大型放射光施設評価作業部会(第1回) 議事録

1.日時

平成25年4月3日(水曜日)午前10時00分から12時00分

2.場所

文部科学省 17階 研究振興局会議室

3.議題

  1. 部会の設置趣旨・運営等について
  2. SPring-8の概要及び現状等について
  3. 前回中間評価(平成19年7月)の概要について
  4. 評価の項目及び視点等について
  5. その他

4.出席者

委員

福山主査、雨宮委員、小松委員、高尾委員、唯委員、南波委員、西島委員、水木委員、森委員、山縣委員、山田委員

文部科学省

吉田研究振興局長、柿田基盤研究課長、原量子放射線研究推進室長、神部量子放射線研究推進室長補佐

5.議事録

【神部補佐】 
 皆様、予定の時間になりましたので、これから始めさせていただきたいと思います。本日はお忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 会議の開催前に、事務局からお知らせがございます。まず、本作業部会の主査を御紹介させていただきます。3月19日に開催されました、先端研究基盤部会において決定されました、同部会の運営規則に基づきまして、大垣部会長より福山委員が本作業部会の主査に指名されております。以後、本作業部会の議事につきましては、福山主査に進行をお願いいたします。
 なお、本日の会議におきましては、開会から議題1の「運営規則等について」までの間は非公開とさせていただいておりますので、御了解いただきたいと思います。
 それでは、福山主査、よろしくお願いいたします。
【福山主査】 
 ただいま御紹介いただきました福山です。東京理科大におります。これから数回、大事な機会でございます、是非、積極的かつ率直な意見交換に、御協力よろしくお願いしたいと思います。
 まず、この作業部会の位置づけについて、大局的なことは皆様、御理解いただいていると思いますけれども、この作業部会、共用開始してもう15年になるSPring-8についての評価検討の機会でございます。前回、評価が行われたのが2007年、平成19年で、その後、J-PARC、SACLA等々、国内の量子ビームの施設が活動を開始したわけですけれども、同時に、国際的な視点から見ますと、海外に本当にいろいろな放射光施設も設置されているという状況でございます。ということは、国際的な競争がこれからますます猛烈になる。同時に、それはすばらしい、マシンにとっては大きなチャンスであると思います。
 この作業部会、皆様、本当に御多忙で、第一線でいろいろ御活躍いただき、いろいろ御経験、御見識をお持ちの方にお集まりいただいておりますので、活発な議論をいただいて、是非、これからのSPring-8に対してプラスになるような報告書をまとめられればと思っております。御協力をお願いしたいと思います。
 この委員会、この報告書がどう使われるかということで、皆様、委員の方の意気込みも当然変わってくるかと思います。今年の夏の概算要求に向けては当然ですけれども、大局的に見たときに、先ほど申し上げましたように、日本での放射光施設に関しての世界的な状況は大きく変化しております。その中で、世界に誇るSPring-8のマシンがどう位置づけられるかと同時に、このことは、これからの日本の放射光全体を見たときに、将来の制度設計の際の重要な資料、議論の基盤になるはずだと思います。そういうことで、責任は非常に重いと思いますが、是非、御協力をお願いいたします。以上、御挨拶とさせていただきます。
 それでは、吉田研究振興局長より一言お願いいたします。
【吉田研究振興局長】 
 文部科学省の研究振興局長の吉田でございます。委員の皆様には、今回、この評価作業部会に御参加いただきまして誠にありがとうございます。今回が第1回ということで、今、福山主査から、この作業部会の任務や目標についてお話がございました。主査が触れられましたとおり、SPring-8は、もう15年たっているわけでございます。現在でも世界最先端の研究施設ということで、非常に幅広く、学術研究から産業応用まで含めまして様々な活用がされており、これまで数々の成果を出してきたところでございます。
 この25年度の予算事業の中でも、こういった放射光施設の関係につきましては、複数の量子ビームを横断的に利用することによって先導的な成果を目指すという観点から、光・量子融合連携研究開発プログラムというもの、また、放射光やレーザー施設がネットワークを形成して共用の促進、あるいはイノベーションの創出を目指すという光ビームプラットフォームというものを開始する予定にしております。そういった取り組みの中で、引き続きSPring-8が果たすべき役割というのは非常に大きいものでございます。
 今回の作業部会では、先ほど福山主査がおっしゃいましたように、SPring-8について、6年ぶりに評価していただくということもございますけれども、現在の放射光施設をめぐる内外の情勢の中で、今後の放射光施設の在り方としてどうしていけばいいかということについても、先生方の御示唆をいただければ大変有り難いと思いますし、そういったものを受けまして、私どもも今後の概算要求等に盛り込んでいきたいと思っております。
 主査も触れられましたように、是非、率直な御意見を賜れれば有り難いと思っておりますので、これからどうぞよろしくお願い申し上げます。
【福山主査】 
 ありがとうございました。それでは、審議に進みたいと思います。
 まず、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
【神部補佐】 
 配付資料の確認をさせていただきたいと思います。議事次第にございますとおり、まず、配付資料としましては、資料1-1から資料8までを用意しております。また、机上資料としまして、参考資料1から参考資料7を用意しております。欠落、若しくは不備等がございましたら御連絡いただければと思います。
【福山主査】 
 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、本作業部会の設置の経緯について、これも事務局の方から御説明をお願いいたします。
【神部補佐】 
 それでは、まず、資料1-1を御覧ください。資料1-1ですが、本年3月19日に開催されました先端研究基盤部会におきまして、本作業部会が設置されております。ここに記載されておりますとおり、調査検討事項といたしましては、SPring-8につきまして、平成19年度に前回評価が実施された際の指摘に対する対応状況等を調査し、中間評価の検討を行うこととされております。
 続きまして、資料1-2ですが、こちらが、科学技術・学術審議会における本作業部会の位置づけでございます。先端研究基盤部会の下に本作業部会が設置されております。
 続きまして、資料1-3です。こちらが先端研究基盤部会において決定されました本作業部会の設置についてでございます。本作業部会の委員につきましては、先端研究基盤部会運営規則第2条第2項におきまして、「委員会に属する委員、臨時委員及び専門委員は部会長が指名する」と規定されております。これを受けまして、大垣先端研究基盤部会長より、資料1-3の2枚目にございますとおり、委員の皆様が指名されております。
 それでは、委員の皆様を御紹介させていただきたいと思います。資料1-3の名簿順に基づきまして、本日御出席の皆様を御紹介させていただきます。
 まず、本作業部会の主査を務めていただきます福山委員でございます。
【福山主査】 
 改めて、福山でございます。よろしくお願いします。
【神部補佐】 
 続きまして、雨宮委員でございます。
【雨宮委員】 
 雨宮です。よろしくお願いします。
【神部補佐】 
 続きまして、小松委員でいらっしゃいます。
【小松委員】 
 小松です。よろしくお願いします。
【神部補佐】 
 続きまして、高尾委員でいらっしゃいます。
【高尾委員】 
 高尾です。よろしくお願いします。
【神部補佐】 
 続きまして、唯委員でいらっしゃいます。
【唯委員】 
 唯でございます。よろしくお願いいたします。
【神部補佐】 
 続きまして、南波委員でいらっしゃいます。
【南波委員】 
 南波でございます。よろしくお願いします。
【神部補佐】 
 続きまして、西島委員でいらっしゃいます。
【西島委員】 
 西島です。よろしくお願いします。
【神部補佐】 
 続きまして、水木委員でいらっしゃいます。
【水木委員】 
 水木です。よろしくお願いします。
【神部補佐】 
 続きまして、森委員でいらっしゃいます。
【森委員】 
 森でございます。よろしくお願いします。
【神部補佐】 
 続きまして、山縣委員でいらっしゃいます。
【山縣委員】 
 山縣です。よろしくお願いします。
【神部補佐】 
 続きまして、山田委員でいらっしゃいます。
【山田委員】 
 よろしくお願いいたします。
【神部補佐】 
 それから、本日は御欠席となっておりますが、そのほかに、杉原委員及び田島委員が就任されておりますので、御紹介させていただきます。
 次に、文部科学省の出席者を御紹介させていただきます。まず、研究振興局長の吉田でございます。
【吉田研究振興局長】 
 吉田でございます。よろしくお願いいたします。
【神部補佐】 
 基盤研究課長の柿田でございます。
【柿田基盤研究課長】 
 柿田でございます。よろしくお願いします。
【神部補佐】 
 量子放射線研究推進室長の原でございます。
【原量子放射線研究推進室長】 
 原でございます。よろしくお願いいたします。
【神部補佐】 
 それから、私、量子放射光研究推進室の室長補佐をしております神部でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【福山主査】 
 どうもありがとうございました。それでは、本作業部会の運営規則について事務局から御説明をお願いします。
【神部補佐】 
 本作業部会の運営規則について説明させていただきたいと思います。
 資料2を御覧ください。本作業部会の運営に必要な事項のうち、科学技術・学術審議会運営規則及び先端研究基盤部会運営規則に定められていない事項につきましては、本作業部会の運営規則として定めておく必要がございます。まず、第2条の議事ですが、委員の過半数が出席しなければ会議を開くことはできないとされております。また、第3条、委員等の欠席でございますが、第2項におきまして、欠席する委員等は、書面により意見を提出することができるとされております。第4条で、会議の公開ですが、個別利害に直結する事項に係る案件、又は調査の円滑な実施に影響が生じるものとして、作業部会において非公開とすることが適当であると認められる案件を除きまして公開にすることとしております。第5条、議事録を作成し、これを公開することとしております。第6条、雑則としまして、その他作業部会の運営に関し、必要な事項は作業部会の主査が作業部会に諮って定めることとしているところでございます。
 以上でございます。
【福山主査】 
 ありがとうございました。御覧いただいて、特に気になるところはないかと思いますけれども、心配ないと思いますが、過半数の出席、これは確保しないと成り立ちませんので、御協力をお願いします。
 それでは、異議がなければ、傍聴の方に入っていただいて、これから公開になるんですね。
【神部補佐】 
 はい、そうです。
                                (傍聴者入室)
【福山主査】 
 それでは、ただいまより公開の議題審議に入りたいと思います。
 議題2に位置づけられております「SPring-8の概要及び現状等について」、事務局より、まず、SPring-8に関するこれまでの経緯、それから、設置者である理化学研究所よりSPring-8の概要、高輝度光科学研究センター(JASRI)から共用法における登録機関としての取り組み、それぞれの組織に対応したミッションがございます。それに対しての御説明をこれから頂きたいと思います。
 まず、事務局から御説明をお願いします。
【神部補佐】 
 事務局よりSPring-8の計画の経緯について説明させていただきたいと思います。資料3を御覧ください。
 まず、SPring-8計画の始まりとしまして、昭和62年7月、当時、科技庁の下にございました航空電子等技術審議会に対する諮問への答申としまして、「光科学技術の高度化に関する総合的な研究開発の推進について」が取りまとめられました。これにより大型放射光施設の検討の必要性が指摘されたことによってSPring-8計画が始まりました。それを受けまして、翌年、昭和63年10月には、当時の原研と理研による大型放射光施設の研究開発チームが設立され、機器の設計と各種研究開発が始まりました。平成元年6月には、生活研究環境やユーティリティなどの観点から、兵庫県の播磨科学公園都市が建設地として決定されました。そして、平成3年11月に原研と理研による建設が開始されました。そして、平成9年3月には、放射光の発生が確認され、同年10月には施設の共用が開始されました。
 一方、SPring-8の運営に関しましては、平成2年12月に施設の運転と維持管理を一体的に行い、かつ利用者の支援を行う機関としまして、財団法人高輝度光科学研究センターが設立されました。そして、平成6年10月には、SPring-8の共用を促進するため、「特定放射光施設の共用の促進に関する法律」が施行され、本センターは、同法に基づきます「放射光利用研究促進機構」に指定されました。その後、平成17年には、日本原子力研究開発機構が設立したことに伴い、理研とJASRIの二者体制へ移行しました。翌18年には、「特定放射光施設の共用の促進に関する法律」が「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」に改正されました。これにより、特定高速電子計算機施設が特定先端大型研究施設に追加されるとともに、これまでJASRIは放射光利用研究促進機構の指定機関となっておりましたが、法律の改正に伴いまして、一定条件を満たした申請者を登録施設利用促進機関として登録する制度に変わりましたので、JASRIは同法に基づく登録機関に選定されました。その後、SPring-8では着実に利用者数を伸ばし、平成21年には利用者数累計が10万人を、平成25年度中には15万人を超える見通しとなっております。
 また、SPring-8の評価につきましては、平成14年9月に第1回、平成19年7月に第2回が実施されております。第1回では、それ以前の建設設備利用者拡大の時期から本格的な利用期に移行することに伴いまして、よりすぐれた、より多くの成果を上げることに力点を置くべきとの指摘がされております。また、平成19年の第2回評価のときには、運転開始から10年以上が経過しており、学術研究や産業応用としても既に定着しておりますが、今後とも先端的な研究施設として我が国の研究レベルの底上げに大きく貢献するようにということで運転基盤、運営体制、利用促進方策の強化について提言がされております。
 以上でございます。
【福山主査】 
 はい、ありがとうございました。改めて経緯を整理されたものを拝見すると、いろいろ印象的だと思います。この、25年下期で利用者累計15万人というのは確かに大変な数だと思うんですけれども、ほかの世界の大型施設で、これに対応した数というのはどれくらいになるか、そういう概算はわかりますか。
【石川センター長】 
 SPring-8は、1年当たりが今、1万5,000人くらいになっているわけですが、例えば、APSで先週会議があって聞いてきたところでは、1万人をちょっと切るくらいかなと。
【福山主査】 
 APSが?
【石川センター長】 
 はい。多分、ESRFも同程度なのだと思います。ただ、数え方が施設によって違うので正確に比べることがなかなか大変だという状況です。
【福山主査】 
 わかりました。そこら辺、不確定要素があるにしても、年間1万5,000人というのは大変な数です。特にSPring-8の場合は、インダストリーからの利用が随分増えているんですかね。
【熊谷理事】 
 そうですね。
【福山主査】 
 それがこの数を大きくしていると。そうだとすると、それは大変重要な好ましいことが起こっていると。余談ですけれども、SPring-8に関しては、2000年の初めからいろいろなときにかかわっていたのですけれども、局長の前でこういうことを言うと怒られてしまうかもしれませんが、当初、文科省から、産業利用が余りできていないというので、いろいろなときにコメントがあった。その後、当事者は随分努力されて、その結果がここまで来ていると、そういう意味では大変印象的な事実だと思います。
 皆さん、何かコメントはございますか。そういうことに関してはこれからいろいろなときに、いろいろな形で御意見が賜れると思います。
 それでは、次に、理化学研究所の方から御説明をお願いします。
【石川センター長】 
 はい。では、理化学研究所から、SPring-8の概要についての御説明をさせていただきます。
 資料4-1でございます。はじめに、下につけてありますのが航空写真で、今、141ヘクタールの土地の中に大型放射光施設SPring-8とX線自由電子レーザー施設SACLAという2つの世界最先端装置が動いているということでございます。
 次のページに参りまして、この理化学研究所は播磨地区に放射光科学総合研究センターを設置いたしまして、ここでこのSPring-8、SACLAの運営及び放射光科学の研究をしているわけでございますが、このセンターといたしまして、光科学の先端拠点としての研究開発の遂行と、2番目に、大型放射光施設SPring-8及びX線自由電子レーザーSACLAの施設運営の、2つのミッションをもって行っているところでございます。
 その下に、ビームラインの新設・高度化に関しまして、前回の中間評価以降の活動が書いてあります。平成19年に産業利用ビームラインの2本目ができ、その次の21年は豊田中央研究所が1社として初めてフルのビームラインを持つという形での専用施設を作りました。同じく21年にフロンティアソフトマター開発産学連合、21年、東京大学の物質科学アウトステーションという専用施設ができまして、22年に理研のターゲットタンパク、23年が2つの共用ビームラインをナノビーム化してナノビーム放射光分析基盤の整備をいたしました。24年に理研の量子ナノダイナミクスで、24年、25年にNEDOの関係で京都大学と電気通信大学の蓄電池、燃料電池の関係のビームラインができております。光源の高度化といたしましていろいろなことをやって、当初よりは桁違いに明るくなっているというものでございます。
 次のページに参りまして、ビームラインマップですが、全体で62本のビームラインが設置可能のところ、今57本が稼動中、あるいは建設中ということで、残りが5つになっています。その下が共用ビームラインのナノビーム化ですが、これは、低炭素研究ネットワークのところでお金を頂きまして、2本のビームラインをナノビーム化いたしました。100ナノメートルスポットのX線ビームでいろいろな局所解析ができるようになっております。
 次のページに参りますが、一方で、課題解決に向けた実践的な専用ビームラインというものができてまいりました。例えば、フロンティアソフトマター開発産学連合ビームライン、これは平成21年から動いておりますが、ここでは、高分子材料等の開発が進んでおります。最近では、エナセーブというダンロップのタイヤの省エネルギー化で非常に大きな成果を上げているところでございます。そのほかにも、京都大学RISINGの蓄電池先端基礎科学ですとか、電通大の燃料電池イノベーションセンターの先端触媒構造反応リアルタイム計測というようなビームラインが新しくできてまいりました。
 理研のビームラインでは、次世代の利用技術開発として、この理研のビームラインを使って新しい技術を開発し、それを皆様に使っていただく、共用ビームラインに展開していくということをやっているわけでございますが、例えば今までに、X線偏光変調分光法の開発、超高分解能の分析用分光結晶の開発、硬X線光電子分光装置の開発、X線集光鏡の開発等、いろいろ新しいものを作って皆様に使っていただく、ということを、理研ビームラインを使ってやっております。
 その後は、現状ですが、先ほどのお話に大体あったのですが、利用者累計で、これは「平成25年下期」と書いてありますが、これは平成24年度の下期に既に15.4万人を達成しており、年間の利用者としては、先ほど申しましたように、1万5,000人を超えるところで推移しているというところでございます。運転時間は、このところ毎年コンスタントに5,000時間の運転をしておりまして、4,000時間程度を利用者に供給しているところでございます。非常に特徴的なのは、ダウンタイムのところで、ダウンタイムが非常に小さい。ですから、運転しているときには非常に順調に皆様にお使いいただいているところでございます。
 次のページに行っていただきまして、ナノビームラインの標準化ということをやっているわけでございますけれども、これは理研のビームラインで大阪大学と共同でナノビームの、ある意味で世界のトップを走っているところでございまして、理研のビームラインでは7ナノメートルの集光まで行っていますが、共用ビームラインでは数十ナノメートルから100ナノメートルくらいの小さなビームが、もう普通に使えるという状態を作り上げているわけです。
 その次の開発の方向性、2つ目はビームライン循環システム、こういうものを作りたいと思っているわけですが、共用ビームラインの古くなったものを理研で引き取ってアップグレードして、また共用ビームラインに戻していくというシステムを作って、このSPring-8全体の高度化を図っていったらどうかということを考えております。
 その次の13ページです。SACLAができ上がったことによって、このSPring-8、SACLAという2つの放射光施設とX線自由電子レーザー施設が1か所で使える、それも同じサンプルに両方のビームが当てられるという非常に特徴的なものができました。この相乗効果を生かした研究開発が今後の課題だと考えております。
 次の14ページは世界の放射光施設です。1つは、SPring-8で開発いたしました真空封止型アンジュレータによって、SPring-8の大きさを持たなくてもそこそこのX線が出る蓄積リングが可能になってまいりました。これが非常にはやっておりまして、世界中で建設が進んでおります。そういう意味で、SPring-8ができてから15年を超えるわけですが、いまだに世界最高エネルギーの蓄積リングというのは、今はもう小さいリングでそこそこのX線が出るために高エネルギーにすることをしないという風潮になっております。
 この小さいリングでも非常に性能が上がってまいりまして、例えば、この台湾のリングでは、2014年にでき上がりますが、1.6ナノメートルラジアンと、もうSPring-8を超えるようなビームが使えるようになります。ですから、SPring-8も、ある意味で、またこれらをしのぐようなことを考えなければいけないと思っております。
 最後ですが、そういう意味での将来計画、3つの基本構想がございます。1つは、究極の蓄積リング型光源、Ultimate Storage ringというものにしていきたい。2つ目が、先ほど申しましたように、SACLAとの相乗活用を押し進める。3つ目は、いろいろな事情がございますが、このエネルギー効率というのが非常に問題になりますので、エコ光源を目指すというこの3つを柱にして将来を考えていきたいと考えております。
 以上でございます。
【福山主査】 
 はい、ありがとうございました。いろいろな情報を御提示いただきました。せっかくですから、御意見をどうぞ。
【西島委員】 
 確認ですけれども、このビームマップ62本設置のうちの57本ということは、理論的にはあと5本、ビームラインを建設可能というふうに捉えていいんですか。つまり、実際に、そこにあと5本の専用ビームラインを作りたいといったら、5本できるものなのかどうかということです。
【石川センター長】 
 できます。いろいろと条件はありますが。
【西島委員】 
 できるんですか、条件をつけるとしたら、はい、わかりました。
【福山主査】 
 そういう施設が確保されていれば。
【西島委員】 
 そうですよね、わかりました。もう1点は、これは数字の確認なのですけれども、9ページの、年間実施課題数の2,007件というのは、専用と共用を混ぜたユーザー利用時間4,156時間の中での件数というふうに考えてよろしいのでしょうか。つまり、蓄積リングの運転時間とユーザー利用時間の差し引いた部分は調整とか何かの時間が入っているわけですよね。
【石川センター長】 
 はい。
【西島委員】 
 ということは、この年間実施課題数というのは、いわゆるユーザー登録してあったものが。
【石川センター長】 
 ユーザー利用時間の中。
【西島委員】 
 中ですね。
【石川センター長】 
 はい。
【福山主査】 
 今のことに関連して、38時間、39時間、このダウンタイムというのは具体的にどういう時間なのですか。
【石川センター長】 
 例えば、加速器何かのコンポーネントが壊れてリングが回らなくなったとか、そういう時間です。
【福山主査】 
 だから、元来、共用、使えるように確保してある、その枠の中で動かなかった時間という定義と。はい。それと、台湾のTPS、これはリングが小さいというのは、どれくらいのサイズで、エネルギーはどういうことなんですか、2014年のオペレーションと。
【熊谷理事】 
 500ちょっとですね、580くらいだったと思います。
【福山主査】 
 メートル?
【熊谷理事】 
 はい。それで3GeVです。
【福山主査】 
 3GeVで580と。
【熊谷理事】 
 580くらいだったと思いますけど。
【福山主査】 
 そういうものができるようになったと。
【水木委員】 
 よろしいですか。
【福山主査】 
 はい、どうぞ。
【水木委員】 
 12ページの開発の方向性にあるビームライン循環システムで、理研として、共用ビームラインを一度引き取ってアップグレードしてまた戻すという話があったのですが、これは非常にいいと思うのですけれども、やろうとした場合の大きな壁は何があるのかということと、具体的に今、考えておられるようなビームラインがあるのかをちょっと教えてもらいたいのですが。
【福山主査】 
 確かに、これはアイデアとして非常にリーズナブルというか、理解できる。具体的にどういうことが考えられるか、どういう状況か。
【石川センター長】 
 間違いなく壁は、そのビームラインがアップグレードされてもいいというコンセンサス。
【水木委員】 
 ソサエティからの。
【石川センター長】 
 そう、そこのところが壁になると思います。
【福山主査】 
 将来も使えるということを多くの人が確認するかどうか。
【石川センター長】 
 はい。
【福山主査】 
 確かに、重要な視点だと思います。はい、どうぞ。
【南波委員】 
 今のことに関連するのですが、当然、個々のビームラインにはそれぞれ特性がございます。これを今のお話のようにアップグレードしようとすると、そのビームラインの部分のところで、極端な言い方をすれば、ビームラインを取り払って全部ゼロからやるようなアップグレードもあるでしょうし、そのビームラインのもともとの特性を変えないでやっていくのと、多分2つの方向性があると思うのですが、今おっしゃっているこのアップグレードは、どのくらいの、要するに、全面改造に近いようなアップグレードをイメージされているのか、あるいは、個々のビームラインの特性、例えば、波長領域であるとか、集光であるとか、そういったところをよりアップグレードさせる方向性を狙ったアップグレードなのか、ちょっとそこを教えていただきたい。
【石川センター長】 
 ここはいろいろあると思うのですが、一番のポイントは光源性能が非常に上がっているのに対して、ビームラインがもとのままであるものがある。それを光源性能に合わせた形に高度化して使いやすくしていくというのが一番のポイントだと思います。SPring-8の場合、ビームラインにいろいろあるわけではなくて、実は、かなり、最初の建設のときに短い時間でやったということがあって、非常に標準化が進んでいるということがあるので、その標準化したアップグレードをみんなに行き渡らせていくということが重要かなと考えています。
【福山主査】 
 はい。
【熊谷理事】 
 ちょっと補足させていただきます。今おっしゃったとおり、ビームラインをアップグレードするときに更地にしなければいけないというときにはユーザーにかなり迷惑をかけることになります。その意味で、先ほど5本ほど余っているというお話がありましたが、実は、5本程度は持っていないとさっきの循環がうまくいかないのではないかということもありますので。
【福山主査】 
 確かにそうですね。
【熊谷理事】 
 その5本の使い方に関しては、きちっとどこかで検討しないと、単にあいているから使いましょうというだけでは将来的にはちょっと。
【福山主査】 
 どこかで検討というと、どこで検討するのが一番いいのですか。
【熊谷理事】 
 多分、理研の中のビームライン検討委員会か何か。
【福山主査】 
 それはコミュニティに開かれていると。
【熊谷理事】 
 ユーザーの意見を聞いた上でどうするかということで。
【福山主査】 
 その理研の中のビームラインの検討委員会というのは、もちろんコミュニティ全体に開かれていると。
【熊谷理事】 
 そうですね。
【石川センター長】 
 これは、理研に設置して、外部の方にも入っていただいて全体の検討をするというスキームになると思います。
【福山主査】 
 はい、わかりました。それと、最後のところ、エコ光源うんぬんと書いてあるのは、エネルギー効率を高めるとかそうなのですけれども、これは光源そのものの問題ではなくて、その周辺機器のことでしょうか、ここに書いてあることは。
【石川センター長】 
 光源そのものも、例えば、磁石を全部電磁石でやらないで永久磁石と電磁石をハイブリッドにするとか、あと、水冷を空冷にするとか、やることがいろいろあると思っています。ですから、もちろん環境のことは大きいですけれども、光源自体も、今までよりも、エネルギーを使わないで同等以上の性能のものを作るということを目指すべきだと考えています。
【福山主査】 
 わかりました。まだあるかもしれませんけれども、関連したお話がまた伺えると思います。
 次にJASRIから御説明を伺うことにいたします。お願いします。
【熊谷理事】 
 資料4-2です。「JASRIの登録機関としての取り組みについて」ということで御説明させていただきます。
 JASRIの登録機関としてのミッションは、1ページの下にありますが、4つあります。利用者の選定、利用者に対する支援、成果の普及啓発、4番目としては人材育成、この4つをミッションとして業務を遂行しているということです。歴史とか経緯に関しては先ほど説明がありましたので、次のページででは、先ほどの4つ、利用者の選定、利用者の支援等をどういう体制でやっているかということがあります。基本的には、利用業務部というのが利用者の選定業務を実施しております。それから、利用研究促進部門、これが利用支援、いわゆる利用者に対していろいろな研究、技術的な支援をしている。実は、ビームライン共用施設は26本ありまして、1本ごとに利用促進部門のスタッフを張りつけるというのは、ビームライン当たりの支援要員が減りますので、グループとして9つほどに分けてまとめて支援をしているということです。
 産業利用推進室、これは先ほどお話がありましたけれども、産業利用を活性化するというところですが、1つのグループ、産業利用支援グループを作って対応しています。そういう意味では、利用者支援というのは、トータルで算数的には110名ほどで対応している。そのほかに加速器部門、制御・情報部門、光源・光学部門というのが、これらの2つの部門をバックアップして有機的に連携してビームの性能の高度化に当たっている。
 次に、共用ビームラインの利用制度ですが、基本的には、利用は有償が原則で、成果を公開する利用は施設料金が免除されるということになります。公開しない場合には有償ということで、有償の場合には、共用ビームラインは8時間当たり48万円、専用ビームラインが31万2,000円。共用ビームラインの枠組みですが、成果非専有と成果専有、専用ビームラインの成果非専有、成果専有。あと、成果非専有の中には、通常利用、緊急利用、長期利用、優先利用と、これはユーザーの方々のニーズに基づいてこういう枠組みを作っております。
 次のページが、この選定スキームはどういうものかということを示したものであります。右側のSPring-8選定委員会、左側にSACLAとありますが、同じ並びで今、審査をしております。この中にはいろいろな分科がありますが、まず、真ん中にパワーユーザー審査委員会、SPring-8利用研究課題審査委員会、専用施設審査委員会、そういう3つの枠がありまして、真ん中の枠が共用施設になりますが、グリーンライフ、産業利用、分光、XAFS、散乱・回折、生命科学、長期利用分科会、いずれもレフェリーをつけて審査をしています。
 共用ビームラインのビームタイムの配分ですが、共用施設26本のビームラインを持っております。一般利用枠というものと登録機関の12条利用枠というものがありますが、これは課題選定委員会等の議論のもとで、一般利用が80%以上、それから登録機関の12条、登録機関というのは、JASRIの内部の人たちがスキルを上げるためとか、利用の支援のために必要な調査・研究というものですが、これは上限で20%を超えない。一般利用の中には、一般利用研究課題、それから重点利用研究課題というものに分けられています。それから、施設保留というのが一般利用の中にありますが、これは、ユーザーの方が研究に使いたいとか、時期指定でこういうものを測定したい、それから測定代行でこういうものを測定してくださいというようなこと、それから研修・講習会に使えるようなものとして施設利用枠があります。
 重点研究課題の変遷、先ほど委員長の方から産業の利用が少ないということで、文科省においてもいろいろな施策をとっていただきました。まず、産業界の人たちが自由に使えるように、「まあ、使ってみてください」というトライアルユースから始めましていろいろな施策が2001年から現在まで続いております。そのほかに、ナノテクノロジー、タンパクという国の施策に沿った重点領域、それから重点パワーユーザーというものを重点研究課題として進めております。
 共用ビームラインの利用研究課題と応募・採択の状況ですが、そこにありますように、青色と小豆色のものもありますが、おおよそ課題採択率が70%で今、推移しております。70%ですので、ビームラインによっては40%を切るような採択率のものから、ほぼ100%の採択率を持つまで、ほぼそういうところに、バランス分布とは言いませんが、そういう分布をしております。
 それから、共用ビームラインにおける所属機関別の利用研究課題数です。青色が産業利用、薄い緑色が大学等教育、国立機関等々ですが、平成18年以降、おおよそ青色の産業界の利用が20%程度で推移しております。
 これは、先ほどのいろいろなトライアルユースとか、戦略活用プログラムとか、そういうものが功を奏して今、全体の課題数の20%ぐらいを占めるに至っております。現在、産業利用に関しては、いろいろな施策及び産業界と学の強力なタッグのもとに、高分子分野のところで今、非常にいい成果が出つつありますが、そういうものを手本にしてもう少しいろいろな分野に広げていこうかということを今、考えております。
 登録機関による調査研究と利用者への還元ということです。先ほどの12条という枠組みがありますが、登録機関に所属するスタッフのスキルアップ、それから実験手法の開発というものを目指したものです。そこにあります1から3のような、放射光共用施設の技術的検討や新しい利用技術の開発に資する調査研究。具体的に言いますと、超高繰り返しX線チョッパーの開発。これはSPring-8、2000くらい、一周にわたってバンチがありますが、いずれのバンチも切り出せるような、そういう超高速のX線チョッパーが今、開発されて実用になりつつあります。
 2番目の新たな放射光利用研究分野の開拓に資する調査研究。そういうX線チョッパーを利用した時分割の測定。今までは、どちらかというと止まっている状態をはかる利用が大部分ですが、今後は動いているもの、動いている後のものを測っていこうということで、このX線チョッパーを利用した時分割測定を少し重点的に手法の開拓をしていく。
 それから、利用者のニーズ、社会的要請に基づく新たな放射光利用方法の検討ということで、自動化とか遠隔化等があります。遠隔化に関しては、基本的には、端末があればどこでも自由にできるということで、実は、これは先例がAPSでありまして、遠隔測定というものを導入した時期からユーザーの数が急激に増えているということがありまして、恐らく、こういう遠隔測定というのは、今後、日本でも主流になりつつあるのではないかと思います。
 その次のページが論文の発表状況です。1999年から2010年まで、1年ごとの査読つき論文の数になります。2012年ですと、実件数で494ということになります。延べ件数は、1つの課題で数本のビームラインを使った場合に、それぞれのラインでカウントしていますので、実件数としては494ということになっております。
 課題数で割ると、大体1課題当たり0.4ということで、この値はAPSとほぼ同様の値になります。ただ、ESRFは1課題当たり0.9と、この値のカウントの仕方がよくわかりませんが、0.9というのはありますが、ほぼAPSと同等ということになります。
 それから、利用研究の成果例は、先ほど石川の方からもありましたけれども、課題解決型の利用研究成果とか、相補的・協奏的利用研究成果として、これはJ-PARCの中性子と放射光を同じ試料で当てて調べてみると、中性子で見えるもの、X線でしか見えないもの、そういうものがきちっと分かれて明確に測定できる。その2つを相補的に分析することで、より構造が明確になるということがわかる。その下が、スパコンと放射光の連携でエコタイヤに開発につながっているということで、中性子と「京」と、今後、3つを連携する必要があるということで、次のページに、登録機関の連携による相補的・協奏的利用の促進ということで、播磨サイトのSPring-8とSACLA、それからJ-PARCの中性子施設、「京」のスパコンと、この3つの登録機関が連携して利用者の利便性及びサイエンスの開拓をしていこうということで協力しようということで今、枠組みがスタートしつつあります。最終的には、1つ課題を申請すれば、すべてに共通的に採択が可能になるようなシステムがよろしいかとは思いますが、枠組みとしてなかなか難しいところがあるということは聞いております。
 一番後に、JASRIとしての人材育成というものがあります。これは、内部の人材育成もそうですが、我が国の若手研究者の育成も非常に重要な視点になります。今後の科学技術を担う若い人材の育成が必要ということで、萌芽的研究支援課題というもの、これは修士又は博士課程の学生を対象に学生自らが実験責任者として課題を推進するということで、一人前の研究者としての育成を主目的にしたものです。
 もう一つ、右側に、JASRI内部の若手研究者の育成、今、GIGNOというプロジェクトが立ち上がっておりますが、これはJASRIの中の若い職員、研究者個人のアイデアをもとにした課題を採択することで、その研究水準を高めるということで、ここからいろいろと、先ほどお話ししたチョッパーだとか、いろいろな実験手法等の新しい手法の結果が出ております。
 それでは、最後になりますが、これは少し登録機関側の立場としてお話をさせていただきます。理研の施設者としては5,000時間の年間運転時間のうち、ユーザータイムとして4,000時間以上、ダウンタイムが39時間、1%ちょっとというようなところ、今、非常に低い水準になっております。ただ、この23年、24年度、建設から15年を経過しておりますので、いろいろなところで、特に、高周波関係とか高圧関係の機器のトラブルが運転利用タイムの中で発生している。ただ、ダウンタイムに至っていないのは、いろいろなバックアップシステムがあって、100ミリではなくて80ミリアンペアにして運転をするとか、そういう調整をして、このダウンタイムに至らずにユーザーにビームを供給しておりますが、そういう頻度が徐々に増えてきているということです。これは、やはり15年とか20年というと、車も買いかえるという時期に当たりますが、こういう施設ですと、そろそろそういう寿命に差しかかっているということから、ユーザーの方に影響を与えないようにするためには、それらのことを少し考える必要があると思っております。
 以上です。
【福山主査】 
 はい、どうもありがとうございました。様々なことに関して御紹介がございました。御質疑、どうぞ。
【西島委員】 
 11ページの論文発表、数ですから、全体に数が多ければいいというものではないのですが、2012年に論文の数がぐっと減っている感じがするのですが、この理由と、2013年はこの影響を引きずるのかどうかということをお願いします。
【熊谷理事】 
 済みません、これは、論文が出るまでに大体二、三年の。
【西島委員】 
 そういうことですよね。
【熊谷理事】 
 ええ。
【西島委員】 
 だから、2012年の12月末にやっているからということですね。
【熊谷理事】 
 そうですね。今、ここでは、赤い矢印がありますが、12年は、恐らく前年度、前々年度の経緯を踏まえると同じぐらいのところまで。
【西島委員】 
 そういう意味ではコンスタントに出ているということですね。
【熊谷理事】 
 はい。
【西島委員】 
 それと、特別こだわりはないのですけれども、よくこういうときに、知的財産とする特許。
【熊谷理事】 
 ああ、特許の数ですね。
【西島委員】 
 特に専用ビームラインの独自分とか、理研BLの独自分の、いわゆる専用に使ったものについての特許というのは、数は押さえてはいるのでしょうか。難しいと思うんですけど。
【熊谷理事】 
 押さえていると思うのですが、なかなか特許に関するところは開示されたり、されなかったり、いろいろなことがありますので、我々としては、基礎データとしてきちっと持って、基本的には、登録機関として利活用が効率的に行われているかといったときに、1つの指標としては論文の数だったり、特許の数だったり、それから、論文にはならなかったけれども、技術報告書として次の人が、こういう過ちはしない方がいいよとか、そういうことも重要な部分がありますので。
【西島委員】 
 だと思うので、その辺は、市民感覚からすると、論文のためというよりは、やはり、建設費もかなりかかっているし、維持費も110億円ぐらいです。そうなると、後から出るかもしれませんが、そういう部分も必要かなと思います。
【熊谷理事】 
 後で、次回以降、もう少し詳しい資料はお出しできるかと思いますが。
【西島委員】 
 はい。
【福山主査】 
 ほかにいかがでしょうか。はい、どうぞ。
【小松委員】 
 先ほどもちょっとお尋ねしようかと思っていましたが、年間の運転時間が18年からずっと5,000時間ぐらいで一定になっているというのは、逆にいうと、これが、例えばもっと増えるとかいうふうにならないのかというのは、何か理由があるのかどうなのかということと、もう1点、人材の育成のところで、1つは、修士、博士課程の若い学生さんということと、もう一つは内部の若手研究者の育成をプロジェクトとしてやられているみたいですが、逆に、例えば、企業の方を受け入れて、恐らく企業、使うそばからすると専門的な知識が不足しているというところがあって、そういうところのプロジェクトがあると企業側ももっと自信を持って、もっと広がりを持った形で使いやすくなるのかなというふうに思うのですが、その辺はいかがでしょうか。
【熊谷理事】 
 はい、最初の方ですが、年間の運転時間は、確かにおっしゃるとおり、年間としては8,600ぐらいです。それの5,000時間しか使っていないのは、いかにももったいないという感じがしますけれども、実は、一番のネックは、先ほどスタッフの数というところで、利用研究促進部門が86名、産業利用室が23名で100名ちょっとなんです。実は、その100名ちょっとで26本の共用施設の面倒を見ている。なおかつ、その専用ビームライン施設とも連携をしていろいろなことの面倒を見ているということがありまして、これを26本で割ると、1本当たり3人ちょっとということになります。日本の国内の放射線管理規定からすると、1週40時間しか管理区域の中に入れません。そういう意味では人的な問題が、まず1つあります。それが解決できれば、多少、時間は増やせるかとは思いますが、次に来るのが、運転経費が、今、理研さんが施設者として年間5,000時間ぐらいの運転経費でやっているわけですが、それを増やさなければいけないということがあります。
 それから、もう一つは、運転時間は一定であっても、利用運転時間をもう少し増やせる工夫があるのか、ないのかということもあるかとは思います。ですから、5,000時間の中で、4,000を4,200とか4,300にすることができないのか、いろいろな方策があって、今、いろいろなことを検討しています。
 もう一つは、日本のメーカーさんに聞くと、夏休みとか冬休みに1か月も2か月もとめてもらっては研究開発に差し障りがあるので、年間、通年で運転してくださいという御意見の方もいらっしゃる。ハード的には、このSPring-8は、当初の設計のときから、冷房とか冷却という性能は夏でも運転できるようにはなっています。ですが、これは日本の文化というのもあって、夏ですと、当時、20年ぐらい前ですと、暑いので、スタッフの人が先に参ってしまうとか、最近は冷房とかいろいろありますのでそういうことはないので、人の問題と電気代の問題がクリアできれば上がる可能性はあるとは思います。
【福山主査】 
 今のことに関して、人の問題は別として、仮に電気代を包括したときに、5,000時間を8,000時間にすると幾ら余分にかかるんですか。
【熊谷理事】 
 今、多分、電気代が5,000時間で30億円と、簡単に言うと、実は、年間5,000時間運転しているんですが、この施設は年間365日、運転せざるを得ないベースの部分があるんです。それとその5,000時間、だから、8,600と5,000時間がありますので、どのくらいでしたか。例えば、これを1,000時間増やすと数億増やせばいくのではなかったかなと思います。
【福山主査】 
 トータル8,000にしても10億行くか、行かないか。
【熊谷理事】 
 だとは思いますけれども、ちょっとその辺は定かではありませんが。
【福山主査】 
 それが1つの問題と、もちろん人の問題というのは、確かに日本、ビームライン当たりのスタッフの数は記録的に少ない、それがもう一つのネックだと、概略は分かりました。
【熊谷理事】 
 それから、先ほどの産業界での若手ということですが、おっしゃるとおり、我々、日本の今後未来を担っていくのは、別に学術関係の若い人ばかりではなくて、メーカーの若い人も非常に重要な役割を演じるのだと思います。特に、先ほど石川の方から、次の計画とか将来計画という話がありましたけれども、実は、国のやる将来計画とかプロジェクトというのは、産業界の若手を育てるには非常にいいチャンスなのです。ある枠の中で考えるのではなく、その枠を外してとことん考えられるという場としては一番いいと思います。
 それから、今のSPring-8の利用の中で、確かに、おっしゃるとおり、メーカーの若い人たちが研修とか、1年間とか2年間来て、分析の方法とか、そういう手法を学んで帰られて、企業の中で活躍されるというのは大変いいことだと私自身も思いますので、そういう枠組みを作りたいとは思います。
【西島委員】 
 ちょっと補足ですが。
【福山主査】 
 はい、どうぞ。
【西島委員】 
 夏休みがとまるというのは、1つには、高エネ研も一緒に夏休みにとまってしまう。つまり、日本全体として2つ大きいものがあるのに、それが同時に一緒に夏休みというのはいかがなものかというのが産業界の意見で、もちろん夏休みで休むことを拒否しているということではないということで、そこが重要だということです。
【熊谷理事】 
 おっしゃるとおりで、これは以前、KEKのPFとSPring-8が同じ時期に同じように休むのはいかがなものかと、その話を昔、KEKとしたことがあるのですが、どちらも夏休みに定期点検に入りたいとか、そういうことがあってなかなか実現できていないのですが、やはり、日本の放射光施設をもう少し有機的に、常にどこかは動いているというようなシステムはつくった方がいいとは私自身も思います。
【福山主査】 
 そうですね。そういう方向での具体的なアクションはとられているんですか。
【熊谷理事】 
 いや、今のところとまったままになっておりますが、是非とも、それはしたいと思うのですが。
【福山主査】 
 そうですね、この機会に是非、そういう方向での具体的なアクションをとられることを。
【水木委員】 
 よろしいですか。
【福山主査】 
 はい、どうぞ。
【水木委員】 
 人材育成で非常に重要で、今、企業の方の人材育成の話もありましたけれども、企業に行く手前のところの大学の学生を教育するのは非常に重要で、取り組みされている萌芽的研究というのは、これは非常にいい取り組みだと思うし、旅費もきちんと出してくれますし、学生が当たると、それだけでもエンカレッジするということで非常にいいのですが、まだまだ中途半端と言うと言葉は悪いですが、もっと大学をうまく取り込むようなシステムをつくった方がいいと思っています。SPRUCの方でも少し新しいことを考えているのですけれども、ここに会長がおられますけれども、もう少し大学を長期的にSPring-8等に常駐させて、あるいは、逆に、今度SPring-8の人たちが大学に行ってというような交流も含めてうまく大学を利用されるシステムを作ってもらいたいと思っています。
【熊谷理事】 
 多分、石川さんの方が。
【福山主査】 
 はい、どうぞ石川さん。
【石川センター長】 
 そこは、SPring-8全体として取り組むべきところだと思っております。例えば、国のリーディング大学院プログラムと理研JASRIと組んで、リーディングからSPring-8利用というような形が始まりつつあります。
【福山主査】 
 ああ、リーディングはもう動いているんですか。
【石川センター長】 
 はい。例えば、兵庫県立大学の生命系はリーディングでプログラムを作って、ガチっと連携するようなことを考えておりますし、あと大阪大学、名古屋大学も始まる、京都もそういうことを考えていると、いろいろなところがそのリーディングの中でSPring-8を使って人を育てようということをお考えでございます。
【福山主査】 
 今のことに関連して、大変すばらしい動きだと思うんですけど、各大学が個別にSPring-8と何かネゴシエーションして決めるんですか、それとも、SPring-8の中で、そういうことに関して統一的に、コヒーレントに活動するというような、そういう仕組み、受皿ができているんですか。
【石川センター長】 
 今は、どちらかというと個別になっております。その辺をいかにまとめていくかというのがこれからの課題でございます。
【雨宮委員】 
 それに関して。
【福山主査】 
 はい、雨宮さん。
【雨宮委員】 
 今、水木さんの方からSPRUCということが出ましたけれども、SPring-8ユーザー協同体、1万人以上のユーザーコミュニティですけれども、その中で、今、取り組もうとしていることの一つが、既存の大学院を連合して大学院連合ということで、やはりSPring-8を使いながら若手を育てる教育プログラムをいかに作るかということを、ユーザーを中心にコーディネートしようとしています。
【福山主査】 
 そこが核になって、施設と大学をちゃんとつなげると。
【雨宮委員】 
 はい。
【熊谷理事】 
 少しだけ、施設者側から言わせていただきたいことが1つあって、大学院の学生さんの基礎レベルが大変落ちているように見えて。
【福山主査】 
 それは事実だと思います。
【熊谷理事】 
 やはり、SPring-8でこれからの人を受け入れるときに、ベースになるところをきっちりと教育をした人を送り込んでいただくのが、まず、大前提だと思います。
【熊谷理事】 
 大学、どこでもそれは困っているんです。高尾さん。
【高尾委員】 
 今、石川センター長からもお話がありましたけれども、今、大阪大学の基礎工学部を中心に文部科学省が概算要求しているプロジェクトの中にSPring-8と、神戸にあります情報通信機構の研究所と3つあわせて、教育と研究と両方をやるのをやっていまして、そこで実はJASRIと理研からオムニバスで先生方に来てもらって単位を2単位出すということを実は基礎工でやっています。基礎工だけではないので、別に単位を取らなくても聞きたいのは、大阪大学全部から来てもいいという話にしています。
【福山主査】 
 実態、どのくらい参加していますか。
【高尾委員】 
 やっぱり20人くらい来ますね。単位を取らない人も来ますし、基礎工で開講していますけれども、理学部の学生が来たりしていますので。結構、そろそろ地に着いてくるのではないかと、今、思っています。
【福山主査】 
 雨宮さん。
【雨宮委員】 
 大学院のレベルが低下するというのは、何をリファレンスとするかによると思うんですけれども、一般的に言えることは、施設がきっちりとした装置を作って、ユーザーが誰でも使えるようになればなるほど、使う側はブラックボックスで、使えればいいということになっていく。これは、ある意味、文明論的問題で、そういうことになればなるほど教育に力を入れていくことが重要だと。
 そこで、ビームタイムとの関係なのですが、やはり、SPring-8をこれだけ効率的に運転しているけれども、ユーザーから見ると大学院生をトレーニングしながらやるには、もうビームタイムが短過ぎる、そこが非常に大きな課題だと思っています。オン・ザ・リサーチ・トレーニングと、リサーチをしながら大学院生がちょっと失敗をしても、失敗も教育だという余裕がないと、失敗をしたら、これはもう貴重なビームタイムをむだ使いするのだと、しかも、この1期で論文が書けなかったら、次はプロポーザルを通らないと、こういう状況だと、大学院生はもう本当に頭にはげができるということもあるぐらいという状況はあるということだと思います。
【熊谷理事】 
 わかります。おっしゃるとおりだと思っておりまして、実は、ある人とその話をしたときに、やはり、施設が最先端になればなるほど若い大学院の学生が自由には使えなくなる、そこのところが一番まずいのではないかと。だから、ある意味では、大学院の学生に、どう使ってもいいよというような施設を、まずは与えることも必要かなと。それは、最先端のものでなくてもいい、とことんしゃぶり尽くすような、こんなことを言うと大変申し訳ないのですが、その人は中古マシンでもいいと言うんです。そういう経験をどこかで積まないといけないのではないかというのは、私も実感としてそう思います。
【福山主査】 
 確かに、教育の視点に対応した、十分対応できるようなマシンで経験を積んで、それで本当の実験に関してはもう少し新しいものでやると。確かに、そういうことを、SPring-8はいろいろ期待があるから、ビームタイムが、やっぱり最終的にもうちょっと確保できるかどうかという問題があります。
【石川センター長】 
 よろしいでしょうか。
【福山主査】 
 はい、石川さん。
【石川センター長】 
 先ほどございました産業界の若手教育に関しましては、理化学研究所の中に、有効的連携研究といいましたか、そういう制度がございまして、若い方に来ていただいて研究をしていただくという制度がございます。それを使ってSPring-8をお使いになっているところが幾つかあります。また、資料等を公開いたします。もう公開はされておりますが。
【小松委員】 
 ありがとうございます。ちょっと調べさせていただきます。
【山田委員】 
 済みません、個々のことはこれから議論になるのかもしれないのですが、この15年間を振り返ってみて、課題数とか成果の数、ここ7年程度で飽和状況にあると思います。このことをどう分析していくかということが多分1つのキーポイントになるのではないかと思います。 この前、JASRIの評価委員会で、採択の競争率はどう年次変化をしているのですかという質問をしたときに、それもほとんど変わっていないということでした。採択数も余り変わっていない、競争率も余り変わっていない、ここ7年、8年が飽和状態にあるということを、どうこれから分析していくかというのが非常に大事なのではないかと、そういうふうに考えています。
【熊谷理事】 
 よろしいでしょうか。今の点は、共用ビームラインが26本で定常的になっているということもあるのですが、そこで私が非常に印象に残ったのは、APSで遠隔測定というのを導入すると、課題数が、今まで頭打ちだったのが、ほとんどリニアに伸びていると。ですから、利便性を上げることが必要なのかなという感じは今、しております。
【福山主査】 
 はい、それは大きな方向性です。雨宮さん。
【雨宮委員】 
 さっき石川さんのときにお聞きした方がよかったかもしれませんが、1つ目の質問は、SPring-8が当初のエミッタンスからどういうふうにして上がってきて、今、エミッタンスが幾つであるかということ。それから、熊谷さんの方から、いろいろなところが老朽化してマシンスタディが必要になってきたということに絡めて、このSPring-8を維持管理、若しくはアップグレードしていく責任というのは理研なのか、JASRIなのか。JASRIは登録機関ということになっていますよね、今後どういう仕組みなのか、ちょっとそこのところを教えてください。
【石川センター長】 
 このエミッタンスのアップグレードの話は多分、熊谷先生の方があれだと思いますが。
【熊谷理事】 
 後でします。
【石川センター長】 
 はい。アップグレードしていく責任というのは法律上、理研にあるのだと思っています。
【熊谷理事】 
 SPring-8の性能ですが、今から15年ぐらい前、1998年から利用を開始しているわけですけれども、その当初のエミッタンスが多分5ナノぐらいではなかったかと思います。その後、当初、ハイブリッドといって、挿入光源のところのデータファンクションが大きいところと小さいところを交互につないであるような、そういうラティスのときが5。その後、そういうハイブリッドじゃなくて、データは大きくてもいいですよ、高周波のところの不安定性は除去する方法があるので、それはいいですよといって、みんなハイベータにして、リスパージョンを漏らして3.47ナノまで下がった。最近はもう少し下げようということで、直線部のところを少し工夫するとか、4極マグネットの強さを変えるとか、そういうことをして、つい最近2.4まで下がっているんです。
 SPring-8に関しては、当初、設計したときと今のマシンは全く違うものと思っていただいた方がいいくらい、いろいろ進んでいる。そのために15年たっても、先ほど石川さんの方からありましたけれども、まだ最先端のところにいられるというのは、そういう日常的な積み重ねがきちっと行われてきた結果だと私自身は分析しています。
【雨宮委員】 
 はい。
【福山主査】 
 驚きなのは、もともとのリングがそのままなのに、どんどんそういうインプルーブメントができるというのは、もともと最初のデザインがそういうキャパシティの可能性を包含していたと。
【熊谷理事】 
 はい、やはり、こういう最先端施設というのは、これはちょっと言葉はあれなんですが、100%を目指すのですが、100%を目指して物を作ってしまうと、その後の拡張性とか将来性がなくなってしまうので、最初のときにどれだけのことを想定してその中にいろいろなものを入れ込んでいくか、そこが一番重要なところなんです。
【福山主査】 
 わかりました。南波さん、何か質問ありますか。
【南波委員】 
 先ほどの山田先生の質問にも関連するのですが、ここ7年ぐらい定常的になってきていると。これから先、データ等がいただけるのだろうとは思うのですが、分野の部分、当然として、今回見せていただいた利用の研究成果、これはある意味でトップの部分のエポックを出されたのだと思います。すると、ベースの部分、全体的な課題を支えているような部分があって、それの中身の部分でどうなのか、当然、今、高分子の産業関係のところがかなり増えているというお話も伺っているのですが、バイオ関係であるとか、そういう利用の分野ごとのところどこが変わっているのか、変わっていないのか、その辺の論文等も含めて、その出ている成果の部分のところのデータを、後ほどでよろしいのですが、見せていただきたいと思います。
【熊谷理事】 
 わかりました。私もちょっとそこに興味があって、利用が開始されてから分野とビームラインとがどういう関連になっていて、どういう分野が入れかわりになっているかという表を今、作ってもらって、出てきているのですが、まだ分析を全然していません。私自身、大変に興味があります。
【福山主査】 
 今のことに関連して、この評価委員会としては、やはり、マシンを使って何ぼなので、この15年間でサイエンティフィックなアクティビティ、アウトプットが何があったかというハイライト、それから、ずっといろいろレンジがあると思うんですけれども、その成果の数量的なこと、分野のこと、数も含めて、そこら辺のデータの紹介が、どこかの段階でこの評価委員会であることがやはり議論の基本だと思いますので、是非、すばらしい、わかりやすいデータの御提示をお願いいたします。高尾さん、何か。
【高尾委員】 
 先ほど、2つの共用ビームライン、ナノビームの話がありましたけれども、実は、私は、JASRIができたときに、今でもありますけれども、利用推進協議会、実はその中の委員をやっていて、あのころマイクロビームは夢のまた夢だったのです。それがいつの間にかナノになってしまった。そうすると多分、ユーザーも変わっているはずなので、ビームラインの方のファシリティが改善された分、ユーザーが、今まで使いたくなかった人が使いにきたとか、あるいは、使っていた人が使わなくなったとか、いろいろあると思うので、15年間に本当に物すごく変わったと思うので、その辺も追いかけていくことが次の10年にもつながるのではないかという感じがしました。
【福山主査】 
 そうですね。これから順次、いろいろ意見交換したいと思います。
 それでは、次のテーマに移りましょう。前回の中間評価に関して、概要を事務局から御説明をお願いします。
【神部補佐】 
 平成19年に実施しました前回評価の概要について説明をいたします。資料5を御覧ください。
 平成19年に第2回のSPring-8の中間評価を実施しております。1ページ目にございますとおり、まず、その当時の目的ですが、1としまして、共用を更に促進すること、2としまして、質的、量的な一層の充実、またその成果を社会に還元すること。3としまして、効率的・効果的な組織運営を図ること、この3つを大きな目的としまして評価を実施しております。今回、評価をした際にも、この3つの大きな柱というのは変わらないと思っております。また、対象は、SPring-8にかかわる取り組み全般としまして、方法としましては、設置者及び登録機関によるヒアリング調査、またユーザーによるヒアリング、海外との比較、ユーザーへのアンケート調査等を行っております。
 2ページ目ですが、当時の評価をしていただきました委員の皆様の名簿でございます。田島委員と山縣委員には、前回に引き続き今回も評価をしていただくことになっております。
 3ページ目ですが、前回評価の背景でございます。まず、当時の施設の概要ですが、設置可能数は62本ですが、そのうち48本、約8割については稼動、又は建設、調整中でございました。また、政策的な位置づけですが、先ほどの経緯でもお話ししましたように、平成17年10月より、理研、JASRIの二者体制となりました。また、平成18年7月より共用法の改正がございまして、指定機関から登録機関に変わりました。それまでは運転経費を理研の運営費交付金として措置しておりましたが、18年7月以降は今の体制の補助金という形で目的を明確化するような形で予算措置するように変更しています。
 また、科学的特徴ですが、加速器のところです。こちらの方は、蓄積リングの電子ビームの時間平均輝度を大幅に向上させるトップアップ運転を本格的に平成16年より導入しております。そのほか、加速器にかかる高度化を進めたことにより、平成17年9月には、時間平均輝度を以前の3倍の強度で安定的に供給するということを達成しております。また、そのエミッタンスに関しましても、当時の世界最小を実現しておりました。
 また、その前々回、平成14年第1回の評価における提言の概要でございます。まず、SPring-8につきましては、平成14年当時におきましては、利用拡大期から本格的な利用期に移行されるということで、質的、量的にも成果を向上させることが提言としてされております。それを受けまして、前回、平成19年の評価までには、重点研究課題制度、パワーユーザー制度の導入、コーディネーターの増員、また、選定委員会への産業利用分科会及び産業利用ビームラインの設置などの対応をしてございました。
 このような背景のもと評価を行いまして、その結果の概要が4ページ、5ページになっております。まず、4ページにございます1の共用ビームラインにおける利用の促進です。こちらにつきましては、加速器・放射光源技術や測定装置技術につきましては高く評価されておりました。一方、先端装置の整備導入という面におきましては、諸外国と比べておくれているとの指摘がされています。そのほか、耐用年数を踏まえた計画的な保守の必要性についても指摘がされておりました。
 2の共用ビームラインにおける利用支援につきましては、利用者支援の質、パワーユーザー制度につきましては非常に高く評価されておりました。一方、先ほどのお話にも多くございましたが、利用者支援を行う支援スタッフにつきましては海外に比べて人員が少なく、現場のスタッフに大きな負担がかかっているということから、その増員の必要性、また、個々の研究分野やビームラインの特性等を踏まえつつ人員を適切に配置していくことなどが指摘されております。
 続きまして、3の共用ビームラインにおける利用課題の公募及び重点戦略研究課題制度につきましては、課題数が増加していること、また、その重点課題制度の効果により産業利用が、その期間におきまして倍増した点などについては非常に高く評価されておりました。一方、重点課題制度につきましては、その領域をどのように設定するのかということが非常に重要になってきますので、その領域につきまして、定期的に領域を評価し、対象となる研究分野等を適切に見直すことが重要であるとの指摘がされております。
 続きまして、5ページになります。4の産業利用です。先ほども述べましたが、共用ビームラインにおける利用研究課題に占める産業利用研究課題の割合が、この期間におきまして倍増していること、また、産業利用が様々な分野におきまして進んでいることなどから、その取り組みについては非常に高く評価されております。
 5、研究成果及び社会への還元につきましては、論文発表数が増加していることにつきましては高く評価されておりますが、まだ海外と比べて少ない点、また、その研究成果としまして開発された製品などが国民に幅広く周知されていない点などが問題点として指摘されております。
 6の運営です。こちらにつきましては、その設置者と登録機関が相互に連携し有機的、かつ効率的に意思決定されている点や、運営経費を補助金化したことなどが高く評価されております。また、成果専有課題につきましては、利用料を徴収する運営費回収方式で行っておりますが、その取り組みにつきましては妥当であると評価される一方、その当該利用料収入につきましては、その利用料収入をいかに有効的に利用環境に反映していくのかということが重要であるとの指摘がございまして、その反映されるための仕組みをどのように構築していくかということが重要であると指摘されております。
 最後ですが、7のその他です。こちらにつきましては、専用ビームラインについて評価を頂きました。専用ビームラインにつきましては、大半の専用ビームラインでは、その専用ユーザー以外のユーザーに対してビームラインを提供することを、設置者及び登録機関からは求めているところでございます。20%を目標値と定めているところでございますが、実態を鑑みたときに、ほかのユーザーにビームタイムを提供する余裕が余りないことなどから、その20%という共用目標が達成されていないことはやむを得ないとされております。一方、専用ビームラインにおける成果発表が少ない点については問題として指摘されておりました。
 以上の内容を踏まえまして、6ページ目になりますが、最後に、前回の評価の提言がまとめられております。こちらにつきましては、将来的なSACLAやJ-PARCとの相補的な連携などにより、今後ともSPring-8が我が国の研究レベルの底上げに大きく貢献することを期待しまして、特に重点的に取り組む事項として3つが提言されております。1つ目は運営基盤の強化としまして、マシンタイム、運転時間を5,500時間以上確保するよう運営費等の効率化を行っていく。また、利用者ニーズに基づきまして継続的な高度化による運営基盤の強化を図っていくことなどが重要であるとされております。
2、運営体制の強化としまして、理研との適切な緊張関係による登録機関の効率的な運営、利用促進業務と施設運営の一体性のある対応、また、その登録機関の研究能力向上による運営体制の強化が重要であると指摘されております。
 最後、3ですが、利用促進方策の強化としまして、先ほど申しました支援員が少ないという状況でございますが、その支援員の適切な人員を配置すること。また、戦略重点分野につきまして、その領域を含めました質の維持、また、利用料収入を利用環境へ反映していく仕組みを今後も進めていく、そして強化するべきであるというふうに提言されております。
 以上でございます。
【福山主査】 
 はい、ありがとうございました。いかがでしょうか。前回の報告書と、この最後のところの重点化すべき事項として指摘されている2の「理研との適切な緊張関係による登録機関の効率的運営」、これは具体的にどういうアクションがどういうふうにとられたのでしょうか。
【石川センター長】 
 これは例の仕分のときの御指摘にもあったのですが、パッケージ全部まとめて競争入札にかけると、もうJASRIしか取れなくなる。例えば、どうでもいいと言ってはいけないのですが、ビル管理的なところとか、そういうところは分けてやりなさいということを言われまして、ある程度、競争的環境が反映するような形での契約形態に変わりつつあります。
【福山主査】 
 実際、アクションをそういう方向でとられていると。
【石川センター長】 
 はい。
【福山主査】 
 それは全体的な運営にとってプラスになればいいですけれども。
【西島委員】 
 コストがあれば。
【熊谷理事】 
 私も何か言わないといけないのかもしれないのですが、いい面と悪い面と2つあるのだとは思うんです。先ほどから「先端性」とか「高精度」とか「高性能」というのがキーワードで踊っているわけですけれども、昔の放射光施設というのは、放射光施設の加速器とか光源をつくればそれなりの性能が出てきて、それで終わりですよと言っていたものが、今は、先ほどから話が出ているナノビームだとか、ビームのサイズが、昔に比べるともう100分の1とかで、ということは、装置側だけを一生懸命に精度を上げても、使う側のところに行ったら、もうてんでんばらばら揺れているということですので、施設全体を、ある意味では、建物、空調、冷却も含めてきちっと一体的に性能を保証する、確保するということが非常に重要になっているわけです。そういうことは、先ほどから「効率的な」といったところから切り離されてしまうところがあるので、SACLAの場合は、そこのところは一体で今も運営されていると思います。それほどその建物の重要性は高い。SPring-8も同じくそういうところは高いので、やはり中身はきちっと見直さないと、単に効率だけを追求していると性能がどこかに行ってしまうということにはなるかと思います。
【福山主査】 
 かなり難しい問題がいろいろありますね。ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
【西島委員】 
 これからもまた議論があると思いますが、一般論からすると、その成果はもちろん公表されることが望ましいのですが、5ページのところにある専用ビームラインの整備のところで成果発表が少ないということです。これは私もいろいろなところでよく言われて、必ず言っているのですが、成果発表が少ないということは、うまくいっているから発表していないだけだと。すぐに発表するような研究成果だったら何も専用ビームラインを作る必要はないのだということなんです。つまり、「専用のビームラインが伸びているということが非常に重要なところがあって、その成果発表が少ないというよりは、着実に進んでいるということである」と押し切るくらいのところが私は必要なのではないかと思います。それが、産業界が既に使っている割には発表されない主たる理由と、私はいつも同じことを言って大分定着したので、文部科学省も理解があるとお聞きしていますが。
 もう一つ、こういうことなんです。つまり、成果を初めから専有するのだと言っていて公開しないのは、これはもちろん当然ですが、成果をいつか公開するよというものがいつまでたっても出てこないものを、きちんと追跡して成果を発表しろと、ここのところを怠っているのかというと、そこが私は罪だと思うんです、罪と言ってはいけないかな。
【福山主査】 
 むしろ、そっちが問題だと。
【西島委員】 
 そこを混同しているんですよね。
【福山主査】 
 前の方のお話、確かにうまくいっていたら、もうそんな、外には一言も言えない、何も出すものかと。確かに、それは理屈だと思います。だけど、そういうことを客観的なデータでこうこうだと示す方法はありますかね。
【西島委員】 
 専用ビームラインをつくっているところはそうでしょう。
【福山主査】 
 だから、つくっているということだけでいいと。
【西島委員】 
 もちろん。そんな、先行投資をしているということは大変なことですよね。
【石川センター長】 
 専用ビームラインにもいろいろな種類があって、例えば、民間で作る場合には確かにおっしゃるとおりなのだけれども、国の機関とか大学とかが作る場合には、これはまた話が変わってきますので、多分、専用ビームラインだからという話ではなくて、専用ビームラインの中も一つ一つ見ていく必要があるのだと思います。
【福山主査】 
 確かに、それは十把一からげでやってはいけないと、それはちゃんと分けてと、確かに大事で。
【石川センター長】 
 もう一つ、追跡するシステムについては、JASRIさんで何かお作りになったんですよね。
【福山主査】 
 ああ、そうですか。
【石川センター長】 
 作りましたよね?
【熊谷理事】 
 はい、作りました。
【石川センター長】 
 それはJASRIさんで御紹介がいずれあると思います。
【福山主査】 
 はい、それではそれを期待しましょう。
【高尾委員】 
 絡んでいるので、仕事をしてから3年以内に出しなさいというのが、3年以内に出していなかったら、次は人材も充てられませんという意味があって、専用ビームラインなんかも、豊田中研さんのものなんかは、豊田中研さんの報告書の中で時々ワークショップを開かれていて、それで、細かい話ではないのですけれども、こんなことをやっているよというのをやって、それをSPring-8の報告書にかえるという作業を今、やりつつあるんです。そういう会社の報告書でも、一応、公開しているわけですから、それをSPring-8として認めましょうという仕組みを今、作りつつあります。
【福山主査】 
 認めるという意味は、ちゃんとデータとしてSPring-8に入ると。
【高尾委員】 
 そのウェブ上でリンクを張るということをやろうとしています。
【福山主査】 
 はい、そうなればベストだと。
【高尾委員】 
 まだあると思いますが、ちょっと絡んでいるので、申し訳ありません。
【福山主査】 
 確かに、しかるべき情報が外に出るということは大事なことなので。
 この文章でずっと気になっていて、前にも気になったのですけれども、「パワーユーザー」という言葉、これは和製英語で、評価委員会の当初のときに外国の人からいろいろ笑われた経緯があるのですけれども、今では国際的に通用しているのですか。「ポテンシャルユーザー」という言葉であって、「パワーユーザー」というのは外国では使わないと。10年、日本が言っていて、もう社会的、国際的に通用するようになったのかもしれません、どうなんですか、当事者。国際的に「パワーユーザー」と言って苦笑が出てこないですか。
【熊谷理事】 
 確かに「ポテンシャルユーザー」の方が適切だと思います。中身を考えると、こちらの方が適切だと思います。
【福山主査】 
 大分前にそういう指摘を私は受けたことがあるのですが、世の中、どんどん変わるので、言葉も変わるのかと、これは余談です。
 今、お話になったことは、これからいろいろな場面でまた出てくると思いますので、そのときにまた丁寧にお聞きしましょう。
 議題の4、作業部会の評価の項目と視点等々に関して、事務局から御説明をお願いします。
【神部補佐】 
 本作業部会の評価の項目及び視点についてということで、配付資料6を御覧ください。
 今後、本作業部会におきまして皆様に御審議いただくことになりますが、それに先立ちまして、現時点で考えられるSPring-8の問題点等を踏まえまして、事務局にて評価の項目及び視点の案を作成しております。これから説明します内容につきましては、飽くまで事務局の問題意識から作りましたので、先ほどの議論等を踏まえまして今後、修正していくことが前提となっております。
 まず、説明をさせていただきます内容は大きく分けて8つございます。1つ目ですが、施設及び設備の整備・高度化について。こちらにつきましては、SPring-8は、先ほどから出ておりますとおり、共用開始から15年以上が経過しております。平成23年度には老朽化により挿入光源の故障、又は老朽化による検出器の故障など、多数の故障が発生しておりまして、装置、機器の劣化が顕著になってきております。このようなことを踏まえまして、今後の保守、維持管理の方向性をどのようにしていくのかということが重要ではないかという点です。
 2つ目ですが、ナノビーム化等の技術発展、又は各国における3GeVリングの建設、又は各国における高度化、ESRFの高度化研究など、そのような状況を踏まえて、また、SPring-8の周辺環境としましては、SACLAが新しく建設されましたので、そのSACLAとの役割分担などを踏まえまして、今後SPring-8が目指すべき高度化の方向性についてどのようにしていくべきかという点が問題としてあると考えております。
 2です。こちらの利用者支援につきましては、親部会でございます先端研究基盤部会が昨年取りまとめました研究基盤戦略におきまして、前々から言われていたことではございますが、ユーザーニーズに基づく基盤技術開発が極めて重要であるとの指摘をされております。その点を踏まえて、このSPring-8におきましても、ユーザーの視点から求められる支援を実施ということが改めて重要ではないかということにつきまして、ユーザーのニーズをどのようにくみ取り、それを反映していくのか。そのユーザーニーズをくみ取る仕組みが構築されているのかということが重要ではないかという点が1つ目のポツでございます。
 また、財政的に厳しい状況でございまして、先ほどから問題として取り上げられております支援スタッフの増員がなかなか実現できない、難しい状況で、そのような中で、実験の自動化、又は遠隔操作など、技術的なサポートによる利便性の向上が今後ますます重要になってくるのではないかという点が2つ目のポツでございます。
 3つ目のポツですが、パワーユーザー制度、名称はあれですが、ポテンシャルユーザー制度というのが、前回評価におきましても非常に有効に働いているという指摘がされております。それは、恐らくこれまでも変わらないことではございますが、今後また利用者支援に関する新たな仕組みが必要かどうかという点が3つ目のポツでございます。
 4つ目のポツですが、登録機関におきましては、共用法の12条におきまして、登録機関がその施設を使う際には文科大臣に事前に申請することか定められております。これは、登録機関における調査研究活動というのが利用者支援にとって極めて重要であるということから、そのように法律上、定められているところでございますが、その登録機関における調査研究というのがユーザー支援に具体的にどのように貢献しているのかということも、改めて国民に見えるような形で評価すべきではないかということが4つ目の問題意識でございます。
 3つ目です。これは利用者の拡大についてです。先ほども少し議論になりましたが、利用者数及びその利用者の種類につきましても飽和的な状況になってきているのではないかというふうな問題意識のもと、新たなユーザーを開拓するためにはどのような取り組みが必要なのかというのが1つ目のポツです。2つ目のポツは、特に産業界ですが、産業利用というのが非常に増えてきまして、今、2割という割合を満たしているところでございますが、イノベーションを意識したときに、その産業界というのは極めて重要であるということから、より多様かつ効果的な産業利用を促進するためにどのような取り組みが必要かということが2つ目のポツでございます。
 4つ目、利用研究課題の選定についてです。まず、課題選定スキーム、既に今、いろいろな分野ごとに行われているところですが、その課題選定スキームにつきましても、改めてそれが適切に機能しているかどうかということが1つ目のポツでございます。
 2つ目のポツですが、重点研究課題につきましては、前の評価にも重点研究課題の分野、領域をどのように選定するのかということが重要であると指摘されているところでございます。これにつきまして、今後どのように重点課題を行っていけばいいのかということが2つ目のポツでございます。
 3つ目のポツですが、国プロジェクトとの関係におきましては、研究基盤戦略におきまして、大学や独法の研究基盤、研究施設設備につきましては、国等の研究開発プロジェクトにおける効果的な利用を促進していくべきということが提言されております。このような提言を踏まえまして、SPring-8と国プロジェクトにおける関係につきましてどのようにしていくべきか、ということが3つ目のポツでございます。
 最後に4つ目のポツですが、SPring-8の課題選定につきましての分野、又はその制度ごとに課題を採択している状況ではございます。そのような状況におきまして、SPring-8における研究全体、研究課題の全体像というものとしましてどのようになっているのか、それを把握してSPring-8としてはどのように研究課題の選定を進めていくべきかどうかということが4つ目のポツの問題意識でございます。
 続きまして、2ページ目になります。5の施設の運用運転について、でございます。これは、1つ目のポツは、施設の運転が効率的に行われているかどうか、運転委託などアウトソーシングが適切に行われているかどうか。こちらは事業仕分などの指摘がございましたが、ここは引き続き見ていくべき点ではないかというふうに考えております。利用料収入につきましては、成果非公開につきましては運営費回収方式、成果公開につきましては実費分の負担、又は特別な支援などによるプラスアルファといった様々な制度におきまして利用料収入というものを上げているところですが、これにつきましては、今後、また新たな取り組みなどが必要であるかどうかという点が2つ目のポツでございます。
 3つ目のポツですが、厳しい財政状況におきまして、また、その電力料金が今後、高騰していくことが見込まれております。そのような状況の中で、ユーザータイム、マシンタイムを増やしていくためにはどのようなことが必要であるか。1つ目におきましては、予算措置等ももちろんございますが、その調整時間の短縮など、工夫の面でやっていくべきことはないかということが3つ目のポツの問題意識でございます。
 4つ目のポツですが、設置者と登録機関の役割について、でございます。こちらにつきましては、法律上、その2つの機関につきましては明確に定められているところでございますが、その明確に定められているそれぞれの役割分担というのが、その2つの役割分担が効果的、効率的に実際になされているのかどうかという点が4つ目のポツの問題意識でございます。
 6のビームラインの運用整備等について、でございます。残り、ビームラインの設置につきましては5本という状況になっておりますが、こちらの5本をいかに戦略的に整備していくのかという問題意識。さらに、既存の共用ビームラインにつきましては、利用率がビームラインにおきまして100%のものがあれば、40%のものもあるというように、ビームラインごとにもそれぞれ濃淡があるような状況でございます。利用率が低いものにつきましては、今、もう飽和的になっている状況の中で、それらをいかに活用していくのかということが今後重要になってくるのではないかというのが2つ目のポツの問題意識でございます。
 7ですが、先端研究拠点の形成につきまして、こちらの1つ目のポツが、国際的な研究拠点、国際的な世界最高性能の施設としまして、国際的なオープンイノベーションというのが非常に重要であり、また、海外の知を取り組むことの重要性が叫ばれている中で、このような世界最高性能の研究施設を利用しまして、国際研究拠点として今後どのように取り組んでいくべきか。また、SACLA、J-PARC、「京」、さらには光ビームプラットフォームというのが新たに進められているところでございますが、それらとの連携・協力をどのように進めていくべきか。また、先ほど人材育成の話も出ましたが、大学等の連携を通じまして、学生の教育、若手の人材育成にどのように貢献していくべきか、ということを問題意識として挙げさせていただいております。
 最後、8ですが、研究成果の公表、社会への還元ということで、特許件数など、研究成果の量的・質的向上が図られたのかどうかということをデータできちんと評価していくことが重要ではないか。また、広く社会に周知されるよう成果の公表が行われているのか、さらに、それに関係しますが、戦略的な広報がしっかりと行われているのかということを挙げさせていただいております。
 続きまして、配付資料7です。以上申し上げました項目及び視点につきましては、今後更にそれぞれの案件、事項につきまして、第2回以降の議題とすることで、より深く掘り下げて議論していっていただきたいと考えております。
 ここでは、とりあえず、今、事務局の方で挙げました8つの項目を便宜的に議題に当てはめております。今後、各委員の出欠状況等を勘案しまして柔軟に議題などは変更していきたいと思っております。また、本日、御議論いただきまして、評価の項目及び視点につきましては変更が十分あり得ると思いますので、それによってまた変わってくるものと考えております。
 最後、配付資料の8です。こちらの方は、左に前回評価において指摘された事項を書いております。また、その右の欄に、その指摘事項における対応状況を埋める表になっております。こちらの方は、まだ対応状況につきましては埋まっておりませんが、今後、審議を伺っていく中で、前回評価への対応というところにつきましてもヒアリング等を行っていきますので、それを踏まえまして、順次、ここを埋めていくということを考えております。こちらに、前回評価への対応状況をフォローアップするための参考資料として順次、更新していくことを考えております。
 以上でございます。
【福山主査】 
 はい、ありがとうございました。これからこの作業部会で御議論いただく項目の整理をしていただきまして、大変御苦労さまでした。御覧いただいていかがでしょうか。こういうことを追加した方がいいのではないか等々、そういう御意見をここでいただければと思います。
【南波委員】 
 追加ではないのですが、ちょっと教えていただきたいのです。前回評価の段階のところの資料を見ると、ユーザーの満足度の調査のような形でのアンケート調査を行っている感じなのですが、今回の部分のところも、そういうたぐい類の、いわばユーザーの情報の部分、もちろん、理研さん、JASRIさんの方から情報は入る、あるいはここで書かれているように、委員であるユーザーの視点から見た意見というのは出てくると思うのですが、今、言ったデータとして、今、使われている方々の、アンケート調査とまでは言いませんが、そういうたぐい類のデータというのは出てくるのでしょうか。
【神部補佐】 
 ユーザーからの意見につきましては、まず、この委員会におきまして、ユーザーに意見等を発表していただく機会を設けたいと思っております。また、SPring-8のユーザーにつきましてはSPRUCがございますので、そちらの方と検討結果などを反映していくということで、ユーザーの声をくみ取っていかれればというふうには考えているところでございます。
【福山主査】 
 はい、雨宮さん、どうぞ。
【雨宮委員】 
 それに関してですけれども、SPRUCは去年の4月1日に発足しまして、全ユーザー組織ですけれども、この3月末で終わった去年1年間を通して、ユーザーの声をSPRUCとして集めました。大きくは、現SPring-8に対しての問題点、要望を吸い上げる。それから、今後、SPring-8がアップグレードしていくことに関しての要望を取り入れると、そういう形で意見集約を行っています。ただ、SPRUCというのは、基本的には全ユーザーが自動的に会員になるわけで、予算的裏づけがほとんどない。そういう状態で、本当に、いかに吸い上げるかという仕組みで、これが持続的に発展していくための仕組みというのは非常に重要な検討事項かと思っています。
【福山主査】 
 今のことに関連して、ちょうどいいところですので、議論をそちらの方に進めたいのですけれども、今日の御指摘の項目及び視点の4番目、課題の選定と、7番目の先端研究拠点の形成、及び、実は、先ほどちょっと議論をするのを避けたのですけれども、資料4-2で議論があった、13ページ、登録機関の連携による相補的・協奏的利用の促進、実は、この3つは全部つながっていて、今、雨宮委員が言われたことの根底にあることではないかと思って、この際、このワーキンググループで、是非、いいスキームができればと思います。
 結局、SPring-8の存在意義、大変な国税を使ってここまで来ている。それの一番のポイントはいい研究成果が出ること。そのいい研究成果が出るためにどうしたらいいかということ、結局そこに問題は尽きるだろうと思います。端的に言えば、いい課題、すばらしいユーザーが、いい課題を持ってきて、施設がそれに適切に対応すると、結局それに尽きるだろうと思います。言うのは易しいけれども、結局それをどうコミュニティ全体で進めるか。SPRUCができたということは、そういう方向で、中でいろいろ議論がされて、新しい課題のピックアップ、抽出に役に立つ、そういうきっかけにはなるだろうと思います。
 実は、SPRUCはSPring-8で、先ほどの資料4のところで、今日も議論がいろいろ出てきて、今の項目整理の7で指摘されている、ほかの大型施設、J-PARC、「京」、さらに、先ほどからの光ビームプラットフォーム等々、こういうものがバラバラではなくて連携して、いい研究成果ができるだけ早く、できるだけしかるべき人に伝わるような場の設定が必須だろうと思います。そういうアクションをとるということ、雨宮さんが先ほど言われたことを、組織ができたらいいけれども、ユーザーの意見をいろいろ取りまとめてどうということのアクションはなかなかとりにくい背後には、予算的なバックグラウンドがないということ。仕組みがあっても、動かすことがなかなかできない。
 今のようなことを総合したときに、まず、SPring-8、光の関係でそういう工夫がされて、更にそれが大型施設全体で情報交換されて、いいテーマを、ほかの国ではできないような貴重なテーマがピックアップされる、そういう機会を、是非、この際、日本で作るべきではないか。その場の用意なんかは、お金はたかが知れている、でも、ないと困る。雨宮さんが先ほど言われたことは、まさにそういうことだと思います。大したお金ではないです、本当に微々たるお金です。ただし、工夫して用意すれば効果はめちゃくちゃ大きい。そういう、サイエンティフィックの旬のすばらしい研究成果、ハイライトをお互いに紹介して聞かせてもらって意見交換をする場、これは是非、この際、皆様、行政まで含めて工夫して、できればと思います。
 最初から、この7のところで出ているから、もういいのだと思いますが、もちろん、このワーキンググループとしては、SPring-8の中できちっとやることなのですけれども、そこでとどめている理由がなくて、J-PARCも動いている、SACLAもいろいろ公開がある、それを理論的に支える「京」がある。是非、これは、全部の施設を視野に入れた研究活動の拠点、意見交換の場所。これは、ハードのものは何にも作る必要がない、だからお金は要らない、場の用意だけ。極端に言うと、各施設がちょっとした研究会、意見交換会的な旅費程度の用意だけで、金額は大したことはないんですよね。ただ、プログラムの作り方、組織の運営の仕方、これは工夫しなければいけない。これは大変やりがいがあるのではないかと思います。石川さん、どうぞ。
【石川センター長】 
 何でもいいから作るというのは、多分すごく簡単だと思うんです。でも、何でもいいからという作り方をしてしまうと、よそから見たときに、何か御用団体的に見える、例えば、我々が何かをユーザーに言ってもらうためにつくったとように見えると、これは全然逆の効果になってしまう。
【福山主査】 
 全くそうだと思う。私が言っているのは、全くそういうものではなくて、すべて公開するんです。
【石川センター長】 
 お金の出し方のところは、うまくやらないと変な目で見られる。
【福山主査】 
 私が申し上げたのは、お金の出し方は、会場費を用意するくらいのこと、あとは情報をとことんオープンにして、関心がある人はどんどん御自由にと、そこで思いもかけないおみやげが成立して新しい研究テーマが見つかって発展する、これは研究の世界でよくあることです。その用意をする責任が各施設にあるだろうと。その場の設定、オープンな場の設定、それは施設の社会的責任があると。
【石川センター長】 
 そこのところは間違いなく施設でできるのだと思います。ただ、グループ自体の何かを施設がサポートする形をとると、いろいろなことが発生すると。
【福山主査】 
 いや、それは、先ほどの資料の13ページ目のところで、「登録機関の連携により、施設間での相補的・協奏的な利用を促進」と、その最後、実際にこれをどうやるかということに関係するのですけれども、要するに、例えば3つの施設が研究のハイライトを年に1回か2回、定期的に共通の同じ場所で開く、それはオープンにする。そこで各施設からのハイライト、きっと元素戦略もどんどん出てくると思うのだけれども、そういう情報を提示されて、ポスターもあって、そこでいろいろ発表したい人はもうどんどんやる。そういうところで3つの施設をにらんで実態がわからないような人が、そこへ行くと、1つの施設の活動に関心がある人が行くと、実は、放っておいても全体が見える。いい話がそこで聞ける、えりすぐったもの、これだけの施設を使っての成果で、世界にプレゼントできないようなものだったら情けない、そんなことはあり得ない、絶対に世界に提示できるものがある、そういうものを聞いて意見を言う場を作る。
 これは、各施設が前面に出たら、やはりまずいんですよ。ただ、施設としてサポートはするべきではないか。そうなると、3つの施設を使って、これから元素戦略がどう展開していくかわかりませんけれども、そこでのいい研究などはそこで紹介されるようになるのでしょう。そこで聞くと、今まで関係ないと思っていた人が一緒に研究ができる。その典型が、やはり光と中性子で、これは既にこの書面で指摘されている、そういう仕組みをこの際、工夫ができるといいと思います。
【水木委員】 
 それは、学界の仕事がすごく重要で、学界もやるべきで。
【福山主査】 
 そういう感じがします。
【水木委員】 
 それは学界が頭に置いてやるべきだと思います。
【福山主査】 
 そうですね、学界が連携して、施設と施設が共生かどうかわかりませんけれども、そこはともかくコミュニティ全体でやっているということが見えるように。山田さん、どうぞ。
【山田委員】 
 非常にスケールが小さい話なのですけれども、それに関係することを昨年度、KEKの物構研がやりました。KEKの物構研は、J-PARCの中性子、ミューオン、それからPFの放射光、これは今まで別々にシンポジウムをやっていて、事務量も大変だし、来てもらう人も結構大変なので、去年合体して「サイエンスフェスタ」という名前で一緒にやりました。そうしたら、新しいユーザーが何と増えたんです。別々に2回やった人数と同じぐらいの人数が来て、すごく盛況で、後である人から、「自分は中性子とか、余り接することがなかったのだけれども、その日に行ったらみんな見られる。実際に共同研究がここでスタートしました」というメールを頂いて、非常によかったなと思っています。
PFのユーザーアソシエーションの経費に関しては、その物構研のサイエンスフェスタのところで、彼らに少し手伝っていただいて企業展示をやっています。その企業展示の収益金をUAの人が手にして、学生のポスター賞のお金に使ったり、ある部分は活動経費に使ってもらうというような工夫をしています。だから、非常にスケールは小さい話ですが、今、福山先生が言われたSPring-8、「京」、J-PARC全体のところも工夫次第で何とかできるのではないかと私は思っています。
【福山主査】 
 はい、どうもありがとうございます。そういう試みを。
【雨宮委員】 
 さっき石川さんが言われたように、SPring-8のユーザーの組織が御用組織に見えるようなお金の出し方はまずい、全くそのとおりだと思います。それで、じゃあ、ユーザー組織が1万人ちょっとの頭数がいますけれども、これは行政から見れば得体の知れないもので、法人でも何でもないからお金をつけるなんていうことはあり得ない。もともとSPRUCの前に利用懇というのがあったのですけれども、1,000名ぐらいで飽和しています。それは、SPring-8を作るときに、作りたいもの、電車に乗りおくれないという形で入ったもの、そういうことがあるので年間2,000円の会費を払ってもいいと思って入ってきたわけです。しかし、使えて当たり前という、村意識の全然ない新しいユーザーにとってみれば、要するに、なぜ税金を2,000円、利用懇に払わなければいけないのかという必然性は何もないわけです。
 だから、我々、村意識をなくそうと思えば、これはお金を取るわけにはいかない。得体の知れないものは、行政からももらえないけれども、ユーザーから取るわけにはいかない。そうすると、何もないところで、ユーザーコミュニティはどうやってミッションを果たせばいいのか、これは大きな問題なので、是非、皆さんからお知恵を頂きたいと思います。
【福山主査】 
 そうですね、この際、このワーキンググループで、これから数回の間にいろいろな意見交換を通して新しいスキームが自然に生まれるように、いい枠組みが生まれるように。高尾さん。
【高尾委員】 
 今、雨宮先生のお話で、私は、一応、SPRUCの企画委員みたいなことをやったので、それでちょっと一言です。実は、1万人の規模になると、その中でも、何か文句を言う人と、黙っていて使う人がいると思うので、今日、こういうところで議論されたことが本当は1万人のユーザーにどこかで知らしめていかないと、多分、世論にならないと思うので、その作業をやるのも、やはりユーザー組織だと思うんです。だから、ユーザー組織が一線を画してきちんとやった上で、議論をし合うということがどこかで必要かなと思っています。以上です。
【福山主査】 
 それぞれのお立場もあるでしょうから。ですけど、大事なことは、いい研究が出ればいいと。それでお互いに刺激し合って、また次のいい研究ができるように、その場の用意、これは是非、枠組みがどうあればいいかというようなことを、いろいろな視点からいろいろな問題があると思うのですけれども、このワーキンググループの間に、何かそういう方向性に関して出てくれば、このワーキンググループの存在意義、やった意義、将来残るかもしれませんね。
 この問題に関しては、今の段階でどうのこうのと結論を出すことではなくて、大きな問題だけど、これからそれを意識して、いろいろな観点で御議論いただくと。だけど、結局は、あくまでも基本にあるのはいい研究成果だと。その素材、種というか、要素は既にいろいろある、それをいかにピックアップするか、コーディネートするかという問題だろうと理解します。これはこれからの議論に期待したいと思います。
 それでは、以上で、今日の予定は終わりました。事務局の方からよろしくお願いします。
【神部補佐】 
 事務局より事務的な御連絡をさせていただきたいと思います。まず、次回の予定ですが、既に皆様の方に事前に予定を確認させていただいておりまして、その中から、皆様全員集まれる機会がなかなかないところですが、多数集まれるところとしまして、4月26日の10時から12時を次回の予定とさせていただきたいと思います。
【福山主査】 
 26日金曜日、10時から12時。
 今日、冒頭に御紹介がありましたけれども、この会議は定足数があります。割れるとずっと後まで続いてしまいますので、是非御協力をお願いいたします。
【神部補佐】 
 正式にはメール等で御連絡させていただきたいと思います。また、本日の会議の議事録等につきましては、作成次第、委員の皆様に御確認を頂きまして、非公開の案件を除きまして文科省のホームページに掲載させていただく予定でございます。
 また、本日の資料につきましては、お手元の封筒にお名前を御記入の上、机上に残していただければ事務局より後日、郵送させていただきます。
 以上でございます。
【福山主査】 
 はい、どうもありがとうございました。これで今日、予定していた議論はすべて終わりました。これで閉会とさせていただきます。御協力ありがとうございました。

お問合せ先

研究振興局基盤研究課量子放射線研究推進室

季武・宮嶋
電話番号:03-6734-4115(直通)

(研究振興局基盤研究課量子放射線研究推進室)