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2.スーパーコンピュータ整備のグランドデザイン

 ペタスケール・コンピューティングに対する研究者のニーズは極めて高い状況にあるが、既存の大学・研究機関などにおけるスーパーコンピュータの動向をみると、今後数年間では数十テラフロップスから百テラフロップス超級のスーパーコンピュータの導入が検討され始めているものの、ペタフロップスを超えるクラスについては研究開発が必要となり、各大学・研究機関の運営費交付金の枠内での調達により導入することは困難な状況である。現にTOP500における我が国の大学、研究機関のスーパーコンピュータが占める割合は低下傾向にあることから、我が国の計算環境の国際的な水準が低下しつつあり、計算力の弱さが科学技術や産業の発展を阻害しかねないとの指摘もある。国は、この問題を打開するため、戦略的な研究開発投資に取組む必要がある。
 具体的には、国家戦略として、スーパーコンピュータ開発をリードする最高水準の汎用システム、すなわちNLSに研究開発投資を集中し、スケールメリットを活かした計算機開発力の牽引を図る方法が考えられる。これにより、近年予算が減少している大学や研究機関などにおけるスーパーコンピュータ(ナショナル・インフラストラクチャ・システム(以下、NISという))に係る開発投資を軽減することができ、大学や研究機関などにおいて、より費用対効果の高いスーパーコンピュータの整備を可能ならしめることができる。我が国の計算環境を構築する上で、NLSとNISとの役割分担について整理する必要があり、WGにおける議論の結果、NLSとNISの関係については以下が妥当であるとの結論に達した。

NLSは、我が国における最高性能計算機であるので、NLSでなければ実行できないもの(一定水準以上の超大規模ジョブ)に限定して利用する。
大学・研究機関などのNISは、現在の役割(大学共同利用など)を保持し続けるとともに、大学・研究機関などの多様な研究者の萌芽的、かつ潜在的に大規模計算を必要とする研究に対する支援を行い、NLSのフロントエンドマシンの位置づけとして、プログラム開発やデバッグを可能とする。
大学・研究機関などのNISをグリッド化し、そこでは「疎結合」連成計算を行い、NLSでは「密結合」連成計算を行うといった「使い分け」を考慮する。
高速化支援などの利用者支援については、利用者に求められる役割に応じて、NLS側またはNIS側が担当する。
NLSを産学官で共同利用するために、課金、セキュリティ、情報公開などの仕組みを整備する。

 次世代スーパーコンピュータは、我が国のNLSとしての役割を果たすべきであることから、整備に関してNISの動向やNLSとNISの相互の連携について考慮する必要がある。
 連携に関しては、次世代スーパーコンピュータ稼動前の開発段階での連携と稼動後のスーパーコンピュータセンター間における連携の両方がある。
 稼動前の開発段階での連携としては、現在導入されているハードウェアやシステムソフトウェアを用いた実験での協力、現時点でのNLSを用いたプログラムの最適化、運用システムのノウハウや、次世代スーパーコンピュータ完成後早急に成果を出すための事前検証の場を提供することなどが挙げられる。
 稼動後の連携としては、ジョブの大小によるシームレスな連携、アプリケーションソフトウェア開発やアルゴリズム開発をNISで行い、小規模なジョブ及び初心者ユーザーを、NLSの能力を活用できる大規模ジョブ及び上級者ユーザーに育成するといったことが挙げられる。

 科学技術・学術審議会 学術分科会 研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会で取りまとめられた「学術情報基盤の今後の在り方について(報告)」(平成18年3月23日)においても、国家的観点からのハイパフォーマンス・コンピューティングの在り方として、以下の指摘がなされているところである。
  我が国が世界最高水準のハイ・パフォーマンス・コンピューティングを創出するためには、次世代スーパーコンピュータプロジェクトを進めるだけでなく、情報基盤センター等における計算環境の継続的な増強を図ることが必要である。この場合、情報基盤センター等が画一的なスーパーコンピュータを維持するのではなく、グリッド技術等を有効活用し、各々が特徴を出しながら、ハイ・パフォーマンス・コンピューティングのための国全体の基盤を構築するという視点が必要である。このためには、グリッド、認証基盤等の基盤的ソフトウェアの継続的な研究開発が望まれる。
  次世代スーパーコンピュータは、我が国における最高性能計算機となるので、これでなければ実行できない、一定水準以上の超大規模計算にその役割は限定される。一方、情報基盤センター等のスーパーコンピュータは、多様な研究者の萌芽的、かつ潜在的に大規模計算を必要とする研究(次世代スーパーコンピュータの利用につながるような研究も含む)に対する支援を行うものである。我が国の学術情報基盤を一体的なものとして考えていくためには、次世代スーパーコンピュータプロジェクトのようなスーパーコンピュータ開発をリードする最高水準の汎用システムと、情報基盤センター等の間のみならず、ハイ・パフォーマンス・コンピューティングのための計算機を保有する他の研究機関との有機的連携を図っていく必要がある。
 このため、ハイ・パフォーマンス・コンピューティングは、次世代スーパーコンピュータはもとより、大学等及び研究機関に設置されているスーパーコンピュータ等を、グリッド・コンピューティング技術の活用等により超高速ネットワークで接続する総合的なものとして形成されることが必要であり、コンピュータ及びネットワークの偏りない整備の推進が求められる。また、利用者教育の階層的連携を図る必要がある。

 また基礎科学、経済・産業等の維持・発展に不可欠な世界最速のスーパーコンピュータについては、図1「継続的な最先端・高性能のスパコンの開発ビジョン」に示す通り、中長期戦略に基づき、最適な開発時期・目標・応用を総合的に判断し、継続的に開発する必要がある。このため、総合科学技術会議の第3期科学技術基本計画の分野別推進戦略(平成18年3月28日)において、「常設の「超高性能コンピュータ戦略委員会(仮称)」を総合科学技術会議の下に設置する必要がある」との提言がなされているところであり、文部科学省においても、その動向を踏まえつつ、積極的に対応する必要がある。


図1 継続的な最先端・高性能スパコンの開発ビジョン

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