情報科学技術委員会(第103回) 議事録

1.日時

平成30年7月26日(木曜日)17時~19時

2.場所

文部科学省15階特別会議室

東京都千代田区霞ケ関3-2-2

3.議題

  1. 情報科学技術委員会運営規則の改定について
  2. 今後の情報科学技術分野に関する研究開発課題の方向性について
  3. 「ポスト「京」のシステム開発」の中間評価について
  4. プログラム評価における参考指標(我が国全体の情報を把握する指標)について
  5. その他

4.出席者

委員

北川主査、有村委員、上田委員、栗原委員、高安委員、瀧委員、辻委員、土井委員、樋口委員、八木委員、安浦委員

文部科学省

磯谷研究振興局長、千原大臣官房審議官(研究振興局担当)、原参事官(情報担当)、坂下計算科学技術推進室長、根津参事官補佐、邉田専門官、齊藤情報科学技術推進官

オブザーバー

松岡 理化学研究所計算科学研究センター長、岡谷 理化学研究所副理事、木村 科学技術振興機構研究開発戦略センター上席フェロー、坂内 科学技術振興機構研究開発戦略センターフェロー

5.議事録

【北川主査】  それでは、定刻となりましたので、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会情報科学技術委員会の第103回会合を開催いたします。
 大分しのぎやすくなったとはいえ、大変暑い中をお集まりいただきまして、まことにありがとうございました。
 本日は、伊藤委員、喜連川委員、國井委員、矢野委員から欠席の連絡を頂いております。また、土井委員については途中で御退席されるとのことでございます。
 それから、議題2に関連しまして、JSTの研究開発戦略センターから、木村康則上席フェローと坂内悟フェローに御出席いただいております。後ほどよろしくお願いいたします。
 それから、議論3に関連しまして、後ほどの御参加ということですけれども、理化学研究所から、松岡聡計算科学研究センター長と岡谷重雄副理事に御出席いただく予定になっております。
 次に、前回の102回委員会以降におきまして、事務局に人事異動があったということですので、御挨拶をお願いしたいと思います。
 千原由幸大臣官房審議官、よろしくお願いします。
【千原大臣官房審議官】  千原でございます。先生方、どうぞよろしくお願いいたします。
【北川主査】  それでは、引き続き事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【齊藤情報科学技術推進官】  配付資料の確認をさせていただきます。お手元にクリップ留めの資料が御用意してあると思います。座席表をめくっていただきまして、1枚目に議事次第が付いております。こちらに配付資料一覧も載せさせていただいております。
 1枚めくっていただきまして、本委員会の運営規則の改定案が資料1として付いております。次の資料、1枚物の資料になりますが、第9期の本委員会における当面の審議事項(案)を資料2-1として付けさせていただいております。次の資料、横長、カラーの資料ですが、資料2-2として、JSTのCRDSから御発表いただく研究開発動向の資料が付いております。資料3-1、横長の資料になりますが、ポスト「京」のシステム開発中間評価についてという資料がございます。資料3-2、同じく中間評価結果(案)でございます。続いて、資料4-1として、研究開発プログラム評価に関する主要な論点がございます。資料4-2として、プログラム評価における参考資料(案)の資料がございます。
 それから、参考資料1といたしまして、本委員会の名簿及び参考資料2として施策マップが付いております。また、クリップの外にある資料として、机上資料、Web of Scienceのカテゴリを印刷してお配りさせていただいております。また、机上資料として、毎回使っているものですが、黄緑色のファイルに6種類の資料を入れて置かせていただいております。
 しっかり注意して準備しておりますが、万一、落丁や不備などございましたら事務局までお申し出いただければと思います。
 以上でございます。
【北川主査】  ありがとうございました。よろしいでしょうか。
 それでは、早速ですが、これから議題1に参りたいと思います。情報科学技術委員会運営規則の改定についてです。まず事務局から説明をお願いいたします。
【齊藤情報科学技術推進官】  それでは、資料1に基づいて御説明差し上げます。本委員会の運営規則の改定案でございます。本改定につきましては、端的に申し上げますと、書面審議を可能にするための改定でございます。ほかの委員会等でも書面審議が可能な委員会、ございますので、本委員会でも将来的に必要になった場合に備えて改定しておるものでございます。
 1枚めくっていただきまして、2ページ目の第3条を御覧ください。これまで第1項として、定足数の規定だけ、こちらの条にはございましたが、新たに第2項、第3項を付け加えて、書面審議を行うことが可能としております。第2項で、主査の方でやむを得ない理由があった場合には、書面を委員の方に送付することにより、書面審議を行うことができることを規定しております。
 そして、第3項の方で、書面審議を行った場合には、次の委員会において、その旨を報告していただくということを規定しております。
 改定案については、以上の御説明となります。
【北川主査】  ありがとうございました。ただいまの説明につきまして、御意見、御質問ございましたらお願いいたします。
【土井委員】  済みません。細かいことで恐縮ですけど、書面審議自身については、既に文科省の中で、どこかで決められているのでしょうか。普通に電子的にやったりするときは全員がきちんと回答しないといけないとか、別途細かく決まっているんですけど、ここで言う書面審議は、メールベースではなく、文書処理ということですよね。
【齊藤情報科学技術推進官】  ここではメールを送付するということに……。
【土井委員】  ああ、そうですか。電子的。
【齊藤情報科学技術推進官】  済みません。書面を送付することになっておりまして、特に、紙ベース、電子ベースは問わずということで考えております。
【土井委員】  多くの場合は、電子決議は全員がきちんと回答しないと、賛成しないと成り立たないというのが多くのところの規定になっているので、だから、そのあたり書面と電子は違っているので、もしかすると、そのあたり、きちんと確認して。というか、ここだけじゃなく、文科省全体で確認していただいた方がいいと思います。
【北川主査】  ちょっと質問ですけど、一般的に過半数ではだめということですか。
【土井委員】  書面審議はあれですけど、電子的。過半数じゃなくて、電子的にやるときはちゃんと全員が回答しないといけないんですね。
【八木委員】  メールの返事を出すという。
【土井委員】  メールの返事をきちんと出さないといけない。
【北川主査】  その辺、御確認いただけますか。
【齊藤情報科学技術推進官】  確認します。
【北川主査】  それでは、その辺の手続をちゃんとするということで対応したいと思います。
【土井委員】  いや、それはここで決めることではなく、文科省全体の話なので。
【邉田専門官】  ええ、全体の話だと。基本的に書面にしても、皆様にお送りさせていただいて、回収させていただいて、決めていくことになるかと思いますが、全て整理したいと思います。ありがとうございます。
【北川主査】  電子的の場合は、届いていないこともありますので、それに関してかと思います。
【邉田専門官】  承知しました。
【齊藤情報科学技術推進官】  御指摘ありがとうございます。こちらの方で、文部科学省のほかの委員会の例も調べて。
【邉田専門官】  対応して。
【齊藤情報科学技術推進官】  はい。対応させていただこうと思います。
【北川主査】  方法としてはそういうふうにするということで、書面審議を導入すること自体についてはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、その点については、特に御異論ないようでしたら、手続を文科省の方に従うということで、御了承いただいたとさせていただいてよろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
 それでは、2番目の議題に入りたいと思います。今後の情報科学技術分野に関する研究開発課題の方向性についてです。事務局からお願いします。
【齊藤情報科学技術推進官】  資料2-1に基づいて御説明させていただきます。御提案させていただきます。
 これまで第9期の本委員会、昨年から始まった第9期におきましては、研究開発の評価を中心に活動していただいておりましたが、後半の今年、平成30年度につきましては、次年度以降、今後の情報科学技術分野に関する研究開発課題の方向性というものを本委員会の一つのテーマとさせていただくことを御提案させていただきます。
 1ポツ目でございますが、今後の文部科学省の研究開発の施策、予算要求ですとか目標設定等に生かすために、情報科学技術の研究開発課題の方向性について、こちらの委員会で3回程度御議論いただいて、今年度中に取りまとめることを想定しております。
 また、2ポツ目といたしまして、研究開発の評価についても引き続き行っていただきます。平成30年度につきましては、後ほど御説明させていただくポスト「京」のシステム開発の中間評価、また、AIPプロジェクトの中間評価というものがございます。
 下半分に審議スケジュールの(案)を記載しております。第103回、今回ですが、ポスト「京」のシステム開発の中間評価に係る現状の御報告をさせていただきます。
 また、JSTのCRDS様から、「今後の情報科学技術分野に関する研究開発課題の方向性について」として、話題の御提供を頂きます。
 次回は9月中旬頃、第104回を予定しておりますが、こちらでポスト「京」のシステム開発の中間評価を行っていただきます。
 また、今後の方向性について、委員の皆様から話題の御提供を頂いて、御議論いただければと思います。
 第105回、106回については、平成30年の10月下旬から11月上旬、また、12月中に2度ほど予定しておりますが、委員の皆様から更に話題の御提供、御議論を頂ければと思います。
 今年度の最後、第107回を31年の1月中に予定しております。この会議では、AIPプロジェクトの中間評価及びそれまで御議論いただいた研究開発課題の方向性について、取りまとめができればと考えております。
 当面の審議事項の(案)につきましては、以上でございます。
【北川主査】  ありがとうございます。ただいま御説明いただきました今年度の審議の課題につきまして、御意見、御質問ございましたらお願いいたします。
 よろしいでしょうか。特に御異論ないようでしたら、今年度こういう形で進めさせていただきたいと思います。
 それでは、早速ですが、ただいまの(案)に書いてございました本日のスケジュールのところに従いまして、JSTのCRDSの方から御発表をお願いしたいと思います。20分程度でよろしくお願いしたいと思います。
【木村JST-CRDS上席フェロー】  それでは、発表させていただきます。JST-CRDSの木村と申します。私は、CRDSの中では、システム・情報科学技術ユニットというところのリーダーをさせていただいております。
 本日は、今後の情報科学技術分野に関する研究開発課題の方向性ということで、私どもCRDSが注目する研究開発のテーマというか、動向を少ししゃべらせていただきたいと思います。本日しゃべる内容は、何分まだやわらかいことで、年度の途中でありますし、まだまだ決まっていないとか、検討中とか、そういう言い訳じみた言葉が出てくるかもしれませんけれども、そこは御了解の上で、むしろ皆様方から、ここはこうした方がいいとか、こうやった方がいいとか、ここはこうやってもだめだよとか、コメント、アドバイス、叱咤激励、いろいろ頂ければと思って来ましたので、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず資料ですけれども、資料2-2に基づいて、まず私がしゃべらせていただきます。JSTのCRDSは何をやっているかというのはもう御存じかもしれませんけど、簡単に復習ということで、2ページ目です。JSTは主にファンディングの機能と、それから、我々がやっている研究開発の動向調査というのがあります。私はそのCRDSのそちらの方から、本日は来ております。
 我々の主な仕事は、ここに書いてあるように、戦略プロポーザル、今後こんなことをした方がいいんじゃないのというようなところをテーマとしてレポートを書くのと、発行するのと、それから、俯瞰という、これからどういうふうに技術テーマが動いていくかというところを2年に1回ですけど、大きな資料を作っています。これが我々の大きなミッションで、本日は、その中の戦略プロポーザルに向けていろいろ検討しているところの幾つかをしゃべらせていただきたいと思います。
 1枚めくっていただいて、3ページ目ですけれども、そういうことを考えるに当たって、どういうふうに方法論をやるかということなんですけど、左側の図で、これからどういうふうに技術が、トレンドが向いていくのかなというので、例えばスマート化、あるいはシステム化、複雑化、ソフトウェア化、サービス化というのがあると思っていて、そこにいろんなテーマを埋めていって、それをくくってみると。
 今回はビッグデータ・人工知能、コンピューティングアーキテクチャ、それから、ロボティクスというのを組んでみて、そこにいろんなものを埋めてみて、幾つかクラスタリングするわけですね。その中で、これから、ここに書いてあるように、エマージング性とか、社会的なインパクトだとか、ミッションとか、ビジョンがはっきりしているかどうかというところを評価基準にして、幾つかテーマを抽出して、その中で今年やるべきこと、あるいはもうちょっと先かなということを分類しています。
 それが右側の縦に幾つか書いてあるもので、革新的コンピューティングというのは、今年度、30年度の戦略目標になりまして、今、CREST、さきがけでテーマが走り始めていると思っています。
 その下が幾つかあるんですけれども、意思決定・合意形成というのはうまくいかなかったなというのがあって、本日お話しさせていただくのは、その下の橙色で書いてあるAIソフトウェア科学、社会システムデザイン、ブロックチェーン、量子コンピューティング、この4つです。これを今、CRDSの中では、我々のユニットではほかのチームとも連携しながら検討を進めているということで、これの今の状況をしゃべらせていただくということです。
 まずAIソフトウェア科学というのは、ここに書いてありますけど、AIのブームが第3次で、機械学習がいろんなものがブレ-クスルーしていて、変わってきていて、機械学習技術自体はいろんなシステムに埋め込まれつつありますと。主にその実社会で応用とか実用化がかなり急激なスピードで走っているんですね。そのときに機械学習型システム開発というのは、従来は演繹型と言うんですか。ここに左側の絵で書いてあるように、回路を組んだり、プログラムを書いて、その中で検証するということをやっていたんですけど、機械学習というのはどちらかというと帰納的なアプローチであって、そのシステムの開発の手法とか検証の仕方に対して、パラダイムの転換が起きているだろうというふうに我々は捉えていますということです。
 これが第1の大きな問題意識で、5ページに行っていただくと、ただ、そういうパラダイムシフトは起きているんだけど、それに対する技術的な進展が必ずしも、開発の方が先行しているんだけど、そこに対する信頼、品質の保証とか、動作保証の考え方に対して、少しまだ追い付いていないのかなというところがあって、何か不具合が生じたときに、それに対する事故が大きなものになってしまっていて、それが社会問題にもつながりかねないというようなことがあるんじゃないかなというのを思っています。
 これは下に絵で書いてありますけど、左側を見ると、このストップサイン、人間が見ると、どう見ても、これはストップサインですけれども、これは深層学習、ディープラーニングさせると、何か40マイル以下でしたっけ。60マイルかな。以下の速度制限の交通標識に誤ってしまうとかですね。それから、有名なのは、マイクロソフトがチャットボットでやったんですけど、変な人が不適切な学習をさせたものだから、人種差別的なことを言い始めたりとか、あるいは学習データに潜む、ひょっとしたら意識しなかった差別とか偏見が、例えば何らかの悪影響を及ぼすようなことも起こり得るということで、そういうところに対してどういうインパクトがあるのかというのもちょっとあるし、そこに対してもうちょっとあらかじめそこに制約をチェックするみたいな機能が必要なんじゃないかなというふうに捉えているところです。
 6ページは、そういう問題意識は高まっているんですけど、根本的な解決策というのはまだないというのと、それから、今、現状を見ると、どちらかというと、精度とか性能を高めることにはすごくガーッと行っているんだけど、投資も入っているんですけども、こういう開発手法というか、検証に関する関心というのは必ずしも高くないと。こういうところをもう少しやっていく必要があるだろうというふうに思っています。
 ただ、何もやってないわけではなくて、例えば日本でもワークショップではすごく議論が活発ですし、日本ソフトウェア科学会、丸山さんのところだと、機械学習工学研究会というのを発足して、こういうところをきちんと攻めていきましょうということをやられていると聞いております。
 次に、7ページは、では、どういう開発項目があるかというのをざっと挙げたもので、個々には説明しませんが、こういうところは今後やっていかなければ、詰めていかなければいけないというのがあって、こういうところに対して、我々はもう少し提言をして、こういうところをベースとしていく必要があるだろうなというふうに思っているということです。
 従来、ソフトウェア科学ということに関しては、産業界と学術会が必ずしも連携がうまくいっていないというのがあると思っておりまして、そういうところも含めて、学術的な手法と、それから、現場での進め方、やっていることというのをうまく融合していくような、そういうアプローチが必要なんじゃないかなと思っていて、そういう提言をしていこうと思っています。これも将来的には一つの大きな学問分野になり得るかもしれませんので、そういうアプローチもあってしかるべきではないかと思っているところです。
 それから、2つ目は、社会システムデザインと言っていまして、これは非常に難しいテーマを今、チャレンジしているんですが、Society5.0ということで、いろんな社会システムの次の世代がいろいろイメージされていると。既存のシステムというか、新しいシステムに関して、それをやるときには、単に技術的なものではなくて、社会からの要求を明確化して、それをシステムの中にうまく取り込んでいく必要があるだろうというのが第1の問題意識です。こういうところはまだまだうまく、余り認識されていないのかなと。とかく、我々が技術オリエンテッドで、私も産業界に長くおりましたけれども、やっぱり何でもかんでも技術で解決したがるというところがあって、それに対する社会的インパクトというのは、どちらかというとあんまり気にしなかったというところがあって、そういうところを社会システム、社会に対してそういう技術がどういう影響を与えて、それに対するフィードバックでどういうふうに作っていかなきゃいけないか、あるいは改善していかなきゃいけないかという、そういう方法論も含めて考えていこうというのがこのテーマです。
 10ページを見ていただくと、もう少し具体的になるかもしれません。今申し上げたように、技術だけではなくて、大きく社会というのと、それから、情報科学技術へのシステムというのがあって、それを社会からの要求を受けて、システムが例えばシミュレーションをして、その影響をもう一回社会に持ち込んで、もう一回戻すとかですね。これは大学で持ち込むとまた問題があれかもしれませんけど、そういうところをいわゆる開発のシステムのループをうまく作っていきましょうということです。
 先ほど申し上げたように、従来はその下半分の卵が割と大きく描かれていたんですけれども、社会とシステムの両方をにらみながらやっていきましょうと。そういう開発手法、あるいは考え方というのをどう取っていくべきかをここで考えていきたいというふうに思っております。これが2つ目のテーマです。
 それから、3つ目が12ページになりますけれども、これはもう皆様、言葉はよく御存じで、先ほどよく言われているブロックチェーンというものです。ビットコインの根幹となる技術というふうに捉えられてもいいかもしれません。この技術は、仮想通貨や資産の共有化などをやるための基本的なテクニックとして、主に産業界を中心に始まっている、起こっていると思っています。ただ、必ずしもそれがブロックチェーン自身の技術の本質と言うか、限界も含めて、理解された上で発展しているというよりは、期待先行型で行っているのではないかというふうに私は思っていて、そこをもう少しきちんと、この技術がどういうもので、どこまで適用できて、どういうところを注意しなきゃいけないかも含めて押さえておく必要があるだろうと。そういうものを提言していって、これを使うに当たって、どういうところを要点として考えるべきかという、そういう話と、それから、ブロックチェーンの技術そのものに対して、これからいろんなIoTとかそういういろんな、量子もあるかもしれません、そういうところの新しい技術が入ってきたときに、この技術がどういうふうに扱うべきかという。
 IoTですと、例えばこういうブロックチェーンの技術というのは、どちらかというとクラウド側でガンガン回すという感じに見えかねないんですけど、では、そういうIoTみたいな部品が入っているときにどうするんだとか、量子みたいな、本当に量子コンピュータが実現され得る時代が来たときに、計算能力が圧倒的に桁違いに上がったときに、では、このブロックチェーンというのはどういうふうになるんでしょうかというのを思考実験してみるとか、そういうことも考えなければいけない時代にそろそろ来ているかなというところで、それもを含めて、いろんなことをブロックチェーンの周りを押さえていくというのをひとつやっていきたいというふうに思っています。これが3つ目のテーマです。
 それから、最後が15ページになりますね。革新的コンピューティングの期待、これは一言で言うと、量子コンピュータのことを言っているんですが、量子コンピュータもやっぱり期待先行で、少し話が進んでいるというふうに思っていて、これもどういう分野が得意でということも含めて、少しおさらいをしながら次のステップにどう出ていくべきかというのを考えていきたいというふうに思っています。
 これはよく言われるように、下から、技術から行くと、ムーアの法則がそろそろ、シュリンクだけでは難しくなってきているというのと、それから、上から行くと、Society5.0みたいなもの、あるいはSDGsみたいに、いろんなところにアプリケーションの分野が広がってきていて、その間で、じゃ、コンピュータシステム自身がどういうふうに作っていくべきか、再構成していくべきかというのをもう一回考えてみようということで、こういうことを始めました。
 真ん中の革新的コンピューティングと書いてあるのは、今年度の戦略プロポーザルをJSTとして出しただ際の資料で使った絵です。そこの中にも量子計算というのが少し入っているということになります。
 量子コンピュータ、16ページ、17ページあたりでありますけど、細かい話を説明する必要はないかと思うんですけど、いろんなところでこういう話が出ていて、それぞれ鋭意、皆様方頑張られていると思うんですけれども、一つ我々が考えているのは、これは17ページなんですけれども、今の量子コンピュータというのは、これは大胆に言い過ぎているかもしれませんが、1950年代の今のコンベンショナルなコンピュータの状況に近いんじゃないかなと。つまり、こんなことができるよというアルゴリズムの世界があるのと、それから、ハードウェアレベルで、物理現象としての量子というのを研究されている方がいるんだけど、その間のいろんなつなぐものがまだまだ開発されていないということがあると思っています。
 現代のコンピュータを見ると、こういうハードウェア、ソフトウェアの施策があって、これが全部そろって、初めてコンピュータとして動くわけですけど、ここに対して、間が抜けているので、開発する人にとっても、すごく大きな負荷が掛かるし、もうちょっと端的に言うと、アプリオリで考えている方々と物理レベルのことを考えている方々の間の交流も含めて、まだまだギャップが大きいのかなというふうに思っているところです。
 これを埋めるためには、もし量子コンピュータが本当に使うものになるとするならば、埋めなきゃいけないんですけど、それをきちんと押さえていかなきゃいけませんねということなんです。それを言いたくて、こういうことをやっていると。
 アメリカを見ていると、アメリカ、欧米ですね。ディーウェーブとかも含めて、そろそろこれが物理の世界の話からコンピュータサイエンスという、コンピュータサイエンスの世界に少しずつ染み出してきているかなと。そういう人たちがいかに使うかというか、どこまでできるか、できないかということをオープンにしながら、皆さん、寄ってたかっていろいろ検証し始めているなという状況があると思っています。それに対して、我々もそこをきちんと立てていかなきゃいけないということを思っているところです。
 日本でもいろんな動きが、東北大学さんとかいろんなところでやっぱりそういうことをやるということを、慶應大学さんもそうですけど、そういう動きもありますので、それとも連携しながらこういうことを提言して、もっともっとここも促進していかなきゃいけないということを考えています。
 これが我々が今、CRDSで考えている4つのテーマ、今年度のテーマで、まだまだ具体的にどういう出口を見据えて、どういう提言をしていくかということに関してはまだまだ不確定な部分が多くて、これから先生方、いろんな方々にヒアリングを掛けたりしているんですけど、そういうことも含め、あるいはワークショップをしたりしながら、そういうことの決断としてどういうところにどういうふうに持っていくかというのを考えています。
 早口でしたけれども、この4つを今、我々としてやっているということで、もしこのテーマでこういうアプローチの方がもっと建設的なんじゃないかとか、生産的になるんじゃないかとか、ここはもうなかなか掘っても難しいよとか、そういうコメント等ありましたら、是非きょうお願いしたいなと思っております。
 発表は以上でございます。ありがとうございました。
【北川主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの御発表を踏まえまして、委員の方に御意見を頂けたらと思います。発表に関連したことは何でも結構ですので、よろしくお願いします。はい、どうぞ。
【瀧主査代理】  瀧の方から質問させていただきます。AIソフトウェア科学のところですけれども、テスト用データ集を作って試験するというお話ですが、例えば今のディープラーニングのもので学習したものを正しくテストできるかというのは、ちょっと疑問だと思うんですね。というのは、もともとロジックじゃないものを作っておりますので、従来の発想でテストして、正しいものが出る範囲に押さえ込んでしまうと、それはもうロジックでできてしまうんじゃないかという話がありますので、それを超えている部分のテストが実際にはできないと思うんですが、どうでしょうか。
【木村JST-CRDS上席フェロー】  御指摘のとおりだと思うんですけど、我々が考えているのは、これもまだ議論している最中なんですが、従来の、さっきの演繹的なシステムとして考えたときのデータ的な検証というのは、瀧先生おっしゃるように、なかなか難しいのかなと思っていて、例えばこういうときの信頼度のレベルとかそういうのを少し言えないかなというのを少し考えているんですよね。つまり、現状では100%とか95%とかそういう話をしがちですけれども、何かこのレベルだと、ここまでは行けそうだと。今回、60%ぐらいは何か確度があるよとかですね。そういう尺度を持ち込めないかなとか、100%がイコールオーケー、100%オーケーではなくてというようなことを言えないのかなということをちょっと。だから、そういうことです。
【瀧主査代理】  はい。分かりました。
【北川主査】  いいですか。ただいまの件に関してはよろしいでしょうか。
 それでは、安浦先生。
【安浦委員】  今の御質問とも関係するんですが、6ページのところの解釈可能AIとか、あるいはその次のページでは、機械学習とロジックの組み合わせでしかけを作っていくということ。これをどちらでやるにしても、その次のテーマの社会システムとして使っていくときの社会のアクセプタンスがどう働くかという問題が一番重要なポイントで、端的に言えば、PL法で取り締まれちゃうと、みんな怖くて製品を出せないという、そういう状況の中で、じゃ、社会側もPL法を緩める形で何か対応していくのかというような、その辺の話は議論されているんでしょうか。
【木村JST-CRDS上席フェロー】  それはそうですね。AIソフトウェア科学のところと、社会システムの重なった部分だと思うんですけど、こういう今のようなAIソフトウェアみたいな、今回ここで議論しているような話を社会に本当に実運用していくためには、先生おっしゃるように、少し社会の需要度と言うんですかね、どこまで需要されるかも含めて考えていかなければいけないし、その社会システムデザインの中で、いつもいつもシステムが社会に受け入れられるということだけが尺度じゃなくて、受け入れるためには社会システムを少し制度的に、あるいは社会需要度も含めて、少し変わっていくべきだということも含めて、提言というか、そういうことも交流に入れていかなければ、本当に極端な例だと、今のPL法を盾に出されると、やっぱりなかなか企業側としては正面切って使うのはちょっと躊躇しちゃうのかなというようなところはあると思うので、そこはその辺のところも含めて、我々自身もどこまで共用するかも含めて、そういうことを変えていくというところ。上から目線ですけど、何か考えていかなきゃいけないのかなというふうには思っております。
【北川主査】  ありがとうございました。
 土井委員、どうぞ。
【土井委員】  ありがとうございます。今のお話に絡んだことと、別の件と2点、少し教えていただければと思います。今のお話にも絡むのですが、社会システムのところで、CPSのシミュレーションみたいなそういうイメージで書かれているんですけれども、このときに一つ大事なことは、この中に人間が入るということなんですよね。そういう意味では、再現性というのが非常に難しいところで、人間のどういう行動の要素を入れていってシミュレーションしたらいいのかと。エージェントとかいろんなことでやっていますけど、今までのエージェントは、結局、実空間との検証をしていないので、だから、どういう形の実空間との検証でオーケーとするのかみたいな、そういう話とか出てくるんだと思います。
 あともう一点は、データもいろいろなところが集めたデータを持ってきて、検証していかないと、シミュレーションしていかないといけなくなるので、そうすると、データの精度とか、みんな違っているわけですよね。ですから、そういうものがどこのシミュレーションが、アルゴリズムが間違えているかという、正しいかという検証だけではなく、データの確かさみたいな話も入ってくるので、すごく複雑な話になってくるかと思うのですが、ただ、そういうものを日本だけでやろうとしても難しいのではないかと思うので。
 例がいいかどうか分からないんですけれども、天文だと、ARMAを建てて、みんなで共同でバンと天文台を作って、それを交代で使って、データが得られたものは、1年後にはほかの人たちも使えるみたいな、そういう先行者の利益も考えつつ、オープンにしていくというのができていますよね。何かそういうような形でいろいろな国が協力して、こういう社会システムを作っていくようなことをやっていかないと、一国で固まってやろうとしても、すごく難しいのではないかなという気がするんですけれどもというのが1点目です。
 2点目は、量子コンピュータに関してなんですが、量子コンピュータも今ここで書いていただいているのは、ハードウェア的なお話と、あと、アルゴリズムのお話が主になると思うのですが、後の方でお話があるかと思うんですけど、ポスト「京」のところで、今回はCo-designというのをやっていて、実際にスパコンを使う方たちが並行してデザインをしているということで、すごく使い方のイメージがクリアになって、進んできているんですね。
 量子コンピュータはそういう意味で言うと、インプット、アウトプットと、データが量子状態になってないといけないみたいな、じゃ、そういうところの変換はどうするんだとか、そういうのに合わせられる課題というのは何なの? みたいな、今までサイエンスのところでいろいろやってきた、いろいろな連結決算とかそういうのがそのまま持ち込める世界ではないですよね。だとすると、この量子コンピュータのユーザというのは誰なのかみたいな。お金があるところはバンバン作ればいいと思うのですが、そうではない日本が作っていくときに、作ったけど、誰が使うか分からないというやり方ではなく、きちんとこういうところで絶対、量子コンピュータを使わないといけないんだというところを見定めて作っていくということも、すごくその人たちが持っているデータをどこに、どうやってここに入れ込んで、そのネットワークとうまくつないでやっていくかみたいな、そういう議論をしてやっていかないと、作ったけど、帯に短し襷に長しみたいな、個々の部品はあるけど、誰もつなげようとするウィルがないとか、そんなふうにならないような工夫が必要なんじゃないかというふうに思うんですけど。
 随分先の話だから、放っておけばどうにかなるよという考え方もあるかもしれませんが、ニッチに日本が少しでも勝とうとすると、何かもう少し考え方を変えないといけないのではないかなというふうに考えておりますが、いかがでしょうかというのが2点目です。済みません。
【木村JST-CRDS上席フェロー】  最初のコメントで、社会システムデザインをもう少し、1国でやるのではなくて、もっとインターナショナルと言うんですかね。もっといろんな方々も英知も含めてやったらどうかというコメントだと理解しました。確かにそのとおりで、何かそういう仕組みがあって、皆さんがそこで議論しながらやっていくというのは一つの方法論だと思います。
 私もアメリカに行ってみたり、ヨーロッパへ行ってみたりして、いろいろこういう分野の方々と議論をすると、アメリカの人は随分とプラグマティックというか、一点突破型で、もうちょっと言うと、自由放任主義的なところで走っているところがあって、こういうところに対して、例えばマイクロソフトもフェイスブックもいろいろ叩かれている面もありますけど、グーグルも一部の人たちはこういうことを非常に注意して、懸念しながら、マイクロソフトもそうですけど、やっているんですけど、それが彼らの組織全体としての総意かどうかというのはよく分からないなというのが一つというのと、それから、ヨーロッパはヨーロッパでいろいろやっていますけど、やっぱり彼らは個人主義が非常に強いので、こういうところに対してどのくらいコミットするかというところが、見方と立ち位置とアプローチの仕方が随分、その3極で随分違うのかなというのは、私自身、実際会ってみて、感じています。
 なので、それはそれで一つの考え方で、そこをどうやってまとめていくのかというのが、こういうITの世界というのはもう国境はないですから、その中でどういうやり方で、どういう合意を取っていくのかというのも一つのテーマかもしれませんが、少しそこは我々としても戦略を持って、提言してやっていかないと、下手すると数で押し潰されてしまいかねないというのはちょっとあるかなというのが一つあります。
 それから、量子コンピュータに関してはおっしゃるとおりで、アメリカのああいう会社みたいに、一国の科学技術予算に匹敵するようなお金を使って投資をやっているところと、我々がやるのは少し、正面切ってやるのはなかなか難しいのかなと思って、戦略が必要で、やっぱり先生が御指摘のように、量子コンピュータというのは必ずしも汎用ではないと思っているので、ここが強いんだというところを見定めて、例えばキラーアプリと言うんですかね。平たく言うとそうかもしれませんけど、ここだったら絶対に量子がうまく動いて、コンベンショナルな、今、我々が持っているものでは勝てないんだというところを見つけて、そこに注力していくんだと思うんですね。
 それに対してどういう技術が必要で、どういうハードウェア、ソフトウェアスタック、ハードウェアスタックが必要かという感じでまずやってみるのが成功に近いんじゃないかなと。どうしても全方位的にやるとなかなか成果は見えづらくて、何となくやっている人が疲れちゃうんですけど、一点突破でガッと行くと、やっぱりやっている人だって元気が出るし、それを一点突破でやって、そこを横展開に広げていくというのがいいんじゃないかなというふうに個人的には思っています。
【土井委員】  是非よろしくお願いします。
【北川主査】  今の量子コンピュータのお答えに関連すると、我々が見る応用例というのが割と限られていますが、どういうところに有効かというのは大体調べた調査みたいなのはありますか。
【木村JST-CRDS上席フェロー】  何となく我々のレベルではこんなところかなというのはボヤッとはあるんですけど、具体的にこことここと言われても、まだまだそこまでは行けてないかなというのが正直なところだと思います。
【北川主査】  ありがとうございます。
 八木委員。
【八木委員】  2点お伺いしたく、1つ目は、この調査の中で、データに関することは、評価に近いところしか出てきていないが、機械学習では、どういうデータがあるかが価値を決めていると思います。データの価値に関する議論というのがどれだけ進んでいるのか、日本がうまく勝つためにはそこしかないような気がします。
 それから、2つ目は、アメリカとヨーロッパでは、データに対するスタンスが違います。アメリカは、グーグルにしても、自由に利用しているかと思います。一方、ヨーロッパは、データポータビリティの話が進んでいます。
【木村JST-CRDS上席フェロー】  GDPRとか。
【八木委員】  データの扱いが厳しくなってきているが、今回の調査には、そのような観点の議論がないように感じますが、調査されている中でどう考えておられるのか、教えていただきたい。
【木村JST-CRDS上席フェロー】  データがこの辺の成否を決めるというのはかなり、かなりというか、ほぼ正しい、完璧に正しいと思っているんですけど、データのその辺をやるというのは結構難しいんですよね。正直言うと。なかなか使う立場によって、データに価値があったり、なかったりするのもあるし、それから、欲しいデータが必ずしも手元になかったりするわけですよね。本当の本当のデータというのは企業が全部持っていたりしたりして、なかなかそういうところにまで踏み込んでいくのは難しいのかなというのは思っていて。
 昔、余談になってしまうかもしれませんけど、そういうところをデータを集めて、皆さんがいろんなことをやるようなセンターでもあるといいなとか、冗談半分で思っていたりするんですけど、我々はそこまで手が出せてないですね。データは、本日の発表の4つの中では、データそのものの性質とか精度とかそういうものに関しては余り踏み込んでなくて、それはあるものというか、そういうのがあったときにどうするかというレベルで今、議論はしている。そういう御指摘は正しいと思うので、ちょっと考えさせていただきたいと思います。
 もう一点は何でしたっけ。
【八木委員】  一番大きいのはデータポータビリティの問題があり、個人情報も含むデータの扱い、データ漏えいがあったときの賠償額の仕組など、世界では、すごく激しい動きがある中で、どう議論されているのか。
【木村JST-CRDS上席フェロー】  一つは、その社会システムデザインの中で、データの扱いをどうするかというところを考えるというのが一つのテーマかなと、本日御説明した2つ目のテーマですね。その中で、一つ考えてみるというのはあると思います。ただ、データというのはおっしゃるとおりで、基本的には個人に帰属するというふうによく言われたりするんですけど、ただ、それだけをやってしまうと、世の中の進歩を、逆に期待させるようなことがあって、データというのもインセンティブと言うんですかね、例えばこういう自分にメリットがあるならば、ここまで僕は出してもいいよとか、そういうところもあったりして、そこは世間の、世の中の合意が、そういうのがあって初めて生きるところだと思うので、そこはそういうところまで持っていくにはもう少し時間が掛かるのかなというのは、ちょっと私、個人的には思っているんですけど、むしろそこはもし御意見あれば伺いたいぐらいなんですけれども。
【北川主査】  では、先に有村委員。
【有村委員】  調査の結果を大変興味深く伺いました。質問ですが、人工知能(AI)のように、学術と産業と社会が相互に関わることで、現在も変化しつづけている新しい研究分野を、組織や国がどのように進めていけば良いかに関して、以下の二点を質問します。
 二つの質問は関連しておりまして、第1の質問は、機会学習や人工知能のように、産学官の研究コミュニティで互いにバラバラに、さまざまな研究課題について自発的に研究が進められる分野において、組織や国はどのように研究促進をできるのかという点です。第2の質問は、研究課題の重要性は認識されているが、現時点ではまだ、技術の明確な定義や技術開発の有望な方向性が見えて来ていない場合に、その研究開発をどのように導くべきかという点になります。
 例をあげると、まず第1点に関して、先にCRDSの方がご発言されたように米国における情報科学、とくに人工知能の研究開発は、確かに産学が混在で好き勝手に進めている傾向があります。その一方で、その中で産学の様々なコミュニティや団体が、今後その人工知能技術を発展させていく上の共通の問題を認識し、自発的に解決するために議論をしていこうという動きが自然発生的に生まれてくるという強さがある。例えば、スライド5ページの「AIの公平性」(Fairness in AI)は、最近注目を集めている研究トピックで、人工知能技術を実際の社会で適用するとそのままでは不都合な場合があるので、それを是正し防止する技術をこれから人工知能に組み込んで行こうというものです。これは、政府や業界団体のトップダウンの主導ではなく、産業界における人工知能技術の実応用から種々の問題点が浮かび上がり、これを乗り越えるために、産学の種々の団体や研究グループが、いくつかのトップ国際会議でチュートリアルや招待講演を開催して議論したり、それを解決すための研究活動を行なうというように、産学の自発的な研究活動が行われています。このような在野からの自発的に発生する研究課題をどう拾い上げていくかが、研究促進のこれからの課題だと思います。
 第2点については、よく似た例ですが、「AIにおける説明可能性」という研究トピック問題を例にとって説明します。これは、スライド6ページに出ていて、人工知能システムが計算した結果を人間にどのように説明するかという問題です。深層学習の予測結果は、従来の予測システムに比べると精度は非常に良いのですが、一方で、人間が見ても何故その結果が出たのか、何故それで良いのかはわからない。しかし、人間が予想システムの結果を使って意思決定したり、予測を修正したりするときには、一種の説明が必須で、人工知能を社会で応用する上で重要な課題です。
この「説明可能なAI」は、誰が言い出したわけでもなく、深層学習の成功と適用の広がりの中から、研究コミュニティで自然に議論が広がり、その重要性が広く認識されるようになったものです。その一方で、現状では「AIの説明可能性」に関して、それがどういうもので、今後、どのような定式化が可能で、どういう方向に研究が進むかは皆目見当がつかない段階で、いろいろな研究グループや組織が「説明可能なAI」について勝手に研究をしています。このような技術の進展により、自然発生的に成長してきた研究開発課題を、国や組織の制度の中で促進していくかは慎重に考えないといけないと思います。
先ほどのお話では、研究促進は一点集中で行くべきだという御意見があり、そのこと自体は私はまことに正しいと思います。ただし、誕生して成熟に向かっている或る科学技術が生まれ、成熟し、応用される一連のライフサイクルを考えたときに、初期のその方向性が見えてくる以前での個別のバラバラな努力による探索の段階と、中期の方向確定の後で研究を深化・発展させる発展段階、研究終期に成果の実用化を目指す応用段階では、自ずから組織や国による研究促進の方略がことなるように思います。
質問をまとめますと、ある研究トピックについて、初期の段階の重要性は認識されているが、具体的な研究方法の合意がない場合に、どのように戦略目標や、研究の仕組み、社会制度を設計することで、研究進展を促進できるとお考えかというのをお教えください。
【木村JST-CRDS上席フェロー】  そういうのをやるべきだというのを提言しようと思っていて、何か答えを期待されているように思うんですが、非常に難しいですね。我々も実はそんなに明確な答えは持ってなくて、まだ試行錯誤の状態なんですけど、ただ、ここでの一番大きな認識は、そういうことがクリアになっていない状況で、応用がもう先走ってしまっているということに対して、まず警鐘を鳴らして、そこには、ではどういうふうにそこを解決するにはどういうアプローチの仕方があるんだろうということまでを、少なくとも我々は言わなきゃいけないというふうに思っていますね。
 そのアプローチしてやった結果としてどういうふうにやるべきだ、どういう技術をやったらこうなるというところまでは、今のところ、我々はまだ正直言って、まだ解を持っていないですね。
【有村委員】  分かりました。ありがとうございます。
【北川主査】  まず高安委員で、その次お願いします。
【高安委員】  済みません。さっきのデータの利活用のお話に戻らせていただくんですけれども、データの件、これはコメントだと思っていただいていいんですけれども、最初から研究者とアプリケーションを別々のところを設計すると、研究者は研究メーンで、アプリケーション向きではない、具体的な問題じゃない方向に進みがちだし、アプリケーション、企業さんの方はデータを出すモチベーションに欠けてしまうので、本当は最初から企業とマッチング、研究者とマッチングしているふうになって、活動させる。だから、最初からデータがあるグループと研究者グループとデータがマッチングしていて、その中のニーズに応えていくというような方法を取ると意外とうまくいく可能性もある。それは企業の中のニーズもあると思うので、それに応えられるような方向性に行く可能性があると思うので、是非そのマッチングの部分にも力を入れられたらいいかなと思います。
【木村JST-CRDS上席フェロー】  ありがとうございます。そのとおりで、こういうことをやるときには、ソフトウェア工学、さっきちょっと申し上げましたけれど、ソフトウェア科学ですと、やっぱり学問としてのソフトウェア工学をやっている方々と、企業で我々検証、いろんなコンピュータシステムとか、ソフトウェアの検証をやっている部隊というのは、必ずしも一緒にやっていないんですよね。関係が必ずしも密になっていないところがあって、独自にやっているんだけど、企業は場当たり的と言うんですかね、ここまでやったから大丈夫だろうみたいなところまであったり、それを理論的に追及されると全然答えられなかったりするわけですよね。逆に、大学の方々がやられた論文を読んでも、実際これでできるのかなみたいなことを思ったりすると。
 なので、例えばそういうところを一緒にプロジェクトを何かスタートするときに、例えば産学連携でやることを条件にするとか、そこに問題設定をうまくして、そこで何かやるような仕組みを作ると、かなり、少なくともそこに関しては解が出るし、それがどこまで成功したかも分かるし、検証もできると思うし、そういうアプローチの仕方がいいのではないかなと。問題設定をうまくして、そこに企業と大学が知恵とデータを持って集まるというのがいいと思います。そういう提言もしていきたいと思っています。ありがとうございます。
【北川主査】  それでは、次は、上田委員、お願いします。
【上田委員】  今、データの話が結構議論になりましたけれども、一つ重要なのは、そのデータの品質管理というような研究分野、これは非常に重要になってくるんじゃないかなと思いますね。日本が製造業で世界を席巻したのは、クオリティコントロールというもの。非常にそういう分野が産学で浸透したと。
 この前、私は別な話を聞いたんですけど、いわゆる著作権法47条7項ですかね。日本だけですよね。今、いわゆる著作権の有するデータでも、データ分析という名目では自由に使えると。つまり、ディズニーの題材であろうが、何であろうが、日本ではデータ分析が目的なら全世界のデータが使える。これは海外の企業が絶対関心を示すはずです。つまり、日本に会社を作って、データ分析のベンチャーを起こすのでは。日本は、機械学習パラダイスと言われるような法律ができたのに、その品質をきちんとコントロールできなかったら、結局ろくでもない分析結果がいっぱい出てくることになりかねません。ここに書いていますテスト用データの云々だとか、学習済みデータ、あれをどうする、こうするというのは、機械学習の分野でも、アドバーサリアルなデータに関する研究があるのですけれども、生み出されるデータに対する品質をAIで管理していくという、メタな技術がむしろ重要であって、それがないと、有用な分析ができないことになります。繰り返しになりますが、日本では著作権法に関するせっかく良い法律ができたのに有効利用できないということになると意味がないので、データの品質管理が重要だと思います。
【木村JST-CRDS上席フェロー】  どうもありがとうございます。著作権法に関しては、多分あれは日本独自で、本日来られてない先生方がすごく頑張られたという話も聞いています。なので、そういうところも含めて貴重なコメント頂きましたので、そこをプロポーザルの提案に含める形で持っていきたいなと思っています。データをAIで、メタなレベルで考えるというのは非常におもしろいと思うんですが、その限界というのはないんですかね。
【上田委員】  いや、限界がないというか、データの補正は可能かと思います。実は気象庁とそういう議論をしているんですけどね。アドバーサリアルみたいな悪意のあるデータの加工の問題もありますけれども、センサーデータそのものにも結構ノイズもあります。こんな値は明らかにおかしいというような変な値を出すこともあるわけですね。それをそのまま使ってしまうとよくないので、いろんな手法で予測したものをどう統合するかが重要です。一つのセンサの値だけをどう品質管理するかは難しいですけれども、いろんな情報を統合するというのがAIとか機械学習の得意わざでもあるので、それはケース・バイ・ケースでいろいろやっていくのかなと思いますけど。むしろそういう研究をしないといけないということです。
【木村JST-CRDS上席フェロー】  ありがとうございます。また別途オフラインでも議論させていただけるとありがたいと思います。ありがとうございます。
【北川主査】  それでは、樋口委員。
【樋口委員】  7ページに示されています研究開発課題の例に関することなんですが、これは結構よく皆さん方、認識されているようなものを整理されたものだと思います。それに入るかもしれませんが、あるいはDARPAの解釈可能AIに関係する、あるいはその中でやられていることに関係しそうなことになります。深層学習のような、あのような非常にディープで複雑なネットワークが本当に必要なのかを、数学、あるいは数理の観点から考える。それらをもっとシンプルなものに置き換えるとか、あるいは学習させる前から、シンプルなネットワーク構造を何か理論的にいろいろ見つけていくような研究開発もあるのでは。結果として、それらが解釈可能性にもつながっていくんですけど。そういう研究開発も重要ではないかと私は思うんですけど、ここの中に全然出てないんですが、そういうことは議論されてないんでしょうか。
【木村JST-CRDS上席フェロー】  現状ではまだそこまで深くまでは議論はできてないところがありますので、きょう、貴重な意見を頂きましたので、今後は考えていきたいと思います。ありがとうございます。
【北川主査】  はい。栗原委員。
【栗原委員】  私は材料の研究者でして、情報分野は全く素人なのですが、材料科学においても情報に対する期待がすごく大きくて、いろいろな取組がされています。今ここでは対象として、社会現象が主に取り上げられているのですが、いろいろなギャップをつなぐために情報を使おうというこの流れと科学の研究を、どういうふうにつないでいくのかなと期待しています。例えば、今、上田委員が言われたようなデータの品質というようなことでは、サイエンティフィックな対象は品質にはブレが少なかったり、あるいは論理的に説明できる場合が多いと思うのです。だから、そういうものを一つのケースにして、いろいろな論理的な組み立てをテストしたり、開発していくというのももしかすると他の分野のあいまいな場合と似たものがあるのかもしれないと思いました。そこのところが私は素人なので、大分違うんだよと言われるのかもしれないのですけど。いろいろな分野での期待と、そのツールとしての情報というか、論理科学としての情報の今後の開発というのはどういうふうなつながりにあるのかなと思って、このシートを拝見しました。
【木村JST-CRDS上席フェロー】  ちょっとお答えになっているかどうか分かりませんけど、本日ここで説明させていただいた4つというのはどれも、先生がおっしゃるように、社会との関わり合いが非常に強い問題だと思っているんですね。なかなかこれを提案、プロポーザルというか、技術として繰り出すというのはなかなか難しい面もあるんですけれども、個人的な感想になりますけど、技術がいろんな社会の人間の心と言うと大げさですけど、そういうところまでだんだん染み出してきている。単に技術が技術としてのツールとして使うというレベルから、少し社会そのものに影響を与え始めてきているという認識があって。
【栗原委員】  はい。それは本当にテレビ番組もよくありますし、そういうのは実感するところですけれども。
【木村JST-CRDS上席フェロー】  そこに対して、では情報に何ができるんだと。どういう立ち位置で、何をすればいいんだと。そういう現象を、また情報技術で解決できるのかどうかも含めてやっぱり考えていかなきゃいけないと。そのための幾つかの意見として、本日はこういうソフトウェア科学もそうですし、社会システムデザインというすごく大きなテーマをやっていて、個人的にはどこに落としどころを見つけるかというのはなかなか難しいところもあるんですけど、本日、八木先生、上田先生のコメントを頂いて、もう少し近いところから攻めていくべきなのかなというのも、今、話を聞かせていただいて思ったというのもあって、そういうところをきちんと攻めていくのかなと。
 私も一応技術者なので、技術でどこまでそれが攻め切れるのかなというのと、それで、攻め切れると思った瞬間に、それはひょっとすると傲慢な発想になるかもしれないし、そこは少し考えていかなきゃいけないのかなと思っているところです。お答えになっているかどうか分かりませんけど、問題意識としてはそういうのを持っていて、今、進めているということです。
【栗原委員】  ありがとうございました。
【北川主査】  ありがとうございました。大体予定の時間になりつつありますが、せっかくの機会なので、今年度は4つ考えるということでしたが、今後こういうことも考えてほしいというようなことがあれば御発言頂ければと。安浦先生。
【安浦委員】  この4つの中で流動的にブロックチェーンだけがえらくスペシフィックになっていて、もう少し広い意味での、全体でシェアしつつセキュアなデータの持ち方という話をやりたいんだと思うんですけど、ブロックチェーンという固有名詞を出していいのかというのがちょっと気になります。
 もう少しその辺の言葉を選んで、ブロックチェーンが唯一の技術じゃないと思いますので、そこの表現を考えていただければという点と、もう一つは、人間との関係、社会との関係ということであれば、出口のところに是非、教育というキーワードをどこか入れておいていただきたいと思います。要するに、情報科学と教育のぶつかり合いが今からの一番のポイントになってくるんじゃないかと思いますので、その辺を考えていただければと思います。
【木村JST-CRDS上席フェロー】  ありがとうございます。教育に関して、私の思いは、やはり人材育成だと思うんですよね。やはり我々、技術に偏り過ぎて、物事を進め過ぎているかもしれないので、もう少しそうではない、社会的なところも含めたことを図るような人材育成も必要だと思うし、我々自身もそういうふうに変わっていかなければいけないんだろうなと思うし、そこにそういうことをやることによって社会の受容性、どこまでがどう受容されるかも含めて、皆さんのリテラシーが上がっていくのではないかなと思うので、そこは我々自身もそういうところにももう少し貢献できるところがあると思うので、やっていきたいなというふうに思っています。
【北川主査】  先ほどデータクオリティの品質管理の話があったんですけど、その第3の科学、第4の科学となってくると、サイバーとリアルのつなぎのところが大事になってくると思うんですが、その辺の観点で何か考えていただけないかなとちょっと考えました。
 じゃ、最後に八木委員からお願いします。
【八木委員】  細かいことかもしれないですが、サイバーと実世界という観点で捉えたときに、今書いている重要テーマのところで、コンピューティングのアーキテクチャがあって、ビッグデータ、人工知能とあって、あとロボティクスは社会とのインタラクションという部分だと思いますが、これらに加えて、パーセプションという観点が多分ないと、情報がサイバー空間に入ってこないはずです。パーセプションは実世界を扱う上で非常に重要な要素だと思うんですね。
 こっち側の革新的コンピューティングの方は、そういう意味で言うと、分析から画像とかメディアとかの情報を取ってくる部分は入っていますが、こっちの前のところは入っていないなと思って見てました。
【木村JST-CRDS上席フェロー】  パーセプションというのは思い付かなかったですか。済みません。だから、そこは、要するに、リアルから、フィジカルからサイバーにどうデータをうまく取り込んでということですよね。
【八木委員】  そうですね。ただ、実際にはいろんなメディアがあると思います。音声もあれば、言語もあるし、それから、画像もあるし、いろんな情報が実世界から入ってこないと、サイバーの世界が生まれないということです。
【木村JST-CRDS上席フェロー】  分かりました。そこはそういうイメージでは見てなかったですね。分かりました。どうもありがとうございます。
【北川主査】  どうもありがとうございました。まだまだいろんな御意見あるかと思いますが、まだ重要な議題が残っておりますので、このくらいにしたいと思います。
【木村JST-CRDS上席フェロー】  ちょっとやわらかいテーマで説明させていただいて、皆さん方、食い足りない側面もあったかもしれませんけど、きょう頂いたコメントを参考にさせていただいて、きちんとテーマとしてまとめさせていただきたいと思って、またいろんなところでコメント頂ければと思います。きょうは本当にありがとうございました。
【北川主査】  CRDSの方でも御検討いただきたいと思いますが、同時にこの委員会でも今後の議論を続けていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、3番目の議題に入りたいと思います。ポスト「京」のシステム開発の中間評価についてです。事務局からお願いいたします。
【坂下計算科学技術推進室長】  それでは、説明をさせていただきます。資料が3-1と3-2でございます。3-1が横長、3-2が縦長の資料でございます。先に3-2の縦長の資料の4ページを御覧いただければと思います。ポスト「京」の開発という、縦の資料ですが、横のページでございます。
 もう既に御案内のとおりでございますけれども、ポスト「京」の開発、2014年から進めてきておりまして、基本設計、試作・詳細設計と来まして、来年度、2019年から製造・調整というところに入ってまいります。これに向けて、現在、中間評価を進めているところでございます。
 この委員会で改めて申し上げるまでもないことではございますけれども、シミュレーションによる様々な社会的課題の解決、あるいは、今、議論がありましたようなAI開発、データ科学といった情報の取り扱いに関する、技術と商品に関する技術開発、そのいろんなものを加速していくために、高速のスーパーコンピュータというのはもう情報技術の基盤として不可欠なものとなっております。
 この4ページにございます背景・課題というところにございますように、現在、理論、実験と並ぶ第3の手法として、シミュレーションの強力なツールでありますし、また、ここに、これは昨年からの資料でございまして、記載ございませんけれども、現在、非常に話題になってきているビッグデータ、AIといったデータ科学、その第4の科学。この第4の科学と第3の科学の融合、連携が重要というところでございまして、このポスト「京」は、そのどちらにも基盤として重要な役割を果たす、先導的な役割を果たしていくものというふうに考えております。
 事業の目的、もう御案内のところだと思いますが、真ん中あたりでございますけれども、2021年から22年の運用開始を目指しまして、世界最高水準の汎用性のあるスーパーコンピュータの実現を目指すこととしております。その中身としまして、システムとアプリケーションを協調的に開発しまして、最大で「京」の100倍のアプリケーション実効性能を目指すということになっております。
 資料の方でございますけれども、3-1の方に移っていただければと思います。こちらの3-2の5ページ目以降にある中間評価表という縦の資料がありますけれども、こちらを簡単に概要としてまとめたものが3-1でございます。
 この3-2の中間評価票は、この6月の、現在この今年の6月にHPCI計画推進委員会と、それから、システムワーキングの合同ワーキングで議論してまとめたものでございますけれども、現在、実際にこれから使用するCPUの性能の評価を実施しております。その評価結果を9月の初旬のHPCI計画推進委員会システム検討ワーキンググループで確認をしまして、この中間評価票の(案)を取るというのが今後の予定になっております。
 したがいまして、本日の情報科学技術委員会におきましても、この中間評価票を6月にまとめたこの中間評価票の内容を御確認、御審議いただきまして、改めて9月にCPUの評価結果を踏まえたHPCI計画推進委員会の評価結果をまた御報告して、最終的な情報科学技術委員会としての評価結果を確定していただくというのが今後の段取りになっております。その際には、先ほど最初に規定の改正をいたしましたけれども、本日の議論の状況によりまして、書面審議でお願いするということも考えたいと思っております。
 それでは、3-1を1枚おめくりいただきまして、1ページですけれども、この評価結果につきまして、実はアプリケーションとシステムとポスト「京」の開発には両方の側面がありますけれども、アプリケーション開発の方は、本年の3月にこちらの委員会で既に御確認をいただきまして、その後、4月に研究計画評価分科会の方で既に確定をしております。本日は、システムの方でございますが、このシステムにつきまして、HPCI計画推進委員会、6月のところでは、委員の皆様の総意としまして、開発目標について達成の見通しが得られており、ポスト「京」の製造・設置を着実に推進することが適当という御意見を頂いております。
 その次の2ページ。これが必要性に関する項目でございます。こちらも繰り返しになりますが、Society5.0を世界に先駆けて実現するために、スーパーコンピュータは基盤として不可欠であるということ。それから、この計画が目標としておりました「京」の100倍アプリケーション実効性能、それから、30~40メガワット以下での消費電力、これを達成する見込みがあるというふうに判断できるということ。
 それから、3つ目の丸ですけれども、画期的な成果を創出していくために、ユーザの利便性向上ですとか、ポスト「京」システム仕様の情報公開がなされているということが重要でございますが、こちらの方についても、ここに幾つか項目ありますが、そういった取組を進めているということが評価をされております。
 それから、内閣府の南海トラフ地震の被害予測などにも活用されております。
 また、今、量子コンピュータの話も先ほど議論ございましたけれども、こういった発展に必要となる研究開発にも寄与し得ると。将来的には相互に補完的に課題解決に貢献することが期待されるというふうにまとめております。
 次、3ページ目でございます。こちらは有効性でございます。有効性の1つ目の丸ですけれども、非常にこのポスト「京」の大きな特徴としまして、CPUアーキテクチャの設計者とアプリケーションソフトウェアの開発者が共同・協調して最適化を行うCo-designという取組を行いました。これによりまして、最適化の方針が得られて、性能が上がっているということが評価されております。
 それから、2番目ですけれども、「京」のときとは異なりまして、ポスト「京」では、Armの命令セットを使っております。これによりまして、そのArmのエコシステムを構築して、今後、ソフトウェアの充実が図られていくということが期待されております。
 それから、3つ目の点でございますが、FP16、半精度の計算のサポート、それから、非常に高いメモリバンド幅、スケーラビリティ等を実現しているということで、AI分野のアプリケーションにつきましても、現在、主流でありますGPUと比肩する性能を引き出すことができる可能性の見通しが立ったということでございます。
 次、4ページ目でございます。こちらは効率性ですけれども、コスト削減の努力ということで、消費電力の最適化等の取組がなされているということを確認いただいております。
 それから、2つ目でございますが、これまで理化学研究所が「京」を運転してきたこの実績を非常に生かして、今後、継承して、効率的な運用を実施するということを評価いただいております。
 それから、3番目でございますが、地元自治体の支援が引き続きなされるということ。最後に、様々なレビューをして、PDCAサイクルが適切に機能していると、こういったポイントを評価いただいております。
 詳細は3-2の縦の資料に文字で書いておりますけれども、概要のみ御説明させていただきました。質疑等ありましたら、きょうは理研の松岡センター長と岡谷副理事にも来ていただいております。よろしくお願いいたします。
【北川主査】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明につきまして、何か御質問、御意見ございましたらお願いします。
【瀧主査代理】  瀧でございます。CPUの評価をこれからされるということで、CPU単体の評価というのもありますけれども、クラスター的に作ったときの評価とか、あるいはメモリ効率とかいろんな点があると思うんですけれども、その辺はどういった項目を今、評価されるのかというのが分かりましたらお願いしたいです。あるいは、これは規模の問題が非常に出てくると思いますので、そういう評価内容が、事前に評価できると良いと思いますので、お願いいたします。
【坂下計算科学技術推進室長】  CPUの評価につきまして、先ほど御説明いたしました9月のHPCI推進委員会システム検討ワーキンググループにおいて、その評価項目と評価内容を再度確認するということになっておりまして、そちらについて、こちらの委員会の方にも御報告をしたいと考えておりますけれども、現時点で一部こういった評価をしているということがありましたら、補足的にお願いします。
【松岡理化学研究所R-CCSセンター長】  松岡でございます。この手のCPU開発で必要なベースラインの評価と。きちんと動くかどうかというのがそもそも大事で、これは物すごいデータパスで1回確認しなきゃいけないんですが、これをまずベースラインとしてやり、その後に今、性能評価に移っております。性能評価に関しても、御指摘のように、演算性能、キャッシュの性能、メモリ性能、電力性能、様々なことを基礎性能を継続、基礎ベンチマークで確認した上で、今度は基礎的な、よりプリミティブな、Linpackとかそういうプリミティブなベンチマークを行い、その後に我々がポスト「京」での開発における9つの、いわゆるCo-designアプリケーションというのを設定して、それに関する性能目標、最大100倍という性能目標を設定しておりますが、それらに関する性能ベンチマークというのを行います。
 それは単体のCPUでも当然行いますが、最初に出てくるCPUの数というのはそれほど、生言葉ではないので数は限られておりますが、評価環境としては、少ないノード数ですけれども、実はポスト「京」のチップの中には、統合ネットワークがチップの中に組み込まれておりますので、それをテストする必要があると。というわけで、小規模でありながら、そういうクラスター、統合ネットワークでつながった、そういうクラスターの構成も計算の試験をするということになっております。
【北川主査】  よろしいですか。ほかの委員の方、お願いします。
 では、ちょっとつなぎで。上の委員会に行って説明するときのことを考えますと、それぞれの評価基準の点を聞かれたときで、例えば必要性というのはもう明らかだと思いますけど、評価指標でいうと独創性という指標があります。それに対して、このシステムの中で独創的なところというのはどこというふうに言えるでしょうか。
【松岡理化学研究所R-CCSセンター長】  独創性というか、今、現行のマシン、「京」でございまして、それはまだ運用中でございます。今回、そのポスト「京」を作るに当たって何が新しいのかと。技術的に新しい部分というのが大事で、こちら、資料にも若干書いておりますが、実はCSTIの資料にも書いてあったと思うんですけど、まず一つは、「京」のときと比べても物すごく綿密にCo-designをきちんとやったと。これはなかなか普通のプロセッサ開発でも実はあんまりできないんですが、ターゲットアプリケーションに対してシミュレータ等を、当初は既存のスパコンでは非常に似ているものを使い、その後はシミュレータを、様々なものを開発して、非常にいろんな、ホワット・イフの構成のCo-designを行いまして、これが今回、非常にうまく働いたというのがまず第1点だと思います。
 その産物として、第2点ですけれども、結果として出てきたCPUが非常に競争力が高いものが出てきたと。特に、もちろん演算性能も高いんですけれども、メモリ性能だとか、ネットワーク性能で、ここでは具体的な数字はまだ申し上げられないんですが、8月から秋口に掛けてだんだん公開できていると思いますけれども、同業他社比較で言えば、もう圧倒的な高性能なものが、CPU単位で圧倒的に高性能なものが構築できていると。
 一方、それなのに、今回、ArmというCPUを採用して、非常に「京」と比べても、ソフトウェアのエコシステムという点では、Armプロセッサと年間に、一説によると30個ぐらい作れているので、それだけのソフトウェアのエコシステムがある。なので、そういうものに資することができるし、理由ができたと。
 あと3番目で言えば、「京」、今、シミュレーションとありましたけど、科学技術をサポートしていくためのいろんな手法で、今、やはり第一原理のシミュレーションと、今、例えばAIだとか機械学習に代表されるような経験則的な手法を用いた一種の未来予測というのも、手法として非常に注目を浴びておりまして、今回それを、これを「京」と比べるとはるかにうまくサポートできると。ここのレポートにありましたけれども、普通のCPUでありながら、今のメーンストリームであるGPU並みの性能が期待できるんじゃないかという、いろんなエビデンスがあります。また、それに関して研究開発を行っている。開始しておりまして、通常のCPUでGPUに匹敵するような性能が得られるというところは、ある意味で非常に新規性が高いんじゃないかというふうに思っております。
【北川主査】  そのCo-designのところは非常に優れたところだと思いますが、この評価書の書き方だと、有効性のところに書いてあるんですね。目的を実現する意味の効率性という観点では非常に分かりやすいんだけど、それを超える何かあるという考えなんでしょうか。この文書は松岡センター長の責任ではないかもしれないですが。
【坂下計算科学技術推進室長】  そのあたりの整理をもう少し最終的にまとめるときに書きたいと思いますけれども、ここの評価基準の独創性とか、そのあたりというのがポスト「京」のマシンとしての話ということよりも、そこから出る成果に掛かっているような形で書いているものですから、そういう意味ではCo-designで作ったマシンを使って、それから生み出される成果の独創性ですとか、優位性みたいなところを少し一段階、マシンそのものから、アプリケーションの議論に少し、どうしてもそこが入り込んでしまっているところがありますので、そのあたりの説明の工夫というか、書き方を工夫したいと思います。ありがとうございました。
【北川主査】  あと、ほかの方から。樋口委員。
【樋口委員】  評価のときに既に御説明あったかもしれないんですが、もう少し勉強させていただきたいと思っております。最大で、「京」の約100倍のアプリケーション実効性能とありますけれども、もう少し具体的にはどういうことか。例えば「京」のときに、いろいろソフトウェアが作られましたけど、20本、30本と。同じもので比較するという意味なのか、あるいは“最大でという”、表現が付いているんですけど、これはチャンピオン的なもので言われているのか。このあたりをもう少し説明していただければと思います。
【坂下計算科学技術推進室長】  こちらの100倍というのは、ターゲットアプリケーションというのを決めております。これはアプリケーション開発の方で進めている中にあるものですけれども、アプリケーション開発については、様々な種類の計算なり、そういう適用できるアプリケーションのバラエティはそろえていますけれども、その中で、ターゲットにしているものを幾つか選んでおります。その全てではなくて、やはりその中のどれかのアプリケーションが100倍ということを最大というふうに呼んでおりますので、ただ、それがチャンピオンデータということとは少し意味合いが違って、やはりアプリケーション、そのアプリケーションを動かす速さとして100倍というふうに理解しております。
【松岡理化学研究所R-CCSセンター長】  よろしいでしょうか。技術的に申し上げますと、性能の向上というのは、一つはマシン自身の、逆に性能の主因子となるようなプロパティですね。これの向上というのがまず一番大きなものとしてあります。多くのアプリケーションに関して、この主因子が何であって、これは何十倍だと申し上げると、分かっている人はマシンの規模とかそんなのはすぐ分かっちゃうので、あんまりまだ申し上げられないんですけれども、それらの主因子が実際に本当に数十倍になるんですね。これはなかなかすごいことで、この10年という期間が空いたにしても、このムーアの法則がだんだん終わり掛けて、きつくなっているときに、これらの主因子で数十倍の向上が果たせたというのは、これはなかなかすごいことだと思っています。
 さらに、それに加えて、一部のアプリケーションでは、ソフトウェア上の、よりポスト「京」に適したチューニング等が行われていまして、それで2倍とか3倍の性能向上がやられていると。一部のアプリケーションは、それらを統括すると、100、120倍だとかそういうような性能の向上が得られるというふうになっています。
 ただ、今、坂下さんが申し上げましたとおり、じゃ、ほかは、一部、100倍以上だと。じゃ、ほかは5倍とかそうなのかと。全然そうではなくて、先ほど申し上げたように、やっぱり主因子の部分がそれぞれ数十倍になっていますので、かなり押しなべて相当な性能向上が果たせるというのが今回のマシンの実態で、その一番大きい要因というのはやっぱりCPUが「京」のときと比べて、CPU開発が物すごくうまくいったというのがあると思います。
【樋口委員】  聞きたい点が分かりました。どうもありがとうございます。
【北川主査】  八木委員。
【八木委員】  興味で聞きたいんですけど、8ページ目のところに1兆円のROIと書いてあるんですが、どういうアプリケーションがこの1兆円を特に生み出すと出てきたのかなというのがすごく興味があります。
【岡谷理化学研究所副理事】  済みません。これは少し前にやった調査なんですが、先ほどターゲットアプリケーションの話がありました。9つのターゲットアプリケーションというのをベースに海外の企業にこういうものによって何倍かになったときに、どれぐらいの費用対効果があるのかというのを実は調べてもらった。この会社は実は世界じゅうのこういうROIをずっと調べている会社でして、そこに調べてもらったわけでございます。
 その中で、日本のこれが1兆円を超えるという一番大きな要素は何かというと、命を救えると。災害だとか気象予測だとかああいうところで非常に大きな効果があるというふうに出してきています。それはある意味で、海外の同じようにCo-designをしてやってきたものに比べると、日本は非常に特異的であると。日本がスパコン開発するときに、9つのアプリケーションの中にはそういうものが入っておりますので、そういうものによる効果が非常に大きいというふうに言われておりました。
【八木委員】  この1兆円というのは、災害を未然に防止できるという観点のところが一番大きく効いているということですか。
【岡谷理化学研究所副理事】  リターナブル・インベストメントはもちろん経済の波及効果というところと、それから、どれぐらいセイビングスが発生したかと、この2つの要素なんですが、これはもう公開されているものなので、御覧いただきたいことは分かると思いますが、大きく日本で特徴的だったのは、そのセイビングの部分だという話でありました。
 ちなみに、このROIは、アプリケーションから発生するROIだけでしたので、先ほど来、センター長が話しているCPUそのもののROIは全然入っていません。まだ情報を公開することができなかったので、そこの部分は掲載していません。ですから、機械、マシンによるROIというのは、これにプラスしてあるだろうということは予測されております。
【北川主査】  ほかに何か御意見ございましたら。よろしいですか。
 それでは、どうもありがとうございました。本日のところは以上とさせていただきたいと思います。次回は、スケジュールの都合で、書面審議の可能性もございますけれども、CPUの性能評価結果も踏まえた形で評価結果(案)を御審議いただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、4番目の議題に入りたいと思います。プログラム評価における参考指標(我が国全体の情報を把握する指標)についてでございます。
 まず事務局から説明をお願いいたします。
【邉田専門官】  それでは、資料4-1、4-2を手元に置いていただけますでしょうか。まず資料4-1でございますけれども、これは第64回の研究計画評価分科会の資料でございます。まず個別のアウトカム指標を御議論いただいたわけですけれども、どういう使われ方をするのかというのを改めて御説明させていただければと思ってございます。
 1枚めくっていただくと、研究開発プログラム評価票(案)ということで、様式がございます。最初に、施策名として、研究開発計画における大目標がその下にあると。大目標達成のために必要な中目標の設定根拠。達成状況評価のためのアウトカム指標ということで、そこの施策に特化したアウトカム指標がどんどんここで評価されると。それによって判定を得られるというところでございます。
 1枚めくっていただいて、4ページ目でございますけれども、その2つ目のセルですね。我が国全体の状況を把握するための指標(参考指標)というところで、今まで御議論いただいている各分野の研究内容(サブジェクトカテゴリ)ごとの論文数の推移ということで、これが独り歩きしないようにきちっと推移を見ながら、この分野全体がどういうふうになっているのかというところを見ていく参考指標としておきたいというところでございます。
 4-2に移っていただきまして、これは御議論いただいたところでございますけれども、Web of Scienceのサブジェクトカテゴリ、分類ごとの論文数の推移を共通の指標としておきたいというところでございまして、1枚めくっていただいて、2枚目、2ページ目ですね。各委員会における検討結果として、前回、研・評分科会にコメントを付して伝えたというところでございます。懸念事項についてしっかり伝えて、しっかり使われ方というのを考えてくださいよというところでございます。
 そういう、各委員会からのコメントもいろいろ受けて、しっかりと研・評分科会の中でも消化されたとは言いがたいとは思いますけれども、参考指標として独り歩きしないように、しっかり慎重に使いながらやっていきましょうというところではございますけれども、まずは走りながら、この分野全体の盛り上がりを示すような指標になっているかどうかというのは、これからもやってみて、だめであれば、どんどん変えていくということで、まずは置かせていただければ大変ありがたいなと。しっかりと、Society5.0がどんどん進捗しているという指標そのものがこの委員会のというか、情報科学分野の指標なんじゃないかというふうにも考えるところでございますけれども、そこもしっかり、研究開発というか、検討をしながらもっといい指標を考えながら変えていきたいと思ってございますけれども、まずはこういうサブジェクトカテゴリの論文数で説明をさせていただきたいというようなところが本日の趣旨でございます。
 これが8月20日開催予定ということで、研究計画評価分科会で決定されるというところでございまして、そこにはコメントは付けないでくださいというふうに言われておりまして、各委員会でこういうサブジェクトカテゴリでお願いしますというのを決めてきてくださいというふうに下ろされているものでございまして、いろいろ御意見ございますと考えますけれども、是非まずは走らせていただいて、これからうまく変えていきたいというところでございます。
 指標自体、前回から変更はしてございませんけれども、机上資料として、参考資料として、Web of Scienceのサブジェクトカテゴリについて、また用意させていただいてございますので、ここも足りないんじゃないかというところがございましたら、また御意見を頂ければというふうに思ってございます。
 簡単ですが、以上でございます。
【北川主査】  ありがとうございました。ただいまの説明にありましたように、情報科学技術関係は、特に今考えられている方法で評価されるといろいろ不都合な点があるということはコメントとして前回付けていただいて、同時に、口頭でも言ったんですけれども、結果的に聞き置かれたという感じもあって、次回はコメント部分は削除ということになるようなので、どういうふうに対応することができるかということを御検討いただければと思います。仕方がないので、こういう形で認めて、委員会での審議の中で検討していくか、あるいはほかのいいアイデアがあったら、その辺について御意見頂ければと思います。
 安浦委員。
【安浦委員】  ほかの分野、サブジェクトカテゴリもかなりの部分が情報科学のベースの上に立っていて、この情報科学の中には、数学、統計、確率まで入っているわけですから、ほとんどこれを使わずにやっている学問分野というのはないはずで、これでどこか一つにこの論文はアサインするとやってしまわれると困る。7割はナノテクだから、ナノテクに入れちゃうと。でも、3割はこの情報科学分野の貢献であるというようなものが全部四捨五入されて、うちは取られるだけという形になってしまって、それは評価指標として、それをちゃんと割り引いて、国がきちっと財務省なり、内閣府が各分野についての在り方をそこまで踏み込んで見てくれるならいいんですけど、まさに独り歩きして、その数値だけが独り歩きして、情報科学分野、何やっているんだ。金をこれだけつぎ込んで、「京」も作って、いろいろやって、SINETも作ってやっているのに、何もなってないじゃないかというふうな議論に政治家の皆さんがならないように、是非徹底的に努力していただきたいというふうに思います。
 極端に言えば、一つずつ論文に対して、ナノテク、量子科学、あるいはバイオ、それのコントリビューションのエフォート量を書けというぐらいのことをやって、それのサンメンションをさせていただくというような話だって考えるべきじゃないかと思うんですね。
 今や農業だってIoT農業で、ITを使ってやっている時代で、農業がこれだけ収量上がりましたということのコントリビューションの半分以上は、実は情報科学に起因しているのに、農業をやっている人は、でも、自分はユーザとして使っただけだから、自分が思い付いたんだから、これは農学としてやったんだという立場しか取られないわけですよね。これは非常に情報科学分野の指標として、この数値が独り歩きすることは極めて大きな問題として懸念いたします。
【北川主査】  おっしゃるとおりで、情報科学技術とか数理の貢献の仕方というのは従来と違うところがあって、そこを評価してもらわないと困るんだけど、何か具体的なあれがないと取り入れられないという状況になっているんですね。それをどうするか。
 樋口委員、何かありますか。
【樋口委員】  思いは、委員の皆さん、みんな同じだと思うんですけど、一つの考えを述べたいと思います。企業等々の研究開発の大きなトレンドはマトリックス戦略なんですね。分野横断的なものと、あと、ドメインスペシフィックなものの2軸を立てて、そこのいろんなクロスポイントで、2つの組み合わせが相乗効果を上げたところが、今一番新しいイノベーションの基点でもあり、アウトカムにつながっていくんですね。そういう発想自身がこの評価のところが一番重要で。例えばこのサブジェクトものを、分野横断的なものと、ドメインスペシフィック的なものとに、マトリックスに整理して、そこのおのおののところでどれぐらいの効果があったのかみたいなものを評価すれば、情報科学、あるいはもっと分野横断的なものの評価につながるんじゃないかと。もう世の中の企業がマトリックス戦略に移っている中で、このような評価のやり方というのはどうかなと思います。
【栗原委員】  私は、この上位の委員会にも出ているのですが、皆さんのおっしゃっていることは、どの委員会からも同様の意見が出ています。それで、御参考のためにコメントさせていただきますと、NISTEPでは、領域ごとの相関のようなものを解析しておられるだろうから、そういうものも見ていくのが大事じゃないかという意見が具体的に出ているので、そういうところも続けて、上の委員会でコメントしていったらいいのではないかと思います。また、航空科学技術委員会の5ページの例を見ていただくと、ここは全く言われているものと違うようなことを提案して、それを承認しているので、情報科学委員会として何かこういうものもプラスアルファとして入れたいというものがあれば、積極的に御提案になったらいいのではないかと思います。これはあるのか、ないのか分からないので、例示としてこういうのは参考にならないでしょうかという意見です。
【北川主査】  ありがとうございます。確かに航空科学技術委員会のように、代替する指標があればそれを提案するという方法もあるんですけれども、航空産業の売上高みたいな形で持っていくのも、これもまた、かえって逆の意味で問題かなというところですね。
【栗原委員】  適当なものがあるかどうかは別として、こういう委員会もありましたということを、一応この中で認知したらいいかなと思ったので、申し上げました。
【邉田専門官】  扱いとしても慎重に取り扱うのは当然として、本当にSociety5.0を量るような指標があれば、それはもう情報科学技術委員会のそういうものとして置いてしまうというのはあるんだろうというふうに思いますので、そこも引き続き検討をさせていただきたいと。
【北川主査】  今、栗原委員が言われた分野からの相関を使うというのは重み付きで何かやってという具体案を提案できるかなという気もしてきました。
 八木委員。
【八木委員】  これを見ると、すごい狭い意味の情報科学になっています。情報を使ったフロンティア領域というのは全く入ってないなと思いました。ほかの領域はそういう意味で言うと、みずからの領域を広げる方向で、その分野設定しています。そこの考え方の問題かもしれません。
【邉田専門官】  そうですね。いろいろ融合して、ほかの分野のところでも相当なコントリビューションみたいな話が先ほどもありましたけれども、挙げ出すと全部というかですね。
【八木委員】  実は全部かもしれません。
【邉田専門官】  ええ。我々はもう全てに効いているんだという話になってしまうかなということで、あえて少し狭めに取らせていただいたというところがございまして、もう少し広げた方がいいというところで、ここはかなり情報科学技術への貢献というのが大きいから入れるべきだというところがありましたら、是非入れさせていただければというふうに考えております。
【北川主査】  ほかに何か御意見あれば。
【有村委員】  あんまりいい指標は思い付かないのですが、情報分野の直接の貢献を量るだけでなく、間接の貢献を量る方法もあるかと思います。例えば、現在わが国を支える重要な先端研究分野の方々が、情報分野の方々との協働・協力がないと研究が進められないとおっしゃっている。また、今回の分野別キーワードリストのほとんどの自然科学・科学技術分野で、分野キーワードに情報科学とその応用のキーワードが含まれています。つまり、情報分野は自分の分野を発展させるだけでなく、自然科学と人文分野の諸分野に、最先端的な人材や技術を供給しているといえる。つまり、現代の科学技術において、情報分野は、それ自身が最先端科学である一方で、諸分野を横断的に支える縁の下の力持ちである実態がある。このような実態を反映した形で、直接的な成果にくわえて、直接成果を支える間接的な貢献を計測できると良いと思います。
他分野への横断的な貢献や、分野融合研究の貢献度を、数量的に測るのは難しいと思うんですけれども、ぜひ社会科学的な計量の専門家の方々に、それが可能な方法を考えていただきたいと思います。情報から他分野への横断的な貢献があるのかいう疑問を持たれる方もあるかと思いますが、私の実感としては、この数年間のいわゆる「先端AI人材ブーム」、すなわち、中堅及び若手の先端AI人材を各職業分野、産業分野で取り合っていると言われていますが、これは単に教育の観点で、情報分野の出身の若手の就職が盛んであるという学校教育の観点とは、少し違うように思われるんですね。むしろ、先端情報分野と伝統的な自然科学・科学技術分野が融合しつつ在るのではないかと。例えば、この場合は情報分野ですが、ある分野の全分野に対する波及効果を測る工夫ができたらよかろうと思います。例をあげると、最近のウェブ検索のエンジンの「ページランク」のランキングは、ネットワーク上のページに重みを付けて、情報の伝播や移動を含めて、直接的な寄与だけでなく、間接的な寄与も測っていると聞きます。別の例として、最近の経済学では、サプライチェーンなど流通の研究では1社や1国だけを見るのではなくて、全体としての貢献や、影響、そこが欠けたときの損失を見るようになっていると聞いています。これらの新しい計測の例を鑑みるに、情報技術も同じように諸分野を「流通」して役立っていることを考えると、是非そういう新しい調査方法や技術を作っていただきたいなと思います。
【北川主査】  はい、どうぞ。
【邉田専門官】  RISTEXとかSciREXも含めて、そういう指標、スタイルを考えていくということを我々としても検討したいと思います。
【高安委員】  済みません。社会科学をやっているので、ランキングとかそういうのを徹底的にいろいろやっているんですけれども、今の方法だと、新しい分野は分野横断的なところから生まれてくるわけで、そこがトレンドになってくるねというのを捉えることができなくて、既存分野の中から生まれてくる可能性よりも、領域、横断的なところから生まれてくる可能性が強い。そのトレンドを拾えないというのは前々回もきっと議論されたとおりだと思うんですけど、もう一つ、何でキーワードみたいなもので取ってこないのかなというのもちょっと。まあ、キーワードみたいなもので取ってきて、その後はもう人の引用のネットワークとかすごい解析されているので、どういうキーワードにして、どのぐらい波及があったかというのをネットワーク上で解析するというのはそんなに大変じゃなくて、もうスパコンも使わなくてもできるぐらいなことだと思うんですけれども、そういうランキングや影響、波及効果の計算方法は新しく開発しなくても、既にたくさんあるということをお伝えしたいと思います。
【邉田専門官】  ありがとうございます。そこも含めてまた検討させていただければと思います。
 いろいろ、そもそも施策自体の、研究開発プロジェクトが多いんですけれども、そこから直接のアウトプットは、重みとかいろいろ出てくると思いますけれども、そこから先も分野全体にその施策を打つことによって、分野が盛り上がったか、盛り上がらなかったかみたいなところの指標ということで、相当難しいところはあるとは思いますけれども、頂いた御意見を踏まえて、また少し社会教育的な観点も含めて検討させていただければと思っております。
【北川主査】  辻委員。
【辻委員】  大変素朴な疑問なんですが、これほどあちこちで、これは妥当ではないという意見が出ているにもかかわらず、これでなければいけないというのは一体どういうことなんでしょうか。こういうカテゴリごとの論文数でこの分野の評価ができると思っている人がいるということなんでしょうか。なぜこれだけ意見が出ているのに通らないのか、むしろ不思議な気がしています。
【北川主査】  答えられる人がいないようなので。私は同意しますけれども、発言の説得力のせいかなと思っております。それと、何かWeb of Scienceでやりたいということが前提としてあるようですね。やはり……。
 はい。安浦委員。
【安浦委員】  もう8月の委員会で決めちゃうんですよね。
【邉田専門官】  決める予定と聞いています。
【安浦委員】  ということであれば、ほかの分野に出ている、例えば物理学、数理とか、リモートセンシングとか、少しでも情報科学分野に関するものは、ほかのところに出ているものは全部ここに、うちの方に放り込んでもらうべきでしょう。というのがもう、今の応急処置としては唯一のソリューションなんでしょう。樋口先生のおっしゃったようなことはできないのであれば、バーッと見て、ああ、これはもうちょっとでも情報に関わっているなと思うものは全部ここに放り込んでしまう。だって、よそはかなり幅広く放り込んでいるんだから、こっちも放り込んでしまうということをして、ここの数を2倍ぐらいに増やしてもらうというのが、今の応急処置としては現実的ソリューションじゃないかと思います。
【北川主査】  サブジェクトカテゴリを増やしておくのがいいのかどうかはまだ、ちょっとはっきり分からないところが、どういう評価をされるかによりますね。
【八木委員】  僕もそれが一つの方法だと感じます。もう一つのやり方は、このちょうど航空科学技術委員会の最後のところを見ると、論文タイトルから検索して、関係するやつを引っ張ってくるというようなことを書いています。いわゆる他分野への波及効果というのを明示的に全部、先ほどの話もあったかと思いますけど、ほかのところが言っているんだったら、それが採用されるなら、うちは全分野で情報引っ掛けるというやり方は十分あるんじゃないかなという気がいたしますが、それはどうなんですか。
【邉田専門官】  いや、ある話だと思います。
【八木委員】  そうすると、我々はコアの部分でこれだけちゃんとありますといい。さらにその波及がちゃんと各分野に出ていますというのをダブルで数値を示すというやり方があるかと思います。そうすると、ほとんど論文の情報ですねと言えるのかもしれません。
【北川主査】  以前、ジャーナル・ランキング・コムという会社があって、雑誌の評価をしていたんですが、それはワンステップの評価だけじゃなくて、その引用された論文の重要度まで考えていました。先ほど有村先生が言われたような、ツーステップでやると、横断型の数学や情報が非常に高い方に来るんですね。だから、そういう評価の仕方が現状に合っているのかもしれません。
【有村委員】  発言しても良いでしょうか。質問ですが、キーワードは排他的でなくていいんですね。
【邉田専門官】  はい。
【有村委員】  配布資料をみると、現在、資料に出ている分野は10ぐらいあると思うのですが、情報関連のキーワードが他分野のリストに現れている場所を数えてみると、ナノテクノロジー以外の全ての分野に、「コンピュータサイエンス」や「ハードウェア」といった情報分野のキーワードが入っているのですね。特に、「コンピュータサイエンス」は、脳科学とナノテクノロジー以外のほとんどの分野に含まれています。一方で、情報分野側には、他分野のキーワードはほとんど上げられていないという非対称があるように思います。情報の人は、自分たちの技術が使われている他分野を網羅できていないが、他分野の方は自分が利用している情報分野の技術キーワードは知っているという非対称性です。そこで、安浦先生が言われたように、情報でも他分野と同等となるように、関連するキーワード調査して十分な数を提案する必要があるかと思います。
 本来は、調査キーワードの決定以前に、より上位の取りまとめの方で事前にお考えになることと思うのですけれども、今回調査のやり方として、各分野で個別にキーワードを自主的に提案する仕組みとなっており、非常に積極的な分野とそうでない分野との間で、結果としてキーワード数が分野ごとに不均衡になっているのではないかと思います。これについて、是非、学術分野全体で公平に計測をするにはどうしたら良いか、さらに調査の目的と意味を考えた場合に、どのような仕組みで計測すると良いかについて、上の方でもご議論していただきたいと思います。
【上田委員】  一つよろしいですか。
【北川主査】  はい、どうぞ。
【上田委員】  最終的には論文数だけではないというようなこともあるとは思うんですけどね。ただ、今おっしゃられたように、情報関連技術が含まれたらカウントするだとか、そういうことも少しやり過ぎなところがあって、例えばいろんな応用の分野で、機械学習を使っているだけで、それが日本で開発された技術ではなく古典的な手法の場合でも、情報関連ということでカウントするとなるとちょっとこれはオーバーカウントな感じがするわけですよね。それよりも、例えば著者を見たときに、著者がどの専門かというカウントはしてもいいのかなと。そうしたら、その人が情報分野の研究者だったら、情報分野としてカウントする。著者が5人いたら5分の1か、単に1とカウントするか分かりませんけど、多少そういうふうにしないと、何か情報とか数学とか全部に入っているから、じゃ、全部にカウントすると言うと、これはオーバーカウントしているから、後でディスカウントしましょうみたいな議論が起こるかも知れません。
 だから、著者の専門分野で判断するのも一案かと。つまり、機械学習でも何でもそうですけど、その論文で機械学習が使われているといっても、日本の技術が使われてなかったら日本の機械学習研究を評価して良いということはないので、そういう点も重要かなと思いました。
【北川主査】  ありがとうございました。非常に貴重な御意見頂きました。ありがとうございます。ただ、具体的にどういう形で提案するか、非常に難しいんですけれども、事務局と相談して対応したいと思います。
【邉田専門官】  そうですね。
【北川主査】  それから、分野についても追加した方がいいものがあれば、是非御意見いただければと思います。皆様の御意見をなるべく反映した形で次の委員会にも上げたいと思います。
【邉田専門官】  コメントを付さないと言われていますけれども、下から次に来る分野特性上、適当ではないと。徹底抗戦するみたいなところはもしかしたらあるのかもしれないですけれども、全体的な並びとして、余りにも突飛な話にならないか、また相談させていただければと思います。
【北川主査】  はい。その辺は空気を読まずに発言してみたいと思います。
 それでは、どうもありがとうございました。この議題については以上とさせていただきたいと思います。先ほど申しましたように、8月20日に研究計画評価分科会が開催されますので、本日の意見を取り入れた形のものを報告したいと思います。修正したものについては、各委員に事前にお送りしたいと思います。
 本日予定した議題は以上ですけれども、何か御出席の議員からございましたらお願いします。よろしいでしょうか。
 それでは、事務局からお願いします。
【齊藤情報科学技術推進官】  次回委員会につきましては、追って日程調整をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 なお、本日の資料につきましては、そのまま机上に置いていただければ、事務局より後日郵送させていただきます。
 以上でございます。
【北川主査】  それでは、これで閉会させていただきます。
【邉田専門官】  済みません。1点補足で、次回以降、またテーマを決めて話題提供いただきたいというふうに思っていますし、これから議論するテーマも含めて、本日頂いたいろいろな御議論の内容を踏まえて、主査と相談した上で、また次の委員会でしゃべってくださいみたいな御依頼をするかもしれませんので、そのときはよろしくお願いいたします。
【北川主査】  はい。委員の方にもお願いする可能性が高いということで、是非御協力いただければと思います。
 それでは、本日は以上でございます。どうもありがとうございました。

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