第88回情報科学技術委員会(平成27年5月25日)議題5「情報科学技術の研究開発の方向性について」に関する各委員のコメント抜粋

<産学官連携>
・産業界より、産学連携という形にはしているけれども、大学側に大きな期待はできないと言われている話を聞く。問題点を洗い直して、ここを解決していけばうまくいく、というような試みを行ってみてはどうか。
・大学の人と企業の人というのは基本的に違うし、同じになり得ないからこそ協力する意味がある。
・シーズの研究者も必要だが、ニーズ志向の研究者も新たに作っていくフェーズと思っている。意識を変えるというのは本当に長い年月がかかってくるので、そういう意識を少しずつ変えていくようなことというのは、継続してやっていかないといけないのでは。
・産業界、社会インフラを作る人、学問をやる人の世界観を変えていただかないといけない。

<人材育成>
・アメリカの大学では情報への人気が極めて高い。世界にどんどん出ていって、日本に戻ってくるような循環ができれば情報工学という分野がますます人気が高まっていくのではないか。
・スタンフォード大学ではコンピューターサイエンスの定員を定めておらず、学生が行きたいという希望を出すとその分野に進学できる。コンピューターサイエンスを希望する学生は以前に比べると数倍になっているが、教育制度改革のアジリティ、フレームワークをどう変えていくかということが非常に大きな問題。
・米国ではデータサイエンス、いわゆる応用数学に対してもものすごく人気が高いが、日本の大学では、情報工学への人気がそれほど高くない。
・データサイエンティストを定義するときに、例えば、データサイエンス力と、データエンジニア力と、あるいはビジネス力の3つが欠かせない。
・資産を配分していくのかというシステム科学の視点が、本来ならばこのデータサイエンスにおける重要な視点として出てくるのではないか。
・新しい価値を生み出していくときには、集まる場というのが今まで以上にすごく重要になってきている。ディレクターのようなことがしっかりできる人材を、そういったパスをつくっていくことも重要では。

<研究開発制度のスキーム>
・出口が見えるか見えないかということは非常に重要である。研究をしましたという事はもちろん、未来像をしっかりと描いて、どの出口にそれを結果として出していくかということがとても重要である。
・一番最初に社会コストを何%減らすかという目標を立て、その後ステージゲートのような仕組みで修正していく。切っていくとか、統合していくという、何かそのようなマイルストーンベースの研究スキームが必要になるのではないか。そうすると、マイルストーンを立てる時点で、社会との接点が出てくる。
・社会への出口というのはもちろん重要だが、出口から引っ張るといったときに、引っ張る元はだれがつくるのかという議論を、真剣に考えておく必要があるのではないか。
・バランスが重要で、基礎研究をないがしろにすることはあり得ない。iPadの分解というプロジェクトをやっているが、要素技術というのはほとんど全て基礎的なファンディングエージェンシーが出したもの。単に出口だけではないのだという側面も、米国はちゃんとベリファイしている。
・情報のオープン化を避けられない中で今までクローズドで培ってきた様々な強みをどうやって維持あるいは発展させていくのかというのが非常に大きな課題である。
・文部科学省が行うべき情報科学技術に対する投資としてはスパンが長いことが重要ではないか。
例えば、CRESTにしても、さきがけにしても5年間、8年間というプログラムでやっていくわけだが、新しいスキームも必要かもしれない。
・技術は縦糸、横糸がある。深く掘り下げていく部分の技術分野といろいろな技術分野と接点を持ちながら発展していく技術領域がある。応用的なプロジェクトのチームと共に研究開発していくということも考え得る。

<プラットフォーム>
・日本が経済的にも伸びていくためのデータなどを含めたプラットフォームと学術的プラットフォームがある。大学の研究者が実験データをきちんと保持しておかないといけないという問題もあり、プラットフォームは国として考えないといけない。
・プラットフォームと社会適応ということを考えると、社会へのアカウンタビリティを担保する、国がお金を投資して、それが社会にどれだけ影響を与えていくかということを検討する努力が必要。
・IoTにしても、プラットフォームを作っていったときに、その社会的費用、コストがどれだけ改善できるのか、物流でもヘルスケアでも、社会的コストをいかに計るのかというのは、非常に難しいが重要である。
・情報技術は基本的に組み合わせ。何か新しい、全く今までに無いものが出てくるということではなくて、既にあるものの新しい組み合わせである。インテグレーションという視点が非常に欠けているのではないか。しかもそれは結局ソフトウェアで、ソフトウェアに国の予算はあまりかかっていないので、それが最大の、これから我々として克服すべき課題ではないか。

<人工知能>
・コンピューターが人工知能になるというのは、単なる要素技術ではなく、電気回路がチューリングマシンになったのと同じようなレベルでインテリジェンスがレベルで1個上がるものである。機械学習のアルゴリズム等の問題ではなく、機械自身がインテリジェントになる、あるいは、みずから進化する。状況に合わせてロジックを自分で作り変えるということが起き始めている。
・ディープラーニングというのが、自動走行車の開発等で非常に重要になっている。米NVIDIA社等もディープラーニングを使った認識のエンジンを出している。どのタイミングで注力をして次の世代で勝つのかというのを考えていくべきである。

<ビッグデータ>
・アメリカはすでに行っているが、データをどうやって集めて、どうやってそれをマイニングして活かして産業化につなげていくかというイメージを想定しながら、行う研究開発が非常に重要である。
・気象予測では時間的余裕があるためタイムラインのようなものが出来るが、地震や津波等のほとんど時間的な猶予がないときにデータ同化をどうしていくのか。それも瞬時に同化をしながら予測をして、それを分かりやすく可視化も含めて伝えるということをどうやって、やっていくのか。これが、ビッグデータを使う、あるいはコンピューターサイエンスをどう活用するのかという議論になる。

<セキュリティ>
・サイバーセキュリティの問題は国のナショナルセキュリティの基本に関わる問題であるので、また、企業個別にそれぞれの企業の生き死に関わる問題なので、なかなか協働するというのが難しい分野である。例えば、産学官連携をどう作っていくか、あるいは、国際連携はもう一つ難しい話。こういう場でしっかりと個別の議論ではなくて、方向性として解を出していただきたい。
・また、情報の中身のセキュリティはどうするのか。可視化も含めてどういう情報に置き換えて伝えるのかというところのフィロソフィーというか、コンセプトの議論も多分必要では。

<その他>
・情報科学技術というのは、人類の歴史において異常な発展をしているもので、ほかの技術と比べられないようなスピードで動いているものであるという、その基本認識・世界観を国民全員が持ってもらわないといけない。
・受け取った側の心理、どういう情報を受け取るとどういう行動に人々は動くのかということも含めた、人文科学も加味したような情報の発信の仕方が重要。

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研究振興局参事官(情報担当)付

(研究振興局参事官(情報担当)付)

-- 登録:平成28年01月 --