近年、科学技術の分野における国際競争が激化する中で、科学技術創造立国を実現するには、創造的・先端的な研究開発を推進していくことが重要である。このため、研究者等による特定高速電子計算機施設の共用を促進するための措置を講ずることにより、研究開発基盤の強化を図り、当該施設を中心とした産学官の研究交流の一層の促進を通じ、多様な知識の融合を図ることが求められている。
特定高速電子計算機施設は、独立行政法人理化学研究所(以下「理化学研究所」という。)により設置される、極めて高度な演算処理を行う能力を有する電子計算機(以下「超高速電子計算機」という。)を使用して研究等を行うための施設であり、情報科学技術の分野のみでなく、多様な物質・材料の構造・物性及び機能の解析や、遺伝子レベル及び人体全体の解析等を通じて、ナノテクノロジー・材料、ライフサイエンス、ものづくり、環境、防災、航空・宇宙及び原子力等広範な分野の研究開発の飛躍的な進展に大きく貢献することが期待されるものである。このため、特定高速電子計算機施設の能力を最大限に発揮させつつ最先端の研究等が行われ、我が国の科学技術の振興や産業競争力の向上に資するよう、産業界を含むあらゆる分野の研究者等に共用させることが必要である。
このような認識の下、特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律第4条第1項の規定に基づき、この方針を定めるものである。
なお、この方針は特定高速電子計算機施設の運用開始後を視野に入れて策定すべきものであり、登録施設利用促進機関(以下「登録機関」という。)の業務の在り方等運用に際して必要となる事項については、今後、施設整備の進捗状況に応じて検討を行い、この方針に反映させていくこととする。
|
| 第1 |
特定高速電子計算機施設の共用の促進に関する基本的な方向 |
| |
特定高速電子計算機施設が、我が国の科学技術の振興や国際競争力の向上に寄与していくためには、研究者等にとって魅力のある施設となり、科学技術の広範な分野における多くの研究者等に活用されることが重要である。
このため、多様な利用者にとって使いやすく、優れた成果が創出されるよう、本施設の整備及び運営等を行うこととする。
|
| 第2 |
特定高速電子計算機施設の整備に関する事項 |
| |
計算科学技術の分野では研究開発が急速に発展しており、常に新たな技術や知識が生み出されている。このため、超高速電子計算機の開発については、最先端かつ最高の性能を達成すること及び優れた成果の創出が継続的に行われることを目指して、国際的な研究開発状況にも注意を払いながら、適時に、かつ、適切な方法で評価を行い、厳しい財政状況を踏まえ、経費の効率化を図りつつ、適切に進めることとする。
また、特定高速電子計算機施設を利用者にとって利用しやすく、優れた成果が創出されるものとするためには、施設の整備に当たり利用者のニーズ等が適切に反映されることが重要である。このため、理化学研究所においては、国内外の研究開発動向の把握に努めるとともに、利用者と適切に情報交換を行いその意見に十分配慮することとする。
|
| 第3 |
特定高速電子計算機施設の施設利用研究に関する事項 |
| |
| 1 |
実施すべき施設利用研究 |
| |
特定高速電子計算機施設が、将来にわたって最大限有効に活用され、画期的な成果を創出していくには、本施設を利用してどのような研究等が実施されるかが重要である。このため、今後行われる本施設の設計の具体化とあわせて、研究分野や計算規模等に留意した計算資源の配分等、施設利用研究の考え方について定めることとする。その際、基礎的、応用的及び開発的な研究等の調和のとれた発展が可能となるよう配慮する必要がある。
また、個別具体的な研究課題の選定は、上記の施設利用研究の考え方に基づいて、登録機関が選定委員会の意見を聞きつつ行うことになるが、公正な課題選定が行われるよう、選定委員会の下に研究分野別に審査を行う組織を整備する等、適切な体制を構築するとともに、手続きの透明性を確保することとする。
さらに、本施設を活用した国際交流の推進は、科学技術分野における国際協力を図りつつ、我が国の科学技術力の強化を図るという観点から重要である。また、超高速電子計算機に係る技術は第三期科学技術基本計画にいう国家基幹技術であり、我が国が国際競争に勝ち抜く上で不可欠な研究開発課題であることにも留意する必要がある。本施設を活用した国際交流を行う際には、こうした点も踏まえ、相手国や状況に応じて、競争と協調等のアプローチを使い分けつつ、戦略的に進めることとする。
|
| 2 |
適切な支援体制の構築 |
| |
特定高速電子計算機施設が多くの研究者等に効果的かつ効率的に利用されるためには、施設に関する最新の情報を利用者へ提供すること、利用に関する相談へ対応すること及び適切な計算プログラムを調整すること等、中小企業を含む産業界の研究者等を始めとした利用者に対し、適切な支援が行われなければならない。
このため、今後行われる本施設の設計の具体化を踏まえ、利用者の幅広いニーズ等を恒常的に把握しつつ、登録機関に求められる支援に係る具体的な業務や体制等について定めることとする。
|
| 3 |
施設利用研究の成果の取扱い等 |
| |
幅広い分野の研究者等が特定高速電子計算機施設を利用し、その成果を社会へ還元するためには、適切な成果の取扱いを行うとともに、利用目的や成果の公表等に応じた適正な利用料金を設定することが必要である。
このため、今後運用段階までに、産業界の研究者等による利用も視野に入れ、施設利用研究における成果の取扱い及び利用料金等の考え方について定めることとする。
|
| 4 |
理解増進活動の実施 |
| |
より広範な科学技術の分野における研究者等による特定高速電子計算機施設の利用が促進されるためには、本施設とその利用についての情報が多くの研究者等に対して適時に、かつ、的確に提供されることが重要である。このため、理化学研究所においては、本施設の整備段階から、各種広報誌やホームページ、各種シンポジウム、学会等の場を利用して積極的な情報発信を行い、利用者の裾野を広げるとともに、利用者との情報交換等を活発に行うこととする。
また、本施設は、国費を集中的に投資してその開発・整備が行われるものであり、その効果的な活用のためには国民の理解と支持が必要である。このため、本施設の重要性等について、国民に対しわかりやすい形で成果の発表や公開を行うこととする。
さらに例えば、運用開始後に、大学等と連携して、青少年等を対象とした科学技術に対する理解増進に貢献する取組等を行うことも重要である。
|
| 5 |
研究機能等の構築 |
| |
特定高速電子計算機施設が最大限に活用されるとともに、計算科学技術の分野における将来の継続的な発展が確保されるためには、本施設を活用することにより高度な研究及び人材育成に関する機能等を構築することが重要である。
このため、本施設の将来展望や利用者のニーズ等を踏まえつつ、理化学研究所及び登録機関等の関係機関が適切な役割分担のもと研究及び人材育成に関する機能を果たしていくこととする。 |
|
| 第4 |
特定高速電子計算機施設の運営に関する事項 |
| |
特定高速電子計算機施設の共用に当たっては、グリッド技術等を活用し、地理的に離れた計算資源を連携させて利用できること、各種データの取得、蓄積及び有効活用等を容易に行えること、利用者に対する窓口の一元化及び手続きの簡素化が行われること等、多くの研究者等にとって使いやすい運営が行われることが重要である。また、本施設から優れた成果が創出されるような運営が行われることも重要である。
このため、適時に、かつ、適切に利用者のニーズ等を反映させつつ、今後運用段階までに本施設が効果的かつ効率的に活用されるような適切な運営方針について定めることとする。
また、運営に係る業務の実施に当たっては、透明性を確保しつつ、公正な手続きにのっとって、全体的な施設の運営が効果的かつ効率的に行われるようにするとともに、理化学研究所と登録機関が適切に連携を図っていくこととする。
|
| 第5 |
その他特定高速電子計算機施設の共用の促進に際し配慮すべき事項 |
| |
特定高速電子計算機施設は、我が国における計算科学技術を始めとした科学技術全体の振興に貢献することが重要である。このため、本施設と大学・研究機関等のスーパーコンピュータを始めとする計算環境との適切な役割分担及び有機的な連携を図っていくこととする。
特に、既に我が国において開発され、成果をあげている地球シミュレータについては、アプリケーション作成における活用等、本施設の整備・運営等に当たって積極的な連携が図られることが重要である。
|
| |
附則
この基本的な方針は、平成18年7月1日から施行する。 |