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量子科学技術委員会(第6回) 議事録

1.日時

平成28年10月7日(金曜日) 15時00分~17時30分

2.場所

文部科学省 5階 5F3会議室(千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 前回の議論の確認
  2. 量子計測・センシング・イメージング(物理系)について

4.出席者

委員

雨宮主査、飯田委員、岩井委員、岩本委員、上田委員、大森委員、根本委員、早瀨委員、美濃島委員、湯本委員

文部科学省

戸谷文部科学審議官、伊藤科学技術・学術政策局長、岸本審議官(科学技術・学術政策局担当)、神代科学技術・学術総括官、渡辺研究開発基盤課長、上田研究開発基盤課量子研究推進室長、吉川研究開発基盤課課長補佐、植田研究開発基盤課量子研究推進室室長補佐、橋本研究開発基盤課量子研究推進室室長補佐

オブザーバー

平山祥郎 東北大学大学院理学研究科・教授、山口浩司 NTT物性科学基礎研究所・上席特別研究員、中川賢一 電気通信大学レーザー新世代研究センター・教授、廣田修 玉川大学量子情報科学研究所・所長、長我部信行 株式会社日立製作所・理事/ヘルスケアビジネスユニットCSO兼CTO、伊藤公平 慶應義塾大学理工学部・教授

5.議事録

【雨宮主査】  それでは、定刻になりましたので、第6回量子科学技術委員会を開催いたします。本日はお忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
   本日は、10名の委員に御出席いただいております。城石委員、平野委員は御欠席です。
   今回は、机上配付されています議事次第のまず(1)として、前回の議論を確認します。その後、(2)量子計測・センシング・イメージング(物理系)については、本日は5名の有識者に参加いただいております。後ほど御紹介いたします。また、分野有識者の方にも御参加いただいております。
   本日の会議ですが、委員会の運営規則に基づいて、公開という形で進めさせていただきたいと思います。
   それでは、委員会の開催に当たりまして、渡辺研究開発基盤課長から一言御挨拶をお願いいたします。
【渡辺課長】  ありがとうございます。研究開発基盤課長の渡辺でございます。先般からこちらの委員会は拝聴させていただいておりますが、研究開発基盤課というところでは量子科学技術分野をはじめとして研究開発基盤に関わる研究の政策ということをやっておりまして、計測分析のための新しい原理を用いて、新しいものをつくっていく支援プログラムをJSTを通じて実施しています。もともと田中耕一さんがノーベル賞を受賞したことを契機に、日本の計測は技術を持っている人たちはたくさんいらっしゃるのに、研究の現場で使われているのが6割、生命科学系は9割ぐらいだったりするんですけれども、外国製品が多いよねということで、日本の工業的な競争力の強化ということも含めて、そういった最先端の原理原則というものをどうしたら世の中の研究――まずは研究基盤です。研究基盤は世の中の社会実装に至るところのベータ版というかプロト市場だと思っていますので、そういうところで使えることにどうしていったらいいかということをやっております。特に今回御議論を頂きますセンシング・イメージングというところは、量子の振る舞いをどう取り込んでいけるかというところが次の日本としての競争力に関わっているのではないかと私自身は思っておりまして、今日の御議論も大変楽しみにしておりますので、どうぞ皆様方、よろしくお願いいたします。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。
   それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
【植田補佐】  事務局の植田です。
   お手元の資料を御覧ください。議事次第にございますように、資料1から2-5、並びに参考資料1及び2を机上配付しております。その他の参考資料はドッチファイルに入っております。資料に不備がございましたら、事務局まで御連絡ください。
   それでは、本日の参加者について、御説明させていただきます。
   議題(2)量子計測・センシング・イメージング――本日は物理系でございますが――について御説明をいただく有識者を御紹介させていただきます。
   東北大学大学院理学研究科の平山祥郎教授。
【平山教授】  よろしくお願いします。
【植田補佐】  NTT物性基礎研究所、山口浩司上席特別研究員。
【山口上席特別研究員】  よろしくお願いします。
【植田補佐】  電気通信大学レーザー新世代研究センター、中川賢一教授。
【中川教授】  よろしくお願いします。
【植田補佐】  玉川大学量子情報科学研究所、廣田修所長。
【廣田所長】  よろしくお願いします。
【植田補佐】  日立製作所、長我部信行理事、ヘルスケアビジネスユニットCSO兼CTO。
【長我部理事】  よろしくお願いいたします。
【植田補佐】  また、項目ごとの分野有識者として、慶應義塾大学、伊藤公平先生。
【伊藤教授】  よろしくお願いします。
【植田補佐】  以上の方々に御参加いただいております。
   NTT物性科学基礎研究所、寒川哲臣所長は所用により御欠席です。
   本日は、皆様、お忙しい中お越しいただきまして、どうもありがとうございます。以上でございます。
【雨宮主査】  どうもありがとうございます。
   それでは、早速議題(1)に入りたいと思います。前回の議論の確認として、量子計測・センシング・イメージング(生命・生命科学系)に関わる議論の骨子です。
   それでは、事務局から御説明をお願いいたします。
【上田室長】  上田でございます。
   資料1を御覧ください。事前にお送り差し上げておりますので、説明はなるべく簡潔にしたいと思います。
   これまでと同様なまとめ方をしていまして、まず研究動向として4つのポツ。最初は、科学の基本は観察にあると。現代社会のあらゆる活動の基本も観察にあって、超スマート社会といった未来社会にとっても計測・センサ技術は鍵となるということ。2番目に、量子力学的な効果を利用する、量子計測・センサ技術というのがあって、それが近年発展の兆しがあること。下の方に、欧米政府もやっている中で、ブレークスルーをもたらす技術と位置付けられているということ。生物・生命科学系においても、量子計測・センサ技術がさらなる革新を与える可能性があるという旨。4番目に、生物・生命科学系においては、固体量子センサあるいは量子もつれ光を用いた生体系イメージングが代表例として挙げられるという概況のもと、括弧書きでより詳しい内容を述べています。
   固体量子センサについては、内容が多かったので、概況と、3ページ目にあります応用可能性に分けて記載しています。固体量子センサにつきましては、まずはダイヤモンドNVセンタ。2ページ目に参りまして、このダイヤモンドNVセンタは常温・室温で動作する点が大きな特徴。したがって、実社会での利用はもちろん、生きた生体の観察に適して、磁場等を高感度に、また時間分解能もかなりスケーラブルに計測するという特徴。感度の面では、心磁とか脳磁といったピコテスラ、フェムトテスラという領域の磁気の計測も可能。これまではSQUIDと呼ばれる大型機器が必要だったこと。
   あるいは、ダイヤモンドNVセンタの製作技術としてはCVD等があって、いずれも我が国の大学あるいは国立研究開発法人が国際的にも高い製作技術を有していて、海外のグループからも依頼があるレベルにあることが特筆に値されること。
   1つ飛ばしまして、ダイヤモンド以外でも炭化ケイ素(SiC)が挙げられまして、最後のポツに、SiCを用いたセンサの特徴として、ダイヤモンドよりより生体を透過しやすい赤外波長という特徴があるので、生体内のより深い場所の状態の計測・センサに適している可能性があること、そしてこのSiCはパワエレ(パワーエレクトロニクス)の材料として研究が盛んに行われていて、高品質化・デバイス化、低コスト化の可能性があること。こちらについても、我が国の国立研究開発法人が製作技術を有しているとの優位性がある旨を記述しました。
   続きまして、応用可能性についてですが、応用可能性は非常に多岐にわたると。生物・生命科学系の応用としては、生体親和性がありますので、細胞などなどに対して磁場・電場・温度等の計測ができること、あるいはNMR・MRIイメージングの可能性、心磁・脳磁の計測による産業・医療応用の展開可能性。例えばとありますが、生体内の局所的な温度といった情報は、従来では観察困難とされてきたものであるので、生命現象の解明の新たなフロンティアを開き得ることが書いてございます。
   一応、生命系の話ではありますが、この固体量子センサについては、当然材料・物質系での応用も考えられますので、スピン流等の研究はもとより蓄電池、燃料電池等の電界・電流・温度モニタといったエネルギー分野、車載センサといった製造業分野の応用等が考えられる旨、また前回御議論がありましたように、地下や構造物にある水道管等での水の流れの存在といった、今までは計測できない用途も考えられて、すぐれた耐環境性があることから、超スマート社会における社会インフラ、エネルギー、製造業にわたるIoT利活用といったものについて、重要な役割を担う可能性も指摘できるといったことを記載しております。
   続きまして、量子もつれ光を用いた生体イメージング。最初は、量子もつれ顕微鏡ですが、通常の光の限界を超えることが可能で、1.35倍のSN比の例が報告されていること。次のページに参りまして、量子OCTでございますが、このOCTについても従来のOCTの記録である分解能を超える報告があること。従来のOCTは水があると分解能が著しく劣化するということに対して、量子OCTは量子もつれ光がもたらす特徴によって、水を通しても分解能がほとんど劣化しないという特徴があり、生体観察に適している旨を指摘してあります。次のポツにも、眼科で利用されているけれども、そこに対してより厳密な診断等の可能性があるということが書いてあります。
   続きまして、量子生物学についても御議論がありました。量子技術を用いた新しい生態観察手法という話、あるいは細胞組織中における量子力学的な効果の探索研究が萌芽(ほうが)的になされている。2012年には初の国際会議が英国で開催されている。その固体量子センサについては、ミトコンドリア等の細胞内の局所の温度、電子輸送に伴うダイナミクス、あるいは神経細胞の興奮により形成された微弱磁場といった、これまで測ることができなかったものの探索研究につながる可能性がある旨。このようにして、分子集団の振る舞いの時間発展、あるいは光合成といったものの電子伝達系の様々なエネルギーといったものの量子的理解が大事である旨が指摘されるということ。そして、物理学と生物学はこれまで専門用語等が異なってきたので、交流・融合が重要となることが指摘されるということです。
   日本の強み・課題というところに参りまして、まずは量子固体センサの製作技術が我が国研究機関に国際優位性があることが特筆される旨、これは半導体等のこれまでの長年の蓄積があったからと。一方、我が国にはそれを応用した研究グループの数は多くない旨も指摘してあります。その次のポツに、競争している海外の研究グループから材料提供の依頼があるけれども、そういう国際共同研究の在り方が問われている旨、人材流出に至ることになれば懸念される旨が指摘されています。次のポツは、最後に物理学と生物学の融合の研究グループの数が少ない旨も指摘してあります。
   最後に、推進方策の検討に当たって考慮すべき点ということですが、量子計測・センサは我が国の強みが多面的に発揮できる上、医療からエネルギー、製造業まで非常に波及効果が広い旨、突出した点と点をつないで、それで競争力を生み出す組合せがほぼ無限にあって、若手研究者のアイデアをもとにハイブリッド型の研究推進による競争力強化が強く望まれる典型というふうにまとめさせてもらっています。また、比較的小規模な研究費から立ち上げ可能な点も若手研究者の活躍といった意味では重要でよい領域であると。この量子計測・センサの開発には様々な分野の異なる分野や技術段階の間の連携、流動性が重要で、このような広がりにまたがるような基礎研究、人材育成が重要で、これによってオープンイノベーション人材の育成も期待されると。例えば、中規模の研究費の枠組み、あるいはフレキシブルな枠組みといったものの工夫によって、一層の分野を超えた連携、流動性が期待できるという御議論をこのような形でまとめています。最後に、異なる分野等でプロトタイプを示していく進め方というのは、可能性を明確化して異分野融合を促進するためにも有効であって、国際競争の観点からは、大きな体制での研究開発が必要と。これにはネットワーク型の研究拠点の形成による推進が適切ではないかという前回の議論をこのような形でまとめさせてもらっています。
   以上でございます。
【雨宮主査】  どうも。
   それでは、ただいまの骨子案の説明について、何か御質問とか御意見がありましたらお願いいたします。前回のまとめということですが、いかがでしょうか。
【根本委員】  1つお伺いしていいですか。
   前回の委員会のときに、上田委員もおっしゃっていたと思うんですけれども、中国の成長がこの分野は非常に大きくあるというお話があったような気がするんですが、それがここには取り込まれていないのは何か理由がおありなんでしょうか。
【上田室長】  済みません、すごく事務的な話なんですけれども、これまでの骨子にも全て最後のところにそういった旨が書かれていまして、今回も重複するなと思って書かなかったぐらいで、基本的は同じだと思って、事務局としてはこれまでの議論と同じで、ここにも適用されるなというふうに考えを持っておりましたところです。念のために書いておいてもいいかと思います。
【根本委員】  いや、というか、「国際的には」となっているところに、どうしても欧米企業や欧州企業という記述になっていて、最近はそういうふうに簡単には分けられずに、中国が欧米企業や大学に資金を出して、そこで開発しているとか、あとベンチャー企業の立ち上げに非常にアジアの人材が入ってきているとか、そういう新しい形というのもあるので、国際的というときに、欧米企業と欧州企業でというまとめ方は少し変わってきているのかなという気がいたします。
【吉川補佐】  事務局の研究開発基盤課、吉川です。
   今の中国の件ですね。これまでも最後の推進方策の中に書いていたんですけれども、今根本先生がおっしゃった中国の新しい形というのを、ちょっと我々の方でも把握した上で記載することにしたいと思いますので、よろしくお願いします。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
   この骨子案をこれで各回まとめて、最後に年を越えてまとめて全体を作るということですね。
【上田室長】  はい。
【雨宮主査】  1回1回こういうふうに骨子案を作っていってまとめるということですから、これはあくまでも最終まとめの前段階の備忘録的な意味だという位置付けで認識しています。
   ほかに、いかがでしょうか。
   それでは、特にないようでしたら、多分てにをはというか日本語でもうちょっとスムーズな表現になるという余地は若干あるかなと思っていますので、その辺ちょっとまた事務方にもコメントしながら、内容についてのあれは特に私はありませんので、その辺、最終的な骨子にまとめていきたいと思います。
   それでは、議題(2)に入りたいと思います。
   量子計測・センシング・イメージング(物理系)について、今日は東北大学の平山教授、NTT物性科学基礎研究所の山口上席特別研究員、電子通信大学の中川教授、玉川大学の廣田教授、日立製作所の長我部理事に御発表いただきますけれども、その前に事務局より趣旨等の簡単な御説明をお願いいたします。
【上田室長】  はい、ごく簡単に。
   前回、生物系ということで量子計測の議論をされましたが、それに続く物理系と。あえて分ける必要もないのかもしれませんが、2回続けて量子計測の御議論をしていただくというものです。どうぞよろしくお願いします。
【雨宮主査】  それでは、今申し上げた先生方から御発表いただきますけれども、それぞれの先生に御発表いただいた後に5分程度の質疑応答の時間を設けて、更にまた最後に全体的な議論の時間を設けたいと思います。
   あらかじめ全体的な議論でどういうところをポイントにお話しいただくかということですが、これまでもそうでありましたけれども、主に1番目に日本の強み・弱みがどういう点にあるか。2番目には日本は何に注力すべきか。3番目には、それを推進する上での課題及び分野の特性を踏まえて推進の方策の在り方についてどうすべきかと、その辺のところを議論していきたいと思っていますので、あらかじめそのことを頭に描いた上で御発表いただき、またその後の質疑をしたいと思っております。
   それでは、平山先生より「ハイブリッド量子科学など」の御発表を、10分ないし15分でお願いいたします。
【平山教授】  これは座ったままでよろしいですか。
【雨宮主査】  どうぞ、座ったままで。
【平山教授】  東北大学の平山と申します。今回、お呼びいただきまして、ありがとうございます。
   いつも会っている方、久しぶりに会った方、本当に久しぶりに会った方といろいろいらっしゃるんですが、割とよく知っている方が多くて、ちょっと緊張しています。
   今日は私が領域代表を務めております新学術のハイブリッド量子科学の概論と、それから私、東北大学でスピントロニクス国際共同大学院のプログラム長もしておりますので、その関係のちょっとした話、それから私自身がやってきた核スピン計測の話、これはちょっとマニアックになるかと思いますけれども、その辺をやらせていただきたいと思います。
   これは、量子技術の動向というものをちょっと非常に簡単にまとめてみたものなんですが、よく集積回路の世界でmore than Mooreとmore Mooreという話があるんですが、量子技術というのはもともとはナノテクノロジーとかメゾスコピックという1980年代に量子科学を使わないと説明できない現象がたくさんあるという話が出てきて、そこからスタートしていると思うんですが、一方でスピンみたいな量子をどんどん高度に集積化していって量子コンピュータとか量子中継を目指すという方向と、それから異なる物理量をハイブリッド化していくというハイブリッドの方向。こういう2つの軸があるかと思います。その究極の最後は量子ネットワークというものになるんだと思うんですが、このハイブリッド量子科学という新学術領域ではここまでいかなくてもここ(従来のナノテクノロジーとかメゾスコピック)から出たいろいろな領域にそれぞれ面白いターゲットがあって、そこを1つ1つしっかりやっていこうじゃありませんかということで、研究を進めさせていただいています。
   これはハイブリッド量子科学の構成になるんですけれども、委員でもいらっしゃいます根本先生が理論班の班をまとめていらっしゃいまして、その下に電荷・スピン班、フォトン班、フォノン班、公募研究班があります。ここの中に早瀬先生もいらっしゃいますし、岩本先生もいらっしゃいますし、あと今日これから発表する山口先生もいらっしゃるということで、この中にたくさん含まれているという状況になります。この新学術領域は、とにかく小規模な量子結合から生まれる技術革新、Quantum Enabled Technologyというものを目指していこうというふうに考えています。今日、山口先生がフォノンの話をやられますので、フォノンの話は今日はちょっと抜かせていただきます。後で山口先生の方から話していただくことにします。
   このハイブリッド量子科学は、例えばこれはいろいろ意見が分かれるところなんですけれども、例えばこれは我々のハイブリッド量子のメンバーによる最近の計算の例なんですが、エンタングルメントというのを用いると、例えば計測技術というのは実際的なノイズがあるような環境でもかなり古典よりも改善される見込みがあって、こういうものをうまく使っていくと計測技術の改革につながるであろうということ。
   それからいろいろな物理量というのを考えると、例えばテラヘルツまで考えるとフォトンというのは距離的にもエネルギー的にも非常に広がりを持っていて、フォノンもエネルギーは小さいんですけれども、距離的に広がりを持っていて、電荷・スピンというのは非常に距離は近いんですけれども、エネルギーは広い範囲を持っていて、こういういろいろな物理量を結合させようとすると、結局いろいろなエネルギーといろいろな距離というものを全部総合的に結合させるような非常に面白い世界が広がると、そういう魅力的な将来があるのではないかと考えて、この新学術領域を進めています。
   この新学術領域では、電荷・スピンを扱う班と、フォトンを扱う班、フォノンを扱う班があるんですけれども、私どもの新学術領域の一番大きな特徴は、材料とか構造に強い班というのが入っているという点です。こういう、ある意味で今まで古典的なものをやっていた班が入っているという理由は、1つはハイブリッドなシステムを作ろうと思うと、新しい材料とか新しい構造が必要になるんですけれども、それに迅速に対応するということ。それから、もう1つは、こういう今まで古典をやっていたんだけれども、すばらしい技術を持っているという人たちを量子の世界に引き込んで、日本の量子の人口を増やしていこうと、そういう目的を持って進めさせていただいています。
   これは、ここにもいらっしゃる早瀬先生なんかが中心になってやっていらっしゃる新学術領域の中の、これから進める予定の共同研究の一例なんですけれども、例えば伊藤公平先生、早瀬さんとかの慶應のグループではダイヤモンドの非常にいいNVセンタを持っていてこれでは非常に高感度に電流・磁場を測ることができる。例えば、これは古典的でカーボンナノチューブの薄膜トランジスタをやっている名大の大野先生のグループと組み合わせるとカーボンナノチューブのネットワークの中で電流がどういうふうに流れているかというのを非常に正確にミクロスコピックに測ることができる。こういうことができると、高感度センサとして非常にアピールできるだけじゃなくて、この電流の流れを測ることによってカーボンナノチューブの量子的な現象もきちんと解明していけるんじゃないかと考えています。
   それからもう1つの融合例ですけれども、これもここにいらっしゃる岩本先生がやられている面白い研究なんですけれども、カイラリティーをコントロールできるフォトニック結晶の中に量子ドットを1つ置いてやって、その量子ドットの中の電荷と、それから光の組合せをやる。それから、更にもう1つの面白い研究として、テラヘルツのアンテナの入り口のところにフラーレンみたいな分子を1つ置いてやる。そうすると、分子の振動とか分子の中の振動、それから分子の中の電荷の振動とテラヘルツが結合できるということで、この領域を見ていると、フォトンと電荷と、それからフォノンみたいなものの結合にも発展していけるのではないかと考えています。
   あと、ちょっとマニアックな話になりますが、私がやっている核スピンを用いた計測原理について、ちょっとだけ紹介させていただきます。
   例えば、この核スピンを用いた計測というのは、量子多体効果というものに基づいているんですけれども、例えば2次元の量子多体効果というのはどういうふうに大きな変化をするかというのを示したのがこの例なんですけれども、これは分数量子ホール効果の電子密度をちょっと変えたときにどういうふうにイメージが変わるかというのを示したものです。普通の分数状態で、例えば5分の2というのを見ますと、1%変えるとこれぐらい変化するんですね。ところが、3分の2のスピンのトランジションというのを用いてやると、0.1%変えただけで一気に変わる。これはスピンとスピンが相互作用するので、1個スピンが変わると一気に端っこまでスピンが広がるということで、不均一があっても非常に強い相関が起こるということで、量子多体系というのは、こういう面白い相関がたくさんあります。こういう強い変化を用いると、例えばここに核スピンが偏極しているところがちょっとあると、大きな変化が出るということで非常に高感度計測ができるということになります。
   この高感度計測を使うと、もう細かいことは言いませんけれども、例えば電子のスピンの偏極状態が二次元系でどうなっているか、それから、電子のスピンがどういうふうにナノ構造で揺らいでいるかというようなことが、新しい物理として今ぞくぞくと見えてきていますし、それから更に電子スピン系と核スピン系の多体の非常に強い相互作用みたいなもの、ディッケのスーパーラジアンス的みたいなものも見え始めてきています。さらに、ナノプローブと組み合わせることによってミクロスコピックな核スピン情報、あるいは電子スピン状態のイメージングみたいなものもできるようになっています。MRIについては、ダイヤモンドを用いるとスピン1個も見ることができて非常に高感度な計測ができるんですけれども、スピン1個の高感度な計測の場合には、やっぱり非常に距離が近くないといけない。この計測というのは、電流が流れているところで深いところで計測をしているので、それぞれ相補的に組み合わせて使われていくのかなと思っています。
   それから、私のやっている核スピンの関係では、ちょっとスピンナンバーというのにも注目していて、電子スピンというのは2分の1のスピンしか持っていないんですけれども、核スピンというのは例えばガリウムとかヒ素は2分の3、それからインジウムに至っては2分の9という非常にハイナンバーのスピンをもっていまして、この辺をうまく使っていくと高感度計測の可能性が、これはまだ可能性にとどまっているんですけれども、あるのではないかと考えています。
   あと、過去のこの委員会の議事録を見てみると、物理のキャッチボールというキーワードがあったんですけれども、ちょっと面白い一例が東北大学のスピントロニクス国際共同大学院の新田先生がやられている研究の中にあったので、それを1つだけちょっと紹介したいと思います。
   それは何かというと、スピン軌道相互作用のきちんとした測定ということで、新田先生は2002年頃に半導体のスピン軌道相互作用を局在、非局在というのを用いて測定しているんですけれども、つい最近、スピントロニクスデバイスで金属でもスピン軌道相互作用があって、それがスピン反転に非常に役立つかもしれないという話が出てきているんですけれども、金属のスピン軌道相互作用というのも、やっぱり同じような測定をすると非常にきれいに測定できるというのが最近明らかになっていて、半導体で培った基礎がここで活かしていけるということになります。先ほど説明しました、私がやっているような核スピンの計測みたいなものも、恐らく半導体で培ってきた基礎が将来金属系とかいろいろな系で役に立っていくのではないかなと思います。
   これがハイブリッド量子科学の波及効果のポンチ絵ですけれども、ちょっと時間が迫っているのでここはもう簡単に飛ばします。
   ハイブリッド量子系の魅力ですけれども、私が考えるハイブリッド量子系の魅力は、まず高感度計測の異なる物理量への変換ということです。例えばスピンで非常に高感度な計測ができるとなると、これをハイブリッド系では電荷、質量と置き換えることができますので、1つ高感度計測ができるといろいろなものにそれを応用していくことができるということ。それから、これは重要だと思うんですけれども、距離を超えた量子結合がいろいろ使えるということです。フォトンを使えば長距離の結合が使えます。それから、テラヘルツとフォノンを使えば中距離の結合が使えますということで、いろいろな距離を超えた形でハイブリッドなシステムが作れる魅力があると。それから、今まではメインにやられていたのはフォトンとかスピンなんですけれども、それに対して核スピンとかフォノンとか、あるいは新しいタイプのフェルミオン、マヨラナフェルミオンとかいろいろなものの物理的な活用というのが見えてくるというのもこの面白いところです。それから、更に物理的に非常に面白いのは、電子1個と機械振動みたいなマクロなものというふうに、ミクロ対マクロ。こういうもののハイブリッド化ができるということで、1個というのも非常に極限計測で面白いんですけれども、マクロな量子相関があるものというのはまた非常に自由度がたくさんありますので、そういう組合せにはまた非常に面白い物理があるのではないかと思います。
   全体的には高感度量子計測は比較的近い将来に応用の可能性があると思いますし、あと、計測技術は様々な科学・産業の基礎、広い範囲での発展性が期待できます。また、マクロな系の多体のコヒーレント相互作用などは基礎研究として大変魅力的かなと個人的には感じています。
   あと、量子コンピュータほどではないんですけれども、こういう小規模なQuantum Enabled Technologyというものにつきましても、外国では多分日本に比べて非常に大きな予算が走っているという現状がございます。
   今日紹介させていただいた個々の研究の内外の状況なんですけれども、ダイヤモンドはやはりダイヤモンドNVセンタを始めたシュツットガルト大とかが進んでおりますけれども、先ほども説明がありましたけれども、日本はダイヤモンドの作製技術等では大変すぐれているものを持っています。それから、フォトニック結晶とかテラヘルツにつきましては、日本独自の技術というものがございます。核スピン計測とかスピントロニクスの関連というのは、これは日本が総合的にも非常に今進んだ状況にあると思います。
   日本の強み・弱み、取るべき方向ですけれども、強みはナノテクノロジー、材料の基礎がしっかりしているということで、研究者人口も多いということで、ここは必ず将来役に立つと思います。それから、従来型の半導体、超伝導のリソースが世界をリードしているということが言えます。それから、半導体量子構造の物性研究のレベルは非常に高いといえると思います。
   一方、弱いかなと思うのは、トポロジカル絶縁体など新規材料ではやや出遅れているところが見られると思います。あと、ダイヤモンドもやっぱり研究人口が外国に比べると少ないのかなと思います。それから、広くカバーする様々な基礎研究が弱体化しているのがちょっと気になるところです。
   私の勝手なセリフで怒られちゃうかもしれませんけれども、日本にオリジナリティーのあるものをやっぱり大切にするということが大事で、よく「何に役に立つか」と聞かれるんですけれども、そうではなくて「面白いものは必ず役に立つ」と発想を転換して、面白いものをやろうじゃないかという気持ちがやっぱり重要かなと思います。それから、その一方で、トポロジカル絶縁体とかいろいろなものが今たくさん出てきていますので、先を越されちゃったものについて全てを追いかけるというのはなかなか難しいので、予算をうんと掛けて追いかけるものについては十分検討して、これは本当に物になるというものだけを追いかけるということをしないと、多分もたないかなと思うんで、その辺の取捨選択が重要かなと感じています。
   最後、関連研究を推進する上での課題ですけれども、最後はやっぱり基礎力が物を言うと思うんですが、日本の基礎研究がちょっと弱体化しつつあるような気がするので、そこが心配です。幅広い基礎分野の個々のアクティビティーが減速されないような政策というのを望みたいと思います。特に、短期の成果主義というのはちょっとやっぱり変えていった方がいいのかなと思います。そういう意味で、実用化を重視し過ぎるのはあまりよくないと思いますし、あと、高インパクトジャーナルを重視するという傾向もちょっと行き過ぎているのかなと思います。
   あと、これも先ほどもちょっと意見が出ましたけれども、国内の技術を国内で生かすことをもうちょっとうまくやってもいいかなと感じます。それからあと、大学の若手がやっぱりなかなか挑戦的な研究にじっくりと落ち着いて取り組めない状況がありますので、人材の育成、維持、確保の問題というのが重要になるかと考えています。
   以上ですが、簡単ですけれども、説明を終了させて頂きます。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。具体的な研究内容から、あとはいろいろ示唆に富んだサジェスチョンを含めて、どうもありがとうございました。
   それでは、平山先生の御発表に関して、御質問、御意見とかありましたらお願いいたします。
   どうぞ。
【大森主査代理】  大変興味深い御説明、ありがとうございました。
   時間の関係で飛ばされたスライドでお聞きしたいところが実はありまして、この一番右の方に脳科学・ロボット・AI等への波及効果があるというふうに書いておられて、大変興味深いんですけれども、量子ハイブリッド系がどういった形で脳科学とかロボットとかに波及効果をもたらすかという点について、具体的に御教示いただけたらうれしいんですが。
【平山教授】  まだ具体的にこうやってこうやってというイメージはないんですけれども、例えば一番簡単に言えばダイヤモンドとかスピンとか、非常に高感度な磁気センサというのは、例えばうまくすると脳磁場とかそういうものを測れる可能性もあると思いますので、そういうのをアレンジすれば脳磁場が測れるとかそういうことができる可能性があると思います。
   それから、あと、フォノン系とスピンとか電荷とかいろいろなハイブリッド系と考えると、例えば触角というのは振動になりますので、フォノンみたいなものをうまく使うと、触覚みたいなものを量子化していろいろな高感度のセンシングに使うとか、そういう将来的な展望もあり得るのかなと考えています。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
   どうぞ。
【湯本委員】  例えば、これは半導体の成長技術なり加工技術、それがキーになっていくと思うんですけれども、ここ10年ぐらい日本の半導体プロセスの、人も含めた競争力というのはどうなんですか。最後の方にちょっとコメントがあったんですけれども。
【平山教授】  これはちょっと私の偏った印象になってしまうかもしれませんけれども、加工技術とかナノテクをやっていく技術、それから非常にダメージを少なくしていいものを加工していく、微細構造を作っていく技術、それは日本は非常にすぐれていて、いい立ち位置にあると思いますけれども、その一方で、新しい材料をつくり出しているトポロジカル絶縁体とかレイヤードセミコンダクターみたいな新しいものを成長する技術、その辺についてはちょっと出遅れている部分があるかなと。
【湯本委員】  新しいものというのは、要するにこういうものを作ればというアイデアということになるんですか。
【平山教授】  それはちょっと難しいところがありますね。アイデアももちろんあるんですけれども、例えばその分野で結構進んでいる中国なんかの場合は、アイデアではなくてもう非常に人数を使ってじゅうたん爆撃的にばーっとやると……。
【湯本委員】  ああ、人海戦術でやっちゃう。
【平山教授】  100個作れば1個いいコンビネーションが見つかるという、そういう研究の仕方もやっている場合がありますので、それは日本は絶対やれないというか、人口的に10倍足りないのでできないというのがありますから、必ずしもアイデアだけではないかなと。
【湯本委員】  できることが分かれば今度は集中できるわけですよね。
【平山教授】  そうです。
【湯本委員】  だから、その最初の取っ掛かりをどうやって見つけるかというところになかなかリソースを割けることができない。
【平山教授】  そうですね。だから、最後のところにちょっと、ここで述べさせてもらいましたけれども、非常にじゅうたん爆撃的なことはできないので、そういうところについてやっぱりこれがいい材料だと分かったときに、それを加工していろいろ構造を作っているところには多分負けないのではないかなと思うので、そこをこの材料はやらなきゃいけない、この材料はやらなくてもいいというところをどううまく、いつ見切りを付けるかという、その判断が多分これからすごく重要になってくるんじゃないかと。
【湯本委員】  リソースが限られた中で……。
【平山教授】  そう。限られたリソースの中で何をやるのか。
【湯本委員】  やるのかっていう話になってくる。
【平山教授】  少なくとも日本にオリジナリティーのあるものは、うまくいけば将来ノーベル賞を取れるかもしれないというようなものは、やっぱりちゃんとやっておかなきゃいけないでしょうというふうには思います。それが役に立たないかもしれなくてもと思いますけれども。
【雨宮主査】  どうぞ。
【飯田委員】  よろしいですか。3ページ目の、メンバーの皆さんの顔写真が載っているページで、皆さんのインタラクションを積分形でまとめられているのは分かり易くてすばらしいなと思って拝見させていただきました。一点だけお尋ねしたいのですが、積分領域が理論になっているというところの意図を御教示いただければ幸いです。
【平山教授】  やっぱり、電荷・スピン、フォトン、フォノンとか、それぞれになると扱っている材料とかスケールが違うものですから、なかなかうまくコミュニケーションを取ってインタラクションさせようと思うと難しい点があるんですよ。ハイブリッド量子という意味では、理論では、ハミルトニアンを書けば全部1つ同じになるというのがありますので、理論を上に乗せると理論を通じて結合すると同じ状況が結構生じていて、理論をのりしろにしてくっつけると割とうまくいくのではないかと考えてやっているということで、今、新学術領域はまだ始まって浅いので、それがうまくいっているかどうかというのは、これから真価を発揮するか発揮できないかというところでございます。
【飯田委員】  ハミルトニアンが第1原理ということで全てが記述できるというお話と理解しましたが、ハイブリッドという意味では、半古典的なアプローチが処方箋になる気がしております。そういうミクロな第1原理から出発してマクロなマクスウェル方程式を書き直すと、従来の教科書に載っているような誘電率と透磁率という2つの感受率を用いて表わされるマクロな方程式とは異なった電流密度に対する単一の感受率で物質と電磁場の相互作用が記述できるということを、私の恩師の張紀久夫先生の理論で説明できます。平山先生の新学術領域でも、同様の議論も出てきているのでは思いますが、そういった半古典的な理論も多分こういったハイブリッド量子科学に貢献できるテーマではと思い、お尋ねした次第です。
【平山教授】  そういう意味で、理論をうまく使ってのり付けすると、従来だと全くインタラクトがなかったものがくっつくという可能性があるんじゃないかと思っています。
【飯田委員】  ありがとうございます。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
【根本委員】  平山先生も言及されていたように思いますけれども、事務局にお伺いしたいのですが、最後に人材の話が出てきたと思うんですが、これは毎回必ず出てきていて、人材が非常に日本は問題だという話になっていると思うんですが、どうしても若手が腰を落ち着けて研究できない現状があるということで、確かにそうだと思うんですけれども、競争という意味では日本より海外の方が激しいという事実も、若手の間で厳しい競争があるということを考えると、もう一度本当に何が問題になっているかということをきちんと調べていただく必要があるのではないかと思います。やはり教育の問題はどこにでも出てきて他の省庁さんでも人材育成の問題というのはよく上がるんですけれども、やはり教育ということだと文科省さんだろうという話になるわけですね。そのあたりをどういうふうに今文科省ではお考えなのかというのをちょっと教えていただけないでしょうか。
【渡辺課長】  そちらの方は、この上位の委員会の方に科学技術・学術審議会というのが一番上にありまして、人材の委員会というのも当然ございまして、そことあとは大学のことに特化すると、例えば高等教育、学術というところで何が問題になっているのかと。端的に申し上げると、大学の人員構成の問題もあって、一朝一夕には解決できないと私が申し上げるまでもなく御存じのところもあるんですけれども、それとあとは競争環境をどういうふうに作っていくかですね。大きなプロジェクトを作っていくと、若い方が自由に研究できる環境ができることもある反面、その周りの人がやっているところの後に続くようなところしかできない。独創的なところというのをじゃあどういうふうにすればいいのか。つまるところはバランスの問題、構造的な問題を解決しつつバランスをどうとっていくかということだと思うんですが。
   あとはもう1つ私がよく常々不思議に思っているのは、やっぱり海外の競争環境はおっしゃるように厳しいんですよ、もっとね。だけれども、そういうところに医学系の人は割といらっしゃっているんですよね。でも、それはまた独特の構造問題で、2年いたら必ずまた戻ってこられるよという状況があるから出ていく割合が多かったりして、でも定着する方というのは意外と少なかったりするんですよ。ただ、そういうマインドというのが今の学術の現場ではどうなっているのかなということが併せて構造的な問題とは別にあるのかなと。
   文科省でできるとすれば制度的なところですね。科研費、JSTによる外部資金の作り方、それから研究の拠点をどうつくっていくべきかというところで、言い方は悪いですけれども、誘導的にそこを調和させていくというところだと思うんですが、人材の委員会では必ずその方向とか話題になっていますし、卓越研究員制度というのも作って非常に独創的で力のある人を何とかして直接活躍の場を持てないかというようなこともやっているんですが、何ていうんでしょう、最適解はまだ見つかっていないという。
【根本委員】  1つには、昔のやり方で問題があったからやはり若手の間での競争というのが大事だという考え方が入ってきたということがあると思うので、必ずしも元に戻ればいいということではないと思うのが1つと、それから海外で活躍されている若手の方々が腰を落ち着けて研究できないとは多分思っていらっしゃらないと私は思うんですけれども、その辺の考え方の違いというのはやはり学術の中の制度を変えていくだけではなかなか変わっていかないんじゃないかと。もっと小さいときといいますか、要するに初等教育の教育課程を経てそういう考え方というのはできてくると思うので、学術の中だけで幾ら制度を変えてもなかなか難しいんではないのかなという気がいたしますが、いかがでしょう。
【渡辺課長】  それもあると思いますが、今、どのぐらいのタームで30年後を見越してじっくりやりましょうということと、やっぱり今5年後、10年後にこの分野の国際競争力も含めて日本のプレゼンスをどう保っていくかというところなので、長期的課題と中期的課題と、実際すぐには解決しない、なかなかできないかなと思うんですが、すぐに解決するようなものは卓越研究員のようなカンフル剤で、とにかく1人でも2人でも拾い上げるみたいなことと組み合わせていくということしかないと思っています。
【平山教授】  何かちょっと今、私が大学で見ていて思うのは、若手の人が独り立ちしていくというのもいいんですけれども、まだあまり育ち切ってないところで独立すると、逆にせっかくいい能力があるのに潰れちゃうというケースもあって。外国は結構大きいグループでボスから予算をもらいながらその中で若手が育っていっているんですが、日本だと大きいボスの中で予算をもらっているといつまでたってもボスの下にいるような、ボスの仕事みたいになってしまって、そこから出ていかないと自分の仕事にならないみたいな雰囲気がちょっとあるような気がするんで、そこら辺なんかのイメージを少し変えるだけで非常に若手がうまく活躍できるようになるんじゃないかと思う。せっかく大きなお金があって大きな装置があるところから無理やり出ていって独立してもあまりいいことはないので、その辺がうまく、中でやっているんだけれども、独立してちゃんと若手がきちんとやっているんだというふうに評価してもらえる、あるいは見えるようなそういうシステムをうまくつくってやる方が効率的かなと今感じているんですけれども。
【雨宮主査】  まだいろいろあるかと思いますが、時間ですので、次の課題に移りたいと思います。
   主にフォトンセンシングの動向ということで、NTTの山口上席特別研究員に「機械共振器による単一フォノン操作」ということでお願いいたします。
【山口上席特別研究員】  御紹介ありがとうございます。本日はこのような場でお話しさせていただく機会を頂きましてありがとうございます。
   NTTの山口です。私の方では「機械共振器における単一フォノン操作」ということで、機械共振器というデバイス、装置を用いて、その中に閉じ込められるフォノンを量子的に操作するということについて、世の中がどういう研究をやっていて我々の立ち位置はどういうものかということについて御紹介をさせていただければと思います。
   まず、機械共振器、これは非常に詳しい方もたくさんいらっしゃるので、私はちょっとこういうお話をするのが大変恐縮なんですけれども、まず一番ベーシックなところからお話しさせていただきますと、機械共振器というのは例えば鐘でありますとか打楽器でありますとか、こういう振り子でありますとか、機械的な動きでもってある振動数で振動を行うようなものということが言えるかと思います。古来いろいろなところで使われておりまして、楽器が非常に多いんですけれども、ただ、最近はこれを非常に小さく作り込むことができて、こういうミクロンスケールあるいはナノスケールの共振器としていろいろな装置に使うことができるようになっております。
   それで、どういうところで一体使われているのかと。これは御存じの方は多いと思いますけれども、例えば水晶振動子。これはクリスタル、水晶の薄膜が、厚さがこういうふうに振動するというものを使って、非常に精度の高いタイミングデバイスを実現しているわけでございますし、あるいはこれを更に精度を上げたものが音叉(おんさ)型の水晶振動子というものがございます。こういったものはいろいろな周波数の基準として使われているわけですけれども、最近、例えば携帯端末なんかにはこれを更に発展させたような表面弾性波、これは固体の表面を波のように伝わる弾性的な振動ですが、それを用いたフィルターなどがかなりモバイル端末などに入ってきているというような状況でございます。
   それで、これとフォノン、私はフォノンに関する研究という話をしましたけれども、フォノンとは一体何ぞやと。これもまた御存じの方は多いかと思いますが、フォノンというのは固体中の弾性波と呼ばれるものでありまして、ちょうど先ほど示したような振動を引き起こす機械共振器というのはこの固体の弾性波を何らかの形であるところに閉じ込めて、それが長く続くような構造にしたものということが言えるかと思います。
   このフォノンというのはいろいろな役割がありまして、例えば周波数が高いところですね、熱を運ぶという性質がございまして、例えばフライパンの上で目玉焼きが焼けるのは高温側から低温側にフォノンが伝わっていって、エネルギーが伝わるということでありますし、あるいは非常に周波数が低いところでありますと、例えば音を伝えるというような役割があります。このようにフォノンというのは固体の弾性波でありますが、その周波数に応じていろいろな役割を持っていると。これが実は量子力学の原理によりますと、これもわざわざ私がするお話でもないんですけれども、いろいろなものには単位があると。ですから、電気の単位がエレクトロン、磁気の単位がスピンであると。それから、光の単位がフォトンであるというのと同様に、このような振動を引き起こす弾性波という波においてもその粒というのはございまして、これを正確に言うとフォノンというふうに呼ぶということでありまして、このフォノンを、量子的なフォノンというのは要するに振動の波1個ということですけれども、それを使って何かできないかというようなことが最近いろいろやられているわけでございます。
   それで、一方におきましてフォノンエンジニアリングという言葉を最近いろいろ聞くようになっております。これは今言いましたように電気に対するエレクトロン、磁気に対するスピン、光に対するフォトンと同様に、このフォノンを何かエンジニアリングしてやることによって新しい第4のカテゴリーのデバイスを作ろうというような流れでございます。潜在的な利用可能性として、例えば極限環境、こういった宇宙線のようなものが飛んでくるようなところでも動くデバイスでありますとか、それから熱電デバイスであるとか、あるいはもっと極端には熱の伝搬を制御するようなデバイスというのが将来的にはできないかというようなことで、このフォノンエンジニアリングの分野というのが今発展しつつあるわけでございます。
   それで、これを我々は少し違う視点でフォノンあるいは機械の共振器、あるいは振動子といったものに作り込んで、それを使うデバイスというのをいろいろ研究しているわけでございます。これは例えばその典型例でございまして、カンチレバーというものとビームというものがございまして、カンチレバーはこちらの端側がプールの飛び込み台のようにこっちをはじくと発生振動すると。ビームというのは、それが両側で支えられているわけですけれども、一般的にこっちの方が振動数が低いんですが非常にやわらかいものですから、小さな力に対して敏感であるということで、センシング応用としてはこういうものが非常に適している。あるいは、高い周波数を得るという意味からいくと、両側で支えた方が振動数が上がりますので、高い周波数を得るにはこういう構造がいいという、こういった典型的な構造が一般的には使われています。
   ここで重要なことは、これを小さくしていくと、どんどん周波数が高くなって、これは鉄琴の振動が小さくなると音が高くなるのと同じでございますが、これを極端的に100ナノメートルまで持っていくと、これがギガヘルツの周波数で振動するということで、ギガヘルツまで振動数を持っていきますと、これが実に量子的な性質が出てくるような非常に高い周波数に出るということで、世の中の非常にトップクラスの研究室が研究を始めているということでございます。
   これも量子力学の基礎でございますので、私が説明する必要もないかと思いますが、周波数を変えていったときに、例えば50ミリKという我々が買ってこられる冷凍機の中で一体量子が見えるのかどうかと。例えば200キロヘルツの振動数のものを持ってきますと、フォノンが1個もない、フォノンが1個だけある、フォノンが2個だけあるとかいうようなものが大体10のマイナス4乗ぐらいの確率でしか現れない。要するに、ぼわっと熱でばらばらにされて量子性が見えないんですけれども、ギガヘルツの大台になってきますと、例えばこの場合は86%の割合でフォノンが1個もない状態というのが作れると。ですから、このような高い周波数を用いると、フォノンが1個、2個というのを自在に操作することができて、それによって新しい物理なり新しい応用が広まるということで、人々が研究をしているわけでございます。
   これができるための条件は一体どういうものかといいますと、今言いましたようにまず熱によってばらばらにならないと。要するに、それぞれのフォノン1個のエネルギーに比べて熱が十分に小さくないといけないという条件で、これは大ざっぱにいうと50ミリKという、いわゆる希釈冷凍機の温度において、周波数が大体1ギガヘルツのものというふうに言うことができる。ですから、1ギガヘルツのこういう共振器を作って50ミリKに冷やしてやれば、基本的に量子性が出てくるはずだと。これがどれぐらいの大きさになるかというと、シリコンの場合は長さが800ナノ、ガリウム砒素(ひそ)の場合は400ナノと、こういうふうなスケールで、十分我々の今のリソグラフィーの精度でつくり込むことができるわけでございます。
   一方、じゃあこれができればもういいのかというと、そういうわけではありませんで、このようになった、これはゆらゆら揺れているわけですので、これは実は量子力学的に零点振動というのがございまして、これの揺れの大きさのレベルを検出できないといけないと。これはどれぐらいの大きさかというのが、これはstandard quantum limitといいますが、standard quantum limitは量子計測の世界では違う意味で使われていますけれども、我々もこれをstandard quantum limitといいまして、大体大きさが10のマイナス17乗メートル。10のマイナス10乗が原子の大きさで、10のマイナス15乗が原子核の大きさです。それの更に2桁も小さいような振動を検出できないとこういうものができないということになって、これはなかなか大変なことになってくるわけです。
   世の中で、じゃあそういう非常に高い周波数のものを作って、それを10のマイナス17乗という原子核の100分の1の小さな揺れを検出するようなことが実際できているかというと、実は2つのアプローチがあって、それぞれで今できつつあります。1つ目は、まともにギガヘルツの振動子を持ってきて、これはただしさっきの梁(はり)構造だとどんどん小さくなりますから、検出感度が小さくなります。ですから、検出感度が十分保てるような別の構造を作る、具体的にはBulk Acoustic Resonatorsと呼ばれる、これは水晶振動子と同じようなものですけれどもこれを使って、それと超伝導のqubitと結び付ける。あるいは、表面弾性波という、先ほどちょっと出てきましたけれども、固体の表面を波のように伝わるようなもの、これを共振器として使って、これとqubitをつなぐというようなことで、大体2010年と2014年、これは非常に有名な仕事ですけれども、こういったものがアメリカと、それからスウェーデンのグループによって実現されているわけです。
   もう一方は、非常に周波数がギガヘルツまでいくのは大変なので、検出も大変なので、それを低い周波数にして、その代わりレーザー冷却で冷やしてやって50ミリKより更に下げてやろうということで、光とくっつけるとか、超伝導回路のマイクロ波とか、こんないろいろな研究がされていまして、いずれにしてもアメリカ、スウェーデン、スイス、それからこれもアメリカですね、こういった世界のトップクラスの連中がこういう研究をやっていまして、毎年のように『Nature』や『Science』を騒がしているというような状況が現状でございます。
   それで、これはちょっと時間がありませんので流しますが、今言いましたようなBulk Acoustic Resonatorsという振動子と、それから超伝導qubitをつなげたという例で、もう1つはレーザー冷却の例で、こういうふうなミラー、鏡を対向させたものの片方を機械共振器にしてやって、これをレーザー冷却して温度をどんどん下げてやるということで、こういう重力波検出の系統から、メガヘルツの非常に小さな構造に至るまでいろいろなスケールでやられている技術を使って量子性を見ていくという話になっています。
   これが3つの主要な成果でありまして、今言いましたように、超伝導の回路とつなげてレーザー冷却をすると。レーザー冷却というのはちょっと言葉が適切じゃないですけれども、冷却をすると。それから、光のフォトニック結晶とフォノニック結晶を合わせたようなものを使って、これで冷却すると。これはいつでもフォノン数として大体1を切るぐらいまでいって、これだけでもう『Nature』に載っているわけですけれども、こういったことが実現できて、どれぐらいの小さな変位が検出できるかというと10のマイナス17乗から18乗という非常に小さな変位検出が実際にできているということになります。
   それから、1つ目のギガヘルツ、6ギガヘルツの振動子と超伝導量子ビットを付けた例では10のマイナス5乗ぐらいのものすごく少ないフォノン数が実現できまして、これは感度はちょっと分かりませんが、これより更に低いものと思われて、この3つの仕事が世界の非常にリーダー的な役割を果たしている仕事になっています。そのほか、こういったところでやっていまして、最近は東大の中村先生とか阪大の井元先生などで実験的な研究も開始されていますが、まだまだ日本では進んでいないという状況であります。
   それで、ここまでを振り返って、私がこの分野に対して今抱いているイメージはどういうものかということをちょっとだけ説明しますと、非常に少ないトップグループが研究をがんがん牽引(けんいん)しているんですが、だけれども実際にはこれはなかなか周りがついていけないという部分が大変にあります。なぜかというと、これは研究のターゲットが一軸的でどれだけ少ないフォノン数を実現できるかということでみんなまっしぐらに進んでいるわけですね。要するに、100メートルを10秒割るような、9秒台で走らないと競争に入れないわけです。それがなかなかできないと。そこに行くまでの間は新規参入者というのは非常に遠い道を歩まなくちゃいけない。ですから、なかなか多様性というものがこの研究ではなくて、なかなか皆さん入っていけないような状況になっているんではないかと。
   それから、もう1つは、シングルフォノン。1個のフォノンを検出できました。はい、それはすばらしいですね。で、それを一体何に使うかというところがまだ整理されていない。例えば、Quantum Opticsという、フォトンを使う量子性を見るという研究はものすごくたくさんあってすばらしい研究が世の中にあります。これをフォノンに置き換えて、じゃ一体それでどうなのというところがまだはっきりしていない。ここが大変弱いところであります。もちろんそれをやるのは超難度なんですけれども、実際にはそれがどういう位置付けがあるかということが、これはこれからの課題であるということになったと思います。それはマクロ系だという言葉もあって、これはシュレーディンガーの猫ですよというような言い方もよくやるんですけれども、ただ、じゃあシュレーディンガーの猫だったら見えるものが違うのかと言われると、そこのところは現象として差が見えるかということはなかなか難しい部分があると。それで私が思うには、それで機械共振器でなければ観測できない何か。例えば重力の相互作用を検出するとか、これは実際に始まっていまして、例えば機械共振器を2つ持ってきて、それの間の共振周波数のシフトからキャピタルG、要するに重力相互作用の係数を10のマイナス4乗ぐらいの作用しかないんですが、これを更に上げるというふうなことができないかとかいうようなことを言っている人がいます。ですから、こういう何か機械系でないと、フォノン系でないとできないようなことを見つけていくというのが現在の大きな課題じゃないかと考えています。
   それから、あとは極限センシングとしての出口の明確化というのも課題でありまして、ものすごく小さな変位が検出できました、10のマイナス18乗です、すばらしいですねというところなんですけれども、じゃあそれは一体どうやって出口を見つけていくかとか、これもまだ難しい。これはナノサイエンスやビッグサイエンスなど原理実証実験には大変すばらしいんですけれども、ただ、センシングデバイスという、恐らくこの委員会の中心的課題の1つだと思うんですが、そこに持ってきたときに、他の技術との差別化というのをどういうふうに付けるかというのは、これは今後の課題かということになるかと思います。課題ばっかりで恐縮なんですけれども。
   例えば、メカニカル振動子というのは、スピンのセンシング、シングルスピンのセンシングができたということで、計測技術としてすばらしい極限センシングだということが騒がれました。それが大体2004年、これはIBMの結果ですけれども。これによって、御存じの方は多いと思いますが、DegenがNature NanotechnolといってNVセンタの量子計測の話を載せたときの図ですけれども、これ、幾つのスピンが検出できるかというのはこの線なんですが、ここがスピン1個というラインがここで、ここをよぎったのがこの最小項のメカニカルセンサだと。そのほか、従来のSQUIDであるとかホールセンサ、こういうものがいろいろあるんですけれども、感度でいくとすばらしいよと。だけれども、今、この研究がなかなかあまり進んでなくて、今NVがどんどん進んでいますので、スピンセンシングというのもこのメカニカルセンサというのは今立ち位置がなかなか難しいというような状況になっているのが現状です。
   じゃあ、おまえ、何かさっきからネガティブなことばっかり言っているじゃないかと思われそうなんですけれども、私が考えるのはここではなくて、違う側面からやるべきじゃないかというのをちょっと1つ御提案したいと思います。
   それは何かといいますと、だけれどもMEMS/NEMSのセンサというのは今世の中にごまんと使われています。皆様の携帯の中にも入っていますし、いろいろなところに入っていると。車にも使われています。それはどういうものかというと、例えばgyroscope、accelerometerであるとか、single atom sensor、これは使われているというわけじゃないですけれども、非常に注目を浴びている特徴のある技術です。それからpressure sensor、DNA chip、これは昔から言われています。それからSmart contact lensと、これは目に着けて圧力を測って緑内障のモニタを常に読むとかこういうような話で、これはあとindoor navigationといって衛星の電波が入らないところでもちゃんとやっていけるとか、こういうのにいろいろ使えるということが言われていまして、このMEMS/NEMSのセンサ技術というのは非常に確立したものがあると。
   これはなぜこんなことができるかというと、メカニカルセンサの特徴というのは、非常に多様なセンサ応用、それから信号処理ができると。これがインテグレーションでできるということと、それからそれに関連してオンチップの集積化、要するにデバイスベースで非常にちゃんと動くものが作れると。それから、超小型・電気駆動・低消費電力というのができると。こういった特徴があるからこそ、これはものすごくずば抜けた感度ではないんですけれども、非常に使えるものになっているというのが現状であります。私が考えているのは、量子フォノニクスあるいは量子をここに持ってくることができれば、非常に大きな活路が見出せるんじゃないかと。つまり、MEMSのセンサというのはもう今用途も応用先も確立したものがあります。そこに何かの形で量子の考え方、量子のデバイスというのを導入してやれば、そのファンクションであるなり精度というものを格段に上げることができるんじゃないかと。
   それで、そのアプローチとしては2つありまして、1つはデバイスを融合する。例えば、単電子トランジスタでありますとかこういう超伝導の回路でありますとか、超伝導は低温じゃなきゃ動かないんですけれども、SQUIDだけでしたらある程度高い温度でも動きますし、quantum point contactsにおいてはこれは実はシリコンなんかを使うと、もう室温で動くものがありますから、そういった――quantum point contactsじゃないですね、単電子トランジスタはありますので、それと組み合わせることで同じような機能を導入することができると。
   そして、もう1つ私が言いたかったのは――済みません、時間がかなり長くなって申し訳ないんですけれども――Quantum的なArchitectureというのを導入するというのも1つの考え方ではないか。例えば、我々がやっているParametric Ampでありますとかnoise squeezing、これはもともと量子ノイズを下げるための技術ですけれども、こういった技術をここに組み込むことによって、ノイズを下げる、あるいはcoherent controlという、rabi oscillationと言われる量子技術で培われたものを高速のオペレーションのために導入する。あるいは、これはbifurcation ampという量子力学的な射影測定に相当するようなものを導入して、これをセンサの高感度化に結び付けるといった、量子デバイスという側面と、それから量子アーキテクチャーという側面の両方を何か持ってくれば、今までのMEMSの使われているデバイスの性能を更に上げることができるのではないかと考えています。
   ここまで語っておいて、私は実はこういう分野の研究を今やっているわけではありませんで、もともとは我々はむしろ非線形なメカニカル素子というものを使って、フォノンに対するダイオードでありますとかフォノンに対するトランジスタのような新しいデバイスを作るということをずっとやってきていまして、こういったいろいろな成果が出ているわけですけれども、こういうものがあります。もう1つの考え方としては、こういったものをさっきのセンシングのところに次は組み込んでいくことで、何か新しい機能を出せるということを考えています。
   最後、日本に関して。これは言ってくださいということで少しだけお話しさせていただきますと、最初のフォノン1個を検出するというのは量子フォノンの研究というのは実は日本はかなり後れていますというか、ほとんど参入していません。GRCという、Mechanical Systems in the Quantum Regimeという会議があるんですけれども、私は2年に1回それに出ていますが、そこに出るともう日本から参加しているのはうちのグループとあとは東大の中村先生という、あとは全員200人ぐらいがみんな外国人という非常に寂しい状況になっていて、決して日本からの参入者というのは非常に多くないと。どこがそれの原因かということを考えますと、まず、最近特に純粋科学ではなくて実用化に向けてのシナリオというのが出口、ストーリー、これがものすごく求められて、私が思うにMEMSのシングルフォノンのセンサというのは、極限センシング技術ではあるんだけれども、極限センシング技術というのがそのままMEMSセンサ技術につなぐという、そこはすごく大きなギャップがあるので、ここのシナリオがなかなか難しいというのが現状ではないか。だから、半導体の場合は、私もともと半導体の研究者ですけれども、レーザーとかHEMTとか技術とサイエンスの両方の橋渡しをしたんですね。ところが、このMEMSの研究に関しては、ここの部分がなかなか弱いんじゃないかと思っていて、そういう意味でなかなかシナリオが書けなくて本当にフィジックスをやるという研究以外はなかなか算入できないと。
   それで、ただ私が思うのは、今の先ほどのストーリーで例えばMEMSのデバイスに量子性を持ってくるということを考えたときに、これは日本は非常に強い部分があると。それは何かというと、先ほど平山先生からお話がありましたが、ナノカーボンや半導体、スピン材料など、日本は材料研究についてはものすごく強みを持っています。ここのところとのハイブリッド化というのをやっていけば、きっと違う側面のブレークスルーが出てくるのではないかということで、例えば半導体、キーワードだけ話すと、半導体オプトメカニクスとかナノカーボンメカニクスとかスピンメカニクス、一部始められている研究もありますが、こういった違う側面を用いると、日本にとって強い活路が出てくるのではないかと考えます。
   やっぱり実用化の鍵というのは、どうやって通常環境で動作させるかというところにありまして、これに関しても我々、半導体の量子構造というのを実用のところに持ってくる、いろいろなノウハウを今まで持っているわけですから、それをそのまま焼き直して応用に向けていくということが大事なのではないかと。そこでもやはり日本というのは強みが出てくるんじゃないかと、私の勝手ながら私見として述べさせていただきたいと思います。以上でございます。どうもありがとうございます。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。
   それでは、今山口研究員の御発表に関して、何か御質問、コメントありましたらお願いします。
   どうぞ。
【岩本委員】  技術的なことで2点お伺いしたいんですけれども、山口先生、最後の方でQuantum Architecture、量子用のアーキテクチャーを入れるとされていましたけれども、御紹介されたのは、通常の環境で動くようなものに今はなっているんですか。
【山口上席特別研究員】  通常の環境下で、室温動作ということですか。
【岩本委員】  ええ。
【山口上席特別研究員】  量子性を持ってこないと――あ、まず……。
【岩本委員】  下の方ですね。
【山口上席特別研究員】  下ですね。こちら側は、例えばこのnoise squeezingなんかは室温で動かして、室温の熱ノイズをどうやって抑えるかということでやっておるんですね。
【岩本委員】  なるほど。
【山口上席特別研究員】  で、このcoherent control、これは『Nature Physics』に載った実験自体は、これは低温でやっていますけれども、同じような動作を、実はデータがこれほどきれいに取れないので、論文としては低温のものを使っていますけれども、動作自体は室温でもちゃんと確認できています。それから、これは低温でやったかな……。ただ、本質的なところというのはなくて、多分室温か低温かというアーキテクチャーに関しては少なくともあまり問題ではない。Q値さえ高い共振器を持ってくれば、室温でもできると思います。だから、Q値を高くするというところが多分ポイントだと思います。
【岩本委員】  そういう意味では、最後に指摘された環境温度の問題は、下のアプローチであればあまり問題ないだろうということね。
【山口上席特別研究員】  そうですね。それはもう今でも大丈夫じゃないかなと思います。ここの部分はもう少しやっぱり工夫が必要かもしれませんけれども。
【岩本委員】  もう一点細かいこと。じゃあ、メカにしかできないことということで重力定数の話をされてすごく面白いなと思ったんですけれども、ちょっと不勉強なんですが、10のマイナス4乗というお話をされていたんですが、それはどれぐらいの位置付けだと思えばいいんですか。10のマイナス4乗が測れたという報告があるという、マイナス4乗の精度でしたっけ。
【山口上席特別研究員】  10のマイナス4乗ぐらいが大体今のキャピタルGの測定精度だそうです。メカニクスを使うと、それを更に上げられる可能性があるという理論提案を……。
【岩本委員】  そういうことですね。10のマイナス4乗はメカで測れたというわけじゃなくて。
【山口上席特別研究員】  そういうことです。
【岩本委員】  分かりました。ありがとうございます。
【山口上席特別研究員】  まだこれからです。
【岩本委員】  ありがとうございました。
【雨宮主査】  もう一点ぐらい、もし何かあれば。
   どうぞ。
【平山教授】  メカの強みの中で、耐環境性というのが出てきたんですけれども、耐環境性を使ったデバイス、例えば原子炉の廃炉のところで働けるデバイスとかそういう方向の研究というのは、何かアクティビティーというのは中にはあるんですか。
【山口上席特別研究員】  今のところやられているのは、まず温度だと思います。高温でも動くデバイス。例えば、これは材料的な側面も結構大事なんですけれども、それでいいますと半導体デバイスでもできるんじゃないかという意見もあるんですが、例えばSiCのメカニカルなスイッチを使えば、500℃の温度で動くスイッチが、あるいは論理動作が効くと。これは例えばエンジンの横でも動くとか、そういったことをやっている連中はいまして、特にアメリカの軍関係が結構ありますね。
   宇宙線に対しては今のところまだそんなに、私の知る範囲ではないですけれども、それは宇宙線や放射線ですね。それも多分あるんではないかとは思いますけれども。
【平山教授】  山口さんがやられているフォノンによる論理計算というのをやられていますよね。そういうところは、そういうところに使おうというのはあまり具体的には、特にそこまではまだ……。
【山口上席特別研究員】  そうですね。それは用途として、さっきのストーリーの話とぶつかってしまいますが、用途としてはそういうことがあるということはいろいろ言っています。ただ、具体的にそれを実証していくという段階にはまだ行ってないです。
【雨宮主査】  よろしいでしょうか。
【岩井委員】  ちょっといいですか。音波の研究って歴史がすごくあると思うんですけれども、昔はメーザーとかありましたよね。そういう何か熱流をコヒーレントに制御することによってデバイスを作るとか、そういう研究にはこれは使われているんですか。
【山口上席特別研究員】  熱流をコヒーレント……。
【岩井委員】  レーザーもそうですけれども、コヒーレントな形でエネルギーのやりとりをするというような、そういうものにこういうのを応用するというのは可能なんでしょうか。
【山口上席特別研究員】  コヒーレントというのは、多分いわゆるコヒーレントステートというクラシカルなコヒーレントという意味と、それから多分量子学的なコヒーレンスというのと両方あると思うんですけれども、前者に関しては、例えばフォノンレーザーであるとかそういったものを今作ろうというような話はあります。ものすごく高い周波数のフォノンをコヒーレントに非常に単色性の高いものを作ろうというような話は、半導体デバイスとを組み合わせてやろうと。我々はそれに関する研究も少しやっていまして、我々の場合はフォノン・フォノンでフォノンを吐き出すようなフォノン3準位系のレーザーのようなものをやっていますけれども、それでやると非常にシャープな振動が、例えばノイズから作ることができるとか、そういうことをやっています。
【岩井委員】  ちょっと何でお聞きしたかというと、光でも電子デバイスでもそうですけれども、割と高周波で動かそうとしても、どうしても熱がたまっちゃう、最終的にはアコースティックフォノンが出ちゃうので、それを例えば誘導過程みたいなもので、ドライブしている電磁波とは別の低周波のもので、熱だけをコヒーレントに逃がすみたいなことができれば、熱がたまらないということも可能になりますよね。
【山口上席特別研究員】  なるほど。それは面白いです。ちょっと私は考えたことはありませんけれども、方向性としてはあると思います。多分、一番のネックというか技術的な課題は、今のところ我々のフォノンといってもせいぜいギガヘルツなので、恐らくもっと高い周波数まで持っていかないと熱のところとはくっつけていけない部分があると思うんですね。ですから、もしそれが、途中でもちょっと説明をはしょっちゃいましたけれども、テラヘルツぐらいでもし動くような、いわゆる普通のフォノンですね、フォノンの周波数領域で動くようなものがもしできれば、それは本当に普通の発振器では作れないようなコヒーレントなものなので、いろいろな使い道は出てくると思いますね。
【岩井委員】  テラヘルツ領域ではそういうことを我々も考えているんですけれども、何せテラヘルツで共鳴するものって自然任せなので、なかなかコントロールできないんですよね。
【山口上席特別研究員】  多分そうだと、そうですね。Cavityをどうやって作るかということが多分課題ではあると思いますね。
【岩井委員】  ありがとうございます。
【雨宮主査】  まだあるかと思いますけれども、ちょっと時間が大分押していますので、次へ移りたいと思います。
   それでは、続きまして、中川先生より「冷却原子を用いた原子干渉計慣性センサの最近の研究動向」ということでお願いいたします。
【中川教授】  御紹介ありがとうございました。今回、お招きいただきありがとうございました。
   今日はここにタイトルがあるように、冷却原子を用いたいわゆるAI(Atom Interferometry)原子干渉計慣性センサに関して、最近の研究動向を紹介いたします。
   ごく簡単に、皆さん専門家がたくさんおられる中であれですけれども、この研究の背景をちょっと紹介いたしたいと思います。
   この研究は、1980年代の半ばぐらいから研究が始まった中性原子のレーザー冷却の技術が基になって、アメリカのBill Phillips、Steven Chu、Cohen Tannoudjiはこれでノーベル賞をもらったわけですけれども、この当時こういう冷却原子ができた、こういう原子を物質波として光と同じように干渉効果を見るという、そのときにもうそういうアイデアが既にあったわけですけれども、それ以前から多分提案はあったんですが、それがその後1990年代に入って91年に、これは冷却原子ではないんですけれども、最初にヘリウムでヤングのダブルスリットの実験がデモンストレーションされました。その直後ですけれども、日本において実は私がいる電気通信大学において、その当時東大の工学部におられた清水富士夫先生が日本で初めてヤングのダブルスリットの実験を、世界で最初ではないんですけれども、その直後に実は、これは冷却原子を用いて――2番目のこれなんですけれども――ネオン原子を用いたヤングのダブルスリットの見事な実験を行いました。ということで、歴史的にはもう既に25年前、1990年代にはこのような冷却原子を使った干渉というのが既になされていると。
   同時に、その年に、これは冷却原子ではないんですけれども、ラムゼー分光法によってサニャック効果、これは慣性センサの1つであるジャイロの効果が実はこの年にも観測されているということで、こういう背景においてこういうものを使うといろいろな慣性センサとして使えるんじゃないかということが分かってきたわけです。その直後、92年にスタンフォードのSteven ChuとMark Kasevichが最初の、今日紹介する研究のアイデアの原点はここなんですけれども、重力加速度計、重力といっても本当に短い時間、加速度センサの最初のデモンストレーションをやったのが1992年です。その後、こういうものが使えるということが分かって、1つ重要なエポックメーキング研究としては重要だった、1995年に原子のボーズ・アインシュタイン凝縮が実現したと。これは光でいうとレーザーのようなコヒーレントな波がきれいにそろった原子ができたと。こういうものを例えば干渉計に使えば、ものすごく精度・感度が上がるということが期待されるわけですけれども。その後、最初に実現したSteven Chu、Kasevichのグループがもうちょっと本格的な干渉計を使った97年にはジャイロスコープのデモンストレーションを行いました。それから、99年にSteven Chuのグループが、最初の本格的な絶対重力加速度計を実現して、その当時、現在も使われている光学型の重力レーザー干渉計を使った加速度計とほぼ同じ精度の3掛ける10マイナス9乗という精度を実現したというのが経緯です。
   それで、ごく簡単に原子干渉計と従来の光学干渉計の比較を、よく出す図なんですけれども、紹介いたします。光学干渉計というのは、光をビームスプリッターで分けてミラーをしてもう一回重ねて干渉を見るんですけれども、それと同じことを原子で行おうと。特に、Steven Chu、Mark Kasevichがデモンストレーションした光パルスを用いた原子干渉計というのは役割が完全に反転しておりまして、光を使って原子を2つに分けると。ミラーの役割がこの場合には光になっている。レーザー光を当てると原子が2つに分かれて、それを反射させて重ねると原子の干渉計ができると。観測するのが光ではなくて、終状態の原子の状態、どっちに行ったか、または内部状態を観測することによって観測効果を見るということで、役割が完全に反転していますけれども、同じような干渉が見えると。
   それで、こういうのを用いると、先ほど言ったような加速度計、それから回転を見るジャイロスコープ、基本的には構成は似ているんですけれども、加速度計は左の図でちょっと分かりにくい図になっていますけれども、横軸が実は座標が距離じゃなくて時間になっています。だから、この場合には原子はとどまっていて、直交する方向の光の波をこの方向に当てると、その方向の加速度によって軌道が若干変化するこの位相の差を測ることによって加速度が分かると。ジャイロスコープの場合には、こちらの方向に原子がこの場合では動いていて、その間にここを囲む面積に比例する回転の角度による変化が位相の変化として観測できるということで、それぞれこのような大きな装置で最初の実験はやりました。スタンフォード、Steve Chuのこれは高さが1メートル以上のファウンテン型で、原子を打ち上げて落ちる間で時間Tを、長い時間を稼いでこういう感度を得ていると。ジャイロスコープの場合は横方向に原子ビームを飛ばして、その間に回転の効果を観測するということで、これも現在の光学的な例えばリングレーザージャイロだとかファイバーレーザージャイロとか、それを超える安定度、この場合にはこのバイアス、安定度というのが重要らしいんですけれども、これが得られていると。
   これは私自身がこの研究を始めたのが2000年、2001年から始めたんですけれども、私がやったのはルビジウム原子。最初のこの2つのスタンフォードのグループが行ったのはセシウム原子で行ったんですけれども、それをルビジウムに置き換えて実験を行いました。スキームはほとんど同じで、冷却した電子を打ち上げる、または落としてその間に光を当てて干渉。その間の重力で落ちるときの位相シフトを測ると、このような干渉信号が見えるわけですけれども、この干渉信号の位相を測って。横軸は実はレーザーを、周波数を掃引する速度で、それによって掃引速度を、精度を決定するとgが、精度が決まると。我々のときのこの実験では9乗までは至らず6乗ぐらいの精度で一応測定することができたというのが、これは2005年ぐらいのところで最初に測った結果です。
   じゃあ、なぜこの原子干渉計を用いた重力加速度計とか慣性センサが従来の技術よりまさっているといいますか、何が違うのかということを簡単にちょっと細かい図で申し訳ないんですけれども、この図でちょっと紹介いたします。重力計に関しては、このようなレーザー干渉計を用いた重力計というのが今実用化されて、今でも使われているわけですけれども、これはコーナーキューブを真空チェンバーの中で落として、それをレーザー干渉計で落下距離を測るということで、今のところ2×10の9乗の精度が得られています。これ以上精度を上げるというのは実は限界に来ているということで、何が一番問題かというと、このセンサ自身がマクロな、要するに数センチ、1センチ、2センチぐらいのコーナーキューブを単に落として――単に落としてと言ってはあれなんですけれども、落としているわけですね。そうすると、これはどうやったって回転とかいろいろなものがあって、マクロなものをどのぐらいの精度で測定しなきゃいけないかというと、9乗で測定するということは落下距離約20センチを0.4ナノの精度で測定しなきゃならない。それを回転しないでこう落下させるのがまず不可能で、それから重心の位置を測定しなきゃならないけど、実際にはこういうコーナーキューブに当てているわけですから、ちょっとでも回転すると動いてしまうわけですね。実効的でない。ということで、これは古典技術の限界であると。
   それに対して、原子はなぜじゃあ精度が上がるかと。感度じゃなくて精度が、角度と言いますか、それがなぜ上がるかというと、原子は小さいんですけれども、実は冷却すると不確定性で原子の大きさは物質波の広がりは数ミクロンぐらい、この実験に使う温度は大体30ナノケルビンとかそのぐらいの温度です。そうしますと、波束の大きさは数ミクロンになる。数ミクロンだから精度が上がらないかもしれませんけれども、これを光で位相をちゃんとインプリントして物質波の波長でこういうのは――これはレーザーの波長で決まるんですけれども、400ナノぐらいの位相をちゃんと書き込んでいると。そうすると、それをレーザー光で位相差をちゃんと読み取ってやれば精度としてはどこまで位相を読むかによって決まるわけですけれども、10マイナス9乗以下の精度が期待できるということで、これはもう完全に古典技術ではできない。精度という意味によっては完全に量子というか、原子を量子的に波として扱うからこそできる技術だというのが……。
   ということで、こういうのはやっぱりもう逆に戻れないといいますか、今更これを幾ら――先ほどちょっとメカニカルな共振器、いろいろありましたけれども、ああいう方向にちょっと行こうかなと思うんですけれども、やはりこれは原子ならでは、原子を量子として見た場合に波として見る、初めてこういう精度が期待できるということで、原子時計とある意味同じなわけですね。原子時計というのは原子1個で時間を正確に測るのと同じように、原子1個でちゃんと距離を正確に測る手段として、これは古典に勝るこれ以上のものはないと我々は考えているわけですけれども。
   それで、今言ったように、従来の重力加速度計の問題は何かといいますと、今言ったようにもうマクロなものは限界、それから実際実用的に何が問題かというと、ミラーを真空チェンバーなんかで落としてあげたりするんですけれども、必ず部品が摩耗していろいろきたところ、半年に一度ぐらい、頻度によるんですけれども、部品を交換しないと使えないと。要は長期運転が、1年間長期連続運転ができないというのが現状らしいです。
   それに対して、別の重力計というのがありまして、超伝導加速度計というのが実はありまして、これは感度は実はすごく高いんです。12乗という感度が得られているんですけれども、これは絶対値が出ない。あくまでも相対値。それから、ドリフトがあって定期的に絶対値を校正しなきゃいけない。ということで、現在これとこれを組み合わせて使っていると。
   じゃあ、どれぐらいの精度が必要かと言いますと、例えば地殻の変動、地震の予知なんかで大きな地震があると大体9桁目、10マイナス9乗の変位をするということが分かっているんですけれども、それは標高差でいうと3ミリメートル。3ミリメートルのgの変化というのは10マイナス9乗です。今の精度では2掛けの9乗ということで、5、6ミリメートルぐらいは一応見られるんですけれども、それ以下の変位が見られないということで、これ以上の精度の重力加速度計が実用化されれば、現在使われているものにまさるものができて、こういうのが実用にということ。
   ということで、これからは海外でやっている、我々のところではちょっと現在研究を中断していて、再開したんですけれどもなかなか出ないので、海外の動向をちょっと紹介いたします。このような重力加速度計はいろいろなところに応用が期待されていまして、今言ったような測地学、地球物理、それから先ほどもちょっとお話が出ましたが重力定数g、万有引力定数、これも実は、先ほど4桁と言いましたけれども、もう1桁ぐらい実はいいんです。ただ、実はそれが怪しいという、今のやっているのは本当に古典的なねじれ振り子で測っているんですね。それをもうちょっと別な方法でやろうということで、実は去年に新しい提案がアメリカであって、いまそれを新しい方向で精度を上げようというのはまさにやられているところなんですけれども、その1つの方向としてこの原子干渉計を使ってgを。これが今まさに4桁で測っていて、もう1桁上げれば今の技術とコンパルなと。これも実は質量標準を、ちょっと今日は詳しく御説明しませんけれども、これにも重力加速度計が必要だと。
   それから、基礎物理に関しては、これは一番いろいろ言われているんですけれども、等価原理の検証ということで、異なる物質の間で重力が本当にどこまでもてるのかと。もし違えば新しい力を考えなきゃいけないということで、この検出を目指して、今ものすごい勢いで解が出るというところ。もう一方の慣性センサ、これは私はちょっとやってないんで、研究自体は詳しいことまではわからないですけれども、ジャイロスコープ。これは実は一番重要だというのは、一種の軍事技術としてミサイルだとか航空機の慣性誘導、慣性航法に重要だということで、これが今の技術では限界に来ていて、これを超える精度、この場合にはバイアスのドリフトが小さいということがAIジャイロスコープで期待できるということで、これらの研究が結構アメリカ、中国なんかで今進んでおります。
   海外の研究動向なんですけれども、簡単にマップを作ったんですが、一応日本は私が唯一やっているということで書いてありますけれども、現在は研究を中断している状態で、海外ではこのぐらいの勢いで今進んでいます。アメリカは最初にスタンフォード、この辺を中心にして進んでいるんですけれども、ヨーロッパでものすごく進んでいて、一番進んでいるのがフランスとイタリア、ドイツ、この3か国が2000年ぐらいにほぼ我々と同時期に始めたんですけれども、残念ながら私の方が途中で中断してしまったので、ここら辺が今一番活発に行われているということ。最近、イギリスにおいてやっぱり国の施策で量子技術ということでバーミンガムが始めていますけれども、これは新規参入組ですね。それから、中国がものすごい勢いで今やっていまして、紹介しますけれども、複数、北京、これは精華大、武漢、浙江大、ここら辺でものすごい勢いで。1つはジャイロなんかは多分軍事技術に関連してくる、多分そういう位置付けでやっているんでしょうけれども。それから浙江大あたりは、この前の学会か何かの発表では、地震の検出にこれを使ったというようなことをやっています。そのぐらい興味を持ってやっています。
   ということで、基礎物理の先ほどの応用の1つとして、どういうところで今進んでいるかと言いますと、スタンフォードのKasevichのグループが等価原理の検証をどこまで感度を上げられるかということで、実は感度は先ほどちょっと、こちらでちょっと見にくいですけれども、位相検出感度が相互作用時間、このパルス間隔Tの2乗で効くんですね。だから、これを上げれば上げるほど感度が上がるんですけれども、もうストレートに長さを長くするために10メートルのタワーを作って観測を始めようとしています。そうすると、期待できる感度が1か月積算すると15乗で測れるということを目標に……。
   これはハノーバー大学を中心に、実際にはブレーメンにある高さ100メートルの真空にひいたタワーの中で、原子干渉計の実験装置が入った2メートルぐらいのカプセルを自由落下させることのよって長い相互作用時間を得る実験が行われています。落下タワーと落とすことによって、最近干渉計の実験の結果が出ていましたけれども、そうすると5秒ぐらい稼げると。これは行く行くは宇宙実験というような予行練習というかそういう位置付けもあるみたいです。それから、フランスのグループも同じように宇宙を目指して、最初は地上でやるということで、これは放物線飛行で、飛行機の中で20秒間ぐらい無重力が期待できるということで、その実験も2、3年ぐらい前に報告しています。
   これは最近ちょっと見つけたんですけれども、やっていたのは知っていたんですが、ちょっと今日御紹介します。これはアメリカのNASAがCold Atom Laboratoryということで、必ずしも原子干渉計だけではないんですけれども、宇宙ステーション、ISSの中に冷却実験する装置を作って、ものすごく低温、地上では重力があるので低温は得られないんだけれども、無重力下では100ピコケルビンぐらいの温度が期待できるということで、その中の物性を、それから原子干渉計で相互作用時間が長いことが期待できて、先ほどの感度が上がるということで、実際もう既に装置がある程度技術ができていて、来年打ち上げ予定ということで、もう着々と進んでいるみたいです。
   同様の計画は実はヨーロッパの方でも進んでいまして、それは先ほど言った、これは原子干渉計の実験。実は、中国でも自前の宇宙ステーションを、最近私の知り合いの北京大学の人はもう18年に一応打ち上げになったことを言っていましたけれども、それを目指して冷却、まさにCold Atom Laboratoryというのを宇宙で実現しようということでやっています。
   実用化に関してですけれども、既に先行する、先ほど言ったスタンフォードのグループが、1つは軍事研究に絡んで軍の予算でDARPAとで多分やっているんですけれども、民生としては重力加速度計がもう既に商用機ができています。ただ、性能に関しては今のレーザー干渉計型とそんなに変わらないぐらいのものです。ジャイロに関しては、ちょっと詳細は分かりませんというか、秘密裏にやっているところがあってなかなか情報が出てきませんけれども、これもやっているみたいです。
   一方、フランスのグループは、これはパリ天文台のグループがジャイロもやっているんですけれども、もっぱら民生またはサイエンティフィックな応用としてやっているんですが、ここも同じようにベンチャー会社を作って実用的な加速度計をやっています。
   それで、これからじゃあ何をすべきかということなんですけれども、まずはAI慣性センサ、重力加速度計、それからジャイロに関してはまだ潜在的に高い性能は実現されていないという認識です。これには、少なくとも実用化するにはコンパクトに小型にということで、感度の向上がやはり重要ということで、ただサイエンティフィックには先ほど言った、単に感度を上げようと思ったら大型にする、要するに相互作用時間を長くするということで大型にする、それから宇宙にするという方向があるんですけれども、実用的なことを考えたら、小型で感度を上げるということで、これにはいろいろな方向が考えられている。原子をもっとより大きく運動量を上げるという方向。それから、ここがまさに量子技術のこれからの重要なところだと思うんですけれども、量子射影雑音、要するにショット雑音をいかに検出感度を上げることができれば、少ない原子数で感度を得て――これは最近実験が進んでいまして、まだ干渉計には応用してないんですけれども、ショット雑音の100分の1以下の検出感度が、原子のスクイーズ状態、もしくは量子もつれ状態を使うことによって、検出感度向上というデモンストレーションがされています。
   ただ、このAIセンサ-に関しては、感度だけじゃなくて一番重要なのは誤差、確度ですね。確度に関してはまだ泥臭いいろいろな要素があって、そういうのは古典技術をいろいろこれからやらなきゃいけない。そういう意味で、技術的ないろいろなブレークスルーが必要じゃないかと。ただ、見通しとしては今のレーザー干渉計型を1桁以上にすることは十分可能であると。
   ジャイロに関しては、ちょっと私もあまり詳しく分からないんですけれども、着々といろいろ研究の方は表になって出てくるところもありますから、秘密のイニシャルで、どちらかというと技術的な小さくしてやるというところが多分一番問題だと思うんで、そこら辺が多分いろいろ進んでいます。
   その1つの紹介例として、ちょっと私自身がやっていたアトムチップという集積化した原子回路みたいなものを使って、実はこれがその当時は量子情報ということで私たちが始めたんですけれども、なかなかその方向では難しいということでちょっと断念して、いまだ……。これはチップ上に冷却現象を作ってBECを作ったりして、これ上でジャイロ、原子干渉計をやると小型になるんではないかと。私のところでも、ジャイロではなくて1次元のこういう干渉計のデモンストレーションをしたんですけれども、その当時これでも0.1秒ぐらいの相互作用時間が得られて、これは自由落下すると数センチ落ちるわけですから、小型の装置でこのような長い相互作用時間が得られるということで、その点検出感度向上にはつながるんですけれども、残念ながら問題はポテンシャル中に原子は閉じ込められているので、ポテンシャルの揺らぎといいますか、どうしても電流で磁場を作っていますから電流の揺らぎが効いてきてしまうんで、先ほどの確度の、ものすごく精度の高い測定には磁場を精度よくつくらないといけないので、そこら辺がネックになるんではないかということで、ちょっとその当時は悲観的、あまりその方向ではどうかなと思って研究はちょっと中断してしまったんですけれども、現在ではジャイロとしてこれがどの程度この方向が有用なのか分かりませんが、こういうリング型の原子の導波路でジャイロを作るという方向がパリ天文台で研究としては進められています。
   ちょっと長くなりましたけれども、研究の課題、日本における課題なんですけれども、ちょっと反省として書いたんですけれども、日本で実はやっているのは私自身が2000年ぐらいにやったのが唯一で、それ以来誰もやっていません。先ほどもありましたけれども、この研究に対してはすごく早い時期に研究をスタートしながら、残念ながら諸事情により原理実証で終わってしまってなかなかその後が続かなかった。研究プロジェクトはその当時、この最初の実験は実は重力波の研究にちょっと加わってもらって、それでその支援の下でやったんですね。重力波と重力はつながるということでそれもちょっと終わってからつなぐ。それから、量子情報で若干サポートをしてきたんですけれども、ちょっと量子情報とはつながらないということで、これもちょっと残念ながらそこで中断してしまってその後つながらなかったというのが反省です。
   今、海外ではこのようにいろいろなところで国の支援の下でものすごい勢いでやっているので、是非とも日本でもこの辺を……。全くやらないという解もあるんでしょうけれども、ただやっぱり将来的にすごく重要な技術になり得ると。まだまだブレークスルーが必要だという技術的な周辺技術が多分ないと実用化にはならないということで、まだ日本が参入する余地は十分あるんではないかということで、これは今後、今はこの辺は日本では少ないんですけれども、若手をそういう意味では育成する必要があるのと、それから国立の産総研、それからNICT、これは両方とも原子時計で活発な研究を、今光格子時計等々いろいろ研究されていますけれども、実はこの慣性センサというのはある意味では原子時計とはほぼ同じ、物理的にも物理と技術に関しても共通の部分が多くて、両者、海外ではもう大体みんな両方一緒にやっています。同じグループで一緒にやっているところが多いので、そこら辺と連携してこれから日本において大きく発展するように期待できるのではないかと。
   それで、ジャイロに関してですけれども、やはりどうしても出口というのが今のところ科学的なサイエンスよりもむしろ慣性航法ということで、軍事技術に関連したもので、なかなか日本でこれを例えば大学でやろうとすると、デュアルユースということで国としてはこういうのを積極的にということはあるんですけれども、やはりまだちょっとやはり日本でやるには、大学でやるには難しい、難しいというかといろいろ抵抗――抵抗というとおかしいんですけれども――があるんじゃないかと。ということは、最初はやはりサイエンティフィックな基礎研究をやって、その後企業との連携を行うというのが良いんではないかと。ただし、こういうのが重要だというのは、これは1つ例として挙げたのは、これは私自身、以前重力波の研究の日本での立ち上げのときに関わったんですけれども、その当時、ものすごく反射率の高いミラーが観測計を作るのに必要だということで、99.99%以上の、いわゆるスーパーミラーというのが必要だということがあったんですけれども、これが実はアメリカがリングレーザージャイロ用に開発した技術で、なかなか公開されなかったのが特許の事情もあって日本では作れなかったんです。そういう意味では、日本ではもう、今ではもちろん作れますけれども、今までも日本ではほとんど作ってないといいますか、やっぱりアメリカのものを買っているんです。軍事技術として開発されたものですけど、この後いろいろな科学技術に使われるわけですから、そういう意味で基礎技術としてはこのジャイロ技術というのをある意味やっぱり技術の蓄積としてやっておくべきではないかというのがコメントです。
   ということで、日本としてもこのAI慣性センサを今後質的に推進していく必要があるのではないかということで、以上です。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。
   それでは、中川先生の御発表に関して、御質問、御意見ありましたら、お願いいたします。
   どうぞ。
【岩井委員】  ちょっとついていけなかったんですけれども、このAI重力加速度計というのは非常に高い潜在性を持っていて、ただ確度の向上がこれはテクニカルな問題なんですか、難しいのは。
【中川教授】  確度の向上というのは、いわゆる基本的な物理、例えば量子力学の基本的なところではなくて、古典技術の問題といって――何と言いますか、ただ、量子技術といっても、これは実は古典技術との戦いで、要するにいかにして量子性を出すかと、そう意味ではいかに熱雑音とかいろいろな揺らぎだとか精度だとか熱の揺らぎとか、そういう意味で、そういうテクニカルな問題という意味です。
【岩井委員】  つまり、実験装置として、初めに……。
【中川教授】  だから、原理的には出てこない筈のものが実際やると出てくるという意味では、例えば物の長さが一定だと思ってもこれが揺らいでしまったら確度が出ませんよね。
【岩井委員】  そういうCavityを作るときの材料をどう選ぶかとかそういう問題なわけですか。
【中川教授】  もうちょっと端的に言いますと、なかなか短い時間で説明するのは難しかったんですけれども、この干渉計の……。光を使って光の位相と原子の位相を比較しているわけですね。理想的にはぴったり位相差を測れさえすれば精度が測れると思うんですけれども、光の位相が精度になるかというと、光はミラーではねているわけですね。そうすると、ミラーが動けば位相が動いてしまって何を測っているか分かりませんよね。そうすると、実は原理的には高いんだけれども、ほかの周辺のところの、あるいは全部古典技術なわけですよね、ミラーであり何であり。そうすると、ミラーをものすごく精度よく実は安定化しなきゃいけないわけです。
【岩井委員】  それはどのぐらいの精度が求められる、そのミラーに……。
【中川教授】  9桁です。
【岩井委員】  9桁。
【中川教授】  ええ。9桁で測定しなきゃ、9桁で実はセンサは原子じゃなくてミラーという逆転、別にどっちもセンサ……、その差を測るわけですから。そういう意味で、これはいかにして古典技術を量子に近づけるかという、そういう意味です。
【岩井委員】  じゃあ、今のミラーの精度では無理だということ?
【中川教授】  いや、そういうことじゃないです。そういうことじゃなくて、ミラー自身が自鳴振動を受けないでいかにぴたっと動かない――要するに、実はミラーがある意味センサなわけです。原子の方は自由落下してそれを基準にミラーの位置を測っていると思ってもいいわけです。精度を上げるということは、結局古典、周りの環境をいかに受けない、アイソレートしたあれを作るかということですね。原子時計の場合、意外と、簡単とは言いませんけれども、割とアイソレートした原子の中の電子のエネルギー準位が周りの環境をいかに受けないアイソレートした環境を作るかということです。それで光格子時計みたいな光ポテンシャルの中でもちゃんとアイソレートした状況は作れるんですけれども、アイソレートした状況で原子が運動する、その運動をいかに周りから遮断できるかということで、それが一番難しいわけですね。
【雨宮主査】  どうぞ。
【大森主査代理】  その辺の見通し、どうなんですかね。
【中川教授】  見通しは、ある程度はだから全くないわけじゃなくて、精度に関しては今問題は分かってきて、レーザー光が実は、例えばもうちょっと技術的なことを言いますと、ガラスのミラー――ミラーというかウィンドウ、窓を通すとやっぱりかなり揺らいだんですね。それが原因だということが分かって、それを実は補正すれば、それは動かなければ補正はある程度できるんですね。そうすると、1桁ぐらい下がるんじゃないかというのが、最近論文で出ています。そういう意味では、見通しとしてはある意味古典技術をどこまで精度を作るとか、それからそれを解決する、そういう意味の技術的なブレークスルーがある程度これから多分出てくれば、原理的にはこれらの精度がやるということで……。
【大森主査代理】  例えば、重力加速度という意味じゃあ多分原理的には一番感度のいい方法ですよね。
【中川教授】  精度が……。
【大森主査代理】  精度がいい方法ですよね。
【中川教授】  これは難しいところで、確度と精度という区別はなかなか難しいんですけれども、感度だけでいえば超伝導重力計というのが今もあるんですけれども、ただこれはふらふら動いてしまうんで、それに対して……。
【大森主査代理】  確度としてはね。
【中川教授】  AIの場合には感度と精度も両方……。
【大森主査代理】  多分、だけどセンサとして使うんだったらそれが非常に大事だと思うんですよね。あるときはこのぐらいの値でセンシングされたのが、揺らぎのためにあるときでは……。
【中川教授】  例えば、これは私もあまりちゃんと勉強しているわけじゃない――ちゃんと勉強というとあれですが、応用として地球物理的な場合に、例えば1年のスケールで地殻の変動を見たいとか、そのぐらいのスケールで見たいわけですよね。その間に動いてしまったら……。そうすると、今の超伝導電力計というのは数か月ぐらいでもうそれ以上超えて動いてしまう。だから、その間に校正していかなきゃいけないということで、超伝導重力系では9桁は1年間では見られないわけです。
【大森主査代理】  そうですよね。
【雨宮主査】  はい、どうぞ。
【上田委員】  先ほどのオプトメカの分野も重要であるにもかかわらず日本の研究者が少ないというお話がありましたけれども、これもお話を伺うと極めて重要であるにもかかわらず、日本では誰も研究していない。なぜこうなったのかということと、それを復活するにはどういうことが必要だとお考えでしょうか。
【中川教授】  これは私自身も聞きたいところなんですけれども、1つ、私自身の経験でいうと人手がいないと言っちゃあれなんですが、これをやっていたときにちょうど量子情報ということでCRESTの研究に加わらせてもらってやっていたんですけれども、やっぱりどっちかと人がいないところで選択となったところで量子情報を選ぶか……。これを量子情報として本当はやればよかったんでしょうけれども、こっち側は量子情報じゃないと見られ――見られちゃうと言うとおかしいですが、いわゆるシングル……、何ですか、原子の干渉効果はいわゆる複数の干渉計ではないという位置付けで、あまりそっちの方からには積極的には……。原子時計だってそうだと思うんですけれども、同じだと思うんですが、なぜか原子科学ではそういう位置付けで、あまり考えなかったと。その後、やっぱりこれはまずいということを私自身も科研費みたいなのを取ってやっていたんですけれども、なかなか日の目を……、注目されなかったというのが。
   海外の方はやっぱりこれは実用的に重要だということで、特に軍事技術で、アメリカは本当にジャイロが軍事技術につながるということで、もちろん本家本元のあれなんでスタンフォードなんかは着々と研究を。ヨーロッパは多分もうちょっとサイエンティフィックな方向で研究を。やっぱり長期的なスケールでやると、少なくとも10年ぐらいのスパンで……、今出てきているのは10年前、まさに2000年ぐらいに同じ時期にヨーロッパでスタートしているんですね。それが残念ながら日本ではちょっと途中で中断してしまったのが一番……。やっぱりもうちょっとそういうスケールで研究をやらないと。今やるべきなのは、今海外でやっているこういう人たちは結局今宇宙を目指しているんですね。なぜかというと、宇宙でできるようになれば民生で使えるわけです。要するに、宇宙でやるには素人が――素人というか、専門家がそこで実験をやるんじゃなくて、一応トレーニングした人が宇宙で実験、それから無人で衛星でやる。要するに、そういう技術ができれば、実用化はもう、要するにそういうふうにある程度そこを超えれば普通に使える技術ができるわけです。
   そういう意味で、先ほどのリングレーザージャイロのミラーの件もありましたけれども、日本では軍事技術じゃなくて宇宙でやれば別にやるべきだと。宇宙を目指してできるようになれば、それはその技術が地球で、地上でそれこそ地震のあれとかそういうところの民生技術に十分使える、まさにそういう実用化には……。もちろんそれにはある程度開発費が必要でしょうけれども、それはやる価値があるんじゃないかと。
【雨宮主査】  よろしいでしょうか。まだあるかな……。
   じゃ、ちょっと手短に1つ。
【飯田委員】  宇宙開発ということで、日本でいうとJAXAがあると思いますけれども、そういったJAXAでこういった研究にグラントを出すというお話はなかったのでしょうか。
【中川教授】  私、1回出したんです。
【飯田委員】  そうなんですか。
【中川教授】  ただ、最初に出したのが数百万で、要するにあそこは段階を組まなきゃ駄目だと。そんなじゃ追いつかないんでもうやめました。1回やりましたけれども、あまりいい評価を得られなかったんですが。ああいうスローな、要するにそういうあれじゃ、絶対もうファシリティーだからできないですよ。もうちょっと、最初からものすごいお金とは言いませんけれども、もうちょっと先を見たようなことをやらないと、順番にしてこれができたら次、次、次とやっているスケールじゃちょっと、追いつくのもとてもじゃないけど。
【飯田委員】  海外では先にどんと大きな予算を出して研究をがんばってもらうという枠組み作りができているのでしょうか。
【中川教授】  それは分かりません。それはもちろんいろいろあちらだって結構あれやっていると思いますけれども、ちょっと日本はそういう方向の、要するに材料はやっぱり多いんですね。宇宙の実験を聞くとやっぱり材料研究が多いと。だから、スケールがちょっと違うみたいなんですね。
【大森主査代理】  アメリカはいきなりでっかいプロジェクト……。
【中川教授】  いや、分かりません、それは。
【大森主査代理】  始まっているように見えますよね。
【中川教授】  だけど、陰でいろいろやっているんでしょうけれどもね。いろいろな……。
【上田委員】  彼らはもう連綿と何十年もやっているんですよね。これ、お聞きになってすぐ分かると思いますけれども、量子情報に比べて決して重要でないというのはなくて、ある意味ほとんど同じかそれ以上重要だからやっているんですね。莫大(ばくだい)なお金が掛かるんですけれども。ポイントは軍事ということが出ましたけれども、実はこれが民生化されたときにものすごく大きなインパクトがあるわけです。
   日本は、時計はやっと最近動き始めましたが、ここの領域が本当に欠落しているというのはかなり深刻なダメージになる可能性はあります。別の国からミサイルが飛んできてそれが迎撃できないのはジャイロの問題もあるわけですね。いろいろな意味でこれは非常に重要な問題だと思います。
【雨宮主査】  まだあるかと思いますが、ちょっと時間が押していますので、どうもありがとうございました。
   それでは、続きまして廣田先生より、「量子レーダーの研究動向と今後の戦略」ということで、お願いいたします。
【廣田所長】  御紹介ありがとうございます。私は有能な研究者を量子情報に引き込むというのがライフワークで、研究者として前面に出るということはあまり望んでおりませんが、今回のサブジェクトはまだ若手が育っていないので、代わって私が紹介するということになります。御了承ください。
   私たちの考え方は、皆さん、ここでたくさんの方がいらっしゃいますが、いろいろな基礎的な研究を積み重ねて、それの応用を探るというのとは逆に、初めから出口は決まっております。これは私が今まで経験したアメリカの方たちとの共同研究から得た1つのやり方です。目標としては、センサ技術のパラダイムのシフトを変えるために、量子情報というテクニックを使って何か今社会で困っている、諸問題を解決しようではないかということを考えております。その1つの基本的な考え方としては、やはりミクロな現象ですとなかなか実用化に行きませんので、前提としては巨視的なエンタングルメント現象が使えればいいと。その中でもTwo mode squeezed lightとかH-stateというのは比較的マクロな領域でエンタングルメント現象を起こしますので、まずこの2つがターゲット。それを自在にセンサ技術として設計するための理論が必要で、ここは量子情報の一番大事なところですが、Wiener型の量子通信理論というものを我々独自に開発しておりまして、それと融合することによって1つ新しい何か応用がないかということを考えてまいりました。
   その中で、結論として出てきたのが2つございまして、量子レーダーカメラというのと、超高感度センサ―というのがエンタングルメント現象を使って既存の能力をはるかに超える性能を出し得るということで、研究を今開始したわけでございます。
   最初に、量子レーダーカメラとは何かということでございますが、それは自動運転機能をサポートするセンサ技術を提供します。今、自動運転のセンサの中で何が困っているかと言いますと、悪天候のときにはセンサが効かないこと。それから、晴れていても前にテスラの自動運転車が事故を起こしたように逆光が入ってくると全てのセンサが機能しないこと。そういう状況においても自動車の周辺の画像を認識するということが可能であれば、これは社会の要求そのものにずばり対応できます。
   それを達成するためにはどういう技術を開発すればいいか。いろいろ古典のこともやってみたんですけれども、量子を使えばこの2つを同時に解決することができますよということがある程度分かってきたということでございます。現在、自動車のイメージセンサーというのはLidarというものでレーザーをスキャンしまして、スキャンで画像を捉えるというのが1つ。これはGoogleなんかが車の上にカラカラと回しているのがこのLidarでございます。もう1つはStereo Camera、これは日本のスバルがやっているアイサイトなんかはこういうタイプでございます。カメラはハイレゾリューションでございますけれども、天候には非常に敏感です。Lidarはある程度雨が降っていても有効ですけれども、もともと分解能が低いということでなかなか人間の体、形状を捉えるというのは非常に難しい。そういう中で、Stereo Cameraの機能、さらに非常に高感度で分解能が高くてかつ霧とかタービュランスとかバックライトなんかに対しても耐性を持つようなものを作りたいということです。Stereo Cameraというのは今言いましたように――実はここで動画を見せたかったんですけれども、ちょっと技術的にここに入らなかったので申し訳ございません。我々、自動運転ができる自動車を持っております。それで、霧の中でいろいろやってみたんですが、かなり危ないですね。ですから、霧の中で歩行者を捉えられるような技術ができれば、これは非常にインパクトがあると考えております。
   そのための1つの原理としての量子レーダーカメラというのはエンタングルメント光の一方をターゲットに当て、片方をCCDカメラで捉えます。反射波は普通のエネルギーだけを捉えればよろしくて、CCDカメラの参照光の情報と反射してくるエネルギーとの間の量子相関を計算することによって、ターゲットのイメージをシンセサイズすることができるという技術でございます。
   特にここで自動車に応用するということで重要なのは、ターゲットが動いている、それから自動車自身が動いております。ですから、理論自体がダイナミクスセオリーというものが必要になります。今までの量子情報科学というのはほとんどスタティックな議論だけでございます。我々は新しくダイナミックなものに対する量子情報理論、量子通信理論を開発するためにWiener型の量子通信理論というのを開発しているわけでございます。
   量子レーダーカメラの技術的な基盤というのは3つございまして、1つは光源。これはエンタングルメント光を作る技術でございます。2つ目が、相関現象が伝搬していきますが、伝搬していくときに、フォグとかタービュランスの影響を受けるわけで、そのタービュランスの影響がキャンセルできるようなエンタングルメント現象を使わなきゃならない。そのため、ランダム媒体を相関が伝搬する状況をシミュレーションするシミュレーターの開発が必要になります。最後に、CCDカメラと戻ってきた光を使ってImage Synthesizerを構成するための、Quantum Wiener Receiverというものの開発でございます。
   この3つの要素技術の理論的なバックグラウンドとしましては、光源は非常にポピュラーなTwo mode squeezed stateなんですけれども、従来Two mode squeezed lightというのは非常にフォトンの数が小さくて、ほとんど使い物になりません。ですから、ここでハイパワーなTwo mode squeezed stateを構成する、あるいは実現するような技術開発が必要になります。2番目は、相関効果伝搬シミュレーター。これは一般化されたホイヘンスの原理の中で、タービュランスの項が普通の乱流と違ってnon-stationaryになります。非定常なランダムプロセスに対して相関効果がどのように伝搬するかという理論解析で、それもシミュレーターというものを開発しながらやらなければならない。3番目は、イメージ合成をするための受信機技術。これも新しいコンセプトでWiener Receiverというものを使っていくということになります。
   現在、プロジェクトを組んでおりまして、開発の期間推定としましては、まず基盤、先ほど言いました3つの要素技術がございます。これも半量子、完全量子という作り方がございまして、光源も必ずしもTwo mode squeezed stateである必要はないんで、まず量子性の低いものからやっていこうと。そうしますと、二、三年のターゲットで一応基盤技術は完成できると思います。もし、完全な量子を使いたいということになりますと、本当に先ほど言いましたハイパワーなTwo mode squeezed state等、あるいは量子Wiener Receiver等を開発しなきゃいけませんので、10年程度は必要かなと思います。それから、これは要素技術だけでは意味がございませんので、システムとしての開発が必要になります。したがって、要素技術の完成と同時に、あるいはそれと並行しながら、カメラとしてのシステム開発を同時に進行させていきたいと思っております。半量子の場合は3年から5年、完全量子の場合はやっぱり7年から12年ぐらいは掛かるかなと思っています。要素技術は今年から既にスタートしておりまして、着実に進歩しているという状況でございます。
   量子効果を用いるその他の方式との性能比較でございますが、エンタングルメントを使ったレーダー技術、センサ技術というのには3つございまして、1つ有名なのがQuantum Illuminationです。これは機能としてはターゲットがあるかないかしか分かりません。特徴としては、背景光がかなりあっても従来の技術よりは性能がいいんじゃないかといわれています。それからQuantum Readingというのがございまして、これはターゲットがどれだけ変化したかというのを検知する技術です。これは外乱のない環境でないと機能しません。ちょっとでもデコヒーレンスがあると性能が劣化するという欠点があります。Quantum Ghost Imaging、これが我々の原点になっているわけですが、これはターゲットの画像を捉えることができます。ただ、現在の理論だけですと、静止ターゲットです。お互いに止まっているもので、ダイナミクスじゃなくてスタティックなものに対して応用可能。
   上記を実現する技術が2通りありまして、ミクロな量子効果、単一光子系と、あとは、巨視的な量子効果。実用を促すとすれば巨視的な量子効果をやらないと無理です。要するに実働距離、数メーターから数十メーターを達成するにはシングルフォトンではもう話にならないということになるかと我々は考えております。
   出口は、先ほど言いましたように、完璧に決めてあります。すなわち、量子レーダーカメラです。単体では自動運転できませんので、いろいろなレーダーとあるいは人工知能との融合を経て、全天候対応の自動運転車の実現、それから超高感度監視カメラですね。予定としては、2020年から30年の間に実用化を目指しております。現在、世界で我々しかやっておりませんので、この技術を世界標準に持っていけば自動車産業界には貢献できるのかな。課題としては、小型化と量産化ですね。もしそれが成功するとすれば、市場は1兆円規模。これは日立製作所と今やっておりますので、彼らが試算したイメージはこういうことになります。
   これはメルセデスですけれども、装着イメージとしてフロントガラスのところに量子光の発生、送信機がありまして、下の方にダイバーシティアンテナでいろいろな擾乱(じょうらん)に対してノイズを消すという特性を実現しようとしているわけでございます。
   車の中のネットワークが弱いんですけれども、車自体のネットワークが光化されますと、量子レーダーカメラ、それから量子ジャイロ等の非常にハイスピードのスペックの高いものが車の中で動作可能になりますので、車の光化というのも同時に共同研究者としてウエルカムとして進めていこうということで考えております。
   2番目のサブジェクトは、標準量子限界を超えるセンサ技術。これは金属の表面等の詳細なでこぼこを測る技術です。そのときにH-stateと量子通信理論から発見されましたHelstrom受信機等を組み合わせることによって、従来の量子限界を超える計測が可能だということでございます。
   理論的なバックグラウンドとしては、H-stateというのが普通のコヒーレント状態をエンタングルさせる。これをQuasi Bell Coherent状態と言いまして、私が2000年に定義したもので、この中の2つが非常に特徴を持っていまして、非直交状態のエンタングルメント状態でありながら、プサイ2とプサイ4、これは完全なエンタングルメントを持ちます。それ以外は完全なエンタングルメントを持ちません。この2つをH-stateとVan Enkが命名したんですが、そう言っています。この2つを使うことによって、エラーのない超高感度位相シフトセンサーができる。
   これは非常に驚愕的な結果でございますが、コヒーレント状態のエンタングルを使っているのに関わらず、ショットノイズの不確定性原理すら関係ない、エラーがゼロでフェーズシフトが検出できるということが発見されました。これは私が2011年に、論文で公開しております。これをこれから実現していこうと思っています。
   ただ、基盤技術としては、H-stateをどうやって生成するか。2つございまして、Van-Enk法というのがコヒーレント状態のCat Stateをまず生成して、ハーフミラーで合成するとH-stateができるというものです。Cavity QEDで直接的に生成する技術もございまして、これはVan-EnkとMabuchiが提案してくれました。あとは、Helstrom受信機ですけれども、非常に低速なものは実在するわけですけれども、高速なHelstrom受信機をどう構成するかという非常に大きな課題が残っております。
   出口と展開可能性というのは、初めから出口を考えていますので、エンタングルメント現象を基盤とする量子物性科学、それからこれはH-stateとかCavity QEDという技術とリンクしますので、量子光学の発展を促すとともに、科学技術に基盤となる計測・解析技術を飛躍的に向上させると考えております。
   事務局の方から、私の研究分野から見て、文科省が進めている政策推進における課題ということで質問がございましたので、私見ではございますが、提言させていただくということが以下になります。文科省の問題意識として、出口の具体化とともに日本の強みを踏まえ、いかなる推進方式がよいかと。量子センサ関係に関して1つ私の考えている提言というのは、以下のようになるかと思います。例えば、国内外の研究の特徴として、私が運営していますOQITというのは私のベンチャー企業ですけれども、私たちとMITは、従来のShannon型の量子通信理論から発展させたWeiner型の量子通信理論というものを採用して、量子センサ技術の基盤技術にしようとしています。それ以外国内、あるいは国外一般ですと、まだShannon型の量子通信理論を多用されています。Shannon型の量子通信理論というのは後で説明しますけれども、設計理論ではございませんので、センサーなどにはあまり役に立つとは思っておりません。
   量子センサに関する国内外の投資の動向とか現状と言いますと、国内では日立製作所、及び自動車メーカーが今非常にたくさん私のところにアプローチを掛けてきますが、それで進行している。それは民間資金でやっておりまして、正直税金を使いたくありません、私は。ですから、ここにいるのはちょっと不思議なことなんですけれども。国外はDARPAと陸海空軍でやっております。その他の国では、あまり出口が見えるような量子センサの研究というのはなくて、基礎研究というか、物理学的な興味でおやりになっているのかなと思っております。
   なぜこういう研究テーマを探し当てたかと言いますと、2003年にDARPA支援プロジェクト合同シンポジュームに招待されまして、それは2003年にフロリダであったんですけれども、ここでの主要課題は量子コンピュータの実現可能性と、量子暗号の開発の可否について、全米のそうそうたる物理学者、情報科学者が集まって非常にすばらしい議論をやっておりました。私もここで講演させていただきました。
   その中身がどういうことかと言いますと、量子コンピュータ、量子暗号の開発の方向性の議論をして、そこでちょっと見きわめをしたいということで、中間報告的にまとめられたものでございます。2つのテーマに分かれておりまして、1つはミクロ的な量子効果を使った量子コンピュータとか量子暗号というのはどう発展するのだろうか。それから、巨視的な量子効果を使った量子暗号とかいろいろな応用というのはどう発展すべきであるかというのを非常に詳細にわたって議論されておりました。
   結論としては、ミクロな量子効果を使ったときの課題として、量子コンピュータのスケーラビリティーが本当に解決できるのだろうか、それから量子鍵配送の通信特性というのはどのくらいまでいくんだろうか。そういうことがある程度結論は出ておりますけれども、ここではちょっと微妙な話がありますので省きますが、巨視的な量子効果は今我々もやっていますY-00型の物理暗号を将来的にどうすべきかということが議論になりました。特筆すべきなのは、ここでもう既にアメリカとしては量子センサの開発の企画をしたいということで提案がございまして、それが空軍研究所プロジェクトとしてNorthwestern大学とMITがやるということがここで決まりました。私も、お金をもらうわけじゃないですが、Northwestern大学のチームとして参加するということになりました。
   2008年に米空軍研究支援プロジェクト合同シンポジュームがございまして、ここでも私は招待講演でY-00の開発状況を報告しました。2007年からMITとNorthwesternで量子センサープロジェクトが走っておりまして、その中間報告も含めてこの2008年3月にDaytonという空軍研究所の中の会議で量子センサの開発報告がございました。強いて言えば、アメリカというのは、皆さん御存じのように国防総省が主導して研究開発をしていくというのが1つのやり方でございます。でも、日本はそういうわけにいかないというのは重々承知しております。
   では、量子情報の日本の強みとは何かというと、私も正直よく分かりません。ただ、言えるのは、私が1990年に量子情報科学の世界初の国際会議を作ったわけですが、今でも綿々と続いていますが、現在私は引退して全然出ていません。1990年、第1回会議をパリで私がやりまして、この参加者は本当にそうそうたるメンバーでした。第1の招待講演者はCohen Tannoudjiで、この会議の何年か後にノーベル賞を取ってびっくりしましたけれども。あとは、東大の今井浩先生がAsian Quantum Information Scienceというのを創設されて、今も続けております。この2つの国際会議は非常に世界的に評価を受けていまして、Bennettが大川賞を取ったときの記念講演の中でこの2つが非常に量子情報科学の発展に大きな貢献をしたというふうに述べておりますので、光栄なことだと思うんですね。ですから、日本でもし推進するとすれば、こういう国際会議の中で日本の研究を推進する起爆剤としてここで活躍の場を見出していくと良いのではないでしょうか。これは民間主導型の研究開発という形になります。非常に多様性があっていろいろな考え方の方たちが議論を沸騰させるという意味で、そういう方向で研究開発をしていくというのはいいんじゃないかと私は考えております。
   日本の弱点というのは何かと聞かれましたので、そうですね、私も正直よく分かりませんが、今まで日本の電子産業、大企業と大学の連携による成功というのはかなりあったと思うんですね。でも、それは過去のことではないかなと思いますね。現時点そうかというと、多分今そうなってないと思いますね。それから、日本が先端技術において優位性を持ってないというふうに感じています。失礼かもしれませんけれども。あとは、研究助成金が量子情報に関しては本当に一極集中ですね。ですから、ほかの意見の違う研究者にはほとんどお金が行かないという、これは何とかした方がよろしいんじゃないですかと思いますね。
   今後の方向性と課題としましては、私はあまり好きじゃないんですけれども、日本の風土を考えると、やっぱり東京大学を頂点にして主要な拠点大学がもっと連携して、いろいろなサブジェクトといいますかリソースを利用しながら世界に打って出られるような研究をされるといいんじゃないかなと思いますね。あとは、大企業の凋落(ちょうらく)という問題で非常にいらいらしています。やっぱり大企業というのはある程度基礎研究をすべきだと思うんですよ。昔はかなりやっていたんですけれども、現在ほとんどないですね。苦言を呈して申し訳ないんですけれども、日立製作所の中央研究所というのは非常に無残だと私は思っております。
   あとは、人材の有効活用だと思いますね。理学系の研究者はやっぱり基礎研究に専念すべきですね。理学系の研究者が何か工学的な応用だとか量子暗号だ、量子コンピュータだ何だ、通信だなんていうのは、実にもう幼稚ですよ、我々から見ると。だから、そんなことを言う必要はないじゃないですか。ものすごい物理学の最先端の本当に知能が高い方たちなんですから、そういう方に応用だ応用だと言う必要はないようにしてあげたい。そういう人は本当に基礎研究に専念すればいいですよ、と思います、私は。工学系の研究者は、あまり今度は流行ばかりじゃなくて、やっぱりこういう量子情報の基本的なものに挑戦してみるということによって、融合が自然的に発生していけばいいんじゃないかと思います。その中で、理学と工学の両方にたけた若い研究者も自然に育っていくような環境づくりをしていったらいかがでしょうかと考えております。
   まとめますと、これから多分量子情報科学は新局面に向けていくと思うんで、そのときの基盤技術の推進としましては、ここにいらっしゃるような有能な物理学の研究者の方たちと、それから我々のような情報科学から量子情報を見ている研究者の協調が大切です。数学的なWeiner型の量子通信理論、これは実は制御系の理論が入りますので、Shannon型とは全然違ったアプリケーションが出てくる可能性がございます。その結果として、量子状態の最適制御、量子計測とか量子コンピュータの回路というものをこれからスケーラビリティーを上げていこうとすると、設計理論が必要になってまいります。それを担うのがWeiner型の量子通信理論だとお考えいただければありがたいです。
   それでは、数理科学の方はどう発展すべきかという問題ですが、数理科学は数理科学でやっていかなきゃならない。今までは主にShannon型の量子通信理論というのを研究してきたわけで、1960年から2000年ぐらいで大体基礎が固まってまいりました。それから情報科学的予言として応用を予言していくわけです。その中から出てきたのがY-00型の物理暗号、量子エニグマ暗号などですね。次に、我々が期待したいWeiner型の量子通信理論というのは、これも1970年から2010年の間に既に基礎研究は終わっていまして、ここからアプリケーションを予言していこうとしています。1つが今紹介しました量子レーダーカメラ、ジャイロなどですね。更にこれが進展しますと、先ほどから出ていますが、重力定数の変化を検出するようなセンサ技術、それからダイナミクスを扱いますので、確率自動制御システムというものに量子的な特性を生かしたそういうシステムが可能ではないかなと考えております。
   以上、簡単に述べさせていただきましたが、これからはやはり物理系の方、それから数理系の方が対等に忌憚(きたん)なく議論するような場をお設けになって、意見の対立というものを逆に利用して若い次の研究者を育てていっていただければありがたいなと感じております。つたないお話で申し訳ありませんが、以上です。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。
   それで、今の廣田先生の御発表に関して御質問、御意見ありましたらお願いいたします。
   2018年から始まるというのは、どういうプロジェクトですか。
【廣田所長】  これは民間で、実はプライベートな話で申し訳ないんですけれども、私、来年3月で定年延長が切れてめでたく卒業になるんで、ベンチャー企業を作りまして、今自動車産業とか日立製作所に声を掛けて、量子レーダーカメラプロジェクトというのを立ち上げております。これは今自動車産業ですとデンソーとか小糸製作所、それから変わったところでは凸版印刷とか、自動車関係に興味ある会社が今集まってきています。そういうのが集まって、民間でお金を出し合ってプロジェクト、量子データカメラ実現に向けて今年の4月からスタートいたしました。
【雨宮主査】  そうですか。
   ほかにいかがでしょうか。
   どうぞ。
【伊藤教授】  今年から「さきがけ」で量子情報の分野がまた始まりまして、その中で明確に量子情報理論とかそういうことを画期的な、精力的な研究を求めるということは書いてあるんですけれども、残念ながらあまり大声では言えないですけれども、応募が少ない状況で。
【廣田所長】  そうですか。
【伊藤教授】  そこら辺の育てられ方とか、今までずっと教育に力を入れてこられたとおっしゃったので、その点において若手がそういうのに応募してこないというのは、どういうことが原因だとお考えですか。
【廣田所長】  よく分かりませんけれどもね。私の課題は日本の風土があってなくて、御存じのように日本のソサエティーの中にいるわけじゃなくて、日本の学界からは異端児扱いされています。ですから、先ほど言いましたように、国のお金を使いたくないというのがあります。なぜかというと、やっぱり思想的制約が大き過ぎるんですよ。
【伊藤教授】  それは、若手がそういうふうに考えているということですか。
【廣田所長】  と思います。
【伊藤教授】  若手の方はたしか伺っています。
【廣田所長】  はい。というのは、私は自分で研究するよりはテーマを出して、テーマに食らいついてくる秀才をこの量子情報の世界に導くという仕事をしているわけです。このテーマもそうであって。こういうのに集まってきた人に聞くと、とにかく民間でやるのだったら民間でやらせてくださいという方が多いです。例えば、「さきがけ」とかCRESTに応募しようとすると、全て自分たちのアイデアを公開して、許可を求めなければならない。こういう出口が決まっている研究というのは、公開したくないものがいっぱいあるんですよ。だから、プロジェクトのプログラムにこういう原理でやりますと言ったとたんに、それはもう中国、韓国などから、ありがとうございますになっちゃう。見せたくないノウハウがいっぱいこういうテクノロジーの中にあるわけですね。
   皆さんのような基礎研究の場合は、積極的に公開されて、いろいろな世界で知恵を合わせてベースを作っていくというやり方、これは正当なんですね。ところが、こういうアプリケーションの場合は、秘密主義というのは必ず必要なんです。だから、アメリカの場合は、本当に有望だと思ったとたんにクラシファイされて、外に出てこなくなります。これがアメリカのやり方なので、これから「さきがけ」とかそういう国のプロジェクトを組まれるときに、公開しないでもいいような仕組みみたいなものをお考えいただければ。実は、提言書の中に書いたんですけれども、これは学術会議マターだから消してくれということで、ここに入っていませんが。口頭で言っていいということだったので、ちょうどいい質問を受けたので、ありがとうございます。本当は言いたかったんですけれども、質問を受けたので言わせていただきました。
【雨宮主査】  ほかにございますでしょうか。
   今の議論の問題、議論し始めると何か非常にいろいろ盛り上がりそうなんですけれども。時間が限られていますので、よろしいでしょうか。
   どうも廣田先生、ありがとうございました。
   それでは、続きまして長我部理事に御発表をお願いしたいと思います。
【長我部理事】  よろしくお願いします。私の役割は、出口の側から量子科学技術へうまくつなぐということで、お話しします。
   そういう意味では、Society5.0というコンセプトが基本計画に目指すべき社会として掲げられていて、それのベースがIoTであるということで、IoTに量子科学技術がどうつながっていくのかというコンテクストでお話しするのが適当かと思う次第です。
   これはもう御案内のように、インターネットができて以来コンピュータと人がつながったのが、スマホが出て、M2Mになっていよいよ接続数がどんどん増えるという時代でこれを使いましょうということです。それがどれだけの市場規模になるかというと、2020年には20兆円世界でいくのではないかという予測もあります。こうした中で、各国がどう動いたかというのがこの図ですけれども、もちろんセンサーネットとかいろいろな名前で昔から研究はありましたけれども、最近になって目立つのはドイツの動きで、製造業をIoTを使ってもっと強くしようということでIndustry4.0というコンセプトを打ち立てたました。それに対して、アメリカがアメリカの製造業を強くするんだということで、industrial Internetというコンセプトで対抗しています。中国は、中国製造2025ということで、これはIoTだけではなくて2025年には主要産業のプロダクトは全て中国企業が作ったものでないと中国で流通できないという、まさに自分のところのマーケットの大きさを利用して覇権を握ろうと、このように製造業を中心に各国がIoTを利用していこうとしています。そういう目的で研究費を付けていろいろ基礎研究もやっているという状況です。
   それに対して、日本が先ほどの科学技術基本計画にSociety5.0というコンセプトを出しましたけれども、その民間の推進母体がこれで、IoT推進コンソーシアムということで、これは慶應の村井純先生とNTTの鵜浦社長と弊社の会長の中西が発起人になってこういうコンソーシアムを作って動き出しました。諸外国が製造業中心にIoTの適用を考えているので、日本のIoTは製造業だけではなくて課題先進国である日本のいろいろな場面で役立つIoTを作っていこうと、ちょっと一段広いコンセプトで日本は迫るということで、この人たちに対して独自性を持っていこうという動きを始めたということです。こういうふうに国家間協力もありますけれども、国家間競争もあるという、世界になっていると認識しています。
   これがIoTコンソーシアムということで、総務省、経産省とかもちろん文科省を含む関係の省庁ですとか、いろいろな研究所、大学、企業というところで集まって、日本の作戦を考えようということでやっておりまして、その中でどういうところにフォーカスしようかと、どういうふうに他国と差別化しようかということで、ここにIoTのポンチ絵がありますけれども、大きくいってリアルスペースの社会の情報をセンサから取ってサイバースペースに持ってきてここでいろいろ計算して戻そうという概念ですけれども、このクラウドの方はGoogleとかAmazonとかこの後ろのサイバースペースに巨大なリソースをつぎ込んで世界をもう作り上げちゃっています。ここと戦うのではなくて、重要なコンセプトはエッジというコンセプトを先ほどのIoT推進協議会で話をしていて、これを日本の強みにしましょうと。なぜエッジかというと、1つはサイバースペースは先に取られちゃっているということと、もう1つは今後の利用を考えると、このエッジ、センサに近いところの処理がすごく重要になるということです。例えば工場の制御にしてもかなりリアルタイムでデータを取って工場の生産プロセスをリアルタイムでフィードバックする必要があります。そうすると、いちいちクラウドに上げてられないとか、非常に小電力だとするといちいちネットを介してここに送れないとか、それから今までの応用がBtoCのビジネスが中心だったのですがBtoBになると、例えば鉄道の運行にIoTを入れると信頼性やリアルタイム性が重要になります。そのためにはエッジで処理をすることが中心になるということで、エッジのところに日本の経営リソースを集中したらどうだという議論をしております。
   その中で、エッジの中でどういう技術が必要になるかということで、これは経産省の資料を転用していますけれども、分類に便利なので、データを集めて蓄積して解析して、それでこれをフィードバックするという流れと、それから当然ながらいろいろな機微なデータを扱うにはセキュリティ技術が必要ということで、こんなところが技術要素として必要ですということで、それでいろいろ考えていきますと、データ処理ということで、クラウド側、先ほどからいろいろ話が出ていますいろいろなタイプのQuantum Computing、qubitじゃなくてもいいですし、あるいは量子アニーリングのようなもの、エッジの側で正確な解ではなくても、ある有限の、与えられたgivenな時間で最適な解になるべく近づけるような新しいコンピューティングのスキーム、こういうものが多分エッジでは必要になるでしょう。
   それから、データの蓄積のところに書いたのですが、実は同期技術というのがものすごく鍵になります。これは何故かというと、例えば今フィンテックとかいろいろ騒がれていますけれども、株式の取引とか機械がアルゴリズムでやりますので、もうミリ秒とかサブミリ秒単位でいろいろな優先権を争います。そうすると、東証の近くの事務所を使ってネットワークの距離を短くしてなるべく早く勝つというようなことで、そうなると公平な競争をやるのはやっぱり同期の技術が必要です。それから、いろいろな工場なんかでも振動するデータの相関を取るとなると、そうするとじゃあ同時刻性をどうやって担保するんだということが非常に大事ですので、やっぱり量子の原理に基づいたノイズに左右されない、ジッターを持たない時間の基準というのがやっぱり鍵になります。IEEEの1588という標準がありまして、それは高精度なクロックを配信するプロトコルです。しかし、サーバーで高度に正確な時刻を配信する際に、ルーターで中継していますが、ここでの遅延時間にバラツキがあると正確な配信ができなくなります。そこでルータを通る信号の遅延時間を、例えばクロック10信号に揃える仕掛けにます。そこに10信号遅れましたというタグをつけて出して後で補正するということがプロトコルに組み込まれています。ところがルーターのローカルなクロックが不正確だと、やはり遅延時間にバラツキができます。ここに量子技術を使った温度や環境に左右されない正確な時計が必要になると考えられます。
   それから、データの収集です。IoTとかビッグデータとかいうと、精度の低いデータもたくさん集めれば正確になるというコンセプトと思われているんですけれども、いやいやそうじゃないという世界がたくさんあります。例えば医療で、1人の患者さんにどういう治療がベストかというようなものをデータの中から導き出そうとすると、病気というのはすごく多様性があって、同じ症状というのは非常に数が少ない。統計的に揺らぎがあってビッグデータじゃないんです。スモールデータと本当に分かっているお医者さんたちは言っています。そうすると、いかに正確に1人の患者さんの症例データを取るかが重要です。いくらIoTの時代でセンサがたくさんつながっても、例えば医療の世界では、センサの正確性というのは非常に重要になるということです。これも先ほどのお話にもいろいろ出ていますが、NVセンタなど、いろいろな微小磁場計測技術を利用した脳磁あるいは心磁、こういったものでますます精密な医療、こういうものが必要になりますし、例えばセンシングの重要性で言えば、地面をたたいて振動を起こして、その振動を計測することによって地震波の伝わり方から石油がどこにあるかというのを探す技術がありますけれども、これも非常に精密さが必要で、実は大陸にぶつかる波の振動が大陸の真ん中で測れるぐらいの精度のセンサが必要ということで、幾らIoTの時代、ビッグデータの時代といっても、非常に正確さが求められるものはたくさんあるということです。4番目は、これも先ほどからのお話に出ていますが、セキュリティの重要性です。医療情報など、絶対のセキュリティが求められます。、アメリカではセキュリティの基準を作って、その基準をクリアすれば医療データも研究に使えるようになっているんですけれども、日本はなかなかそこまで社会のコンセンサスが得られていませんし、立法もされていません。だったら、やっぱりテクノロジーで絶対に安全な通信というのを担保する技術をどんどん作って先駆けていくべきではないかと思います。IoT、特に日本の求めるエッジというのを見ると、量子科学技術というのはこれだけの期待があると思っております。
   ちょっと雑駁(ざっぱく)は話ですけれども、以上です。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。
   それでは、今の御発表に関して、何か御質問等あればお願いいたします。
   どうぞ。
【早瀬委員】  今、量子科学技術への期待ということで挙げられましたけれども、具体的に企業内でどういった取り組みをしているんですか。自分たちで何かそういう技術を開発しようとしているのか、他との連携で開発しようとしているのか、そのあたりをお聞かせいただければと。
【長我部理事】  両方ありまして、量子アニーリングみたいなものは、その手前のCMOSで量子アニーリングをミミックしたようなようなのを私たちも開発していて、このように手前のろころは自前でやって、先のところは大学と協力して量子アニーリングとかをやっているとか。センシングに関しては、新しい原理のセンサなんていうのは自分のところでもやっておりますし、共同研究でもやっています。オープンと内部と両方やっておりますけれども、どちらかというとオープンが増えているかなというイメージでございます。
【早瀬委員】  じゃあ、本気で――本気でというか、この量子科学技術を本当に実用的に使おうというようなことを企業の側は本気で考えて取り組んでいるという……。
【長我部理事】  そうです。ですから、本気になるものはどういうものかというと、時間がかかっても難しくてもいいですから、目的に対して代替手段がなく、できたらこういうふうに役に立つことが分かっていれば、難しいとか、基礎科学だということは別に関係ないと思います。ただし、苦労してできたけれどもほかのもので代替できちゃったとかでは困りますよね。ただしできた技術ものが、本来の目的では他も手段に比べて劣っていても、新しい技術であればほかのことに役立つこともおこりますから、基礎研究としてはやったらいいと思いますけれども、企業の研究ではないですね。いろいろ申し上げましたが本気になれるものはもちろんありますというのが答えです。
【大森主査代理】  でも、最終的にやっぱり利益が出ないと駄目なんですよね。
【長我部理事】  それはおっしゃるとおりで、幾らR&Dに投資して、それを全体として幾らもうけることができるかということは決定的に重要です。そこを外すと企業が存続できなくなり、社会の役にたたなくなります。ただし研究開発投資したけれどももうからない部分って結果的にはあるわけです。それはあたりはずれの確立と全体としての期待値の問題ですから、ポートフォリオ管理といって確実なものから、確率は低いがあたれば効果の大きいものなどいろいろ網を張ります。企業毎に、どれだけ安全なものをやり、どれだけ危なっかしいものをやるかというのは企業のR&D管理者の腕の見せどころです。過去は確かにた基礎的なフェーズのものを沢山やっていたんです。それはなぜかというと、世の中にでている技術が未成熟で、多くのものが出口につながったんですね。それが世界中の競争者が増えて、研究者人口が増えていくと、大分いろいろやられていって、リスクの高いものばかりやっていると本当に何も結果が出なくなっちゃうので、だんだんリスクをとる割合が減っていっているというのが実情なんだと。けれども、本当は我々に目利き能力があれば、先ほどの廣瀬先生の話じゃないですけれども、出口ができたら絶対すごいよというものを見極められたら、そこにはお金が掛けられますということで、何ていうんですかね、出口シナリオみたいなものがうまくできればいいのかなとも思います。でも、それは研究をしている人が考えるというよりは、我々出口側が研究をやっているものを見て考えるのが本来は筋じゃないかなと、私は個人的には思います。
【雨宮主査】  はい、どうも。
   最初にまとめて30分ぐらいのディスカッションの時間を持つと言いましたけれども、ディスカッションが中に入りましてその時間がなくなってきたんですが、あと5分か10分ぐらいの時間は取りたいと思いますが。
【根本委員】  済みません、1つだけコメントいいですか。
【雨宮主査】  はい。
【根本委員】  どうしても気になるので、1つだけちょっとコメントさせてください。データ処理のところなんですけれども、クラウドはアルゴリズムでエッジは量子アニーリングというまとめになっているんですが、おっしゃっていることを聞いていると、そこに書いてあることと思っていらっしゃることが違うんじゃないのかなという気がするんですが。こういうまとめ方だとかなり無理があると感じるので、これはどういう意味なのかというのをちょっとご説明していただけますか。
【長我部理事】  そういう意味では多分私の認識が間違っているかもしれないので、後で資料を訂正して分類に関するところはいただくようにします。
【雨宮主査】  それでは、この日本の強み・弱みというポイント、それから日本が何に注力するか、それからもちろん推進上の課題、また推進方策のこと、それからあと前回事務局からありましたけれども、参考資料2のような、こういう人材育成から社会との関係、研究開発計画における具体的に留意すべき事項、この辺の事項において、非常に限られた時間ですけれども、御意見ありましたら、よろしくお願いしたいと思います。もちろん、今までの議論の中で積み残した内容あれば、そこを補強していただければと思いますが、いかがでしょうか。
   この参考資料2のことについては、多分丸2のオープンサイエンスについてのことが多分前回事務局から御説明があったと思いますけれども、そこに関して今日も最後ビッグデータなのか実はスモールデータなのかという議論もありましたけれども、何か御意見等あればお願いしたいと思います。
【湯本委員】  よろしいですか。
【雨宮主査】  どうぞ。
【湯本委員】  やはり量子という少し先物で、そこに行くためにやっぱり現在から日本の国力とか、さっきリターンという話もありましたけれども、つながっていかないとやっぱり最後の量子なり必要となったときに息切れしちゃうということを一番私は心配しています。
   そういう意味で、今エッジとかいろいろ出ておりましたけれども、本がこれからエッジをやるんだと言われたときに、じゃあここをどう進めるんだということも問題になってきて、これは多分シリコンでやるんですよね。シリコンのファブは、今、日本にはなくなっています。そういう意味では本当に量子を考えなきゃいけない。だけれども量子まで持っていく、そのつなぎも考えなきゃいけないと思います。夢は夢として持っているのも大事、更にその夢を実現するためのツール、方策、そこも考えていかなきゃいけない。といって今私が答えをもっているわけじゃないんですけれども。個別にテーマを一生懸命変えるのも必要。だけれども、それをやるための投資を得るための手段も考えていかなきゃいけないというのが、個人的な問題意識として逆に皆さんの意見をいただければと思っています。
【雨宮主査】  今のことに関して、あるいはそれ以外でも結構ですが、いかがでしょうか。
【廣田所長】  今おっしゃったことはそのとおりだと思うんですが、日本の研究者というのは非常に基礎物理学とか基礎数学の能力はすばらしいと思うんですよ。だから、それを目指すんですけれども、今おっしゃったような境界的なものは、やっぱり年寄りがちゃんと方向付けをしてあげて、そういう若い能力をいい方向にぶつける。先ほど言いましたように、研究者にあまりアプリケーションとか最後の結果まで考えさせるというのは酷なような気がするんで、やっぱり我々年寄りがそういうことをケアした方が良いです。今日立の方がおっしゃっていたとおりだと思うんですね。本当にそこらの見極めというのはある程度経験がないと見えないところがあるじゃないですか。ですから、本質的なことをおっしゃっていることは確かだと思います。ピュアな量子の研究だけだとなかなか出口が見えてこない。
【湯本委員】  アメリカの若い人と接すると、基礎のところにいる学生であっても、やっぱりスペクトラムが広いんですよね。井の中のカワズというのは逆に悪くなっちゃう。いろいろなチャンスを与えて、それが得意な人はそれをやる。広げる人は広げる。そういう多様性、自由度をどうやって作り付けていくのかというのが多分大事だという気がしています。
   どっちかというと、日本人の価値観がよしあしを割にしっかりつけちゃうようなところがある。そこを解決しないと、やはり出るくぎを打つような社会にどうしてもなっちゃうんじゃないかと。それは多分小学校とか中学校の問題も絡んでくるというような気がします。
【根本委員】  先ほどの平山先生がおっしゃっていたことと、また今のお話とも絡むと思うんですが、やはり研究費をどのぐらいつけるかというようなことであるとか、政策としてどういうものを活性化させるのかというのと同じように、やっぱり評価の部分もきちんと考えていかないと思います。どういうものを評価していくのかというところが非常に日本は遅れているのか詰まっているのか、とにかくうまくいっていない部分というのが非常にあるような気がするんですね。そういうところで、やはりそれは一体となって考えていかなければいけないもののはずなのに、どうしても政策の中で評価がきちんと機能しないというようなことが起こっているために、若い人がやりづらいと思ったり、継続すべき研究が継続されなかったり、その配分のバランスが壊れてしまったりするというのは、そういう評価の部分というのは意外と大きいのではないのかなという気がいたします。
【雨宮主査】  何かほかに。大分予定の時間が過ぎていますが、これはというものが何かあれば。
   よろしいでしょうか。
   それでは、今日のことをまとめて、また骨子案を作りたいと思います。
   事務局の方から、次回に関してアナウンスをお願いいたします。
【植田補佐】  第7回の開催は12月を予定しておりますので、日程調整の御協力のほど、よろしくお願いいたします。
   なお、次回においては、委員会における検討項目の1つであるフォトニクス・レーザーについて対象とすることを予定しております。
   本日の資料について、郵送御希望の方は、封筒に入れた上で机上に置いたまま御帰宅いただければと思います。不要な資料やドッチファイルについては机上に置いたままにしていただければと思います。以上です。
【雨宮主査】  それでは、閉会に当たりまして、上田量研室長から一言お願いいたします。
【上田室長】  今日も幅広い議論、活発にどうもありがとうございました。また、議論の骨子をまとめたいと思います。次回からは、今ありましたようにフォトニクス・レーザーに次は入ってまいります。12月にやって、恐らく次1月にやってその2回ぐらいで一通り一巡するのかなと事務局としては今感じていまして、いよいよそういうことを進みながら中間的なまとめを1月、2月ぐらいにまた御議論いただくことになろうかと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
   今日はどうもありがとうございました。
【雨宮主査】  不手際で大分時間が遅れましたけれども、今日はどうもお忙しいところありがとうございました。これで閉会といたします。



―― 了 ――

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-- 登録:平成29年01月 --