資料1−2−3

防災科学の研究・開発成果をいかに現実の施策に適用するか

国連世界防災会議テーマ別会合
パラレルセッションの提案説明
Thematic Cluster 3: Knowledge Management and Education

1.開催主旨

自然災害は、先進国・途上国を問わず常に社会に対する脅威となっている。災害の要因となる自然現象(ハザード)を減らすことはできないが、適切な対策を取ることにより災害の危険度(リスク)と災害への社会の脆弱性を低減できることは広く認められている。そのため、先進国・途上国ともに、防災のための研究開発に多大の努力を行ってきた。しかしながら、1995年の阪神・淡路大震災を含む近年の災害が教えるように、研究開発を行うのみでは不十分であり、その成果が適切に現場に適用されてはじめて有効となる。すなわち、研究開発の成果をいかにして有効に現場に結びつけるかを検討することが強く求められている。こうした検討の核となる概念は、「現場への適用戦略」および「ステークホルダーの参加」に集約できる。本企画は、研究開発の中にこの概念をいかに定着させるか、研究コミュニティーの変革の検証であり、そのための科学技術政策を討議する。これにより、国際協力の場で真に有効な防災技術の研究開発の方向を明らかにする。

2.テーマ別会合における討議項目

2.1 防災科学の研究・開発成果をいかに現実の施策に適用するか

 研究開発に内包すべき現場への適用戦略の要点を以下のように規定する。

これらの事項の重要性は、高度な防災技術を展開してきた先進国においてもなお災害が大きな脅威であるという現実、過去における先進国・途上国の経験から得られる重要な教訓に基づくものである。

2.2 テーマ別会合における議題と討議内容

提案するテーマ別会合は、2つの目標を持って運営する。

セッションに宛てる時間は2.5時間(150分)を要望する。現段階のプログラム構成(仮)は以下のとおりである。

3.組織の説明

1)文部科学省(MEXT)

 文部科学省はここ数年、特別プロジェクトや新規施策を通して、災害軽減の分野での先進的な研究開発における先導的な役割を果たしてきた。最も特筆すべきものとしては、地震防災フロンティア研究センター(EDM)の設立、EqTAP(アジア・太平洋地域に適した地震・津波災害軽減技術の開発とその体系化に関する研究)という多国間型国際共同研究プロジェクトの開始、そして世界最大の三次元震動台の建設が挙げられる。文部科学省は今後も、研究開発において現場への適用戦略を組み込むことを支援する役割を負っている。

2)防災科学技術研究所(NIED)

 NIEDはもとは国立研究所であったが、最近独立の研究機関となった。NIEDは、世界の様々な分野のステークホルダーを直に巻き込んで、災害軽減分野におけるフロンティア研究を行っている。防災科研はその研究センターの1つであるEDMとともに、EqTAPプロジェクトを監督、遂行した。また、NIEDは世界最大の三次元震動台を管理しており、今後、現場への適用の観点に基づいた研究を行う役割を負っている。

3)世界地震防災推進機構(WSSI)

 WSSIは国際地震工学会(IAEE)の関係の非営利組織である。WSSIは地震工学分野における有力な専門家から構成されている。WSSIは、様々な発展途上国においてハイレベルミーティング(HLM)を行い、災害軽減についての国家的な政策や戦略に影響を与えてきた。WSSIは技術を現場へ適用し、より広範なステークホルダーと共有するためにいくつかの専門家のネットワーク群を構築した。WSSIは知識と実践とのギャップの解消をさらに進める役割を負っている。

4)国際応用システムズアナリシス研究所(IIASA)

 IIASAは現場への適用を主眼に置いた政府間センターで、オーストリアに本拠がある。IIASAはリスクアセスメント及びモデリングに強く、実際上の問題を対象にした様々な分野の先導的な研究を行ってきた。IIASAは加盟国とともに、各国での災害リスクを軽減するために活動していく役割を負っている。

5)ユネスコ(UNESCO)

 UNESCOの災害軽減部門は様々な危険を対象にした教育と研究の分野において積極的で、専門家、政府機関、非政府機関、研究教育機関を含む、幅広いステークホルダーと密接に活動してきた。UNESCOは、災害軽減に関する、先進的で現場への適用の観点に基づいた研究開発を推進する役割を負っている。