研究開発プラットフォーム委員会 先端計測分析技術・システム開発小委員会(第2回) 議事録

1.日時

平成25年6月13日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 3F2特別会議室

3.議題

  1. 平成25年度の公募実施状況について
  2. 本小委員会の調査検討事項について
  3. その他

4.出席者

委員

二瓶主査、佐藤主査代理、尾嶋委員、田中委員、飯島委員、江原委員、大堀委員、小野委員、菅野委員、杉沢委員、杉山委員、瀬藤委員、中村委員、藤宮委員、森川委員、柳沢委員、山科委員

文部科学省

生川振興企画課長、三宅研究開発基盤課長補佐

オブザーバー

小原JST理事、市川JST先端計測分析技術・機器開発推進委員会 総合評価分科会長、重茂科学技術政策研究所 科学技術動向研究センター長補佐、福田JST研究開発戦略センター(CRDS)フェロー、久保JST先端計測室長、児山JST先端計測室副調査役、黒木JST執行役

5.議事録

科学技術・学術審議会 先端研究基盤部会
研究開発プラットフォーム委員会
先端計測分析技術・システム開発小委員会(第2回)
平成25年6月13日


【二瓶主査】  それでは定刻になりましたので、本日の委員会を始めさせていただきたいと思います。本日は、先端計測分析技術・システム開発小委員会の第2回でございます。本日の議題は、お手元の資料にございますとおり、平成25年度の公募実施状況について、並びに本小委員会の調査検討事項についての検討を予定しております。
 それでは、事務局より配付資料の御確認をお願いいたします。

1.三宅基盤研究課課長補佐より,出席者の紹介と配付資料の確認があった。

【二瓶主査】    それでは、議題1番、「平成25年度の公募実施状況について」に入らせていただきます。昨年度、本委員会で取りまとめました平成25年度におけるプログラム実施の基本方針に基づき、JSTで更なる検討を行っていただき、平成25年度の公募実施に至っておりますので、本日はまず、本プログラムの取組状況、平成25年度公募の実施状況、それぞれについてJSTの事務局から御報告を頂きたいと思います。

2.JST先端計測室児山副調査役より、資料2-1~3-2に基づき説明があった。

【二瓶主査】  それでは、ただ今の御説明に関しまして、御質問、御意見ございましたらば御発言いただけますようにお願い申し上げます。どうぞ。
【田中委員】  島津の田中です。皆さん御存じとは思いますが、私自身、いわゆるライフイノベーションのところで、今、FIRSTプロジェクトを行っているところで、こういうターゲット、マーカーを計測するための診断機器及びシステムの開発というところにほぼ重複しているわけなのですが、逆に、私自身、これまで何年かこういうことを行っていて、それ以前から感じていたことは、日本ではマーカーとかを発見することは欧米に負けないくらい行われている。ところが、それが残念ながら、実際に使われる応用といいますか、診断に結びついていない。そういう基礎研究は、医学部で行われるのだけれども、というふうな、言い訳みたいなところがあったわけなのですが、今回こういうふうにたくさんの方、特に臨床の方、先生からたくさん応募があったということ、心強く思いますし、私自身も頑張らなければならないなというふうに思いました。
【二瓶主査】  他にいかがでございましょうか。ライフイノベーションに御関係の先生方から、何か一言ありましたらばお願いしたいのですが。
【菅野委員】  先ほどお話がありましたように、当初は少ないんじゃないかと実は思っておりまして、15件ぐらい来るかなみたいな感じだったのですが、これからちょっと審査して、玉石混交だと思いますので、その中から良いものを抜き取っていきたいというふうに考えております。
【二瓶主査】  それから、一般領域から大変たくさん応募があったわけですけれども、全体をご覧いただいている市川先生、何かコメントをお願いできませんか。
【市川分科会長】  一般領域からライフイノベーション領域が発足したので、一般領域からライフとかバイオ関係が少なくなるかなと思ったのですけど、意外と少なくならなくて、従来と多分パーセンテージがそんなに変わらないぐらいに出ています。ですから、ライフ関係にはいろんな種がたくさん転がっているような気がしますので、今後もこういうものを続けていったらいいのではないかと思っております。
【二瓶主査】  市川先生、ちなみに、ライフはどのくらいの割合、一般領域に入っておりますか。
【市川分科会長】  完全にはパーセンテージまでは把握しておりませんが、半分弱ぐらいですかね。
【児山副調査役】  大雑把に言うと、やはり半分弱で、若干は多分減ったんだと思うんですが、随分個別相談や説明会でも申し上げていまして、ライフへの申請条件というのは、必ずヒトかヒトの組織を扱うことですよということを繰り返していますので、扱う試料がマウスとなった瞬間に、多分、じゃあ、これは一般領域とあきらめた方が結構来たのではないかというふうに思っています。
【二瓶主査】  なるほど。いかがですか。
【瀬藤委員】  そうしますと、一般でこれまで公募してきたのと同じように、そういう人たちの受皿はちゃんとあって、新しい診断とつなげるところが、まさにエマージングしてきたというか立ち上がった。そこには皆が余り気づいてなかった大きなニーズがあったということで、これは非常に頼もしいですし、CRESTやERATOなどの経験者の方々もたくさん出しておられるということは、少なくとも基礎研究のレベルは非常に高いだろうということと、MDで基礎研究していた人たちが、もともとやはり患者さんにいつか立ち戻って貢献したいと思ってやってきた人が、多分、最後の仕上げという形で戻っていくという、かなりよく出来た話じゃないかと思うので、非常に期待しております。
【市川分科会長】  1点よろしいですか。ちょっと心配なのは、結局、ライフに大分予算が割り振られるので、いわゆる一般領域が少しシュリンクして、採択率が非常に厳しいような状況になりそうなので、今度、重点領域を立ち上げるとした場合には良く考えないと、一般領域がどんどん縮小して新しいものが出てこなくなってしまう可能性があるので、そこら辺は良く考えて議論してくださると非常に有り難いなと思っております。
【二瓶主査】  市川先生の御発言に関連して申し上げますと、今回、トータルの数といいますのは、この事業が始まって以来最大なのですね。しかも、どの回ですか、今までの最大の数値より2割ぐらいですか、上回っているんじゃないでしょうか。
【児山副調査役】  最大値は多分平成16年度の583が一番多いので、そういう意味では2番目でございますが、ここ数年からいえば、ライフがほぼ倍になっていると思っていただいてよくて、いつも大体200件弱でございますから、倍だと思っていただいてよろしいかと思います。
【二瓶主査】  平成16年というのは初年度ですね。
【尾嶋委員】  よろしいでしょうか。
【二瓶主査】  どうぞ。
【尾嶋委員】  そうやって応募がどんどん増えていくというのは非常にいいことだと思うのですが、一方、予算の点で、これを見ますと、平成24年度は37億円で、今年度35億円ですか、だから、2億円ぐらい減っているわけですよね。過去に比べて漸減をしているのでしょうか。それとも平成25年度だけがバッと減っているのでしょうか。非常に重要な分野なので。
【児山副調査役】  一つは、放射線計測とのトータルという点で見ると、実は、前年度、24年度というのはトータルで50億円になっていますので、今度51億円という形になって、1億円は一応増えている形にはなっております。ただし、一般領域はその分減っていますので、一般領域で見ると37億円から35億円に、2億円減っているという形になっております。この辺は厳しく御査定を頂いたなというふうに思っている次第でございまして、この辺は申し訳ございませんが、JSTの努力不足だったかなというふうに考えております。一般会計ですね。
【尾嶋委員】  一般会計ですか。
【児山副調査役】  一般会計です。一応、放射線計測はお財布が違うという形になっていまして、特別会計という形になっています。
【二瓶主査】  何かありませんか。どうぞ。
【三宅基盤研究課課長補佐】  過去の、平成16年からのトレンドで申しますと、基本的に平成16年の開始から数年間は伸びていたという状況がございますが、平成21年頃から若干縮減という状況になっていますが、今回、先ほど話がありましたとおり、復興特会の中で放射線計測というのが入って、一般会計というベースからいえば、平成21年から若干縮減傾向にございますけれども、復興特会の方が上乗せになっていて、今は平成24年度でいくと、トータルでいうと若干増えているという傾向でございます。
【二瓶主査】  それでは、次の議題に進ませていただきます。議題の2番は、「本委員会の調査検討事項について」でございます。今年度第1回の委員会ということで、平成26年度概算要求に向けて、ポイントとなる事項について、その周辺状況と併せて御説明をいただきたいと思っております。それでは、事務局からお願いします。

3.三宅基盤研究課長補佐より,資料4-1~6に基づいて説明があった。

【二瓶主査】  本日の議題はこの第2の議題が主要議題でございまして、十分に御意見を承りたいと考えております。まず、ただいま御説明いただきました資料全体に関して、何か御質問、御意見ございますでしょうか。
 少しプラットフォーム関係の経緯を補足説明させていただきたいと思います。先ほど御説明のありました資料5-1並びに資料5-2、二つ資料がございましたが、資料5-1と申しますのは、平成22年ですから約3年前、本委員会においての議論をまとめた資料でございます。この頃は研究開発プラットフォームという言葉遣いがまだなかったといいますか、まさにプラットフォーム議論が始まった頃でございまして、その状況もございまして、知的創造基盤の強化、あるいは、知的創造プラットフォームというような言葉遣いがされております。先ほどの文書の中にもありましたが、実は、このプラットフォームは、まさにこの本委員会、すなわち、先端的な計測分析技術・機器を開発する、その開発を幅広く、ありとあらゆるステークホルダーの連携を通して効果的に進めよう、そういう意味でのプラットフォームの構築を目指して、こういう言葉遣いの下に議論をまとめたわけでございます。いわば文部科学省の中で研究基盤プラットフォームの概念に属するプラットフォーム議論のこう矢であったのではないかと思います。
 実は、この文書がきっかけになりまして、2年前に研究開発プラットフォーム委員会、その上位組織としては、資料5-2にございます先端研究基盤部会というのが設置されました。この先端研究基盤部会の下に研究開発プラットフォーム委員会というのが設けられました。そこで2年間、研究開発プラットフォームの議論を進めたわけでございます。その成果の下に、昨年度、ナノテクノロジープラットフォームというプラットフォームというものがまず設置されました。これは本委員会の委員の皆様、よく御存じかと思いますが、ナノネットワークという組織が10年ほど前からございまして、ここにお見えの山科先生が大変お詳しいと思いますけれども、全国に配置されている比較的大型の電子顕微鏡の、いわば研究開発グループをつないだネットワークがございます。その先生方の研究領域を念頭に置いて、それを更に発展させてナノプラットフォームというものが昨年の夏、出来上がったわけであります。
 本年に入りまして、文科省直属の上記委員会により研究開発プラットフォームが設置されました。現在ありますのは二つございます。一つは、SPring-8のような放射光施設を中心に、SPring-8は別格ですのでそのプラットフォームに所属しておりませんが、つくばのフォトンファクトリー、あるいは全国に、これは尾嶋先生がお詳しいですけれども、どのくらいありますか、七つか八つございますか。
【尾嶋委員】  九つあります。
【二瓶主査】  九つですか。九つの放射光施設がありますが、そういう施設を中心に、光ビームプラットフォームというのが設置されました。もう一つは、これは私の理解では、理研を中心にタンパク3000というプロジェクトが実施されまして、非常に大規模なNMR装置群が設置されました。そのプロジェクトの後、大学にも理研から移設されたNMRが配置されたという経緯もありまして、NMR供用プラットフォームも設置されました。以上のような経過を経て、3年ぐらいの時間を経て、2つのプラットフォームが構築されてきたという経緯がございます。
 この委員会の上部委員会の研究開発プラットフォーム委員会といたしましては、先ほど話題に出ましたSPring-8、あるいは、J-PARC、スーパーコンピュータの「京」など、非常に大規模な研究基盤に属する施設群を含めまして、全国の共同利用に供することのできるような装置群、それを適宜プラットフォーム化し、大規模な先端研究基盤を構築しようという政策が現在動きはじめております。このような背景の下に、本委員会が行っているような新しい計測分析技術並びに機器を生み出す機能を持つプラットフォームを構築してはいかがかというアイデアを来年度の一つの要求事項にまとめ上げようという背景がございまして、ただいまの後半の議論、御説明が出てまいったわけであります。
 このようなことを念頭に置いていただきまして、今後、本委員会の本来の役目である先端的な計測分析技術を開発し、その装置を実体化して、我が国のいわば基礎研究並びに応用研究、これは学も産も含めまして、そのコミュニティに対して新しい技術、設備を供給する機能を持つプラットフォームを構築しようと考えているところでございます。
【尾嶋委員】  私もこのプラットフォームという考え方は非常に重要で大事な施策だと思っております。ただし、最近、いろんなところでプラットフォームという言葉が使われて、先ほども知的創造プラットフォームというのと、研究開発プラットフォームと、サブプラットフォーム、それから、今、説明のあった光ビームとNMR等、それから、ナノテクですか、一体どういう階層構造で、全体像として幾つあれば必要十分なのかという議論が私は必要じゃないかなと思っております。大学はもともとお金が非常に少ない、そこを知恵で補っていかざるを得ないような状況です。しかしながら、学内の共同利用とか全国共同利用みたいなものをうまく利用すればある程度成果が出る。ただし、科学技術基本法のおかげで、お金がだんだん大学の方に来るようになって、今度は各研究室がみんなばらばらにエックス線ディフラクションとかNMRとか買っている。
 日本の研究開発と外国の中の、特にドイツとの比較ということをよく言われるんですが、ドイツではこういうプラットフォーム的な形で、分析にしても、TEMにしても、それがかなり気楽にというか自由に使えて、面白いサンプルを作れば研究が非常に進む。そこの全体の効率性というのは、ドイツは素晴らしいという話をよく聞きます。是非プラットフォーム全体で、どういうプラットフォームが要るのかという議論を進めていく必要がある。予算がだんだん減る状況の中で、効率的に使う議論というのが非常に大事で、これがまさに成長戦略の要になっているという、そういう意識を持っております。
【二瓶主査】  いかがでございましょうか。御意見、あるいは、御質問でももちろん結構でございます。お願い申し上げます。
【田中委員】  資料6は含んでいるのですか。
【二瓶主査】  そうですね。申し遅れましたが、資料6、これがただいまの議論の出発点でございますので、資料6を御覧いただきながら、この関連で、どの内容でも結構でございます。御意見を頂きたいと思います。どうぞ。
【山科委員】  もともとこの小委員会が進めてきました先端計測機器開発事業というのは、田中先生とか小柴先生が装置を開発して、それでノーベル賞をもらって、新しいサイエンスの領域を創造していったと。そういうことがノーベル賞の課題に一致したのだと思うのですけれども、そういうことを今後、日本でまた更に後を追って進めていきたいというのが本来の機器開発事業だったのだろうと思うのです。それで、資料6の1)に書いてあります、特に今年の公募のライフイノベーションのカテゴリー1と2というのを設定してありますけれども、カテゴリー2の方が、むしろ基礎的な新しい装置をつくることによって新しい学問領域を生み出していく。カテゴリー1の方は、どっちかというと、今、こういう機械が欲しい人がいるから作りましょうという話だと思います。大きく分ければそういうことなのだろうと思うのです。
 それで、やっぱり文科省として国の科学政策の中で機器を開発するというのは、カテゴリー2の方になる。本来、この小委員会で考えた課題であり、ただし、それだけにこもっていてもなかなか発展性がないといいますか、世の事情に応じて、大震災があったからどうとか、それからまた、国の政策がこうなってきたからというカテゴリー1の部分は、むしろ枝葉の部分としてバリアブルに捉えて、カテゴリー2の方は、本来の考え方のところは基本のところとして、なかなか簡単には変えようがない、幹になる部分だと、そんなような考え方で課題の設定とかやっていく必要があるじゃないかなと、ア)のやつを見て、それから、先ほどJSTの方のお話を伺っていて思いました。
【二瓶主査】  先生おっしゃいますように、本事業、今年で10年目なのですが、当初掲げたのは、まさに田中先生の御業績が出発点になりまして、まさに先端的研究分野で、オンリーワン、ナンバーワンという言葉が大変はやりましたけれども、オンリーワン、ナンバーワンの装置作り、あるいは、方法作り、それを目指す競争的研究資金、そういう位置づけでスタートいたしました。御指摘のとおりであります。
 どうぞ、他の委員の皆様方、御自由に御発言ください。
【藤宮委員】  私もライフイノベーション関連で仕事をしておりまして、前回の議論の中で、研究費が海外に流れるという関連も、ちょっとこのカテゴリー1と2の議論には関係しているというふうに感じています。特に、カテゴリー2の方に関しましては、基盤的な、情報を集める、そういうふうな研究になりますので、ゲノムの配列を読み取るだとか、そういったところで全て出口ばかり見ている間に、日本はその分が遅れてしまいまして、そういうプラットフォーム的な装置の開発だとか何かというのは非常に疎かになってしまい、結果として、海外に研究費が流れるような状況になってきているのではないかなという気がしております。そういう意味では、2というのは、これからの日本の研究全体の進む方向としてはとても重要なのではないかということが一つです。
 それともう一つ、ちょっと最近感じていますのは、単独のマーカーで疾患がしっかり診断できるというものももちろんこれからもあると思うのですが、やはり、診断するのに複合的なマーカーを使って判定するという、そうしないとどうしても判定できないものが増えてきています。特に、がんだとかというのは多様性と後天的にまたいろんなバリエーションが加わってくるということが多くなってきていますので、個人ごとに診断の仕方もある程度バリエーションを持ったような判定でなければいけない。そう考えると、マーカーを見つけるということはもちろん重要ですけれども、ソフトウェアが必ずそこには必要になってくるだろうと考えています。ヨーロッパではかなり早く、1990年代からソフトウェアの規格をしっかり決めて、承認して、それを診断に用いていいというお墨つきを与えるルールがしっかりできました。アメリカでも1990年代の終わりぐらいには、そういったルールができております。ところが、日本ではソフトウェアに関しては全くそういうふうな承認のルールがないものですから、私どもがソフトを作って、製薬会社さんとかに採用になるんですが、その場合には、あくまでも診断はお医者さんがすべきであって、医師法の範囲で、ソフトウェアが勝手に診断してはいけないということになっているのですね。ですので、ソフトウェアというのはお医者さんをアシストする形で作っていいはずなのですが、非常に微妙で、承認がないために、日本ではほとんど今まで産業として成長してきていません。
 確かに、そういう問題点が指摘されて、昨年から経産省を中心にしてソフトウェアの承認制度はどうあるべきかという委員会が秋から始まりまして、この3月に中間報告が出ました。恐らく承認されるまではあと二、三年、そういったルールがはっきりするまではかかると思うのですが、このライフイノベーション領域でカテゴリー1と2を進めるに当たっては、今後3年とか4年とかオーダーで、そういったソフトウェアの存在というのを同時に意識しながら診断とかに用いられるような、そういうふうな流れというのを意識していく必要が結構あるだろうなという気がしております。
【二瓶主査】  今のような問題提起ですと、お医者さんの御意見が承れたらと思いますけれども、いかがでございますか。
【瀬藤委員】  今のは非常に難しい問題でして、一つには、ソフトウェアに限らないですけれども、今、ヨーロッパの比較の話がありました。アメリカと日本と大きく違うのは、アメリカで承認されたものについては、それによる医療過誤とか医療ミスがあったときに、患者は訴えることができないんです。つまり、それはもう社会としていろんなパスウェイで患者を救済するということを制限していまして、つまり、非常に審査が厳しいかわりに、その審査が通ったものについては、審査が取消しになるということはもちろんあるかもしれませんけれども、個別の訴訟というのは認められない。ところが、日本はそういうふうになっていませんので、いろんな医療の装置、もちろんソフトもそうですけれども、そういったものに対する製造責任というのが非常に厳しい訳です。先日もがんの診断ミスに対して、3,000万円の医療訴訟の支払命令というのが日本でありましたけれども、それが例えばソフトウェアでそういうことになったとなったときには、その会社に支払い義務が出てくるわけですけれども、米国ではそういうことはない訳ですね。そういうことがあると、リーガルコストが高過ぎて開発できないとなってしまうので、そうしますと、そこは社会の制度そのものの話ですので、こういったところで議論できるレベルのことではなくて、非常に難しい問題だなというふうに思います。
【二瓶主査】  どうぞ。
【田中委員】  今、山科先生とかがおっしゃったことで、ある意味、私が発言しなければならないということもありますし、特にこの資料6の1)のところのライフイノベーション、特に⑵ですね。ターゲットを解明するためのこういう新しい、従来よりもずば抜けて世界一の性能のものを作るということ、私自身も今、手がけてはいるのですが、それをちょっと裏返してみますと、従来見えなかったものが見えてくる。これ、ある意味、怖いことです。何でこんな病気に関連するものが、例えば血液の中に入っているのだと。こんなの今までないと思われていたものが見えてくる。それがある意味、怖い。具体的にはすみません、今、申し上げられませんが、そういったことが出てきます。
 何を言いたいかといいますと、ア)では、かなり皆さん頑張って、こうしたいというふうに、そういうふうに応募されていること自身、非常にうれしいことですが、そういったときにどうするかということも含めて、イ)のところの話に移るわけですが、ここは私、非常に重要だと思います。といいますのも、これはあちこちでもう既に皆さんがおっしゃっていることで、それを繰り返すことになると思うのですが、言わばこれからの日本は、課題を率先して解決する、そういった立ち位置にあるのかなと思います。課題、課題というと、すごい欠点のように思いますが、私たちはすぐ目の前の、ある意味、今から解決しなくてはならない課題として、いわば欠点を、私たちは率先してやるのだという利点に変えるというふうに、ほかの国がこれから多分、ほとんどの国がぶち当たるような課題、大体、ライフイノベーションをこういうふうにやらなくちゃならないのは、日本がこれだけ世界の最長寿国になって、今までは、例えば、がんとかアルツハイマー病とかになる前に天寿を全うしていたわけです。それをどんどん解決していかないとこれから先が見えない。
 例えば、四、五十年前、日本は科学技術でバラ色になるというふうに思っていたのが、そうじゃない。逆に問題も起きてくるというふうな、ある意味、すごくつらい状況にあるのは確かですし、それは、世界の人たちにとっても、遅かれ早かれ来ることですので、それを日本が率先して解決していく。ほかのところでも世界の先駆けになるという、ある意味ポジティブな話なんですが、逆に言えば、そういう課題を解決しなければならないということになると思いますので、それを地道に、まじめにやっていけるのは、日本だと思いますし、他の国が目をそむけても、やらないと言っても課題は全然解決していない。でも、日本がそれを世界で初めてやる。先ほど藤宮さんがおっしゃったように、日本は匠の力はありながら、世界のスタンダードを作ることには余り力が入っていなかった。幾らでもスタンダードを作れるのに、同じ匠の国であるドイツはそこをうまくやっていって、いつの間にかドイツが主流になってしまっている。これはものすごく残念なことなので、そういった目配りというか気配りもしつつやれば、ある意味、バラ色とまではいきませんが、何か日本はすごい国だなと、よくぞそういう課題を解決してくれた、ありがとうというふうに喜んで、みんなにスタンダードを受け入れていただけるようになると思います。
 飽くまでそういう仮定の話ばかりしていましたが、具体的な話も差し上げた方がいいと思いますので、私自身、鉄道ファンの端くれなので多少詳しいのですが、例えば、東海道新幹線、もう50年以上たっています。従来、コンクリートのような建造物は50年で終わりだと思われていたのが、それが何と、あと100年以上も持たせられるという、壊さずに、今のままのものをいかに生かして使っていくかという、そういったことを率先してやっているわけなので、それは別に新幹線に限らず、そういう構造物をある意味、ちゃんと点検して、例えば、余計なことを行わずに、実際に商売をものすごくうまくやっている企業がありまして、それは例えば、無駄な地盤改良を行わなくてもよいという診断、セカンドオピニオンをする企業が実際にありまして、言わば点検、診断を商売にしている。これは分析計測とは外れているかもしれませんが、そういったことがたくさんこれから課題としてあると思いますし、それは、日本だからこそ解決できる。日本がルールを作って、日本の方法を取り入れてください、その方がいいでしょうと。日本の知恵が生きる、日本の商売が世界に広まる。私、かなりバラ色のことを言ってしまったんですが、そういったことも考えられるんじゃないか。課題があり過ぎて、みんな日本は駄目だなと思っている。駄目じゃなくて、駄目なことを最初に解決する、そういういいポジションに日本はあるというふうに、かなりオプティミスティックなことを言いましたが、そういうふうに私は考えつつ、もう少し頑張りたいと思います。
【二瓶主査】  やはりここまでライフ、医療絡みですと、飯嶋先生、何かおっしゃっていただければと思います。
【飯島委員】  やっぱりライフの、今は機械関係の感じでしたけれども、健康のための診断技術はこれからどんどん比重が大きくなっていくと私は思っております。ただ、ここ何十年も新しい診断薬というのは、遺伝子は別ですけれども、出てきておりません。そういう新しい診断薬はこういった機器の新しい開発からどんどん生まれてくるということを期待しています。今は医薬ばかりに注目されていますけれども、病気になってからではなくて、その前に何とか防ぐということがトータルの医療費もコストも下げて、そういう新しい分野を機器の開発から導けないかと大いに期待しております。
【二瓶主査】  どうぞ。
【菅野委員】  ライフイノベーションの2のところの機器の開発ですけれども、プラットフォームという今までの議論となじむかどうか分からないのですが、結構大切なのは、こういうものが計測されることができるようになってきたら、実際の現場といいますか、患者さんの測定を始めてしまう。それで、ターゲットを見つけるというようなこともある程度始めるということが多分必要ですね。ですので、結構2番の場合は、ターゲットを解明するためといっても、例えば、タンパク質をシークエンスできるとか、あるいは、少量のものを感度良く測れるとか、そういうことだと思うのですけど、じゃあ、それを何に使って何を測るかみたいなところで機械が変わってくる。そういうようなことを考えると、実際に使いながら少しそれを仕上げていくというプロセスが必要かなと。ですので、1番の場合は、逆にターゲットがはっきりしているので、それはある意味、物が測れることをきちんと調べれば臨床にすぐ行けるわけですけれども、2番の場合にこそ、こういうプラットフォームみたいな枠組みがあって、使えるような仕組みがあると、ある意味、非常に早く応用が可能になるかなという気がいたします。今までだと機械を作って、さあ測りなさいといっても、やはり医学研究をしている人たちはどう測ったものかというふうになりますので、やっぱりある意味、多分、そういうところのつなぎが海外の機器の方がいいわけですね。だからこそ輸入して使う。それが、だからこそスタンダードになるというような面がありますので、ここら辺は是非物事を作っていくときにお考えいただくといいのではないかと思います。
【二瓶主査】  それでは、資料6の議論で今、ア)が大変貴重な御意見をたくさん頂きました。それから、3)に関連する議論も御指摘いただきました。あと、2)の部門と、これは新たにどういう重点領域を将来考えるかという話題であります。それから、エ)はもっと、何といいますか大事でございまして、大体、行政では10年も同じことをやっていると、そろそろ大幅な改革をしろ、あるいは、そろそろ廃止にしろという話が必ず出てまいります。そういうことのために、少し理論武装しようというのがエ)なんですが、もちろんどういう御議論でも結構ですが、例えば、森川さんはもう10年間付き合っていただいているので、ひとつ御意見いただけませんでしょうか。
【森川委員】  正確には8年でございますけれども、9年目になりましたか。これを事前に事務局から頂いて、私もいろいろ過去を振り返りながら考えたのですけれども、過去の議論の中では、せっかくここで議論をして領域を決めていて、それが割と継続性がないまま、かつては領域非特定と言っていた、今度の一般領域という方に少し流れるのを戻そうかという議論も途中であったと思うのですね。これは非常に選択と集中と、裾野を広げるという議論は非常に難しくて、どちらが正解というのはないと思うのですけれども、私はやっぱり、ちょっと裾野を維持しつつ、しないとピークも出てこないなというふうにこの9年間の中では考えてきました。その意味では、先ほども議論が出ました後半、3年前から出ているプラットフォームで、選択と集中をするためにもプラットフォームで共有化しながら、本当にそこに行くかというのは、それはある程度検証するプロセスとしても私は非常に重要だなというふうに思っていまして、私は8年間一緒にやらせていただいて、方向性としては正しい方に向いてきているのではないかと、手前味噌な言い方かもしれませんけれども、そういうふうに感じております。ただ、このプラットフォームをどういうふうに、この委員会をベースに生み出していくかというところはまだもう少し具体的な展開がこれから強化していくべきなのではないかというふうに感じております。
【二瓶主査】  大変貴重な御意見を頂きましたが、森川さんご自身のプラットフォームに対するイメージで何か御指摘ありませんか。
【森川委員】  いや、この辺は多分、杉山さんあたりがよろしいのではないでしょうか。これはタスクフォースでも一緒に議論させていただいた中では、二瓶先生や杉山先生が思っておられるプラットフォームに私は賛同している立場でございますので、もしよろしければ、杉山先生。
【杉山委員】  今まで色々な先生方のご意見を伺いながら、研究開発プラットフォームの中で、知的創造という名称をこの委員会で付けてきています。その観点で考えますと、この10年間で私は半分ぐらいしかいませんけれども、やはり計測機器をたくさん開発してきた中で、新しいデータがたくさん出てきていると思います。私の思っているイメージは、「データベース」というキーワードが一つあると思っておりまして、それぞれの分野、ライフだけではなくて、素材とか色々な分野において新しい計測機器が開発されてきて、それがどういうデータが出ているのかという視点で共有することによって、その計測機器でここまで分析できていて、更に、ここから先はまだ出きていないというような領域も明確になってくると思います。また、日本の計測データは非常に精度のいいものが出ていると思いますので、それらを使って、計算科学との融合を図り、そしてその結果として計算科学から新しい予測を生み、それがまた計測機器開発に新しいデータ取得を要求し、結果として、新しい計測機器開発ニーズが生まれてくるというような、サイクルを想定しています。先端計測機器開発というのは、まさに開発の結果として、計測データを出せるという強みがありますので、「データベース」ということを一つのキーワードに知的創造プラットフォームというのを考えたらどうかと思います。
【二瓶主査】  どうぞ。
【山科委員】  私もこの事業の一番初めのときに審査、JSTから頼まれて2年ぐらい審査に当たった経験があるものですから余計そう思うのですけど、最初にずっとこの事業を10年やってきて、いろんな製品が作られ、また、ものによっては消えていった、不発だったものもあるのかもしれませんけれども、とりあえず最初の1回目のときの審査を通った。それで、活動は開発を進めていった。それで事業が終わった。その製品、装置を一度俎上に載せて、それをどこまでこの事業のおかげで進んでいったのか。あと、どうすればよかったのか、そこがうまくいかなかったのはどうしてなのだろうかとか、そういう観点での評価みたいなものを漠然とするんじゃなくて、とりあえず1期生についてやってみることによって、プラットフォームの課題というものが見えてくるのではないか。私は最初のとき、先ほど申し上げましたように、審査に当たったから余計その印象があるんですけれども、その予後がどうなったかということ、そこに大変興味があるもので、確か前回もこの小委員会でそういう議論があったように記憶しておりますけれども、是非それはやってみることが大事だと思います。それがまた10年たったからもう要らないと言われることに対する理論武装になっていくんじゃないだろうかと、そう感じております。
【二瓶主査】  どうぞ。
【佐藤主査代理】  今、山科先生の話、最初の話も今の話も非常に奥が深いなというふうに思っていますけれども、我々もすごく気にしているのは、この先端計測分析プログラムが果たした役割というのは非常に大きい。科学技術に対する日本の進歩に対する貢献はものすごく大きいだろうと。私は最近入ってきたものですから、別の観点で見てみると、今まで開発してきたものがプラットフォームという観点で開発してきているものもあるだろうし、それから、システムとして開発してきているものもあるだろうし、あるいは、オンリーワン、ナンバーワンの技術として開発してきているものもある。それらを全部棚卸しして、全部一つの枠に入れたらどういうプラットフォームになるのか。そこがまず、この先端計測事業のプラットフォームを考える上での出発点じゃないのかなということで、前回も議論したときに、これは誰が調べたらいいのかというのが非常に困ったなと、要するに、それを分かっている人が本当にどれだけいるのかということが気になっていて、JSTの協力を得ないとなかなかまとめられないのかもしれないなと思いながら、でも、それをやっぱり少しやらないと、本当にこれからやっていく上で何が足りないのか、どういうものを組み込んでいけば本当の意味でのプラットフォームになるのか。
 藤宮さんが言われたソフトウェアが足りないよというのは、まさにそうで、私はヨーロッパにこの前、二瓶先生なんかと一緒に調査出張に行ったときに、ヨーロッパのNMRのプラットフォームというのがあって、11か国で何百台という装置が連携した形で、かつ、ソフトウェアも30個ぐらいあって、みんながそれを使える形になっていて、今、杉山さんが言われたデータベース論からいえば、データベースもそこに乗っかって、自由にそれを使えるような形になっているように見えるのですね。どこまでできているか分からないですけれども。そうすると、日本のプラットフォームというのは、本当にそういう形になっているのだろうかというのがすごく気になっていて、それをやっていかないとプラットフォーム戦略に負けるなと。産業競争力をつける、あるいは、力、価値への創造に向かうというふうにやったときに、そういうプラットフォームをつくっていかないと、本当の意味での大きな価値はなかなか生み出せていけないので、多分、この委員会が10年間やってきて、次のステップとしてはそこが一番鍵かなというふうに私は思っています。
【二瓶主査】  それでは、この議論はあと5分ぐらいで次の話題に移りたいのですが、御発言をどうぞ。
【小野委員】  今、プラットフォームの話がちょっと出ていたのであれなのですけれども。これは普通の庶民研究者といいますか、いろんな研究者がいる中で、いろんな高度な装置を使っていくプラットフォームがあるというのは非常に重要なことで、先ほど森川先生も裾野ということを言いましたけれども、そういう意味で大事ですけれども、それを周知していくというのですか、例えば、SPring-8とかの放射光、あれも昔からあったのですが、自分が使えるというふうに思っていませんでした。最近になってすごく実は役に立つということが分かって是非やりたいなと。やっと10年以上経って分かったということもありまして、そういう意味では、普通の研究者に周知していくというのですかね。
 田中先生から匠という話が出まして、匠も若いときから匠だったのじゃなくて、そのときから苦労してこうやって、志があってやっていく。日本でノーベル賞を受けた方も、賞に値するようなものを初め作ったときって決して恵まれたような状況じゃなくて、そういうところからやっていた。ごく最近の例も多いと思うのですけれども、そういう意味で、重点配分も大切だと思うのですけれども、結構裾野は日本も広いのだと。そういう意味で周知していって、多くの人が使えるようにするということが非常に大事かなと思いました。
【二瓶主査】  大堀さん、いかがですか。
【大堀委員】  私はこの委員会は新参者でございまして、ちょっと意見について言い切れなかったところがあるのですが、山科先生とか佐藤先生がおっしゃるところでクリアになったのは、過去の成果というものをきっちり棚卸ししたものがないと、次のものがどう進んでいっていいかが非常に感覚的な主観的なことになってしまうのではないかというふうに思います。小さな計測器メーカーの人間ですけれども、10年間この委員会をやってこられまして、結果的に見ると、計測機器というのは、正直、他国に決して勝っていないというのが現状のトレンドではないかと思います。ドイツの方が日本よりもどんどん伸びているというのは事実でして、これは単に科学技術的なことだけなのか、文化的な背景とか社会制度とか、そういうところもあった上でこの場で何をするかということをやらないと、具体的に進めていくのは難しいのではないかなというふうに今、考えながら聞いておりました。
【二瓶主査】  江原さん、いかがですか。
【江原委員】  私も大堀さんとちょっと似たような感じの印象を持っているのですけれども、この小委員会の立ち位置というか位置づけというのは、ちょっとまた私、今日の議論なんかを聞いているとよく分からなくなってきまして、プラットフォーム、機器の共有とか共用とか、その辺のソフト的なものもこの委員会で議論していくのかどうか。私自身としては、いわゆる分析技術や機器開発、それを推進するに当たり、寄与する研究課題であれば全てを分野問わずに受け入れて公募できるというのが文科省の位置であって、この小委員会もいわゆる機器とか技術的な方の話をする場所なのかなとちょっと思っていたのですけども、今日のお話を聞いていると、プラットフォーム、非常に大切なことだと思うのですけれども、その辺ちょっと、今後とも両方やっていかれるのでしょうか。その辺をもう一度説明していただけますでしょうか。
【二瓶主査】  結局、新しい技術、オンリーワン、ナンバーワンですね、それを目指す上でも情報の共有というのは大変大切ですし、比較的初期の段階に議論になったように、新しく作ったプロトタイプの装置、それをなるべく種々の観点のユーザーに使っていただいてブラッシュアップするというプロセス、それが今までの装置開発では弱かったのではないかと思います。また、一例ですけれどもデータベースの話もそうです。データベースを作るには、どういうスペックで、どう進めればいいのか、どうまとめ上げていけばグローバルにきちんと役立つのか、そのような観点が抜けていたように思います。それはトータルの性能といいますか、ゴールを目指す上では必要です。日本の装置、ハードは素晴らしいけれども、ソフトがどうだろうというのはよくある議論です。
【江原委員】  どうもありがとうございました。
【二瓶主査】  杉沢さん、いかがですか。
【杉沢委員】  私も新参者で、これまでの議論が把握できていないという立場にございますけれども、計測機器メーカーの研究開発の企画をしている立場から申しますと、我々の事業といたしましては、大学ですとか独立行政法人のようなところで生まれた新しい技術を製品化して事業として永続させていくというのが課題でございまして、その場合、当然、事業として永続させるための売上げを維持するということを第一に考える必要がございます。しかし、別の観点から申しますと、先端的な技術を使った計測機器の場合は、その技術を維持し、発展させる技術者の存在が絶対的に必要でございます。例えば、弊社の扱っているNMRですとか電子顕微鏡のような機器群では、世界のトップレベルの装置を維持するためには、トップレベルの人材を維持することが、絶対に必要でございます。過去を振り返りますと、弊社の中で消えていった機器事業も幾つかございますが、市場がなくなって消えていったというのは、これはしようがないと思うのですが、単純に技術を維持できずに消えて行った事業もございます。市場規模がある大きさを下回るようになりますと、一定のレベルの技術者を維持するという力がなくなって、それで、あるときに技術が消えてしまうということもやはりございました。そういった経験から考えますと、事業を維持するためには市場と技術者の両方が必要だなといつも思っております。特に、先端的な計測機器事業の場合は、高度な技術者層を維持しなければ、事業そのものも継続できないと考えておりますし、一旦失われた高度な技術者層を再び作り出すのは過去の経験では、不可能に近いことでございます。しかしながら、高度な技術者層を維持するにはある一定のコストが必要ですが、そのコストを機器の売上で確保できなくなったときに、どう判断するかを、常々、悩んでおります。
 特に、主力事業から離れたような事業というのは、なかなかそれがやりにくい部分がございます。また、景気の流れの中で、たまたまある事業がシュリンクしたときに、そこの事業が技術者を維持していけなかったということもございます。
 そういうことを考えますと、こういった研究開発プラットフォームというものがあって、その中で、例えば、当社に関係するところでございますが、NMR技術ですとか電子顕微鏡技術、のような基幹的な計測分析技術をある意味では国の基盤として、維持する仕組みが必要なのではないかと考えております。技術は人に宿っており、人によって作られたものは、その成果にすぎません。技術を維持し発展させるとは、すなわち、それをできる技術者を維持するということであり、そういった技術者をしっかりと維持・育成していただける国の基盤があるということは、いろんな意味で、重要であると考えられます。分析機器メーカーだけではなく、それを活用した産業をされている方々、あるいは、医療の分野の方々にとっても重要なことであり、ある意味では一つの保険になるのではないかと考えられます。たまたまあるときの経済的な流れで一つの技術分野が消えてなくなるというようなことを防ぐためにも、研究開発プラットフォームの中で、基幹的な計測分析技術者を維持・育成していくことは、重要な施策だと考えております。是非そういった施策を進めていただきたいと考えております。
【二瓶主査】  少し時間が足りなくなりましたが、柳沢委員、一言お願い申し上げます。
【柳沢委員】  私も全くの新参者でございまして、皆さんの議論に付いていけない部分もあるのですけれども、幾つかお話を聞いていて思ったことですが、先ほど小野先生が言われたことは私も本当にそのとおりだと思いまして、資料の中にもユーザー視点での話は強調されておりましたけれども、どこまでボトムアップをやっていく、どこまで国の政策を通じて、特にプラットフォームと呼ばれているものに関してですけれども、どこまでをトップダウンでやるべきなのか、どこからはユーザーが自然に集まってくるという、ボトムアップの進め方をするべきなのかというのが大事なのかなというふうに感じました。
 先ほどもSPring-8が別格だというお話がありましたけれども、あれはやはりボトムアップというか、自然に集まってきたからそうなったのではないかなという気がしまして、私はアメリカが長いですけれども、アメリカのそういう共用施設でも、本当に動いているところは大抵ボトムアップですよね。その辺が、ボトムアップイコール、まさにユーザー視点ですので、それをどこまで上からやるべきなのかというのは議論し続ける必要があるのかなというふうに、まさにそういうことを議論するのがこの場なのかなという気もいたしました。
 もう一点は、JSTのライフイノベーションの公募の資料を頂いて、非常に興味深かったんですが、特に今回のライフに関しては、ヒトの試料ないしは患者さんをインボルブしたものでないとクオリファイしないという非常に大胆な、それはそれで素晴らしいと思うんですけど、新参者としてちょっと伺いたかったのは、これはある意味、伝統的には厚労省がやっていた領域なのかなと感じまして、その辺、文科省と厚労省はどういうふうにお互い議論しているのか。その辺のインターフェースについて知りたかったです。
【二瓶主査】  菅野先生、何か一言ありますか。
【菅野委員】  多分それほどディスカッションがされていないと思います。どちらかというと、いわゆるNIHの議論が出てくるように、似たようなものに関して厚労省と経済産業省と文科省という形で、似たようなターゲットを持ったプログラムが作られる傾向にある。ただ、僕は結構そういうのにインボルブして分かったのは、それぞれ城下町が違うんですね。文科省は城下町が大学だから、プロジェクトは大学中心になる。経済産業省は城下町が企業で、プロジェクトは企業中心になる。厚労省は厚労省で、これまた病院が城下町なので、病院を中核としたようなプロジェクトになる。そこで結構、最初の能書きはみんな同じに始まるのですけど、実際の中身は意外とばらけているというのが私の感じがしまして、これはこれで日本風でいいのかなと。僕は『ブラック・スワン』という本を読んだときに、意外とターゲットするんじゃなくてばらまいた方がどこに芽が出るか分からないのでいいぞという、そういう話があったので、これは日本風のばらまきの図かなという気がしました。
 ちょっと付け加えて、他のことをちょっと言ってもよろしいですか。
【二瓶主査】  どうぞ。
【菅野委員】  重点開発領域として新たに設定すべき領域はあるかという問いに関してなんですけれども、僕、ちょっと気が早いので、放射能とライフイノベーションの状況を見たときに、特にライフイノベーション1というのはターゲットが分かっている。放射能もかなり絞っていますよね。そうすると、実は応募がどっと来るのですね。だから、政府がターゲットを絞った提案を募ると、実は応募が却って多い。日本人はそういうのに向いているかなという気がしますね。ですので、例えば、2みたいな方を、オンリーワン、ナンバーワンを目指すのだったならば、重点領域を挙げないで一般領域で押すか、それとも重点領域の挙げ方を変える。それがやはり、僕はいつも思うのはヒトゲノムプロジェクトですけど、アメリカで今度、オバマが脳のマップを作る。10年間、1,000億円ぐらい使うというようなことをぶち上げましたよね。これって多分、現状ではそれをやるための技術的基盤がないのですね。だけど、10年の間に技術基盤を作ってそれを達成するというようなことだと思うので、例えば、重点領域を作るというときに、こういう作り方もあるのかなと。夢みたいなものをターゲットにして、この委員会には荷が重いかもしれませんけれども、ちょっとそういうこともあり得るかもしれないと考えました。脳のことは、ひょっとしたら柳沢先生なんかの方がお詳しいかもしれませんけれども、もしコメントがあったら。
【二瓶主査】  それでは、時間が少し経過しましたので、この議論は、何せ時間が限られておりますものですから、御提案が一つございまして、この小委員会の下にタスクフォースを結成しまして、そのメンバーで少し集中的に揉んだ上で本委員会にまた御意見を伺うというやり方を取らせていただければと思います。もちろん、今日の限られた時間でまだ十分に御意見を承っていない先生方もいらっしゃいますので、その御意見を頂くことと、それから、議論を皆様方に適宜お伝えするということは、短時間の間でも工夫をしながら実施したいと考えております。
 いかがでございましょうか。御賛同いただけましたらば、そういう方針を取りたいと思いますが、よろしゅうございますか。
(「異議なし」の声あり)
【二瓶主査】  それでは、本日の議題の2に関しまして、以上で終わらせていただきます。
 一方、次の議題3についてですが、少し時間が押して大変恐縮でございますが、予定どおり10分強の時間で御説明いただきたいと思います。JST研究開発戦略センターにおいて、調査報告書、計測技術に関する研究開発動向を取りまとめていただいておりますので、その御紹介をお願いいたします。

4.CRDS福田フェローより、資料7-1、7-2に基づき説明があった。

【二瓶主査】  せっかくの機会でございますので、ただいまの御説明に対して御質問、あるいは、御意見がございましたら、5分程度時間を取りたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ。
【森川委員】  この10年間の間に、このプログラムは進化、発展してきたと思うんですね。要素技術、機器開発からソフトウェアプログラムになり、それから、プロトタイプ実証化実用プログラムになり、総合科学技術会議からも、このプログラム自体がS評価を受けて、是非社会に早く還元するような成果を出せと、そういう流れの中で、それは維持しつつも、私はこの10年間、献身的にリードされた二瓶先生の御見識とその危機感が、それをもう一回棚卸し、かつ、それを融合させ、より次元の高いところに持っていくためにプラットフォーム構想が出たというふうに私は理解していますし、今年から参加された委員の皆さんも、それは御理解を頂きたいと思います。
 先ほどプラットフォームのイメージだという話があって、十分に答えられなかったんですが、プロトタイプの機器を共用するということは、もちろんそれは入り口ですけれども、目指しているのは、それを使ったところで、更に知の融合とか知の創造まで、また新たに持っていきたいということだと思うんですが、私、そこで一つ提案なのは、4年ぐらい前にワークショップで、このプログラムで成果を上げた人たちが丸一日、何人か発表されてやったことがありますね。委員だけじゃなくて少し広く、確かJSTが主催されたと思うのですけど、あれは非常にいい場だと思うのですね。どうしてもJSTがハブになって、もちろんハブ・アンド・スポークで各研究者の方とやられているんですけど、その横の連携をとるためには、いろんな学会とかありますけど、この委員会、あるいは、JSTがそのテーマに基づいて選んで、選ばれたテーマの人たちというのは、非常にまた分野でも近いですし、横での気づきとか、今、最後の今後の取組でかいこうの場の設定というのがありますけれども、私はああいうようなことを、この委員会のプログラムを通じて出された成果の知的かいこうもプラットフォームの一つのイメージではないかなというふうに思います。
【二瓶主査】  他にはいかがでしょうか。
【田中委員】  1点。私にとっては真新しい資料なので、ある意味、うれしいというか驚いたのですが、参考資料の11ページ、対象の大きさと対象の変化時間、こういう切り口は初めてなのでしょうか。従来これはあったのでしょうか。
【福田フェロー】  こちらの資料は、2年前、2011年に発行いたしました、科学における未解決問題に対する計測ニーズの俯瞰調査の中で、このような表を作りました。そのときの担当者が、時間と大きさによってマッピングできないかということで取り組んだものの成果でございます。
【田中委員】  私自身はこれに対して何ができるかわからないのですが、こういうふうに新たな分け方、マッピングすることによって、意外に全く違う分野のものが近いじゃないかと。これ、こちらに応用できるじゃないかということを、なるべく多くの方に見ていただければ、この先端計測のみならず、ほかに応用できていいんじゃないなと。個人的な興味で面白いなと思ったので。単なるコメントでした。
【菅野委員】  よろしいでしょうか。
【二瓶主査】  どうぞ。
【菅野委員】  同じく参考資料の13ページですけど、第2がドイツの場合、「これらの研究は、中小企業を中心とした産業界が主導している」と書いてあるのですけども、ファンディングは国から出ているのですか。それとも、これも民間企業が全部ファンドしている状況でしょうか。
【福田フェロー】  私が直接担当していないので、ちょっと今、正確なお答えができないんですが、伝え聞いているところによりますと、もちろん、ものづくりをしている企業自体も投資していますけれども、やはりドイツの場合は、国の国研のような仕組みとか、大学と産業界の距離が日本と違ってかなり近いようなので、多分、国のお金もこのような取組には流れていると思います。
【菅野委員】  これこそプラットフォームみたいな感じなのかな。
【瀬藤委員】  ドイツはこういうもの、大学や研究機関が何か物を作ろうとするときにサポートするお金がものすごく多チャンネル、大きく三つぐらいあって、国からというのと、もう一つは、ヘルムホルツ協会のようなファンデーションがあるのと、あと、地方政府が非常にお金を出しています。三つは同じくらいの大きさで、ある意味、非常にオーバーラップ、先ほどの話もありましたけれども、同じ目的に違うチャンネルからお金が出てオーバーラップしているので、研究者としては非常に、どこかが落ちても他があるという形でやりやすいというふうに聞いています。
【二瓶主査】  他にはいかがでしょうか。せっかく御紹介いただきました、私ももう少しじっくり読み込ませていただきたいと思っております。委員の皆様方も是非、何か御感想、あるいは、アイデアがございましたならば、タスクフォースの委員会に御意見を寄せていただければというふうに思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。
【尾嶋委員】  今後の課題のところで、タスクフォースでも議論したんですが、3番目の研究と計測技術、装置開発の両方担えるような研究室というのは、なかなか存続し得ないというか、結構難しい状況にあります。大学で研究室を維持していくには外部資金を取らなくちゃいけない。それには、世間を驚かすようなパッと大きな花を咲かせて外部資金を取ってくる。CRESTとかですね。そういうときに地道に基礎的な計測技術の研究をやっていると、どうしてもそういう資金が取りにくいというのがあって、それが先端計測の中で何とか救ってもらえるという非常に大きなメリットがあると思うのですが、そうは言っても先端計測専門の研究室はだんだん減ってきている。これは我々も何とかしないといけないと思うのですが、人事の仕組みで、それがなかなか難しい。それに対して、企業と大学の間をつなぐ国研の役割がこれからますます大事になってくるんじゃないかなと思います。先ほどNISTの調査結果にもありましたけれども、そういうところがしっかりと両方をつなぐような役割を持っていると思うのですが、日本は産総研とかNIMSなどがもうちょっと重点的に、先端計測の責任を持ってもらうのがいい、というような感想を私は持っております。今でも非常に頑張っておられると思うのですが。
【二瓶主査】  それでは、いよいよ時間になってしまいました。また先ほどお願い申し上げましたように、タスクフォースの議論を効率よく進めて、次回のこの委員会までに御提案の内容を固めたいというように考えております。
 それでは、本日の議題はこれで閉めさせていただきまして、事務局から何か連絡事項等ございましたらお願いします。

5.三宅基盤研究課課長補佐より、今後のスケジュール確認があった。

【二瓶主査】  それでは、本日は長時間にわたりまして御議論いただきまして、ありがとうございました。第2回の委員会、これで閉会させていただきたいと思います。大変ありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

文部科学省科学技術・学術政策局研究開発基盤課

立元、下須賀
電話番号:03-6734-4098
ファクシミリ番号:03-6734-4121
メールアドレス:kibanken@mext.go.jp

(文部科学省科学技術・学術政策局研究開発基盤課)