原子力分野の研究開発に関する委員会(第26回) 議事録

1.日時

平成20年8月21日(木曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 13F 1~3会議室

3.出席者

委員

田中主査、本島主査代理、伊藤委員、井上委員、大島委員、岡﨑委員、織委員、小林委員、知野委員、中西委員、長崎委員、早野委員、山口委員、山名委員、和気委員

文部科学省

櫻井大臣官房審議官(研究開発局担当)、山野原子力計画課長、板倉原子力研究開発課長、千原研究開発戦略官、林量子放射線研究推進室長、次田放射性廃棄物企画室長、稲田原子力研究開発課長補佐

4.議事録

【田中主査】

 それでは、定刻になりましたので、科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 第26回原子力分野の研究開発に関する委員会を開催いたします。本日はご多忙のところ、お集まりいただきましてありがとうございます。
 議事に入る前に、本日は、平成20年7月11日付で研究開発局担当審議官に就任されました、櫻井繁樹審議官にご出席いただいておりますので、御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【櫻井審議官】

 今ご紹介いただきました、櫻井でございます。7月11日付で、研究開発局担当審議官を拝命しております。日ごろから皆様方には、我が省の原子力行政に関しまして貴重なご意見を賜るとともに、闊達なご議論をいただいているところでございます。
 もとより、釈迦に説法でございますが、いずれも我々の担っている政策というものが、ますます重要な局面に入ってございます。一例を申し上げれば、高速増殖原型炉「もんじゅ」につきましては、運転再開ということで、いろいろ準備を進めているところですし、ITER計画、それから幅広いアプローチ活動につきましても、機器や実際のサイトの準備というものが着実に進められているという段階です。
 また、J−PARCというニックネームで皆様方に親しまれております大強度陽子加速器計画につきましても、中性子ビームの供用という面におきまして、本格化が進められているという局面であります。
 また一方、これらの研究に伴って出てくる廃棄物の処分というものにつきましても、今後、着実にこれを進めていくという観点から、先の通常国会におきまして、原子力機構法の改正がなされ、原子力機構がこの処分実施主体になるということになっております。今後は、これに伴いまして基本方針を定め、円滑な実施に移行していくという大事な時期になってございます。
 またさらに、これは10年に1回のことでありますが、ご案内のとおり、ソフト、ハード両面から政策を実施しているわけでございますが、特にソフト面におけるところで、原賠法と申しておりますが、原子力損害の賠償に関する法律というものの一部を改正するということが予定されており、次期通常国会に向け、検討会等において、準備を進めているところでございます。
 以上、いろいろなことがございますが、本日は、21年度の概算要求に向けた課題の評価ということでございます。かかるところを中心にご議論いただくとともに、先に申しましたことにつきましても、当方から簡単に進捗状況のご説明をさせていただきまして、幅広いご議論、ご意見をいただければと思ってございますので、本日は何とぞよろしくお願いいたします。

【田中主査】

 どうもありがとうございました。
 それでは、これより議事に入ります。初めに、事務局のほうから、配付資料の確認をお願いいたします。

【山野原子力計画課長】

 議事次第があると思いますが、たくさんの資料があり、個々には確認しませんので、抜けがありましたら、その都度対応いたします。
 そして、今日の議題は、最近の状況のプログレスレポートのようなものが中心でございます。若干形式的でありますが、今の時期ですので、2番目の「概算要求に向けての評価」というものが審議案件として1つございます。そして、4番目の議題であります廃棄物の問題につきましては、法律が通った後、いろいろ進捗していますので、それについてはご意見を伺いたいと思っています。その他のものについては、基本的には最近の状況報告ということになりますが、幅広い観点からいろいろご議論いただければと思います。
 以上でございます。

【田中主査】

 ありがとうございます。
 それでは、最初の議題であります、「平成21年度概算要求の調整状況と主要プロジェクトの現状について」に入りたいと思います。事務局のほうからご説明をお願いいたします。

【山野原子力計画課長】

 それでは、資料1−1、1−2を使ってご説明します。概算要求が決まるのは今月末ということなので、どうしても来年度要求の具体的数字というのは、まだ最終調整中であり、数字は入ってございません。具体的な要求につきましては、9月になり、いろいろな資料がまとまりましたら、委員の方々には送付させていただきたいと思っています。
 まず、資料1−1の1枚目にありますように、今の調整状況の基本的考え方でございますが、簡単に説明しますと、何点かポイントがございまして、1番目のポイントは、ぶれることなく重要なプログラムを着実に推進ということで、項目といたしまして、1つは高速増殖炉であります。これにつきましては、後ほど「もんじゅ」の最新情報の説明をしますが、「もんじゅ」についてはきちんと動かすということと、次の実証炉に向けての技術開発、これは当省だけではなく、経済産業省にも積極的な協力をお願いしながら、加速していくということが重要なポイントでございます。その次のポイントの高レベル放射性廃棄物の処分についてもきちんと行っていくということでございます。
 2番目の大きな柱が、先進的な原子力科学技術への挑戦ということで、ITER、J−PARCですが、それぞれが昨年から今年にかけて、かなりエポックメーキングな時期を迎えてございます。ITERにつきましては、いろいろな協定関係の手続が揃って、動き出しているということでございますし、J−PARCについては、ハードウエアの整備が大体終わってきて、今年度から一部ビームを出すとか、供用開始に向かってきているということでございます。
 3つ目のポイントが、原子力の裾野の維持・拡大ということで、金額的には小さいのですが、ここは最近、力を入れている分野でございます。まず1つが、原子力・エネルギー教育への支援ということ、これはまさに小学校や中学校段階、高校段階も含めてですが、国内に対する支援ということで、文部科学省らしい施策を充実させていきたいということでございます。2つ目の、原子力分野の専門人材養成は、大学・高専レベルの、最近の原子力工学科が減ってきていることに対する支援でございます。3つ目が、今年度から新たに始めた制度で、基礎的・基盤的研究へのファンディングを充実するということでございます。
 4つ目の大きな柱が、原子力立地地域との共生ということでございます。
 5つ目が、廃棄物対策については着実に行うということで、後ほどまた説明しますが、研究施設等廃棄物、あと高レベル放射性廃棄物、TRU廃棄物などについては、将来的な処分に向けて、きちんと資金を確保していくということでございます。
 このような基本的な考え方を下に、今、最終調整をしているところでございます。
 次に、2ページ目の総表ですが、それぞれ金額が入っていないのでわかりにくいと思いますが、9月以降、具体的に数字が入った資料をいろいろお送りしますので、そのときのバックグラウンドとして少しご説明しておきますと、原子力関係予算の構造について、2枚目の資料の上段表1にありますが、まず大きく言うと、一般会計と特別会計から構成されているというのが一つのポイントでございます。そして、一般会計の中でも、例えば原子力機構の予算は、エネルギー対策費という予算費目として措置されています。それに加えて、放射線医学総合研究所は科学技術振興費、また、昔の文部省関係の高エネルギー加速器研究機構や核融合科学研究所などは、教育振興助成費のようなところで措置されています。実はそれぞれについて、概算要求のシーリングというのがあり、それぞれ違います。それらを分かっていただい上で、9月以降にお送りします資料を見ていただけますと、いろいろなことをご理解いただけるのではないかと思います。
 その次のページに、シーリングの考え方がありますが、まず、一般会計と特別会計とで大きく違うというところがあります。一般会計の中でも、ここにありますように、今年はマイナス2%の深掘りと言われていますが、それを除きますと、科学技術振興費というのは、ゼロ%のシーリングということで、政府の中の予算費目の中で一番優遇されているということです。
 その次の国立大学・私学関係はマイナス1%、エネルギー対策費はマイナス3%のその他のグループになっているということです。これがシーリングでして、実際上は、これをベースにするものの、夏の段階では、掛ける25%部分をつけて要求していいということになっていることが大きな特徴です。したがって、一般会計の中でも、それぞれによって、12月の仕上がりの段階で多少厳しさが変わってくるということです。それに対して、特別会計というのは、3ページで見るところの義務的経費というところに入ります。よって、特別会計のほうは25%増の要望のようなものはありません。
 大きく言うと、例えば9月の概算要求の資料でわかることは、一般会計というのは、25%増の要求ができるということで、当然それに合わせて頑張るのですが、12月になるとシーリングの枠内に収まるということです。それに対して、特別会計のほうはそういうものがないので、かなり概算要求がガチンコの世界になっているということに違いがあります。
 いろいろな表を見ながら、そういう目で見ていただけるといいのではないかなと思い、説明した次第でございます。いずれにしても、基本的な考え方に沿って、なるべくいい予算になるように、今、最終調整をしているところでございます。
 もう一つの資料1−2がありますので、最近の主要事項の状況を、簡単に説明します。
 まず1ページ目の高速増殖炉サイクル技術でございます。FBRにつきましては、特に進捗状況のところを簡単に追うような形で説明いたしますが、まず、18年11月にこの委員会で、今後の研究開発方針ということを決めていただきました。その後、いろいろなレベルで進捗しており、関係者が集まった五者協議会を作り、従来の各社が協力しながら進めていくというのではなく、エンジニアリングを一元化するということで、中核メーカーとして三菱重工を選定したという動きが昨年ありました。それを受け、三菱重工では、三菱FBRシステムズ株式会社という会社を設立し、ここでエンジニアリング機能をインテグレートしていっているということでございます。
 また国際的には、アメリカやフランスと、バイやマルチで、いろいろな取り決めを結ぶなどして、国際協力関係も進捗しているという状況でございます。
 なお、「もんじゅ」につきましては、後ほど説明がありますが、改造工事が終わって、現在、プラント確認試験、そして運転再開に向けて、今いろいろ努力をしているというところでございます。21年に向けた考え方は、これらをきちんと進めていくということでございます。
 次の2ページ目で、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術ですが、北海道の幌延と岐阜県の瑞浪で、実際に採掘して地層構造のいろいろな研究を行っておりますが、進捗状況にありますように、現在幌延では110メートル、瑞浪は300メートル程度まで採掘が進んでおり、いろいろなデータも出てきているという状況でございます。
 次の3ページ目で、ITER計画等ですが、ITER計画、幅広いアプローチ活動とも、協定関係や国内法の整備が済んで、それぞれ動き出しており、カダラッシュのITER本体、また青森県六ヶ所村と茨城県那珂市において、幅広いアプローチ活動をきちんとやっていくという重要な時期に来ているということでございます。
 4ページ目で、J−PARCですが、J−PARCもかなり進んできており、右のほうにありますように、実際にビームを入射して、ニュートロンの発生をこの5月に確認し、本年12月より供用を開始していくという状況になってきてございます。
 また、原子核・素粒子やニュートリノのほうにつきましても、原子核・素粒子については来年2月ごろ、ニュートリノについては来年4月ごろから供用を開始するという段階に来ており、だいぶハードウエア面の整備が終わってきております。今後は、利用体制をどうするかなどが重要になってくるという時期に来ているということでございます。
 冒頭の説明は以上でございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 ただいまのご説明に関して、ご質問等がありましたらお願いします。
 中西委員どうぞ。

【中西委員】

 最初のページに戻って、「21年度概算要求に当たっての基本的な考え方」のところですが、国民の理解というところで、少し質問させていただきたいと思います。「ぶれることなく」ということの高レベル放射性廃棄物のところに、「国民の理解増進の推進」とありますが、これは毎回、毎年出ているわけです。とても大切なことだと思うのですが、21年度は、今までの国民の理解増進の推進ということと違う、何か新しい仕組みを考えられているのかということが1つです。
 また下から2番目の「原子力立地地域との共生」というところに、「持続的発展に向けた公共用施設の整備や各種の地域振興策」とありますが、文部科学省が行うからには、学術に立脚した仕組みや方策が主体だと思うのです。危険だからお金で公共事業をしましょうということではないのではないかとも思われます。それですと、お金が切れてしまうとやっぱり危ないのではないかとなるかもしれないこともあり、国民全体が受け入れてくれるような、また期待されるということをどんどん発信していただきたいと思います。その上で、3番目の「原子力の裾野の維持・拡大」や一番下の「放射性廃棄物対策の着実な前進」が出てくるのだと思います。
 もう一つは、2番目の「先進的な原子力科学技術への挑戦」に3つ項目がありますが、水素製造技術だけが0.5億円で、あとは100億円を超えており、額があまりにも違うのです。とても少ない額で書いてあるということは、水素製造技術はあまり期待されていないのではないかと捕らえられてしまうのですが、その点はどのように考えていらっしゃるのでしょうか。
 最後に、一番下の「放射性廃棄物対策の着実な前進」ですが、長半減期の核種をさらに短半減期の核種に変換するなど、新しい技術がありますので、ありとあらゆる技術を入れ込んでいかれることとは思いますが、そこも確認させていただけたらと思います。

【田中主査】

 ありがとうございます。事務局お願いします。

【山野原子力計画課長】

 何点かありましたが、まず、立地地域との共生といった話は、最近、「共生」という言葉を使っているのは、地域に役立つということを、その施設があることによって一緒に考えましょう、というような意味で使っています。このような中で、例えば学術に立脚したといったお話がありましたが、最近はそういう傾向もありまして、例えば昔は、極端なことを言えば、公民館をつくるなどそういう世界でもありました。それをなるべく、文部科学省らしさを出すということで、一つ事例を挙げますと、今、福井県において、福井大学が原子力工学科をつくりまして、その福井大学原子力工学科が敦賀に進出して来まして、福井大学を核にして、京都大学や大阪大学も連携しながら、当然原子力機構もですが、立地の振興策を上手に使いながら行っていくというようなことになってきています。一過性ではなくて、なるべく地域と共生できるようなものをやっていきましょうというように変わってきております。
 次に、廃棄物の中で、当然、短半減期にするなどの研究開発も進んできています。最近、原子力委員会のほうでも、そういった検討会を立ち上げるというように聞いてございます。
 次に、水素製造技術については、5千万円というのは一部でして、実際にHTTR(高温工学試験研究炉)という炉があって、その運営費などを入れますともっと大きな額でございます。また水素製造技術については、単純に発電だけではなく、「水素社会を目指した」ということで、最近政府の中のいろいろなレベルにおいて、新技術戦略といった中でも、かなり位置づけられてきています。ただ、程度論はありますが、きちんと力を入れていったほうがいいのではないかと考えている次第です。
 最後に、高レベル放射性廃棄物での国民の理解増進は、文部科学省だけではなく、経済産業省の施策も含めてですが、後で長崎委員に補足していただいたほうがいいかもしれませんが、単純にハードとして技術開発をするというだけではなく、国民の理解増進であるとか、どうやって立地地点を探すのかという意味で、かなり議論されてきています。
 そういうことで、例えば理解増進については、単純に穴を掘るだけではなくて、幌延のように、地元以外の地域の人が行っても、地下の構造がわかるとか、具体的に処分場というものがどのようなものになるのか、ということがわかるような施設をきちんと整備していくといった努力をしてきています。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 長崎先生、何かありますか。

【長崎委員】

 2つで、1つは今、山野課長が言われたとおり、理解増進については、東洋町等の反省に立って、国が前面に出るということ、そのときに、原子力機構の2つの研究施設をいかに国民理解のために利用していくかを考えましょうと、いろいろな廃棄物小委員会をはじめとして議論されてきており、そういったことへの支援など、フェーズは変わってきているように思います。
 私の質問が1つありまして、大体多くのものは、それぞれ原子力に特化した話なので、それぞれ予算の話でいいと思うのですが、3番目の「原子力の裾野の維持・拡大」のところの「原子力・エネルギー教育への支援」ですが、これは実際に、昨日別の会議で、現在の高校生が使っている社会科の教科書のコピーを見ることがあったのですが、例えば原子力発電という項目があると、半分以上は事故の話が書いてあるのです。写真のページには、太陽光パネルの話、地熱の話、バイオマスの話があったのですが、原子力については2枚写真があって、それは何かというと、チェルノブイリの事故現場の写真と、JCO臨界事故の際のつなぎの防護服を着ている人たちの写真が掲載されていました。明らかに原子力とほかのものとで扱いが違うのです。
 これは、局が違う話かもしれませんが、おそらく中教審が局をまたがったところを見えていないで、全く違うところに球を打っているのではないかと、きのう議論になったのですが、これをどのようにしていけばいいとお考えでしょうか。

【山野原子力計画課長】

 まず1つは、旧文部省と旧科学技術庁が一緒になったとき、両者において原子力関係でできることは何かとなったとき、やはり原子力教育の問題だろうという意識はかなりありました。そして、今、我々が行おうとしていることは、まず小学校や中学校を対象にし、立地県だけではなく、47都道府県に対して、原子力教育を行おうということで、副読本をつくるなどに対して支援をするということをやっておりますが、実はそれについても、いまだに47都道府県すべてにおいてできていません。要は手を挙げてこないところがあるのです。そこは、最初は20くらいから始まって、今40くらいまで増えてきたのですが、立地県でもやってくれないなどもあり、すべての都道府県でやれていないのですが、そういうところを地道に広げていこうとしております。また複数の教科書会社があるわけですが、客観的に見て違和感を感じるようなものは、どちらかに変更するということではありませんが、原子力を所掌する部署と教科書を所掌する部署とで、きちんと意見交換をする場などを持ったほうがいいのではないかという気はしています。

【田中主査】

 ありがとうございます。
 ほかにもあると思いますが、よろしければ、次に行きたいと思います。本日の審議事項の一つであります、議題(2)「平成21年度概算要求における重点課題等の評価について」に行きたいと思います。
 本委員会における研究開発課題等の評価に当たりましては、各分野ごとに作業部会を設置し、そこで専門的・技術的な観点から、重点課題等を評価した上で、本委員会において、各作業部会の評価結果を総合的に評価することになっております。
 つきましては、先般、作業部会が開催され、平成21年度概算要求における重点課題等に対する評価が行われました。本日は、その結果についてご審議いただき、本委員会としての評価結果を決定したいと考えております。
 それでは、事務局のほうから説明をお願いいたします。

【山野原子力計画課長】

 まず資料2−1ですが、本日ご審議いただきますのは、2つの課題でございます。事前評価が1つ、中間評価が1つで、今田中主査からご説明がありましたように、8月12日に原子力研究開発作業部会において評価案をつくりました。きょうご議論をいただいた後、そのまとめた結果につきましては、8月29日の研究計画・評価分科会に説明する予定でございます。
 具体的な内容については、資料2−2、2−3でございますが、担当課長から説明します。

【板倉原子力研究開発課長】

 それでは、まず資料2−2からご説明させていただきたいと思います。「研究開発段階炉等の廃止措置技術の研究開発」に関します事前評価でございます。
 研究開発の中身でございますが、まず、この研究開発で狙っておりますのは、背景としまして、今年2月に原子力機構の新型転換炉「ふげん」が、廃止措置の認可を原子力安全・保安院からいただいており、今後、順次廃止措置を行っていくわけですが、この廃止措置を行うに当たり、放射性廃棄物の低減化、コストの最小化、それから、いろいろ有効な除染技術、測定技術を、これらはもちろん廃止措置の主体である原子力機構も研究開発を行うわけですが、さまざまなコスト最小限化や、あるいは化学除染に関する知識というのは、民間にもさまざまなアイデアがあると私ども聞いておりますので、そういうアイデアを広く民間から募りまして、実際の「ふげん」の廃止措置に役立てるとともに、今後の軽水炉の廃止措置にも、当然のことながらこの技術が役立つだろうということで、国からの委託という形で技術開発を進めていきたいと考えております。
 2.に書いております概要でございますが、「ふげん」は平成24年から本格的に解体の作業に入っていくわけでが、それまでの間に、特に放射線で汚染されております部分について、どうやれば一番合理的な解体、廃止措置ができるかということについて、特に化学的除染技術、それから測定技術というところを重点的に検討していきたいと考えております。
 期待される成果ですが、1つには、効率的に廃止措置を行うための技術の確立ということを狙っております。また2点目として、これらの技術を利用して、「ふげん」の合理的な廃止措置のための計画、特に放射性廃棄物の低減計画の策定の技術的な支援ができるのでないかと考えております。3点目としては、合理的に廃止措置ができるということで、国民からの理解も増進するのではないかということも狙っているところでございます。
 これにつきまして、先般12日の作業部会において、ご評価をいただきまして、4ページの5.をご覧ごらんいただければと思いますが、評価結果といたしましては、廃止措置技術というのは極めて重要な課題であるということを、まずご評価いただいた上で、この研究開発成果というのは、汎用技術として、今後、軽水炉等々の解体にも役立ち、開発意義が高いということをご評価いただいております。
 また、特に高放射線汚染の建物構造物の技術開発というのは、比較的、研究がまだ行われていない分野ですので、こういう技術を、経済性も勘案しながら研究開発を行っていくことは妥当であるということ、さらに合理的な放射性廃棄物処理・処分に関する理解の獲得の観点からも、実施することは妥当であるというご評価をいただいております。
 事業の実施に当たりましては、第三者による委員会で検証をしっかり行うこと、成果をしっかり廃止措置計画に結びつけていくということをご評価いただいたところでございます。
 引き続いて、資料2−3に基づきまして「原子力システム研究開発事業」、これは公募事業ですが、こちらの中間評価についてご説明したいと思います。後ろのほうになりますが、11ページの中間評価票でご説明させていただければと思います。
 こちらも、去る12日の作業部会のほうでご評価いただいた資料ですが、まず、国が今、この事業で目標としている革新的な原子力システムを開発していこうということについては、原子力の分野の特殊性として、長期的取り組みが必要であるとともに、投資リスクが大きいというところがあります。一方では、資源の乏しい我が国にとって非常に重要な技術であるということで、国が行う必要があるのではないかというようにご評価いただいております。
 また、これは競争的資金の制度を用いて行っておりますが、競争的資金で行う意義については、大学、研究機関、あるいは民間企業に、さまざまな革新的原子力システムに関するアイデアがあり、こういうものを発掘し、しかも実効性のあるものを選択するということが重要であり、競争的資金の枠組みで行うということが妥当ではないかとご評価いただいてございます。
 また、この事業につきましては、2つの分野に分かれており、1つは、国が評価した革新的原子力システム候補に関して、実用化を目途として技術体系の整備を行う「特別推進分野」、そしてもう一つは、革新的な技術及びそれを支える共通基盤技術をつくり出していこうということで、もう少し幅広い技術開発を行う「基盤研究開発分野」という、2つの分野で構成されております。
 それら両方に共通する点、それから個別の点がありますが、それぞれ制度としては、平成17年に創設されてから現在まで、さまざまな工夫をしてきております。例えばこちらにも書いておりますとおり、平成18年度には、特別推進分野というのは、国家プロジェクトとしての整合性、あるいは進捗調整というものが必要であろうということから、研究管理会議というものを開催するという取り組みを始めております。また、これは両分野に共通しておりますが、プログラムオフィサーに実際に研究の現場に行っていただき、研究の進捗状況を確認して助言をしていただくというようなことにも取り組んでおります。また、研究成果の発表会というものも行っており、成果について広く社会に還元していくという取り組みも行っております。
 19年度からは、プログラムオフィサーの方はなかなか業務量が多いというところもありますので、補佐役の配置ですとか、基盤研究開発分野のうち、若手を対象に研究を行っている部分がありますが、そこでは若手同士の意見交換会というような取り組みも行ってきたところでございます。
 また20年度からは、プログラムオフィサーが研究の進捗に応じて予算を柔軟に追加配分もできるような、POの裁量権限を増やそうではないかということで、予算配分を行えるような仕組みも導入したところでございます。
 こういう制度的な取り組みもしておりますが、昨年末時点で、平成17年度に採択された課題の中間評価、それから18年度に終了した課題の事後評価が行われているところでございます。いずれも順調に進展しているという結果が出ておりまして、引き続き着実に実施していくことが妥当ではないかというご評価をいただいております。
 さらに、個別評価の部分ですが、特別推進分野、それから基盤研究開発分野について、21年度からの新しい工夫、追加施策も考えております。
 まず、12ページの特別推進分野の2つ目のパラグラフでございますが、今まで特別推進分野では、一昨年の11月に定めていただきました、「高速増殖炉サイクルの研究開発方針について」に基づきまして、ナトリウム冷却型の高速炉、それから先進湿式法、簡素化ペレット法の要素技術開発について、9課題を取り組んできたところですが、20年度には、高速増殖原型炉「もんじゅ」の運転再開というものが見込まれておりますので、「もんじゅ」を使って、もちろん原子力機構が責任を持って行いますが、さまざまな発電プラントとしての信頼性実証、それからナトリウム取り扱い技術の確立ということを行うこととしております。
 このさまざまな試験研究を行うに当たり、広く大学、あるいは研究機関、産業界のいろいろな提案、知恵、人材を結集して研究を進めることがより効果的ではないかということで、特別推進分野の中に、「もんじゅにおける高速増殖炉実用化のための技術開発課題」というものを追加しようと考えてございます。これは従来の特別推進の課題と違いまして、従来、1課題だけ決め打ちで行っていましたが、広範なアイデアを募りたいということで、複数の課題を採択していくことも考えてございます。
 それから、基盤研究開発分野で、こちらは中間評価等々も行ってきたところですが、少し飛ばしまして、次のページの(2)の一番最後のパラグラフですが、実はアンケート調査をしまして、今、革新技術の研究開発を行っていただいているのですが、さらに実用化に向けてはどういう取り組みをしていけばよいか、あるいは革新技術の分野について、例えば研究規模、研究期間などは適切かどうかというようなアンケート調査を行ったところでございます。
 その結果、今、3年間ということで研究を行っていただいておりますが、もう少し研究できれば、もう少し成果が出るのではないか、あるいは、実用化に向けてステップアップをするためには、もう少し研究規模も大きくしたいというような要望が非常に多くありましたので、21年度から、基盤研究開発分野の終了課題、それから、実は私どもはこの公募事業を行う前に、旧公募と呼ばれております、競争的資金の制度とは異なる仕組みの公募事業もありますが、そちらの成果も含めまして、将来的に、もう少し研究を行えば実用化に向けて次の段階にステップアップできるようなものについて、「発展型研究開発事業」ということで、支援していこうと考えてございます。
 最後に、その他のところですが、例えば原子力機構の研究開発との整合性、連携ということをきっちりやりなさいということ、それから、公募分野や対象を適切に見直しながら、効果的・効率的に事業を行いなさいというようなご評価をいただいているところでございます。
 長くなりましたが、説明は以上でございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。原子力研究開発作業部会につきまして、私が主査を務めておりましたので、私のほうから、まず初めに所感を簡単に述べさせていただきます。
 1つ目の「研究開発段階炉等の廃止措置技術の研究開発」の事前評価につきましては、廃止措置というのが、軽水炉を含めてさまざまな原子力発電所等の廃止措置があるのですが、そこに汎用技術として活用可能であろうかという観点から評価したところでございます。研究開発段階炉等の廃止措置に伴って発生する膨大な放射性廃棄物について、除染技術及び測定技術を用いて適切に低減することは、我が国の原子力の研究、開発及び利用に関する一連の活動を進めるに当たって、極めて重要な課題であるとともに、本研究開発成果を、先ほど申し上げました廃止措置において、汎用技術として活用可能であり、開発意義が高い。したがって、本事業を実施するべきであると考えられます。
 次の「原子力システム研究開発事業」については、革新的な研究開発を行うことが、エネルギーの長期的な安定供給という観点で、どのような貢献があるのかや、また、今年度予定されている「もんじゅ」の運転再開を見て、そこに何か貢献できることがあるのではないかという観点から、評価を行ったところですが、革新的な原子力発電システムの実現に係る技術開発は、エネルギーの長期的な安定供給等への貢献が期待されます。本事業をより効果的・効率的に実施するためさまざまな取り組みがなされており、また、研究開発が順調に進んでいることから、引き続き実施すべきと考えます。また、本年度予定されている「もんじゅ」の運転再開やアンケート調査を踏まえ、公募分野の見直し等を行い、効果的・効率的に事業を進めるべきであると考えます。
 それでは、皆様のほうから、先ほどの説明に対しまして、ご意見、ご質問等がありましたらお願いいたします。
 山口委員どうぞ。

【山口委員】

 2つ目の「原子力システム研究開発事業」についてですが、21年度から、「もんじゅ」の特別推進分野を追加するということで、これは非常に評価されることであると思いますが、1点留意していただいたほうがいいと思うことは、「もんじゅにおける研究開発」という言葉を使われていますが、このやり方として、どうしてもいろいろなところからの研究者が「もんじゅ」を利用して研究成果を挙げるということになると、当然、運転に責任を持つ原子力機構としてのそこへの関与というものには負担も伴いますし、それから、「もんじゅ」を利用した研究成果を挙げていくという上では、現場が受け身になってしまいがちであるということも懸念されると思います。
 そういう意味で、研究をする外部の方と、原子力機構の運転、あるいは保守を行う現場の方とで一体感を持ってできるような仕組みが必要であると思います。それで、どうすればできるのかということでは、これは公募事業ということですが、現場の運転、あるいは「もんじゅ」での研究開発を行っている方々のニーズというものを的確に反映していただけたらいいのではないかということが1点と、もう一つは、実際に協力をして研究開発を実施するに当たって、その実施体制といいますか、ソフト、ハード面、そして人的な体制も含めて、体制をどのようにすればうまく現場と外部の研究者が一体となって成果を挙げられるか、そこも含めて検討していくことが、従来のいわゆる公募事業と違う注意点が必要ではないかと考える次第です。以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。大変重要なコメントだと思いますので、個別評価のところに、その辺が入るように考えたいと思います。
 長崎委員どうぞ。

【長崎委員】

 「研究開発段階炉等の廃止措置技術の研究開発」のほうで1つあります。そして、2番目の「原子力システム研究開発」のほうも1つあります。廃止措置技術の研究開発のほうですが、先ほど、民間からのいろいろなアイデアも募ってやりたいというご説明があったと思うのですが、それは非常に大事なことだと思います。ただ、国の「ふげん」の廃止措置を通して技術開発を行ったものが、将来的には、今、田中主査も言われましたが、軽水炉であるとか、次の核燃料サイクル施設の廃止措置にうまく適用されなくてはいけません。ただ、そのときに、民間が入ると、知財の問題などが出てきたときに、当然それがないと民間はなかなか入りにくいところがあると思うのですが、特許なりで押さえられてしまうと、本当に次にいろいろなものを廃止措置していくときに、逆にバリアになってしまわないように何らかの措置というものを考えられているのかどうか、というのが1つ目の質問です。
 2つ目の原子力システム研究開発事業についての質問ですが、今すぐというのは無理であるし、それから、もともとの資金の出どころなどの考え方からしてというのもあると思いますが、近い将来的という意味で伺いたいのは、いろいろなところで人材育成ということが言われていて、グローバルCOEであるとか、原子力人材育成プログラムであるとか、いろいろな事業が行われています。そういう意味では、大学の中、あるいは高専でもいいのですが、次の世代の人を育てるというのがミッションとしてあるはずなのです。
 しかしながら、今の原子力システム研究開発事業、あるいは原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブにしてもそうですが、例えば大学で言えば、事実上学生は一切研究にタッチできないのです。ですから、そこをうまく将来的には、大学の中での若い人、学生を、先端的な研究、あるいはプロジェクト的な研究にコミットさせながら育てていくということができるようになっていく方向性があるのかないのか、もしくはそこは人材育成事業でやればいいのであって、あくまで違うものであるというように文部科学省の中では分けているのか、その辺を伺いたいと思います。

【田中主査】

 事務局お願いします。

【板倉原子力研究開発課長】

 まず廃止措置技術の研究開発のほうで、特許がバリアにならないかということについては、私は逆に、民間企業というのは、みんなで技術を分け合うということではなく、どこかが技術を持たなければ、なかなか技術開発にも熱が入らないということがあり、これはかつての技術開発で国もいろいろ失敗してきたところもありますので、本当にすぐれた技術を持っている人間はどんどん特許も取っていただき、どんどんその成果を生かしていただくという方向に促していきたいというように考えているところです。もちろん不要なバリアなどができないように、うまくウオッチしていきたいと思っております。
 それから人材育成のほうで、多分、経理上さまざまな難しいところがあり、今の公募事業でも、学生については、例えばその人材が、契約に基づいて1日5時間、それに携わるというような契約行為ができるのであれば、参加できるのだと思いますが、学生、あるいは院生、ポスドク等々の大学等での教育を本拠にしなければいけないところとどう折り合いをつけていくかというところがありますので、私どもも、委員のご指摘を踏まえて、制度的なところでありますので、この事業は人材育成も狙いとしておりますので、出来る限り検討していきたいと思っております。

【田中主査】

 長崎委員のコメントの2つ目、人材育成、あるいは学生がよりこういうところに入りやすくて、その中で学生が育っていくというような仕組みについても検討すべきだというようなことを、どこかに書いたほうがいいですか。

【山野原子力計画課長】

 これに書くかどうか別として、学生が研究にタッチできないということを、私も、変な話、初めて聞いたのですが、少なくとも政策意図として、それを排除しようとか、それはないと思うのです。なので、この場でなくて結構ですから、何か支障が出ているのであれば、後で教えてください。少なくとも積極的に排除すべきだという制度設計をしたつもりも全くありません。

【田中主査】

 山口委員、よくその辺の事情をご存じなので。

【山口委員】

 簡単に。実態としては多分、長崎委員がおっしゃったとおりで、現実的に参加できない形になっていると思うのですが、ただ、これは研究開発事業ということですので、研究そのものということではないという理解をしています。ですから、事業として成果を出すという話と、研究として学生が研究成果を出すという話と、切り分けて見られるような仕組みであればよいのかと個人的には感じております。

【田中主査】

 ありがとうございました。多分、この事業の中間評価に今の件を書くことは、少し場違いな感じがしないでもないのですが、実際にこれを運用していくときには、今の学生がどう関与できるのかなど、いろいろと制度的な問題がありますから、そうであるとすれば、それについて適切なところで検討していただくということにし、今日皆さんのご指摘があったところについては、議事録に残したいと思います。
 あとはいかがでしょうか。

【織委員】

 技術的な問題はよくわからないのですが、どんなに技術的に有効性、効率性があっても、結果として社会的に受容性がないと、その技術が定着しないということになってきてしまうと思います。ですから、技術開発をしているときに、社会的受容性においてネックとなり得るようなものがあり得るのかどうか。あるいは、もしそれがあるとしたら、今の段階から、情報公開ですとか、あるいは技術開発における手続の明快性や公平性、透明性といったものをどうやって確保していくのか。
 先ほど先生がおっしゃった、学生も参加するとか、あるいは民間企業の間で情報交流をするとか、そういったプロセスがきちんとなっていないと社会的受容性ができないという可能性もありますので、技術に特化した面にプラスして、この技術が確立した後、実際定着していくために、研究開発の段階でも社会的受容性というものを、少し考慮していただければと思います。

【田中主査】

 ありがとうございました。

【早野委員】

 今のお話に対して、人材開発とか学生の取り扱いということに話が触れられていますが、これは皆さんご認識のことと思いますが、研究そのものがきちんとした成果を上げていくことがまず大事であります。
 「もんじゅ」を活用した公募研究について、本来のプロジェクトの中ではなくて、公募という形でも取り上げていこうというご提案ですが、このスキームについてはそれなりに評価できる点がありますので、私も賛成いたします。ただ、効率的・効果的というのは、公募研究そのものの問題ではなくて、本来のプロジェクトの進行と公募研究が相まって、全体として効率的・効果的に行なってゆくというように受けとめてよろしいのかということを確認したいのが第1点です。
 それから、公募研究に関しては、研究管理会議がありますので、その中で、今後は「もんじゅ」を活用した研究も管理されていくというように理解していますが、成果をそこで管理し、遅滞なく行っていくということと、本来のプロジェクトの進行とその成果を、きちんと管理しながら、全体として両者の整合をとっていくという考え方及び方法論、それから体制、そういうものもあわせて明確にしておいたほうがいいのではないかという感じがいたしました。
 以上、確認とご提案でございます。

【田中主査】

 ありがとうございます。
 事務局からお願いします。

【板倉原子力研究開発課長】

 まず、社会的受容性をということについては、当然のことながら、公募事業でも、例えば安全性に問題のあるものとか社会に受容できないものは選ばれないというように思っておりますし、また選ばれた中でも、成果については、成果報告会の場などを利用して、いろいろ一般の方にもお知らせしながら進めていくということを行っていきたいと考えております。
 それから、「もんじゅ」についてですが、公募については、当然のことながら、成果を上げるためにプログラムオフィサー、プログラムディレクターにしっかり見ていただくというところがございます。それから、当然のことながら、「もんじゅ」は「もんじゅ」のミッション、あるいはできること、できないことというものもありますので、実は今、原子力機構と原子力学会の間で、どういう研究ができるかということも相談を開始しているところでして、全く違う方向の研究というのはあり得ないと思っており、両者でよく話をして、実施可能なものについて公募していくというような形をとり、成果についても当然共有していくということになっていくものと考えております。
 先生のご指摘も踏まえて、今後、制度がしっかりとしたものになるように、私も気をつけていきたいと思っております。

【田中主査】

 どうぞ。

【岡崎委員】

 今いろいろな先生からご指摘があった、「ふげん」の問題、それから「もんじゅ」の問題も、私どもの大変大事な研究資源を活用していくわけですが、原子力機構の事業をしっかり行っていくというのは当然でありますが、加えて、この2施設とも、できる限りこれからの研究開発を開かれた形の運営にしたいと思っています。その中で、大学の人、あるいは国内の産業界の人、さらには、これをぜひ国際的な拠点にしたいと思っていますので、できるだけ幅広い方々の参加を得て進めるというのが我々の大きな責任だろうと思っています。
 したがって、幸いにもこの2つの事業について、この施設の運転に責任を持つ原子力機構と、よく連携をとってやりなさいということもご指摘をいただいているわけであります。特に「もんじゅ」のようなものの研究に、どういう形で外部の人に参加いただけるかということの工夫は、当然のことながら、計画の立案段階や実施段階から、綿密に協力を申し上げて進めなくてはならないことであると思いますが、我々原子力機構として責任を持って、我々の事業を進めるだけではなくて、外部の方々が参加しやすいような形態、あるいは成果をどのような形でこれから運用していくかという、その運用のあり方も含めて、ご指摘があった私どもの運営体制、研究開発体制の中に、原子力学会や、あるいは各大学や産業界と連携をきちんと取る、あるいは責任者を明確にして、開かれた形の運営体制を責任を持って取っていきたいと思っています。

【田中主査】

 ありがとうございました。どうぞ。

【伊藤委員】

 一言だけ。「もんじゅ」の関係ですが、きょうは研究開発の話ですので、今おっしゃったような形で、産官学しっかり連携をとってやっていくというのは非常に重要だと思うのですが、そのベースとして、「もんじゅ」がまともに動かなければ研究は進みませんので、先ほどの山口委員のお話にも絡むかもしれませんが、本当に「もんじゅ」がしっかり動くような、そちらのほうの手当てといいますか、それをまずやっていただきたいと思います。その上で研究開発をというように考えていかないと、研究開発だけで、「もんじゅ」が止まってしまっていたら何もなりませんので、そこのところは、ひとつよろしくお願いしたいと思います。以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 山名委員。

【山名委員】

 原子力システム研究開発事業の件ですが、この報告書を見まして、1点申し上げたいことがあります。事業が効率的にきちんと行われているのかという評価は大体これでよろしいかと思いますが、何よりも、こういう事業は前はなかったわけです。こういう事業が始まったことによって、実は事業の中の成果だけではなく、日本の原子力研究開発の体制の大きな活性化といいますか、大きな効果が出ているはずなのです。
 それはどういうことかというと、従来は原子力機構というものが中心になって、そこの下に民間がついて開発を行っていた。大学は大学で独自に、科研費などを取ってしょぼしょぼとやっていた。そこに新しい間口を開いて、大学も入れる、民間も入れる、原子力機構と一緒になってやれる、「もんじゅ」も使える、そういう新しい窓口、ルートができたということなのです。
 これは、事業としてはたかだか50億円で、うまくやっているという表現しか出ないのですが、日本の原子力開発の中で、この制度ができたことは、実は革命的なことであったと私は思っています。特に大学の立場というのは分かれていたのが、合体してできるようになった。これは、事業の具体的な成果だけではなくて、大学も、民間も、原子力機構も一体になって、アイデアを出しながら開発できるという体制の間口が開いて、今まさに発展途上にあるという、このトーンが中間報告には書かれるべきだと思うし、こういうことが財務省に明確に伝わっていかなければいけない。そうでないと、ただの制度のように思われてしまうわけです。これは日本の原子力開発を変えてきた革命的制度であるということがもっと書かれないかというように思うわけです。
 最後にもう一つ、今度はちょっと問題だけ指摘しておきますと、民間が入ってほしいと思っています。ただし、今の制度では予算に限りがあって、民間が入って来られるぐらいの大きな予算がありません。どうしても制限が入ってしまっているという現状が確かにあるのです。つまり民間というのは多くの経費を必要としますから、予算が小さいと、なかなか民間独自では入って来られないというところがあります。ですから、今後もっと改善していく必要があると思うし、そういうことも、評価には前向きの提言として書かれておかれたほうがいいのではないかと思います。
 こういう報告が今後、財務省や内閣府に出ていったときに、ただの競争的資金ではなく、日本の偏っていたと言っては語弊がありますが、ある伝統的な原子力開発体制を大きく開いてきた画期的な制度であるということを、ぜひ主張していただきたいと思います。以上です。

【田中主査】

 ありがとうございます。
 あとはいかがでしょうか。

【知野委員】

 専門家の方には当たり前のことなのかもしれませんが、よくわからないのが、つまり、こういう研究行っている、中間評価を行ってどうであったか、事後評価は1つあった、こういうことはお書きになられているわけですが、先ほど来おっしゃられていたような人材などの育成の問題ともかかわってきますが、これをやることによって、例えば日本国内でどれだけの人材がこの研究にかかわっているのか、それは過去と比べて増えたのか、減ったのか、あるいは、この分野にかかわっている人のすべてがこの中に実は入っていて研究開発を続けているものなのか、そういう定量的な判断みたいなものが加わっていないと、これは単に研究開発の集合体であるというようにしか、こちらとしては見ることができないのですが、その辺はいかがでしょうか。

【田中主査】

 事務局お願いします。

【板倉原子力研究開発課長】

 実は作業部会のときにも、人材の育成ということが、この制度の目標になっていますので、今後の課題として、そういう調査なども行っていくべきではないかというご指摘もいただきまして、私ども、どういうやり方をすればうまく把握できるかということも含め、今の先生のご指摘も踏まえて、検討していきたいと考えております。

【田中主査】

 よろしいでしょうか。何点か意見をいただきましたので、それらを踏まえて修文したいと思います。「もんじゅ」における研究開発につきましては、一体感が出るようにということ、かつ原子力機構側からの要望も聞いて開発体制を考えるということ、その辺のところを踏まえて文章を考えたいと思います。
 次に、社会的受容性のところ、あるいはプロジェクトの効果的・効率的なところについても、それらを踏まえて文章を考えたいと思います。
 次に、山名委員のご指摘のこの制度によって国の原子力開発体制が大きく変わったということ、それが発展途上であるが、うまくいっているということ、そんなことを書きたいと思いますが、同時に、エネルギーですから国家プロジェクトとしてどのように考えるかということで、国家プロジェクトの推進にも大きな貢献があるというようなことも書きたいと思います。
 次に、民間が入ることによって、これは僕にとって少し悩ましいのですが、それについても考えたいと思います。ここらのところを踏まえて修文したいと思いますが、今すぐに修文はできませんので、事務局と相談しながら、いい案をつくりたいと思います。修文について、きょうは議論できませんが、その辺については私のほうに一任させていただくということでよろしいでしょうか。
 本島委員どうぞ。

【本島主査代理】

 今、田中主査がおまとめになられたので、特に異存があるわけではありませんが、いろいろなご意見が出たということは、それだけ注目されているという証左でありますから、この委員会においても、今後も厳しくウオッチしていくというか、評価していくということが、確認事項として非常に重要ではないかと思います。
 それで、もし今後まだ修文されるというプロセスがあるならば、お願いしたいと思いますのは、このプログラムが競争という形で行われているわけですが、原子力という点において、最先端の科学技術の開発を目指しているという点、したがって、独自性がいろいろなところであるわけです。そういったところも的確な表現があるといいのではないでしょうか。そうしますと、世界との競争もあり、競合もしているということも主張していけるのではないかと思います。以上です。

【田中主査】

 重要なご指摘ありがとうございます。うまく入るかどうかわかりませんが、考えさせていただきます。
 その辺のところを修文させていただくということで、ご了解いただいたということにさせていただきたいと思います。修文したものにつきましては、また委員の方にも報告いたしますが、評価結果につきましては、来週、8月29日に開催されます、「第28回 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会」のほうへ、私のほうから報告させていただきたいと思います。
 それでは、次の議題ですが、「高速増殖原型炉もんじゅの状況について」でございます。事務局から説明をお願いいたします。

【板倉原子力研究開発課長】

 それでは、資料3でご説明をさせていただきたいと思います。
 今まさに伊藤委員からご指摘され、ちょっと耳の痛いところがございましたが、昨日、原子力機構のほうからプレス発表した資料ですが、「もんじゅ」につきましては、平成7年のナトリウム漏れの事故を踏まえた改造工事というものを昨年5月に完了しまして、今、プラント全体の健全性を確認するための「プラント確認試験」というものを行ってきておりました。これは8月末までに終えるということを当初の計画としておりましたが、今年3月に生じました、1次系のナトリウム警報器に不具合があったということで、全数点検、あるいは水平展開を行っていたところ、当初は、8月末までに終えるというスケジュールに影響なくということで取り組んでまいりましたが、最終的には、思った以上に検出器の点検に時間がかかったということもあり、プラント確認試験が10月までかかるということとなりました。
 また、これに伴いまして、当初、8月にプラント確認試験を終えましたら、10月に運転再開、臨界をというように考えていたのですが、プラント確認試験が2カ月遅れたことに伴いまして、追加で新しい燃料を装荷しないと適切な臨界を行うことができないという見込みとなりましたので、新しい燃料の装荷、交換ということも作業として加わったところです。
 それらの作業を全部入れますと、運転再開の時期は来年、平成21年2月頃と見込んでおりまして、今、文部科学省、原子力機構一丸となりまして、新しい目標の達成に向けて取り組んでいきたいというように考えているところでございます。
 2ページ目には、新しい工程を線表で、今ご説明したことを記載しているところでございます。説明は以上でございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 ただいまのご説明に関しまして、ご質問等がありましたらお願いします。
 岡崎委員どうぞ。

【岡崎委員】

 恐れ入ります、一言、実施責任を果たしていくべき原子力機構としてご説明を申し上げたいと思いますが、今、板倉課長からご説明いただいたとおり、「もんじゅ」が、これからの高速増殖炉開発の中核的施設であり、国の政策の大きな柱としていただいており、加えて、最近は外国からの期待も大変高いという中で、我々はできるだけ早期の「もんじゅ」の運転再開ということに取り組んできたわけですが、今ご説明のあったとおり、プラント確認試験の遅れということから、さらに新しい燃料の追加ということも含めて、運転再開の目標を、10月から来年の2月に変更することが妥当であるという結論を得て、昨日も、地元の福井県や敦賀市にご説明に行ってまいりました。
 もちろんこういった大きなプロジェクトの遅れというものが、地元の皆さん方の期待や、あるいは信頼ということに対して、大きく失う結果になってしまうということの懸念、あるいは今回のプラント確認試験等の遅れの背景として、もちろん機器の安全に対するきちんとした確認だけではなくて、その背景となりました組織体制、運営のあり方についても幾つか懸念が生じたということ、さらには、この間の原子力安全・保安院による特別な保安検査によって、幾つかの課題もご指摘をいただき、それを受けて、7月末に改めて組織体制の強化という観点からの行動計画をまとめ、今、その行動計画の実施に取り組んできているところであります。
 そういった問題に対して、地元の皆さんからももちろん大きな心配をお寄せいただいているわけですが、昨日、結果的にはこういうことをご説明をし、今後の工程の見直しについてご説明をして、おおむねしっかりと受けとめていただいたということでありますが、ぜひ引き続き安全確保を第一に、できるだけ早期の運転再開を目指して、先ほど伊藤委員からもご指摘があったように、「もんじゅ」の早期運転再開というのは、これからの高速増殖炉開発の大事な柱でありますから、それを達成していきたいと思います。
 この際、よく皆さん方から、ナトリウム漏えいを起こして、間もなく13年が経つわけでありますが、漏えい直後から、いろいろな組織体制の見直しや強化に取り組んできたのに、まだそれができていないのかという大変厳しいご指摘をいただくわけです。私自身も大変残念なことでありますが、組織体制の問題については、いろいろな点からご指摘があったとおり、ここまで行ったら完成などという状態があるわけではありません。人が係わり、品質保証体制のいろいろな進化もありますし、あるいは社会環境も変わってくるわけですから、そういった意味で、常に組織体制、運営については見直していかないといけないということは当然でありますが、正直言って、今までのプラントを維持していくという業務の中心から、今後はいよいよ運転に備えた、いわばフェーズは変わっていくということに対して、今回のいろいろなことを反省すれば、将来の本当の運転に向けた体制に進めた場合の幾つかの個々の機器の問題、あるいは職員の業務のあり方等について、率直に言って反省すべき点が生じたわけでありますから、速やかに我々は改善に取り組んでいかなくてはならないということで、そういった意味では、私は、将来の運転に対して、大変いい教訓を与えていただいたと理解しておりますし、これをぜひ生かしてやっていきたいと思っております。実はこの過程で、行動計画の中に、原子力機構はもちろん総力を挙げて今取り組んでいるわけでが、加えて電気事業者の経験豊かな方々からも、8月から応援をいただいて、現場に入っていただいているわけであります。こういった意味で、我々原子力機構だけではなくて、外部の方々のご意見も十分お聞きしながら、できる限りの対策を講じて、安全には万全を期して、いろいろな期待に応えていくということが我々に課せられた大きな使命であろうと思っています。
 できるだけ早い運転再開を引き続き目指していきたいと思いますので、どうか皆さん方のご支援や、あるいはいろいろなご指摘をいただければと思っています。ありがとうございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 あと、いかがでしょうか、井上委員どうぞ。

【井上委員】

 意見ではないのですが、細かいことで恐縮ですが、この表で「ナトリウム漏えい検出器等点検」のところが、点々となっているのはどういう意味なのか。これは、問題の原因は明らかになって、作業がまだ残っているということなのか、すべて終わっているということなのか、その辺がよくわからないのですが。

【岡崎委員】

 この表の下のほうに、「ナトリウム漏えい検出器等点検」ということで、さらに点線がずっとつながっているということのご指摘であろうかと思いますが、実はこの点について、原子力安全・保安院や原子力安全基盤機構の方々等の評価をいただきながら、実際の検出器がどういう原因で、何が起こって、それをどういう形で修理し、機能をきちんと維持していくかということのまとめを今やっているわけであります。もちろん作業としてはほぼ終了したということで、一応、区切りとして、私どもとしては、この7月の段階で黒く塗りつぶしたところは終わっているわけでありますが、最終的な点検の報告書という形をまとめて、それを最終的には原子力安全・保安院に提出しなければなりません。
 保安院の皆さんとご相談を申し上げている中で、特別な保安検査の中でもいろいろなご指摘があって、我々が行った点検が本当に十分であったかどうかということを、今後の保安検査の中でもしっかりと確認した上で、最終的な報告書を提出するということでありますので、したがって、最終的な点検の結果の提出、あるいは総仕上げというものが、今後規制側と調整をした上で、初めてそれが完成し、その上で、地元の皆さん方等にもきちんと説明をしていくという作業が残っているということで、点線が書かれてあるということであります。できる限り9月中にはしっかりとしたまとめを終えて、この問題については区切りをつけたいと思っています。

【田中主査】

 あとはいかがでしょうか。
 よろしければ次に行きたいと思います。議題(4)「研究施設等廃棄物の処分体制整備に係る進捗状況について」です。時間も少し遅れ気味ですので、短目にお願いいたします。

【山野原子力計画課長】

 資料4−1から4−3がありますが、本件につきましては、本委員会でもいろいろご議論いただいており、近々では3月にもご議論・ご意見をいただいたところでございます。
 その後の進捗状況を言いますと、原子力機構を処分の実施主体にするという法律については、この国会で通って、6月6日に法律が公布されました。今のところ、9月1日の施行に合わせて、いろいろな政令や省令の準備をしているということでございます。
 法律が施行されますと、まず1番目にしなければならないことは、国が基本方針を定めるということが、法律上規定されております。基本方針につきましては、この委員会の下にあります、山名委員を主査とする研究施設等廃棄物作業部会において、7月、8月とご審議をいただき、ある程度の案ができてきたところです。その案が資料4−3です。それを今日この委員会でもご議論いただいて、それを踏まえて、近々にパブリックコメントにかけて、10月中ぐらいには、主務大臣として決めたいと思っています。
 それと並行して作業しなければならないこととして、より詳細な実施計画、これは原子力機構がつくるということになっておりますが、作業が進んでいるということでございます。これにつきましても、法律が通ったから、すぐ明日から埋められるというものではなくて、今後は当然、立地とか、非常に高いハードルもあるわけですが、勢いを維持して着実に進めていくということが重要だと思っております。
 基本方針でございますが、時間の関係もありますから、資料4−3を横目で見ながら、概要が資料4−2にありますので、簡単にご説明したいと思います。基本的な項目に沿いまして、大体5ページの紙でまとめているというところでございます。
 まず大きな項目として、「はじめに」ということで、基本方針の位置づけということの中では、例えば今回言いますような、研究施設等廃棄物の処分問題というのは、先送りせずに、今きちんとやらないといけない非常に重要な問題であるというようなことなどを書いてございます。
 その上で、(2)で、処分事業を進める際の基本的考え方として、まず最初のところで、重要なポイントを何点かまとめました。安全の確保、透明性及び信頼性の確保、立地地域の理解と共生、発生者による応分の負担と協力、合理的な処分の実施、そのような重要項目について、簡単に考え方を「はじめに」というところで示したということでございます。
 その上で、原子力機構は実施主体として、きちんと責任を持って主体的に行うということとした上で、国としても、原子力機構と一体となって立地活動などに取り組むということでございます。
 2番目のポイントが、対象とする廃棄物の範囲ということですが、それにつきましては、基本的には、地層処分関係についてはNUMOが行うので、それ以外の低レベル放射性廃棄物のうち、原子力機構の業務によって発生するもの、また、いろいろな事業者から発生して、原子力機構が委託を受けて行うものを基本的に対象にするということです。
 重要なポイントとして、原子力機構は日本原燃株式会社と協力して、例えば一元的な処分の検討も考えていくということも含めて、抜け落ちなくきちんと行っていくという考え方を、ここで書いているところでございます。
 そのような、対象とする廃棄物としてはかなり幅広く決めた上で、当面、第一期事業として、コンクリートピット処分とトレンチ処分でできるものを対象にし、今後の40年間、平成60年までに発生が見込まれるものを対象にして、第一期事業の計画を具体的に書いていくということでございます。
 次のポイントが、埋設施設の設置に関する事項ということで、まず、処分地の選定ということですが、基本的な考え方としては、透明性であるとか、公正な選定というような考え方を示した上で、具体的な手順などは、原子力機構が定める実施計画の中で明確にしていくということを書いているところでございます。
 その上で、最終的にはきちんと立地地域の自治体の了解を得るというような考え方を書いてございます。
 2番目に、立地地域の住民であるとか、広く国民の理解を得るために、情報公開をきちんと行うとともに、広聴・広報活動をきちんと行うということ、特に立地地域では説明会、シンポジウム等、いろいろな活動を充実するということです。
 また、地域との共生ということで、立地地域の活性化につながるような方策もきちんと考えて、実施していくということでございます。
 4番目に、処分の実施に関する事項というところでは、具体的に今回、当面対象とするものとして、コンクリートピット処分とトレンチ処分を行うということと、当然ながら、埋めたら終わりということではなく、その後もきちんと管理をしていくということを書いてございます。
 次に、事業運営というところでは、今回の事業というのは、原子力機構が今まで実施してきたような研究開発業務と異なるわけですから、特別に配慮して欲しいということを何点か書いているということでございます。例えばきちんと人を手当てして、教育訓練なども行うということとか、情報公開やコンプライアンスなどが重要であるということ、経理面についても、ほかの資金と研究開発の資金を明確に区分してきちんと管理することであるとか、必要な研究開発も行って、最新の技術的知見をきちんと活かしていくということ、5点を特出しして書いているということでございます。
 5つ目のポイントが、資金計画に関する事項というところでして、まず、原子力機構の中で、対象とする物量をきちんと見積もった上で、収支計画、資金計画を作って公表するということでございます。それとあわせて、透明性を確保したプロセスの中で、公正な処分単価を設定する。当然こういうものは、必要であれば定期的に見直しをしていくということです。
 それとあわせて、当然、原子力機構として必要な資金は積み立てて、計画的に措置することとか、委託をした者からは、きちんと費用をもらうような仕組みを作る。その上で、独立した処分勘定で管理をしていくこととか、それぞれの管理状況とかについても、独立的に決算を行って、その結果も公表していくということを書いているわけでございます。
 最後に、その他重要事項ということで、繰り返しになりますが、安全の確保であるとか、発生段階での対応として、発生者も原子力機構に委託したら終わりということではなく、物量がなるべく低減するような努力をすることとか、きちんと管理をすることとか、その管理状況などについても国がチェックしていくということ、また、処分だけでなく、輸送や処理なども含めて、原子力機構が関係機関と協力して体系的に対応していくということ、また、低減や安全性向上のための研究開発を推進するということ、また、年度計画も作成することとか、実施状況などもきちんと作成して、評価を行っていくということ、その結果はきちんと公表していくということ。
 そのような考え方をもとにして、資料4−3にあるような5ページほどの基本方針をまとめまして、8月の作業部会の中でもいろいろコメントをいただきました。それを踏まえて、主査であります山名委員などと調整しながら、原案をまとめたというような状況でございます。
 今日も、いろいろご指摘等をいただければ、それらを踏まえて、近いうちにパブリックコメントで国民の意見を聞いて、それを踏まえて、また作業部会で議論をし、まとめていきたいと考えてございます。
 説明は以上でございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 では、ご意見とかご質問等ありましたらお願いいたします。

【山口委員】

 特にここがまずいという話ではないのですが、6番目の「その他埋設処分業務の実施に関する重要事項」は、内容を拝見しますと、「はじめに」に述べてあります基本的考え方を実施するために、具体的に何をやっていくのかということが書いてあるのかと思います。そういう意味では、その他重要事項ではなくて、「基本的考え方を実現するための留意事項」とかそういう言い方のほうがよろしいのかなと思います。

【田中主査】

 ありがとうございます。ごもっともかと思います。
 あといかがでしょうか。

【長崎委員】

 私も作業部会の委員ですが、一回も出席できていないので、この場で言うのは変な話ではありますが、少し思ったのは、おそらく一番苦労することは立地であると思います。恐らくNUMOとか日本原燃株式会社といったところはいろいろ苦労されているということが片方にあって、書けるのかどうかということはあると思いますが、そこと、あるいは電気事業連合会などと、その部分でもうまく連携をとりながらであるとか、あるいは研究自体も、原子力機構自体の中できちんとやっていますが、うまくそういったところと、同じことを繰り返すことなく、合理的、効果的にやっていくことも重要ではないかなという趣旨のものが、どこかに読めるといいかなという感想を受けました。
 もう一つは、6番の(1)安全の確保のところで、2つあって、1つは、安全の確保ということが何となく、労働安全のように見えなくもなくて、もっと国民が思う安全というのは一体どういうものか、それに対しての安全という趣旨で書かれているのでしょうが、「関係法令を遵守し」というところをもう一歩、何かあるのかなというのが1つ、うまく表現できないのですが。
 最後に、「原子力機構は、安全規制当局に対して適切に情報提供を行う」なのですが、おそらく基本的な方針の提出者は国というか、文部科学省になるわけで、そのときには、情報提供を行ってもらって、国は何をすべきであるかというように書いておいたほうがいいのではないか、何となく国は何をするのかというのが、ここでは少し見えないのかなという印象を受けました。以上です。

【田中主査】

 ありがとうございます。

【山野原子力計画課長】

 確かに安全のところは、原子力機構の従業員に対する安全というのはもちろんなのですが、当然一番念頭にあるのは、周辺住民の安全ということなので、そこは表現ぶりとして工夫できるのであれば、考えたいと思います。
 あと、適切な情報提供を行うというのは、ここは国といっても、定める者というのは、主務大臣として定めるということなので、規制当局たる国ということではありません。そういうこともあって、この基本方針に規制当局を縛るようなことは、言えませんので、縛られる者としての原子力機構がきちんと情報提供をするということをここで書いていますが、その趣旨は、例えば複数の法令が適用されるので、齟齬があったらいけないので、原子力機構は規制当局に対して適切に情報提供を行いなさいということまでしか書いていない、そこはそういう趣旨です。
 あと、立地に当たってどうやっていくかというのは、最大の問題で、ここにどう書くかだけではなく、当然、原子力機構であるとか、国とか、我々だけでもうまくいくと思っていませんので、先輩であります日本原燃株式会社であるとか、いろいろなところと実際上は話をし、協力しながらやっていきたいと思っております。

【田中主査】

 よろしいですか。あとはいかがでしょうか。どうぞ。

【早野委員】

 先ほどのご報告の中に、他の廃棄物発生者から処分の委託を受ける際、確実に処分に要する経費を徴収するとありました。私ども産業界も若干保有している部分がございまして、円滑に処理、処分が進められるために、費用の多寡というのは結構大きなポイントになってまいりますので、いろいろな課題があると思いますが、経済性も、1つ要素として織り込んでいただいて、全体としてスムーズに流れる環境をぜひお作りいただきたいというお願いでございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
 山名委員、何かありますか。

【山名委員】

 いえ、特にありません。

【田中主査】

 では、今あったようなことを踏まえていただきたいと思います。
 それでは、次に行きたいと思います。「核融合研究の推進に必要な人材の育成・確保について」の報告書でございます。これは、核融合研究作業部会において審議、取りまとめられたものでございますが、事務局のほうから説明をお願いいたします。

【千原研究開発戦略官】

 お手元の資料5−1と5−2でございます。5−2のほうが報告書本体でございますが、時間の関係もございますので、資料5−1の大きなA3の概要版に基づいて簡単にご報告をさせていただきたいと思います。
 核融合研究作業部会のほうで、去年6月に、「ITER計画、幅広いアプローチをはじめとする我が国の核融合研究の推進方策」というのを取りまとめていただきましたが、その議論の際に、人材育成・確保ということは非常に大事だというご指摘がたくさん出され、それに基づきまして、本年2月から5回にわたって議論をし、この報告書をおまとめ頂いた次第でございます。
 全体、3章立てになっておりまして、第1章が、核融合研究の推進と人材育成ということで、全体的なことが述べられております。第2章が、現状の分析と課題ということで、第3章はそれに基づいて、どういう対策を今後取ることが必要かという3章立てになってございます。
 第1章のところですが、人材育成の基本的な考え方ということで、まず、核融合研究が、新しいエネルギー源の中でも非常に大事なものであるということで、また、これは今国際的に、積極的に行われているということが書かれてございます。また、我が国としては、ITER計画・BA活動に参画して、オールジャパン体制で、原子力機構を中核機関として行っており、また、大学、核融合科学研究所を中心として、学術研究もしっかり行っているということが書かれております。
 その中で、核融合研究というのは、広範な要素科学技術を、統合して行う技術開発ですので、我が国が得意としてきた「ものづくり」という分野からしても非常に大事であるという観点から、我が国は今後、長期的なビジョンのもとに、ITER計画・BA活動を通じて研究開発を行っていくわけですが、そこはある意味、人材育成の観点からすれば、実践的教育の場であるというような位置づけもありますので、そういった場を使って、産学官が連携して人材育成に励んでいこうということが書いてございます。
 2章の、現状の分析と課題ですが、1.が、基本的な全体的課題は何かということが書かれており、特にその中で、ITER計画・BA活動を行っていく場合に中長期的な課題は何かが2.でして、3.で、特に緊急に対処すべき課題は何か書いた上で、それぞれに対して、3章で具体的な施策が書かれてございます。
 第2章の1.の基本的な課題のところですが、長期的ビジョンを示すということが非常に大事であるということです。ここにありますように、広範な要素技術を統合する総合科学技術であるということもありますし、また、核融合研究において、人材育成、あるいは人材が、どのように将来、進んでいくかということを考えれば、やはり長期的なビジョンが提示されるということが大事であるということでございます。
 また、人材の流動化という観点で、核融合に限らず、原子力、さらには理系人材のことにまで話は及びますが、人材が枯渇している現状において、核融合の分野だけではなくて、いろいろな横の連携、そういった共通性とか流動性を重視して、幅広い分野で、人材を育成していくべきではないかということが書かれております。
 また、特にその中において、若い研究者がどういったキャリアパスで、今後、核融合の分野で伸びていったらいいのかというところが明確になっていないのではないかという観点のご指摘もございました。
 そういった観点では、特に大学並びに核融合科学研究所の連携・協力によって、大学院教育体制の多様化・高度化を図るとか、大型の研究施設を教育の場で活用していただいて、人材育成をするというような観点。それから、産業界における人材育成・確保ということの重要性。それから最後には、国際的な視点に立って、国内のみならず、核融合の研究開発は世界的に行われておりますので、特に、例えばアジア地域との連携といった形で、国際的な連携をして人材育成を図っていくべきではないかということが書かれてございます。
 2.の中長期的な課題のところでは、特にITER計画・BA活動で何をしていくかということで、研究者・技術者の拡充ということが大事である、大学あるいは核融合科学研究所においても、ITER計画あるいはBA活動を十分に活用していただいて、そういったところに参画することによって、多様な人材がキャリアを積み上げていくことができるような仕組みをつくっていくことが大事ではないか。あるいは、技術の継承という観点では、我が国において確保すべき核融合の技術というのはどういったものがあるか。また、産業界でそういった技術を継承していくことが非常に大事ではないかということが書かれております。
 3.で、緊急の課題ということで、特に今、ITER機構への派遣者数ということについて問題になっておりまして、我が国は準ホスト国ということであり、現在、約18名程度がITER機構に行っておりますが、これは、我が国がEUから割譲を受けている分と合わせますと、18%ぐらいまで人が派遣できるのではないかと言われておりますが、その中の9%程度にとどまっており、倍ぐらいは少なくとも人材を派遣したい。
 ただ、それを行うに当たっては、例えば派遣元における大学の場合は、研究者が派遣されるとなると、帰ってくる先であるとか、どうやって派遣するための費用を工面するであるとか、いろいろなことが問題になっておりまして、そういったところの手当てをする仕組みが非常に大事であろうというようなことが書かれております。
 そういった課題を挙げた上で、それぞれに対してどういった施策を打ったらいいかということが、3章でそれぞれに対応して書かれており、1.の一番下の緑色で囲った部分は、全体的な課題に対しての施策ということで、特に最後のところに括弧して、だれが具体的な施策を打つべきかということも書かれており、例えば先ほどの長期ビジョン、あるいは技術戦略ロードマップの提示ということについては、国ないしコミュニティが核融合エネルギーの長期ビジョンを提示することによって、どういうキャリアパスを持って人材を伸ばしていくかといったことを示す必要があろうということ。
 それから、人材の流動化ということでも、先ほど出てまいりました、大学あるいはいろいろな研究機関といったところの横の連携を強化して、人材の流動化を図っていくべきであろうということ。あるいは大学において、大学と産業界が連携して核融合教育のプログラムを立ち上げるようなことも検討していくのが大事ではないかということ。あるいは、産業界からの人材育成ということでは、例えば産業界における研究休職制度といったものを活用して、企業から研究者を大学院に送り出していただくような取り組みが大事ではないかということが、全般的な課題に対する施策として挙げられてございます。
 次の2.の、ITER計画・BA活動を中心とした中長期的な施策ということで、こちらでは、先ほどの研究者・技術者の拡充ということで、ITER計画・BA活動の経験者がいろいろな経験を生かして活躍できる、そういったキャリアパスを確立していくことが大事だろうということ。学会や産業界から行かれた方が、学会、産業界に戻ってこられて、きちんと活躍いただけるといったことが大事であろうということ。それから、シニアに限らず、若手の研究者がITER計画・BA活動に参加していけるような仕組みづくりをすることの重要性。また、技術の継承という観点では、その次の原型炉ですが、基幹技術において、ITER計画・BA活動でどういった技術を取得するのか、あるいは我が国が独自に取得するべき技術は何かといったところを明確化して、継承体制を早急に検討していくべきではないかということが書かれてございます。
 最後に3.のITER計画・BA活動を中心とした研究に係る緊急に行なうべき施策のところですが、ITER機構への派遣者の数ということについて、なかなか難しい状況ですが、大学からITER機構へ派遣する際の派遣元大学へのサポートについて、例えば核融合科学研究所に期待したいということ、あるいは大学の研究者の経費ということについて、ITER補助金などで措置するようなことについても検討すべきではないかというようなこと。それから最後に、学協会あるいは産業界レベルで、人材育成の募集の通知や、あるいは交流によって、工学分野以外からリクルートをするようなことも今後いろいろ考えていくべきではないかということが書かれております。
 今回、こういう報告書を御纏めいただきまして、国としてもこの報告書をしっかりフォローアップして、できるだけ人材育成に頑張っていきたいと思っております。
 簡単でございますが、以上でございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 それでは、ご質問等ありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。どうぞ。

【中西委員】

 この報告書を読ませていただきまして、今ご説明があった概要とは別に、実際的なシナリオとか、技術の確かさとか、将来性とか、この技術が実証に向かって可能性があるということを示したものはあるのでしょうか。
 この報告書からはあまり読み取ることができないのですが、今、基礎技術や基礎研究の段階ですが、産業界も期待するような具体的な計画を念頭に読んでいきますと、例えば報告書の10ページ目の【産業界における人材育成・確保】のところですが、その中では、「基礎研究と実用化をつなぐ段階で」というような曖昧とした書き方があります。
 産業界というのは、将来性について、ほんとうに実用化の可能性があるということが見えてこないと入ってこないと思うのです。国が補助金を出して、いろいろ先導することというのは火つけ役であって、自己資金を出してでもするような体制のシナリオがないと、入ってきてもらえないと思うのですが少し読み取れないのです。
 あともう一つ、少し細かいところで、7ページの一番上のほうで、国際協力に対することが書いてあり、今、分担で基礎研究をしているとあるところです。日本が分担していないところを日本でバックアップするということは、基礎研究を、国際協力という考え方の中で、どのように考えているのか。バックアップということは、外国でしていることも日本でするととれるのですが、重複するとも理解されます。重複の程度にもよると思いますが、国際分担ですから外国でのノウハウや蓄積は日本にもきちんともらえるはずなのに、日本でもするというところを少し説明していただければと思います。
 全体的に、もしこの報告書とは別に、具体的なステップ、将来性やどのように産業界を巻き込んで実現するかというものがあればいいと思います。若い人が将来困らないような工夫をすると書いてあるのは、やはり困るとも受け止められます。将来をきちんと見据えることができたら企業も参加しますし、学生も積極的に来ると思うのです。そこら辺のロードマップや仕組みはどのようになっているでしょうか。

【千原研究開発戦略官】

 今、中西委員がご指摘した点は、まさにそのとおりでございまして、今回の報告書でも、長期ビジョンないし技術戦略ロードマップが必要と書かれているとおりでございます。
 現状どうなっているかですが、まだ国としての長期ビジョンというところには至っておりませんが、当然、ITERの次の原型炉をどうするかというようなロードマップができていないと、若手もなかなか安心してこの分野に飛び込めない。あるいは産業界も人材を送れないし、技術を蓄積できないということもあって、報告書の3ページの2段落目ですが、産学官の意見集約をする場である「核融合エネルギーフォーラム」とありますが、この核融合エネルギーフォーラムの下に、「ITER・BA技術推進委員会」というのがございまして、ここで、「トカマク型原型炉に向けた開発実施のための人材計画に関する検討報告書」、あるいは「核融合エネルギー実用化に向けたロードマップと技術戦略」というものをこの6月につくっていただいており、意見集約をいただいたので、これを受けて、国として具体的な、今、先生にご指摘いただいたような、その次の長期ビジョンというのをつくっていくというようなフェーズに入っていくのだろうと思います。そういうような形で、ご指摘のところを明確化するような努力が必要であると思っております。
 それから国際協力のところは、ITERに参加した極というのは、それぞれで分担しながら、なおかつそこで出てきた成果というのは共有できるということですが、ただ一方で、特に原型炉に向けて、日本として、どの技術を特に取っていくのかという観点も明確にしながら、技術の継承というのを図らなければいけませんし、バックアップという観点では、当然、日本の核融合研究というのはITERだけではなくて、核融合科学研究所、大学で行っている学術研究、そこが基礎となって、その上にITERというものが支えられていると思いますので、そこのところは、明確に書かれていないというご指摘でございますが、そういったことはきちんと認識をして、しっかりやっていく必要があろうかというように思っております。

【田中主査】

 核融合エネルギーフォーラムのロードマップの報告書と概要版をご覧いただくのもよろしいかと思います。
 長崎委員どうぞ。

【長崎委員】

 中西委員とほとんど同じで、私もぱらぱらと横に眺めたときに、横軸の時間スケールがあまりよく出ていないというのが気になっており、ITERはよくわかっていないところもありますが、最初の10年間は建設期でしたでしょうか。

【千原研究開発戦略官】

 はい。

【長崎委員】

 そうすると、ITER機構に行くべき人材は、おそらく最初の10年間と、11年後からはまた違ってきて、そのためには、11年後に人をどうやっていくかというようなことで展開していく必要があるということが1つコメントです。
 それともう一つは、人材ということでは、特に産業界が大きくなると思うのですが、この委員の中に、産業界の方が石塚さんだけが入られていて、原産協会の方ですが、比較的産業界の要求というか、期待が大きく書かれているのですが、本当に石塚さんはここまで期待されて、いいですよとお答えになっていたのかという、そこだけ確認したかったのです。以上です。

【千原研究開発戦略官】

 前半のところにつきましては、確かに最初の10年が建設期間で、その次の20年間が運転期間ということで、最初の10年は建設に携わる技術者の方が中心で、その次の20年間は運転ということで、研究者の方が中心になるということで、そこは確かにおっしゃるとおりで、人材の質が変わってくるのだろうと思います。そこのところは、この報告書には明確に出ていないのですが、先ほどの核融合エネルギーフォーラム、ITER・BA技術推進委員会のほうでおまとめいただいた人材の報告書のほうには、もう少し細かくブレークダウンした形で報告をいただいてございます。
 それから2番目の点、産業界ということで、ITER計画というのは、各担当極が物をつくって、物納でITER機構に持っていって、ITER機構が各極の機器を統合して、ITERをつくるということになって、いよいよ10年間の建設が始まったばかりなわけですが、そこにおいて、やはり最初に来るのがエンジニアリングのところですので、日本が特に強いものづくりといった観点で、産業界への期待が大きいということでございます。
 この点に関しては、議論の過程で、産業界からのご意見をいただいており、先ほどの議論に戻るのですが、長期的に原型炉にどう向かうのかといったビジョンがないと、やはり産業界は安心して入っていけないというご指摘もいただいており、そういった観点では、国、コミュニティ挙げてしっかりやっていかないといけないと思ってございます。

【田中主査】

 長崎委員のコメントで、石塚さんだけで十分かという話もあったのですが、原産協会の中に核融合関係の委員会があって、石塚さんはそこで産業界をまとめられて、いろいろな意見を聞いて行っているということなので、産業界から1人ではありますが、産業界の意見が十分入っているのではないかと思いますが、もし必要があれば、さらにいい仕組みを考えなくてはいけないかもしれませんが、今はまだそこまで行っていないのかと思います。
 あと、いかがでしょうか。

【岡崎委員】

 今の中西委員や長崎委員のご発言にも極めて関連をし、今回こういう形で、核融合の将来の人材育成について御纏めいただいたということは、私は大変すばらしい報告をおつくりいただいたと思うのですが、最後の産業界との関係から、実は今、ITER機構との関係において直面する、私ども極内機関としての最大の課題は、やはりITER機構に対してどれだけ優秀な人材を送り込むかというのが、将来の我が国の貢献を考えると、実は一番大事な視点であることだけは間違いありません。
 今もご指摘があったとおり、残念ながらまだ、本来20%近い枠をいただきながら、9%ぐらいの半分にも達していないという状況であるし、加えて、今のITER機構がなすべき仕事の中心は、何といっても彼らが建設をまとめ上げていかないといけないとするならば、今、彼らが必要としている人材というのは、まさに産業界のような経験を持った人を一番望んでいるわけです。
 そういう観点から、残念ながら今の日本からの応募状況の中に、産業界から手を挙げていただく方が非常に少ないというのが実態であるわけです。したがって、折角今日は早野委員もいらしてますし、むしろ伊藤委員もいらしているので、将来の核融合の人材の育成、特に今のITERを完成させるために、産業界からの参加というのは大変大事だということをぜひ改めてご認識をいただいて、この分野へ産業界から名乗りを上げていただくということが非常に大事な視点ではないかと思っています。
 私どももいろいろなお話をしていると、いっときよりも産業界の核融合の活動が、もちろん我々研究活動が若干、JT−60の後、しばらく途絶えたものですから、産業界の層も大変少なくなってきているというのは実態であるし、あるいは産業界自身が、ほかの原子力関係の業務が今、大変大きく伸びているから、なかなか核融合に人材を回せないという状況もあるということは、我々も十分踏まえないといけないかもしれませんが、将来の原子力にとって大変大事だし、中西委員からもご指摘があったわけですが、確かに核融合で、5年、10年で本当に産業界の方に儲けていただけるような状況があるわけではないのですが、ただ、核融合の技術を見ていると、決して核融合プロパーの、例えば原型炉をつくったり、いろいろな研究施設をつくったりということ以上に、実は最先端の超伝導や、あるいはいろいろな計測関係であるとか、実はすばらしい最先端の技術を内蔵しているわけですから、そういう観点にぜひ産業界が着目していただいて、幅広い人材を産業界の中にも育てていただく。確かに、5年、10年という長期間、優秀な人間を産業界からITER機構に派遣していただくというのは大変難しいというのはあるかもしれませんが、これは日本の産業にとって、将来重要な一つの大きな発展の芽があるわけですから、ぜひそういう大局的なご理解をいただけるような雰囲気を産業界の中におつくりいただく。それは、文部科学省がそういうことを後押ししていただくという、それをぜひお願いして、少なくともITER機構に対して産業界から優秀な人を派遣できるように、我々ももちろん極内機関として努力はいたしますが、何としてもそれを達成することが我々に課せられた大きな責任であると思っていますので、よろしくお願いいたします。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 小林委員、お願いいたします。

【小林委員】

 ちょっと別の視点なのですが、技術の伝承と人材育成ということで、核融合炉ではなく申しわけないのですが、再処理の話なのですが、現在、六ヶ所の再処理工場の設計規格というのをつくっています。もう既にできて稼働しているものの設計規格を今ごろつくるということに、皆さん多分驚かれると思います。それが現実の問題なのです。それはなぜ必要かというのは、1つは、第二再処理工場で必要というのはもちろんありますが、そうではなく、今の再処理工場をきちんと稼働させて維持管理していくためには、設計規格というのはどうしても必要なのです。どうしてできているのかということがわからない。それが技術の伝承なのです。だから設計・建設規格をつくるというのが、私は技術の伝承のすべてだと思っているのですが、現実に再処理工場にはありません。今つくっています。それで、ものすごく核融合炉のことが心配になるわけです。
 私も、20年前、10年間ぐらい、核融合炉の研究をしていました。第1壁のプラズマディスラプションというのは材料をどうするかというので、研究論文を幾つか書いたのですが、それが現在どうなっていて、どういう評価をされていて、だれが知っているのだろうと、残りの人生があまりありませんから、かなり心配になるのです。核融合は、20年ぐらい前から、日本で非常に多くの研究をされているわけです。
 我々一番心配しているのは、ちょっとでも関与した人たちが今の計画にどのぐらい関与できるのかということを、もう残りの人生少ないわけで、要するに若い人に自分たちのナレッジを引き継がなかったら、今までのことが全部無駄になるわけです。そういう視点がほとんどこれにないのではないかという気がするのです。
 要するに非常に大きなプロジェクトをやるという問題は、非常に多くの人が参加して、多くの仕事があるわけです。それは、最終的にはそういう成果をきちんとした形でまとめるとか、データベースに残すとか、最後は、さっき再処理の問題で強調した設計・建設規格まで結びつけないと駄目なのです。規格というのはどんどん変わってきますから、最後につくるときには最新の規格であって、ただ、その前にいろいろな段階があって、その積み重ねを全部残しておかないと無駄になるのです。それが技術の伝承であって人材育成であると、私は確信を持っているのです。
 そういう視点が全くなくて、大きなプロジェクトをやりますよ、みんな来てくださいという話だけなのです。そうではなく、みんなに来てもらって仕事をしてもらうのだけれども、それは国あるいは原子力機構が、どういう形でそれを集約して残していきますかという、それが技術の伝承、人材育成で、全くそれがなくて、皆さん来てくださいと言っているだけみたいな気がするのですが、少し嫌みなコメントです。すみません。

【田中主査】

 本島委員どうぞ。

【本島主査代理】

 小林委員のおっしゃるとおりですから、私、反論するつもりは全くございませんが、まず、少し補足的な発言をいたします。規格をつくるというのは、例えば学問の世界ですと、学問を体系化するということと軌を一にする点があります。そういう点では、開発研究プロジェクトというのは、ミッションが定まっていて、組織を挙げて目的に向かって突き進まないといけません。それを冷静に、学問的にと申しますか、データベースを作りながらと言ってもいいのですが、科学技術の体系を構築していくというのは、大学とか、私どもの核融合科学研究所にもかなりやれるところがあります。むしろ重要な基盤があると思うのです。
 時間が限られているところもあって、この1枚で、千原戦略官は非常に端的にご説明になったと思います。例えば核融合の分野で、体系化されていないのではないかというご指摘については、体系化されてきた幾つか例を挙げたいと思います。超伝導分野については、原子力機構、我々と大学で、標準化のためのデータベースをつくることに成功いたしました。ITER等でも参照されております。それから、原子分子分野もそうです。低放射化材料は、鉄系とバナジウム系に研究が収束されてきております。日本発で強度の規格等をつくる努力もかなりされています。それから、プラズマと壁との相互作用については、グラファイト系とタングステンに集中されてきているということから、間違いなく実験炉ITERをつくれるということは非常に大きい成果です。今、ITER計画は急速に動き出しています。ある意味うまく動き出すと計画自身が見えなくなる時期がございます。それが自然だと思うのですが、だから、より一層説明をする努力が求められるのではないかと考える次第です。ただしうまくいっていますよということについてもそうですし、ここに今問題があって、クリティカルパスになっているということを率直に公表していく必要があります。それがこの場ではないかと考えています。
 人材については、2つ分ける必要がどうしてもあって、現時点のITER計画の場合は、日本のコントリビューションとして20人、30人の数の問題でございます。その次はデモ炉ですが、1けた多くなって、我が国だけで200から300ぐらいの、しかもコアになる人材を育てる必要が出てきます。これだけの人材については10年かけて養成しなければとてもできない話です。ITERについては、人材は居るのだが、それがうまく派遣できない仕組みの問題もあります。デモ炉に関しては、やはり長期的ビジョンを持って進めていく必要があります。人材の育成については長期短期の2つに大きく分けて取り組んでいく必要があるのではないかというように思います。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 あとはいかがでしょうか。伊藤委員、あるいは早野委員のほうから、先ほど岡崎委員から出されておりますが、何かご意見ございますか。

【早野委員】

 特に、即お答えできるような状況にございませんので、確かに石塚さんがお一人ということも事実ですし、岡崎委員のお話も痛み入りますので、きょうのところは頭の中にとどめておきたいと思います。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 もしよろしければ次に行きたいと思います。もう12時を過ぎていますので、あまり遅くならないうちに終わりたいと思いますが、次は、「J−PARCの利用方策の在り方に関する懇談会報告書」でございます。事務局のほうからお願いします。

【林量子放射線研究推進室長】

 それでは、資料6−1、6−2でご説明いたします。
 まず、この懇談会を立ち上げた背景、趣旨について、報告書の後ろから2枚目の「資13」というページがあり、そこを参照していただければと思いますが、ここに「開催の趣旨」が書いております。2段落目になりますが、平成20年度後半、つまりことしの12月から、中性子ビームの供用開始を控えているということもありますので、中性子利用が、産業界も含めて最大限に利用される方策について検討を行うという趣旨で立ち上げております。
 そこで、議論の大きなポイントは、これまでも何回か議論があったところですが、SPring−8や、今つくっているペタフロップス級のスーパーコンピューターに適用されている、「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」を、J−PARCの中性子施設に適用するかどうか、これが議論の大きなポイントということで検討をいただきました。
 メンバーといたしましては、次のページ「資14」にありますが、東京理科大学の福山先生に主査をお願いしまして、産業界の方から非常に多く入ってもらっています。長我部委員、金子委員、亀井委員、川上委員、田中委員、西村委員と、6人入っていただきまして、またアカデミーのほうからも、山田中性子科学会会長に入っていただき、また、この委員会のメンバーの井上委員にも入っていただき、検討を行ったということでございます。
 この報告書のポイントは、資料6−1として用意しておりますので、あとはこちらでご説明しますが、ここに大きく3つの段落があります。最初の段落で、「J−PARCの中性子利用施設への期待」ということが書かれておりますが、2番目の「〇」で、特にJ−PARCの中性子利用施設については、産業界も含めて多様な研究者から、測定・解析手段として期待が増加している。具体的には、JRR−3の産業利用は着実に増加しており、2年前に比べると2倍になって、5%から10%に上がっています。また、本年5月には、産業界の中性子利用促進を図る組織として「中性子産業利用推進協議会」というものも設立していて、非常に期待が高まっているという状況であるということになっております。
 そこで、2段落目に移りますが、こういう期待ですが、今でも、「従来の利用の仕組みに係る課題等」というのがあるのではないかということで、最初の「〇」に書いてありますが、J−PARCの中性子利用というのは、原子力機構と高エネルギー加速器研究機構がつくっているわけですが、どうしても研究機関としてのミッションとの関係で、外部の研究者・技術者に利用を促進する上で大きな課題があります。
 具体的には3つありますが、1つ目で、原子力機構というのは研究機関でありますから、基本的には自分の研究というものが優先されるという状況で、高エネルギー加速器研究機構というのは大学共同利用機関ということで、人に装置を貸しながら一緒にやっていくというミッションがあるわけですが、当然のことながら学術研究、その辺の基礎研究が中心になるということで、産業界の人も含めて幅広い研究者が使いたいと思ったときに、本当に使えるような状況の枠組みになっているのかといった場合に、これから大きく発展していくということを考えていくと、そういう人たちが使いやすい、新たな枠組みの整備というのが非常に重要なのではないかということ。
 2番目とましては、そういうミッションと関係しますが、やはり原子力機構と高エネルギー加速器研究機構のミッションがありますので、ビームラインをつくる際にもそういうミッションが優先されてしまい、ほかの産業界も含めた幅広い分野の人が使うビームラインというものもきちんとつくっていかないといけないし、さらにそういう人たちを支援する体制というものも構築していかなければいけないというような課題。
 3番目としては、今、運転費というのは運営費交付金から出すという枠組みになるわけですが、これは、ある意味では法人の経営判断によって、原子力機構はこういうことをしないと思いますが、苦しくなったらこっちに移してしまうとか、そういうこともあり得るという中で、多くの人に使ってもらう施設を安定して運転するために、きちんとした方策が必要ではないかという課題があるというようになっております。
 他方、同じような大型装置では、SPring−8につきましては、共用促進法に基づいて、今、非常に幅広く研究の共用が行われていて、産業利用についても20%ぐらいまで来ています。運転経費につきましては、理化学研究所の運営費交付金ということではなくて、補助金ということで別途措置をしているという状況になっています。
 3段落目に行きますが、こういう状況を踏まえて、J−PARCについて、どういう枠組みがいいのかということを議論しました結果、端的に申しますと、SPring−8と同様に、J−PARCの中性子利用施設についても共用促進法を適用するべきであろう。
 ただし、2番目の「〇」に書いてありますが、SPring−8といろいろ違いがございます。大きな違いは、J−PARCが複合研究施設ということで、ご承知のように、原子核・素粒子という学術研究が中心となる部分も一緒になって運営をしなければならないという複合研究施設であること等、SPring−8との違いも踏まえて、次の3つ点に留意しながら、具体的な制度の検討を行うべきということです。
 その3つの留意点ですが、1番目としましては、課題選定や支援を行う組織です。SPring−8の場合は、理化学研究所と別に、高輝度光科学研究センターというものがつくられて行っているわけですが、今、J−PARCにつきましては、原子力機構と高エネルギー加速器研究機構の共同組織であるJ−PARCセンターというものが体制を整備しているところなので、そういうところも当面活用していくことも含めて、検討していくことが必要ではないかということ。
 次に、SPring−8に比べまして、J−PARCはビームラインが少ないということもありますので、共用ビームラインはつくるのですが、それ以外のビームラインについても、幅広い分野の研究者に利用できるような枠組みというものを求められるということ。
 最後に、J−PARCは、先ほど申しましたように、原子核・素粒子といった大学の研究者が多く使う施設でもありますので、そうした大学の研究者等の自主性の尊重や、J−PARC計画全体の研究計画への配慮が必要である。つまり中性子というのは共用だからといって、中性子だけのことを考えてJ−PARCを運営するのではなくて、複合施設ということをよく考えて、全体、研究計画への配慮が必要だというような提言をいただいております。
 さらに報告書では、この枠組みとは別に、運用の問題としまして、J−PARC等を活用した中性子利用研究の在り方や、さらには人材育成、情報発信の在り方についても提言をいただいているところです。
 簡単でございますが、以上でございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 本件について、ご意見、ご質問がありましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。

【山名委員】

 先月、フランスにありますラウエ・ランジュバン研究所というところに行ってきたのですが、そこは大型の研究炉を持っていまして、ハイフラックスでやった、非常に強い中性子スペクトルを使って、相当な数の中性子回折のポートを持っているわけです。30ぐらいありますかね。横に放射光リングを持っていまして、同じように放射光での構造解析もやっています。
 そこに集まっている面々を見ていますと、たんぱく質とか生体、あるいは細菌、ソフトマターといったものを、相当な規模で研究を進めているという状態です。かなり資金をかけています。どんどんいい研究ができています。しかも、中性子回折に持っていく前に、例えば生体試料であれば、重水素を生体試料に、ラベリングというよりはスパイクしていく専用のラボラトリーを持っている。そこに専門家がいる。そういう中性子回折、構造解析を十分サポートする強力な体制を組んだ上で、そこにたくさんの構造解析の専門家がどんどん来て研究しているという体制を組んでいるのです。
 その中で、J−PARCというのは世界でもトップクラスの中性子研究ができる施設だという見解を向こうも持っていますが、実は利用する、サポートする体制というのを見ると、物はトップなのですが、恐らくフランスよりもはるかに劣っている。そういう意味で、やはり試料をつくるところのサポート、運営自体のサポート、たくさんの構造研究者が中性子を使いに来られるような幅広さみたいなものがないと、おそらく海外に負けてしまう恐れを強く私は感じました。
 そういう意味で、中性子ポートを何か個別に、私たちが来まして、私たちが全部最初から準備して、私たちの研究が終わりましたというパターンではなくて、もっと裾野をサポートできる体制にしていって、たくさんの構造研究者が、例えば生体関係の研究者も、物質構造のものも、あるいは最近、新エネルギーなどの燃料電池の膜の解析ですとか、たくさんのユーザーがあるはずなので、そういうところがどんどん入ってこられるような一種の共同利用体制みたいなものを組んでいかないと、そんなにユーザーが増えないような気がするのです。だから、そこのてこ入れを、経済的なことも含めてどうやっていくかというのは、やっぱりネックになってくると思います。
 国のほうで、共用促進法の適用は、電気代というか、利用料金の話ですね。共用促進法は、今私が言いましたような、全体をサポートするような共同利用体制の話は別ですよね。もしそこが入っているなら結構なのですが、いずれにせよ、そういったユーザーを支援する大きな体制を組んでいかないと、宝の持ち腐れになる可能性がある。ぜひそこを強く考えていただけないかと思います。

【林量子放射線研究推進室長】

 この法律ですが、利用料金の話ということでは必ずしもなくて、どういう体制を構築していくかということを組み立てる話になっており、その一つの大きな柱が、SPring−8のときの、今申し上げました、高輝度光科学研究センターで、要は理化学研究所がつくったSPring−8ですが、運営を違う組織に任せている。その組織に対して、課題選定や支援を行うために、規模が大きいので、今、12.5億円ほど資金が行っていますが、それで支援体制を整えている。そういう支援体制を整えることも含めた法律になっております。
 したがって、J−PARCについても、今、原子力機構や高エネルギー加速器研究機構という研究機関のままで支援体制を整えるというのはなかなか難しいところがありますので、こういう法律を適用して、原子力機構や高エネルギー加速器研究機構がそもそも共用するというミッションをつけ加えた上で、必要な体制についても、経済的な支援を国からできるというような枠組みにしようという話でございます。
 ただ、もちろん今、にわかに大きなものができるということではないので、多少時間はかかると思いますが、趣旨としてはそういう法律でありますので、もちろん山名委員のおっしゃるとおりで、支援体制、もしくはJ−PARCを使った研究のための資金とかそういうものも総合的に含めて、我々としては施策を行っていきたいと思っております。

【田中主査】

 原子力機構東海のJRR−3には、それを使った中性子回折のグループもあって、あの辺は結構そういうユーザーを支援するといった人たちが多いので、そういったところも総合的に考えて、もしサービス体制が十分でないとすれば、もっといい仕組みをつくっていくことも大事かと思います。
 よろしいでしょうか。よろしければ、あと4つありますが、これを一気にやりたいと思いますので、事務局のほうでお願いいたします。

【山野原子力計画課長】

 まとめて、簡単に説明します。まず資料7でございます。原子力損害賠償制度というのは、万が一原子力損害が生じた場合に備えて、発電所であれば600億円の保険を義務づけるというような内容の制度でございます。この制度には時限的な規定があり、来年の12月末日に期限が切れるために、法律改正が必要であり、今いろいろな検討を始めているところでございます。
 10年に一度の改正作業なのですが、この10年の間に、一つの大きな話としては、この法律が初めて適用されたJCO臨界事故がありました。そのときの教訓などを総括するということで、かなり精力的に議論を進めております。
 メンバーは、最後のページにありますが、こういう議論ですから、野村豊弘学習院大学法学部教授を中心にまとめてもらっていますが、普段の原子力の専門家のメンバーと少し違って、民法や商法、国際法、弁護士などが中心で、JCO臨界事故のときに一番奔走された東海村の村上村長にも入っていただき検討してきているところでございます。
 具体的な内容は、2ページにありますが、制度改正事項というのは法律に直接かかわるような事項で、さきほど期限を何年間延長するか、今の600億円の賠償措置額をどうするかという話など、JCO臨界事故の経験を踏まえて、法律として手当てしておいたほうがいいのはどういう事項があるかということを検討しているところでございます。
 あわせて、JCOのときの反省といいますか、そのときの賠償の経緯も踏まえて、1つは、マニュアルをきちんとつくっておきたいと思っており、今後そのための運用指針ワーキング・グループをつくって、今はマニュアルのようなものが何もない状況なので、マニュアルもきちんとつくっておきたいと思っております。あと、国際的な条約としては、ここにありますような3つの系統がありますが、我が国にとって現実的な選択肢にCSCという条約があり、これについて、どういう課題があるかということを整理したいということで作業を進めているという状況でございます。これらは、またこの委員会でも進捗状況をご説明したいと思います。
 続きまして、資料8、9、10の公募事業の採択結果についてですが、資料8が、昨年から始めまして、経済産業省とジョイントでやっております、わかりやすく言うと、大学の原子力工学科に気合いを入れるための制度でございます。資料9のほうが、今年度から新たに立ち上げました、これは一般会計でやっておりますが、かなり基礎的な研究なども含めてですが、新しい競争的資金でございます。資料10が、今さっき中間評価をしました、特別特会でやっております競争的資金です。それぞれについての今年度の採択状況でございます。
 資料については特に説明しませんので、後ほど御覧いただければと思います。それぞれ倍率が高いものもあれば、ある程度常識的な倍率のところもありますが、きちんとしたものが選ばれているのではないかと思っています。
 説明は以上でございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。何かございますか。
 原子力損害賠償制度については、JCOの件や、原子力発電所など、そのようなものも入っているわけです。これを文部科学省が担当している理由は何かあるのでしょうか。

【山野原子力計画課長】

 原賠法というのは従来から科学技術庁が持っていて、行革の際にもいろいろ議論があったと思いますが、対象は発電所だけではなく、研究機関も関係するなどといったこともあって、結果的に文部科学省に残っているというところもあります。

【田中主査】

 あとはいかがでしょうか。どうぞ。

【岡崎委員】

 大変な作業だろうと思いますが、1点だけ。もちろん国際条約との関係ということを視野に入れておられるわけですが、そろそろ国際的な仕組みの中に日本が加わることには、これから原子力でグローバルな活動をやるときにはどうしても不可欠であるという観点から、ぜひ今回の法改正のきっかけとして、国際的な仕組みに日本がもっと積極的な役割を果たすようなことをぜひ実現していただき、その中で、「CSCの概要」の中で読むと、わずか関係する5カ国以上の批准ということになると、非常に寂しい気がするので、国際的な仕組みの本当の実現という観点から、どのような見通しを持ってこの作業を進めておられるのかということだけ、お願いいたします。

【山野原子力計画課長】

 CSCの話は、今回の法律に合わせて直ちにやるということではありません。また国内法との関係ということだけではなく、もっと大きな議論をきちんとすべきではないかと思っています。そのために、この検討会できちんと整理をしたいと思っています。例えば重要なのは、おっしゃったように国際的な原賠のレジームです。日本だけ入っても仕方ないわけで、越境損害などを考えれば、韓国や中国なども一緒に入らないと意味がないとか、また、アメリカが批准した一つの理由は、プラント輸出としてかなり戦略的に考えているところがあって、それであれば、例えば輸出先が入っていないと意味がないとかそういうこともあるので、大きな政策として、どういう観点から議論していくのが適当であるのかということがあります。さらに、国内法との関係も難しいところがあります。拠出金をだれが出すのかというのも難しい問題です。また、裁判管轄権の問題なども複雑なところがあるので、この際、そこらをきちんと整理しておきたいということでございます。

【田中主査】

 山口委員。

【山口委員】

 簡単に、人材育成の話ですが、先ほど核融合でも議論になりましたが、今回の人材育成制度も、制度自体は評価すべきものだと思うのですが、つけ焼き刃的な感じが非常にありまして、人材育成についても、今までの議論とかを踏まえて見ていきますと、継続的に着実に人材育成をするという部分と、プロジェクトなどで人材を流動化させて対応させていくという部分と、核融合、それから高速炉もそうですが、国際協力でプロジェクトをやるときのリーダーシップをとれる人を育成するという、その3つの観点を別々に考えて行ったほうがいいのではないかと思います。といいますのは、非常に今、原子力の研究も、産業界もダイナミックですし、ボーダーレスですし、例えば5年前から、今これだけの人材が必要だという状況はなかなか推測できなかった部分もありますので、こういう状況になって、人材育成を立ち上げて、そのプログラムが3年で終わるということを繰り返すのではなくて、今のような、私はその3つぐらいの視点かなと思うのですが、それぞれ個別にきちんと政策を持っているということが必要ではないかというように考えます。

【田中主査】

 ありがとうございます。
 では、まず山名委員。

【山名委員】

 ちょっと手短に、原子力損害賠償制度の話ですが、中小の事業者、例えば私のいるようなところの負担というのは多分、大きくなるような問題は多少あると思うのです。お聞きしたいのは、検討会のメンバーで、中小の原子力施設の利用者を代表してくださるような方として、どなたが入っているかと思って見たのですが、どちらかというと大きなところの方とか、法律の方でありまして、その辺はどのように考えておられるのか。減額措置のようなものは当然、新しい制度で入るわけですよね。

【山野原子力計画課長】

 何かの業界代表みたいな感じではありません。例えばメーカーグループとしては電工会が入っていますが、東京大学の岡本委員が大学を代表しているかどうかというとそれは違うところがあります。また限度額を上げたときに、当然保険料が絡むわけですから、出費がかさむということがあり、そこの民間との保険は日本原子力保険プールとの関係なのですが、別に限度額が倍になったから保険料が倍になるということではなく、例えば前例とかで見ると、限度額が倍になったけれども、掛け率は8%増とか、10%増とか、それぐらいでおさまってきています。これは民間ですが、ただ、国に納めてもらっているほうは、昭和30何年につくって以降、補償料率が全然変わっておらず、そこはユーザーサイドからも、さすがに見直したらどうかという話もあって、その前提で、できるかどうか別として、今は財務省などにも相談をしています。

【田中主査】

 ありがとうございました。早野委員お願いします。

【早野委員】

 私どもには、大企業だけではなく、かなりのウエートで中堅企業のほうが多い状況にありますから、原子力に関連する企業であれば、その傘下でもって検討を加えますので、片手落ちなくできるのではないかと思っています。
 CSCに関してですが、原子力がこれだけ世界的に活用されようとしているわけですから、これを真剣にとらえ、JEMAとしても委員会の中で特別に検討しています。
 CSCの議論では、関連する省として、経済産業省も出てくるでしょうし、条約の締結となると外務省とか、他の省との調整も出てくると思いますので、その辺は、しっかりやっていただきたい。条約の締結の議論はもっと先になると思いますが、アメリカからのアプローチはかなりきつく来ていたと聞いています、あまり悠長に構えていられないのではないかととらえています。少し今気になったのは、原子力設備メーカー云々というご発言がありましたが、アメリカでの議論の過程では、それに関連する部分もあったかもしれませんが、原子力損害賠償制度の充実とか、越境の損害をどうするとかということになりますと、各国が避けて通れない、かなり重要な政策課題になると思います。少し時間がかかるかもしれませんが、しっかり検討を加えてゆく必要があると思います。ぜひ大所高所に立って、産業界の問題だけではないという認識で、しっかり取り組んでいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【田中主査】

 ほかになければ、いろいろと重要なご意見をどうもありがとうございました。かなりオーバーしましたが、これにて終了ですが、事務局のほうから何かありましたらお願いします。

【山野原子力計画課長】

 当方の不手際で大分長くなり申し訳ございませんでした。議事録は、メール等でまたご相談させていただきます。また予算関係につきましては、9月になりましたら、それに合わせていろいろな資料ができますので、送付させていただきたいと思います。

【田中主査】

 それでは、第26回の研究開発に関する委員会を終了します。かなり時間がおくれましたこと、申しわけございませんでした。
 どうもありがとうございました。

── 了 ──

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