4-2.原子力分科会

【今までの取組のポイント】

○ 原子力分科会では、大学・大学院等の学生を対象とした人材育成を検討の対象にした。
○ 議論の結果、教育環境の現状と課題としては、理工系に共通する課題ではあるものの、原子力分野への進学・就職を希望する学生の減少による平均的学力の低下が挙げられた。また、研究環境の現状と課題としては、大学のリソースが限られる中、大学間の施設の共有などによる効率的な研究環境の整備の重要性、原子力を支える基盤技術分野の研究者の厚みの低下等が指摘された。
○ こうした課題を踏まえ、大学・大学院等における原子力の人材育成の充実を図るべく、文部科学省と経済産業省の支援の下、平成19年度より「原子力人材育成プログラム」事業を開始。大学、大学院等の学生が実験・実習を通じて実践的な技術を習得するとともに、原子力産業や研究現場の実態と魅力を知る機会の充実、研究教育基盤の整備等に取り組んでいる。
○ 「原子力人材育成プログラム」の枠を超えた中長期的課題に対応するため、詳細な実態の把握等を検討する場として「原子力人材育成関係者協議会」を平成19年度に原子力産業協会に設置し、平成20年度以降も詳細な実態の把握、他の施策や様々な制度との関係の調査等について取り組んでいく。

【取組の概要】

○ 原子力分野の人材育成の課題を踏まえ、大学・大学院等における原子力の人材育成の充実を図るため、文部科学省と経済産業省の支援の下、平成19年度より「原子力人材育成プログラム」事業を開始。
○ 「原子力人材育成プログラム」の枠を超えた中長期的課題として、「人材育成の中長期ロードマップの作成」及び「原子力分野の人材需給及び就職状況等に係る定量的分析」を実施。
○ 産学人材育成パートナーシップとして打ち出すべき方向性について議論・取りまとめを実施。

1 基盤技術分野の重視

 国は大学が行う基盤技術分野の研究開発に十分な資源配分を行うとともに、大学は、運営費交付金の配分に当たって基盤的技術分野を現在以上に重視すべきである。産業界及び研究開発機関も、様々な活動を通じて大学における当該分野の研究者の育成に貢献することが期待される。また、大学や研究開発機関の研究者の評価に当たっては、産業界との連携、開発した技術の産業界における活用も含めて総合的に行い、産業界のニーズを踏まえた研究を評価する視点を取り入れる必要がある。

2 国際的な経験を有する人材の育成

 原子力産業が急速にグローバル化していることから、大学の授業の一環として、海外で長期間の経験を積むことができるプログラムの充実を図ることが望ましい。

3 資格に取得につながる知識を含む大学の授業

 大学において、資格取得に要求されるような実践的内容の授業を受講することができれば、学生の学習意欲及びコンピテンシーの向上が期待でき、卒業後早期に実務に参加できる。

4 コミュニケーション能力の重要性

 産業界で実務を行う中では、企業の内外の関係者と円滑なコミュニケーションを取ることが重要であるため、ディベート、プレゼンテーション等についてこれまで以上に知識や経験を積むことが有効である。

5 大学間の施設の共有等の連携の強化

 学生が可能な限り高度な設備を活用し、高いレベルの学習をするためには、各大学が特徴のある施設整備を行うとともに、大学間で施設を共同利用することが重要である。講義についても、大学間の連携の促進が重要である。

6 学部及び大学院段階における体系的な原子力教育の重要性

 原子力分野では、特定の先端技術に対する知識のみではなく、コミュニケーション能力や法や規制に関する知識など、総合的な能力が求められている。このため、学部段階における体系的な専門基礎教育の充実を図り、もって大学院段階における高度な専門教育に至るまでの一貫した人材育成を可能とすることが重要である。

7 研究開発機関との連携による人材育成

 研究開発機関と大学との連携により、核燃料物質、研究炉等を実際に用いた研究開発などの有効な教育機会を提供することができる。また、現場の技術者の高齢化が懸念される中、大学、研究開発機関及び産業界が連携することにより、技術の継承にも貢献できると考えられる。このため、大学、研究開発機関及び産業界の3者が一層の連携を進めることが重要である。

【平成20年度の具体的取組】

 平成20年度に実行する取組については、新たに地域や大学等の特色を踏まえた教育研究の重点化を支援するプログラムを新設し、継続的な大学・大学院等における人材育成・研究活動の充実・強化に向けた取組を行う。

○ 原子力研究促進プログラム(文部科学省)

 将来原子力産業に携わる者の育成のため、学生の主体的な実習・実験を通した課題発見・解決型の教育や、原子力産業への学生の興味関心を促すような取組、教員の質の維持・向上及び教育体制の充実等の取組を重点的に支援。

○ 原子力研究基盤整備プログラム(文部科学省)

 長期的視点に基づき、施設整備や研究活動の強化充実など、研究教育基盤の強化を図る。

○ 原子力コア人材育成プログラム(文部科学省)

 原子炉物理学等の特定の分野に教育研究を重点化させる取組みや、地域との連携による教育研究の活性化など、地域や大学等の特色を発揮し、原子力分野に係る体系的な知識を有し、中核的に活躍しうる人材を養成する取組みを支援。

(例)茨城大学

 原子力に関する研究開発機関や産業が集積しているという地域性を活かし、地域連携による原子力導入教育コースの開発を工学系及び理学系において実施。

○ 原子力教育支援プログラム(経済産業省)

 大学、大学院、高専において、産業界等の外部の人材育成ニーズやポテンシャルも取り込みつつ、専攻や講座等の新設、既存専攻のカリキュラムの充実、学生同士の協力を促進する授業の充実を図る取組を支援。

○ チャレンジ原子力体感プログラム(経済産業省)

 大学、大学院、高専の学生が実習を通じて実践的な技術を習得するとともに、原子力産業や研究現場の実態と魅力を知る機会の充実を図るため、大学などの教育研究炉を活用した実践的な実習教育や、研究機関、学会、海外機関のプログラム等を活用したインターンシップ等への旅費を含めた参加費への支援。

(例)福井大学

 原子力関係大学院を対象としたより実践的な教育プログラムとして「敦賀原子力夏の大学」(専門コース)と原子力ファン形成のための一般・原子力初級学生に対する原子力施設見学会等の一般コースを実施。「夏の大学」参加学生のうち成績優秀な学生に対して原子力海外研修を実施。

○ 原子力の基盤技術分野強化プログラム(経済産業省)

 近年、研究活動や研究者の希薄化が懸念される、原子力を支える基盤技術分野(構造強度、材料強度、腐食・物性、溶接、熱・流体・振動、放射線安全)において、産業界の参画・ニーズ提示のもと大学で行われる研究プロジェクトに対し、提案公募方式により国が支援。

 また、「原子力人材育成関係者協議会」の下で、平成19年度実施した「人材育成の中長期的ロードマップ策定」と「原子力分野の人材需給及び就職状況等に係る定量的分析」調査を基に、具体的な取組を盛り込んだ「ビジョン」を策定する。また、取り扱う中長期的課題についても多岐にわたるため、課題により個別の作業会を設置して調査を実施。

【平成21年度以降の展開】

 「ビジョン」を基に、具体的な取組に反映する。また、「原子力人材育成プログラム」において取り組まれた各大学等の教育研究の活性化に向けた活動を確かなものとするため、これまでの実績・改善点等を抽出し、プログラムをさらに発展させていく必要がある。

【参考資料(「原子力人材育成プログラム」の実施体制図)】

「原子力人材育成プログラム」の実施体制図

お問合せ先

科学技術・学術政策局基盤政策課

(科学技術・学術政策局基盤政策課)

-- 登録:平成21年以前 --