科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会防災分野の研究開発に関する委員会（第42回）配付資料［参考資料2］ 5．防災教育の現状

　文部科学省（旧文部省）は、学校教育を対象として「生きる力をはぐくむ防災教育の展開」や「生きる力をはぐくむ学校での安全教育」（平成13年11月）をとりまとめ、防災教育の意義とねらい、指導機会と指導内容、進め方、展開例、防災管理の進め方等を示している。また、様々な防災教育教材を配付するとともに、独立行政法人教員研修センター等において、教職員を対象とする研修が行われている。
　また、文部科学省は、地域の防災活動への防災科学技術等の研究成果の反映を目指した「防災研究成果普及事業」（平成16年度～18年度）や、地震調査研究推進本部の成果の普及を図り、防災意識の高揚や具体的な防災対策に活かすことを目的とする「地震に関するセミナー」（現　地震防災に関するフォーラム）（平成8年～）等の防災科学技術教育を実施している。また、平成17年度には、子ども科学技術白書の中で、小学生向けに「まんが　未来をひらく夢への挑戦　指令！地震災害を究明せよ」を作成し、最新の防災科学技術を紹介しながら、楽しく学べる教材を提供している。
　内閣府政策統括官（防災担当）、文部科学省及び国土交通省は、地域における防災に係る教育・啓発活動として、専用のホームページを通じた情報提供や、防災講座に対する講師派遣（出前講座）、防災パンフレット・広報用DVD・ビデオ等の配付・貸出等を行っている。また、消防庁は、地域の防災力を高めて被害の軽減を図ることを目的として、地域住民、消防職員・消防団員、地方公務員等に、インターネット上で防災・危機管理に関する学びの場を提供する「防災・危機管理e－カレッジ」を開講している。
　さらに、団体・個人等においても、防災教育を行う学校等への助成・支援、つなぎ手の育成等を行う「防災教育チャレンジプラン」（内閣府後援）、子ども達が自分のまちを歩き、防災や防犯に関する設備や場所を自分の目で確かめながら防災マップを作成する「”ぼうさい探検隊”マップコンクール」（社団法人日本損害保険協会）、防災活動に取り組む子どもや学生の顕彰を行う「ぼうさい甲子園」（毎日新聞社、現在は兵庫県等も共催）等、様々な取組が行われている。

（2）地域社会での取組

　地域社会での防災教育の取組としては、避難訓練のほか、公民館等の社会教育施設を活用し、防災学習や防災フェスティバル等が行われている。また、商工会議所・青年会議所での防災まちづくりをテーマにした取組や、大学が主体となった防災講座の開催等が行われている。また、例えば、宮城県、静岡県、愛知県、三重県、和歌山県等の防災教育に熱心な地域を中心に、地域防災力の向上を目的とした地域防災リーダーの育成を通じ、災害時の初動段階における住民の自主的な地域防災活動によって災害の軽減等を図る取組が行われている。さらに、愛知県では、生涯にわたり学校や地域における防災力の向上に貢献できる若い世代の育成を図るため、高校生を対象に「高校生防災セミナー」を実施している。
　また、くろしお教育サミット（千葉県、静岡県、和歌山県、高知県）による指導者用資料「防災学習ハンドブック」の作成や、三重県教育委員会による防災教育推進校の指定・活動支援、ビデオ教材作成・活用、教職員対象の防災教育指導者研修会等の実施、兵庫県教育委員会作成の防災教育副読本「明日に生きる」や神戸市教育委員会作成の防災教育副読本「しあわせはこぼう」を用いて、阪神・淡路大震災の教訓を活かした教育実践、東京都目黒区立五本木小学校における地域行事を学校の教育課程に位置付け、地域住民と連携した防災教育の実践等が行われている。
　さらに、大学や学協会等においては、防災教育用DVD「日本に住むための必須！！防災知識」（平成17年3月土木学会発行）の作成及び啓発活動や、紙芝居を使った小中学生を対象とする防災教育の実施、さらに地域と協働で災害シミュレーションやハザードマップ等を用いた先進的な教育実践等が行われている。
　地域主体で行われる防災教育は、その参加者の世代構成が高齢者等が多く、子供や現役世代の参加が少ないという指摘もあるものの、防災訓練や避難訓練等が熱心に行われている例として、例えば、幅広い世代の参加を得た兵庫県神戸市の防災ジュニアチーム等の取組がある。また、地震等の自然災害による被災経験がある地域では、その経験を教材等に活かした、例えば、和歌山県広川町の「稲むらの火の館」（濱口梧陵記念館・津波防災教育センター）において「稲むらの火」（注）等の「災害文化」を伝える取組や、神戸の「人と防災未来センター」において死者6,400人以上もの甚大な被害が発生した阪神・淡路大震災の様々な「教訓」を伝承する取組等が行われている。
- （注）「稲むらの火」とは、多くの村人を津波災害より救ったという故事あるいはその物語。安政元年（1854年）の安政南海地震による津波の際、紀州廣村（現在の和歌山県広川町）濱口儀兵衛（梧陵）が稲むらに火を放ち、村人を高台に避難誘導して救ったという話。

（3）学校での取組

　学校における防災教育は、現行の学習指導要領の下で、理科、社会、体育・保健体育等の教科教育や特別活動の一環として行われており、また「総合的な学習の時間」等を活用した取組もなされている。特に、地震や津波等の大規模自然災害の被災経験がある地域や、災害の切迫性が高い地域の学校を中心として、特徴的で、かつ優れた事例が見られる。
　また、あらゆる教科や活動を通じた横断的・体系的な防災教育の実施、児童生徒等による地域への防災知識の普及や住宅の耐震診断の実施、キャリアプランを見据えて進路と防災との関わりについて考えさせる授業、新たな学校選択制を受けて、いくつかの隣接する地域と関わりを持つ取組等、各学校やその地域等の特徴を活かした事例が見られる。
　一方、防災教育を行おうとする場合、それを学校で取り上げやすい環境づくりと、それを支える学校と地域の連携が重要であり、防災教育に携わる教職員が外から人的・物的な支援を得るため、例えば、学校と、他の組織や団体等との連携が必要という指摘がある。このような連携が進んでいる例として、「学校と地域の連携による地域防災力の高度化に向けて」等のテーマのもとに定例的にシンポジウムを開いている事例（宮城県）や、災害時に避難所となる中学校での体験キャンプを行なったり、生徒会が防災を考慮した街づくりに関する提案をしたりする事例（東京都）等がある。

5．防災教育の現状

（1）全国規模での取組

（2）地域社会での取組

（3）学校での取組