第6期ナノテクノロジー・材料科学技術委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成23年4月26日(火曜日) 14時00分~16時30分

2.場所

金融庁9階 共用会議室3

3.議題

  1. 主査代理の指名について
  2. ナノテクノロジー・材料科学技術委員会の議事運営について
  3. ナノテクノロジー・材料科学技術委員会における平成23年度の評価の進め方について
  4. ナノテクノロジー・材料科学技術の研究開発方策について
  5. グリーン・ネットワーク・オブ・エクセレンス事業(先進環境材料分野)について
  6. ナノテクノロジー共用基盤ネットワークの今後の展開について
  7. その他

4.出席者

委員

伊丹委員、射場委員、潮田委員、大林委員、長我部委員、片岡委員、川合委員、北川委員、栗原委員、小長井委員、小林委員、榊委員、袖岡委員、曽根委員、田中委員、中村委員、橋本委員、松下委員

文部科学省

(研究振興局)倉持局長、柿田基盤研究課長、坂本ナノテクノロジー・材料開発推進室長、木村ナノテクノロジー・材料開発推進室室長補佐

オブザーバー

(内閣府)馬場参事官
(JST)中山フェロー、永野フェロー
(ナノテクノロジー共用基盤ネットワークタスクフォース)山本主査

5.議事録

 今回の議事は、主査代理の指名等があったため、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会ナノテクノロジー・材料科学技術委員会運営規則第5条の規定に基づき、開会から議題2までは非公開。

【議題1「主査代理の指名について」】
 審議会令第五条第3項の規定に基づき、委員の互選により、川合委員が主査に選任され、また同第五条第7項の規定に基づき、榊委員が主査代理に指名された。


【議題2「ナノテクノロジー・材料科学技術委員会の議事運営について」】
 本委員会の概要(資料2-1)、運営規則(案)(資料2-2)、公開の手続き(案)(資料2-3)について事務局より修正箇所を中心に説明があり、承認された。特段の意見等は無かった。

以降、運営規則第6条の規定に基づき議事録を公開。

【川合主査】
 それでは本委員会の運営規則第4条の規定に基づいて、これから会議を公開とさせていただきます。傍聴者の方、入室をお願いします。

(一般傍聴者入室)

【川合主査】
 改めまして、私は本委員会の主査を務めさせていただきます川合です。よろしくお願いします。
 この委員会は、文部科学省におけるナノテクノロジー・材料科学技術に関する研究開発計画の作成及び推進等に関する重要事項の調査検討を行うということで、大変重要な委員会だと認識しています。今回の大震災への対応、それからグリーン、低炭素化社会の実現、希少資源に関する対応、さらには震災に伴ういろいろなリスクに関して今回力を発揮したナノネットのようなシステムをさらに増強していくこと、それから次年度の予算に関することなど、さまざまな重要な検討事項がありますので、力を尽くしていきたいと思います。よろしくお願いします。
 それでは審議に先立って、倉持研究振興局長、柿田基盤研究課長よりご挨拶をお願いします。

【倉持局長】
 研究振興局長の倉持です。公開の場になりまして、ごあいさつさせていただきますけれども、まずはじめに先月の3月11日に東北地方太平洋沖地震、大変な震災がありました。お亡くなりになられた方々に深く哀悼の意を表すとともに、ご遺族と被害に遭われた方々に心からのお見舞いを申し上げたいと思います。そしてまだ余震も続いていますし、原子力発電所の状況も予断を許さないものがございますけれども、他方、科学技術の重要施策についての検討は、これまた待ったなしで進めていかなければならない現実がございます。そういうことで、本日この第6期のナノテクノロジー・材料科学技術委員会、第6期の初めての会合を持たせていただくという運びになりました。まず委員の皆様におかれましては、大変お忙しい中、委員をお引き受けいただいたこと、そして本日ご出席賜りましたことを心より御礼申し上げたいと思います。
 前期の第5期のナノテクノロジー・材料委員会、田中主査のもとで第3期の科学技術基本計画の基本方針などに基づいて、それこそ第4期に向けてのいろいろなご議論、政策の検討や評価を行っていただきました。そして、この23年度というのは、まさに第4期の科学技術基本計画がスタートする、いわば節目の年でもあり、科学技術政策全体、大きな転換期を迎えているということだと思います。そして千年に一度と言われる今回の大震災を、どのように受けとめてこれからに活かしていくのか、科学技術政策としてどのようにこなしていけばいいのか、その辺もございまして、この第4期の科学技術基本計画は、本来は3月末に閣議決定をする予定でしたが、現在、総合科学技術会議において、今回の震災を受けて、この難局の克服に向けて科学技術がいかなる役割を果たすべきか、貢献すべきかを明確にするために、追加的に議論が行われているところでございます。
 しかし、骨格は昨年末に総合科学技術会議より示された答申において、既に、従来の重点分野の振興という考え方から、新たに課題解決型の研究開発を進めていくという方向性が打ち出されています。そういった中で、このナノテクノロジー・材料科学技術というのは、これからの広範な分野の科学技術を支える基盤でもあり、まさにコアとして、これまでは日本が強みを持っていた、これからも持っていかなくてはならない、伸ばさなければならない、そういう重要な分野であると認識していますし、まさにこれからの環境エネルギー技術の革新を促すことも含めて大きな期待が高まっていると思います。
 本委員会では、まさに素材立国日本を支えるナノテクノロジー・材料科学技術の発展に向けて、ぜひ積極的なご検討を進めていただきたいと思います。
 先ほど今後のスケジュール等のご紹介もありましたが、先生方の問題意識を存分にぶつけていただいて、私どもは4月1日から研究振興局の体制を少し変えまして、従来の基礎基盤研究課を、基礎研究振興課と基盤研究課という2課体制にしています。新しい体制で先生方のご議論をしっかりとサポートさせていただきたいと思っております。闊達なご議論によって私どもの行政を引っ張っていっていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしく申し上げます

【川合主査】
 続いて柿田課長よりお願いします。

【柿田課長】
 基盤研究課長の柿田でございます。今、局長からお話がありましたとおり4月1日に組織再編がございまして、従来の基礎基盤研究課を2つに分けて、基礎研究と基盤研究ということで、基盤研究課では、Spring-8やJ-PARCに代表されるような研究施設・設備の整備・共用、また、本日ご議論いただくナノテク・材料をはじめとする共通基盤技術の推進を担当することとなりました。
 これまでの約3年間は第4期科学技術基本計画の策定作業に携わってまいりました。いよいよ第4期基本計画が始まりますが、その実行の一翼を担わせていただくということで、大変責任の重さを感じている次第です。本日ご議論いただくナノテク・材料分野につきましては、第4期基本計画で目指す、いわゆる課題の達成、問題解決ということに対して非常に大きな貢献を果たす分野であります。さらに、第4期基本計画の中で掲げる重要課題の1つの柱に、科学技術の共通基盤の充実強化というものがあります。この共通基盤という部分においても、ナノテク・材料が明示的に盛り込まれています。第4期基本計画に示される基本的な方針の下で、具体的な議論を重ねて実行に移していくという段階に入りますので、先生方の活発なご審議をどうぞよろしくお願いいたします。

【川合主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは議事3、「ナノテクノロジー・材料科学技術委員会における平成23年度の評価の進め方について」です。本委員会の役割の1つとして、文部科学省の施策についての評価と、それから実施があります。本年度の評価の進め方について皆様にお諮りしたいと思います。それでは事務局よりご説明をお願いします。

【事務局】  
(事務局より資料3にもとづき説明)

【川合主査】
 ご意見、ご質問がありましたらお願いします。たしか田中前主査のときに、X線自由電子レーザーについて、毎回ご意見がありましたが、今回は検討の結果、ほかの審議会でやる可能性があるということです。

【田中委員】
 X線自由電子レーザーに関してですが、これは行政ではご存じかと思いますが、日本とアメリカ、それからEUの3極で実は持っており、日本とEUは今、建設途上にあります。ところが最近、韓国でもつくり始めています。これは日本の播磨をそのまま真似して、ポーハン(浦項)に、同じような施設を約450億円でつくり始めています。ですから3極でそれぞれ1つという議論は崩れ始めています。アジアがそういう大きな装置を、例えばもっとお金がかかる重イオン加速器などを各国で林立して、個別につくり始めたときに、アジア共栄圏という構想を出しているときに、本当にワークするかどうかが問題です。国際的にどういう話し合いを持っていってそれを調整するのかといったような問題がこれから出てくるのではないかと思いますが、そこは今後注視していただければと思います。

【川合主査】
 それでは次の議事4「第4期科学技術基本計画におけるナノテクノロジー・材料科学技術の研究開発方策について」です。参考資料5がありますが、これは2月15日の研究計画・評価分科会において、審議され決定されています。少し後で説明があると思いますが、本委員会としてもナノテクノロジー・材料科学技術の研究開発方策について検討を行い、取りまとめる必要があります。
 それでは、第4期科学技術基本計画におけるナノテクノロジー・材料科学技術の研究開発方策について、事務局より資料4をについて説明していただき、その後、今後重点化すべき研究領域や課題について、JST/CRDSの中山フェロー、永野フェローより説明をお願いします。それでは、事務局より説明をお願いします。

【事務局】
(事務局より資料4にもとづき説明)

【川合主査】
 ありがとうございます。何かご意見はありますでしょうか。

【松下委員】
 これはつまり日本がナノテクノロジー・材料分野で世界トップをとるための計画という認識でよろしいですか。

【坂本室長】
 おっしゃるとおりです。いかに世界をリードしていくか、はっきり申し上げると、先ほど何人かの先生方から我が国の国際競争力は非常に厳しい状況にあるとの指摘がありました。この素材立国を支えるナノテクノロジー・材料という分野の科学技術をどうやって巻き返しを図っていくか、この戦略が今、必要とされていると思いますので、ぜひ行政、政策としてメッセージを発信させていただきたい、それをまとめいただきたい、そういう趣旨です。

【松下委員】
 例えば教育などの話もこの中に盛り込むということですか。人材育成も一応記載されているようですが、それもここで審議するという認識でよろしいですか。

【坂本室長】
 人材育成の面、当然高等教育政策がありますが、教育と研究は密接不可分の関係にあります。最先端の研究開発を進めていく中で、そういったところで次の時代をリードしていく人材を育てていくことも必要になってきますので、そのときに、研究活動の場で行われる人材育成、学生のトレーニングがあります。そこからポストドクターの方々をどのように育成していくか、そういったところを中心に人材育成についても方針を出していただくことが重要かと思っています。

【片岡委員】
 2ページ目の真ん中に、「我が国のナノテクノロジー・材料科学技術の水準は現状では高いと言えるが」と書いてありまして、実際高いと思いますが、もう少し具体的に書かれたほうがいいのではないかと思います。たしかJSTかどこかが調べた中で、世界のトップ50とかトップ100の研究機関の数が他の分野に比べてナノテクノロジー・材料分野は圧倒的に日本の数が多かったと思います。そういうことも具体的に入れておいたほうがいいのではないかと思います。

【川合主査】
 ほかにいかがでしょうか。
 本件はこれから何回かやっていく中で、加筆・修正しますので、次に進めさせていただきます。別紙及び参考の今後重点化すべき研究領域・課題について、JST/CRDSの中山フェロー、永野フェローより説明をお願いします。

【中山フェロー】
 JST/CRDSの中山です。詳細は永野から説明しますが、これまでの経緯に関して説明させていただきます。
 今後重点化すべき研究領域・課題について、このたたき台からご検討いただくということですが、これに関してはお手元の「ナノテクノロジーグランドデザイン」と「日・米・韓・台ナノテク国際ワークショップの報告書」を分析し、さらに川合主査、前主査の田中委員、文科省ナノテクノロジー・材料開発推進室と共同でたたき台を作成しました。たたき台ですのでまだまだ濃淡があります。今後いろいろなご意見を可能な限り先生方からいただいて、進めていただければと考えています。
 ナノテクノロジーに関して、競争力を先導する基盤となるところ、そしてライフイノベーションに対応するところ、グリーンイノベーションに対応するところの3本柱で構成していますが、基本的にナノテクノロジーは横串、本質的に融合が最も進む、融合によって競争力をさらに先へ進めていくという技術領域であることはきちんと認識した上での内容にしていくべきではないかと考えています。
 厳しい国際状況の中で巻き返しを図っていくためにしっかりとした内容が求められると考えていますので、本委員会でのご検討をよろしくお願いします。

【永野フェロー】
 JST/CRDSの永野です。資料4に関連して、別紙及び参考資料について説明します。
 今後、本日を含め、このナノテクノロジー・材料科学技術委員会でご議論をいただくためのたたき台として、文書を作成させていただいています。
 まず、参考資料を最初に説明しますが、この別紙の文章を作成する背景として、この参考の1ページ目に記載のJST/CRDSで過去数年にわたって開催をしてきた3つのワークショップの議論、1.「物質・材料分野」俯瞰ワークショップ、2.「ナノテクノロジー分野」俯瞰ワークショップ、3.「ナノテクノロジー・材料分野」俯瞰ワークショップ、これらにおけるナノテクノロジー・材料分野の今後の重要課題や最新の研究開発動向等について、国内外の専門家の皆様にお集まりいただきご議論いただいた内容を参考にしながら、CRDSで検討したものです。
 また、お手元に「ナノテクノロジーグランドデザイン」という冊子を配布していますが、ナノテクノロジーの全体的な今後の考え方、グローバルな動向を踏まえた上で、我が国がどういった戦略をとるべきであるかという考え方を取りまとめたものがあります。
 こういったワークショップや報告書等を作成する過程の議論に、ご協力いただいた先生方のリストを2ページ目以降につけています。日本人及び海外の方も含めて延べ130名余りの方々のご意見を背景として、1つのたたき台として作成したものです。
 続いて、別紙の文章を説明します。大きな構成としては4つの章立てをしています。そのうち前半3つと、残りの1つに分かれており、3つの方は1ページ目の文章に入ったところ、上から2行目をごらんいただければと思いますが、第4期科学技術基本計画において重点化されるグリーンイノベーションに対応するような「環境・エネルギー」の課題領域、そしてライフイノベーションに対応する「医療・健康・介護」の課題領域、さらにこの両者を支えながら常に新しい発見や技術シーズを生み出すことによって、両者の最先端研究を牽引する「科学技術基盤」の課題領域、この3つを大きな骨格としています。
 さらに、この1ページ目の下から4行目ですが、とりわけ平成23年3月11日の東日本大震災の発生以後においてナノテクノロジー・材料科学技術として貢献が強く求められる可能性の高い課題を、4番目の章としています。
 2ページ目以降は、詳細な技術についての説明のため省きますが、以上のような背景と構造を踏まえて、第4期科学技術基本計画の実施期間中に、特に重点的に取り組まなくてはならないと考えられる各技術課題、キーワードを、箇条書きで記載しています。
 本日の資料はたたき台ということで、不十分なところもあるかと思いますが、CRDSにおけるワークショップやご意見をいただいた先生方の知見を参考にしながら、以上のような観点で、「環境・エネルギー」「医療・健康・介護」「科学技術基盤」の3つの章について書いています。
 それから最後のところ、震災からの復興対策や災害対応・予防策のナノテクノロジー・材料科学技術の部分についてはまだ十分な議論、検討を経ることができていませんが、今後おそらく重要となってくるのではないかと想定される課題を幾つか箇条書きで記載しています。まずはそのような前提であることをご理解いただき、今後本委員会でご議論いただければと思います。

【川合主査】
 ありがとうございました。それでは、質問等ありますか。

【伊丹委員】
 今回の東日本大震災が日本の産業構造、10年、20年規模で大変動を起こさせるだろうと思っており、今から40年近く前に起きた石油ショックと同規模の大変動が起きると思っています。それに対してナノテクとか材料科学技術がどういう貢献ができるか、そのための準備を今からどうしておくかという視点がどうしても必要だと、もっと強調する必要があると思います。
 一番最後の説明で、東日本大震災の影響について分散型とかそういった集中的なエネルギー供給のあり方について、これも大きな問題点だと思いますが、それ以上に私は、電力そのものの供給量が今から増やせない、今の状態からあと20年間、仮に増やせないとしたら日本の産業構造はどうならねばならないのかという非常に危機的な状況にあると思います。
 1973年のオイルショックの後、例えば鉄鋼業は成長がぴたりと止まりました。明らかに資源危機の影響が産業の成長に大影響を与えた例です。自動車産業はそこから成長を続けました。これは省エネ化の進んだ日本車に対して世界的な需要が伸びたためです。そういったことを考えると、実は日本の産業構造というのは、40年前から発展し続けていますが、石油輸入を減らしながら経済全体が成長するという、当時だれも信じなかったようなことを科学技術のおかげでやれたのだと思います。今回は電力の世界で何かやらざるを得ないことに多分なってくる、そのための科学技術のベースがナノテクだと、私は直観的に思っていますので、そういうことを大きく謳うような加筆があったほうがよいのではないかと思います。
 もし、トータルの電力使用量を増やさずに経済成長が10年、15年続けられるということを可能にして世界に示せれば、資源制約を抱えた世界各国の経済に対して、非常に大きな貢献を日本はできることになると思います。そのような視点がぜひ必要ではないかと思います。

【田中委員】
 JST/CRDSの永野から説明がありましたが、最後の部分については、今、伊丹先生からご指摘のあったような視点も含めて、我々JST/CRDSでも議論をしており、ここに書いてある以外にも幾つか既に出していますが、まだここでの位置づけが決まっていないため、ここまでの内容でとどめてあるのだと思います。
 幾つかナノテクができることを我々なりに書き足しています。日本の電力は火力、水力全部集めれば2001年の最大需要電力に対応するだけの供給能力があります。しかし、その中で一番大きな問題は、周波数変換であって、それが1ギガぐらいしか容量がないために、スマートグリッドが働いていません。ですので、やり方としては例えば、原発の代わりに送配電網を再整備するという方法も考えられるわけです。それは伊丹先生のおっしゃるように、いろいろな選択肢があると思いますし、その基本戦略ができないと、なかなかそれに付随した具体的な技術目標も出てこないという、そういう一面もあると思います。
 しかし再生可能エネルギーをとにかく前倒しでやるということについてはどういう選択をしてもあるだろうと思います。多分伊丹先生はそのことをおっしゃっていると思いますが、そういうことをここへ書き込むことは重要なことであると思いますし、その書き込みはまだやっていないと。永野が申したとおり、ここでの議論をベースにしてどういうスタンスで書き込むか検討が必要です。
 それから文科省にも環境エネルギーというのがありますし、ナノテクもかかわってきますから、それは行政のほうでうまく整理していただくことが重要だと思います。

【伊丹委員】
 2点だけ補足します。私は、再生可能エネルギーの問題は大切な問題と思いますが、それ以前に、現在ある産業がいかに電力を使わずに済むようにするかというタイプの技術のほうがより大切だと、世界に対する貢献が大きいように思います。
 もう一つ、この場で、今、私が申し上げたようなことが大規模に書けるかどうか。将来の日本のエネルギー政策が原子力にどれぐらい依存するかというと、4~5割依存するという計画を既に政府として持っているわけです。そのときにそれが増やせないということを前提にした計画がつくれるか、もっと減らさなければならないという計画を前提にしたようなことを文部科学省のドキュメントに書けるかというのは、また別の問題があると思うので、書かなかったから承知しないなどと言うつもりはありません。

【橋本委員】
 まず、これの位置づけですが、今後重点化すべき研究領域・課題ということで、「重点化すべき」と書いてありますが、ここに書いていないと、今後何かいいものが出てきても取り上げられないため、現時点ではできるだけ網羅的に書いているということで、そのようにしている意味はわかります。一方で、今、何を求められているかというと、ずっと科学技術基本計画の中でやってきて、我々がいつも批判されるのは、お金を出して成果が出ても役に立たないのではないか、そろそろ役に立つものを出せということです。そのため、4期はそれを全面的に出しましょうということで、課題解決型という方針になっているわけですが、このような書き方では、実際、我々現場でやる人間から言うと、実はほとんど考え方は変わらない。
 少し言い過ぎかもしれませんが、このような書き方ではなく、やはり思い切って、ここでどんと変わるんだよというメッセージが伝わるような表記法に変える必要があるのではないかと思います。
 具体的には集中の話ですが、過度な集中はよくない。集中の話をすると必ず我々は過度な集中はよくないという議論をします。実際そのとおりで、ちょっと集中され過ぎていると実際思いますが、一方で集中され過ぎていると言われながら、相変わらず、本当に出口に近い研究が行われているか、そういうことを意識した研究がたくさんされているかというとそんなことはないということもあると思います。ですので、伊丹委員が言われたように例えば電力を少なく使う技術とか、あるいは田中委員が言われたような再生可能エネルギーとか、あるいは資源の問題でも良いです。そういう具体的な、ある程度目標を幾つかしっかり選んで、ただしそこだけに集中するのではなく、やはり多様性も極めて重要ですから、割合はわかりませんが、そのように分けて、国としてこういうところに今までの成果を持って集中するのだということを言い切るぐらいのことをやらないと、同じようなことになってしまうのではないかという気がします。
 そういうことをやるためには国家戦略全体と絡んでくるので、本委員会だけで議論ができるような話ではないと思います。ですので、そういうキャッチボールを一体どこでやるのかということも考えてご説明いただいた上で議論しないと、このままやっていくと各論が並んでしまうということにつながっていくのではないかと懸念しました。
 もう一点ですが、ここでは最先端のサイエンスに基づいて、材料の話をやっていくわけですが、一方で今社会が強く求めているのは、今回の震災の復興など、現実にある問題にどれだけ貢献できるかという話もあります。それは実は最先端のサイエンスが使えるものもあるかもしれませんが、それよりは既存の技術の中の組み合わせで、今無いもっとよいものというアプローチもあるわけです。そのほうがずっと効果が大きいと思いますが、それはここでの議論の対象にはならないのでしょうか。これは質問です。

【坂本室長】
 ありがとうございます。非常に貴重なご指摘です。伊丹先生からご指摘のあったところ、どういう社会構造を我が国が求めていくかという視点が、こういう非常に基礎的な研究まで貫かれた、そういったアクティビティーを国が積極的にサポートすることは非常に重要になっていると思います。これは新しい第4期科学技術基本計画の中の科学技術イノベーションといったところの考え方にまさしく直結するものだと思います。
 一方で、これは非常に言いにくいところですが、そのキャッチボールです。はっきり言ってこれは行政的に非常に難しい。政策あるいは技術を実用化する企業の現場、それからその研究の現場、研究もトランスレーショナルな研究をするところからさらにベーシックなところにまでさかのぼると、理論的なところ、原理的なところ、そういったところを結びつけるという政策については、我々まだ十分なものを持っていません。いろいろな制度でそれを促進しようとしていますが、まだまだ有効なものは持っていないと言わざるを得ないかと思います。そこは我々が引き続き考えていきます。
 その中で、文部科学省の中では、環境エネルギー課が研究開発局にあります。これは、わかりやすく言うと、出口寄りの政策を見据えてどうその分野のコミュニティーを支えていくかというところ。その中に材料、あるいはナノテクノロジーというものが必ず組み込まれる、ほとんどの場合組み込まれていると思うので、そこをどう結びつけるかというのを局をまたがりますが、しっかりやっていきたいと思います。
 この後にご説明する新しい事業は、まさに1つのトライアルになるかと思っています。伊丹先生のお話に戻りますが、社会的ニーズと言ったらちょっと平たい言い方になりますが、その追求する社会像というものから解き起こして、どういう技術を想定し、さらにそれに対してサイエンスがどう貢献するかということ、そこを結びつけることは一生懸命考えたいと思います。

【川合主査】
 まず本委員会だけで議論するのでなく、文科省全体の方向、もしくは内閣府も含めて、うまく連携がとれるようにという示唆でしたので、よろしくお願いします。
 それからもう一つあったのは、最先端だけではなくて既存技術です。それももちろん取り入れていくというのが重要だと思います。永野フェロー、何かそれに関して、ありますか。

【永野フェロー】
 先ほど橋本委員からご指摘のあった点について、現状の文章をどういうスタンスで書いているか補足しますと、資料4の20ページをごらんいただければと思いますが、これは昨年度のナノテクノロジー・材料委員会においてまとめた、中間取りまとめの参考図で、ナノテクノロジー・材料分野の重要課題をとりあげたものです。1年前の時点では、ナノエレクトロニクス、グリーンナノテク、ナノバイオ、新物質・新材料、そしてナノ基盤技術・物質材料制御技術/ナノサイエンスと、こういった大きなとらえ方で議論がされてきたという背景、経緯があります。
 これをベースに、重要課題を書いていますが、この委員会でご議論いただく際に、抜けているものを新たに追加するより、消去法の方が効率的かと考え、現時点ではなるべく広く書いています。これから数回にわたってこの委員会でご議論いただき、抜けているものを新たに加えていくというよりも既にあるものを削除していく、そういった作業のほうがより効率的ではなかろうかという観点で、なるべく広く書かせていただいているというのがございます。
 それから強弱の問題についても、まさしく橋本委員がおっしゃったように、特にこれから変わった点を示すものであるとか、またはその逆になるようなものもぜひご議論をいただければありがたいと思っており、現時点ではなるべく色をつけていない状態のものです。
 そしてもう一つだけ補足ですが、「環境・エネルギー」それから「医療・健康・介護」、そして「科学技術基盤」といったとき、資料4の20ページの図とは必ずしも対応はしていません。特にナノエレクトロニクスという1つのナノテクの大きな領域が見た目では消えていますが、今日の文章ではナノエレクトロニクスを、1つの考え方として主には省エネと、多機能化、こういった2つの大きな流れがあるのではないかという考えに基づいて、省エネに関する部分は「環境・エネルギー」の課題、それから「科学技術基盤」、そして多機能化に関してはグリーンナノテクやナノバイオ、そういった全般にかかわってくるのではないかということでそれぞれに分けて書いています。

【川合主査】
 いずれにしてもこのペーパーは本委員会クレジットでまとめていくものですので、今後、皆さんからのご意見を入れて、取りまとめていくと、そういうことでよろしいですね。

【永野フェロー】
 はい。

【曽根委員】
 今の橋本先生のご意見、既存のもの、そういうものを組み合わせていろいろ、世の中にとって有益な技術をもっとうまくつくっていけるのではないかというご意見だったと思いますが、ここではハイエンドのいろいろなテクノロジーが書いてありますが、多分橋本先生のご意見を私なりに頭の中で整理してみると2つの方向があるかと思います。1つは同じものをつくるのであっても非常に省エネなプロセスの革新。これは非常に重要だと思います。省エネで物をつくるということは、非常に低コストで物をつくれるということ。実はこの中でも、グリーンナノテクの中には幾つか入っていると思いますが、そういう技術が非常に重要になってくる。これは今、この震災があったからというよりも、もう産業界では、ある意味で新興のアジアのマーケット、マスを出すマーケットをどうするのか。あるいは欧米なんかに対して先進の技術を導入するプロダクト、その2つに分かれて、特に前者の低コストで物をつくる技術が非常に重要になっていますし、産業界もそういう方向でかなりいろいろな努力をしていると思います。それがすごく加速しているのではないかと。つまりここで、ある同じ物をつくるのでもプロセスをいろいろイノベーションしていく視点が重要だと思います。
 それからもう一つは、今回の震災でも非常に強く思ったのですが、個別の技術をうまくネットワークやシステムにして、非常に高度な、全体としてのシステムをつくり上げるというのですか。そのためにはユビキタスネットワークというかエネルギーハーベストの技術も必要でしょうし、センサネットワークの技術、それから分散電源なんかもそうです。ネットワーク化をどうやって、既存のものを組み合わせて今までよりも質的に違うものをつくり上げる。その2つの方向が重要になっているのではないのかと思いました。
 それらについては、これをベースに、ちょっと視点を変えることによって記述できるんじゃないかと思います。

【橋本委員】
 補足させてください。私が申し上げたのは、既存技術を組み合わせるほうが重要だと言うことではなくて、ここのミッションは最先端のサイエンスをベースにした材料だということはよくわかっております。世の中に貢献するという観点からいうと既存の、例えば材料だったら既存の材料を新しいセンスで組み合わせることによってつくるということも当然できるわけで、そういうこともここのミッションに入れるべきなのかどうかとご質問しました。
 それはなぜかというと、最先端のサイエンスをやっている人がそういうセンスで既存のものを見るとまた違った発想が出てくるということは我々よく知っていることです。ですので、そういうこともここに入るのですかということで質問をしました。

【栗原委員】
 橋本先生のコメントについて、私もそのとおりだと思います。例えば膜や分離膜を例にあげてみても厚みが薄くなると性能が非常に変わるなど、そういう意味で既存の技術に先端性を入れることで、いろいろな革新、特に材料では非常にたくさんの革新があると思います。分離膜について言えば従来からの技術がたくさんあると思いますので、それらの既存技術をいろいろなカテゴリーの先端のサイエンスにどうつないでいくかということが非常に大事なのではないかと思っています。

【中村委員】
 伊丹委員の一般論に戻りたいのですが、第4期の基本計画というのは5年間の計画で、最近いろいろなことがあったことを踏まえると、多少平和ぼけのような雰囲気がします。グリーンナノテクとかグリーンイノベーションというのは完全に平和ぼけした言葉で、読んでみると非常に弱いと思います。やはりエネルギー安全保障とかそういう強い言葉に直すべきです。全体像がどうなるかは別ですが、私はこの委員会としてはグリーンが何とかというようなものではなくもっと強いものに、積極的なものというか、やはり今、戦時体制のような心構えで5年間乗り切るんだというようなニュアンスが出るようなものにしたほうがよいと思います。ですからこの5年間に何をやるかということですから、この5年間はなかなか地盤沈下してもとに戻らないでしょうから、そういうニュアンスのことをぜひここに組み込むべきだと思っています。

【川合主査】
 事務局どうでしょう。一応第4期のそういうキーワードのもとにやるという上の委員会での制限がありますよね。でも、ラジカルにいけば中村委員が言ったようにちょっと激しく表現してもいいのか、そういうことは許されるのでしょうか

【坂本室長】
 グリーンイノベーション、ライフイノベーションという考え方の中でそういうエネルギー安全保障、あるいは資源安全保障というものを強調していくというのは十分可能だと思いますので、そこはきちっとそういうものを。戦時体制とはさすがに言えないかもしれませんが、それぐらいの危機感を出すような表現については、少し工夫させていただきたいと思います。

【射場委員】
 震災のことで記述が不十分というお話がありましたので、ちょっと情報を言うと、今、弊社は自動車の生産、50%ぐらいしか生産できていません。日本のメーカー全部そうですが、GMとかフォードも一部とまったりしています。部品メーカーは、弊社は名古屋、中部地区に多くあるので、部品メーカーは被災していないですが、部品メーカーが使う材料がない。その材料のメーカーが被災した地域にたくさんあったということです。
 これを裏返しにしてみると、そういう世界中で自動車をつくるための重要な材料は、東北地方のメーカーが握っていた。これは大きな材料戦略だと思います。今まさに中国や韓国のメーカーがその日本が握っていた材料を代わりにつくって取りに来ようとしているときで、一時的に取られる部分もあるかもしれないですけれども、それをいかに早く復旧して、また新しい次世代の材料をそこに入れていくという考えがこの震災対応の1つとして要るのではないかと。
 さらに言うとナノテク。少し慎重に新聞を見ていただくと、その何の材料がとまっていると全部書いてありますし、その中に例えば触媒の添加剤だとかゴムの添加剤など、ナノテク関連のものがたくさんあって、そういうところと関連性を持たせるというのも1つのやり方かと思います。

【小長井委員】
 これから例えば再生可能をどんどん導入していくに当たっても、いろいろなルートがあるはずです。例えば太陽光発電をメインに考える人もいれば、水素を考える人もいるのであって、この場でどういうふうにすべきかということはちょっと議論する場ではないと思いますが、いろいろそういうようなルートを描いたものを、俯瞰したものが1つ必要だと思います。それと同時にやはりその中の要になるのは先ほど来言っているように材料技術ですが、その材料技術でも今ほんとうに必要なナノ技術と2020年、30年、40年に必要なのは全然違うと思います。ほんとうは今、他国に負けないで必要なものは2010年、20年の技術です。今そこで負けてしまうともう将来はないですね。だからそこら辺しっかり色分けしてやる必要があると思います。
 2020年と2050年で必要なナノ技術は全然違うと思います。今までどちらかというともっと遠いところを見てやっていたということもあるので、これからの技術課題重視という形になっているのだろうと私は見ていますが、そういう意味ではやはりもう少し2020年ぐらいのところをしっかり見据えてやらないと大変なことになると思います。

【坂本室長】
 1点。内閣府の馬場参事官がいらっしゃいますので、先ほど私が橋本先生のご指摘を受けて研究政策という面、ナノテクノロジーと、それからあと環境・エネルギーという視点、視点が違う研究というものをどう結びつけるか、そういうところだけお話ししましたけれども、より高い視野で物を考える必要があると川合先生からご指摘がありまして、そういう意味では当然経済産業省、今日は北岡戦略官がいらっしゃっていますが、経済産業省ともしっかり連携をしていきたいと思いますが、馬場参事官、内閣府のお立場で、特に産業政策を含めた社会像とサイエンス、テクノロジーをどう結びつけていくかという、先ほど小長井先生からも俯瞰したものが要るんじゃないかと、そういったところでどう内閣府として取りまとめていくか、何かもしお考えがあればお願いします。

【馬場参事官】
 内閣府では、この度所属といいますか組織体制が変わって、共通基盤技術グループという中のナノテクノロジー・材料担当という位置づけで、私は仕事をしています。
 今まさにいろいろ議論がありましたが、この震災を受けて第4期の科学技術基本計画を修正しようという活動をやっています。それは、先ほど平和ぼけというお話もありましたが、やはり通常の状態ではないという認識のもと、この緊急事態に対してどう科学技術が対応していくかと、そういう視点で計画を変えていくべきだという話が出ていまして、今まさにそれをやっているところです。
 おそらく課題解決型という軸は変わらないと思いますが、今まではグリーン、ライフという2大イノベーションの軸がありましたが、それと同列かあるいは少し変わった形になるかもしれませんが、この震災を受けて復旧、復興、あるいは、産業としてもう一回日本が立ち直るための施策をつくり上げるべきという話が出てきていまして、そこは文科省あるいは経産省の戦略と合わせていくべきだと思います。
 そういう意味では最先端の科学技術はもちろん大事ですし、それから復旧、復興に向けた、今ある技術をもう少しブラッシュアップすれば何か現実のものに使えるというのがあればそれも積極的に進めるべきだという話が今どんどん出ていますので、そういう視点もやはり大事だと思いますので、そこら辺も考慮しながらいろいろ検討していただけるとありがたいと思っています。

【川合主査】
 わかりました。そういう意味では、ぜひいろいろ、この委員会とほかともうまく連絡をとってキャッチボールをしながら進めていくということで。
 まだご意見がたくさんあるのは十分承知の上ですが、本日いただいたご意見に関しては今後の検討にもちろん活用させていただきます。それから資料4のこの方策に関しては、今後の修正方針を述べましたので、それをベースに議論していきます。
 それからこの重要研究領域・課題に関しては今日受けたご意見と、それからまだご発言されていない方もたくさんいると思いますので、事務局から各委員へメールで送って、ご意見もいただきつつ、JST/CRDSとも作業しながら、進めていきたいと思います。
 それではこの議題に関しては、今日はここで打ち切らせていただいて、次の議題に移ります。
 次は議事5「『大学発グリーンイノベーション創出事業』「グリーン・ネットワーク・オブ・エクセレンス事業」(先進環境材料分野)について」です。事務局よりご説明をお願いします。

【事務局】
(事務局より資料5にもとづき説明)

【川合主査】
 どうもありがとうございました。これはもう予算化されて、今後公募にかける上での基となる文章ですが、何かご質問ありますか。

【橋本委員】
 こういう施策は大変重要ですし、ここに書かれていることはほんとうにすばらしいと思います。ただ実際にやると考えると極めて難しいです。これは幾つかの大学が一緒になってあるテーマを定めてやるということだと思いますが、ここに書かれている具体的事例というのは、各大学でやっている人を集めてもできないです。
 それで多分、こういうことをやりましょうよとどこかが指令を出して、それに対して参画できるような人たちが各大学で集まって、それに向かって走るということを期待してつくっているのだと思いますが、そのためには何がそれを誘導できるかというと結局研究費だと思います。各人が持っている研究費はある目的で申請してお金を取っているわけで、それを持ち寄ってというのはなかなか難しくて、その目的がぴったり合っているということはほとんどあり得なくて、そのためにはやはり研究費があって、こういう目的で皆さん、アイデアを出してやりましょうということをやらないといけない。
 そのためには、やはり今のこの厳しい中でこの4億円というのは極めて難しい、大切なお金だとは思いますけれども、やはりなかなか厳しいと思います。かといって今後、これをどんどん増やすこともできないことを思えば、何を具体的にやるかというと、この具体的事例の書き方があまりにも個別過ぎるので、具体的事例の書き方をもっと工夫する必要があるということ、それからもう一つはやはり私あちこちで申し上げていることですけれども、こういうネットワークがとれる競争的資金を別途用意するという施策をある程度用意するということをあわせてやらないと、つくったはいいけれども、それだけで終わってしまうということになりかねないと思います。
 今回はもう間に合わないので、ここに書かれている2件というのが私は非常にいい数字かなと。1件のほうがほんとうはいいですが、1件ではあまりにも危険過ぎますから、2件がよく、その中で、ここに書いてある具体的事例の書き方をもっと工夫をする必要があると思います。

【片岡委員】
 橋本先生の意見にも近いかもしれないですが、こういうものはすごく重要だと思います。それでこのネットワークが、例えばここに、一番最後のところに3つ出ていますが、各機関があって、ここのそれぞれの代表機関とそれぞれの機関がそれなりの力を発揮して動けば、すばらしいことになると思います。しかし、多くの機関が参加してやると、実際問題としてこのすべてが同じポテンシャルで、かつ同じアクティビティーで動くかというと、それがどうしても保証されない場合が多いのではないかと思います。
 つまりまとめてこれを公募するのがいいのか、あるいはこういうことを前提に、ばらばらに公募して、その中でつくっていくというのも、時間が5年ですからなかなか難しいかもしれませんが、そういうことをしないと、実際にやってみるとどこかが落っこちたりとか、そういうことが起きるのではないかという懸念があります。非常に多くの機関が一緒に入ってやる形であるならば公募の仕方は非常に工夫が要るのではないかと思います。

【潮田委員】
 新しいおもしろい提案だと思いますが、産業界の関与、参画はどのようにイメージされていますか。

【坂本室長】
 実質的に、先ほどの成果目標に到達することを5年でやることを考えると、ある程度構想を持っていないと実際難しいだろうと思います。はっきり言いますと白地のところから、基礎的な研究の構想から成果目標まで提案するのは難しく、ある程度企業との間でいろいろな研究開発の協力が行われていて、今、ご提案しているような領域に近いことも行われていて、今までこういった人材を結集してやるということ、やる機会がなかったというネタをお持ちの方を引っ張ってくるというのがこの事業の意味かと思っています。そういう意味では産業界との協力は、いきなり代表機関という形ではなく、協力機関というのが現実的なところではないかと思います。

【潮田委員】
 やはり最後ものにするというのがもちろん、5年後はシステムをつくり上げるということでほんとうに実用化するかどうかは別にして、そこに至るまでの道筋に関して、アドバイザー的な形でいろいろご意見を申し上げるほうがいいのではないかと思いました。ただ中身によっては、企業で受けるというよりもやはりベンチャーで、新しい産業として出ていくことももちろんありで、そういうものが非常に重要だと思うので、決める必要はないのではないかと思いますが、産業界との連携もよろしくお願いしたいと思います。

【射場委員】
 システムをゴールに置くのは大変厳しいと思いますが、民間企業で新材料のシステムをつくろうとすると設計の部署とかプロセスの部署とか、一番最初は企画の部署。それを全部巻き込んでやっていかなければいけない。その全部に材料の研究者が入り込んで順次やっていくという形になります。このプロジェクトがうまくいけば、そういうスキームの開発ができる人材を育成する良いひな形になるかと思います。
 そのプロジェクトがうまくいくかは、テーマのおもしろさとリーダーのリーダーシップにかかっていると思いますので、そういう人をどう選ぶか。あと研究対象の領域は、ALCAとかCRESTの対象領域とは違うテーマをちょうど今回は対象に置いているので、幾つかおもしろい提案が出てくるのではないかと思います。

【長我部委員】
 最終的にシステム検証に近いことをやるプロジェクトなので、ここに挙げている例だと個々の部品の成立性ぐらいまでは実施しやすいと思いますが、1つのシステムにしようとすると材料研究者以外の人が入る必要があると思います。最終的な検証で困ると思うので、よく体制を設計したほうがよいと思います。

【川合主査】
 どうもありがとうございます。
 本日いただいたご意見はもちろん反映することとしますが、これは先ほど説明があったように5月19日の環境エネルギー科学技術委員会の議論と整合性をとらなくてはならないので、ある程度修正が生じることがあるので、必要であれば再度ご相談させていただくということで、今のような形で進めさせていただきたいと思います。

【坂本室長】
 1点だけよろしいですか。今のご議論で一応1つの領域2課題程度という方向でこの事業設計を進めていくということで、もしご了解が得られるのであれば、今、2つ提案させていただきましたが、どちらを第1候補としてどちらを第2候補とするかとか、このプライオリティーづけの議論は今ありませんでしたので、そこは事務局に任せるということであれば環境エネルギー課と相談しますが、もしそういったご意見ありましたら参考にさせていただければと思います。

【榊主査代理】
 先ほど皆さん、ご指摘されましたけれども、この2つの領域はほんとうにいいプロポーザルであれば、どちらも発展があると思いますが、場合によってプロポーザルの一方がスレショルドを超えているけれども他方はどうかというようなこともあるかと思います。プロポーザルを受けつける側から見たときには、こういう2つの入り口にしておいて、採択に関しては必ずしも各領域が1つずつ選ばれるわけではないという、あるいはそれを少し調整するという可能性もあるかと思います。ただし手続的にはそういうことは大変難しくなってしまう。ですから、これは場合によるとひっくるめて募集をして、その中のいいものを適正な範囲でとっていくというやり方もあるかと思います。ただ、行政的には大変難しい問題に入るので、思いつきのようなことを今、申し上げましたが、とりあえずコメントとさせていただきます。

【川合主査】
 そのような意見も含めて、環境エネルギー科学技術委員会ともある程度整合をとりながら進めていただければと思います。
 それでは、議事6「ナノテクノロジー共用基盤ネットワークの今後の展開について」です。ナノテクノロジー・ネットワークは今年度が最終年度に当たるため、タスクフォースを設置して、昨年の12月からナノテクノロジー共用基盤ネットワークの今後の展開についての検討を進めています。本日はタスクフォースの山本剛久主査にご出席いただいていますので、現在の検討状況についてご報告いただき、その後に少しご意見をいただければと思います。山本主査、よろしくお願いします。

【山本主査】
 東京大学の山本と申します。タスクフォースでは、現在、共用基盤ネットワークの第3期目について、いろいろと議論しています。タスクフォースの構成員は、資料の4ページ目をご参照ください。
 共用基盤ネットワークというのは、大学・研究機関等が有している先端の研究設備を外部にオープンして、学外、あるいはその組織外の人が利用できる環境をつくり、さらには、積極的に技術支援にも協力していこうということで、ネットワークを組んで支援事業を行っているということです。単にネットワークを組むだけではなくて、ネットワーク化することによって知的基盤、それから研究情報基盤を整備していくことができるということです。
 簡単に過去2期にわたって行われている内容について紹介しますと、第1期は、平成14年から18年までの5年間にわたって行われました。全部で16機関参加して、非常に多くの支援実績を上げることに成功しました。
 第2期は、平成19年度から本年度までの5年間にわたって行われており、第1期で成し得なかったことをさらに改良して進めていくということで組織等の組み合わせを多少変えて行っています。
 第1期、2期の組織の違いですが、ナノ計測や微細加工、分子合成など日本中に散らばっていた16の機関が分野ごとにネットワークを強固に結んで、支援に当たったというのが第1期です。
 これはこれで非常に多くの実績を上げましたが、第2期ではさらにその分野間、要するに技術分野間の連携をさらに強めようと、そしてイノベーションを起こしていこうということで組み直しました。第2期では各地方にそれぞれの分野を複数またがって支援できるよう拠点配置して、それをネットワーク化しました。
 以上のような第1期、2期のいいところ、改良すべき点を今、議論しており、いずれ報告書として出させていただければと思いますが、その中間報告です。
 現在、具体的な仕組みの検討の中で抽出されてきた課題は、次代を担う若手人材の育成、それから人材の流動化をうまく進めていくためにどのようなシステムにするかということです。利用者の利便性をさらに向上させていく仕組みを取り入れたり、また技術分野間をより強固に連携させて、例えば新しい装置を開発して、ユーザーとともに新しい計測技術を開発していくというようなこともねらっていきたいと思います。それから最後に、一番重要な点ですが、国家戦略に適合した技術開発支援ができるような軽いフットワークを持たせるべきではないかという議論もされています。
 最終的には5月中旬までに具体的な報告書案を提示させていただければと思います。

【川合委員】
 どうもありがとうございます。ただいまのことに関してご意見もしくはご質問がありましたらお願いします。
 これは今回の震災のときによく聞いた話ですが、東北地方があのような被害に遭ったときに、このネットワークのおかげで研究をやめずに継続できたと、そういう意味では非常にリスクに対して有効だという実績を得られたのではないかと、そういう意見もありますが、震災との関係についてはタスクフォースで議論されているのですか。

【山本主査】
 もちろん議論をしています。

【川合主査】
 例えばどのような位置づけでされているのですか。

【山本主査】
 例えば何かリスクがあった場合にそれをうまく回避するのは当然ですが、その回避の仕方をより迅速にできるような仕組みを具体的に構築すべきではないかということを議論しています。

【田中委員】
 新しいナノテク戦略、あるいはナノテクの国家計画のグローバル化が始まって10年たったわけですけれども、その中におけるこういうナノテクノロジー・ネットワークのようなインフラは極めて重要な機能を持っていたと思います。やはり発明、発見から技術に展開し、それをイノベーションに持っていって出口までいく、そのスピードアップを図るためにはやはり人々がいろいろ短時間にコミュニケーションをする場があって、そして知恵を交換し合いながら、効率的に投資を行っていくことが必要だったわけで、その意味で今後も非常に重要なインフラになるだろうと思います。
 日本はこの10年を見ると、やはりインフラの投資が少なかったということは、アジア諸国に比べても明らかです。ですからこれは10年やったからもうこれで終わりというのではなく、むしろ今までの遅れを挽回するぐらいのつもりでやっていただく必要があるのではないかと思います。
 先ほどもX線自由電子レーザーの話をしましたが、ああいう巨額予算のものと込みにして予算を組んできたところが、アメリカやヨーロッパと違い、そのプレッシャーが結構大きかったのではないかなという気がします。今後は基盤研究課でそういうところを総合的に考えていただく必要があると思います。絶対にこれはグローバル化時代における重要なインフラだと思います。

【坂本室長】
 タスクフォースの先生方に非常にこれは精力的にご議論いただいていますが、私のほうから若干補足させていただきます。今、田中先生からもお話がありましたが、あるいは川合先生からも前々からご指導いただいていますが、このネットワークというものは、はっきり言うと電力でいうところのスマートグリッド、研究活動をスムーズに効率よく最短コースで最適な成果にまで到達させる上で非常に重要なインフラであり、そのようなインフラにしなければいけないと認識しております。
 実際、今年の2月から3月にかけて、震災をまたいで山本先生はじめ実施されている先生方のうちの相当多くの方、延べ二、三十人になるかと思いますけれども、アジア地域、それからアメリカ西海岸、東海岸、ヨーロッパ、手分けして調査にいき、私も実は震災が起こったときワシントンにいまして、まさにこの調査、コーネル大学とあとNSF、DOEを訪問していたわけですけれども、今申し上げたいかにスマートに、特に若い方、あるいは異分野に、新しい分野に入ろうとする方に最適な利用環境、最適な装置を提供できるか。そのためには民主的なアクセスが必要である。あるいはみずからのエキスパティーズを超えた分野に乗り込もうとするときの専門的なガイダンスが要る。そういったものをネットワークの経営として、実際サポートしていく体制が、例えばアメリカではNational Nanotechnology Infrastructure Network(NNIN)という形で実現されてきています。そういったものを我々日本、これは山本先生はじめ、あるいは物質・材料研究機構も目指してきました。今回の海外調査にJSTにもご協力いただいていますが、政策的には重要と言われながら、どうやって具体的な経営にそれを落とし込んでいくかはまだ課題があります。そういった点をタスクフォースの先生方に、今、精力的に議論していただいています。研究のパフォーマンスを向上させるための武器として、経営によってできる限りパフォーマンスを上げていくために何ができるのかという点、ぜひ本委員会の先生方からもご指導いただければありがたいと思っております。タスクフォースの先生方も実施者の立場からその課題をどう解決するかという具体策をお考えいただけると思いますので、ご指導いただければありがたいと思います。

【大林委員】
 前の別のところでもいいましたが、日本のどこかへ行けば自分の課題が達成できる、あるいは測定できる、データがとれる、そういうネットワークがあるというのは、ものすごくすばらしいことだと思いますが、更に、その命題を持っている方のソリューションに導くようなサポートができる体制というのが一番好ましいのではないかと思っています。もう一つは、それほど有用な設備、あるいは最先端の設備をほんとうにその機能を発揮させるレベルに維持管理して置いておくというのは、それなりのエキスパートを配置しておかないと、毎年変わる大学院生が担当しているという状況ではダメではないかというふうに私ずっと申し上げていますので、そういうポジショニングが要るのではないかと常々思っています。

【袖岡委員】
 私も今の意見に近いですが、このお話を聞いて非常にすばらしいのができているという気がします。しかし、いつも5年タームで、5年たったらまた新しいことを提案しないといけない制度のように見えます。せっかくの基盤設備の機能を発揮させていくためには、それを支える人が必要です。5年タームで、5年後は研究費がつくかどうかわからないという仕組みでは、基盤施設を運営していくためのいい人をなかなかリクルートできない、そういう枠組みをどうにかしていかないといけないと思います。

【小林委員】
 共同利用施設もそうですが、大きな装置があるところに、結局行ってすぐに実験ができるかどうかは、面倒を見てくれる人がどれぐらいきちんとやってくれるかというところにかかっていると思います。先ほど言われたように大学院生の人の労力を使って維持管理してきたというのでは、そこら辺に無理があるのではないかと思います。ですから非常に重要な施設で、これをさらに大きくしていくということがすごく重要であるということであれば、それなりのエキスパートを配置する方向で考えていただきたいと思います。

【川合主査】
 それでは定刻になりましたので、本日いただいたご意見を踏まえて、引き続きタスクフォースでご検討をお願いしたいと思います。
 その他、事務局から何かありますか。

【木村補佐】
 今後のスケジュールですが、第2回は6月6日(月曜日)14時から、第3回は6月27日(月曜日)となります。

【川合主査】
 それでは本日の委員会はこれで閉会いたします。どうもありがとうございました。

お問合せ先

研究振興局基盤研究課ナノテクノロジー・材料開発推進室

小川、西本
ファクシミリ番号:03-6734-4103
メールアドレス:nanozai@mext.go.jp

(研究振興局基盤研究課ナノテクノロジー・材料開発推進室)