立って研究を推進するとかという辺りは少し弱いんじゃないかと思いますので、ちょっとそういうことを強く打ち出されて、ナノテクノロジーというのはこういうすばらしいものだというようなことが伝わるような文章にされた方がいいかなということをちょっと思いました。
  それから、最後のところ、ちょっとよく分からなかったのは、最後の8ページの終わりから5行目辺りでしょうか。「学術界の枠組みに留まることなくベンチャー企業の枠組み等を積極的に活用する」というのがちょっと飛躍があるといえばあるような気がして、そこのところはもう少しわかりやすく書き直された方がいいかなというふうに思いました。

【川合主査】
  もし、よりいい文章があったら、送っていただいて、また事務局の方でも検討するという。

【長野参事官】
  ここで書きました趣旨としては、前回の委員会でちょっと御議論があった点で、大学でいろんなシーズは出すんだけれども、それを実装、実用化につなげるときに、大学で余り抱え、大学の学術界で論文をどんどん生産していい成果を出していくという世界でやっていくというよりも、いろんなプレーヤーがあると思うんですけど、もう一つのプレーヤーとしてベンチャーというプレーヤーの枠組みを使ってやったらいいんじゃないかと、そのような御議論でしたので、ちょっと舌足らずだったかもしれませんので、工夫したいと思います。

【川合主査】
  ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【守屋政策企画調査官】
  すいません、私の発言はちょっとどういう立場の発言になるか分からないですけども。7ページ以降のイノベーションハブの構築に関して、やや全般的なことなんですけれども、総合戦略の中では、つくばイノベーションアリーナを明示的に示させていただいて、当然、中心拠点はNIMSになりますけれども、世界の第一線級の知をそこに集めて、イノベーションそのものの世界に向けての発信にしたいぐらいの心持ちで書いてきています。
  この7ページ以降を読んでいきますと、オールジャパン体制というのが何度か出されていますし、学生を海外に出すとか、留学生を活用するというところがあるんですけれども、世界の第一線級の研究者をそこに集めて、日本がグローバルなイノベーションの発信地になるというところまではちょっと伝わってきていませんが、これまでのここでの議論の中で、そういう、何ていうんでしょう、志といいますか、目標感での議論はされている、きていらっしゃいますでしょうか。

【川合主査】
  議論自身はしてきていますので、そういう高い志がもうちょっと感じるような文章でということですよね。議論自身は随分そういうのを、今まで、産業界、それから、アカデミアの方からいろんな御意見を頂いて、それから、人が集まるような、そういう話は随分出ています。ただ、それが感じられないというのはよくないので、感じられるような形に。

【守屋政策企画調査官】
  すいません、ちょっと差し出たことを申し上げているかもしれませんが、一応、私ども、総合戦略の中で、是非そういう拠点に成長して、育ってほしいと思っていますし、そこでうまくフェーズが合えば、国としての方向性が示せるかなと、具現化するかなというふうに思い、と感じたものですから。すいません。ありがとうございます。

【川合主査】
  ほかにまた全般的に御意見、守屋さんの方から、いかがですか、何かこれを見て。せっかくいるので。

【守屋政策企画調査官】
  すいません、ありがとうございます。
  一番感じたのは今のような点でございまして、あとは私たちの内閣府の方とうまく文科省さんの方で連携させていただいて、ここに御提言いただいたような内容をうまく、次の総合戦略であったり、そうですね、基本計画であったりという中にどういうふうに織り込ませていただくかを考えていきたいと思います。
  特にこのナノテクの基盤的な技術ですとか分野的に、分野横断的に非常に重要だというのは既に書き込ませていただいているところを、更に充実させたいというふうに思っております。

【川合主査】
  どうぞ。

【長野参事官】
  先ほど、先生方の方、委員の先生方の方からコメントがありました、推進体制、方策の中で、大学のポテンシャルの部分の記述が少しちょっと薄いのではないかと、もう少し書くべきことがあるのではないかといったコメントがございました。
  その中でも、例えばリーダー的な人材の育成について、大学の役割についてといったようなことがございましたけれども、それ以外にも、具体的に更にこういったことをもう少し強調すべきですとか、こういったことを入れるべきといった点、ちょっと頂けると、充実させやすいので、よろしくお願いいたします。

【川合主査】
  すいません、今のに関係する。はい。

【田中委員】
  言うのをやめようかと思っていたんですけれど、今、長野参事官から発言がありましたので、それに関して、ここでも何回かその類似のことを申し上げたんですが、日本人が総合的な、あるいは、俯瞰的な視野を持つというのは、コミュニケーションが下手だとか、いろいろな面から、ここでも議論がありましたけれども、非常に不利なところにあるわけですよね。
  その分だけ、大学では人材育成の立場から仕組みを相当に意識的に工夫して打ち出していかないと、今の状態では同じお金を投入しても効果は上がらなくなってくると。非常に僕は劣化していると思うんですね。
  そこで、どうするかということなんですが、先ほど、伊丹先生が、じゃあ、その改革、誰がやるかということを言われましたけれども、それは当然、国がそういうことを認識してやっていただく、つかさ、つかさでやっていただく、あるいは、方策を打ち出していただくのは大変重要なんですけれど、それではもう間に合わない。これも私は何回かここで申し上げたんですが、やっぱり自主努力でやっていくより仕方ない。アカデミアも政府も自主的にやっていくことが、これ、たくさんあると思うんですよね。
  その中で二つだけ上げたいんですが、一つは、俯瞰的な視野をなぜ皆さんが持てなくなったかということは、国民性の文化を無視して、無視して申し上げますけれど、一つは教養課程ですかね、教養課程をあれをほとんど廃止してしまうようなことにしてしまったわけですね、20年ぐらい前ですか。あれは大変僕は大きな禍根を残すことであったと思います。
  あれ、あれこそが実は教育が社会に対して大きな力を持つ根源のはずなんですね。それはもう古来、何世紀にわたってそのことは強調されているし、今でも強調している、そのことは、ある先生方はそういうことを強調しています。それが第1点。
  それから、もう一つは、工学部の異常増殖です。だから、これはやっぱり社会がそういう技術に対して大きなニーズが出たので、四、五十年前から急激に工学部が大きくなったわけですよね。
  工学というのはいろいろな知識を総合して、それを組み合わせて社会のニーズに応えるべく、最適な知識の組合せで応えていくというのが工学部の実際の仕事になるわけですけど、そのためには何が起こっているか、全体を知らなきゃいかんわけですよね。その意味でも総合的な視野というのは工学部の人たちに特に必要とされるわけです。
  それが重要なんですが、やっぱりそれぞれ、例えば金属は金属、電気は電気、機械は機械で急激にニーズが発達したものですから、専門細分化されて、隣は何をする人ぞということで、全く工学部らしくない人間がどんどん育ってしまった、専門家が育ってしまったわけですね、職人みたいな人が。
  これは、これが今、私、日本の大きな危機の一つの原因になっていて、その異常増殖の間にその仕組みを、工学部の本質的なものを壊さないように仕組みを作っていかなきゃいけなかったんですけど、それができていなかったというのが僕の分析なんです。
  じゃあ、何をやるべきかということですけども、ナノテクノロジーはいろいろるる言われているように、全体が見えなければならない、あるいは、横串的な性格があるわけですから、それに対応するような評価の方法、その他制度も含めて、大学側がいろいろ改造していくと。例えば、例えば具体的に言うと、工学部の改造とかですね。
  単に研究所を作るだけじゃ駄目なんです。それは見ているとよく分かるんです。分析してみるとよく分かるんですが、ちっとも総合的な視野を持つ人が育ってないんですよ。それはやり方があるわけですよね。そのやり方の学び方というのは幾つか欧米には例があるんですが、そういうことが、ナノテクを通して、やはり各アカデミアの分野、特に大学を中心にして努力をしていくというようなことを書いておいたらいかがでしょうかということです。

【川合主査】
  一つの少し文章の例として挙げられた。
  あと、参事官の希望としては、その大学での役割、例えば、非常に基礎的な新しいところというのはやっぱり大学から出てくると思うので、そういうのが活発に出てくるようなそういうシステムを作るとか、そういった大学の役割がもうちょっと具体的に書けるとよいということで、何か関係者の方、もうちょっと。はい。

【三島委員】
  もうまさに田中委員、先生がおっしゃる大学改革っていうのはほんとにそういう意味でもう待ったなしでございまして、今、産業競争力会議のところにもワーキンググループができて、橋本先生がイノベーションを生むための大学の教育がどうあるべきかということをおっしゃっているところでございますので。
  やはり、今、大学のポテンシャルを最大に発揮するというところがあり、人材育成の確保だとか、いろいろ断片的にあるところを、もしかしたらまとめて何か大学における、ここはナノテク・材料ですけれども、いわゆる科学技術の教育の在り方についての大きな見直し、それもかなりスピード感を持ってやらないと、もう間に合わないかもしれないぐらいの危機感を持って、そういうものに取り組む必要性についてはやはり指摘しておくべきじゃないでしょうか。やはり今までのままでは多分駄目だと。
  ただ、当然、大学ですから、ダイバーシティは確保しなきゃいけないので、いわゆる基礎研究であるとか、もうその深掘りも必要ですし、その辺のところは確保しつつも、大学の一つの、特に工学系の役割としては、こういうことに対応して、大学のポテンシャルを上げるための教育システムであるとか、いろんなプログラミングのコースの設定とかいうようなものに対してはかなり大幅な改訂をしなきゃいけない。
  私のところもやっていますけれども、やはり非常にやっぱり変えるというのには抵抗が大きいのもどなたも御承知だと思いますので、そこはもうかなり思い切ってやらないと、もうこのまま行っちゃうと救いようがないということまで言えるのではないかとは私も思っております。

【川合主査】
  今のはうまく入れられそうですか。

【長野参事官】
  大丈夫です。大丈夫です。

【川合主査】
  あと、アカデミア関係の方、もし。松下さん、どうぞ。

【松下委員】
  若輩の意見で恐縮なんですけれども、今回、とにかく産業寄りというか、とにかく日本の危機を救うための計画になってはいると思うんですが、やはり大学の役割としては、産業界の方が困ったときに誰に聞くか、その専門家が大学にいるということが大事だと思うんですね。一方で、この今回はどうしても工業寄り、グローバル寄り、どうしてもT字の横軸が強調されております。
  そこで、もし可能だったらなんですけれども、多分、3の、すいません、資料3の7ページの3.の(1)「大学のポテンシャルを最大限発揮する体制の構築」のところに、基礎研究の重要性も改めてここに書いていただけるといいなと思うんです。つまり、産業寄りの基礎研究というのは、この後、先ほど田中委員がおっしゃいましたような評価に関係するんですが、論文が出ないんですね。論文が出ないので、縮小傾向にどうしてもある。
  今、重要な学科がないという状況が実はあったりするので、そこに対して、ほんの一言書かれていただくと、ちょっと意識が変わるのではないかなと思います。3.の(1)がもし難しければ、3.の(3)のところでもいいので、書いていただければなと思います。
  ちょっと付け足しになってしまうんですけれども、先ほど、知財の重要性を強調しつつ、ちょっと違うことを言って申し訳ないと思うんですが、NIMSさんの場合に、その特許に関係するお仕事をされるのはやっぱり若手の我々だと思うんですが、一方で、NIMSさんというと、我々のイメージでポスドクの任期制のイメージが強いんですね。任期制の方々がこの特許に関係することをなさるのかどうかをちょっとお聞きしたいのですが。

【室町理事】
  当然、研究は任期制のポスドク等が担っている部分があります。そういう方が発明した特許はNIMSに帰属されるという形になります。

【松下委員】
  これ、毎回申し上げしているんでお分かりいただいているとは思うのですが、現在だと、我々は論文がないと職がないというような状況もどうしてもありますので、どうか皆様、若手の評価の際に、論文だけではなくて、そういったものに貢献したということも是非、お偉い方々が多いので、組み込んでいただければなというふうに思います。
  すいません、失礼いたしました。

【川合主査】
  大体時間ではありますが。じゃあ、最後。

【射場委員】
  ちょっと今のところで、1点だけ、こういうアプローチはどうですかというので、このナノ・材室の施策で、拠点型の元素戦略、ありますよね。それを立ち上げるときに、その大学間の壁を取り去るために、いろんな新しい仕組みを試行しましょうということをトライしていると思うんですよ。
  随分、ここもう何年かやってきて、うまくいったこと、いかないこと、出てきていると思うんで、研究の進捗自体は運営統括会議なんかでよくフローアップしているんだけど、そういう仕組み面が今どれぐらいやれていて、やれてないことは何みたいな、現場で聞くといろいろ困りごともあるようなことも意見として出ていますので、ちょっとそういうのを一度見てもらうと、ここに追加することが何か出てくるのか。ちょっと具体的に今この場ですぐ言えないですけど、ちょっと見てみてください。

【川合主査】
  山脇審議官、いかがでしょうか、何か全体的なところで。

【山脇審議官】
  きょうは広範な御議論をいただきまして、ありがとうございます。
  一つの視点は、まず、イノベーションの拠点作りをこのナノテク・材料分野でどうやっていくか、きょうの議論にありました知財の取扱いとか企業の、オープンイノベーション、企業から見たオープンイノベーション、あるいは、クローズド戦略の中でどういう形でやっていけばいいのか、もう少し掘り下げた検討がこれからも必要になるというふうに感じましたので、ちょっといろいろな場面でそこについてのハブ機能、イノベーションハブ機能をどう発揮していくのかについては掘り下げた検討をこれからもやっていきたいというふうに思っています。
  それから、大学は何かアカデミアのお役割についてはもう少ししっかりとこの報告にも書き込みたいと思いますし、今の大学改革の流れの中で、特にナノテク・材料分野もその先導する役割があるということを議論もありましたので、今の流れもちょっと踏まえた形で、それを先導するような役割がここで果たせるならば、しっかりと書いていきたいと思いますし、連動した形で、大学の変わっていくやり方、評価の在り方とか研究の集中とか、あと、連携とか、共同研究拠点でもいろいろなネットワーク化も進められていますので、そういうような部分をしっかりとこの方向性の中で書き込むことも必要かなというふうに思います。
  最後に、人材育成の点は課題はいろいろ多くあって難しいところではあるんですが、今議論が出た若手の研究者の在り方、ポスドクも含めたものと、あと、産業界、社会人との連携を含めた、これはイノベーションハブでも人材育成機能も含めた形、育成というか、人材、幅を広げるか、融合的な研究分野を広めるという意味でも、人材のネットワーク作りも含めた形での重要性ということもあると思うので、そこをうまく、今後の施策にもつなげていきたいと思っていますので、きょうの議論をちゃんと参考にしながら、またちょっといろいろ御相談しながら、具体化を図っていきたいと思っています。

【川合主査】
  それでは、時間になりましたが、きょう、もし時間内に発言し切れなかったり、もうちょっとというのを思い付いた場合は、事務局までメール等で御連絡いただければ、御意見を頂ければ、反映させていただきたいと思います。作業については事務局と主査である私の方で一任させていただいて進めたいと思います。
  それでは、本日はありがとうございました。事務局から、最後に事務連絡をお願いいたします。

【吉元係長】
  ありがとうございました。
  ただいま、主査から御説明がありましたとおり、本日御議論いただいた推進方策については、追加で御意見等ございましたら、一度、一応来週1週間めどとということで、11月19日水曜日まで、事務局まで御連絡ください。また、本日の委員会の議事録については、委員の先生方に御確認の上、文科省ホームページ上に公開させていただきます。
  次回は年明け、1月15日の開催を予定しております。
  以上です。

【川合主査】
  では、どうもありがとうございました。

‐了‐

お問合せ先

ナノテクノロジー・材料企画・機構係

(ナノテクノロジー・材料企画・機構係)