ここからサイトの主なメニューです

4.JMTR及びJMTRホットラボの更新・整備と運用

 前章まで、軽水炉の長期利用、アイソトープ製造等のニーズを明確にし、それに応えるための材料試験用原子炉の仕様を検討した。加えて、既存の施設としては、国内ではJMTR、国外ではHBWR等の材料試験用原子炉が基本的にこれらのニーズを満足できることを示した。その上で、我が国が長期にわたって軽水炉を利用し、また原子力先進国としてアジア等で主導的な役割を果たすためには、海外炉の適切な利用を図りつつも我が国独自の材料照射用原子炉を保持すべきであるとされた。
 このための方策としては、新たな材料試験用原子炉を整備するか、既存のJMTRを活用するかという選択があるが、経済性等の点からJMTRの活用を基本とすることを前提として、第1章で明らかにした利用ニーズに必要なJMTRの更新、更新後の運用について検討した。

4.1  JMTRの更新と将来計画
 JMTRには、38年の実績を通して軽水炉の燃料・材料の照射設備、照射技術、照射後試験技術に関する経験と知見が蓄積されており、今後の様々なニーズに対しても十分に応えられる基本的な要件を有している。加えて、照射後試験施設と一体となった材料照射炉は世界にもほとんどなく、NFDやNDCといった民間の照射後試験施設とも隣接しており、これらの施設を有機的に活用できる運用体制と合わせて、国内はもとより国際的にも特色ある照射試験センターとなることが可能である。
 しかしJMTRは運転開始から38年が経過して、基本的な構造材等の健全性は担保されているものの、制御系などの原子炉計装システム等の高経年化が進んでおり、さらに、MOX燃料の照射試験を始め、今後予測される利用ニーズに的確かつ安定的に応えるためには、原子炉施設、照射施設について相当規模の更新が必要とされる状況にある。
  図4.1は、利用ニーズに応えるための改造炉心の配置の一案で、JMTRの有する照射機能を最大限に活用する配置となっている。PWR及びBWRの通常照射試験装置は、高燃焼度ウラン及びMOX燃料に対して出力増強等の環境条件で燃料の健全性を調べる機能を有した水ループ試験装置例である。また、異常過渡試験装置は、沸騰遷移等の環境条件で燃料の破損限界等を調べるために燃料の出力を可変にできる機能を有する装置例である。さらに、材料照射用高温水キャプセル照射装置は、現在実施している照射誘起応力腐食割れに係る照射試験をBWRからPWR環境条件に拡張した試験が可能な機能を有する装置例である。
  図4.2は、今後JMTRの安定運転を確保するために必要なJMTRの更新部分をまとめたものである。JMTRの主要機器である圧力容器、格子板等の炉内構造物、一次系配管及び原子炉建家コンクリート等については、少なくとも2030年までの利用には十分に耐えると評価されていることから、「その他の機器のなかで経年劣化が進んでいるもの」、「古い機器であるために交換部品の入手や保守等が困難になっているもの」、具体的には、以下の機器等を更新、交換することとしている(表4.1図4.3)。

 
表4.1 更新、交換予定の機器等
系統・設備 主要な更新、交換機器等
計測制御系統 制御棒駆動装置を信頼性が高く保守点検が容易な構造に更新。原子炉制御盤、プロセス制御盤の更新。
電源設備 受、配電盤、主循環ポンプ起動盤、二次系及びUCL系起動盤の更新。トレンチ、ダクトの補修。ケーブルの敷設替え。
冷却設備 一次冷却系統のポンプ、弁の更新。二次冷却系統、UCL系統、プールカナル系統について炭素鋼製配管部、ポンプ、弁等の機器の更新。
炉室給排気系統排水設備 給排気ダクト、排風機等の更新。トレンチの補修。配管、排水ポンプの一部更新。
その他の付帯設備 ボイラ・冷凍機等の空調設備、純水製造設備の更新。ベリリウム枠及びガンマ遮へい板等の交換。

  図4.4は、照射後試験に民間等の施設も活用するということを前提にした場合のJMTRホットラボの照射後試験装置の配置例で、主として材料関連の照射後試験施設としての役割を担うものとしている。
 2011年度(平成23年度)からのJMTR再稼動を前提とした場合の原子炉の更新および照射設備の整備計画についてのケーススタディを図4.5に示す。施設の更新・照射装置の整備期間に関しては、施設調査、概念設計、安全動作の見直し等に係る設置許可の変更ならびに設計及び工事の方法に係る認可、照射装置等の機器製作、現地据付等を含め全体で約6年を要するとし、この間原子炉の停止期間を4年程度と想定している。

 
図4.1 JMTRの炉心配置の一例

図4.2 JMTRの更新部分

図4.3 更新を想定している機器

図4.4 JMTRホットラボの照射後試験装置の配置例

図4.5 JMTR及びJMTRホットラボの更新・整備及び照射装置の整備計画に係るケーススタディ

4.2  JMTR利用のあり方
 日本原子力学会の調査によると、利用者が特定の材料試験用原子炉を選定する場合、照射試験設備の性能に加えて、利用性に優れている点が一つの判断基準になると指摘されている。具体的には、照射の申し込みから試験データが出るまでの期間(ターンアラウンドタイム)が短いこと、照射スケジュールの信頼性、ユーザへの対応、照射費用が安価なこと、照射手続きが簡単なことなどが挙げられている。また、使い勝手が良いこととして、許認可手続きが簡単であり、革新的な照射試験を短期間でできること、運転の稼働率が高いことも挙げられている。さらに、メーカ等が利用する場合は企業秘密の保持も重要な視点である。
 近年、民間ユーザは、利用条件等の観点から海外炉を優先させている実態がある。このため、国外の材料試験用原子炉との競争に打ち勝つためには、利用者の立場に立って、利用性の向上を図る一層の努力が必要である。
 こうした観点から、本検討会では、これまでのJMTRの利用実績を踏まえ、JMTRの利用のあり方についての提言と方策がまとめられた。

 
ターンアラウンドタイムの短縮
 ターンアラウンドタイムは、海外炉より長いとされているため、短縮するための方策として、キャプセル構成材料の形状・寸法等の規格化・標準化等により、キャプセルの設計・製作期間を最大5割程度までに短縮化を図る(付録5)。

照射費用の低減化
 JMTR将来計画検討委員会の報告書(平成16年3月)では、オランダのHFRと比べて、キャプセル製作費は同程度であるものの、施設利用料金が約4割程度高いとの調査結果が示されている。JMTRの施設利用料金は、利用する設備の運転・保守に関する経費から算出されるため、施設利用料金を低くするためには、これらの経費を削減する必要がある。今回、設備の運転・保守に関する経費について、合理化・効率化等の検討を実施したところ、燃料製作費を安くして熱出力を1割低下させること等で3割程度の経費を節減できる可能性が見いだせた。これらの経費節減努力を継続的に実施し、施設利用料金の3割低減を目指す。また、複数の利用者による共用照射キャプセルの利用促進により、施設利用料金等が低減化させることも可能である。

照射手続きの簡素化
 海外炉では、コーディネーターが対外交渉を補助しており照射手続きが容易であるとされている。このため原子力機構においても対外的窓口に産学連携推進部を設置し業務の一元化を図るとともに、利用者の相談に応じられる支援体制(事務的支援と技術的支援)を構築する。また、照射技術を熟知したコーディネーターの配置により、支援体制を充実させる。

使い勝手がよいこと
 海外炉では、法的な制限が国内より少ないため、計画外炉停止の対応が比較的簡単であるため稼働率が高い上、新しい照射試験も容易に行うことができるとされている。このため原子力機構においても、規制側との調整により、計画外停止における再稼働に係る迅速化、施設定期検査期間の短縮化による稼働率の向上、燃料・材料に関する革新的研究の実施に対する許認可取得時期の短縮化により利便性の向上を目指す。

企業秘密の保持
 これまで、旧原研では企業秘密の保持義務が明確になっていなかったため、メーカ等が利用しにくい状況となっていた。このため原子力機構においては、企業秘密の保持義務を明確にし(付録6)、これを守るためのコンプライアンス向上のため、職員等の教育を実施し、職員ひとりひとりの意識醸成に努め、守秘義務強化に対する意識向上を図る。また、個別の照射試験毎に秘守契約を締結など必要に応じて守秘義務を強化する。
その他
 軽水炉分野の照射需要に対応できる既存の原子炉としては、国外ではHBWR、HFIR等、国内ではJMTR等があり、安全評価等を中心とした材料照射や燃料照射試験にJMTRが利用されているが、近年は、軽水炉の燃料照射等に関する民間需要について、HBWR等の海外の試験炉が広く利用されているという実態が明らかにされた。これには、施設の性能に加えて、照射スケジュールの信頼性、ユーザニーズへの対応、照射料金、安全規制等の利用条件等において、JMTRより海外炉の方が有利であるという背景がある。しかし、海外炉も1960年代に稼動を開始していることを考慮すると、今後の幅広い国内の利用ニーズに対応できる国内照射施設を確保した上で、適切な海外炉の利用を図ることが望ましいとの意見があった。その一方、国内の民間需要を得るためには、利用条件、サービス等の面で国外照射施設に勝つことが必要であるとの指摘がなされた。
 JMTR将来計画検討委員会では、利用計画等の決定に係る透明性の確保、施設の利用性向上のための積極的な対応、特別割引料金等についての積極的対応も必要であるとされた。利用計画等の決定に係る透明性を確保に関しては、利用者からなる「協議会」で照射試験を決定する等の仕組みを作り、施設の利用性向上のための積極的な提案や要望を受け入れる仕組みを構築することが必要であるとの提案があった。また、米国のCRADA協定(注)等も参考に、利用者の意見を聴取しつつ、利用者を限定した運営といった誤解を招かない配慮のもとに利用実績等に応じた利用料金の柔軟な設定等も考慮されるべきであるとされた。
 特に、施設側と利用者の間での信頼と協力が基本的に重要であり、産業界では使い勝手の良いものを世界中から選んで使うことが求められている点に十分に留意し、国内外ユーザの獲得に努力すること、加えて、アジアを中心とした照射試験センターとして、アジア地域の他の炉との連携を図るなど、照射場の安定サービスに努力すべきであるとの提案があった。


(注) 照射試験で得られた成果を国と共有することを認めれば、利用料金を半額に低減することが可能な共同研究に類似の制度。

前のページへ 次のページへ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ