産業連携・地域支援部会 産学官連携推進委員会(第6回) 議事録

1.日時

平成23年8月26日(金曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省東館3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. イノベーション・エコシステムの推進方策について
  2. リサーチ・アドミニストレーターについて
  3. 早急に措置すべき施策について
  4. その他

4.出席者

委員

柘植主査、北澤委員、石川委員、長我部委員、高橋委員、橋本委員、南委員、森下委員、井口委員、常本委員、永里委員、羽鳥委員、原井委員、藤本委員、前田委員、牧野委員、三木委員

文部科学省

常盤科学技術・学術総括官、池田産業連携・地域支援課長、木村地域支援企画官、橋爪大学技術移転推進室長、寺崎産業連携・地域支援課長補佐、寺坂地域研究交流官、石田大学技術移転推進室長補佐、井上大学技術移転推進室専門官 他

5.議事録

【柘植主査】  それでは、定刻となりましたので、ただいまから産学官連携推進委員会の第6回を開催いたします。
 最初に配付資料の確認からお願いいたします。

【石田室長補佐】  お手元に議事次第を用意させていただいております。中段でございますが、議事次第の4.配付資料の一覧でございます。1件1件確認をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 まず、資料1「イノベーション・エコシステムの推進方策について」というA4判横長の資料でございます。
 続きまして、資料2「イノベーション・エコシステムの拠点構想(案)」でございます。
 続きまして、資料3「『リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備』の平成24年度以降に向けた主な論点について」でございます。
 資料4「科学技術イノベーションに資する産学官連携体制の構築(案)」でございます。
 続きまして、資料5「産学官連携推進委員会の当面の予定」という1枚物の資料となっております。
 資料番号は以上でございまして、次に、参考資料でございます。参考資料1が「リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備」というカラー刷りの資料でございます。参考資料2が「科学技術基本計画」のホチキスどめ資料を配付させていただいております。
 そのほかの机上配付資料といたしまして、紙のファイルにとじた関連資料というのを各委員のお手元に用意させていただいているところでございます。
 1点だけ補足をさせていただきますけれども、本日、参考資料2「科学技術基本計画」を配付させていただいております。こちらについては、去る8月19日に閣議決定された基本計画でございます。この内容については詳細は省略いたしますけれども、この中では今後の科学技術政策の基本方針としてイノベーション促進に向けた推進方策等々が触れられているところでございまして、本委員会において各種審議をいただく内容に密接にかかわりが出てくると思われますので、参考配付させていただいたものでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 あともう1点、先ほど、羽鳥委員から国際産学官連携シンポジウムに関するチラシをお預かりしておりますので、各委員のお手元に1枚ずつ配付させていただいているところでございます。
 資料は以上でございますが、落丁等がございましたらお申し付けいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【柘植主査】  ありがとうございます。今、案内がありました参考資料2の科学技術基本計画の第4期がやっと閣議決定をされましたが、この参考資料2の目次を見ていただきますと、既にご案内だと思いますが、やはり今度の第4期の基本計画の新機軸と言っていいと思うのですが、科学技術振興とイノベーション振興の両輪をしっかりやっていこうというのが、特に2章の「将来にわたる持続的な成長と社会の発展の実現」にかなり具体的にコミットメントをされているわけでございます。特に5章の「社会とともに創り進める政策の展開」も含めまして、我々の担っています産学官連携推進委員会、いよいよ正念場に突入したという認識が必要ではないかと、この点、主査としても認識しております。
 それでは、早速、本日の議事に入りたいと思います。
 本日の議題1「イノベーション・エコシステムの推進方策について」でございます。これも、まさに先ほどの科学技術基本計画第4期と密接に絡んでおりまして、これまで3回の委員会でご議論いただきました。ありがとうございました。これらの議論につきまして、本日は石川委員にまとめの議論をお願いいたしましたので、まず石川先生からお願いいたしまして、その後で施策に落とし込んだイメージ図について事務局から説明いただいた上でご意見をいただきたいと思います。
 それでは、石川先生、お願いいたします。

【石川委員】  今まで3回の議論を拝聴いたしまして、また、私もところどころ意見を申し上げたのですが、全体の構造の議論をもう少し深めたほうがいいのではないか。あるいは、それに対する整理をするほうがいいのではないかということで資料1をまとめさせていただきました。本来であれば、さらに詳しい具体的な部分での設計、あるいは細かい組織設計論があるのですが、それは時間の関係もありますし、この場には細か過ぎるのでふさわしくないので省略させていただきます。
 私、何年か前に、東京大学のと言ってはいけないのですが、東京大学の関連のベンチャーキャピタルの制度設計、あるいはシステムを細かいところから全部設計した経験がありますので、その経験からしますと、重要なのは全体の構造と方針、コンセプトをどう決めていって、それを具体的な施策、あるいは組織体に落としていくかということでありますので、全体の構造、あるいは思想というものをまず最初のほうでご説明した後、後半でどういった設計条件があるのかというのを整理させていただきました。
 まず、前半の3枚程度は、イントロといいますが、皆様の頭の中の整理でありまして、委員の方々の一部の方は、もう釈迦に説法なところがありますが、1ページ目でありまして、イノベーションをどうやって国の施策として牽引していくかといったときに、大きく分けると3タイプあります。この3タイプをかなりリジッドに分類しているわけではございませんで、この境界はもっとぼやっとしていて、お互いにオーバーラップしていて、それがなかなか絵にかけないので、これは線を引いちゃっているのですが、ほんとうは線を引くところではなくてオーバーラップしているということをご理解いただけると……。
 産学官連携では、ステレオタイプでこうでなければいけないということを言うこと自体が一番いけないことなんですが、今回は重心の位置がどこにあるかという議論になりますので、それはお許しください。
 一番上がAのタイプで、これが旧来からの学術系でやっていたことでありまして、成果が出ると、それを論文にして公表する。これは、社会への貢献、あるいは科学の進歩というものに貢献することをもって、その投下資金に対する利用度があるという見方をするわけです。
 2番目のBのタイプというのは、今までは文科省としても大学知財本部整備事業、あるいは、それの展開事業、自立化促進の事業といった形で整備してまいりました結果、各大学には、このマインドと組織体が植えつけられてきたわけです。これは技術移転、ライセンスアウトをもってロイヤルティーでリターンを得るという方法や、共同研究の資産として研究成果を提出し、共同研究をもって事業化へ持っていくというタイプのものであります。これに対してもまだ十分ではないのですけれども、一応施策としては大分やってきたと。
 今回議論をしていくのはCのタイプではないか。ここに重心があるのではないかということであります。Cのタイプのターゲットとしては、多くの場合は新規マーケット。ベンチャーも既存マーケットをねらう場合もあるので、これもいろいろなケースがあるのですが、重心の位置としては新規マーケットをねらうという場合でありまして、この場合は、大学の成果はベンチャー企業に移転されて、そのベンチャー企業のファイナンスをきちんと整備してあげないと、その事業は成立していかない。その資金をどうやって、どのステージで、どうやって入れていくかということを議論しなければならない。ここに日本特有の問題があるのではないかという指摘があるわけです。
 2ページに移りますと、Cをどういうふうに見ているかということになりまして、Cを拡大したものが2ページになります。上半分が現状ですが、現状としては、多くの場合、既存マーケットをターゲットとした共同研究に陥りがちです。ですから、リスクの少ない事業化をターゲットとして企業の方が大学に来て、こういうマーケットに対して新しい技術はありませんか。この技術にマッチしたようなものがあると、それはライセンスアウトであるとか共同研究である。
 それから、ちょっとしたレートステージのベンチャーカンパニーの方もいらっしゃって、その場合もマーケットをターゲット。大学へ来て「マーケットはありますか」という質問をよく受けたんですが、大学の先生に「マーケットありますか」と聞いたところでわかるわけがないのであって、そういう愚問を投げるような関係ではいけないわけで、新しいマーケットをとらえるような研究成果に対してどうするかということは、この上の現状のスキームの中では解決できない問題ということになります。
 それを解決するとした場合、新規マーケットをどうやって解決するかなんですが、問題点が幾つかあります。1つは既存企業。大きな企業は、新規マーケットに対してはどうしても手が出にくい。一部には出やすい企業もあるのですが、出にくいところがありまして、既存企業からの投資は難しい。それから、日本のベンチャーキャピタルの特有なんですが――ベンチャーキャピタルの方がいらっしゃると殴られるかもしれないのですが、どうしてもレートステージの安定的な投資に偏りがちであります。その証拠にベンチャーキャピタルから、BS・PLがちゃんとありますか、ビジネスモデルはありますか、マーケットはありますかという質問をよく聞くのですが、アーリーステージに対しては愚問中の愚問でありまして、意味をなさない。そういった質問に答えられないと投資がないというのが、今の日本のベンチャーキャピタルの、レートステージを中心にしているから仕方ないといえば仕方ないのですが、問題点であります。
 アーリー側に意欲的に投資しているベンチャーキャピタルが非常に少ないということがあるので、東京大学エッジキャピタルというアーリーも視野に入れたベンチャーキャピタルを独自につくったということになります。
 ここがないがために、基本的に独創性の高い研究成果があるのに、成果としてはあるんだけれども、それがマーケットとして立ち上がっていかない、研究成果が死蔵されている。ひいては国民の税金で使われたいい研究成果がどこでも使われないという事態を招いているというのが日本の大きな問題点というふうに思っております。ここをどうにかしたい。そうすると、真ん中の部分を日本ではだれが担うのかという課題に落ち込むわけです。
 それを諸外国との比較をしたのが3ページになります。ビジネスのステージをアーリーステージとレートステージ、あるいは新規マーケットの開拓のステージと新規マーケットの拡大、あるいは既存マーケットの獲得といった第2段階に、1段と2段に分けますと、1段に対する投資という問題が今回のターゲットでありまして、台湾・中国は政府の施策として直接的に民間企業に投資をできる体制になっています。ご存じだと思いますが、例えば台湾ですとVLSI、これは特別の分野に限ってやる場合が多いのですが、VLSIあるいはEMSコンピュータ、こういったものは新規の会社に国の予算で直接投資して、その結果として、ご存じの方も多いと思いますが、TSMCだとかEMSの大きな会社とかが成長して世界を牛耳るようになった。
 台湾は、特に重要なのは、教育と企業と国家が全部つながっておりまして、企業の要請に基づいて教育した結果、そういった学生に対しては企業はちゃんとした高給、厚遇、要するに高いサラリーで厚遇するという施策をとっておりますので、企業と政府が一体となって教育と産業をつなぎ、それで今の台湾のある一部の分野での隆盛を招いているということになります。
 それから、ちょっと韓国を飛ばして米国ですが、米国はご存じのとおり、プライベートセクターに旺盛なアーリーステージに対する投資意欲があります。これは、歴史も大分積み重ねてきましたので、投資に対する経験も豊かですので、投資が次の投資を呼ぶといういいサイクルに入っているのがアメリカでありまして、エンゼル、あるいはアーリーステージをやるVCというものが、このピンクの投資をやっていく。
 ちょうど中間といいますか、国策とプライベートカンパニーの共同作業をやっているのが韓国でありまして、これはトロイカ後に国策でつくられた財閥があって、それが現在に至って財閥系を中心とした旺盛な投資がアーリーステージも来ているということであります。
 米国、韓国、台湾、ともにピンクの投資に対して、経験も豊かですし投資金額も大きいという事実があって、当然レートステージもやるわけで、このグレーのほうもやっているわけですが、アーリーに対する投資が多い。
 これが振り返って日本を見ますと、ここに「?」と書いていますように、ここのアーリーステージに投資する対象が誰もいない。国もだめ。それから、ベンチャーキャピタルも含めたプライベートセクターもだめということになると、赤い点線に大きくバツをつけているのが、ここに投資がないということをもって、独創性豊かな成果が事業化へ結びついていないという問題があると思います。
 この点、何度も申し上げているのですが、皆さんの危機感がまだ足らなくて、例えば、手前みそで恐縮なんですが、私の研究室なんかでいい成果を出して、新聞あるいは学会で公表されると、一番最初、その当日に電話がかかってくるのは韓国の某大手企業ですね。これはすぐさまかかってきて、「資料くれ」から始まってやるんです。それがネットに載って、翻訳されて英語で出るのが大体1週間なんですが、そうするとアメリカのベンチャーがすぐさま来ます。その英語がヨーロッパ各国の非英語圏に翻訳されるのが2週間かかります。2週間たつと非英語圏からのメールがどっとやってくる。日本はというと、その間は何も来なくて、2カ月たち、3カ月たちしてメールが来て、おいでいただいて説明すると、社に持ち帰って検討しますと言って、社に持ち帰って半年や1年は返ってこないというのが日本の現状でありまして、これは、実は最先端の研究をやっている現場では、それは日常的に体感的に覚えていることなのですが、皆様の危機感がそこまで行っていらっしゃらないというのはもう少し考えていただきたい。
 最先端の研究に関しては、私らもアメリカの大手企業と共同研究をやっていますが、考え方自体が根本から違いまして、日本の企業はマーケットに役立つような他社のあの企業のやっていることを乗り越えるようなことをやりましょうという共同研究を持ち掛けてくるのですが、アメリカの大手企業との共同研究をやっていますと、他社のやっていることはやめましょうから始まる。そのスタンスの違いというのを、アーリーステージだけではないですが、もう少し日本の研究者、企業、あるいはベンチャーキャピタルの人たちは理解していただきたいということであります。
 さて、そのアーリーステージ支援をつくる全体の組織体ですが、これを日本型でどうしようかということが今回の施策の中心だと思います。アメリカのようにプライベートセクターだけでやれるほど、アーリーステージに対する日本の文化は育っていませんので、プライベートセクターにゆだねることはできない。かといって国策でやろうとすると、国の予算の管理上から、国策で直接ベンチャーキャピタルに対してやるのは、できないことはないと思いますがなかなか難しいということで、4ページの左上にあるように、日本型システムとして国が場と情報と人材までは提供するから、リスクマネーを呼び込む場をつくって、リスクマネー自体はプライベートセクターへ政策誘導して出していただこうという形の施策が今回の形ということになります。
 この際、後々の設計に関係するのですが、何を提供して何を利用していただくかということのバランスがとれていないと、こういった施策はまずうまくいかない。東大のエッジキャピタルをつくるときも、このバランスの計算を何回となくやり直したわけでして、その設計条件というのは、今日の最後の提案になります。これは、そのイントロ、入り口ということになります。国から提供するものは、研究成果そのもの、それから、人材の費用まで、それから研究成果情報、こういった、ここにこれだけすばらしい研究がありますよ。それから、ここに、後で出てくる事業プロモーターというものの人材の費用までは出しますよ。それから、多くの場合、大学の研究成果は、まだベンチャーキャピタル、あるいはベンチャーのビジネスを始めるには達していない場合には、そこに達するまでのEXITグラントまでは国で押さえましょう。
 それから、さっきのリスクマネーを呼び込めるかどうかということで、真ん中のネズミ色の四角の枠の中に場を設定して、この場の中でリスクマネーのマネジメント、あるいはベンチャービジネスの展開を図っていく。そうすると、この各プロジェクト、VBプロジェクトと書いてあるのは、国からの成果と、人材の給料分だけのものと、リスクマネーとして資金が来てベンチャーの立ち上げをつくっていこうということであります。
 これは何度も議論をしなければいけないのですが、設計条件が厳しいものがございます。そこの緑で囲った設計条件1、2というのは、実は私の経験からすると、これをどうするかというのが一番大きな問題であります。設計条件の1に関しては、すべてのプレーヤー、この場合のプレーヤーは、事業プロモーター、投資家、研究者、国、そういったものがすべてメリットを享受する必要がある。それから、設計条件2は、すべてのプレーヤー間で損得勘定がちゃんと合っている。あいつだけが儲けようということがあると、これがうまく効きませんので、それをどう設計していくかということになります。
 実は、細かい話になりますと、それの利用度のパーセンテージを1.5%にするか1.75%にするかによって、この組織体は変わってくるのですが、その議論をここでやるわけではないので、全体構造をどうするかということをとくとお考えいただきたい。
 次のページに行きまして、5ページは、組織体の全貌の試案になります。文科省の案とあまり変わっていないと思います。
 VBプロジェクトは、ある研究成果に対してベンチャーを起業するところまでのアーリーステージをどうやっていくかというプロジェクト運命共同体になります。事業プロモーターは、上のスーパーバイザーからの評価を受けて、この中のマネジメントをするという形になります。EXITグラントは、上の評価委員会の評価のもとにおりてくる可能性がある。これに対して、外部の投資家が企業へのリスクマネーの投資をしていくということで、国費は企業に対しては投下しない。これをしますと、後々いろいろな問題が起こりますので投下しないということで、ここはプライベートセクターにお願いする。あと、利益相反の問題があるので、上の評価委員会と事業プロモーターの権限は明確に分離する必要は、必要条件としてあるということになります。
 次のあと2枚ですが、先ほど挙げました設計条件1と2が重要でありまして、設計条件の1は、各プレーヤーがそれなりのメリットを感じないとこの仕組みはうまくいかない。投資家はどういうメリットがあるかというと、エッジキャピタルと同じなんですが、国の資金が投下された研究成果であるので、アーリーステージ以前、起業以前の研究開発の投資が国の投資をもってなされていることをもって、資金上のメリットがある。
 それから、これはほんとうかどうかはあれなんですが、選ばれた研究成果であるので、投資をしたときの成功確率が通常の投資よりは高くなるはずである。そういったものに対して投資家がちゃんとメリットを感じれば、そこの投資の場は成立するということで、右に書いてあるように、バランスは、トラックレコード依存なんですが、回収資金が投下資金より上がっていればいい。
 それから、事業プロモーターは、大体上と同じメリットに加えて、シード案件ですので、何らかのリターンが期待できる。例えば、そこでの働き分に対するストックオプションでの利用度ということもありまして、それの対価の総額が、自分が投下した努力、行動も含めてなんですが、それも大きければ事業プロモーターは理解できる。ここには反論もいろいろとあります。これはいろいろな計算があります。ですが、概略的に言うとこうなります。研究者は、今までやれなかったリスクの大きいものに対してリスクヘッジできるようなシステムができているということで、ここのシード案件を積極的にこの場に投資してくれるだろうと。
 それから、地域は全国組織があるので、全国組織の利活用を地域からできるようになる。
 それから、国というのが実は重要でして、国の中の2番目に書いてあるアントレプレーナーシップの教育研究システムの確立があります。これは、学生の教育という面からしますと、あまり言うと怒られるかもしれませんが、いまだに大企業の技術者を育てるような教育をやっている面がないわけでもありません。ところが、学生側は、もうアントレプレーナーシップの流れに乗ってくる学生もどんどん増えておりまして、卒業時、就職せずに起業する学生なんていうのは日常茶飯事の出来事になっています。そういう人たちに大学の教員が、こういうこともできないでどうするということもあって、私の後をついてこいという具合に、私はベンチャーをやったことはありませんということでは、もう通じない時代にもなりつつありますので、それに対して教育がしっかり。
 それから、台湾のシステムを見ていると、学生の教育とこういった産業育成というものが人材の供給源としてつながっていかないといけないので、国としてはこの場をつくることによって、そこがつながるという大きなメリットがある。このメリットは、ぜひとも机をたたいてでも強調しておきたいことであります。これは特に企業の方は、こういう学生が欲しいとよくおっしゃるんですが、欲しいならば必ずとってほしい。それは、教育と産業がつながってなければいけない。欲しいという希望だけを言って、後は知らんよというのは許されないということであります。
 それから、もう一つの設計条件2が次のページになります。これは、今あったメリットが一部に偏ったメリットではいけないということでありまして、なかなかこの設計は大変です。これ以降、細かい話をしていった場合、何を出したものに対して、どれだけの利用度が与えられるかというのを各プレーヤーで吟味して、このプレーヤー間に損得がないように、あいつだけが儲けたということがないように設計していく必要があります。
 特にこれを国の施策としてやる場合に、もう一つそこに拘束条件がありまして、各プレーヤー間のバランスがずれますと、大域的に見た場合に利益供与の問題が出てきます。この利益供与の問題というのはなかなか厄介なんですが、ルールできちんと整備しておかないと、あいつだけが儲けてということがよく出てきます。それが国費をもって、国の税金をもってやったのにプライベートセクターが儲けてという議論は何度となく出てきますので、それに対してディフェンスできるだけの組織設計をする必要があるということになります。
 それから、当然のことながら、プレーヤーの配置によっては利益相反は必ず出てくるので、これも利益相反の問題は事前処理すれば対処は可能なんですが、それはきちんとやっていく必要があるということであります。
 早口で全体像を申し上げましたが、幾つかのポイントは、この施策の中で日本の産業界を変えていく、あるいは日本の産業界を支えていくためには、教育と一体となって支えていくにはどうしても必要なことであって、日本にこの場、アーリーステージを支えていくという場がないがために、今の日本の産業界の足腰が弱っているのではないかという危機感も含めてご説明申し上げました。

【柘植主査】  ありがとうございます。大分これらの議論のポイントが見える化されてきたと思います。議論は、後ほど事務局のほうからの説明も含めましてさせていただきたいと思います。
 では、よろしくお願いします。

【寺崎課長補佐】  事務局から資料2についてご説明をさせていただきます。
 前回、柘植主査から詳細な制度設計が見えるレベルに落とし込む必要、また、基本設計図になるようにとのご指摘をいただきました。今回、資料2でございますが、事務局案といたしまして基本設計が見える形に整理させていただいてございます。基本設計については、この図の中で左から右に時間軸で整理させていただいてございます。まず、第1段階として、事業プロモーターの人選でございます。公募等により、分野、地域性を考慮して選定されるような制度設計を考えてございます。
 次の段階といたしまして、地域の大学群が持つシーズが、シーズの申請が行われまして、事業プロモーターを介しまして、シーズに関する計画を評価委員会に推薦されるスキームとなってございます。評価委員会は、その計画を随時評価・選定していただきまして、その選定された計画につきましては、事業プロモーターのプロジェクト管理のもと、大学の研究者が研究開発を推進していただくとともに、チームによる事業化を推進していただくことを想定してございます。
 複数のプロジェクトを事業プロモーターがマネジメントすることによりまして、地域性を踏まえたポートフォリオが形成されるとともに、事業プロモーターが各ポートフォリオを管理していただくということを想定してございます。
 スーパーバイザー/評価委員会におかれましては、助言や事業プロモーターのパフォーマンスを評価していただき、場合によっては支援プロジェクトの中止などの対応が必要になってくるというふうにも考えてございます。
 また、このような取組を通じまして、国際市場等で戦っていくような大学発ベンチャーが創出され、その中で組織や関係者に経験、知見の蓄積、また、それにかかわった方々の人材の育成、それで培われた人材資源等が、またその同じ地域の次のシーズに投入される。そのようなサステイナビリティー、イノベーション・エコシステム拠点が形成されることを目標として、この基本設計とさせていただいてございます。
 この事務局案につきまして、本日引き続きご議論をしていただければと存じます。
 事務局からは以上でございます。

【柘植主査】  ありがとうございます。約20分ほど使いまして、今の石川委員、それから、寺崎補佐からのお話を中心にご意見をいただきたいと思います。どの視点からでも結構でございますので、お願いいたします。
 森下委員、どうぞ。

【森下委員】  石川先生のまとめもありまして、かなり今回はよくわかるような形になったのではないかと思います。今回の案をもとにして考えますと、やはり研究費をある程度持つということで、ここの金額があまり小さくてもいけないので、ある程度しっかりした予算を確保しておきたいなというのが第1点になります。
 それから、もう一つは、これは石川先生のお話にも出ましたように、実は日本で一番問題なのは、このハンズオンのベンチャーキャピタルがほとんどないということなので、ベンチャーキャピタルのユニットをここでうまく活用できれば、まだ日本になかったベンチャーキャピタルを育てることができると思いますので、その意味で、このプロジェクトというかグラントの仕組みは意味があるのではないかと思います。
 そういう意味では、あまり個人的な活動よりも、ある程度ユニットを重視した形で選んでいくという形が望ましいのかなという意味であります。
 これも石川先生のお話にも出ましたので、あくまでも強調だけということでいいんですけれども、ぜひ地域のことをしっかり考えてあげたいと思います。東京がほとんどで、大阪でもあるかないかということで、それ以外の地区はもうほとんどないと言っていいと思いますので、その意味では、こういう仕組みができることで、おそらくユニットのところへ行けば、大手のベンチャーキャピタルの方も投資先が見つかるということで、より地方への資金の移転ということも可能になると思いますので、ぜひ早急にやっていただければと思います。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 ほかに。北澤委員から、ぜひ石川委員の資料の3ページのところの、いわゆる第3のCのタイプのイノベーション経営陣において、今はバツとされていますけれども、私の認識からすると、JSTなんかはここのところ、かなりという言葉を使っていいのかわからないですけれども、カバーしている設計になっているかなと思いますが、ちょっとそこのところを少し議論できないかなと思うんですけれども、いかがですか。

【北澤委員】  そうですね。JST、これまでプリフェクチャーとか大学発ベンチャー、さらに、そこから後の育成事業といったようなことをやってきたわけですけれども、日本でのベンチャーのはしりのころからやってきて、やっと日本にもベンチャーの精神が少し育ってきたというのはそういう時期だったものですから、まだ日本にはベンチャーの文化というのがなかなかないという周囲環境であったということが、あまり大きな規模にはできていないということがあると思いますけれども、大体今、大学で既に2,000社ぐらいのベンチャーが一応できたわけです。それがどの程度育っているか、そこの確率を高くしていこうということで、ここの部分、公的なお金でほんとうにベンチャーを育てていけるのかというのが第1点。これは、アメリカみたいにアーリーステージのベンチャーを育てるお金がベンチャーキャピタルから入ってくる部分というのは、ほんとうに公的にできるかどうか。これはJSTとしては非常に気にしているところではないかと思います。
 最近、そこの育てる部分に国が評価して出してもいいというプロジェクトができて、幾つかそういうトライアルをやってきているわけでありますけれども、私の感じでは、ベンチャーというのは、儲けなければならない。その儲かるか儲からないかという判断を、公的な機関の公的な評価委員会がそれを判断できるのかどうか。つまり、お金を出さずに評価をするということなんですけれども、そこの工夫が若干必要になってくるかなと、私はこの石川先生のあれでも思っております。つまり、主体となって走り回る人はほんとうに誰なのかということなんですけれども、石川先生のこの案では、ちょっと質問になってしまいますが、何らかの大学としてベンチャーになるようなシーズがあったとしたら、本気になって走り回る人は、この図では誰になるのか。誰を口説くのかということになりますかね。

【柘植主査】  最後の点、石川委員、それから寺崎さんも、資料2の中でも、そのあたりどういう課題があるかというご発言、まず石川委員、お願いします。

【石川委員】  幾つかご質問とご意見をいただいたのですが、北澤委員の前に、森下委員が非常に正しいことをおっしゃっていて、EXITファンドの金額は大きい。ただ、大きいものから安いものは、フレキシビリティーがどうしても必要なんですね。でき上がった成果の質と内容とステージによって変えていく。それから、ハンズオンのベンチャーキャピタルがないというのは確かでして、それをどうやって国策として教育していくかというのを含めて、この組織体を考えていく必要がある。
 北澤委員がおっしゃるように、私はこのJSTのことを否定するわけではないのですが、やられてきた努力には敬意を表するわけですが、JSTがやられてきたことと最大違うのは、最後に北澤委員がおっしゃっていた評価の問題とも兼ね合いがありまして、JSTがやっていたのは、ベンチャーを評価して、それに対して支援するお金をつけてきたということでありまして、森下委員がおっしゃるように、ハンズオンまでやれないという問題があります。やれないという問題は何かというと、お金の管理の問題と人の動きの問題が交錯するためでありまして、ここの整理が足りないと、お金はあげるけれども人は出せないという問題がある。その結果、この施策の中では、事業プロモーターというものの評価は評価委員会でやるんですが、事業プロモーターの投資先に関する評価は評価委員にはできない、やらないということになります。これは東大も同じです。東大は、エッジキャピタルの案件に関しては一切口を出さないということは明言してあります。これで出したらだめになります。ですから、これの評価委員は、事業プロモーターという個人は評価するんだけど、一つ一つの案件には口を出さないということをやらないと、事業プロモーターの動きが悪くなります。それをやってしまいますと、お金を与えるぐらいの施策しかできなくなってしまうので、それはやらない。
 なぜかといいますと、事業プロモーターの自由度というのを考えなければいけない。事業プロモーターにどういうお金が返ってくるかというのが事業プロモーターのモチベーションになります。北澤委員がおっしゃった、誰が汗をかくか。これは、汗をかくためにはモチベーションが上がらないと。そうすると、自由度がどのくらいあるかという話になります。その自由度が国からの給料だと、誰も動かない。それは北澤委員のおっしゃるとおり。この場合は、国からの給料は交通費程度、あるいは我々公務員の給料程度という非常に安いものを想定しているわけであって、それ以上のものがないと、この事業プロモーターは動かないわけです。それを国のお金でやるわけにいかないので、プライベートセクターからのお金でやる、あるいはキャピタルゲインでやる、あるいはSOの評価でやるんだということになって、そこにモチベーションを持っていくわけです。
 ですから、そこに魅力を感じた事業プロモーターがここへ飛び込んできて、そこへの魅力と、それから、出てくる研究成果への魅力というものを感じた人たちがここに集まってきて、その場をつくるということが一番重要な案件だと思います。
 公的な資金をベンチャーキャピタル自体に投資することは絶対にあってはいけないことなので、それはやらないのですが、それを呼び込んで、その場をつくるということは、国策としてはぜひともやらなければいけない。これの設計が、先ほど来、どこに線を引いて、どこから先はやらないということを明確に設計していかないと、このシステムはうまく動かない。エッジキャピタルの場合も、そこら中にここはやらない、これはやるということが明記してあって、それを公開する必要もあります。公開しておかなければいけないので、公開しておくということも重要な案件で、それをやってこのシステムを動かしていくことになります。
 エッジキャピタルの説明が何回か前にあったので、今のところうまくいっているということの理由は、日本にもアーリーステージに対する期待感が残っているということですので、その期待感をどうやって引き出すかという仕組みを考えていけば、こういうことはうまくいくのではないかと思っています。

【柘植主査】  なるほど。今、石川委員がおっしゃった話で、資料2の、寺崎さんが答えるのが難しかったら、また石川先生に助けてほしいんですけれども、今、資料2に石川先生がおっしゃった話の、いわゆる評価委員会は事業プロモーターの行為なりパフォーマンスに対する評価はするけれども、一つ一つの案件には口を出さないというご発言がありました。この資料2の設計図でいきますと、「(評価に基づき中止)」する場合がある。この評価というのは何を評価するかということを……。

【石川委員】  ちょっと私の説明が足りなくて申し訳ないんですが、私の図におけるVBプロジェクトというのに2ステージあるんです。EXITグラントというところは、まだ国の支援の範囲内なので、これに関しては評価委員会は評価するんです。ところが、起業から後に関してはプライベートセクターでやるべきことなので、ここに関しては一切口を出さないという。

【柘植主査】  そういう意味で。

【石川委員】  ええ、そういうことです。すいません、2段階。

【柘植主査】  やはり、石川先生、この資料2でも、今のところのステージが違うことも見える化しておかないと、また現場で混乱が出てくるかもしれないので、非常に大事なポイントかなと思いました。
 ほかに。羽鳥委員、どうぞ。

【羽鳥委員】  石川委員の非常に整理された内容で、私もだんだんすっきりしてきた気がするんですけれども、あとは資料2、寺崎さんのほうからご説明があった資料で、資料2の中で真ん中辺に評価委員会等は外部機関と書いてあるんです。事業プロモーターはどこに属するのかというのが質問でもあるんですけれども、これはいろいろな今まで議論している、あるいは石川委員のお話の中の役割を果たすようなことだとすると、大学の中は相当厳しいのではないかという気がしていまして、特に優秀な人を確保するという意味では、大学はやっぱり無理かな。それから、教育するということも日本型の中ではあるかもしれませんので、教育とキャリアパスといったことがセットでできるような事業プロモーターの確保の仕方というのがかなり重要な成功、不成功を決めることになっているような気がいたします。

【柘植主査】  石川委員、どうぞ。

【石川委員】  あまり私ばかり答えてもあれなんですが、羽鳥委員のおっしゃっていることは非常にポイントを突いておられるんですが、これは当然外でないとうまくいかないと思います。エッジキャピタルも一応外にあるわけです。ただ、外だからといって放っておくと、先ほど言った教育と産業のつながりが弱くなりますので、そこはある規則をもって、ある規律をもってきちんとしたチャンネルをつくる。そこのチャンネルと、外側にあることによって自由にISOなんかのキャピタルゲインが得られる事業プロモーターというのがどれだけのモチベーションを持ち得るかというのが、この設計のポイントになります。だから、羽鳥委員のおっしゃっていることは正しいと思います。

【柘植主査】  私、一委員として、今、羽鳥委員がおっしゃった中の教育の話ですけれども、石川委員の資料1の3ページの中でも触れられたんですが、この資料1のエンジンの中で、台湾は教育と国家政策と行政と企業で一体となっているということを言いましたけれども、実際、米国の事例を私自身も感じますと、この米国の場合もプライベートセクターからの投資も、アーリーステージに対する投資は、この赤の矢印の中に高等教育のメカニズムもファンディングメカニズムの中に組み込まれているということも、この図の中に見える化していただきたいと思うのです。
 関連すると、寺崎さんが資料2「イノベーション・エコシステムの拠点構想」の中でも、何かエンジン設計として、今はできないかもしれませんけれども、高等教育のメカニズムを組み込むという表現は、何らかの形でこの中にリマインドしていくべきではないかと。今できることと将来目指すべきことと両方あるのではないかと思います。その辺が、エコシステムの「エコ」の意味の中に、そういう教育という話が当然ある意味が、まさにインプリシットに入っていると思っております。

【柘植主査】  ほかのご意見。永里委員、長我部委員、それから井口委員。

【永里委員】  資料1の3ページの図ですけれども、ここでお金を出さない人が責任ある評価ができるんだろうかと。要するに、事業化というところまで考えたときに、企業化と考えたときに、お金を出さなくて評価ができるんだろうかということについて、3ページのこの図は、台湾・中国は「国家予算集中投資」と書いてありますが、これは簡単に言うとキャッチアップする過程において日本を見ていて、あるいはアメリカを見ていて、台湾・中国はそういうふうに国家的にやってきた。結果として、自己増殖してどんどん大きくなってきていると、VLSIとかはその例です。
 それから、韓国は「財閥系企業投資」ですから、まさしくこれは財閥の創業者オーナーたちがそういうふうにしてやってきた。米国はプライベートセクターで、これはまたちょっと別格です。
 日本は、そういう意味で、明治のころは明らかに台湾・中国及び韓国と同じやり方で殖産してきたわけで、日窒コンツェルンとか日産とか日立なんかもみんなそうなんです。なぜそれが今できないのかということに関して、その答えとして、この資料1というのが整理されているわけですが、これは最終的にさんざん議論してやっぱり日本はだめだから、結局こういう形でしかできないだろうということになるんでしょうかという質問なんですけれども。

【柘植主査】  ちょっと一委員としての発言ですけれども、やはり明治からやってきたものは、どちらかというと私は、この石川委員のAとかB、既にヨーロッパではちゃんとビジネスになっていたというのに対してのメカニズムで、まさにフロントランナーという言葉を使われているので、Cというのは今まであったかという見方もあるのではないかなと感じますが、どうでしょうか。

【永里委員】  おっしゃるとおりなんですが、ちょっと例外がありまして、例えば、日窒コンツェルンを始めた野口遵という人は何をやったかというと、世界で一番新しく出てきた特許を買ったわけです。カザレー法というアンモニア合成法は世界にないんですよ。自分自身は東京帝国大学電気科の初期の卒業生ですけれども、それを評価して、お金を集めるんです。そのころ日本にはお金がないんです。だけど、募ってやっているわけです。まさしくベンチャーの人なんです。

【柘植主査】  Cタイプがあったんですね。

【永里委員】  Cタイプは存在していたわけですね。明治には彼だけではない、何人かのそういう人たちがいたんです。ということを申し上げます。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 時間の関係で、長我部委員と井口委員で打ち切らざるを得ないですけれども、お願いいたします。

【長我部委員】  これも質問ですけれども、石川先生が強調された中に、国も含めて各プレーヤーがちゃんとウインウインでバランスがとれなければいけないというご説明があったのですが、国の政策でございますし、まさにそのとおりだと思うのです。
 それで、これは、EXITグラントまで出すということで、普通のVCとは違うと思うんですけれども、VCとしては、例えば1ラウンドで100億とかそのぐらいの規模感でスタートしないとまとまった効果が出ないという規模感の議論からすると、こういった施策が国全体として教育も含めたような総合的な効果において、効果を生み出すようなざっくりした規模感というのを少し教えていただけないでしょうか。それがあまりにも途方もなく大きいのか、それとも実行可能なサイズなのかということなんですけれども。

【柘植主査】  はい、どうぞ。

【石川委員】  今の長我部委員のことに関して答えますと、おっしゃるとおりです。この規模感の設計は大変です。東大もエッジキャピタルをつくるときに相当に計算しました。数カ月計算を続けるんですが、その結果、東大としては、ある金額以下では規模が足りなくて儲けがでない、ある金額以上ですと出資する先がなくなるのでよくないというので、ある範囲内というのが見えてきます。今回も同じことをやる必要があると思います。ですから、ある範囲以下ですと、この施策はうまくいかない。
 それから、100億という数字だったので、その100億ということをちゃんと考えましょう、どういう数字でしょうというのを考えることで、そのときに出すのは、これは事業プロモーターが出すわけではなくて、外部の投資家が出すので、その投資家の意見というのは、投資家がこれに対して魅力を感じてくれなければいけないので、そこは魅力を感じるように組織体を変えると投資のサイズが変わるのです。
 それから、時代の流れとか経済状況にもよるんですが、投資のサイズに応じて適切なサイズを設計するという作業がこの後やってくると思います。

【柘植主査】  それでは、井口委員、最後。

【井口委員】  今の石川先生、非常にわかりやすくまとめられておりまして、参考なんですけれども、実は、自分自身もいろいろやっていると、ここの3ページのところで、日本の既存のベンチャーキャピタルがアーリーステージのところが完全にバツになっているんですけれども、2,000弱ベンチャーができて、それが成功していない。これはJSTのベンチャーだとかいろいろお金が出ているんですけれども、長続きしていない。なかなかアーリーステージが長い。したがって、レートステージまで行き着けてないというところが、リーマンショックとかその辺とかから日本の既存のベンチャーキャピタルが息切れしていると。
 したがって、前から言われ切っているような「ダーウィンの海」とか「死の谷」にいるベンチャーが、かなりたくさん現存しているんです。したがって、何かそういうところにどういう手当を、国のところも含めながらというような施策もちょっと入れていただくと。エッジキャピタルとかすばらしいところは別なんですけれども、さっき森下先生が言われた、地域に行くとみんな息切れしているんです。だから、文科省のほうもそこをちょっとスキームに入れていただくと非常にいいと思います。よろしくお願いします。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 まだまだあると思いますが、この件については後ほど、非常に大事な今日中に済まさねばならない議題の3番の「早急に措置すべき施策について」に組み込んでいくというものと、それから、次回以降の課題ですが、いわゆるイノベーション・エコシステムの全体の設計図をもっと見える化する、この2つの大きな目的に今日の資料1と2と、それから、いただいたご意見を生かしていくということにさせていただきたいと思います。事務局のほうとして、また3の議題の中で繰り返されると思いますが、ぜひ早急に措置すべき施策は、今日の資料4になりますが、これの中、あるいは補足資料として組み込むべきものと、それから、組み込まなくて、イノベーション・エコシステム全体の設計図という別の作業の中に生かしていく話を、ぜひ今日の貴重なご意見をもとに仕分けして反映していただきたいと思います。
 それでは、議題2の「リサーチ・アドミニストレーターについて」に行きたいと思います。これは、前回、高橋委員よりリサーチ・アドミニストレーターについてご説明いただきまして、時間が十分でなかった面もございました。このたび、さらにご意見をいただきまして、これらについて早急に措置すべき施策としてまとめていきたいと思います。
 まず、前回の議論も含めまして事務局から説明をお願いいたします。

【石田室長補佐】  ご説明いたします。お手元に資料3並びに参考資料1をご用意いただければ幸いでございます。
 ただいまご紹介いただきましたように、前回の会議においては、高橋委員に詳細にリサーチ・アドミニストレーション・システムについて解説をいただいた後、私どもからの資料配付も含めまして全体をご説明申し上げるとともに、さまざまな角度でご議論いただいたところでございます。今回、参考資料として、前回、文科省からお配りさせていただいた資料を付けさせていただいておりますが、あくまで参考としてご活用いただければ幸いでございます。
 資料3でございます。「『リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備』の平成24年度以降に向けた主な論点について」ということで、資料をつくらせていただきました。前回の委員会では、論点についてご議論いただいたわけでございまして、前回ご用意させていただいた論点と主なご意見を以下のとおり記載させていただいております。前回は、点線で囲まれております「『URA配置支援補助金』の支援規模等について」という論点を用意させていただきました。この中に書いてございますのは、平成23年度からこの支援はスタートしたわけでございますが、予算において選択と集中の徹底が求められたことも踏まえまして、最終的に支援対象機関を「5機関程度」、1機関当たりの支援要望員数を「10人程度以上とすること」として公募を行ったわけでございますが、今後、全国規模でリサーチ・アドミニストレーターの定着を図るためにどのような方策が必要であるかという論点をもとに、さまざまな角度でご議論いただいたところでございます。
 関連する主なご意見として、下に幾つかのポツで挙げさせていただいております。かいつまんでご説明しますと、1つ目のポツで、研究力強化ポリシーを各大学が定めていくことが重要でないかという趣旨のご意見。
 次でございますが、今回、10人ということがあるが、もう少し小規模のスタイルもあってよいのではないかという趣旨のご意見。
 次でございますが、リサーチ・アドミニストレーターの趣旨に沿って、さらに効率よく事業を行おうとする大学等をきちっと支えていくというのが正攻法なのではないかという趣旨のご意見。
 次でございますが、リサーチ・アドミニストレーターが勤め続けられるような支援を行う制度設計をすると、よりリサーチ・アドミニストレーターの方がモチベーション高くお仕事ができるようになるのではないかという趣旨のご意見。
 その次でございますが、10人の雇用というのは、やはりちょっと大きいのではないか。むしろもう少し小さくして、来年度の設計に当たっては実態の調査を並行しながら適切な設計をするべきではないかという趣旨のご意見。
 その次のポツでございますが、リサーチ・アドミニストレーターの配置により成功する事例をつくっていくことが非常に重要であるという趣旨のご意見。
 1枚めくっていただきまして、次にございますのが、リサーチ・アドミニストレーターの評価をうまく可視化するような追跡調査の方法を仕込んでおくとよいのではないか。さらに、リサーチ・アドミニストレーターの大切さが理解されて、大学の構造がいろいろ変化していけるような評価の仕組みをうまく埋め込んでおくとよいのではないかという、関連するご意見。そのほかにもいただいておりますけれども、種々のご意見をいただいたところでございます。
 こういった内容も含めまして、私どもとして、さらに本日、限られた時間の中で議論を深めていただくためにご議論いただきたいポイントとして若干整理をさせていただいたところでございます。
 平成23年度のURA配置支援は、予算上5機関程度の支援に限定せざるを得なかった訳ですが、本事業を契機としてシステム改革に取り組もうとしている大学等は非常に多いと考えられるということで、例示として、先日行われましたこの事業の説明会には、5機関程度の配置支援採択予定としている状況下において、約100機関が参画されたという関心の高さを示しております。
 次の○でございます。URAが全国規模で広く定着していくためは、全国に1,000以上ある大学等のうち、制度の趣旨に沿ってURAの整備を進めようとする大学等を先導的取組機関と位置付け、国の配置支援により成功事例として構築していくことが重要と考えられる。
 全国の大学等は、その規模や立地条件、学部・研究科等の構成、設置形態や組織体制などが極めて多様である上、その中・長期的な将来構想もさまざまであることから、URAについても、これらの多様性に応じた配置や活用のあり方が考えられると私どもは考えたところでございます。例えばとして、規模の大きい総合大学と単科系の大学ではURAのあり方も異なり、また同じ単科系大学でも分野によって異なるということが考えられるわけでございます。
 今後、各大学等への配置支援を拡充していく場合には、各大学等の特色・実態に応じた多様な先導的取組が行われるよう多様性の確保に配慮することが重要であると私どもは考えるところでございます。
 「また」として、先ほど来のご説明と、いただいたご意見と重複しますけれども、来年度以降は、一大学当たりの支援をもう少し小規模にすることを考察してはどうかといったご意見。
 URAの配置等に努力している機関の見える化を図り、URAの趣旨に沿って、さらに効率よく事業を行おうとする大学等を支えていくことが必要ではないかなどのご意見もいただいております。
 これらの内容を踏まえ、今後の配置支援の在り方としては、まず全国の大学等は、その規模や立地条件、学部・研究科等の構成、設置形態や組織体制などが極めて多様である上、その中・長期的な将来構想もさまざまであることから、URAについて、配置支援対象大学等にもある程度のバリエーションを持たせ、多様性を確保していくこと。
 一大学当たりの配置支援規模については、一般的に大規模な総合大学が応募しやすいとされる状況を踏まえ、現状よりも小規模の要望も支援対象にすること。
 URAの趣旨に沿って、さらに効率よく事業を行おうとする大学等を支えていくこと、これらが重要と考えるところでございまして、こういった背景を踏まえ、我が国の大学等におけるURAシステムの定着及び多様性の確保を念頭に、必要な支援対象機関数については、どの程度まで拡充することが必要と考えられるかといったことを本日もいろいろな観点からご議論いただければと考えているところでございます。
 その次のページにありますのは、さらに参考として、直接的に規模感に言及されたものではございませんが、その他、やはりリサーチ・アドミニストレーション・システムに対するご意見としていただいたものを列挙させていただいているところでございます。
 こういった内容を踏まえ、ここに書いていない内容もまだまだたくさんあろうかと思いますが、闊達なご意見をいただきまして、このご議論いただきたいポイントというものを軸にディスカッションしていただければ幸いでございます。
 説明は以上でございます。ご審議をよろしくお願いいたします。

【柘植主査】  大分前回の議論をまとめて、また、今後の考え方についてのポイントをまとめていただきましたので、今日のこれに対するご質問、ご意見をもとにファイナライズしていきたいと思っております。
 羽鳥委員、どうぞ。

【羽鳥委員】  多様性とか、あるいは小規模大学とか、そういったことの今後のあり方に関係すると思っているんですけれども、大学は、専門員に対する5年間の有期雇用という大きな厚くて高い壁がございまして、ほんとうはアメリカのようにいろいろな専門員、プロフェッショナルが、つまり教員とか事務以外の第3番目の職種の人がパーマネント雇用できるといった形が一番望ましいと私は思うんですけれども、多分、日本の大学にそれを植え付けるというのは、相当ハードルが高いのではないかと思います。
 ついては、現実を直視した日本型のリサーチ・アドミニストレーターというのでしょうか、それをやっていったらどうか。例えばどんなものかというと、大学の5年はしようがないから前提にする。大学で例えば5年間雇った後、それがJSTなのかどうかよくわかりませんけれども、1年とか2年とか今度はJSTが面倒を見てくれる。JSTはその人を大学に派遣するのかもしれないんですけれども、1年たてば、大学はもう一度また5年雇えるようになります。その大学の5年というのは、どうも5年以上雇うと、もう退職させにくくなるということが背景にあるようです。これは労働法が関係しているのかどうかは私はよく調べたことがないんですけれども、国家公務員も人事院の規則で5年任期というのがあります。それとも関係しているのかよくわかりませんが、とにかく5年有期という大きな壁がございます。それを変えるという大チャレンジをするのではなくて、この際、日本型として、それを前提のシステム、一度切れても1年間以上どこかが雇ってくれまして、そうすると、大学もまたリセットで5年間雇える理屈は発生しますので、そういう中で長期雇用が結果としてできる。そうすれば、退職近くのおじさんだけでなくて、もうちょっと若い人もここに組み込めるスキームができるのかなと思います。一案なんですけれども、他の解があるかもしれません。よろしくお願いいたします。

【柘植主査】  三木委員、何かぜひ一言。高橋委員も何かご発言をお願いします。

【三木委員】  今の羽鳥委員のお考えとはちょっと私の考え方が違っていまして、これからのURAというのは、今の日本の大学は、研究者は相応の研究力を持ちながら、トータルとしての研究力として見たときに、イノベーションがあるということを考えたときの研究力にとっては、プロジェクトごとのマネジメントが非常に大事だというところにもとの根っこがあるからです。政策的にこれをやるということは、それぞれの大学の中に優れたものがある限りは、こういうシステムを定着させるというのが最大の目的だと思うのです。そのための政策誘導をするというのが今回の事業だと思っています。
 そういうふうに考えますと、現在の大規模、重要な規模というのは、優れたモデルをつくるためのものだと。それをURAのシステムとして定着させていって、他大学も参考にできるものをつくっていく。ですから、あまり小規模のものは私は根本的には賛成ではなかったんですけれども、仮に小規模でやるとしたら、政策的にはURAを定着させるというのは基本であって、ただし、それぞれの事情に応じた多様なモデルをつくってもらう。そういうふうな仕分けをしないと、何となく日本的ということで、もとの政策目標がずれていくことを非常におそれているのです。そういう基本的なスタンスはしっかり討議して方向性を出したほうがいいのではないかと私自身は思っています。羽鳥委員とは考え方がちょっと違っていたので。

【柘植主査】  両方のご意見を踏まえながら、高橋委員、何かご発言いただけませんか。

【高橋委員】  前回のご説明でも今後まさに課題と思う点をお二方から御指摘いただいたと思います。私の言葉でぜひご議論いただきたいのは、まさに雇用財源と安定した中長期的な雇用をするための全体のシステムです。当初、この事業により雇用は発生すると思うのですが、要は大学、もしくは組織がこういう種類の人材を抱えていくことのメリットを国のシステムと見据えるためにどうすればいいかというところと、その財源です。どうすればいいかというシステムの前段の話と、財源の2段目の2つに分けてお話ししますと、システムに関しては、大学とファンディングと省庁と企業という、セクターをうまく回るような、先ほどの事業プロモーターと同じインセンティブシステムを設計することが重要だと思います。具体的には、こういう人たちがいることによって、何らかの競争的資金が評価されるような仕組みだと思います。それ以上は、今、私自身もイメージがないんですけれども、セクターを回すようなインセンティブシステムの設計がまず非常に重要だと思います。
 2点目の財源に関しては、まさに三木先生と羽鳥先生がおっしゃったとおり、大学自身がこういう機能を抱えておくときに、「いい人がいて助かった、ありがとう」ではなくて、きちんと汗をかいたことが見えてその役割を評価するためのシステムと、それが雇用の安定化につながるようなシステムで、これは先日ご説明したときに例えばとして、競争的資金の間接経費をきちんと全学でプールして、5年を回せるような任期制を導入するようなことだと思います。
 以上、お二方のコメントを論点という形で整理いたしました。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 関連して、ほかの。前田委員と常本委員、お願いします。

【前田委員】  ちょっとネガティブな意見を言って申しわけないんですけれども、最初の一、二年にどういうリサーチ・アドミニストレーターが雇われるかですごく大きく決まっていくと思うのです。ポスドク対策のような感じで、あまり経験がなくて、先生に言われたとおり、先生も事務手続に毛が生えたような形でお仕事をしてしまいますと、いて得だったけれど、どれぐらいのものだったっけみたいになってしまうと定着できないと思うのです。
 では、どういう人がリサーチ・アドミニストレーターにふさわしいかというと、研究のこともしていなければいけないけれども、やはり競争的資金をとったりするのであれば、産業界のことであったり、自分で競争的資金をちゃんととったことがあるような人ではないと提案できないと思うのです。そうすると、先生並みにというわけではないですけれども、そういう経験があって、先生に先生の考え以上の提言とか提案、アイデアとかをしてあげられないとやっぱり定着できないと思いますので、この一、二年でどういう人がリサーチ・アドミニストレーターになってもらえるかですごく大きく決まってしまうと思います。ほんとうに事務の方に毛が生えたような人がばーっと入ってしまいますと、それはいないよりはよかったけれども、自腹でこの人たちほんとうに雇いますかという話になったときに続けられないと思うのです。ぜひとも受かった学校の方、機関は、ポスドク対策ではなく、先生にアイデアがちゃんと言えて、横展開ができたり、先生の事務手続をするだけでない人を雇ってもらうような形にしないと、これは永続的に続けられないと思いますので、雇うところの人材を相当気をつけないといけないのではないかと思います。
 やはり、高橋委員がおっしゃったように、インセンティブをちゃんとつけて、頑張った人には評価されるような形にして、いい人を置くんだという意識を強く持たないと、これを根付かせるのは大変なのではないかなと。コーディネーターなんかもそうなんですけれども、たくさんいることはいるんですけれども、学校にとってほんとうに役に立っている人というのは一握りなものですから、後で評価するときに、10年たって、あの制度はどうだったんですかといったときに、あったらよかったけれど、なくてもよかったっけみたいに言われてしまう人がたくさんいると根付かせるのはすごく難しいと思いますので、人材が決め手だと思います。ぜひ最初の一、二年の雇用がものすごく見極めていかなければいけない大事なポイントなのではないかなと思っています。

【柘植主査】  非常に大事なご発言だと思います。
 それでは、常本委員、それから藤本委員、牧野委員とお願いします。

【常本委員】  皆さんとそんなに意見は違わないんですけれども、大学の経営という立場から見ると、これは継続性と同時に、自主自立できる体制でなければ経営者になった方は判断に苦しむだろうと思います。
 先ほどお話があった中で、5年契約で教員以外は任期制にすると1回切らなければいけない可能性があるけれども、教員ポストであれば継続可能なものですから、ひょっとしてこういうインセンティブという中に教員ポストを与えるような格好もあり得るのではないか。例えば、地域共同研究センターは教授ポストを持っていますから、ああいう格好でインセンティブの一つとして教員というものも一つの枠の中に入れながら幅を持たせてもらうといい方も継続的に確保できるかなという気もしますので、ご検討いただければと思います。

【柘植主査】  それでは、藤本委員、牧野委員、それから森下委員。

【藤本委員】  前田委員がおっしゃったこと、ほんとうに実感される方は多いと思って、私もそれがほんとうに大事だなと思って、そういう方がどこにいらっしゃるかというところの問題も、特に地方なんかは難しいところがあるんですけれども、いらっしゃったとして、あるいはいろいろなところから借り物競争状態で集められたとして、その後、その方々にぜひ若い方が、先ほどポスドクのポジション換えでは意味がないというのは、ほんとうにおっしゃるとおりだと思うので、例えばMTとかそういうコースの学生さんに、5年は長いかもしれませんけれども、3年ぐらいの実習で、その方の手となり足となりで実習を経験した人に、そういうコースのドクターの何かを義務化するとか、何かそういう若いURAが育つ仕組みも同時に進めていかないと、ある一定の経験をしていろいろなことが見える人しかそれにつけないと、いつまでもそれになれる人が少ないので、例えば東京に有能な方が多くて、そういう方に触れる機会が多いとすると、若い人だったら地元からぽんと東京に飛んでくるのは来やすいと思うので、3年間、実習期間をいろいろなところで経て、こんなやり方が有効だった、こういう失敗が多かったというのを持ち帰って、自分のところの地域に還元するような仕組みとか、何か若い人の教育システムと、ほんとうに有能なURAを担える人との接点が、仕組みをつくっていかれるといいのではないかと思いました。

【柘植主査】  牧野委員、それから森下委員、お願いします。

【牧野委員】  これは、大学等の研究者の能力を、前回も言ったんですが、最大限に引き出すための施策だと思います。80年ぐらいのアメリカでは、私はNIHにいましたが、もう既にこういうのは当然行われていたわけで、私の友人なんかも、ある日アドミニストレーションから電話がかかってきまして、明日から仕事をしないでいいからアドミニストレーションに来いと。そういう人たちが今度は訓練を受けて、こういう仕事をする、そういうのが当時からありました。
 やはり、こういう職業というのは、ドクターを持っている人を大学が研究は大したことないから、やめてこっちをやれというぐらいの、まず高いレベルの人の訓練が必要だと。あるいは、MBAレベルの人を持ってこないといけないのではないかと思います。社会的にそういう高い地位の方でなければ、おそらく先生方はばかにしてしまうので、大概うまくいかないと思います。
 要するに、私どものところで中間職というのをできるだけ多くしようと思っておりますが、なかなか大学の中で増やすのは抵抗もあるのですが、こういうある程度先生方からもリスペクトを持って見られるような職業にしないといけないだろうなと思います。ですから、多少乱暴かもしれませんが、もう研究をやめてこっちをやるというぐらいのシステムがないといかんと思いますし、訓練という時間をかけないと育っていかないだろうと思います。私がいたのは1980年ぐらいですから、もう30年ぐらい前には既にこんなのは当たり前にやられていた制度でありまして、そこに今からキャッチアップをしようというわけですから、熟考する必要があるかと思っています。
 以上です。

【柘植主査】  今の話で、先ほどの牧野委員のおっしゃった育成の仕組みもというのは、NIHでは何か。やはり、もうある程度、アカデミックインパクトではないけれども、しかし競争的資金の百戦錬磨の方々をアドミニストレーションのオフィスとして教育してURAのようなことにしているというメカニズムだと、牧野委員のおっしゃった話は、どう組み入れることができるのかなとちょっと不安なところがあるんですが、何かそのあたり、NIHのプラクティスでは牧野委員のご発言の話はあったのか、なかったのかは、何かコメントでいただけませんか。

【牧野委員】  ちょっとそこのところはわかりません。

【柘植主査】  そうですか。

【牧野委員】  ええ。

【柘植主査】  これは、少し研究課題ですね。

【牧野委員】  そうですね。

【柘植主査】  やはり、いかに牧野委員のおっしゃったことが現実問題あり得るかというと、多分、世界のベストプラクティスを見たほうが早いかもしれないなと思いますね。

【牧野委員】  ええ、そうです。やっぱり習わないといけないのではないかと思います。

【北澤委員】  この件でちょっと言っていいですか。

【柘植主査】  それじゃ、先に北澤先生。

【北澤委員】  このリサーチ・アドミニストレーターの教育を含めて、それから、今後日本に定着するかどうかという問題なんですが、その意味では、実はJSTは、まさにそれを今、もう試みてきておりまして、今現在、JSTには研究経歴のある、そしてドクターのディグリーを持っている人は40人ほど職員として集めました。全体の100人ぐらいをリサーチ・アドミニストレーターに相当する、JSTの職員の中としてはJSTプログラムオフィサーというポジションの人たちが多いんですけれども、そういう形で今育てているんですが、何が重要かといいますと、研究経歴がないとなかなかそれは大変です。ですから、そうでない人は研究現場に送り込んで経験させるといったことも始めておりますけれども、その研究経歴という現場にいる経験がやっぱり必要ということと、そういう中で、そういう人たちは科学技術の振興、あるいは研究を支援したいという気持ちでやるということで、どのくらいのことができればいいかということを具体的に考えると、例えば自分が一緒に研究グループに属しているとしたら、その研究グループが出すプロポーザルを責任を持って書ける、それから、自分の関連している先生の研究業績を何とか省に向けて、省のアプリケーションが書けるとか、そして、場合によっては、そのグループで人をとるときの面接ができるといった程度のことができるようになっていく人がリサーチ・アドミニストレーターとしてそのグループに入り込んだときに自信を持ってやっていけるレベルかなと思うのです。
 我々、今、各大学に数人ほどリサーチ・アドミニストレーターとして実際に出向で行ってもらっていますけれども、そういう感じでやってみて思うのは、誰のためにリサーチ・アドミニストレーターがいるかということなんですけれども、まず研究者のためにいることは事実で、日本の研究者も評価、その他から非常にいろいろなことをやらなくてはならなくて、昔に比べて忙しくなっているということと、それから、大学のほうも各研究者たちに間接経費をもらって、そういうことからいろいろな責任が生じています。そこのところを、つまり大学の事務当局に対しても、このリサーチ・アドミニストレーターがありがたがられる存在になっていかないといけない。それで、我々も大学にしばらくの間行ってもらうときに常に問題になるのは、むしろ後者のほうで、前者は、何となく来てくださいということになるんですけれども、事務局は非常に警戒します。しばらくして打ち解けてくるというか、大丈夫になってくると、スパイではないなという感じで、早く言えば、やっと安心して友人的にやっていくようになると安心していくという、少し時間はかかりますけれども、ここの部分のほうが、むしろなかなか初期のころは難しい部分かなと思うんです。
 その意味で、今申し上げたようなことができるという具体的なイメージがあると、このリサーチ・アドミニストレーターというのは、私は大学で5年間こういうお金が出ると、うまくいけば間接経費の中に定着させていってもらえるのではないかということを期待したいと思うのです。羽鳥先生が言われたみたいに、ハードルは高いんですけど、大学の中に既にもう相当程度、実は今できてきておりますし、我々も出向や何かで出したりし始めていますから、この件は案ずるより産むが易しという感じで、やってみて、そういうトライアルの中からいい例を見つけていくという感じがいいのではないかと感じているところです。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 それでは、森下委員、お願いします。

【森下委員】  先ほどのアメリカでのお話の続きになりますけれども、グラントの書き方のセミナーが結構あって、そういうのを介して皆さん勉強されて、そういう研究者が先ほど言われたようなリサーチ・アドミニストレーターになられているので、そういう意味では、大学あるいは学会とか、政府もそういうセミナーを時々やっていますので、そうしたグラントの説明会等でもう少し書き方自体とかその辺もすれば、かなりテクニカルな面というのはいけるのではないかと思います。
 ただ、ここからは水を差すようで申しわけないんですけれども、先ほど来話が出ていますような、パーマネントで雇用するというのを条件とか押しつけるというのはやめてほしいかなという気がするんです。非常に優秀な方に関してパーマネントなことなんかして何ら反対しませんけれども、それでなくても若手の研究者のパーマネントこそがなくて、ほとんど今、みんな特任なんです。肝心の研究者がパーマネントではないように、間接の方ばっかりが永住じゃ意味がないと思うのです。間接経費、現在では対外分は30%、多いときは50%近くにはいっていると思いますが、これ以上間接経費が上がると研究者にとっては何をやっているかもわからない。せめて江戸時代よりは低くしてほしいとか思うぐらいで、今、3公7民ですかね、5公5民とかなったら生きていけないので、そういう意味では、何でもかんでもパーマネントにするという議論はちょっと勘弁してほしいなと正直思います。
 むしろ、本来パーマネントにすべきなのは、やはり若手の研究者の方が実際にキャリアを積んでいって、特任ではなくて正式な形でフルプロフェッサーなり、あるいはフルアソシエイトになるというのが普通だと思いますので、そういう意味では、やはりよほど優秀な方でない限り、そういうところをわざわざパーマネントするというのがどうかなと。皆さん、それを書くととるので、そういう意味では、そこのところを強調されるというのは個人的にはちょっとどうかなと、反対であるという正直な質問を終わります。

【柘植主査】  ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。むしろ第3の職種という言葉を使いつつあるわけですけれども、ある意味では、スカウトされてしまうぐらいの、逆に、その人だったら大学が今のシステムに組み込まれて離さないと、最近は総長よりも高給になるという研究者がおられますけれども、そのあたりについては、むしろさっき牧野委員がおっしゃいましたように、今の日本型のという言葉はあれなんですが、やはりアメリカなんかのプラクティスの現状をもうちょっと知りたいなと思います。ぜひとも事務局のほうで調べられる、JSTが多分もう調べているかもしれませんけれども……。

【北澤委員】  これは、もうかなり詳しい資料が文科省のほうからも出ていると思いますので、ものすごい数です。アメリカのリサーチ・アドミニストレーターって。何万人ぐらい出ていたっけ。

【柘植主査】  コンベンションが開かれるぐらいですから。

【北澤委員】  六、七万人とかそういう数だと思いますので。

【柘植主査】  高橋委員。

【高橋委員】  JSTの高橋宏先生とご一緒に少し事前調査をさせていただいております内容をご紹介いたします。一節には30万人とも言われていますし、これは、いわゆる大学の事務職員を含む数です。それから、オールジャパン・オールアメリカという意味ですと、先ほどの研修プログラムとしては、ライセンシング・アソシエイトにおけるAUTMのように、リサーチ・アドミニストレーターにおいては、ナショナル・カウンシル・オブ・ユニバーシティー・リサーチ・アドミニストレーター、略してNCURAという全米の組織があります。ここで年一回すべての大学が集まって、初心者もプロも、いわゆるコミュニティーが形成されているというところで国のシステムとしても稼働していると聞いております。
 以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 ほかに何か別な視点でも。南委員、三木委員、お二人どうぞ。

【南委員】  すいません。私、意見は別にありませんけど、今ずっと聞いていて、これは、日本の非常に伝統的な縦社会という言葉がいいのかどうかわかりませんけれども、やっぱり序列があって、例えば、この前も医療のことをどなたかおっしゃいましたけれども、医師がいて、かつてはパラメディカルとか呼んだんですけど、今はもうそう呼んでもいけなくて、コメディカル、メディカルスタッフとか呼び方まで何とか均等なチーム医療という形にしましょうという動きになってはいるんですけれども、やはりどうしてもピラミッドになってしまうという、日本型の社会全体がヒエラルキーになっている、そういうこととちょっと不可分な議論なんだなと思って聞きました。
 やはり、そういうことが、たとえば医療をとってもそういう形は限界で、医療の安全性をきちんと担保するためには、いろんな立場の人がそれぞれに責任を持って役割分担をしなければならないというふうに世の中全体はなってはきているんですけれども、まだまだ医療の場合で言えば、国民の側も何でも最終的な指示はお医者さんに聞きたいとか、そういう必ずしも専門家の側だけではなくて、国民の側にもそういう意識の、きっと一番トップの人に説明をしてもらいたいだとか、ものすごく古くから日本の物の考え方が依拠しているところにあるような、目に見えない何かそういうものがあるということを、今、先生方の議論を聞いていると非常に強く感じます。
 ですから、これは、やはりもしリサーチ・アドミニストレーターというのが、さっき先生がおっしゃいましたけれども、ほんとうに研究もしたことがあって、研究で大変いい実績もあって、いい資金もとれて、そういう方はやっぱり研究がしたいですよね。ですから、そこをいかに本人もリサーチ・アドミニストレーターになってもよかったと思えるような待遇にできるかというところにすべてはかかっているのかなと。そうしないと日本としてオールジャパンでうまくいかないということで、そういう社会をつくらないとだめだという気がしました。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 三木委員、ご発言になりましたか。それから、羽鳥委員。

【三木委員】  リサーチ・アドミニストレーターの議論をしていても、リサーチ・アドミニストレーター自身にそのスキルとパフォーマンスに階層性があるということを抜きにした議論になっている部分があるように思うのです。皆さん方の頭の中では、あるときにはトップレベルの方の議論をしているぐらい。それから、若手の今後を担っていく人の話とが混在していると思っていまして、もう一度階層性をしっかり定義して、それから、事務系のところでの寄与のあり方ということは、大学改革の根底にかかわるような問題を実は秘めていると思っています。今までの国立大学の事務系でほんとうにいいのかという問題がここに秘められておりますが、シニアのほんとうに能力あるリサーチ・アドミニストレーター、もちろんそういった方は戦略シナリオを分析して、シナリオドライバーを抽出できて、さらにシナリオを修正できる人、そういったトップがいて、その中でどういう分業をしていくかという分業のシステムまで含めて、リサーチ・アドミニストレーターの職務をどういう業務があるのかというのを階層別に分けて議論していかないと、どうも総論的に議論するといつも議論がかみ合わないような気がしております。
 実は、自分自身が私の仕事のうちで多分3割はRA業務をやっています。ここ最近でもハンズオンして、ある先生のものをずっとやっていますので、もちろん海外でのいろいろなやり方も文献的には全部調べた上でやっているつもりなんです。
 そういう意味で考えますと、この階層性をしっかり整理して、それは高橋委員がいろいろされていると思うんですけれども、そういった中での焦点を絞った議論をしていかないと妙なところへ行ってしまうような気がしたので。

【柘植主査】  そうですね。今の話も非常に大事で、石田さんに逆にどの程度までそういう階層性なりミッションディスクリプションがはっきりされているか。つまり、今日の資料3でリサーチ・アドミニストレーターの趣旨に沿って、それなりに努力している機関の見える化、それで、それをどういう視点でさらに効率よくやろうかという、そういう大学をしっかり支援していこうという一つのガイドラインがありましたけれども、このガイドラインは、応募側にも我々審査側にもはっきりさせるとしたら、今の三木委員のおっしゃったことが共通なミッションディスクリプションなり階層化というものは見える化しておかないといけないと思います。石田さんは、現状どんなふうに考えていますか。

【石田室長補佐】  現在は、この制度そのものが、やはり大学側のニーズに立脚してでき上がったところではありますが、ややリサーチ・アドミニストレーターそのものの定義も含め、まだ確立してないところがございまして、今現在、配置支援の補助金においてはシニアという形を、通常のリサーチ・アドミニストレーターよりも1段上位の位置付けでつくっていただくということは設けておりますけれども、明確な階層構造というものは、正直まだでき上がっていないところでございます。
 しかしながら、現在、この配置支援の補助金以外にスキル標準の作成というものを、実は先日、審査が終了して、東京大学さんにお引き受けいただく前提で今手続を進めているところでございますけれども、ここで複数年にわたってスキル標準の作成をしていただき、さらに配置支援でリサーチ・アドミニストレーターの具体的な配置が進んでいく過程において、そのスキル標準との関連づけ、さらには、それによる階層構造というのは少しずつでき上がっていくかなという考えを持っております。

【柘植主査】  ぜひ来年度の公募に向けては、応募が見える化されていくことが必要だから、ぜひ今の作業は、それにタイムリーマナーになるように少しリードしてよろしいと思います。
 予定の時間が来たんですけれども、まだ今の件で。羽鳥さん、ごめんなさい。

【羽鳥委員】  ほんの短時間。5年有期ということで、さっきネガティブっぽい話をしたんですけれども、ポジティブっぽい話をしますと、評価できるということがあるかと思うんです。リサーチ・アドミニストレーター、これからどんどん大学に優秀な人を蓄積していこうと、仮にそうしますと、どういう人が優秀かといったら、現場のプロジェクトリーダーから見ても、ぜひいてほしいという人ではないかと思います。最初は、例えば文科省の支援でもって採用された人たちが全部そうなるとうれしいですけれども、多分そうならないでしょう。そうしたときに、優秀な人だけ残す仕組みとしてどうするか。例えば、5年たったときに、その大学のプロジェクトリーダーの人が、やっぱりこれ欲しいよなと言ったときに、1年、JSTが雇ってくれて、その先は大学がみずから間接経費で雇うという約束をJSTが雇うときにするみたいな、例えばそういうふうにして評価をスクリーニングのプロセスとしてポジティブに使う。そうすると、いつもで申し訳ないけれどもアドミニストレーターは緊張感を持って仕事ができる、いい人が残るかもしれない。逆に言うと、まずい人がずっとパーマネントでいることは、大学にとって最悪のことになるかと思います。
 以上です。

【橋本委員】  ちょっと発言よろしいですか。

【柘植主査】  橋本委員、どうぞ。

【橋本委員】  この事業は育成するとありますが、先を考えると、例えば大学の中で第3の職種とかいうのはなかなか難しくて、ある意味では、今までの大学の雇用体系そのものを全部つくりかえなくちゃいけないということがあるのでなかなか難しいということが1つ。
 もう一つは、リサーチ・アドミニストレーターの中の仕事で、リサーチプロモーションみたいなものを考えると、リサーチプロモーションそのものがビジネスになるということもあるんだと思うんです。それはインセンティブとして重要なことだと思うんです。そうなると、例えば研究に関しましても、一大学というよりはオールジャパンで組むということがどうしても必要になってくる。そういうことをコーディネートしたりプロモーションできる人というのは、自分の収入もそこから得るというぐらいのビジネスとしてやれる人に最終的に育ってほしいという気がするんです。
 マネジメントに関しては大学でかかわれるかもしれないけど、プロモーションからやる人は、もう少し広いところで活躍できるような、そういう意味では、JSTもそうかも知れませんが、その辺までいけるんではないかという気がするんです。そのほうが早いのではないかという気もします。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 では、最後に牧野さん、どうぞ。

【牧野委員】  今、議論されてきたことで一番心配なのは、大学のほうにこういう人たちが雇われるということになったときに、各大学で大学好みの人が育ってきて、流動化は絶対不可能な状態が生まれるのではないかという心配があるわけです。やっぱり高橋さんのレポートにあったと思うんだけれども、アメリカは資格試験も制度もありますよね。この国、何か知らないけど制度が大事なところでなくて、歯のインプラントもアメリカはちゃんとみんな資格を持っている人がインプラントをやるんだけど、日本の場合、あまりそういうのを聞いたこともなくて、こういうのもリサーチ・アドミニストレーターもある程度資格というのは必要なのではないかと思うのです。半年間は大学で雇うけど、どこかで集めて訓練するとか、スタンダードをつくって、ある程度資格というのをやらないと、そういう社会的なチームがひょっとしたら高くなるかもしれないのに、野放図ではちょっとぐあいが悪いなという感じを受けるのです。それをちょっと心配します。

【柘植主査】  そうですね、これは大きな課題でございますね。
 今までいただいたものを、この資料で言いますと3に、できるだけ反映して、最終的には、ぜひ石田さん、次の議題の資料4の早急に措置すべき施策に落とし込むものと、今のような資格の問題とか、橋本委員がおっしゃったように、もうちょっとさらに行くと、一つのリサーチプロモーションとしてのビジネスになると、かなりポジティブに先の展開がある。時間的に分けざるを得ないんですけれども、今日の貴重なご意見をそういう形で仕分けして至急に盛り込むべきものと、いわゆるここの場での研究課題というものとまとめていただきたいと思います。
 ということで、今の議題2を終えて、実は今日の非常に大事な話は3でございます。「早急に措置すべき施策について」でございます。まず、事務局から説明お願いいたします。

【池田課長】  それでは、資料4に沿ってご説明をさせていただきます。
 本日まで第6回委員会を開催させていただきましたが、この中で早急に措置すべき施策について、提言という形でまとめさせていただいたものがこの資料でございます。中身は大きく分けると、本日議題となりました2つの事項を中心にまとめておりますが、ポイントをご説明させていただきたいと思います。
 まず、1の「はじめに」のところは、冒頭ご紹介させていただいた第4期科学技術基本計画を踏まえて、その中では科学技術とイノベーションの一体的推進ということがうたわれておりますので、こうした方向性を踏まえて本審議会としてもご議論をいただいていること、さらに、日本の強みを生かしたイノベーション構造の見える化の強化ということも考慮していくということを書いております。
 それから、2つ目でございますが、「イノベーション・エコシステムの確立に貢献する産学官連携の方針」ということで、この前の期の本委員会でイノベーション・エコシステムということをご提言いただいておりますが、それをさらに進めてイノベーション牽引構造の見える化ということをここで記しております。
 それから、3点目でございますが、政府資金(競争的研究資金)の必要性等についてまとめておりますが、これは特に産学官連携で言えば、「死の谷」を克服するためのシームレスな研究支援が必要であろうということで、具体的には(1)と(2)の2つのことをここで言っております。(1)の一番最後のところですけれども、シード、アーリーステージにおいて、十分な政府の研究資金による支援が必要ということと、もう一つは、民間資金の投入を促すための取組が不可欠であるということでございます。
 それから、(2)のところでございますが、政府資金の効率的・効果的活用の仕組みが必要であろうということで、本日も議論いただきましたが、ベンチャーキャピタルや公的事業投資機関などが将来の事業化の可能性を高めるということと、やはり民間資金を呼び込んでくるような取組が必要であろうと。
 それから、一番下の行で「国が、優秀な人材、場の提供に資する支援」を行うことも重要であるとさせていただいております。
 それから、4でございますが、これは本日の議題1の内容でございまして、基本的には石川先生がご説明いただいたようなことを要約したつもりでございますが、一番下のほうに書いてあるように、前提としては、現在の日本では新産業、新規マーケットを開拓するためのシステムがないという状況でございますが、こうした状況をやはり打破していただかなければならない。その点で、大学発ベンチャーの起業前の段階から、政府資金と民間の事業化ノウハウを組み合わせることによって、日本版のイノベーションシステムを構築していくということをまとめさせていただいております。
 また、支援のあり方としては、研究開発だけでなく、事業の育成を行い、これらを一体的に進めていくということが必要であろうと考えております。
 1枚めくっていただきますと、3ページの一番上のところでございますけれども、もう一方、前回ご意見が出ておりますけれども、既存の産学官連携コーディネーターなどの産学官連携に携わる人材がたくさんいらっしゃいますので、こういった人材との連携も重要であるということでございます。
 それから、各論として(1)から(5)まで挙げておりますが、まず最初の(1)については、やはりこの事業の成否というのは、事業プロモーターにいかにいい人材が集められるかということでございますが、そうした観点からいろいろまとめてございます。本日もご意見出ておりますので、具体的なことはご覧いただくとして、もう一つは、一番下のところでございますけれども、時間をかけて事業プロモーターを育成していく視点も重要であろうと考えております。
 それから、(2)でございますが、今度はプロモーターに対する助言や評価の人材ということで、これは本日もご議論いただきましたけれども、プロモーターのパフォーマンスのみならず、コンプライアンス等のチェックも含め、事業全体を俯瞰して総括するスーパーバイザーのような人材が必要であろうと。この人材は、事業プロモーターを育成していく上でも非常に重要な役割を果たすであろうとまとめさせていただいております。
 それから、(3)でございますが、地域性ということはこれまでもいろいろご意見をいただいておりまして、そこについて触れておりますが、特にどうしても東京に一極集中しているという現実もございますが、そうした人材や資金などのリソースを地方へ誘引するシステムづくりによって、地方の優れたシーズを育てることが重要である。
 それから、地域につきましては、あまり限定され過ぎるとシーズも限定されてしまうおそれもありますので、緩やかな地域性ということが必要ではないかと考えております。
 次に、(4)でございますが、リスクの高いシーズの事業化に挑戦する仕組みということで、これは各事業プロモーターが複数のシーズを同時にマネジメントしていくようなポートフォリオという概念を導入するということでございます。
 最後の(5)でございますけれども、これもご議論いただいておりますけれども、やはりこの課題の大きなものとして利益相反ということが挙げられると思いますので、事業プロモーターのインセンティブももちろんありますけれども、同時に利益相反にきちんと対応していくための仕組みを考える必要があろうかと思います。
 こうした各論も踏まえながら、より具体的なシステムを詰めていきたいと思っておりますが、もう一つは、大学のかかわりということもいろいろご意見をいただいたかと思います。本日も教育についてもきちんと対応していく必要があろうということでございましたが、大学関係者が組織として取り組んでいく、個々の研究者だけでなく、組織的な対応が必要ということと、さらに参画する各地域の大学の機能や役割についてもあわせて議論して考えていく必要があるということでございます。
 それから、次に5のリサーチ・アドミニストレーターのほうでございますが、5ページをご覧いただきたいと思います。一番最初の段落は現状についてまとめております。それから、2つ目の段落でございますが、前回、高橋先生からもお話がございましたが、今回のURAの配置というのは、大きな目標というのは3つあろうかと思っております。1つは、大学全体にとっては効率的な研究マネジメントを確立するということでございます。次に、個々の研究者にとっては、多忙をきわめておられますので、研究に専念できる環境整備をつくっていくことにつながるかと思います。それから、三つ目として将来的には、この仕組みが定着していくことによって、若手人材のキャリアパスの一つとなり得るという可能性がございますので、この3点が大きな目標でございます。
 それとともに、第3の職種である中間職制度の導入などについても検討する必要がございますし、それから、その段落の一番最後、本日もご議論いただきましたが、やはりリサーチ・アドミニストレーターの位置付けや処遇、あるいはキャリアパスのあり方についての検討も必要であろうと考えております。
 来年度以降に向けての方向性でございますが、本年度、先ほどご説明いたしましたように、5校程度配置支援を行うとともに、スキル標準と教育プログラムの策定ということを並行して進めてまいりますけれども、特に5校への配置というのは、やはり将来的には各大学が自主的、自発的にこの制度を取り入れて、それぞれの大学の実態に応じた形で取り入れていただくというのが目指すべき姿でございますが、そこに持っていくための政策誘導としての先導的な取組をしていただくための5校だと考えておりますし、来年度以降も一定規模の配置を図っていきたいと考えております。
 配置支援対象につきましては、やはり本日ご意見をいただきましたけれども、多様性ということも重要であろうかと思います。財務当局からは、選択と集中を徹底せよと言われておりまして、ともすると外部資金の獲得の上位何校に配置すればいいという議論になりがちかと思いますが、ご存じのように、大学の実態は非常に多岐にわたっておりますので、そういった様々な大学が自分のところで将来的に配置を考えていただく際のモデルケースとなるような先導的取組をやっていただくということを考えると、やはりもう少し規模については拡充していく必要があろうかと思っております。
 以上、2点でございますが、今日いろいろ新たなご指摘もいただいているかと思いますので、そうしたことも盛り込みながら、当面早急に措置すべき施策としてということでまとめさせていただいておりまして、より具体的には来年度の概算要求にもこれを踏まえてこの方向性で考えていきたいと思います。
 以上でございます。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 今、池田課長が最後におっしゃったように、この早急に措置すべき施策をブラッシュアップするために今日の議題の1と2でかなり大事なご指摘があったもので、まず、その中で緊急性のあるもので盛り込むべきものは事務局のほうで盛り込んでもらうという前提といいますか、考えのもとで、先ほどご指摘のあったことも重なってもよろしいので、何かご発言がありましたら承りたいと思います。
 橋本委員、どうぞ。

【橋本委員】  最後のところで関連がついてはいるんですけれども、イノベーション・エコシステムとURAの関係です。2つ比べるとかなり似たところがあるんですが、施策として違うのは、イノベーション・エコシステムのほうは、事業プロモーターがいるものとして始めているというか、それの育成に関しては書かれていなくて、URAは育成システムとセットになっている。この辺のところを少しこの次は考えるべきではないかと思います。事業プロモーターを募集するといったときに、どういうところからどういう人が来るのかというのは、ちょっとまだよく見えないところがあるので、あるいは、素材となるべき人が来て、それを育成するということがあるだろうと思います。その辺のところを仕組みの中に入れるかどうかということを考えるべきかなと思います。

【柘植主査】  大体議題の1と2で相当大事なことのご発言いただいたなと私自身も認識をしております。
 私のほうから1つだけ。表現ですけれども、5ページの一番上の、前期の委員会がつくりましたイノベーション促進のための基本戦略、これはきちっと括弧書きでもとりあえずできるように、読んだ人がどれのことかということがわかるように括弧書きでも出典をきちっと書いてほしいと思います。
 それから、もう一つ、この施策は、私の認識は2つの目的があって、1つは来年度に向けた予算の獲得の我々の基盤というかピボットとして使っていただくということと、もう一つは、この親委員会である科学技術学術審議会に向けて、産学官連携推進委員会としてはこういう形で進めますというひとつの報告としても使うと、この2つと考えていいわけですか。

【池田課長】  はい。

【柘植主査】  特に公表の仕方というのは、事務局は今、何か考えられておりますか。

【池田課長】  基本的には、本日いただいたご意見をもとにもう少しブラッシュアップして、どこかのタイミングでこの委員会としてまとめたという形にさせていただければと思います。次の予定として9月にもう一回開催を予定しておりますので、そこでさらにブラッシュアップしたものをお示ししてご確認いただいた上で公表ということでよろしいかと思っております。

【柘植主査】  わかりました。基本的には今日の議題の1と2でいただいたものを、緊急として資料4に落とし込むべきものは落とし込んでブラッシュアップをする。それから、議題1、2で、緊急というよりは、むしろ委員会のアジェンダとしてこれから残していくというものと2つが分かれると思いますが、前者の資料4に盛り込むべきものにつきましては、事務局と主査のほうに一任させていただきたいと思います。
 それから、後者の話については、ぜひ今後のこの委員会での議論に発展的につながるように見える化、階層化をして、今日の議論を有効に使っていただきたいと思います。
 それでは、時間が参りましたので、そろそろ終えたいと思いますが、今後の予定について事務局からお願いしたいと思います。

【井上専門官】  今後のご予定ですが、9月16日に予備日として皆様のご予定を押さえさせていただいておりますので、開催につきましては早急に主査ともご相談させていただいて、ご連絡させていただきたいと思っております。
 以上でございます。

【柘植主査】  ぜひ9月16日の10時-12時をご予定いただきたいと思います。
 特に何かご質問ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、本日の産学官連携推進委員会を閉会いたします。どうもご苦労さまでございました。

お問合せ先

科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課大学技術移転推進室

(科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課大学技術移転推進室)