産業連携・地域支援部会(第19回) 議事録

1.日時

平成31年2月6日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 東館3階3F1特別会議室

3.議題

  1. 2019年度予算の状況について
  2. 「地域科学技術イノベーションの新たな推進方策について ~地方創生に不可欠な「起爆剤」としての科学技術イノベーション~ 最終報告書(案)」について
  3. 第10期産業連携・地域支援部会に向けて(論点整理)
  4. その他

4.議事録

【庄田部会長】  おはようございます。それでは、定刻でございますので、ただいまから産業連携・地域支援部会を開催いたします。
 部会長の庄田でございます。委員の皆様には、本日、大変お忙しい中を御出席いただきまして、ありがとうございます。
 本日は、定数17名のうち11名の御出席でございますので、9名以上の定足数を満たしていることを事務局で確認いただいております。
 また、林委員におかれましては、冒頭30分程度の御出席予定と伺っておりますので、それまで、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは最初に、事務局から資料の確認をお願いします。
【竹之内課長補佐】  それでは、資料の確認をさせていただきます。
 本日も一部、ペーパーレスの会議となっておりまして、タブレットの方には資料1と3がございまして、資料2-1と2-2につきましては机上に配付をさせていただいておりますので、会議のときにはお手元の紙の資料、若しくは、プロジェクターにも映し出しますので、そちらを確認いただければと思います。
 傍聴の皆様には、恐縮ですけれども、今回お手元にございませんので、会議中はプロジェクターの方を御確認いただきまして、会議終了後に、こちらもホームページにアップされますので、御確認いただければと思います。
 資料の確認は以上でございます。
【庄田部会長】  本日の議題につきましては、資料のとおりでございます。
 それでは、議題1、産学官連携施策の2019年度予算の状況については、西條課長から、報告をお願いします。
【西條課長】  おはようございます。議題1といたしまして、文部科学省におけるオープンイノベーション・地域科学技術関係施策の2019年度予算案の状況ということで、御説明させていただきたいと思います。お手元の資料1の方をよろしくお願いいたします。
 前回の部会におきまして、概算要求の状況ということでお話をさせていただきましたが、その後、財政当局ともいろいろとやりまして、最終的な仕上がりという形になって、今、国会の方に、予算案ということで、これから御審議いただくという形になってございます。
 それでは、全体をざっと、前回からどうなったかというところを中心に御説明させていただきたいと思います。1ページ目をおめくりいただければと思います。
 我々の方では、ここに書いてありますように、1番目として民間投資導入によるオープンイノベーションの加速、2番目に、革新的研究成果による本格的産学官連携の推進、3番目として、ベンチャー・エコシステム形成の推進、それから、地方創生に資するイノベーション・エコシステムの形成、この4つで整理をさせていただいております。
 1つ目に、民間投資導入によるオープンイノベーションの加速ということで、ここにあります、オープンイノベーション機構の整備を平成30年度からスタートさせていただいております。大学と企業の「組織」対「組織」、特に大型の競争領域の研究を加速していただくための仕組み作りのための投資ということでございます。こちらにつきまして、平成30年は8大学を選定させていただいて、9月に採択決定、12月から本格的に活動開始という形になっておりますが、平成31年度につきましては、また新規でこれをとっていくということで、最大4件という形でお認めいただきました。要求のところでは7と出したんですけれども、最終的には4ということになってございます。これもまた春から公募したいと考えてございます。
 それから、右側にあります、産学共創プラットフォーム共同研究推進事業(OPERA)でございますけれども、平成30年から、特にOIと連携ということで、これは非競争領域ということでございますので、ある意味、苗床を作って、そこから伸びてきたものをしっかりとOIで拾っていくというような仕組み作りということで、OI連携型につきまして、平成30年は4件ということでしたけれども、これはOIを幾つとれるかというところに関わってきますので、平成31年のOI連携型については2件となっております。また、これはOIと直接ではございませんけれども、こういった活動をしていただくためのということで、FSの割と小型のものができる仕組み、3,000万円ぐらいなんですけれども、平成30年からスタートさせていただいていますが、こちらも平成31年は2件という形になってございます。こちらはJST事業ということで、公募を同時並行で進めていくということでございます。
 2番目の革新的研究成果による本格的産学官連携の推進ということで、こちらでは、COI、A-STEPといった拠点事業、また、個別の支援事業というものを展開しておりますが、特に前回の部会で御説明させていただいたところが、右側にありますイノベーションマネジメントハブ形成支援事業ということで、TLO強化のための経費でございます。こちらにつきまして新規で要求をしたところ、ちょっと額は下がりましたけれども、新規ということではお認めいただいておりまして、大学、産業界、TLOのネットワーク強化を図るということの活動をしっかりと進めていきたいと考えてございます。
 また、その下になりますけれども、リサーチ・アドミニストレーターによる質保証制度の構築ということで、これも前回、URAの質保証の御説明をさせていただきましたが、こちらにつきましても、いわゆる調査研究、これを本格化に進めるための制度設計・試行に係る調査研究を進めるということで、ちょっと要求額からは下がりましたが、増額という形で確保させていただいております。
 この後、簡単にもう一度、御説明しますが、前回も御紹介させていただきました個別の産学連携施策について、また、拠点事業について、マネジメント重視の観点での見直しというのを今回、行っておりますので、後ほど御説明させていただきます。
 また、3つ目のベンチャー・エコシステム形成の推進につきましては、引き続き、いわゆるアーリーステージの支援ということでの大学発新産業創出プログラム(START)、また、アントレプレナーシップを醸成する、いわゆる人材育成事業として次世代アントレプレナー育成事業(EDGE-NEXT)も展開させていただいております。
 特にEDGE-NEXTに関しましては、海外武者修行ということで、今年、東京大学さんと早稲田大学さんのコンソーシアムの方で、いわゆる海外に打って出たい子の武者修行というのを、民間の協力も頂いて、支援させていただいておりますけれども、その拡大のための、民間からもちゃんとお金を取ってこないとできないんですけれども、我々のサポート分についても少し増額させていただいているところでございます。
 4つ目が、地方創生に資するイノベーション・エコシステムということで、1つは地域エコシステム形成プログラムでございます。こちらにつきましても、平成31年、ちょっと件数は少なくなってしまったんですが、2件、公募できるということになってございます。こちらも今後、公募するという形になってございます。
 最後が、また本日の課題で、前回御説明させていただきました、地域科学技術イノベーション推進委員会で今、議論いただいているものに連携するということで、後ほど、取りまとめ最終案ということで御説明させていただきます。それに連携するということで、科学技術イノベーションによる地域社会課題解決(INSPIRE)を新規予算ということで、今までがどちらかといえば、地域にあるいい素材を拾って世界にというところだったんですが、逆に言うと、地域の課題をうまく解決していくといったものにトライしたいということで、これも大分議論したんですが、最終的に、新規としてはお認めいただきまして、ただ、予算としてはかなり減額で、まずはFSからスタートかなという形で、5,000万円の新規ということで頂いております。
 そういった形で全体の予算を、概算要求から査定等はございましたけれども、我々のやりたいことを大体拾えているのかなと思っております。
 8ページだけ、最後に、産学連携施策の見直し・大括り化ということで、前回の部会でも御説明させていただきました。
 1つは拠点事業、これはOPERAとかCOI、リサコン、イノベハブ、いろいろな事業が立っている中で、こういったものをしっかりと効率的にやるというのと、それから、金の切れ目が縁の切れ目にならないような形で、どう支援していくかということをしっかりやりたいということで検討していたものと、もう一つは個別型のもの、特にA-STEPでございますけれども、なかなか利用者目線ではないプログラムがあり、どれをやっていいか分からないというお話もあり、こういったものを改善していきましょうということで、前回も御説明させていただいたところでございます。
 実はその後、11月に政府全体で行います、秋のレビューの対象ということで今回、取り上げられました。こういった動きをしたので取り上げられたのかなと思っているところはあるんですけれども、そこでいろいろと議論は頂きましたが、まさにこういった大括り化、それから、特に利用者が分かりやすいという視点については、しっかり進めるべきということを頂きまして、最終的に財務当局とも話をして、大括り化の2019年に考えておりました制度をまず全体を俯瞰できるような仕組みにするというところについては、予算上もそういった形の大括り化が認められた形になってございます。
 また、A-STEPにつきましても、まず、相談窓口の設置ということで、企業側、また、大学や研究者個人の方からも、どういったところに出せばいいのかというところについては、窓口設置を2019年から行い、本格的な両者の見直しは2020年ということを考えてございますので、その流れで進めていきたいと思っております。
 制度も含めてですが、予算に関する御説明は以上でございます。
【庄田部会長】  ただいま説明のありました予算の状況並びに施策の大括り化に関しまして、委員の皆様から御質問、コメント等はありますでしょうか。
 須藤委員、どうぞ。
【須藤委員】  大括り化の件なんですけれども、OI機構というのが動いていますけれども、それはこの対象には入れていないんでしょうか。
【西條課長】  一応、拠点事業という形で、今、テーマを決めてプロジェクトをやっていくというものをどう整理していこうかというところを考えてございまして、OI機構は、どちらかといいますと、大学における仕組み作りへの支援という形でやらせていただいています。
 もちろん、連携とか、OIの中でもいろいろな分野、特に強みを生かしての分野というところがございますので、連携等についてはしっかりと考えていきたいと思っていますけれども、1つ大括り化というカテゴリーにぽんと入れるという形ではなく、どう連携をしていくかという視点でやりたいと考えてございます。
【庄田部会長】  よろしいですか。
【須藤委員】  はい。
【庄田部会長】  高木委員、どうぞ。
【高木委員】  OI機構についてですが、私も少しお手伝いさせていただいています。この部会でも、6年目以降、支援が終わってから、大学が自立してOI機構を維持していけるようにしなければいけないという議論があったかと思います。これを受け、文科省がアドバイザリーチームを作り、年に4回ぐらいの大学の運営会議にも、アドバイザリーチームが参加してアドバイスをするという仕組みで開始していただいたので、これは非常にいいことだと思います。アドバイザリーチームのメンバーに対して、秘密保持の契約もしていただいている。OI機構の対象は競争領域ですので、このような配慮も非常に大切かと思います。
 大学の運営会議に参加させていただきましたが、この取り組みは大学の改革なので、内部のいろいろな課題について、本音の話も聞けるんですね。これは文科省へのお願いですが、高等教育局とも連携をより密にして進めていただけると、この施策の目的がよりうまく達成できると思います。よろしくお願いいたします。
【西條課長】  先生の方も現地へ行っていただきまして、どうもありがとうございます。私も参加させていただきましたが、今、委員おっしゃられたように、各大学は悩みを抱えていて、その中で、どう改善していくか、一緒にどう作り上げていくかという視点で今、参加していただいております。
 特に今、お話がありました高等局との連携ということで、実は高等局にも運営会議に出ていただくようにお願いして、引き続きちゃんとタッグを組んで、これはまさに大学改革に直接に関わってくるところになってくると思いますので、そういった形でやっていきたいと思っております。
 また、先ほど、大括り化のところでの視点として、採択重視から運用重視というところは、これはまさにOIの中でもしっかりやっていかなければいけないということで、今まで、とかく我々は予算を取ると、息つくところがあって、何となくそこは反省材料でございますので、まさに運用というより成果がしっかり出るような形で、これは単に成果というのが、全部成功じゃなければいけないというわけではないんですが、課題の洗い出しも含めて、いい方向に改善できるようにということでやっていきたいと思っていますので、引き続きよろしくお願いいたします。
【庄田部会長】  梶原委員、どうぞ。
【梶原委員】  大学の方では、こういったプログラムに応募する際の手続の煩雑性を訴える声を聞くのですけれども、大括り化の中で、どの程度、手続がシンプルになっているのか、効率化されているのかというようなお話をお伺いさせて下さい。また、大括り化として、拠点型産学連携制度などの御説明がありましたけれども、ほかのプログラムに対する申請上の簡素化はどの程度、御検討されているのでしょうか。
 大括り化での新規採択が20年からということは、大学からの申請も、やはり20年からということになるのでしょうか。そこのタイミングを教えてください。
【西條課長】  ありがとうございます。これもまさに委員がおっしゃるとおりで、制度がしょっちゅうころころ変わって、COIが終われば超COIで、しかも超々COIでというように、継続するためにプログラムを変えて、しかも中身が変わるので、そのたびにまた書き直さなければいけない。
 それから、特にこういった拠点事業については、一回公募したら終わりというのも結構あって、せっかく一生懸命、みんなで集まって議論して、一回落ちちゃった。次の年、トライしようと思ったら、できない。なくなっちゃって、また新しい制度が出てくるというようなところも、非常に現場からの不満というところは、書く書類の量もさることながら、これを検討するというところでも非常に困っているというお話は受けているというのもありまして、できれば、こういった拠点事業をばらばらやるのではなくて、しっかりとまとめて対応していく。
 当然、まとめることによる効率化というのはございますけれども、それ以上に、いいものをより作っていくというのと、それから、これはまだ検討を進めているところでございますけれども、先ほど言ったように、終わったら、また違うものに切り替えてというよりは、真にいいものであれば、当然、ずっと支援はできませんが、例えば、基盤になるところをどう支援していくのか。これはしっかりとチェックはしなければいけないと思っていまして、そういった形での対応というのは考えていきたいと思っております。
 あと、申請書等についての簡素化というのは、実は、A-STEPの方でも言われていまして、今回の秋のレビューでも指摘されておりまして、書類が異様に煩雑で、たくさん書かなければいけない。しかも、違うものに出すのに、また全部書き直さなければいけないというところもあって、この改善は、今回も秋のレビューで、これは産学連携のみならず全体のものとしても指摘を受けてございますので、これについては真摯に、我々も、利用者目線というのはまさにそういうことだと思っておりますので、対応していきたいと思っております。
【林委員】  済みません、関連で。
【庄田部会長】  林委員、どうぞ。
【林委員】  ありがとうございます。ただ今の研究申請手続の簡素化につきましては、おっしゃるとおり、文科省だけでなく厚労省などに関しても、問題があります。私が座長をしている規制改革の医療・介護ワーキングでも先週、AMEDへの研究申請手続きについて、国立大学協会からのヒアリングをしました。文科省では、e-Radを使う取り組みが進んでいるそうですが、行政手続全体のIT化で進めている、同じ申請は一回だけ、ワンスオンリーの原則に照らし、期限を決めて、申請手続の簡素化を進めていただきたいと思います。よろしくお願いします。
【西條課長】  はい。まさにその視点で、しっかりとやっていきたいと思っています。
 実は競争的資金については、平成29年から基礎情報については全部、使い回しという言い方はおかしいんですけど、共通にできるような形になってございますけれども、それ以外のところでも、提出書類とか、もちろん、目的が違うところはしっかり出してもらわなければいけないと思うんですが、特に共通で使えるようなところを、しっかりと我々も検討していきたいと思います。
 また、ちゃんと期限を切ってやらないと、はいと言ったまま、いつまでたってもやっていないということがないような形で進めたいと思いますので。
【庄田部会長】  よろしいでしょうか。それでは、議題1につきましては終わらせていただいて、議題2に移ります。
 議題2、地域科学技術イノベーションの新たな推進方策について、最終報告(案)ということでございます。
 最初に、生田室長から報告をお願いします。
【生田室長】  ありがとうございます。地域支援室の生田でございます。
 それでは、机上に配付させていただいております資料2-1と2-2に基づきまして、報告をさせていただきたいと思います。
 こちらは、前回の産業連携・地域支援部会が10月24日に開催されたときに、中間取りまとめということで、途中段階のものを御報告させていただきました。その後、4回、地域委員会を重ねておりまして、ほぼ最終段階にきておりますので、来週、最後の地域委員会を開催予定としており、途中段階ではございますけれども、現時点のバージョンということで御報告をさせていただきたいと思います。
 まず、資料2-2、本体の方ですけれども、委員会の構成メンバーが39ページ、後ろから2枚目のところにございます。こちらの委員の方々に、このたび御審議をしていただきました。そして、こちら産地部会の須藤委員に主査をしていただきました。
 次の40ページ、41ページに、審議の経過を書かせていただいております。第11回が2月13日と書かれている部分、これはまだ予定でございますが、この2月13日で最終的に報告書(案)の審議を終わらせる予定となっております。
 それでは、資料2-1、ポンチ絵に基づきまして、内容を説明させていただきたいと思います。
 まず、全体の構成なんですけれども、4章に分かれております。
 第1章、左上にございますのが、地域の科学技術イノベーション活動の基本的方向性、定義ですとか地域の捉え方、それから、地方創生の流れにおける科学技術イノベーション活動をどう位置付けていくかを規定しております。
 第2章は、その下に続きまして、これまで地域科学技術イノベーション推進委員会で、8つの機関からヒアリングをさせていただくとともに、一度は現地のヒアリングもさせていただきましたし、さらに、事務局として国際調査をした結果など、そのような国内外の地域の科学技術イノベーション活動の事例からの教訓ということで、モノ、ヒト、カネ、そして、イノベーション・エコシステム、この4つの観点ごとに教訓をまとめた章でございます。
 第3章は、右側に続いておりまして、第1章、第2章を踏まえた上で、一番重要になるところですけれども、科学技術イノベーションによる地方創生の実現に向けて、どのようなことが重要かという本論的な部分を記載しているところでございます。
 そして、これらをまとめた第4章、一番下の横に長いところでございますけれども、最終的に報告書でまとめていただいた内容を受けて、国としてどのようなアクションをとっていくか。特に地域科学技術イノベーション推進委員会は、次期、第6期の科学技術基本計画の策定に向けた議論をしていただいておりましたので、そのような観点を含めてまとめた内容でございます。
 それでは、順番に第1章から、内容をかいつまんで説明させていただきたいと思います。
 まず、第1章、1点目、地域の捉え方の部分については、ここに記載がございますように、科学技術イノベーション活動の特徴を踏まえた形で、地域を捉えていくことが必要ではないかというような形でまとめさせていただいております。例えば、地理的な境界、分野、組織といったものに関係なく、そういったものを越えた形でのイノベーション活動というのが通常であろう。それから、イノベーション活動というのは、一回やって終わりではなくて、試行錯誤を繰り返しながら、柔軟性を持って最適解を見付けていくことが必要であり、さらに、規定された境界等に縛られない形で、意欲ある行為者が順応性を持って活動することが肝要ではないか。
 こうしたイノベーション活動の特徴を踏まえた地域の捉え方といたしましては、その下にございますように、従来型の行政区画といったものにとらわれる形ではなくて、協働する自立した行為者レベル、つまり、括弧のところで書いてございますように、「組織を超えた人的ネットワークが形成された場」を引っ張る中心的な「主体」、ここで言う主体は、地方公共団体とか大学、産業界といった組織を指しておりますが、その主体を切り口として地域を捉えていくことが重要ではないか、このようにまとめさせていただいております。
 第1章の第2点目でございますが、ここは国ではなく、地域自身が科学技術イノベーション活動を行う意義・目的をまとめさせていただいております。これは言わずもがなかもしれないですが、イノベーション活動によりまして、地域経済の発展ですとか、誰一人取り残さない地域社会の実現といったところにつながるといった意味で、重要なツールであろう。さらに、一人一人全ての人が、他者との関わりの中で豊かさ、幸せを感じて、持続的発展と共存とを達成し得る。特に今、大変革時代と言われておりますが、こういった時代だからこそ多様性を持つ地域が科学技術イノベーション活動を行っていくということは、国全体としての多様性の確保、ある意味、国家基盤としてのレジリエンスの向上といったところにもつながっていくのではないかという形でまとめさせていただいております。
 3点目の地方創生の流れにおける科学技術イノベーションの位置付けでございますけれども、ここは、実は中間取りまとめでも同じ絵を提示させていただいておりましたけれども、先ほど来、申し上げておりますように、世の中が大変不透明な時代であるからこそ、多様性という強みを持った地域が、科学技術イノベーションを不可欠な起爆剤として利活用して、地域の強みを最大化させたり、地域の抱えている課題を克服する、それによって地方創生というものが実現するのではないか、そのような形でまとめております。
 続いて、第2章のところは、事例からの教訓ということで、1点目、地域資源でございます。これも書いてあることは当たり前かもしれないですが、幾つかのヒアリングの結果を受けた形としての教訓では、競争力の源泉である地域資源というのは、一言で資源と言いますけれども、コア技術、施設・設備といったハード物、そして、ハードではないけれども、例えば地域固有の課題ですとか固有の強み、風土とか文化といったものも含まれると思います。そういったものが多様で、これらをいかに戦略的に最大限引っ張って活用していくか、こういったことが重要ではないかというふうにまとめさせていただいております。
 2点目の資金のところでございます。ここも教訓という意味では、公的資金の導入に頼ることではなくて、将来的な拡大の可能性もあるような投資的な資本性の資金を導入したり、リスクマネーを供給したり、さらには、柔軟かつ自立的に富の循環ができる仕組みといったものを作っていくことが必要ではないかという形でまとめております。
 3点目の人材のところでございます。昨今よく言われるのは、コーディネーター不足の問題で、地域には特にいないという話が出てまいりますけれども、単に大学のシーズを企業につなげるコーディネーターといった役割にとどまるのではなくて、イノベーション活動全体を俯瞰した上で、特に昨今、ニーズ起点といったものが重要ではないかと。ニーズ起点の発想で、リーダーシップを持って事業全体をプロデュースできるような人材、さらには、地方ですと人口減というのが大きな問題ですので、そういったところにおいて技術系人材をどのように確保していくのかが重要ではないかということで、まとめさせていただいております。
 4点目のエコシステムの形成、オレンジのところでございますけれども、エコシステム、いろいろなところでこの言葉を使われておりますが、我々として、イノベーションが絶え間なく創出される状態のエコシステムを作るためには、キーワードとして、「分業かつ連携」が必要ではないか。やはりそれぞれ強みですとか専門性、能力といったものがあると思いますので、そういったものを活かして分業した上で、その分業した主体自体が相互補完によって連携の関係を築く、これが重要ではないかという教訓を第2章ではまとめさせていただいております。
 右側へ行っていただいて、第3章、このような教訓を踏まえつつ、今後、我々として、地方創生を目指して、どのように科学技術イノベーション活動を進めていくべきかというところをまとめております。
 1点目、そのようなことを検討するに当たりまして、そもそも現時点で我々が直面している社会の変化の方向性を踏まえて求められる価値、そして、その持続的創造に不可欠なエコシステム形成といった流れでまとめております。
 まず、社会の方向性でございますが、1点目は、Society5.0が目指す社会でございますけれども、これはここで言う話ではございませんが、持続可能でインクルーシブな経済社会、いわゆる経済発展と社会課題の解決が両立し得る人間中心の社会で、こういった時代だからこそ、資源やモノといったような貨幣的な経済的価値といったものだけではなくて、知識集約型で課題解決と新しい価値創造を同時にもたらすような、安心、幸せ、そして多様なニーズが満たされることによる豊かさといった社会的価値観といったものも追求していくことが必要ではないかというふうにまとめております。
 2つ目の社会の方向性としては、地方創生というものをここでは書いております。地方創生という意味で、人口減、本格的な少子高齢社会といった中では、なかなか所得や消費の右肩上がりというのは難しい。ある意味、成熟した社会であろう。そういった時代だからこそ地域の多様性というものを強みとして、イノベーションで生産性を向上させて、経済的価値と社会的価値を追求していくことが必要ではないか、このようにまとめさせていただきました。
 そして、この2つの価値を創出し続けるためにはどうしていくかという意味において、矢印の下でございますけれども、絶え間なくイノベーションが創出されるイノベーション・エコシステムが地域に根差していくことが重要であろう。そのイノベーション・エコシステムとは、矢印のところでございますけれども、議論した結果として、地域の主体、先ほど来出ております主要な地公体、大学、産業界等ございますけれども、これらが、イノベーションの3つの源泉(地域資源、資金、人材)の無秩序な流れの中に主体性を持って集まっているだけではだめで、3つの源泉との関わり合い、介在を通じながら相互作用を起こす。そして、その作用が成熟するにつれて、主体自身もそうですし、3つの源泉自体もそうですけれども、深化・向上し続ける状態、共存共栄していくような仕組み、これがイノベーション・エコシステムではないかとまとめております。
 では、そのエコシステム形成のためにこれから何が必要なのかというところで、突然でございますが、次のところにABCと書かれております。このABCの概念として考えておりますのは、先ほど第2章のエコシステムに関する教訓のところに、分業し連携するという言葉がございましたが、言葉ではそうですが、そのために何が必要かという観点で、4つ、ポイントとして上げております。
 1つは、まず連携を必要とし、連携することによるそれぞれのメリットが見出せる形での分業・連携が必要ではないか。つまり、やらされて連携してもしようがないよという意味合いもあるかと思います。
 それから、各主体の相互作用を成熟させる。それはどういう意味かというと、目的をちゃんと共有化しないと連携はなかなかできないという意味で、相互作用を成熟させるための、例えば地域社会の未来ビジョンの設定、そして、それを共有して指向するといったことが必要ではないか。
 3点目としては、課題解決を目的とした対策型というよりは、ビジョン達成を目指すような創造型の連携体制といったものが求められるであろう。
 4点目は、このような時代だからこそ機動性や柔軟性が重要で、固定観念、しがらみにとらわれずに、意欲ある多様な行為者間の相互作用というものが求められるのではないか。
 このような考え方に基づき枠囲みの中で記載しているとおり、ABCを定義付けしました。それは、自立した個であるプレーヤー層としての主体の意欲ある構成員が、自身の所属する主体の壁である境界や組織・体制を超えて、機動的に相互に連携し合い、個々人の能力も認めつつ、役割分担・分業することで、最強のチームワークが機能する創造型の実動コミュニティーということで、アクターズ・ベースド・コミュニティーといったものを地域に根差していくことが必要ではないかと、書いております。
 なお、地域の中でこういう連携体制というのは、米印のところにありますように、既に産学官金の連携体制というのはあるかと思いますが、これとの違いという意味においては、組織のトップによって構成され、意思決定機能を持つというのが従来型だったと思いますが、それだけではなくて、プレーヤー層により構成される実動コミュニティーというものを、報告書ではABCとして定義付けておりまして、この両者が相互補完していくということが重要ではなかろうかとまとめております。
 その下の部分でございますけれども、このようなABCが生み出すメリットを最大化するためには、プレーヤーが所属する組織の機能を最大化していかなければいけないと。その意味において、プレーヤーの役割、そして先ほど来、出ております地域資源、資金、人材との関わり合いはどういう関係が一番ふさわしいかというのを、下の3つ、この色は左の第2章の色と合わせておりますが、地域資源、資金、人材ごとに記載をさせていただいております。ここは特に主体ごとの役割という意味で、国、地公体、大学、産業界のような主体ごとに役割分担を記載させていただいております。
 全て読み上げると時間が掛かってしまいますので、幾つかピックアップしますと、例えば地域資源では、国はシーズプッシュとニーズプル、両側面から進めていくことが必要だろう。それから、メリ張りを付けていくということも求められるのではないか。また大学も、地域資源の発掘、地域資源の再生という意味において、課題設定能力とか地域理解力というものが求められるのではないかという議論がございました。
 また、真ん中の資金のところは、当然かもしれませんが、国としては、例えばエンジェル税制とか寄附税制といった、リスクマネーをなるべく地域に促すような環境整備というものが求められるだろう。一方で大学には、例えば資産マネジメントを強化し、コストの可視化に向けた改革といったものが求められるのではないか。それから、ここはやっぱり産業界に期待する部分も多くて、ギャップファンドの供給、特に昨今、大企業のCVCや個人投資家によるエンジェル投資といったものも増えておりますので、こういったことを期待していくという形でまとめております。
 最後の人材のところも同様に、主体ごとに書いてございますように、一番深刻な課題は人口減で、ここはやはり地公体が中心になりながら、ほかの主体と連携をして、そもそも地域の資源を見える化したり、地域に来る人にとってのインセンティブを付与したり、魅力ある労働市場を作っていくといったことで、単に地元に人材を定着させるという概念ではなくて、地元に呼び込む、還流させるといった観点が必要じゃないか。それから、リカレント教育プログラム、これはいつでも誰でもが学べる、そのようなプログラムというものも結構重要ではないかというような御議論がございました。
 こうした議論を踏まえまして、最後、第4章のところでございますけれども、この報告書を踏まえた具体のアクションとしては、どのようなことを我々としてやっていくべきかというのを規定しています。
 左側はどちらかというと第6期の基本計画に向けての概念的なものを整理しておりまして、1点目、社会的価値の創造の重要性をここでは記載しております。
 2つ目は、先ほど定義付けをしましたABCを、若者も巻き込んだ形で、人材の流動性というものも狙えるという意味において、こういったものを地域に創るよう誘導していくことが必要ではないか。
 3点目は、本文の中で幾つか記載がありますが、地公体自身がイノベーション活動になかなか入ってこない現状を鑑みまして、ニーズプル型の地域科学技術イノベーション振興策の展開といったものが求められるのではないかという考え方を整理し、具体のアクション、当面のアクションとしては、右側4つに整理をさせていただきました。
 1つめが、ABCを核として、地域資源を踏まえて未来社会ビジョンを描き、イノベーションによりその実現を指向することで社会的価値の創造を目指すプロジェクトを、まず、モデル事業として普及していく。その際には当然、規制の緩和ですとか広域連携というのも先導していくことが必要だろう。
 そして、ABCを作るといっても、どうやって作ったらいいのかというところが、今の時点においてはなかなか解がないといった状況でございますので、先駆的なABCの事例を横展開していくことで、具体的なプロセスですとか方法論といったものも提示していくことが求められるだろうと考えております。
 3点目、社会的価値というものを強調してまいりましたけれども、そもそもそれを測るための指標といったものが、まだ明確でないのではないかというようなこともございますので、指標開発に向けた検討も、我々としてはやっていくことが必要だろうと考えております。
 最後、4点目は、当然のことでございますが、地方創生という意味合いにおいては、科学技術イノベーションだけではないと思っておりますので、関係府省の政策目的に基づく方策を総動員した形で、政府全体として進めていくといったことを、アクションとしてまとめさせていただきました。
 事務局からの説明は以上でございますけれども、続いて、主査を務めていただきました須藤委員から、補足をよろしくお願いします。
【庄田部会長】  須藤委員、どうぞ。
【須藤委員】  今、生田室長の方から端的に説明してもらいましたので、余り余計なことを言うと、頭の中がこんがらがってしまうかなと思います。
 とにかく地域という視点、まずそれを第一に置きまして、地域の中でイノベーション・エコシステムを成熟させるにはどうしたらいいかという議論を1年間やってまいりました。よく出てくる、ヒト、モノ、カネというくくりと、それから、実際に動く主体、自治体とか大学、産業界の中でも大企業、ベンチャー、金融といろいろあると思うんですけど、そういったものがうまくシンクロしながら成熟していって、イノベーション・エコシステムをいかに作り上げるか、そして、それが持続的に成長していくかということを議論してまいりました。経済的価値、あるいは社会的価値というのも頭に置いて進めてきております。
 生田さんからの説明で、結論の一つとして、ABCという、アクターズ・ベースド・コミュニティーという単語が出てきています。実際に動く人たちがきちんと地域に根付いていかないとだめなのではないかということで、ABCの大切さをうたったのが一つの特徴になっています。
 月1回、ちゃんとやりまして、やらされたといいますか、私もいろいろな委員会に出ていますけど、これだけ毎月きちんとやる委員会は初めてでして、結構大変だったんですけど、もちろん委員の方も非常に積極的に出ていただきまして、よかったと思います。何よりも、地域支援室の事務局の皆さんが非常に頑張ったんじゃないかなと思います。この場をかりて御礼を申し上げたいと思います。
 最後に、これは一応、いろいろなアクションがありまして、当然、文科省の委員会ですので、国として何をすべきかというのが最後まとまっていますので、この辺も比較的力点を置いて考えたところですので、是非、きょう議論していただきたいと思います。当然、第6期科学技術基本計画にこれを反映してもらえるように動くことになると思います。
 それから、もう一つのお願いは、イノベーション・エコシステムは様々な意見が出まして、委員の中にも、それを大学で教えている先生が何名か入っていますので、それぞれ先生によって意見が違う。それから、ベンチャーの人もいますし、地方で頑張っている人もいましたので、それぞれが勝手にじゃなくて、自分の思うようなエコシステムというのを最初言って、結構まとめるのは大変だったと思うんですけど、それなりに一応まとめたつもりなんですが、この場にも恐らく専門の方がいっぱいいらっしゃると思います。まだ最終報告、これから最後の修正をしますので、是非、この辺はちょっとどうなんだろうというような意見がきょう聞けると、参考になるかなと思っていますので、その辺もよろしくお願いいたします。
【庄田部会長】  御説明、ありがとうございました。
 前回の部会で中間取りまとめを御報告いただいて、きょうは最終報告(案)ということです。もう一度、委員会をお開いて、最終報告をまとめるということですので、きょうは部会の委員の皆様からも、御意見を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
 菅委員、どうぞ。
【菅委員】  ありがとうございます。先ほどおっしゃった、エコシステムのことですけれども、これを拝見すると、理念的なことはたくさん書いてあるんですけれども、エコシステムが形成されたときに、その資金なり人材、私が見る限り、やっぱり資金が一番重要なんですね。人材は資金がないと集まってこないので、そういう意味では、資金をどうやって還元するかというのをもうちょっとクリアに最後、書いた方がいいんじゃないかなと思うんですね。
 というのは、渡部先生もここにいらっしゃるので、ちょっとお聞きしたいことでもあるんですけれども、例えば東大のエコシステムというのがまだちゃんとできていないように私は感じていて、そういう産業から生まれてきた、あるいは、イノベーションから生まれてきたお金が大学に還元されたときに、それがちゃんとイノベーションの次のステップに行くように、エコシステムとして働いているのかというと、見えないわけですね。
 だから、大学のエコシステムですらそんな状況で、これが地域になったときに、果たして本当にちゃんとそれがエコシステムとして回るのか。もう少し地域の方が回りやすいかもしれないですが、そこはやっぱりクリアに、こうしたときにはちゃんとこういうふうにしなさいよというのがあってもいいんじゃないかなという感じがします。
【庄田部会長】  よろしいですか。木村委員、どうぞ。
【木村委員】  木村でございます。よろしくお願いいたします。
 大変うまくまとめていただいているという印象を受けました。エコシステムは地域ごとに、出てくる絵が異なると思うので、これがエコシステムだと書き切れるというのはなかなか難しく、そこをうまく抽象化して纏めていただいと思いました。
 地域のエコシステムの形成の中で、特にビジョンの共有というところは、非常に大事なところです。例えば、京大のデザインスクールが立ち上がる時も、5研究科が一緒になると、皆さん全然違う学問領域ですから、全く違う方向を向いていらっしゃる。ただ1点、非常に高いレベルでのビジョンは、皆さん共有でき、それならばということで協力体制に入ったというところがあるんですね。地域のエコシステムについても、多様な方がいろいろなプレーヤーとして参加されてくると思います。そこで皆さんが合意できるビジョンを常に意識できれば、それぞれの地域でのそれぞれのエコシステムを形成できる可能性は高まると思います。
 また、少し細かい話になりますが、特に若手のプロデューサー人材というのが、これからとても大事なポイントになると思います。一方で、ベンチャー支援制度というのは多々ありますが、若手のプロデューサーあるいは候補人材がトライ・アンド・エラーしながら訓練を受ける場というのが、制度の中ではまだできていないかなと感じます。冒頭の来年度予算の御説明があったときに大括りのというところがあったんですが、あのあたりのところで、次世代のプロデューサーを育てるような場作りみたいな部分も、制度の中でご検討頂ければと思います。
 以上です。
【庄田部会長】  ありがとうございます。先ほどの菅委員の資金のエコシステムのお話について、文部科学省側、あるいは委員の皆さんの中から、もう少し、具体的にエコシステムが動くようなところで、具体的な工夫などについて、何か御意見はありますでしょうか。
 渡部委員、どうぞ。
【渡部委員】  今のお話も含めてなんですけど、まず、エコシステムでいろいろな議論があってと言われていて、委員のメンバーを見ると、確かに、経営学ではイノベーション・エコシステムの第一人者の福嶋先生とか入っていらっしゃるから、苦労されましたか。
 これは学術ではないので、別にプラクティカルに整理をして、それがちゃんとオペレートできるということで割り切っていいと思うんですけれども、そういう意味では、ヒト、モノ、カネというのは、確かに産業界的にはあれかもしれないんですけど、基本的に知識は当然入ってくる。知識、資材みたいな、だから、我々が考えると、知識と人材と資金との循環なんだと思うんですよね。だから、モノという感じとはちょっと、もしかすると違うかなという感じはしますが、それも含めて、無視していただいて結構ですので。
 何が問題かというと、ここで具体的に、さっき菅先生が言われたように、じゃ、どうするのというところで、例えば今の資金の循環で言うと、大学に戻ってくるという仕組みを考えたときに、エクイティーファイナンスかドネーションぐらいしかないんですよね。だから、それは対価関係のある共同研究とか何とかの場合は、ちょっとまた別ですから、実際そこがストックとして戻ってくるというところは、エクイティーファイナンスをいじるか、ドネーションかで、ドネーションはそういう意味で、税制とかそのような話で、促進するしかないけれども、あと、エクイティーファイナンスと接続するというところをもう少し、いろいろ規制緩和とかやっていく必要があるんだろうなという気はします。
 今回、研発法人は直接出資が認められるわけですよね。だけど、大学はそういうことは今できていないわけですね。それは、理由は恐らく、研発法人であれば、専門的に特定の分野で出資をするということで、限られている対象に対する出資ということと、大学は恐らく、解禁すれば全分野になっちゃうので、非常にそこは、特に自己資金であったとしても、説明責任上どうなのかとか、いろいろな議論があるかと思います。
 ただ、そういうところで、ジョイントベンチャーみたいなものを大学と作りたいというニーズは結構あるんですね。それは実は、ベンチャーでスタートアップから育ててくるということと、大企業との連携の成果として、ジョイントベンチャーみたいなもので出資ができないかという話はあります。
 これをまともにやると非常にハードルが高いと思っていまして、今、経産省の制度で技術研究組合というのがあって、あれは、実は組合員になると、今、技術研究組合法の、前回、10年前ぐらいに改正していて、ベンチャーに転換できるんですね。そうすると事実上、株主になるんですよね。だから、ジョイントベンチャーは実際、それでもできるんだけど、ちょっとあれは使いにくいので直してもらいたいと。
 それから、実際にまだ事例が出ていないんですけれども、大学が組合員になっていればそういう格好になるはずなんだけど、それは多分、その時点で文科省は想定していないんじゃないかという気がするので、同時にその辺を整備していくと、恐らくジョイントベンチャーが、しかも、大学のお金を使うということでない形で実現できる制度ができる、そのようなことをいろいろ工夫していく必要があるんじゃないかなと思います。
 それから、この中で見ますと、産業界のところで、資金の循環のところでギャップファンドの供給と書いてあるんですが、これは施策として、ぱっと見て今、見当たらなかったんですが、何かありますかね。この辺は本当は大事だと思うんですけれども、施策として何かあり得るかというところは、ちょっと御質問です。
【生田室長】  ありがとうございます。渡部委員の御質問は、産業界からのギャップファンドの部分ですよね。
【渡部委員】  これは下のところに、ABCが生み出すメリットの最大化に向けての3つで、資金のところの下の産業界に、ギャップファンドと書いてありますよね。
【生田室長】  はい。これは、さっき少し申し上げた、大企業のCVCからのギャップファンド的なファンドなどを想定しながら書いていたので、余り明確に施策として出てきたわけではありませんでした。
【渡部委員】  今の話で、やっぱり具体的にしていかないといけないので、ここを施策として、じゃ、どういうことで、4大学、幾つかの大学でやっていますけど、やっぱり効果はあるということを随分言っていますので、それをまず検証しないといけないですね。その効果がどういう効果なのかということを検証した上で、産業界とどういう形で仕組みを作っていくかということをやらないといけないと思います。
 それから、ちょっと長くなっちゃうんですけれども、これは特に地域の問題を扱っていますので、先ほどの中でもあったと思うんですが、ともかく地域は人がいないんですよね。本当に人がいなくなっちゃって事業承継が難しいという状況が、ここ2年ぐらいはすごい。その中で、イノベーションとかいうことを扱っていくということで、そこにも工夫が要ると思います。
 この間、山口銀行の社長さんの施策を聞いていて、これは非常におもしろいなと思ったんですけど、大企業の兼業、副業で、ともかく地域の新しい産業を盛り立てていこうと。これは実際にやると、希望者は意外に多いらしいです。地域に貢献したいという人は多いんですね。もう一つは、銀行なので事業評価はできているので、事業承継が難しいところの事業を継いでくれるという前提で公募をする。その個人に対して投資をするんですね。そこで事業承継したときに、出てくるプロフィットでリターンを取るみたいな、いろいろ工夫されていて、何を言っているかというと、人とエクイティーファイナンスと、そういうものは地方銀行と組み合わせをして、そこに何かイノベーションを持っていくみたいな感じですね。だから、ベンチャー支援もその中でやっている。
 そういう何か具体的に、ここにいろいろ並んでくるといいかと思います。
【庄田部会長】  ありがとうございます。
 先ほどの木村委員のプロデューサー人材の関連では、何か事務局からコメントはありますか。
【生田室長】  プロデューサー人材、これも中で議論があったのは、よくファンディングによる5年間のプロジェクトでプロデューサー的な方が雇われることはあるんですけれども、その後、6年目になると散ってしまうというか、どこかへ行ってしまうというのがあるので、1つ事例として出てきたのは、大学の要職、ちゃんとした常勤の正規ポストみたいなところに、プロデューサー的な、地域の全体を俯瞰できる、イノベーション活動全体を見られるような人を配置するということも結構重要じゃないかと。そこで育てていくということも含めてやっていくことが必要であろうといった御意見もありました。
【庄田部会長】  佐々木委員、どうぞ。
【佐々木委員】  この委員の中で地方にいる人間として、この資料を見まして、地方の方の熱い思いとか、苦悩とか叫びみたいなものも入っていたというのはすごく印象的でした。
 ただし、これからいろいろな予算要求等をする中の、すごく理論武装のいい書類にはなっているかなと思いますけれども、具体化していただくというところで、どういう施策をするかがこれから大事になってくるかなと思いました。
 いろいろな方の御意見があって、私も賛同するところが多いんですけれども、地方で一番欠けているのは、まさに今も出ましたようにアクターズのところが、要は、いないというところが一番根本的なところだと思います。それがいないので、いろいろな施策を打っても、予算を付けても、結局、人がいなければ絵に描いた餅に終わってしまいがちだというところまで、地方は追い詰められているというところだと思います。
 なので、今さっき、まさに出てきましたけれども、私は個人的には、お金も大事なんですけど、いかに安定的な雇用を地方に確保するか、特に地方の大学に確保するかというのが大事だと思います。今、大学も運営費交付金がどんどん減らされてきていますので、支援者も含めて、なかなか人の確保は難しい。
 さらに、実はもう一つあるのは、すごく就職はよくなってきて、3大都市圏の大々企業さんに正社員でみんな持っていかれてしまうというところが、まさに今、置かれている状況です。
 なので、本当に政策を総動員する中で、大学は文科省の運営費交付金とか頂いていますし、最近は内閣府の事業とかで地方創生で、自治体も入ってやりましょうということになっていますし、もちろん民間さんの投資もそうだし、地方公共団体も入って、なおかつ、VCさんとかの投資も集めた上で、どうにか人を確保していただくというところを最優先にやっていただければなと思います。
 例えば、お金を投入すればいいという話ではなくて、大体、単年度予算になってしまいますので、難しいとは思いますけど、いろいろなステークホルダーが投資して、7年のポストとか10年のポストをきっちり確保するだけでも、その人が活躍していただけるというのがありますし、意外にいいなと思うのは、50過ぎて、自分は地方で貢献したいというような人が戻ってきていただくと、経験も持って地方に来ていただけるというのがありますので、コーディネーター的な50過ぎぐらいの経験を持った方というのも大事ですし、やはり、忘れてはいけないのは、若い人材のポストも作ってあげる。コーディネーターという話がよく出てくるんですけど、若い人のポストを作って、実際にイノベーションする人を雇用するというのが本質的には一番大事かなと思いますので、その両方をにらんで、何しろ人に投資していただきたいなと思います。
 以上です。
【庄田部会長】  梶原委員、どうぞ。
【梶原委員】  イノベーションが起きたかどうかというのは、結局、それがサステイナブルに回っていけるようになっているかどうかだと思います。人や資金など、いろいろな循環がうまくできるかどうかということが重要です。具体的にプロジェクトやモデル事業を始めるときに、例えば、5年後にどのようにサステイナブルになるように、どう回していくのかというような、ビジネスモデルの構想を一番最初から持つ方がよいと思います。
 先ほど、採択に力を入れるのではなくて運用に力を入れるということをおっしゃいましたが、まさに、事業を継続していく中で、どんな形で動いているかというところをウオッチしていって、変えるものは変えていくということがよろしいのではないかと思います。その際、最初からある程度のビジネスモデルを構想しておくのが一番重要かと思います。
 それから、最終報告書33ページのプロデューサー人材について、例えば2番目の丸では、「論文産出自体が目的化して」いますという表現、3つ目では、「大学の研究者の社会実装に向けた活動を評価する」という表現があります。この辺が私としては、いいねと思ったのですけれども、A3の資料の中では余りクローズアップされていないので、重要度の温度差が違うのかなと思いました。そういったところを見直していくと、研究者が評価されるポイントが明確になり、社会実装に向けた積極的な活動をすることへのインセンティブになるのではないかと思います。
 それから、A3の資料の一番最後のところで、3つ目のポイントに「社会的価値をはかるための指標開発」とあるのですが、これは、何のためにこの指標を役立てるのか、もう少し思いを書かれた方がよいと思いました。報告書を見ていても、重要そうな気はするのですが、何のためにというところが分かりませんでした。、各地域、地方でそれぞれの重点を置くべきところは異なってくると思います。単純に横並びに使うような指標ではないと思うのですが、その辺を御説明いただければと思います。
【庄田部会長】  生田室長、どうぞ。
【生田室長】  ありがとうございます。最後の社会的価値をはかる指標開発については、おっしゃるとおり、地域によって重きを置くところは違ってくるかと思います。ただ、そもそも論として、どういう軸で測るべきかという軸すら、なかなか我々として、持ち得ていないと言ったらおかしいんですけれども、経済的価値の方は、昔から言われている売上げ額とか、共同研究の数とか、プロジェクトを進めるに当たって、5年後の目標設定をするときの軸が明確であるのに対して、社会的価値というと、何が設定され得る軸なのかということすら、何となく、まだ定まっていないという印象を持っておりましたので、具体的な施策をするに当たって、我々がその社会的価値を重要視している割には、ゴール設定のところのゴールの作り方をもうちょっと規定をしておきたいという意味合いで今回、具体的アクションのところに書かせていただきました。
【庄田部会長】  後藤委員、どうぞ。
【後藤委員】  JSTの後藤です。3点、お話しさせていただきたいと思います。
 第1点目は、今、話題になりました大学の研究者の評価ですけれども、御指摘されたように、論文に偏っているという話がありますが、カナダのファンディングエージェンシーの方とお話をしていたら、同じような大学の研究者を何で評価するのかという質問をいたしましたら、3つあるんだと。1つは論文だと。2つ目は特許だと。3つ目は、広い意味の技術移転で、産業化から得られた資金の額だというふうに一応、3軸持っているんだというお話があって、そういうバランスをとったような在り方をすると、大学自身は特許だとか技術移転の額は評価されていますけど、研究者までおろしてくるといいのではないかと思いました。
 2番目のお話ですけれども、ABCというのを打ち出されて、これは非常にいいと思います。私どもの地域事業の経験でも、東北で、ある中小企業ですけれども、非常に強い技術を開発されて、世界レベルの技術であり、これをプレスリリースしたところ世界中から問い合わせが来たというのがあります。それのシーズはどこかというと、ちょっと場所を忘れたんだけど、遠く九州の方だったんですね。ですから、地域の会社だから地元のシーズというわけではありませんで、広い範囲でシーズとニーズが、結び付くといいのではないかと思います。
 3点目ですけれども、先ほど、エクイティーファイナンスというお話もありましたが、私どもも事業をやっていて、大学で生まれた研究成果が、数は多くないんですけれども、中には巨大な産業というか、事業を生むようなものが出てきています。巨大というのは、何兆円規模の事業になるのではないかというものもあります。ですから、そういうものができるだけ適切な形で大学に資金として戻ってきて、次の研究投資ができるようなことは、是非、仕組み作りが進めばと。今のままだと、なかなか大学でそれだけ大きなお金をハンドリングするのが難しいんじゃないかとよく聞きますので、是非、そのあたりもこれから改善されればと思いますので、よろしくお願いします。
【庄田部会長】  大変たくさんの御意見、コメントを頂戴いたしました。
 須藤委員、どうぞ。
【須藤委員】  いろいろとコメントをありがとうございました。きょうの御意見をまた反映して、最終報告に向かっていきたいと思っています。
 最初に出ました資金の還元とか循環という話は、実は中間報告のときも、その辺が少し足りないんじゃないかという指摘を受けていまして、あれからいろいろ、徳島の例とか、浜松の例とか、比較的うまくやっているところの事例は調べたりして、報告書の中には入れてあります。
 ただ、そこから、こうしたらいいというのは、まだそこまで、なかなか難しくて出ていないんですけど、成功っぽい事例は報告書の中に入れてありますので、その辺を参考にして、今後、動いていくことになるかと思います。
 それから、人については、本当に地域で人が足りないというのは、いろいろなところから言われています。そういうこともあるので、やはり人に注目、ちゃんと置かなければいけないというので、アクターというのを入れたつもりなんですけれども、そこは重要だというのはよく分かっています。
 それももちろん、これからもう少し議論しますけど、先ほど西條さんに説明していただいた新しいプロジェクト、INSPIREというのもありますので、そのプロジェクトを活用しながら、人の育成とか、あるいはマネタイズの仕組みとかもできるんじゃないかなと、そっちにも我々は期待しています。そっちにうまくつなげるような書き方にしたいと思います。
【庄田部会長】  ありがとうございました。
 栗原部会長代理、どうぞ。
【栗原部会長代理】  須藤委員がフィードバックを受けてまとめられた後で、すみません。
 中間報告のときに、資金の点について、もう少しご検討頂くことを期待しましたところ、今回、本当にいろいろな事例に基づいて、様々な選択肢が書かれているかなと思いました。どうも有難うございます。
 全体に対する印象としましては、いろいろなケーススタディーも入れながら、かつ、資金と人材についても書き込んでいただいているというところは、すばらしい提言、報告ではないかと思います。
 具体的な中身についてなんですけれども、1つは人材について、34ページだと思いますが、地域課題に目を向けるということでの人材という中に、高校生のうちから地域の課題に触れて、肌身で感じているということが重要だと言われています。だからといって、大学で地域に留まるというわけではなく、一旦どこかに出て、また地域に戻ってくるというようなことも重要ではないかとおっしゃられていますけど、やはり高校とか中学時代に地域に触れるということが、人材の育成の中で非常に重要だと思いますので、そういったところを書き込んでいただいているというのは大変良いと思います。
 それから、資金のところで、31ページになりますけれども、先ほどからギャップファンドというお話がありまして、具体的にどんなイメージですかという御質問もありました。ここで、リスクマネー(ギャップファンド)とありまして、広い意味でリスクマネーなのかもしれませんが、創業前の資金の支援でリスクマネーより前段階ではないかと思います。リスクを見極めてエクイティー資金を提供するのはかなり厳しいというか、必ずしもそういう目線ではない、でも、操業前の資金的な支援も必要だということではないかと思いますので、そういうものをギャップファンドというのであれば良いと思います。エクイティーとかリスクマネーという前段階の、創業前のファイナンシャルなサポートということかと思いました。
 ですから、最近ですとソーシャルファンドとか、あるいは、トライアルファンドとかエンカレッジファンドのような性質かなと思います。こうしたリスクマネーより前段階のものも必要だと思いました。
 それから、そういう段階において、企業がいきなりエクイティーを出すかと言うと必ずしもそうではなくて、新しい芽と企業の接点については、例えば共同でマーケティングをするとか、あるいは、実験場として利用するとか、そういういろいろなつながりも考えられます。地元での協力というのもあると思いますし、その地域をリビングラボにして一定の実証するというような形での結び付きもあると思いますので、そういうふうにして、技術革新が地域に落とし込まれていくような形もあるのではないかなと思います。
【庄田部会長】  ありがとうございました。
 それでは、地域科学技術イノベーション推進委員会で最終報告をまとめていただくということで、次の議題3に移りたいと思います。
 議題3に関しましては、第10期産業連携・地域支援部会に向けて(論点整理)ということで、西條課長から説明をお願いします。
【西條課長】  それでは、お手元の資料3に基づきまして、「第10期産業連携・地域支援部会に向けて」ということで、今回、第9期最後ということになりますので、先生方から、第10期に向けて、こういった論点をもう少し詰めたらという御意見も頂きたく、まず最初に、論点整理ということで、これはあくまで御参考でございますけれども、資料を用意させていただきましたので、簡単に御説明した上で、御意見を頂ければと考えてございます。
 1枚目に、論点整理とあるんですが、その前に、これまで、今の立ち位置がどうなっているのかというところについて、ちょっと御説明をさせていただきたいと思います。
 まず、1枚めくっていただいて、参考資料の次で、3ページのところでございますが、まず、第5期科学技術基本計画、ここでまさに産学連携、イノベーションについて、どういった形で位置付けられているかというところでございますけれども、一番上にありますように、第1章の基本的考え方の中で、(4)基本方針、第5期科学技術基本計画の4本柱の中の、まさに人材、知、資金の好循環システムの構築、先ほどから議論になっているところ、これが一つの柱として位置付けられておりまして、具体的なものにつきましては、特に下の3つ目の四角で囲んでございますけれども、第5章に、「イノベーション創出に向けた人材、知、資金の好循環システムの構築」ということで、具体的にどういったものに取り組んでいくべきかということが書かれております。
 特にこの中で、第5期において、よりキーワードとして取り上げられているという意味では、本格的な連携をしていくということ、まさに次のステップに上がっていくべきものだということで、ここにございますようなオープンイノベーションを推進する仕組みの強化、また、新規事業に挑戦する中小・ベンチャー企業の創出強化、また、我々に特にという意味で言うと、一番下にありますような、「地方創生」に資するイノベーションシステムの構築ということで、ここにいろいろと第5期として取り組むべきものというところが、こういった位置付けをされているところでございます。
 それがスタートしてから、どういった状況にあるのかということでございますけれども、その次のページをめくっていただきますと、第5期基本計画の主な関係目標値というものを掲げさせていただいております。
 第5期に関しましては、これはいろいろありますけれども、特に我々のところでいいますと、企業からの共同研究受入額、また、大学の特許実施許諾件数を、いわゆる基準年度から両方とも5割増にするということを、数値として掲げさせていただいておりまして、現状としては、ここにグラフがありますように、共同研究の受入額については390億ぐらいだったのが、2016年で大体526億ぐらいにまで伸びてきております。実際には1.35倍ぐらいになっております。最後、2020年が1.5倍ということでございますけれども、かなりいいスピードで伸びてきています。
 また、大学の特許実施許諾件数についても、9,800件から1万3,800件というような形で、今現在、2013年基準からして2016年のところでも1.4倍ぐらいという形になって、着実に伸びてきているところでございます。
 一方で、それぞれどういう形で進んでいるのかというデータだけ示させていただきますが、5ページのところにございます、まさに大学等の研究成果を社会還元する産学官連携サイクル、これをしっかりとサイクルを回していくということで、菅先生の方からもお話がありましたけれども、1つは企業との共同研究、また、ライセンスを通じて、また、ベンチャー創出をということで、大学が保有している、大学から出てきた研究成果・知的資産を、大学等の研究成果の社会還元という形で流していく仕組みとしてある。これが、実際にまた企業からの投資拡大によって、まさに財務基盤の強化、基礎研究や何かに回っていく、こういった仕組みをしっかり作っていかなければいけないということでございます。
 このための施策を今期の中でもいろいろと進めさせていただいているところがございます。まず、共同研究に関しましては、その次のページ6のところに、産学官連携施策の経過ということでまとめさせていただいておりますが、細かいことをお話しすると時間もございませんが、まさに、システム改革のお金、また、プロジェクト型、先ほど申し上げた拠点型みたいなもの、それから、ベンチャー創出支援というような形で、特に政府のアジェンダという意味では、産学連携が第2期ぐらいから本格化しておりますけれども、その中から、今、第5期の時点においては、伸びてきているけれども、これを「組織」対「組織」の本格的なものにしていくという流れの中で、実際に7ページには、進展の状況と課題がございますけれども、先ほど申し上げたように、数字は伸びていますが、ただ、1件当たりの規模という意味では、7ページの右側にありますように、大学においても1,000万円以上は4%、それから、研究開発法人、これは文科省ですけれども、これも1,000万円以上は7%というような形で非常に規模が小さい。これをちゃんと組織的なものにしていくということで、いろいろな取組をさせていただいているということです。
 8ページ、9ページは、「組織」対「組織」といった先進事例ももう出てきているか、実際に動きはございまして、大阪大学と中外製薬、これはWPIをベースにしたものでございましたけれども、「組織」対「組織」ということで10年間で100億とか、COIの関係では北大と日立で、日立さんの方はいろいろなところ、ほかにも作ってございますけれども、かなり組織的な動きは出てきているということになってございます。
 9ページは、COIのそれぞれのプログラムと、あと実際にも、民間からのリソース提供額も非常に今、伸びてございまして、そういった意味での動きは出てきているのかなと。
 それから、非競争領域という意味で、10ページにOPERAのデータも出させていただいておりますが、この中では、OPERAの特徴としては、こういった非競争領域のところに博士人材をしっかり雇用して、民間との連携という意味でやっていただくということで、雇用の人数も増えておりますが、これから修了生がどういった進路に行くのかといったところもしっかりと見ていかなければいけないのかなと思ってございます。
 11ページ以降は、まさに大学発ベンチャー創出に関する文科省の施策ということで、こちらにまとめさせていただいておりますが、12ページのところに、ベンチャーに関する現状と課題ということで、大学発ベンチャーの市場価値というのは非常に伸びて1.8兆円、菅先生のところを筆頭に、かなり伸びてきているという形になっておりますが、ただ、海外に比べると起業意欲といったものが低いというところを改善していくということで、先ほどの予算でもお話しした、STARTやEDGE-NEXTといったものに取り組んでいるところでございます。
 13ページは、STARTの事業の成果ということで、実際にこういった事業を展開することによって、かなりいい企業や何かも増えてきていますし、実際にベンチャーキャピタルからも出資をしていただくという案件は増えているということでございます。
 14ページ以降は、今度は地域の方ですけれども、これも、これまで打ってきた施策をまとめさせていただいてございまして、知的クラスターからスタートして様々な事業を展開しているところでございます。こちらは、先ほど地域委員会の話もありましたけれども、今後どういった視点をやっていくか。これまでの事例としては、知的クラスターや都市エリアで実際にどういったものができてきたのかというところは、資料として付けさせていただいております。
 現状、こういった立ち位置になる中で、1ページに戻っていただきますと、まさにこれから第6期の基本計画に向けてということで、第10期産業連携・地域支援部会に向けて、社会構造が急速に変化する中で、特に将来の不確実性も増えている中での国に求められる役割、ここでは文科省となりますが、国全体の中で、また文科省の役割ということで、どういったことをしていかなければいけないのか。
 特に、次期科学技術基本計画、これは2021年からの5年間でございますが、次の10年ということで言うと、2030年を見越して、どういったものをとっていかなければいけないかということで、下に書いてありますのは、あくまで、これまでもやってきていることでございますが、1つは、「組織」対「組織」による本格的産学連携、第5期に本格的ということでスタートして、実際にOI機構のスタートをしたということがございますけれども、これをどういった方向にまた持っていかなければいけないか。
 また、2つ目は、大学発ベンチャーのところでございます。特にアントレプナーシップを持った人材育成ということで、9期に当たるところではEDGE-NEXTが平成29年からスタートしておりますが、こういったところもどういった形で進めていく必要があるか。
 また、先ほど御議論いただきました地域科学イノベーションの創出のところです。これは先ほど、もう少し具体的なものとして我々が取り組まなければいけないこと、これをしっかり示していかなければいけないと思いますけれども、そういった視点。
 また、その他でございますけれども、民間主導の研究支援サービス等いろいろなアクターがでてきており、政府の役割というのもだんだん変わってきているという中で、民間の取組とうまくマッチしながらやっていく方法を考える必要があります。どちらかといえば政府が主導で云々というよりは、もう少しそういった活動を支援していくような仕組みや、それから、我々つい頼りがちなのが予算手法という形では、財務省に行ってお金下さいと言わないとスタートできず、スピード感覚にしても、それだと1年ごとじゃないとできないという話になってしまいますので、そういった意味では、スピード感、それから、世の中が変わっていく中で、政府というか、行政側のやるべきことも変わっていきます。
 こういった中で、どういったことが我々としてタッグを組んでできるのかといったことも考えていかなければいけないんじゃないかということで、簡単に論点を示させていただきました。
 是非、次期に向けて、先生方の御意見を頂ければと思っております。以上です。
【庄田部会長】  1ページ目の「第10期産業連携・地域支援部会に向けて」に論点を整理しています。一方、これまで文部科学省で行った施策については、特に産業連携関係は6ページに、先ほど議論のあった地域支援の関係では14ページにまとめています。
 これらの過去の施策に加えて、この論点整理の下で、何を第10期で御議論いただくかという御意見を皆さんから頂戴したいという趣旨でございます。
 佐々木委員、どうぞ。
【佐々木委員】  佐々木です。2年間、本当にいろいろ勉強させていただきました。ありがとうございました。
 特に、論点整理のペーパーを頂きまして、申し上げたいことはたくさんあるんですけれども、3点だけ、焦点を絞ってお話しさせていただきたいと思います。
 まず、論点整理の(1)のところで、「組織」対「組織」による本格的産学連携ということで、これに向けてOPERA、OI機構、COIというのを作っていただいたということで、いろいろなところで成果が出てきているということは言えると思います。
 ただし、大学の現場にいる私もまだ若手教授なので、まさに研究もばりばりやって、教育もやっているんですけれども、少し感じるのは、ちょうど15年ぐらい前、若しくはその前は、大学は研究室ごとのばらばらで、要は個人商店の集まりということだったので、それに対して、まさにこのようなイノベーションの施策だったり、クラスターだったり、あと、高等教育局の方でも、21世紀COEプログラムからGCOEとかリーディングという組織を作ってきたというところは比較的、フェーズとしては成功してきているのかなと思います。
 今、私とかが現場で感じるのは、例えばOI機構なんかで、要は1億数千万、国も支援して、民間からそれを上回る資金ということで、数億円ぐらいの拠点がいろいろな大学にできつつあるというのは分かるんですけれども、他方、大学の側から見ると、そういうところに応募して動かせるところは、各大学さんともそんなにないんですよね、ネタというか、芽が。
 そうなると、大学の現場で今、起こりつつあることは、ごく一部の1割ぐらい、若しくは1割弱ぐらいのいわゆる勝ち組の方にはそういう予算が付いて、8割、9割の方はすごく白けている。だから、自分たちは国のイノベーション施策には、1億5,000万も稼いでこないとだめだということになると、ちょっと応募できませんねみたいなことになって、大部分の先生方がこういうイノベーションの施策から取り残されつつあるというのをひしひしと感じます。そうすると、実は大学でどういうことが起こるかというと、例えば学長の次を選ぶときに、要は9割の方が、自分たちは何となく負け組みたいに思い、派手にやっているところはけしからんみたいな雰囲気が、大学は出てきがちなところがあります。
 なので、申し上げたい一つは、数億円ぐらいの規模の拠点を作るというのは大事だと思いますし、着実にそういうものが育ってきていますけど、今後大事になるのは、その次のもう一回り小さなところを本格的に育て始めて、要は、イノベーションを牽引する大学の底上げをしていただくフェーズにそろそろなりつつあるのかなと思います。なので、例えばOIとかOPERAの中でも、1億数千万というのもありますし、初め3,000万とかそういう育成型ということで入っておりますけれども、数千万を頂いて、それを上回る民間資金をもらえる拠点が、地方大学も含めてもうちょっとできると、大学全体が上がってくるのかなと思います。
 実は大学が今、置かれているのは、12月末に出ましたように、大学全体で頂いている運営費交付金に対して、外部資金をどれだけ稼いでいますかということが評価手法にばんと出るということになると、1個、2個の華々しい拠点があるからといって胸張ってもだめで、本当に大学全体を底上げしないとだめなので、今、A-STEPとCOIとの間が抜けているんですね。そこのフォローアップをしていただければ非常にありがたいなと思います。
 2点目は、さっきも申し上げたんですけど、大学の改革で、特に地方が疲弊している中で、本質的なところは人がいないというところですし、人を雇えるのは、なかなか苦労するというのが本質的にあります。当然、法律上は、10年超えると無期転換しないとだめだということですし、今、運営費交付金はかつかつですので、それができなくて、結局、プロジェクトがあって人を雇用して、プロジェクトが終われば人がいなくなって、拠点が終わってしまうという、すごくもったいないことをしていると思います。
 なので、もちろん無期転換というのは理想ですし、できなくても、これは難しいと思うんですけど、今、大学の雇用は10年マックスなんですけど、それを15年にしていただくだけでも、人生2回ぐらい異動すれば大体、アカデミアで活躍できるということになるので、本当は研究開発力強化法の改正か何かで、少し期間を延ばすということもやっていただければと思いますけど、それが難しいというのも分かります。
 一つの御提案に近いんですけれども、例えば大学から見ると、イノベーション施策とかプロジェクト物で人は雇用できるというのはあるんですね。でも、無期転換しようとすると、やっぱり運営費交付金でやらないとだめだということで、そこをうまくつないでいただくということが大事なのかなと思います。
 例えばCOIなんかもそうですし、いろいろなプロジェクト物で5年とか7年、ばりばり研究しましたと。それで、すごいいい人だったら、3年間ぐらいエクステンションとか、別の事業で任期付きで雇用して、10年後は無期転換していただくというようなスキームで、無期転換は当然、高等教育局になりますし、大学の評価項目の一つの中に、若手人材の無期転換をちゃんとやっていますかみたいなものを一言入れていただくだけでも、大学でそういう人材を育てて正規雇用化するというスキームがきっちりできるのかなと思います。
 このあたりは科政局さんと高等教育局さんでうまく連携して、そこをつないでいただければ、資金の循環はエコシステムでできるようになっているんですね。その根っこを支える人の雇用というところ、アクターをちゃんと確保するというところにつながるので、是非、イノベーション施策と大学の運営費交付金という施策をうまくつなげていただけると、非常にうまく回ってくるかなと思います。
 3点目、最後は手短なんですけれども、先ほど課長さんから、国に予算を要求してということで御苦労されているというのはよく分かります。私、去年、印象的だったのは、ちょうど中国でも水素エネルギーに興味を持っていただいて、中国の科学技術担当大臣がうちに来て、水素施設を見て、昼食会もありました。その中で一番印象的だったのは、中国の大学では、大学発ベンチャーで成功すると、その利益の半分ぐらいは研究者の収益、収入になる。個人の収入ですね。
 そうすると、本当はそれがいいかどうかというのは、日本の社会で御批判も頂くとは思いますけど、大学の教員というキャリアパスに夢が出てくると思うんですね。お金が全てではないんですけれども、大学に優秀な人が残らないという一番本質的な理由というのは、大学のキャリアになかなか夢、ビジョンというか、そういうところが見出せないというのが一番本質的な問題かなと思いますので、国の施策だけではなくて、何か頑張って成果が出たら、何らかの形で研究者にも還元して、そのようなスキームを作っていただければと思います。
 若い人は、そういうものに対しては、実はすごく興味を持っています。例えばうちの九大に起業部というのがあるんですけど、200人ぐらい応募者が入ってくる。ですから、若い世代というのは、何か新しいチャレンジをして、自分の会社を作ってというサクセスストーリーというのに、すごく夢を持っているんですね。それが結局、うまく支援して、そういう人が地方に残って、会社を作って、大成功して、皆さんから評価されるというのが、まだできていないということですから、是非、そういう回せるシステムを作っていただければありがたいと思いますし、次の期でそういう議論をしていただければと思います。
 ちょっと長くなりましたけど、3点、コメントさせていただきます。
【庄田部会長】  ありがとうございます。
 今の佐々木委員は、これからの論点の中にこういう点を入れていただきたいというお話だと思います。
 事務局からお願いします。
【西條課長】  ありがとうございます。
 1点目の全体の底上げ、まさに我々も、過去から産学連携をやってきて、最初のうちは、まだ全然ばらばらだったところから、産業界と向き合っていただくということでスタートしてきたんですが、そこの部分でも、一部の先生はやっているけれども、俺は関係ないよねという感じのところはやっぱりできてきた。ただ、それがだんだん、今は非常によくなってきて、今度、それを本格的に、「組織」対「組織」というのは、大きいことだけをやってくれというよりは、組織そのものがそういうものを評価して、そこに関わる人たちをしっかりと増やしていく。
 特に今回のOI機構の中でも、本来、一番やっていただきたいのは、どちらかというと、個のすごくいいものの高いやつをやるというよりは、今まさに社会で求められているソリューションビジネスみたいな、そこは大学だからこそ、いろいろな分野の先生が出てくると非常にいいアイデアが出てくる。また、それが大学の先生にとってみても刺激になって、次の新しいものを生んでいって、そこには今まで関わっていなかった人たちも巻き込むということを目指すという意味で、先生がおっしゃっているような方向性というところをしっかりやりたいと思います。
 ただ一方で、大きいところだけというお話もあるので、これは大学としても、その中間にあるようなところをこれからどう盛り上げていかなければいけないのか、そこはちょっと視点としていただきたいと思っております。
 あと、運営費交付金とプロジェクト予算関係のところは、まさに拠点化の中でもそういう議論がありますので、そこはどうつなげていくのか。お金がなくなってすぐに、せっかく集った優秀な人たちが消えてしまう、この現象は投資として最悪だと思っていますので、そこをどういう形で作っていくのか、これも頂いた視点は本当に重要だと考えてございます。
 あと、制度作りのところは、我々もいろいろと知恵を絞っていかなければいけないなと思っておりますので、お金ではなく、違うような形で、やれるような形で考えていきたいと思います。
【佐々木委員】  1点だけ、補足していいですか。
【庄田部会長】  佐々木委員、どうぞ。
【佐々木委員】  雇用の長期化のところで、実は一つの例として、これも科政局さんがやられているWPIがありますけれども、10年間の事業の中で、ずっと言い続けられているのが、大学はそれを10年終わった後も引き継ぐために、ちゃんと正規ポストを何人か配置してくださいと。それを評価項目に入れているんですよね。
 だから、大学もそこは、例えば正規ポストを作って、中の雇われている非正規の方から、いい人はパーマネントポストに移るということをしていますので、今後、拠点物をされるときに、評価項目の中で、優秀な人をパーマネント化するということを制度の中に入れ込んでいただけると、要は、任期付きからパーマネントポストにという橋渡しが、各大学が責任を持ってやっていただけると思いますので、それは一つの例になるのかなと思います。
【庄田部会長】  他にいかがでしょうか。
 論点整理でまとめていただいている(1)から(3)まで、特に(3)は、先ほど御議論があったように9期まで、あるいは、これまでの科学技術基本計画の中でも進めている施策です。本日、御議論いただきたいことは、それ以外で何か新たに議論すべき、検討すべき項目がないのかということです。今まで取り組んできた(1)から(3)については、それをどう改善するか、産業連携あるいは地域支援の視点で、今までの文部科学省の施策で欠けているものがあるのかというような御議論があればお願いします。
 木村委員、どうぞ。
【木村委員】  4番のところで質問させていただければと思います。大学の産学連携を加速させるため、様々な制度改革をされて、大学の産学連携も随分進展してきたと思います。一方で、エコシステムの中での大学の在り方、役割というのが、更に大きな観点で見直されることが必要な時期に来ているのではないかと思います。
 20年ぐらい前になりますが、私がおりました会社がTLO事業に乗り出した関係で、スタンフォードのOTLにお邪魔してディレクターにインタビューさせていただく機会がありました。スタンフォードのOTLは、、その頃グーグルの株を保有していて上場前夜だったのですが、上場後早々に売却することになるとお伺いしました。理由の一つが、利益を最大化するのが我々の目的ではないとおっしゃったことが非常に印象深く今でも残っています。当時、日本のTLOはどうやってもうけるんだみたいなところをすごく問われていた時期でしたので。地域の中での大学が果たす役割は明確で、大学だけでエコシステムが完結する話ではないということを言われたと記憶しています。民の力をうまくやりながら、大学しかできない部分を最大限に引き出し、地域全体としてどういうふうに大きな絵を描いていくのかが、次の展開としてはすごく大事なポイントになると思われます。そのあたりは是非、御議論を進めていただきたく思います。
【庄田部会長】  ありがとうございます。
 菅委員、どうぞ。
【菅委員】  ちょっと別の場所の委員会でも言わせていただいたんですけれども、リサーチ・アンド・ディベロップメントという言葉をよく使われると思うんですけれども、これは実は全然違うもので、つまり、大学でやるリサーチというのは、発見と発明がある。ディベロップメントというところは、企業でもRアンドDと言っているように、分けているということは、そこはちょっと違うステージに入っているということですね。
 だから、組織と組織の本格的産学連携というのは、大学でできないディベロップメントの部分を産学連携でする。産学連携でうまくいったものに関しては、今度は価値の創造ということでイノベーションに移っていく。こういうクリアな整理をして、これから大学なり何なりに言っていった方がいいかなと最近思っています。つまり大学でやれることというのは、発見と発明にかなり限定されているんですね。ただし、発明がなければ、もちろんディベロップメントもないし、ディベロップメントもなければイノベーションもないというところを、少し整理した方がいいかなと最近思い出しました。
 というのは、見ていて、いろいろなものを読んでいて、全部がぐちゃぐちゃになっていて、基礎研究も重要だけどイノベーションも大事と言われても、その間に物すごく大きなプロセスがあるわけですね。だから、そこをはっきりさせて、将来的には多分、JSPSもJSTもAMEDも、何をどこでどういうところでやるのかと、全部をやると言わないようにしてもらうように変えていってもらわないと、大学の先生たちはすごくコンフューズしてしまっているなという感じがします。
 大学発ベンチャーですけれども、極端な話をさせていただくと、多分、皆さんよく理解されています。ペプチドリームには国のお金は一円も入っていません。少なくとも私が絡んだお金は一円も入っていないです。なので、先ほどちょっと佐々木先生がおっしゃっていましたけど、勝ち組とかそういう話があるんですけれども、実は全然入れなくても、ちゃんとできるんですね。東京だとできます。正直言うと、東京は人材も集まるし、ベンチャーキャピタルも多いし、お金も集まるので、東京だとできるはずなんですよ。
 だけれども、地方だとかなり難しいと思いますね。だから、どっちかというと、今、いろいろな国のお金がそういう方向に向いていますけど、それは地方に回すべきだと思います。東大の先生に怒られるかもしれませんが、東京はやろうと思えば集まるところなので、むしろ地方にできるだけそういうお金を分配した方が、日本全体の中で、イノベーションはどこから出てくるか分かりません。なので、イノベーションを起こすためには、そういうことが重要じゃないかなと私個人は思っています。
 ちなみに、私はもうペプチドリームを退任して、別の会社を作って、今やっているんですけれども、実は個人的にはほかに、エンジェルでいろいろな地方のベンチャーに投資しています。それは、もう一度、エコシステムをそこで作りたいと思っていて、なかなかエコシステムを作るのは独りではできないんですけれども、今の会社に対しても、エコシステムを作ってもらうために、大学の先生からも投資してもらったりしているんですけど、その人たちには必ずお金を大学なり何かに戻してくださいという約束をしながら、エコシステムを作ろうかなと思っています。
【庄田部会長】  ありがとうございます。
 ほかに御意見ございますか。
【庄田部会長】  高木委員、どうぞ。
【高木委員】  少し(1)とも関係しますが、産学官連携による共同研究強化のためのガイドラインを、文科省と経産省、さらには経団連と連携して策定されました。あれは、今までの様々な議論を基に、新たな議論も加えガイドラインにしたということで、非常にいい取り組みだと思います。さらに、その後、大学の取り組み状況を調査されてファクトブックを発行されました。進捗状況をチェックしておられ、PDCAを回されていると思います。
 ただ、これは2025年までに民間からの投資を3倍にするという政府方針の流れの中での政策ということで、大学からすれば、少し押し付けられた感もあると思います。最近では、
何か施策を実施すると、大学からの声が今まで以上に届くようになってきていると思いますので、そういうものを反映していただいて、また見直すというのが一つだろうなと思います。
 もう一つは、これとは違う視点ですが、これまでの産学連携の議論を深めていきますと、大学そのものが、本来どういう位置付けにあるべきなのかの議論は避けられないと思います。今までの議論の流れというのは、大学の経済的な自立性を見据えた流れだと思いますが、それはどの程度のところが一番あるべき姿なのか。
 国家というのは全体的に経済の原理で動いていると思いますし、個々の企業も経済の原理で動いている。では、その中において大学というのはどうするのか。企業のようになり得るのか。米国の私学の非常に自立性の高い大学を目指すのか。それとも、何らかの中間的な位置付けを目指すのか、次期科学技術基本計画では、その辺を整理して、議論せざるを得ない時期に来ている気がしています。
 以上です。
【庄田部会長】  渡部委員、どうぞ。
【渡部委員】  時間が多少あるようなので、一番最初の、ここにあるところからいきます。「組織」対「組織」のやつは経験上、やっぱり大学にとっては、金額の大きさと期間に、どちらがいいかというと、期間が長い方がすごいありがたいんですよね。これは10年と言われれば、10年間の任期で人が雇用できるし、そういう意味では、今、都市圏でも、コーディネーターにしても何にしても、ともかくなかなかいい人が来ない中で、10年というのはやっぱり大きいですよね。
 直近で、ダイキン工業さんと10年100億というのは、これで人を集めるとやっぱり全然違う。3年だと無理ですね、全然。だから、どういうものがいいかという観点で言うと、長期の、今まで額だった。額というか長さは結構大事だというのはすごく感じます。
 それと、共同研究を中心で今まで物事を考えているんですけど、グローバルに見ると、日本型の共同研究はそんなに一般的なものじゃないんですよね。アメリカだとスポンサードリサーチですよね、一流大学の場合は。あと、コントラクトリサーチでいろいろな条件を付けることはあるんだけれども、エクスポートコントロールとかいろいろな制約を考えると、共同研究は、実は海外との関係を考えると難しいんですね。非公示情報の交換が前提となってしまうので、だから、海外との関係とかいろいろなことを考えたときに、今、共同研究は、実態的に共同で本当はなくても、みんな共同研究になっちゃったりするんだけど、それをちょっと考えた方がいいかなと。
 アメリカだったらスポンサードリサーチ、コントラクトリサーチで、エクスポートコントロール上の問題があることが生じると、基本的にはスポンサードリサーチかドネーションにしか持っていかないという考え方をしているはずなんですね。そこは範囲を少し考えた方がいいかなと思います。
 それと、先ほどの地域科学技術のお話は、ともかく人がいないというのが一番問題なので、それを都市圏、あるいは大企業、あるいは、どういう形でそこに人を持ってくるか。さっき山口銀行の話をしましたけど、大学の施策としてもああいうことを考えるのはいいのではないかと思います。
 それから、その他でいきますと、ここにあえてないことというと、それこそ、せんだってのダボス会議で総理は、これからは全てがデータで世の中は回っていくんだということを言われましたけど、データ、AIの世界で、大学と産学連携においてデータ、AIというものの、データはそもそも知的財産権ではない無体物なので、対価関係のある取引は今現在はほぼされていないですね。臨床試験のデータについては、なぜか、マテリアルトランスファーみたいな契約をするようにだんだんなってきましたけれども、一般的にデータは、そういうものはないです。
 ただ、実際、例えばビッグデータみたいなものは無体物だから、そのまま外へ出ていって、ベンチャーとか何かに行っているんですけれども、オーナーシップのコンフリクトの問題とかいろいろあるので、そこはきちっとした方がいいだろうなということで、ちょうど不競法の改正もあって限定提供データの制度もできまして、あれは割に大学は使いやすいんじゃないかと思うんですよね。今、ガイドラインが出ていますので、そこは少し細かい話のように見えるんだけれども、日本はもうデータだと言って、世界のデータ・フリー・フロー・ウィズ・トラストを主導すると言われていますので、産学連携でもそういう観点はあってもいいんじゃないかなと思います。
 以上です。
【庄田部会長】  ありがとうございます。
 限られた時間の中では、議論される範囲も限られてきますので、第10期では、産業連携・地域支援部会以外の科学技術・学術審議会の部会、委員会等で関連する御議論があれば、その情報を事務局から共有いただいた上で、議論を進めていただければと思います。
 須藤委員、どうぞ。
【須藤委員】  まず、このスライドに載っている、「組織」対「組織」のところなんですけれども、何年か前に、「組織」対「組織」でやるためのガイドラインというのを作りまして、それがどんどん運用されていると思いますけれども、あれを着実にフォローしていかないと、せっかく作ったものが無駄になってしまうような気がしますので、是非、このタイトルの中でそういったことをやっていただきたいんです。
 ここに書いてあったURAの質保証とか、TLOの利用促進とか、関連してきますので、こういったことを踏まえながら、あのガイドラインを着実に根付かせていくということをやる必要が絶対あると思いますので、1番に書いてあることは是非とも進めていただきたいと思います。
 もう1点は、もしかしたら、今お話がありましたように、部会が違うのかなという気もするんですけど、もう一つ四、五年前にやったのが、理工系人材の育成というのを産業界の代表と国立大学、私立大学、公立大学、高専と、1年半ぐらい掛けてやって、私も出ていたんですけれども、あの後どうなったのかというのが、一応、フォローする仕組みがあって、8大学等でいろいろと動いているという話は聞いているんですけど、実際に動いているメンバーに聞くと、余り大した議論をしていないと。せっかくあの場で、理工系人材は、今は理工系と言わない方がいいかもしれないんですけれども、そういった人材をどうやって育てようかということでやったんですけど、あのフォローが、ここじゃないのかもしれないですけど、どこかでもうちょっとちゃんとやらなきゃいけないのかなと。
 あのとき、実は今ほどAIとかIoTと言っていなくて、単に、ICT人材が足りないよねというだけで終わっていて、バイオが多過ぎるよねとか、溶接とかああいう絶滅危惧学科はどうするんだというのを真面目にやったんですけれども、今、あれは完全に消えちゃって、AI人材をどうするんだとかIoT人材をやらなきゃと、そればっかりが動いちゃっていて、そういったところもどこかでフォローしなきゃいけないのかなという気がしますので、部会が違うのかもしれないんですけれども、どこかでやるべきだと思います。
【庄田部会長】  人材の話は当部会にも関連する大変重要なテーマですので、御議論をよろしくお願いいたします。
【西條課長】  今、須藤委員からも、先ほど高木委員からもありましたガイドラインの部分につきましては、一応、あれは3年で見直しというのも実は入っておりまして、今、経産省の方とも話を、内閣府の方も関心を持って、やみくもに単なるデータを集めるというよりは、本当にあれが現場に入って、課題があるのかというところの洗い出しとかが重要かなと思って、実はOPERAに、あれをしっかりやってくださいというのをルールとして入れているんですね。
 OPERAも、最初にスタートしたものは中間評価まで来ていますので、その辺のデータとか、大学での取組の中で、あそこにはこう書いてあるんだけど、こうできないんだよねとか、逆に言うと、産業界側にもこういうメッセージを送りたいというところも含めて、フォローしなきゃいけないというのは、内部でも検討しておりますので、そこをやった上で、変えるところは変えるし、いいところはもう少し推して広めていくというのを、書き物だけではなく、例示も含めてやっていかなければいけないと考えております。
【庄田部会長】  後藤委員、どうぞ。
【後藤委員】  2つ、お話をさせてください。
 1つは、先ほどデータの重要性が出ましたけれども、データのマネジメントという面も当然大事ですけれども、AIとかビッグデータとか、データにアクセスできないとちゃんとしたいい研究ができないわけですね。今、いいデータにちゃんとアクセスできている大学の研究者の数はかなり限られているんじゃないかと思われます。そういう点では、リアルなデータにアクセスできるような研究環境を作っていかないといけないんじゃないかと思います。
 それと関連して、先ほど菅先生から、RとDをやっぱり分けるべきだという話があって、私もかなり同感でして、大学の制度だとか大学の仕組みの中でできる研究と、それから、イノベーションを起こすためには、いきなり企業に行かなくて、その中間のところでやるべきことはたくさんあるわけですね。それがDだとしますと、かつては大学でやっていたのかもしれませんけれども、Dのところが、かなり大規模にやらないといけないところが出てきて、それをもう少し仕組みとして強化しないといけない。
 海外だとベンチャーだったり、ドイツのフラウンホーファーだったりすると思うんですけど、そこに該当するところをもう少し強化していかないと、企業もどんどん引いていっていますから、そこの強化策はやはり要るんじゃないかと思いまして、そのあたりをいろいろ御議論いただければと思います。
【庄田部会長】  ありがとうございます。
 今のデータ、あるいはオープンサイエンスというテーマについては、総合政策特別委員会で議論をしてきていますので、検討した内容の共有もよろしくお願いしたいと思います。
栗原部会長代理、どうぞ。
【栗原部会長代理】  先ほど部会長がおっしゃられた、その他のところで、いかに民間と大学との共同研究が、民間の側から見てもインセンティブがある仕組みが、今後考えられないかと思います。
 ここに認証制度というようなことも書いてありますけれども、先ほどの日立製作所と北海道大学、リバーフィールドと東京工業大学・東京医科歯科大学の例がありましたが、このケースがそうだったかどうかは分かりませんが、例えば医療の分野での機器開発で共同研究をする際に、いろいろな規制があって、できる、できないということがある場合に、サンドボックスのような制度で、大学との共同研究において規制が緩和されるようなことを積極的にやっていくというようなことも、共同研究のインセンティブになるのではないかなと思います。
 2つ目に、大学と企業の関わり方について、スタンフォード大学のケースに見られましたが、授業以外の、例えば夜間の社会人向けのコースというのが多くありまして、そこに行くと、各企業から技術者も来ていれば、もう一度、起業、アントレプレナーシップについての教育を受けたいと思っている人、マーケティングをやっている人、ファイナンスをやっている人などが多く参加しています。
 そういう人たちが出会って、50人受講生がいると5件ぐらい、毎年新しい事業が生まれてくるという例がありますので、特に地方の大学で参考になるかもしれませんけど、学生向けの教育だけではなくて、もう少し地域への貢献、地域の人材への貢献というのもあるのではないかと思います。いろいろな分野の産業界の人が集まる場所としても、大学が一つの役割を果たしても良いのではないか。そうすると、またちょっと違う大学と企業との接点に発展していくのではないかなと思います。
【庄田部会長】  第10期に向けてということで、論点をまとめていただきました。本日、皆さん委員からいただいた御意見を基に、論点の整理をお願いしたいと思います。
 それでは、時間でございますので、最後に、事務局からお願いします。
【竹之内課長補佐】  ありがとうございます。
 本日の議事録につきましては、事務局から皆様にメールにて御確認をさせていただいた後に、文科省のホームページで公開させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 また、本日使用いたしました資料は、御希望がございましたら後ほど郵送させていただきますので、お申し付けください。
 なお、今回をもちまして第9期産業連携・地域支援部会の開催は終了となります。ここで、科学技術・学術政策局長の松尾から、一言御挨拶を申し上げたいと思います。
【松尾局長】  ただいま御紹介いただきました、科学技術・学術政策局長の松尾でございます。
 今回、第9期を2年間にわたりまして、庄田部会長、栗原部会長代理をはじめ各委員の方々には、精力的に御議論いただきまして、本当に心から感謝申し上げたいと思います。
 特に、きょうもございましたけれども、我々、R&Dというとどうしても、ちゃんぽんで使っている嫌いがありますけれども、基礎研究、発明発見とDの部分、それから、それをイノベーションにつなげていくエコシステム、これは何よりも重要でございまして、昨年も白書で科学技術力について提言させていただきましたけれども、全体を見通したエコシステムをどう作っていくかというのが、私ども重要だと思っております。
 そんな中で、この部会が、中核的な御提言を頂くということになろうかと思います。特に今、議論しておりますのは、次の第6期科学技術基本計画でございますけれども、その中で、やっぱり個々の人々がいかに生き生きと仕事をしていけるかということだと思っておりまして、そうなると、多くのプレーヤーがいかにつながっていくかということだと思います。
 さりとて、足元を見ますと、今日ありましたように、他の部会との連携であるとか、あるいは、私どもの施策自身もどうつなげていくかとか、他省庁とどうつなげていくかとか、様々な部分、研究者側、アクターに求める以上に、我々もつながっていく必要があろうかと思っておりますので、そこら辺はまた我々も心に留めて、しっかりと議論していきたいと思っていますし、特に今回、国がお金がない中でやっていくというからには、マネタイズをどうしていくかというのは極めて重要でございます。
 したがって、イノベーションをどう作っていくかに加えてマネタイズ、そこには、人と知識とお金をどう回していくか。回していくだけでは無理がありまして、そこで付加価値をどう作っていくかということが重要だと思っておりますので、そういう視点で、私ども、きょう頂いた御議論をさらにつなげていきたいと思っております。
 一部の先生には、また10期にも御議論いただくことになろうかと思いますけれども、役所側としてもしっかりと今回、頂いた議論を受け止めたいと思っていますし、菅先生からありましたように、理念だけではなくて、何をやるかということを具体的に議論して、つなげていきたいと思っています。
 本当に2年間、庄田部会長をはじめ皆様方には御議論いただきまして、心から感謝申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
【庄田部会長】  第9期の部会を閉会するに当たりまして、一言、述べさせてもらいます。第7期、第8期と部会の委員を、そして第9期には部会長をさせていただいきましたが、この第9期は、委員の方から活発な御意見を頂戴し、部会長としても非常に議事を進めやすかったというのが、まず感想でございます。
 先ほど、これまでの産業連携・地域支援関連の施策について御説明がありましたが、いろいろな成果を生みつつありますので、その成果をできるだけポジティブに外にも発信していただきたいと思います。第10期の御議論、特にアクターが共感する施策を進めていただきたいということをお願いして、御挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
 それでは、これをもちまして本日の部会を閉会とさせていただきます。

―― 了 ――

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