第7期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第8回) 議事録

1.日時

平成26年10月17日(金曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 3F2特別会議室

3.議題

  1. 今後のナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策について
  2. その他

4.議事録

【川合主査】
  それでは、定刻になりましたので、第8回ナノテクノロジー・材料科学技術委員会を開催します。
  本日は、御多忙のところ、お集まりいただき、ありがとうございました。
  本日は、前回に引き続いて、今後のナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策という、重要な議題を含んでいます。各委員におかれましては、積極的に御議論いただければと思います。
  まず事務局より、委員の出欠と配付資料の確認をお願いいたします。

【吉元係長】
  おはようございます。まず、委員の出欠についてでございますが、本日は、五十嵐委員、伊丹委員、岡野委員、長我部委員、北川委員、橋本委員、三島委員が御欠席です。
  次に配付資料の確認でございますが、本日、各委員の先生方から御提出いただいた資料が3点で、「今後のナノテクノロジー・材料科学技術に期待すること」ということで3点ございます。それから、事務局から御説明させていただきます資料が、資料1-2として、「ナノテクノロジー・材料科学技術の今後の推進方策について(論点案)」。それから、先日の10月3日の総合政策特別委員会のほうで配付された資料が3点、参考資料1、2、3としてあります。
  配付資料に欠落等ございましたら、事務局までお知らせください。以上です。

【川合主査】
  どうもありがとうございます。それでは、議事に入りたいと思います。議題の1の「今後のナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策について」です。前回までの委員会での議論を踏まえて、前回は企業の方からお話しいただきましたが、今回は、学会のほうから見て、今後のナノテクノロジー・材料科学技術がどうあるべきか、また、どんな振興施策を取るべきかということを、あらかじめ準備していただいている4名の委員の方から御説明をいただきたいと思います。
  それで、委員の方にお願いなんですけれども、時間が限られていますので、10分の説明、それから5分の質疑、全部終わった後またもう1回総合でありますので、その後に40分ぐらい全体の総合討議をしたいと思います。申しわけありません。9分を経過したらベルが1回鳴ります。10分になりましたら2回ということですので、まず片岡委員。

【片岡委員】
  それでは、始めさせていただきます。手元資料、これ、何かインターネットに公開するとかという話もあったので、お配りしていませんが、もし必要であれば、事務局のほうで必要な委員には後でお配りしてください。
  お話ししたいのは、ナノバイオの世界でして、ナノテクとバイオの融合領域。これは1つはもちろん、ナノテクノロジーを使って生命の神秘を解明する。これが1つですね。
  それから、もう一つは、生体のバイオのナノの機構を見本にして、それにインスパイアされたようなものを合成的に作っていく。これがもう一つの領域。
  それから、3つ目は、バイオというとやっぱり医療との関係がありますので、積極的に医療の分野にナノテクノロジーを展開して、診断治療イノベーションが起こらないかと。
  この3つではないかと思うんですが、きょうは時間限られていますので、どちらかというと、ナノ医療技術ですね。これが一体どうなのかということについてお話をしたいと思います。
  それで、これはやっぱり文部科学省の委員会ですので、10年後どうなっているのという話をしたいと思うんですが、10年後は一体どうなっているかというと、ここに書いてあるように、まずグローバルな医療ニーズは非常に多様化するだろうと。ですから、一言で言ってしまうと、均質で高付加価値な医療。これは先進国だけでなくて、新興国も含めて必ず重要になってくると考えられます。
  均質の医療というのは、地域や設備にとらわれない、誰もがアクセス可能な医療を実現するということですね。それから、高付加価値ということは、つまり、均質だからチープでは困るわけで、付加価値が高くないといけない。それはつまり、効果が高いということですね。ですから、発症前に先制予防する。発症時も、早期診断、低侵襲、高QOL治療を実現する。発症後も、早期に社会復帰が可能になる。
  それから、2番目は、経済合理性が高い。つまり、効果に対して社会的なコスト負担が小さいということが、これは絶対に必要です。
  ところが、現状はどうかというと、医療技術開発は、先進国のニーズへの対応に手いっぱいになっていると。とてもそんな新興国がどうしたとか、そこまでまだ行っていません。それから、最先端の医療技術も非常に大きな課題に直面していまして、簡単に言ってしまうと、アクセスが限定的である。これは再生医療がいい例です。それから、高度な医療設備が必要で、高いと。したがって、参入企業が少ないという問題があります。
  これに対しての技術課題、これは3つ挙げてありますが、やはり1つは、均質・高付加価値医療を実現するには、ナノテクノロジーと材料技術、これに基づく革新技術というものを創出するということが非常に重要だろうと考えられます。
  2と3はもうちょっと社会的な問題で、ナノ医療技術を広く普及・浸透させる社会実装研究であるとか、あるいは多様化する社会ニーズに応えるためのソリューション実証研究とありますが、これはきょうの話題とそれますので、1の技術的なところに焦点を絞ってお話をしたいと思います。
  簡単に言っちゃうとこういうことだろうと。つまり、医療費を削減するという話がありますか、医療費を削減するというと、質が下がるんじゃないかとみんな考えるんですが、これは我々の日本のエコカーを見ればわかるように、エコカーは、燃費がいいですけれども、質は上がっています。ですから、それと同じように、ナノテクを導入することによって、付加価値は上げるけれども、副作用であるとか、入院・通院が長くなるということで全体の医療費を上げないと。一方において、医療産業の収益を上げて、日本から世界にどんどん展開していくという、こういう図式が可能にならないだろうかというのが、極めて楽天的ですが、結論なんですね。
  そうすると、ナノ医療技術として例えばどんなことが考えられるかというと、ここでは6つ挙げてあります。1つは、生体内のバリアを克服するようなナノデバイスを作るということですね。その例えば一番対象になるのはやはりがんだろうと。がんは何で怖いかというと、再発・転移をいたします。そうすると、今、日本で35万人の方ががんで亡くなっていますが、例えば政府は10%死亡率を下げると言っているんですね。そうすると、これ、単純に計算すると、年間3万人から5万人の人を治療しなくてはいけません。100人の人では足りないんです。それから、今、がんの治療の第一選択は、手術、放射線、重粒子線も含みますが、残念ながら、これらは全て転移がんには使えません。転移があったら使えないです。そうすると、転移・再発を抑えない限り絶対にがんの死亡率は下がらない。そうなると、それを克服するようなナノデバイスの開発というのは非常に重要なんじゃないかと。
  それから、脳神経系難病の治療ですね。アルツハイマー。これはブラッドブレインバリア、要するに、血液脳関門があって、これは通れないということで、ほとんど製薬会社はギブアップしています。ですから、これをナノテクの力で何とか克服できないだろうか。
  それから、3番目は、細胞機能の制御。具体的に言うと、例えばナノワクチンですね。ワクチン、もう今、ありますけれども、今のワクチンは生ものですから、半年に1回作らなくていけなくて、みんな捨てています。だけど、これをもうドライパウダー化して備蓄することができれば、パンデミックにも対応できますし、もちろん新興国でも使えるようになるだろうということが考えられます。
  それから、こちらの枠は、医療機器との融合でありまして、例えば医薬と医療機器を融合して低侵襲の治療をしてしまうと。具体的に言うと、これ、ケミカルサージェリーと呼んでいますが、要は、体から切っていくんじゃなくて、体の深部にエネルギーを当てる。それでナノデバイスと組み合わせることによって体の中から治療しちゃうという、そういう仕掛けです。
  それから、やはりこういう病気に関していうと、先制医療、それから、より早く見つけるということが大事ですので、迅速・高精度診断デバイスを、ここに書いてありますような開発をする。
  それで、今、診断はいろいろあるんですが、いろんな診断チップとか、いろんなものが出ているんです。やろうとしているんですが、これはそういうものができると、医療費が削減するというんですが、これは全くのうそだと思います。それはなぜかというと、要するに、今の一番問題は、不確定診断なんですね。あなたひょっとしたらがんかもわからないと。そうすると、びっくりして病院に行って、精密診断を受けていっぱいお金を使います。バイオプシーも受けなきゃいけない。重要なことは、一発確定診断のようにして、一発で確定診断ができるかどうかというのがやはり大きな課題であろうと。それを克服するというのがナノテク・材料に課せられた1つの課題ではないかと考えられます。
  6つ目は再生医療でして、現状の再生医療は、まだブティック医療の段階です。ブティック医療というのは、要するにオーダーメイドですね。これは安くならないです。だけど、本当に国民全体が再生医療の恩恵を受けるには、少なくともオートクチュール化しなくてはいけない。つまり、ピエール・カルダンとか、イヴ・サン=ローランのようにしなくちゃいけないわけですね。そのためには、やはりナノテクノロジーが非常に重要でして、例えば細胞を使うだけでなくて、薬物情報と組み合わせたようなナノデバイスを使うことによって、その両方を組み合わせることによって再生医療の均質化を図っていくと。そういうことで、この一番下に書いてありますような、要するにスマートヘルスケアと書いてありますけれども、これに向かって実現するキーテクノロジーがナノテクノロジー・材料技術じゃないかと考えられます。
  あとは、細かい話で、大分時間が経過しているんじゃないかと思いますが、1つは、これはがんですね。今お話をしましたように、転移、それから、再発、これを数万人規模で治療をする必要がありますから、とてもじゃないですけど、大型の装置ではできません。ですから、それに対しての、体の中まで入っていって治療をするような、昔で言えばミクロの決死圏みたいなようなものを実際に作る必要があるのではないかということです。
  それから、医療機器との融合に関してお話をしますと、こうなるとナノマシーンになっちゃうわけですけれども、これまでの外科治療というのは、入院1カ月、開腹手術で大変です。老人、子供はこれが原因で亡くなってしまうと。それに対して、切らない外科手術、つまり、日帰り治療を実現していくことが重要ではないか。すなわちナノマシーンを投与して、患部に集まったところで、光とか超音波とか中性子線を当てることによって治療をしてしまう。これは1つの例で、これは我々の例なんですけれども、要するに、体の中でもう薬を作っちゃっているんですね。つまり、薬をデリバリーするんじゃなくて、その場で薬を作ってしまうということです。将来的には、カプセル内視鏡と組み合わせて、カプセル内視鏡の光でもって駆動するとか、あるいは、カプセル内視鏡がナノマシーンの発する光を検知するとか、こういうこともできるんじゃないかと思います。
  それから、アルツハイマーに関しても、BBBを本当に突破できるのかと。これは実際もうできている。これは脳の中にどんどん入ってくる。これは脳の中ですけれども、白くなっているのはナノデバイスがどんどん入っていっているんですね。こういうこともできてきていますので、10年後にはこういうものはもっと進歩するだろう。
  それから、ワクチンですね。これも先ほどお話ししましたように、ポイントは、メッセンジャーRNA等を使うことによってドライパウダー化できると。それが非常に重要だろうと思います。
  それから、診断に関しては、これはよく出てきますけれども、重要なことは、単に小さくするだけではなくて、一発確定診断ができるところまで進歩できるかどうかということが重要だろうと。
  ですから、これは言ってみれば、エコカーのようなもので、品質は高く、対象は汎用的、燃費はよくて、アクセスは汎用的と。これは車でいうと、車は、走るところからスタートして、バリアを超える、それから操るですね、レーザー信号でブレーキをコントロールする、自立して自動運転と。だから、そういうふうにナノテク・材料の技術も進歩していって、最終的にはここに書いてあるような4つの価値というのを出していますけれども、難治病の治癒率の向上とか、患者さんの治療負荷の軽減とか、あるいは、創薬プロセスを革新しちゃうと。要するに、リードコンパウンドを作って、そこから薬を作るという、古いゴールドマイニングのような話はもうやめにして、ナノテクノロジーと一体化して創薬をしてしまう。これは核酸医薬なんかがいい例です。それで医療費を抑制しつつ、質を上げていくという。こういうことが10年後にはできるのではないかなというふうに提案をいたします。

【川合主査】
  どうもありがとうございました。それでは、今の御説明に対して、御質問なり、御意見なり、お願いします。いかがでしょうか。
  じゃあ、まず僕から。結局、今までこういうことができなくて、今後やるというときの一番の問題は、材料技術なんですか。どこが一番今までネックでできなかったんですか。

【片岡委員】
  例えば実際にこういうことを書いてありますけれども、体の中に入っていって、こういうことを実現する。例えばマイクロマシーンでこれができるかというと、とてもできないだろうと。ですから、サイズ的にはウイルスサイズまで、要するに極小化していくことが必要ですね。そうなると、やっぱり分子技術ということになってくるんじゃないかと。ですから、材料、分子、そういうものを組み上げることによって、こういったことをひとつ実現できるのではないかなと思います。
  それから、診断チップに関しても、一種の体内病院ですね。つまり、体内にウェアラブルにして、かつ体の中に入れていくということになりますと、やはり従来のような部品を組み上げていくという方法ではなくて、微細加工を極端まで進めていくことによって実現できますから、私の考えでは、これはナノテクノロジー・材料というものが効いてくるのではないかと思っています。

【川合主査】
  分かりました。どうぞ。

【榊委員】
  片岡先生のお話、久しぶりに伺いまして、大変分かりやすくお話しいただいたと思います。ちょっと2つお話ししたいんですが、1つは、基本的に医療費というのは、GNPの10%を超えるとかなり負荷が重くなると。アメリカになると、これはちょっと特別ですけれども、その10%の枠内で質を上げていくということかと思うんですよね。今回本当にコストの話を非常に強調されたのは、非常に大事なことで、そういう側面を外の人にも強調して伝えていくことが大事かなと思ったのが1つですね。
  もう一つは、何年も前から片岡先生がたびたび御指摘になっておられたことは、この分野は、いろいろ知見とか、いろんな類いのことで、日本での研究開発にはいろいろ難しい問題があって、省庁横断でそれを克服していくんだというお話だったんですけれども、ここ数年状況がどれぐらいよくなったのか、あるいは、どれぐらいの問題が残っているのか、その辺についてちょっと教えていただければありがたいです。

【片岡委員】
  状況はいいほうに行っていると思います。1つはもちろん、今度、日本版NIH、AMEDが出来るのも1つの方向ですけれども、やはりPMDA、あるいはそういう機関が、つまり、今までの問題は何かというと、新しい技術が出来て、それが本当に承認の机の上に載っかるまで、前倒しで事が行われていない。ですから、承認申請をしてから、初めてこれは何ですかという話になるわけですけれども、今はかなり審査側も考えも変えてきていて、むしろ最先端の科学技術を積極的に審査官なんかが勉強をして、あるいは委員会を作ってどんどん取り込んでいくと。先にリフレクションペーパーとか、これはガイドラインの前提になるものですけど、それを積極的に作るという、そういう仕組みが出来つつあります。それが出来ないと、机の上に載っけてから、じゃあ、どうしようかという話になるんですが、それはかなり緩和されています。
  それから、もう一つは、グローバル化している。つまり、世界標準になりつつあるということと、それから、10年後は、1枚目のスライドでお見せしましたけど、いわゆる今言っている新興国とか、そういうところの医療ニーズというのが圧倒的に高くなるだろうと。それで、そういう国の方たちは、情報は我々と同じだけ持っています。インターネットがありますから。ですから、均質で、かつ高付加価値で、経済合理性にすぐれた医療に対するデマンドはものすごく高いです。ですから、そういうところは積極的にそういうものをどんどん取り入れていこうとしていますから、そういう観点からいうと、審査に関する、レギュレーションに関する考え方は、やはり経済合理性というものが前面に出てくるに従って、変わっていくのではないかと。
  もちろん、安全性は重要です。ですから、安全性を犠牲にして経済合理性だけを追求するというのは、これは事故につながるので、絶対あってはいけませんけど、逆に言うと、今までは余り経済合理性を考えつつ安全性というのではなくて、その2つはリンクしていなかったんですが、今は、要するに、飛行機と同じになっていくんじゃないかと。つまり、飛行機というのは、旅客機は、安全ですけれども、経済合理性を確実に担保している。だから、それと同じようなことになっていくんじゃないかなと思います。

【榊委員】
  ありがとうございました。

【川合主査】
  どうもありがとうございました。じゃあ、また後で総合討論ということで。では、続きまして、小池委員より御説明をお願いいたします。資料の1-1-1です。

【小池委員】
  慶應大学の小池でございます。私も、資料で本当にきょうのコアになるところのお話というのは、少しコンフィデンシャルな部分がありますので、皆様にお配りした以外のものもパワポを使って説明させていただきたいと思いますので、こちらのほうをごらんいただければと思います。
  「ナノテク材料に求められる真のイノベーションとは」ということで書かせていただきましたけれども、今私が行っているいわゆる高精度の、これから4Kであるとか、スーパーハイビジョンであるとか、そういったエレクトロニクス、フォトニクス分野をはじめ、多くの産業分野では、まず材料というのが今までは中心じゃなかったんですね。まずシステムのデザインが行われて、それに従って材料の選定が行われてきた。これは、技術の進歩を一歩一歩確実に進めていく手段として、否定するものではなくて、産業界のR&Dの1つの王道であると思います。
  しかし、今までの歴史的な大きな産業の幕開けとなった発明というのは、驚くほど材料の機能がシステムを根こそぎ変えている、そういうふうに思われます。例えばベル研究所のいわゆる半導体の発明、これは実は真空管というものが根こそぎトランジスタに変わる。当時は補聴器にしかならないだろうと言われていたものが、実はその半導体という材料の発明がエレクトロニクスの幕開けであった。その技術をソニーがもらって、そして、ソニーは非常に大きな産業の成功を遂げます。その代表的なものは実はテレビなんですね。それはブラウン管なんです。しかし、ブラウン管というのは、電子を後ろから飛ばしますから、どうしても厚さが必要であると。それをトリニトロンという技術でブラウン管をどんどん薄くしていった。しかし、それから20年が過ぎたところで、液晶という、これもやはり材料からの提案、全くエレクトロニクスとは違うところからの提案によって、フラットパネルディスプレイの時代が幕開けした。今はヤマダ電機に行っても、ブラウン管を探すことのほうが難しくなってきている。
  それから、今回の青色LEDの発明、これもいわゆるエジソンの白熱灯から、本当に長い年月あったものが、LEDという材料によって低消費電力・高輝度による照明革命が行われようとしている。
  これらの時代を作った発明というのは、システムの開発の延長から生まれたものではなくて、材料の機能がシステムを根こそぎ変えた一例だと思います。多くの発明は、材料の極めてアカデミックなファンダメンタルズの発見から生まれていて、企業のR&Dを中心とするシステマティックな研究開発は重要であるが、今、ナノテク・材料科学分野に真に求められるイノベーションは、システムの延長からの予測、計画によるロードマップに従うことではないんじゃないか。それは、材料のファンダメンタルズから生まれるイノベーションであって、ロードマップが20年後に当たっていたとすると、それは材料からのイノベーションがなかった場合のロードマップになってしまう。初めから多くの人々が賛同するロードマップというのは、イノベーションではなくて、むしろ画一的な予測された発展をもたらすアイデアにすぎないかもしれない。一見その分野のインテグレーターからは非常識と思われるかもしれないけれども、科学に裏打ちされていることこそが材料のイノベーションの本質ではないかと。今までの産業の大きな歴史はそういうことを言っているのではないか。
  ここからちょっと私が関わっている分野、特に2020年の、NHK、東京オリンピックに向けて、4K、8K、いよいよそのロードマップがスタートして、こここそ大きなナノテク・材料の展開ができる領域ではないかと思っています。これ、現在の液晶ディスプレイの2013年の現行モデルの構造です。液晶って、本来はすごく簡単な構造であるべきものが、こんな複雑怪奇な、10マイにも及ぶ部材の集まりです。現在の液晶ディスプレイは、システムサイドが主導権を持ってこういう形になってきたんですね。個々の性能を向上させるために、その都度その都度、明るさが必要だったら、じゃあ、またDBEFを入れよう。そうすると、今度は色むらが出て複屈折が出るから位相差フィルムを入れようという、アドオン型によってこういった複雑極まりない構造になってきた。
  これが、今の日本から生まれた液晶が海外に取られていった一原因になっているかと思います。これだけフィルムが多くなりますから、こういったフィルムが持っている複屈折というものが今問題になっています。日本は世界に先駆けて液晶産業の創造、成長をリードしてきたにもかかわらず、個々の課題解決のために機能性部材の追加を繰り返すいわゆるアドオン型の技術開発に陥った結果、後続の韓国、台湾、中国に仕掛けられた過度な価格競争に完敗したのが現状であるかと思います。
  私は、既存構成に一つ一つ積み上げる従来技術の延長ではなく、日本の液晶ディスプレイ産業、10兆円を超える、これをもう一度日本に取り戻す。それは、今のアドオン型のものでは、これはただ模倣されるだけであって、今こそナノテク・材料分野からのイノベーションが必要ではないかと思っています。
  これはコンフィデンシャルということで、お見せするだけにさせていただきたいと思いますけれども、従来のものに対して、私ども、ファーストプロジェクトでは、ゼロ複屈折やこういうものを使って、極めてシンプルでありながら、今までの最大の問題である複屈折のない、色むらのないものを提案しています。これは、我々は材料をやっているものであるんですけれども、材料の機能がこういうシステムを変えていくということ自身を自分たち自身で肌で感じています。
  これはファーストのプログラムで、既存のフィルムを延伸するとこれだけ複屈折が出てしまうんですが、複屈折のないものができました。これが今、真ん中の、これ、前のもの、これ、今現行のもので、S社から出ている液晶テレビ。それを今度我々のゼロ複屈折に変えるとこれだけこういうふうに複屈折がいかに色むらをなくすかということを示しています。これはファーストの1つのメーンのテーマであり、複屈折があると色むらが出てくると。これは、したがって、ゼロ複屈折の基本特許を取り、進めてきたことであります。
  しかし、最終年に、これはやはりナノテク・材料の本当に大切なこと、ファンダメンタルズに戻ったイノベーションというのは、我々、今度逆に、複屈折をもっともっと大きくして、数百倍にしてやったらどうなるんだろうということを考えました。その結果、これ、iPadなんですけれども、iPad、サングラスかけると見えないですね。液晶というのは光が全部偏光していますから、偏光板があると見えないんです。そういうものに使えないかということで、これ、今、見ていただいているのは、iPadです。今、iPadに偏光板を持ってきます。これはサングラス。こうやって見えないです。これはアメリカでは、車の運転とかナビゲーション用に何とかしなくちゃいけないということが、今大きな課題になっています。
  そこで、今回、複屈折、これはペットボトルのペットをただ延伸したんです。複屈折が途轍もなく大きくしたんです。そうすると、今度、これを偏光板でやると、この中だけ全く色むらが起きず、これが見えるんです。どうしてこういうことが起きるかというのは、学問的にもここは詳細にきちっと解明されていない部分であって、複屈折があると、光のインターフェアレンスによって色が出てくるんですが、それをはるかに超えてくると、自然光に戻るんですね。太陽光というのは赤や緑の色が入っているんですけれども、これは我々が感じないだけであって、太陽光のスペクトルにしているから色を感じないんですね。
  これは、今、非常にホットな話題になっています。アップルであるとか、今度のものはそういう眼鏡対応にしようというようなことで、今、最新のフィルムというのは青なんです。これ、どう見るかというと、24色の色に対して、それぞれが完全に色むらがなければ、この外周になります。カラーシフトがゼロになります。例えばこの6番であるとか、こういう色というのは、今のものでは再現できないんですけれども、今回のペットフィルムですね、安いペットフィルム、これは複屈折が大きいから今まで液晶に使われなかった。こういうものをナノ材料からの提案としてやると、この虹むらや色むらがほぼ完全になくなる。これは実はファーストのプログラムをスタートするときには提案しておらず、複屈折をゼロにするという逆をやった。したがって、最終年に、これ、日経の1面に記事となったものでありますが、更にそれは、液晶の次も液晶ということが最近言われている1つの液晶の業界の中に対して、大きなストリームになるものは、実は材料の機能というものから出てきたということであります。
  これは最後になりますけれども、これからのナノテク・材料研究に求められるものとしては、私は安易に産学連携で企業と大学が同一化することには注意を要する必要があると思います。学には基本に戻ったこだわりがあり、産というのは極めてすばらしいテクノロジーを持っているんですね。ですから、本来の産学連携は、同一化するのでなくて、お互いが持っているコアコンピタンスを尊重し合うところからこそ、真の産学連携があるのではないかと思います。
  これは私が二十数年研究をしてきて本当に真に思うことでありますが、ポリマーは高性能なフォトニクス分野には不向きであると漠然と考えられていましたけれども、それから二十数年が過ぎて、世界最速のプラスチック光ファイバー、これは今回お話ししませんでしたけれども、高画質なディスプレイに代用されるフォトニクスポリマーが誕生してきました。これらは、1900年代前半のEinstein、Debyeという、ノーベル物理学賞、光散乱とは何かという本質に迫る論文。これは本当に私のバイブルになりました。最先端のブレークスルーをしようとすればするほど、応用研究ではなくて、更にまた繰り返しファンダメンタルズに戻るということが本当に大切であると思います。
  以上です。

【川合主査】
  どうもありがとうございました。材料がシステムを変えるということで、特に企業の方、御意見あるのではないかなと思いますが、いかがでしょうか。

【射場委員】
  何か指名されたようなので。日々材料とシステムのはざまで悩んでいるので、小池先生のお話は大変よく理解できます。ロードマップはそのとおりに機能しないことも何回も経験をしていて、それも全くおっしゃるとおりのように思います。材料のファンダメンタルズをしっかりやるんですけど、そのやる中で、いつまでもそればかりやっているわけにはいかないので、どこかでこれがイノベーションにつながるという判断をしないといかんと思うんですけれども、それを一体いつ、誰がするのかというようなところで、ちょっと先生にお考えがあれば、お聞かせいただければと思います。

【小池委員】
  どうしても大学はタコツボみたいになりがちなことがあって、自分よがりというか、これがこうだと、これは世界を変えると、皆さん、こう思いながら研究をされる、深めていく。また、こういう委員会でも、じゃあ、これからロードマップで何が大事かといったときに、多くはアカデミアのほうから提案が来て、それは必ずしも今まで、私はロードマップの委員にも参加したことがありますけれども、20年たって、その前のロードマップを見ると、そうなっていないんですね。それは、むしろ、例えば大学の教授であれば、我々みたいにある程度の年齢になってきていろいろ分かってきた人が、更にどうかとかというのではなく、むしろ、産業界や、今、30代、あるいは40になろうとする人たちが、日夜頑張ってやっている、そういう人たちの現場の声。そういう人たちが材料からのイノベーションだと思われる提案に対してどう思うかというようなことが、今、少しそこの関係が希薄のように思えるんですね。ロードマップとしては立派なものができて、最先端のが、「ネイチャー」に載ったことが、ここに載っているのは、ああ、そうですねということですけれども、必ずしもサイテーションの多いものが世の中を大きく変えているというと、むしろそうではないことがある。どれが原石になっているかというのは、本当に1年、2年付き合ってみると分かる場合があると。そういうものいかに丁寧にピックアップするかということがすごく重要ではないかと思います。

【射場委員】
  ありがとうございます。実際会議室で議論している人たちではなくて、現場で材料とかシステムをさわっている人たちからそういうつながりが出てくるというふうなことだと理解しました。ありがとうございます。

【川合主査】
  じゃあ、また後で総合討論で議論するということで。続きまして、小長井委員より御説明をお願いいたします。資料の1-1-2です。

【小長井委員】
  東京工大の小長井でございます。それでは、早速私のほうの資料を説明させていただきます。私、今まで応用物理学会の副会長、会長、合わせて4年ほど務めまして、また今、日本学術会議の会員というものをやっておりまして、そういう中から日ごろ感じていること、それから、学協会で取り組んでいることを御紹介申し上げて、きょうの皆さんの議論の参考にさせていただければと思っております。
  事務局のほうから、きょうはこの3点について何か話をしろということだったので、そのとおり、正直に、1番目として、重点を置くべき研究領域・国が支援すべき研究領域、研究課題、研究方策。2番目として、現在のシステム的なボトルネック、今後のシステム改革の方向性。3番目として、これまでのナノテク・材料科学政策に係わる課題・反省点、今後の政策に期待すること。この3つに絞ってということでしたので、忠実にこのとおり準備いたしました。
  まず最初の点については、先ほどちょっと申し上げたように、私、今、応用物理学会。応用物理学会というのは、物理とエンジニアリングを結び付ける学会なわけですけれども、そういうところにおりましたということと、それから、学術会議で、アカデミアからいろいろ議論しております。そうした中で、ひとつお願いは、研究領域、研究方策の協議には、学協会、ここに実は学術会議というのを書くのを忘れちゃったんですね。学術会議・学協会との連携を図ってほしいということを入れさせていただきました。今、ロードマップの話ございましたけれども、これはアカデミアとしても、もちろんアカデミアという場合には企業も入ってですけれども、2040年、50年に向けたロードマップというのを作っています。それを更に10年くらいのところを見て、大型の研究を策定するということまでやっておりまして、これはかなり立派な冊子になって公開されています。特に今学術会議のほうで作った夢ロードマップというのができておりまして、これについて、もう既に学術会議の会長の大西先生から、総合科学技術会議、イノベーション会議でも報告されているかと思うんですけれども、非常に立派なものが出来ています。
  それから、学術会議でこういうものを見越して、それを実現するためにはどんな大型研究が考えられるかということで、公募いたしまして、それを学術会議のほうでいろいろヒアリングしたりして、絞り込みしまして、大型研究計画というのはこういうのがありますよというのを、これも公開されております。私は、総合工学というところにいて、応用物理は総合工学に入っておりまして、私、総合工学の理事をやっていたものですから、応用物理のところをひとつ先導的にやっていたんですけれども、例えば大型研究計画としては、ここに書かれたような項目が既に10年刻みの研究計画として策定されております。その中でも特にスピントロニクスは、もっと重点的にやらなくちゃいけないということで、詳細なものを作っているわけでございます。
  例えばということですけれども、これは応用物理学という全体を眺めてみたときに、これから先2040年に向けてどんなものが実現していくかということを各分野別に並べてみたものでございます。詳細は、後でごらんいただければいいかと思うんですけど。2040年、50年になると、確かに、それはまだ夢を見ているようなものですから、実現しないかもしれないし、また変わってくると思います。ただ、やはり夢は大きく持ってやらないと新しい技術って出てこないと思うんですね。私はなるべく目標は高く持って詰めたほうがいいと思っています。
  具体的に見ていただきますと、応用物理学では中心はシリコンでございますので、シリコンの技術がこれから2040年に向けてどんなふうに変わっていくかということを見ております。なかなかシリコンそのものでは実現が難しいレベルまで行くわけでございますけれども、そこに有機材料がどういうふうに入ってくるかとかいうようなことをみんなで議論して、ここに書き込んでおります。その結果、どんな社会貢献が期待されるかというような、こういうことが書かれております。
  こういうものを各項目について全部書いているわけです。同じようにして、有機エレクトロニクスですね。有機エレクトロニクスの場合には、実は、きょう栗原先生おられますけれども、科学の分野でも大変立派なものをお作りになっておられて、どっちかというと、栗原先生のほうは材料ベースで書いておられるかと思いますけれども、我々はその材料をベースにして実際にどういうものを実現していくかという、そういうロードマップを作っているわけでございます。すいません。詳細は飛ばします。
  スピントロニクスですね。やはりここの部分がこれから応用物理学として見ると大変重要な分野だと思います。これまで応用物理、我が国の場合、特に強い分野としてはナイトライドとスピントロニクスと言われていたわけですが、あらゆるデータがそれを示しているわけですが、おかげさまで、今度、応用物理学としては初めてガリウムナイトライドがノーベル賞になったわけですけれども、次はスピントロニクス、これも大変学術的に考えても非常に重要な分野も入っておりますし、工業的に見ても非常に重要な分野が含まれておりまして、これはもっと集中的にやっていったほうがいいという、そういう観点です。
  例えば、これは簡単なスピントロニクスの説明の図ですけれども、電気と磁気の新しい融合ということで、学問的に重要な現象としてはここに書いてあるようなものもございますし、その結果、今までにないような新しいデバイス、応用分野が開けるということで、これを産学連携で、全国そろってみんながこれをやるというような、そういう体制作りを考えているわけです。
  それから2番目のポイントについてですけれども、現在のシステム的なボトルネック、今後のシステム改革の方向性。これは私としても悩むところですけれども、常日ごろ私思っているのはこの図面なんですけれども、私はどっちかというとデバイスのここら辺からこっちのほうに最近は来ているんですけれども、これは材料分野、これはシステム分野、デバイス、システムですね。ここに書かれている研究者の数とか、実際にそこの研究費とか論文の数、これを見ると、やっぱり右下がりだと思うんですね。これは明らかにそうだと思います。材料系にいる研究者というのは非常にたくさんおられて、それはデバイスにするというのは、実はここのところ、結構ハードルが高いんですよ。ということもあって、数は減ってきますし、論文も少し出しにくくなります。デバイスになると、どうしても値で勝負しなくちゃいけなくなるので。システムでいくと、更に論文が書きにくいということで、アカデミアではこういう感じになっているかと思うんですね。
  ただし、今、バッグキャスティングでいろいろ考えなくちゃいけないと言われていて、まさに私もそのとおりだと思うんですけれども、その場合には、やはりこちらの立場に立ってどういうものが必要かということを考えられる人が今ちょっと少ないというのが日本の一番の問題ではないかと思っています。どうしてもこちらから来た人がずっとこちらに言っていかないと今は進まないような感じになっているんですけれども、もうちょっとこっちから見て何が必要かという、そういう人ですね。
  それからもう一つ、これは今の話とは直接関係ないんですけれども、結構今、有力大学では研究費というのはかなりジャブジャブになってきていると思うんですけれども、やはり私は、残されたリソースは地方大学にあると思っています。いろいろ地方大学等々見学させていただくと、やはりそこにしかないようなオンリーワン技術をやっている方が大変大勢おられて、その人たちをもう少しうまくリードしていければいいのではないかと思います。
  それからもう一つは、どうしてもシリコンは、こういう文科省の研究開発の中では、もうそれは終わったからというふうに言われがちだけど、私はやっぱりそこのところがひとつ間違えていると思っていて、シリコンの材料、デバイスというのは永遠の課題だと思います。これをやらなきゃ産業競争力はないわけで、今からでもまだ間に合うと思っていて、こっちからこういうふうに見ていったら、やっぱりそうせざるを得なくなると思います。
  それから、3番目の今までの反省点とか今後の政策に期待すること。これは、余りあるわけではないんですけれども、私は今、太陽光発電におりまして、2011年ですか、2011年にこういうデータを作成したんですね。これは、文科省的にいうと、論文の被引用回数が注目されるので、ここは横軸は論文の被引用回数です。6,000回とか7,000回引用されていますよということですね。それから、ここはランキングです。これは例のトムソンのウェイブ・オブ・ナレッジで、太陽電池、ソーラーセルで検索して、その結果なんですけれども、論文の数は全部3万3,000ぐらいになるんですけれども、どのくらい引用されているかというのを見ております。1位は、有名な、有名なといいますか、「ネイチャー」に載ったグレッツェルの色素増感の太陽電池で、その当時は6,500件くらいだったんですけれども、現在は、今直す時間がなかったので、1万2,879件になっています。この青色で書いたやつは、色素増感、有機、プラスチック等々、そういう太陽電池が並んでいまして、驚くなかれ、シリコンの太陽電池というのは1つもこういうランキングの中には載ってきていないんです。ここに今、CIGSとありますが、これは今生産量ちょっと出てきていますけれども、アモルファスシリコン、ここら辺にあるだけで、あと、全部色素増感とか、有機とか、プラスチックの太陽電池になるわけです。
  そうすると、被引用回数だけでいったらこれが一番重要かというと、そうではありませんで、現実はどうかというと、正直言って、ここに載っている太陽電池というのは全く生産されておりません。多分これからも大変難しい状況だと思います。今現在、シリコンの太陽電池というのは、既に1年間に4,000万キロワット作られるような状況になっていまして、そこにカドミウムテルルとか、CIGSとか、アモルファスが食い込んできていて、それでも全体の10%ぐらいなんですね。やはりシリコンなんですよ。だから、こうやって見ると、生産量というか、実用化と被引用回数がこれほどギャップがあるという例は余りないかもしれませんけれども、これが現実になっているわけです。
  ところが、もう一つ、じゃあ、本当にこれは要らないのかというと、そうではなくて、やっぱり偶然出てくるというのは恐ろしい話でありまして、今この分野で一番注目を集めているのは、ペロブスカイトの太陽電池というものなんですが、これは今まで色素増感をやっていた方が、たまたま増感剤としてペロブスカイトという材料を使ったら、大変いいものができたということで、二、三年の間にあれよあれよという間にものすごく効率が上がりまして、今、公の機関で測定されたものでも17.幾つ%ということで、大変いいものが出てきていまして、今まで色素増感をやっていた人、有機をやっていた人、ほとんどの人が今こういう材料に行ってしまっているという、そういう状況になってきております。
  じゃあ、この材料は、色素増感とか有機をやっていなかったら、もしかしたら見出せなかったかなという感じがありまして、そうすると、基礎というのは、やっていて、その中から突然びっくりするようなものが出てくる可能性があるなということでございます。
  これは、日本の研究者、横浜桐蔭大学の宮坂さんというのが最初にやったということになっておりまして、こういうものを日本としても大いに支援して、スピード感を持って伸ばしていければいいのではないかと考えているわけです。
  それから、最後になりましたけれども、先ほどもちょっと申し上げたように、応用物理学会の中では、ナイトライドというのは大変強い分野ということで、今まで、ノーベル賞候補もかなり出てきていたわけですけれども、やっぱり応用物理というふうになりますと、また被引用回数というのは必ずしも何万というわけではありませんで、これは数日前に赤崎先生の論文と中村修二先生の論文がどのくらい引用されているかというので、トムソンのデータベースを調べたわけですけれども、一番上が天野さんと赤崎先生のは1,325なんですね。1万とか2万あるわけじゃないわけです。ですから、トムソンみたいにノーベル賞予測だなんてやったら引っかかってこないわけですよね。その次のやつが1,141で、その下が数百の論文がざっと並んでいると。さすがに中村さんの最初の1994年の発表というのは大変衝撃的だったということもあって、これはかなり引用されていますけど、これも2,000ですからね。先ほどのグレッツェル先生の色素増感太陽電池はもう1万超しているわけですから。だから、単純に被引用回数だけでは危ないですよということをちょっと申し上げたかったということです。
  以上でございます。

【川合主査】
  どうもありがとうございました。それでは、何か御質問、いかがでしょうか。

【射場委員】
  材料デバイスシステムでアカデミアの研究費とか人数が減ってくるというグラフがありましたけれども、それは蓄電池も全く同じ状況で、研究は材料ばっかりなんですよね。民間がシステムサイドを補完すれば、それはそれでいいんですけれども、民間の電池の研究者も、うちなんか、中で見ると、材料出身の人ばっかりで、民間の中でも材料ばっかりやっているんですよね。なかなか補完できる……。システムとかデバイスでも、革新的な研究があると思うんですね、現行の改良ではなくて。そういうところをやっぱりアカデミアでもやるべき内容だと思うんですけれども、そのあたり、いかがでしょうか。

【小長井委員】
  おっしゃるとおりだと思います。ただ、やはりアカデミアの場合は、どうしても後で評価されるとき、論文の数とか、そういうのが出てくるんですね。一般的にはシステムをやっている方って、論文書きにくいんですよ。そういうこともあって多分数が少ないんだと思います。
  これは太陽電池を例にした例ではないんですけれども、例えば私、パワーエレクトロニクスとか、そういう分野をいろいろ調査しているんですけれども、全国の大学見ても、パワーデバイスに関連した材料、やっている人は非常にたくさんいる。だんだんデバイスの数は減ってきて、実際にシステムやっている人はほんのわずかなんですね。だから、まずいと思っておりまして、ここからもっとこっちへ見ていける人ですね、そういう人が必要。もちろん材料開発やっている人は、自分自身がだんだんデバイスからシステムに変わっていかなきゃいけないと思うんですけれども、これはやっぱり研究者というのは2つのタイプがあって、自分は材料開発やっているので、ある程度そこがうまくいったら次の材料に移るという人がいるわけですよね。そうじゃなく、やっぱり材料から、デバイスから、システムから、全部通して自分がやっていくというような立場の人も、両方必要だと思っています。

【射場委員】
  ありがとうございます。

【片岡委員】
  このスライド、私も全く同感だと思うんですね。さっきもお話ししたように、医療の分野も結局、私なんかも材料からスタートしているんですけれども、結局、最後はシステムになるわけで。

【小長井委員】
  おっしゃるとおりでございます。

【片岡委員】
  だから、やっぱり、小池先生の話もそうだと思うんですね。結局だから、材料は、材料屋だから材料だけやっていればいいんだと。ナノテク・材料は材料だけだというんじゃなくて、やっぱり材料を知っている人が、やっぱりシステムまで手を広げて、本当のシステム屋と一緒になってやるような仕組みをアカデミアでも意識してやらないといけないんじゃないかなというふうにはすごく思います。ですから、今学会なんかもそうなんですけれども、縦割りになっちゃっているんですね。例えば材料だけやる学会と。僕なんかも高分子学会でやっていますけれども、そうすると、なかなかシステムとは違うものだというふうに切れてしまっているので、それを一緒にしていくということはすごく重要じゃないかなと感じます。

【小長井委員】
  おっしゃるとおりだと思います。材料からスタートした人というのは、どちらかというと、デバイスに行って、システムのほうに行きやすいんですけれども、最初からシステムのほうにおられる方というのは、下がってデバイスやることできませんね。だけど、そういう人も必要だと思います。

【川合主査】
  じゃあ、栗原さん、短く、すいません。

【栗原委員】
  そういう意味では、小長井先生の総合工学は非常に重要だと思うんですけれども、工学部の中には、機械とか電気とか、システムをやっている学科もあるわけで、そういう人たちと材料とか、科学もそうですけれども、そういうところの連携とか触れ合う場というのは非常に必要だと思います。

【小長井委員】
  それはそう思います。

【川合主査】
  どうもありがとうございました。また後で総合討論でお願いします。では、小林委員からお願いいたします。資料が1-1-3です。

【小林委員】
  日本大学文理学部の小林です。長野参事官から今後のナノテク・材料科学はどうあるべきか、どうすべきか、そういうことでお話をしてくださいという要請がありまして、どういう話をしたらいいのか実はちょっと迷いまして、2日前に出したこの資料をまた少し補足しましたので、できればパワーポイントのほうを見ていただきたいと、スクリーンのほうを見ていただきたいと思います。
  自分なりにこれまでここで議論されたことを整理しまして、どういうものが重要かというようなことを話せばいいのかなと最初思いまして、いろいろ書きましたけれども、結局のところ、こんなに長い話はできないので、ここでは、今後、ナノテクの材料科学、どうあるべきかというところで、人材育成の問題だけお話しさせていただきます。
  グローバル時代に活躍できる研究者、人材の育成ということでありますから、ともかく基礎力を、広い興味を持って基礎力を身に付けた人材を出さなきゃいけないということだろうかと思うんですが、その際、日本として一番重要視ずっとしていかなきゃ問題というのは、基礎の勉強を充実することかなと思っております。
  というのは、最近よく、中国になりますけれども、非常に論文がたくさん出ているとか、そういうことが話題になりますが、やはりどちらかといいますと、はやりのものを追いかけるような傾向が見られるように私には見えますので、日本の強みというのは、これから基礎を重視した基盤、基盤の基礎をやるとか、それから、イノベーションを起こすような物質を作るとか、非常にそういう大きなことを考えているわけですから、やはりこれからずっと基礎の勉強というのをしっかりやる必要があると思っております。
  それで、大学における人材化ということで、ちょっと日大のほうでは余りそういう取組がないので、東京大学のほうでやっているようなことをちょっと調べてみたんですけれども、グローバルCOE、これは学部間ですかね、その縦割りをなくそうというような、そういう人材育成になるのか。更に、リーディング大学院というのが今動いていまして、このプログラムは産官学にわたるグローバルに活躍するリーダーの育成ということでありまして、多分ここの産業界の人材育成の問題にはプラスになるような方向かなと思いまして、ちょっとだけ説明させていただきます。
  私、理学系の出身なので、理学系の入っている、科学の入っているところということで、統合物質科学リーダー養成プログラムという、MERITというのが24年から採択されています。こういうリーディング大学院というのも、まだ始まったばっかりですから、23年からですから、そんなにこういうものが動いている数はないわけですけれども、幾つかの研究科が一緒になって、そして、学生も、修士、博士と一貫して行くような人しか行けないということでやっているようです。それで、学生は、2から4社、訪問して、その研究開発や実用化、経営の講義を受けるとか、そういうことをやりまして、大学のほうに企業や官庁から講師が来て講義をすると、そういうようなことをやっています。
  これは私がいたころから大変人気があったんですけれども、企業の最先端の講義というのは、学生にはとても好評でした。それで、更に企業、海外にあるようなそれも含めて、インターンシップのプログラムもあると。そういうようなことだそうで、修士の後半から奨励金というのが支給されると。そういう学生にとっても、経済的には援助を受けた、よいプログラムかと思います。
  こういうものがまだスタートしたままなので、まだ分かりませんけれども、かなりこういうものが多く出てきますと、いろいろなところでの人材問題、育成の問題というのによい方向が見えてくるかなという気がします。
  もう一つ、とても今言われている大事なこととして、人材育成として大事なことは、海外留学の経験を若手の教員、ポスドク、学生に持たせると、そういうことかと思われます。百聞は一見にしかずで、ともかくそういうところに行ってみて、やってみると。それが大事だし、日本人にはやはり語学の問題もありますし、インターナショナルに活躍する人を育てるには、こういうことが非常にいいことだと思います。
  それからもう一つは、今、リーディング大学院とかグローバルCOEとか言ったのは、トップのクラスの大学の話で、一般的な問題としては、博士課程進学者が増えないという、そういう問題があると思います。これに関しては、よく学生から聞く話なんですけれども、奨学金の返還の問題、これがやっぱり厳しいらしくて、学部から博士を取るまで行くと、1,000万近いお金を育英会から借りたような場合は、返還する必要が出てくると。そういうようなことがありまして、ほとんど最近は返還しなきゃいけない状況なので、これがちょっと厳しい問題なのかなと。あとは、やはり就職の問題で、なかなかその先が見えないというところがあります。産業界のほうからも、是非大学の横割り的な広い視野を持った学生を養成しなければいけませんけれども、たくさんの人を受け入れてくれるような、そういう姿勢が出てくるということが期待されます。
  さて、この話はこれまでで、特に重点的に実施すべき今後のナノテク・材料とか、そういうところでの研究開発課題ということで、この前これは、永野フェローが出されたパワーポイントなんですけれども、それを借用させていただきました。研究開発領域とかは、ここに書いてあるようなもので大体いいのではないかと思いますけれども、その中で私の分野、分子物性科学とか、機能性分子科学とか、そういうようなものを見た上で、興味を持つもの、これから更に発展していかなきゃいけないものとしましては、やはり超伝導というのが1つあるだろうと思います。153ケルビンですか、これも去年ぐらいに銅酸化物がこんなあれになったし、細野先生の鉄ニクタイドの発展に関しては、皆さんよくご存じのことだと思います。我々は、比較できないものですけれども、単一の分子性の超伝導体を出すことができました。
  さて、それから、先ほどペロブスカイトの話が出たので、おもしろい機能を持つ物質ができましたという話で、これは2年ぐらい前だったと思うんですけれども、私たち、誘電体を作ろうということでやった仕事をちょっと紹介させていただきます。
  北川先生、きょう見えていませんけれども、北川先生のMOFですね。メタルオーガニックフレームワーク。金属に配位した有機物から成る3次元的なポリマー状のフレームワークを作ると。その中にいろんな分子を取り込んだり、出したりする。北川先生のお仕事ですけれども。そこに私たち、アゼチジニウムカチオンというものを取り込んでみました。アゼチジニウム分子というのは、これはヨンインカンでありまして、ペコペコしたリングパッカリングモーションというんですけれども、分子骨格変形の運動をいたします。それで、これを入れて、カチオンとして入るんですが、入れて作ったところが、結晶は非常に簡単にできます。ABX3型のペロブスカイト構造となりました。これが、誘電率はかりましたらば、巨大な誘電率が、100度ケルビンぐらいの間で出てきまして、これはチタン酸バリウムとか、そんなものが10の3乗ぐらい、それが10の5乗を超える、7乗ぐらい、周波数イジドウセンがあります。巨大なものができた。これをリラクサーとどうも言われるようなもので、ヒーティングとクーリングを実は繰り返さないとこんな大きなものが出てこないというものなんですが、非常に物理でも話題になっているような物質で、まだ60年ぐらい前に発見された無機物がここにありますが、それぐらいで、余りはっきりした研究はされていないもので、こういったものが機能性物質としてはいろいろ出てくるので、応用の方にも、これがどうなるというものではありませんが、興味を持っていただけると、いろいろなサジェスチョンを受けられて、そのハブ、これから作ろうとしているイノベーションハブですか、そういうところで議論なんかできると、更に我々基礎をやっている者は、それがまた更にフィードバックされるんじゃないかなと思っています。
  あと、Graphene。これが前から話題になっているもので、10年ぐらいで1,300億円の資金が付くということで、ヨーロッパはすごく力を入れています。脳科学と同じぐらいというそうですから、非常に大きなプロジェクトだと思いますので。これが日本ではまだ加わっていないという感じなので、ちょっとそれがどうなのかなということで、ここに出しました。
  もう時間は過ぎちゃったんですけど、いいですか、1分、2分。これ、2007年の、ちょっと古いんですが、「Physics Today」というところで出た記事なんですが、日本の物理と科学の連携がすごくいいと。それがアメリカにはなくて、材料科学の人と測定の人が一緒になっていなくて、なかなか測定の人は困った状況にあると。それから、米国エネルギー省のサポートを受けてワークショップを開いたりして、いろいろそういうことの討議はされているという話でした。
  その中で、日本はいろいろないいものが出ているということで、こういう中に連携がうまいからだということで、こういうところに我々の仕事も引用されているし、MgB2なんかも出ていましたけれども。なぜこういうものがうまく連携ができたか、物理と科学ができたかということなんですが、ものづくりと測定ですけれども、これは超伝導を作る過程で、実はここに分子設計としてバンド計算という新しい手法といいますか、非常に簡単な計算を取り入れました。それが非常にうまくいって、そうしたことによって、実験を非常によく説明する。そんなことから、物理の方たちが、議論も含めて、入り込んできて、それで非常によい関係ができ、それがずっと続いているというわけであります。
  提案としては、イノベーションハブなんですけれども、その中で、試料作成をする。今問題になっているのは、そういうところ、支援するところ。新しいものを作るのに、例えば違う方法でやるとか、新しい方法でやる。それから、たくさんの試料を作りたい。そういうふうな問題が我々にとってもあるわけなので、そういう支援をするようなところがあるとといいと思うので、そういうものを提案してはどうかというふうに思います。大変時間がオーバーしちゃって申しわけありません。

【川合主査】
  どうもありがとうございました。じゃあ、何か御意見があれば、1つ。

【松下委員】
  すいません、先ほどの御発表とも関連するんですが、ちょうどきのうCSJフェスタで、ペロブスカイト型太陽電池のお話を伺ったところです。ヒステリシスが実際には大きくて、強誘電体ですので、そのままでは使えないと。ですが、ナノ空間の中でペロブスカイト型を配列することにより、ヒステリシスが減って、実際に使えそうな太陽電池になるということを宮坂先生が御発表されていたんですね。そういったこと、例えばナノ空間の中でこういう設計ができるとか、そういう理論とか、材料の実験とかというののバックグラウンドというのはどのぐらい今出来ているかとか、ご存じでしょうか。

【小林委員】
  ちょっと御質問の意味、よく分からないんですけれども、バックグラウンドが出来ているというのはどういうような意味でしょうか。

【松下委員】
  実際に我が国の中で、例えば実際にはナノスペースでの強誘電体、ペロブスカイト分子の配列というのの計算というのはそんな簡単ではないと思うんですが、その計算ができるような環境になっているのかとか、それの材料の研究者は随分あるのかとか、その設備への投資というものは我が国の中では十分あるのかとか、そういったことをちょっと、もしお考えでしたら。

【小林委員】
  計算自体はある程度、やろうとしているかどうか、実際に今現在あるかどうかは知りませんけれども、それはかなり無機物なんかについてできるのではないでしょうかね。今、私たちの場合は、有機物、非常に複雑なので、こういうものを第一原理計算でやるというのは、これ、1980何年というような、そういう時代でしたから、非常に難しかったわけですけれども、今はそういうこともないと思いますし。

【川合主査】
  どうもありがとうございました。

【田中委員】
  最後のスライドで、提案の中に、ハブにおける試料作成支援室を設置というのがありましたけれども、ナノテクノロジープラットフォームの中に、これ、日本の特徴ですけれども、分子物質作成というのがあるわけですよね。そこをよくお調べになって、こうしてほしいとか何とかという点を出していただいたらいいと思います。これはナノテクノロジープラットフォームでは日本の大きな特徴だと思いますので。

【小林委員】
  はい。ありがとうございます。

【川合主査】
  どうもありがとうございました。それでは、続きまして、事務局からこれまでの当委員会の議論を踏まえた現時点での現状、今後のナノテクノロジー・材料科学技術の推進方策、論点案ということ、これを説明させていただきたいと思います。これをまとめるというのが実はこの委員会の1つの目的で、多分後で説明あると思いますけれども、きょうのいろんな御議論も踏まえて、次の会でかなりまとまった形にしていくということで、まず参事官のほうから御説明をお願いいたします。

【長野参事官】
  はい、ありがとうございます。川合主査がおっしゃったように、資料1-2のほうに現時点での論点案ということで事務局から案を出させていただいております。ちょっとこの御説明の前に、若干御紹介したほうがいいと思いますのは、参考資料としまして、参考資料1、2、3という形で、先日10月13日に総合政策特別委員会のほうに出された資料について御紹介したいと思います。
  参考資料1のほうは、ナノ材、当委員会でのその時点での検討経過の報告という形で、前回までの委員会で御議論いただいた内容を踏まえて、各委員にはお送りしておるかと思いますけれども、その検討経過報告というのを資料として出しております。これは当委員会の分なんですけれども、それ以外にも、これまでの科学技術基本計画でどういうふうになってきたかということ、それから、これからどうあるべきかということについて、総合政策特別委員会で議論があったわけですけれども、参考資料2のほうは、これまでの第1期から第4期の科学技術基本計画で掲げられた取組というものがどういうふうに検証されるかということが示されております。
  ちょっとおめくりいただきますと、学術研究、基礎研究の推進というのがあった次のところで、(2)ですけれども、科学技術の重点化というところ。ここでありますように、ここで最初にある重点分野4分野。これ、最後に2とあります、これ、第2期基本計画という意味ですけれども、第2期の時代に4分野の中にナノテクノロジー・材料というのは位置付けられております。第3期になりまして、その4分野に加えて、それ以外のエネルギー、ものづくり等々の分野も加えられたというふうになっていまして、第4期になると、今度課題解決ということが大きく打ち出されていますので、その課題解決の中で様々な科学技術が使われてきたというような位置付けになっておりまして、というのがここに示されております。
  それから、あと、ずっと行っていただきまして、ナノテク関係が言及される部分が、その後の5ページのほうになっておりまして、5ページの(7)のところで、産学官が共用可能な先端研究施設・設備の整備というところがありまして、ここで第1期のときから共同利用促進というのがうたわれておりますけれども、第4期の時代にそれのさらに共用高度化、ネットワーク化ということがうたわれております。現状として、2ポツのところに、ナノテク、スパコン、光ビーム等々で全国を俯瞰した共用プラットフォームが構築されているという現状認識が示されているところです。
  これが参考資料2のほうでして、次に参考資料3のほうでは、オープンイノベーション時代、グローバル時代における研究開発、社会実装の在り方ということで、国がなすべきことの基本的考え方の事務局案としてこれが出されております。ページ、3ページのほうをごらんいただきますと、第4期では、科学技術イノベーション政策の推進において、我が国が取り組むべき課題をあらかじめ設定して、その達成に向けて研究開発をするということ。もう一つは、独創的な研究成果を生み出して、それを発展させて、価値創造につなげることと。こういう2本で出されていたわけですけれども、今後に向けてということで、国主導で課題設定を行うのみならず、民間が主体的に行う課題設定、課題解決のための活動を支える力、これ、イノベーション基盤力という言い方をしていますけれども、これが国が重要な役割を果たすということで、イノベーションの源泉を強化するですとか、イノベーションシステムを構築するといったようなことで、国が実施していくべきではないかという案が出されております。
  これら、資料のほうを御紹介申し上げましたが、全般的な議論を総政特のほうではされておりまして、残念ながらというか、あれなんですけれども、10月のときの総政特では、ナノテクノロジーの個別の議論には入っていない状況でございました。
  ここまでが総政特の御紹介でして、本論に行きますけれども、資料1-2です。資料1-2のほうで、前回にお出ししたものとの異なる部分を中心に御説明申し上げたいと思います。全体の構成を今3本柱の構成にしております。1つ目が現状認識。2つ目がナノテクノロジー・材料科学技術の推進に向けた基本的考え方。3ポツ目で、具体的なものとして、各研究機関における推進体制と方策というふうに項目立てしております。
  1ポツの現状認識の中では、ナノテク・材料科学技術が果たす役割ということで、ここは以前にお出ししたものとほぼ同じです。ただ、最後のポツのところで、先ほど申し上げましたように、2期、3期で重点分野として位置付けられたと。4期では、その重要性については、位置付けは不明瞭だったということでしたけれども、ここにちょっと書き加えましたが、本年の6月の閣議決定でありました科学技術イノベーション総合戦略2014の中では、ナノテクというのが、分野横断的な技術としての重要な役割がきちっと明記されております。今後第5期においても、その位置付けを明確にした上で一層の強化を図るべきというふうに少し付記してございます。
  (2)は、各国の戦略と動向。これは変えてございません。
  2ポツ目の基本的な考え方ですけれども、最初にまず基礎的、基盤的研究としての振興。これは以前のとおりにしてございます。
  それから、(2)としまして加えました。前回のときにも、以降も含めて、基礎研究そのものという部分と別のくくりを設けようかと思いまして付けましたが、広範的な社会的課題の解決に資する研究開発の推進ということで、課題との関係でどういうことがさらに重点化すべきものがあるかという視点で若干書いてみております。読んでみますと、広範な分野で普遍的に用いられるようにこれまでなってきたわけですけれども、これまでにない応用先を開拓して、未着手であった社会的課題の解決に向けて一層の進展を遂げることが期待されるということで、例えばという例示ですけれども、人工関節等の医療分野のニーズを踏まえた材料の研究開発を強力に推進し、当該分野における知見、ノウハウで世界をリードする戦略が求められるということ。
  また、もう一つの例としては、省エネルギー化やエネルギー源の多様化を推進するためとして、革新的な熱電変換材料や圧電変換材料、触媒といった高効率なエネルギー変換を可能とする材料の研究を推進することが肝要であるといったことで例示を出してみてございますので、ここはきょうの御議論でも、ほかに追加すべきものがあれば、御議論いただきたいと思っております。
  それから、次の(3)では、我が国の強みを伸ばす研究開発の推進戦略ということで、これは変えてございませんけれども、例えば構造材料ではどう進めるのか、機能性材料ではどう進めるのかということ。それから、最近の新しい流れとして、データ駆動型の材料研究においてどう進めるのかと。
  また、最後のポツになりますけれども、希少元素を全く用いないことのみを至上主義としないような、あらゆる元素の無限の組み合わせの中から未知なる革新的機能を探索した上で、汎用元素への対応を図る政策アプローチといったようなことも挙げてみております。
  それから、(4)のほうは、前回のままですけれども、循環研究について記述しております。
  それから、3ポツ目のところですけれども、これはかなり書き加えた部分がございます。まず柱立てとして、前回の議論でも大学における問題といったことが御議論がございましたので、(1)で大学のポテンシャルを最大限発揮する体制の構築ということで項目を立てました。ここでは、分野や組織を超えた新たな知への挑戦を目指すために、高等教育政策とも連携し、分野や専門の異なる研究者の交流に係るファンディングや評価などのインセンティブの設定を進め、部局の壁を打破した連携体制を構築することが重要という点。これは大学内の問題です。
  それから、もう一つは、産業界の課題や戦略について学術界も交えて議論するラウンドテーブルの設定や、また、学術界から産業界の人材流動が比較的少数である現状を踏まえた双方向の人材交流の活性化といった新たな価値を創造する研究推進体制の構築が必要ということで、案としております。
  それから、次の項目も新しく立てました。これは科学技術イノベーション総合戦略2014で明記されております研究開発法人を核としたイノベーションハブの構築ということで、これについても具体策を記述するということで、してみました。我が国の物質・材料研究の中核的研究機関である物材機構が有する研究シーズ、人材、先端研究設備などの高いポテンシャルを産学官で最大限活用するということが期待されると。そういった目的でイノベーションハブとして産業界の課題を学術界も一丸となったオールジャパン体制で科学的に深掘りし、その解決に向けた技術シーズを絶えず生み出すことが重要であると。
  このイノベーションハブでは、まずはオープンイノベーションによって基礎研究、人材育成というのを徹底すると。そういった中でクローズドな実用化研究への展開を生む技術シーズを創出するということ。その際、重要なのは、様々な分野の国内外の優秀な人材を引きつける。それでセレンディピティを生み出しやすい多様性を確保した環境を構築するということ。個々人の専門分野を超えた異分野融合、技術融合が推進されるような、産学官いずれにとっても魅力あるものとすることが重要であるということが重要なことかと思います。
  それから、我が国の各地の中核的大学、共同研究拠点というものがございますので、そういった研究ポテンシャルをネットワーク化することによって、ここはNIMSだけで、物材機構だけで実現できるものではございませんから、そういった各地の大学拠点とネットワーク化することで初めてオールジャパン体制でのハブとしての機能を確立し、世界に伍して産学官が協働する拠点となることが重要であると。
  また、人材としては、材料研究者に加えて、異分野の研究者も含めた国内外の優秀な人材を結集したハブとするために、クロスアポイントメント制度や年俸制の導入といった制度的な整備を早急に進めて、重点的研究分野をリードする研究者の配置にクロスアポイントメントを積極的に活用することが必要である。このクロスアポイントメント制度を積極的に活用するということも、科学技術イノベーション総合戦略では記されておりまして、これを具体的にどういうふうに進めていくのが効果的なのかといったことが検討が必要かと思っております。
  それから、産学官の英知の結集により、構造材料、機能性材料、それから材料データ群の徹底した計算機解析による材料設計手法の確立に向けた取組を推進するということで推進して、先端的研究を展開するということ。それから、研究面だけではなくて、人材育成、先端研究設備の共用、材料データの情報集約、発信といった基盤としての機能も整備することが重要ということでまとめてみております。
  それから、最後に、(3)としまして、関係機関の総力を挙げた推進体制の構築としまして、これは中身的には以前にもお出ししたものでございまして、ネットワーク型での研究ですとか、ナノテクノロジープラットフォームの重要性、人材育成の問題、それから、各関係府省の連携といったことを挙げてございます。
  以上でございます。よろしくお願いいたします。

【川合主査】
  この後、総合討論はいたしますが、今、長野参事官が説明した内容についての質問がまずありましたら、この点が分からないとか、何かコメントがありましたら。

【片岡委員】
  内容的には全く同感というか、非常によくまとまっていると思うんですけれども、ここでいう人材の育成に非常に重点を置いている。でも、どっちかというと、人材の育成というのは、日本の中の日本人の育成みたいな感じにも取れないことはないなと思うんですね。ところが、実際、大学は、日本の大学は国際化していないと言われていますが、実際は大学院とか、その辺に関しては極めて国際化していまして、研究室によっては半分以上が外国人なんですね。そうすると、アメリカなんか、こういう人たちがアメリカに残って、産業なり何なりを支えているんですけれども、日本の一番の問題は、やっぱり通過点になっちゃっているんです。つまり、日本で学んでどこかに行っちゃう。これを何度も何度も繰り返しているんですね。
  だから、それはやっぱりもちろん国際的な視点で人材を育成しているからいいんだという考え方もありますけれども、一方においては、せっかくだから日本のためにも何かやってよというか、そういう視点も必要だし、そうだとすると、そういう人たちをどうするのかと。じゃあ、大学で受け入れられるかというと、これは到底無理ですね。そうすると、やっぱり産業界も含めて、そういった日本で学んだ、研究した外国から来た人たちを、ただ呼び寄せるだけではなくて、その後どうするのかということも今後考えていくことが、結局は日本の科学技術力が強くなるんじゃないかなと思います。
  それで、実際例えば、ドイツなんか、フンボルト財団という非常に強力な財団がありますが、アフターケアがものすごくよくできているんですね。ですから、そういうところで、例えば来た人に対してはネットワークを作って、いろんな機会でドイツにもう1回呼び寄せるとか、あるいは、大統領官邸にみんな呼んで、大統領が全部握手して回るとか、そういうことをやっぱりやっているんですよ。ですから、そういうことをきちっとやっていかないと、いつまで日本は通過点で終わりになってしまうんじゃないかなという気もするので、その辺をどこかに入れていただくといいなと、ちょっとそう思いました。

【川合主査】
  何かありますか。グローバルな人材の活用と育成ということですね。

【長野参事官】
  そういう意味でこの案文の中にも人材の育成という記述があったんですけれども、確保というか、大体科学技術政策で語るときは、科学技術の人材の育成と確保というふうになっていて、そういう意味では、優秀な人をきちっと確保して、ちゃんと持続的に科学技術研究開発が進むようにするということが基本だと思います。そこの観点、ちょっともしかしたら抜けていたかもしれないという気がいたします。
  全般的には、ナノテク・材料の分野に限らない全般で言いますと、例えば研究者、ポスドクとして海外からどんどん来られた方、例えば学術振興会でも制度ありますけれども、そういった方々は、その期間が終わられた後も、日本でそのまま研究される方はそんなに多くはないと思う、ポストを得られる方はそんなに多くはないと思うんですけれども、アルミナイとしてグループを作って、日本との接点を常に持つようにしていただくとか、そういった形で、広い意味での日本とつながりがあるようなものはやっているというのがありますし、留学生で来られた方については、いろんな大学は、今度は留学生いろいろ受け入れた後に、産業界に、企業に就職してもらうということが非常に大事ですので、そういった日本の企業に就職してもらうような支援の仕組みというのを始めている大学は結構出てきているということかと思います。
  特に材料の分野では、日本の企業で必要な人材ということと、大学の中で実際に学部をもって育てているコミュニティーの層が少し違うんじゃないかとか、継続的に本当は企業から見るともっと育ててもらいたいと思うところが、この御時世でしりすぼみになっているといったような議論もありますので、そこをどう考えるかというのは、日本人であっても、外国人であっても、同じ問題が所在しているんじゃないかというふうな気がいたします。

【川合主査】
  総合討論に移ろうと思います。目的は、今参事官が説明した論点案、これ、まとめて次の会議に、論点案というか、推進方策としてはまとめたものにしますので、これをベースに是非委員の皆様から御意見をいただきたいと思います。話された4人の方も、ここら辺、きょう話された内容で、こういうふうにしたほうがいいんじゃないかという、そういうことがありましたら是非御意見いただきたいと思います。ちょうどもう30分ですので、御発言は割合短く、皆さん、全員御意見いただければと思います。じゃあ、まず曽根先生。

【曽根委員】
  今、参事官の御発表の件ですけれども、前回休んだので、目新しいことたくさんあるんですけれども、まず希少元素、希少金属、これは最近東大の岡部先生なんかのリサイクルをやっている、いろいろそういう研究集団がいますね。そこのお話を聞くと、非常に目からうろこの部分があって、まさにここに書いてあるとおりだと思います。希少元素というのは、時々刻々、あちらのほうのリサイクルの開発状況に伴って状況がものすごくがらがら変わっている。したがって、ナノテク・材料は、ここに書いてあるとおり、あらゆる可能性を追求する。ペロブスカイトなんかもその中から現れたと思うんですけれども、それがまず非常に基本的に重要なんじゃないかなと。
  それからもう一つ、これ、田中さんがおっしゃったのかな。ナノプラットの重要性。これは、やっぱり地方にしっかり、大学も含めてこのネットワークが根付く、その重要性。そこに今は計測、加工、それから合成なんかがそこに載っているわけですけれども、その仕組みをうまく使って、いろんな仕組みをそこに載っけていっちゃう、これからの日本の政策として。それで地方を強烈に活性化する。これは多分文科省だけじゃできなくて、経産省が公設試という感じで地方に根を下ろしているので、やっぱりそこと協力して、日本の地方を活性化するシステムを是非作っていただきたいなと思っています。

【川合主査】
  どうもありがとうございました。長野さん、特に別によろしいですね。御意見ということで。それでは、どうぞ。

【常行委員】
  今のナノテクプラットフォームと地方活性化の件で、今、ナノテクのほう、マテリアルズ・インフォマティクスみたいなものが今この中でフィーチャーされていますが、計算科学的な手法というのは、多分一番どこででもやりやすいもので、ただ、最初にどうしてもサポートが要るというか、方法論、こういうことをやるには何をすればいいのかというのが必ずしもよく知られていない。今現状で最先端でどんなことができるのかというのが分からないというのが多分問題で、その意味でいうと、ナノテクプラットフォームのようなものに計算科学技術のようなものを載せて、どこからでも、最終的にはどこにいても、京コンピューターとか、ポスト京とか、あるいは情報基盤センターとか、いろんな施設を使いながら、計算科学技術を利用できるような体制を作るということも考えていいんじゃないかと思います。

【川合主査】
  それでは、いかがでしょうか。どうぞ。

【福島委員】
  きょうのお話のかなりの部分は、異分野間の融合で新しいものをというところが多かったかと思うんですけれども、そうすると、どこの接点でというのが非常に重要かなと思っています。それは、先ほど小長井先生がおっしゃった材料からシステムの中で、システム、あるいはその先のどんな社会にしたいかとか、どんな人たちがどんな要望をしているかというところからフィードバックされればいいんですけれども、なかなかそれも非常に難しいし、企業がそういうことを分かっているかというと、多分自分たちのやっているところから、時間的にも、それから領域的にもちょっと離れたところだと、何も分からないというのが現状かなと思っています。
  それは、つまり、どこで研究をするか、あるいはどんな人を、先ほどの御議論で、どんな人を育成すべきかというところにも関わってきて、非常に重要なポイントだと思うんですけれども、ただ、やっぱりいろんなこういう研究開発が始まったり、あるいはプロジェクトが始まってしまうと、なかなかそこから固定的になって、その周辺に伸ばしたり、あるいは違うところをやるというのはなかなか難しい部分があるので、研究体制とか研究開発のアイテムのフレキシビリティとか、だんだんそういうことが求められてくるのではないかなというのが、ちょっと私の印象でございます。
  ですから、最近インパクトとか、あるいはSIPにしても、少しそういう観点を入れていただいているようにも思うんですけれども、もう少しそういったアジャイルな、あるいは、特に融合ということを重要視したアジリティみたいなものを今後の研究開発に入れていただく、そういう視点も少し入れていただけると大変ありがたいかなと感じました。

【川合主査】
  アジリティというのは、身軽さという感じですね。

【福島委員】
  そういうことです。

【川合主査】
  どうぞ。

【栗原委員】
  今の御意見に少し答えることにもなるかと思うんですけれども、私どもは、今、材料ナノテクノロジーから低摩擦化技術に迫るというプロジェクトを産官学連携でやらせていただいていますけれども、そこで求められている中で、非常に融合によって加速したと私は理解していることがあるんですが、それは、摩擦中に表面の特性が変わるなじみという現象があって、どういうことが起こっているのか余りよく分からないと。そういうのを分かるためのツールが欲しいということで、私どもはその場で摩擦しながら、元素分析をする、その場観察X線光電子分光装置というのを作っております。それ、XPSなんですけれども、非常に高度なXPSで、日本では同じタイプは2台目というような、その前の装置はSPring-8に入ったというようなものを摩擦研究に使おうということで、中に摩擦をするシステムを入れてということなんですが、それをするには、どうしてもトライボロジーの研究者が何をやりたいと考えているかということと、高度なXPSの計測技術がないとそういうものは立ち上がらないということで、実際にそういう組み合わせですね、日本のXPSを最初に導入した研究室の後継者とトライボロジーの後継者が一緒にやって、今プロジェクトを、2.5年目なんですけれども、機器を導入してからは1.5年、プロジェクトが発足してからは2年という、アドバイザーの先生方は、終わったころにできるんじゃないかと言われていたものが、半分ぐらいの期間で立ち上がってきております。それは、最初の段階では実はトライボロジーの研究者は、XPSのアドバイザーで入っていただこうというようなことを私提案されたんですけれども、複雑さからしてもとてもそれでは間に合わないと思って、最初からきちっと入っていただいて、ほとんどしょっちゅうそういうのを組み込むためには、全体をばらして組み立てるということも必要なんですけれども、そういうときには研究室に全員来てくださって。ということで、非常にいろんなことがスムーズにできております。
  今御質問にあったこととか、今回出ているシステムと基礎とか材料とか、いろんな視点に対して、大学のポテンシャルがうまく活用できているということで、大学には非常に多様な専門家がいるので、それを我々は、顔が見えている大学の研究者、多くの場合ですね。それなので、そういうことでつないでいくということで、これは周りからも使いたいという希望がすごくあるんですけれども、そういうものを、まだ外部に使っていただくにはもう少し時間かかりますけれども、そういうようなケースがありますので、今の御質問とも関係して御紹介したいと思いました。

【福島委員】
  どうもありがとうございます。今のお話で、トライボロジーの方とフォトンエミッションの方がどうやって出会ったかって、そういうプロセスとか、今、簡単に教えていただきましたけれども、そういうのが非常に大事だと思うんですね。多分うまくいった例はそこにあるけれども、うまくいかなかった例も山ほどあると思うので、ちょっとそういうことを、過去にさかのぼって少し研究していただくような、そういう機会を是非どこかに作っていただけれればありがたいなと思います。

【栗原委員】
  今のXPSの研究者は、科学計測研究所のもとの研究者で、多元物質科学研究所、私が所属している組織にいらっしゃる方なんですけれども、実は機械学科に所属している。

【福島委員】
  そういう枠組みがあって、出会いの場があったと。

【栗原委員】
  そうです。はい。

【川合主査】
  ほかにいかがでしょうか。

【榊委員】
  今のお話ともちょっと関連するんですけれども、実は小池先生のお話とも関係があるんですけれども、少しお話ししたいんですけれども、液晶のディスプレイに関する研究は、1967年にRCAで始まっているんですね。フラットパネルのための。同様に、青色LEDの研究もほぼ同じころにRCA研究者が始めていて、それらがいずれも、RCAが企業として不調になって、断念したときに、日本の企業が、松下とかシャープが出てきたというタイミングが実はあるんですね。
  何を申し上げたいかというと、RCAはブラウン管のカラーテレビを作ったということからして、テレビを進化させるという非常にきちんとしたビジョンを持っていて、それの要素技術として、きちんとしたビジョンに基づいてRCAの研究所にアサインされたということがかなり明瞭に書かれている。それが、たまたまですけれども、赤崎先生、松下の技研におられましたので、レーザーが出てきたときに、皆さん実は通信のほうに向いたんですけれども、赤崎先生は、どちらかというと、ディスプレイ系のほうの問題意識を持っていてやられたということなんですね。
  小池先生のお話もそこから延々とつながっていて、液晶の中はよさそうだけれども、実は大きな問題があるということで、実は出口というのは、何十年も前からかなり明瞭であると。ただ、どこまで問題が認識されているかということが一番大事で、そういう面では、摩擦なんかもっと古いんですね。東大の宇宙科学研究所のところで、ソウダ先生という方が、実は摩擦に関する基礎データを学術振興会で昭和10年代に取っているというところからあって、ただ、それが表面科学の最先端と接点を持っているという認識が最近になってやっと非常に強く認識されてきたと思うんです。
  そういう面では、非常にクラシカルな問題点と最先端の技術との距離の取り方みたいなものが、本当は考えれば結構見えてくるんですけれども、かなり成功した例はそういうもので、出口に関しては、かなりクラシカルと言ったら、ちょっと言いわけになるんですけれども、フラットディスプレイと。その問題意識は実は50年前からあって、それの完成度をどんどん小池先生のところもやっておられるんだと思うんですけれども、それを完成させようとすると、ナノ科学の最先端の部分を理解しないといけない。多分そういう認識だと思うんですね。
  その辺が、大学の教員レベルとか、企業はまだあれですけれども、教員レベルがそういうことをどれぐらい認識できているかということで、随分実は研究者の活躍、変わってくると思いますので、きょうは、融合の大切さは認識されたんですけれども、たまたま小池先生が言われたお話は、まさに実はアメリカの企業研究所のビジョンみたいなものが、延々と50年にわたって、それがある面で日本に引き継がれて、日本が最先端だったんですけれども、またそれを追い越されているというような状況だと。それを再度追い抜くための問題意識としては、ナノ材料に戻っていくところがあると思います。ちょっと長くなりましたが。

【川合主査】
  どうもありがとうございました。付け足すことはありますか。

【小池委員】
  先生の言われるとおりでありまして、日本は、液晶テレビを含めて、大きなディスプレイの分野の産業を牽引してきて、それは非常に大きな産業を生んだと思うんですね。日本自身に大きなゲインがあった。ところが、気がついてみると、今、ほとんどがコスト競争によって、日本から生まれてきた構造なんだけれども、それが模倣されて、安く作られるほうに全部取られて、それが完敗に近い状況で今あると思うんですね。
  ところが、きょうお話しさせていただいたように、その構造というのは、液晶というのはどんどん、どんどん家電メーカー主導で動いたものですから、もともとは非常に簡単な構造からスタート、原理はしているものが、じゃあ、今度次の製品にはちょっと赤みを帯びているのを改良しなくちゃいけないからというと、期限が決められるわけですね。半年までにやらなくちゃいけないと。そうすると、じゃあ、このフィルム入れましょう。でも、そのフィルムを入れると、今度は暗くなっちゃうので、じゃあ、しょうがない、スリーエムのBEFを使いましょうということによって、どんどんどんどん、今、我々から見る、材料から見ると、複雑怪奇な構造で、これ1個変えるとこれが崩れてしまうというようなことになっている。
  したがって、この延長上に私は日本の液晶、有機ELも含めたディスプレイの未来はないんじゃないかと思うんですね。これを打開するためには、ちょっとこの色むらをどうするかというので、先ほどちょっと私が今回の例をお見せいたしましたけれども、例えば複屈折という一番の色むらに原因になっているもので、このペットボトルですよ。このペットというのは本当に安くて、コストも安いし、だけど、なぜ液晶テレビに使われてこなかったかというと、複屈折が大きいからなんですね。色むらが大きいから。だけど、逆にそれが何百枚にもなると、複屈折がなくなってくるという原理そのものは、まず材料の分子デザインがよく分かっていなくてはいけないということと、もう一つ、オプティクスが分かっていなくちゃいけないということになると思うんです。
  これをやるためには、私はやはり材料の研究者も、むしろダブルメジャーを持っているぐらい、材料と同じぐらい、このディスプレイのこれに関しては自分はメーンのテーマと同じぐらい分かっているというようなことがやっぱり必要なんじゃないかと思うんですね。連携して同じ屋根の下でやるということは、まずこれはすごく大事なことだと思います。だけど、多くは、学会でもそうです。今私がいろいろやっているときに、じゃあ、違う分野の先生呼んできて、発表してもらうんですけれども、共通語がないんですね。分野が違うので、本当のコミュニケーションができていない。研究にしても、もしそういうプラットフォームを作ったとしても、ごま塩のようにこうやって振っていると、ごまと塩が分かれてしまうようなことではできないと思いますね。
  そういうことで、1人の人がその中でダブルメジャーに近いミキシング、それは材料側からそういう研究者が出てくるということがすごく重要じゃないかと思います。

【川合主査】
  どうぞ。

【田中委員】
  今のことについて短いコメントだけさせていただきますけれども、そういう融合の問題というのは、いろいろな実験を既にされておりますので、それは集中してやるには、文献もたくさんありますし、いろんな経験もあると思います。今の問題、当然皆さんありますけれども、1つだけ申し上げますと、アンダーワンルーフというのが1つのシンボルみたいにして日本では言われていますけれども、それプラス、ミューチャルアンダースタンディングというのがないといかんわけですよね。つまり、お互いの異分野の人たちが相手方の言語を理解する努力をして、そして、実際にアイデアを融合の中から生み出していくというようなことが必要なわけで、そのためには、インセンティブを付与するシステムが大変重要なわけですよ。
  その意味で、今回、3番に、各研究機関における推進体制と方策ということを入れられたのは、大変見識が高いと思います。これをもう少し具体的に考えて、実際に具体策、既にあるんですよね。いろいろ諸外国、あるいは日本の中でもいろいろローカルで努力されたことはある。それを集積しますとかなりの知識が蓄積されていると思いますので、やっていただいたほうがいいんじゃないかと思います。
  それから、最初の講演なんかを聞かせていただきまして感じたことを申し上げるんですが、小長井委員は、つまり、材料サイドとシステムサイドの距離の問題に言及されましたよね。システムサイドの人間が非常に少ないと、どんどん減っていくというような、これは射場委員からもありましたけれども、こういうものをどうやって融合させるかというのは、まさにインセンティブを含めたシステムの工夫、ファンディングの仕方ということは絶対に重要だと思うんですね。これについても幾つかの例があると思いますけれども、そういうことをやらないとうまくいかないだろう。
  それから、学術会議がかむのであるならば、論文数が一種の評価のメジャーとして偏重的に重視されていると。それが短期成果主義を生んでいるというのは、法人化の非常に大きな問題で、これはどこかできちっと見直さなきゃいけないと思うんですけれども、学術会議であるならば、それをどうやって変えていくかという、システムをやはり変えていっていただきたいと。これは行政と一緒にやる仕事もある。あるいは、学術会議が自主的にやる仕事じゃないかというふうに思うわけです。融合研究というのは、先ほども幾つか出ましたけれども、お互いの言語を理解するのに時間がかかりますから、論文は出にくいわけですね。ですから、メジャーをどこかに変えていかないといかんわけで、その議論は少し腰を据えてやるべきではないかと。そういう議論を起こすような、インセンティブを起こすような何かファンディングシステムを考えていただくのは大変重要ではないかなと思います。
  その意味でも、ナノテクノロジープラットフォームは、先ほど曽根委員からも出ましたけれども、非常にいい機会ですし、小長井委員も、先ほど地方大学で非常にオリジナルな研究があると言いましたけれども、だから、一種のプラットフォームにして、公設試、自治体、それから地方大学が、新しいアイデアの源泉になるような運営をこれからもしていっていただきたいと思うわけです。その意味では、インセンティブを付与するようなファンディングの方法その他を考えていただくというのはとても重要な項目であろうと思います。

【川合主査】
  きょう話された四方から、この論点案で、こういうところをもうちょっと加えたほうがいいとか、ここら辺はというコメントがあれば、短くそれぞれの方からどうぞ。

【小長井委員】
  大きな意見ではないですが、大変よく書かれた案だと思いますが、もしコメントさせていただくとすると、4ページの3ポツの大学のポテンシャルを最大限発揮する体制の構築という、ここが非常に私としては個人的に感心があるんですけれども、今までグローバルCOEをはじめ、リーディング大学院等々で、融合をかなり進めてきておりますが、結局学生にはかなり負荷をかけているんですね。例えば材料研究やっている人にはシステムのほうのテーマを副専攻にさせたりとかですね。そういう意味では、そういう学生が育っていって、本当に成果が出てくるというのは、時間がかかると思うんですけれども、私、それよりもむしろ、教員自体が変わっていかなくちゃいけないのに、そこが変わっていかないのではないかという。大学の先生が一番問題なので、いかに教員のマインドを、例えば材料なら材料からデバイス、システムというか、もうちょっと上位のほうから見られるようになっていくかって、そこをどうしたらいいかなと思うんですけれども、そこはなかなか動かせないところではあるかなと思います。
  それから、今回、学術界も交えて議論するということを書いていただいたので、これ、是非実現していただければと思うんですけれども、学会レベルで考えてみると、実は、例えば栗原先生の科学学会とか、応用物理学会って、実は余り接点がないんですよ。でも、提案を出すと、非常に似たようなのが出てきたりするので、学会同士ぐらい、もうちょっと横のつながりを持ってやっていかなくちゃいけないかなと。ここの議論とはちょっと違うかもしれませんけど、そんなふうに思いました。

【栗原委員】
  今のような学会の接点という意味でも、ナノテクとか、エネルギーとか、そういう問題は、みんな、すごく接点、共通基盤のあることなので、やりやすいと思いますし、先ほどリーディングの負荷の話が出たんですけれども、私、今はやっていないんですけれども、リーディングのJSPSの委員会で委員をやっておりまして、サイトビジットもさせていただいたことがあるんですけれども、そのときに、学生さんが負荷をむしろ喜んでいるという。非常に選ばれたという、あの場合は、優秀な方を選んでいくので、そういう雰囲気をすごく受けまして、頼もしいなと思ったということがありまして、ちょっと紹介させていただければと思いました。

【川合主査】
  あと数分ではありますが、何かもし。

【小林委員】
  先ほどちょっと最後の話、時間がなかったので。マテリアルズ・インフォマティクスに絡めて話をしようかなと思って話題を出したんですけれども、結局計算によるバンド計算という、そういう新しい手法、それが融合するような役割を果たしたということで、一応このマテリアルズ・インフォマティクスというのがここにちゃんと材料設計手法、新たな手法というふうに書かれていますが、それは非常にいいことじゃないかと思うんですけれども、それによって更に融合が深まるというようなことがないかなというふうに思いました。

【片岡委員】
  よろしいですか。論文の問題が出ていましたけれども、今の確かに問題は、論文偏重主義というのは大きな問題だと思うんですが、一方において、大学においてきちんと大学院生の教育の一環、あるいは研究者のキャリアとしていい論文をきちっと書いて、それを社会に発信していくというのは、これは極めて重要だと思います。ただ、問題は、じゃあ、それと今のような、例えば材料からシステムへとか、そこをどうするのかということなんだと思うんですが、1つは、もちろん学生に、栗原先生が言われたように、マインドセットをきちっと付けておくということが大事だろうと。つまり、それはやらなくてもいいけれども、そういう社会に対する、科学が役に立たなきゃいけないというマインドセットは付けると。ただし、教育研究はきちっとやらないと僕はいけないと思うんですね。
  じゃあ、受け皿は何なのかというのは、僕はやっぱりベンチャー企業だと思うんですよ。つまり、アメリカなんかは特にそうですけれども、研究者が何でベンチャー企業を作るのかというと、そこにおいてはむしろ社会実装をやっているんですね。だから、1人の人は、プロフェッサーは、大学ではきちっと論文を書いています。それこそ「ネイチャー」や「サイエンス」に出していますね。だけど、一方においては、ベンチャー企業を作って、そこでは社会実装を徹底的にやっている。ある意味では非常にそれを明確に区別してやっているんだと思うんですね。だから、それをきちっと明確に区別してやらないと、結局大学の役割も含めてよく分からなくなる可能性があるので、そういう点では、なぜベンチャー企業でやらなきゃいけないのかという、それが目的になっちゃいけない。だから、やっぱり何でそうしなきゃいけないのかというのは、すぐれた研究成果を着実に社会実装していく最短の役割としてベンチャー企業というのはあると思いますし、やっぱりそういう点でそれが重要なんじゃないかなと。なぜやらなきゃいけないのかというのを書いていただくといいなと思います。

【川合主査】
  僕も委員の1人として一言ぐらいは言いたいんですけれども。すごく心配しているのは、中国や韓国のナノテク・材料分野における論文数がものすごい勢いで伸びていると。相対的には日本の地位が下がっているという現状はやっぱり非常に憂えています。今後の日本の推進方策として、研究している人、特に若い人たちが、信念を持って、新規性の高い研究やハイリスクの研究を、かなり信念を持って長期間粘り続けるというふうな、そういうものができたら、ちょっと首を振っていますけれども、そういうできるシステムというのが非常に大事なんじゃないかと思います。そうしないと、数と、そういうものだけだと、中国と戦っていくというのは非常に難しいと思いますね。
  今度の赤崎さんたちのも、ある意味ではノーベル賞にふさわしいかどうかという議論さえあって、物理としてはそれほどなかった。だけど、薄膜の側としては、どんなバッファー数をやって、どう作っていくかって、それで世の中を変えていったわけで、それを本当に材料やナノテクのところへ続けられるようなハイリスクのもの、そういうシステムで応援してやらないと、日本は難しいんじゃないかなと思っています。
  ただ応援するといっても、具体的になきゃいけないので、やっぱりそういうものをちゃんと応援してやるような人であるとか、それから、研究費であるとか、そういう人がやって失敗してもすぐ首にしちゃわないような、そういったところで頑張る必要があるのかなというのは、個人的な意見です。誰に向かって言っているわけではありませんので。
  といったようなことで、何か御意見。

【小林委員】
  今の問題ですけど、お金の、科研費とか、そういう問題で、額がすごく多くなくても、少額でも、年限をもう少し長くするような、そういう研究というのをやらせてもらえると、研究者はある程度安心してできるんじゃないかなということを言う人たちがいまして、私もそれをいいことだと思っているんです。もちろん途中にいろいろ審査が入るわけですけれども、ただ、少しスパンを長くしてやってみるとか、10年とか、それぐらいは延長可能であると。今のように5年というのが大体区切られていると、やっぱりちょっと短い。それである程度成果を上げるというのは、もうできているものでやらないとできないという、よい成果を上げられたと言えないという、そういう感じになってしまいますから、10年ぐらいのスパンで見てもらえるなら、少し額を減らしても、トータルとしても同じぐらいでやってもらえるといいかなとちょっと思っています。

【松下委員】
  先生、若手から2点だけ申し上げさせてください。1点目は、どうしても今論文数で判断されますので、若手は、論文が出やすい分野へ行きます。つまり、シリコンよりもDSSCへ行くんです。論文が出るからです。短期的に論文が出ないと困るので、そんな難しい論文は出せないです。そうすると、その先がないので。
  ここでもう一つ問題がありまして、じゃあ、それで頑張って研究してきた子たちが、大学でポストを見つけるのが非常に難しいです。なぜなら、地方大学においては、研究よりも教育ができる人材を欲しています。なので、優秀者な研究者のもとで優秀な研究者として育った方たちは、大学のポストを見つけるのが非常に難しくなっています。そこは先生方おっしゃるように、学生のマインドセットの問題だと思いますが、その2点について先生方にお考えいただければと若手としては思います。以上です。

【川合主査】
  一応時間となりました。どうしても一言言っておきたいという方。よろしいですか。
  それでは、本日随分いろんなコメントをいただきました。今後のナノテクノロジー・材料技術の推進方策に反映させていただきます。
  最後に事務局から事務連絡をお願いいたします。

【吉元係長】
  次回の委員会については、来月にありますが、11月13日の午前を予定しております。
  また、本日の委員会の議事録については、委員の先生方に御確認の上、文部科学省のホームページ上に公開させていただきます。
  以上です。

【川合主査】
  では、どうもありがとうございました。これで閉会といたします。

‐了‐

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ナノテクノロジー・材料企画・機構係

(ナノテクノロジー・材料企画・機構係)