科学技術・学術審議会
人材委員会(第33回)
平成17年5月30日
○ 第1期、第2期の科学技術基本計画を通じて、我が国の研究水準の向上の成果が上がりつつある中、ポストドクター(ポスドク)が我が国の研究活動の活性化のための一つの原動力となっている。
○ 一方で、第3次提言でも指摘されたように、ポスドクの研究者としての位置づけが不明確であり、キャリアパスが不透明であるという問題がある。また、研究職以外における博士号取得者の活躍促進についてもさらに推進することが必要。
○ 博士課程修了後のキャリアパスが不透明であることにより、優秀な人材が博士課程へ進学したり研究者をめざす道を敬遠することになれば、我が国の科学技術関係人材の質と量の確保に関して深刻な事態になりかねない。産業構造の変化が少子高齢化と人口減少と相まって、さらに人材の量と質が問題になっていくことが予想されることから、早急に手を打たなければならない。
○ 研究者を目指すポスドクについては、研究機関の長の裁量により、優秀な若手研究者が主体的に活躍できるポストや環境を用意する等の工夫が必要。任期付ポストの場合は、その先のキャリアについての道筋が明らかになることが求められる。
○ ポスドク等の雇用は研究室単位で行われており、大学等の研究機関単位での組織的な管理が行われていないのが現状である。給与等の待遇を含め、ポスドク等を雇う研究者の意識に任せるだけではなく、組織として、人材を養成し活用するという観点から、組織的な労務管理や支援が必要。
○ 若手の研究者が海外で武者修行をすることを推進すべきである。そのためには、日本に戻ってきた後に活躍できる体制を構築することが重要。
○ 我が国の研究活動の質的変化(研究プロジェクトの大型化、重点化等)が進む中、研究者を目指すポスドクのほか、研究補助を主とするポスドクもおり、ポスドクの活動状況・雇用状況は多様化している。また、進路についての個々のポスドクの価値観も多様化しており、これらの点を踏まえた上で、各機関における処遇の在り方の改善やキャリアガイダンスの実施が重要。
○ 人材委員会第3次提言で提言したように、研究機関以外の多様な場でポスドク等博士号取得者が活躍することが期待されている。研究者を目指すポスドクのみならず、支援者等として研究に従事していくポスドク、研究者以外の道へ進むポスドク(いわゆる「木の左側」)も対象とした支援(キャリアサポート)を行うことが必要。
○ 企業から見て、学生に比べポスドクと関わる機会が少ない。企業を含めたキャリアパスの拡大のためには、学生・院生段階でのインターンシップ等に加え、ポスドクと企業が接する機会の充実が必要。
○ 研究者のキャリア形成支援に関する情報に一カ所で触れる機会が効果的である。女性研究者のキャリア形成に関しての組織的な支援も必要。
○ 今後、少子高齢化と人口減少が進み、優秀なポスドクを確保することが困難になる中、ポスドクを雇用する各大学・研究機関等が危機感を持ち、組織的な取組を行う体制を構築すべきである。
○ 国は、各機関の取組を促進するため、モデル的な取組を支援することやインセンティブの付与などを行うことが必要。
ポストドクターや若手研究者等の科学技術関係人材のキャリアサポートについて、大学などの研究機関や学協会等の主体的な取組が重要である。国としては、研究機関等における取組を支援する立場から、例えば以下のような施策を検討すべきではないか。
(例) 研究者人材データベース(JREC-IN)をはじめとする研究人材支援のためのインターネット上の情報や、各種申請手続の窓口などについてのポータルサイトを作成。
(例) 大学や研究機関の研究現場で、ポストドクター等の若手研究者と関わる研究チームリーダーや人事労務担当者等を対象とした講座、ワークショップ等の実施。
(例) 大学などの研究機関、学協会、民間企業やNPO等が連携して行う、ポストドクターや若手研究者等を対象としたキャリアサポートの取組のうち、意欲的な取組を国がモデルとして指定し、支援。他の参考となるような取組成果を広く公表し、各方面における取組を促す。
(例) 国が、大学や公的研究機関における取組状況(ガイダンスの実施、関係機関等との連携その他の取組)を調査し、他の参考になる取組などを把握。
(例) 国が、大学や研究機関の取組の参考となるような、キャリアサポートに関する取組事例や留意点等をまとめた手引き的な参考資料集を検討。
科学技術・学術政策局基盤政策課
-- 登録:平成21年以前 --