産業界を中心に、大学から輩出される人材が必ずしも社会で活躍する前提となる十分な能力を備えていないとの意見がある一方、大学側からは、企業がそれぞれの人材の能力を適切に評価し、適切なキャリアパスを提供するなど、能力を有効に活用しきれていないのではないかという見方がある。
人材の能力を最大限に伸ばし、それが社会において適切に評価・活用されるという一貫した人材育成が可能な社会システム構築のためには、第一に、大学が社会の変化やニーズを踏まえながら不断に教育内容等を見直し、学生にとって学ぶ動機付けを十分に組み込んだ実践的な教育を行い、社会で効果的に能力を発揮できる人材を育成するとともに、企業がその教育を評価し、大学での努力が企業での評価にもつながるような関係づくりが必要である。それにより、学生も将来の活躍に向けて意欲的に大学での学習に取り組むこととなる。
また、第二に、「はじめに」で述べたとおり、個人は大きな社会変化の中で、今後、ますます生涯学び続けることが重要となる。産業界での実践を通じた学習のみでは修得が困難な体系的だった知識・スキルや最新の技術動向などを、社会人が大学で学び直すことができる仕組みの構築も重要である。
情報処理 |
・教育界では、情報教育に関する体系的なカリキュラムの整備が不十分であるとともに、企業におけるプロジェクトを経験した教員が少ないため、実践的な教育の実施が不十分。 |
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化学 |
・企業から見ると、博士課程修了人材の付加価値(専門能力と幅広い知識、本質を見極めてのゼロからの課題設定力・解決力)が明確でない。 |
学生が大学を卒業した後には、そのまま大学に籍を置く者もいるが、多くの者は産業界へと進んでいくこととなる。こうした前提を踏まえれば、大学で産業界の知見を活用した人材育成・教育プログラムを開発し、多くの学生が利用できるようになることには、次のようなメリットがある。
また、こうした共同作業は、大学と産業との継続的なコミュニケーションの突破口としても有効に機能すると考えられる。人材育成・教育プログラムの開発に当たっては、そのリソースの多くが産業界にあること、さらに、人材育成が産業界の競争力そのものに結びつく重要な要素であることを踏まえ、例えば、大学関係者によって組織する教育プログラム開発等の委員会に企業関係者が積極的に参画するなど、産業界自身も主体的な役割を果たすことが必要である。このような問題意識から、各分科会においても多様な産学共同のプログラム開発が提案されているところであるが、その具体化を早急に進めていくことが重要である。
原子力 |
◆原子炉物理学等の特定の分野に教育研究を重点化させる取組や、地域との連携による教育研究の活性化など、地域や大学等の特色を発揮し、原子力分野に係る体系的な知識を有し、中核的に活躍しうる人材を養成する取組みを支援。 |
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資源 |
・資源系大学においては、資源開発上流部門の講座の減少や教員の減少が深刻。健康管理(Health)、安全(Safety)、環境(Environment)、コミュニティリレーション(Community Relation)という、いわゆるHSECについても、以前は随分講座があったが、今は、講座も、教える教員も少ない。 |
機械 |
・機械工学の基礎科目(4力学等)についての十分な理解、学生への学習動機付け等が必要である。 |
経済社会の国境の垣根がますます低くなる中、産業界でも、社会的にもグローバルな視点を身につけた人材が求められていることは産学共通の認識であることが確認された。今後、大学、産業界が協力して国際感覚ある人材を育成していくことが我が国全体の重要な課題である。このため、大学が国際的に見ても魅力的な研究や教育を行っていくことが重要となる。また、留学生の増大や外国人教師の拡充などの大学の国際化、企業における外国人の登用など人材マネジメントの国際化がそれぞれに求められている。
これに加えて、分科会での検討においても、産学協力によるグローバル人材育成という視点から、海外インターンシップ等の提案が出されている。これは、産業の現場の国際化を目の当たりにすることにより、学生自身の気づきに極めて大きなインパクトが期待されるものである。
こうした工夫を積み重ね、学生の意識の喚起、教育現場の国際化、国際感覚ある人材に対するキャリアパスの整備等を平行して進めることが、これからの我が国を支える国際感覚ある人材の育成に不可欠である。
原子力 |
◇原子力産業が急速にグローバル化していることから、大学の授業の一環として、海外で長期間の経験を積むことができるプログラムの充実を図ることが望ましい。 |
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資源 |
・海外現場の増加や探鉱開発地域の条件悪化が進む中、資源メジャーとの戦略的提携や先進技術による操業など、資源開発人材に求められるスキルの多様化、専門化が進行している。 |
もとより、人材育成においても、産業と大学の機能や目的は異なるものである。それを前提としつつ、社会全体として一貫性のある人材育成の仕組みを形成するためには、双方向の理解が不可欠である。人材交流は、その重要な手段である。
専門教育に携わる大学の教員が、その知識活用の実務を知ることは、教育の説得力を増し、学生の動機付けをする上で非常に有効な経験である。また、大学間競争が激化し、マネジメントの在り方を問われる時代にあって、教員が企業で経験を積むことは、大学では必ずしも十分に学ぶことが出来ないマネジメントのノウハウを学ぶことができる貴重な機会であると考えられる。ひるがえって、受入先の企業においても、自らの業務を再整理し見つめ直す恰好の機会となると考えられる。
しかしながら、現時点では、大学教授等が企業で実務経験をする例は少ない。大学のサバティカル制度の活用法としては、圧倒的に海外の研究機関に行く方が多い。これは、企業での経験が必ずしも業績とならず、キャリアアップにつながりづらいことが一因と言われている。このため、大学教員が企業に行くことによるキャリアアッププランを明確にするなど適切なインセンティブの付与の在り方や、若手の教員が企業と交流しやすいシステムが検討されることが望まれる。
一方、近年、企業経験者が大学で教鞭をとる例が増加している。これは、望ましい傾向であるが、一部では、アカデミックな研究者としての訓練が必ずしも十分ではないため、実務の経験が次第に陳腐化して、効果的な講義を継続できない例も多いという意見もある。このような人材交流の効果を引き上げていくためには、再訓練の仕組みや、教師としての経験と産業界の実務を繰り返すなどの工夫が併せて求められる。
情報処理 |
・教育界においては、実践的な教育の時間の確保やそれを教える教員の不足、(中略)などの様々な課題が指摘。 |
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機械 |
・専門科目(加工、鋳造等)についての知識向上を図るため、担当教員数・科目数の減少への対応や、ものづくりの現場に触れる機会の拡大が必要である。 |
分科会では、少子高齢化の流れの中で、各分野にそもそも若者が集まらないということも大きな問題意識の一つである。一般的に若者の理工系離れが進む中、特にもの作り系の分野は産学ともに深刻な懸念を持っている。理工系人材は、環境を始めとした様々な社会的問題を技術で解決していく挑戦のフロンティアに立つ人材との観点から、この問題の重大性を考える必要がある。
各分科会では、従来、産学が一致して当該分野の魅力を発信するような取組がなかったため、学生等にその分野の魅力が伝わっていないことを指摘している。
この問題の本質的な解決のためには、大学においては、当該分野の可能性・将来性を実感しながら教育・研究できるような環境の整備、企業においては、当該分野の専門家に対する魅力的な仕事の機会の提供やキャリアパスの整備といった、やりがいを感じる環境の整備を進めることが必要である。その上で、産学が協力して若者にアピールしていけば、当該分野として相当な求心力を持つであろう。産学人材育成パートナーシップは、このような面でも適切な取組の場となり得るものである。
情報処理 |
・ITを通じて実現できることが、厳しい就労環境に勝る社会的意義や充実感があること、安心してやりがいのある仕事に取り組めることを学生に熱意を持って提示。 |
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原子力 |
◆大学、大学院、高専の学生が実習を通じて実践的な技術を習得するとともに、原子力産業や研究現場の実態と魅力を知る機会の充実を図るため、大学などの教育研究炉を活用した実践的な実習教育や、研究機関、学会、海外機関のプログラム等を活用したインターンシップ等への旅費を含めた参加費への支援。 |
資源 |
・資源開発について、現場が危険で厳しい、給料が安い、資源枯渇論もあり長続きしない、といった悪いイメージを払拭させ、資源開発の面白さや重要性等を学生に対して伝えることが重要である。 |
機械 |
◇学生にとって魅力的な業界となるよう業務環境を整備するとともに、企業内キャリアパスや技術者等の業務内容について大学向けに情報発信を行う。併せて学生と企業技術者等の接点を大幅に拡大する。これにより業界の面白さや将来性に関するイメージを大学生に浸透させる。 |
材料 |
◇若者への材料分野に係るものづくりの面白さ伝達を目的としてPRビデオ等の作成を行い、材料分野の魅力を伝達する資料を作成し、普及啓蒙を実施していくことが重要である。 |
電気・電子 |
・IT・エレクトロニクスに関する技術が日常生活に浸透し、一般化する中、IT・エレクトロニクス分野の“先進性”や“夢”“凄さ”などが見えにくくなっていることが危惧される。優秀な人材を惹きつけるためには、この分野の“先進性”や“夢”、地球環境及び社会への貢献の大きさ等を、産学が協力して、世間(特に学生)に分かりやすく伝える取り組みが必要である。 |
科学技術・学術政策局基盤政策課
-- 登録:平成21年以前 --