3.課題に対する横断的取組

上記2.においては、各分科会における議論を踏まえ、分野を跨る課題と具体的取組を整理した。各分科会における具体的取組の中には、他の分野の課題に対しても有効と考えられるものあれば、横断的な取組により対応すべきものも少なくないと考えられる。
このため、産学の課題に対して横断的に取り組むべき事項について、平成20年度は、以下の具体的取組を実施することとする。

★ 産学連携によるインターンシップの質的向上・更なる推進

インターンシップの理想的な実施方法については、過去に政府や民間団体による調査や提言が多数公表されているが、前述のとおり必ずしも関係者間で共有されておらず、受入側の産業界、送出側の大学界とも暗中模索している状況である。
このため、産学連携により、以下の取組を実施する。まず、可能な範囲で業種分野別にインターンシップの受入企業の担当窓口をまとめ、大学に公表し、これを活用することを通じて、大学と受入企業とのマッチングを図り、各大学の人材養成目標や学生のニーズに応じた適切なインターンシップ先の確保を支援する。また、大学での単位化や採用活動との関係等を含め、大学と企業とが組織的に協同してインターンシップを実施するための連携体制、多様化する学問分野に対応した適切な受け入れ先の確保、企業秘密等の取扱い、より質の高いインターンシップをアレンジするコーディネート機能等について、既存の先進事例の分析等により検討・整理し、各大学・企業の今後の改善の方向を示すリファレンス(事例集など)をまとめる。

(例)岡山大学の事例

エンジニアリングデザイン能力の育成プラン
(2006年度文部科学省派遣型高度人材育成協同プラン選定取組)

岡山大学大学院自然科学研究科では、倉敷市水島地区の企業と連携して「瀬戸内圏インターンシップ・サテライトラボ」を設置するなどし、企業との協同による、高度技術者の体系的な育成環境を整備している。
学生は、企業特任教員による講義などの事前の学習、専門の異なる混成チームに分かれてのインターンシップ、サテライト・ラボにおける演習などにより、社会ニーズの理解、問題設定と解決、技術開発プロジェクトでの共同作業、特許文書の作成などの体験を積み、エンジニアリングデザイン能力を身に付けている。

岡山大学の事例の図

★ 産学人材育成グッドプラクティス集の策定・配付

上記2.に掲げた課題の中には、具体的取組が多く提案されているものもあれば、産学に根深い問題があり、更に議論を深めていく必要のあるものある。
このため、今後、産学関係者が課題(ミスマッチ)を解決していくにあたって参考となるよう、上記2.の課題に対する産学連携の先進事例や好事例について、実施に当たって乗り越えた困難やノウハウ等を収集・整理する。
また、これらの情報を産学の関係者にとって分かりやすく取りまとめ、グッドプラクティス集として取りまとめるとともに、産学人材育成パートナーシップ参加委員が所属する団体等を通じて、産学に広く周知・配付する。

(例)大阪大学の事例 -Internship on Campus-

大阪大学の事例の図

★ 就職活動における「倫理憲章」の遵守に関するフォローアップ

日本経団連では、大学教育が採用活動によって極力阻害されないよう、「企業倫理憲章」を制定し、多くの企業が参加している。しかしながら、個別の企業においては、必ずしもしていない企業も存在するのが実態である。企業の採用活動の見直しが求められる中、「倫理憲章」の参加企業に対してフォローアップ等を行う。

2008年度大学・大学院新規学卒者等の採用選考に関する企業の倫理憲章

2007年10月16日
社団法人日本経済団体連合会

企業は、自己責任原則に基づいて自主的に行う、2008年度大学・大学院新規学卒者等の採用選考にあたり、下記の点を十分配慮して行動する。

1.正常な学校教育と学習環境の確保

採用選考活動にあたっては、正常な学校教育と学習環境の確保に協力し、大学等の学事日程を尊重する。

2.採用選考活動早期開始の自粛

在学全期間を通して知性、能力と人格を磨き、社会に貢献できる人材を育成、輩出する高等教育の趣旨を踏まえ、学生が本分である学業に専念する十分な時間を確保するため、採用選考活動の早期開始は自粛する。まして卒業・修了学年に達しない学生に対して、面接など実質的な選考活動を行うことは厳に慎む。

3.公平・公正な採用の徹底

公平・公正で透明な採用の徹底に努め、男女雇用機会均等法に沿った採用選考活動を行うのはもちろんのこと、学生の自由な就職活動を妨げる行為(正式内定日前の誓約書要求など)は一切しない。また大学所在地による不利が生じぬよう留意する。

4.情報の公開

学生の就職機会の均等を期し、落ち着いて就職準備に臨めるよう、企業情報ならびに採用情報(説明会日程、採用予定数、選考スケジュール等)については、可能な限り速やかに、適切な方法により詳細に公開する。

5.採用内定日の遵守

正式な内定日は、10月1日以降とする。

6.その他

高校卒業者については教育上の配慮を最優先とし、安定的な採用の確保に努める。

★ 学士課程教育の充実の取組における産学連携

各大学が授与する学位は、学生が専攻する専門分野に関し、一定水準の知識・技能等を証明する機能を持つものであることから、その質を維持・向上させる仕組みが必要となる。大学の機能別分化の進展が見込まれる一方で、我が国の大学が授与する「学士」について、その水準が保証されたものでなければ、知識・技能等の証明として、国内外で社会的に信頼され、通用するものとならない。このため、中央教育審議会において、分野横断的に我が国の学士課程教育が共通して培う「学士力」が、学士課程共通の「学習成果」に関する参考指針として提唱されたところである。各大学においては、それぞれの自主性・自律性の下、学位授与の方針を明確なものとし、学士課程教育充実に取り組むことが期待される。国としても、大学の取組を支援していくほか、各分野における学位の水準の枠組みづくりを促進していくことが提言されており、これに基づき文部科学省は本年5月に日本学術会議に対し、「大学教育の分野別質保証の在り方」に関して審議依頼を行った。
このように、大学側においては学士課程教育の充実に向けた動きが見られるところであるが、産学人材育成パートナーシップとしても対話の成果がこうした動きに反映されるよう協力を行っていく。

各専攻分野を通じて培う「学士力」-学士課程共通の「学習成果」に関する参考指針-

1.知識・理解

専攻する特定の学問分野における基本的な知識を体系的に理解するとともに、その知識体系の意味と自己の存在を歴史・社会・自然と関連付けて理解する。

(1)多文化・異文化に関する知識の理解
(2)人類の文化、社会と自然に関する知識の理解

2.汎用的技能

知的活動でも職業生活や社会生活でも必要な技能

(1)コミュニケーション・スキル
日本語と特定の外国語を用いて、読み、書き、聞き、話すことができる。
(2)数量的スキル
自然や社会的事象について、シンボルを活用して分析し、理解し、表現することができる。
(3)情報リテラシー
ICTを用いて、多様な情報を収集・分析して適正に判断し、モラルに則って効果的に活用することができる。
(4)論理的思考力
情報や知識を複眼的、論理的に分析し、表現できる。
(5)問題解決力
問題を発見し、解決に必要な情報を収集・分析・整理し、その問題を確実に解決できる。

3.態度・志向性

(1)自己管理力
自らを律して行動できる。
(2)チームワーク、リーダーシップ
他者と協調・協働して行動できる。また、他者に方向性を示し、目標の実現のために動員できる。
(3)倫理観
自己の良心と社会の規範やルールに従って行動できる。
(4)市民としての社会的責任
社会の一員としての意識を持ち、義務と権利を適正に行使しつつ、社会の発展のために積極的に関与できる。
(5)生涯学習力
卒業後も自律・自立して学習できる。

4.統合的な学習経験と創造的思考力

これまでに獲得した知識・技能・態度等を総合的に活用し、自らが立てた新たな課題にそれらを適用し、その課題を解決する能力

★ 社会人基礎力の育成・評価手法の検討

近年の環境変化の激変を受け、本産学人材育成パートナーシップでの求められる人材像に係る議論においては、各分科会において、課題発見力やコミュニケーション能力等の社会人基礎力に対して高いニーズが挙げられた。また、このような能力は、前述の「学士力」においても必要な技能として示されている。
このため、大学で学んだ専門知識を活用して企業等から与えられた実課題を学生がチームで解決していくPBL(Project Based Learning:課題解決型学習)、実践型インターンシップ等の実践型学習を始めとする様々な科目を通じて、実際に社会人基礎力の育成・評価を行う取組を支援し、そのノウハウの普及に努める。

社会人基礎力の育成・評価手法の検討の図

★ 人材の国際化を梃子とする企業の人材マネジメント改革

経済のグローバル化が進展する中で、企業の国際展開も加速しているが、それに見合った人材の国際化が必ずしも進んでいない。高度な能力を有する外国人を引きつけるためには、多様な人材に対し、能力や業績に照らし公平・公正な評価処遇を行い、それぞれの個性や持ち味を発揮して活躍できる人材マネジメントの実現が不可欠である。これはすなわち、本パートナーシップで実現が期待される企業の人材マネジメントの方向性と同意義であるといえる。
国際的な人材獲得競争が進む中で、企業の人材の国際化は急務となっている。このような視点から、産業界の積極的な情報提供や共有を通じて、産学官の連携により「人材の国際化」の指標を策定・公表し、企業の人材マネジメント改革を促進する。

人材の国際化を梃子とする企業の人材マネジメント改革の図

お問合せ先

科学技術・学術政策局基盤政策課

(科学技術・学術政策局基盤政策課)

-- 登録:平成21年以前 --