研究開発プラットフォーム委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成23年10月14日(金曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 平成24年度文部科学省概算要求について
  2. 研究基盤政策の推進方策等について
  3. 先端計測分析技術・機器開発小委員会中間報告について
  4. その他

4.出席者

委員

二瓶主査、宇川委員、瀧澤委員、長野委員、西島委員、野田委員、福嶋委員、緑川委員、吉澤委員、若槻委員

文部科学省

倉持研究振興局長、戸渡大臣官房審議官、柿田基盤研究課長、岩本情報課長、原基盤研究課量子放射線研究推進室長、釜井ライフサイエンス課課長補佐、竹上基盤研究課課長補佐

オブザーバー

金子独立行政法人科学技術振興機構研究開発戦略センターフェロー

5.議事録

【二瓶主査】  定刻となりましたので、研究開発プラットフォーム委員会の第3回を始めます。議事次第にございますとおり、3つの議題を準備しております。第1が「平成24年度文部科学省概算要求について」。第2が「研究基盤政策の推進方策等について」。第3が「先端計測分析技術・機器開発小委員会中間報告について」でございます。

 それでは、議事に入る前に、配付資料の確認等をお願い申し上げます。

【竹上基盤研究課課長補佐】  本日は、長我部委員、伊丹委員がご欠席となっております。その他の委員の皆様にはご出席いただいております。また、議題2におきまして、海外での研究基盤政策の事例をご説明いただきます、JST研究開発戦略センターの金子フェローにもご出席いただいております。

 続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。まず、第3回プラットフォーム委員会の議事次第。続いて、配付資料1が前回第2回の議事録(案)。資料2が「平成24年度文部科学省概算要求について(研究基盤関連)」の冊子。資料3-1が「研究基盤政策の今後の推進方策について(案)」、これが本日メイン議題の資料になります。資料3-2、こちらはJSTの金子フェローからご説明いただきます、「先端研究基盤を巡る米欧での注目動向」。資料4が「先端計測分析技術・機器開発プログラムの改善と新たな推進方策について(中間報告)」でございます。

 引き続き、参考資料1が「平成24年度文部科学省概算要求について」。これはホームページ等でも公表している資料でございます。参考資料2が「平成24年度概算要求の概要 科学技術による震災からの復興と将来にわたる持続的な成長の実現」。参考資料3、こちらは内閣府ホームページ等でもアップされておりますが、「平成24年度科学技術関係予算の重点化について」。参考資料4が「第4期科学技術基本計画」。参考資料5が「平成24年度科学技術重要施策アクションプラン」。参考資料6が「先端研究施設・設備の現状について」。こちらは第1回、第2回の委員会でも資料としてお配りしたものをアップデートしたものでございます。また、参考資料7が「東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の検討の視点」。参考資料8が「研究計画・評価分科会各委員会における推進方策」。様々な分野の推進方策を取りまとめていただいておりますので、用意しております。また、参考資料9が「研究計画・評価分科会における審議事項について」。参考資料10が「基本計画推進委員会における主な審議事項について」でございます。以上ですが、欠落等はございませんでしょうか。

 なお、資料1の第2回議事録(案)につきましては、後ほど事務局より、第2回の出席委員の皆様に、メールにてご確認をお願いする予定です。よろしくお願いいたします。

【二瓶主査】  ありがとうございました。それでは、資料をご確認いただいたところで、議事に入りたいと思います。議題1は、「平成24年度文部科学省概算要求について」でございます。9月30日に、平成24年度概算要求が財務省に提出されました。その中から、本委員会に関連する国際水準の研究環境及び基盤の充実・強化の部分を中心に、事務局より簡単にご報告をお願いいたします。

【竹上基盤研究課課長補佐】  資料2「平成24年度文部科学省概算要求について」と、参考資料1から3までをご用意ください。

 まず、文部科学省全体の平成24年度概算要求の状況について説明したいと思います。参考資料1でございますが、9月30日に財務省への概算要求を行っておりまして、文科省といたしましては、復興予算を除いて、前年比2.9%増の5兆7,037億円を要求しているところです。24年度の概算要求組みかえ基準におきまして、義務的経費を除く政策的経費について、一律10%減が求められておりまして、文科省では前年比3,240億円の削減を求められており、一方でその1.5倍まで「日本再生重点化措置」として要望可能ということで、文科省全体といたしましては、この「日本再生重点化措置」として、4,860億円の要望を行っており、対前年度2.9%増の要求となっております。

 なお、政府全体でこの重点化措置枠には2兆円程度の要望がありまして、ここから7,000億円程度が措置されますが、今後、財政当局との折衝を行っていくことになろうかと思います。また、復旧・復興対策経費に関しましては、復興基本方針に基づきまして、必要額5,684億円を別途要求しているところでございます。

 続きまして、参考資料2、科学技術予算の全体像について説明いたします。概算要求の概要という資料の2ページですが、科学技術関係予算に関しましては、復興枠、「日本再生重点化措置」枠に関しまして、先ほど説明した内容と同様の考え方のもと、こちらは前年比5.8%増の1兆1,298億円を要求しているところです。うち、1,596億円が重点化措置枠、また復旧・復興対策として2,331億円を要求している状況です。主な増額要因としましては、原子力災害からの復興としてのモニタリングの強化、人類のフロンティア開拓として宇宙・海洋における研究開発の加速、第4期科学技術基本計画の柱として掲げられました、グリーンイノベーションやライフイノベーションの推進のための各種プロジェクトの開始、この委員会と最も関係が深いところでございますが、科学技術基盤の強化、グローバル人材育成のための施策の充実といったものが、挙げられるところでございます。引き続きいろいろ資料等が添付されておりますが、説明は割愛させていただきます。

 続きまして、資料2を説明いたします。

 1ページ目でございますが、ただ今説明しましたような全体状況の中で、我が国の研究環境・研究基盤を充実させるための取組を抜粋したものが、資料2でございます。国際水準の研究環境及び基盤の充実・強化ということで、平成24年度の要求額は、復興枠を含めまして、前年度比21%増の1,178億円。復興枠を除くと、前年比2.9%増の1,001億円を要求しているところでございます。うち、148億円が日本再生重点化措置という状況です。

 主な施策としましては、まず、共用法の対象となっているような、世界に誇る最先端の大型研究施設の整備、共用の推進のための各種取組でございます。最先端大型量子ビーム施設の整備・共用のための経費については、特に今年度、SACLA、J-PARCといった施設の共用が開始されるということで、年間を通じた十分な運転経費の確保、また、J-PARCにおける新規ビームラインの整備、SACLAにおける先導的な利用研究開発の開始などを行うための予算を要求しております。SPring-8につきましては前年比5億円増の92億円、SACLAにつきましては21億円増の78億円、J-PARCにつきましては48億円増の217億円を要求しているところです。

 また、「京」を中核とするハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラの構築につきましては、平成24年11月に「京」の共用が開始されることを踏まえまして、その利用推進とハイパフォーマンス・コンピューティング技術の高度化などで、前年比5億円増の217億円を要求しているところです。

 次に、共用法の対象とはなっていないものの、我が国の重要な先端研究基盤を効果的に整備、活用するための諸施策でございます。

 まず、ナノテクノロジープラットフォームの構築として、これは平成23年度で終了するナノネットを進化させた事業ですが、全国のナノテク研究設備の高度化、共用を進めまして、産学官の研究開発活動を支えるプラットフォームを構築するための経費として、新たに36億円要求しているところです。その他、ナショナルバイオリソースプロジェクトにつきましては、バックアップ体制の強化などに1億円増の14億円、最先端研究開発戦略的強化費補助金につきましては99億円、先端研究施設共用促進事業につきましては15億円をそれぞれ要求しているところです。

 最後に、これらの施設整備の高度化などに寄与する共通基盤技術の開発を行うための取組でございます。先端計測分析技術・機器開発プログラム、これはJSTの事業でございますが、今回の震災を受けて、放射線計測技術等、ターゲット重視の枠を新たに設けまして、前年比33億円増の75億円を要求しております。その他、光量子科学や情報科学といった基盤技術の開発について、光は14億円、ITは11億円をそれぞれ要求しております。

 詳細につきましては2ページ以降15ページまで、共通基盤関連の施策、それぞれのポンチ絵がございますのでご覧いただくようお願いいたします。第4期科学技術基本計画においても共通基盤は重要とされており、このような取組を総合的に推進することで、基盤の充実を文科省としてしっかりと図っていく予定としております。資料2の説明は以上になります。

 最後に、参考資料3ですが、CSTPにおける予算の重点化方針について、昨年度まではSABCという重点化方法がとられておりましたが、今年度より、重点化方法に変更がありましたので、簡単に説明したいと思います。

 すでにご案内のとおり、重点課題として、グリーン、ライフ、復興、人材の4領域につきましては、アクションプランというものが策定されておりまして、資源配分を重点化することが決まっております。一方で、本委員会で扱っている研究基盤のように、アクションプランが定められていない領域もございます。そのような領域の施策を対象として、新たに施策パッケージという概念が導入されております。各省ごとに大きな達成目標に向かう施策をパッケージ化し、そのパッケージごとに優先度を判定するという方法に今年度より変わっております。文科省といたしましては、研究開発プラットフォーム委員会を新たに審議会として立ち上げ、研究基盤について一体的に議論をしておりますので、これらの研究基盤関連施策を1つのパッケージとしてとりまとめ、研究基盤政策の重要性をしっかりと世の中に打ち出していきたいと考えております。今後、ヒアリング等、対応を行っていく予定としております。

 予算の説明は以上でございます。

【二瓶主査】  ありがとうございました。議題2の説明を続けさせていただきます。「研究基盤政策の推進方策等について」のご説明をお願いいたします。

【竹上基盤研究課課長補佐】  資料3-1「研究基盤政策の今後の推進方策について(案)」でございます。

 まず1ページ目ですが、先ほど関連する研究基盤施策の概算要求状況について説明申し上げましたが、それを我が国としてどのように有機的に機能させて進めていくかという構想を示した俯瞰的なロードマップでございます。

 全体概念を、研究基盤の戦略的整備、共用という黄色い部分と、研究基盤技術の開発という緑の部分で分けております。まず、J-PARC、SPring-8、SACLA、そして「京」といった共用法の対象となるような最先端の大規模施設については、共用や高度化、利用研究をしっかりと進めることがまずは重要と考えております。新たな技術が次々と生み出され、最終的には世界的に卓越した計測解析基盤を実現するといったことが1つの目標になろうかと思います。

 次に、共用法の対象ではないものの、我が国として重要な施設・設備の整備・高度化、共用を図る取組について。先端研究施設共用促進事業につきましては、現在は、長期にわたって支援を継続していくという構想になっておりますが、24年度に多くの施設が中間評価の時期を迎えるということで、最先端研究開発戦略的強化費補助金が24年度で終期を迎えるというタイミングとも一致するため、このプラットフォーム委員会の審議のアウトプットを、25年度以降の新たな取組として提案してはどうかということで、ロードマップの中でも提示させていただいております。

 また、基盤強化が重要となる政策分野として、ナノとライフの2領域を例示させていただいておりますが、研究開発プラットフォーム全体として見た場合、サブプラットフォーム的に、各領域において最適な施設、設備、技術等のネットワークが組まれることが重要と考えており、文科省では、これらの分野毎のプラットフォームを構築するための取組を現在も進めているところです。

 これら3つの大きな柱の取組を俯瞰的に推進することで、研究開発プラットフォームの構築、政策サイドから見ると、先端研究施設・設備の最適かつ効率的な整備を可能が可能となるシステム、利用者サイドから見ると、施設・設備の効果的利用が可能となるシステムの構築を行っていくことが、研究開発プラットフォームに課された大きな目標になろうかと思います。

 最後に、一番下のところですが、共通基盤技術の開発でございます。ナノテクや光量子技術、計算技術、数学等の共通的な基盤技術を高度化することにより、また更に、計測分析技術・機器を高度化することにより、その上にある施設・設備等の高度化にうまく繋げることが重要ではないかと考えております。そのような有機的つながりを形成するために、基盤技術の開発も、プラットフォーム委員会が扱う重要な取組であると考えております。

 今後の研究開発においては、ユーザーが複数の施設を最適に使うことができ、またユーザーニーズを新たに技術等の開発方針に生かしていくことが重要であり、その一方で、政府としては、最適な投資を行っていくためのプラットフォームを構築していくことが重要であります。そのような姿を示したものが、この俯瞰的な絵ということで、今回提示させていただいております。

 次に2ページ目ですが、このようなプラットフォームを構築できる機能を、我が国が現在有しているかというと、これまでは研究基盤を政策として一体的に取り扱ってきたことが無かったというのが実態です。本日は論点として、研究基盤政策を戦略的、効果的に推進するためのシステムを構築すべきではないかという問いかけをさせていただいております。

 以下の図は、事務局が想定する政策決定のためのPDCAサイクルの絵でございますが、まず1つ目、「調査・分析機能」でございますが、現状としては、体系的なものは存在しておりません。今後、政策ニーズ、各施設の整備の実態等を的確に把握することが必要であり、本機能を中核的に担う機関も必要ではないかと考えています。

 次に、「戦略立案機能」でございますが、現状は、基本的には科学技術の各分野において、その分野毎に、基盤の充実のあり方というものが検討されているところでございます。今後は、それらの政策分野別の戦略を踏まえた上で、調査・分析機能が提示するエビデンスに基づいた俯瞰的な全体戦略を立案することが重要ではないかと考えております。例えば、施設を超えた連携や、利用のコーディネート、情報発信の取組、共通の運用指針、整備すべき基盤の明確化、人材確保の取組などが必要な施策として挙げられます。

 最後に、「実施機能」でございますが、研究開発プラットフォームとして必要となる取組、具体的には、先ほどのロードマップにありました、俯瞰的に整備、共用、人材確保を進めていくような予算支援の取組や、プラットフォーム全体をコーディネートしていくための機能の構築が今後は必要であると考えております。例えば、情報発信や、アウトリーチを実施するような機能の構築です。また一方、予算だけではなく、システムとして、例えば資金の使い方の共通ルール化といったようなことを実行していく必要もあると考えております。この機能につきましては、国と取組実施機関とが適切な役割分担のもとで担うことが適当ではないかと提案させていただいております。

 この後、金子フェローより、諸外国の事例をプレゼンいただく予定になっておりますが、それと併せまして、本日、この研究基盤政策の推進方策をご議論いただければと考えております。

 最後に3ページ目でございます。参考といたしまして、当面の検討スケジュール予定です。本日の推進方策の議論を経まして、今後は個別の論点に絞りまして、利用者側から見た最適な利用システムとその波及方策、技術支援者等の充実・確保のための方策、共用、整備を戦略的に実施するための支援方策(予算、制度改革)のあり方というものを、大体月1回のペースでご議論いただきまして、委員会の一次報告として決定いただければと考えております。以上でございます。

【二瓶主査】  ありがとうございました。それでは、もう1点、引き続きまして、海外での研究基盤政策の推進事例として、今日お招き申し上げました金子フェローより、先端研究基盤を巡る米欧での注目動向についてご説明をお願いいたします。

【金子フェロー】  私どもはG-TeCという国際規格の枠組みで動向調査をした結果を踏まえて、今の視点で整理させていただきました。まず、先端研究基盤を巡る米欧での注目動向について、米国と英国と欧州に分けて報告したいと思います。

 資料1-1ですけれども、まず米国については、国立科学財団が、科学全般を対象とした基盤整備を行っている。それから、ライフサイエンスは国立衛生研究所、エネルギーについてはエネルギー省という構造ができています。

 科学全般について見ると、年間の投資額は17億ドル規模。これは2010年度の実績で報告が行われています。少し細かなご報告になりますけれども、この中に、コーネル大学やウィスコンシン大学の量子ビーム施設ですとか、フロリダ大学の高磁場施設が含まれております。枠組みとしては、施設建設を対象としたものです。それから、計画、設計、開発、運転、研究、非常に広い分野を対象とした資金、それから教育、人材という枠組みが行われておりまして、具体的にはMREFCのそれぞれの枠組みが設定されております。

 次に、ライフサイエンスですけれども、同じような構造で整理しますと、国立衛生研究所の国立研究資源センター(National Center for Research Resources)が中心的役割を担っておりまして、この分野では年間12億ドル規模の資金が投入されております。分野は大きく4つ、生物医療技術、比較医学、臨床研究、インフラ全般。インフラ全般については、小さな規模の研究機関や、予算規模が小さい州など、ターゲットを絞った枠組みになっております。例えば、生物医療技術の中を見てみますと、システム生物学、構造生物学、イメージング、インフォマティクス、光学レーザーなどの51の研究拠点も、この枠組みで支配されている構造がわかります。

 エネルギーについては、エネルギー省の基礎エネルギー科学局が中心になっておりまして、金額的には一番多い、年間22億ドル規模の投資が行われております。分野ごとに整理しますと、6つの領域がありまして、基礎エネルギー科学については、2010年度ベースで9億3,400万ドル、量子ビーム、ナノテク、電子顕微鏡、DOE所管のものはこの中に入っておりまして、この拠点への支援が行われております。同じ構造で、計算科学については、2億3,000万ドルの予算。先端計算科学、3施設への支援が行われております。生物研究、環境研究の枠組みは2億ドル弱。この中に、共同ゲノム研究所に加えて、環境分子科学研究所、これは米国だけではなくて、世界の中で、例えば土壌、地下水汚染に注目するトップクラスの研究拠点であると思いますけれども、こういったところが支援されています。以下、高エネルギー科学で3億2,800万ドル、原子核物理で3億3,100万ドル、核融合科学で2億2,300万ドルが2010年度の実績になっています。

 先ほどの議論の観点で、科学技術イノベーションとの関わりを考えてみますと、中でもエネルギー省のこの枠組みの中で占められている、先端研究基盤を活用したグリーンイノベーションが、本日の議論の参考事例になると思います。

 それについて具体の整理をしたものが次のページですけれども、アメリカは今、未来の安定したエネルギー保証という課題ですね。エネルギー面で、アメリカは自立する。それから、その方法は、環境持続性を持つ。グローバルでエネルギーマーケットが立ちますので、アメリカとしてはマーケットの中で権益をとるという目標を掲げて、それを解決するために、先端研究基盤を活用したグリーンイノベーションが進められています。

 具体的に何をしているかというのは大きく2つありまして、1つは制御科学という新しい学問領域を立ち上げている。そのために、5つの科学原理を構築しようとしています。制御科学は、本日、詳細は報告しませんけれども、エネルギー現象を徹底的に明らかにする観察科学と、エネルギー現象を自らつくり出すナノ科学、そしてこの2つを結びつける計算科学を融合しようということで、具体の動きが進んでおります。

 今申し上げたような考え方というのは、米国自身は2001年から10年ぐらいをかけて、ビジョンと戦略をまとめておりまして、そのために、振り返ってみますと、研究サイドと政策サイドの双方から、1,600名の有識者が集まった検討の場ができているということであります。その結果が、この下に書きました2003年2月発表の、「未来の安定したエネルギー保証を実現するための基礎研究」という報告書から始まり、直近は昨年出ました「基礎研究と産業を結びつけるためのエネルギー科学」という14の提言書にまとめられていまして、この中に、「米国が掲げるエネルギー研究のビジョン」や、「制御科学や5つの科学原理の戦略的位置付け」、中でも「先端研究基盤の重要性」が示されているということになります。

 具体的な仕組みが動いておりまして、次のページですけれども、3つの研究イニシアチブなどが導入されました。ここに書きましたエネルギーフロンティア研究センターは、基礎研究を徹底的に実施する拠点ですし、エネルギー高等研究計画局は応用、ハブというのは、基礎から応用まで一体してやろうという仕組みです。

 以上の取り組みは、本日の議論である先端研究基盤の整備、運営ということで少し単純化して見ますと、3つ緑の三角の整理ができると思います。1つは、未来の安定したエネルギー保証という社会課題を掲げたことです。その次に、課題解決に必要なエネルギー研究のビジョンと戦略を出しました。そのために、研究サイド、政策サイドが集まって、1,600名の検討の場ができました。結果が14の提言書というエビデンスになり、その中で先端研究基盤の重要性が明示されているということであります。

 直接は関係ないとは言いつつも、後ほど報告する欧米の動きのロードマップも展開されておりまして、それが一番下に書いたものでございます。少し複雑な構造がありますので、ポンチ絵としたものがその下にありまして、一番左のほうにビジョン&戦略。説明はしておりませんけれども、具体的に10の重点領域に取り組もうというのが左の上です。そのために5つの科学原理。例えば、一番下に書きましたが、関係事象を非平衡化で徹底的に観察するようになろうといった目標を掲げております。そのために、ナノ科学と計算科学と観察科学を融合する。そして、制御科学をつくる。そのための仕組みが3つのイニシアチブであり、それを実現すると、右に書きました、社会課題が解決されるという全体像を示しております。

 もう1つの視点であります、先端研究基盤の活用ということでご報告できることがありましたので、4のところに書いてあります。今のような動きの中で、先端研究基盤が重要だということは、絵にかいた餅ではなく、先端研究基盤が求心力になってネットワークができているというエビデンスを2つ示しました。

 1つは、エネルギー省の提言書の中で、先端研究基盤の重要性が示されましたので、そのための研究、ファンディングが行われて、研究提案がされるときに、例えば、エネルギーフロンティア研究センターのケースでは、2009年に46センターが採択されました。そのうちの半数以上が計画段階で、先端研究基盤をこういった目的で活用するということを示しています。その後、2年経ったわけですけれども、今年の3月に現場に入ったときの話ですが、国立加速器研究所のケースでは、計画段階では2つのセンターがSLACの研究基盤を使うと言っていたのですが、その後2年経ち、9拠点にまで増えたと。詳細は説明しませんが、スタンフォード大学のエネルギー用のナノスケール材料や、真ん中あたりにあります国立再生可能エネルギー研究所は、エネルギー材料を設計する逆問題を解く。それから、一番下は蓄電池です。この9の拠点が、SLACの先端研究基盤を今使っているという状況になっております。

 時間の関係でポイントのみ説明させていただきますけれども、イギリスはどうかと5番に書きました。今申し上げたアメリカと同じような形でイギリスの状況の整理をすると、イギリスの場合には、英国研究会議が主体とする活動が展開されています。予算枠としては、研究会議が所掌している研究活動費がありまして、ここで施設の運転や、国際連携の資金が出されていますが、ご報告したいのは、その他に大型施設投資基金(Large Facilities Capital Fund)といったものが導入されました。これはどういったものかといいますと、2,500万ポンド以上の投資が必要な研究基盤、それから、それぞれの研究会議の年間予算の10%を超えるような相対的に大きな研究基盤を、この枠組みで支援しようということであります。年間標準額として1億ポンドという枠が設定されておりまして、下に書いたような目的に供給されていると。

 仕組みとしてのポイントで特に申し上げたいのは、その下の2つですけれども、そのために英国研究会議が、英国としての研究基盤の優先順位を政府に助言しているということがこの事例です。具体的に何かというと、ここではアメリカよりもロードマップが前面に出てくるのですが、ファンディング対象となる研究基盤は、原則ですが、英国研究会議が提示した現行のロードマップに含まれることを要件としています。実際にロードマップは2001年から始まり、数年単位で刷新されていまして、一番新しいのは2010年度のものですが、こちらの中には、稼働中、それから、改良する、新規につくるという53の研究基盤が取り上げられておりまして、下に書きました赤い三角のような視点で選ばれているということでございます。

 次のページも同じ観点で、委員会での検討の視点に立って簡単化してみました。イギリスの場合には、先端研究基盤の整備・運営について3つ申し上げられると思います。1点目は、ロードマップの形で重要な研究基盤を抽出していると。結果として、優先度が提示されています。2点目は、その役割を英国研究会議といったところが果たしているということです。その上で策定したロードマップに基づき、研究基盤への支援を展開しているということで、やはり米国とは違った特徴のある取り組みが見てとれます。

 最後に、では欧州はどうかということですけれども、それを6番に書きました。欧州では、各国による動きを踏まえて、欧州全体としての基盤整備が行われておりまして、直近のものでは、第7次枠組み計画で18億5,000万ユーロ超という予算が組まれました。これで何をしようとしているかということですけれども、2つありまして、1つは、現行の先端研究基盤を徹底的に有効活用しよう。もう1つは、研究コミュニティが求める新しい基盤を整備する。この2つであります。

 1番目の研究基盤の有効活用については幾つかありますけれども、最も強調されているのはネットワーク。つまり、欧州各国の先端研究基盤をネットワークした、一体活用体制を構築、拡大していくということで、一番下に書きました、物理学&天文学からライフサイエンスに至る、ここに書いたようなプロジェクトが実際にもう動いています。欧州全体として資金援助をしています。この支援額は、かかった費用の一部ですけれども、地域全体で支援しているということになります。

 では、具体的にどのようなものが動いているのかというのがその次のところですけれども、全部ではなく一部ですが、エネルギー・工学関係では、例えば、分散型エネルギー源の研究基盤をネットワーク化しようということから始まり、2番目のものは、洋上風力などに注目して、欧州全体の研究基盤をネットワーク化しようと。下の集光型太陽エネルギーは、これだけではないですが、太陽熱発電ということで、特徴のある展開が抽出できます。ライフサイエンス分野の中で幾つか出しますと、構造生物学のNMRをネットワークしようとかいうようなことが動いております。

 もう1つ、先端研究基盤の整備についてですが、6-3に書きましたが、ここでもロードマップが大きな役割を果たしています。具体的には、欧州研究基盤戦略フォーラムが主体となって、欧州全体としての基盤整備のロードマップができています。欧州研究基盤戦略フォーラムは2002年に欧州全体でつくった組織で、各国ではなくて、欧州全体としての研究基盤のビジョンと戦略をつくるのだと。具体的にロードマップをつくっているわけです。赤い三角がミッションとしてかけられたタスクになります。

 次のページですが、ロードマップについては、2006年、2008年、2010年に提示されておりまして、これも最新のロードマップを見てみますと、物理&工学、材料&分析、エネルギー、環境、生物&医療、社会&人文の6分野に分けて、48の研究基盤ができてきています。この中で、第7次研究枠組み計画の予算から準備段階に入ったものについては、実態として資金援助が行われています。まとめると、緑色になるんですけれども、欧州全体としては、研究基盤の活用と新規基盤の整備という2つのターゲットがあり、現行基盤については、ネットワークをつくり一体的活用をしようとしています。それから、新規基盤については、欧州全体のロードマップをつくり、研究基盤で重要なものを抽出して、その結果に基づいて全体的な支援を展開しています。その主体となっているのが、欧州研究基盤戦略フォーラムということであります。今申し上げた内容を、まとめとして7番にまとめました。概要は以上です。

【二瓶主査】  ありがとうございました。以上、3つの資料をまず一括してご説明いただきました。それぞれどの項目でも結構でございます。1時間程度の時間をとってございますので、ご質問、ご意見承りまして、ご審議をいただきたいと思います。どうぞ。

【西島委員】  先ほどの欧米の報告を聞きますとと、我が国はちょうど第4期科学技術基本計画が動き始めたということですから、先ほど参考資料3にあった、例えばアクションプランと重点施策パッケージの、上位概念はどちらかというと、私の知っている限りでは、アクションプランが上位であって、それに取り込まれなかったものについては、省が個々に出すのではなくて、重点施策というものをパッケージとして出すという形になっていると思うので、この辺を生かした形での研究基盤施策を考えていかなければいけないのではないかと思います。

 ただ、少し気になるのは、最近2つ感じたのですが、1つは、これは当たり前なんですけれども、やはり震災に伴う復興があるのですが、例えばその次の重点項目であるグリーンイノベーションとライフイノベーションといったときに、グリーンイノベーションというのは、恐らく震災に伴う原発の問題や、エネルギーの問題によって大きくシフトしますし、大きく注目される。例えば、電池の問題も、半導体の問題も。しかし、ライフイノベーションの、例えば医療技術や、薬の創薬に関しては、震災によって、大きくテーマが変わるかというと、10年、15年先の薬をやっていますから、もちろん薬の供給の問題もありますけれども、大きくテーマが変わるようなことはないということですから、そういった意味では、時間軸が少し違うということなので、技術ごとに重点分野ということと同時に、短期で勝負する分野と、長期スパンで勝負しなければいけない分野という時間軸というものを考えておかなければならないと思うのです。

 先ほどのアクションプランに採択されるとき、たまたま私もアクションプランに少し絡んだのですが、聞くところによると、このアクションプランの場は、やはりある程度国民に対して出口を説明できるようなものが採択された。例えば、医療分野であれば、がんや、認知症、糖尿病合併症に結びつくということが、ある程度筋だったものをアクションプランに取り上げたと考えるので、例えば、生命の根源に関わるような未知のものを決めたということは大変重要で、『サイエンス』、『ネイチャー』の表紙を飾るかもしれないのだが、少なくともそれが薬に結びつくということは、そう簡単には考えられない。科学者は作文しますけれども。本当はそのようなことはすぐにできるわけではないので。しかし、そういったテーマは大変重要であります。

 これをごっちゃにしてはいけないということで、特に我が国が持っているような最先端基盤というものは、実は両方に関わってきますので、これを混同しますと、科学者はまごつくかなということですので、基本としては、アクションプランと重点施策を中心に、我が国も考えていく必要があるでしょうし、同時に、時間軸というものを入れて審議するのが、これから重要であると考えます。

【二瓶主査】  今のご質問の冒頭にありました、アクションプランと重点施策の順位付け、あるいは、物の考え方としてどのように考えればいいのか。その辺りはいかがでしょうか。

【柿田基盤研究課長】  基盤研究課長の柿田でございます。先ほど補佐から説明いたしました参考資料3をもとに、今、総合科学技術会議が進めていることについて、改めてご紹介したいと思います。参考資料3の9ページに、平成24年度科学技術関係予算の重点化についての説明がございます。一方、第4期科学技術基本計画の中には、取り組むべき多くの重要課題が掲げられるとともに、アクションプランは重要課題に関する施策を総合的に推進するために定めるものとされております。また、言うまでもなく総合科学技術会議は、科学技術基本計画全体の推進責任を担います。

 しかし、アクションプランは、科学技術関係予算の重点化の方策として実施されております。9ページの1の黄色いところですけれども、アクションプラン対象施策への予算の重点化、絞り込みを図ると。この対象として、復興、再生並びに災害からの安全性向上。これは大震災への対応です。また、グリーンイノベーション、ライフイノベーション並びに基礎研究及び人材育成という、全部で4つの柱が対象とされました。

 この同じ資料の13ページをご覧いただきますと、科学技術基本計画の項目が書いてありますが、これら4つにとどまらず、様々な重要課題が掲げられております。

 アクションプランは、私は本来的には、科学技術基本計画を推進するための、まさに具体的方策のはずですので、その対象は、基本計画に掲げられた重要課題に対応するのが当然であると思っているのですけれども、総合科学技術会議はごく一部のものだけを取り出したということです。さすがにこのままでは基本計画の推進方策として不十分ということでしょうか、これを補完するような形で、9ページの2の施策パッケージという概念を持ち出したというように受けとめております。すなわち、アクションプランの対象とされた施策以外のもので、各省がこれは重要だと思う施策複数をパッケージ化して提案するようにと。その上で、総合科学技術会議が重点化の対象の是非を判断するということになっているわけです。

 このように、両者は施策の重点化を図る、つまり、重点的に取り組むものを絞り込むという点では基本的には同じですので、アクションプランと施策パッケージとわざわざ切り分ける意味は殆どないと思われます。むしろ、基本計画の趣旨に照らせば、基本計画に掲げられた重要課題をもれなく実行するための総合的なアクションプランをきちんと作ることが求められているはずです。施策の絞り込みをやるのが目的化しているのが残念な点です。基本計画の部分的な推進ではなく、総合的な推進に向けた方策が不可欠であると思います。そうでなければ、基本計画全体の実行には25兆円が必要であるという決定は意味をなさなくなると思います。

【二瓶主査】  ありがとうございました。西島委員、いかがですか。

【西島委員】  そうですね。そのとおりだと思います。ただ、すべてはできないので、優先順位をつけなければいけないということと、それから、これも私の個人的な意見ですけれども、やはり震災のことはとても大きくて、例えば、先ほど欧米のいろいろな重点項目はありますけれども、大体欧米がやっているから日本もやろうといっても、なかなかアメリカには勝てませんし、欧州とは違って島国日本としては特徴を出すということで、是非論はあるかもしれませんけれども、震災に伴うようなエネルギーの問題や、放射能の問題、その中でアクションプランや重要施策に絡んできたものを、例えばそれに関わるようなテーマなり課題を、優先的に大型機器を使って解決していくということは、ある意味では国民の理解も得やすいですし、それから、世界への貢献も高いと思うのです。

 要するに、こういったものは検証がなければいけないので、これだけどんと事故が起きて、どんと対応が遅れて、どうしているのだという、こういった諸外国がなかなか経験しなかったことですから、これを逆手にとり、日本でこれから解決策のような必要なエネルギーの問題について、例えば量子ビームを使っていくなど、そういったものを優先課題として持っていく。

 その結果については、当然欧米からは出てこないデータですし、ある意味では生データです。ライフサイエンスで言えば、子どものゲノムコホート研究、放射能の影響ですね。しかし、そういった言葉をうまく使わないと、誤解されることを心配しますけれども、現状の問題として、そういった状況下にあるもののグリーンイノベーション、ライフイノベーションを中心に持ってきたということになれば、ある意味では欧米との差別化になるだろうし、全世界の興味も高く、国民の理解も得やすい。それから、そういう部分については、当然最先端研究が必須になってくるだろうというのが、1つの考え方かという印象を持っております。

【二瓶主査】  ありがとうございます。他にいかがでしょうか。

【野田委員】  金子さんのご説明、非常に興味深かったのは、実はDOEのSLACの施設と、例えば、EFRCですか、エネルギーフロンティアセンターなど、そういった研究プロジェクトとの関係がどうなったのかと。これは非常にわかりやすかったですが、2つ質問がありまして、1つは、DOE自身がこういった大型施設を、そういった研究プロジェクトの基盤として使うような仕組みを考えているのかどうかということと、それから、FP7のヨーロッパの話がございましたけれども、ヨーロッパにも非常に大型施設としてESRFや強磁場、それから、中性子のものなどいろいろありますね。それとこのFP7のプロジェクト、10個程出ていましたけれども、その辺の関係というのは何かあるのでしょうか。

【金子フェロー】  まず、最初の方の先端研究基盤とグリーンイノベーションを結びつけた流れで、本日報告していない以外のDOEの動きは、制御科学という新しい学問でコントロールサイエンスを振興しようとしたときに、コントロールサイエンスには先端基盤が必要なのだという提言は、別の流れでやっているのです。ですから、それぞれのプロジェクトのファンディングプロポーザルとは独立して、アメリカのかなりの研究コミュニティの人がコントロールサイエンス、それから、量子ビームやナノ施設の重要性というのを別途に認識していたというのが事実としてあると思います。

 それから、ヨーロッパの方で、量子ビームや大型施設がどう重なっているかということですけれども、もともと重要な大型施設があったので、それに対する欧州全体の動きは進んでいましたが、それとあわせて、その先端基盤を欧州全体で使おうというのが、本日の報告書の中にも少し入ってきていまして、動こうとしています。まだ具体的なエビデンスがなかったので報告からは外しましたけれども、例えば、欧州全域でそういったものをうまく使うような仕組みができたときに、付加価値税を免除するような、促進する仕組みがないだろうかなど、いろいろな新しい取り組みが出てきています。ですから、大事な施設は大事な施設でやっていますが、それに加えて欧州全体で活用しようというのが、しばらく見ていると具体例が出てくるように思っています。

【二瓶主査】  どうぞ。

【若槻委員】  今、最後の点ですけれども、私自身ESRFに長くいたので、そのときのことを思い出して、その後いろいろ付き合いで聞いている話を聞くと、やはりFP7が直接そのまま大型施設に、これはESRF分とか、ENS分とかというようにはいかないのですね。どうしてもそこにいる施設の人たちがFP7に働きかけて、とっていくことをしないといけないのですが、それはむしろかゆいところに手が届かないという感じが今でもしています。それが1つです。コメントですけれども。

 今の海外の動向について質問ですが、例えば、DOE、NIHの先端基盤のところだけを取り出して金額が書いてあると思ってよろしいですよね。

【金子フェロー】  はい。

【若槻委員】  それと、先ほど最初にご説明がありました文部科学省の1,180億円ぐらいというのを比べると、大体人口比ぐらいなのかどうかという質問です。それから、例えばNIHなんかの場合、2ページ目に書いてあって、12億ドルがライフサイエンス部門として書いてありますが、1.2とか1.4Bダラーだと思うのですが、実際にはそれの多分20倍程のお金が、NIH全体の予算ですよね。そういったことを考えますと、日本全体で科学技術の研究費が幾らぐらいで、そのうち先端基盤に当たるのがどのぐらいなのかというのを、非常に簡単に割合がわかると、全体の研究に対して、基盤というのがどのぐらいの役割を担っているかというのがわかるような気がします。そんな単純な話ではないかもしれないですが、そういった指標で出していただけると、もう少しわかりやすいというか、そういう指標をぜひお聞きしたいということです。

 それから、ヨーロッパに関しては、英国の例が書いてあって、EUのことが書いてありますが、やはりイギリスの研究者からすると、英国でリサーチカウンシルから来るお金と、先ほどのFP7みたいなところから来るお金と、皆さんあわせて使っていますよね。これも全体としてどのぐらいなのかということを教えていただけると、そのうちEUの全体を横に広げて出しているものが幾らぐらいかなというのがわかるのかなと思うのですけれども、そういった見方というのは、さっとお答えしていただけますかね。

【金子フェロー】  日本と、それから欧米がどうかという具体の数字の比較をできるレベルのデータには、まだなっていません。このデータは何かというと、間違いなく米国が、それぞれの分野で研究基盤として投じたお金を、我々なりに抽出した。それは間違いありません。何が違うかというと、今仰ったように、他の大学予算の中に、部分的にそういったものが含まれているというのは特定できないのですね。ですから、エビデンスとしてきちんと特定できるものを出していると。私も、日本中全部見ているわけではありませんけれども、日本の中でもそういった構造があるので、それを1つずつチェックしないと、日本が多い、欧米が多いということは言えないのではないかと思います。

 では、なぜこのようなことをしたかというと、いずれにしても、研究基盤に対して支援の仕組みが相当の規模で動いていて、その規模を動かすために、アメリカとイギリスとヨーロッパを比較しただけでも、特徴のある体制があったということをお伝えしたかったので。その根拠はどこだと言われると、少なくとも今日報告した内容は、間違いなく数字で出せるということであります。ただ、指摘いただいた点というのは非常に重要な視点なので、我々としてもできるだけそういったデータをとろうとは努力しているのですが、仰るようになかなか難しいという状況であります。

【若槻委員】  データをとるのが難しいのは、私もよく理解していて、ひょっとしたら押さえられているかなと思ったのです。例えば、ライフサイエンスでいいますと、NIHの人と話をすると、私は構造生物が専門なのですが、構造生物で年間に例えば60億というのを出していますが、その10倍に当たるものが、いわゆる科研費に当たるような個々の研究に対して払っている。だから、大体1対10なのです。少なくとも10対1なのです。そういうことを考えたときに、日本で今、ここで先端基盤というものを議論したときに、全体の科学技術の予算がこのぐらいあって、そのうちの1割を使うのか、2割を使うのかというような押さえ方も、まず最初に結構大事なのではないかなと思いお聞きしているのですけれども。

【二瓶主査】  柿田課長、今のようなご質問が確かに出てきますね。要するに、研究基盤政策をどう構築していくかというのが、この委員会の議論のポイントですが、確かに諸外国の例を見ながら、1つは枠組みの問題がありますが、1つはウエートといいますか、国の力の入れ方のウエートを見ながら、将来の方向を判断していくという議論が当然起こりますけれども。どうしましょうか。これから少しそういう見方で、予算の面で数字が出せますかね。

【柿田基盤研究課長】  我が国における研究基盤への取り組みを、予算を一つの指標にして考えてみるということも必要かと思います。科学技術予算全体で毎年3.5兆円ぐらいの規模ですけれども、その中で、いわゆる研究開発のプラットフォームとしてどれぐらいの規模の投資をしているのかというデータも整理してみたいと思います。

【二瓶主査】  よろしくお願いします。

【竹上基盤研究課課長補佐】  若干補足いたしますと、先ほど資料2で、24年度の共通基盤の要求額が1,200億円程度、23年度の予算額では1,000億円程度、これは科振費1.1兆円ということでございますので、その中の約10分の1程度ということになります。この1,000億円に関しましては、どちらかと言うとトップダウン的に、イノベーションのために投資する基盤の整備ということで、この他大学等の施設整備等もあわせた金額が、文科省としての基盤に対する投資額ということになろうかと思います。

 この1,000億円に対して、そのうちの大体半分、500億円強ぐらいが、いわゆる光量子やナノといった、先ほどのプレゼンとの関係でいいますと基礎エネルギー科学といったところに当てはまるようなものです。情報関係は250億円ぐらいです。ここは、アメリカでは2億3,000万ドルとなっていますので、大体同じ程度かと。ライフのほうは、1,000億円という数字の外にも基盤関連の予算があり、完全にすべてを集計できていないような状況です。

 あと、大学の予算に関しまして、参考資料6ですが、先端研究施設・設備の現状についてという資料の中に、国立大学及び研究開発法人の運営費交付金及び施設整備費の推移というグラフがあります。これは21年度までの数字ですが、施設整備費については、この数年、独法のほうは微増という状況でございますが、国立大学法人の施設整備費は、運営費交付金とあわせまして、非常に減額しているという状況です。国立大学等への支援が減っている中で、戦略的に基盤を整備する予算を、今後どうしていくかというような議論を、是非行っていただければと考えております。以上です。

【二瓶主査】  ありがとうございました。他にはいかがでしょうか。どうぞ。

【緑川委員】  今日お話しいただいたのは、主にエネルギー省、それからNIFなどですが、アメリカでもう1つ科学技術政策で重要な役割というか、基盤を維持するのにどういう役割を果たしているのかを知りたいのに、DoDというところがございます。そこが我が国とかなり違うところだと思うのですが。例えば、その辺は、今、情報とか、高エネルギーの分野などに、例えばエネルギー省とあそこは同じ以上の予算を多分持っていると思うのですが、そういった基盤の維持に関しては、どのような役割をなさっているか、もしご存じでしたら。

【金子フェロー】  先ほどと同じ答えになってしまいますが、今回、軍事・防衛関係のところというのは、さっき言った文脈で数字には入れませんでしたが、実態としては、研究基盤の整備で、エネルギー関係の費用、それから、ライフサイエンスの分野も含めて投入されているのは仰るとおりだと思います。ただ、繰り返しですけれども、こういった文脈の中でエビデンスとしてどこまで加えていいかというところができていませんので、この場でどういった数字だということは申し上げられません。全体の予算額として、軍事・防衛というのは半分弱占めているわけですから、そういった意味では、この定義でまとめても、少なくともこの規模はあるという状況だと思います。

【二瓶主査】  どうぞ。

【福嶋委員】  全体の予算のイメージを十分私、持てないのですけれども、中性子産業利用推進協議会ができたときに、一番初めに委員の方から、今さら国が金を使って造ったから使えと言われても困ると、わからないといった意見が出る一方で、お国がこれだけ金をかけて造ったのだから、きっと役に立つでしょうから、使わなきゃ損ですねという意見があって、後者のほうが何となく理解できる意見として、今、全体に流れているのですけれども。

 先ほど、まずアメリカの例で、産業ではないでしょうけれども、提案のときに、大型施設を使うのを優先にするというような取り組みがありましたね。そういうものとして本当に使われていくと思うのですけれども、これはスタートとして、何か無理強いしたのか、自然にその方がいいよねと。まずは無理強いしてみて、結果がいいですかという。そろそろ結果が出るころだと思うのですが、やはり大型施設を使っていくことで、本当にいいイノベーションがあったという結論になるんでしょうけれども、今、どの辺のレベルなのでしょうかね。

【金子フェロー】  これも私たちがエビデンスを取得している内容までで申し上げますと、最初の質問は、プロポーザルの義務的な事項として提示されたわけではありません。ただ、私たちが求める提案というのはこういったものだという、前段に明記されていることがあったので、社会的課題に相応したいいプロポーザルを書きたいというインセンティブから、結果として半数以上の提案に入ったというのが1点です。

 それから、そういった仕組みを入れたときに、世の中がどう変わっていたかということで、少なくとも今の時点で変わっているのは、例えば、量子ビームの施設の予算構造を追ってみると、今日ここには入れませんでしたが、研究基盤の費用も増えているのですけれども、それを使った研究費が増えているという構造が出てきます。研究現場の人と話しても、量子ビームを使うときに、例えば最近、電池の研究が非常に増えているという内容は、研究基盤に出したお金だけではなくて、電池研究やグリーンイノベーションのお金が使われて、いわゆる国の共通基盤が使われているという二重構造が出てきています。

 本当はその結果として、こういういいものができたとか、産業ができたとか、社会ができたというところまで至ればいいと思いますけれども、それはまだ私たちも確認はできていないと。だから、ハブの動向がありますので、ああいったところを5年ぐらい追っていくと、何らかの形では出てくることではないかと期待しています。

【福嶋委員】  もう1つ、若槻先生が仰った、施設側からの働きかけというのがありましたけれども、産業利用協議会で出たのは、働きかけができ上がったときなので、何に使っていいかわからないという状況があって。要するに、今仰った欧米での働きかけというのは、具体的にかなり積極的に施設側からの働きかけというのは、どんな動きがあるのか。

 実は先日、SPring-8の文化財分析委員会に行ったときには、欧州の施設には、文化財専門の人員を配置して、そういうアウトリーチ活動に必要な分析もやっているというのを聞いて、そういった意味で働きかけを具体的にやっているなというイメージを持ったのですけれども。日本も含めて、あまりそれは十分やられていないような気がしますが、どのような動きが、働きかけとしてはあるのでしょうか。どちらでもいいのですけれども。

【金子フェロー】  1点だけ、資料3-2の4ページです。ここの中の提言書の一番新しいもので、基礎研究と産業を結びつけるためのエネルギー科学というのがあるのですけれども、これはいわゆる先端研究基盤を持っている側と、それから、産業界が集まってワークショップ等を開いて提言書をまとめています。テーマは何かというと、先端研究基盤をやっている人たちが取り組んでいる基礎研究の中で、産業界が求めているものと合っているものは何かというところをやっています。その項目としては、例えば、触媒などいろいろなものがありますが、その中で先端研究基盤の提言が出ていて、例えば、実使用環境でその場観察をするようなものが欲しいなどと出ているのですね。ですから、いろいろな形で直接のアピールと間接のアピールとあると思いますけれども、先端研究基盤がこういった形で役に立つということを提言としてまとめる中で、実態として社会が求める、産業界が求めるものが出てきているというところは、アメリカの1つの特徴なのかと思います。

【福嶋委員】  ありがとうございます。

【若槻委員】  まず、日本でそういうアプローチが足りないかというと、例えばSPring-8は随分されているのではないかと思うんですけれども。ソフトマターのビームラインを造ったのもいい例だと思うのですけれども、施設が中心に動いて、ネットワークができてつくられたとか。それはつくばの方でもいろいろな形でさせていただいています。

 ただ、全体の規模としてどのぐらいかということを考えますと、確かに少なくともヨーロッパに関しては、実は研究費があまり潤沢ではないので、むしろそういうふうにプロアクティブといいますか、外に出ていかないといけない。EUのお金を取りにいくというのはまさしくそういうことで、そのままESRF、もしくはEMBLみたいなところのお金だけでやっているのでは規模が足りない、アメリカとの競争にも勝てないと思うからされているのだと思います。

 先ほど、Cultural Heritageに関しては、歴史的に、やはりヨーロッパとアメリカの方が先に進んでいるというのがあったと思いますけれども、日本は博物館から物が出てこないというのが一番難しい問題です。具体的な問題としてはあると思いますが、もう少し大きなレベルでは、それぞれ苦労されていると思います。ただ、前回でしたか、FELのことで少し申し上げたことがあったのをもう一度だけ申し上げますと、例えば、DESYのハンブルクの例では、ヨーロッパのいろいろなところにDESYのほうから働きかけて、それから、地元の大学にも働きかけて、例えば、ハンブルク大学の物理学科がそのままキャンパスごと――キャンパスというか、ハンブルクの施設の方に移るなど。バイオロジーでいうと、周りの6つか7つの大学がまとまって、そこに1つ研究所をつくるなど、そういったことを積極的に呼び込んでいくということはしていると思います。それができるような、やりやすくなるような措置はそれぞれ工夫をされていると思います。それはスタンフォードも同じくされていると思います。

【福嶋委員】  ありがとうございました。

【二瓶主査】  他にはいかがでしょうか。

【緑川委員】  では、もう一度お願いして。10ページの英国研究会議が6つの軸を設定しているという中で、高度にネットワークされた経済(Digital Economy)という、これだけがちょっと科学技術分野とどのように関わる話なのかというのをご説明いただけますでしょうか。

【金子フェロー】  このレベルのものしか我々は把握していないので、例えば、高度にネットワークされた経済が、実際に研究基盤を評価するときの中項目、小項目がどうかというのがわかっていないませんが、この6つのコンセプトはどういう形で出たかというと、英国研究会議が研究基盤を選ぶに当たって、研究基盤が最終的に社会に対してどういう貢献をするかという設定をしたものです。そこまでしかお答えできないのですけれども。この研究基盤を実際に選定するときのプロセスで、どういった評価プロセスの詳細があったのかや、今、ご質問のあった高度にネットワークされた経済の中項目、小項目はないのかというのは引き続き調べていますけれども、今の段階ではちょっとブレークできていません。

【緑川委員】  特に数理科学とか、そういう意味ではないのですか。

【金子フェロー】  そこまでは把握していません。全体的にはそういう意味ではなくて、ヨーロッパの社会、イギリスの社会がどうなるべきかというところをまず設定されていて、そのために、この基盤はどういう役割を果たすのかという検討をしているようです。

【二瓶主査】  今のご質問のように、研究基盤という概念そのものの広がりというのは、英国であればこそ、こういったテーマが出てくるという感じはいたしますよね。当然彼らの稼ぎどころですから。当然国の研究基盤政策の中に、こういった概念が入ってくるというところじゃないかなという感じがいたします。

 他に何かございますでしょうか。それでは、ただいま関連するご質問、ご意見を頂きました。実は、本当はもう一押しご意見を頂けるとという感じがいたしておりますが、この図に関して、科学技術イノベーションのための研究基盤施策、そういった枠組みといいますか、たまたま今、経済の話まで出たわけですけれども、こういった枠組みに関して、恐らく先ほどご説明のあったとおりでございます。現在、国の予算を使ってある程度動かしているもの、あるいは、時限的に行っているもの、言うならば国の予算のレベルで研究基盤というカテゴリーに入るものをリストアップしたということだと思います。もちろん研究基盤そのものの議論をすると、いろいろもっとあると思いますけれども、本委員会のミッションとして、まずこの辺りをきちんと研究基盤という認識のもとに、形を枠組みとして固めていくという作業をいたしませんと、その他の議論まで手が伸びないというところではないかと思います。

 要するに、出発点としての研究基盤、それはここだけは逃せないという意味で、このリストアップはいかがでしょうか。そういった観点で、少しご意見があればお伺いしたいのですが。特にライフ絡みで、西島委員、長野先生がいらっしゃいますけれども、ライフ絡みの研究基盤を、こういう構造の中に適切に取り込むというのが1つの課題のような気がするのですが、いかがでしょうか。

【長野委員】  確かにいわゆるこういったかなり大型の研究基盤を整備するときに、日本学術会議でも少し前に大型研究というのを取り上げて、そこでの議論のときに、極めていわゆるライフ関係においても重要だという議論が出ました。その中の議論の1つに、質的に少し従来の、ここには出てきませんが、例えば大きなすばるだとか、いろいろなそういったものに比べて、いわゆるライフ関係のこういった研究費というのは、例えば、一番最初の設備の投資に関してはそれほど大きくはないが、一方において、いわゆる年ごとの運営費に関してはかなりのものが必要になってくるという議論がある。つまり、かなり継続的な費用がかかってくるという点がかなり違うという議論が大きく出まして、その辺が一緒くたにちょっと議論できないなというところがポイントになりました。コメントとして。

【二瓶主査】  西島先生、いかがですか。

【西島委員】  多分、長野先生のご発言は、建物をつくっても、そこの例えば維持する人、ソフトとかそういうものに対しては、非常に長期間かかるということで、例えば、建物をつくって5年間で成果が出るというものではなくて、それを5年、10年続けていくというようなときの運営費なり維持費なり人材育成とかそういうところが大変で、ライフはそれをやっぱり見つめなきゃいけないかなというのは、同じだと思います。

 それと、ここのちょうどライフ関係ですと、資料2ですかね。資料2の7ページのところに、創薬とライフサイエンス研究支援基盤事業という、これはもちろんここと重なるところもありますが、そこのコミュニティの意見の中に、運用体制が重要であるということが書いてあるのですけれども、やっぱり運用体制というものがあり、企業から使う場合は、SPring-8にはもうなれていますので、前も言いましたけれども、J-PARCも、それからSACLAにしても、コンピューターにしても、例えば、契約1つとっても、あるいは、知財の扱いに関しても、成果公開のタイミングに関しても、できるならば時間当たりの価値に見合うだけの費用ということに関しても、足並みはそろえておかないといけない。不揃いの場合、会社の中で、SPring-8はこれで通るのに、何で「京」はこんなに高いのかとか、安いときは文句言いませんけれども。知的財産が、片方は2年待っているのに、何でこれはすぐ公開しなきゃいけないとか、そのようなことがありますので、その辺は少し運用を考えないといけないと思います。

 一方において、例えば、SACLAのような、こういったものを使ったところが、2年も3年も成果を公開しないで自分のところで独占するようなテーマを、果たして本当にそれが望ましいのかというようなことも当然考えなければいけないわけです。SPring-8は、先ほど若槻先生が仰ったように、非常にSPring-8の施設を企業に使ってもらうために大変努力なさったというのは、例えば、お試しのような期間を設定したりとか、それから、最初のうちは使ったものについてはかなり公開を待ってくれたとか、そういったことはあるのですが、このSACLAに関しては、例えば、ビームもせいぜい1個か2個ですよね。しかも世界最先端となると、いいものについてはできるだけ成果を公開して、インパクトを高めていって、次の予算を獲得するときの呼び水になってきて、ある程度使い始めて、そこから企業に使ってもらうとかというので、こう言っては自分の首を締めますけれども、あまりわがままな企業に使ってもらう必要はないのではないかなと。例えば、そのような運用のことも考えておく必要があるのではないかと思います。運用だと思います。そこが大変重要だなと思います。

 できるならば、SPring-8を使っている側からすると、シームレスな、本当に少し希望を言えば、そのままテーマがよければSACLAも使っていけるし、それから、スパコンも使っていけるし、J-PARCも使っていけるというような形が。一つ一つに対して、一々非常に全く違う文化と研究者に接しなければいけないというのが大変だなと思うので、運用体制は、やはり国がお金を出しているので、そこは少し国のほうが主導的に運用体制をシンプルにして持っていくというのが必要ではないかなと思います。

【二瓶主査】  ありがとうございます。ライフ関係で、私、少し問題提起をさせていただきましたが、考えてみますと、既に含まれているナノネットですとか材料ですね。そういったところも、それこそ俯瞰的に見ますと、これはオブザベーショナルサイエンスはかなり網羅しているが、ちょうど米国の今日いただいた資料の6ページの、10の重点領域の下に5つの科学原理というところに、いわゆるケミカルなものづくり、材料的なものづくり、その分野を原理としてカバーしているんですね。研究基盤という概念を考えるときに、計測科学、オブザベーショナルサイエンス以外に、ものをつくっていくサイエンスというのが当然あり、それをやらなければイノベーションに至らないというのが多くの例として挙げられる。そのあたりを研究基盤としてどうとらえておくのかというのが、少し気になっております。

 ですから、今回の整理は、かなりハード寄りの方法論をずっと束にしていって、まずは研究基盤というものをとらえているわけですけれども、もう少しソフト的なとらえ方の研究基盤というのがあるんだろうと。ただ、それを今言いますと、いささか土俵を広げ過ぎだと私自身は思っておりますので、今日の議論は、事務局からご提示のあったこの枠組みで、まず固めてはいかがかということになりますが。ただ、その他をオープンにすると、オープンにしておくという感覚は非常に大事ではないかという気がいたします。どうぞ。

【若槻委員】  今の議論の範囲を定義するというのは、最初のこの会でも随分議論されたと思いますが、今日ご提示いただきましたロードマップを拝見して、特にライフサイエンスのところを拝見しますと、実は研究用材料、データベースと知的というのが入っているので、今、二瓶先生が仰られたよりもう少し広く既に入っているかなという気は多少するのです。ですけれども、確かに大枠は、この上のほうのJ-PARC、SPring-8、SACLAというのは、私もそうは思います。

 その議論はやはり少し整理しておく必要があり、今、物をつくるほうが5つの科学原理の中、材料プロセスをというようなことが書いてあるのです。実は、この資料3-2の中には、基本的には見るほうが中心に、ネットワークもそういうものが書いてあるんだと思うのですが、実はDOEの一番大きな研究所はPNNLで、Pacific Northwest National Laboratoryというのが5,000人いて、DOEの中でとにかくダントツに大きい。研究費もたくさん使っていて、そこを施設は持っていない。だすから、今日の議論で言いますと、大きな装置という意味での基盤は持っていないのですけれども、この5つの科学原理をたくさんかなえるための研究組織として、少し敷衍して見れば、研究のインフラを持っているというのが、実は大きなDOEの研究所だということは忘れてはいけないと思うのです。

 そういったことからすると、二瓶先生が仰られた、大きな装置だけに限っていていいのかというのは、私も少し気になるところなので、済みません、申し上げさせていただきたいのですが、そういった意味では、一番下の共通基盤の技術の開発のところは、おそらく大きな施設ではなくて、技術の集約のような――集約というよりも、その後、革新的技術を創造するというようなことなので、議論としては、私はそこまで入れた議論でむしろいいのではないかなという気がしますが、いかがでしょうか。

【吉澤委員】  よろしいですか。

【二瓶主査】  どうぞ。

【吉澤委員】  基本的に、今日いろいろな資料を説明していただいたので、この委員会のミッションで考えていくのは、結局この資料のA3のものと、それから、事務局のほうがご提案になっている本日の論点のところで、いろいろな委員や二瓶先生が言っていたことをネットワーク化したり、それをきちんと審議したりする制度や何かをきちんと構築していきたいというのが、多分意図だと思います。そういった意味では、装置や何か、どの辺の大型のものや何かをというのは、ナノやライフはちょっと微妙なところがありますけれども、大分この大きなA3のまとめで、我々が視野に入れなければいけないところは見えてきた。

 ただしその中に、若槻先生も言っていて、私も同じことを感じたのですが、施設を縦にやって、それのプラットフォームというイメージをやると、二瓶先生が言ったような、実はものづくりのナノとかライフサイエンスのマテリアル、それから、実際の物をつくるという2つの側面があるのですけれども、それと大型施設の利用というところのミッシングリンクができてしまうのです。ですから、プラットフォームというときに私が考えているのは、先ほどのエネルギー省のアメリカのケースでも、オークリッジを見ると、あそこは原子炉がありまして、中性子の利用があって、加速器、SNSがあって、パルス中性子があるんですが、それ以外に大きな計算機のグループがあるのです、リリオン化チームもいる。それから、ナノのグループがあって、それがSNSのビルと同じ中に入っているのです。しかも、課題をナノの人たちがやると、それに1枚SNSも使いたいなと一言書くと、それのコーディネーターがいて一緒に考えてくれるのです。ですから、そのようなものづくりと大型施設のリンクするようなところを、この委員会で皆様のご意見で。

 それで私、ちょっと本日の論点のここのところは、もう少し詳しく説明していただかないと、具体的にどんなことを構想されていて、どんな制度や仕組み、意見を言って考えていったらいいのかなということがまだ少し漠然としていて、そこがこれからの一番重要な、この委員会の論点なのかなという印象がしましたので、今後、その辺のところを詳しく議論させていただきたいなと思っています。

【二瓶主査】  ありがとうございました。大体これで時間がきましたので、今日はこのぐらいとさせていただきますが、最後、お二人の委員の先生がご指摘の点はかなり大事なことで、そういう余地をリザーブしておくということが、今日の委員会のご意見の1つ、重要なポイントだと思います。

 それでは、この議題を以上とさせていただきまして、次の議事に進ませていただきます。次は、議題3でございますが、先端計測分析技術・機器開発小委員会の中間報告についてご報告申し上げます。

 この委員会は、研究開発プラットフォーム委員会の下部の小委員会でございますが、この小委員会で本年8月以降、主として平成24年度から取り組むべき研究開発のあり方についての検討を行うもののまとめでございます。事務局からご説明をお願いします。

【竹上基盤研究課課長補佐】  先端計測分析技術・機器開発プログラムでございますが、机上資料として緑色のパンフレットを置かせていただいておりますが、内容を簡単に説明いたしますと、平成14年の田中先生のノーベル賞受賞をきっかけに、平成16年度よりJSTで事業を開始しております。オンリーワン、ナンバーワンの先端的な計測分析技術・機器の開発を目的に、革新的な要素技術開発、機器開発や、実用化研究開発現場への普及を目指すプロトタイプ機の性能実証、ソフトウェアの開発等を、公募型の支援事業として行ってきております。

 このプログラムに関しましては、その推進のあり方を、この委員会の下にある先端計測分析技術・機器開発小委員会においてご議論いただいておりまして、22年度におきましては、「知的創造基盤の強化に向けて」という報告書を取りまとめていただきました。

 資料4につきましてご説明いたします。今年度も、「先端計測分析技術・機器開発プログラムの改善と新たな推進方策について(中間報告)」という報告を取りまとめていただいておりますので、内容を簡単にご紹介します。

まず冒頭、「はじめに」とありますが、東日本大震災の発生、第4期科学技術基本計画の策定など、我が国の取り巻く状況は大きく変化しており、このため、プログラムの今後のあり方について、不断の改善を図ることが求められており、24年度から取り組むべき研究開発のあり方を中心に報告をまとめているということが書かれています。

 次に、プログラムが現有している主な課題について列挙しております。まず、プログラム開始以来7年半経過しておりますが、近年は予算が大幅減少傾向ということで、プログラムの存在意義が大きく損なわれる可能性があるという危機的状況にございます。また、要素技術タイプに関しましては、採択された課題が将来の波及効果までを見据えていないような事例も少なくないのではないかという指摘がございます。また、機器開発タイプの中で、重点開発領域というものを設定してこれまで支援を行ってきましたが、なかなか設定意図が研究者等に伝わっていないのではないかといった問題点も挙げられております。

 推進・評価体制につきましても、小委員会の検討結果とJSTとの公募・採択の実施状況との関係ですとか、プログラム全体の事業評価のあり方、CRDSの有効活用等に関して、課題があるということが指摘されております。

 また、知的創造プラットフォームの構築に向けた体制と、具体的方策の一層の明確化が必要であるというようなことも挙げられております。これらの7つの課題を踏まえ、24年度以降のプログラムのあり方についてご議論いただいております。

 次に、プログラムの位置づけを記載しておりますが、「先端計測分析技術・機器は、我が国の科学技術の共通基盤を支えるキーテクノロジーであり、本プログラムが世界に先駆けて未知なる現象を検出、可視化する分析技術・機器を開発し、重要課題の克服、科学技術の発展を先導する基盤を創造し続けていくことが極めて重要となる。この基本的認識のもと、オンリーワン、ナンバーワンの開発成果を生み出した上で、科学技術のブレークスルーを生み出す基盤を構築すること、開発成果を実用化し、企業化までつなげ、標準・汎用機器やシステムとして新たな市場価値を創出することの双方を政策目標に置いてプログラムを実行していくことが求められる」とされています。

 以上を踏まえて、プログラムの具体的な改善、推進方策ということで、「1.ターゲット指向型の重点開発領域を軸とする研究開発の強化」「2.プログラムの推進体制等の再構築」の2本柱を、緊急的に実施する方策として掲げているところでございます。

 まず、1.ですが、これまで以上にターゲット指向型の重点開発領域を設定し、国として課題克服に強い意志を持って重点的な予算配分を行うべきであるとしております。

 平成24年度の取組のあり方として、5つ掲げております。まず1つ目は、重点開発領域の大枠といたしまして、「震災からの復興、成長への貢献」を設定しております。具体的には、産学の関係者が結集したチーム編成により、早期かつ確実な技術的成果の活用を目指した機器開発やシステム構築に取り組むことと、新たなブレークスルーを生み出す革新的な要素技術、機器開発に取り組むことが必要であるとしています。計測・分析ニーズとしましては、大気、水、土壌、食品中の放射線量の迅速かつ高精度な把握、また生体への影響の把握等があり、その詳細については、今後の小委員会において引き続き検討を行っていただく予定としております。

 また、2つ目に、グリーンイノベーションを重点開発領域の1つとして、平成23年度に引き続き設定しています。具体的には、太陽光発電、蓄電池、燃料電池の飛躍的な性能向上と、低コスト化を実現するための新たな開発が重要であると掲げています。

 3つ目ですが、やはり国家の基盤を担うプログラムといたしまして、重点開発領域以外を対象とする新規公募の実施も重要ということも記載しております。

 4つ目に、ソフトウェア開発タイプの新規公募の実施は、今年度は見送りとさせていただく予定です。

5つ目といたしまして、これまでに開発されたプロトタイプ機を、被災地の現場ニーズにあわせて作製、整備し、有力なユーザーの利用に供することで、当該プロトタイプ機の高度化、標準化等を効果的に進めていくといったような、これまで開発した機器の有効活用を掲げているところです。

 次に2.ですが、プログラムにおけるPDCAサイクルを確立することが求められるということで、様々な方策が提案されているところです。

 まず、小委員会において、「基本戦略」を策定することと、CRDSを活用することが重要であるとしています。また、JSTにおけるプログラムの推進を一体的に担うための推進委員会の設置を提言しております。更に、JSTにおいてしっかりとプログラムの自己検証を行い、プログラム全体としての評価を行うことが重要であるということも掲げています。

 最終ページ、今後の検討事項についてですが、「本プログラムが我が国の科学技術の共通基盤の形成を担うものであるとの趣旨を踏まえ、文科省及びJSTにおいて、我が国の科学技術基盤のあり方、JSTにおけるプログラムの位置付けに関して、今後一層の検討を進められることを期待する」と締めくくっております。報告書の説明は以上ですが、この報告書につきましては、今後JSTに正式に通知いたしまして、実行に移していただく予定としております。既に24年度のプログラムに関しては、この報告を受けて、前年比33億円増の要求を行っているところでございます。今後、この小委員会においては、先ほどまでご審議いただきました研究開発プラットフォームの構築のあり方と足並みをそろえつつ、研究基盤のまさに根っこの重要な部分を担う計測分析技術・機器開発のあり方に関して、引き続き継続的に審議を進めていただく予定としております。

【二瓶主査】  ありがとうございました。それでは、ただいまの資料4でございますが、何かご質問ございますでしょうか。

【野田委員】  非常に重要なことが2ページ目、その他のところに、やはり社会還元ということがありまして。それと、先ほどの俯瞰図を見ると、緑色の共通基盤技術の開発と上の研究基盤の戦略的整備・共用との関係で、ここは一応矢印で書いてありますが、もう少し何か相互にインタラクトできるようなものがあるといいなという感じがします。というのは、私も少しナノネットやっていて、やはりどんどん設備が古くなるだけではなく、技術の進歩というのが一方であるわけです。そうしますと、今ある設備ではなく、もっと進化した、先ほど課長が進化という言葉を使われましたが、技術的にもやはり新しいものにどんどんどんどん変えていかないと、やはり私は中型の設備だと思いますけれども、そういいったインタラクティブなところがないと、先ほどの利用者がどうのこうのという話になってきてしまいますね。ですから、そこが何かうまい仕組みがあるといいなと思って見ながら、この俯瞰図を見ていたところです。

【二瓶主査】  ありがとうございます。そもそも研究開発プラットフォームという概念は、全体を含むということと、概念はいいのですが、実際に役立つ仕組みとしての構造をどう考えるかといいますと、やはり先ほどのご説明にもありましたが、大きなプラットフォームと、それから、サブプラットフォームと、ある程度合理的といいますか、皆さんがわかりやすい構造を考えなければならないだろう。もちろんご指摘のように、その間は目一杯、要するに、目的を達成するためにインタラクティブな機能を持たなければいけない。一言で言えばネットワークですが。ネットワークの効果的な、プラットフォームの構築をこれから全体として考えていくということではないかと思います。ご指摘、大変大事なポイントでございます。ありがとうございます。どうぞ。

【福嶋委員】  質問に近いのですけれども、この今ご説明いただいた資料4と、それから、今日いただいた資料3-1の本日の論点ですね。ここにもPDCAというものがあり、それから、資料4でも、反省に基づいてPDCA……。まずこの資料3-1でぱっと思ったのは、ここに書いてあるものは、PとDは書いてあるけれども、CとAは書いていないなと思いました。それで、その反省かどうかは知りませんけれども、資料4の既に終わった、進んでいるものについては、C、Aをやるというのが2にある程度書いてありますけれども、ここがやはり一番難しいところで、チェックをどういった形で実施し、それに対して次のアクションをどうするかというのを、どこまで議論が進んでいるのか。大体チェックをやって評価をやると、「これだけ成果が出ました、よかったですね。」で終わってしまうことが多くて、本当の意味でのチェック、アクションに結びつかないことが多いので。我々、これからやるのも重要ですけれども、何を目標にして、どういったことをチェックしてもらおうかということをきちんとしなければいけないと思いますし、具体的に進んでいるものに関しては、何をチェックしようとしているのかを、もしお考えがあったらお聞きしたいのですけれども。

【柿田基盤研究課長】  この先端計測の事業は、先端的な分析技術や機器を開発することを目的とした競争的資金です。個々のテーマについては、競争的資金ですので、当然採択の段階で審査があり、その後、中間段階及び事後の段階で研究開発の達成状況についての評価がきめ細かく行われております。

 しかし、事業全体としての評価が行われていない状況にあります。つまり、個々の開発課題の評価のみならず、競争的資金としての事業全体のパフォーマンスを評価する、言わばプログラム評価を今後は行う必要があると考えております。

【西島委員】  私、少し先端計測の事業に最近係わったのですが、ライフサイエンスに比べると、いわゆる産学が結集して、産業界が重要だけれども、基礎的な開発も含めて、プロトタイプ機をつくるのは大変なので産学でつくっていき、そのプロトタイプを発展させて、いずれは製品化を目指そうという。そこのところは比較的明確な形で、投資した額は、私は決して大きな額ではないと思いますけれども、むしろ思ったより少ないなという印象を持ったので、そのわりには意外と波及効果があるテーマが幾つかあったとの印象です。めり張りがついているなと思いましたね。ライフサイエンスの場合は、このようにめり張りがつくことがあまりないのが課題です。製薬産業界も口は出しますけれども、なかなか成果を公開することができません。先端計測事業はしっかりやれて、投資の額は少ないわりには成果が見えるので、私はやはりそういった意味では、今後のお金はライフサイエンスよりもグリーンにつぎ込んだほうが成果を見やすいのかなという印象を持っています。

【釜井ライフサイエンス課課長補佐】  ちょっとよろしいですか。ライフサイエンス課の課長補佐の釜井でございますけれども、ご指摘はありがたくちょうだいさせていただきます。今、ライフサイエンス委員会におきましても、ライフサイエンス分野の重点化ということで、特に創薬の関係の基盤というものを重要な基盤という観点から、創薬技術支援基盤プラットフォームというようなものを、充実強化のための検討を行っているところでございます。今回、本委員会のような委員会も立ち上げられたことですし、ぜひそこは連携させていただいて、やはりオールジャパンで真に必要な、特にライフサイエンス分野の基盤は何かというものを、ぜひライフサイエンス委員会の方と本委員会の方で連携させていただきまして、ぜひいいものをつくり出していきたいと思います。ご指摘ありがとうございます。

【二瓶主査】  どうもありがとうございます。他、どうぞ。

【若槻委員】  今のライフサイエンスに関係するものとしましては、やはり選択、集中。だけれども、全体として大事な分野をきちんと網羅しているか、カバーしているかという議論は、ここでも議論する必要があると思うのです。それは、プラットフォームという考え方をやはりライフサイエンスでも入れていかないと、本当の意味でリソースをきちっと使っていくという、一番いい体制をつくるという意味での重要性があるかなと思います。

 私の質問は、ソフトウェアのところ。今の資料の4ページ目の一番下の2行のところに、ソフトウェア開発サイクルについてはといったものが書いてあり、新規公募を見送るというのは、かなり強いメッセージなのかなと思うのですけれども。いろいろな他の関連の研究会、あるいは委員会等で議論を聞き、もしくは参加させていただいていますと、ソフトウェアの重要性、特に日本のソフトウェアの、言い方を工夫すればいいのかもしれないですけれども、弱さというかは、むしろ今までよりももっと明確になりつつあるのかなと思うので、ここはこれでよろしいのでしょうかというか、かなり気になっていますけれども。

【二瓶主査】  その点、私からお答えさせていただきます。ご指摘のとおり、実はこういった装置開発等で一番の弱点はソフトウェアです。それで、そういった認識のもとにソフトウェア開発プログラムというのを3年前からつけ加えたという事情です。そこで、幾つかの採択されたテーマが、現に今、進行中でございます。何が一番大事と考えたかと申しますと、まさにソフトウェアのプラットフォームと申しますか、各種の装置類に横串をさすよう総合化をするため、システム化するためのソフトウェア。OSみたいな立場ですね。インストルメントを複数、しかもかなり種類が違うものを合理的に結合して、データベースで解析していく。そういったようなことをきちんと実現するための仕組みに弱点があった。これの一番の理由は、実は各メーカーが、独自、要するに、自前技術にこだわって、これは日本の産業の最大の弱点ですが、自前主義に陥っていて、お互いの融通がとれない。それを突破するためのプラットフォームを構成するためのソフトウェア開発。これは既に今、現に走っております。

 一方、もう少し個別のソフトウェアもたくさんニーズはありますが、このプログラムの中では、機器開発、システム開発というプログラムが別にございまして、個々のものはそこに組み込んで一緒にやればいいだろうという判断で、一旦公募を中止するという意味であります。ですから、今後一切やらないとか、そういうことでは全くないと。いわば予算の重点化という意味であります。

【若槻委員】  だとすると、むしろ先端計測というプログラムにとじずに、ここのプラットフォームで少し議論を、どこかのタイミングでとっていただいたらいかがかなと思います。

【二瓶主査】  それは大事なご指摘ですね。仰るとおりです。もっとスケールの大きな、そうですね、これはいわゆるスパコンの議論とは全く別のタイプのネットワーク型のコンピューティングシステムということで、恐らくソフトウェアが非常に大事になるという分野が、仰るとおりあります。それが日本は、必ずしも十分ではない。これも多分事実だと思いますので、そのご提案は、この研究開発プラットフォーム委員会として、もっともっと大事に考えるべきことというご指摘は、私は大変大事だと思います。

【長野委員】  違うことでよろしいですか。

【二瓶主査】  はい、どうぞ。

【長野委員】  細かいことになるかもしれませんが、資料4のポイントが少しよくわからなかったのですが、以前と推進方策ということで、ポイントは3ページの5番のところの、具体的な改善、推進方策ということだろうと思うのですが、1に、重点開発領域を軸とする云々と書いてありますね。この重点開発領域という言葉は、2ページの上の機器開発タイプというのが2行目に書いてありますが、その下4行目ぐらいに、重点開発領域に該当する課題数は必ずしも多くなくと。だから、これを取り上げたのは多くなかったというのが反省点だろうと理解しますけれども、それは具体的には、例えば冊子の2ページの、概要のところの機器開発タイプで、平成22年度、下のほうに領域特定型云々と具体的なテーマが書いてありますが、これをあまり取り上げなかったということでしょうか。ですから、今後は、こういった重点の領域の具体的なものを取り上げたいというのが改善策ということでしょうか。

【二瓶主査】  いや。

【長野委員】  違うのですか。済みません、私、十分理解していないので。

【二瓶主査】  結局、重点開発領域の特定の仕方、縛りですね。縛りが従来は、世の中の現存する装置で欠けている領域を強化するための、かなり技術的な枠組みでターゲットをつくっているのです。これはいろいろな議論がありますけれども、少し先進的過ぎて、実際の研究者がまだそこまで追いついてきていないですとか、あるいは、かなり難しいテーマであって、やはり応募が少ないと、そういった理由なのです。ですから、この改善策に書いてあるターゲット指向というのは、第4期基本計画でうたわれているような、先ほど出ましたアクションプランですとかグリーンイノベーションの中で、例えば、このテーマで言えば、蓄電池ですとか、太陽電池の性能向上に資するような計測などということは、今まではうたわれてなかったのです。ですから、ターゲットの中身が変わってくるという意味です。

 ですから、結局、誘導的な政策を当初とりましたが、誘導的政策が必ずしも十分に研究者サイドに伝わらなくて。

【長野委員】  有効に働いてなかった。

【二瓶主査】  そうです。それをもっと改善しなければいけない。それが実は、プラットフォームをかちっとつくらなければいけないということの発端になっております。

 よろしいでしょうか。それでは、大体時間がきてしまいました。議題3の議論はこれにて終わりとさせていただきます。他に事務局から何か連絡事項はございますか。

【竹上基盤研究課課長補佐】  お手元に参考資料9並びに参考資料10をご用意いただければと思います。第4期科学技術基本計画の策定を受けて、科学技術・学術審議会の様々な委員会で並行して議論が進んでおりますので、審議状況を簡単に説明させていただきたいと思います。

 まず、参考資料9でございます。研究計画・評価分科会における審議事項でございますが、この分科会の下には、政策分野別に様々な委員会が置かれています。今後、第4期基本計画を受けて、環境・エネルギー、医療・介護・健康といった重要課題別にも推進方策を取りまとめていく必要があるということが決定されております。

 その中で、課題領域4といたしまして、科学技術基盤というものが設定されていまして、ここについては、先端研究基盤部会、そして研究開発プラットフォーム委員会に、実質的な審議を担ってほしいという要請を、研究計画・評価分科会の方から受けております。

 検討スケジュールは、来年春から夏までに方向性を出すというスケジュールに変更されるということを、担当部局から聞いているところです。

 続きまして、参考資料10でございます。科学技術・学術審議会の下に、基本計画推進委員会という委員会が新しく設立されております。ここも同様に、科学技術基本計画の柱に沿って検討を進めていくということで、基本計画中にある(6)国際水準の研究環境及び基盤の形成については、学術分科会並びに先端研究基盤部会での議論を中核に検討を進めていくとされております。

このように、本委員会については、基本計画の推進を中核的に担っていくための重要な委員会として、科学技術・学術審議会の中で位置づけられてきているということを、ご報告させていただきます。

【二瓶主査】  ありがとうございました。どうぞ。

【瀧澤委員】  今、ご説明のあった内容とも絡むのですが、最初、西島先生が仰った先端的な産業に結びつけるような政策誘導型の研究と、あるいは、『サイエンス』や『ネイチャー』の表紙を飾るような研究という、両方バランスが重要だと思っているのですけれども、この委員会では、両方を視野に入れた上で議論を行っていくという理解でよろしいでしょうか。

【竹上基盤研究課課長補佐】  基本的にはそういうことになろうかと思います。

【瀧澤委員】  一方で、先ほどJSTの金子さんにご説明いただいた内容というのは、かなり政策を社会にどう結びつけるかといった視点が強く打ち出されている内容だと思いますけれども、今後、先ほどお示しいただいたこういうものをリアルにしていく中で、その辺をどのように整理をつけて考えたらよろしいでしょうか。

【竹上基盤研究課課長補佐】  ターゲットをどちらかに絞るというような話ではありませんが、ここの委員会においては、まずはそういった課題対応というところを主軸に、プラットフォームの構築について議論していただく予定にしています。課題対応を意識してプラットフォームを構築していくことによって、最終的には『ネイチャー』などにも載るようなサイエンスを行う人たちにとっても有効に機能するようなものになっていくと思っております。

【瀧澤委員】  米国ですとか英国ですとか、こういった取り組みも、そういった理解の上でやられているという理解の上で、同じように我が国もそういう方向で進んでいきたいという意志で。

【竹上基盤研究課課長補佐】  そういうことです。

【二瓶主査】  何かコメントありますか。

【柿田基盤研究課長】  科学技術基本計画をお配りしていると思いますけれども、同計画においては、いわゆる自由発想型の研究と、グリーンイノベーションやライフイノベーションといった目的指向型の研究開発の両方を、科学技術イノベーション政策として進めることとしております。従いまして、基盤としての研究開発プラットフォームとしては、これら科学技術イノベーションを支える機能として、両方を視野に置くことが求められると思います。その上で、自由発想はともかく、目的指向という側面については、基盤の機能の在り方を考える上で意識を持っておく必要があると思います。

【二瓶主査】  よろしゅうございますか。

【瀧澤委員】  はい。難しいですけれども。

【二瓶主査】  確かに科学技術政策から科学技術イノベーション政策に転換するというところが非常に大きく論じられておりますが、もちろん基本は科学技術政策でありますし、それがそっくり変わるわけではない。イノベーション指向というのは、1つの重点項目であります。全体を支えるものが、いわゆる基礎研究の非常にピュアサイエンスと呼ばれる分野が大事であるという認識は、全く変わっていないということだと思います。ただ、いわゆる産業の国際競争力、あるいは学術の国際競争力、ともにかなりはっきりとした目標を掲げていわば国費を投じないと、本当に効果が出たのかという議論が常にあります。ですから、そういった意味で、目標を明確にするという1つの分野が、イノベーション政策だということだと私は考えております。

【瀧澤委員】  そうしますと、私は実は、先ほどの米国や英国の事例を見ていますと、もっと産業界と一緒になって話し合いをして、具体的なターゲットを決めていったというご紹介もありましたし、もっと欧米のほうは、出口指向が強いのかなと感じたのですが。一方で、文部科学省の中でも、科学者の自由な研究というのを別の枠でやられていることもあるので、むしろこの議論をしている委員会の中では、そういった出口指向を更に強めたような仕組みを考えていくべきなのかなと思っていたところに、一番最後の紹介のところで、参考資料10の3ページ目で、国際水準の研究環境及び基盤の形成を担うということでしたので、かなり重い課題をいただいたなと感じていたところです。

【二瓶主査】  全体のバランスを失するといけませんので、常に両方のサイド、いろいろな観点で物を考えなければいけないということはご指摘のとおりです。

【福嶋委員】  関連してよろしいですか。ちょっと時間で申しわけないですけれども。

【二瓶主査】  いえいえ。

【福嶋委員】  今、2つの基盤、基礎という話と、それから、ターゲットがある程度見えている話と、当然両方やっていかなければですけれども、当然後者、ターゲットが見えているものは、比較的議論がしやすいですよね、いろいろな意味で。どうしても基盤というものが何かも含めて、先ほどの予算の話もありましたけれども、どのぐらいやるべきかも含めて、とてもあいまいになってしまう。産業界から見ると、どちらかと言うと、特に文部科学省の動きというのは、ターゲットなんかどうでもいいから、基盤をしっかりやっていただければ、いいところは我々が勝手にとっていきますよというような考え方もあるわけです。

 非常に卑近な例でいけば、今回の震災で、私、ゾーライト学会と鉱物学会に関連していて、今まで重点領域ではなかった吸着現象をきちんとやっていたのが、今、役に立っているわけです。そうやってみると、そこからテーマを見ると、まだ吸着現象でわかっていない基盤があったと。それをまたやりましょうという雰囲気になっているという意味で、やはりターゲットが見えないかもしれないけれども、やるべき仕事を、両方必要ですけれども、議論としてはどちらが難しいかというと基盤の方が難しいので、議論はやはりそこが少し多くなるのではないかなというイメージを持っていましたけれども、そうしていただきたいなと思います。

【二瓶主査】  どうもありがとうございます。それでは、時間がまいりましたので、事務局、他に何かありますでしょうか。次回の予定等ですね。

【竹上基盤研究課課長補佐】  ありがとうございました。次回委員会につきましては、現在日程調整をさせていただいているところです。次回12月以降の開催を予定しておりますので、日程が決まり次第、ご連絡を差し上げます。よろしくお願いいたします。

【二瓶主査】  それでは、本日は大変ありがとうございました。また次回、ご案内申し上げます。よろしくご審議いただきたいと思います。どうも大変ありがとうございました。

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