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検討結果(骨子)

 JMTR利用検討委員会において材料試験用原子炉に対する利用ニーズ、利用ニーズに応えるための照射施設及び照射後試験施設の性能、これら試験施設の利用性のあり方を検討し、検討結果を踏まえて材料試験炉(以下、JMTR)の役割と必要課題を明らかにした。
 原子力政策大綱の基本的考え方に「2030年前後から始まると見込まれる既設の原子力発電施設の代替に際しては、炉型としては現行の軽水炉を改良したものを採用する」と記述されており、我が国の原子力発電の主力は、今世紀半ば、あるいはより長期に軽水炉が担うことになるとの見通しが示された。その上で、一般的な照射ニーズとして、軽水炉の長期利用に伴う構造材料の健全性や燃料(MOX燃料を含む)高燃焼度化などの経済性の向上等は持続的に取り組むべき課題であり、現行軽水炉の高経年化対応、MOX燃料を含む軽水炉燃料の高性能化及び安全評価、軽水炉技術の高度化等の開発に関する具体的な研究開発課題が明らかにされた。
 現在、材料試験用原子炉等を使って医療及び工業用のラジオアイソトープ(RI)の生産が行われている。RIを安定生産、安定供給するため海外炉との協力も積極的に進めているが、一方では、こうした枠組みを担保するためには、国内でRI生産ができる原子炉施設を引き続き維持することが必要であるとの要求があった。さらに、ハイブリッド自動車等に利用される大口径のシリコン(Si)半導体の生産手段として、良質のシリコン半導体が生産できる中性子ドーピング(NTD:Neutron Transmutation Doping)法の照射需要が近い将来に急増することが見込まれ、世界的な照射炉の不足が予測される中、この分野での国際的な競争を維持するためにも、NTDシリコン半導体の新たな需要に対応できる国内施設の整備が提起された。
 また、材料試験用原子炉を利用した大学等の基礎研究や教育は、中性子照射に係る材料科学の進歩に加えて、次の時代を担う人材を育成するために不可欠であるとの指摘がなされた。
 これらの利用ニーズに加えて国内に材料試験用原子炉を持ち、軽水炉の高経年化等の安全規制や各種の事故、故障に的確に対応する基盤を確保することは、軽水炉に対する国民の信頼を得る観点からも重要であるとの意見があった。さらに、世界の原子力先進国を見るとき、米国ではATRやHFIR、欧州ではHBWR(ハルデン)やHFRなど、材料照射や燃料性能向上照射試験ができる試験炉を維持・確保しており、原子力先進国としての日本が更なる原子力技術の維持・発展を図るためには、この種の材料試験用原子炉を有することが重要であり、今後中国をはじめとして、アジア・環太平洋地域での原子力平和利用が一段と進展すると考えられる中、我が国が原子力の安全確保をはじめ、原子力利用技術に関する主導的な役割を果たすためにも、材料試験用原子炉を有することが不可欠であるとの指摘があった。
 以上の利用ニーズを踏まえて、国内外の材料試験用原子炉の状況を考慮し、将来の利用ニーズに必要な材料試験用原子炉及び照射後試験施設の要件を検討した。軽水炉分野の照射需要に対応できる既存の原子炉としては、国外ではHBWR、HFIR等、国内ではJMTR等があり、安全評価等を中心とした材料照射や燃料照射試験にJMTRが利用されているが、近年は、軽水炉の燃料照射等に関する民間需要について、HBWR等の海外の試験炉が広く利用されているという実態が明らかにされた。海外炉が利用されてきた背景には、施設の性能に加えて、照射スケジュールの信頼性、ユーザニーズへの対応、照射料金、安全規制等の利用条件等において、JMTRより海外炉の方が有利であったという理由がある。しかし、海外炉も1960年代に稼動を開始していることから、今後長期に渡る利用が困難になる可能性が高いことを考慮すると、今後の幅広い国内の利用ニーズに対応できる国内照射施設を確保した上で、適切な海外炉の利用を図ることが望ましいという意見があった。その一方、国内の民間需要を得るためには、利用条件、サービス等の面で国外照射施設との競争に勝つことが必要であるとの指摘がなされた。
 国内にある照射試験炉について検討した結果、軽水炉の燃料や材料照射等で必要とされる照射条件を満足できるのはJMTRが唯一であることが明らかにされた。また、アイソトープ製造やシリコン半導体製造については他の研究炉の利用も考えられるが、熱中性子束や照射容量の点でJMTRが有利であることが示された。一方、国内で唯一の材料試験用原子炉として利用されてきたJMTRは、運転開始から38年が経過し、基本的な構造材等の健全性は担保されているものの制御系などの原子炉計装システム等の高経年化が進んでおり、さらにMOX燃料の照射試験を始め今後予測される利用ニーズに的確に応えるためには、予防保全を主とした原子炉等の一部施設の更新が必要とされる状況となっているとの報告があった。
 以上の検討を踏まえて、新たな材料試験用原子炉を新設することも考えられるが、経済的な観点から、材料試験用原子炉と照射後試験施設群が隣接するJMTRをこのための中核施設として必要な更新を行うことで、今後の利用ニーズに対応できるとの判断が示された。このため、今後の計画としては、利用ニーズに速やかに対応するためできるだけ早期にJMTRを更新し再稼動することが適当であり、平成18年度の半ばに現在進行中の照射誘起応力腐食割れに係る材料照射試験を終了した後、JMTRの再稼動を目指して原子炉の更新及び照射設備の整備に着手することが望ましいとされた。
 なお、運転維持費等を極力合理化し、なるべく多くのユーザに利用してもらうために照射費用などの利用料金が国際的な競争に対応できるようにすること、原子力機構が有する照射技術や照射後試験技術に関する専門的能力をユーザに最大限提供することなど、いわゆる、顧客サービスとしてJMTR更新後の運営に必要な事項が具体的に検討された。特に、JMTRの更新のみに留まることなく、照射の計画、実行、照射後試験までのハード、ソフト全体として、ユニークかつ国際競争力に富み、利用者に魅力あるシステムを築かなければならないとの意見も出された。
 この他、大洗・東海地区には、原子力機構が保有しているJMTRを中核に、常陽、NSRR等の原子炉群や、各種の照射後試験施設群に加えて、日本核燃料開発株式会社(NFD)やニュークリア・デベロプメント株式会社(NDC)等の民間の照射後試験施設、東北大学金属材料研究所の量子エネルギー材料科学国際研究センターが隣接していることから、JMTRに蓄積されてきた世界最先端の原子炉照射技術とこれら照射後試験施設群の有する広範な照射後試験技術を有機的に活用することにより、我が国の原子力利用に留まらず、アジア地域をはじめ国際的にみても極めて特色のある照射試験センターとしての役割を担うことが出来るという新たな提案がなされた。
 なお、JMTRを廃止する時期については、更新後20年ないし25年利用し、2030年頃が一つの目安であるとの見通しが示された。2030年頃まではJMTRの主要機器が使用可能であると評価されており、また、2030年には、現在の軽水炉にかかる利用ニーズに関する照射試験等が一段落するものと想定される時期でもある。ただし、2030年時点での軽水炉をはじめとする利用ニーズや人材養成に係る利用ニーズ、さらにその他の産業利用等の利用ニーズがどの程度であるかの予測が現時点では難しいことから、将来JMTRに代わる材料試験用原子炉の必要性については、別途の検討が必要と考えられる。


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