基本計画特別委員会(第4期科学技術基本計画)(第5回) 議事録

1.日時

平成21年9月11日16時~18時30分

2.場所

文部科学省第2講堂(旧文部省庁舎6階)

3.議題

  1. 研究開発評価システム改革の方向性(審議のまとめ)について
  2. 科学技術・イノベーションのための研究開発システム改革(1)について(研究資金制度及び研究開発評価システム)
  3. 社会と科学技術・イノベーション政策との連携強化について
  4. その他

4.出席者

委員

野依主査、野間口主査代理、東委員、安西委員、伊地知委員、大垣委員、長我部委員、門永委員、河内委員、小杉委員、小林傳司委員、白井委員、フクシマ委員、冨山委員、永井委員、西尾委員、二瓶委員、原山委員、本藏委員、益田委員、丸本委員、元村委員、森委員

文部科学省

(大臣官房)坂田事務次官、清水文部科学審議官、森口文部科学審議官、土屋総括審議官、奈良総務課長、藤原会計課長、坪井政策課長、岡文教施設企画部技術参事官、菱山文教施設企画部計画課長
(高等教育局)義本高等教育企画課長、藤原大学振興課長
(科学技術・学術政策局)泉局長、渡辺次長、小松科学技術・学術総括官、中岡政策課長、佐藤調査調整課長、川端基盤政策課長、柿田計画官、岡谷科学技術・学術戦略官(推進調整担当)、増子科学技術・学術戦略官(地域科学技術担当)、苫米地評価推進室長
(研究振興局)磯田局長、倉持審議官、山脇振興企画課長、柳研究環境・産業連携課長、舟橋情報課長、勝野学術機関課長、山口学術研究助成課長、内丸基礎基盤研究課長
(研究開発局)藤木局長、森本審議官、土橋開発企画課長、鈴木地震・防災研究課長
他関係官

オブザーバー

相澤総合科学技術会議議員、青木総合科学技術会議議員

5.議事録

【野依主査】
 科学技術・学術審議会第5回基本計画特別委員会を開催します。
 まず、事務局から配付資料の確認をお願いします。

【柿田計画官】
 議事次第の裏面に配付資料の一覧を記載しておりますとおり、資料1-1から資料4までございます。不備等ございましたら、事務局までご連絡下さい。
 議事に入る前に、資料4「今後の予定」という資料がございますが、この資料の裏面に今後の基本計画特別委員会における審議予定を書かせていただいております。今後、第6回目以降、それぞれ記載しておりますような項目についてご審議いただく予定で考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【野依主査】
 今日の審議事項は2件です。1件目は、「科学技術・イノベーションのための研究開発システム改革について(研究資金制度及び研究開発評価システム)」です。これに関連しまして、まず科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会研究評価部会における審議のまとめについて事務局から報告してもらいます。その後、「科学技術・イノベーションのための研究開発システム改革について」を事務局から説明していただいた後、研究評価部会の審議のまとめに対する質疑を含め、ご議論していただきます。
 2件目は、「社会と科学技術・イノベーション政策との連携強化について」です。
 それでは、議題1「研究開発評価システム改革の方向性(審議のまとめ)」について、事務局から説明してください。

【苫米地評価推進室長】
 それでは、ご説明申し上げます。
 まず、資料1-2をご覧いただきたいと思います。最後のページに審議の経過が記載されております。研究評価部会では、次期科学技術基本計画を視野に入れ、評価システム改革の課題とその改善方策について作業部会を設置してご審議いただき、その結果を8月4日におまとめいただいたところでございます。ご審議にご参画いただいた委員の方々につきましては、めくっていただいたところに名簿をつけさせていただいておりますので、ご参照いただければと思います。
 それでは、審議のまとめにつきまして、資料1-1で概要をご説明申し上げます。
 1ページ目でございますが、審議のまとめの内容のうち、特に重要点と考えられるところをポイントとして記載させていただいております。
 まず、研究開発評価の意義の再考ということで3点示しておりますが、特に、評価により現状の研究コミュニティが抱えている課題の解決を推進して、日本における研究コミュニティの活性化に寄与するということを新たな視点として述べられております。
 次に、評価システム改革の基本的な考え方ということで、目的に応じた評価システムの再構築、政策-施策-プログラム・制度-課題といった階層構造と階層間の関係が明確化された評価システム群の形成、また、事前・中間・事後と一貫性のある評価とマネジメントの実施、これらが重要であるということが述べられております。その基本的な考え方のもとで評価システム改革の方向性の特にポイントとして下に5つ挙げておりますが、施策やプログラム・制度レベルの評価を推進する、新たな研究領域を開拓する挑戦的な研究を促すような評価基準、次世代人材の育成を重視する評価の視点、評価専門人材の育成、評価文化の醸成ということが述べられております。
 内容について若干説明をさせていただきます。めくっていただきまして、研究開発評価システム改革ということで基本的な考え方です。1点目は、先ほど申し上げました目的に応じた評価システムの再構築ということであります。評価の現状においては、評価自体が目的化している場合とか、評価が過重になったり、評価の焦点が不明瞭になっているのではないかという問題意識です。評価結果の活用方法と活用に当たっての責任を有する主体を明確化する、また、評価方法等の評価結果の活用方法と整合をとるように設計すること等、評価疲れを生ずることのないようなシステム構築をしていくべきであるということが述べられております。
 この項目につきましては、「評価」という言葉の定義についても述べられていまして、狭義の意味では「エヴァリュエーション」という英語が使われておりますが、その他「アセスメント」や色々な言葉についても日本語では「評価」と訳されているという現状です。その辺につきましては、概念の分節化を促して定着を図っていく必要があるということで、とりまとめの本文中には「評価」に該当する英語の日本語訳を別紙として添付させていただいております。
 2点目は、階層構造と階層間の関係が明確化された評価システム群の形成ということです。各評価の設計というのは、上位階層を実現する1つの手段として下位階層が実施されるという構造を前提といたしますと、評価基準は上位階層との関係からおのずと策定されることになるということになりますが、現状ではなかなかそこが明確になっていないのではないかという問題意識です。特に施策やプログラム・制度レベルでの評価を推進していく。また、施策やプログラム・制度の評価で得られた知見や課題というものが上位にある国の政策に反映されることが望まれるということが記載されております。また、一貫性のある評価とマネジメントの実施ということで、採択のための審査を事前評価として明確に位置づけて、中間・事後評価と適切な関係を持たせたシステムを構築する必要があるということが述べられております。
 続きまして、評価システムの当面講ずべき改革の方向性です。
 まず1つ目として、1.評価の観点・基準・視点です。
 (1)として、研究開発に適した評価の観点ということで、現在、大綱的指針においては必要性・有効性・効率性という3つの観点が提示されておりますが、研究開発課題の評価においては、研究の不確実性、研究成果がもたらすインパクトの多面性等を見た観点、ここに書いております「質」、「独創性」、「先進性」というような観点を設定する必要があるのではないか、ということです。
 (2)として、研究開発の性格に応じた多様な評価基準ということです。評価においては定量的な情報を用いることや客観性の向上が求められますが、学問上の特性を踏まえた定性的な評価を中心とした評価システムの構築ということが求められる、ということです。
 また、ハイリスク研究や学際・融合分野研究の評価につきましては、既存の研究領域に変革をもたらし、新たな研究領域を創出する研究であるか、あるいは、当初の目標達成に失敗しても予期せざる波及効果に大きな意味があるかを積極的に評価すべきだということです。
 また、ハイリスク研究や学際・融合分野研究のマネジメントというのは、施策もプログラム・制度レベルで管理して、長期レベルでの新規領域が開拓できるかを評価するということが述べられております。
 なお、研究評価部会では、変革をもたらす研究につきましては、アメリカのNSF等におけるトランスフォーマティブな研究についての評価を重視しようとする動きについて紹介・議論がなされまして、本文中は、例示的ではございますが、紹介・記載がされているところです。
 次のページですが、(3)として、研究活動を支える次世代人材の育成重視の評価視点です。次世代の研究者の養成を評価項目とする場合には、単に数的なものだけではなくて、ポストドクター等の処遇、育成、キャリア支援等についても評価をすべきだということで、これはアファーマティブに行う必要があるのではないかという議論がなされております。
 さらに資金配分機関においては、連携してポストドクター等の処遇、育成、キャリア支援等について、具体的な取り組みについてのガイドラインを設定することが望まれるというようなことが議論されております。
 さらに2つ下ですが、国全体としての研究基盤をさらに活用するためには組織間の共同というものが有効であると。個別組織を取り扱うだけではなくて、複数の組織が共同する形のネットワーク・オブ・エクセレンス型組織についても十分に適用可能となるような評価システムの構築が求められるということです。
 次に、(4)として、研究コミュニティの活性化を促進する評価の視点です。多様な研究分野や経歴の研究者が連携・共同することで異なる価値観の融合が実現されるということで、多様な経歴・分野の研究者による研究体制が構築されているかということも評価するということです。
 また、(5)として、世界的な視点での評価ですが、施策やプログラム・制度レベルや規模の大きな研究開発課題などについては、特に有効と思われる部分で、その実施を支援するということで、その効果や影響について検討、継続的な見直しを実施することが必要ということです。
 続きまして、2.の効果的・効率的な評価手法です。基本的考え等で述べられておりますような方策等を講じることによって、なお効果的・効率的な評価手法をとっていくことが必要であるということが言われております。過重な評価負担を回避する手段ということで、具体的なものとして7点、評価に活用可能なインフラデータの整備、配分額に応じた評価の過重調整、あるいはサイト・ビジットの活用などが挙げられております。
 また、評価には必要な資源を投資して、きちんと評価環境の整備を行うことが必要であるということが言われております。
 次のページに移ります。3.評価人材の育成です。評価に従事する者が質量ともに不十分なのではないか、そのため過重な負担が一部の者にかかっているのではないかという問題意識です。評価者の育成ですが、評価の考え方等に関する研修、講義などを行って人材の育成をしていく必要がある、あるいは、退職研究者を評価者として活用するなどの方策も検討する必要があるのではないか、と述べております。
 また、評価専門人材、これは資金配分機関等における評価の専門部署で業務する人のことを言っているわけですが、マネジメント人材、研究支援人材の育成、キャリアパスの確立、及び、それら人材の養成をするシステムを検討する必要がある。大学等資金配分機関間の人事交流など、評価に関する人材の高度化を行う仕組みの検討が必要だと述べております。
 また、評価の専門家につきましては、調査研究に関与していただくなどして、将来の専門人材の養成等を図る必要がある。また、評価者の助けとなる評価サポート機関の設置の可能性を検討する、ということが述べられております。
 続きまして、(2)のプログラム・ディレクター、プログラム・オフィサーの制度改革についてです。持続的、安定的、発展的プログラムマネジメントを行うために、PD、POの養成・確保が必要であるという問題意識です。PD、POを持続的に養成・確保していくためには、大学院博士課程や研修プログラム等における場で競争的資金制度についての理解を得る機会を設けるなどして人材の育成に取り組む必要があります。
 また、POらに大胆に権限と責任を持たせるケースの検討、非常勤POの所属機関・研究コミュニティへのPOの任務の周知、PD、POを務めた実績を含めて、キャリアパスとして評価する仕組みの明確化が必要なのではないかという点が述べられております。
 最後は、4.評価文化の醸成です。評価の重要性を共有できる評価文化の醸成が必要であり、評価者は、創造へ挑戦する研究者を励まし、育て、さらに伸ばす視点で評価に取り組む。また、研究者は、評価者からの示唆を尊重して次の再申請に結びつけるなど、前向きに取り組む必要があるということです。
 また、評価実施主体においては、評価のフィードバックを行うなど評価の評価を行うなどの観点から、評価者、被評価者が協力して評価システムをつくるとか、評価者が評価手法や評価基準を議論する場を継続的に保持するシステムの展開が必要だということを述べおります。
 また、評価者と被評価者との関係が循環的となるシステムの構築が求められているということが述べられております。
 以上が研究開発評価システム改革の方向性に向けての審議のまとめです。

【野依主査】
 ありがとうございました。
 続きまして、議題2の「科学技術・イノベーションのための研究開発システム改革について(研究資金制度及び研究開発評価システム)」を、事務局から説明して下さい。

【柿田計画官】
 それでは、資料2-1及び資料2-2をご覧下さい。科学技術・イノベーションのための研究開発システムのうち、本日は、研究資金制度と、ただいま報告がありました研究開発評価システムの改革についてご議論いただきたいと思います。
 1ページ目の、研究開発評価システムの現状と課題です。
 まず、我が国における研究資金の現状です。国立大学の運営費交付金、あるいは私学助成、こういった基盤的経費につきましては毎年減少傾向にあります。また、競争的資金につきましては、第2期科学技術基本計画において5年間で倍増するという目標がありました。当初3,000億円を倍増すると6,000億円ということになるわけですが、第3期の今では、全体で4,900億円という状況です。また、間接経費につきましても、現在の第3期科学技術基本計画では30%を措置するという目標がありますが、全体の平均で17.9%という状況です。また、国立大学法人等への競争的資金の配分も一部の大学に非常に集中する傾向にあります。
 以上の点についてデータ集、資料2-2で若干補足したいと思いますが、2ページ、国立大学法人の運営費交付金の推移の棒グラフがあります。いわゆる骨太の方針2006において対前年度比1%減ということが定められ、平成16年度から21年度の間に720億円の減という状況になっております。
 また、3ページは競争的資金ですが、先ほど申しましたように第2期科学技術基本計画の際の目標が倍増の6,000億円ということですが、第2期の期間を過ぎて、なお現在も5,000億円に満たないという状況であり、かつ、最近は1%程度の微増の状態で推移しています。
 4ページは間接経費についてですが、この棒グラフに示されるように、直接経費に占める割合は年々増えており、約18%というところまで来ております。また、競争的資金制度は全体で44ありますが、原則として30%をつけるというものが40制度まで増えているということで、一定の進展が認められます。
 関連して7ページですが、競争的資金の配分の大学間格差ですが、これは科研費、あるいはJSTの戦略創造、厚労科研費等の主な競争的資金の大学単位での配分の実績です。トップの大学に約500億円、10位の大学になるとその1割である約50億の配分ということで、かなり急激なカーブで配分されているという状況です。
 8ページは米国の配分状況ですが、我が国に比べて比較的なだらかなグラフになっており、大学の特徴に応じてマルチ・ファンディング機能が働いていると言えると思います。
 11ページに、それでは教員当たりの研究費についてはどうなのかということですが、これは国立大学法人の財務諸表からのデータですが、教員当たりの研究経費については、グラフのような形になっております。平均が326万円程度ということで、半数以上の大学が平均値以下という状況になっております。
 資料2-1に戻っていただきまして、競争的資金制度間の連続性の確保についてですが、多様な競争的資金制度が設けられ、基礎から応用、開発、あるいは個人、機関、組織向けと、多様なものがあります。優れた成果が出たものを次のステップへつなぐということが大事になるわけですが、そういったつなぐ仕組みがまだ不十分であるというような意見があります。
 それから、多様な競争的資金制度の整備ということで、研究者の斬新なアイデアに基づく革新性の高い成果を生み出し得るような研究、ハイリスク研究と言われるようなものについての種目ですとか、あるいは評価体制を工夫しているというものが全体の中ではまだ非常に少ないという状況です。他方で、若手向けの資金制度については大分増加傾向にあるということです。
 次に、審査・評価体制の整備・充実の観点では、審査員の多様性を確保するということにおいて、若手研究者が審査に参画しているという割合が非常に低いということや、プログラム・オフィサー、プログラム・ディレクターの制度が十分機能していないという実態があります。
 また、研究費の不正使用の防止については、様々な管理・監査のガイドライン等の整備が進んでおりまして、これらを元にした不正防止に向けた取り組みが進められているところです。
 3ページですが、研究資金の使いやすさ等に関する現状です。これにつきましては、研究費について年度繰り越しをできるようにするとか、色々な制度改革がなされて、使いやすさという意味では改善の傾向にありますが、いまだ使いにくいというようなアンケートの結果も出ております。
 また、一番最後ですが、平成21年度の補正予算で最先端研究開発支援プログラムが創設されました。このような基金によりまして、年度をまたいだ予算の執行が可能になるという新しい制度ができたという状況です。
 4ページは研究開発評価の関係ですが、特に政策の体系として、一番上位に政策というレベルがあって、その実現のための施策、さらにプログラム、またその下に色々な課題という形で階層構造があるわけですが、それらの階層をきちっと意識した、あるいは明確化した評価というものがまだ十分でないというような点ですとか、評価が過重であるといったようなこと。あるいは、挑戦的な研究を奨励するような環境が形成されつつあるという意見が少ないということもございます。その他、評価の実施体制についても、評価を行う人材の充実が今後の課題になっております。
 5ページです。今後の研究開発システム改革、そのうち研究資金制度及び評価システムはどうあるべきかということですが、我が国の科学技術の発展、あるいはイノベーション創出のために、こういった研究開発システムの改革を進めていくということは極めて大事であります。
 また、研究資金につきましては、先ほどのグラフにもありましたが、大学等の教育また研究の基盤、この厚みを増していくということが非常に大事になります。
 競争的資金の関係では制度間の連続性・継続性、これを確保していくために、制度改革、あるいは資金の一層の充実ということが求められます。
 さらに、効果的・効率的な評価を実施するためには、さらなる評価のシステム改革が必要であるということです。
 そこで、7ページですが、まず、研究資金の点につきましては、研究者あるいは組織における研究活動等を支える多様な研究資金、これを一層拡充していくということがまず基本であると思います。
 また、研究資金制度についての相乗効果を高めるという意味で、制度間の接続をうまく図るような全体のマネジメントが大事になるということです。
 具体的には、9ページに参りますが、研究資金の一層の拡充ということです。研究者の自由な発想に基づく研究、また国として実施する、いわゆる政策対応型の研究開発等、これらについては大学あるいは公的研究機関が大きな役割を担っております。これらの活動を活性化していくという意味で、まず十分な基盤的経費を措置するということが必要です。また、競争的資金についても一層増やしていくという努力が必要ではないかと考えます。
 特に大学等の教育・研究の活動、これを支える基盤的経費の削減がずっと続いております。また、競争的資金についても微増の状態です。特に大学については、いわゆる実験実習等の教育研究の実施、あるいは施設・設備の維持管理、ここを十分に行えない、それを支える経費がないということで、教育研究を取り巻く基盤が極めて厳しい状況にあるということです。これを支える資金の一層の拡充に向けた取り組みを進めていくということが必要です。
 10ページに推進方策として、まず、大学における教育研究の多様性と持続性を確保していくという観点が非常に大事になると考えられます。そういった意味で基盤的な経費を拡充していくということが1つ。また、公的研究機関における財政措置についても拡充していくことが必要です。
 また、競争的資金についても、採択率の向上とか、1件当たりの研究費の増額、そういった観点も含めて全体の拡充を図っていくとともに、間接経費についても30%措置に向けて引き続き努力をしていくということが必要です。
 次のテーマですが、11ページの競争的資金制度の改革です。まず多様な競争的資金制度を多様なファンディング・エージェンシーが運用するということを、引き続き進めていくことが必要です。また、多様性を活かし、全体が相乗効果を発揮していくために、マネジメント体制をきちっとしていくことが大事であり、12ページの1番ですが、競争的資金制度全体のマネジメントということを挙げております。おのおの多様な制度がありますが、そのミッションをきちっと明確化した上で、制度間の連続性を確保するための体制をつくる。具体的には国、あるいは資金配分機関等が連携・協力するための場を設定するといったことで全体の継続性・連続性を確保していくということが大事ではないかということです。また、他の制度で顕著な成果を上げたものについては、積極的に評価するように審査項目を設定することも重要ではないかと考えられます。
 また、2番目の、多様な資金制度の整備として、ハイリスク研究であるとか、新しい領域の創生を目指した研究、異分野融合等、将来の発展につながるようなチャレンジングな研究についてもきちっと評価、あるいは研究を促進するための資金制度を充実・強化、また、そのためには資金配分機関の多様性を常に確保しながら推進していくということが求められると思います。
 さらに、ポスドク等の若手研究者が、人件費も含め自らの研究活動に係る経費を充当することができ、それを元に自ら希望する機関に所属して独立して研究活動を行うことができるように、また、受け入れ研究機関においては、その研究者を受け入れるに当たっての環境整備に係る経費を措置できるような競争的資金があってもよいのではないかと考えられます。
 13ページですが、研究資金制度の審査・評価体制の強化です。これにつきましては公正・透明な審査体制を引き続き確立していくということで、その中で、先ほど来話の出ておりますプログラム・ディレクター、プログラム・オフィサーについて、この在り方をきちっと検討して役割と権限を明確化していくということ、また、研究資金の不正防止に向けての取り組みを引き続き進めていくということです。
 15ページの研究者に使いやすい資金制度への改革ということですが、これにつきましては16ページの推進方策に書いておりますが、費目間流用であるとか、使途の制限、色々なルールがありますが、できるだけ統一化、あるいは弾力化を進めるということと、また手続の簡素化・合理化を進めていくということを挙げております。また、繰越明許費制度等の要件や適用例をきちんと研究者の方々に周知し、制度をより活用していただいて、柔軟な研究の推進に役立てていただくということが大事かと思います。
 また、21年度の補正予算の最先端研究開発支援プログラムにつきましては、弾力的運用の観点から評価を行い、また、その結果を踏まえつつ、我が国の研究資金制度全体についての一層の弾力的な管理・運用が可能となるような仕組みを検討していくことが第4期科学技術基本計画期間中においては必要ではないかと考えられます。
 続きまして17ページの研究開発評価システムの改善です。先ほど評価推進室長から報告がありました報告書の内容を載せております。
 まず、引き続きすぐれた研究活動を推進していく、また研究者を養成していくという観点、また効果的・効率的な資源配分を行うという意味で非常に評価が大事であるということで、一層の改善・充実を図る。
 また、評価者、さらには研究者が評価というものの重要性を共有できるような評価文化を醸成していくということを挙げております。
 19ページですが、主なポイントといたしましては、研究開発評価に係る階層の再構築、また、多様な評価の観点・基準・項目の設定という2点でございまして、具体的には20ページの1番にあるとおり、政策-施策-プログラム・制度-課題という階層がありますが、とりわけ研究開発につきましては施策であるとか、プログラムレベルでの評価を重視して、その結果をきちっと上位の政策の改善・充実に反映していくという循環を構築していくということです。
 また、2番目の多様な評価の観点・基準等の関係ですが、まず、研究の不確実性であるとか、成果がもたらす効果の多面性・長期性についてきちっと評価する観点、これを重視していくということと、ハイリスクであるとか、新興・融合領域等の研究がきちっと評価されるための適切な基準等の設定について挙げております。また、研究開発そのもののみならず、若手をはじめとする人材育成、あるいはアウトリーチ活動、こういったことについても併せて評価するための基準を設定することが必要になると考えられます。
 21ページですが、実施体制の充実の観点として、特に効率的な評価を引き続き進めていくための方策をとるということと評価の体制の整備という2点です。
 22ページですが、まず、評価の負担の軽減に向け、目的や活用の方法を明らかにして評価を実施するということが基本となります。また、各階層での色々な評価があるわけですが、それらの結果を相互に活用して、合理化・効率化を図るということです。
 次に体制の整備として、ピアレビューに当たる評価者の研修の実施、また、評価に関連する専門的知見を有する人材の育成とキャリアパスの確保、さらに事務体制の整備についても引き続き進めていくことが求められます。
 また、PD、POについても役割と権限の明確化とともに、そういった人材の養成・確保に向けて、特に大学の先生、研究者の方々がPD、POとして活躍される場合もあるわけですが、大学がPD、POの活動をキャリアとして積極的に評価するということも重要になると考えられます。
 以上、研究開発システムのうち、本日は資金と評価の点についてご議論いただきたいと思います。

【野依主査】
 ありがとうございました。
 それでは、先ほどの研究評価部会での審議のまとめも踏まえまして、第4期科学技術基本計画に向けた研究資金制度及び研究開発評価システムの改革について審議を行います。
 ご承知のように政権が交代いたします。自民党政権でも科学技術創造立国を国是として掲げていただいたわけでありますが、公的財政支出の面から申しますと、5年間で25兆円の支出ということも全く実現できないような状況です。
 鳩山代表はアメリカの大学院で勉強されており、日本初となりますが、工学博士号を持たれる方が日本をリードされることになりますので、ぜひ積極的に我が国のあるべき姿を求めていかねばならないと思っております。本日の議題は研究資金制度ですので、思い切った意見をいただければと思います。

【門永委員】
 柿田計画官に質問というか、指摘ですが、改革と言うからには今、問題点があってこれを変えていこうということだと思います。今どういうことが起こっているという現象面は、色々ここに書かれてありますが、なぜそれが起こっているかという原因の掘り下げがあまり書かれていないので、今後の方向性とか、施策とかいう文言を見ても、ちょっとピンとこないところがあります。
 例えば、評価のところでは、階層構造を踏まえて評価しなければならない、現状では階層間の関係が不明瞭となっている、と書かれています。それは実際にそういうことなんだろうと思います。それで、じゃあ、どうするのかというと、それを明確化しましょうという話が書いてあって、「新たな視点を導入し、効果的・効率的に改善・充実を図っていき、再構築します」と言われても、何が問題でどうするのかというのが正直よくわからないというのが感想です。この原因面を掘り下げたものというのは、どこかにあるんでしょうか。

【柿田計画官】
 ここの趣旨は、ともすると評価というものが個々の課題レベルに着目して、その課題が5年間でどう成果が出たのか、中間の段階でどうなのか、あるいは事前の段階でそれを採択するのに値するかどうかというミクロレベルでの評価に陥りがちになっていて、また、当然、研究課題というのは全体ではものすごい数になりますので、そこに評価というもののエネルギーがかなり注がれているという現状があります。そのレベルの評価が不要であるということはもちろんないのですが、全体の研究開発投資を効率化していく、あるいは研究開発活動をより活性化していくということを考えたときに、1個1個の課題の評価というよりは、より上位の施策レベル、そこには個々の課題がぶら下がっているのですが、全体的に、制度としてどういうパフォーマンスがあったのかということを評価しなければなりません。例えば競争的な環境をつくるという政策があり、その下で競争的資金の個々のプログラムがありますが、そのプログラムレベルの評価をきちっとやっていく。そこに国としての評価の重点を置いていくことが必要ではないかというのが今回の評価部会で議論いただいたところでございます。

【門永委員】
 よくわかりました。なぜ個別の評価に陥ってしまうのかということですが、何年もやっているわけなので、色々反省しながらやっていると思いますが、そこの原因はどの辺にあるのでしょうか。それを押さえないと解決ができないのではないかと思います。

【柿田計画官】
 国の評価の指針にもありますように、施策レベル、課題レベル、あるいは機関レベルの評価といった評価のカテゴリーは明らかにされているのですが、それぞれのカテゴリーにおける評価結果をどう活用し、政策全体をよい方向に持っていくかという考え方が必ずしも指針の中に明確化されていないというところが原因としてあると思います。今回、評価部会で議論いただきましたのは、まさに上下関係をきちっと意識した上でプログラムレベルの評価をして政策に反映するメカニズムをつくっていくべきだという提言がなされたわけです。そういった方向性を今後の文科省の評価の指針や国全体の大綱的指針にも盛り込んでいくことによって、研究開発評価における循環関係をつくっていくことができるようになるのではないかと考えております。

【原山委員】
 今、私も同じような疑問を持っていたのです。大綱的指針というものがあって、その中では階層に分けて評価するということが既に謳ってあって、実際に各省庁でも既にプロジェクトからプログラムなどのシステム化も必要だということが言われていて、具体的にインプリメントも始まっているわけなんですね。ですが、全てがそのように理想どおりに動いてないというのが現状であって、じゃあ、そこの具体的なところをどうしたらいいかというのを書き込むのが第4期科学技術基本計画の1つのタマになるのではないかと思うんですね。
 他の議論でも研究システムの改革というのは同じであって、既にこういうシステム改革が必要だということは第3期科学技術基本計画の中で書かれたこと。どこに問題があるかということを指摘しないことには、当初の予算どおりに執行されていない、だから増やそうというロジックはもう通じないと思うんですね。ですので、これを書くときには、システム改革で言いますと、現状と課題と、それから具体的に何をする、というところのリンクが全く見えてこないというのが一番の問題だと思うんです。ですので、現状のデータを基に、そのデータの結果、どこに具体的な問題があって、その問題を解決するためには何をしなくちゃいけないかという具体的に落とし込みという作業が必要だと思います。それがないと通常どおりの話になってしまって、だれも認めてくれない、という厳しい状況になると思います。
 それから、評価についてですが、1ページのところに研究コミュニティが抱える課題の解決を推進し、ということですが、研究開発の評価をしただけでコミュニティの課題がわかってくるか、それが解決に向かうことができるかという点は私にはよくわかりません。
 その道筋というのは大事だということと、それから、評価に関して、英語では色々な言い回しがありますが、それに対して日本語ではすべて「評価」と訳しています。であれば、この「評価」の中身というのは精査していただきたいですね。この中に書いてあるのは、評価システムの評価のクライテリアに基づいてチェックする評価と、それから、こうあるべきだという話の評価と両方が混ざっています。例えば若手のことを評価しなくてはいけないとか、後者の文脈があります。そういうことを精査した上で、基本的にどういう評価システムというのが肝心かということを言っていただきたいと思います。
 それから、世界的な視点での評価というのがあるんですが、これをよく読むと、評価者を海外から持ってこようというだけの話なんですね。世界的な評価というのは、各国で研究開発評価に関しては非常に試行錯誤の状況にあって、今日に至っても世界的なスタンダードはまだないと思うんですね。ですので、「世界的な」ということは、書かない方がいいと思いますし、評価の視点を国内のインターナルな視点ではなく、もっと広げた形で評価しなくてはならないという形で書いていただきたいと思います。
 それから、先ほどのシステムに戻りますが、1つは、必ず新しいことを入れなくちゃいけないというプレッシャーがあるのですが、その前にこれまでやってきたことのどこが問題かということを言った上で、掘り下げてここに対処すべきだということを具体的に書いていただきたい。それから、幾つか新しい方針を出さなくちゃいけないと思いますが、この中から読みますと、あまりそういうのが見えてこないですね。ですので、必ずしも目新しいことだけ書かなくちゃいけないというわけではないんですが、どこが今回の新しいところであって、どこがこれまでの補強だということがわかるようなストラクチャーにしていただければと思います。
 それから、最後に1点、評価者についてですが、大学をリタイアした方たちを評価者にするということについてですが、プロジェクト評価にはいいと思うんですが、その上位段階を階層的に評価しましょうという時に、政策評価について大学の先生たちが本当にできるのかという疑問があります。ですので、指摘していることは非常に的を得たことなんですが、それに対応する評価者をどうしたらいいかということも併せて考えていただきたいと思います。

【野依主査】
 いわゆる「評価」については色々な意味があるということについて、もう一度説明して下さい。

【苫米地評価推進室長】
 まず、評価につきましては、資料1-2の19ページをご覧ください。
 「評価」については、それぞれ、evaluation、assessment、appraisal、estimate等について、これは一例として色々な文献からの引用ですが、それぞれの英語における評価という意味についての解説をつけさせていただいているところです。したがって、一概に評価と言っても、evaluationだけではなくて、それぞれの段階で色々な評価について分節をする必要があるのではないかということが議論されたところです。
 例を申し上げますと、本文中の5ページをご覧いただきますと、一貫性のある評価とマネジメントの実施という項にコラム的に箱書きしておりますが、例えば事前評価についてはアセスメント、中間評価はモニタリング、事後評価はエヴァリュエーションというような形で分節をしながら、それぞれの段階に応じた、実施時期等に応じた形での評価をやっていく必要があるだろうということです。これらについての認識がまだ十分ではないという現状認識、問題意識の下で、こういうことをご審議をいただいたところでございます。
 また、世界的な評価については、このとりまとめの中では、世界的な視点での評価というような表現になっております。世界的なベンチマークを行うことについては、なお一層検討する必要があるという議論になり、この審議の過程で、例えば外国における研究者の方々に評価者としてやっていただく際には、様々な問題点等もあるというような点について議論をしていただいたという経緯がございます。
 また、評価者の育成につきましても、ご指摘の点がございますが、実際的な数字がここには用意できておりませんが、評価に従事する者が質量ともに不十分であるという問題意識があり、色々な形での人材育成・養成についてのシステムが必要ではないかということでご審議をいただいているところでございます。
 以上でございます。

【冨山委員】
 基本的な質問とコメントなんですが、これは「科学技術・イノベーションのための」と書いてあるわけで、ということは、これは多分、いわゆる市場経済型になっていく事業化とか産業化というフェーズと、それから公的部門・公的資金になっていく研究開発との間に多分イノベーションというフェーズがあるということを割と明確に意識されて、こういう書き方になっているのかと私は理解しています。多分、それが一番、シュンペーターの言うイノベーションに近い内容になるので。
 とすると、その間に明確にフェーズを置くということは、多分そのフェーズが意識されていて然るべきと思って話を聞いていたんですが、その辺については私の印象としては、ほんわかというか、曖昧になっている部分があって、これは当たり前のことですけど、いわゆる基礎研究、真理探求を目的としている基礎研究の段階と、イノベーションというのは、もう少しある意味で下世話な目的が出てくるわけですよね。突き詰めていえば国民所得になっていくわけですが、そのために多分税金を投ずるということが、ある部分では正当化されているんだと理解しています。そうすると、当然、そこに評価の価値観のある種の深化というか、変化が起きてくるべきでしょうし、そこに関わる評価者の顔ぶれも当然違ってくるべきだと思うんですが、伺ったストーリーだと、それが私にはあまり明確に見えなかったんですが、その辺はどんなお考えなのか、あるいはそういう議論があったかどうか、お聞かせ願いたいんですけど、よろしくお願いいたします。

【柿田計画官】
 イノベーションについては、捉え方に幅もありますが、川下と申しましょうか、出口付近でのフェーズに対応した部分で、どのような新しい評価の対応が求められるのかという事柄に特化した議論というよりは、今回は、いわゆる研究の段階で将来のイノベーションの源泉となる、非常に画期的な研究成果を生み出すことを促すような評価というものが、イノベーションに向けては重要であり、そのための評価の基準のあり方であるとか評価の観点のあり方について議論がなされたところです。

【野間口主査代理】
 評価の重要性というのは私も重々認めるところであるんですが、第3期科学技術基本計画から第4期にかけての評価体制がこういうふうに変わっていくんだというベクトルはわかるんですが、こういう姿になるんだというところが全くわかりにくいんじゃないかと。研究開発する人材は非常に大事でありまして、評価する人ばかりになってもイノベーションが進まないわけで、あそこも拡充、ここも拡充とやっていたのでは、人がどれだけいても足らないんじゃないか。だから、評価人材というのは、こういう人材を想定しているんだ、そのぐらいはやっぱり明らかにしなければいけないんじゃないかなという気がします。
 それから、ここで非常に議論を重ねていただいて、これは労作だと、私はそれは認めるんですが、大学の先生方の研究の評価というのに集中的に焦点が当たって、それがいいか悪いか、時代にかなっているかというような議論に終始しているんじゃないかなという気がします。この時代、新しい材料、新しい技術がどんどん生まれてきて、例えばナノテクといいますけど、ナノテクが生まれた場合、ナノパーティクルが人間社会に及ぼすリスク評価はせずにR&Dをやっていいのか。遺伝子の問題、これも遺伝子管理をどういうふうにしながらやっていかなきゃいけないのか。R&Dを正しい方向に向けるための評価とか、トップレベル研究に対する評価、それもやっぱり評価じゃないかなと。そういう視点も入れて、どういう評価体制に第4期科学技術基本計画は持っていこうとか、できるだけ早い段階でこういうことを考えよう、という提言がなければ、今、評価は色々問題だから拡充していこうというだけのことに終わってしまうんじゃないかなと思います。まだしばらく時間がありますから、今後練り上げていく必要があるんじゃないかなと感じました。

【二瓶委員】
 大変辛口なコメントが幾つか続いておりますが、私は全体として、現状の問題点を解析して大変よくまとめていらっしゃると思います。特に印象に残ったことを申しますと、まず、階層構造と階層間の関係が明確化させた評価システムについてです。つまり、政策-施策-プログラム・制度-研究開発課題、こういう階層に分けて評価を考えるということは大変重要なことだと思います。それから、これは今までも議論されていたことですが、多様な競争的資金制度、さらには多様な評価制度、これらはすべて、当然考えるべきことだと思います。
 議論を進めるために一例を挙げますが、日本化学会会員誌(2009年9月号)の論説欄に有本建男氏が書かれていることをご紹介します。日本で最近、競争的資金の議論でいつも問題にされる一部の大学に資金が集中して配分されているという現状、これがどうして改善できないのかということについてです。有本氏の指摘では、我が国の競争的資金はトップ10位ぐらいの大学までで、既に1位に対して配分比率10%ぐらいに落ちてしまいます。つまり急速に減衰するカーブを描きます。一方、アメリカの競争的資金では、今日の資料にも出ていますが、あのグラフの中から、NIHとNSFにおけるファンディング結果を抜き出しますと、配分比率が10分の1ぐらいまで減衰するまでの間に、大学の数で言うと80ぐらいあります。つまり、非常になだらかな傾斜のカーブになります。私が大変興味を持ったのは、アメリカといえども、すべての競争的資金の配分がなだらかなのではない。なだらかなのはNIH、NSFというように研究課題の多様性を重視する、日本でいうと科研費のような研究費、これは非常になだらかに配分されている。一方、DOEですとか、NASAですとか、DODですとか、ミッション・オリエンテッドな研究費に対するファンドは日本と同じように非常にシャープな分布なんですね。
 要するにファンディングの性格により評価基準を決めるべきではないか。先ほどの階層構造による評価という話がありましたが、我が国では、それぞれのファンドの性格を評価のシステムに十分反映してないのではないか。例えば人材育成をテーマに挙げるのならば、わずか10大学だけで日本の将来が決まるはずはないわけです。私、第1回の本委員会で申し上げましたように、中国では2,000万人の高等教育の学生がいる。日本はたかだか300万人ぐらいで、これは差が開きこそすれ縮まることはない。この現実で我が国の将来、どうやって科学技術主体で生きていくのか。そういうことを考えると、人材育成といってもトップ人材と幅広の人材と両方のレベルを高めていかなければならないことは明らかなんです。ところが、そういうことがファンディングの評価システムに反映されてない、それが現状ではないか。これを落ちついてよく考えますと、今まで出てきたご指摘の幾つかに答えが出ると思います。競争的資金の、その制度ごとに目的があるはずです。ところが通常、評価者は狭い意味での研究課題の良否だけしか見ていないところが最大の問題点ではないかと思います。
 以上です。

【小林傳司委員】
 今の議論と関係しますが、やはり階層性をつくるということによる評価の議論をしていますが、5ページに載っていたような種類というのは、これは時間スケールで書いていますので、どちらかというと横向けの時間の話をしているわけです。おそらく階層性から考えると、政策・施策のレベルの評価というのも、もちろん時間スケールはあるでしょうけれども、それは個々の研究プロジェクトレベルの評価とはおのずから違うということになるだろうと思います。そういう縦軸と横軸で階層ごとの横軸というのがあるだろう。
 そうすると、そのときに評価をする人間は、おのずから評価の階層によって求められる見識、知識や技能が変わるわけです。ところが、今のところ、振興調整費等のように、お金をつければ評価者が自動的に発生するかのような考え方でやっているわけですが、おそらくそういうやり方ではもうもたないと思うので、階層に応じた形での評価者を意識的に育てるという戦略が必要だと思います。その時に例えばPOやPDについてもそうなのですが、博士号を持った専門性のある評価者が当然出てくるという時代になるべきだろうと思います。

【伊地知委員】
 私はこの評価システム改革の議論に参画しておりました。それで、今まで委員の先生方からご指摘がある点について、幾つか触れさせていただきたいと思います。確かに階層はあるのですが、今までと今回の提言とで何が違うかというと、階層間をちゃんとつないでいるということです。それは何にかかわるかというと、既に今ご議論があったように目的に応じてやる(評価を行う)ということです。「大綱的指針」にはどう書いてあるかというと、対象でやっている(対象別に評価を行っている)わけです。例えば緑色の冊子「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」参考資料26ページ(すなわち、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」の8ページ)をご覧いただきますと、中ほどに研究開発課題の評価があります。もちろん「大綱的指針」では対象別に階層が分かれているわけですが、研究開発課題毎に終了時に評価をしたとしても、その上位の施策の評価へは何もないのです。階層を意識する場合には、やはり最初に政策レベルがあって、目的があって、その後、それを実現するために、各プログラムを立てなければいけない。そのプログラムに見合うプロジェクトとして何を選択するかという枠を考え、資金を使った後は、その配り方がよかったかどうか、さらに、次に配るときに役立つ情報も得なければなりません。もちろん、個々のプロジェクトをきちんと評価することも大事ですが、より賢い資源の使い方、エネルギーの使い方をするために、評価システムを改善していくことでできることがあるのではないか、ということで議論をしてきたと思っております。

【野依主査】
 ありがとうございました。
 次に、研究資金制度の問題について、ご議論いただければと思います。

【東委員】
 研究資金制度について、最近話題になりました最先端研究開発支援プログラムについてコメントさせていただきたいと思います。13ページ目に書いてあるように「公正・透明で質の高い審査・評価体制の整備」が謳われていまして、基本的には透明性・公正さ、これが非常に重要なのです。しかし、今回のケースでは予算がついて、それをどう配分するか決める選考過程で、透明さが欠けていると思います。特に選考委員がどのように決まったか外部からは見えません。つまり、このように謳い文句は非常に良いのですが、足元で起こっていることが、もう既に崩れているのではないかと思います。
 1つ提案があります。先ほど、海外の方の評価という話がありましたが、グローバリゼーションがネットワーク化によってこれだけ着実に浸透し、非常に加速している状況です。したがって、英語で提案を書くというプログラムがあっても良いのではないかと思います。それで、今回の最先端研究開発支援プログラムのように額が大きい場合には、海外を含めてその分野のトップの方々による評価も中に当然入ってきていいのではないかと私は思っています。今回は時間的に間に合わなかったなど、いろいろなことがあるとは思いますが、本来の姿はそういう姿ではないでしょうか。グローバリゼーションとネットワーク化に対応した評価といいますか、テーマ、プログラム構築、それから選択方法、それらを含めたものが必要になります。また、ネットワーク化すると、海外に全部情報が流れてしまう可能性があります。そのため、セキュリティー上、それは阻止しければいけません。非常に難しい面が一方にあるから、そちらの整備を片方で進めながらグローバリゼーションを進めていかなければいけません。二律背反かもしれないが、その両方を解決しないといけない、こういうことを提案しております。

【益田委員】
 資料2-1、2-2、あるいは、先ほどの事務局からのご説明の中にも、十分な基盤的経費の措置、競争的研究資金の一層の充実ということが出ております。このとおりになることが望ましいことは当然ですが、現実は、基盤的経費は徐々に減少しているのに対し、競争的資金は増加しつつあります。その結果、資金が一部の上位大学が偏っているのが問題であるとあります。仮に基盤的経費と競争的資金の和が一定だとした場合、教育水準を保つためにある割合の基盤的経費が必要であることは当然ですが、法人化後の競争的環境のもとで、競争的資金に重みが移るのはやむを得ないことではないかと思います。
 私は、日本の上位いくつか、たとえば、5つとか10の国立大学が、アジア圏の拠点となるような研究大学になることがきわめて重要であると考えています。その意味では、上位大学がそうなってくれるのであれば、競争的資金がそれら上位大学に偏っても一向に差し支えないのではと思います。その代わりに、これら上位の大学は責任をもって、徹底的な改革を図り国際的に通用する研究大学になっていただくことが必要です。ここでいう改革とは、大学院の学部からの独立性を高めること、大学院学生は留学生を含め他大学から集め、学生の流動性を高めること、アジア圏のトップレベルの学生が強い魅力を感じるような大学になること、そのためにも、将来的に教員に占める外国人の比率が数10%になることを目指すこと、学長選考の方法を改めると同時に、学長は外国人を含め外部から選考することなどです。現状はまだ到底それに近い状況とはいえません。
 一部の大学をアジア圏の拠点となる研究大学になるように改革するとともに、その他の国立大学は、決して資金が十分でない状況を踏まえて、大きな改革が必要です。大学内での分野の重点化はもちろん、これからは大学の枠を超えての再編、統合なども考える必要があります。そのためには、1大学1法人の仕組みも考え直す必要が出てくるかと思います。法人化第1期も過ぎつつありますが、環境の変化に合わせての大学自らの改革はほとんど進んでいるようにはみえません。
 基盤的経費、競争的研究資金の拡充は、いま述べたような本質的な大学改革を前提とすることがきわめて重要だと考えています。

【野依主査】
 基盤的経費についてですが、大学を対象にした場合には教育が第一義ですので、大学院生あるいは学生の実験・教育のための経費を充実すべきです。国立大学では、全ての学生は、53~54万円の授業料を払っている。そういう学生たちには、全て一定の教育環境を与えられるべきであり、等しくその権利があると思います。つまり、大学の名前や、先生の名声、あるいは先生の研究分野ということとは関係なく、ある一定の教育を受ける権利があるわけです。これが今、全然なされていないと思います。
 大学院生では、分野によっても違いますが、総じて学生一人あたり最低100万円ぐらいの実験教育費が等しく与えられるべきと思います。大学はそれを措置するべきであるし、国はそれをサポートする義務があります。今までの基盤的経費の議論は大学あるいは教員の立場に立った経費でしかないことで、大学生、あるいは大学院生の立場に立った措置であるべきだと私は思っております。

【益田委員】
 いま、野依主査が仰ったことに、全く異論ございません。

【フクシマ委員】
 今、東委員、それから益田委員がおっしゃったことに私は大賛成です。今回、お話を伺っていて、全体的にグローバルという視点がかなり少ないということが気になっていて、違和感がありました。先ほどから研究のための競争的資金が大体トップ10校に集中をしているというお話があり、益田委員からそれ以上分散しないでよろしいというお話がありました。私はグローバライゼーション指定校という制度を作り、1,2校を指定して、資金の配分をもっと本当に絞り込んでもよいのではと考えています。どこの大学でもよいのですが、ある大学とある大学に「これだけお金を出すから、研究活動をグローバル化してグローバル人材を育てなさい、今後5年間で何名かはこのようなレベルの研究ができる人間を大学院で育てるように」というような形で集中的に投資するということも1つの方法ではないかと考えております。私は専門外の人間なので、その辺が現実的に可能かどうかは分からないのですが、そのくらい極端に振らないと、少しずつ配分して広く遍く方式でしていても、進まないのではないかと危惧しています。片や韓国、中国が急速にグローバライゼーションに向かって進んでいますので、日本でも大胆な方策が必要ではないかと思います。
 そのようなことを申し上げる1つの理由として、前回も申し上げたかもしれませんが、立命館大学の九州の大分にあるパシフィックカレッジの例があります。全学生の8割がアジアからの学生で、残りの2割が日本人ということですが、アジアからの学生は学習意欲が高く、良く勉強するそうです。そういう環境では、当然のことながら、外からの刺激がありますので、気楽に入学してきた日本人も卒業までにはよく勉強するようになるとのことです。こうした例を見ても、指定校制度を実施し、少なくとも学生の2割か3割は外国人を入れるというような非常にドラスティックなことをしない限り、なかなか前に進めないのではないかという懸念があります。少し極端な話で恐縮ですが、グローバライゼーション指定校制度を提言させていただきたいと思います。

【本藏委員】
 研究資金制度と評価のことについて発言いたします。
 現在の例えば科学研究費でもそうですし、それから政策課題型の研究費制度でもそうだと思いますが、1つの問題点は、個別の課題について非常に詳しく評価する形がとれていないのではないかという印象を、自分自身がそういうものに関わってきた者として、そのような印象を持っております。アメリカと比較した場合、NSFやNIHの審査制度等との比較でよく言われるのがこのことです。私もNSFの個別の課題で、いきなり書類が送られてきて評価せよという作業をやったことが何回かあるのですが、1つの課題について40~50ページの厚さがあり、研究の中身については、それだけで論文のような形になっていて、もう既に論文ができているというような形なのです。それを読むと、中身の内容の審査がまさに詳しくできるわけですね。それに対して我が国の、日本の申請の多くは研究計画について非常に詳しく書いているという形になっていないと思います。そのため、評価をする側としては、本当に個別の課題、出されている研究計画を正しく評価できているかどうかということについて、いつも不安を感じます。つまり、中身、内容がNSF等に比べて貧弱であり、審査する件数も一般にはかなり多く、また、短い時間で審査することが多くて、本当に個別の課題を精査できているかという不安が自分の経験ではあります。先ほどの話であった、特定の大学に競争的資金が偏っているというのは、本当に審査をしっかりやった結果としてそうなっていると私は思っているのですが、実際にいろいろな大学に所属している研究者が出してきた個別の課題について、本当にきっちりと内容に沿って評価できているかということについては、ちょっと疑問も自分自身に感じるところがあります。
 それからもう一つ、PD、POの役割について触れられているところがあちこちありますが、これについても私も両方、現在やっていることもありますので、その点について発言いたします。先ほどそれぞれの階層ごとにどのような評価を行うかという話がありましたが、政策-施策-プログラム・制度-研究開発課題という構造になっています。どなたかご発言あったと思いますが、大学の先生方は個別の研究開発課題についての評価には慣れておられると思いますが、その上位の階層については評価できる人というのは非常に限られていると思います。そこのギャップを橋渡しする者がPDでありPOであろうと思います。しかし、そうではありますが、圧倒的に数が少ないですね。今、PD、POの数が非常に少ないと思いますので、このあたりを充実させるということについては大いに期待をしたいと思っています。

【西尾委員】
 少し具体的なことですが、先ほどご報告いただいた内容で12ページのポスドク問題は非常に重要です。その部分で、ポスドクとか若手研究者に対する研究資金制度に関して、今までと違って一歩踏み込んだ提案がなされており大きな意義があると思いました。この部分では、経済的な支援、研究費支援に加えて、新たな支援の仕組みが書かれています。つまり、ポスドクの方々が自ら希望した研究機関に受け入れていただけることをより確実にするために、そのポスドクのための研究環境整備の経費も受け入れ機関に措置できるとまで書いてあります。これは非常に斬新な仕組みであり、ポスドクの方々のモビリティが高まり、先ほどから議論されている研究者のモビリティ向上を実現するためにも有効な制度かと思います。今まで多くの議論がなされてきたように、ポスドクに関する深刻な課題はキャリアパスのことです。そこで、このような研究環境整備の経費まで措置する場合には、ポスドクの受け入れ機関に対して、受け入れたポスドクのキャリアパスを鋭意考慮することを条件として課すというのはいかがでしょうか。このような条件を課した運用を図れば、ポスドクのキャリアパス問題の解決に資するのではないかと思いました。とにかく、この部分に書かれている制度は非常に魅力ある制度だと思います。

【白井委員】
 全体的に現状に関する分析、問題意識については、今の西尾委員のご意見にもあったように、あちこちに斬新な意識があるし、面白いなと思います。ただ、最初にありましたが、具体的な制度として、どういうふうにやるのでしょうか。方法などが必ずしも記述されているとは言えないという意味で、もう少しそれぞれの指摘された欠陥を、どのように現実に担うのかということを述べていただきたいなという気がしました。
 随分変わる可能性は持っていると感じたのですが、これから第4期科学技術基本計画をやっていくとすると、これまで以上に大学の研究開発における役割、とりわけ基礎的な部分の役割というのは、一層大きくなると思うのです。そうなると、例えば基本的な考え方、11ページに我が国の研究者間や大学等、公的研究機関、企業等の組織間の切磋琢磨を促すのはいいのですが、こういう単位の競争関係、これまでやってきたような各大学がそれぞれプロポーザルを出して、あるカテゴリーに応募して、その中で一番いいものを選ぶという単純なやり方で果たしてもつのかということですよね。ですから、今の大学というのは、やはり教育を中心にして、特に我々の早稲田大学もそうですが、組み立てています。そうでなければ自分たちの義務を果たしてないと思います。
 しかし、そのようなことを考えると、研究開発について、多くの大学が本当に適した機関であるかどうかというのはかなり疑問になります。特にトップの大学についてはもっとしっかり研究ができる体制の整備を行い、その研究体制を中心に考えて、教育を織り込まなければいけないのですが、そこのところをもう少し考え直さないと、あまりにも研究体制が脆弱だということが言えると思います。全部の大学に同じように研究体制をとりなさいというのは全く無駄な話と思います。ですから、先ほどもありましたけど、競争でやるということも大事だけど、ベースになる場所、研究の本当にできる場所というのは、しっかりつくることが必要です。これは競争で作るのではないと思います。競争的資金がたまたま多く来て、間接経費も来たから、だんだん良くなるというのは何か寂しい気が私はします。

【大垣委員】
 基盤的経費を措置するということの中身の確認をさせていただきたいのですが、野依主査が言われたように教育が重要であることは、そのとおりですが、ただ、例えば先ほどの知識のための科学というか、基礎科学分野を充実し、将来の人材を確保していくという意味で言いますと、むしろ基盤的経費の措置というものは、具体的に言うと運営費交付金を減らしているのを減らさないようにするとか、少額の科研費の総額を増やすなど、具体的に基盤的経費への措置ということを提案する必要があるのではないかと思います。

【野依主査】
 少額の科研費を増額することは結構ですが、また一極集中になります。よって、健全な教育を行うためには違うコンセプトでないといけないと思います。

【元村委員】
 大垣委員のご意見に賛成します。昨日でしたか、OECDの調査で日本の公教育支出がまたもや先進国最低レベルというか、下から2番目でしたけれども、あのような現状を見るにつけ、「何が科学技術立国だ」と思ってしまいます。これから大学の機能分化、つまり、研究に特化する大学と、教育をきちんと厚くする大学という機能分化が自然に起きてしまうことは間違いありませんし、それを否定はしません。でも、それだったらなおさらに運営費交付金を手厚くする、きちんと最低限の経費は交付して、最低限の研究と教育を受ける権利を保障するというのが当たり前の国の責任だと思います。民主党のマニフェストの中にも「運営費交付金削減を中止する」という記述がありましたが、それが着実に実行されるかどうか、私はきちんと監視しておきたいと思います。
 それと関連して、研究を活発にしてイノベーションを生み出していくという、その方針を合意した場合に、イノベーションがどこで生まれるかということをきちんと踏まえて、そこにお金を落としていくという、2段階の作業が求められると思いますが、前者のことに関して、異分野とか新領域をきちんと評価してお金を落としていく仕組みが必要だなと思っています。ある研究者と世間話をしていましたら、その人は生物の分野から、生物と数学の融合領域に移りつつあるのですが、ちょっと足を踏み入れたと思ったら生物の分野への研究費申請がままならなくなったそうです。つまり、生物の方で申請を出すと、「俺たちの財源を邪魔するな」と言われ、数理科学の方だと財源が少ないので、なかなか研究費が当たらないようです。また、評価する人にも問題があり、例えば数理科学が専門の人は生物のことを全くご存じない人が多く、「申請書を見ても全く分かってもらえず研究費が当たらない」と嘆いておられました。イノベーションを進めるには新領域と、資料にも入っていますが、それを評価する人がいないというのでは本末転倒なので、PO、PDの養成も含めて、評価者をきちんと育てていくということが絶対に必要だと思います。

【野依主査】
 運営費交付金の問題について、応援演説、大変ありがとうございました。しかし、問題は、今、関心が1%減らすか否かということに誘導されているところです。もしOECDの標準に合わせるのであれば、1%減を取りやめるのは当然で、むしろ運営費交付金は100%増でなければいけません。対GDP比0.5%を1.1%にするためには3兆円必要です。

【元村委員】
 私の言いたいのは、最下位レベルから上がれという目標ではなくて、最低限の手当てはするのが当然だという話です。

【野依主査】
 そのために、OECDの平均の水準にするのにまだ3兆円足りません。それを百数十億円、あるいは数百億円の問題に、関心が誘導されています。もっと抜本的な改革をやらなければ、日本は科学技術創造立国になり得ません。世界水準の半分の額でどうして世界と対抗していけるのですか。現実をもっと直視すべきです。

【元村委員】
 では、それをみんなで話し合いましょう。

【野依主査】
 ぜひ新聞で大々的に取り上げていただきたいと思います。よろしくお願いします。

【丸本委員】
 私も今日、これを読ませていただいて、大変重要なことがたくさん書いてあるなと思っております。その中で大垣委員や、野依主査がおっしゃった最低の教育を確保するということが一番大事だろうと思います。特に地方国立大学の立場から申させていただきますと、今、財政的には大変困った状況にはありますが、こういう国の財政状況の中で運営費交付金が減るのはやむを得ないと思います。一方で、競争的資金をしっかりとりながら教育の質と研究の質を確保するには、色々な方策があると思うのですが、本日の資料には「競争的資金制度の多様性を確保していく」となっています。この具体的な方策にどういうことが盛り込まれているのか、わかりませんが、これは今後の研究資金の確保の方向として重要ではないかと考えられます。
 特に国立大学の場合、大学の種類がいろいろ違いますので一様にはいきませんが、私どものような地方の総合大学では、競争的資金獲得額を見ていただきますと、東大に比べれば何十分の一という大変少ない額しかありませんが、それなりに頑張っています。そして、イノベーションにつなぐような世界的レベルの研究も中にはあります。ですから、運営費交付金以外にも多様な競争的資金獲得制度ができると大変ありがたいと思っているところです。

【野依主査】
 イノベーションについて私も少し発言させていただきます。イノベーションのための研究開発システム改革における基本的な考え方は、「研究開発を推進する上で基盤となる仕組み」を整備し、研究開発を推進し、その成果をイノベーションに結びつける仕組み等まで幅広く対象とするシステム改革をするということです。
 私の考えは、1つは、もちろん産学官の連携をしっかりするということです。一方で、公的資金制度の問題について言えば、ここは文部科学省の委員会ではありますが、経済産業省、農林水産省、厚生労働省といった、出口に近い、イノベーションにより関係する省庁がしっかりしたファンディングシステムを作って、そこから潤沢な資金を基礎研究を担う大学セクターにも導入することが必要です。そうすることによって、今、研究費が潤沢でない大多数の大学、あるいはそこの研究者を活かすことができるわけです。そういったファンディング・エージェンシーのPO、PDの価値観は、文部科学省関係のJSPSやJSTにいるPO、PDとは違います。それをやることによってアメリカと同じようなイノベーションにむけた目的基礎研究の推進のためのマルチファンディング制度ができるわけです。一極集中の問題は、今の国立大学、私立大学へのファンディングの殆どが文部科学省関係にあり、同じ価値観を持ったPO、PDおよび関係者によって運営されていることに根ざします。
 私は、ぜひ各省庁が、経済産業省、農林水産省、厚生労働省がしっかりとしたファンディングシステムをつくって、今のような傘下の研究所にお金を流すだけでなくて、しっかりした基礎研究力をもつ大学セクターにお金を流すことが必要だと思います。アメリカでは、NSFだけでなく、NIH、NASA、DOD、DARPAなどがそれをやっています。それによって大学でもさまざまな価値観が生まれ、そして活性化するわけです。例えば、すでに著名な大学は、言ってみれば伝統的な科学のための科学、あるいは学術のための研究を引き続きやる傾向にあります。しかし、それ以外の大学は、その他にもっとイノベーションに向けた特色ある取り組みをすることができると、私は思います。このシステムは、この委員会ではあまり主導できるとは思えません。ぜひ総合科学技術会議でご検討の上、主導していただきたいと思います。厚生労働省、農林水産省、経済産業省が目指す施策、あるいは目的を達成するために、やはり基礎科学力がなければいけません。それの担い手は、私は今の日本においては大学だと思います。加えて、新技術については慎重に開発・実施と規制の整合をとる必要もある。その仕組みをつくることが基礎科学とイノベーションを具体的につなぐメカニズムではないかと思っております。私は基礎科学力を強化すると共に、我が国のライフラインを長期的に維持するための研究システムが不可欠だと考えます。

【柿田計画官】
 今の野依主査のお話の関係ですが、厚生労働省の厚労科研費ですが、平成18年度について、どのセクターに配分されているかという割合ですが、金額比で大学に対しては35%ということでして、それ以外は独立行政法人、医療関係のセンター、国立試験研究機関になっております。今のご指摘は、大学についてもっと増やすべきだということかと思います。

【野依主査】
 以前より大分進んできていますね。

【柿田計画官】
 そのように思います。

【野依主査】
 しかし、やはり絶対額が足りません。

【柿田計画官】
 そうですね。

【野依主査】
 アメリカの強みは、医療とライフサイエンス等に関して言えば、NIHの存在が圧倒的です。よってアメリカのライフサイエンスは基礎も非常に強く、そしてTR(トランスレーショナル・リサーチ)もしっかりしている。しかし、他省庁のお金が増えることで、またトレードオフの関係になると良くありません。決して十分ではない文部科学省のお金はきちんと維持した上で、他の科学技術関係の省庁がしっかりしたファンディング・エージェンシーをつくり、しっかりしたPO、PDを置いて、しっかりした施策をつくる。そして、基礎とつなげていくということが大事であると私は思っております。

【白井委員】
 今、野依主査が仰ったことに尽きるのかもしれませんが、あえてつけ加えさせていただければ、そのシステムの中にコミュニティという意見が確かにある。ですから、ファンディング・エージェンシーをしっかりやるということ、これも分野ごとに相当強固なものにしていくということと、それから、そこに若い人たちもいろいろな形でコミットできるようにするということはすごく重要だと思います。その中に先ほどグローバリゼーションという話がありましたが、若い人――若い人が適しているかどうかわかりませんが、いろいろな形で海外の他の国の政府のアドバイザーとか、NIHに出したっていいんですよ。そのように色々なところに人を出して、それで世界で自分の分野がどのように動いているのかということを常に見させて、そしてお互いの仲間で議論させていく、そういうことの下でファンディング・エージェンシーが動くと私はいいと思います。
 今回、評価とプランニングという階層制の話がありますよね。これをしっかりつくることはすごくいいことで、その中のファンディング・エージェンシーはものすごく根本だと思いますけど、その中に若い人がかなりの数、私は何かの形で織り込まれていくと思います。それから、海外の機関に大勢人を送って、色々な世界をみんなに経験させてみる、必ずしも研究を毎日やっていればいいというものではありません。1年間、どこかで色々なことを見てくるということが研究を全然変えるかもしれない。そのようなことをこれから大いにやっていくべきだと思います。例えば、ポスドクを全員雇って、そういうところに出して、みんな修行させればいいと思います。

【野依主査】
 ありがとうございました。引き続きまして議題3「社会と科学技術・イノベーション政策との連携強化」について、ご審議いただきたいと思います。
 事務局から説明してください。

【柿田計画官】
 それでは、資料3-1及び3-2をご覧いただきたいと思います。社会と科学技術との関わりというテーマです。
 まず1ページでは現状と課題ですが、科学技術に関する国民の興味・関心について、国民全体の関心は高まりつつある一方で、若い人を中心に関心度が低下傾向にあるという現状です。また、科学技術を身近に感じる機会がなかなか周りにないということ、そのような人の割合が増えているということです。他方で、社会の新たな問題は科学技術によって解決すると思うという割合も大幅に増加しています。特に環境、エネルギー、食料、防災等、これらが科学技術が貢献する分野であるというような回答が多いということです。
 2ページは、科学技術コミュニケーション活動ということで、科学技術について知りたいことを知る機会、情報提供する機会が十分であると回答した割合が増加傾向にあるものの、まだ22%と低い。また、博物館、科学館等の数は、微増ではあるものの、入館者の数は横ばいという現状です。
 3ページです。科学技術・イノベーション政策の実効性の確保というテーマにしておりますが、研究開発の成果をイノベーション、さらに社会還元するにあたって、隘路となっている外部要因というものがある。特に市場が小さく、公共調達が必要なものについては、その調達側のニーズまで対応した研究開発、あるいは実証試験がなかなかできないために、うまく公共調達に至っていないというようなことでありますとか、医療・医薬の分野で十分な安全性等を評価する技術基盤がないといった問題もあります。
 また、倫理的・法的・社会的課題への取り組みとして、科学技術が進展すればするほど、こういった倫理的な課題への対応が必要になってくるということです。
 5ページからが今後の社会と科学技術の連携強化に向けてどうあるべきかということです。いわゆるブダペスト宣言から10年になるわけですが、科学技術の進展によりまして社会・国民に及ぼす影響、あるいは倫理的な問題等が大きくなる中で、社会と科学技術の関係は、より深化しています。
 今後、単に科学技術の進展ということにとどまらず、イノベーションを通じて社会の価値を創造していくということが要請されており、そういった意味では解決すべき課題であるとか、社会的なニーズ、これを的確に把握するという意味で、政策の実施主体である国と社会・国民が一層密接なかかわりを持つということが不可欠になってくると思います。
 今後の科学技術政策を考えるに当たりまして、科学技術の単なる推進政策にとどまらずに、社会・公共政策の一環としてこれをとらえていくという視点が極めて重要になると考えます。
 そこで、この委員会でも第4期科学技術基本計画に求められる基本姿勢の1つとして、「『社会とともに創る』科学技術・イノベーション政策」ということを議論いただいておりますが、その実現に向けて社会との連携強化、そのための具体的な方策をとっていく必要があるということでございます。
 7ページには、社会との関係深化に向けての取り組みということで、国民の政策への参画、あるいは政策の理解、これを一層促進していくことが不可欠であるということで、8ページですが、国民参画の促進に向けて、例えば科学技術政策で解決すべき課題、あるいは社会のニーズ、科学技術の成果が社会に還元される際の課題等について、国民を交えた円卓会議の開催であるとか、政策・施策の企画・立案、推進に際して国民の幅広い意見を聴取するような仕組み。また、市民団体等によるさまざまな活動や、社会的課題に関する調査・分析に係る取り組み、これらを国が支援していくということが今後大事になるのではないかと考えられます。
 9ページは、科学技術コミュニケーション活動です。これは国と国民との双方向でのコミュニケーション活動を進めていくということで、特に国民の科学技術リテラシーの向上に資するために、これも目指すべき国の姿の1つである「科学技術を文化として発展・継承する国」に結びつくものであると考えます。
 10ページにコミュニケーション活動の展開として、まず、我が国が目指す科学技術リテラシーのあり方について幅広い視点から検討をしていく。また、さまざまなセクターがとるべき取り組みのあり方、これについて検討していくことが必要ではないかと考えます。
 また、科学技術コミュニケーション活動や、博物館等で行われるさまざまな取り組みを国が支援していくことや、科学技術コミュニケーションに係るボランティア活動の支援、あるいはコミュニケーターの養成、さらにはそういった人材の活躍の促進を進めていくということが必要であると考えます。
 11ページは、アウトリーチ活動について、こういったアウトリーチ活動の普及・定着のための専門人材の養成・確保、これらも必要になると考えられます。
 13ページは、政策の実効性の確保について、まず政策の企画・立案、推進に当たって透明性を高めるということと、国民に対して情報を積極的に発信していくということが基本であります。また、科学技術活動を取り巻くさまざまな規制であるとか、公共調達、あるいは研究機関の周辺環境などの外部要因、いわゆる隘路の解消まで組み入れたシステム改革が必要になります。
 14ページの推進方策ですが、まず科学技術基本計画等に関する説明責任をしっかり果たしていくために、第4期科学技術基本計画を受けて、具体的な推進戦略が策定されると考えられますが、そのレベルにおいては、誰がいつまでに何をやるのかということを明確に位置づけ、また、政策の推進状況についてはきちっとフォローアップをして、国民に対して発信し、またその意見を政策に反映するということであります。
 また、隘路の解消については、総合科学技術会議を中心に、隘路となる規制・制度を特定し、また、その改善方策について関係省庁を交えて議論し、特区制度も活用しながら、その解決を図る制度的な枠組みを整備していくことが求められると思います。
 また、規制等に関して、いわゆるレギュラトリーサイエンスを充実していくことが必要になります。また、公共部門においても、利用側の省庁と技術を持つ研究機関、ここが社会実装まで視野に入れた連携開発システムをつくっていくということでありますとか、研究機関における国際化の推進に関し、国際戦略のテーマのところでも議論いただきましたが、外国人研究者の家族の就労・医療・教育等も含めた周辺環境の国際化をきちっと進めていくことが必要になります。
 15ページは、倫理的・法的・社会的課題への取り組みに関し、科学技術が進むと、社会に及ぼす影響というものも色々出て来るわけですが、科学技術を担う者が倫理的・法的・社会的な課題を的確にとらえて行動していくための指針を国際動向も踏まえながら策定していくということが求められると考えられます。
 また、いわゆるテクノロジーアセスメントのあり方についての検討でありますとか、こういった社会との関わりについて専門的な知識を持って活躍する人材の育成・確保、このための教育プログラムの開発といったことが必要になると考えられます。

【野依主査】
 ありがとうございます。それでは、今の説明を踏まえて、社会と科学技術の連携につきましてご議論をいただきたいと思います。

【冨山委員】
 イノベーションの隘路の話です。この話は、先ほどの野依主査の話と重なる部分があると思いますが、私自身の体験として、この隘路ですごく苦労することが多くて、例えば厚生労働省関係で言うと、実際に諸々の規制や、色々な認可プロセスというのがあり、日本で事業をやるなと言っているのに近いものがいっぱいあります。それで、今、ユーテックという東大のベンチャーキャピタルのアドバイザーをやっていますが、そこで1つ上場に成功した会社があります。これは東大医科学研究所の免疫力でがんを抑えるという技術を使っているのですが、実はこの隘路があまりにも狭いので、最初から認可するのを回避して、100%自由診療型でやったおかげでうまくいったケースがあります。ここは実は官庁をまたぐ問題になってくる――先ほどの話と同じなのですが、なってくるという問題と、官庁自身のインタレストが逆方向に向いているケースが多いので、結局、そこの調整機能を果たせないと、要は政策・施策がお互い逆向きに向かっちゃって、相殺されてゼロになってしまうという現象が日本では非常に多いので、そこのコーディネーションをどうしていくかというのは、これはかなり具体的なレベルで議論していかないと、どんどんどんどん取り残されていきます。諸外国はその辺のコーディネーションはうまくやっています。特にアメリカは非常に上手くやっているので、日本でも、それをやっていっていただきたいという話と、そうすると、どうしても具体的に経済産業省や厚生労働省の領域に踏み込むことになります。そこは今、省庁縦割りをブレークスルーしようという流れで、新政権もそう言っていますから、是非、文部科学省にも図々しく、通りを渡って向こうの方に行っていただきたいなと思っております。頑張ってください。よろしくお願いします。

【小林傳司委員】
 第3期科学技術基本計画に書かれていたものから見ると少し前へ進もうという意欲が見えて、私は非常に評価したいと思います。特に科学技術基本計画というのが、科学技術の振興政策ではなくて、社会的公共政策の1つとして位置づける。そして、その中でイノベーションや、科学技術振興政策というのが議論されるという、そういう構造にまずシフトするというのは非常に大事なことだと思います。例えばアメリカでも、それからイギリスでもそうですが、大統領の科学顧問、首相の科学顧問という人がおりまして、そこでのある種公共政策的な観点から科学技術を考えている。実際、ヒトゲノムの解読が終わったときに大統領と大統領の顧問とで色々と発表したわけですが、その時には日本の貢献は全く触れられなかったという、ある意味で日本の科学技術外交の敗北に終わったという、そういう事例もありました。そういう点では科学技術というものを非常に公共的な課題としてまず位置づけるという、この視点は私は非常に評価したいと思います。
 その上でやはりシステムの問題が一番大きくて、それから人材をどう育成するかということです。今、冨山委員もおっしゃったようにシステム的な部分で非常に問題が多いわけでして、その点ではどういうふうにしてこういうことを考える人材をつくるかということを意識的にやらなければ、これから上手くいかないだろうと思っております。その点で、例えば第3期科学技術基本計画においては、科学技術コミュニケーター養成に関しては一定の着手と、それから成果が出てきたと思います。問題は、そういうシステムが社会の中で実装されていくためには、まだまだ数年間の雇用という形では専門性が伸びていかない状況にあります。また、そういうタイプの人材というのは、知財とか、産学連携とか、さまざまなところに必要になってきます。先ほどの評価の人材のところでも言いましたけれども、政策とかそういうところには対応した人材が必要なわけですが、そういう人材を日本の大学セクターはつくるようなシステムを持っていないというところが非常に大きな問題だと思います。
 そのあたりのことを、まず第4期科学技術基本計画では時間をかけて取り組むということが非常に大事だろうと思います。つまり、いわゆる実験室で研究する人間ではなくて、そうじゃない部分、広い意味での研究支援人材を意識的に養成する。これは時間がかかりますので10年ぐらいはかかるだろうと思いますが、それを今からやっておかなければ分厚い研究体制は作れない。今回の会議の最初の方でも、研究支援人材が日本では圧倒的に不足しているというデータを見せていただきましたが、そこにはコミュニケーターから含めて、またさまざまなイノベーションの隘路をつなぐ人材を含めた、そういう多様な人材を意識的に養成するという課題があるだろうと思います。それが科学技術と社会の間の一番大事なコミュニケーションのポイントではないかと思っております。

【野依主査】
 今お話しのあった科学技術コミュニケーターですが、人材は育っていると思いますが、そのキャリアパスが開けないという課題があります。

【小林傳司委員】
 開けないのです。

【野依主査】
 科学技術のコミュニティが本当にそのような人たちを大事だと思うのであれば、彼ら、彼女たちを処遇する仕組みが必要です。

【小林傳司委員】
 若干提案させていただくと、いわゆるプロジェクト研究経費というのがありますね。あれでコミュニケーターを雇用するということは可能なのですが、その場合、そのプロジェクトの宣伝だけになってしまいます。幾つものプロジェクトに分かれていると、それぞれのところで狭いコミュニケーションをやるわけですが、そのような人をプールできるような形で、そういう研究支援人材に関しての合算使用ができるような、そういう仕組みをつくっておくと、もっと多面的な形で活躍できる。あるいは大学単位でも幾つかのプロジェクトを持っていれば、そこの部分だけは合算使用するとか、間接経費の利用も可能にするとか、そのような資金の仕組みを、その問題に関して少し問題提起しておかなければ、非常に狭いところに時間的、空間的に閉じてしまい、結果的に消えてしまうということも起こります。
 例えば、東北大学の大隅先生のところは、ご自分のプロジェクトのところでコミュニケーターを雇われましたが、最近、理学研究科全体の広報、コミュニケーションを担当するという形の役割を与えることをされたようですが、例えばそういう使い方とか、そういうものを幾つか組み合わせていくというのが、これから非常に大事になってくると思います。

【元村委員】
 私もサイエンス・コミュニケーター養成の一翼を担わせていただいているのですが、本業の新聞記者をやりながらかかわるのは大変に忙しいです。全国の大学からお声をかけていただいて、本業の合間にあちこちに授業に出かけている状態です。つまり、サイエンス・コミュニケーターを養成する人がいない、養成システムがないというのが現在の大学が直面している問題です。教科書がない、何を教えていいか分からない。だから、まず人を育てる人材を育てなければいけません。これが1つです。
 それから、この資料ですが、すごく踏み込んでまとめていただいて、すばらしいと思います。でも全体として、やはり官僚さんが書かれた文章ですので「上から目線」が満載です。例えば「国民の意見を幅広く聴取し」と書いてありますが、聴取という見方をする限りサイエンス・コミュニケーションは成立しません。「円卓会議をつくる」と書いている、この精神に私は期待して、本当に国民と話し合ってコンセンサスをつくっていくという意識改革を、まず官庁からやり直さないといけないということをあえて言いたいです。
 それから、サイエンス・コミュニケーターのキャリアパスが保証されていないと野依主査がおっしゃいましたが、イギリスでは、例えばサイエンス・コミュニケーションを勉強した人材が環境省(環境局)や、科学技術局など省庁に専門職として採用されています。そこで広報を担当したり、省内のコンセンサスづくりに働いています。そういったキャリアパスも、これから開拓すべきであると思います。

【野依主査】
 元村委員は少し例外的ですが、科学技術コミュニケーターの問題は、科学者のやっていることや科学の内容を通訳して一般社会に伝える、これが現在の主な任務となっていることです。しかし、現実はもっとさらに進んで、科学技術の社会に物申す力を持つ、これが大事だと言われています。ジャーナリズムにおいて、新聞社でも政治部や社会部、経済部が力を持っているのは、政治家に対して、あるいは経営者に対して物を言い、自分たちがそれをガイドしていくのだという気概があるからと思います。

【元村委員】
 はい。

【野依主査】
 ですから、これからの科学技術コミュニケーターというのは、ちょっと名前に問題があるのですが、通訳者、翻訳者ではなく、むしろ科学技術の動き、活動全体、社会全体を見て、やはり影響力を持つような人が育つことが望ましいと思います。

【元村委員】
 資料の11ページに「アウトリーチ活動の促進」という項目があって、これを入れていただいたのも大変うれしいのですが、本当はアウトリーチ活動だけでなくて、プロジェクトを立案する、あるいは申請する段階からコミュニケーターが入るべきだと思います。彼らの役割は、研究の成果を分かりやすく翻訳して伝えるという程度の軽いものではないと私は思っていますので、この11ページの「一定割合をアウトリーチ活動に充当することを促進する」ではなく「義務づける」が最低ラインであり、本当はアウトリーチ活動以前からサイエンス・コミュニケーター、あるいはサイエンス・コミュニケーション活動に特化した専門人材を入れていくというぐらいの気持ちで、第4期科学技術基本計画とは別に戦略を作ってもいいぐらいだと思っています。

【野間口主査代理】
 何人かの方から大変いい意見が出ておりますが、私もサイエンス・コミュニケーターと、それから隘路について2点申し上げたいと思います。まず隘路のほうですが、これを明示的に取り上げていただいたのは大変良いと思います。研究開発でも何か非常に大きなパフォーマンス上の成果もありますが、いろいろな課題も抱えるわけで、先ほど評価のところで申しましたが、コストパフォーマンスという言葉がありますけれども、リスクパフォーマンス的な評価をして、だけど、社会内存在として、この研究開発の成果を使っていくのだということを社会的合意として使っていくと、そういう社会でなきゃいけないのではないかと思います。例えば原子力の問題等で、都合が悪いから、この話題は取り上げるのを止めようということではなくて、againstの立場でもforの立場でも、そこで合理的な意見を闘わして議論した結果、こういう選択をしていくようにつながるような形の第4期科学技術基本計画であってほしいなと思います。
 これが倫理的・法的・社会的課題と、そういう目で見ますと、ここで取り上げてもらうべき課題は、ものすごく色々あるのではないか。例えばブロードバンド社会がどんどん進みますけれども、ブロードバンドの進展によって、いろいろ考えるべき課題もまた出てきておりますし、環境については、環境阻害要因はアブソリュートにゼロにしようとすると、また違った弊害も出てくるわけで、全体としてどこがいい選択肢だというようなこと、そういう考えを導くためにも勇気ある取り組みをやっていく時代に来ていると思うわけです。
 それから、コミュニケーターの話ですが、私もコミュニケーターの育成に関わっておりますが、そういう人材は既にかなりいると思います。我々は非常にアクティブに活動しているところだけに注目しておりますが、例えば今、社会的な問題になっていますポスドクの問題とか、あるいはシニア人材とか、そういったところにちょっと目を広げて考えてみて、サイエンス・コミュニケーター的な機会を与えたら、かなり活躍してもらえるような人も出てくるのではないかと思いますから、あまり単純に枠を決めるのではなくて、多様な人材を活用していくのだと。そういう視点でここは具体的な策に持っていくような方向づけ、書き方にしたら良いかなと思います。

【小杉委員】
 科学技術コミュニケーションのかかわりで、ぜひ初等・中等教育との関係をきちんと考えていただきたいと思います。博物館や美術館が初等・中等教育の中にきっちり位置づけられてないと非常に不満に思っています。国によっては博物館の中に学校の教室があって、1日そこで授業をするのはごく当たり前というような国があります。そういう中で初等・中等段階の教育の中にしっかりと科学技術の成果が生かせるような仕組みづくりからしていかなきゃいけないと思います。今、学校の先生方が理科の実験が苦手だとか、色々な話がありますが、そこにむしろ科学技術の側から初等・中等教育段階に合った、さまざまな提案をしていくことができるのではないか。そういうことを是非コミュニケーターには期待したいと思います。

【白井委員】
 野間口主査代理の意見とほとんど同じことなのですが、サイエンス・コミュニケーターはもちろん大事ですし、この資料に書いてあることはかなり踏み込んでいるとは思います。ただ、このトーンは、やや20世紀的だと思います。今、科学技術の開発対社会というとらえ方、対社会というトーンが、私はあまり適切じゃないと思います。第4期科学技術基本計画というときに世界に対して科学技術を我々はどういうスタンスで社会的にこれから位置づけてやっていくのかということの方がもっと表に出なきゃいけなくて、そのためには社会科学的なアセスメントというのか、さっきレギュラトリーサイエンスがあったのですが、そういうものもしっかり位置づけてやるということを、要するにインフラですね、研究開発のまさにインフラ整備を僕はやるべきだと思います。

【小林傳司委員】
 今のポイントは非常に大事でありまして、日本では科学コミュニケーションをやっているのは、JSTでは理解増進部という言い方をしております。この言葉は元々パブリック・アンダスタンディング・オブ・サイエンスを無理やり訳した言葉ですが、現在、欧米はパブリック・アンダスタンディング・オブ・サイエンスなんて言い方はしておりません。パブリック・インボルブメントとか、パブリック・エンゲージメントという言い方をしています。そして、テクノロジー・アセスメントというのは、先ほど野間口主査代理も、ナノテクノロジーに関しては、そういう問題が出ているとおっしゃいましたが、まさしくそうでありまして、今、白井委員の言われたように、社会と科学技術の間は対立的ではなく、どうやって協働的に作っていくかという時に、テクノロジー・アセスメントというのは、かなり幅広い概念として入れる必要があります。テクノロジー・アセスメントがまともにない先進国は日本だけだということは、ぜひ皆様に1回考えていただきたい。これは何らかの形で考えていかないと、これからの科学技術というものを、世界に対してどういうふうなポジションで日本が科学技術を振興させるかというのは言えなくなっていくと思いますので、そのあたりをちょっとお考えいただきたいと思います。

【永井委員】
 まさに今のサイエンスが社会と深く関わるという話ですけど、医療もそうですし、疫学の研究も、工学もそうだと思います。例えば3ページ目のスライドは新しい技術が社会に受容されるかどうかというとらえ方だと思いますが、必ずしも技術が新しいか古いかということではなくて、古い技術すら、少人数ではなくて大量の数の人の集団の中で評価しないといけないという問題になってきています。これからのサイエンスにおいて、人、あるいは人の集団を対象とした研究では、ある点では科学と社会は対立関係にあるかもしれませんけれども、その成果を今度、社会が享受するわけですから一方通行ではないはずです。その辺のとらえ方が非常に重要で、まさにそのために人を対象とした研究を支える人材育成であるとか、もちろん研究費もありますし、育てる人材のためのキャリアパス、サイエンス・コミュニケーター、そういうことが大事なんじゃないかと思います。

【長我部委員】
 イノベーションの隘路に関しまして、冨山委員や野間口主査代理の意見に賛成なのです。大学と産業の中間で人材のアンマッチが起こるというのは、科学技術投資と、その後のイノベーション政策が連携していないということになります。例えば薬事法、治験ですとか、電波法、周波数の割り当て、こういったレギュレーションによって、せっかくの科学技術的発見が日本でできても、それが産業に結びつかないとか、グローバルな企業から見て日本がプレーをするのに適した場所ではない。そういう例が非常に多いですし、私自身もそういうことを経験しています。
 そういう意味では、先ほどの冨山委員のお話にあったように、文部科学省の側からでも、ぜひ出口側に近い省庁に大きくそういう働きかけをして、省庁を縦割りではなく、日本全体のシステムとして川上の科学技術からイノベーションを起こして産業化すると、そういうところまで一貫した流れをつくっていただきたい。そのためにはレギュレーションをつくっている基本思想が、先ほど野間口主査代理がおっしゃったようにリスクをアブソリュートゼロにするというところにあると思いますので、そこはやはりサイエンスを使って、リスク評価の議論をやって、それをサイエンス・コミュニケーションとして国民の皆さんとしっかり議論した上で、レギュレーションを組み立てて、トータルとしてイノベーションシステムが働くような、政策をやってほしいです。そのためには、こういった報告書の中でファクトをぜひ調べていただいて、事実に基づいて、提言をしっかりしていただけるといいのではないかと思います。

【野依主査】
 社会との関わりということになりますと、当然、他省庁を多く巻き込んでやらなければ何もできません。横断的に他省庁に色々お願い申し上げる、物申すというトーンがあっても良いと思います。

【柿田計画官】
 14ページの真ん中の2番の隘路の解消の最初のところですが、もちろん今、長我部委員もおっしゃられ、また冨山委員もおっしゃられたように、文科省が他省庁に対して働きかけるということもあっていいと思いますが、基本的に必要なことは、政府全体、あるいは関係省庁が1つの土俵に乗って隘路を解消していくという、そのシステムづくりをやる必要があると思っています。

【野依主査】
 相澤議員、よろしくお願いいたします。

【相澤議員】
 今日は、いろいろなところで省庁の壁のお話が出てまいりました。これはまさしく総合科学技術会議がやるべき仕事であり、現実にその省庁の壁をどうやって突破し、そして、それをどう効果的に発現するかということに常々取り組んでいて、いろいろなところに展開しております。ですから、こういうところでいろいろな問題点を指摘していただければ、それをいかに有効な施策に結びつけるかということは総合科学技術会議が責任を持ってやるべきことだと考えております。

【野依主査】
 強力なご指導力を発揮していただきたいと思います。

【原山委員】
 社会と科学技術の関係、社会とイノベーションの関係というのが今議論になっていて、対立軸ではなくて共同作業だというところまで議論が行ったので、さらにそれを一歩進めるとすれば、イノベーションの概念そのものなのですが、かなり広くなってきますが、さらに広めて、今、ソーシャル・イノベーションという概念すら出てきています。文部科学省がリードするというのであれば、社会の価値観を埋め込んだイノベーションというのは何かというのを主軸にするのが1つの考え方だと思います。その中にはトップダウンで何を決めるのではなく、社会の一員である人たちがアクターとなって課題設定から踏み込んでいく。そのためには現実、国民から意見がなかなか出てこないので、その中でやはりサイエンス・コミュニケーターという方たちが、ある種の引き出す役割を担うと思います。
 それで、先ほどの評価の話に戻るんですが、専門家としての研究者はいます。しかし、政策に対してものを言える人が今はまだ育ってないんですね。その初めの一歩にサイエンス・コミュニケーターが、先ほど野依主査が仰ったように、あってもいいのです。そのような人がリーダーシップをとって、さまざまな人を巻き込んでいくことによって、より社会に開かれた形の政策に対する評価ができると思います。

【大垣委員】
 少し違う観点になりますが、5番目のスライドに1999年のブダペスト宣言の話が出ておりますので、それに関連して話題を1つご紹介しますと、一昨日の9月9日に学術会議とJSTとJSPSとが主催して、ブダペスト宣言から10年後の日本でどう考えるべきかという、社会における科学、社会のための科学を考えるシンポジウムを開催しました。
 1つご紹介したいのは、そこで幾つか強く出た意見の中に、科学技術にはサイエンスが入っているのか、入ってないのかという議論であります。この委員会は科学技術の定義を議論する場ではありませんので簡単にご紹介しますと、要は基礎科学と科学技術と特にイノベーションをつけますと、この3つはそれぞれ社会との関係は少しずつ違うわけでありまして、社会との対話を考えるときに、この基礎科学、科学技術、イノベーションというのを分けて議論しないと、さまざまな誤解や混乱を起こす可能性があるかなと思います。文部省も科学技術庁と一緒になって文部科学省になっていますので、特に国民と対話する際には、科学技術に対する言葉の使い方の内容、本質を整理する必要があるかなと思います。

【門永委員】
 この提案は、基本的な方針も非常にはっきりしていますし、推進方策も具体的で大変良いと思います。特に基本方針のところで双方向のコミュニケーションということが謳われ、それから推進方策のところで、例えば説明責任の強化というのがあって、これは大事だと思いますが、民間企業の例で言うと、双方向のコミュニケーションをして、きちんと説明責任を果たそうとすると、マネジメント上、非常に難しいステップに入ります。というのは、上から伝えるだけだったら簡単なのですが、吸い上げを始めると、いろいろな意見が出てくるので、まとめ切れなくなって手に負えなくなってしまう。
 それから、双方向コミュニケーションをすることによって目覚める人が出てきます。企業の場合ですと、目覚めてしまう社員が出ます。そうすると、それに対して応えないといけない。自分の言ったことが実施されたのか、計画に入ったのかという質問をマネージしなければならない次元に入っていくと思います。ですから、言うは易しで、双方向でありまたインボルブするというのは正しい方向なのですが、これにはやっていくに当たってのチャレンジが相当あるということを念頭に置いて、進めていただきたいと思います。

【河内委員】
 「社会と科学技術・イノベーション政策との連携強化」でない話題について意見を述べます。先ほど野依主査が言われましたようにまさにこれから日本が国際競争力でどういう国になっていくかということを考えたときに、やはり基礎研究にものすごく重点を置いた政策が必要だと思います。ただし、もう一つの要素は、最終的には製品、産業として競争力をつくるときには、やはり総合力なのですね。先ほど日本の大学でトップ10に集中的に競争的資金が提供され、アメリカならば非常に幅広い大学に競争的資金が提供されるという話がありました。非常に先端的な研究開発という意味では、どの大学でもできる訳ではないので、やはり選択的な集中化が必要だろうと思います。だけど、総合力を作るときには、そのような政策的な競争的資金のかけ方について少し工夫し、社会全体の強化という面で少し配慮する必要があるかなと思います。
 それから、全然違う話で申しわけありませんが、企業で研究するときには探索研究というか、種まきをして、色々なことを、まず芽から育つのかどうかというレベルの研究を幅広くやり、その中で少しブレークスルーが出たときには研究テーマとして取り上げていくということをやるのです。一方、大学の中で競争的資金などはかなりきちっとしたテーマ設定ができなかったらお金がつかないと思います。そうすると、明確なテーマ設定が出来ないような、幅広い、企業で言えばアングラ研究と言っているのですが、そういう研究がどういう扱い方がされているのか、非常に重要な研究の要素だと思うのですが、教えていただきたいと思います。

【柿田計画官】
 非常に探索的、萌芽的な段階での研究ということだと思いますが、大学で言いますと、先ほども議論ございました基盤的な経費、つまり、国立大学で言いますと運営費交付金がこれを支えるということになります。これは教育についても支える基盤ということで、教育と研究を一体的に支える役割があります。それと、もう一つは科学研究費補助金になります。現在、約2,000億円の規模ですが、これが我が国における萌芽的な研究を支えるためのファンディングとして機能しているということだと思います。

【森委員】
 科学技術・イノベーションという視点では、この資料でいいと思います。ただ、学術研究資金とか、運営費交付金を含めた話になりますと、違う意見を持っています。イノベーションというのは、方向性が出てきた後、どう伸ばすかという話で、これはさっき河内委員がおっしゃった話と重なるのですが、非常に時間がかかって、なかなか結果が出にくい分野や、あるいは人が驚くようなエポックメーキングな成果を挙げるのをどうやって援助するかという視点がここには出ていません。例えば、科研費で援助すればいいじゃないかという話がありますが、自分の経験からいっても、計画したとおりに出た場合はよい結果としても、新しい方向性を打ち出せるようなことはあまりないです。自分でも驚いてしまうような結果、思いもしなかった結果が出るのが実は一番良いのですが、そういう結果ははみ出しものなのです。そういうのをどうやってすくい上げるかということなのですが、競争的資金である科研費等の、予想外の副産物のような形で出てくればよいという立場では科学技術立国を謳う日本としては心もとないです。やはり、運営費交付金で手当するべきだろうと思います。
 野依主査が仰った、大学には学生をきちっと養成するためのお金を出すべきだ、というのは全くおっしゃるとおりなのです。ですが、そこに更に、イノベーションの基になる結果を出し続けるには競争的資金だけでは無理で、運営費交付金等の基盤的経費が必要だという踏み込んだ視点が必要だと思います。つまり、イノベーションとか科学技術(scientific technology)という話題からは出てこないのですが、イノベーションを何十年にも渡って続ける話とか広く学術研究資金を含む話になるのであれば、そこをどこかに出していただきたいと思います。

【野依主査】
 基礎の重要性というのは基礎科学力強化にかかわる提言でも十二分に強調されています。また、研究資金については資料にきちんと書いてありますし、私は運営費交付金は倍増しなければいけないと思います。

【森委員】
 おっしゃるとおりです。ただ、学生の養成機関というだけではなく、地道な研究を支え、イノベーションの基になる成果をあげる重要な一翼を担うのは、やっぱり大学であり運営費交付金だという視点を入れていただきたいと思います。

【小林傳司委員】
 森委員の仰るとおりでして、だから、私、今日は社会公共政策の一環として科学技術政策という枠づくりがすごく良いと思っているのはそこなのです。イノベーション政策となると産業政策だけみたいに聞こえますよね。しかし、いわゆる基礎科学も取り込まないといけない。そして、基礎科学が大事ですよね。それは結局、公共政策は政府を含む公的セクターでなければできないとか、民間あるいは市場ではできないものを公共政策として政府を含む公的セクターでやってきたわけですよね。だから、そういう意味では公共政策の枠組みの中で基礎科学、科学技術・イノベーションをとらえるという枠組みであれば、論理としてはうまくいくはずなのですよね。だから、ただ単純に科学技術・イノベーション政策だけで語ると、これは産業政策だけになっているのではないか、基礎科学も大事ではないかという議論で綱引きになるわけですから、そういう意味でこの書き方は私はすごく大事だと申し上げています。その中で先ほど野依主査がおっしゃったように、運営費交付金とか、基盤的なものの倍増とか、そういう議論が出てくる、こういう理解で私はおります。

【野依主査】
 この言葉はイノベーションに特化されているわけではないと思います。全体のフレームワークを説明してください。

【柿田計画官】
 この科学技術・イノベーションという言葉ですけれども、これは今日、社会との関係という議論をいただいておりますが、これとも非常に関係すると思いますが、もちろん科学技術、これは科学と技術でありますが、今議論になっている非常にベーシックな部分の研究を支えるといいましょうか、促進していくということはもちろん入っておりますし、また、社会とのかかわりが非常に重要になる中で、公共政策の1つとして社会とかかわる中で科学技術をさらに進め、より社会に価値を創出していくために、科学技術政策がより対象を広げていくという意味で科学技術、そしてイノベーション政策というように表現をさせていただいているものでして、決して産業政策ということではありません。そこはきちっと分かるような形で書き込む必要があると考えております。

【野依主査】
 表現の問題だと思いますので、しっかり書いていきたいと思います。
 いろいろなご意見をいただいておりますが、時間になりました。本日のご意見を踏まえて、事務局で整理を行って頂きたいと思います。
 最後に議題4「その他」ですが、今後の本委員会の日程等について事務局から説明してください。

【柿田計画官】
 本日も貴重なご議論、ありがとうございました。資料4に次回第6回の予定を記載させていただいております。10月1日の16時から、この場所で行わせていただきます。産学官連携の推進、知的財産戦略の推進、地域イノベーション・システムの構築等について、研究開発システム改革のテーマの続きということで行わせていただきます。
 また、正式なご案内は別途お送りさせていただきます。また、議事録につきましても、後日、ご確認をお願いいたします。
 ありがとうございました。

【野依主査】
 以上で科学技術・学術審議会 第5回基本計画特別委員会を終了いたします。

お問合せ先

科学技術・学術政策局計画官付

電話番号:03-6734-3982(直通)

(科学技術・学術政策局計画官付)