大強度陽子加速器施設評価作業部会(第2回) 議事録

1.日時

平成24年4月11日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 16階 特別会議室

3.議題

  1. 前回の議論等について
  2. 運営体制について
  3. 国際研究拠点化について
  4. 物質・生命科学実験、共用の推進等について
  5. その他

4.出席者

委員

福山主査、長我部委員、梶田委員、金谷委員、金子委員、熊谷委員、小森委員、田村委員、鳥養委員、西島委員、山縣委員、横山委員

文部科学省

柿田基盤研究課長、原量子放射線研究推進室長、藤澤加速器科学専門官、坂場学術機関課課長補佐、杉浦学術機関課課長補佐、阿部量子放射線研究推進室室長補佐

オブザーバー

永宮J-PARCセンター長、池田J-PARC副センター長、三浦J-PARC副センター長

5.議事録

【福山主査】

 おはようございます。定刻となりましたので、J-PARCの評価作業部会、第2回を始めさせていただきます。前回の作業部会におきまして、原子力機構及び高エネ研の代表者にもお出でいただいてお話を伺えればというご意見がございました。本日、大変ご多忙のところご無理をお願いして、原子力機構の横溝理事、高エネ研の鈴木機構長にお出でいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【阿部補佐】

 それでは、議事次第にありますとおり配付資料を確認させていただきます。資料1-1から1-4、そして資料2-1から2-3、資料3、資料4がございます。全部で9種類の資料がお手元にあるかと思いますけれども、もし欠落等ございましたら事務局にお声がけいただければと思います。よろしいでしょうか。また、資料1-1をご覧いただきたいのですけれども、委員の先生の中でご所属の変更があったということで修正しているところがございます。熊谷委員のご所属が4月1日付で財団法人から公益財団法人へ移行したということで、一部修正させていただいております。以上です。

【福山主査】

 それでは、これから議事に入ります。前回の議論等について、事務局のほうからご説明をお願いします。

【阿部補佐】

 資料1-2をご覧ください。前回お配りしました本作業部会の進め方でございますけれども、前回の議論を踏まえまして、2回目の今回に運営体制と国際研究拠点化についての議題が追加されております。これに伴いまして、当初、第2回に予定しておりました核変換実験施設について、これを第3回に移しております。それから資料1-3が前回の議事の概要(案)、資料1-4が前回の議事録(案)となっております。

 1点ご報告です。資料1-4の議事録(案)の14ページ目の2行目になりますけれども、ここに86オングストロームという記述があるかと思いますが、前回ご発言のときは220オングストロームということでありましたが、事実関係が違っていたということでございましたので、修正させていただいております。ただ、この数字について若干議論がありましたので、ご報告という形で確認させていただいたところです。また、前回の議論の際に、ユーザーコミュニティの状況についてまとめた表があるといいのではないかというコメントをいただいておりました。これにつきましては、J-PARCセンターに現在準備していただいております。集計が若干間に合わなかったということで、次々回に今後の展開を議論する際に提示させていただくことを予定しております。

 それから、資料1-3をご覧ください。前回の議論の概要(案)でございます。前回は主に3点、J-PARC計画の概要及び現状等について、中間評価における指摘事項について、そして評価作業部会の進め方及び検討事項等について、ご議論いただきました。

 若干ご紹介させていただきますと、1つ目、J-PARC計画の概要及び現状等については、重点領域や今後5年間の計画などをどのように考えていくのか。それから、J-PARCを着実にアップグレートしていくことが重要である、ビームの質に改善の余地がある、第3ビームライン建設についても強い要望があるといったご指摘等々いただきました。裏ページにも引き続きございますけれども、大学で使える装置があるとよい、研究棟は重要な役割を占めるということ。それから、食事の問題などが強調されておりました。それから、宿舎は国際化の観点やサイエンスを高めるために非常に重要といったご指摘をいただいております。また、中間評価における指摘事項についての中では、何点かいただいておりますけれども、何かまとめた表みたいなものがあるといいということで、先ほどご紹介させていただいたとおり、現在準備しているところです。そのほか、評価作業部会の進め方でも幾つかコメントをいただきまして、進め方を資料1-2のとおり若干修正させていただいたところでございます。以上です。

【福山主査】

 どうもありがとうございました。

 資料1-2で、今回、第2回と第3回で取り上げる議題に関して多少変更があったということ。それから、資料1-4のほうで、前回の詳細な議事録の中で、14ページ目、新井ディビジョン長からのご説明の2行目のところ、前回、220オングストロームというご紹介があったんですけれども、86が正確だということ。それから、資料1-3に戻って、前回の議論の概要をおまとめいただいております。いろいろご指摘いただいたわけですけれども、特にアンダーラインしたところが、これからも注意して議論していくところかと思います。中間評価の指摘事項に関連してまとめた表等々に関しては準備中で、でき次第ご紹介いただくことになっています。よろしいでしょうか。これは確認です。

 議題に移りたいと思います。

 J-PARC計画の運営体制について。5年前の評価で指摘された事項への回答を中心に、永宮センター長からご説明いただいた後、続けて原子力機構のJ-PARC担当理事でおられる横溝理事、それから、高エネ研の鈴木機構長より、それぞれの機関におけるJ-PARCの位置づけについてご説明いただきます。

 まず、永宮センター長、よろしくお願いします。

【永宮センター長】

 それでは、運用体制についてお話ししたいと思います。次のスライドをお願いします。

 運営組織は、両機関のもとにJ-PARCセンターというのが位置しております。KEK側では、ここに4つの研究所と同格と書いてありますが、そういう意味で、5番目の研究所として位置づけられておりますし、JAEAでは、11研究開発拠点の1つとして扱われております。これについては後でまた議論があるかもしれません。

 その次のページに行きますと、先回の評価部会で指摘された点をこのブルーでお示しいたしました。それに対する答えをグリーンで書いております。まず、第1番目は、J-PARCの運営に当たっては国際諮問委員会や利用者協議会などの仕組みを有効に利用することにより、ユーザーの意見をくみ上げるような運営を目指すことが必要ということで、実は我々各種委員会を定期的に開催いたしまして意見を運営に反映しております。特に国際諮問委員会というのが重要ですが、それ以外に加速器とか中性子、ミュオン、素粒子・原子核のプログラム委員会等々、国際的委員会で研究計画の議論を実施しております。一方、利用者協議会というのがございまして、これは、コミュニティの代表者を集めて予算等の重要事項の議論をしております。

 その次のページをお願いします。J-PARC内部では、いろいろな委員会がありますが、この委員会がどういうことをやっているかというのを毎年1回レビューいたしまして、存続などを決めております。

 その次。今言いました国際諮問委員会は、メンバーはここに書いてありますが、それ以外に加速器技術諮問委員会、それから中性子アドバイザリー委員会、ミュオンアドバイザリー委員会というのが国際的なものとしてあります。それから、プログラム諮問委員会は、非常に重要なものです。素粒子・原子核では、これも国際的な委員会になっておりますが、徳宿先生が委員長です。それから物質・生命科学では金谷先生が委員長になって、これも国際的になっております。利用者協議会、この3番目のものだけは国内的なものでありまして、これは、主にコミュニティの意見を代表するということで、その下に関連コミュニティ等々の代表、あるいは、それに関連してJ-PARC/MLF利用者懇談会とか、あるいはJ-PARC/ハドロン利用者懇談会というのがありますが、こういうのとコミュニティの代表者で構成されています。

 その次のページに行っていただけると、さらに関係学会等々のことが書かれておりますが、利用者協議会というのは、高エネルギー委員会、核物理委員会、中性子科学会、中間子科学会というところに委員の選出を依頼し、その選出された委員と、先ほど言いましたMLF利用者懇談会とかハドロン利用者懇談会とか中性子産業利用推進協議会であるとか、あるいは核変換コミュニティやCROSS等々が集まった委員会になっております。それを大体、数か月に1回開催し、予算とか運転計画等を議論しております。最近はセンター長の人事まで議論しております。

 その次。センターの役割分担ということでありますが、指摘事項は、J-PARCセンターの円滑な運営のためにはセンター長のリーダーシップはもとより、各副センター長の明確な役割分担やディビジョン長への必要な権限と責任の付与が必要と書かれています。センター内では明確な役割分担が存在いたします。権限と責任の付与に関しては、もちろん両機関との関係から見まして、まだまだ解決されなければならない点は残ります。しかし、一歩一歩解決されていると思っております。

 その次のページに行きますと、副センター長の役割分担ということですけども、役割分担の所掌を決めておりまして、2人の副センター長がいるんですが、KEK担当とJAEA担当という2人です。例えば安全等はJAEA担当副センター長にする。しかし、国際対応等はKEK担当にするというように、大きなものの担当を分けております。それから、ディビジョン長の必要な権限ということですが、ディビジョン内では予算とか人事の提案を行うことになっておりまして、実際に決定するのは両機関なんですが、そういうことで、各ディビジョンではいろんなことの検討が行われている。ここに書いてあることであります。

 その次に行きまして緊密な連絡。センター内各組織が緊密に連絡をとり、情報を共有できるような運営体制を構築していくことが必要という指摘事項です。我々は、以下のことをやっております。1つは、週1回、ディビジョン長会議を開催して、各ディビジョンからのコメントをすべて集約します。ディビジョン長といっても、ディビジョン長以外の責任者がかなり集まってきておりますので、25-30人ぐらいの会です。また、毎週1回、コアメンバーによるセンターコア会議を開催して、ディビジョン長会議の前の詳しい打ち合わせを行っています。どういうことをディビジョン長会議で取り上げるかということでありますが、これは、後で述べます。さらに、センター内の構成員を対象にセンター会議を毎月1回開催しております。一方、これだけではなくて、各ディビジョン内の打ち合わせも定期的に実行しております。

 その次のスライドに詳しく載っておりますが、センターコア会議というのは、センター長、副センター長2名と、それから、業務ディビジョンの担当者、それから加速器、それから運営推進支援グループの人が入っております。7-8人の会議で、ここでいろんな細かい議論をします。これは、毎週火曜日にやっております。次に、ディビジョン長会議を毎週木曜日にやりまして、ここでいろいろ意思決定を行うということであります。センター会議は、周知みたいなものであります。各ディビジョンでは、例えばMLFディビジョンだと毎週1回、彼らの中の会議をやっております。加速器もそうです。それから、素核、安全ディビジョン等々がありますが、そういうところでの議論もあります。もちろん、それらの活動報告はディビジョン長会議でなされます。JAEAやKEKの関連の報告もあります。

 その次。明確な指揮命令系統ですけども、J-PARCを円滑に運営するためには、両機関の技術・ノウハウが不可欠であり、本計画が両機関の共同プロジェクトとして進められていることを踏まえれば、当面は、両機関の協力のもと、J-PARCセンターにおける明確な指揮命令系統のもと、両機関の人員が融合し一体となってセンターを運営していくことが必要であるということです。「一体」としてやっていくということは、どういうところにあらわれているかといいますと、1つは、震災復興の折は、指揮命令系統がかなり明確に発揮されまして、全員が一生懸命、一体的に働いたことが1つの例だと思います。両機関の人員の融合という一体となった運営は、センター内部ではかなり個々人の間では進んでおります。ただし、両機関の理解や協力に関しては、今後改善すべき点はたくさん残っております。もちろん、徐々に進んでいるということも事実です。

 その次は、ディビジョンの人数構成みたいなものですけども、JAEAとKEKでどういうディビジョンに人がいるか、そういうことです。これは、眺めておいていただければと思います。

 その次はレビューの必要性ということで、センターの位置づけを含むJ-PARCの運用・利用体制については、今後のJ-PARCを取り巻く情勢、研究や技術の進展、利用ニーズの動向、運用開始後における知見や経験等を踏まえて、適切な時期にレビューを行うことが必要であるということであります。実は、こういう本格的なレビューというのは我々やっておりませんので、これからの宿題だと思っています。しかし、ようやく運用・利用を開始したので、今後の知見や経験を踏まえて、ある時期に適当なレビューの実施もするべきだろうと思って検討はしております。

 その次。一方、とはいっても本評価部会のようなレビューがありますし、それから、国際諮問委員会では、レビューの1つとして、毎回議論されております。センター内の位置づけということに対して、あるいはMLF関係で言いますと、KEKとJAEAが一番混じっているところなんですけれども、NACとかMACが同時にこういう施設の運用に対するレビューと利用に関する、あるいはMLFの利用委員会に関する外部からの意見を得ているということがなされています。以上です。

【福山主査】

 どうもありがとうございました。ご質問があるかと思いますが、次の理事の話、機構長の話を伺って、全体でまとめて意見交換させていただきたいと思います。それでは、横溝理事、お願いいたします。

【横溝JAEA理事】

 原子力機構理事の横溝でございます。今日は、このような機会をつくっていただきまして、本当にありがとうございます。簡単に原子力機構の全体概要とJ-PARCをどういうふうにとらえているか、我々の考え方をご紹介したいと思います。

 最初の絵は、原子力機構全体の説明を簡単に紹介しようとして用意したものです。北海道から岡山まで全部で11の拠点がありまして、非常に幅広い事業を行っております。去年の原発事故を受けまして、右のほうに書いてありますのが主要事業ですが、一番上に東京電力福島第一原子力発電所事故への対応ということで、機構の仕事の中での一番のプライオリティーを置いて、今、取り組んでいるものであります。その内容としては、除染、それから廃止措置に向けた技術開発。除染に関しては、福島市に事務所をつくりまして、機構全体から人員を提供して、今、200人規模で除染の活動をしております。特に昨年は、総務省からのモデル事業ということで多くの予算を提供いただいて、ベンチャー企業などに活動してもらって、どういう手法が除染に効果があるか。その手法と除染前、除染後の線量を詳細に測定したデータを取得しております。3月末には、それらのデータを公表しているということで、今後、各市町村にやっていただく除染のベースになっているというふうに考えています。廃止措置に向けた技術開発というのは、政府と東京電力の中長期対策会議のもとで研究開発をやっていく活動があります。そこに我々も参加いたしまして、特にデブリの取り出し、それに向けたデブリの予想とか、それらが再臨界を起こさないようにはどうなるかとか、廃止措置に向けてそれを処理していくにはどういう方法がいいかという、非常に基礎的なところを技術開発しております。それから、最終的には、福島をきれいにするに当たっては、どういう分析方法で計量管理、計量管理というのはウランとかプルトニウムがどれだけ廃棄物の中に含まれるかというのを正確に測定していく必要がありますが、そういう測定法の開発等をやろうということになっております。最終的に実際の全燃料等の測定は事業者が基本的にはやることになるのではないかと思いますけども、国からは、福島にそういう研究開発の拠点をつくってはどうかという話もありまして、それは関係各省と議論しているところであります。もう一つ大きい話は、福島の後の軽水炉の安全性をどうしていくか。日本は、今いろんな議論がされていますけれども、世界で見ますと軽水炉はまだまだ増えていくような状況でありまして、こういう経験を生かして、さらに安全性を高めた軽水炉を開発していくということで、安全基盤強化をすると。これは、日本政府が閣僚級会議、IAEAの会合でも国の方針として表明しているところでありまして、これを受けて原子力機構は全面的に取り組むということで、実はこの4月に体制を強化いたしまして、特に茨城地区の各研究所にはその特別チームを結成しております。ということで、事業全体がそれにシフトしていることで、ほかのほうが多少影響を受けているところがありますけども、右の絵の真ん中のところの2から5まで示してあるのは、昨年までの原子力機構の重点4分野といった事業であります。2番目は、高速増殖炉サイクルで、もんじゅを含みました事業ですけども、これは、国の原子力大綱の議論が今行われておりまして、それを待つということで、今はいわゆる研究運転はしておりませんで、維持している状況になっています。大きな予算を使っているのは燃料サイクルと核融合、これは、ITER、BAが両方走っている状況です。それから、4番目のやつが量子ビームでJ-PARC、これもかなり大きな予算を使っている状況です。それ以外に6番目の高温ガス炉とか、先端原子力科学などがございます。

 次をお願いします。これは、JAEAの中でのJ-PARCの位置づけを示してます。JAEAの予算が左の上の図ですが、全体的には非常に大きく縮小してきております。人も縮小してきている。ダウンサイズが典型になっておりますが、J-PARCの予算は左の下にありますように着実に増えてきております。特に共用法ということで入れていただいて、中性子関係の予算はそこからいただいているということで、増えているのですが、実はこの増えているのは別にお金が増えているわけじゃなくて、機構の中の予算を食っているということでありまして、ほかの事業が大幅に影響を受けているというのは、こういうことでもおわかりいただけるかと思います。右のほうに機構から見てJ-PARCにどういうふうに期待しているかということでありますが、やはり世界最先端の施設ということを当初から目指しておりまして、社会変革をもたらすような革新的な成果を数多く輩出し続けてほしいというふうに考えております。新素材とか分子構造・機能などの例を示しておりますが、新原理、新現象などを導くような成果も期待しているところであります。もう一つは、世界から多くの研究者がここに使いに来るということで人が集まってくると。東海村も、それを非常に歓迎しておりまして、村長さんもJ-PARCに非常に理解を示していただいているということで、地域や東大、茨城大学、それからKEKとか、いろんな研究機関と新たな関係をつくって、まちぐるみで科学研究都市を目指していく、非常にいいモデルになるのではないかと期待しているところであります。それから、J-PARCの今後の発展する方向性ですが、常に最先端になるように性能向上を図っていく必要がある。世界の研究者が魅力を感じないと人が集まってこないということであります。現在は、リニアックなエネルギー開発と中性子源の1 MWの作業をやっているところであり、当初からの計画で2期計画に入ってしまっておりますが、原子力分野の核変換技術の開発、これは、JAEAとしてはぜひとも続けてやっていきたいと願っているところです。ただ、国の財政、JAEAの予算の枠もありまして、どういうふうに実現していくかというのは、非常に工夫が要るんではないかというふうに考えております。上のほうのJ-PARCの成果がたくさん出ることによって、さらなるビーム出力の増強、それから、第2中性子源、これは当初から議論はあったんですけど、現実的な計画にはまだ入っておりませんが、そういう可能性も、場所としては想定しているところもございますので、そういうのにもつながっていけばいいのではないかと考えているところであります。以上であります。

【福山主査】

 どうもありがとうございました。

 それでは、続いて鈴木機構長のほうからお願いします。

【鈴木KEK機構長】

 お手元に資料があるんですが、送ったはずの資料を送っていなかったということで、スライドを見ていただきたい。

 KEKのJ-PARCへの取り組みということでして、これは2008年につくったものですが、KEKでは今後5年間でこう進むと。2012年が5年のターンでして、おかげさまでJ-PARC、それからKEKBもSuper-KEKへ行きました。それから、Photon Factoryも、今年、compact ERLをつくろうと。LHCもうまく出ていると。ILCのR&Dもやっているということで、非常に大きな自信を得ていますけども、ここで言いたいことは、KEKはプロジェクトベースで物を進めるということを前機構長からの話がありまして、我々はこれを進めております。

 そのためにKEKとしては、このようなやり方をしています。素核研と物構研と加速器施設と共通基盤施設を使って、ここからプロジェクトに対していろいろな人を送ったり、場合によっては戻って次のところに行ったり。ですから、J-PARCセンターとここにございますけれども、同じように先ほどのロードマップにありますとおり、Super-KEKB、Photon Factory、LHC、ILCR&D、ERLの推進ということで、それぞれが人を出している。加速器施設と共通基盤施設は、すべてのところに出ています。

 このような方針でKEKはやっていきたいなと。ここに運営組織がありますけれども、KEKは4つの研究所施設と同格となっていますが、我々の理解はそうじゃなくて、後で話しますけども、大分前からの話がありまして、そうじゃないと。KEKは、J-PARCセンターに対して、ここから人を送る。J-PARCセンターは機構長の横から線が出ていまして、機構全体として責任を持つ。原子力研究開発機構と同様に、全体が責任を持つということを機構の横から線を出すということで我々は理解しております。各研究施設は、それぞれ人を送る。ただし、単に人を送るだけじゃなくて、専任も必要なので、東海キャンパスというのは中にあって、専任の人もここにいる。専任と兼任の人でプロジェクトを進める。これは、すべてのプロジェクトに対してKEKは同じ方針でいきます。これは、今ここで言った話じゃなくて、私の古いファイルをめくってみますと、2006年に着任しましたが、2007年にJ-PARCセンターはこういう位置づけでいきますよと。それから、機構の中ももう30年来、変わらない主幹制度があって、いろんな弊害がありました。それをもう全部変えてしまおうと思って、いろんな組織の改革を行いました。その代わりセンターは効率的ですと。それに対して2008年に若干変わって、今のような機構長のわきにこういうのをつけますという話をして了解を得ているのですが、今度は所長のほうから意見が出まして、所長会議の下にこういう組織体制を設けるということで、2009年までに了解を得まして、私は、これでもってほぼ終わりと。機構の中も主幹制度をやめて、所長、副所長、主幹の数は、トータルの人件費がコンサーブすれば、数はどうやってもいい、なくしてもいいということをやりまして、それぞれが全部違った運営形態をやっています。もう一つ、横断するようなプロジェクトに対しては、それぞれの研究所ではなくて研究担当理事が面倒を見るという組織を作って、これでほぼ機構内は終わったということで、2010年、2011年は、今度はICFA、International- Committee- for- Future- Acceleratorsという加速器の中の一番大きな会議ですが、そこの中の議長をやったものですから、今度は世界全体のガバナンスはどうやったらいいかということを検討しました。とにかく1980年から1990年というのはリージョナル、ある意味ではナショナルプロジェクトが多かったのですが、だんだんインターナショナルで、さらに最近はグローバルと。なぜかといいますと、プロジェクトのサイズはどんどん大きくなる、人はどんどん必要。それから、プロジェクトとプロジェクトの間の期間はどんどん長くなってくる。さらに、コストもどんどん上がっている。この中で、ほんとうに一国で大きなプロジェクトができるかといったら、まずできないと思うんです。その中で、世界でどうやっていくかということに対して提案したのが、まずはDuplicationを避けよう。経費の問題と人が限られていますから、これを避けるためにはどうしたらいいかというものを考えて、1つに、多国籍ラボというのを考え、議長として提案しました。

 これは、CERNがやっているケースでして、ヨーロッパの研究所をつぶしてCERNだけをやる。これは、今、非常に弊害が起こっています。DESYはもうHigh energyはない、フランスもほとんどHigh energyの加速器を持っていない。イギリスも持っていない。イタリアがちょっと持っているだけです。それに対してDESYとかほかは、KEKは何とかサポートしてほしい。そういうところのアクティビティを、連携でもって協力してほしいという要請はたくさんきていまして、では、こういうのをつくろうと。お互いにラボを削るのはやめよう。ホストする研究機関、あるプロジェクト、LHCだったら3ホストすると。これに対して、ほかの研究所をつぶすんじゃなくて、そこを生かしながら、そこの中にbranchをつくって、それぞれが参加する。ですから、1つの研究所が全部支配するんじゃなくて、多くの研究所、いろんな国の研究所がbranchを出してサポートするというのをマルチナショナルラボといって、こういうCERNタイプのものをやめて、こういうものを提案して、次のプロジェクトに対しては、こういう方法があるかもしれないというので検討しています。ということで、私があと3年残されたタームの間にやることは、KEKを多国籍ラボにしちゃう。今までと同じように4つの研究所がありますが、こういったプロジェクトを持っています。それぞれが手足を出している。これは、今までと同じですけども、さらにはDESYやFermiラボとかBINP、そのほかいろんな研究所がKEKの中にbranchをつくって、そしてFermiラボの施設はここにあるんです。そして、電気代もそうですけども、自分のラボがあるんだから、電気代だって自分で払うべきでしょうというような体制をここでつくっていこうと思うんです。これを我々、次の3年間でやっていく。その意味で、我々としては、各研究所、あるいは世界の各ラボが集まって、そこでガバナンスをやって、いろんなプロジェクトを推進するということを我々はこれからやっていこうと考えています。

 最後に、大事なのはビームパワーの増強が大事でして、これは、いろんなところでビームが欲しい、欲しいと。大強度なくしては将来なしと言っていますので、KEKは、これをサポートして、ビームパワーの増強と整備の増強を図っていきたいと考えます。以上です。

【福山主査】

 どうもありがとうございました。機構長のお話、組織のご説明のときに、線がついたり、消えたり、行ったり来たりしていて、よく理解できなかったところもあるかと思います。それを含めて、これからしばらく議論をお願いします。

【鈴木KEK機構長】

 前回のときに私が言ったのは、これは、日本の新しいケースなんで、JAEAとKEKの違った組織が一緒になってやる新しいケースなんで、新たなガバナンスを日本で作っていく。それを我々は試されているんだと。JAEAとKEK、何とかしてJ-PARCをうまくやるためには、どういう組織がいいかというのを自分たちで勉強しながらやっていくんだということを、前回の評価部会で私は言ったんです。今、我々としては、それを試していこうと。

【福山主査】

 その議論は、オンゴーイング、現在も進行中のテーマだと。

【鈴木KEK機構長】

 はい。

【福山主査】

 質疑応答する前に、伺っていてキーポイントは、機構長のお話では、J-PARCセンターはプロジェクトという位置づけだと。それに関して、いろいろな組織が、そのプロジェクトに協力するという形で関与する、そういう位置づけだと。JAEAのほうでは、センターは、プロジェクトではなくてJAEAの中の組織の1つという位置づけ。そういう点で、両親、どちらが父親か母親かわかりませんけども、その位置づけが基本的なところで少し違うと理解してよろしいですか。今のご説明で。

【鈴木KEK機構長】

 そうですね。もともとの組織の中の、例えば人の異動とかも含めて、やはりJAEAとKEKというのは違った組織だと思うんです。ですから、その意味で、同じでないところをいかにしてうまく生かしていくかという、そのいいところを組み合わせてJ-PARCセンターを、ガバナンスで考えているところをやるべきだというふうに考えています。

【福山主査】

 ということで、そこの議論。両ホストのインスティチューションがJ-PARCセンターを位置づけている、その基本のところが違うけれども、そこに関して新しい仕組みづくりの検討が必要で、それが現在も試みられている、進んでいる、そういう認識でよろしいでしょうか。

【鈴木KEK機構長】

 はい。

【福山主査】

 以上が今のお三方のご説明の基本にあるところです。いかがでしょうか、ご質疑があったらお願いします。はい、西島さん。

【西島委員】

 両機構長のお話を聞けるという、いい会議のときに出席できたなと私は思っています。そこで、将来的な計画ということも含めて、少し具体的なところをお聞きいたします。私自身がSPring-8で経験したことを踏まえて、例えばのケースでちょっと考えてみたいと思うんです。J-PARCセンターというのは、要するにセンター機能の中の1つであるということが前提であると考えると、将来、J-PARCに業界として専用ビームラインを1本作りたいとか、それに先立って包括協定等を結びたいとか、そのようなことを考えたとき、まず契約なり、知的財産の取扱というのは、原子力機構とKEKの両方にお伺いを立ててやるという形で、最終的には両方のサインをいただかないと先へ進まないという形になるんでしょうか。

【鈴木KEK機構長】

 それは、どの施設を使うかによって、多分、担当が違うんですね。例えば中性子の場合でも、どのビームラインがJAEA担当、それからKEK担当ありますね。KEKの場合には、つくばもそうですけども、ビームラインを作るときは、運転時間の何割は一般の大学の人に開放するとか、そういうルールがあります。それに則ってやってもらう。JAEAの場合には、またJAEAで協定に基づいて、そういうお話があります。

【横溝JAEA理事】

 JAEAの例は、その中身がどのぐらい大きいかによってサインする人が変わります。非常に大きいやつを研究所でやる場合は長がやることになるんですけども、そうでなくて、頻繁にたくさんやるようなやつに関しましては、産学連携部長というのがいて、その人がサインできるようになっています。J-PARCに関しては非常にケースが多いということで、産学連携部長の権限をJ-PARCセンター長に一部分移すという処置をやっております。ですから、J-PARCに関しては、状況によってはJ-PARCセンター長がサインできるという仕組みにしております。ですから、幾らでもぜひやっていただければと。もうJ-PARCセンター長の判断でJAEAができるという状況になっています。

【西島委員】

 その辺が現場からいった場合、その話がどのぐらい大きいかによりますけども、一般論ですけども、そうは言っても、一応、両親に断りを得なきゃいけないという場合もあると思うんです。その辺の線引きと、それと先ほどから出ていますけども、お互いの将来構想を含めて位置づけが違ってくると、その辺に1つの契約、特に大きな契約になった場合、時間が結構かかったりするというのが過去、私、経験して、業界として四苦八苦したという経験を持っています。SPring-8の場合は、昔は原研、理研、そしてJASRI、3つですけども、この3つとも決して仲のいい団体ではなかったんで、隣の顔を見ながら、自分のところですぐにオーケーを言わないで、少し時間をくださいという形で、時間が大変かかったということです。今は、そんなことないと思うんですが、位置づけとして、その辺は少し意識しないと。契約とか知的財産の取り扱いというのは、企業レベルは非常にスピーディーな形を求めますし、そこが大変だということになると、すぐに会社の上層部は引きますので、その辺はぜひご意識なさったがほうがいいと思います。

【福山主査】

 今、知財というテーマで問題提起されたわけですけど、センターの位置づけが両ホストの親元の機関で考え方が違う、位置づけが違うというときに、マネジメント、そう単純じゃなくなりますね。そこに関して、先ほどの機構長がオンゴーイングで検討中だとおっしゃっているところは、違う考え方でできた1つのセンター、それをいかにうまく運営する仕組みを考えるか、検討するかというのは、それは、どこでどういう形で議論が進んでいるんでしょうか。

【鈴木KEK機構長】

 多分、おそらくそれは運営会議で話し合っていると思うんですけども、先ほどの質問に関して、例えばKEKとJAEAで方針が違いますが、それは表には出ていないと思うんです。ユーザーから見た場合には、J-PARCセンターにユーザーが入ってきまして、そこは別に気にしなくてもいいと。

【福山主査】

 だれがユーザーとして来ても同じですか。

【鈴木KEK機構長】

 ええ、多分そうでしょう。実際には、センターの中で、これはJAEA担当のものだからこうだ、KEK担当はこうだというふうに判断するんであって、外から見た場合には。

【福山主査】

 窓口は1つで。

【鈴木KEK機構長】

 窓口は1つなんで、そう思いますけども。

【福山主査】

 はっきりしている。

【福山主査】

 あまり時間かけるつもりはないが、組織について議論をしたい。

【永宮センター長】

 やっぱり組織論と運営論、すなわち実際の運営というのは若干切り離して議論しないと、非常に混乱すると僕は感じています。組織論というのは、やっぱり両長のもとに一体的にやるというのが元々言われていた案なので、それはちょっと違うやり方なんだと言われると、もう一度議論し直さないといけないと思います。一方、運営論というのは、話せば十分わかり得ることなので、それは各研究所とどういうふうにするかというのは、議論すべきだと思うんです。この運営論は、これからの議論になってしまうので、今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さんの意見は十分聞きたいんですけど。

【福山主査】

 大きな問題が背後にあるという、そのご認識をいただいて。

【鈴木KEK機構長】

 1点だけ違って、私、2009年にかいた図のときには、センター長もちゃんとわきにいたんです。私の部屋にいて、そして、これでいくよといって、あの図をかいたわけです。私は、これに対しては、もうこれでおしまいで、世界のほうのガバナンスをやろうと思ってやっているわけです。組織論に関しては、前機構長からこういうことを言われていまして、KEKとしては、このようにやりますよということはずっと言っているんです。ですから、何も議論していないのではなく、延々と議論しているんです。

【福山主査】

 インターナショナルアドバイザリー、IACの段階で、それが明解に議論されたという記憶がないんですね。ですけど、この問題は大き過ぎて、今日、これからいろいろご議論いただくのは適切じゃないので、これからコミュニティ全体が関心を持ちつつ、当事者がいいプランニングをしていただくということで、それ以外のご質問、ご意見ございましたら、いかがでしょうか。はい、鳥養さん。

【鳥養委員】

 J-PARCに利用者として参加する一方で、先ほどセンター長が表に出されました幾つかの委員会の委員として参加させていただいた両方の立場から、ちょっと発言と質問をさせていただきたいのですが、まず、利用者という立場から見ますと、J-PARCセンターが運営のワンストッププラットフォームになっているという意味で、非常に見事に運営されていると感じております。一方で、委員側に入りますと、やはりオーナーとスポンサーとマネジメントと三者の複雑な関係がなかなか理解できずに、IACでも諸外国の委員から説明を求められても説明し切れなかった部分がございます。それで、今回、解決に向かっての一歩として、センターと両機構と評価部会が問題点を共有することが大事ではないかと思いますので、先ほどのセンター長のお話の中で、両機関の協力や理解に関して、今後改善すべき点は残るが、進んでいると。この改善すべき問題点というのをちょっとご紹介いただきまして、これから考えていくということにしていただいてはいかがかと思います。

【福山主査】

 はい、ここですね。確かにこのテーマは、今、ご指摘のようにIACでもたびたび出てくることですけど、その根本のところが、さっきかなり明確に提起されたところだと思います。ですから、ここに関して、今日、この評価部会で議論するわけにはまいりません。評価部会としては、そういう問題がある、その認識を改めてしたという位置づけにしていただいて、今後、当該の関係者の間でいろいろ工夫していただいて、ともかくいいプラン、いい形、組織として、それから運営のところ、違ってもいいんですけど、それがスムーズに全体としていくような、そういうシステムづくりをご検討いただくということで、この評価部会としては位置づけたいんですけど、それでよろしいでしょうかね。これは、根本に戻る大きなテーマで、ここで結論が簡単に出てくるわけではないと思う。

【鳥養委員】

 センターで感じられている課題をちょっとご紹介いただくわけにはいかないでしょうか。

【福山主査】

 今の問題に尽きてしまうんじゃないでしょうか。議論しますと、結局、そこにいってしまう可能性があり、むしろ、それはそれで別個の機会にきちっと論点整理したのがあったほうがいいんじゃないかなと思います。よろしいでしょうか。

【田村委員】

 時間がないのはわかるんですが、私も、やっぱり、まだまだ解決されねばならない点が残るというところをほんとうに簡単でいいんですが、ちょっとお聞きしておきたいと思っていたところなんですけども。

【福山主査】

 センター長、一言で。

【永宮センター長】

 いろんな問題があるから、一言ではちょっと言えないんですけども、例を一つだけ述べます。ディビジョン長というのがありますね。我々、両機関で一体的に運営していると思っているんですね。JAEAで運営しているときには、ディビジョン長というのはきちっとした格付があるんです。一方、KEKから来る人は、ディビジョン長は一介の職員であって、別に管理職でも何でもないんです。例えば安全のディビジョン長というのは、KEKの中でも主幹クラスに位置づけてほしいと僕は思っているんですけど、なかなか受け入れてもらえません。このように、細かい問題が山積して、いろいろ問題があるということで、別に一つ一つは解決できない問題ではないが、解決に時間がかかります。権限と責任の付与に関して、1つの例を述べましたが、もちろん、それ以外にもたくさんあります。

【福山主査】

 今おっしゃったことは、個別に見ると、問題はすぐにピックアップできる。個別に対応することはできる。だけど、それをきちっとシステマチックにやろうとすると、そこの各作業に関して、どういう人がどういう権限でやって、その責任どこにあるかと、結局はそういう問題になる。そうすると、それはさっきの問題に戻る。だから、そこに関して、できるだけ明解なシステムづくり、組織づくりについてご検討いただくということが、今の問題に関してのプラスの方向だろうと思いますね。おそらくここに書いてあるのはそういうことで、これ、挙げ出すとずらっとあると思います。だけど、根にあるのはさっきの問題だろうと。そういう位置づけでよろしいでしょうかね。どうもありがとうございます。

【小森委員】

 1つだけ、単純な質問ですが。

【福山主査】

 どうぞ。

【小森委員】

 KEKの場合は、プロジェクト制だとおっしゃっていましたが、そうすると研究者から見るとJ-PARCに行こうが、ほかのセンターに行こうが、両方行おうが、それは自由だということですか。

【鈴木KEK機構長】

 全くそうです。もちろん専任の方はいらっしゃいますけども、個人によってはJ-PARCを使ったり、あるいはLHCを使ったりとか、それは個人の能力次第で何でもできる。その辺がやはりKEKとJAEAと違うんです。多分、職員の雇用形態が違うと思うんです。例えばKEKの場合では、成果を出して、例えば大学なんかでもほとんど毎年出ているわけですね。これは申しわけないですけども、一方、JAEAの場合は同じような感じかといったら若干違うと思うんですね。だから、そういうところでもって給与体系も、教職の給与体系を持っていますし、片方は違った給与体系を持っていますから、そこを合わせようと思っても合わないんです。だから、多国籍研究所のように、それぞれの習慣を持ち合って、そこでどうやるかというふうにやらないと、これは一体にはできないんです。これは、世界どこでもそうです。年金問題が特にそう、国によってみんな年金が違うわけです。それをどうやってやるかは大変な問題で、自分の国で面倒を見なさいというのは多国籍のラボの話で、JAEAとKEKの場合もそういうふうにやっていったらどうかという提案をしています。

【福山主査】

 ご指摘のとおり、背後にある問題は非常に大きくて、単にサイエンティフィックな施設、そこの問題だけじゃなくて、それを支えるいろんな問題があると。

【横溝JAEA理事】

 JAEAのほうは、完全にほかの組織と同じような実組織という考えをとっていまして、ラインのポジションの人は、他の組織と同じように部長は部長の権限を持っています。だから、一般の規則で全部整理できるようになっているんです。KEKは、当初からそういう違いがあるということで、あまり言わないということでやっているんですけども、置屋と仕事をするところが違うというところが大きな違いでして、だから、今、永宮センター長が言われたようなことが起こっている。例えばディビジョン長にした人にそれなりのポジションなり、処遇を与えて、権限はJ-PARCの中でもついていますから、それをちょっと配慮してあげれば解決できるんじゃないかと思うんですけど、ぜひKEKにそういうところをご検討いただければいいんじゃないかと思います。

【福山主査】

 評価委員会としても非常に大事な国際的な研究施設、そこの運営がうまくいくように、そこは、ぜひ当事者で率直な意見交換をして、できるだけいいものにしていただく、それをお願いするということで、評価部会としては、この点は、今日はここまでで打ち切りたいと思います。めちゃくちゃ大きなテーマで、一番根本にある問題。ですけど、これに関しては、やっぱり面倒くさいからわきに置いておくと、ますますややこしくなるばかりなんで、この評価部会で問題提起されたのを契機に、当事者でほんとうに迅速に対応していただいて、いい回答をご提示いただけるように、それはぜひお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。

 それでは、次のテーマに移りたいと思います。国際研究拠点化について、これは、センター長のほうからお願いします。

【永宮センター長】

 先回出ました国際研究拠点化ということについてのご指摘と若干離れるところもありますが、ご説明したいと思います。

 まず、「J-PARCにおける国際化とは?」というところから始まりますが、外国人にとって重要な点というのは、使いやすさとか、すぐれたサイエンスをやるとか、生活環境なんかあるんですけども、下に書きましたようなことは、1つの統計データでありますので、その統計データのほうから、まず始めたいと思います。

 その次。外国人職員数ですけども、外国人は、加速器、それからMLF、Hadron、Director’s等とありますが、あまり来られず、約3.4%です。

 一方、その次のスライドの説明をさせていただきますと、加速器の運転を始めたのは2009年度です。2010年度には、3月の地震がありましたので、11か月余りしか運転していないんですけども、約4,700時間ほど運転を企画して、そのうち4,500時間ほど運転したんですけども、3,400時間をユーザーに供出いたしました。これは、ほかの施設に比べてもかなりの数でありまして、したがって、2010年というのは1つの指標になるんじゃないかということで、一番右の2010年というのをちょっと見ていただきたいと思います。例えばハドロンは、全ユーザー、これは実数であります。2回来た人は2と勘定せずに1と勘定するんです。だから、ユーザーとして来た方で、内部の方は含んでおりません。ユーザーとして来た方がハドロンだと206人というように見るんですね。そのうち日本人は144人、外国人が62人で、144と62を足したら206になるわけです。そのうち下に書いてあるのは学生の数です。144人のうち81人が学生であった、外国人は62人のうち19人が学生であった。こういう数字であります。その次、ニュートリノは308人で、外国人が断然多いわけで、51人と257人になっています。そのうち学生も外国人が81人という、すごい数の学生を抱えています。中性子は529人ということで、大体9割が日本人で、1割が外国人ということであります。学生の数は128人。それから、ミュオンはビームタイムが少なかったこともあるかもしれませんが、55人ということであります。中性子の中で特に生物関係は27人と非常に少ないんです。実は登録者数は当時50名、今は100人ぐらいになっているらしいんですけど、ということで、これからはどんどん増えていくと思いますが、当時は少なかったということであります。

 その次は、J-PARCの見学者数です。これも2010年、2011年と書いてありますが、2011年は震災なのでほとんどいませんでしたが、見学者の中では、6,800人のうち大体10%近い方が外国人です。

 その次の図はAnnual Reportということでありますが、我々、J-PARCのパンフレットを英文で出してたり、それから活動報告、J-PARCのAnnual Report、それから右はMLFのAnnual Report、こういうのを出しておりますが、そういうので対外的な宣伝もやっている。それから、一番重要なのは、下にちょっと書いてありますが、Project Newslettersというのがありまして、これは、プロジェクトが始まったころから、数か月に一遍ずつ出しているものであります。

 その次はWeb。Webは、J-PARC、ユーザーズオフィスが2011年12月に一新いたしまして、今、Webページが左に掲載しているような感じになっております。エレガントなものはなかなか難しいんですけど、Webのヒット数を見ますと、2012年3月で日本語ページには約1,000万ヒットがありますが、英語ページには150万、大体15%。だから、少ないといえば少ない、そういうことになっています。

 その次は、J-PARCに関係する国際協定ですけれども、いろんな国際協定があります。実は国際協定でいろんなところと結んでいる協定のリストがありますが、これからもさらに結ばれると思います。こういう国際協定の結び方も、J-PARCの中ではちょっと頭の痛い問題で、KEKとJAEAをどういうふうに扱うかというのはいつも課題になりまして、なかなか収束しないときが多いんですけど、そういうことであります。

 その次は、前回の作業部会での指摘事項というのがたくさんあります。研究環境及び生活環境の国際化が必要であるということで、研究環境にいきますと、課題申請の英文化。もともと中性子は、英語にするか、日本語にするかとあったんですけど、ともかく全部、産業利用を除いては英文であります。もちろん、素核の提案書や審査はもともと英文なんですけども、英語化してありますので外国人の審査員も入る。インターネット環境の整備ということで、これは、もちろん接続可能。それから、ユーザーズオフィスを整備いたしました。ユーザーズオフィスというのは、非常に外国人から感謝されているものでありますが、英語のできるスタッフを配置したり、英語のホームページの整備などもここでやっております。完全ではないのですが、なかなか難しい問題があります。それから、外国人の研究環境やニーズを理解し、くみ取ることのできる支援者の雇用ということで、実は米国の大学院でPh.D.を取得された方を昨年7月から国際推進役として雇用いたしました。この方は、もともとPh.D.をお持ちなので、そこに座っておられる渡邊さんなんですけど、研究者でもあるんですが、主として外国人の対応に当たっていただく。ただし、研究雰囲気の国際化というのは、我々の中であまり進んでいないところでありまして、私自身もこれが最大の課題じゃないかなと思っています。例えば外国人に聞きますと、J-PARCコロキウムの開催とか、いろんな提案が出ているんですけども、ともかく研究環境を国際化するというのは最大の課題だと思っております。

 それから、その次のページに行きまして生活環境。これは、利用者の居室とか宿舎の環境整備は喫緊の課題でありまして、いろんなところでアピールしております。宿舎は49室整備いたしました。これは、非常にいい宿舎であります。残りは手配中でありまして、手配中というのはKEKが残り50室を作ってもいいということを言われております。しかし、これでも多分足りないと思う。この間ちょっと議論ありましたが、SPring-8では240室でも足りないから、あとまた何十室かつくるという話がありますが、そういうことであります。東海村にも何回もお願いしています。居室における英語表記は未完なんです。JAEA全体としての取り組みが必要なんじゃないかと、JAEAのほうに言っております。多種民族に対応した食堂も、JAEA全体としての取り組みが必要です。それから、研究者の家族、医療等、こういう問題は、先ほどどこかでちょっと出ましたが、外国滞在者と東海村長と定期的な懇談会があって、改善策について、毎回外国人をお呼びしながら話し合っております。ただ、ゆっくりとしか進んでいません。そういうことを通じて、あるいは英語セミナーの開催等々を通じて意思疎通を図るなどの対応をやっております。諸外国との連携強化や国際的な広報活動ということで、これは、国際推進役が国際学会の施設のベースで説明したり、ホームページの改訂とか、いろんな英語化に関して活動していただいています。

 次に、まとめますと、前回の評価で対応できていない点は、やはり環境整備であります。宿舎とか食堂とか居室、この問題は依然として残っておりまして、我々、本当にやるべきだと思います。一方、いくつかの進展もありました。ここに書いてあります外国人スタッフ、ユーザーによる見学者がどんどん増加してきております。それから、国際協定の締結による海外機関との連携もどんどん増えてきている。それから、ユーザーズオフィスも強化されました。それから、国際推進役も配置した。これはポジティブな面であります。しかし、今後の課題としては多くのものが残っております。何はおいても国際的なアカデミックな雰囲気の樹立というのが僕は一番重要なことだと思っています。それから、住宅環境とか交通環境の整備。それから、外国からの資金運用に関するアカウントの整備の欠如、等です。英語を話してきちっとアカウントをマネージし、資金運用することです。それに付随して外国からの資金流入の調査を、今進めているところです。かなりあるんです。例えばニュートリノなんかは、たくさんの資金流入が外国からあります。そういうことをきちっと統計をとっておくことは重要なので、日本国内の資金だけじゃなくて、外国における概算要求も含めて、目下、調査しております。それから、外国人雇用の拡大は、ちょっと夢みたいな話なんですけど、そういう課題も進めなければなりません。

 以上です。

【福山主査】

 どうもありがとうございました。ご質問、ご意見、いかがでしょうか。

【西島委員】

 では、せっかくなので。いろんな問題があって、何かすぐ解決なり対応できるんじゃないかという課題もありますが、宿舎の問題はなかなか難しいとの印象です。英語表記なんかはやろうと思えばすぐできると思うんですけど、ただ、これ全部やっていると切りがないんです。そこで、考え方として、J-PARCが世界の中でいわゆる研究施設として最先端であるという魅力があれば、この中の幾つかは未解決でも、世界中から研究者が集まってくるような環境整備を目指すのが実は一番早いという究極の話はあると思うんです。例えば宿舎をつくったとしても、ちょっと来てすぐ帰るんだったら、結構空いている時間が多いと思うんですね。そういうときには、文部科学省が結構空いているんじゃないかといってすぐつぶしたりしますから。これはいいかどうかわからないんで、本末転倒じゃないですけども、使おうと思ったときに速やかに、先ほど言いました話に戻す気はありませんけども、比較的契約がスムーズにいって、すぐに使える状況になって、知的財産についてもわかりやすいから、しかも、遠く日本を目指しても、ぜひそこでやりたいという、いわゆる最先端のものを目指すということを随一に考えては如何でしょうか。それを踏まえて、解決すべき問題に優先順位をつけて、メリハリをつけて、ここの部分はやらなくても外国人に来てもらわなきゃいけないとすべきでしょう。個人的には食事の問題は大した問題じゃなくて、食べられればいいというぐらいの感じです。日本からイギリスへ行ったら、口に合わないものを食べた時代もありましたが、それでもイギリスは当時、科学関係では相当すぐれているなと思ったときは、欧州に行ったときはやはりイギリスは無視できないなというので、必ずイギリスに寄ってきました。そのぐらいの魅力ある拠点を目指すということも重要なんで、そこが随一だということはぜひもう一度確認したいと思います。

 もう一点、国際化とは関係ないんですが、ちょっと気になったのは4ページで、あえて数字を出している生物関係27名というのはどういう意味合いで出されたかということなんですけども、思いのほかライフサイエンス関係は少ないよということを多分言われると思うのですが、その理由が、つまり、この施設そのものがライフサイエンス関係として魅力がないというよりは、むしろライフサイエンスの研究者が使いやすいビームラインとか、ビームタイムがないんだと、欠けているんだと、どちらのほうをお考えでしょうか。

【永宮センター長】

 僕は、ライフサイエンスはこれから伸びていくと思っているんです。というのは、検出器がまだちゃんと完備されていないことと、ビーム強度がどうしても必要なんです。ビーム強度がないとライフサイエンスの人は勝負できないというので、最近、1つか2つのことに集中して、新井さんが言われるかもしれませんけど、ライフサイエンスでかなりいい結果が出てき始めています。そういうのが出てくると、やはりライフサイエンスの方がどんどん集まってくると思っています。だから、今は非常に少ないというのを強調したいんですけども、将来的には非常に増えていくんじゃないかなと僕は期待しています。繰り返しますが、ビームラインというよりはビームフラックスですね。ビームラインもあるかもしれないけど、それは後の議論に任せたいと思います。

 それと国際化の優先順位についてですが、いろいろ優先順位はたくさんあると思うんですけど、まず宿舎が一番だと思っています。というのは、我々のところに研究会でやってくる人がたくさんいるんです。これらの人たちを、東海に泊めるわけにいかないんです。東海に滞在できないんです。そのような研究所は、僕は将来性は全くないと思っているんです。やはり宿舎はきちっと整えないとだめです。確かに食堂とかの問題もありますが、そういうのは皆さんいいところを見つけて行きますから、それは問題ないと思うんです。

 それから、きちっと居室環境は必要だと思います。そういうベーシックなことがないとやっぱりだめ。

【西島委員】

 私も実は居住環境が一番重要だと思ったんで、たくさん課題は出ているんだけども、そこのところをぜひ、ここは必要だというようなことも、どのぐらいお金がかかるのか、どこまでに達成しそうなのかというようなことも含めて、少し具体的に切り込まないといけないのかなと思った点と、それから、この関係ですけど、私も生物関係では、はっきり言いますと放射光に関してはかなり日常的に使えるようになったので、次はやはり構造情報の精密ということを考えれば、ライフサイエンスにおける中性子利用のほうは例えばアカデミックのほうに先行してもらって、製薬会社がそれに追いつく、放射光と同じような道筋を通っていくようなロードマップを作っていきたいなというふうに思っております。

【永宮センター長】

 中性子の物質科学では、今、パルスあたりの強度でいきますとSNSを抜いているぐらいいっているんです。だから、これは、もう皆さん非常に満足というか、非常に一生懸命やって、これから増えればいいんですけど、かなり満足度を持ってやっているんですよね。だけど、生物の人はほとんど満足していません。それは、サンプルが大きくないと困るとか、いろんなことがありますから。それにしても、だんだんユーザーは徐々に増えていっています。僕はもともと2,000人規模じゃないかなと思っているんですけど、その程度に近づいてしていくんじゃないかなと思っています。

【福山主査】

 確かにバイオ関係、生物関係に関しては、これから急速に高まるんじゃないかと。だけど、それを早く実現するためにはディテクターとかフラックスの問題、それをまず克服しなきゃ。だけど、逆に言うと、それをひとたび克服したら、状況はがらっと変わるんじゃないか。

 それから、ご指摘の課題というのは、こういう大きな施設が動き始めたとき山のようにある。それは、優先順位をつけてできるところからやる。そのとき、何を優先順位にするかというところは組織の決断だと思うんですけど、先ほどセンター長がおっしゃったことでちょっと印象に残っているのは、研究環境でオフィスの問題等々いろいろ課題はあるけれども、雰囲気の国際化だと。確かに雰囲気というのは実態があるようでないものなので、それを支えるものの総合的な側面があると思うんで、その背後には宿舎の問題とかもろもろありますね。最終的には、もちろん人の問題だとは思うんですけども、そこの根底にあるのは、結局は宿舎がまず第一なんでしょうか、何なんでしょうか。この雰囲気の背後にある根本。

【田村委員】

 雰囲気は、もちろん宿舎等も重要だと思うんですけど、やっぱり外国人職員数が3.4%というのは、こういう国際的な研究所にしては非常に少ないんだと思います。もちろん増やす努力はされているんだと思うんですけども、やっぱりインハウスの中にいる人がある程度の割合、外国人でないと外から来る人も来やすくないということがあると思うんです。我々の場合だったら、外国の人をユーザーが世話してやる。いろんな中の手続とか、そういうのをやるときには、結局、ユーザー同士で世話しなきゃいけない面が多いわけです。もちろんユーザーオフィスでやってくれますけども、研究のもっと先のところというのはユーザー同士になってしまって、中に外国人のスタッフの人がある程度の割合いると、そこは非常にスムーズにいくし、雰囲気も大分国際的になるんだろうと思うんですね。実はこれ大学でも全く同じ状況で、大学の外国人の教員の数を5%以上にすべしとか、そういうことを大学ではよく言っているんですけど、なかなか増えない。そうすると、ある程度留学生とか外国人がいても、結局、日ごろ周りがみんな日本語をしゃべっているし、書類も国際化しないしということで、やっぱり外国人でわざわざ来ている留学生もあまり居心地がよくないという状況になっています。だから、外国人の特に博士研究員とか、そういう割合を増やす努力というのは、どういう形でされているのかというのをちょっとお聞きしたいと思うんですけれども。

【永宮センター長】

 急にはっとお答えできる数字はないんですけども、外国人研究員というのは、KEKなんかは外国からリピーターを呼ぶということを随分やっているんですけど、ビジターは来るんですけど、研究員が増えるというのはまた難しいんですね、どこでも抱えている問題だと思うんで。やっぱり非常にアトラクティブな人を1人か2人連れてきて、それを活かすということが重要なんだけど、なかなか。結局、人の問題だと。

【田村委員】

 研究のレベルで人を集めようとすると、やっぱり日本人の優秀な人のほうが即戦力になるということで、どうしてもそうなりがちだと思うんですが、ある割合は、短期的には多少無駄というと失礼ですけども、研究所がどうかと思っても、そういう人が後々人をもっと連れてくる種になる可能性があるので、そこは別枠で外国人を特に増やす努力というのは必要なのかなというふうに思います。

【池田副センター長】

 そういう問題意識というのは、皆様、共通で持っていまして、JAEAの人事のほうでやはり外国人、これは、どこの組織も増やせよ、増やせよと言われている。ある枠を設けて採用しようと、こういう動きはある。この間もその枠が一応オープンになって、J-PARCでも1人ですけど、お願いした。残念ながら競争に敗れてだめになったわけですけど、一応、流れとしては、組織的にはそういうものは共有化されている。だから、今後はどんどん増えていくんではないかということを期待しています。我々も努力するということです。

【鈴木KEK機構長】

 私、思うには、我々と同じようなタイプの人を増やす必要ないと思うんですね。なぜかといいますと、まず、我々が望むような人は、はっきり言いますと、この給料では来ないです。それなりの給料を出せば来ますけどね。そうすると、我々の給与体系の中にとじ込んでやろうとしたら、ろくでもない人しか来ないわけです。そういう人は要らない。そうじゃなくて、むしろ、例えばサバティカル制度を優遇して、そして外国の優秀な人をこの期間中来られたら、その先生にはこういうサポートをしますと。そして、3か月なり、半年、1年いてもらって、そのときに、いろんな業務を優遇してやったんだから、このデューティもやりなさいというデューティをつけて、そういう仕組みを作るとか、違った方法をやらないと、ただ単に日本人と同じような研究者レベルでやろうとしたら、多分いい人は来ないですね。だから、ちょっと違った観点から人を呼ばないと日本では無理だと思いますよ。

【福山主査】

 今の点は、確かに非常に効率がいいです、早くできる。だけど、それ、お金がある程度あれば実現できることですよね。だから、そういうのはすぐ対応する、できる可能性はございますね。この問題も大変大きいと思いますけど、次のお話もひょっとしたら、それとつながるんじゃないかと思いますので、次の物質・生命科学実験のところ、それから共用の推進。はい、金谷さん。

【金谷委員】

 僕も生活環境気になるんですけれども、住居とかの話は今かなり出たんですが、交通機関も非常に悪い。駅からもなかなか来られないし、そういう意味では、村は非常に協力的にしてくださっていると僕は思うんですが、国の関与というのは、そういうところには難しいんでしょうか。具体的に言うと道路でありますとか。

【福山主査】

 交通の便に関して、東海村、村上村長さん、一生懸命やってくださる。国としては、何かそういうことに関して対応するところがあるかどうかというご質問ですが、いかがでしょうか。

【原室長】

 文部科学省という単位で見たときには、道路だ、鉄道だというのはほとんど無理だと思いますけれども、国として、政府全体で見たときにすぐ思い浮かぶのは国道を通すとか、あるいは補助事業でやるということなんですけれども、ちょっと具体的には取り組みが進んでいないというのが現状ではあると思います。どういうことが可能なのかどうかというのは、すいません、すぐにはお答えできるものを持ち合わせておりません。

【金谷委員】

 やっぱり基本的に国がつくられたJ-PARCというすばらしい施設ですし、それをある程度やっぱりサポートしていく。それから、施設としてはすごくよくなってきているし、国のサポートがすごくなされているのはよくわかるんですが、東海村自身をどう考えていくかというような観点も必要かと思うので、ぜひご検討願えればいいかなと思った。

【福山主査】

 どうもありがとうございます。これも大きな問題ですね。

 では、新井さん、お願いします。

【新井ディビジョン長】

 それでは、私のほうから物質・生命科学実験施設の現況ということで話をしたいと思います。震災から約1年たちまして、実はきょうも震災の直前のパワーである200kWで実験を皆さんがやっているという状況です。こういった評価委員会は、どうしても問題点に対する非常に厳しいご指摘ということになるわけなんですけども、きょうは、我々自身が言われる話からしたいと思います。この辺の絵は、中性子のスペクトルをかいてある絵なんですけれども、赤いほうが実測で青いほうが計算値なんですが、これは、要するに我々が設計したとおりの中性子源ができたというふうな意味合いになります。これを延長していきますと、今、我々は200kWですけども、中性子の強度で言いますと、ピーク強度で言いますと、もう既に1 MWになっているSNSのピーク強度にほとんど匹敵するような値になっております。ですから、今後、特に1 MWまで加速器のパワーが増強された場合には、実は世界の中でも断トツのピーク強度を得られるというような状況にあるんです。まず、こういった点を皆さん、ご確認していただきたいと思います。また、この後、実験装置の話をしていきますけども、こういった実験装置の実現も現在、ヘリウム3の世界的な枯渇の問題がございますが、そういった問題が生じる以前から、ここにありますようなシンチレータ検出器というものを世界に先駆けて技術開発いたしまして、それらが世界トップレベルの技術になっておりますけども、生物の装置も含めて種々の装置に利用されて成果が出つつあるというふうな状況です。

 さて、MLFの施設の実験装置の整備状況ですけども、色塗りのところが前回の委員会で指摘されたことです。つまり、装置を建設するにしても、研究者コミュニティで十分議論して、優先順位をつけて行いなさいということが2007年に言われました。その後、現在、既にもう20台の装置が予算化されまして、黄色のやつは共用の装置なんですけども、建設あるいは利用されておりますが、これらの建設におきましては、ご指摘のとおりコミュニティの要望、助言に従って進めてきました。これは、中性子科学会の特別委員会のグランドデザイン報告書が2008年に提出されましたけども、それに従って今まで建設を進めてきております。

 次の図は、ごく近傍で、先ほどの20台のうちの何台か示してありますけども、建設中だったものが利用に入っているとか、あるいは、これから建設に入るようなものが書いてありますが、こういった装置も先ほどのグランドデザインの報告書がつけた優先順位があるんですけども、それに従って建設を進めてきているということであります。そして、こういった状況については、言われているように、それぞれの委員会に報告を行いつつ進めてきているということです。1つここで示したいことは、20台ファンディングされましたけど、実はそのうちの10台は82億に相当しますが、この予算というのは科研費及びいわゆる外部資金で建設された装置であるということをご確認していただきたいと思います。これほど外部資金を投じてでも、この施設に中性子実験装置等々を建設して研究したいという要望が非常に高いということを示しているあらわれです。そういうわけで、現在、実験室は、こちらからBL01からずっといきますけども、23あるうちのビームポートはほとんど埋まりまして、赤い矢印でかいてあるようなポートだけが現在あいている状況と。ミュオンもこの辺あいていますけども、これが現状であります。三次元的なイラストで見ると、このような状況であります。

 今日の話の中では、特に最近の研究成果について報告しなさいということがありましたので、幾つかの成果について、まずは話したいと思います。まず、サイエンティフィックな成果の以前に、技術開発の成果についてまず述べたいと思います。これは、いわゆる物質内部のエネルギー励起を観測したときの絵なんですけども、これまでは例えば入射エネルギーをある適切な値を研究者が考えて実験をやるというふうなことでやってきましたけども、今回の技術は複数のエネルギーを持っている中性子で同時に計測できるような技術ということで、このように入射エネルギーの高いところから低いところまで、一度の測定でできるということで、思いもよらなかったところに新しい現象等々が発見される可能性が非常に出てきたというわけです。というわけで、この技術は既にいろいろな賞をいただきまして、来週には文部科学大臣表彰もいただくような状況になっております。

 さらに、私たちの施設の標準の仕様といたしまして、いわゆる事象判別型データ集積系というのを中性子施設としては世界で初めて採用いたしました。これによって何ができるかといいますと、例えば時々刻々温度を変えていって結晶の構造が変わっていく。また、温度を変えたり、材料の引っ張り力を変えたりして変わってきますけども、こういった時間変遷現象やその場観測が標準の測定としてできる施設になってきました。

 それでは、幾つかの成果についてお話ししたいと思います。まず、これは、2008年に発見されました鉄系高温超伝導体の研究です。まだ超伝導の機構というのは完全には理解されておりませんけども、磁気的な相互作用が非常に重要であろうというふうに思われておりまして、ここに示した図も磁気の励起のエネルギースペクトラム、あるいはモーメンタムスペースにおけるどの位置に出るかというふうなことを研究することによって、そういった機構の解明につながるというふうなことが、ここでは我が国の研究者による成果を示しましたけども、海外からも実験においでなるようなことになっておりまして、今、我々の施設としてはトピックスの1つになっております。

 次も磁性と電気的な性質を合わせ持っているいわゆる多機能の物質で、マルチフェロイックという物質が最近非常にクローズアップされていますけども、こういった物質の多機能の性質を理解するために、これは、スピンウエーブという分散関係を示していますが、こういった励起状態を知ることによって、どれぐらいのエネルギーの状態で相互作用しているかとか、あるいは空間的にどの方向に相互作用しているかというようなことを調べる研究もされておりまして、既に国際的にも評価の高い雑誌にアクセプトされております。

 次の例はリチウム電池の例なんですけども、これは、固体電解質でイオン伝導度の高い物質というのはなかなかなくて、今まで液体の電解質を使っていたものですから、発火等の危険が随分指摘されていたわけなんですが、この研究は東工大とトヨタ自動車の協力によりまして新しい物質がつくられました。それを見ますと、ここにありますように、これまでの物質群に比べても非常に高いイオン伝導度が低温から高温まで得られるというわけで、今後、全固体型のリチウム電池の可能性があるということで、やはり著明な雑誌に発表されたり、新聞にも第1面に発表されたわけです。

 これは、水素吸蔵材料の話なんですけども、放射光の実験と中性子の我々のほうの実験から得られたことは、この場合にはランタンに水素を入れるような系なんですけども、ランタンは非常に重たい元素ですから、放射光ではどうしてもランタンの構造しか見られない。中性子でやりますと明確に水素の位置が、この場合には8面体位置という青いところなんですけども、そういったことが圧力をかけて、高圧下の合成で確認できたということで、今後、電子状態の理論的な観点からも、どのようにして水素が吸蔵されたり、あるいは放出されたりというふうな研究の道筋をつけたということで、国際的にも高い雑誌にアクセプトされている状況です。

 これは、前回、私がちょっと間違った説明をしましたけども、アミロイド症を引き起こすタンパク質でトランスサイレチンという物質があるようなんですが、通常は4量体で安定な状態がpH等を変えていくと単量体に変わって、タンパク質の間違った折れ畳み構造等が出て、それで病気を発生するということが知られているわけなんですけども、そういった部位がどこに問題あるのか、どういった水素結合が問題になっているかというのが明確になりまして、その論文が全世界の生物医学分野の総論文数の約2%、TOP2%というものに選ばれるぐらい大きな反響をこの分野では生んだというふうにお聞きしております。

 さらに、我が国はJAEAといったらよろしいんでしょうか、国際熱核融合炉、ITERの計画の中の超伝導ケーブル、太さが4センチ以上ありますけども、そういったものを開発することが任されております。ところが、こういった物質、実際には超伝導物質と銅のフィラメントでできている非常に複雑な構造をしていますけども、それを工場でつくった場合には必ず内部応力が発生して超伝導特性が低下するというふうな非常に大きな問題がありました。一体どういう応力が内部で発生しているかというのは、これまではなかなか見えなかったんですけども、今回、我々の装置、匠を使いまして明確になりまして、今後のケーブルの開発工程をどのように改善していくかということに大きな答えを与えようとしている状況です。この問題も国際的に、特にアメリカが注目しておりまして、我が国のITERグループとアメリカのITERグループが協力して、こういった実験をJ-PARC及びSNSでやろうというふうなことが現在進みつつあります。

 さて、次に組織の問題ですけども、先ほど来ありますように、私たちの組織というのはKEKとJAEAの足の入れ方が非対称性でなかなか複雑なんですけども、そこに加えて登録機関なり茨城県が入っているということで、皆さんを勇気づけて運用していくということが非常に重要なんですが、我々のディビジョン、私の下に副ディビジョン長が2人おりますが、その下に4つのセクションからなっておりますけども、ちょうど1年ほど前に発足いたしました登録機関であるところのCROSSから、特に共用のビームラインに対しては1台当たり4名の人を出す、JAEA側からは2名出すということで、いわゆる国際標準と言われている1台当たり6名というふうな支援スタッフが準備されつつあります。それに加えて共同作業とか、利用プログラムとか、あるいは安全等の共通作業についてもCROSSとの連携を図りつつあります。それを細かくブレークしたものがこれなんですけども、これは、各実験装置についてKEK、あるいはJAEA側の職員数、スタッフ数、さらにここにCROSS側の職員数が書いてあります。黄色いラインが共用法の装置ですけども、共用法の装置、あるいは茨城県の装置もそうですが、十分なスタッフがありますが、今後、やはりKEK、JAEAの装置の要員をどのようにして確保するかということを検討する必要があるかなというふうに思いますし、それぞれの装置ではなくて、こういった共通の業務というのがあります。例えば計算環境のことですとか、試料環境のことですけども、それを今、面倒見ているのがほとんど業務委託の方なんですけども、より高度な利用支援を行うためにはやはり職員クラスの人材がこの辺に入る必要があるというふうなことが現状であります。

 前回の委員会のご指摘でありましたコーディネータや技術支援、キャリアパスについてですけども、登録機関が発足いたしまして、このような方々が随分入ってきましたが、そういった方々のキャリアパスを考えていくとか、今後どうやって評価していくかというふうなこともあります。さらに、現在、私どものディビジョンでも、特に共通業務に関しては技術者が中心となるようなセクションの新設等も検討を始めている段階であります。それによってキャリアパスを確保するようなことも考えつつあるということです。さらに、今度はコーディネータの話なんですけども、県側にもコーディネータがおりますから、三者、登録機関、MFL及び県のコーディネータがうまい連携をとってやるようなことが今後進める必要がある問題として挙げられております。コーディネータ以外もいろんな業務がありますけれども、登録機関とMFL間で実務者連携会議というものを毎月開催しておりまして、実際の業務の分担ですとか、そういったことを連携して進めているというのが現状であります。

 次に、MLF利用の状況ですけども、課題の数というのは大体順調に伸びつつあります。もちろん地震で落ち込みましたけども、それに対して先ほど永宮センター長がお見せしましたが、中性子の分野の利用者も急激に増えているところであります。

 これが出版論文で、2010年までのまとめなんですけれども、120ぐらいの論文が出ておりました。先ほどお見せした新しい成果については、やはりこれから続々と出てくると思われますので、この数も今後飛躍的に伸びるんじゃないかなというふうに予想しております。

 次に、産業利用ですけども、皆さん、ご存じのとおり、我々の施設を使いに来る研究者の30%以上、これは課題数ですが、産業界から来ている。現在、茨城県が産業利用に非常に力を入れておりますので、特に産業界から茨城県の材料構造解析装置を使いに来る例が非常に多いわけなんですけども、この内部をさらに細かく見ますと、そこに使いに来ている業界は、このような業界が使いに来ている。こういった業界が持ち込む材料は、現在の我が国の科学技術のトレンドでありますところのリチウムイオン電池の研究を相当行いつつあるということが現状であります。

 料金についてですけども、J-PARCは、基本理念といたしまして国際公共財というわけで、利用負担の基本的な考えといたしましては、成果公開の課題につきましては無償、非公開のものに関しては運営費回収方式により料金を徴収します。それが現在は、実験装置1本当たり170万ぐらいの値でありまして、これが1 MWに近づくに連れて額は徐々に上がりますけども、このような額をとりつつあります。しかしながら、現状におきましても、産業界からはお金を払ってでも使いに来たいというふうな数が急速に伸びつつあります。年間20件とか、それ以上の状況です。

 今後の課題ですけども、前回の委員会といたしましてはトライアルユースを行いなさいということですけども、登録機関が本年度の下期にはトライアルユースを開始する。ディビジョンとしても若手の学校等を含めて開始する予定になっております。

 次の問題といたしましては、試料の前処理からデータ解析まで一貫したサービスが受けられるようにということですけども、こういったことができるような人員配置なり、準備室の準備等も進めつつありますが、もう少しそれを制度として行うためにはもう一工夫必要だろうというふうに思っておりまして、次々回あたりのこの委員会では、このあたり、私たちがどのようにしていきたいかということをご提案したいと思います。

 知的財産の保護ですけども、現在、非公開の課題については非常に限られた職員しか目に触れないような状況になっておりまして、秘密保持というのはほぼできているかと思いますが、しかしながら取得したデータが十分なセキュリティーをまだ持っていない状態ですので、将来的にはコンピューティングの環境とか、セキュリティーの問題とかが解決しなくちゃいけない問題かなと思います。

 これは、次々回あたりの委員会でさらに詳細の説明をいたしますけども、今後、私たちが整備したいものといたしましては、既存の装置を最大限活用して成果を出すというのがまず第一である。それを実践するためにも実験条件の最適化のための試料環境、あるいは解析のための計算環境というものが非常に重要になってきます。実験準備や解析、さらに利用者の快適な研究・生活空間、先ほどお話が出ましたけども、やはり世界第一級の研究を行う場にふさわしいような環境が雰囲気づくりにも非常に重要ですし、こういった設備を使って下準備、あるいは実験後の解析をするためにも非常に重要なので、ぜひともこういった研究棟をお願いしたいというふうに思っております。

 私どもの建物には窓がたくさんあって、あたかも人が居住しているように見えるかもしれないんですけども、実はここには居住している部屋というのは1つもありません。ほとんどが制御室とかちょっとした会議室とか、利用者の部屋も1部屋だけありますけども、非常に限られておりますので、やはり研究者がJ-PARCに来て、ここには中性子だけじゃなくてハドロン、ニュートリノの方も一緒に入って人的な交流も進むと思いますので、ぜひともお願いしたいというふうに思っております。

 先ほどありましたけども、利用者支援のための人員の適切な配置でありますが、これは、単純にポジションの純増ということだけを考えるのではなくて、ディビジョン内の人材資源の再配置等々も含めて検討していきたいというふうに思います。

 最後に、実験装置を今後建設するにしても、もう23ポート中20ポート埋まっています。4台の建設、特に共用法の装置を増設する必要があると思うんですけども、この辺についてもコミュニティ等々と十分に議論しながら進めていきたいと思っております。以上です。

【福山主査】

 続けてお話があるんですね。全部伺っちゃいましょう。トータルで30分の予定ですから、残り10分でございます。

【J-PARCセンター(門野)】

 それでは、新井先生の補足という感じでミュオンに関して報告したいと思います。中性子や放射光に比べてミュオン、ちょっとなじみがないと思いますので、ちょっと何枚かイントロのスライドを入れました。まさしくミュオンというのは、加速器からつくられる粒子なんですが、特徴として水素と同位体である。非常に磁気モーメントが大きい、要するにプロトンの3倍ということで、知られている原子核の中で最大のモーメントを持っていまして、それが感度の源泉だと。それが加速器から出てくるときに自然に100%偏極して出てくるというので、これを物の中に入れると原子スケールで非常に敏感に周りの磁場を教えてくれる。最後に、放射性同位体として陽電子などを放出するときにスピンの向いている方向を教えてくる。ですから、磁場を感じるところではスピンが回りますが、実に簡単に、かつ明瞭に観測できるというメリットがあります。

 中性子・放射光は、基本的に波としての性質を使って、広い領域にわたった固体の領域をプローブするわけですが、ミュオンというのは、打ち込んで、あるところでとめて、その周りの状況をよく見る。ですから、非常に双方的な情報を与えてくれるというわけです。こういった特徴を持ったミュオンというのは、J-PARCの中でもやはり重要であるということで、建設当初からこういう全体計画で進めてきたわけですが、現在のところ我々が保持しているDラインと呼ばれる汎用のビームラインは1本でございます。汎用ということでいろんなことができるわけですが、3年前の評価部会でコミュニティとして、これからの整備に当たっては優先順位をつけてやっていきなさいという宿題がございましたので、我々は残りの3つの中で、まずはUライン、これは超低速ミュオンというものを発生するためのビームラインでございますけれども、これをまずやろうということで数年間努力してまいりました。幸い機構内でいろんな予算措置で、まず装置の全体の半分、大強度の表面ミュオンを出すところまでを作り、後半はコミュニティが競争的資金で整備するという努力を重ねた結果、隣のUラインというところをちょっと拡大しますと、この部分をKEKが予算を確保してつくり、後ろのモデレーターの部分、超低速化して実験を行う部分は、こちらにいらっしゃいますが、鳥養先生が代表である新学術領域研究で建設が始まるということで、去年から進んでいるところでございます。そういう状況でありまして、現在としてはMLFの実験ホールは2つありまして、西側は今こういう状況でありまして、Dラインがあって、Uラインがまさに建設を行っているという状況であります。

 虎の子のビームライン1本、Dラインですけども、3年間、いろんな成果が出ています。先ほどの新井先生のスライドでも120本ぐらい論文が出ているということの中の20本ぐらいはミュオンから来ていますので、少ないビームラインでも我々としては頑張っているという認識でやっています。

 例えば、これ、1年に1個ぐらいずつ拾ってきたものですが、最初の年、まず、とにかく世界最強のビーム強度を達成したということで、これは、その後、高エネルギー加速奨励賞の対象になりました。それから、ちょうど鉄系の超伝導体が見つかったところでありまして、我々、外国の施設で実験もしていたわけですが、J-PARCが動き始めたということで、即、この研究を始めまして、結果として非常に新しいタイプの超伝導と実際の共存というようなことはミュオンじゃないと、こういうことはなかなか言えない結果ですけども、これがJ-PARC全体で最初にパブリッシュされたデータとして世の中に出ていきました。

 それから、これは、2年目のトピックスですけども、豊田中研の方が我々と一緒にやった研究ですが、先ほど中性子でありました電池材料ですけど、こちらは電極材料の中で実はリチウムという拡散がどう動くかというのは材料学的に非常に重要な問題で、何とかこれをとらえたいということで皆さん努力しているわけですが、ミュオンを入れてミュオンの様子を見ていると、そのわきでリチウムが拡散している様子が実によく見えるということがわかりました。これは、既に幾つかの論文として世に問われているところです。これは、多分、前回、永宮先生が紹介されたと思うので詳細は省きますけども、巨視的な性質では何も特徴がないようなイリジウムの酸化物なんですが、それがミュオンを入れるとたちどころに銅酸化物と似たような磁性を示すことがわかるという、ミュオンの典型的な応用例として昨年のフィジカル・レビューBで注目論文となった例です。

 以上、ビームラインは、Uラインの建設が始まって成果も出ているんですけれども、解決すべき問題として、まず、ビームタイムが全然足りていない。これは、2010年あたりをベースに数えた数なんですが、我々のところで実際に使われたのは半年で大体80日、これはマキシマムです。そのうちいろいろあって、ユーザーに使っていただいたのは、多分、このうち50日ぐらいなんですが、いずれにしてもこのぐらいしかない。それに対して、私も含めて、全体で足りていないので、外国に行って実験しなきゃいけない。それを数えてみると、日本人は大体このぐらい外国で実験をやっている。あるいは理研-RALでもKEKと独立でミュオンのプログラムが進行していまして、それがこのぐらいやっているということで、要するにトータルこのぐらい実は半期でみんな使いたいと思っているんですが、実際にはこのぐらいしか供給できていない。

 最近のコミュニティのシチュエーションによると、現在このぐらいのユーザー数がいるとして、3年ぐらいでもっと増えると。これは、潜在的に増えそうなんですが、この状況では全然対応できない。それから、1本のビームラインですから、非常に極限、例えば超低温であるとか、超強磁場であるとか、そういう最先端の実験条件で実験するということになると非常に難しいという問題があります。もう一つ、Hラインというビームラインには、実はこの数年の間に非常に大きな、しかも魅力的な実験計画が提案されておりまして、物構研の課題審査委員会で、2段階のうちの1段階目、サイエンティフィックに意義があるからやってよい。ついてはフィージビリティをきちんと証明するようにというような段階まで来ています。ですから、こういう幾つかの課題を解決するためにビームラインの実験は続けながらも整備しなければいけないという状況になっています。まず、Sラインは何かというのは後で出てきますが、これは、先ほどの1、2を解決するためにどうしても整備が必要であろうと。それから、Hラインというのがまさに今言った3件、新しい課題が出ているところですが、もう課題が出てきていますので、最初のマスタープランに出てきたよりは少し前倒しする必要があるんじゃないかという状況になっています。これから5年ぐらいで我々が希望していることとしては、まず、Sライン、1本しかないビームラインをもう4本増強するということで、これによって先ほどの需給ギャップであるとか、それぞれの装置で最先端の実験をやることが実現できるであろう。それから、Hラインに関しては、コミュニティの中の優先順位というのはなかなかつけがたいところがあるんですが、Hラインは全体計画をすぐに行うことはあきらめて、まず最初に1個でもいいから実験ができるような状況にしようということで計画を考えています。

 まとめますと、こういう感じで、Sラインは数を増やすとともに、最先端の実験を行えるような状況にしたい。それから、Hラインに関しては幾つか提案されている実験のうち、やれそうな実験から、まずはやれるような状況にしたいということで、今、計画を立てているというところです。以上です。

【福山主査】

 どうもありがとうございました。続いて、池田さん、お願いします。

【池田副センター長】

 私は、ここからで。最初にMLFの共用ということで、全体の課題審査体系をお示しいたします。まず、4年前に我々、JAEAとKEK、2つの組織が運営するということで、J-PARCセンターの下にMLFの施設利用委員会というPACをつくりました。そこの下ですべての課題を審査していこうという概念で作ってまいりました。ここでは、国際性とか、学術から産業界まで幅広い利用、それから透明性、公平性を持った競争原理のある、そういうシステムでいこうという基本的な指針をつくって運営してまいりました。ところが、実際には去年度から共用が始まったわけですけど、共用促進法が21年度に導入されて、そこの利用が始まった。これもJ-PARCの利用でありますので、これもきちっと組み込んでいくということで、CROSSという登録機関が設立されましたので、ここの連携を組み込んだ全体のシステムをつくってまいりました。

 次のページ。共用促進法の導入についておさらいをする必要はないと思いますが、設置者としてはJAEAが負っている。登録機関は、利用を促進する機関としてCROSSが認定されております。利用の促進というのは課題の選定が入りますので、ここでは既存のJ-PARCで築いてきた利用体系との連携が非常に大事になったということであります。J-PARCを利用しに来た人から見たら、いろんな機関の都合が見えてはいけないということで、ここは外から見たら統一的に見えるようにしようと、そういう運用に心がけてきております。

 次のページ。ここは、何回か新井さんのプレゼンでもありましたが、この黒丸、この5本が現在、共用促進法で共用にされている実験装置であります。そのほか幾つか上のほうに区分が示されておりますが、JAEAの装置でありますとか、茨城県の装置、外部第三者装置と呼んでいますが、こういうものがある。今現在動いているものは十何本かあります。作っているものが何本、トータルで20本がこれからいくであろうということでございます。

 次のページ。これは、実際にどういう所掌で登録機関がJAEAとKEKの全体の活動の中に入っているかということでお示ししたもので、これは、共用促進法に基づく共用促進という業務はグリーンのところで、中性子のところに入ってきている。JAEAは、設置者として装置の建設だとか運営をする。それから、KEKは、共用促進法から見たら準設置者という位置づけとして、全体の施設の運営にもかかわっていただく。一方で、共用という観点では大学共同利用がKEKのミッションとしてあるという図柄になっている。ただ、外から見たら、これはあまり見えないという状態になります。

 次のページ。課題の審査の流れと区分でありますが、年2回あるというようなことはもう既にご紹介がありました。課題の区分はマル1、マル2、マル3と一番上のグリーンのところで、できるだけ多く、広く使っていただくという一般課題枠。それから、JAEA、KEKを含む運営主体があるまとまった成果をプロジェクト的にやる、そういう枠。それから、装置の性能をきちっと出すための枠。この3つに分かれております。それから、あと専用装置という位置づけで、茨城県の装置が別途運用を茨城県がやっておりますので、そこの一部はJ-PARCの審査のほうにビームタイムを供出してもらうというスキームできております。ここで共用装置、共用促進法のところの一般課題もできるだけ多く受け付ける。そのほかに登録機関のプロジェクト的なところというのは、アナロジーとしては上と非常に似た形で進んでいるということであります。

 次のページ。実際、これが現状の審査の流れになっておりまして、ワンストップでユーザーはビームラインを使いたいという申請になっております。来た課題は非常に多岐にわたりますので、レフリーの審査、それから専門別の分科会の審査、さらに、最終的に決められたビームタイムやロケーションも含めた課題審査をやって、最後に施設利用委員会、それから選定委員会ということで決めていく、こういう流れになっております。ここで、前回の評価部会の指摘で右に吹き出していますところで専門部会等、分科会をちゃんと設けてやりなさい、これはもう既に我々の基本的な指針で盛り込まれているということです。

 次、これは非常に似ていますが、プロジェクト的なところはどうしますかということで、KEKビームラインを使うところについてはKEKの大学共同利用のS型課題という公募をしています。JAEAのところについては、JAEAの中で内部的な公募をきちっとやって、審査は外部委員を入れたことでやっているところであります。あとは登録機関のCROSSもそれに準じて合同で、きちっと外部委員の審査を受けている流れになっているということだけ紹介します。

 次のページ。以上が現状の共用の体制でありますが、最後に前回の指摘事項として3つほどここに書いてあります。JRR-3という原子炉を使った中性子施設がJAEAの中にあります。これとJ-PARCの中性子は距離的にも非常に近いし、コミュニティは同じであろうから、その辺の合理的な審査体系、一緒にしたような体系を模索すべしというものがありました。何回かそういう議論をして積み上げてきています。方向としては、できるだけそういうことが実現することを目指していく、そこは合意されているんですが、J-PARCはこれでやっと一人前になりつつあるところ、それから、原子炉のほうもこれからどうするかという将来的なことも含めていろいろ課題がありますが、将来的には、ある時期にこの辺のことをちゃんとやっていこうという当事者同士の共通認識はある。あとは量子ビームのプラットフォーム構想等がありますので、こういうところできちっと議論していくんであろうということです。それから、最後の指摘は両機関の評価がそれぞれの共用の枠組みで違うんではないかということですが、これは、もう既にJAEAが共用促進法を導入したということで、ほとんどが幅広い成果創出のための共用というところに移りつつありますので、この辺はあまり差がなくなってきているということであります。以上です。

【福山主査】

 どうもありがとうございました。時間があまりございませんけれども、せっかくですからご意見。金谷さん、どうぞ。

【金谷委員】

 MFLが関係するので幾つか質問があるんですが、手短に一番重要と思われるものからちょっと質問させていただきます。課題審査体制に対してなんですが、今、池田さんの発表の最後のほうに図が出ていたと思うんですが、私個人としましてはCROSSの選定委員会、福山先生が主査を務められているところの委員として、それからMLFの施設利用委員会は委員長をやらせていただいていまして、分科会までは合同審査が実現しているんですが、独立性を保つという意味で制度的に難しいのかもしれませんが、CROSSの選定委員会とMFLの施設利用委員会、そこを合同開催ということは可能なんでしょうか。というのは、MLFの中にあります中性子のビームラインを見ましても、全く同じビームラインが2本、3本とあるわけじゃないので、MFL全体の動きを見ながらそれぞれの課題審査、例えば共用ビームラインなら共用ビームライン、KEKビームラインならビームラインの審査を行っていくほうがより効率的、成果の出る課題選定ができるんじゃないかというのが1つの意見です。それから、両方の委員会にともに出ていらっしゃる委員の方がいらっしゃると思うんですが、同じようなことを何度も聞かされるのは、時間的にも無駄な気がいつもしているので、制度的に可能ならば、ぜひそこのところを合同委員会にしていただきたいなというのが意見です。

【福山主査】

 それだけでいい。今の意見はどうでしょうか、簡単なことですから。簡単じゃないかな。要するに合同でやるという、そこに関してのご提案でした。茶色のところとグリーンのところですね。

【池田副センター長】

 そうです。あそこの午前午後と書いてあるところです。

【藤井センター長】

 CROSSの藤井ですが、下のところで合同で箱がひっついているところがありますが、あそこは合同でやっているけども、実際の審議は、茶色のところはCROSSの選定委員会のもとでやっていますので、共用のビームラインにかかわるところはこちらがやる。左のほうはそれ以外ということで、ビームラインを超えていろんな議論をやるので合同でやってきているのでうまくいっていると思っている。最後のところだけ午前と午後に分けてやっていたんですが、今、金谷委員がおっしゃるように全体の情報がないと共用のビームライン、特に5本だけを選定委員会の委員の方に審査してくださいというのは、ある意味で私も少し気が引けるところがあったんですが、最近は全体の情報がぜひ欲しいとおっしゃる方が多いので、対応している。ただし、議論は一緒にするけども、実際に審査にかかわるところは明確に分けて、委員は同じあれだけど、オブザーバーか、あるいはほんとうの委員か、そういうやり方を下のところで今やってきているので、もしやれるんであれば、そのほうが委員の方もハッピーだし、一番成果の出るような課題を選定するにはいいのかなと思うんですが、それは委員の方々とか、その辺のご意見が重要なので、私の言うことではない。

【福山主査】

 それは、それぞれの委員会、右側の委員会、左側の委員会、それぞれが現場で意見交換されて、今のような金谷提案に対してのご回答を検討いただくということでよろしいですかね。確かに非常にオーバーラップしたことを午前、午後にやっているという、ちょっともったいないところがあるかもしれません。

【永宮センター長】

 これは、量研室のご判断もあると思うんですけど、僕は基本的にはそれでいいと思うんです。合同でやってなるべく無駄を省く、それは重要なことだから、前向きに進めるべきだろうと思っています。

【山縣委員】

 永宮センター長が生物系の課題が1,000ぐらい増えるだろうというふうにおっしゃっていて、私もタンパク質科学関係を見ていると、やはり中性子なくして研究は進まないというのは、いろんなプロジェクトの中に中性子でもやるというふうなのが入っているので、それはそのとおりだと思っています。そのときに、今ちょっと見たら茨城県の専用装置が使えるのがあるんですけども、一般課題が20%しかないという現状ではとても1,000人が使うようにはならないというふうに思っています。あと、生物系で非常に大事なタンパク質というのは、1つだけのタンパク質じゃなくて、何個か複合体をつくって細胞の中で働くというのが今大事なので、そういうタンパク質は分子量も多くて、結晶になると格子が長くなるので、今の茨城県のビームラインで対応するのは少し難しいんではないかというふうに思っていますので、J-PARCがバイオロジーに対応するためにはもう一つのビームラインが必要じゃないかと思っております。

【永宮センター長】

 実は今回議論になりませんでしたが、新しいビームラインを何にするかというのは議論中でありまして、その1つに構造生物のタンパク質のためのビームラインを用意したいという意見があるんです。それ現在審議中ですが、これは、次回か次々回に出てくると思いますので、よろしくお願いいたします。

【西島委員】

 言っていいですか。私もそう思うんですけども、物質・生命科学実験といっても、やはり成果そのものも物質に関わる事項が多い、物質(材料)というのは結局、短いスパンで成果も出やすいし、はっきり言ってそこに置いておいても腐らないものですけども、タンパクの場合は取り扱いが難しく腐りやすいですし、それとライフサイエンス関係というのは長いスパンですが、だからこそ早い段階から基礎実験を開始しないといけないと思います。山縣先生がおっしゃるように、これ物質・生命実験としては、物質に偏り過ぎて、出口指向過ぎて、いわゆる国民が最先端を望んでいるような生命科学の部分が少し抜けているというのが印象にあるんで、ぜひ、その辺のところはご検討いただきたい。

 それから、もう一点、ミュオンのお話、なかなか聞く機会がなかったんですけども、ミュオンの場合は生命科学という視点で使われる可能性は今後あるんですか。

【J-PARCセンター(門野)】

 あります。ありますが、まだ基礎研究の段階ですので、今日は例を持ってきてないんですけど、既にそちらに座っていらっしゃる鳥養先生で幾つか試行錯誤的な研究は進んでいまして、そのうち紹介できる機会もあるかと思います。

【西島委員】

 今日じゃなくても、何かの機会に夢といっては失礼ですけども、かなう形での夢ですが、生命科学のほうに役立つような、例えばNMRみたいな、最初は分析だったんだけど、今や生命科学の重要なツールになっているんで、そういうものが必要だというような形を少し説いていただくと、業界としてもそちらのほうに関心がいきやすいというので、ぜひ、そういうのを1枚ぐらい次回にはお願いします。

【J-PARCセンター(門野)】

 わかりました。

【茨城県(林)】

 先ほどの山縣先生のご質問ですけど、私、茨城県の林ですけども、今、iBIX、まだ開発途上と私たちは考えています。検出器も二次元のタイプの検出器を開発してきまして、第3段階のものができ上がってきまして、性能的にかなりいいものができています。それを来年度、16台新しく入れますし、古い14台についても新しいものに改良していくということで、来年度中には30台入ります。今の14台の段階でも、200kWぐらいで、先ほどトランサイレチンのほうで86オングストロームというのがありましたけども、京大の茶竹先生たちがステロイド関係で55×55×200オングストロームを既に解析されています。今の段階でもそのような状態ですので、200 kW、あるいは300 kWになって検出器が30台そろってくると、もっと大きなものが測れるんだろうと思っていますので、私たちが今困っているのは大きな結晶ができない、大きいサンプルをなかなか持ってきてもらえないというので困っているんです。ですから、先生方でそういう結晶を持っていらっしゃるなら、どんどん使っていただきたいと思っています。特に6ページのところにJ-PARC枠20%と書いてありますけども、これは、これに限っていません。今、産業利用で結晶がなかなか大きくならないので使っていただいていませんので、もし学術界のほうで大きい結晶があるから使いたいということであれば、この20%の壁には私たちこだわりません。ぜひ使っていただきたいと思っていますので、ぜひiBIXを使っていただければというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

【福山主査】

 iBIX、かなりいろいろ具体的に動いていると。せっかくですから、この機会に、先ほどご説明があったアミロイド症のお話があって、水素結合のネットワークがpHで云々という4量体が単量体になる。確かに水の役割が見えてくる。このテーマは、PACを経て下から自然に出てきて、いいテーマだとして選ばれて実験された、そういうプロセスを経ているんですか。あるいはトップダウン的に、最初だからいいテーマを選ぶ、そういう努力されて、選ばれて出てきたもの。どっちでしょうか。

【茨城県(林)】

 PACです。20%を超えるときには、あくまで県の産業利用のJ-PARC枠の中に入り込みますので、そこは、申しわけありませんけども、県のコーディネータである私と大橋先生と森さんが一緒になって相談します。ただし、基本的に私たちは受け入れるつもりです。PACで審査していただいて、いいものと言われたら受け入れる。

【福山主査】

 この場合は、基本的に下から上がってきて、結果的にすばらしい成果になって、これほど立派な施設、ニュートロン、ミュオンすべて含めてなんですけど、J-PARCのこれだけほかに例のないマシンからは、ほかではないデータが絶対出てくる。そういういいテーマをピックアップするような場はつくられていますか。つまり、PACというのは、基本的にいつもボトムアップで下から出てくる。それは大事なんですけども、それと並行して、少し組織として、あるいはコミュニティとして、これは大事なテーマだからJ-PARCの威力を見せてやるべきじゃないか、そういうテーマ選択のプロセス、仕組みはどうなっていますか。新井さん。

【新井ディビジョン長】

 先ほど池田さんのほうから説明がありましたJAEAとKEKのプロジェクト枠ってありますよね。これは、どちらかといいますと、いわゆる一般公募で集めた一般課題、非常に広いものに対して、プロジェクト課題というのはピークを出そうというふうな考え方をもともとはしている。

【福山主査】

 それは右ですか。

【新井ディビジョン長】

 そうですね。しておりまして、そこには、もちろんJAEAの人だけではなくて、外部の外国の先生等々にも入っていただいて、大枠のテーマ設定はトップダウンで行いますけど、実際のどういう研究をこの枠の中でやるかというのは、ここに集まった研究者のボトムアップ型で行うような、そんなテーマ設定を一般課題では並行に進めております。

【福山主査】

 そこで活躍している方、同時に経験をいろいろお持ちの方、そういういいサイエンティストのフォーラム、場所はちゃんとつくられていますか、それが大事だと思うんですけども。それは、いろんな機会に、いろんな形で問題になっているんですけど、それがないとやっぱり長期的には戦略的な利用ができなくなると思うんですが、それは、きょう伺ったお話の範囲ではどこにも見えなかったんですよ。

【池田副センター長】

 今、後ろから2番目のやつで、先生が意識されている、そういうものには直接当たらないかもしれませんが、一応、そこの合同開催のところですか、あそこがそういう外部の、今、トップレベルの識者に集まっていただいて、トップダウン的なテーマを審査すると。概念的には、そういう場をあそこにつくってあります。

【福山主査】

 どこのところですか。

【藤井センター長】

 一番下のレベルの右から2番目のグリーンですね。

【池田副センター長】

 そうです。JAEA研究課題とCROSS研究課題、ここです。

【福山主査】

 そこで、いい提案をピックアップする。

【池田副センター長】

 それ、一般には公募していませんが、内側で、とにかくいいものを持ってこいということで。

【福山主査】

 そこがサイエンティストのコミュニティにとって開かれていないと、結局、また内向きになってしまうから。

【池田副センター長】

 そこは、課題として残っていることはわかっています。

【永宮センター長】

 やっぱり既存のコミュニティと違うコミュニティをこれから形成する努力をしないといけないですね。これがまだ未熟だというのは僕も認めます。

【福山主査】

 だけど、今、チャンスですね。

【永宮センター長】

 確かにチャンスだから、いろんな方を一遍呼び集めてコミュニティ形成をきちっとしていくべきですね。そうしないと、この分野はなかなか伸びていかないし、今、チャンスだと僕は思うんですよね。

【福山主査】

 そうですね。ぜひ、それはお願いしたいんですけど。さっき生物の話になっちゃって、その前に途中まで議論して、何だったけな。

【金谷委員】

 課題審査体制の合同開催の話。

【福山主査】

 そこに関して文科省のご意見を伺おうと思っていたんですけども、制度的に金谷さんの提案、この図ですね。もう一つ前か、これですね。上のところ、CROSSの選定委員会とMFLのほうの委員会、それを一緒に開いたほうが議論の中身の観点からも、時間をセーブする観点からもプラスだから検討できないか、そういうご提案でしたね。

【金谷委員】

 そうです。

【福山主査】

 それに関して文科省のほうで、行政のほうから制度的に何か問題ございますかね。ここは確かに仕組みの上で大事なところ。いかがでしょうか。

【原室長】

 選定委員会、CROSSの理事長の下についているほうのオレンジ色の選定委員会ですが、法律に基づく位置づけになっています。なので、そのさらに下の利用研究課題審査委員会でやっていただいているような、事実上、合同で開催するけれども、意思決定のメカニズムとしては形式的には分けた形にするといったようなやり方で、おそらく可能ではないかとは思いますが、ちょっと法令的な要件がありますので。

【福山主査】

 そうですね、法律を破るわけにいかないから。

【原室長】

 厳密に改めて確認したいとは思いますけれども、おっしゃっていただいたように、時間を効率的に使いながら、実質的な議論に時間を割いていただくというのは非常に重要なことだと思っています。

【福山主査】

 そうですね。確かに一緒に開いても、ちゃんと記録の上でそれぞれ任務を果たしたということがわかるような形になれば。これは、ぜひご検討いただきたいと思います。

 ちょっと時間をオーバーしましたけど、ほかにいかがでしょうか。金子さん。

【金子委員】

 では、ちょっと産業利用のほうの話をさせていただきたいと思うんですけれども、今回、新井先生の報告の中の25ページのところで産業利用が30%を超えているというのは、産業界にいる者もちょっとびっくりしたぐらいたくさん使われているなと思ったんですけれども、これの理由としては、以前からちょっと言わせていただいていたんですが、X線に関してはラボのX線装置があるのに対し、中性子に関しては小型の中性子というものがまだ出回っていないというのもありまして、とにかくまず見たいといったときに中性子の施設まで持っていかないと見られないということもあって、これだけ、それもリチウムにテーマが多いみたいですけれども、そういうものが多くなっているんだというふうに考えております。それは、ほんとうに初歩的な分析をしたいというところのニーズだと思うんですけれども、今後ますます。先ほど物質はほうっておいてもという話があったんですが、電池等に関しては反応性が結構高かったりということもありまして、やはり生もの的ところもあって、できればインサイチューでとりたいとか、そういう反応過程のところをとっていきたいということもあって、今、NEDOのほうのお金をとって先生方に装置をつくっていただいている形だと聞いておりますが、そういう中で、やはりほかのビームラインに対しても何かの中間評価での測定がしたいとか、そういうことがニーズとして出てくるというふうに考えておりまして、そういうものに対しての予算等々について、1台の装置を立ち上げるときはいっぱい書類を書くなりして、申請が通れば装置が入れられるんですが、そういうバージョンアップみたいなことがどこまでスムーズに予算がとってこれるのかなというところから考えると、産業利用でよく使われるビームライン等に関しては、それも成果専有で企業のお金が入ると。そういうお金をそういうところに使ってもらうということができないものだろうかというふうにも考えたりするんですけれども、そのあたりはいかがなんでしょうか。

【福山主査】

 これはどこかな、文科省かな、お金の。

【原室長】

 現状の仕組みを申し上げますと、成果非公開の形で利用いただいて使っていただいている分の、その入った利用料収入というのは、基本的には施設の運営に充てることになっています。そういうお金とかを使いながら新しいビームラインの建設をということについては、一部分できなくはないと思いますけども、ただ、実際の利用料収入の今の状況から見ると、新しいビームラインをそれで1本建設するというのはおそらく難しい状況ではないかなと思いますけれど。

【鈴木KEK機構長】

 そういう小型のハイパワーのビームライナーの中性子源が欲しいというのはいろんなところから要求がありまして、今、KEKの先端加速器推進部門は、そういう需要に応えるようなもっと小型の、超伝導加速空洞を使った、連続ビームを使ったテーブルトップの加速器をつくろうと思ってやっています。特に今は、加速支援事業の我々の予算をもとにして、北大と一緒になって、特に医療用に中性子源を使おうとやっていまして、それは、これからニーズが多いと考えて、KEKの中で独自にやっております。そういうものが開発されれば、いろいろなところに使ってもらうことができます。

【新井ディビジョン長】

 一番最後に金子さんの言われた産業界からのお金の別の話なんですが、実験装置はできたけれども、今のようなインサイチューだとか、試料環境の設備がすごく重要ですよね。条件を変えながら、条件を最適化するということで、次々回あたりの委員会で、このあたりの要求の話をしたいなというふうに思っているんですよ。それでは、どういったものをインサイチューの設備では必要なのか。高温の設備とか低温の設備、今後、皆さんと議論しながら具体的なことは決めていきたいと思っています。

【茨城県(林)】

 茨城県の林ですが、今言われたようなことがあって、いろんな周辺環境装置は整備している。低温であったり、高温であったり、それから高温でも水素研究、それから磁場をかけるとか、そういったものは文科省から私どもお金をいただいて進めています。さらにインサイチューも既にある程度実験はもう進めています。私ども、これまで文科省からお金いただいていたものは今年度で一たん切れますので、来年度以降また、そういうところで予算をとって周辺環境を整備していきたいと思っていますので、それについては逆に私たち、文科省に来年度以降も。そういう周辺装置の整備、さらにソフトウェアなんかもそうですけど、もっともっと改良していかないといけませんので、そういったところで、ユーザーの方ともいろいろ相談しながら高度化、改良を図っていきたいと思っていますので、ぜひ文科省に予算をつけていただきたいですし、ユーザーの方には、こんなことをやりたいというニーズをどんどん言っていただければというふうに思っていますので、よろしくお願いします。

【福山主査】

 確かに研究装置の高度化に関していろいろご意見、うまく集約してまとまって、きちっとシステマチックに行政のほうにもアピールできる、そういうプロセスがあるといいですね。ばらばらに言ってもなかなか迫力がないので、ぜひ、そういう道筋をつくることも当該コミュニティで工夫していただく必要があるかと思います。

 私の不手際で大分オーバーしちゃっているんですけど、最後1つだけ質問。どうぞ。

【鳥養委員】

 すいません、先ほど皆様からミュオンの生命科学への応用についてのご質問をいただきましたので、一言コメントさせて頂きます。超低速ミュオン顕微鏡開発の大きな目的の1つは、生命科学への展開にあります。今まで500ミリグラムの試料が必要だったミュオン実験をマイクログラム、またはナノグラムで実現できるようにする。これが私の非常に強い希望で、必ず生命科学の発展に役立つ量子ビーム開発を実現させますので、ご期待いただきたいと思います。単なるコメントです。

【福山主査】

 どうもありがとうございました。

 今日もいろいろなテーマに関してご議論いただきました。まだ決して十分とは思いませんけど、時間でございますので。きょうご議論いただいたことで、さらにご質問ございました場合、事務局へご遠慮なくお出しいただければ、事務局のほうを通じて論点、質問、また整理させていただきたいと思います。

 これで本日の議論は終わらせていただきたいと思います。次回の予定と連絡事項について、これは事務局のほうからよろしくお願いします。

【阿部補佐】

 次回につきましては、既にご連絡させていただいておりますけれども、4月24日火曜日、午前10時から12時。会場は今回と異なりまして、3階の特別会議室というところを予定しておりますのでよろしくお願いいたします。

 それから、本日も資料が多いですので、お手元の封筒に入れていただきまして、お名前をどこかに書いていただければ後日郵送させていただきますので、そのようによろしくお願いいたします。

【福山主査】

 どうもありがとうございました。これで会議を終わります。長時間、ご協力ありがとうございました。

 

お問合せ先

研究振興局基盤研究課量子放射線研究推進室

季武(すえたけ)
電話番号:03-5253-4111(内線4336)

(研究振興局基盤研究課量子放射線研究推進室)