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参考4

次世代スーパーコンピュータ環境構築へ向けた要望と提案

(1) 「津波防災分野における将来のスーパーコンピューティングへの期待」
   東北大学の今村文彦教授より、具体的な量的津波情報を詳細にいち早く提供する次世代津波警報システム、シミュレーションや地震津波観測データ及び防災教育まで含んだ津波防災プラットフォームの展開について説明があった。
 次世代津波警報システムに必要な計算資源として、以下が挙げられた。
日本全国の都市、港湾を対象とした30分間の津波の総合的な挙動(漂流物挙動、危険物質拡散、構造物破壊)を4時間で再現するには4ペタFLOPS(フロップス)が必要。
日本全域を対象とした10万ケースの地震断層を仮定した津波警報データベースを10日で構築するには400テラFLOPS(フロップス)が必要(12時間の津波挙動、波高と到達時間のシミュレーション)。
地域と対象を限定した連続シミュレーションを実時間スケールで実現するには40テラFLOPS(フロップス)が必要(50キロメートル四方の領域で30分間の危険物質の拡散計算を30分で再現可能)。
日本全域での30分間の津波の挙動(浸水)を30分で計算する・世界全域での30分間の津波の挙動(波高、到達時間)を40分で計算するには4テラFLOPS(フロップス)が必要。

   また、津波防災プラットフォームに必要な技術として、以下が挙げられた。
観測データとのリアルタイム連携。
グリッドコンピューティングによる精緻なリアルタイム解析、グリッド環境を有効活用できるシミュレーション技術(並列、連成)の改良。
分散された既存のコンテンツやデータの仮想的な統合、必要な情報への容易な検索・アクセスの実現。

(2) 「HPCにおける可視化環境の現状と技術動向」
   理化学研究所の小野謙二チームリーダーより、可視化表示技術、GPU(注1)利用技術、大規模並列可視化技術、データマイニング技術等について説明があった。
 ペタ超級の計算機における課題として、以下が挙げられた。
ポスト処理が重要な解析における専用可視化環境の必要性。
リモートシステム利用における、サーバーサイド可視化の検討。
分散データに対する高効率な並列実装(ソフトウェア/ハードウェア)。
ネットワーク帯域と描画処理時間のバランスの検討。

   また、次世代スーパーコンピュータに対する提案として、以下が挙げられた。
可視化環境の一元化、単一ユーザーインタフェースを持ったシステム。
ローカルアプリケーション・リモートクライアント・サーバープログラムによる可視化フレームワークの開発。
サーバーとクライアント間の共通プロトコルの策定。
ISV(注2)アプリケーションとのコラボレーション。
インタラクティブ可視化・リアルタイム可視化・計算後の可視化処理といった複数の可視化方法の提供。

(注1): Graphics Processing Unit 3Dグラフィックスの表示に必要な計算処理を行なう半導体チップ。
(注2): 特定のハードウェアメーカーと関係を持たない独立系のソフトウェアベンダー。

(3) 「ペタフロップス超級スーパーコンピュータ実現に向けての提言」
   東京工業大学の谷啓二客員教授より、ペタフロップス超級スーパーコンピュータ実現に向け、1アプリケーション及びその必要とするシステム要件2次期計算機システム開発3プラント設計4開発体制に関する提言があった。

1 アプリケーション及びその必要とするシステム要件に関する提言としては、以下が挙げられた。
 
ベクトル計算機の高メモリ転送能力を活かしてスカラー処理の性能向上を図る「マトリックス・レジスター並列計算機」の検討。
システムの複合化に関して、汎用ネットワークで近接する複数システムを接続し、規格の枠組みの中で最大限の高性能化を図る「ハーモニック・コンピューティング」や専用高速ネットワークで隣接する複数システムの全ノード間を接続する「ハイブリッド・システム」の検討。
ライブラリ型HPCミドルウェア機能の機能拡張・高度化。
新しいハードウェア開発に付きまとう不確定要素や問題に対して適切な技術的判断を行うためのガイドラインとなるべきターゲット・アプリケーションの設定と開発。

2 次期計算機システム開発に関する提言としては、以下が挙げられた。
 
次期計算機システムには、バンクサイクル(注1)3ns(ナノセカンド)、容量3〜6Gbit(ギガビット)毎チップの大容量高速主記憶が望ましく、そのための対策として、DRAM(注2)の高密度化・高速化、XDR(注3)や新メモリ素子の検討が必要。
粗い見積もりでは次期計算機システムの消費電力はピーク性能1ペタFLOPS(フロップス)でも地球シミュレータの2倍以上になる恐れがあり、運用経費の観点から半導体技術革新・高効率計算機ノード電源の開発・プラントの省電力化といった対策が必要。
データストレージには、高速性と大容量性が同時に求められ、省コストで実現するためにローカルストレージ・グローバルストレージの分類によるストレージの階層化を提案。

(注1): メモリへのデータ通信の最短時間。
(注2): 半導体記憶素子の一種。構造が比較的簡単で製造コストが低いことからパソコンのメイン・メモリなどに使われている。
(注3): 米国ラムバス社が開発した高性能汎用メモリ

3 プラント設計に関する提言としては、以下が挙げられた。
 
次期ペタフロップス超級スーパーコンピュータは、数万kW(キロワット)の電力を消費するため、単なる計算機システムではなく、1つの大きな電気プラントとして捉え、システム全体の整合性や省エネルギー、省コストなどの最適化を図ることが重要。
熱の冷却、電磁ノイズ対策、建屋免震化、停電対策も考慮する必要。

4 開発体制に関する提言としては、以下が挙げられた。
 
平成18年から平成22年の技術動向予測は、地球シミュレータ開発の時期(平成8年から平成14年)に比べて一段と困難なため、地球シミュレータの開発体制を大きく超える体制が必要。
複合システムを複数ベンダーで開発を進める場合に、各ベンダーのノウハウや機微な情報が競合メーカーに漏れないようにするため、構成するシステム毎の縦割りのグループとシステム間の調整を行う中立的メンバーで構成されるグループから成る体制が必要。
システムの開発・評価に用い、システム完成と間を置かずにシステムの性能を発揮させるために、戦略的専用アプリケーション(ターゲット・アプリケーション)が不可欠。その開発は、自ら開発することが重要であり、そのための体制をはじめから組み込んでおくべき。

(4) 「ナノテクシミュレーションの現状と課題」
   北海道大学の寺倉清之教授より、ナノテクシミュレーションの手法や応用問題、課題について説明があった。
 例として、新型インフルエンザの解析の場合、ターゲット蛋白質が同定されたとして、世界中の化合物データ数が約2,000万で、網羅的にドッキングシミュレーションをすると5テラFLOPS(フロップス)(現在)16日かかっているものが、10ペタFLOPS(フロップス)だと12分で終了し、より精度の高いスクリーニングが可能となる。

(5) 「マルチスケール・マルチレベルの生命シミュレーション計算」
   大阪大学の中村春木教授より、連成計算やプログラム間のデータ授受の標準化に関する研究開発の説明があった。
 ペタFLOPS(フロップス)級計算機に対する期待として、以下が挙げられた。
マルチスケール・マルチレベルシミュレーションでは、異なるスケール、異なるレベル、異なるアルゴリズムによるシミュレーションを連成させる仕組みが必要であり、グリッド計算システムが有効である。
ペタFLOPS(フロップス)計算機が実現すると、42ギガFLOPS(フロップス)のPCクラスターで7,900日かかる計算が8時間で実行でき、様々な酵素反応をシミュレートして解析だけでなく予測や分子設計に利用可能となる。

(6) 「アプリケーションソフトウェアの発展に向けて」
   アドバンスソフト株式会社の小池秀耀社長より、1ソフトウェア産業利用の動向・課題、2ソフトウェア開発の技術動向・課題、3ソフトウェア人材育成について、4スーパーコンピュータの共用および先端計算科学センターへの提言、5次世代スーパーコンピュータの開発主体、政府、ユーザー等への提言に関して説明があった。

   我が国のソフトウェアの産業利用の動向としては、以下が挙げられた。
スーパーコンピュータはあらゆる分野で必要となっており、特に材料探索・設計、ナノ製造プロセス設計、試作実験の数値シミュレーションによる代替、薬の候補の探索において必要性が高い。
共通基盤技術として、マルチフィジックス・マルチスケールや統合化・連成解析が重要。
地球シミュレータは産業界でも利用されており、自動車の空力設計、半導体表面界面反応解析、蛋白質、騒音予測で使用されている。

   ソフトウェア開発の技術動向・課題としては、以下が挙げられた。
我が国は、基礎研究では欧米と互角だが、基礎研究から実用ソフトウェアへ展開する部分が弱く、実用ソフトウェアはほとんど欧米製である。国の実証ソフトウェア開発が欠如していることが原因で、基礎研究が実用につながらない。ソフトウェア企業がないため、活躍の場がなく、人材が欠乏している。
利用者が誰でも安心して使用できるユーザーフレンドリーなソフトウェアが必要だが、研究者はユーザーフレンドリーなソフトウェア開発は仕事ではない。また、ソフトウェアが大規模・複雑になりすぎたため、研究の片手間に実用的なソフトウェアを開発するのは困難である。
大規模ソフトウェアが成熟するには10年が必要であるため、事業化し保守改良していくことが必要である。

   ソフトウェア技術者の育成の課題に関して、以下が挙げられた。
ソフトウェア開発技術者はソフトウェア開発の企業がない限り育成できない。
実用ソフトウェアは複雑大規模な工業製品であり、大学の教育だけでは技術者は育成できない。

   スーパーコンピュータの共用及び先端計算科学技術センターへの提言として、以下が挙げられた。
 
ソフトウェア開発と利用技術に関するサポートが重要である。特に、新しい利用技術の研究開発が重要となる。

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