基本計画特別委員会(第4期科学技術基本計画)(第8回) 議事録

1.日時

平成21年11月19日15時~17時30分

2.場所

ベルサール九段 イベントホール (住友不動産九段ビル3階)

3.議題

  1. 社会的課題の解決に向けた新興・融合科学技術の推進について
  2. 日本学術会議からの提言について
  3. 科学技術・学術審議会学術分科会からの提言について
  4. 国家基幹技術の今後の在り方について
  5. 科学技術・イノベーションの研究開発戦略について
  6. その他

4.出席者

委員

野依主査、野間口主査代理、東委員、有川委員、安西委員、伊地知委員、大隅委員、門永委員、河内委員、國井委員、佐々木委員、白井委員、立川委員、冨山委員、永井委員、西尾委員、二瓶委員、本藏委員、益田委員、丸本委員、元村委員、森委員

文部科学省

坂田事務次官、清水文部科学審議官
(大臣官房)土屋総括審議官、西阪文教施設企画部長、藤原会計課長、坪井政策課長、岡文教施設企画部技術参事官
(高等教育局)義本高等教育企画課長
(科学技術・学術政策局)泉局長、渡辺次長、小松科学技術・学術総括官、中岡政策課長、佐藤調査調整課長、川端基盤政策課長、柿田計画官、岡谷科学技術・学術戦略官(推進調整担当)
(研究振興局)磯田局長、倉持審議官、山脇振興企画課長、柳研究環境・産業連携課長、舟橋情報課長、勝野学術機関課長、山口学術研究助成課長、内丸基礎基盤研究課長、渡邉研究振興戦略官
(研究開発局)藤木局長、土橋開発企画課長、鈴木地震・防災研究課長、松浦宇宙利用推進室長

オブザーバー

白石総合科学技術会議議員、青木総合科学技術会議議員、金澤日本学術会議会長、有本科学技術振興機構研究開発戦略センター副センター長、渡邊科学技術振興機構研究開発センターフェロー

5.議事録

【野依主査】
 科学技術・学術審議会第8回基本計画特別委員会を開催します。
 ご承知のように、政府の行政刷新会議の事業仕分け作業の様子を拝見しておりますと、科学技術の行方が大変憂慮されます。本日発行の『ネイチャー』にも、「内閣は選挙の時にはサンエンスをもっとサポートすると言いながら、実際のバジェットはディープカットである」と書かれて、非常に残念です。未曾有の危機的な状況にあると思います。後ほど泉局長から状況についてご説明がありますが、科学技術こそが日本の生命線だと私は思います。我が国の存立に関わるものですので、研究と人材養成の中核である文部科学省におかれましては、科学技術の振興、高等教育のあるべき姿の実現に向けて死力を尽くしていただきたいと思います。それから、ご出席の委員の方々には、それぞれのお立場から強力なサポートをいただくようお願いします。
 それでは、事務局から、配付資料の確認をお願いします。

【柿田計画官】
 議事次第の裏側に配付資料一覧があります。資料1-1から資料6、及び参考資料1の「前回の会議における主な意見」です。机上資料として、現在、分野別の委員会において検討中のものですが、今後の研究開発に関する資料がございます。また、先ほど野依主査よりお話のありました事業仕分けの結果、これは最後にご説明申し上げますが、その公表資料を配付しております。
 以上です。

【野依主査】
 本日の審議事項は、「科学技術・イノベーションの研究開発戦略について」ですが、議論に先立ち、「社会的課題の解決に向けた新興・融合科学技術の推進」について、有本建男科学技術振興機構研究開発戦略センター副センター長からご説明いただきます。

【有本副センター長】
 ありがとうございます。お手元に、資料1-1と、最近私どもでまとめた印刷物である資料1-2「新興・融合科学技術の推進方策に関する戦略提言」という2つの資料がありますが、主として資料1-1でご説明申し上げたいと思います。
 この研究開発戦略センターは、現在、吉川弘之先生をセンター長にお迎えして、既に発足から6年ほど経ち、科学技術内外の動向の分析、システム改革も含めて様々な政策提言、あるいは次のプライオリティエリアはどうあるべきかということを逐次提言としているところです。
 資料の4ページ目です。右下のページに色刷りのマップが描いてありますが、現在の第3期科学技術基本計画のファンディング側からみた基本コンセプトをこのように理解をしております。第3期科学技術基本計画でイノベーションの概念が導入されて、一番左側の自由発想基礎研究、主として大学の基盤的な経費や科研費でサポートされているところですが、これは非常に大事でして、そこに書いてあるように、多様性・豊饒性が重要になります。ここから右側のほうにある最終的に社会的なニーズ、あるいは価値を生み出すところまで、知的・文化的な価値が主としてあるわけです。それから、もう一つは、下のほうのパスとしての自由発想基礎研究で見出された技術シーズを源泉として、JSTが主として担当している目的志向基礎研究、それから、技術実証施策、それから、NEDOをはじめとした、ミッションを帯びたファンディングエージェンシーがずっとつないで経済的価値、社会的公共的価値につなげていくパスがあります。このファンディングシステムをどう公共政策として設計し、運用するかです。それで、最終的に成功確率を向上させる、あるいは、成果の創造までの時間を短縮することを目標としています。その基本が第3期科学技術基本計画のコンセプトで出たことは確かですが、右にあるように、色々な問題があろうかと思います。
 第4期科学技術基本計画で特に大事になるのは、マル1にあるように、第2期科学技術基本計画の前から様々な議論がありまして、その当時としては日本の科学技術政策というものを重点化していこうということで、時代的な価値があったかと思いますが、この4分野重点化というものが10年経って、色々欠陥もあると言われております。特に課題解決に向けての対応、それから、分野融合が一つの大きな課題かと思います。それから、マル2にあるように、第3期科学技術基本計画で「モノから人へ、機関における個人の重視」が非常に強く打ち出されて、これはこれで大変価値があることだと思いますが、ここに書いてあるように、あまりに個人が重視されて、個人を支える機関あるいは制度について十分に配慮されているのか、あるいはリソースが配分されているのかという課題があります。あるいは、文化の浸透までちょっといかがなものかというようなところも課題ではないかと思っております。
 それから、次に、(4)ですが、最近の研究開発というのは、皆様よくご存じのように分野融合、新技術、既存の技術、あるいは知識も含めてそれを統合して、どう価値を生み出していくかというシステム指向が非常に強くなっております。これらのインテグレーションを支えるのがコンピューターモデリング、シミュレーション、あるいは大量データの処理などが、非常に強く方法論として出ていると理解しております。それから、一番下にあるように、企業は当然そうですが、公共政策としての研究開発をするとしても、分野、組織、あるいは国境を越えていかに研究資源を結集するか、ネットワークをつくるか、最適配置をするかというところまできていると理解しております。
 そういう大前提の上で、6ページですが、表題のとおり、新興・融合分野をどう推進するかです。ただし、新興・融合分野の推進は、手段であって、目的、価値を生み出すというところを常に持った上での手段ですので、その手段をどうサポートしていくかということが公共政策の大事なところではないかということで、私どものセンターでは、関係の先生方や産業界の方に集まっていただいてワークショップを開いたり、色々な経験や業績を上げられた先生方にインタビューに行ったりしております。また、内外の動向調査をやりまして、右にあるように、子細には今日はご説明いたしませんが、X軸が社会のニーズ、あるいは経済の競争力も含めた価値を生み出すという方向、Y軸が知識を生み出す基礎研究という、こういうXとY軸の中で各研究者、あるいは個別のプロジェクトがどう動いたかというケーススタディを積み上げてまいりました。
 それを踏まえて、少し一般化して、システムづくりをやっているところです。左の方に四角であるように、大きくは、この課題解決というものの取り組みが公共政策としては科学技術のフロンティアも開拓するという、併せての目的があるということ。それから、繰り返し申しますが、推進に当たっては、産・学・官、あるいは市民、これらのネットワーク、プラットフォームを持続的につくっていくことが大事だろうということです。
 その上で提言が3つあります。8ページですが、異分野の研究者や産・学・官・社会・市民のネットワーク、プラットフォームの形成と持続ということで、そこのマル1に書いてあるように、研究開発プログラム、あるいは課題の選定というところから含めて、準備段階から一貫して課題解決に向けた意識、アイデア、知識、経験、研究開発の方向性を共有し、相互に対話を通じて共有の戦略を作成する。一種の相互の信頼のあるプラットフォームづくりというものが一番の基本であろうということです。
 これには当然そのネットワーク、人材の養成、あるいは初期のころから法的な様々な問題というものにも取り組む必要があり、方法論としては、下のマル1にあるように、COEといえども、できるだけオープンにするという、オープン型のCOEのやり方、あるいは色々なケースがあるかと思いますが、最近は、COEを結んだネットワーク・オブ・エクセレンスという言葉も、欧州では特に強く出ておりますが、そういうコンセプトが大事であろうということです。
 それから、2番目、10ページですが、研究開発の進展に合わせて支援するシームレスなプログラムということで、(2-1)にあるように、研究開発の発展段階に応じて必要な研究の制度や支援機能を組み合わせ、柔軟・継続的に支援する仕組みづくりを促進するシステムということで、標語的にそこに青で書きました。現在は、研究、あるいは研究者がある一つの制度の中で囲い込まれて動かざるを得なくなっているのを、研究や研究者の活動の進展に応じて制度が動いていく、あるいは他の制度が接続・結合していくものにする必要があるだろうということです。それから、もう一つは、この制度を運用する人材ですが、ここでは「戦略マネジャー」という言い方をしておきました。詳細設計をやりますと、今のPD、POとかなり重なり合うところもありますが、こちらの方がちゃんと政策レベル、あるいは実施レベルのところで階層構造的になり、このように、ずっと見ていくことが大事かなということです。
 それから、最後に12ページの3.ですが、こういう新興・融合分野というのは、既存のコミュニティーの中では非常に評価をしにくいということで、特に若手研究者ではキャリアパスを考える上でのリスクがありますので、これをしっかり長期的に支えていく仕組みづくりが大事ではないかということです。大学の意識改革も含めて、公共政策として支えていくということが大事ではないかと思います。特にこの(3-3)ですが、長期的、持続的な体制づくりと機関、国としての明確な方針ということです。至るところで起こっていることですが、あるCOEをつくっても、5年、10年経ってプログラムが終わる時に、優秀な若い人がいても、その後はどうなるのかという問題があります。常に不安を抱えながら仕事をせざるを得ないというところで、環境づくりということを挙げております。
 次の14ページですが、これは少し今までのものと毛色が変わるかもしれませんが、このように社会という常に動いているものについて分析、予測し、それを科学技術の側にはね返して課題を見つけるという、こういう文理の対話的なプラットフォームをつくることが非常に大事になるだろうということです。これは、15ページに書きましたが、既に2001年3月閣議決定の第2期科学技術基本計画の時に、人文・社会科学の専門家は、科学技術と社会の関係について研究を行い、発信する。これをまた科学技術の方に伝える。これらを研究活動としてもやらないといけないし、それを政策的にサポートすべきであるということです。今で言えば、世界的に動いている、サイエンス・オブ・サイエンス・ポリシー、あるいはソーシャル・サイエンス・オブ・サイエンス・イノベーション・ポリシーというものが、我が国では既に2001年にはっきり閣議決定されています。今までは残念ながら政策的、行政的な光が当たっていませんでしたが、今、この転換期では非常にこれが重要になるということで、私どもの研究開発戦略センターでも研究会を発足させているところです。
 それから、16ページですが、これはアメリカのオバマ政権でのグリーン・イノベーションの例です。少しご紹介しますと、ノーベル物理学賞受賞者でエネルギー省長官のスティーブン・チューが今、右のような非常にビジョンのある研究開発のシステムづくりを行っています。既に先手も打って課題も動いています。17ページのエネルギーフロンティア研究センター、エネルギー高等研究計画局、それから、エネルギーイノベーション・ハブ、これらのサポートシステムのビジョンを出して、実際動いております。4月の末にAAASのポリシーフォーラムで彼がこのビジョンを出す時に私も現場におりました。この説明の後、会場から、「こういうもので優秀な基礎研究者が集まるのか」、あるいは「ポークバレル(利益誘導)的になるのではないか」という非常に鋭い質問が出たのですが、これに対してスティーブン・チューが、ここにあるように、「課題解決型の研究は、新たな学問のフロンティアを切り開き、若い優秀な研究者も挑戦してくる」ということを自信を持って発言しました。私は、非常に印象に残ったのです。なぜかと言うと、色々と調べているところもあるのですが、これは決して思いつきでやっているのではなくて、もう7~8年、1,000人を超えるアメリカのトップの科学者、産業人も含めて、繰り返しワークショップ等をやりながら、この真ん中にありますが、こういう重要政策、エネルギーへの基礎科学者の参画、それから、政策担当者と研究者の間での将来の方向性・課題について検討し、信頼を共有し、その上でトップサイエンティストがこれにコミットしているという、非常にしっかりしたプラットフォームができている。その上で、自信を持って政策を進めているということです。もう一つ、下から6行目ぐらい、「新たなエネルギー研究プログラムは、課題の解決までマンハッタン計画並みに強力に進められるべきである」。これも非常に重い言葉で、皆さんご存じのように、マンハッタン計画というのは、コントラクト、グラント、フェローシップ等、様々なファンディングシステムをかけ合わせた上で、全米の科学者、技術者、企業も含めて動員するという体制の中でやったわけです。今、そのぐらいの決意でアメリカは動いているということです。

【野依主査】
 ありがとうございました。
 それでは、新興・融合に関する提言について、ご質問はありますか。

【國井委員】
 新興・融合科学技術を進めるに当たっては、人材も非常に重要だと思います。資料でも触れられているのですが、あまり研究者の多様性の話が出ていません。多様な研究者、女性、外国人も含め、多面的な見方で新しい分野というのは広がっていくと考えていますが、その辺はどのように捉えられていらっしゃるのでしょうか。

【有本副センター長】
 4ページのマップをご覧下さい。基本的には、今回の私の発表は自由発想基礎研究ではなくて、目的志向基礎研究以降の話なわけです。冒頭申しあげたように、大事なのは、日本ではリスクの大きさ故に海外から技術シーズをもう導入できなくなってきているのです。だからこそ、基礎科学のところをしっかりやらないといけない、あるいは多様な人材を養成しなければいけない。それが大前提にあろうかと思います。
 その上で、國井委員がおっしゃったとおりで、いかに目的志向基礎研究といえども、この図の右側の社会ニーズには非常に多様なことをやらないとたどり着かないというところが一番大事です。シーズからニーズにたどり着くのは確率的な話になりますので、最初に絞り込んでしまえばたどり着かないのは当然です。報告書の方にははっきり書いております。また、もう一つ申しますと、このマップの中にある自由発想基礎研究というのは、科研費などで数万件ぐらい動いております。それがJSTのファンディングになると、100分の1の数百件なります。さらにNEDO等になると、さらにずっと絞り込んでいくという、量のセレクションの仕方の問題があります。この辺は、今から第4期科学技術基本計画に向けて色々な詳細設計をするときには、それぞれのドメインで考えるのではなく、全体のポートフォリオで考えていただかないといけないのではないかと考えています。

【野依主査】
 ありがとうございます。
 先ほどご紹介いただいたスティーブン・チュー長官の課題解決型の研究ですが、研究システム、あるいは研究の場はどこになるのでしょうか。大学なのか、研究所なのか、あるいはプログラムをつくって分散型でやるのか、どのようなことが言われていますか。

【有本副センター長】
 3つのファンディングのシステムがあると申しましたが、19ページは、エネルギーフロンティア研究センターで、ミッションを帯びた基礎研究という分野が強いと思います。この分野で、全米で毎年1~3億円ぐらいのオーダーで5年~7年ぐらい研究をします。この赤い星印のエネルギーフロンティア研究センターというのが大学、あるいは国立の研究所、ほとんど大学に当たりますが、このような形で研究が動いております。ただし、19ページの上に書いたように、一つのセンターは、必ず平均他の4機関以上と連携することとなっております。COEといえども、中に閉じこもるのではなくて、連携がコントラクトの条件になっており、こういうことが非常に大事なところかと思います。
 その上で、17ページに戻っていただいて、今、申し上げましたのは、左下のエネルギーフロンティア研究センターですが、そういう一種の目的志向基礎研究、あるいは純粋基礎研究も行っていますが、それをさらに応用に近づけるための仕組みまでつくっています。エネルギー省のDARPA型や、その他ハブ等が多層的に動いているということが大事と思います。

【野依主査】
 このようなものを運営するためには、プレイヤーとともに有能なマネジャーが必要だと思います。

【有本副センター長】
 はい。プログラムの準備段階については、まだ子細に調べる必要があるのですが、このネットワーク作りの中核になった人は、エネルギー省の基礎研究部門であるオフィス・オブ・サイエンスの課長から次長になった女性なのですが、10年以上ずっと、政権が代わっても持続しながらこのネットワークづくり、準備をやってきたというところが一つのポイントかなと思っております。

【本藏委員】
 10ページに青い字で書かれている(2-1)の下の図にありますが、「研究が制度の下で動くのではなくて、制度が研究活動に応じて動く」と書かれていまして、私は、これは極めて重要な要素だといつも思っているのですが、具体的にどんなメカニズムを検討されたのでしょうか。

【有本副センター長】
 先ほどご説明しましたように、一つとして、エネルギー省の中で3つの大きなシステムが具体的に動いているというのがあります。もう一つは、皆さんよくご存じかと思いますが、IT分野にしてもバイオ分野にしても、ナショナルコーディネーションシステム、あるいは大統領指名のナショナルコーディネーターというのがいるわけです。この方々が全体を統括した上で、あるフェーズはNSFのファンディングにする、あるフェーズからはNASAのファンディングにするとかいうことをうまくコーディネートする仕組みが動いているということです。日本では残念ながら、意識はずいぶんでき始めましたけれど、縦割りの中でなかなか実行できていません。

【二瓶委員】
 12ページで、COEの例を挙げて、5年ぐらいで一つ一つの研究組織が途切れて継続性が不足しているのは問題ではないかというご指摘があったかと思いますが、具体的にどのように考えればいいのですか。組織、受け皿としての継続性なのか、あるいは人としての継続性なのか。人としての継続性は従来この委員会でも、流動性という表現で表示をされてきたと思いますが、その点はどのようにお考えでしょうか。

【有本副センター長】
 ケース・バイ・ケースで幾つかあろうかと思いますが、一つは、国でファンディングされた大きなプログラムが、金の切れ目が縁の切れ目で、ファンディング期間終了後に分散してしまうことがあります。振興調整費などでもよく言われますが、5年間が終了した暁には、組織の運営費交付金で見るべきではないかということがあります。もう一つは、組織の継続性ではなく、ファンディングの継続性として、あるファンドが終わると研究者集団が次のファンドに移行していけるような仕組みを考えております。それについては、関係者が集まってプラットフォームを作って議論していれば、そういう継続の仕組みは大体理解しているはずなのですが、現在のところはたて割りで、それぞれがあまり連携せずにやっているものですから、ぎりぎりになって困ったという話になっています。その辺りについてもう少し詳細に議論する必要があると思います。コンセプトとしては、ファンディングのレベル、機関のレベル、それから、個人のレベルで分け、詳細に見て対応を検討する必要があると思います。

【河内委員】
 企業から見たときに、目的基礎研究も含めて、基礎研究、そこに非常に期待しているのですが、基礎研究から事業として最終製品まで仕上がるには、ここに書いてあるように、多くのもの例えばテレビの部材であっても、20年、30年かかるわけですね。しかも、最初の基礎研究のテーマがそのまま最後まで行き着くというのは、研究テーマの中でそんなに確率的に高くないわけです。そうすると、誰が基礎研究のテーマを目利きして、プロジェクトして、最後まで進めていくかという非常に難しい問題を含んでいると思います。
 したがって、大学における本当に基礎研究的なものも、ブレークスルーが出た時に、この研究はこの段階ではなかなか独創性があるとか、将来には何か非常に大きなインパクトを与えそうだとかいうことを誰かが何らかの形で目利きしてファンドで育てていく或いは何かブレークスルーが出たときに柔軟に機動性をもってお金をつけて、膨らませていくということが必要だと思います。しかも、たった一つのテーマに絞り込むのではなくて、同じ研究テーマを競争させるといったリスクヘッジをしておくという考え方も非常に重要です。ここで議論されている非常にシステマティックなファンディングというのは、非常にきれいな図は描けるのですが、誰が受け皿としてやるのでしょうか。大学や国研の研究者であり、企業の研究者であり、事業をやっている人、そこが最終的な当事者なのですね。その当事者をサポートするような仕組みを作ろうと考えた時に、その当事者以外の人の関わり方というのは、アメリカなどではどういう形になっているのか、私はなかなか理解できないところがあるのです。

【有本副センター長】
 少し一般的になりますが、産学連携でよく言われていることですが、海外と日本との違いは、大学側は色々な知識を持っているのだけども、それをワンストップサービスで、「大学全体としてこういう色々な知識がある、組織もある」ということを企業から何かリクエストがあった時にぱっと展開できるようなシステムがないということです。私は、少しずつはよくなっているとは思いますが。一般論になりますが、河内委員が仰ったとおりで、幾らこういうシステムをつくったとしても、それを動かすのは人ですから、制度と魂が両輪で動かない限りシステムは動かないというのは当たり前の話なので、実際に制度を動かす人々が会社や、大学、サイエンスのコミュニティーで評価されるようなシステムができるのが重要な点だと思います。
 また、分野融合については、色々な大学で今、例えばサステナビリティ等が融合分野として研究されていますが、研究者それぞれに元々携わっていた分野があるわけです。プロジェクトが終わった後、金の切れ目が縁の切れ目で、みんな困っているという話をたくさん聞いています。元いたところに帰らざるを得ない。新しいフロンティアには担う人がたくさん必要なのに。プロジェクト終了後の彼らをどうするのかということが問題です。他にもWPIは10年という異例の長さでやっているのですが、時々聞く話としては、動き出しはいいのですが、数年たつと、優秀な人が心配し始めて、どこかへ移って行くのではないかということです。やはり、持続的に、多層的にサポートする文化とシステムというのは非常に重要だということです。

【野依主査】
 それと、リーダー、マネジャーがやはり大事だと思います。昔と違うところは、インターネット社会になった今、キーになるテクノロジーを持っていると、思いがけないところから引き合いがあるようです。研究者によってはなぜ自分が声をかけられたか分からないというようなこともあり得ます。そのようなIT社会になって情報が横に流れる状況も、10年前、20年前とは違ってきたという気がします。河内委員が仰ったように、マネジャーや目利きが何をどう導くかということ、そこが大事ではないかと思います。
 次に、日本学術会議及び科学技術・学術審議会学術分科会から、それぞれご提言についてご発表いただき、その後まとめて質疑の時間を設けたいと思います。
 まず、「日本の展望-学術からの提言2010」について、金澤一郎日本学術会議会長からご発表いただきます。

【金澤議員】
 どうもありがとうございます。ご報告申し上げます。これは最近、日本学術会議で素案としてまとめたものですが、直接第4期科学技術基本計画についてという内容としては、この中から抽出し、多分一ヶ月ぐらいたちましたらご報告できるのではないかと思っています。その元になるものと思って下さい。
 今から5年前の2004年に日本学術会議では「Japan Perspective、日本の計画」というタイトルで類似のものを出しております。吉川先生の時代です。それは、言うならば中間報告のようなものでしたので、今回、私たちはこれをきちんとまとめようということで去年から取り組んで参りました。
 資料2-1と2-2がありますが、2-1でご説明申します。横長のパワーポイントです。
 まず、開いていただきますと左側が本報告の流れです。次の右側は審議体制の概要です。これは大変長い期間、中長期的な日本の学術の動向についてパースペクティブするものですので、縦糸と横糸をまず張ります。縦糸は、人文・社会科学、あるいは生命科学、理学・工学という専門分野です。横糸は、今の社会におけるさまざまなトピックス的な問題、重要な問題を取り上げております。例えば基礎科学、あるいは地球環境問題、あるいは大学と人材、安全とリスクなどです。
 めくっていただきますと、「素案」の概要が左に書いてあります。その内容をシェーマのような形でまとめております。4章から成っており、一番上にこの展望を出す背景が述べられています。第2章では、先ほど横糸と申しましたトピックス的な現在における重要問題をまとめております。ただ、それは「日本の計画」に則り、これから21世紀の社会に向かって学術研究が何かを再構築しなければいけない。その再構築の相手を相手ごとにまとめております。第3章では、先ほど申しました縦糸、それぞれの専門分野におけるこれからの展望について述べております。第4章では、これからの問題をそれぞれ提言という形でまとめております。
 次のページで背景について書いております。学術とは何かということから始めて、科学技術science based technology、あるいは科学・技術science and technologyよりももっと広い概念であって、人文・社会科学を含むことは言うまでもなく、全ての分野における創造的・知的活動の総体と捉えるところから始めております。21世紀の人類社会の課題解決のためには、学術、科学が一体的に取り組むことが大事だということを述べております。そして、単にその学術が学術のためだけではなく、社会のための学術、これは社会のための科学と言いかえてもいいかもしれませんが、この2つが相携えて発展していく必要があるということを述べております。
 次をめくっていただいて、先ほどトピックス的な重要問題と言いましたが、それを「4つの再構築」としてまとめております。人類社会に対して学術はどのように貢献できるのかという具体例です。1つ目が人類の生存基盤の再構築です。これはよくサステナビリティと言われますが、現代の社会・世代の中でのサステナビリティだけではなく、将来の世代に対してもまた持続可能でなければいけない、そういう目標を明確にすべきだろうということを述べております。
 2つ目の再構築は人と人との関係の再構築です。これはアジアの中における日本、そして、世界の中における日本、そういう認識を常に持ちつつ、税制や社会保障等、いわゆる持続可能なシステムの構築の設計を提示していこうということです。
 3つ目の再構築は、人間と科学技術の関係です。これは何度か出てきたかと思いますが、リスクに対応できる社会、あるいは情報社会というものの問題に即して問題提起をしております。
 4つ目が知の再構築でして、高等教育に焦点を当てて、教養教育を含めて市民の生涯教育まで目を向けるべきだと述べております。
 次のページですが、今度は、領域ごとに何を考えるべきかという展望についてです。(2)のマル1が人文・社会科学ですが、価値観をいかに文化的に成熟したものにしていくのかを検討するということを述べております。マル2の生命科学では人間の尊厳、これは最も大事なところであります。マル3の理学・工学では真理の探求とともに、いわゆる人工物を人類社会のために役立たせることを目指しているわけです。
 次に、本提言の中心は、次のページから始まる、いわゆる学術研究の近未来というところになります。一つは、学術研究の発展、これは先ほど色々な視点を申しましたが、文科系、理科系ということではなく、むしろそれを連携し、協調しつつ、持続可能な社会構築の科学というような融合的というよりむしろ統合的な研究を推進すべきであろうということを述べております。
 もう一つは、学術研究の人的基盤として、我々の世代はもう人生が後半になっているわけですが、もっと若い方々が自分の研究領域だけではない、人類全体、地球全体のことを考えるようにどんどん育ってほしいという意味で、若手研究者が俯瞰的視点を持つような、そういう人たちを育てていくべきではないかということを述べております。もう一つは、科学コミュニティーを組織している学術研究団体、いわゆる学協会ですが、それらを支援する施策の展開について述べております。例えば、医療法人、学校法人等はありますが、学術法人というのはないなという、そのようなニュアンスで考えております。
 次のページ、最後の章です。まず、(1)から(9)までありますが、その中の(8)が提言となっておりますので、すぐ次のページにいっていただきたいと思います。最初は、学術の総合的発展の中でかぎ括弧つきの「科学技術」の推進を位置づけるということを提言しております。それから、提言の2番目では、「基礎研究」、「応用研究」、「研究者」など、それらの言葉の基本概念をもっと明確化した上で、学術研究に関する統計データの長期的な取得と分析を組織的に行うべきであろうということです。提言3は人文・社会科学の位置づけをきちっと強化するべきであろうということ。
 次のページの提言4では、大学における学術研究基盤の回復、これは言わずもがなでございます。提言5はイノベーション政策について先ほどご議論されましたが、基礎研究とのバランスを確保すべきだろうということです。提言6は、若手研究者の育成の危機に対応する早急な施策の実施、提言7で男女共同参画のさらなる推進、そして、最後の提言8で学術団体を強化することによって、日本学術会議が学術全体、そして社会に対してきちんと貢献ができるように頑張っていきたいということで締めております。
 最後のページに、以上のことをまとめておりまして、人類の「営み」としての学術研究の本質と長期的視点を基礎に科学・技術を支え、文化的・社会的・国際的側面から総合的に学術研究を推進するということです。

【野依主査】
 ありがとうございました。
 続きまして、第4期科学技術基本計画の策定に向けた意見まとめと、第4期科学技術基本計画に向けた検討と科学研究費補助金の在り方について、科学技術・学術審議会学術分科会長でいらっしゃる佐々木委員及び事務局から説明していただきます。

【佐々木委員】
 それでは、基本計画特別委員会に対して、学術分科会として、次のようなご意見を出したいということで、私から説明申し上げます。
 本分科会におきましては、第4期科学技術基本計画の策定に向けて、学術の基本問題に関する特別委員会というものを新たに設置し、その審議をもとに9月以降、3回にわたって審議を行い、配付資料3-1のとおり、第4期科学技術基本計画の策定に向けた意見のまとめを取りまとめたところです。私からはこの意見のまとめの基本的な考え方について説明します。基本な考え方は、1ページから7ページの「はじめに」及び24ページの「おわりに」にまとめておりますので、ご参照いただければと思います。
 まず、従来の科学技術基本計画では、学術を明示的に位置づけたものはありませんでした。本分科会では、第4期科学技術基本計画の策定に際し、今こそ科学技術の在り方を学術や教育も含めた根幹的なところから問い直す必要があり、科学技術の発展は学術の振興の中にこそ位置づけられるべきであるという原点をきっちり見据えるべきである、そして、その上で学術並びに科学技術の振興策をめぐる議論が必要であるということを分科会の共通認識としてまとめたところです。基本計画特別委員会では、これまで科学技術イノベーション政策を推進する方向で検討を行ってきたところですが、今後の我が国の科学技術や社会の発展を考えた場合、学術体制が脆弱化すると、それを基盤とする科学技術やイノベーションも脆弱化し、必要な人材の養成もなされないことになりかねません。こうした危機的な事態を避けるため、今こそ国民の理解を得ながら、学術の振興を腰を据えて図る方策が必要であると考えております。
 人類社会の将来の展望と持続可能な発展に資する科学技術の基盤を形成し、かつ、イノベーション創出の糸口を見出すには、自然科学のみならず、人文学、社会科学、相互の一体的な学術研究体制の推進が必要であることは言うまでもありません。我が国は世界に誇る多くの優れた研究業績を上げるとともに、世界レベルの研究教育拠点を形成しつつあるわけですが、これからも国際社会からの信頼と尊敬を得られる国であり続けるためには、我が国の学術研究環境をさらに一層充実し、そして、大学の積極的な取組とあわせて、政府からの必要な支援をぜひ求めたいと考えたところです。
 こうした認識に基づきまして、第4期科学技術基本計画には、学術と科学技術の関係を明確にした上で、基本理念として科学技術の発展は、学術の振興をもとにその上に築かれるものであるということを明記するとともに、学術の振興に必要な方策を盛り込んでいただきたいということを求める次第です。
 私からの概括的な説明は以上です。具体的な方策については事務局からお願いします。

【山脇振興企画課長】
 振興企画課長でございます。資料3-1に基づきまして、振興方策を中心にお話ししたいと思います。
 今、佐々木分科会長からご説明のありました第4期科学技術基本計画の策定に向けた基本的な考え方は1章で述べられておりまして、6ページから7ページにまとめた部分があります。
 2章以降では、学術の研究の振興方策として、5つの項目について述べております。
 まず第1が、学術研究への財政支援の拡充というものです。8ページです。学術研究の財政支援の在り方として、大学における学術研究について、十分な基盤的経費と競争的資金によるデュアルサポートシステムによって支えていくことが求められるという基本的な考え方のもとに、基盤的な経費の確実な措置に関して述べております。具体的には9ページの2つ目のマルのパラグラフです。研究投資や研究自体の効率性ばかりを追求するではなく、研究者の価値観の多様性という考え方を復権し、意欲ある研究者に多様な研究の機会が与えられることは重要であるという視点から、基盤的な経費は確実に措置するべきであるという点を述べております。
 また、科学研究費補助金の役割等に関して、9ページ一番下のパラグラフからですが、科研費を、学術の多様性の確保し、大学等における研究を支える不可欠なものとして改めて位置づけ、その抜本的な拡充を図ることが必要であるというように指摘をいただいています。また、科研費をめぐる最近の状況、新規採択率の低下等を踏まえまして、11ページの最初のマルですが、どの年齢層の研究者からの応募に対しても新規採択率30%を確保すること、間接経費30%を確実に措置するという2つの条件を満たせるような方策を講じるべきであるというご指摘をいただいております。また、その場合の所要額の試算値についても、その次のパラグラフで述べております。これらに関しては、資料3-2として配付している研究費部会からの報告をもとに学術分科会で取りまとめをいただいていることを付言します。
 その次のパラグラフは、ファンディング・システムの構築ということで、人文科学、社会科学から自然科学に至るまでの分野の特性に応じたファンディング・システムの在り方についての検討が必要であるとして、12ページの最初のパラグラフですが、国全体の研究費のファンディングを考えるに当たって、それぞれの研究資金の性格とその審査基準の明確化・多様化が必要であるというご指摘をいただいております。
 また、12ページの一番下のマルですが、学術研究に対する国民の信頼と支持が得られるような方策についても重要であるというご指摘をいただいております。
 続きまして、13ページですが、2つ目の項目であります大学等における独創的・先端的研究の推進の項目です。ここでは個々の学部・研究科、あるいは個々の大学では対応が困難な総合的な研究の担い手として、大学共同利用機関や大学の附置研究所・研究センターの重要性について指摘をしていただいております。
 また、大型プロジェクトの推進に関しては、14ページに中心に記述をしております。14ページの2つ目のマルですが、今後、大型プロジェクトの将来構想をまとめたロードマップを策定し、これを基本としながら、客観的かつ透明性の高い評価を行った上で、大型プロジェクトを推進していく必要があるというご指摘をいただいているところです。
 また、共同利用・共同研究システムの我が国の独自性を発展させた取組が必要であるということも併せて指摘をいただいています。
 続きまして、16ページ以降が研究環境の改善と環境支援体制の強化に関する提言です。研究者の負担を軽減し、研究に専念できるような支援体制を構築して活性化に取り組む必要があるという考え方のもと、中ほどですが、研究に集中して取り組める時間・環境の確保、そのための大学における組織運営面での改革が求められるというご指摘をいただいております。また、一番下のマルですが、評価に係る作業が膨大になっているという背景を踏まえて、より効率的・効果的な評価の実施、審査・評価の在り方についての検討が必要であると指摘されています。
 17ページには、研究支援体制として、テクニシャンやリサーチアドミニストレーターの配置などの高度な研究支援体制の確立の必要性、さらに、その次のサブタイトルにありますが、国際化に対応した研究支援体制の構築が必要であるということをご指摘いただいております。
 18ページ目が研究基盤の充実という視点です。研究施設・設備の計画的な整備・更新・管理などに必要な経費の確保が困難になっているという状況を反転させて、世界最高水準の研究成果を持続的に満たす研究基盤を長期的な視点に立って計画的に整備する必要がある、そのための措置が必要であるというご指摘をいただいているところです。それと併せて、共同利用、有効活用のシステムについてもご指摘をいただいています。
 19ページでは、研究情報基盤の重要性についてです。まず、コンピューターネットワークを駆使して、研究データベースを統合して新たな知恵を発見・形成する「E-サイエンス」の整備充実の必要性についてご指摘いただいております。一番下の段落ですが、電子ジャーナルの効率的な整備、オープンアクセスを推進する方策などのご指摘をいただいています。併せて、20ページでは、文献・資料、図書等の文献・資料、生物遺伝資源等の研究用材料などについての知的資産の体系化、あるいはそれを広く供用する体制の重要性についてご指摘をいただいております。
 最後の項目、21ページ以降ですが、若手研究者の育成に向けた取組の充実ということで、若手研究者の育成の必要性に関して、優秀な学生が大学での研究に進むことを躊躇するような事態を迎えているという状況を踏まえて、今後の方策についてこの章で述べてあります。
 22ページには、知的基盤社会を牽引する人材を育成するための大学院の充実、特に大学院生の支援という観点から、実質的給与型の経済的な支援を行い、より多くの優れた人材が大学院に進学し、研鑽する機会を確保することが必要であり、そのための大学院教育の改革などについてご指摘をいただいています。
 最後の23ページには、若手のキャリアパスの多様化に向けた取組、そのための大学での、研究組織での取組、さらには企業等との連携協力の必要性がここでも指摘され、「内向き志向」を解消した海外における研鑽機会を展開すべきだというご指摘をいただいているところです。
 最後の「おわりに」で、冒頭分科会長からご指摘いただいた視点、まとめをいただいているところです。

【野依主査】
 ありがとうございました。
 ただいまの2つの提言について、ご質問等ありますか。
 金澤先生からのご説明で、日本の展望の素案が出てまいりましたが、大変分別力のある、言葉を選んだご報告をいただきました。若い世代の意も酌んだ「日本の展望」にしていただきたいと思いますが、どのように若い方の意思を汲み上げていらっしゃるのでしょうか。

【金澤議員】
 大変大事なご指摘をいただきました。今回に関してはちょっと難しいかもしれませんが、実はタイトルに「2010」と付いているのはミソがありまして、これは6年ごとに改定していくつもりので、まずはこの2010年版を出します。その後にこれからの方々が、いろんな方式をとられると思いますが、若い方々のご意見を、先ほどし上げた学術団体の中で色々なアンケートをするなり、ご意見をいただくなりをして、それをまとめるという形になるだろうと思います。今回はちょっと時間が足りなかったのですが、承りました。ありがとうございます。

【野依主査】
 科学技術基本計画もこの基本計画特別委員会のメンバーだけでなくて、若い世代が何を考えているか、何を望んでいるかということをぜひ取り上げてほしいと事務局に伝えておりますので、アドバイスをいただければと思っております。

【大隅委員】
 比較的若い世代に属するかと思っておりますが、先般より事業仕分けがありまして、若い人の意識もこういったことに向いているのではないかと思います。そういった意味で、タイミング的には、この第4期科学技術基本計画を立てる、長期的な展望を立てるということは非常に重要であり、その中にぜひ若い人の意見を反映していただきたいと私自身も切に思っております。文部科学省でも、それから、内閣府の総合科学技術会議からも、パブコメ的な意見収集は既に行っていると思います。実際、若い人がそういったところにもどんどん意見を寄せているということも聞いて実感しておりますし、また、私自身もブログをやっておりまして、その中でコメントを募集しましたら、非常にたくさん、今朝10時の時点で130人程集まっていますので、後で担当の方にお渡ししたいと思っております。
 それで、こちらの日本学術会議と学術分科会でおまとめになりました科学技術基本計画に向けた意見のまとめでは、全てにわたって網羅されて、色々なことが書き込まれているのですが、一つぜひお考えいただきたいことは、日本の人たちというのは非常に真面目で、特に学術分野にいる方というのはより一層真面目な方が多くて、改革や何かを新しくする話になると、今あるところにさらに何かを加えていくという風に考えてしまいます。そうすると、無駄な事業の仕分けをしようという話がある時期に、さらに現場の研究者の負担が増えることになってしまいます。
 私自身、学術機関リポジトリに非常に近いところにおりますが、論文がオープンアクセスになっていくのは非常に大事ですし、また、国民がリテラシーを得るためには、学術論文が英語でどんどん出るだけではなく、一方で、現時点ではやはり日本語の色々なソース、学術成果について、一般のユーザーがアクセスできる形になっているべきだと非常に強く思います。
 ただ、その時に、例えば現場でどういうことをやっているかというと、科研費などをいただいたら、毎年その年度末に報告書を書きます。これは本当にありがたい研究費を税金からいただいているものですから、報告書を書くのは当然私たちの務めだと思っております。ただ、例えば文部科学省の科研費だったらその報告書を文部科学省の職員の方は読んでいただいているのかもしれませんが、それを国民が読める形にはなっていないと思います。こういった状況で、事業仕分けの会議に対して一般の方はどう言っているかというと、「科学未来館はもったいない」とか、「研究者は自分の好きなことをやっているのに、そんなものにお金をつける必要はない」などです。そういうご意見が実際に出てきてしまうのは、やはり我々がやっていることが一般の方々に見える形になってないからだと思います。
 例えば、極端な話、報告書はもう書かなくてもいいぐらいのことにしていただきたいと思います。その代わり、例えば論文を出したら、その論文の内容の抜粋をちゃんと日本語で学術機関リポジトリや、国立情報学研究所がやっているリサーチマップなどに全部載せることを義務化すれば、この研究者は一体どんなタイミングでどんなことをしてきたのかが全部分かる。どの研究費をいただいて、その結果はどうなったのか等をみんなが見えるような形にして、知の成果を共有していける、そのようなものをつくっていけたらいいのかなというようなことを考えました。
 現場の無駄な負担が増えないようにぜひお考えいただきたいと思います。

【野依主査】
 報告書の問題は、評価のところでは議論されていると思いますが、情報基盤の整備に関してはどのようになっているのでしょうか。

【柿田計画官】
 情報基盤の整備について、前回の委員会でご議論いただきまして、機関リポジトリの整備もかなり進んできているという現状のデータとともに、まだ道半ばという部分もあり、引き続き進めていく必要性についてご議論いただきました。また、研究者による研究成果や、研究の目的、あるいは意義、それらをきちんと社会・国民に説明するということについては後ほど、事務局からの説明資料の中でご議論いただこうと思っております。

【國井委員】
 度々同じことを申し上げるのは心苦しいのですが、学術分科会の資料3-1には、女性研究者をもっと育成すべきという観点の記述がありません。日本学術会議の資料にははっきりと入れていただいているのですが、学術分科会の資料にも、若手研究者の問題だけではなく、国連や色々な学協会からも度々指摘され、提言もある女性研究者の育成をやはり入れていただきたいと思いますが、それについてはどのようにお考えでしょうか。

【山脇振興企画課長】
 資料3-1の16ページの2番目のマルの中に「女性研究者や外国人研究者などの多様性が不可欠である」と、「そのような人材が能力を最大限に発揮できるような環境づくりを推進することが必要である」という指摘はしているところですが、重要性についてはさらなる検討が当然必要かと思っております。

【益田委員】
 資料3-1学術分科会の意見のまとめの23ページに、「国は学生や若手研究者の内向き志向を解消し、国際的な視野を持った研究者を育成するため、優秀な若手研究者に対し、海外での研鑽機会を確保し、海外における研究活動を積極的に展開するよう支援の充実に取り組むことが必要である。」とあります。また、今年の科学技術白書には、「内向き志向は、研究者のみならず学生にも見られている。日本人学生の海外留学の状況を見ると、平成11年ころまでは増加傾向にあったものの、近年は伸び悩んでいる。米国での科学工学系の博士号取得者の約4割が外国人であるが、その内訳をアジア諸国について見ると、我が国が200人規模で横ばい傾向であるのに対し、韓国、インド等は我が国の5倍以上、中国は15倍以上へと、その規模を拡大している。このように、我が国の研究者の海外への異動や派遣は低調であり、国際的な流動性の高まりの中で、我が国の研究者が国際的な研究者のネットワークから取り残されつつあることが懸念される。」とあります。現在、大学院の後期課程の学生に対する最も充実した経済的支援は、日本学術振興会の特別研究員-DCです。毎年新規に2,000名余りが採用されており、後期課程学生の最も優秀な6~7%がDCで支援されていることになります。プレステージも高いし、非常に良い制度で競争も激しいのですが、選考されるには日本の大学の大学院後期課程に在籍することという条件があります。そのためこの制度が、優秀な学生の内向き志向を助長している側面が強くあるように思います。学生の内向き志向を少しでも解消するためには、選考された学生は海外の大学院も可とするように、この制度を見直すのが妥当ではないかと思います。こういった既存の制度を見直すことも大事なことではないかと思います。
 先日、私が勤務する財団で、大学院後期課程の学生の1年間海外派遣を支援するプログラムの募集を行いました。応募者の数は多くありませんが、たまたまそのプログラムに応募してきた名古屋大学の優秀な学生がしばらくして駄目だという連絡がありました。学振特別研究員-DCだったのです。学振の特別研究員に採用されると、他からの支援は基本的に受けられないことになっています。このように学振の特別研究員制度は非常に制約があり、それに選考されてしまうと、海外に一定期間以上出ることも難しくなります。先ほど、有本副センター長のご報告にも「制度が研究活動に応じて動く」とありましたが、大事なことだと思います。DC制度も学生の内向き志向を少しでも解消する方向に動かしていただくことが重要だと思います。

【金澤議員】
 簡単にお願いを一つです。
 学術分科会の資料3-1の2ページの下から3分の1あたりに、OECD云々の中にフラスカチ・マニュアルの話が出てまいります。この定義は大変大事だと私たちも考えております。実は、お気づきの方あるかもしれませんが、応用研究の定義が、原文と違っております。応用研究は、総務省の定義では、「基礎研究から出た成果を利用して」と書いてあります。確かそういう文章だったと思いますが、フラスカチ・マニュアルの原文はそうではないのです。そこは非常に大事なところなので正確にしておいていただきたいと思います。

【永井委員】
 私も読んでいて気がつきました。このストークスさんの基礎研究には、キュリオシティ・ドリブンサイエンスとユースインスパイヤードサイエンスとなっています。つまり、ジェースム・ワットの蒸気機関からいかに熱力学をつくるかというような、応用からインスピレーションを得て始まるサイエンスもあるという話です。そういう意味では、基礎と応用はきれいに二極分化できるわけではないということなのですね。有本副センター長の資料では二次元になっていて、あらゆる研究は基礎的な面と応用的な面が含まれているということです。それに対して、OECDの定義が二極分化的に書いてあるのは、これはいずれ齟齬を来してくるのではないかということを懸念するのですが、その辺の整理が必要ではないかと思います。

【有本副センター長】
 率直にいいますと、JSTは行政的には、あるいはシステムの設計の時にはどうしてもミッション・オリエンティッド・ベーシック・リサーチと言わざるを得ないのですが、実際には、キュリオシティ・ドリブンのこともやられていることは、現場では当たり前の話です。NSFのPD、POに聞いてみても、そこら辺はやはり、非常に丁寧に見ていて、NSFでもキュリオシティ・ドリブンと言いながら、かなりアプライの部分もやっているそうです。採択する時には、キュリオシティ・ドリブンで採りながら、将来フロントを切り開くところ、あるいは価値に向かっていくところについては、そのPD、POがかなり意識的に見ているようです。日本ではなかなかそこは難しいと思いますが、それはPD、POの在り方の違いに通じるところがあるのではないかと思います。
 それから、行政的にファンディングシステムを設計する際のポジショニングは、どうしてもレイヤーを抽象化しますから、そこは少し、慎重に分けて考えていただいたほうがいいのではないかという気がします。

【野依主査】
 基礎と応用の定義の問題はどのセクターで定義するかということでも随分違ってくると思います。今言われたことは、アカデミアの中での基礎と応用の話ですが、産業界も含めて考えると、「アカデミアでやっているのは応用ではなく基礎である」ということもあると思います。社会全体としてどうすれば科学技術が進むかということを考える必要があります。

【安西委員】
 前から申し上げていることですが、野依主査が若い人の意を酌むようにと仰っしゃったので、もう一度申し上げますが、博士課程、あるいは院生を色々な中で育てていった時に、その数よりも大学におけるポジションの方が少ないということは明らかなので、やはりそこのところをがどのようにこの基本計画等々でサポートしていくのかということが、若手にとって最大の問題だと思います。
 この意見のまとめを拝見しますと、後ろのほうにキャリアパスの多様化が必要だと書いてあります。「企業をはじめとする社会の多様な場で高度な専門職業人として活躍できるよう企業等との積極的な協力も必要である」と文章では書いてありますが、では、本当に何をするのでしょうか。この話は色々なところで出ていると思いますが、実際の解決策が語られたことはないのではないかと思います。そこはやはり若手研究者にとって一番切実な問題だと思いますので、何とか検討していただければと思います。

【野依主査】
 安西委員が先日、「雇用につながる教育をきちんと考えることが大事である」、と日経新聞に書いておられたとおりだと考えます。
 それでは、「国家基幹技術の今後の在り方」について、事務局から説明をお願いします。

【松浦宇宙利用推進室長】
 それでは、資料に基づいてご説明いたします。宇宙利用推進室の松浦です。研究開発局が国家基幹技術に大きく関連しているということで、研究開発局からプレゼンテーションいたしますが、決してこれは研究開発局に閉じたものではないということをまず述べさせていただきたいと思います。
 国家基幹技術というのは、ご案内のとおり、第3期科学技術基本計画における戦略重点科学技術の選定の3つの視点のうちの一つとして、国家の総合的な安全保障の観点を含んだものとして導入されております。安全保障といっても軍事的な意味合いだけではなく、国の競争力や、気候変動等、現在、国際的な枠組みで話し合われておりますが、その中での外交力や、発言力を蓄えるという意味でかなり広い概念と捉えております。第4期科学技術基本計画の検討に当たっても、そのような広義の安全保障の観点から科学技術を取り巻く状況を分析して、国家基幹技術の今後の在り方を検討いたしました。本資料の取りまとめに当たりましては、こういった分野に明るい専門家の意見も参考にしております。
 1ページ目をご覧ください。まず、科学技術政策における広義の安全保障というものを、取り巻く状況について整理しております。近年の政策動向ですが、まず、国力の源泉である科学技術というものは、世界の中で日本が直面する様々な課題に対して、合理的な解決策を提示するという役割が期待されておりまして、広い意味での国の安全保障と密接な関わりを有しております。科学技術政策の中において、安全保障への貢献の観点が明確に意識されたのは、第3期科学技術基本計画からと認識しております。その第3期科学技術基本計画の策定以降は、さらに宇宙や海洋の分野において、基本法や基本計画が定められ、その中で広義の安全保障の重要性がさらに具体的に書かれるようになったという状況です。
 日本にとって今後の国家基幹技術の方向性を考える上で、現在、日本の置かれている状況を改めて整理しますと、日本は、国土が狭く、天然資源に乏しく、世界の中でも少子・高齢化で進んでいるといった状況で、諸外国と比較するとかなり特異な状況にあると思っております。さらに、中国、インドといった新興国の台頭があり、またグローバル化が非常に進展する中で、これまで築いてきた日本の国際的地位も徐々に揺らいできていると思っております。こういった状況の中で、日本の経済社会の発展・繁栄を持続するためには、科学技術が国力、成長力を維持し続ける日本の存立基盤の生命線と思っております。科学技術を振興することで、豊かで安全・安心な生活を実現するとともに、国際的な存在感を高め、国民の誇りや自信を取り戻し、さらに高めるということができるのではないかと考えております。
 2ページ目です。現在、人類、あるいは日本の生存を左右するどのような問題が生じているかについてご説明いたします。まず、1つ目のポツですが、温室効果ガスの増加に起因して、大きな台風、あるいは集中豪雨といった激甚災害が色々と起こっているのはご承知のことと思います。このように気候変動に伴う影響というのは顕在化しているのではないかと考えられます。2つ目に、中国、インドといったような新興国の台頭により、資源・エネルギー獲得競争も激化しております。3つ目に、新型インフルエンザのパンデミックなど、新興感染症等の脅威も顕在化してきております。このような状況の下で、安全保障の概念を少し細分化してみると、気候変動に伴って、個人、社会・経済への脅威というものが実際に増している状況です。また、これらは我が国にとっての資源や、エネルギーの安全保障、あるいは国民の生活、個人の健康に対する脅威という意味での生活・健康安全保障といったものに細分化されるのではないかと考えております。これらに対処していく中で、日本として、技術力で国際的優位性を確保し、主導権を取る力や発言力といった外交力を強化し、かつ、人類の持続的な発展と国際秩序の安定化に寄与していくことが求められております。
 これらを支えるものとして、技術基盤の確立によって、他国に依存しない自在性をきちんと確保する、あるいは日本のものづくり等の知的財産、あるいは職人が持っている暗黙知をちゃんと蓄積・保護するといった、知の安全保障が広義の安全保障を支える基盤として必要ではないかと思っております。
 3ページ目は、国家基幹技術の現状と今後の在り方をどのようにしていくかについてです。枠で囲っておりますのは、先ほど申しましたとおり、戦略重点科学技術の中で国家基幹技術が導入されたという経緯を書いております。現在、具体的に海洋地球観測探査システム等の5つが選定されております。その詳しい状況については4ページ目に書いております。それぞれ現在進んでおり、仕分け等でも色々厳しいご指摘もありましたが、今回、科学技術政策の中で第4期科学技術基本計画を考えるに当たりましては、その戦略重点科学技術の今後の在り方と連動して考えることが必要ではないかと思います。戦略重点科学技術については、対象が個別技術に限定されて、必ずしもニーズ対応の総合的な科学技術になっていないじゃないかという指摘があると認識しております。そのため、我々としては、戦略重点科学技術の見直しに則して国家基幹技術も再定義していく必要があると考えております。
 5ページ目は、どういった視点で国家基幹技術を再定義していくかということについてです。まず、国の意思として重要な政策的な位置づけを与え、きちんと人材、施設やモノ、そして、資金を重点投資して、かつ、一貫した方針のもとに強力に推進していくということがまず必要と思います。かつ、重要政策課題というものに対してきちんと目標を設定し、課題解決に向けた推進方策をきちんと明確化していくというものも同時に必要ではないかと考えております。目標設定、あるいは推進方策の明確化というその具体例は枠で囲ってあるようなものと考えております。これによって、個別技術に対してのアプローチ方法を定義するのではなく、重要政策課題に対して技術を含む対処方法を定義し、推進方策において特別な要請(配慮)を行うということに再定義して転換していく必要があるのではないかというふうに考えております。
 6ページ目は、具体的にどういった再定義をしていくかという、一つの提案です。まず、国家戦略基幹技術という、これは(仮称)ですけれども、再定義した言葉を考えます。国家戦略基幹技術の概念は、まず、国益につながる国の競争力や、外交力の確保・強化等々の必要性に由来して、そういった課題解決の成果が中長期にわたって国の存立基盤をなしていく。それがさらに国際的優位性の確保にもつながり、ひいては、地球規模問題の解決にも貢献できる。これは広義の安全保障になると思っています。その成果の還元・蓄積先を、まず、我が国、国民を第一義に考えると思っています。決して国だけに閉じるというわけではなく、まず、国にきちんと残るものと定義します。かつ、こういったものを国自ら長期的な視点に立ちまして、継続的に取り組んでいく。すなわち、研究開発から製造・運用に至るまでの成果やノウハウの蓄積というものが、長期間かつ広分野にわたって集積していきます。また、それをきちんと集積していくことで初めて成果が出ていくものではないかと思っています。
 では、それを実際にどうやって推進していくかという推進方策ですが、その2番目に言いましたとおり、成果の還元・蓄積というのは、まず、国・国民を第一義にします。そのために、国の負託を受けた中核的実施主体を選定する、あるいは実施計画を策定、国際協力や、貢献の在り方、知的財産等の保全の在り方、そして、その人材の確保、育成といった方策等にわたって、これは、プロジェクトのライフサイクルとか、技術体系全体についてきちんとマネジメントしていくことが必要になると思います。かつ、そういったものを国の意思としてどう担保していくかという意味で、きちんと中長期的な戦略、あるいは必要な法整備など、国による特別な支援というものをきちんと施していくというものが必要ではないかと考えております。
 では、具体的にどのようなものを、この下でやっていくかということについては、まだ検討中なので、今日はお手元には配付しておりませんが、例えば地震防災分野ですと、地震発生とか、地震動予測に基づく事前対策と、実際、国とか、地域の連携、あるいは産・学・官の連携によって地域の防災力向上を目指したまちづくりとか、そういったものを地方公共団体とか、大学とか、企業とか、そういった多くのプレイヤーがあるものをきちんと有機的にまとめてやっていくべきものがあります。あるいは海洋分野ですと、海洋資源の探査を衛星や、船舶、探査機等を使ってやっていきます。それらは、国ですと、文科省だけではなくて、経済産業省も含めて、あるいは大学ですと、海洋研究、大陸棚等を色々やっている大学の力、あるいは実際に掘削できる民間企業等、それらの力をきちんと結集して、それをコーディネート、インテグレーションしていくというものを目指すといったものではないかと思います。同じようにエネルギー、原子力、あるいは宇宙についても考えられるのではないかと思います。感染症の例も先ほど取り上げていましたけれども、ライフサイエンス分野等でも、このように取り組むべきものはあるのではないかと考えておりまして、こういった概念をきっちり整理していくことが第一に必要ではないかと思いますが、同時に具体的に進めていくものも現在検討を進めている状況です。
 以上です。

【野依主査】
 ありがとうございました。
 次に、本日の審議事項である「科学技術・イノベーションの研究開発戦略」について、事務局から説明をお願いします。

【柿田計画官】
 資料5-1、5-2及び5-3に基づいてご説明します。
 内容は、今後の科学技術政策における研究開発の戦略的重点化の考え方が主なものとなります。
 まず、資料5-1の1ページをご覧下さい。基礎科学力の強化に関する現状及び課題です。基礎科学は、基礎科学力強化委員会のご提言にもありましたように、主として人類の英知の創出と蓄積、さらに、イノベーションの創出に向け、科学技術の源として重要な役割を担うものです。このうち基礎研究については、全体の研究費における割合を見ますと、欧米等に比べて我が国は少なく、また、近年では減少傾向にある。また、基礎科学力の強化の主な担い手である大学においても、運営費交付金等の基盤的経費が減少続きで、また、その確保が課題となっております。競争的資金である科研費についても、予算の伸びが鈍化する中で、研究者からの申請件数が増え、結果として採択率が低くなり、これらにより基礎科学を支える十分な研究支援ができていない傾向にあります。一方で、海外主要国においては、基礎研究を重視し、投資額を明示して取り組みを強化しております。
 2ページは、研究開発の重点化についてです。第2期科学技術基本計画以降、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテク・材料等の分野を対象とした投資の重点化が図られてまいりました。ここで第3期科学技術基本計画における政策目標の体系化と重点化の考え方を簡単にご説明します。
 資料5-2の16ページをご覧下さい。第3期科学技術基本計画における政策目標の体系があります。表の左側に「人類の英知を生む」等の3つの理念があります。この理念のもとで研究開発を進めるに当たり、政策目標の体系化が行われています。これにより科学技術で目指すべき方向、成果が明らかにされております。一方、これら政策目標の実現に向けて、実際の研究開発の推進においては、推進のための戦略が必要となりますが、これが重点4分野及び推進4分野、合計8分野それぞれの分野別推進戦略という形で策定され、分野内の重点化を図り、集中投資を行う科学技術の絞り込みがなされ、結果、合計62の戦略重点科学技術を選定し、基本計画期間中の重点投資の対象としております。
 17ページが科学技術の絞り込みの考え方です。様々な観点から絞り込んで、結果的に戦略重点科学技術として62の科学技術を選定し、重点投資の対象としております。また、18ページの分野別推進戦略において、分野ごとの戦略重点科学技術とともに、研究開発課題が明示されているということの概要を示しております。
 資料5-1の2ページに戻りますが、中ほどの総合科学技術会議による第3期科学技術基本計画のフォローアップにおいて、選択と集中の必要性や分野の設定の妥当性は評価しつつも、上位に位置する政策目標と個々の研究課題等との関係が不明確であるとの指摘とともに、今後は日本の将来像を見据えて解決すべき大きな課題を設定し、それを解決するための戦略の策定が重要と指摘されております。つまり、研究分野ごとの縦割りの戦略ではなく、大きな課題という単位での横串を通すような戦略が求められると考えられます。また、海外主要国においても、大きな社会的課題や分野間の融合領域への取り組みを重視する傾向にあります。研究開発投資全体に関しては、政府研究開発投資の中核である科学技術振興費は、これまで着実に増加が図られていましたが、平成22年度予算においては減少することが見込まれております。このような中、海外においては投資を大幅に強化している状況にあり、今後の科学技術政策において、投資の在り方について危機感を持って検討しなければならない状況にあります。
 以上の状況認識のもとで、3ページの今後の研究開発戦略の在り方に関する基本的視点についてご説明します。今後の我が国の科学技術の推進を図る上で、国として進める研究開発の対象や意義を明確にし、これを戦略的に進めることが必要です。研究開発には2つのアプローチ、すなわち、マル1の知の創造から始まり、それを発展させて新たな価値、知的・文化的価値、あるいは社会的・経済的価値の創造を目指すもので、これは、基礎科学を支える研究者の自由な発想に基づく研究等ですが、これとマル2の達成すべき課題を設定し、その実現に向けて関連する科学技術を総合的に推進する、基礎から応用開発まで一貫して推進する研究開発があります。これら双方の位置づけを明確にした上で、車の両輪として推進していくことが必要であると考えられます。
 4ページです。科学技術基本計画は、科学技術基本法に基づき策定されておりますが、この法律における科学技術の対象からは、人文科学のみに係るものが除かれています。しかし、先ほどのマル2のアプローチにもあるように、深刻かつ複雑化する課題の解決に向けては、人文科学等の視点が重要です。また、学術振興の重要性も踏まえ、第4期科学技術基本計画においては、科学技術について自然科学のみならず、総合的な取り組みが必要であると考えられます。以上の考え方をもとに、今後の研究開発戦略においては、基礎科学力の強化に向けた研究開発及び重要政策課題に対応した研究開発の戦略的推進、この2点が必要であると考えられます。
 5ページ以降にそれぞれの内容を記述しておりますが、ポイントについて絵を用いてご説明いたします。
 18ページの参考2です。ここに研究開発の2つアプローチの概念を示しております。絵の下側が研究開発の上流、シーズで、絵の上側が研究開発の下流、出口、あるいはニーズです。黄色をつけた(1)は、上流、あるいはシーズ発の基礎科学の強化に向けた研究です。これは自由発想研究やそこで得られた優れたシーズをイノベーションによる経済的、社会的価値の創造に向けて行う目的志向の基礎研究や基盤研究が該当します。これについては、大学への基盤的経費や科研費等の一層の充実とともに、これを担う研究者は新たな知の創出という社会的使命を担うという認識に立って期待される成果、あるいは研究の意義等について、社会に対する情報発信等の取り組みを促進していくことが求められます。
 もう一つのアプローチは青色をつけた(2)重要政策課題に対応した研究開発の推進です。これは、第3期科学技術基本計画まで実施されてきた分野ごとの縦割りによる研究開発の重点化の考え方を改め、17ページに書いてある目指すべき国の姿に対応する形で重要政策課題(仮称)を設定する、言わば出口、ニーズ発のアプローチです。ある重要政策課題への対応に必要となる研究開発領域、また、研究開発課題を分野を超えて導き出し、これらの研究開発を重要政策課題の達成に向けて総合的に推進していく、分野をまたいだ課題対応という形で研究開発の重点化を図るものです。
 この重要政策課題等のイメージを資料5-3に示しております。これは、本日も机上資料としてお配りしておりますが、科学技術・学術審議会のもとに分野別の各委員会がありますが、そちらにおける検討の結果等をもとに事務局で整理した、あくまでも例示です。この資料5-3の1ページでは、目指すべき国の姿の一つである、地球規模課題の解決の先導に関して、例えば地球温暖化対策という重要政策課題を掲げ、その達成に向けて重点的な研究開発領域、この例ではマル1からマル4の4つを設定し、さらに、実施が不可欠な個別の研究開発課題を設定し、基礎から出口までの時間軸の中でこれらを体系的に位置づけ、地球温暖化対策についてのパッケージとして総合的に研究開発を推進するという考え方です。実際にはこのような単位で国として重点的に取り組むべき重要政策課題を、一つの目安として例えば10数件程度設定していくことが考えられます。このような形で研究開発を戦略的に推進するに当たっては、推進戦略の策定と研究開発のマネジメントが重要になります。
 資料5-1の19ページです。ここにイノベーション共創プラットフォーム等の概念図があります。これが先ほどの、例えば地球温暖化対策を重要政策課題と位置づけた際に、その課題の達成に向けて戦略を策定するためのプラットフォームです。このプラットフォームには、各府省の政策担当者の他、大学、研究法人、民間企業等から、この研究開発に関わる関係者が参画し、必要となる重点研究開発領域、課題、また、推進体制、達成目標等について検討する。そして、検討結果は、総合科学技術会議等において策定していくことを考えております。また、このプラットフォームは戦略の策定段階のみならず、研究開発の実施段階にも機能することが必要だと考えます。特に実施段階においては、一番下の赤い枠で囲っているように、府省横断的に、また、多数の大学、研究法人の参画が不可欠になりますので、これらを総合調整しつつ、全体マネジメントを行う戦略マネジャーの機能が非常に重要になると考えます。
 さらに、18ページですが、このような考え方で研究開発を推進する中で、中央に濃い青色の部分がありますが、科学技術・イノベーション統合プログラムとして、特に新たな世界市場の獲得等を目指す研究開発プロジェクトを、先ほどの資料5-3に示すような幾つかの領域、あるいは課題の中から例えば3~5件位厳選して集中的な取り組みを行います。とりわけこのようなプログラムは、研究開発成果の事業化等を通じたイノベーション創出を目指すという観点から、成果を出口に橋渡しする役割を担う人の存在が不可欠だと考えます。そのような方をプログラムマネジャーとして参画を求め、ビジネスモデルの検討を含む社会実装の取り組みを特に重視するということが必要になると考えます。
 もう一つが国家戦略基幹技術プロジェクトです。先ほど説明のありました国家基幹技術の趣旨・観点から、先ほどと同じように、重点研究開発領域等から対象となるものを厳選して推進するものです。また、以上のような重要政策課題への対応を図るに当たっては、手段として、分野の壁を乗り越え、異分野融合型の研究開発が必要ですし、また、異分野の研究者が一つの共通の課題に向かって、戦略の策定から研究開発の実施に取り組んでいくという中において、新興分野の研究開発も促進されるという視点をもって進めるということが重要であると考えます。

【野依主査】
 ありがとうございました。
 それでは、以上の説明を踏まえて議論に入りたいと思います。

【元村委員】
 私の理解力が足りないのか、よく理解できてないのですが、一つ質問があります。日本は、基礎研究とか、政府投資の研究費の割合が低い。一方で、各国はどんどん増やしていて、そこは日本も頑張らなくてはという資料がありましたが、では、海外はこんな不景気の中でどこからお金を捻出しているのですか。

【柿田計画官】
 海外も、国民の税金や、あるいは企業も含めて、国を挙げて科学技術の投資をさまざまな原資を元に投資しているということだと思います。

【元村委員】
 では、日本もそれ並みに増やさなければいけないということを説得するためのプラットフォームなりシステムが今ご説明いただいたものですよね。直感的に言うと、これはすごく複雑で、もっとシンプルにしないと分からない。政治家も分からないし、国民はもっと分からないと思います。
 それから、国家戦略があまりにも前に出過ぎていると思います。基礎研究を振興しようというところをきちんと謳って下さったのはありがたいのですが、高尚で美しい概念というのが全く見えて来ないです。強い国をつくるというのは分かりますが、これだけだとあまりにも筋肉質で、国民は引いてしまうのではないかと思います。つまり、何のために科学技術をちゃんと振興していかなくてはいけないのか、ということをもう少しシンプルに謳った上で、その上で、日本のためにもなるよ、という議論の展開にした方が良いと思います。
 事業仕分けで印象的だったのは、例えばスーパーコンピューターなどでも、その意義がきちんと理解されないまま議論のテーブルに上がって、議論では、「世界一のスパコンをつくることが自己目的化している」とさえ批判されましたよね。とても残念なことだと思います。つまり、世界一のスパコンをつくらないと意味がないのにもかかわらず、そこが伝わっていない。「つくることが目的なのでしょう、あなたたち」と、科学技術コミュニティーは言われているわけです。つまり、そのように見られがちなのだということを私たちは知る必要があると思います。
 ですから、社会に迎合するというのではないのですが、どんな国をつくりたいのか、そのために科学技術をどんなふうに振興しなくてはいけないのかという、憲法でいうと前文に当たるものをもう少し具体的に示していただきたいと思います。国民に近い立場から言わせていただきました。

【柿田計画官】
 本日は、研究開発投資の戦略性をいかに持たせるかという議論です。まさに世界が競争している中で、日本もその競争に打ち勝っていく必要がある。そのために科学技術政策としてどのような戦略性を持つべきかというところを資料で記述し、またご説明させていただきました。その意味で、競争、戦略性という論調になっております。ここの部分だけが今後の科学技術政策を表すということでは決してないわけでして、この基本計画特別委員会でも、特に第1回、第2回の会議等で目指すべき国の姿、あるいはその実現のために科学技術政策がどうあるべきか、社会・国民との関わりはどうあるべきかという議論がこれまで、別途重ねられてきたところです。
 したがいまして、本日の議論のみならず、これまでの議論を踏まえ、目指すべき国の姿と、また、それを実現するためのこれからの科学技術政策について明確に示していくことが必要になると思います。この委員会では、間もなく取りまとめをお願いすることになりますが、そこのところは大変大事なことであると思います。

【立川委員】
 元村委員とは意見が違うと思います。まず、第3期科学技術基本計画まではこの新しい考え方と違って、重点分野を8つ作るという縦割りだった感じがします。それに対して、今回のとりまとめで打ち出されたのは、基礎科学力の強化と重点化じゃないかと思います。この方が分かりやすいと私は思います。ただ、基礎科学力強化の方については具体性が明快でないという感じがしるので、これをどうするかというのが一つの課題だと思います
 もう一つの重点化については、名前がいいかどうかは別として、国民にアピールするためのいい方法だと思います。今までは個別にやり過ぎていて、国民にとって分かりにくかったわけです。先ほどの課題の例にあった、例えば気候変動問題を統合的にやろうとするなら、関係するところは他にも多数あるわけで、それらを横にまとめて融合して、プロジェクトにしてやっていくのがいいかなと思います。そういう意味では、第4期科学技術基本計画では、従来のパターンから変えて、この新しい発想で重点化した国家基幹技術を立てて、これで国民にアピールしたらいいかと思います。

【野依主査】
 ありがとうございます。今までは「科学」と「技術」だったわけですが、これに「イノベーション」が加わったということが、今までと非常に大きく違う点だと思います。イノベーションは、社会的あるいは経済的な価値につながるものですが、それを出すためには、有本副センター長が仰ったように、課題解決型の研究をやらないといけないということです。それを戦略的に進めるために、計画官が大変難しいスキームを説明したと私は理解しております。

【東委員】
 次世代スーパーコンピューターを例に挙げると、あと3年後から5年後、コンピューターがどのくらいの性能であってほしいかという問題になります。それは必ずしもスパコンという箱物で、そこにすごいソフトが詰まっているというのはもう時代遅れではないかと思います。一方で、グーグルが約10年前から始めたクラウドコンピューティングと言われるシステムがあります。使ってないパソコンをたくさん並列して使うと、それで相当な計算量をこなすことができる、ということをまずやりました。その次にパソコンをサーバーに置きかえて、性能をどんどん上げていきました。その方向でのコンピューティングも考える必要があります。数年前からIBMが主導して開発しているスパコン、世界のベストテンの性能指数では、アメリカが大半で日本が一つという状況です。そういう状況の中で技術がどんどん変わっていくことを認識しなければいけない。いつもこの計画の頭に付いてくる「次世代」という言葉に逃げがあるのですよ。つまり、新しい技術はどのように流れているかということを完全に読み取らないといけません。どうしてスーパーコンピューターが必要なのか、このコンピューターを使えば地球の色々な気象変動、あるいは地震の予知につながるのか、ということがなかなか世の中には分かりにくいのです。そのため「次世代」という言葉であいまいにすると、「またスパコンか」というイメージを与えているのではないかと、それが一つの感想です。
 それから、再三ここで申し上げているのですが、イノベーションは、基礎研究をやっていれば自然発生的にある確率で出てくるというものではない、ということははっきりと認識する必要があります。イノベーションがなぜ必要なのかというと、雇用創出のためなのです。新しい産業をつくって、雇用を創出して、経済の指標を上げる。それがイノベーションの最も大きな役割です。多くの場合はイノベーションというのはコンセプト、構想がまずあって、そして、それについて必要な技術を集めてきます。それは別に新しい技術でなくてもよくて、古い技術ももってくればいい。立川委員がNTTドコモの社長をされていた時に、携帯電話とインターネットをつないだのはNTTドコモですね。それによってイノベーションが爆発的に起きたのです。携帯メールを発端にして、「もしもし電話」であったものが携帯電話で何でもできるようになりました。そのきっかけをつくったのです。また、そのコンセプトは文系の方が考えたものです。だから、斬新なものばかりを寄せ集めて構成されるのが必ずしもイノベーションではないということは再認識していただきたいと思います。

【野間口主査代理】
 このまとめ方ですが、今回は大変メリハリがきいた形になっている、前進したなという気がします。基礎研究の重要性を述べた上で、重点分野、重点課題が最終的には見えていくのだろうと思います。
 誠にグレードの低い問題、話から始めますと、基礎研究、基礎科学力推進というところで国立大学法人については運営費交付金や施設整備補助金の拡充と書いてありますが、私や野依主査がいる公的研究機関については、7ページで「財政措置を拡充する」としか出ていませんが、事情は一緒です。だから、このように分けて表現するとよくないのではないかと思います。最後の方で、(1)と(2)、基礎研究とトップダウン的なアプローチのところは分けて記述してありますが、成果をどういうふうに出すのかと、これからが言いたいところですが、新しいものをつくって世界に出し、それで日本の産業競争力や社会的な競争力を上げるという時代は、私は終わりつつあるのではないかと思います。むしろ、新しい仕組み、社会システムを提案して世界に広げていく、そういう形で貢献する時代ではないかなと思います。
 そのために、公的研究機関というのはまた新たな役割を持つ時代です。単に競争的資金だけで賄えというのではなく、国・社会の意思として、そういうのを頑張る役割を持っていると思います。だから、ここのところは、そのような事情も配慮した形にしてもらいたいと思います。

【伊地知委員】
 関連することで3点申し上げたいと思います。
 まず、1点目ですが、(参考2)(資料5-1 p. 18「(参考2)科学技術・イノベーションの研究開発戦略に関する概念図」)にあるように、シーズ側とニーズ側とそれぞれから伸びていくような非常にシンプルな形でつくられており、これは妥当ではないかなと私としては思っております。
 それに関連して、冒頭、元村委員が国民に分かりやすくすべきである、あるいは諸外国でこの状況下でどうして科学技術イノベーション関係の投資をしているのかといったご質問がありましたが、諸外国では、こういった科学技術イノベーションのための投資というのは、例えば国民の繁栄、国としての繁栄、あるいは国民の生活の質の維持・向上、それから、持続可能な社会の実現といったことのための投資として位置づけられているということだろうと思います。その点から言いますと、そのような国としての大きな目標からブレークダウンしていって、一体どんなイノベーション、あるいはどんな研究が必要なのかということが出てきます。それから、他方に基礎研究があります。やはり将来状況が変わって、新たな目標が出てくる可能性がありますから、先端的な研究を進めて、多様な芽をつくっていくことが必要だということです。大体どこの国でもそのような進め方がされているのではないかと思います。
 2点目ですが、基礎研究については、基礎科学力、あるいは基礎研究の推進と表現されています。その中に包含されるかもしれませんが、研究そのものだけでなく、その研究に付随して新たな知識を生み出す基盤が維持・構築されていくことも重要であると思います。それは人の場合もあるでしょうし、機関や制度等もあるでしょう。それから、インフラストラクチャーもあるでしょう。そういった、研究の現場だけにとどまらない、国としての新しい価値を生み出す力の源泉がそこで生み出されるといったことをかなり重要な点として考えるといいのではないかと思います。
 それから、3点目ですが、(資料に)よく「課題」という言葉が出てきます。課題という言葉を英語にするとissues、challenges等、いろいろあると思います。この言葉が多少曖昧性を含んでいて、目的-手段関係でいった場合に、目的を表す場合、手段を表す場合等、多分混同されて使われているところがあると思います。そういったことを避けるためにも、もし可能であれば、例えば政策課題と掲げられていますが、例えば政策目的(ゴールズ)、あるいは政策目標(オブジェクティブズ)というように明確に意識しながら構築していただくとよいのではないかと思います。

【野依主査】
 ありがとうございます。課題の問題はどのようにするかというのはなかなか難しく、解決できるものと、そうでないものと、色々あります。例えば脳科学について考えると、これもある意味で課題かもしれませんが、「人間とは何か」というような問いには、なかなか答えは出ないと思います。ですから、非常に基礎的な分野での課題と、社会における課題は同じ「課題」でも違うと思います。

【大隅委員】
 まず、事務局に質問ですが、資料5-1の最後のプラットフォームの概念図ですが、真ん中に非常に大事な役割を果たすであろう人として、戦略マネジャー(仮称)というのがあります。これは、先ほど言われた課題ごとに置くことを想定しているのですか。

【柿田計画官】
 そうです。資料5-3で言いますと、重要政策課題(仮称)の例として地球温暖化対策があります。その重要政策課題の下に領域があり、さらに幾つかの研究課題があるという一つのパッケージになっていますが、そのパッケージ毎に戦略マネジャーを置くことを想定しています。

【大隅委員】
 具体的なことはとりあえず置くとして、これを担う人材は一体どういう方が想定されるのでしょうか。

【柿田計画官】
 一つのイメージですが、考え得ることとしては、実際に研究開発、あるいはプロジェクトをリードされる方の中の代表的な方になると思います。

【大隅委員】
 研究者という意味ですか。

【柿田計画官】
 はい。

【大隅委員】
 なるほど。それにさらにその人だけでは足りないので、支援体制をつくるということですね。

【柿田計画官】
 はい。

【大隅委員】
 そうしますと、プロジェクトの期間だけ雇われるという形の雇用がここでまた出てくるということですか。

【柿田計画官】
 本日の議論ですべて詳細設計までできるとは考えませんが、現時点で、本日提案している検討の内容としては、この戦略マネジャーは、先ほど申しましたように、このプロジェクトに関わる研究者の代表者が適任ではないかと思います。その方に総合科学技術会議等に設置されるプラットフォームについていただくことを考えています。このプラットフォームでは、大学、研究法人、民間企業等も含めて、特に省庁を横断した研究開発ということになりますので、府省の連携、調整という機能が非常に重要になります。その辺を支える人という意味で、例えばイノベーション共創プラットフォームが置かれる内閣府等の事務局体制の中から、支援体制を構築するというようなことが一つあり得るかと考えます。

【大隅委員】
 分かりました。ぜひそういったところの方のキャリアパスというのも考えていただければと思います。例えばポスドクの方とか、そういった方々の働く雇用先ということもあるかなと思います。
 もう一つなのですが、資料5-2の12ページ、アウトリーチ活動の例というのが出ています。科研費補助金や科学振興調整費等においてアウトリーチ活動を行っていると書かれています。この中の「科研費NEWS」ですが、これは実際にはどこに配られていますか。

【山口学術研究助成課長】
 学術研究助成課長でございます。主に大学等の研究機関に配られております。

【大隅委員】
 大学に配ってアウトリーチ活動になるのでしょうか。

【山口学術研究助成課長】
 それに加えて一般の方にもできる限り配るようにはしております。最小限、研究機関には行っております。

【大隅委員】
 色々な実際に研究している人たちの成果や姿というのが市民や国民に伝わっていかないというのは、やはりその仕組み、仕掛けのところに大きな問題があるのではないかと思いますので、次期科学技術基本計画の中では、IT等も活用した形で、どうやったら国民に届くのかということに関して作戦を考えていただきたいなということを考えました。

【山口学術研究助成課長】
 先ほどのお話がありました成果の公開の件について、一つ追加でご説明させていただきたいと思います。以前、科研費等については、報告書を国会図書館に納本していただくという形でしたが、やはりそれだと国民の目に全く触れないという可能性もありますので、昨年度(平成20年度)の終わった段階から、研究成果の報告について数ページの「研究成果の報告」というものを、あらゆる科研費をもらった人全員に出していただいて、それを情報系のデータベースに載せて、国民の誰でもがそれをご覧いただけるという形にしようということで今やっております。
 それから、もう一つ、課題として持っておりますのは、例えば科研費の中身、ニュースだけではなく、ホームページも改善していかないといけないと考えています。NSF等を見ていますと非常に分かりやすい形になっていますので、こういったことも参考にしていかないといけないと思っております。

【大隅委員】
 そうですね。やはり研究者も、科研費の報告書といいますと、非常に専門的な言葉を散りばめた難しいものしか書いていません。少なくとも私はそうでした。ですから、それは誰に対してそれを報告するのかを考えたときの書き方というのは、今後変えていかないといけないのではないかと思います。

【門永委員】
 私も、この今回のまとめは非常に複雑なものを分かりやすくまとめていただいたと思って評価しております。
 ここで色々と提言されている話の縮小版が企業の研究所にもあります。自由研究からくるマル1と、目的のほうから戻してくるマル2ですね。それをどういうふうに共存させるかということに苦労しているのですが、人という観点から見てみると、2つポイントがあります。一つ目に企業で苦労するのは、それぞれの研究者にいかにしてタコつぼから出てもらうかということです。コンフォートゾーンから出て、互いに分野の違う人たち同志が色々な話をして、その中から次のステップに進むということをどのようにやってもらうかです。やはり共通プラットフォームとか、オープン化とか、概念で言ってもなかなか人間動かないので、そのようにお互いに交わることに対してインセンティブを作って、これをやることはいいことなのだという方向にもっていくことが必要です。
 例えば、この資料5-3の地球温暖化対策です。縦割りではなく、横でくくったもので進めていくということをやっていくのは、例えば地球温暖化の中だけかもしれませんが、この中にいるそれぞれの基礎的な研究をしている人たちは、何らかの形でそのオープンプラットフォームに乗っかって一緒にやっていこうというインセンティブがつくと思いますので、これは非常にいいのではないかなと思います。
 それから、二つ目は、この戦略マネジャーの件です。国家基幹技術の説明でも「最もふさわしいマネジメントが必要」というお話がありました。これも民間の研究所で苦労するところで、やはり3年、5年、10年かかる研究を誰が責任をもってクロスファンクショナルなことも含めてやり切るのかという問題があります。民間の場合はそれに対してミッションを与える。あなたのミッションはこれをやる切ることですよ、と。もっとありていに言うと、それを評価に結びつけるということなのですが、そういう工夫をしながらやっています。それを今回のこの戦略マネジャーとか、それから、国家基幹技術の全体のマネジメントにどういうふうに当てはめていくかというと、なかなかイメージが湧かなくて、これからの検討だと思いますが、大きなチャレンジの一つだと思います。

【西尾委員】
 意見を一つと、後一つは確認です。第4期科学技術基本計画では「科学技術イノベーション」ということが一つの大きな旗頭になっているのですが、その意義は、単なる科学、単なる技術におけるイノベーションということではなくて、それに加えてイノベーションを大きな意味で阻害してしまっているさまざまな法規制等も含めての改革を働きかけ、最終的には社会的なイノベーションにまでもっていくというところが大きな流れだったと思います。その観点からも、例えば18ページの図でも、さまざまなテーマを縦割りで推進してきたのを横串で横断的に推進するところが、第3期科学技術基本計画と比べての相違だというだけでは済まないと私は思っています。そこで、「第3期とはここが異なるのだ」ということを、この図なりに何とか分かりやすい形で工夫して入れ込んでいただけるとありがたいと思いました。
 もう一つ、この資料5-3のおのおのの重要戦略課題ですが、ここに書いてあるリストは、今後、予算獲得など、さまざまな意味で大きな重要性をもってくると思います。これは、今日で決まりというものではなくて、これは単なる例であり、イメージであり、今後我々が意見を申し上げ、改訂をいただける資料だと考えてよろしいですね。

【柿田計画官】
 はい、そのとおりです。先ほどご説明の際にも若干触れましたが、あくまでも例であり、イメージです。また、この特別委員会では今後取りまとめをお願いしたいと思いますが、その際にこの重点化の考え方、こういう構想で進めていくのだということを、資料5-3のような形でイメージしていただく必要があるという意図のものです。その意味で、今日の資料5-3が今後の報告書にそのまま入るということはありませんが、今後、これに類するもの、あるいはこの資料について、委員の方々からご意見もいただきながら、見直していき、報告書の付属資料として盛り込めるようにしたいと思っています。ただ、その段階でもあくまでも例示ということになろうかと思います。

【西尾委員】
 ということは、これから計画官に意見をどんどん言っていけるものと考えてよろしいですね。

【柿田計画官】
 はい。この手の話はやり始めるときりがない、また、色々な分野の研究者の方々から見て、皆さんが満足のいくようなものというのはおそらくできないと思いますし、逆にそれを網羅すると、結局重点化戦略を説明する資料にはならないということになりますので、その辺のバランスを事務局のほうで十分に取らせていただきたいと思います。

【西尾委員】
 というのは、例えば文部科学省の情報科学技術委員会では出ていなかったような、意外なキーワードが用いられていたりしますので、いくつか申し上げたいことがあります。それについてはまた後ほどお話しします。

【柿田計画官】
 事実誤認等については、ぜひご指摘をお願いします。

【野依主査】
 その件について関連があるかどうか分かりませんが、これは文部科学省の基本計画特別委員会です。また、今までは「科学技術政策」をベースにやってきて、今回、「イノベーション政策」が加わったわけです。日本の科学技術を振興するためには、イノベーションを中心にやってきた、あるいは担うべき他省庁もこれを考えていく必要があります。経財産業省、農林水産省、厚生労働省というのは、イノベーションありきだと思います。そういう省庁が立ち返って科学技術をどのように考えるかというすり合わせが必要です。私は申し上げる立場にありませんが、総合科学技術会議、あるいはそれにかわるものの議論においては、我々が科学技術を基本にしてイノベーションを考えてきたと同様に、イノベーションに近い省庁が、イノベーションや出口だけでなく、基本に立ち返って基礎科学、あるいは技術をどう考えるのか、そこまで考えないと、国全体の科学技術を振興する計画はできないと思います。我々も一生懸命考えておりますが、やはり立脚するところは基礎科学であり、科学知に基づく技術です。ここのところが、私は、日本には決定的に欠けているのではないかと思います。そのようにイノベーションに関与している省庁がもっと基礎科学や基幹技術を尊重する姿勢が大切で、そこに投資しなければ駄目だと思います。この中間報告は文部科学省でとりまとめておりますが、総合科学技術会議に上がっていった時には、ぜひそういう総合的な検討をお願いしたいと思います。

【丸本委員】
 時間が迫ってまいりましたので、簡単に意見を述べさせていただきたいと思います。今日、日本学術会議と学術分科会から、学術の振興を充実してほしいというご意見が出ていました。国大協からも同じような意見を前回、紹介させていただいたと思いますが、第3期科学技術基本計画の中にも、このような人類の発展や人文・社会科学との調和が必要だという言葉があったと思います。今回はそれより一歩踏み込んで、こういう学術、人文・社会科学の関連を重視して進めなければいけないのではないかという文言が入ったということは非常に進歩したなと思っております。ただ、資料5-1の4ページですが、これを具体的に進めていくために、第4期科学技術基本計画ではどういうことをやらなければいけないかということをもう少し踏み込んで書いてほしいという感じがしました。
 それで、例えば研究開発を進めてイノベーションにもっていく時のどこかの段階で、そういう人文・社会系の関連の方が意見を述べられるような場があれば、良いのではないかという気がします。そうでないと、言葉として書き込まれていても、実際に科学技術をやるのはやはり理系の人ばかりが集まるだけということになりはしないかという心配をしております。

【森委員】
 国家戦略ですから、多額の研究費からの視点が多いのは仕方がないかと思います。ただ、私は研究者ですので、人材育成という視点でどうしても見てしまいます。そういう意味では、少人数にそれぞれ多額の研究費を支出するのと、多人数に少額ずつ研究費を支出するのを対比した場合、私は後者のほうが多様なブレークスルーの芽を発見するような人材育成という意味では重要だと思います。マクロ的な視点なので仕方がないのですが、そういう視点がここには一切ないのが残念です。
 もう一つですが、これは有本副センター長とはちょっと意見が異なると思いますが、私は、自由発想研究への研究援助の方が、資金の効率的な運用という意味では人材育成にはより効率的ではないかと思っております。

【佐々木委員】
 計画官からお話しいただいたこの研究開発戦略の趣旨というのは、私流に理解すれば、立川委員が仰ったように、これまでの基本的なコンセプトを新しい形で置きかえるということを試みた提案として、次に、これをぜひ生かして、もう少し個別具体的なイメージをつくっていく作業につなげてもらいたいと思っております。つまり、マネジメントのスタイルが非常に違うものをはっきりと明確に示すということは非常に大事なことなので、今までは研究をやっていると、一応分けたつもりが、結局同じような話になってしまうというところがあります。国民に対する説明責任においてもあまりクレバーではないと思いますので、この上でさらにポリッシュしていただきたいと思います。
 もう1点は、さきほどからの人文・社会科学に関する議論で、私も数少ない人文・社会科学系のメンバーの一人としてつくづく思うのですが、科学技術はもちろんなのですが、革新をもたらすイノベーションという問題は、社会システムとの関係で、人文・社会科学じたいも、非常に重要な課題に直面していると思います。ですから、我々がこの50年ぐらい過ごしてきたシステムを前提にして、その上でイノベーションを乗せようという発想だけではなく、このシステムそのものが持続可能かということまで踏み込んだような形でもって、人文・社会科学を活用していただくという視点を入れていただきたいと考えております。

【白井委員】
 この研究開発戦略についてですが、今日いただいたものの基本的なデザインはこんなところだと思います。非常にはっきりしているところは、基本の学術というものと、それをイノベーションに結びつけていくものをある程度分けて、分類してしっかり取り組む体制を作るべきだというのは賛成です。そして、その進め方について時間差や考え方の違いがあるという、今の佐々木委員のお話しとも関係するかもしれませんが、そのような特徴をもう少し入れてもいいのではないかという気がしました。
 それから、もう一つは、国家財政の問題です。この委員会で財政の心配をする必要はないのかもしれませんが、現実の問題としてお金がそんなに来なくなっています。我々は、やはり国全体で、先ほど野依主査が言われたように、各省庁の縦割りだとかそういうものをもう一回全部整理し直してやるということもここにはっきり入れるべきじゃないかという気がします。それで、効率上げるとか、考え方ややり方も整理するということをこの中にはっきり盛り込むほうがいいのではないかなという気がします。

【二瓶委員】
 金澤議員のお話がありましたが、日本学術会議の提言の2にあります、「研究に関する基本概念を整理し学術政策のための統計データを早急に整備する」という項目についてです。私がある場で提案したのですが、産業界に産業連関表という非常に確立した統計データがあるように、学術の世界でも分野と人をセットにしたしっかりしたデータベースをつくるべきではないかと思っております。野間口主査代理と東委員も仰いましたが、学術からイノベーションにさらに踏み込んでいくという段階で、大学の人間の一番悪いところは、自分の身近な分野の人はよく知っているのですが、重要な関係ある分野の人を知らないのですね。それでは本当の意味でのイノベーションのドライブの戦力にならない。基本的なデータが不足しています。そのようなデータベースを整備すればもっとつながりが出て、大きな力になっていくのではないかと思います。

【有本副センター長】
 最初に、アメリカのエネルギー省のシステムのつくり方を申し上げましたが、決してあれだけでオバマ大統領のグリーン・イノベーションが起こっているわけではなくて、NSFやNASA、NIH等が多層的に絡み合った上でうまく全体で動いているということですので、補足させていただきます。

【野依主査】
 財源が少なくなると、一元管理という話が必ず出て来ますが、やはり多様な価値観が大事だと思います。画一的ではよくない。アメリカの場合には、やはりマルチファンディングであることが大変な強みになっていると思います。

【冨山委員】
 人のところにまた戻るのですが、先ほどの戦略マネジャーの話とぴったり重なるかどうかわからないのですが、イノベーションの谷を越えていくプロセスというのは、霧の中で谷の両側からそれぞれニーズとシーズの間に橋をかけていくような話なのです。これは会社の中でも同じことです。気がついてみると、橋と橋が合わないことも頻繁に起きているから、会社経営も大変です。したがって、先ほどの河内委員の話とも重複するのですが、頻繁に方向を変えたり、あるいはシステムをつくろうと思ったのが、途中でよく考えてみたら、実は材料のほうが可能性あるという話になって、そこで方向を変えなければいけないということはよくあることです。それを、誰がマネージしていくのかというのが、実はこのイノベーションの橋をかけるときにものすごく大事なポイントになんだと思います。
 たぶん、ある種マルチタスクな人間が大事で、例えば、そろばん勘定ができる技術屋や、逆に、技術のわかるそろばん勘定屋さんのような、タイプの人がその領域には必要で、日本には、実はそういう人がすごく少ないのです。MBAとPh.D.を両方持っているという人は滅多にいない国なので、先ほどポスドクの話もありましたけど、ぜひそういう人を大量に、例えば1000人でも作っていって欲しいと思います。アメリカにはこのタイプの人間がいっぱいいるのです。そういう人たちが協働するようになれば、もっとイノベーションの橋が現実にかかっていくと思うので、ぜひ考えていただきければうれしいなと思います。

【野依主査】
 ありがとうございました。
 いただいたご意見は、事務局で整理を行っていただきたいと思います。
 本日は、先日行われました行政刷新会議の事業仕分けの結果が机上に配付されておりますが、これについて泉局長、何かありますか。

【泉科学技術・学術政策局長】
 ありがとうございます。お手元に行政刷新会議事業仕分け評決結果というタイトルの資料を置かせていただいております。1枚目は11月13日金曜日に行われたものですが、ずっとめくっていただきますと、同じようなスタイルの表で、21ページ、11月17日第5日目に行われたものの総評がついております。これは、既に行政改革刷新会議のホームページで公開されているものをそのままおつけしたものです。文部科学省の科学技術関係の仕分け作業はこれで終わっております。
 ご案内のとおり、差新会議はインターネットでライブ中継されていますし、会場が市ヶ谷の国立印刷局の体育館で、誰でも見に行ける状況で行われており、色々な結果、やりとりも含めて、テレビ、新聞等でも連日報道されているところです。
 それから、関連して様々な動きがあるわけで、例えば、先ほど冒頭、野依主査からご紹介がありましたように、『ネイチャー』等にも報道されていますし、昨日だったと思いますが、次世代スーパーコンピューターの問題では、計算科学の専門家の先生方がこのプロジェクトの意義等についてのアピールを出されているというようなこともあります。
 それに加えて、文部科学省では、政務三役の名前で、一般にインターネット上で意見を募集するということも行っております。始めてまだ3日目ぐらいですが、1,000~2,000件ぐらいの意見がきております。こういう状況ですので、これは科学技術だけ、これは22年度予算編成の過程での動きではありますが、これからの科学技術政策に関連する現下の動きとしてお伝えするわけです。
 この中身については、一つ一つご説明申し上げませんが、この位置づけ、事柄の認識については、昨日、衆議院の文部科学委員会でも議論がありました。これについて川端大臣が答弁されたことをご紹介しながら、文部科学省としてのこの作業についての認識を申し上げたいと思います。川端大臣の答弁としては、これは、いわば国民目線で公開の場でテーマを決めて、短時間で必ず答えを出す。そういうプロセスにおいて、そういう結論が出たということなのだ。これについて法的根拠や、権限があるわけではないが、一つのやり方としてこういうやり方でやったらこういう答えが出たという、これから政治的決定として予算編成をやっていく上での一つの判断材料を提供するものであり、こういう意見もあるということを踏まえながら予算編成をやるということです。文部科学省の所管分野で言えば、特に教育や科学技術とか、単なる成果主義ではなく長期的に答えを出さなければいけないものもあるし、リスクを伴うような費用もあります。そういうものでどうしても必要なものを、最終の政治判断の中できちんと根本を間違えないように予算編成に向けて最善の努力をしたい。こういうことを仰っておられます。これが私どものこのプロセスに関する基本的な立場でして、それを踏まえて、これから予算編成に当たっていかなければいけません。それから、この委員会でこの話をご紹介申し上げますのは、単に予算ということだけではなく、今日も国民に対する分かりやすさとか、国民目線から見たらというご議論もいただきましたが、そういう観点でこういう手法をやると、こういう意見が出てきているということを念頭に置きながら、私どもは、より国民的な支持も得られて、日本や世界の発展につながるような科学技術政策を形成していく必要があります。その念頭に置いておくべき今の動きとしてご紹介したということです。

【野依主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、今後の本委員会の日程について、事務局から説明してください。

【柿田計画官】
 資料6「今後の予定」ですが、第10回で一旦中間まとめということでこの委員会でのまとめをお願いしたいと思います。そこに向けて第9回の会合を12月1日に文部科学省で行います。次回は中間取りまとめの素案を提示させていただいて、ご議論いただきたいと思います。本日、元村委員はじめ、分かりやすさという点で重要なコメントをいただきました。これから報告書の作成作業に入りますが、ぜひ委員の皆様方にもご助力いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

【野依主査】
 ありがとうございました。
 以上で、科学技術・学術審議会第8回基本計画特別委員会を終了します。

お問合せ先

科学技術・学術政策局計画官付

電話番号:03-6734-3982(直通)

(科学技術・学術政策局計画官付)