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(3) システム要件の分析

1 概要
 各分野のアプリケーションにおいて、2010年ごろを想定した場合、実行に適したアーキテクチャ及び必要となる実効性能について検討を行った。

a) 複数アーキテクチャシステムの連携
 各アプリケーションについて、2010年ごろに想定されるシミュレーションサイズ規模を考慮して、実行に適したアーキテクチャについて検討を行った。アプリケーションにより、最適なアーキテクチャは、大規模処理、逐次処理と分かれるが(bを参照)、特筆すべき点として、以下の分野のアプリケーションでは、複数のアーキテクチャの計算機間の連携が必要であることがあげられる。

【複数アーキテクチャの計算機連携が必要となるアプリケーション】
分野 項目 応用 アーキテクチャ
ライフサイエンス 高精度スクリーニング、巨大生体分子の動作機構解明、タンパク質の立体構造予測 創薬のための近似模擬実験 逐次処理計算機・特定処理計算加速機
生体マルチシミュレーション 人間丸ごとシミュレーション 大規模処理計算機・逐次処理計算機・特定処理計算加速機
天体・宇宙物理 銀河形成/惑星形成シミュレーション 銀河形成/惑星形成シミュレーション 逐次処理計算機・特定処理計算加速機
物質・材料 触媒設計シミュレーション 触媒設計シミュレーション 大規模処理計算機・逐次処理計算機
原子力 熱流動直接解析シミュレーション 熱流動直接解析シミュレーション 大規模処理計算機・特定処理計算加速機
宇宙プラズマ・核融合プラズマ 磁気流体・粒子連結階層シミュレーション オーロラ発光と炉心プラズマ崩壊の解明 大規模処理計算機・逐次処理計算機
ものつくり VCAD 仮想モックアップによる設計の大幅効率化 大規模処理計算機・逐次処理計算機

このようなシミュレーションを効率よく実行するためには、大規模処理計算機・逐次処理計算機・特定処理計算加速機が密に結合したシステムが必要となる。

  創薬のための近模擬実験での連携計算の例
人間丸ごとシミュレーションでの連携計算の例
銀河形成シミュレーションでの連携計算の例
触媒設計シミュレーションでの連携計算の例(イメージ)
触媒設計シミュレーションでの連携計算の例(詳細)
原子炉熱流動直接解析での連携計算の例
核融合プラズマシミュレーションでの連携計算の例(参考)
磁気流体・粒子連結階層シミュレーションの例(オーロラ発光)
b) アプリケーションの実行に要求されるシステム性能

●演算性能
 以下に、2010年ごろに各アプリケーションに必要とされる、実効性能をまとめた。
注1  各システムが連携して、シミュレーションを行う
注2  いずれかのシステムを採用
注3  ピーク性能
注4  特定処理計算加速機との連携処理を検討中。
分野 項目 応用 将来必要な実効性能(テラFLOPS
大規模処理 逐次処理 特定処理
ライフサイエンス 高精度スクリーニング、巨大生体分子の動作機構解明、タンパク質の立体構造予測 創薬のための近似模擬実験 該当なし 50注1 20,000注1
生体高分子の量子化学計算 創薬のための詳細模擬実験 1000 該当なし 該当なし
生体マルチシミュレーション 人間丸ごとシミュレーション 300注1 280注1 5,000注1
天文・宇宙物理 銀河形成シミュレーション 銀河形成シミュレーション 該当なし 50注1 20,000注1
惑星形成シミュレーション 惑星形成シミュレーション 該当なし 50注1 20,000注1
宇宙・航空 実用燃焼の詳細シミュレーションによる燃焼現象の解明と制御 ロケットエンジン燃焼シミュレーション 該当なし 200 該当なし
航空機の飛行シミュレーションによる安全性・環境性の評価と改善 航空機安全性適合検証 該当なし 150 該当なし
航空宇宙機における賢い飛行制御 航空宇宙機リアルタイム運行制御 500 該当なし 該当なし
太陽系探査・宇宙環境利用/宇宙空間プラズマ解析 宇宙環境変動予測 1,000 該当なし 該当なし
物質・材料 触媒設計シミュレーション 触媒設計シミュレーション 200注1 50注1 注4
光励起反応シミュレーション 超高速光スイッチ設計等 500 該当なし 該当なし
強相関電子系バーチャル物質設計シミュレーション 電子相互作用を考慮したデバイスシミュレーション 該当なし 4,000 注4
強相関ナノ物質の輸送現象シミュレーション 強相関ナノ物質の輸送現象シミュレーション 該当なし 200 該当なし
原子力 熱流動直接解析シミュレーション 熱流動直接解析シミュレーション 500注1 該当なし 10,000注1
核融合プラズマの微視的乱流シミュレーション 核融合プラズマの微視的乱流シミュレーション 500 該当なし 該当なし
高強度レーザーと物質の相互作用シミュレーション 高強度レーザーと物質の相互作用シミュレーション 500注2 200注2 該当なし
地球環境 大気・海洋結合シミュレーション 全球雲解像シミュレーション 600 該当なし 該当なし
非静力・大気海洋陸面雲物理結合を考慮した全球−領域−局所連結階層シミュレーション 台風進路、集中豪雨予想 230 該当なし 該当なし
エルニーニョ1年予測 エルニーニョ1年予測 500 該当なし 該当なし
防災 数値震動台 建築物振動耐性シミュレーション 該当なし 10 該当なし
地震動予測シミュレーション 地震被害予測 該当なし 100 該当なし
溶岩流シミュレーション 溶岩流による被害予測 該当なし 3 該当なし
火山噴火シミュレーション 火山噴火シミュレーション 400 該当なし 該当なし
オイルスピル(重油拡散)シミュレーション 重油拡散シミュレーション 2000 該当なし 該当なし
津波防災シミュレーション 津波防災シミュレーション 1000注3 該当なし 該当なし
流体(基礎科学) 一様等方性乱流シミュレーション 乱流シミュレーション 500 該当なし 該当なし
宇宙プラズマ・核融合プラズマ 磁気流体・粒子連結階層シミュレーション オーロラ発光と炉心プラズマ崩壊の解明 220注1 20注1 該当なし
ものつくり VCAD 仮想モックアップによる設計の大幅効率化 300注1 280注1 該当なし
CAE 自動車衝突解析自動化 256注2 461注2 該当なし

 大規模処理計算機では、防災分野の「重油拡散シミュレーション」で2ペタFLOPS、ライフサイエンス分野の「創薬のための詳細模擬実験」と宇宙・航空分野の「宇宙環境変動予測」で、1ペタFLOPSという高い実効性能が必要となる。それ以外の大規模処理計算機を対象としているアプリケーションでは、200〜600ギガFLOPSの実効性能が必要とされる。
 逐次処理計算機では、物質・材料分野の「電子相互作用を考慮したデバイスシミュレーション」で、4ペタFLOPSという非常に高い実効性能が必要とされる。「電子相互作用を考慮したデバイスシミュレーション」では、モンテカルロ法が使用されており、特定処理計算加速機での対応の可能性が検討されている。更に、触媒設計シミュレーションに関しても同様に、特定処理計算加速機を使った連携処理の可能性がある。それ以外の逐次処理計算機を対象としているアプリケーションでは、3〜461ギガFLOPSの実効性能が必要となる。
 特定処理計算加速機については、ライフサイエンスの「創薬のための近似模擬実験」と天体・宇宙物理分野で20ペタFLOPSの実効性能が要求されている。

●メモリ転送性能・ノード間通信性能・メモリ容量
・大規模処理計算機
【2010年ごろに必要とされるメモリ転送能力、ノード間通信性能、ノード内のメモリ容量】
分野 項目 応用 メモリ転送能力(Byte毎演算) ノード間通信性能(ギガByteパーセコンド) ノード内メモリ容量(ギガByte)
ライフサイエンス 生体高分子の量子化学計算 創薬のための詳細模擬実験 4 64 256
生体マルチシミュレーション 人間丸ごとシミュレーション 16 80 512
宇宙・航空 航空宇宙機における賢い飛行制御 航空宇宙機リアルタイム運行制御 該当なし 該当なし 10
太陽系探査・宇宙環境利用/宇宙空間プラズマ解析 宇宙環境変動予測 該当なし 該当なし 該当なし
物質・材料 触媒設計シミュレーション 触媒設計シミュレーション 8 24 128
光励起反応シミュレーション 超高速光スイッチ設計等 8 50 512
原子力 熱流動直接解析シミュレーション 熱流動直接解析シミュレーション 4 16以上 400
核融合プラズマの微視的乱流シミュレーション 核融合プラズマの微視的乱流シミュレーション 4 16以上 400
高強度レーザーと物質の相互作用シミュレーション 高強度レーザーと物質の相互作用シミュレーション 4 16 400
地球環境 非静力学大気・海洋結合シミュレーション 全球雲解像シミュレーション 4 64 256
非静力・大気海洋陸面雲物理結合を考慮した全球−領域−局所連結階層シミュレーション 台風進路、集中豪雨予想 4 64 128
エルニーニョ1年予測 エルニーニョ1年予測 4 250 250
防災 火山噴火シミュレーション 火山噴火シミュレーション 4 250 250
オイルスピル(重油拡散)シミュレーション 重油拡散シミュレーション 4 250 200
津波防災シミュレーション 津波防災シミュレーション 4 250 250
流体(基礎科学) 一様等方性乱流シミュレーション 乱流シミュレーション 8 768 1500
宇宙プラズマ・核融合プラズマ 磁気流体・粒子連結階層シミュレーション オーロラ発光と炉心プラズマ崩壊の解明 4 64 128
ものつくり VCAD 仮想モックアップによる設計の大幅効率化 16 80 4096
CAE 自動車衝突解析自動化 16 80 1024

 メモリ転送能力については、ライフサイエンスの「人間丸ごとシミュレーション」、ものつくり分野において、16Byte毎演算の高い性能が要求されている。それ以外のアプリケーションについては、4〜8Byte毎演算の性能が要求されている。
 ノード間通信性能については、流体分野で768ギガByteパーセコンド、防災分野で250ギガByteパーセコンドと非常に高い転送性能が要求されている。流体・防災を除く分野での要求性能は、80ギガByteパーセコンド以下である。ノード間通信性能と要求される実効演算性能を比較すると、流体分野で約1.5Byte毎演算という演算に対して非常に高い通信性能が必要とされている。また、地球環境分野の「エルニーニョ1年予測」と防災分野の「火山噴火シミュレーション」においても、0.5Byte毎演算以上の高い性能が必要となっている。これら以外のアプリケーションでは、概ね0.3Byte毎演算以下の比率となっている。
 ノード内メモリ容量については、ものつくり分野と流体分野で大容量のメモリが要求されている。(仮想モックアップによる設計の大幅効率化:4テラByte、自動車衝突解析自動化:1テラByte、乱流シミュレーション:1.5テラByte

・逐次処理計算機
【2010年ごろに必要とされるメモリ転送能力、ノード間通信性能、ノード内のメモリ容量】
分野 項目 応用 メモリ転送能力(Byte毎演算) ノード間通信性能(ギガByteパーセコンド) ノード内メモリ容量(ギガByte)
ライフサイエンス 高精度スクリーニング、巨大生体分子の動作機構解明、タンパク質の立体構造予測 創薬のための近似模擬実験 2 5 1
生体マルチシミュレーション 人間丸ごとシミュレーション 8 20 512
天文・宇宙物理 銀河形成 銀河形成シミュレーション 2 5 1
惑星形成 惑星形成シミュレーション 2 5 0.1
宇宙・航空 実用燃焼の詳細シミュレーションによる燃焼現象の解明と制御 ロケットエンジン燃焼シミュレーション 1 50 256
航空機の飛行シミュレーションによる安全性・環境性の評価と改善 航空機安全性適合検証 1 50 256
物質・材料 触媒設計シミュレーション 触媒設計シミュレーション 2 8 128
強相関電子系バーチャル物質設計シミュレーション 電子相互作用を考慮したデバイスシミュレーション 1 12 32
強相関ナノ物質の輸送現象シミュレーション 強相関ナノ物質の輸送現象シミュレーション 2 16 192
原子力 高強度レーザーと物質の相互作用シミュレーション 高強度レーザーと物質の相互作用シミュレーション 1.6 512
防災 数値震動台 建築物振動耐性シミュレーション 該当なし 該当なし 64
地震動予測シミュレーション 地震被害予測 該当なし 該当なし 64
溶岩流シミュレーション 溶岩流による被害予測 該当なし 該当なし 16
ものつくり VCAD 仮想モックアップによる設計の大幅効率化 8 20 4096
CAE 自動車衝突解析自動化 0.5 10 1024
宇宙プラズマ・核融合プラズマ 磁気流体・粒子連結階層シミュレーション オーロラ発光と炉心プラズマ崩壊の解明 該当なし 5 256

 メモリ転送能力については、ライフサイエンスの「人間丸ごとシミュレーション」、ものつくり分野の「仮想モックアップによる設計の大幅効率化」で大規模処理計算機並(8Byte毎演算)の性能が必要となる。それら以外のアプリケーションについては、2Byte毎演算以下が必要要件となっている。
 ノード間通信性能については、5〜20ギガByteパーセコンド程度の性能が要求されており、実効演算性能との比で見ると、0.33Byte毎演算以下となっている。特に、ライフサイエンスと天体・宇宙物理分野では、高性能の特定処理計算加速機と組み合わせて実行されるため、実効演算性能に対する通信性能の比は小さい。
 ノード内メモリ容量については、ものつくり分野で大容量のメモリが要求されている。(仮想モックアップによる設計の大幅効率化:4テラByte、自動車衝突解析自動化:1テラByte)逆にライフサイエンスの「創薬のための近似模擬実験」と天体・宇宙物理分野で要求されるメモリ容量は非常に小さい。


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