あらゆる協力関係においては、目標すなわち成功イメージの共有が最も重要なスタートとなる。特に人材育成においては、産学各々の取組だけでは人材育成の効果が十分には期待できない。両者が機能的に連携することで効果的な人材育成を実現することが重要であり、その実現によって初めて産学それぞれの人材育成における社会的な役割と責任が果たせるということについて、認識の共有を図ることが必要である。その上で、産学連携で人材育成・活躍の仕組み作りを目指す産学人材育成パートナーシップにおいては、育てるべき人材像が共有する目標に当たると言える。
社会で求められる人材像や能力は、その時代環境により異なる。他方で、長期に渡り変化しない基本的要素も多分に存在する。
現在のように、変化の激しい時期にあっては、求められる能力を定義していくことは容易ではない。多くの若者がこれから何十年の期間、社会を支える存在であり続けることを考えると、「現在」よりも「将来」の社会環境を見渡し、産学の知見を結集して人材像を導き出すことが必要である。そして、重要なことは、産学のコミュニケーションを深め、相互の問題認識・課題等について共有するとともに、優れた人材育成のため共同して取り組むことができる関係を恒常的に築いておくことである。
こうした認識の下、分科会においては、今後当該分野に進む若者が直面する産業環境を念頭に、分野ごとに求められる人材像が議論された。その結果、各分野の相違以上に、共通に指摘される要素が浮き彫りになったことが特徴的である。具体的に列挙すれば、例えば、次のとおりである。
あえて言えば、各分科会における人材像の違いは、これらの共通要素を表現する専門用語や、特に重点を置く要素の違いとも言える。
なお、ここでの「求められる能力」は、大学卒業段階ですべて高度に獲得しておくべき能力ではない。これらは、企業での訓練も含めて継続的に高めていくものであり、教育段階では、これらを獲得していく「素質」を育成すると考えることもできる。産学による「求められる人材像」に関する議論はまだ始まったばかりであり、今後、更に議論を深め、「どの段階にどのような能力が必要か」という精緻化(注3)を進めることが重要である(注4)。それにより、教育機関、産業界それぞれの役割と協力の在り方をより明確にし、課題の抽出と具体的な取組をより効果的に進める継続的な基盤づくりを進めていくべきである。
(注1)「グローバルな感覚」には、単に言語能力や海外の知識にとどまらず、自国の文化や伝統の理解に基づく自己認識や、人類や環境など地球社会規模での調和・共存という視点に根ざした、あたたかい配慮といったことも含まれる。
(注2)社会人基礎力とは、職場や地域社会の中で仕事を行っていく上で必要な基礎的な能力をいい、経済産業省では社会人基礎力を、「前に踏み出す力(主体性・働きかけ力・実行力)」、「考え抜く力(課題発見力・計画力・創造力)」、「チームで働く力(発信力・傾聴力・柔軟性・情況把握力・規律性・ストレスコントロール力)」として、12の要素からなる3つの能力として定義し、共通言語として発信している。
(注3)例えば、「大学卒業後までに必要な能力」、「修士卒に求められる能力」、「博士卒に求められる能力」、「企業でプロジェクトリーダーとして必要な能力」等、更には、「大学以前に身につけることが期待される能力」等
(注4)この点については、中央教育審議会において、分野横断的に我が国の学士課程教育が共通して目指す「学習成果」について「学士力」という考え方が提唱されている。
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