先端計測分析技術・システム開発委員会(第5回) 議事録

1.日時

平成28年7月27日(水曜日) 14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省 15F 科学技術・学術政策局 局1会議室

3.議題

  1. 重点開発領域等終了に向けたフォローアップと今後の対応方針について
  2. 俯瞰報告に関する今後のフォローアップについて
  3. その他

4.出席者

委員

佐藤主査、尾嶋主査代理、飯島委員、大堀委員、岡本委員、金澤委員、菅野委員、杉沢委員、中村委員、森川委員

文部科学省

真先大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、神代科学技術・学術政策局総括官、渡辺研究開発基盤課長、田村研究開発基盤課課長補佐、村松ライフサイエンス課課長補佐、亀田環境エネルギー課課長補佐、高杉研究開発基盤課調査員

オブザーバー

林JST開発主監、市川JST総合評価会長、山下JST先端計測室調査役

5.議事録

【佐藤主査】  定刻になりましたので、ただいまから第5回の先端計測分析技術・システム開発委員会を開催いたします。今日は資料が皆さんに届くのがぎりぎりになって、なかなか読み切れていないところもあるかと思いますけれども、議論をよろしくお願いいたします。

なお、本日の会議は公開の扱いになっていますので、御承知おきください。

初めに、文科省の方で人事異動がありましたので、真先審議官と田村課長補佐の御挨拶をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

真先大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)の挨拶

田村研究開発基盤課課長補佐の挨拶

【佐藤主査】  続いて事務局から本日の出席者と配付資料等の確認をお願いいたします。

田村研究開発基盤課課長補佐より、出席者と配布資料の確認があった。

【佐藤主査】  配付資料はよろしいでしょうか。これに基づいて議事に入りたいと思います。最初に、議題1は重点開発領域等終了に向けたフォローアップと今後の対応方針についてという内容ですが、大丈夫でしょうか。

【佐藤主査】  第4期の科学技術基本計画に基づいて先端計測事業を行ってきましたが、今まで科学技術基本計画に基づいて重点開発領域を決めて実施する取組などを行いましたが、それらの状況について事務局及びJSTの方から説明頂いて、今後の事業の方向性について議論したいと思います。そして、今は第5期ですから、それも含めて科学技術基本計画における先端計測技術・機器の位置付けについて事務局から説明していただいて議論したいと思います。よろしくお願いします。

まず事務局から資料1の説明をお願いします。

田村研究開発基盤課課長補佐より、資料1-1について説明があった。

山下JST調査役より、資料1-2、資料1-3、資料1-4、資料1-5について説明があった。

【佐藤主査】  ありがとうございました。

現行課題は、これは現在進めているものということですか。

【山下調査役】  現在進めているものでございます。

【佐藤主査】  分かりました。今、御説明頂いたのですけれども、この最初の議題は議論するのが難しいのですが、これまで第4期の科学技術基本計画を踏まえて重点領域を設定して先端計測の事業にそれを展開して、その際にはかなり予算も増額してもらい、積極的に進めてきました。その事業を、10年以上経ちましたので、それ以降について新しい展開を図っていかなくてはいけないという状況です。そのような状況で、前年度から今年度にかけては、重点課題の設定はしないで、要素技術タイプと先端機器開発タイプという二つに集約してしまって、それでこの事業を進めようということで今までやってきました。これまでのそのやり方、経緯も含めて、今後、この先端計測事業をどの様に進めていくべきかについて、委員の先生方から御意見をまず頂きたいと思います。

次の展開に対しては、俯瞰報告を含めて、また後で議論するのですが、その前にこれまでやってきている事業についてフォローアップという意味で、皆さん、委員の先生方、御意見ございましたら、お願いしたいと思います。ご意見を伺う前に、AMEDの先端計測の審査についてですが、これは実際は、先端計測の事業を引き継いだ部分もありますが、AMEDの方で審査を担当しているのは、JST先端計測の評価委員会の先生方でしょうか。それとも別な方が担当しているのですか。

【村松ライフサイエンス課課長補佐】  AMEDの評価委員会は新しく作っています。

【佐藤主査】  それに菅野先生が入られているのですか。

【菅野委員】  はい。

【佐藤主査】  わかりました。それでは先生方から、忌憚のない意見をよろしくお願いいたします。

【尾嶋主査代理】  公募状況ですが、3と4にJSTの先端計測とAMEDの先端計測の倍率が書いてあるのですが、応募件数がほとんど同じで、AMEDの先端計測の倍率の方が低いというのは、全体の予算がAMEDは大きいからということですか。

【菅野委員】  今年だけエクストラなお金が付きまして、治療機器も対象としますというようなことになっていました。

【村松ライフサイエンス課課長補佐】  事務方から説明します。AMEDの先端計測ですけれども、AMEDの予算については医療分野の研究開発の調整費という枠組みがございまして、年度途中で予算を追加配分する仕組みがございます。それは全体の、医療分野全体で175億円、1年間で追加配分できるという仕組みがございまして、AMEDが内閣官房健康・医療戦略室等と相談をしつつ、追加配分をどの分野にするかという議論を政府全体でした上で配分しており、今年はたまたま春にこの先端計測分野に2億円ぐらい追加配分するということで御差配頂き、追加配分した分で治療機器を中心に追加採択をさせていただきました。通常の年度は大体JSTと同じぐらいの倍率ですが、たまたま今年は、先ほど菅野先生がおっしゃったエクストラのお金をたまたま頂いたので倍率が低くなっているということです。

【尾嶋主査代理】  そうですか。このJSTの最先端研究基盤領域の方は本当に厳しくやっていて、この倍率を見たときに疑問に思ったのですが、了解しました。

【飯島委員】  AMED先端計測については、昨年は6件しか通りませんでした。

【佐藤主査】  あまり低いのがいいわけではないのですけれども、JSTの先端計測の方がより倍率が高い状態ですね。

【尾嶋主査代理】  両方とももう少し予算を付けていただきたいです。

【渡辺研究開発基盤課長】  今後の重点化の方針など次の議題とも関連しますけれども、俯瞰の報告書の中で今後の課題を指摘させていただいたときに、分野の重点化、戦略化と合わせて、JSTの他の事業との関連をしっかりとっていきましょうと指摘しています。あとで市川先生からこちらの御評価を少し御講評頂ければと思いますが、新しい概念を持って新しい装置を作ろうとしているものや、他のいろいろな種類のものが、このようなプログラムが非常に稀少だということもあって、沢山の応募があり、倍率は20倍ぐらいになっております。その成果は、JST全体の投資額の中で先端計測に使っている予算は2.5%程度のところ、成果の方は、毎年のJSTの10大成果の中の二、三は先端計測が出てくるという非常にすばらしいプログラム運営をJSTにはしていただいています。そこで、今、JST改革の中で、プログラム毎にすごくリジッドな運用体制がとられているところをもう少し柔軟な体制を組むことについて検討を進めています。

【佐藤主査】  それはいいですね。

【渡辺研究開発基盤課長】  サイエンスの原理に近いものはもっと基礎的なテーマとして採択できるように、それから、開発期間についても、今の先端計測は要素技術、次いで、機器の開発技術という形になっていますけれども、全体としての長さも柔軟に、その提案の内容に応じてできるようにといった具合です。採択、運営する方はとても大変になってくるわけですが、そういうことができるようにしましょうという、改革の方針を他の事業の部分を合わせて行っているところでございます。プログラムの御講評については、是非、市川先生にお願いしたいと思います。

【佐藤主査】  市川先生、それではJST先端計測の中身について御講評よろしくお願いします。

【市川会長】  私はこのプログラムには最初の発足時からずっと関係しており、ずっと見てきたのですが、実は私は審査を担当しているため応募できない状況が続き、少し不満に思う点はありました。このプログラムでは、科学技術基本計画に基づいていろいろ重点領域というのを、ある時期設けました。振り返ってみますと放射線領域はそれなりの非常に大きな成果を創出しているのですが、やはり自由な発想から出てきた課題が一番の成果指標である製品の売り上げにも貢献しています。

ですから、その当時のいろいろな科学技術政策で、いわゆる領域を立てることは必要だったと思うのですが、あまりそちらにシフトすると、評価していても科学としてのおもしろさがないし、新規性のレベルもいま一つというのが結構多い。中には各研究者からの新しいアイディアに基づいた計測技術が提案されて、それを、我々が重点領域ではない非特定領域などの要素技術や機器開発、実用化を通して戦略的にバックアップしたテーマも幾つかあります。そういうのを最終的に見ると非常にうまく発展しているなということで、領域はある程度必要ですけれども、自由な最先端の、自由な発想から出てくる技術をやはりこの先端計測技術の方で大事にして、それをうまく育てて、世の中にない新しい計測技術を生んでいくという、そういう流れが私は必要なのではないかなというのを、10年以上関係してきましたけれども感じます。そういうフィロソフィーというか、そういう考え方はこれからも是非保って進めていってほしいと思います。ただ、重点領域とか、そういうのを一切立てるなということではなく、そうでない部分は必ず残しながら是非進めていってほしいと、私はそういう感想を持っております。

以上です。

【佐藤主査】  新しい原理とか、新しい方式とかということが生み出されないと、確かに新しいことができないわけで、市川先生がおっしゃっているのは、そこのところをどうやって引き出すかということだと、そういうことですね。シーズという言い方がいいか悪いか分からないのですが、特にいろいろな課題に対して新しい原理とか方式を生み出していくためには、むしろ、領域を設定するのは良くないということでしょうか。

【市川会長】  領域を設定するのもいいとは思うのですけれども、一つの例があります。X線の位相情報を使う百生(ももせ)先生がやっておられるテーマは、実は研究開発をはじめた当初から我々の要素技術などを通してずっとバックアップして機器開発、それから実用化ということで、コニカミノルタから製品にもなりました。その後に百生先生たちの仕事はERATOのテーマにもなりましたが、JST先端計測の評価委員の方からすると、これは物になるなというのを、評価委員共通の認識として持っていて、それをバックアップしていったという、そういう一つの例があります。だから、あまりガチガチにこれだというよりは、何かもう少しフレキシブルに、これは重要だからみんなの合意の下にこれを育ててみようという、そういう観点でむしろあった方が、あまりリジッドにやるよりはフレキシブルにやっていった方がいいのではないかと考えております。

そうすると、ほかの、例えばこのような課題がいいとなると、何か少しほかの公募した人と差別的になってしまうこともあります。つまり、これを優先的に採択するということにもなりかねませんので、その辺りを公平にやりながら、かつ、うまく育てるような仕組みができれば一番いいのではないかなと思います。そういう意味ではある領域、例えばX線の位相情報を使うのだという領域を立てれば必ず応募があるかもしれませんが、そうするとまた周りからの公募のいろいろな競争原理が働かなくなってしまうという指摘をされることになりますし、その辺りがなかなか難しいところです。だから、そこはうまく考えないとあまりこれだと決めてしまうとまずい面が出てくると私は思います。

【佐藤主査】  そのような理由で、領域をそんなにしっかりと決めないで、曖昧にしたほうがいいということですね。 新しい方式や、新しい原理を生み出すためにということですよね。

私が先端計測委員会を引き受けて困っているというか、二瓶先生から引き受けた時点から言われていることは、10年以上、先端計測をやってきて、計測技術はマザー・オブ・サイエンスであり、科学技術イノベーションのベースとなるような技術開発を先端計測が担うのだと、まさにマザー・オブ・サイエンスという立場でやりながら、オンリーワン、ナンバーワンを生み出して、かつ国際競争力を向上させる。ところが、世界に貢献していくということが少し弱い、国際競争力が落ちているのではないかということが盛んに出てきてしまったものだから、それも含めてどういうふうに先端計測事業の新しい方向性を生み出していくかというのが、多分、課題として挙げられています。新しい原理原則、あるいは方式などはもちろん、その開発ができなければ新しいイノベーションは起きてこないから、それは要るのですが、新しい課題に対する新しい進化や高度化みたいな、そういうのもまた必要で、そういうのを含めた新しい事業展開にどうやったらできるのだろうというのをこの中では議論して方向性を決めていきたいなと思っています。同時に、市川先生の言われるように新しい、具体的な成果が出てきているから、それは非常に尊重しなくてはいけないと思っています。そのほかの先生方、何か御意見ございませんか。

【尾嶋主査代理】  私も今の市川先生の御意見に基本的に賛成です。現在最先端研究基盤領域という名前で一本化していますが、このやり方が一番いいのではないかと思っています。実は環境問題解決領域で私も主査を担当したのですが、先ほど市川先生がおっしゃったように、領域を絞り過ぎてしまうと最先端研究基盤領域に比べて、やはり明らかに中身のレベルが落ちる。それでも、何件か本当に採るのですかという議論になってしまいます。

それからもう一つ、NMRプラットフォームとの連携という、これははっきり連携する目標を決めた試みとして実施したのですが、応募がやはり少ないという状況がありました。あまり枠をはめ過ぎないでマザー・オブ・サイエンスとして何かの新しい展開が見えるかどうかが重要で、これをやりたいというのを自由に応募してもらう方がいいのではないか。それで、皆で目利きをして、この分野は伸びそうだ、それをしっかり応援しましょうという方向でいく、今のままでそれほど大きな問題はないのではないかと思います。予算が少ないという点はあるにしろ、そういう形を進めていく。

もう一つ気になっているのは、実用化ということを言い過ぎているところがあって、企業と組まないと出せない。本当に新しいサイエンスを開くのだという提案が出しにくい感じがしております。その辺、AMEDの方はどうですか。

【飯島委員】  私はこのプログラムがすごく成功している理由というのは、比較的、どのようなものに使われるのかが見えやすいということが理由の一つだと思います。それから、AMEDの先端計測ですと、臨床医の方に必ず入っていただくとか、JSTの先端計測ですと産学連携を必ずやるなど、結構、その辺が大きく働いているのではないかなと思います。つまり、非常に先が見える形でやろうとするので、比較的成功率が高いのだと思います。

でも、おっしゃるようにそればかりを強調している面もあって、時々出口ばかりが強調されてあまりおもしろくない話が重なるというような応募もあるような気もします。新しい技術を作るところというのは非常に大切ですが、ただ出口をいつも求めるだけでいいのかというのは非常に微妙な問題で、広く求めたいけれども、ある時期が来たらきちんと出口が見えるようになってほしいという、そこをどうバランスをとりながら進めるかというところが工夫のしどころではないのでしょうかと思います。

むしろ、AMEDは割と診断とか治療とか出口が見えやすいと言えば見えやすいですよね。でも、AMEDではこのプログラム、最もアーリーな事業ですと言われていますけれども、私が見たところではかなりあまりにも後ろの方だなと思います。感覚的には、もっとアーリーな課題もやっていいのではないかと思うような状況で、その辺りを何か少し仕組みがないと、ただ何でもいいから新しいものといっても、なかなか育たないかなという気がいたします。

【菅野委員】  繰り返しになりますけれども、今年のJSTの課題を見ていて、それでこちらのAMEDの課題を見ていると大分違うかなと思います。案外、JSTでやっている課題で、AMEDの方で使えそうなのもあるかもしれないなと思って今見ていたのですが、そういうところのつなぎがAMEDに移ったことで希薄になる可能性があるのは残念かなと感じています。

ただ、逆にAMEDの先端計測を担当してびっくりしたのは、経産省が持っているプロジェクトは出口に非常に近いやつとのすみ分けをしろとうるさく言われ出していますので、逆にライフイノベーションという枠で非常に出口に近いものを採っていたのが採らなくてよくなってきたという、そういう省庁間での役割分担みたいなものが出てきています。そこは少し実用化する上では新しい展開かなという気はいたします。雑駁ですけれども、そういう感じです。

【佐藤主査】  ありがとうございました。

そういう意味では、バランスが多分要るのでしょう。企業サイドから、企業の人たちから見た視点と、大学等の中立機関から見た視点とを合わせるように、バランス取りながらやるのがいいのかなという気はします。ほかに御意見等ございますか。よろしいですか。はじめの議題は次の議題にも関連します。またはじめの議題に途中で戻っても構いませんので、次の議題に移りたいと思います。

それでは、2番目の議題ですけれども、俯瞰報告のフォローアップになります。先ほど私が申し上げたように、これからの先端計測事業を盛り上げていくためにはどうするべきか、どういう方向性で進めるべきかを検討するために、昨年はまず技術俯瞰をやらなければ、その方向性が見えないのではないかと、御三家に光学顕微鏡を入れて四つの大きな課題について俯瞰報告をしました。それについて、これは事務局、渡辺課長から御説明頂いて、今後のことについて少し議論したいと思います。よろしくお願いします。

【渡辺研究開発基盤課長】  資料の2-1と机上の配付資料として報告書、昨年11月にこの委員会の上位の、科学技術・学術審議会に、岸本部会長の方から報告していただいた報告書も添付させていただいております。資料2-1に基づいてお話をいたしますが、少し今の議題1のところに立ち戻らせていただきますが、第5期の基本計画に言う先端計測の部分というのは、基盤技術という非常に大きな中で捉えられていますので、今のプログラムを改編した「要素技術」と「システム」という形で進めていくという方針については概ね問題ないかと思っていますが、その中でどのように戦略的に進めていくか。今、主査の御指摘があったように、まずは俯瞰的に見て課題を洗い出してみることが必要です。

そこで、現時点でポーションが多い部分について課題を洗い出してみました。つまり、四つの分野、機器にすると、光学顕微鏡、電子顕微鏡、それから、NMR、質量分析装置、この四つについて俯瞰的に計測の手法としての位置付け、それから、俯瞰図として整理しました。それから、2-1のA3の1枚目の右上のところになりますけれども、その次に開発要素として何があるのか。今、分野俯瞰をした四つの技術につきましては、新しいものは当然生まれているのですけれども、技術として一応、俯瞰できるところまで出てきているということで、その部分について俯瞰をしたというところでございます。

加えまして、政策課題として、A3の資料の2ページ目になりますけれども、計測技術に関して、ニーズ側がどうなっているのかということ、それから、グローバル市場の中での国内の競争力というのはどうなっているかという分析も併せてさせていただきました。加えて、先ほどJST改革という中でも申し上げましたけれども、やはり基本的な原理に立ち返るようなところに関しては、さきがけ、ERATO、CRESTといったようなところで分野をしっかり戦略目標として立てていくというのも一つの方法であるとの指摘をしました。また、要素技術というのは、ある程度具体に見えてきて先端計測のような場で柔軟に拾っていく形をとるということもあるのかと思いまして、関連する事業がやはりいろいろなものの基盤になる技術ということでございますから、今後、戦略的な議論をしていくということを指摘しています。

3枚目にはそれを、若干乱暴ですけれども、電子顕微鏡、光学顕微鏡、NMR、質量分析というところで1枚にまとめました。この中で特に今日、例示として御用意させていただいたのが資料2-2です。この後に説明させていただきますが、NMRの場合は方向性というのがある程度明らかであって、かつ世界的にメーカーがもう二つしかないという状況ですから、日本としての方針というのは比較的立てやすいという特徴があります。技術的には大変なのですけれども、政策的問題としては簡単な方について、まず例示を示させていただきました。他の技術について重点化、あるいは開発の方向性を見ていくかにつきまして、どうするかということを順に御議論頂ければと思っております。

以上でございます。

【佐藤主査】  ありがとうございました。

この段階で少し議論があればお願いします。一応、最後に課題を挙げて、これを更にどのようにブラッシュアップしていくかということも含めて新しい方向付けをするたたき台として課題を挙げたつもりなのですけれども、皆さんから何か御意見等がありましたらお願いします。

このぐらいの課題では済まないのかもしれないのですが、一応、要素技術レベル、さっきの議論にも戻ってくるのですが、原理原則の話、いわゆるシーズからニーズまで含めて要素技術レベル、それから、試作機レベル、最終的に機器システムレベル、産業的にも社会的にも貢献していくという意味では、機器システムレベルまでつながっていかないと、それが我々で言うフラッグシップ機みたいなものになるのだと思います。そういうものにつながる要素技術とか何かが生み出され開発されていかなくてはいけないと思います。それ以外に、ここに挙げた以外に多分さっきの市川先生が言われたような新しい原理、あるいは方式みたいなことが、もう一つ必要なのかもしれないのですが、ここに挙げた俯瞰報告の中では一応、そういう形で挙げてみました。

何か皆さんの方から御意見、質問等ございましたら。よろしいですか。では、NMRの方の話を少し進めて、それを踏まえてもう一度議論に戻るということでよろしいですか。では、杉沢委員からよろしくお願いします。

【杉沢委員】  よろしくお願いします。杉沢でございます。 私から、技術俯瞰の中で説明がありましたNMRについての現状を御説明いたします。分析機器産業の特徴がNMRに如実に表れておりますので、NMRの業界を見ていただくとこの業界が、今後どのようになって行くかを理解しやすいのではないかと思います。分析機器業界はかなりニッチな業界で、他の業界の方から見ますとあまりなじみのないような特徴がいろいろとあります。そういった特徴も踏まえて見ていただけるとありがたいと思います。

まず、3ページのところのNMR/MRI事業者の変遷の部分をご覧ください。その左上のところに大まかなマーケットサイズが書かれております。NMRのマーケットサイズは約1,000億と書かれていますが、このうちの4割はヘリウムや部品などの消耗品を扱っている業者の売り上げでございまして、機器メーカーの売り上げは60%ぐらいであり、600億から700億ぐらいとなります。

分析機器業界の特徴として各機器に関わるテクノロジー、特にキーテクノロジーが全く異なっていまして、転用が効かないことにあります。NMRの開発者がTEMの開発をしたり、TEMの開発者が質量分析計の開発をしたりできるようにはなりません。ですので、この業界では、一旦一つの機器に入り込みますとほぼ定年になるまで非常に狭いサークルの中で、グローバルに行き交うというようなことが起こります。ニッチかつグローバルな業界で、かつテクノロジー参入障壁が非常に高いという特徴がございます。

ですので、それぞれの機器事業の草創期には、沢山の企業が存在しますが、少しずつグローバルにメーカーが集約されてきまして、最終的に数社、場合によっては二、三社ぐらいまでに集約されるというのがこの業界の通例でございます。NMRについては、かなり集約化が進んだ状況です。透過型電子顕微鏡についても似た状況にあります。成長途上の市場ですと五、六社ぐらいに分散することもあるのですが、業界が成熟してきて、かつ技術レベルが高度化するにつれ、参入企業が減ってまいります。

この業界は高いテクノロジーが必要な割に市場規模が小さいので、事業売上から生じる利益を研究開発に再投資するだけでは高い技術レベルを維持することが困難です。その結果、多くの計測機器の市場で国の関与がないと企業が衰退していくという傾向がございます。最終的にこの市場に何社が残り、どこの国の企業が残るかというのは、メーカーの努力は当然必要ですが、国の関与の度合いが大きく関わります。国なり、分析機器機を活用している業界の関心の高い分野の会社が残りやすいというのがこの業界の大きな傾向だと見ていただければ結構だと思います。NMR業界は、ほぼ2社に絞られてしまったというのが現状となります。NMR業界の中で様々な技術が使われているのですが、現在、このNMRという分析機器の性能の限界を決めている最も大きな要素は、NMRに使われているマグネットの磁場強度にございます。

現在使われているマグネットの最高の磁場強度が、1ギガヘルツでございます。NMR業界では、磁場の強さを水素原子核の共鳴周波数で表す習慣がありますので、ヘルツ単位で説明させていただきます。マグネットの磁場強度が1ギガヘルツに到達したのが2000年ごろでございます。この1ギガヘルツという磁場強度は、マグネットに使われている超伝導線材の物理的な特性で決まっています。現在まで使われている超伝導線材の物理特性の限界により、1ギガヘルツの磁場強度を突破することができませんでした。また、分析機器というのは小型化が重要で、小型化することによって利用シーンが拡大して、いろいろなところで使われるようになるのですが、NMRの場合は、物理的な制約によりマグネットの小型化に限界が生じております。つまり、マグネットの線材の物理特性がこの機器の利用の拡大を阻んでいると言えます。このような状況に直面したのがちょうど2000年代前半で、我々としては、もうこれは仕方がないと思っておりました。そのような状況でしたが、ここ10年間、高温超伝導線材という新しい超伝導線材のテクノロジーが進んできました。この技術を使うことによって、この限界がブレークできるのではないかという期待が生まれております。それをリードしてきましたのが理化学研究所、物質・材料研究機構です。物質・材料研究機構、理化学研究所を中心として高温超伝導線材を用いたマグネットの開発が進んでいました。このグループが現在、世界をリードしておりまして、この5ページのところに書かれておりますが、昨年、世界最高磁場である1ギガヘルツを超える1,020メガヘルツでNMRのデータを出すという画期的な成果を上げられました。この成果はJSTも含めて様々な機関の支援の中で、物質・材料研究機構、JASTEC、神戸製鋼、理化学研究所といった様々な方々の10年以上に及ぶオープンイノベーションの取組で得られたものです。これは画期的なことだと思っております。

我々といたしましては、こういった成果を基に次世代のNMRというものを作っていくというのが非常に重要だろうと考えております。それを実現するために、日本の様々な技術を結集した次世代1.3ギガヘルツNMR開発チームをここ一、二年かけて作り上げました。8ページに体制図がございます。1.3ギガヘルツNMR開発チームは、世界最高の性能を持った日本のフラッグシップ機の製作を目指しておりますが、その利用機関といたしましては、NMRプラットフォームを想定しております。その利用機関と一緒にマグネットの開発チーム、システム開発チーム、利用技術開発チームで構成されるナショナルチームを組んでいこうという構想でございます。

9ページに、これに参画する機関の説明がございますが、ここではオールジャパンによるオープンイノベーションの体制を組んでおります。その中には、個々の要素技術を開発する機関でありますとか、あるいはそれを取りまとめて一つのシステムにする機関、あるいはそれを利用して様々な利用技術を開発するようなチームでありますとか、最終的にそこで得られた成果を世の中に出して産業化する企業を含むチームを組む予定でございます。

最終的なアウトカムの一例といたしましては、例えば18ページになりますが、結晶化ができないようなタンパク質、あるいはX線、放射光等々では分析できないようなタンパク質の解析があります。その代表例としては、アミロイド型の変性タンパク質でございます。こういったアミロイド型の変性タンパク質は、アルツハイマー病の病巣の素になったり、パーキンソン病の病原になったりということで、難病の原因になっています。そのようなタンパク質の構造解析をするのにやはりこういった次世代型のNMRが必要であると言われておりますので、これらを一つのターゲットとして次世代のNMRを開始したいと考えております。

また、こういった装置の開発に関しましては、日本一極で実施していては開発効率が上がりませんし、成果の展開速度が遅くなりがちですので、他の開発拠点との連携も必要と考えております。現在、世界で次世代NMR開発を進めている拠点は三つございます。日本とヨーロッパとアメリカがございます。この三つの拠点でお互いにある程度情報を共有しながらも、競争し、技術開発では日本がトップになるという方向を目指して開発を進めたいと考えております。

1.3ギガヘルツNMRあるいは更に高い磁場のNMRのグローバル拠点が存在し、その中で最先端の研究開発を進めていくというのは科学技術のフロンティアを探索するために重要なことだと考えており、我々NMRメーカーとしては、ここで生まれた技術を産業分野に展開することが重要と考えております。そのために、高温超伝導線材を使った新しいマグネット技術を低磁場マグネットに展開することが必要と考えております。これによって、よりコンパクトで高性能なNMR装置を開発し、現状のNMRマーケットを塗り替える、あるいは全く新しいNMRマーケットを作り出すということを狙っているところでございます。

次世代NMR開発に必要な技術開発項目は沢山ございますが、その中で1点だけを強調させていただきます。高温超伝導線材を使ったマグネット技術は、物質・材料研究機構や理化学研究所の研究によって大きく進歩しておりますので、1.3ギガヘルツのマグネットを製作し基本性能を出すということに関しましては、現状の技術の積み上げで実現可能だろうと見ております。しかし、この技術を産業展開しようとしたときの最大のボトルネックが、この試料の赤字で示しているところの超伝導接合技術でございます。これを実現するには、高いサイエンスと高度な生産技術が必要と考えており、数年で実現できるとは、我々としても考えてはおりません。しかし、この技術課題を突破すればNMRの世界は大きく変わり、ブレークスルーが起こります。この技術課題の克服に向け、是非、国できっちりと開発を支援していただいて新しい産業の創出につなげていただけるとありがたいと考えております。

以上でございます。

【佐藤主査】  どうもありがとうございました。

このコンパクトなやつができると、まさにフラッグシップが汎用機になってくるという話ですね。

NMRの話を今回挙げさせてもらったのは、10年来ずっと先端計測事業をやってきて、最初からNMRの課題というのを取り上げていて、かなりの予算を付けてやってきたという経緯がありますが、それの成果がこの中のいろいろなところに表れて進化してきているという経緯がありました。だから、要素技術から、試作機からフラッグシップ機に至るというところまでの成果を刈り取るという意味では非常にいい例を表しているのではないかなと思います。先端計測事業では、予算的に最後のフラッグシップを作るなんていうことはできないのです。予算的にできないのですけれども、それを今度は文科省としてどういうスキームでそれを実現するかというのを仕上げてくれればいいわけで、同じようなことを電子顕微鏡とか、あるいは光とか質量分析計とか、そういうところでうまく展開できればいいのかなというように、一つのフラッグシップにつながる道みたいなことが少し言えるのかもしれないなと思って挙げてもらいました。

何かこのNMR等に関して先生方から御意見、質問等ありましたらお願いします。

【杉沢委員】  私の説明資料の3ページのところに、アメリカのNMRメーカーが1社、この事業から撤退したという絵がございます。この理由の一つとして、プローブ技術での遅れがございます。NMRの技術は、大まかに申しますと、プローブと分光計とマグネットの技術で構成されます。マグネット技術は、企業努力に加え、サイエンスも含めたグローバルな研究成果の積み上げの上に成り立っているのですが、一方で、NMRプローブ技術はNMRメーカーの中に蓄積されるので、その差がメーカー間の競争力の差として表れてきます。

NMRプローブ技術に関しましては、JSTの先端計測事業で大きく御支援頂いておりまして、他社にないような幾つかの革新的な技術が生まれております。この他社にないNMRプローブ技術によって製品の差別化をできたことが、日本のNMRメーカーが最後まで生き残れた源泉というのは、実はこのJSTの先端計測で生まれていまして、それを製品化して、競争している中で、それを実現できなかったメーカーが脱落したというのが実はこの図で、そういうふうに見ていただいていいのではないかと思っていまして、皆様の御支援には感謝しているものでございます。

以上です。

【佐藤主査】  ありがとうございます。

これは開発する側と、それから、先生方、使う側の立場から両方見られると思うのですが、両方から意見を頂ければなと思います。どうぞ。

【金澤委員】  ユーザー側の意見として申し上げますと、日本の技術は分析装置については非常に高いというのはよく分かっているのですが、最終的な使用する段階のところで、多分、日本電子のNMRは私どもも使っており、問題ないと思いますが、本当に最後のところで、ソフトのところで負けてしまうということが結構ございます。せっかく世界最高水準という装置ですので、そのソフト面も併せて是非力を入れていただければ、日本が誇る技術になるかと思いますが、その点についてはいかがでしょう。

【杉沢委員】  私の説明資料の15ページのところに一言書かせていただいています。ここにオープンプラットフォーム対応という一言コメントを入れております。これは、ソフトウェア開発の方向性を示したものです。最先端の分析機器、あるいは世界に数カ所しかないような分析機器は、多くのユーザーの方に効率よく使っていただくことが必要となります。それを実現するためのプラットフォームとなるソフトウェア開発が必要と考えておりますこのようなフラッグシップ機は、多くのユーザーに効率的に活用していただくことで、より大きな成果が得られるようになります。このような機器を開発する場合には、利用効率を上げるためのプラットフォームとなるソフトウェアも含めて開発するべきであると考えております。

【佐藤主査】  ソフトに関しては、ヨーロッパのFP7の中でプログラムがあって、NMR関連のソフトだけで何十本とあるので、それを何かの条件によって使える、世界的にも使える形、オープンな形にするような動きもあります。例えば日本だとNMRプラットフォームは結構使える話になっているのだと思うのですけれども、そういう連携を取りながらやるみたいな話が出ておりますね。ただ、この1.3ギガヘルツになるとソフト的に何か新しいことを開発しないと駄目という話になってくるのですか。

【杉沢委員】  基本的には磁場を上げたからといって、新しいソフトウェアを開発する必要はございません。しかし、磁場が高くなることで、新たなアプリケーションが創出されたり、観測できるサンプルの幅が広がったりと期待しております。当然、それに合わせたソフトウェアの開発が必要になるとは考えております。

【菅野委員】  非常に個人的な興味で、NMRを使っているので一番問題になるのは、タンパク質の量が非常にたくさん要るということです。この1.3ギガになると、そういう点ではどうなのでしょうか。

【杉沢委員】  磁場が上がりますと検出感度が上がります。感度が上がるとことで、より少ないサンプルで、同じデータが取れるということになります。それに加え、新たな技術を採用して微量サンプルの測定を目指すことも考えております。この資料の14ページのところに書かれている例がございます。膜タンパク質ですとか、固体状態のアミロイド様のタンパク質を測る場合、極細の試料管を使うことによって微量で高感度に測定できるという原理がございますので、こういった技術を合わせて開発することで必要サンプル量を1桁減らすというようなことも考えております。

【飯島委員】  少し質問させていただいてよろしいですか。一つ質問させていただきたいのですけれども、欧米のNMRネットワークと連携するということと、先ほど競争しながらとおっしゃったと思うのですけれども、この連携というのはユーザーの方たち、若しくはさっきおっしゃっていたようなソフトの方のアプリケーションとかの開発のことをおっしゃっているのでしょうか。それともう一つは、まだ諦めていないと思いますが、ブルカーのようなハードウェア開発についてのことをおっしゃっているのでしょうか。

【杉沢委員】  ブルカーは今でも強い脅威です。ハードウェア開発については、まだ競争が続きます。

【飯島委員】  一番難しいのは、グローバルにやりたい、ナショナルフラッグの技術をグローバルに展開するというのはすばらしいことなのですけれども、競争相手がどれぐらいの力で追いかけてくるのかとか、その辺をどう強調していくのかというのが結構、日本はあまり上手ではないのではないかという気がしまして、どういうことをしたらいいのかと考えておられるのか、ほかの技術でも同じだと思うのですが、是非伺いたいと思っています。

【杉沢委員】  競争はむしろ必要だと思っております。やはり競合メーカーがあって、お互いに切磋琢磨するからこそ良い装置ができるし、お客様の満足も得られると考えておりますので、競争は必要です。ここに書かれております連携というのは、むしろ利用者サイドの連携が中心と考えていただいていいのではないかと思います。

利用者サイドでは、当然、連携してお互いに情報を共有しながら利用技術の研究開発を加速することが重要です。利用者が連携するためのサポートをしますというニュアンスでございます。国内でもお互いの競争はありますけれども、利用者サイドにおいては、ブルカーとも一緒に協調させていただいております。例えばNMRプラットフォームでは、JEOLとブルカーは一緒に仕事をさせていただいております。もちろん、サイエンスの部分ですとか、マーケットを正常に機能させるというところでは協調していくことになります。

加えて、協調していくべきところは、基盤技術のところになるのだと思います。基盤技術を利用して実際の装置を組み上げる部分の開発は競争になるのですが、例えば材料や超伝導接続の基礎的な研究に関しましては協調できるところは協調して、サイエンスを加速するというところでは連携していくという位置付けではないかと考えております。

【渡辺研究開発基盤課長】  少し補足させていただいてよろしいですか。杉沢委員に御用意頂いた資料の19ページにございますが、EUの中ではドイツのブルカーを中心にして、学術機関なども集まったプラットフォームが、EUのフレームワーク計画の中で、19ページの上の方にBio-NMR(EU)と書いてございますけれども、もう十数年来続いているプラットフォームがございます。それは要するに研究の場としてはプラットフォームということもございますけれども、メーカーが非常に限られている、非常に稀少種であって、ランボルギーニとフェラーリぐらいなお話になっているということでございまして、EUではネットワークの中にブルカーを組み込んで、人材育成、それから、ベータ市場といいますか、プロト市場を提供しているというところがございます。

他方、EUの独禁法との関係では、この稀少種になった日本電子も非常に大事な存在ということも言えるわけでございます。その競争と協調をどうしていくか。それから、科学技術政策を進める立場から申し上げれば、EUと日本との協力という中で政策課題としてプレイアップしていけるということは一つメリットとしてございますので、アカデミアとして意味があるのであれば、是非テーブルの上に乗せていきたいということもあります。ただ、次世代機の開発は予算的には非常に厳しいところもございます。同じ図の下の方に国交省、経産省と書いてあるのですけれども、これは経産省とは共同プロジェクトで、お互いに協働していきましょうということになっています。と、申しますのは、杉沢委員のお話にもありましたように、NMRの市場でいくと磁石のメーカーが自主開発経費で線材を開発してくださるところまでいかないのですが、例えば鉄道と書いてありますけれども、リニアも高温超伝導ができるようになるとすると、今のリニアのお話だけではなくて例えば山手線の、直流送電のところを高温超伝導化する意味が非常に大きいため、鉄道総研の方が研究されています。それが世の中の需要として牽引されることになると、磁石メーカーも非常に元気が出てくるということで、総体として経済浮揚効果が非常に大きくなります。

【佐藤主査】  ありがとうございます。

ブルカーから見ると競争と思っていないかもしれないのです。だって、まだJEOLはシェアがそんなに取れているわけではないのですから。向こうはそういう戦略でやってきたわけで、だから日本がかなり遅れたという経緯もありますから、半分ぐらいシェアを握ってからオープンイノベーションにするとか何かするべきでは、簡単に1.3ギガを日本がこういうふうにやりますというのをあまりオープンにして本当にいいのかなというのは多少ありますね。だから、もう少しうまい戦略を立てながら、協調しながらやっていくみたいなことが必要だろうと思います。

【尾嶋主査代理】  ところで、ブルカーはもう1.2ギガを開発したのですか。

【杉沢委員】  今おっしゃっているとおり、ヨーロッパでは1.2ギガNMRは既に発注がかかっております。ただ、その発注は出来高ベースと聞いております。開発を含めた契約になっており、あるマイルストーンをクリアするたびに段階的に費用が支払われる形になっていると聞いております。

【尾嶋主査代理】  まだできていないのですか。

【杉沢委員】  そういう意味では、できていないです。ただ、作ってはいます。

【佐藤主査】  高温超伝導技術を使ってですか。

【杉沢委員】  おっしゃるとおりです。

【佐藤主査】  高温超伝導技術を含めて、日本の技術を持っていかなければいけないわけでしょう。

【杉沢委員】  今のところは、ヨーロッパの場合は独自の技術で開発が進められております。

【金澤委員】  もう一つ、NMRに関してなのですが、よろしいでしょうか。先ほどのお話ですとプラットフォームが重要な位置を占めてくると思うのですけれども、このプラットフォームというのがまだ十分に広まっておらず、ユーザーからすると使い勝手が悪いという場合もあります。例えば、私どもにもNMRを専門としている優秀な研究者がいますけれども、使用にあたって書類を何枚も書かなければならず、使うまでに多くの時間がかかってしまうと聞きました。かなりのユーザーですけれども、その方がそのような意識を持っているくらいですので本当にもったいないと思います。やはり今までと少しルールを変えて、新しいルールで、書類を何枚も出して順番待ちしなくても、優れた研究者が自由に使えるようなプラットフォーム作りを行っていかないと、せっかくの機会が生きてこないと思います。これは是非申し上げたいところでございます。

【佐藤主査】  これは事務局、渡辺課長の方から、今、プラットフォーム、やっていますよね。私は以前に比べると相当改善されてきているのだと思っているのですけれども。

【渡辺研究開発基盤課長】  プラットフォーム、幾つかある中でNMRのプラットフォームは比較的評価が高い方でございますけれども、御指摘の点をしっかりとプラットフォームの委員会の方にもつながせていただいて、今後の改善をさせていただきたいと思います。今日は傍聴には理研のプラットフォームの担当の人たちも来ているので、それに先んじて中身はお伝え頂けると思いますので、その次のプラットフォームの委員会の方にきちんと議論を委ねます。

【佐藤主査】  ありがとうございました。

ほかのNMR以外の件について、皆様の方から何か御意見等ございましたら。

【尾嶋主査代理】  では、よろしいでしょうか。この報告書は前にも説明を受けており、きちんとまとめられていて問題点もクリアになっており、すばらしいとは思っているのですが、NMRと電子顕微鏡、質量分析と光学顕微鏡が取り上げられています。しかし、プラットフォームという観点から考えて、放射光、X線の広がりは極めて大きく、これが取り上げられていないというのが私は非常に残念だなと思っています。是非、次回はそれを採り上げていただきたいです。現実にNMRのプラットフォームというのはある一方で、光プラットフォームでも七つか八つぐらいの放射光施設のプラットフォームが現在動いていて、かつ産業界の利用も非常に多いと聞いています。

少し前まで私も産業界にいて、そのときに放射光を使うと言ったらかなり敷居が高かったのですが、今は例えば佐賀の放射光施設に企業のビームラインができるという、ちょっとびっくりするような話があります。中小の企業でも愛知の放射光施設に気楽に使いに行っているそうです。愛知放射光施設に電話で確認してみると今月中に実験できますという返事があり、そういう便利な状態になっている。しかしながら本当に次世代を担うような世界的な施設が日本では若干古くなっている。SPring-8が世界ナンバーワンと言っていましたが、大きさは世界ナンバーワンですけれども、光のクオリティーからいったら、もうナンバーワンではなくなってしまっているのです。その中でいろいろな企業が産業競争力を維持して成長戦略でやっていこうとしたときに、本当に先端計測の俯瞰としてX線のような一角が抜けてしまっているのではないかなという事態は、私は非常に強く懸念しております。

この御三家にX線が入っていない点が疑問に思ったのですが、その次の御三家ぐらいにはX線を必ず入れていただきたい。ニーズの多いところを重点的にやっていく。先ほど三極体制という話もありましたけれども、まさに放射光は三極体制で、日米欧の三極体制で、結構、フリーな技術交流をやって、ビームラインの後ろの方では産業利用で儲けるところがあるかもしれませんけれども、共通のところは世界で競争して協調してやっている非常にいい例だと思うのですね。ですから、それを是非入れていただきたいと強く主張したいと思います。

【佐藤主査】  この議題が終わった後、次の俯瞰をどういうテーマでやっていくかというのを議題に少し挙げていますので、そこでもう一度、尾嶋先生の言われる話は取り上げたいと思います。まず俯瞰報告の四つのこの分野に対して、私が気になっているのは、ライフ、バイオに関してはNMRを含めてそれなりにニーズがある程度分かってきて、いろいろなことをやらなくてはいけないというのは来ているのですけれども、例えば電子顕微鏡とか質量分析とか、光学顕微鏡とか、最先端の半導体、あるいはIoTだとか、そういう分野のところで相当世界は進んでいるので、そういう進んでいる状況の中で先端計測の課題、あるいはニーズ、シーズみたいなことが新しい段階に入ってきているはずです。そういうことを踏まえて先行きの選定をしていかないと、また遅れてしまう可能性があります。そういうことに対して少し先生方の御意見があれば伺っておきたいなと思うのですけれども、この半導体の分野は岡本先生あたり、何か御意見、お願いできませんか。

【岡本委員】  ちょうどシリコンバレーから先週帰ってきまして、参加したSEMICON Westの中で幾つか感じたことを今の佐藤先生からのコメントをベースにお話しします。まず、半導体技術ロードマップ、ITRSがあります。これまでは各ノードごとにどのように半導体が進化してゆくかを示すものでした。しかし、このロードマップはこの7月をもって終結されました。この後続くのは、IRDSとHIRという、これは略語ですけれども、要は上位のシステムの概念、たとえばアプリケーションから棚卸していくというロードマップに半導体は切り替わるということになりました。

この中で実はクローズアップされているのが検査計測技術であるということです。御存知のとおり、アプライドマテリアルズがプロビジョンという電子線検査システムを新たに出荷しました。バックオーダーを十台以上抱えているということですが、分解能が1ナノメートル、かつユーザビリティに長けています。先ほど金澤先生がおっしゃったように、いかにうまく使うかということです。分解能はもとより試料のサンプリングなどを中心に置いているということ。それから、ラムリサーチが検査計測のトップメーカーであるKLAを買収したということ。買収額は1兆円を超えていますが、そういった背景の中で、この検査計測の重要性がわかります。加えて、上位にある課題はやはりシステムであるということ。システムとユーザビリティをいかにうまく捉えてゆくかの視点が重要であるかを感じました。

先ほど杉沢委員がNMRの話をされていましたが、私自身が感じているのは、実は半導体にもNMRの重要性が見られるということです。半導体構造が微細化され、局所的な電子プロファイルが重要性になっている。光学顕微鏡、電子顕微鏡での検査計測に加えてこの新しい要求があります。これは実はJSTでも抵抗検出型NMRなどの先導研究を進めています。NMRにおいても、実はそういった別のベクトルもあるのではないかと思います。今、1.3ギガの方に進んでいますが、NMRは別の意味の重要性もあるし、質量分析もまた別の重要性があります。結論として、多くの個々の技術をつなげてはどうかということなのです。

前回も申し上げたのですが、各技術はもうできつつあるので、さらに、その技術をつなげることによって多くの新しい知見が得られる、プラットフォームを作る時代になっていると思います。繰り返しになりますが、顕微鏡は光学、電子からの形状検出や要素分析、そしてCADの設計データから得られる必要な局所的キャリアのプロファイルの検出、そのように全てが見出すことのできるような、つなげるシステムが大切であろうと思います。

以上です。

【佐藤主査】  ありがとうございました。

確かに一つの計測手法では多分、求めていることが十分に分からないのでしょう。そういう方向はあると思います。それ以外に先生方からご意見ありませんか。

【大堀委員】  杉沢さんが話された国際頭脳循環拠点についてですが、大分感銘を持ったというか、今のうちに準備しておかないといけないかなということがあると思うのです。アメリカは結構要素技術の開発で尖っている人が多く、新しい技術がどんどん、特にソフトがそうなのですけれども、ここは大分日本が遅れています。一方でヨーロッパの方は何か仕組み作りというのですか、規制をするとか、そういうのでルール作りをしてほかを排除するというのがかなりうまくて、ここでなかなか日本が戦えません。

その技術で戦うのではなくて、お互いにそれをうまく利用して、こっちにとっていい方向に持っていくようなところが弱いかなということが感じていまして、その辺り、いわゆる海外との交流の仕方がもっと今のうちから多くの人ができるように持っていく必要があるのではないかなと考えています。NMRもこういうプラットフォームを作られるということで、これはこれでいいと思うのですけれども、ほかの分野でも将来そういうのを作っていくという意味では、今のうちにこれを準備していく必要があるのではないかと思います。

以上です。

【佐藤主査】  ありがとうございます。

電子顕微鏡などでそういうのを作ろうとしたら、作れそうですかね。

【大堀委員】  作れると思います。作らないといけないと思います。あまり海外のことばかり言ってはいけませんが、日本の電子顕微鏡というのは分解能だけに集中し過ぎています。

アプリケーションもあるのですけれども、非点補正なんかも、どちらかというと電子顕微鏡そのものの物理を少し疎かにしているのかなと言ったら怒られるかもしれませんが、その辺りは海外の研究者ともっと本当に付き合っていかなければいけないと思います。

【佐藤主査】  電子顕微鏡に関しては、先日、ヨーロッパのローザンヌの大学で時間依存プラズマのような、電子顕微鏡で時間依存を測る、例えば、ピコ秒を超えてフェムト秒まで測るだとかいうことを日本の研究者が向こうに呼ばれてやっているのです。その話を聞いたときに、ああ、三次元から四次元の世界に入って、しっかりと電子顕微鏡でかなりの分解能を保ちながら、時間依存も追いかけている。それは多分、世界的なニーズなのだろうなと思いながら、どういうアプリケーションにつながるかというのはよく分からないのですけれども、そういう検討もなされているというのを聞いて私は驚きました。日本の電子顕微鏡の先生方と話していると、そういう話はあまり出てこないのですが。

【大堀委員】  恐らくそれは電子顕微鏡が速くなったのではなくて、サンプリングをたくさんして時間的に並べ替えているとか、そういうソフトの方の力が重要になっているということではないでしょうか。

【佐藤主査】  レーザーを使ったり、組み合わせですね。

【大堀委員】  はい。組み合わせをやっていると思います。

【市川会長】  その時間分解能TEMという観点では、今、JST先端計測プログラムでもパルスレーザー照射から出る電子を使った高速の短時間TEMでという、そういう研究開発の課題が実施されています。我々も同様に感じていまして、次のTEMは多分そういうところに行くだろうということで、一昨年に採択した名古屋大学の先生がやっておられる課題が実施されており、その辺りを我々も一応押さえています。

【佐藤主査】  ここのこういう次の課題に入ってこないのでしょうか。

【市川会長】  それは我々がタッチできないところなので、是非そういうところも入れてほしい。つまり、新しい原理に基づいた今後の展開というのを積極的に、例えばNMRですとNVセンターを使ったNMR、どうなるか分かりませんけれども、そういう何か次の展開を開きそうだなということも是非俯瞰の次のところに入れてくださると非常に役に立つ資料になると思います。いろいろなところに新しい技術の芽が少しずつあるのではないかと思うのです。JSTの先端計測の中でも、その中に全部ではないのですが、かなり入っている部分がありますので、そういうところも調査しながら次のブラッシュアップをしてくださると非常に有機的に先端計測とこちらとのつながりもうまくできるのではないかと思います。情報はこちらのJST側にも沢山あります。

【佐藤主査】  何か一度、最先端の研究としてやっている課題も含めて、世界的な状況も分かっている先生方を集めて、ある程度シンポジウムまではいかないかもしれないけれども、そういう発表会みたいなことをやった方がいいのでしょうか。

【市川会長】  そうかもしれません。何かお互いに知らずにやっているところはあるかもしれません。

【渡辺研究開発基盤課長】  そうしましたら、事務局の方から提案ですが、公開のシンポジウムも一つの案でございますけれども、その他、昨年、生体イメージングに関して先生方、土日、遠くの方は都内にお泊まり頂いたりしてしまったのですけれども、クローズドで、場合によっては保秘契約を結びますということで最先端の動向がどうなっているかという議論の場を、CRDSに設けていただきました。ですので、今、例えば先端計測で何ができているかということ、新しいものがどんなものが出てきているということを一度きちんと勉強する場も必要だと思いますがいかがでしょうか。

【佐藤主査】  それは確かにいいかもしれないですね。もう一つ、日立の人がいないのであまり詳細に議論できないのですが、最近、ホログラフィ電子顕微鏡に関して、発表会があってその話を聞きました。このホログラフィ電子顕微鏡は磁気、磁場、電場を見るということを標榜して、日立の外村さんがずっと開発を進めてきたわけで、その成果というのはやはりすごいものがあるなと思いました。しかし、具体的な成果がまだ十分出ていないのであまり議論はできないところがあるのですけれども、では、ああいう新しいものを本当にどう進めるとか考える必要があります。ホログラフィ電子顕微鏡の話を聞いていると、高電圧をかけながらやるから、ものすごいシールドだとか振動だとか何かで、ものすごい建屋を造って電子顕微鏡を作っているので、一般ではまず、一般のユーザーが買って使えるような話ではないのです。そういうものでなければ、電子を見ると言っても、そこに行かなければ見られないという話になってしまい、今の電子顕微鏡の普及する要件を考えると、なかなか普及型のフラッグシップ機にはなりません。そう思いながら、これを、どうしたらいいのという話を、ちょっと質問を投げかけたのですけれども、アイデアがなかなかないということでした。そういうのも何かこのNMRは高温超伝導技術を普及させること含めて一生懸命考えているではないですか。もっとうまいシールドだとか、振動だとか何か、そういう普及させるための事項を考えることを含めて、コンパクトに作ることができれば、一般ユーザーが使える形になるのかなと思いながらいるので、そういうことも少し議論に挙げていってもらって、先の方向付けを少しできればいいかなとは思います。

時間が大分なくなってきましたが、それ以外に森川委員、何かございますか。

【森川委員】  JSTのプログラムの中でもNMRに関連して二つテーマがありますし、AMEDでも小型プローブの開発とかあるのですけれども、この今回のNMRのプラットフォームの中で、もちろん今これは直接関連していないのですが、先ほど市川先生から、東北大の百生先生のものを要素技術から機器開発まで育成してきたというようなお話がございましたけれども、何か国策としてそういうものを統合しながら新しいコンセプトを作るとか、そういう御意向というのがあってこういう選択をしておられるのでしょうか。

【佐藤主査】  これは最初からあったわけではなくて、それがNMRプラットフォームを含んだNMR関係者の間でだんだんまとまってきて、その構想を文科省で今回まとめて報告してくれたということなので、今後はそういう戦略というか、方策があってもいいなという気はします。だから、コンセプトや意向のようなものが今あるわけではないのです。

【森川委員】  ですから、今そのようなコンセプトや意向があるかないかではなくて、そういうことを考えることも価値があるのかなと思ったのです。

【佐藤主査】  そうですね。先端計測事業としてはちょっと荷が重いのですけれども、かなりフラッグシップまで見通すと、要素技術の課題というのはかなり挙げられますけれども、方策として挙げるというのは、文科省サイドでどういう科学技術戦略をとるかということにかなり依存してくるので、なかなか難しく、それは恐らく今後の課題と言えます。

【佐藤主査】  はい。分かりました。

では、次に、少し質量分析が気になっているのですが、今後どうするのだというのが私もかなり気になっています。サーモフィッシャーとかいろいろ強力な海外メーカーがあるのでなかなか苦戦している状況ではあるのですが、もう少し質量分析の先行きの話というのは議論していかなければいけないのではと思います。そういうコメントだけを付け加えさせてもらいます。そうすると、俯瞰報告に関しては以上でよろしいですかね。

では、次にこの後、俯瞰報告、ここまでやってきたのですが、今後どのような分野について先端計測事業に重要な課題として取り上げていくべきか、俯瞰していくかというのを少し議論したいと思います。先ほど尾嶋先生の方から放射光の話が出ましたけれども、中村委員の方からも御発言お願いいたします。

【中村委員】  この今後の調査対象についてですけれども、先ほどは御三家と光学顕微鏡の話ということで、我が国が非常に強い分野であるという御紹介を頂きました。それらこれまで強い部分、それに加えて、今後は新しい技術領域として、今、最先端の技術を使って著しく進展が進む、そういう領域を重点的に今後見ていくということも大事だと強く思っております。そのうちの中の一つの例が放射光を含むX線による計測かなと考えております。

その一つの理由としては、X線には、既に先ほど市川会長が話をされておられた東北大の百生先生のX線の位相イメージングの話の他にも、先端計測を現在と過去の分を見てみますとX線に関係するものとして、X線のタイコグラフィ、それからX線用の集光のミラーなど、ラボ用も含めて、幾つも走ってきており、進展が著しい分野である点です。ですから、それらは今進展中といったところがございますが、それらがどのような方向に進もうとしているのかを含め、予測が入ってくるところがあり、なかなか難しいですが、是非、そういう分野の俯瞰を示すことができたらと考えております。

以上です。

【佐藤主査】  ありがとうございます。

それ以外に何か、これは俯瞰しておかなくてはいけないというのが技術的にございましたら、皆さんの方からお願いいたします。

【菅野委員】  方向がまるで逆のニーズの方からですが、電子顕微鏡のニーズで今、結晶化しないでタンパク1分子を見たいというのがあります。まだ1分子のみを見ることができるという状況ではありませんが、日本では遅れているのですけれども、バイオの世界ではタンパクの分子構造を電子顕微鏡で見ることがものすごいブームになっていて、海外製のものですが、電子顕微鏡をいっぱい買おうかという動きがあります。国産も頑張っていらっしゃるのですが、どうしても海外製の電子顕微鏡になってしまいそうです。スループットはそんなにないので20台とか30台とか買わないとニーズを満たせないのですが、シーケンサーとすごく似ている状況で6億円ぐらいの機械を、それぐらい買っても多くの研究者がやりたいことを全部やりきれないというような状況になりかねません。そういう状況を見ていて、やはり1分子を見たり測ったりできるというのはバイオの世界では、ある種究極のレゾリューションなのではと思いました。実際には、もう一つ段階があって、それよりも大きい1細胞を解析するという状況ですが。しかし、1細胞を解析する機器というのは1分子のレゾリューションがないとできない。先ほど来いろいろなお話が出ていますけれども、じゃあ、質量分析計で1分子を解析できるのかといったら、今できないわけです。NMRで1分子を解析できるのかといったら、これはたくさん集めないといけないから1分子は解析できません。

蛍光顕微鏡は蛍光ならば1分子測れるので解析できる。電子顕微鏡もようやく1分子を測れるようになったと言われていますが、実は1分子ではなくてあれも10万分子ぐらいを写真に撮って、それを合わせてようやく1分子の構造にしているので、1分子に届いているけれども1分子を測れたかと言うと難しいところがある。だから、そこにつけ込む隙があるのではと思います。AFMなどはいかがでしょうか。今、金沢大学で、AFMを使ってムービーを撮っていらっしゃる方がいますけれども、生きた細胞の表面のタンパクの動きをそのようなムービーで撮れるとおもしろいと思います。しかし、それもやっぱり1分子のレゾリューションが必要ではと思いますので、何かそういう岡本委員がおっしゃったような合わせ技でいいのですが、それを合わせて1分子が何とか見えるような、それも結構手軽に見えるということがあるとバイオの世界では急激に物事が進む可能性があると思います。少し観点が違うと思いますが。

【尾嶋主査代理】  今の話の関連で、SPMという分野が非常に広がっていて、磁場にしても誘電率にしても、それから、フリクション、ケルビンプローブなど、多岐にわたっています。そういう点でやはり1分子、1原子までいくかどうか分かりませんけれども、SPMという分野をこの先端計測の中で取り上げるべきと私も強く思っています。

【佐藤主査】  なるほど。合わせ技というのもあるし、そういう分野の技術俯瞰をやらなければいけないということもありますし、両方が必要ということですね。

【菅野委員】  あとは測定装置のミニチュア化みたいな、例えば質量分析のイオン化をSPMのプローブの先で触ったものだけイオン化できるみたいなことができるようになれば、質量顕微鏡が1分子レゾリューションになるかもしれません。ワイルドな考え、合わせ技というのは例えばそういう感じの、特に1細胞のところはみんなが試験管でやっていたのをただミニチュア化してできるようにしているということなのです。だから、MEMSのあれを使ってミニチュア化しただけで1細胞が使えるようになった、人間の手ではできなかったこと、同じようなことができないかなという、そういうことです。

【佐藤主査】  分かりました。それ以外に、これはやっておかなくてはいけない手法として、表面分析はどうなのでしょうか。私は、あまり得意はないのですけれども、原子や分子のレベルで見たいとか、XPSのような表面分析の辺りは相当需要、ニーズが多いと思います。

【杉沢委員】  表面分析についても、実は当社で扱っていますけれども、私自身は専門ではないので、幾つかざっくり言います。表面分析のところは検出器の性能が今非常に我々の注目の的で、たしかJSTの先端計測の中でも多分割検出器というのがあったと思うのですが、基本的には電子線というよりもX線ですかね。電子線を当てて出てくるX線、X線の検出性能をどんどん上げていく。多分、放射光のX線とも近いのだと思うのですが、そのエネルギー分解能ですとか、検出感度を上げていくと見えないものがどんどん見えてくるというようなことで、表面分析の世界ではやはり今は、検出器が重要です。光源というのも重要なのですが、光源というのは半導体のテクノロジーではなくて、結構、ローテクをギリギリ極める技術開発が光源の性能向上に必要であり、検出器は半導体のテクノロジーで一気に指数関数的に性能がよくなる時期があって、そういったところというのはなかなか、先端計測でじっくりやるというよりも、あるときキュッとデルタ関数的に出てくるときがあります。そういったところを我々はしっかりと見て、本当はそれを最初に我々が手に入れればいいのですけれども、正直なことを申しますと大概はヨーロッパが先に手に入れて出していますね。

【佐藤主査】  そうですね。

【杉沢委員】  検出器の性能が飛躍的に向上するような新しいテクノロジーはヨーロッパから出ていることが多くて、そういうのを本当は日本で是非生み出せる仕組みが欲しいなと思います。

【佐藤主査】  二瓶先生に言わせると、技術は日本からかなり出ているのに製品はみんな海外からやられているという話が出てきている。表面分析でもそういう感じはありますけれども、この分野は二瓶先生にまとめてもらえばいいのかもしれないですね。

ほかにございませんか。

【森川委員】  分野ということではないのですけれども、5月に経済同友会の小林代表幹事に同行してイスラエルに行ってまいりました。イスラエルは各省ごとにチーフサイエンティストがいて、そのチーフサイエンティストオフィスというのも各省庁にあって、その頂点がなぜか経産省なのですけれども、経産省のチーフサイエンティストと話をしてハッとしたのが、政府の役割というのはリスクシェアリングだというふうにおっしゃったことですね。

研究開発には当然アンノウンの部分が多いのでリスクがある。そのリスクをシェアするのが国の役割なのだということをそのチーフサイエンティストがおっしゃいました。それはこういう先端計測分析技術・機器の開発においてどういう意味かというと、夢があって、しかし、出口は必ずしも見えない、イコール、リスクが大きいということだと思うのですけれども、そういうものをどう評価して、リスクの高いものを逆に採択するというか、そういう動きも必要なのかなということを少し感じました。限られた予算の中でそのようなリスクのあるところに出せるかという御意見はあるかとは思うのですけれども、その辺り、市川先生に御方針をお伺いしたいなと思いました。

【市川会長】  随分過去の予算が潤沢なころには、かなりリスクの高い課題を採択してきました。最近は予算がものすごく限られており、我々評価委員の中でも、これはリスクがあるけれども、おもしろそうだからという合意の下に採ったテーマはありますが、それはやはり少ないです。やはり予算が少ない中では、全部リスクのあるものを採択して、できてみたけれども何も出てこなかったではないかというのは、そこはやはりまずいのです。

尾嶋先生が言われたように予算がある程度あれば、リスクの高いものも一部として複数件採択できるのですけれども、現在は一、二件ぐらいがリスクのある、そういうテーマになっています。それはある面でしようがないところがありまして、やはりさっき言った予算の面でそういう方針を取らざるを得ないというのが状況になっています。ただ、リスクあるものを全部採らないという方針ではないということだけはお伝えしたいのですけれども、現状としてはやはり難しいです。

【森川委員】  イスラエルがなぜスタートアップであれだけ注目を浴びているかというと、リスクがあることに挑戦して、結果として時至らず失敗するということがあっても、それを駄目と言わないで称賛するという、そういうメンタリティみたいなものがすごく大きいなということを私は肌で感じました。そういう意味でも、限られた予算の中で一、二件でもやはり夢のあるものを採用してくれるのだということは、応募する側にとっても何か意義があるのではないかなと思った次第でございます。

【市川会長】  嫌なことを言うのですけれども、先端計測についても事業の評価をしなければいけないことになっています。つまり、事後評価でのA評価が全体の何%、Sが全体の何%という事業評価をしなければいけないのですが、この事業評価は評価委員の方にもプレッシャーになっていまして、軒並みB評価とかC評価の評価を出したら、あのプログラムは駄目なのではというようになってしまいます。ある程度のプレッシャーは必要なのですけれども、そのようなプレッシャーがチャレンジングなテーマを採択できない理由になるのは非常にまずいと思います。しかし、お金だけ使って何も出てこないという話にもなりますし、その辺りの兼ね合いを是非文科省の方でうまくやってくださるとありがたいです。

【渡辺研究開発基盤課長】  そのあたりにつきましては、林開発主監も、それから、山下調査役も是非JST改革の中で、その評価をどう変えていくかということと、それから、濵口理事長とは何度か意見交換をさせていただいていますが、JSTがそのようなハイリスクといいますか、夢のあるといいますか、そういうユニークなものにチャレンジできるように、今一生懸命体質改善中でございますから、予算の制約というのもプログラムごとの何かあまりきっちりとしたものというよりは、もう少しフレキシブルに見られるようなところも含めて、その案配をうまくできるように仕組みを構築、私どもも一緒になって作ってまいりたいと思っています。

【佐藤主査】  この問題は、本質的な問題です。第5期科学技術予算は第4期の科学技術予算に比べて同じなのですよ。変わっていないのです。単年度で見たら5兆円ぐらいで変わっていないのです。これはやはり問題で、これが10兆ぐらいの予算になっていかない限りは、文科省でどう頑張ろうと言っても、頑張りようがないです。科学技術イノベーションをどう捉えて進めていくのかという根本的な問題に踏み込んでいかないと、それこそ経済同友会でやってもらわないと多分駄目なのです。ということで、時間が相当なくなってきましたので、あとほかにこういう課題は俯瞰しておくべきではないかというのが、後でもいいので、メールベースでもいいですから後で事務局の方に上げておいてもらえばと思います。皆さんの意見を踏まえて、こういうところに絞って今後やろうというのを事務局と相談して決めさせていただきたいと思います。

私、資料の説明が後になってしまいましたが、NMRの論文特許調査の件に関して少し高杉調査員から説明お願いします。

高杉研究開発基盤課調査員より、参考資料5について説明があった。

【佐藤主査】  ありがとうございます。大いに期待したいと思います。よろしくお願いします。

時間がなくなってきましたが、議題1、2に関しては今までの委員の先生方の意見を参考にしながら、今後の方向付け等やっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。最後に機械工業デザイン賞ですか、この参考資料について事務局から説明お願いします。

【渡辺研究開発基盤課長】  日刊工業新聞が主催をしている機械工業デザイン賞で、もう46回ということなので50年近く続いているもののようでございますけれども、全ての機械工作が対象なのですが、デザインと機能というところを非常によく評価していただいておりまして、特に今回のデザイン賞、昨年、実は島津製作所の製品が経産大臣賞を取られているのですけれども、今年の機械工業デザイン賞に関しまして、堀場製作所の車載型排ガス計測システムOBS-ONEシリーズというのが経産大臣賞、最優秀賞を受賞されています。それから、日本産業機器工業会賞ということで島津製作所の、これは昨年のものの続きのシリーズだと思いますが、高速液体クロマトグラフ質量分析計の方が受賞されています。

先ほどの質量分析装置のことについて、今後どういうことをという言及が主査からもございましたけれども、参考資料6のところの総合評価、これはかなり専門性、工業デザインの専門の先生方が何人も入って審査をされています。私は添え物みたいなもので何か先端計測をやっているから入ってくださいと言われているぐらいなのですが、例えばこの総合評価の中にも島津製作所の質量分析のことに関して、例えばこの2010年に新規参入して、その3年後に50倍の感度向上を行ったということはすばらしいということを指摘され、それから、新規参入から5年で世界最高レベルの性能を実現したと評価しつつ、大きなインパクトを与えてはいるものの、そのTCO削減に配慮するのであれば質量分析計の装置内に成分分離機能を内包した方がいいとか、技術的に結構高いところを指摘されたり、なかなか鋭い評をされておりますので、皆様に、これ、日刊工業新聞社の御同意の下に、是非この賞を宣伝してくださいということもございまして、紹介させていただきました。

以上でございます。

【佐藤主査】  ありがとうございました。

では、議題は以上です。議題は以上ですが、何か皆さんの方から他にございませんか。では、事務局の方から今後についてお願いします。

【田村研究開発基盤課課長補佐】  ありがとうございました。次回は日程未定ですので、また日程調整のメール等させていただきまして、調整させていただいて開催させていただきたいと思います。あと、議事録を確認するためにまた加藤の方から送らせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。机上資料以外はホームページに載せますので、あと議事録も載せさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

以上でございます。

【佐藤主査】  では、以上をもちまして第5回の委員会を終わりたいと思います。今日は、どうもありがとうございました。

── 了 ──

お問合せ先

文部科学省 科学技術・学術政策局 研究開発基盤課

小澤、川﨑、加藤
電話番号:03-6734-4098(直通)
ファクシミリ番号:03-6734-4121
メールアドレス:kibanken@mext.go.jp

(文部科学省 科学技術・学術政策局 研究開発基盤課)