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資料3

欧州における科学技術政策の
戦略的思考について

文部科学省基幹技術委員会
2004年9月13日


鈴木一人
筑波大学大学院
人文社会科学研究科国際政治経済学専攻
suzuki@social.tsukuba.ac.jp
http://member.social.tsukuba.ac.jp/~suzuki



国家戦略と科学技術
国家戦略は安全保障だけではない
国家の役割は安心・安全に限られているわけではない
国民統合、地域統合のシンボル
産業競争力の基盤としての科学技術
科学技術に限定した議論ではない
科学技術の発展は国家に何をもたらすのかを戦略的に計算している
科学(人類への貢献)、軍事、産業、技術(の継続・革新)、自律性etc.
これらの要素の組合わせが国家戦略の中に科学技術を位置づける
科学技術立国→技術を何に使うのか?
欧州において、科学技術はそれ自体が独立した政策分野ではなく、国家の目的、戦略を実現させるもの

欧州の宇宙開発における官の役割
国家の司令塔から産業のパートナーへ
グローバル市場の主役は企業→ハイテク産業支援は国益
国家的目標(安保含む)を達成するためには産業の協力が必要
Public-Private-Partnershipは資金分担のためだけではない
技術を利用した政策実現へ
国家が必要とするアプリケーションの獲得が必須
安全保障、環境、運輸交通、気象、科学、外交・・・・
財政的制約の下での研究開発
国家のプライオリティは財政的制約に向かうことが多い
制約の下でいかに効率的な開発を行なうか→Autonomy vs. Efficiency
財政を含む他政策との有機的連携を強める科学技術政策、それを実現するための産業とのパートナーシップが不可欠

欧州の科学技術/宇宙開発の思考
米国に対する対抗?
米国の覇権に対する意識は強い(特にフランス)
しかし、覇権対抗ではなく、意のままにならないための自律性確保
リスボン戦略
「より多い雇用とより強い社会的連帯を確保しつつ、持続的な経済発展を達成し得る、世界で最も競争力があり、かつ力強い知識経済となること」
東方拡大
ネットワーク技術などによる中東欧諸国のEUへの組み込み
安全保障と産業競争力
米国との軍事技術ギャップを埋める・・・旧ユーゴ、コソボ、イラク
グローバル市場における競争力・・・高付加価値製品での競争
少子高齢化社会において、知識集約型経済への移行を進めるためには、科学技術の発展が不可欠との認識が高い。

欧州のフレームワークプログラム
1980年代
欧州経済の停滞、日米企業が欧州市場を席巻
欧州産業界の焦燥と各国政府の競争関係(保護主義的政策)
ダヴィニヨン・ラウンドテーブル(欧州委員会と産業界)が突破口
ESPRIT,BRITEなどEUが中心となったプログラムがスタート
レーガン政権によるSDI構想の提起・・・米国の競争力強化を懸念
ミッテラン大統領が政府間協力であるEUREKAを提案
欧州単一議定書に「研究開発」が加えられる
1990年代
冷戦の終焉・・・平和の配当・・・米国の産業再編・・・グローバル化
各国レベルでの競争関係が限界に・・・EUレベルでの対応
基礎研究(ESPRITなど)と応用研究(EUREKA)を統合
欧州レベルでの国際競争力の強化を目指す
複数国の参加義務、複数年度予算、産業化支援研究
2000年代
STAR21などの戦略的研究開発に向けての事業拡大
Research for Secure Europeの提唱→民間R&Dを軍民両用技術に活かす

戦略的科学技術政策とは
ビッグサイエンスだけが戦略的ではない
安全保障に直結するものだけが戦略的ではない
グローバル化する世界で、国家がどこに位置するのかを決める
与えられた条件(現状)から戦略的に計算する
覇権的地位にある米国がそれを維持しようと優位を強化する
国内に様々な矛盾がある中国は、技術でそれを克服(隠蔽)する
様々な制約を抱える欧州は、技術による自律的な意思決定を目指す
科学技術だけが独立したイシューではない
科学技術はあくまでも戦略にserveする立場でしかない
科学、軍事、産業、技術、自律性のうちの「科学」「技術」だけに特化した議論には限界がある
その国がおかれた現状を踏まえ、安全保障・政治・経済・社会が抱える問題を解決するための科学技術

科学技術立国を目指して
グローバル化する世界における日本の現状
安全保障:グローバルな展開?NCW?RMA?
産業競争力:コスト競争力の喪失を補う高付加価値産業化
社会生活:少子高齢化、環境問題、エネルギー問題
国家イメージ:国威発揚・国民統合の必要性?
科学技術が解決を提供できるか
産業競争力、社会生活において極めて重要な役割
Autonomy vs. Efficiency
自国での開発、技術の保有・維持・革新の必要性とそのコスト
どうしても戦略的に不可欠な技術はいかなるコストを払っても開発
外国に依存・・・効率的で、脆弱性を増さなければ、それもひとつの戦略
科学技術立国とは、ただ科学技術を育てるだけでなく、国家目標・戦略と有機的に連携して展開する国家のことである

宇宙開発からの貢献
少子高齢化社会への対応
遠隔地医療、ネットワーク化による人的コストの削減など
欧州では若年層のハイテク化による差別化と競争力強化を目指す
安全保障(防衛、食糧、エネルギー、水etc.)
地球観測の役割拡大(cf.総合科学技術会議ペーパー)
欧州では共同防衛機構設立の大きなステップ+GMES
国際社会におけるリーダーシップや協調
「持てる者」と「持たざる者」の格差をフルに活かす
欧州では航空宇宙こそが国際社会(特に対米)の鍵と認識
我が国の特徴に対応した国家像の実現
わが国の国家像が不明確→「かくあるべし」論のコンセンサス欠如
国家像が設定されれば宇宙開発がもたらすものは多いと思われる
欧州ではリスボン戦略などの国家(EU)像の提示を試みている。


Joint presidency / Commission press announcement "The image of Europe"(PDF:17KB)
The Fourth Framework Programme(PDF:26KB)
The Fifth Framework Programme for Research and Technological Development (1998-2002)(PDF:94KB)
THE SIXTH FRAMEWORK PROGRAMME(PDF:253KB)



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