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おわりに

 本委員会において、材料試験用原子炉に対する利用ニーズ、利用ニーズに応えるための照射施設及び照射後試験施設の性能、これら試験施設の利用性のあり方についての議論を重ねた。原子力政策大綱の基本的考え方の記述から、我が国の原子力発電の主力は、少なくとも今世紀半ば、あるいはより長期に軽水炉が担うことになるとの見通しが示され、その上で一般的な利用ニーズとして、現行軽水炉の高経年化対応の研究開発、MOX燃料を含む軽水炉燃料の高性能化及び安全評価などの具体的な課題が示された。さらに、医療及び工業用のラジオアイソトープ(RI)の生産やハイブリッド自動車等に利用される大口径のNTDシリコン半導体の生産といったニーズも明らかにされた。
 こうした利用ニーズに応える施設として、材料試験用原子炉の必要性が確認され、国内に材料試験用原子炉を持ち、軽水炉の高経年化等の安全規制や各種の事故、故障に適確に対応する基盤を確保することは、軽水炉に対する国民の信頼を得る観点からも重要であるとの意見があった。特に、世界の原子力先進国を見るとき、米国ではATRやHFIR、欧州ではHBWRやHFRなど、材料照射や燃料性能向上照射試験ができる試験炉を維持・確保しており、フランスが新たな世界戦略としてジュールホロビッツ炉の建設計画を進めようとしている状況も明らかにされた(付録4)。このような状況下で原子力先進国として、日本が更なる原子力技術の維持・発展を進める上で、また、今後中国をはじめとしたアジア・環太平洋地域での原子力平和利用が一段と進展すると考えられる中、我が国が原子力の安全確保をはじめ、原子力利用技術に関する主導的な役割を果たすためにも、材料試験用原子炉を有することが不可欠であるとの指摘があった。
 以上の利用ニーズを踏まえて、将来必要な材料試験用原子炉及び照射後試験施設の要件を検討した結果、予測される幅広い国内の利用ニーズに対応できる国内照射施設を確保した上で、適切な海外炉の利用を図ることが望ましい姿であり、全て海外炉に委ねる事態は避けるべきであるとの指摘があった。その上で、材料試験用原子炉と照射後試験施設群が隣接するJMTRの活用を基本とすることを前提として、利用ニーズに必要な更新、更新後の運用について検討した。
 今後は、利用ニーズに速やかに対応するため、できるだけ早期にJMTRを更新し再稼動すること、具体的には平成18年度半ばに原子炉を停止した後、原子炉更新及び照射設備の整備に着手することが望ましいとしつつも、これらの更新・整備には多額の費用が必要となることを考慮し、更新等に係るコスト、運転・維持に係るコスト、利用収入の見通しなどについて、今後、より詳細な検討が必要であるとの指摘があった。特に、国内の利用者の拡大やアジア等の国外利用者の新規拡大のための取り組みは、更新の妥当性を評価する重要な要素であり、4.2節で提示されたJMTRの利用のあり方や「国際照射試験センター(仮称)」構想等の具体化が必要であるとされた。その一方、軽水炉利用の高度化に加えて、軽水炉の安全・安定運転を担保し、軽水炉に対する国民の信頼を勝ち取るための有益な投資として国民に認知されるべきであるとの指摘があった。
 なお、JMTRを廃止する時期については、更新後20年ないし25年利用し、2030年頃が一つの目安であるとの見通しが示された。2030年頃まではJMTRの主要機器が使用可能な期間とされており、この時期は本検討会で検討された軽水炉にかかる利用ニーズが一段落する時期でもある(図5.1)。ただし、2030年時点での軽水炉をはじめとする利用ニーズや人材養成に係る利用ニーズ、さらにその他の産業利用等の利用ニーズがどの程度であるかの予測が現時点では難しいことから、将来JMTRに代わる材料試験用原子炉の必要性については、別途の検討が必要と考えられる。

図5.1 日本における原子力発電炉の開発・運用計画(注)と材料試験用原子炉の長期戦略に対するイメージ
 
(注) 原子力政策大綱(平成17年10月11日)、3.3原子力発電 中長期の方向性(イメージ)、P.91より

謝辞
 本報告書をまとめるに際し、当委員会にオブザーバとして参加頂いた文部科学省 原子力研究開発課、原子力安全・保安院 原子力安全技術基盤課、資源エネルギー庁 原子力政策課の方々から貴重なご助言を頂いた。ここに関係された各位に謝意の意を示す。


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