産業連携・地域支援部会 産学官連携推進委員会(第8回) 議事録

1.日時

平成24年5月21日(月曜日)15時~17時

2.場所

金融庁12階 共用第2特別会議室

3.議題

  1. 東日本大震災からの復旧・復興と産学官連携施策について
  2. これまでの検討状況、検討課題について

4.議事録

【柘植主査】  定刻過ぎてしまいましたので、始めさせていただきたいと思います。産学官連携推進委員会の第8回を開催いたします。

 本日は、昨年ご議論いただきました東日本大震災からの復旧・復興と産学官連携施策についての報告と、本委員会におけるこれまでの検討状況、検討課題について議論したいと思います。

 初めに、事務局から配付資料の確認をお願いします。

【石田室長補佐】  配付資料の確認の前に、本年度初めてと開催となりますので、恐れ入りますが、事務局につきまして改めましてご紹介をさせていただきます。

 まず、科学技術・学術政策局長の土屋でございます。

【土屋局長】  土屋でございます。よろしくお願いいたします。

【石田室長補佐】  産業連携・地域支援課長、里見でございます。

【里見課長】  里見でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【石田室長補佐】  大臣官房総括審議官、田中でございます。

【田中総括審議官】  田中でございます。よろしくお願い申し上げます。

【石田室長補佐】  ここで、事務局として、科学技術・学術政策局長並びに産業連携・地域支援課長よりごあいさつを申し上げます。土屋局長、どうぞよろしくお願いいたします。

【土屋局長】  今、ご紹介いただきました、科学技術・学術政策局長の土屋でございます。1月に着任しております。まず、第8回のこの委員会の開催に当たりましてということでごあいさつさせていただきますが、先生方には大変お忙しい中お時間いただきまして、ご出席賜りましてありがとうございました。

 先ほど、柘植委員長からお話がありましたように、これまでの議論の整理であるとか、今後どうするかという、本日ご議論いただくわけでございますが、私ども文部科学省におきましても、こういう議論でございますが、現在の国の状況を考えて、非常に危機感を持って取り組まさせていただきたいというふうに思っております。改めて申すまでもないことですが、世界的な経済構造、社会構造の激変の中、日本は乗りおくれて、国際競争力の低下ということが起きていて、なかなかそこから抜けられない中、また、昨年の大震災がこれに加わっておりまして、多くの方々がおっしゃるように、危機的状況にあると。まさに国家存立の危機にあるという認識でございます。

 そういう状況の中、いかに脱却するかという中で、ご議論いただく科学技術、あるいは研究開発を推進して、これをベースに日本再生を図る1つのシナリオというのが、やはり期待されているところでございます。そうした中で、本日ご議論いただく産学官連携でございますが、これは研究開発を進める上で非常に重要な、有効なツールだというふうには認識しているわけでございますが、このための制度改正をしてから、もう十数年たっております。十数年たっているわりには、議論している本質的なところがあまり変わってないんじゃないかというのは、我々役所のほうも大いに反省しておりまして、ここでこの国家存立の危機において、本日のご議論をいただくわけですので、これまでの取り組みを、進化じゃなくて、抜本的に改革していただくようなご議論をいただき、私どももそれを実現に向けて取り組んでまいりたいというふうに考えておりますので、非常に熱心に前向きなご議論、ご検討をいただくようにお願い申し上げて、私のごあいさつとさせていただきます。どうも失礼いたしました。

【石田室長補佐】  それでは、里見課長、よろしくお願いします。

【里見課長】  同じく科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課長の里見でございます。本課では産学連携ということで、産学官連携、大学を中心とした取り組みの部分と、それから、地域を担当する部分との部署が一緒になりまして議論をするということになってございます。そういう意味で、この委員会では、基本的には大学を中心とした体制整備というところ、あるいは、コーディネーターのような人材育成の部分を中心にご議論いただいたわけですけれども、もう一つ地域の委員会ということで、地域に対しては別の委員会がこのたび立ち上がったというような状況でございます。

 そのような中で、科学技術・学術審議会の同じ傘の下にあるものとしまして、それぞれご議論をしっかり深めていただきまして、最終的には一体化した形で産学官連携、しっかり進めてまいりたいというふうに考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【石田室長補佐】  それでは、恐れ入ります、引き続き配付資料の確認をさせていただきます。お手元、資料の上に議事次第があるかと思います。議事次第の4.のところに配付資料の一覧がございます。まことに恐れ入りますが、その順に簡単に確認をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、配付資料1-1から1-3というのが、ダブルクリップでとじてございます。1-1というのが、「『東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の検討の視点』を踏まえた各分科会等における検討状況」という資料でございます。資料1-2でございます。カラー刷りの資料、A4版縦長になっておりますが、「東日本大震災における産学官連携への影響調査」という資料。A4版横長になっております資料1-3が、「産業連携・地域支援課震災復興関連施策」という資料でございます。

 番号変わりまして、資料2でございます。「これまでの検討状況について」というA4版横長の資料がございます。資料3でございます。「産学官連携施策検討課題(案)」という資料になっております。クリップでとめてございますのが、資料4でございます。「科学技術駆動型イノベーション創出能力の強化を」という資料になっております。資料5でございます。「産学官連携推進委員会の予定」という1枚物資料になっております。

 さらに参考資料1といたしまして、「産学官連携関連資料」というA4版横長のホチキスどめ資料になってございます。

 配付資料は以上でございまして、そのほか机上配付参考資料といたしまして、紙のファイルにとじられた参考資料を机上に用意をさせていただいているところでございます。

 落丁等がございましたら、おっしゃっていただきたいと思います。ご確認等、どうぞよろしくお願いいたします。以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。

 それでは、早速、本日の議事に入りたいと思います。議題1は、東日本大震災からの復旧・復興と産学官連携施策であります。本議題を審議するに当たりまして、岩手大学様より、東日本大震災における産学官連携への影響調査について説明いただきまして、議論を深めたいと思います。岩手大学の対馬先生、よろしくお願いいたします。

【対馬副センター長】  岩手大学の対馬でございます。いつもお世話になっております。このたびは発表する機会を与えていただきまして感謝申し上げます。

 今回の調査といいますのは、昨年の10月に文科省様のほうからお話がありまして、当初は災害復旧のために企業周りとか、業務がものすごい状況だったんですが、これを被災地のニーズをより深くくみ取るための調査というふうにプラスに考えて、この調査を行わさせていただいた次第です。今回は、福島、それから宮城、岩手それぞれの地域ごとに特徴がかなり大きく違います。きょうご紹介いたしますのは、岩手の現状ということで条件が入りますけれども、お聞きいただければと思います。

 今回の調査のレポートなんですが、3月末に文科省様に納品はしております。ただ、今、改定を進めておりまして、よりわかりやすくして全国の大学、それから関係機関の方々に見ていただくように、6月上旬ころにはお届けできるようにしたいと思っておりますので、ご了承のほどよろしくお願いしたいと思います。

 東北大学さんのほうでは、東北大学災害復興新生研究機構というものを全学的に立ち上げられて取り組んでおります。また、福島大学のほうは、うつくしまふくしま未来支援センターというものを立ち上げて、放射線対策を中心に対策をしております。岩手大学のほうは、こちらのスライドにありますように、地域ごとにかなり違った被害状況になっております。大体4つのカテゴリーに分けられて分類されております。

【橋爪室長】  先生、済みません、どうぞお座りになってよろしくお願いいたします。済みません、失礼いたしました。

【対馬副センター長】  岩手大学の対馬でございます。いつもお世話になっております。このたびは発表する機会を与えていただきまして感謝申し上げます。

 今回の調査といいますのは、昨年の10月に文科省様からお話がありまして、当初は災害復旧のために企業周りの業務がものすごい状況だったのですが、これを被災地のニーズをより深くくみ取るための調査というようにプラスに考えて、この調査を行わせていただいた次第です。今回は、福島県、それから宮城県、岩手県それぞれの地域ごとに特徴がかなり大きく違います。本日ご紹介しますのは、岩手県の現状ということで条件が入りますが、お聞きいただければと思います。

 今回の調査のレポートですが、3月末に文科省様に納品はしておりますが、現在、改定を進めておりまして、よりわかりやすくして全国の大学、それから関係機関の方々に見ていただくように、6月上旬ころにはお届けできるようにしたいと思っておりますので、ご了承のほどよろしくお願いしたいと思います。

 東北大学では、東北大学災害復興新生研究機構を全学的に立ち上げられて取り組んでおります。また、福島大学では、うつくしまふくしま未来支援センターを立ち上げて、放射線対策を中心に活動されております。岩手大学では、三陸推進復興推進機構、釜石サテライトを立ち上げて特に被災の大きかった三陸沿岸地域等の復興推進活動を行っております。岩手県では、こちらのスライドにありますように、地域ごとにかなり違った被害状況になっております。被災状況は、大体4つのカテゴリーに分けられて分類されております。

【橋爪室長】  先生、済みません、どうぞお座りになってよろしくお願いいたします。済みません、失礼いたしました。

【対馬副センター長】  わかりました。

 この赤く示した地域は、市の中心地が壊滅的な打撃を受けているところです。ブルーで示した地域は比較的町としては破壊されてはいないところというように、かなり地理的に地域ごとの被災状況が異なっております。

 これは震災直後のデータですが、財団法人いわて産業振興センターが、当時、機械のリースをしている企業や、運営資金を提供している企業の消息を、震災直後に調べた状況ですが、半数以上の企業が壊滅的な打撃を受けていたという状況がわかります。

 次のスライドはものづくり系の企業の被災から復旧の状況です。岩手の場合は、後発の企業が多いために、海岸線ではなくて内陸に立地している企業が多かったんですね。そのために、被害の状況は、ものづくり系においては比較的軽微なところが多いかと思います。もちろん深刻な流出とかそういうところもあるのですけれども、大多数のところはかなり復旧している状況です。

 今回の調査は、岩手県の中でも、岩手大学と相互友好協定を結んでおります釜石市、釜石市に立地する財団法人釜石・大槌地域産業育成センター、岩手県などの協力を得ながら実施しました。釜石・大槌地域産業育成センターは湾に面しておりまして、1階は津波により壊滅的な打撃を受けておりまして、現在は釜石市役所の中に事務所を移して事業を行っております。ここの復旧も、岩手大学と連携しながら行って、被災地域の企業のための体制づくりということに取り組んでおります。

 震災直後は、岩手大学では東日本大震災復興対策本部を立ち上げました。昨年の10月に三陸復興推進本部に改組して、今年の4月から三陸復興推進機構に改組しました。ホップ・ステップ・ジャンプのように、復旧・復興の状況に合わせた体制づくりで取り組んでおります。釜石市にはサテライトを設け、さらに県北のほうにはエクステンションセンター、今年中には沿岸2カ所にさらにエクステンションセンターを設けるということで、沿岸地域のニーズを、なるべく面積を大きくしてくみ取るという努力をやっているところです。

 このスライドは、久慈にエクステンションセンターを、今年の4月3日に開所をした際の様子でございます。

 現在は、大学間連携ということで、岩手大学と東京海洋大学、北里大学、愛媛大学、北海道大学、東京大学と連携しながら活動しております。

 ちょっとこのスライドは、複雑な図ではありますけれども、岩手大学と、現在進行中の連携機関を挙げております。特に企業のCSR活動のスピードの良さというのをすごく感じております。彼らは1つの企業に対して支援はなかなかできないのですが、まとまったグループや地域など、自社の企業価値を高める活動であれば、すばやいスピードで人員、資金などを投入してくれますので、彼ら民間のパワー、特に海外の企業の素早さ、センスの鋭を感じている次第でございます。このような企業との連携方策、あるいは、税制面でこのようなCSR活動が展開しやすいような方策がないか、被災地支援の特区、そのようなことを考えながら、活動しているところでございます。

 今回の調査では、被災地域に対して日本中からアンケート調査がかなり寄せられておりまして、それでなくても企業、自治体では対応に困っているということ事情があり、アンケート公害というふうに言われております。そのため、我々としてはヒアリングを中心にして、被災地の自治体とかに迷惑がかからないような形で、企業等へのヒアリング調査をおこない、それを数値化するという手法にて調査しました。さらに企業のヒアリングだけではなく、岩手県内の地域資源として、食べ物、伝統工芸などありますので、地域資源に関する技術開発状況について、日本中の企業、大学、研究所でどのような切り口で技術開発が行われているかという先行調査もあわせて行っております。

 次のスライドは、今回の調査を行った際の運営体制を示しております。大学、岩手県には沿岸広域振興局という、沿岸を振興するための組織があります。そこにはコーディネーターも置かれております。さらに釜石市、財団法人釜石・大槌地域産業育成センターとの連携で、今回の調査を行っております。

 このスライドは、調査スケジュールを示しております。

 次に、岩手県の復興基本計画の中で産学連携の位置づけとしては、産業人材の育成の他、今話題の国際リニアコライダー(ILC)の誘致によって、学術的な県にしていこうという大きな方針があります。また、海という三陸の資源を有効に活用したまちづくりをしようということで、若い人たちが定着するような、魅力ある町にしようという、岩手県としての方針があります。一方、釜石市の復興基本計画としても、新産業創出に向けた取り組みということで、現在進めている新材料の開発や、食品の6次産業化の展開ということで海産物のブランド化ということをメインに展開していくという方針を持っております。

 今回ヒアリングした企業は、66社あります。この対象としては、岩手大学だけでなく、個人ベースの産学連携の組織である岩手ネットワークシステム(INS)、それから、組織対組織の産学連携組織であるリエゾン-I、リエゾン-IのIはIWATE(岩手)のIという意味ですが、それから、県沿岸広域振興局のコーディネーターや釜石市内の釜石・大槌地域産業育成センターなどのコーディネーターが、日ごろ支援している企業ということで、66社になりました。約半分はこの釜石・大槌地域の企業になっております。業種別で見ると、製造業が40社61%、食品加工業が29%19社という構成になっております。今回お聞きした内容としては、ハード面、ソフト面の被害状況、それから、共同研究等による支援ニーズの有無、そして復興状況に合わせたニーズ・課題。それから、岩手大学釜石サテライトを有効に活用するための要望などです。

 今回、被害のありとなしということで、企業のニーズがかなり大きく異なるということがわかりました。この「被害、被災あり」というのは、津波による浸水があり、設備や工そのものがすべて流された状況をいいます。「被災なし・軽微」というのは、津波は床下まできたが、操業の復帰が容易だった、または装置がずれた程度であったため補修で済んだという企業です。偶然ですが、被災のありの企業となしの企業の比率は50対50になっております。

 沿岸企業のニーズとしまして、これは全体で見ますと、時期はまちまちですが、やはり新商品の開発というものを進めていきたいというニーズが多くありました。次に、技術指導ニーズという項目になります。我々は釜石サテライトを中心にして、社会人教育、あるいは高校の生徒さんたちへの教育支援なども想定していたのですが、人材育成支援というニーズというのは、現段階では企業としては操業を元通りにすることに意識があるため、意外とニーズが低いということが、わかりました。

 これは被災企業、それから、被害のなかったところ、軽微な企業で分けてみますと、左側の赤いマークの被災企業については、新商品の開発のニーズ、それから、技術導入をしたいというところが多く、下から2番目の、新事業分野進出支援ということで、新しい分野へ展開したいという企業が多かったわけです。今回、サンプリングのうち被災企業は33社ですので、統計的な有意差があるか異論はあるかと思いますが、傾向として見ると、すべて流された企業にとっては、新たに容易に短期間で成長できる分野へのニーズというのが高いんじゃないかというところが言えると思います。

 一方、被災が軽微な企業、右側のグラフですが、新商品開発ニーズは多いのですが、歩留り向上・不具合の解析とか、そういう競争力を高めるような、震災の期間に奪われたマーケットをいかにして安い値段、競争力のある形で戦っていけるか、そういうニーズが非常に高かったなと思います。数字では8社という数字になっているんですけれども、そういう競争力を確保するというところも、この被害が軽微だった企業の大きな課題になっております。

 これを業種別に見ますと、やはり製造業においては、新製品の開発、それから、歩留り向上というのが多いわけですが、食品製造業、こちらもやはり新商品の開発が多いです。特に被災地として全国から注目されておりますので、この期にブランドを構築して、その地域の目玉となる商品を展開していきたいという意識が、かなり強くここにあらわれていると思います。さらには技術指導のニーズが高いです。これは、品質を高めて、この三陸というブランドを高めたいというところが多いということです。建設業においては、人材育成というところが、1社、2社ですが、傾向としては人材の技術力を高めたいというところが、建設業の特徴ではないかと思います。

 これらの企業ニーズをざっとまとめますと、世の中にはすばらしい技術や装置などはたくさんあるけれども、これまで長い間下請け体質でやってきたために、自身で新商品を開発するような業態になかなか変えにくいということで、そういうところを大学にサポートしてほしいという声がかなり聞こえております。それで、やはりこの産学官連携の中核になるのは、産学官のコーディネーターの活動だと思います。そこで、コーディネーター間の座談会を開いて、震災当時、家を流された人が半数近く彼らの中にもいるのですが、私生活での課題もありつつも、日ごろ関わっている企業の多くが被災し、また従業員も家族を失った人たちを抱える企業ですので、そういう心の痛みをわかったコーディネーターたちが、震災後どのように意識して被災企業に関わり産学官連携による復興支援活動をしているかを知ることは今後活動していく上で大変重要なことと考え、コーディネーターの座談会を開催しました。

 このスライドは座談会の概要を取りまとめたものが、声を出さない企業ほど、やはりつらい状況にあるというところなどは、皆さん共通のところです。それをいかにしてコーディネーターと企業の社長、経営者が腹を割って話ができるかということで、常日ごろ現地にいらっしゃる県のコーディネーター、それから、自治体のコーディネーターなど、彼らとの連携というのが、大学のコーディネーターが最も重要視すべきことじゃないかなと思います。

 特に声の大きい力のある企業は、復興支援の補助金をかなり積極的に取りにいって、既に沿岸地域では、勝ち組、負け組というような話が聞こえております。勝ち組のところには、日本中、あるいは海外からさまざまな支援が届くのですが、負け組のところには、気持ちはあるが新しい技術がないところや、後継者もおらず、高齢の経営者と少数の従業員でやっているところなどが多く、支援がなかなか少ない現状があります。そういうところこそ新しい社員を雇用して新しい売りになる技術を獲得してもらうような形など、大学としても、そういう企業にこそサポートをして今は小さい企業でも少しずつ元気に大きくしていくのが、地域の大学としての方向性ではないかというふうにコーディネーターはおっしゃっております。

 特に女性起業家というキーワードが、すごく最近被災地のほうでは出てきておりまして、彼女らの果敢な取り組みとか、物怖じしない女性ならではの斬新な視点、パワーがありますので、そういう女性起業家に対してもいろいろなセミナーの機会を提供して、今、起業家の掘り起こしをやっているところでございます。

 それから、次のスライドの9.では、独立行政法人中小企業基盤整備機構が、地域資源ということで、全国の都道府県の特産品のキーワードを出しております。そういうキーワードが、岩手県にも特産品ということで指定したのがあります。そういうキーワードで日本国内で、これは特許ですけれども、どういう分野でどういう技術が開発されているのかというのを調べてみました。

 これはマクロ分析ですが、イカとかアワビとか、海産物について全国の公開特許情報を調べております。青とか赤の丸で示されていますが、赤いところにいくに従って、最近公開された技術を示しておりまして、どういう製品がどういう機能で、最近こういう開発をされた傾向があるとか、こういうのを見ながら、売れ筋とか開発の傾向を見ていくという考え方も、今後の地域資源を活用した研究開発のポイントにもなるのではないかというふうに、この資料を活用していきたいと思います。かなり膨大な資料ですので、今回は省略しております。

 次のスライドは、昨年度の本委員会の提言をまとめたページになっておりますので、省略させていただきます。

 今回のまとめとしまして、調査でわかったことは津波による被害の有無で、企業のニーズ・課題が大きく異なるということがわかりました。2.ですけれども、新商品開発のニーズというのは、依然として高いと。それに大学の研究開発の成果をどうマッチングさせるかというのが、非常にタイムリーな提供が必要です。それから、3.のところは、2.と関係しますけれども、新事業進出分野、具体的な提案を、大学がどのように提案していくかというところが問われると思います。別途、岩手大学の調査だけではなくて、東北大学を中心とする、仙台の複数の大学の経済学部を中心とした研究調査グループも、宮城県、岩手県の被災地の企業を回っておりまして、そこと情報交換をしながら、企業への事業提案活動というのを、これから進めていきたいと考えております。それから、沿岸被災地の企業というのは、なかなかこれまで大学との連携が少なかったのですが、この震災を機に、大学との連携を望んでいる企業が多くいるということがわかりました。それから、官と学のコーディネーターネットワーク、情報共有というのが、やはり一番重要だというところが、今回の調査でわかった点でございます。

 ちょっと字が細かいところですけれども、岩手大学の事例から振り返ってみますと、これは私見も入っておりますが、的確に機能した面といいますのは、岩手大学の地域連携推進センターには、県内の自治体から現在は6名ほど、共同研究員として、若手職員を派遣していただいております。現在、彼らがそれぞれ3代目、5代目になっておりまして、既に市役所に戻ったOB・OG共同研究員から、かなり詳しい地域ニーズ・課題が、震災直後1週間ぐらいから大量に届くようになりまして、それらの地域ニーズ・課題に対して大学として素早い行動をしてきたという点は、日ごろからの市町村とのコミュニケーション、飲みニケーションもやっておりますが、そういう情報の連携をやっていくという、日ごろの体制、関係というのが大事だと思いました。

 2番目として、これは震災前に完成していた津波の仮想のシミュレーションのプログラムがあります。これが震災直後の復興計画に大きく役立っているということを聞いております。

 それから、3番目としましては、岩手大学のシーズだけでは対応できませんので、昨年の9月のイノベーションジャパンでいろいろなブースを回って、いろいろな先生に声をかけて、三陸の企業たちの新しい商売ネタはないかということで回ったところ、福井県立大学の先生や、岩手大学の技術移転マネージャーのネットワークにより愛媛大学の先生など、快く応じてくれたところがすごくうれしく思っておりまして、それでかなり高額な外部資金も獲得できて、企業が喜んだりとか、今、商品化の展開をやっているところでございます。

 一方、機能しなかった面というのがございます。岩手大の場合には、農学部ですので、水産関係の専門の研究者が非常に少ないです。この少ない研究者に被災地のニーズがかなり集中しておりまして、エフォートがいっぱいになっております。そういう研究者に負荷が超過になっている状況ですので、被災地のニーズに対して大学連携を通じて研究者負担を分散しながら解決するような体制というのが必要と思います。

 2つめにとしまして、被災企業のほうは、企業負担で経費と短いスパンで研究開発をするというのが、難しい状況にあります。一方で、今現在、JSTさんを初め、さまざまな省庁の復興支援の研究プログラムがありますけれども、やはり中長期的な視点での展開にならざるを得ないと思います。病院でいけば、緊急対応するICUの部門、それから、中長期的な治療をする医局の部門、そういうことを大学間の連携、あるいは大学にいる技術職員の対応とかそういうことで、緊急的な手当、それから、中長期的なビジネスプランの提供、人材育成、そういうふうな切り口で大学連携をしていく必要があるんじゃないかなと、今になって回想できるようになりました。

 それから、3つめですが、工業デザイン系のニーズが被災企業のニーズとして非常に多いのですが、現在行われているJSTのプログラムの募集の中で、装置開発などと違い工業デザインは研究開発要素がないということで断られてしまうケースもあったというふうに聞いております。これは提案する大学の見せ方の問題、説明の仕方の問題も多分にあると思うのですけれども、やはり文系をはじめとして、デザインにより商品価値を高めたり、ブランド戦略につながり企業競争力につながるなど、大学が力を入れてMOTとかそういうのをやっている中の1領域ですのでJSTさんの研究プログラムの中でも、こういう文系シーズというものを核にした研究開発というものも、日の目を見れるような機会を与えていただければなというところが、この3のポイントでございます。

 3.の想定が十分でなかった面というのがございますが、やはりコーディネーター間の情報連携というのがなかなか密にいってなかったとということがこれまでの課題としてありました。同じ企業に別な大学・自治体などところから何回も訪問するというのが、この1年間振り返ってみるとあります。そういうことで、今回の調査を通じて、県と大学、それから、自治体の財団、そういうところで共通の企業カルテのような形で、共通の部分は共有化していこうということで、今検討しているところでございます。

 3.の2のところですが、ちょっと泣き言になりますけれども、知財本部の我々がやっている産学連携の業務、これはルーチンワークとしてずっと続いているわけですけれども、それを的確にこなしつつ、今回の震災対応をしなければいけないというところで、体力的な面、メンタル的な面での、かなりきつくなっているというところでございます。これは岩手大学だけではなく、東北大学、福島大学、それから、東北の大学で共通して言える点ではないかなと思います。

 それから、お手元の資料に報告書の第6章というところを抜粋したもがあります。産学官の立場から、こういう点が震災における課題点、今後施策を講じていく点ではないかなということを書いたつもりです。ちょっと駆け足での説明になってしまいましたけれども、以上で調査報告とさせていただきます。

【柘植主査】  ありがとうございます。対馬先生、ありがとうございました。

 ご質問はございますでしょうか。その前に、文部科学省の産学連携にかかわる震災復興関連施策について説明をいただいてから、質疑したいと思います。お願いします。

【橋爪室長】  それでは、事務局のほうから、資料1-1と資料1-3を用いまして、産学連携の面からの震災復旧・復興関連の施策について、簡単にご紹介をさせていただきたいと思います。

 まず、資料1-1でございますけれども、これは実は東日本大震災が起こりまして、昨年の5月31日でございましたが、「東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の検討の視点」というものが、科学技術・学術審議会で決定をされてございます。それを受けまして、昨年度、23年度の冒頭に、この委員会におきましても、6月21日でございますが、「東日本大震災からの復旧・復興と産学官連携施策(提言)」というものをおまとめいただいている状況でございます。提言自体につきましては、お手元の机上配付資料の2のところに入れてございますが、この資料1-1は、科学技術・学術審議会のほうで、その検討の視点を踏まえて、1年間どういう取り組みが行われたかというのを、この2月29日におまとめいただいた中から、産学連携の関連の部分を抜き出したものでございます。そういうわけで、検討の視点と、あと四角の中で検討状況、あるいは取り組み状況ということで、産学官連携でどのようなことをやっているかというのを簡単にまとめてございますので、順番にご紹介をさせていただきます。

 先ほど対馬先生からのお話にもございましたが、東日本大震災、非常にどう表現していいかわからないような災害でございましたが、これにつきまして、科学技術の観点からも、今後も含めましてしっかりと対応していくということで、こうした提言が出ているわけでございますが、大きく分けますと5つの点の提言がございます。

 まず1.につきましては、東日本大震災についての科学技術・学術の観点からの検証をしっかり行っていくという点でございます。どのような点が機能したのか、あるいは、機能しなかったのか、想定が十分でなかったのか。先ほど対馬先生からもご紹介いただきましたけれども、ケーススタディではございますが、産学連携の観点からの施策、あるいは取り組みへの影響について、このように岩手大学さんを中心に、1つ検証をいただきまして、今回、今後の提言も含めまして、ご報告いただいているという状況でございます。

 2番目の視点といたしましては、課題解決のための学際研究や分野間の連携というものでございます。非常に大きな災害からの復旧・復興につきましては、分野を超えて、領域にまたがる連携というものが必要になってくるということでございます。2ページ目でございますけれども、産学連携の施策に関しましては、特にこうした点を、全国のコーディネーターのネットワークを強化するという観点からとらえてございます。すなわち、被災地のさまざまなニーズに対しまして、全国の大学のシーズを、分野を限らず結びつけていくために、これまでのコーディネーターのネットワークを最大限に活用していくということでございます。あと、後ほどご紹介もさせていただきますが、こうしたコーディネート力の強化のための新たな施策というものも、開始をさせていただくこととしてございます。

 3番目でございますが、研究開発の成果の適切かつ効果的な活用ということでございます。研究開発を行って、その成果が実際に社会が抱える課題の解決に結びついていくということでございまして、これは産学連携の観点から申し上げれば、まさに産学連携で開始されたいろいろな研究のプロジェクト、あるいは、大学のシーズといいますものが、最終的に社会のイノベーションにつながっていく。そうした仕組みをしっかりとつくっていくということでございます。

 2つの点がございまして、これは震災の復旧・復興に直接かかわる部分と、あるいは、新しい日本全体の産学連携の仕組みをどうしていくか、そういう2点があるかと考えてございますけれども、この下の四角にございますように、まず1つ目といたしましては、大学初新産業創出プロジェクトということで、昨年のこの委員会での24年度の施策のご提言の中で、新産業・新規マーケットを開拓していくような、日本型のベンチャーを中心としたイノベーションモデルを構築していく新たな施策を提言していただいております。また、被災地の復旧・復興という観点からは、これも後ほどご説明させていただきますが、産学官連携による東北発科学技術イノベーション創出プロジェクトということで取り組んでいくという状況でございます。

 続きまして、3ページ目でございます。社会への発信と対話という観点でございます。これにつきましては、研究者、研究機関等々が科学技術・学術に関する知見、成果等々につきまして、海外を含め、社会に発信し対話をしていくということが非常に重要だという視点でございますが、これは昨年度の提言の中でも、被災地の復興状況、あるいは産学官連携の取り組みについて、国内外にしっかり発信をしていくということが、実際に復旧・復興が進んでいるということを明確に示すことにつながって、投資、需要の喚起につながっていくであろうというようなご指摘がなされてございます。私ども、いろいろこういった施策を展開していくということを、各場面場面で発信をしてきておりますが、今後取り組みを進めていく上で、引き続きこうした視点というのが重要ではないかと考えているところでございます。

 また、5番目の視点でございますが、復興、再生及び安全性への向上への貢献ということでございます。こうした観点からは、これもやはり全国の大学のポテンシャルを被災地の復興に役立てるために、全国のネットワークのコーディネーターの機能、あるいはネットワーク機能の強化ということで取り組むということで行ってございます。大体これが科学技術・学術審議会の提言に関しまして、産学連携の観点から取り組んでいる状況でございます。

 続きまして、資料の1-3に従いまして、震災復興関連の産学連携の新規施策につきまして説明をさせていただきます。1枚表紙をおめくりいただきまして、絵がございますが、産学官連携による東北発科学技術イノベーション創出プロジェクトということで、平成24年度予算額約46億円ということで組んでございます。

 幾つかの内容から成り立ってございます。左側が、被災地の自治体主導の地域の強みを生かした、地域発展の産学連携モデルに対する支援というものでございます。新たに被災地を3地域程度指定をいたしまして、地域のイノベーションシステムのモデル事業になるようなところを支援をしていくというものでございます。右側は、主に科学技術振興機構さんのほうで事業を行っていただくことになってございますが、3つの観点から成り立っておりまして、1つ目は、目利き人材の活用による、被災地産学共同研究支援ということでございまして、これはまさに目利き人材を中核にいたしまして、被災地のニーズと全国の大学のシーズをつなげるものでございます。

 2番目のところが、大学等の技術シーズの被災地企業への移転促進ということでございますが、これは今まで既にございますA-STEPという産学連携活動を支援する研究資金でございますが、これらを重点的に活用する枠をつくりまして、被災地のニーズにこたえていくというものでございます。さらにそうした実用化に近いステージよりも、もう少し企業の新しいニーズを基礎部分で掘り起こすという意味で、産学共創というプロジェクトにつきましても、被災地のニーズにこたえられるような課題を設定いたしまして、復興対応ということで取り組んでいく予定でございます。

 3枚目の参考資料につきましては、主にこの絵の右側のところの詳しい内容を示しているものでございます。左側のマッチング促進というものが、目利き人材を活用した共同研究支援でございまして、順次A-STEP、産学共創ということになってございますが、これら支援を、被災地のニーズに重点的に活用していくということでございます。

 あと、先ほどの対馬先生のご発表との関係でありますと、特に産学共創のところでは、水産加工サプライチェーン復興に向けた革新的基盤技術の創出ということがございますし、また、A-STEPのほうでも、ナチュラルイノベーションということで、1次産業への対応等々もございます。もちろんこれはちょっと公募の部分でございますので、今後課題を募集していくという部分も多々ございますし、今募集中のものもございますが、こうしたことを被災地のニーズと今後の復興につなげていきたいと考えてございます。以上でございます。

【柘植主査】  ありがとうございます。約15分ほど使いまして、先ほどの対馬先生のお話、それから、文部科学省、相当広範なことを展開してくれている今のご説明、両方に対してご意見いただきたいと思います。順不同で結構でございますので、4時ぐらいまでを目指しまして、ご質疑いただきたいと思います。いかがでしょうか。

 主査のほうから、ちょっと先に。対馬先生の、先ほどの文部科学省のほうの説明施策でも、同じような目で見る必要があろうかなと思う意見なんですけれども、まさに今の待ったなしの震災復興というのは、非常に不幸な話なんですが、1つの我々、産学連携の、先ほど土屋局長が言われました、十何年やってきての、もう一歩破ることの非常に大事な試金石じゃないか。

 その視点の中で、きょうのご説明の中で、若干今までの産学連携活動の何をベースにして、それに新たに何をインプットして、何をアウトプットするのかという、私流の言葉でいうと価値の創造。これは大学側が生み出す価値と、それから、産業側が生み出す価値があるわけですけれども、価値創造のフローとインターフェースがどういうふうにネットワーク化しようとしているかという、一種のつながりの見える化。このあたりが、先ほどの報告の中でも見えにくくて。それから、今、文部科学省から説明がありました復興の関連施策においても、そういう目で見たいなと思うんですけれども、もう一歩見える化がされていないなというのが私の感じでございます。何かそれについて、対馬先生のほうからご意見ございますでしょうか。

【対馬副センター長】  本日の資料1-1のところで、4.の社会への発信の対話という項目が、事務局のほうでつくられたページがあるんですね。現在、岩手大学としても、ホームページとしていろいろな企業への支援の状況をお伝えしているんですけれども、企業の個別の対応をいかにして社会にお伝えするかというところが、企業秘密の部分とか、非常に難しいところがあります。先生今おっしゃったように、つながりの見える化というところをやっているのは、被災地のニーズへの対応をする部分で、コーディネーターの人たち全員ではないですが、一部の方々でフェイスブックを使って常に発信するようなことを心がけているコーディネーターもいて、そうするとかなり次の展開がしやすかったり、次のイベントへの参画が多くなったりとかしております。そういう企業の秘密を守りながら、どう展開していくかというところが、我々としても、もどかしいところとして感じているところです。

【柘植主査】  ありがとうございます。ほかの視点、関連でも。前田委員、どうぞ。

【前田委員】  全国のコーディネーターのネットワークのところの事業を、私どものところはさせていただいているんですけれども、今、登録していただいている方が900人を超えています。登録している方がたくさんいて、各地域でコーディネーターの地域ごとに会議をさせていただいているんですが、どうしてもコーディネーターというのは、各省各省で縦割りになっています。文部科学省でやっていただいている事業なので、文部科学省の49人の産学官連携コーディネーターは、皆さん業務として会議に参画できるんですけれども、どうしても産側のコーディネーター、また支援機関にいらっしゃるコーディネーターの方がその会議に出ようと思ったときに、非常に大変な状況にあって、ネットワークと口では言っても、会議に参加することすら結構大変な状況になっているのが実情です。

 ことしは私ども、いかに産側の方に来ていただいたり、また産業界、コーディネーターの人を使おうと思っている方に興味を持っていただこうかなと思いまして、産業界でオンリーワンで活躍している人の苦労話みたいなものを、会議で基調講演というか、講演をしていただいて、産側の人が半日つぶしてきても、時間のむだだったねということにならないような会議にしようかなと。いかに産側の人にコーディネーターの会議に参加をしてもらえるような工夫をしようかなということを、今心がけているんですね。

 やっぱりコーディネーターの方はたくさんいるんですけれども、学校の中にいらっしゃるコーディネーターの方、産業界にいらっしゃるコーディネーターの方、また間にいる、支援機関にいらっしゃるコーディネーターの方、さらにコーディネーターの方を活用しようと思っている企業の人、そういう人たちを一堂に会して会議をするということの大変さ。時間をかけてでも来てもいいかなと思うような会議を、どこかで設定していただいて、ネットワークするということがすごく大事なんじゃないかなと思っているので、やはりどこの事業の費用でもいいですから、皆さんが集まれるような機会。もしかしたら、コーディネーター協議会みたいな全部を集められるようなものがあったほうがいいのかもしれないんですけれども、何とかして、ネットワーク大事と皆さんおっしゃいますので、そういうようなところに国が背中を押してもらえるようなふうにして、コーディネーターが集まれるようにしていったらいいのかなというふうに思っています。

【柘植主査】  ありがとうございます。本委員会が昨年、一昨年になりましたかね、まさにイノベーション・エコシステムという構想を打ち出したにもかかわらず、今、現場がそういう形でネットワークをしようという意欲があっても、何かこの大学に1つ雇用されたとか、いろいろな制度上の足の縛りがあるんじゃないかと。それを打ち破らないと、ネットワークといったって動きませんよというのが前田委員のご指摘で、これはぜひこの委員会、あるいは関連ので、実態と、それから、制度上の障害というんですかね、それを妨げている現状は何があるのか。それをどういうふうに壊したらいいのか、壊すべきか。このあたりはぜひ課題として残すべきだなと、今伺いました。

 関連してもいいんですが、ほかのでも。三木委員、それから、井口委員、どうぞ。では、三木委員と井口委員。

【三木委員】  1つ、まずちょっと結論的なことを先にお話しさせていただきたいんですけれども、日本のここまでの10年間以上、技術ではトップ水準でありながら事業構想力で負けてきたということを踏まえる必要があると思います。東北地方では、今、新しい新規事業をやろうといういろいろな構想が出てきているわけですね。そのときトップ水準の技術はといいますと、大学知財はいろいろなところに分割されているわけですよ。大学はといって、先ほど対馬先生がお話しになられたように、岩手大学にはほんの一部しかないと。こういうことでは、事業構想力から物事をスタートしたいと思っているときに、逆に知的財産の独占あるいは分散状態が、新事業を阻害する可能性があるというふうに思っています。

 それを解消するためには、やはり地域限定的でも被災地限定的な発想でもいいんですけれども、コモンズ的な要素を入れていく必要があると思います。全国の大学が、被災地限定で、既に通常実施権等を設定しているだけの知財だったら、それらをコモンズとして利用してもらう。そういうことをやってはどうかと思います。実際に、そういった動きをした企業が1社あります。3月に新聞で出たと思うんですけれども、中国電力さんが東北で、自社の既に子会社も含めて使われている特許を、東北で利用して結構ですというアナウンスを出していました。こういったことを、大学の側は、もともと公共的社会財なわけですから、早く立ち上げていくべきではないかというふうに思っています。

 少なくともデータベースとしては、J-STOREもある。JSTのほうでは、大学のデータを持っているわけですし、もちろん大学の協力は必要ですけれども、そういったことを動かすことは可能だと思います。私ども工業所有権情報・研修館のほうも、開放特許情報データベースというのを運用しているんですけれども、こちらは主に企業が保有する特許なので、なかなかこういう動きにしていくのは難しいと思うんですが、大学の持っている特許については、関係の先生方もおられますので、ノウハウがついてくるし、利用できるように思います。そういった技術を、そこに集中的に提供できる体制をつくる。

 こうした限定的なコモンズの取り組みは、将来的には、ある事業構想を軸に考えたときに、ある種の特許がどうしても障害になっているというとき、個別大学と交渉するのは非常に大変なので、一元管理になっていれば、非常にやりやすくなる。例えば細野先生の技術特許も、まさにそういう形で、JSTが一元管理をしてくれたおかげで、最初にサムソンに通常実施権許諾をしたために、社会からはあらぬ批判を受けましたけれども、ああいった仕組みが、細野先生の技術の例でもわかるように、大事な時期になっているのではないでしょうか。

 ぜひコモンズ的な仕組みを、東北では緊急の課題ですので、地域限定でそういったことをスタートしてみる。そうすると、逆にコーディネーターの方も、事業構想を持っている企業の方と一緒になって、知財の面でどうしようかということも考えていけるし、ネットワークも、ただ集まっただけのネットワークにならなくて、そこにジョブがあるからネットワークになる。そういうことをやってはいかがかなということで、若干の問題提起です。以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。時間の関係で、これは宿題に。つまり、橋爪室長から先ほど説明がありました、東北発科学技術イノベーション創出プロジェクト、この中に応用として、今のご提案を組み入れられるかどうかというのは、ちょっと文部科学省のほうで検討してもらって、もし組み入れられるならば、このイノベーション推進協議会にそういうスキームのミッションをオンするか。できないというと、どうしたら、また別にしたらいいか。ちょっとそういう形で、宿題として今のご提案を預からせていただきたいと思います。

【橋爪室長】  はい。

【柘植主査】  井口委員、どうぞ。

【井口委員】  冒頭に土屋局長が言われました産学官連携は、この中の委員のかなりの方と、十数年前から一緒にやっております。現場と地域等を含めると、一生懸命やってきたんじゃないかなと思います。前田委員が言われた個々のコーディネーター、有能なコーディネーターにかなり頼っているというところが、まだまだ実情なんですね。対馬先生もそのお一人で、ずっとご活躍されてきています。やはりそういう人をこれから育てて行き、さらに育てて行き、しかも若い人も含めて育てていくということです。たびたび私もお話ししているんですけれども、被災したから幸いにというつもりは全くなく、郡山と仙台と盛岡に、いわゆるJSTのプラザ、サテライトがなくなった後に、震災復興促進センターができました。そこでかなり活発に、先ほど述べた事業も、今、一生懸命応募しようとそれぞれの機関がやっていますが、やっぱりそれ以外のところも、プラザとかサテライトがなくなっていますので、コーディネーターがよりどころというか、基盤を失ってきているんじゃないかなと思っております。ぜひその辺もお願いできればなと思っております。

 知財も、これは文科省ですが、経産省が、知財支援人材育成事業というプログラムを、もう何年にもわたってやっておりまして、東北地域も災害復興に役立てるということで、さらに今年度5年目、私もその担当をやっています。一番は、もちろん中小企業を対象にしているものですから、その企業の本体の知財もそうですが、どうやったらその企業が成り立っていくかという支援も、知財も大事なんです。そのほかのことでも一生懸命やる必要があり、全体的なコーディネーター人材が必要だなと思います。

 連休明けに、実は農水省のコーディネーター3人が弘前に行きまして、特にいろいろな地域の農林、水産、畜産のその辺をどう立ち上げていくかということをいろいろ議論しました。もちろん文科省の方もやっていますが、いろいろな意味で、まさしく前田委員言われたように、コーディネーターも、どうも縦割り的になるということを避けなければいけません。文科省は全体的に目が行き届きますので、ぜひその辺もよろしくお願いしたいと思います。ちょっと長くなりました。ありがとうございます。

【柘植主査】  いろいろまだ……。最後に本田委員、あと残るようでしたら、きょうの第2番目の議題も含めて、全体としてまたご発言いただきたいんですが、とりあえず本田委員で、次の議題に移らさせていただきます。

【本田委員】  きょうはご説明ありがとうございました。対馬先生のご説明の中で、ヒアリング調査で、東北地方の被災あり、なし問わず、やはり新商品等の共同研究というところのニーズが高いというようなご説明があって、実際どういう企業が、どういうノウハウを持って、新商品をつくっていきたいというふうに思っておられるかという、具体的な企業名みたいな、何かどこかが取りまとめて、商工会議所であったりとか、そういうところがまとめてくだされば、コーディネーターでつないでいくというのも1つの手法だと思いますし、具体的な個別の大学がアクセスするということもできるようになると、ほんとうに網の目のような状態で、いろいろな情報が拾えるようになって、結びつき、マッチングというのが進むのではないかと思います。せっかくこういうニーズが高いという情報がありますので、具体的な企業等が、何か大学からアクセスできるようになるといいなと思いました。済みません、感想ベースになってしまいます。

【柘植主査】  ありがとうございました。今、非常に大事なご提案だと思うんです。ぜひとも対馬先生の今後の活動、それから、先ほど事務局の説明がありました、東北発科学技術イノベーション創出プロジェクトの中のモデル事業というふうに3つほど立て、その中にも、今、本田委員がおっしゃった話を組み入れていくべきだと思うんですね。これはぜひそういう課題にしたいと思います。ありがとうございます。

 まだ幾つかあると思うんですけれども、2番目の話題も、少し広げてしまいますが、1番目の議題のご発言でし足りなかったのは、2つ目の議題の全体議論の中で、ぜひ出していただきたいと思いまして、議題2のほうに移りたいと思います。

 議題2は、これまでの検討状況と今後の課題であります。まず、昨年の産連委員会で取りまとめました提言を踏まえて、これまでの検討状況と、今後の課題案につきまして、事務局から説明をお願いしたいと思います。

【橋爪室長】  それでは、資料2と資料3を用いましてご説明をさせていただきます。資料2でございますけれども、これまでの検討状況についてということでございますが、1枚おめくりいただきますと、科学技術イノベーションに資する産学官連携体制の構築、イノベーション・エコシステムの確立に向けて早急に措置すべき施策ということで、その概要をまとめたペーパーをつけさせていただいております。これは先生方ご案内のとおりでございますが、当産学官連携推進委員会におきましては、22年の9月7日にイノベーション促進のための産学官連携基本戦略というものをおまとめいただいている状況でございます。その中で、このペーパーの上にありますように、やはり日本型のイノベーション・エコシステムをいかに確立していくかということが大切だということでおまとめいただいているわけでありますが、昨年度春におきましては、その基本戦略というものを踏まえて、さらに24年度に早急に措置すべき施策ということを、年度前半にご議論いただいた状況でございます。

 その中で、幾つか提言をいただいておりますが、特に2つございまして、このペーパーの左下の部分で、イノベーション・エコシステム拠点の構築と推進というのが1点と、もう一つは、イノベーション・エコシステムの基盤強化に資するリサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備という点でございます。

 まず(1)、左側の部分でございますが、これはいかに大学の成果から、新産業・新規マーケットを開拓していくか、こういったエコシステムというものが日本になかなか存在していないということ。特にそういった部分に重要な役割を果たします大学発ベンチャーにつきましては、その重要性にもかかわらず、なかなか事業化というところに結びつきにくい。したがって、事業化のノウハウを持った人材、事業プロモーターという人材を関与させて、大学のシーズから新規マーケットの開拓につながるような流れをつくっていくべきではないかということでございました。

 2点目のリサーチ・アドミニストレーターにつきましては、産学連携ということだけではなく、もっと基盤となります大学の研究推進体制、研究マネジメント体制につきまして充実が必要だということでございまして、当面は政府の配置支援により、リサーチ・アドミニストレーターの成功事例をまずつくって、そうした新しい職を定着させていくということが重要であって、そのためには、配置の支援を幾つかやる中で、その多様性を確保していくということが重要であるということをご提言いただいた状況でございます。

 それを受けまして、私ども24年度の予算の中に、そうした施策を反映しておりますので、それを次のページ、済みません、ちょっとページが次ないんですが、3枚目になりますけれども、まず大学発新産業創出拠点プロジェクトということで、1本立ててございます。平成24年度予算では13億円ということになってございますが、これがまさに事業プロモーターを活用した新しいシステムを確立していくというものでございます。この1枚目が全体の事業概要でございますけれども、まず事業プロモーターという方々を、公募により人選いたしまして、大学の新しい技術シーズというものをポートフォリオ化させて、事業プロモーターというのが事業化に関するノウハウを持って、こうしたものを起業前から、大学発ベンチャーを起業しようとする研究者の方とともに、事業化まで育てていくという構造でございます。

 今の状況でございますが、次のページでございますけれども、まず事業プロモーターにつきまして公募を行いまして、全体33機関からの応募がございましたが、その審査の結果、7機関を採択して、5月から事業開始という状況でございます。ここに書いてありますところが、事業プロモーターとして採択された7機関の概要でございます。

 続きまして、次のページでございますけれども、現在は、そうした事業プロモーターが定まりましたので、その後、技術シーズの申請、そしてそれを選定しました後で、事業化プランの申請、プロジェクト審査ということで、事業の開始につなげてまいりたいと考えてございます。

 次のページでございますけれども、こうしたプロジェクトの支援につきましては、いろいろな段階に対応できるように、3サイクルに分けて対応をすることにしてございます。あと、次年度に向けてでございますが、事業プロモーター支援型の公募につきましては、今年度33件の応募があったということでございますので、次年度、いろいろ分野、地域等を含め、プロモーターユニットの多様性を確保しつつ、出口戦略を強化する仕組みの構築を検討していく必要があるのではないかということで、さらにこうした事業の発展をどう進めていくかということも課題ではないかと考えてございます。

 続きまして、リサーチ・アドミニストレーターに関する事業の状況でございます。平成24年度は11億円ということでございます。この事業は23年度からスタートしてございまして、24年度は2年目になるところでございます。このペーパーにございますように、事業の内容としましては、3つのプログラムがございます。

 概要のところの年次展開の図でございますけれども、1つ目といたしましては、新しい職でございますので、スキル標準を検討することによって、この職の内容というものを明確化していくということを考えてございまして、これが東京大学さんのほうで行っていただいてございます。

 2番目の要素といたしましては、人材育成でございます。研修・教育プログラムの整備ということで、早稲田大学さんにお願いして、23年度から既に開始をしてございます。さらにいろいろなリサーチ・アドミニストレーションシステムを実際に大学で構築いただきまして、それを実施し、全国に成果展開していくという部分でございますが、これが継続分5拠点というのが、平成23年度から開始しているところでございまして、東京大学さん、東京農工大学さん、金沢大学さん、名古屋大学さん、京都大学さんのほうで、既に事業を開始していただいてございます。

 さらにその拠点の拡充、多様な取り組みの支援ということで、平成24年度は新しく10拠点を採択するということで、現在公募が終わりまして、審査を行っているところでございます。ただ、多様な取り組みということでございますので、幾つか性格分けをしてございまして、括弧にございますとおり、世界的研究拠点を整備するもの4拠点、専門分野強化、あるいは地域貢献・産学連携強化ということで6拠点ということで、合計10拠点を採択していく予定でございます。

 次のページが、24年度の公募要領のポイントでございますけれども、3つ目の丸にありますように、世界的研究拠点では、8人程度のリサーチ・アドミニストレーターの新規雇用を基準としてございます。残りの専門分野強化、地域貢献・産学連携強化につきましては、6人程度を基準としておりますが、次の主な実施条件にございますように、こうした補助金での支援の採用以外に、大学でやはり独自に雇用していただいて、全体のリサーチ・アドミニストレーターの組織体制の中で一部分を補助するというふうな考え方になってございます。

 あとは主な実施条件の2つ目のポツでございますけれども、補助期間終了後も、大学の独自経費により、こういう体制をしっかりと維持していただきたいということを、初めにお約束していただいているところでございます。さらにリサーチ・アドミニストレーターの雇用形態につきましては、雇用される方の職務環境の整備というのをしっかりしていただくとともに、URAとしては専従、そしていわゆる常勤雇用ということをお願いしてございます。さらにシステムが存続していくことが重要でございますので、補助期間終了後も追跡調査等を実施するということを予定してございます。以上が、昨年度の提言に対する施策への反映状況でございます。

 続きまして、資料3でございますけれども、産学官連携施策検討課題(案)ということで、事務局のほうで、今回4月から検討を再開していただくわけでございますけれども、今年度全体で検討を行うべき論点につきまして、たたき台を作成させていただいてございます。資料3のほうは2枚紙になってございますが、2枚目のほうは、23年の6月21日の段階で、一たん今後の検討課題ということでおまとめいただいていた分を参考につけさせていただいております。この部分から、主にこれまで検討が終わっている点、あるいは、状況の変化とともに、今後特に検討すべき点等を抜き出しまして、事務局のたたき台を作成させていただいております。

 順次簡単にご紹介をさせていただきます。(1)から(3)までございますが、(1)としては、やはり基本戦略のほうでご提言いただきましたイノベーション・エコシステムをいかに構築していくかという観点から、特にどういった点を強化していくかという点が1つの課題でございます。ここでちょっと短期と書いてございますが、この短期というイメージでございますけれども、これは平成25年度の予算のほうに少し関係してくるのではないかということで整理しているものでございまして、できましたらこうした点を今年度の前半にご検討いただき、ある程度長期的なものについては、年度後半にということを考えて、資料を作成してございます。そういう意味では、イノベーション・エコシステムの推進に向けて、まず25年度の施策との関係で、2点挙げさせていただいてございます。

 1点目は、大学が関与したオープンイノベーションシステムの推進方策ということでございます。これにつきましては、冒頭局長のほうからも申し上げましたけれども、これまで十数年、産学連携の体制整備ということで、大学のいろいろな産学連携機能の基盤の整備というものを展開してございましたが、さらにその大学の産学連携につきまして、オープンイノベーションを推進して、いかに大学のシーズを実用化につなげていくかという上で、さらに強化、あるいは抜本的に付加していく機能についてどういうものがあるのかということが、大きな点になるかと思います。もちろん知的財産の扱いも、三木先生からございましたけれども、そういった点も考慮に入れていく、ご検討の中に含まれていくものではないかと考えてございます。

 これにつきましては、周辺状況といたしましては、大学の産学連携本部の、いわばボトムアップ的にいろいろな取り組みを提案いただいて、それを支援するという、大学と産学官連携自立化促進プログラムというものが、一たん24年度に終了になるというところもございます。今後、大学が産学連携機能をどのように強化していくかという点から、私どもといたしましては、非常に大きな課題ではないかと思ってございます。

 2点目は、先ほど来ご議論にもなってございますけれども、産学官のネットワークをどのように強化していくかという点でございます。これにつきましては、1つはコーディネート人材のネットワーク化という点が挙げられるかと思います。どういった機能を、このネットワーク化のメリット、あるいは存在意義としていくかというところが、1つ検討課題になっているのではないかと考えてございます。さらには、TLO、で大学の知財本部、あるいは産学連携本部とありますけれども、こうしたところの連携のあり方というのも課題ではないかと考えてございます。

 (2)でございますが、イノベーションシステムの基盤強化ということでございますが、1点目といたしましては、リサーチ・アドミニストレーターへの支援策。これにつきましては、2年間行ってきている状況――2年間というか、1年終わりまして、2年目が始まったところでございますけれども、今後の支援策のあり方、あるいはまた、ネットワーク化といった点も含めて課題ではないかと考えてございます。

 2でありますけれども、産学官連携の教育における取り組みというものも、この大学の産学官連携機能を考える上で、あわせてご検討いただきたい点でございます。

 また、3でございますが、新たな成果指標の導入ということで、これは経済産業省さんと今、連携をいたしまして、いろいろどういうふうな成果指標が必要なのか。特に今までインプットとかアウトプットの部分はできているんですが、なかなかインパクトというところができていなかったり、あるいは、パフォーマンスを評価する部分が少なかったりというような課題もいろいろ指摘されてございますので、現在調査を行っておりますので、それをまたこの委員会でもご報告させていただいて、ご検討いただくという点があるのではないかと考えてございます。

 4といたしましては、これまでに産学官連携の事例、失敗、成功含めいろいろございますが、こうしたものを共有していくというところがございます。さらに社会的要請ということで、安全保障管理でありますとか、生物多様性等への対応、あるいは、新たな知財ビジネスへの対応、利益相反の点と、新しい社会適応性への対応について整理をしていく必要があるのではないかということがございます。

 さらに(3)といたしまして、これらの各論的な検討を踏まえて、全体像を見える化していくということも、取りまとめの前に1つご議論いただくという必要があるのではないかというのが、事務局のたたき台でございます。以上でございます。

【柘植主査】  ありがとうございます。既にご理解いただいていると思うんですけれども、ほんとうに文部科学省として、産学官連携の施策については、今までの本委員会の活動の成果を、さらに震災復興という、待ったなしのものとあわせて、予算化も含めて、かなり打ち手を実行していただいているという報告と、さらに25年度の予算絡みも視野に入れた、資料3に書かれた短期的な課題。それから、少し時間をかけてでもしっかりしていかなければならないものというのが、この資料3でまとめていただいて、提案していただいているわけでございます。

 これについて、少し残った時間で議論したいと思うんですが、私のほうから、ちょっと参考の資料として用意しましたのが資料4でございまして、これをご説明してから、総合討論、今後の課題について討論したいと思います。

 資料4は、『GLOBAL EDGE』の春、4月号に寄稿を頼まれまして、私が寄稿しました。タイトルが、「科学技術駆動型のイノベーション創出能力の強化を」。副題として、「科学技術・イノベーション・教育の一貫推進エンジンの構築に向けて」とあります。

 最初のパラグラフの、日本の危機的な状況、これにつきましては説明は省きますが、先ほど土屋局長もおっしゃったように、2段目の真ん中に、「沈み行く日本」というのをあえて書きました。2段目の真ん中だけちょっと読ませていただきます。「“沈み行く日本”の新生に向けて、『教育政策と科学技術政策とイノベーション政策の一体的推進機能』の強化を急がねばならない」ということ。そして、次が2段目から左ですね。「イノベーション・パイプライン・ネットワークの構築」、これが先ほど橋爪室長が言われました産学官連携システムの見える化についての1つの提案でございます。

 ここだけ少し文章に沿って読ませていただきます。目の前の画面には、この図1が大きく書いてございますし、添付資料にもありますので、これをまた引用します。イノベーション・パイプライン・ネットワークの構築ということで、最初のパラグラフは飛ばしまして、3段目のフロントランナー型イノベーション創出のところから読ませていただきます。「個別の先端科学技術創造」と、その「統合化能力」、すなわち社会経済的な価値の創造の両方の能力の強化が必要であり、それぞれを担う人材の育成と、教育の一層の強化と多様性が必須である。また、それらを個別に評価するのではなく、それぞれの価値創造と人材育成を双方向に結びつけ、相乗効果を発揮させる推進構造をつくることが肝要である。ここに知の創造と社会経済的価値創造とを結ぶ“イノベーション・パイプライン・ネットワーク”構築の重要性がある。

 図1の横軸は、お手元のA4に少し拡大したものを見ながら見ていただきたいんですが、図1の横軸は、科学技術領域の広がりを表し、縦軸は知の創造から、目的基礎研究、応用・実用化研究開発、さらには製品開発・市場投入の社会的価値創造段階を表す。基礎研究の成果を、ある市場価値化の仮説のもとで、プロジェクトA、これは図1の下のところですね、研究領域Aから上に上がっています。プロジェクトAとして進めても、他の技術の取り込みなしにはイノベーションまで到達しないケースが多い。オープンイノベーションの重要性と言えることができると思います。

 一方、プロジェクトAの成果で生み出された派生技術が、全く予期せぬ新たなプロジェクトを生み出し、製品A’という新たな社会経済的価値を生み出すケースもあります。これも図の中で説明しています。それから、また図1の中央下部に記したように、研究領域Aと研究領域Bの融合によって、新たなプロジェクトの創成がイノベーションを起こすケースもあります。また、その融合によって生み出された派生技術が、予期せぬ社会経済的な価値の創造に結びつくケースもあり、さらには科学技術的シーズの市場ニーズに基づく見直し、この絵でいうと右端に書いてありますが、市場ニーズからの大学等への基礎研究領域への立ち返りの機能が、また新たなイノベーションを生み出すケースも見逃すとはできません。

 すなわち、この図1に示しています“知の創造と社会経済的価値の創造を結ぶイノベーション・パイプライン・ネットワーク”は、非線形的で、かつ確率論的なプロセスであります。大学等の担う「教育・基礎研究機能」と、研究開発型の独立行政法人や、産業が主に担う「研究開発・人材育成機能」、さらには産業が主を担います「イノベーション創出・人材育成機能」を有機的に結びつけ、それぞれの創成価値と教育・人材育成も含めたフロー及びインターフェースを日常的に保つことが、イノベーション・エコシステムとして重要であります。

 我が国においては、このような日常的な双方向の「研究・イノベーション・教育の一体的な結びつき」が、いまだに世界レベルに達していないことが“沈み行く日本”の大きな原因の1つであります。

 幸いに第4期の科学技術計画が、科学技術振興とイノベーション振興と一体的に進める方向を打ち出したことは、まことに重要でありますが、初等・中等・高等教育との連動を明確に打ち出していないことが問題であります。

 次の段落の、イノベーション創出に必須の人材像については、また見ていただきたいんですが、一言申し上げますと、この小さい図で失礼ですが、図2の一番下に、Type-Σ型というのが、イノベーション構造の縦・横の統合による社会経済的価値創造人材。これは先ほど事務局のほうから、科学技術・学術審議会の大きな、野依メモと私は称していますが、いわゆる社会的な課題を解決する人材を、いかに育てるべきかという課題設定がありました。これと非常にリンクしているということだけ申し上げて、次に進みたいと思います。

 次の、資料でいうと20ページの左下、「イノベーター日本創り運動」の提唱というところでございます。これもちょっとまた読ませていただきますと、“沈み行く日本”を再び浮上させるのに与えられた時間は極めて少ないとの危機感を、国民全員が共有せねばなりません。そのために、日本の新生に向けた「イノベーター日本創り」の国民運動を提唱します。その重要な示唆、視点ですね。次の3点の重要視点に立った司令塔機能の発揮が求められるといっております。

 マスクしているところを読ませていただきますと、重要視座1。産学官が共有できる「科学技術駆動型イノベーションプロセスの基本設計図」、ここでは参考のために図1をお出ししました。これをつくり、産学官のあらゆる場面で一種のテンプレート的に共用する。例えば、政府の各省庁にまたがる投資の連関と横串の見える化、あるいは、提案された基礎研究企画、応用研究企画などが受け持つ「知の創造から社会経済的価値の創造」までのイノベーションプロセスにおける立ち位置、インプットとアウトプットの見える化。それらの投資に対する評価とフォローにも活用できます。あわせて、各種の産学官連携にかかわる制度設計の見える化とPDCAマネジメントにも活用できます。限られた政府と産業の原資を有効に生かすために、この「科学技術駆動型イノベーションプロセスの基本設計図」を共有し、絶えずイノベーションプロセスの各分担を確実に指揮監督する司令塔が極めて大切であります。先ほど触れました科学技術イノベーション教育一体推進会議は、この司令塔機能を発揮することが求められます。

 視座の2でございます。日本のイノベーション牽引エンジンの脆弱性を見える化し、日本の特色を生かした価値創出能力強化と人材育成に向けた設計図をつくる。これは産学官が共有化し、日本の大学を国際基準に引き上げるための強化策、研究開発型の独立行政法人の強化策、産学官連携強化策の制度設計に活用すべきです。特に注力すべき施策は、大学・研究開発法人・産業を結ぶ「価値と人材のフロー&インターフェースの制度的改革と実践」であります。

 重要視座の3であります。負のスパイラル構造にあります「財政、経済、社会保障」を、「産業振興」、「科学技術振興」及び「教育振興」の三位一体的推進によって、“正のスパイラル構造”に転換する“イノベーター日本創り運動”の基本構想を推進します。「まさに1,000兆を超します財政の借金、年間1.3兆円の自然増加が発生する社会保障、さらには産業の主影響力低下に伴う税収の低下」、これに象徴されます“沈み行く日本”の負のスパイラル構造を、“日本新生に向けた正のスパイラル構造”に復元する必要があります。そのためには、まず産業の収益力を回復する“イノベーション振興投資”の充実が重要でありまして、同時に、その源である“科学技術振興投資”と、それを持続可能なイノベーション牽引エンジンとするために必須の“教育投資”を三位一体的に推進していくことが必要でございます。

 以下、またご関心がありましたら読んでいただきたいんですが、申し上げたきょうのこの趣旨は、ぜひとも今、画面に出ています図1の知の創造と社会経済価値の創造を結ぶイノベーション・パイプライン・ネットワーク、名前はどうでもいいんですが、やはりこういう共通の設計図ですね。ものづくりで言えば、これはまだコンセプチュアルデザインだと思うんですが、このコンセプチュアルデザインに基づいて、各ファンドを求めている部分、あるいはファンドを与える機関、あるいは全体を見ている文部科学省というものが、それをやはり政策設計図まで落とし込んで、そしてそれを図面でもってでき上がったものが計画どおりなのかどうか。こういう見える化をするための、ぜひとも産学官が共有できるコンセプチュアル設計図を、ぜひこの委員会でつくっていただきたい。これをつくらずに、それぞれの大事だということを投資して走っているわけですけれども、やはり設計図の共有なしには、なかなかタックスペイヤーから見ると、投資効果が見えないというところまで壁にぶち当たっているのではないか。

 最初に土屋局長がおっしゃった、十何年、この産学官というテーマをやってきたんですが、果たしてそれが我々が世界の流れに追いついているだろうかというと、私自身は非常にネガティブに感じています。そのネガティブは、こういう基本的な設計図を共有しないで計画し、実行し、フォローし、また次の計画に反映しているのではないか。そういうふうに思っている次第でございまして、ぜひともこの図1をこの委員会としてさらに充実して、全国で共有できるようなエコシステムの設計図にしていただきたいというのが、ご説明の趣旨でございます。

 時間をとってしまいました。あと約25分ほどありますので、この第2の議題、冒頭に申し上げましたように、短期的なものは相当24年度も動き始めています。24年度も動いておりますし、文部科学省のほうとしても、25年度に向けた布石も打っていただいている。それと同時に、中長期的な課題という、これについてご意見をいただいて、今後の活動に生かしていきたいということでございます。

 それでは、どれでも結構ですので、ご発言いただきたいと思います。どうぞ渡部先生、それから森下委員。

【渡部委員】  冒頭から、十数年の産学官連携施策を少し抜本的に見直したらどうかと。十数年ということになるのかもしれませんが、やはり期限を切ってモーメンタムをつくって、いつまで何をするかということを考えていく必要があるなと思います。そのために一番適切だと思っておりますのは、産学連携を含めた大学のイベントとして大きかったのは、やはり2004年の国立大学法人化だったと思います。それからしますと、ちょうど10年が2014年の4月ということになりますので、ことし準備して、来年ほぼ施策を進めて、2014年の4月に、その先10年を乗り切れるような、今、柘植委員長が言われたような設計図も必要かもしれません。そういうような意味で、ことしは非常に重要な年かと思います。

 といいますと、国立大学の話になって、私大の方はちょっとご異論があるかもしれないんですけれども、実際に機関帰属等々の制度設計変更に伴って、全体の産学連携が影響を受けたのは間違いないと思いますし、先ほどのリサーチ・アドミニストレーターの施策というのも、もともとは国立大学で国の一部だったときは国がやってくれていたものが、今になってそこのところの手当が必要というような形とも見えるわけですので、そういう意味で2014年の4月を目指して、10年間を振り返り、そして10年後を展望できて乗り切れるようなプランをつくっていくということになろうかと思います。

 昔のことは我々は忘れていますけれども、実は2004年の10年前、1990年ということから言えば、1990年の新聞なんかには、産学で何か一緒にやるというのは癒着だったわけでありまして、毎日新聞の1990年の6月の新聞で、産学癒着の恐れとか書いてあったのは、それはほんとうの事実であります。そこから10年で産学連携を政府の公式な施策として打てるようになって、さらに10年後が今の状態であって、そこからどこができて、どこができなかったのかということを、やはり振り返る必要があろうかと思います。

 1つは、やはり産学連携という機能を個々に確立していく、あるいは、個々の企業との関係をちゃんとしていくというようなことに、おおむねそれでスタートした。それから、10年の後半になりますと、イノベーションというキーワードが非常に使われるようになったわけであります。このイノベーションというキーワード自身は非常に多様に使われておりまして、それはそれでいいと思いますが、きょうはたまたま日経新聞のコラムで、イノベーションの経済学者の後藤晃先生が、イノベーションの解説をしていらっしゃいましたけれども、シュンペーターの最も古い定義、新結合という定義で解説をされておられましたが、私はこれが一番ほんとうはいいと思っていまして、実はそこの概念の中には、技術開発、製品のイノベーションとかいうのは、社会的に自由をされることまで含めてイノベーションというような考え方をしております。イノベーションというのは、需給関係の均衡を、製品やプロセスやさまざまな工夫によって、均衡を不安定にさせることであるという定義でありまして、それによって社会に受容されるということが必須の条件で、そういう意味で、社会に受容されるイノベーションの施策に、果たしてどの程度貢献できていたのか。これは実は、10年の後半になってから、そういう視点がはっきり出てきたというふうに思います。

 その意味で、先ほど震災の関係の施策というのは、実はそれこそ震災からの復興という課題、地域の個々のいろいろな課題じゃなくて、そういう1つの課題に対してどういう施策が必要だったかということを考える、ある意味ではほんとうに社会的需要を前提とした取り組みが、図らずも始まったわけであります。これは東北だけじゃなくて、日本全体非常に危機的であるとすれば、そこの社会的需要に対して図っていくようなイノベーションの貢献ができるかということが問われているんだろうと思います。

 そういうような観点で、今後ここに書かれているような施策の検討。これは短期的な検討もあるんですけれども、長期的な、それこそ2014年の4月に間に合うように考えていくプランに整合させるような議論も必要かと思います。その中には、国際的な環境の変化等々もあるかと思います。そういう意味で、ここで書かれている項目は適切なものだと思いますが、ただ言葉だけではなくて、新たな成果指標の導入というのが、まさしく今後10年を乗り切っていく成果指標だというふうにとらえて、議論を進めていければというふうに思いました。以上でございます。

【柘植主査】  ありがとうございました。では、森下委員、どうぞお願いします。

【森下委員】  全体的なお話は今出てまいりましたので、私のほうからは、もう少し個別の話としてお願いしたいなと思っています。イノベーション・エコシステムの推進というところで、今回、オープンイノベーションシステムの中で、大学新産業拠点ということで、実際に公募が始まりました。この中にも何人か委員の先生がいらっしゃいますけれども、実際にやってみてわかったのは、非常にプロモーター人材という方が日本にやっぱり少ないなということが1つと、それから、プロモーター人材というのが、やっぱり東京に集中していまして、地方にはほとんどいらっしゃらない。今回採用されたのを見ていただきましても、やはり地方のやつというのはほとんど入っていなくて、思った以上に足腰が弱いのかなというふうに思います。

 今年度でこれは終わるのか、それとも来年度、もう一度追加募集があるのか、まだちょっとはっきりしないという状況じゃないかと思うんですけれども、できれば金額は小さくてもいいんですけれども、やっぱり地方の拠点づくりというのを仕掛ける必要があるんじゃないかなという気がいたします。実際、公募が始まって、今、大学側の申請も出ていると思うんですが、見ていますと、やっぱり地方から応募案件は多いんですけれども、受ける側は東京ばかりなので、なかなかこのままいくとマッチングできないんじゃないかなと。そうした意味では、今回のプロジェクト自体は、どちらかというと今あるやつをうまく使ってという話だったんですけれども、今後は地方で、こうした震災拠点をつくるような、足腰をつくるような形で、やはり募集等もしていく必要があるのではないかなと思います。特に、先ほどお話もありました、JSTプラザとかがなくなったので、余計産学連携の足腰が、ちょっと地方は弱っているなというのは強く感じていまして、その意味では、同じ形で募集するのか、形を変えるのかは別にして、ぜひもう少し地方に目を配ったようなシステムというのもつくる必要があるかなと思っています。

 それとともに、2番目のところで、コーディネート人材のネットワーク化というのが出ていますが、逆にプロモーター人材のネットワーク化もしないと、やっぱり意味がないんじゃないかなと思います。コーディネーターとプロモーターというのは、結構ほんとうは一緒になって動くべき存在のケースも多いかというふうに思いますので、そちらのネットワーク化というのも少し考えていただければと思います。以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。先ほど前田委員からご発言があった宿題とあわせて、ぜひ今のお話を検討課題にして、事務局のほうも、今まで既に布石のある短期的なものも含めて、その中で充実できるものと、やはりそれでは足りないものはあるのかというところの見方で分析していただきたいなと思います。

 石川委員、どうぞ。

【石川委員】  柘植主査のこの資料、大分詳細に読ませていただいたんですけれども、総論は合意できる話が多い。もっと言うと、10年前とあまり変わっていないというのもあるんですが。渡部先生は、先ほど10年前と言っていましたが、10年前、私は法人化のときの副学長をやっていたので、そのときにどんなドラスチックな変化があったかよく覚えているんですが、変化をして変えましょうといって、組織、あるいは制度設計を大分根底から変えてきたわけです。それでも局長から変わっていないと言われているのは何でかといったら、制度問題、組織の問題では動かない問題がそこにあるということだというふうに思っています。

 その観点からしますと、柘植主査のこの資料は、総論では私はものすごくよくできていると思うんですが、各論に入った瞬間、つまり、10年間過ぎた、今各論に入った瞬間に、どうもこのセンスじゃないんじゃないかと強く思います。前に一度、柘植主査には反論したと思うんですが。この図1というのが、リニアモデルなんですが、これで科学技術のどの程度の分野をカバーできているかということに関しては、かなり疑問を持ちます。かなり少ない分野しかカバーできていない。例えば、私の分野、情報の分野だと、このモデルはもう過去のモデルであって、使い物にはならない。だから、このモデルで社会を動かそうと思われると、情報関係だと、もう嫌になっちゃうという感じを持ちます。

 だけど、この図が悪いというわけじゃなくて、この図はある一面を表現しているのであって、これ以外のスキームが多々あるということを、我々は認識すべきであって、10年間、東大なんかではプロプリウス21というのをやったんですが、その中で、1つのモデルで何か運用しようというのは、完全に1年目ぐらいで崩壊しまして、いろいろなモデルがあるんだということを我々は認識して、そのモデルによっては、応用側から入ってくるやつもあれば、突然こういうことをやってみたいというものから入ってくる、いろいろなモデルがある。そのモデルを見える化するというのであれば、私は大賛成なんですが、この図1だけでやろうとするのは、とても無理だと。10年間の実績からすると、とても無理だというふうに私は思っています。むしろそうじゃなくて、多様なモデルをどうやって維持していくかということに、アイデアを出すことが必要なのではないかというふうに思います。

 それと、この図1に関しては、実は科学技術基本法もこうなっているんですね。だから、国の構造自体が、今の科学技術の構造の変化についてきていないという大きな問題が1つあります。背景には、基礎研究をやれば応用は必ずあるんだという誤解であるとか、大学の一部にありがちな要素還元主義があって、要素に分解すれば、すべてがわかるんだというような誤解であるとか、世の中は決定論的、あるいは予定調和で動くんだという誤解。今は科学技術はそうではなくて、突然カタストロフィックにいろいろなことが起こっている。それにどうやって対応していくか。あるいは、アプリケーションオリエンテッドに、大学が応用で、企業が基礎というスキームも十分あり得るし、そのスキームで動いている大きなマーケットが世の中に存在するわけですね。それを無視するわけにはいかない。

 それから、このスキームをもう一つ言えば、これでフェイスブックとグーグルは説明できないんですね。それを日本は捨てるということを表現しているのかというのが、この図1だけでやろうとするとばれてしまうので、そうではないと。違うモデルもちゃんと共用しているんだということを、ぜひとも入れていただきたいなと思います。

 それから、これからもうちょっと細かい話なんですが、スキームの実施に関しては、アイデアを出す時期になってきて、アイデア不足。つまり、一番上の抽象論はもういいんです。それから、組織も制度も決まった。その下にある、実際に動かすためのアイデアをどうやって出していくかという時代になって、アイデアもかなり大胆にやらないといけない。我々自体がイノベーティブでなければいけないわけで。例えば、ファイナンスの考え方を徹底的に科学技術用途に導入していく。一部ではプロジェクトファイナンスというような考え方も出ているんですが、資金の流れを根底から変える。資金を外部資金、あるいはユーザー側、マーケットから調達しようというようなモデルを、大学、あるいは文科省が導入するということは、必須の時代になってきたなと思います。金融系は、それをわりと歓迎する雰囲気がありますので、そういったものをどうやって利用していくか。

 それから、社会受容性ということに関しては、社会というものの、マスコミも含めて、科学技術のレベルをどうやって上げていくか。それから、こういったリニアモデルだけじゃないんだということを、考え方の根底にどうやって植えつけていくかということも含めて、アイデアをみんなで出し合う時期になってきたと私は思います。

 3点目は、これは最後ですが、人材をどうやって養成するか。この中、あるいは今までの中で、人材の話は大分出てきたんですが、何回も私は申し上げているんですが、大学というものが、世の中が要求していない人材を育てるわけにはいかない。だから、ここですばらしい人材を養成するといったとしても、社会が受け取らない人材を大学が養成するわけにいかないので、社会がきちんと受け取ってくれるということをどうやって保障するかという問題がございます。いい教育をしたのに、目の前で路頭に迷う学生を何回も見ているので、こういう学生が欲しいと言われても、そのぐらいでは我々は動きませんで、そういう学生を採るとまで断言していただかないと、大学の教育は成立しないという面がございます。それを念頭に入れたプランを、我々は考えるべきだと思います。

 ただ、これはネガティブに言っているように聞こえると誤解なんですが、これをどうやってポジティブな施策に持っていくというのが、アイデアの問題だと思います。そのアイデアは、私は細かいレベルでは幾つかあると思いますので、そういったものを拾い上げていくような施策に繋げていっていただければなと思います。

【柘植主査】  ありがとうございます。2つちょっと。図1は、決して私は、これはかなり注意深く説明したと思うんですが、結局、ヘンリー・チェイスブロウのオープンイノベーションのあのコンセプトは、この中に入っていると思います。オンリニアで、ストキャスティックスのプロセスだと言ったのはこういうことでございます。それから、多分、グーグルのモデルなんかも、このコンセプトの中で私は説明できると思います。ぜひともこれは、リニアモデルだというふうにとらえてしまうのは非常に誤解だなと。

 ただ、本論は、この図を見せたことは、石川委員がおっしゃったように、さまざまなイノベーションのモデルがあると思うんですが、ここ2年間、すなわちこの委員会でイノベーション・エコシステムというものの報告を出して以来、各ファンディングの企画に対して、それぞれの委員の方々も参画していただいたと思うんですが、いわゆる投資に耐え得るかどうか、値するかどうかというさまざまな審査会が出たんです。その審査会では、まさにここに指摘しているような、ほんとうにこの中でどの点からどの点を目指しているのかというような設計図がないままで、非常にきれいな文章だけの企画で、我々は審査をせざるを得なかったと。やはりさっきも言いましたように、図面なくものづくりをしているように、この2年間過ぎたなと、私は思っております。

 したがいまして、ぜひともこの図1にこだわることはなく、先ほど石川委員もおっしゃったように、何枚かの設計図のこのパターンですと。Aです、Bですと、こう主張しながら、研究企画を主張していただくのに図面が欲しい。何枚でも結構だと思うんですけれども、ある程度、やはり全国で共有して使える。ファンディング側も、あるいは、ファンディングを申請するほうも含めて共用できる図面にしていきたい。そのための1つのたたき台として出したというふうに受け取っていただきたいと思います。

 ぜひとも石川委員も、今までのご経験が豊富ですので、TypeA、TypeB、TypeCぐらいを出していただきたいと。今のところ、どうも残念ながら、ヘンリー・チェイスブロウのあのへんてこなオープンイノベーションの絵を超すようなものが出ていないんですね。そういうことで、ぜひとも今の批判をポジティブに私も受けとめますので、貢献していただきたいと思います。

 どうぞ。

【郷治委員】  郷治です。大学発新産業創出拠点プロジェクトについて森下先生からご発言がございましたのでその観点と、あとは対馬先生のプレゼンについても、ちょっとコメントさせていただきたいと思います。

 森下先生おっしゃったように、プロモーション人材が非常に少ない上に、東京に集中しているというのは私も感じておりまして、あと弊社、プロモーターユニットに採択いただいたんですけれども、その際にも東京大学以外の案件にも取り組むようにというのが1つの条件といいますか、ご要望だったということなんですけれども、私ども、今案件を見ている中でも、東京以外の案件もちらほらと、まだ1次締め切りの段階じゃないので、ああ、きょうですか、締め切りの段階なので少ないんですけれども、見ております。

 ただ、やはり地方の拠点づくり、足腰を強くしていくという観点からは、私どもが東京以外の地域に目を密に配るというのは、なかなか現実的ではない面も多少ありますので、やはり地域にも目が届くようなところも、プロモーターとして活躍できるような形を、ぜひ充実していただきたいなと。

 例えば、産業革新機構さんの中にユニットをつくっていただくような働きかけをするとか、あるいは、地場に根を張った大企業ですね。そういったところは決してベンチャーキャピタルではないんだけれども、大企業の新規投資事業として地場に目を配って、そこのシーズを発掘するようなことも考える等々していただくといいのかなと。

 今回、プロモーターユニット7社決定いただいたんですけれども、ファンドがちゃんとあるかという観点でいうと、特に二、三年後の事業化段階での投資ができるような段階のファンドがあるかという観点でいうと、おそらく半数以上はないんじゃないかというふうに思うんですね。そういうことも考えると、やはり民間投資を呼び込むというのがこの制度の趣旨ではありますので、プロモーターユニットの多様化といいますか、充実も検討する必要があるのではないかなと思います。

 あと2点目としては、1つ目の議題の対馬先生のプレゼンテーションの中で前向きな印象を受けた点は、民間企業が三陸復興にかかわる場合には、非常にスピードがあるとか、センスもいい。特に海外企業とおっしゃっていましたけれども、そういった動きがあるということだったので、やはりいろいろな関連人材にかかわっていただく際には、インセンティブを持って、自分から中心になって動くという人が核になる形をまず整えた上で、それから支援をされたら応援するよという人を巻き込んでいくというほうがいいのかなと。自分がインセンティブ持っているのであれば、多分縦割りも自分で壊していくと思いますので。その際に、今の制度ですと、グループ化していないと、企業も応援がしにくいというようなお話があったかと思うんですが、要するに、個別企業単体だと、なかなか公的に支援しにくいというようなご趣旨の発言があったかと思うんですけれども、その辺は例えば、もう少し運用を緩和されて、単独でも採択するんだけれども、その採択後に、より支援を胸を張っていくようなことも、ちょっと時間的なブランクはあるかもしれませんけれども、許容していくような運用をされるといいのかなと。まあ、ジャストアイデアなんですけれども、思いました。

【柘植主査】  ありがとうございました。もう一、二件。では、3人ですね。牧野委員、永里委員、羽鳥委員。

【牧野委員】  時間がないので、簡単に申し上げたいと思いますが、当初ありましたが、十何年たってあまり変わっていないような印象を受けるとおっしゃいましたが、十何年の間に発展してきている結果が今あると思いますね。随分変わったという印象を、私は持っているんです。どういうふうに変わったかということですが、おそらく国際的な動きにも、多少キャッチアップできるところが存在するようになってきているというふうに思います。

 確かに森下さんおっしゃるように、東京以外に大事な人材がたまっていないというのは大きな問題なんですが、これは何とか解決をするために努力をしていくようなことが必要だと思うんです。オープンイノベーションということについて見てみますと、やはりスキームはよくわかるし、石川さんおっしゃるように、ほかのモデルも出てくるだろうと思うんですが、実行するためにどういうものがあるかというのを考える時期がきている。考えてもいいような力はついてきているというふうに思います。ですから、渡部さんおっしゃるように、来年度に向けて案をつくっていくというのは非常に大事な時期がきているんだろうなと思います。

 つらつら見てみると、ライフサイエンスの新しいものをこの国で興すというのは非常に難しい状況にあるわけですが、これは何もこの国だけでやる必要はなくて、いろいろな国とうまくやっていけばいいと。それの1つは、アカデミア・リサーチ・オーガニゼーションだというふうに解釈しております。もう一つは、それ以外のところについては、非常に小さいところに、シーズから出口までをパッケージにしたサイエンスパークだろうというふうに思っています。その2つが国際的には実行に入っているわけで、こういうものにどういうふうに対応できるかということを、真剣に考えていくということが必要だと思います。

 特にエンカレッジするためには、シーズがいいペーパーを出せる環境をつくってやらないと、いいシーズは出てこないということだと思います。それに対して、日本では一番足りないんじゃないかなと思っていることが1つあるんですが、それは民間資本がこういうものに入ってくる気配が、今でもないということですね。政府の投資に非常に依存している割合が強いと。この民間資本をどうやって入れるかというのが、非常に大きな問題じゃないかと思います。ニューヨークのルーズベルトアイランドには、民間資本は一千億円投入されているわけですね。詳しくは述べませんけれども。そういうことが計画の中に入るのが必要かなと思っております。以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。そうしたら、永里委員、それから羽鳥委員で終えたいと思います。どうぞ。

【永里委員】  時間がないので、結論のほうから先に言わなきゃいけないと思うんですが、きょうの1番目と2番目の議題は、本来はつながってなきゃいけないと思うんですが、ちょっと落差があるような気がします。特に対馬先生の発言なさったまとめのところにあります、被災の有無にかかわらず新商品等の開発のニーズは高いということですね。そういうことを考えた場合に、どうやって新商品をつくっていくんですかということについての答えは、いろいろ考えますと、ニュービジネス的な発想。例えばきょうの中では、「地域資源農水産品」をキーワードにした新商品をつくること。これで産業化を図っていくことになると思いますが、そういう発想で新しい開発が出てくるんだろうと思うんです。

 地域におけるものはそんなものだろうと思うんですが、一方、議題2のほうにいきますと、柘植先生のお話の図1などは非常に格調高くなっていまして、私のほうは化学企業なんですけれども、化学企業のリチウムイオン技術の発明、特許なんかができたときの過程を見ますと、この図1のとおりであります。そういう点では、これは示唆に富んでおりますが、一方、石川委員のおっしゃったことも事実でございまして、全然別途に、最近特によくわかってきたことは、世の中にないものを即ち新製品をつくるとしてアンケート調査しても、絶対に答えが出てこないんですよね。

 昔の例でいきますと、時計がアナログだったのに、デジタルの時計の新製品のアイデアの調査のアンケートを出しても、全然良い結果出てこなかったのに、なぜデジタル時計が出てきたかというと、3回調査してもだめだったのに、そのときのオーナー経営者が自分で決心したからあの市場ができたわけで、そういう点では、市場というのは勝手にある研究開発、あるいは、ある発明で勝手にできてくるという事実が存在します。それをこの図1でどうやってあらわすかということは、石川委員の問題提起でもありますが、私は柘植先生がおっしゃったように、石川委員も新しいタイプの図2とかいうのをつくってほしいと、こういうのが私のコメントでございます。以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。それでは、最後に羽鳥委員、どうぞ。

【羽鳥委員】  済みません、短くしたいと思います。今までの経験を総括して、それぞれの大学のカラーとか文化に合ったようなものをみずから考えて、それでPDCAするというふうなことが大事かなと思います。これは渡部先生がこれまでの総括をされていた……、いらっしゃらないようですけれども、おっしゃっていましたが、私もそのとおりだと思っております。

 10年前は、アメリカではこんなふうにやっているとか、ヨーロッパではやっているとかという見聞によるものを知って、それを追いかけた。追いかけ型のモデルをずっとやってきたと思うんですね。それをこの10年間、我々は実際にみずから体験したわけで、そのみずからの体験に基づいて、自分の大学はどういうふうな立ち位置で、研究成果を社会に還元するのかというふうなことを、真剣に考えたらいいんじゃないかと。10年前に比べて、考えられる基盤というか地盤というか経験というか、それは備わった。これは文科省初め政府のこれまでの支援の一番大きな成果ではなかったんじゃないかなと、私は思いますね。考えられる時代になった。あとは、企業と10年間やり合った中で、お互いに何がポイントなのか、どこをどうすればどうなるのとか、そういったこともわかってきた。多様な経験があったわけで、それに基づいてPDCAかなと、プランして、PDCAかなというふうに思います。

 つい最近、サザンプトン大学のプロフェッサーと話をしたんですけれども、彼は10年間MITにいて、7年間ケンブリッジにいて、それからサザンプトンに7年いた。それぞれ全く違うモデルだというんですね。そのとおり成功していると。MITを我々が追いかけてもだめだと。じゃあどうするのか。例えば、そういった話で、それぞれの大学のカラーと文化に基づいて、みずからプランを策定することが大事じゃないかというふうなことであります。ちょっと時間の関係で、以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。5分ほど時間が過ぎてしまいましたが、野間口委員からぜひご講評というか、全体の。

【野間口主査代理】  きょうは大変密度の高い議論をしていただいたなと思いました。資料3の検討課題のまとめというのは、今後へ向けての大変適切なまとめかなと思うのでありますが、具体的な検討に当たって、私は今までの我が国の科学技術政策は、ほどほどうまくいっているのではないかと思います。それを産業競争力につなげられないという現実が、うまくいっていないとか、閉塞感があるとか、弱体化しつつあるとか、そういう議論につながるのかなと思います。ベンチャーも、大学発のベンチャーというのも結構できています。

いろいろなハードルがあって、なぜうまく競争力につながっていないのかというところを、整理しながら検討を進めていく必要があるのではないかと思います。そして、この産学官連携推進委員会として提言できるものがあれば、提言したらよいのではないでしょうか。今、特区制度などがあるので、できるところは、そういうところで反映することができるかもしれません。経産省の言葉で言うと、六重苦という環境下でありますが、六重苦を一遍に外すことはできませんが、いろいろ検討してみると、そのうちの幾つかは、我々の施策で突破できるかもしれないと考えます。

 産業競争力につながった例として、大分前の親委員会で、私が石川先生がに「今では素晴らしいグローバル企業になっている味の素は、大学発ベンチャーじゃないか。」と言いましたら、現代に味の素の提案をしたら、いろいろな制約がありとてもじゃないけどテイクオフできないというようなことをおっしゃっておりました。まさに現代社会というのはそういう形になっているわけで、我々の科学技術イノベーション政策を本当の競争力につなぐためには、こういったことも考えるべきではないか。社会的な法制度とかも含めて提案するようなものにしたらさらに存在感が増すのではないかなと思いながら聞かせていただきました。

【柘植主査】  ありがとうございます。議題2につきましては、基本的には資料3の課題としては合意を得たかと思います。ただ、それぞれの意見の中で、今、実行する、野間口委員のおっしゃったことも含めて、この課題を掘り下げていくときの視点を各委員からいただいたと私は理解します。そういうことで、議題2につきましては終了したいと思います。

 10分ほどおくれてしまいましたけれども、事務局のほうに今後の予定をお願いします。

【井上専門官】  それでは、事務局より、今後の予定についてご連絡申し上げます。お手元の資料5をごらんいただけますでしょうか。次回の第9回は、6月18日、14時からを予定しております。その次の第10回は7月2日、2週間と近くなりますが、15時からを予定しております。会場や、また議題の詳細につきましては、本日ご議論いただいた資料3を中心に、柘植主査ともご相談しながら、別途ご連絡させていただきます。以上、事務局よりご説明申し上げました。

【柘植主査】  ありがとうございました。10分おくれてしまいましたけれども、閉会といたします。どうもお疲れさまでございました。

 

―― 了 ――

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