ここからサイトの主なメニューです

人材委員会(第67回) 議事録

1.日時

平成26年6月11日(水曜日) 16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省 東館3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 第7期人材委員会提言について
  2. その他

4.出席者

委員

濱口主査、宮田主査代理、大島委員、川端委員、北原委員、鷲見委員、高橋委員、谷川委員、塚本委員、長瀬委員、西口委員、西澤委員、林委員、宮浦委員、山口委員、渡辺委員

文部科学省

土屋文部科学審議官、川上科学技術・学術政策局長、伊藤科学技術・学術政策局次長、村田科学技術・学術総括官、松尾人材政策課長、和田人材政策推進室長、中野学術企画室長他

5.議事録

【濵口主査】  時間となりましたので、ただいまから科学技術・学術審議会人材委員会を開催させていただきます。本日の会議は冒頭より公開となっておりますので、よろしくお願いいたします。
 本日は16名の委員が御出席されておりますので、科学技術・学術審議会令第8条第1項に規定されている定足数を満たしております。
 まず、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
○ 事務局より配付資料は議事次第のとおり配付している旨説明。またその他に、机上資料として、塚本委員より提出いただいた「日本IBM 教育プログラムの紹介」資料と、前回第66回の配付資料、参考データなどをとじたファイルを配布している旨説明。

【濵口主査】  まず、本日の議題の流れについて簡単に御紹介させていただきたいと思います。本日は議題1、「第7期人材委員会提言について」を中心に提言の骨子(案)に関する議論を行いたいと思います。また、議題2、その他として「学術研究の推進方策に関する総合的な審議について」の中間報告について報告をしていただく予定であります。

 それでは、議事に入ります。まず、議題1、第7期人材委員会提言についてでありますが、初めに事務局から提言の骨子(案)について説明いただき、引き続き塚本委員から日本IBMにおける教育プログラムについて御紹介いただきます。また、本日は東京大学の五神先生をお招きしております。五神教授からは、東京大学におけるクロス・アポイントメント制度等の人事制度改革等の取組状況及び日本学術会議の我が国の研究力強化に資する研究人材雇用制度検討委員会での検討状況について御説明いただきます。
 それでは、事務局からまず説明をお願いいたします。
○事務局より資料1に基づいて説明。

【濵口主査】  ありがとうございました。
 それでは、引き続き塚本委員、お願いいたします。
【塚本委員】  それでは、少しお時間を頂きまして「日本IBM 教育プログラムの御紹介」ということで、企業の取組の一例を御紹介させていただきます。提言の骨子の中にもございます、産業界、地域との連携のところ等の御参考になれば幸いです。
 まず、IBM Corporationと日本アイ・ビー・エムの紹介です。IBM Corporationの方は今女性リーダーが社長になっておりまして、日本IBMの方はドイツ人の社長が来ております。日本に77年いるのですけれども、女性もいれば、外国人もいるということで、非常にグローバルでダイバーシティに富んだ環境になってきています。
 次に、社会貢献ですが、四つの柱の一つがエデュケーションということで、教育改革・学術の発展、次世代の育成に対する支援を進めております。会社の持つ技術のノウハウ、スキルを有効活用することにより社会が抱える課題解決のためのソリューションを提供、支援するということで、お金を寄附するのではなく、会社が持っている得意なものを提供する、つまり、社員のボランティアや、会社の持っているリソースを提供するということを社会貢献の方針にしています。お金を寄附する形でいきますと、会社の業績によって乱高下してしまうのですけれども、会社の持つ得意技を提供するという形ですと、継続的な支援ができるということで、こういった方針をとっています。
 次に具体的なプログラムと、それらが小学校、中学校、高校、大学、大学院にどのように提供されているか御説明します。私どもの会社の中では、小学校から高校までが社会貢献の担当になっておりまして、大学、大学院というのはUniversity Relationsというところが担当しております。社会貢献はマーケティングに属していまして、University Relationsは基礎研究所に属しています。大学になってくると理系の方に傾斜していきますが、それまでの間は理系人材、キャリア教育を重視して活動しているということになります。多分、どこの会社さんもやっているようなことなのですけれども、網羅的にやっているというところが結構珍しいとおっしゃっていただいております。
 基本的に、エンジニア職種の社員で構成するボランティア・コミュニティがかなりの数存在しており、ここがいろいろな学校の要請に応じて出前授業等をやっています。何をやってほしいかというのは学校若しくは教育委員会の方に選んでいただくという形になります。教えに行っている社員もかなり楽しんでくるようで、一度伺うと何度も何度も行きたくなるというもののようです。
 理系・キャリア教育支援としては、例えば、新エネルギーで風車を作り、その風車で充電したミニカーのレースを行うなどエンジニア系のことや、ROBOLABということで、組立て玩具の自動車ロボットを作って動かしてみて、実際自分でプログラミングをする喜びを味わってもらうことなど、いろいろなことを通じて理系、理科教育に関する関心を持っていただくことをやっております。
 また、理系ではないのですけれども、グローバル化支援ということでIBMの中にはCorporate Service CorpsというIBM版の海外青年協力隊のような新興国に社員を派遣するプログラムがあるのですが、日本IBMから派遣された社員の者がギブバック的な形で、どういうようなことを体験したか等を中学、高校生向けにお話しし、世界へ関心を持ってもらうということをしています。
 また、ヤング天城会議ということで、天城という私どもの研修施設に高校生を何人かお招きしまして、日本の成長戦略等議論していただくこともやっております。英語によるセッション等もありまして、大学生、高校生からも、主催者側も刺激を受けるプログラムになっております。
 ほかにも、大学生向けの出張講座や、企業見学を社会貢献としてはやっております。また、大学連携プログラムということで、基礎研究所のユニバーシティー・リレーションというものがやっている活動もあります。
 具体的には、学長・総長向けの天城学長会議から、教授や研究室に向けて御提供しております大学の研究室へのハードウエア、ソフトウエアの御提供や、実際私どもの製品を無料で使っていただくこと等やっております。このインターンシップによる就業体験はいろいろ話題になっており、ちょうど6月9日に社内で発表があったプログラムがあります。今までは基礎研究所で非常に高度な専門性を持つ人のインターンシップを受け入れていたのですけれども、それを広げまして新たに2種類のインターンシッププログラムを作りました。
 一つが2週間の短い無償の就業体験、もう一つが1か月から6か月ぐらいのプロフェッショナル・インターンシップです。こちらの有償の方は、エンジニア系は1日8,400円で、スタッフ系は1日6,900円ということで、非常に技術者の方を優遇するようなものになっております。大学1年生から博士課程の方まで誰でもいいということですが、この有償の方に関しては部門のニーズに応じた技術のある人を採用するということになりますので、少し面接等のプロセス等が入るかもしれません。週に1日でも5日でも御都合に合わせてという形のプログラムを発表させていただく予定です。
 初等中等教育の関係の方で二つ、この人材委員会の報告書に入れていただけたらと思うことがございます。一つは、キャリア教育アワードというのを経済産業省様が作っておられますが、そういうのを頂くと企業としては非常に励みになりますので、もしも可能であれば文部科学省様からも理系技術アワード等を作っていただきたいということです。大臣から表彰されるだけでも企業は一生懸命いろいろなプログラムを用意するのではないかと思います。お金も余りかかりません。
 もう一つ、キャリア教育について、社会貢献の話をいろいろ聞きますと、皆さんやった方がいいと概念的には賛成なさるのですけれども、実際、学校に行ってみると、校長先生、副校長先生は「いいね」とおっしゃってくださるものの、先生方は、「これほどカリキュラムが忙しいのにこれ以上新しいものを入れる余裕がない」ということになることもあるそうです。もう少しそのあたりが、フレキシブルにできるような体制ができると有り難いと申しておりました。
 非常に駆け足ですが、以上でございます。ありがとうございます。

【濵口主査】  ありがとうございました。私も天城でお世話になっております。それから、最近、実はうちの大学でIBMのJAMを採用させていただいているのですが、あれはとてもよいですね。IBM、150か国ですか。
【塚本委員】  170か国です。
【濵口主査】  40万くらいの社員のミッションを決定していくというのを3日ぐらいでやっているのですね。
【塚本委員】  はい。
【濵口主査】  ICTを使って作業をやられるのですけれども、我々、例えば大学の研究力強化とはというので階層別に選んで、ラウンドテーブルで議論してからJAMに入っていきますといろいろな意見が出てきます。「60歳以上は全部やめさせろ」等、なかなか過激な意見も出てくるのですけれども、結構、面白いです。
【塚本委員】  ありがとうございました。

【濵口主査】  ありがとうございます。
 それでは、後ほど提言のお話や、IBMのお話の質疑応答をやることにいたしまして、少し議論を中断して、五神先生のお話をまずお聞きいただきたいと思います。
 それでは、先生、よろしくお願いします。
【五神教授】  お招きいただきまして、ありがとうございます。東京大学の五神です。3月まで東大の本部の方で副学長をやっておりまして、人事制度改革などの議論にも参加していましたので、本日は、東大の人事制度改革についてという話と、それから、今、学術会議の課題別委員会の中で研究人材の検討委員会というのをやっておりまして、私が座長をしておりますので、その審議状況も含めてお話しさせていただきます。資料に沿って少し省略しながら御説明させていただきたいと思います。また、人材問題、あるいは人事制度改革がいかに重要であるかということに思い至った背景と、やはり研究人材と教員ということを考えると、大学院教育改革も重要なので、時間があればそこについての取組についても御説明したいと思います。
 まず、国交省のデータを借りましたが、日本の人口が推計でどうなっていくかということについてです。2050年で1億人を目指すという話もつい最近出ましたけれども、普通に予想すると人口はどんどん減っていくということになります。このように見ますと、ここ最近、1世紀ぐらいの間がいかに急激な変化であったかということが分かります。経済力という意味でも、我々東大などでも明治維新以降の歴史を調べながら考えますと、国民一人当たりの所得は、右肩上がり以外ほとんど経験しておりません。第2次大戦による敗戦は大きかったのですけれども、それは瞬間的で、多分、次の年にはもうみんなが頑張って右肩上がりのフェーズに入っていました。それがだらだらと衰退していくという状況というのは、多分、歴史の中では初めてではないかと思っているわけです。
 ですから、GDPがこのように落ちたことで、最近はもう少し更に下がっているか、あるいは止まっているか分かりませんが、いずれにしても2000年頃とは状況が随分変わりました。もう大分前になりましたが、2008年、ドイツで国際会議があったとき、アメリカ人の友人から日本って大変なのですかと言われました。ついこの間、ニューヨークタイムズに出ていたという話でしたので、帰ってから調べてみますと、ハイテクジャパンなのにエンジニアの確保が遅れているということです。一つは工学離れというのが非常に顕著だったということ、そしてもう一つは、外国人のエンジニアを獲得するのが難しい状況になっているということが報じられていました。これは私のような理学部にいる人間が出すような絵ではないのですけれども、2006年時点の、横軸が世界シェアで、縦軸が生産規模、世界の市場規模を表しており、日本がどのぐらい貢献しているかということがわかります。例えば自動車は、50兆円とさん然と輝いております。
 その下あたりに電気系の部品等、グレーの比較的大きな丸が3つあります。しかし、4年後を見ますと、その3つの丸がどこかに消えています。陰に1個ありますけれども、いずれにしても産業構造が急激に変わっています。私は4年前に理学部に戻ったのですけれども、その前、21年半工学部におりまして、応用物理系でしたので、このハイテクジャパンを支えるエレクトロニクス系の基礎研究分野、インダストリーに優秀な学生をたくさん送り込んでいます。マンツーマンで指導した学生は127人おりまして、そのうち8割ぐらいがインダストリーにいます。このバルーンは消えていますけれども、優秀な人は会社にちゃんといるわけです。何十年かかけて、比較的日本が裕福だったときの教育投資を吸い込んだ優秀人材が30代、40代、50代にいます。その資源が心配であるというところが一連の人材育成、教育改革に取り組んでいる原動力です。
 これは、企業の方とアカデミアのディスカッションの場として聞いているある研究会に、スタンフォード大学のダッシャー先生を何年か前にお呼びしたときの資料です。一人当たりのGDP、要するに国民が裕福であるかどうかというのが横軸で、縦軸はその国の総生産に対して新しい企業がどのぐらい寄与しているかを表しています。開発途上国は当然のことながら、大きな会社がないのでその寄与率が高いわけですが、だんだん成熟してくるとそれが落ちてきます。ところが、成熟後に成長しようとするとやはり新しいものを作らなければいけないので新しい企業の寄与率は再び上がります。ここでは、無から有を作ることがいかに大事であるかということを説明するための絵になっています。日本はこの赤丸のところで、ちょうどターニングポイントになっています。
 そうしますと、無から有を生み出す人材をどう育成するかということになってきます。まず、これは1955年と2010年における18歳人口のピラミッドの中で、1955年は学士の定員、2010年の方は学士と大学院の定員を書いたものです。これからわかるように、18歳人口は本当に小さくなりました。今は、120万人を切っているのです。また、1955年、戦後10年は、やはり学士は高度なエリート層でした。戦前の旧制大学というのは研究教育をやる大学がデフォルトでしたので、学部が拡大する中で、そういう学士教育の量的規模が拡大していた時期だと思います。ですから、日本の大学における学部教育のカリキュラムを見ますと、欧米のグラジエートコース、大学院にかなり近いコースを元々持っているところとほぼ同じとなっています。例えば私がいる物理教室の3、4年生のカリキュラムとバークレーのフィジックコースのグラジエートはほとんど同じことを教えています。
 ところが、だんだん大学が大衆化し、大学院に行かなければいけない状況になっているわけですが、そこの移行がうまくいっていない可能性があります。一つは大学院が、そういう高度な人材を育成するための教育課程としてちゃんと機能しているかどうかという点です。文科省の中教審などでも平成17年答申や、22年答申などでも議論されて、そこを強化しようということが続いております。特に無から有ということになりますと、やはり課題を発見して解決するという博士人材の育成が極めて重要であるというわけです。そこをきちんとシステムとして評価し、その富を伸ばしていくための活動をどのように産学連携でやっていくかというところが課題になっていると理解しています。
 一方、大学院重点化が1990年代に行われて、旧帝大を始め、幾つかの大学で大学院が運営組織の中心になり、それと同時に修士の定員が大幅に増えました。それにちょうど呼応するような形でポスドク1万人計画が始まり、ポスドク層がきちんと活躍できる環境が必要だと言われるようになりました。これは現在1.7万人と言われるぐらい量的には達成しました。また、国立大学について言えば、2004年に国立大学法人化が行われ、大学の自治的・自立的運営の中で効率化が求められるようになりました。
 ところが、その一方で、2006年、骨太方針による総人件費改革というものがあり、国立大学も人件費抑制が求められるようになりました。こうして安定的なポストは削減基調にある中で、ポスドク、あるいは博士卒業生が増えています。増えている要因は、やはり科学技術立国を目指した国の施策が大きいと感じています。95年の立法の後、1期、2期、3期、4期ということで平成28年から5期に向かうわけですが、その間の投資は、有力大学に競争的資金の形でかなり流れ込んでいるということは事実であると思います。そういう活動を支えるためにポスドクの雇用は不可欠であるという面もあります。
 これが先ほどの骨太方針の話ですが、これは国立大学法人化のときの国会の附帯決議違反ではないかという話があります。これは一応、2010年までということで止まっていますが、どこの大学も運営費交付金の財源の見込みは漸減ということですので、人件費抑制、特に安定ポストについて微減を続けている中で運営しているという状況だと思います。そんな中、非常に大きな投資が継続され、今度5期に入ろうというわけですから、5年×4期で20年も投資が続いているということです。例えば論文数は一つの指標だと思いますが、グラフの中で、世界全体を示す紫色と比べると、東大も日本全体も、2000年頃には着実に伸びていたのですが、法人化後ぐらいからピタッと頭打ちになり、競争力が落ちてきているというのが一つのエヴィデンスとして見えてきます。
 背景の一つには、相対的に見るとアジア諸国が台頭したということがあります。ただ、先ほどの国交省の絵にあったような時間スケールで見ると、日本がアジアの中で断トツであるというのは、歴史的にはつい最近、50年ぐらいの特殊事情なので、より正しい本来の位置に向かっているにすぎないということかもしれません。ただし、この半世紀の間の高度成長、そして、その投資を吸い込んだ高度化が行われたことは確かであり、現在、高止まりしていることも事実なので、その優位性を過度に失うというのは非常に残念なことです。日本企業は産業のグローバル化によって留学生の雇用人数は拡大していますが、なかなか日本の大学で外国人を育てるということがうまくいっていない部分もあります。特にマネジメントクラスで、外国人の優秀層を日本の大学から出してほしいという声もあるわけです。
 産業においても学術においても国際競争が激化する中で、世の中は循環が活発化しています。しかし、日本は人事がかなり硬直化・固定化しており、流動性が非常に低い状況です。また、立ち遅れという点に関して、先ほどの知識集約という意味では、学術だけでなく産業においても博士は重要ですが、日本において、かなり博士離れが進んでいる状況が見て取れます。文系の場合には博士離れ以前の修士離れが非常に今顕著であるという状況です。更に、若手研究者雇用環境の悪化と書きましたが、これは研究に対する投資が増えており、雇用財源などかなり大規模に額が投入されているわけですが、ほとんどが不安定な任期付きになっているということです。投資しているのだけれども、雇用されている人たちが不安がってしまうような効率の低い投資になっているということで、ポスドク問題が提起されるようになりました。また、学術会議の議論で中止になりましたが、分野の重点支援というものがあり、重点支援を受けた分野でポスドクの大量停留、高齢化という問題が出てきました。労働契約法の問題は、去年非常に深刻な問題であり、一応、特例という形で一息ついたものの、本質的な解決にはなっていないという状況です。
 そのような状況の中、Research University 11において、修士から博士の進学率を見ますと、10年間で23.2%から16.5%にまで落ちています。東大はそれよりも顕著で、41.9%あったのが25.8%と16ポイントも落ちています。東大のように優秀な学生が集まるところで博士進学率が特に顕著に落ちているのは大変問題です。これはいろいろなところでお見せしている東大における雇用状況の年齢分布の絵です。右側が任期なしの無期雇用で、左側が任期付き雇用の分布を示しています。この中では、承継ポストと言われる国立大学から引き継いだポストにおいても、教員の任期制の下で助教などに任期がついている場合は左側としてカウントしています。55歳以上のところで山があるのは、工学系研究科などで55歳から教授を任期制に移行するという制度をやっているためです。大事なことは、平成18年と24年を見たときに、若手の任期なしがかなり減ったということと、それ以上に40歳以下の任期付きが大量に発生して、現在有期雇用が全体の60%を超えているということです。
 東大においてこういう状況であるということを二十二、三歳の学生さんが知ったとき、研究する人生を選択するかというところが大きな問題です。これを何とかしなければいけないということで、東京大学としては年俸制を導入するため、人事制度改革を進めています。東大の中で先ほどのような状況になった大きな原因の一つは、無期雇用の教員採用数が削減されていることです。定年延長の影響も小さくありません。そして、何よりも量的に研究を行う人が増えているのは、大型プロジェクトによる雇用が増えたためです。その結果、若手の安定ポストが直撃されたので、例えば、教授を年俸制で雇用する特例ポストにしたとき、あるいはポストを下方転換したときに、若手の安定ポスト数を増やすことや、今日、後で詳しく説明するクロス・アポイントメントなどにより改善する必要があります。
 ただし、東大の人事制度改革は、教員が教員を選ぶという大学の自治の基本によるものです。人事制度が崩れて、メンバーのクオリティーが怪しくなってしまうと、大学の自治の基盤が損なわれてしまうので、やはりポリシーが非常に重要だと考えています。まず、卓越した教員の活躍の場を広げるということが重要です。特に東大は、おごったような言い方で申し訳ないのですけれども、優秀な人がたくさんいます。しかし、それを囲い込んでしまうようなことは良くありません。その人々がその先、いろいろなところで活躍できるようにしたいと考えております。また、優秀な先生を優遇するということも大事です。そして、今述べたように、若手雇用の安定化は非常に重要ですし、多様性、特に女性や外国人を増やすためのアファーマティブ・アクションなどもやりやすいような仕組みも必要です。ただし、人事の質の厳正管理は極めて重要なので、教授層ポスト数は厳格に管理し、無用に増やさないという仕組みの中で進めています。
 教授(特例)ポストは、年俸制の教授ポストということで、承継の教授を年俸制に変える仕組みです。その財源は部局が持っている運営費でも良いですし、外部資金の間接経費でも良いということになっています。そうしますと、割り当てられたポストは凍結するためポスト数は増えないのですが、そのポストは元々承継ポストであり、運営費の財源、雇用財源は浮きますので、それを下方流用して助教や准教授を雇用できるようにしたというものです。そういう財源がないところは、先生の給料を圧縮して、若手も少し雇うということを進めている分野もあります。これは教育学部などで実施されています。これが下方流用です。
 次に、クロス・アポイントメント制度について御説明します。特に今日はこちらの説明をしてほしいと言われたので資料を用意しました。これは、最高水準の研究を維持、発展するとともに、若手研究者のポストを確保したいという制度です。例えばある先生がほかの機関の研究所長を兼ねたい、あるいは余人をもってかえがたいので両方でそのポストにその先生がいなければいけないというときに、エフォートを定めて給与を分割するという仕組みになっています。ただし、東大においては、その先生のポストは1ポストとしてカウントしますので、あいたポストに別の教授を入れるということはしません。ですから、たとえ10%、20%の給料しか東大から出ていないにしても、権利、義務は通常の教授と全く同等であり、100%やってくださいということになっています。また、そういうことができる人しかこの仕組みを適用しませんということにしております。現在、8件適用しております。
 クロス・アポイントメント制度は、ある種の混合給与制度で、現在、いろいろなところで拡大していってほしいという話が出ているわけですけれども、やはり教授のポスト、肩書を持つ人が薄まっていくような運用は、大学の存立に関わるので、極めて慎重にやらなければいけないだろうと思っています。
次に大学院改革の方に移ります。東大で博士課程進学者数の減少が顕著だと聞きました。私は、物理系の専攻にいますが、そんなに減った感じがしないのでおかしいなと思って、今日のために急きょ、博士課程進学率を調べてみました。すると、進学率は確かに落ちている時期はあるのですけれども、20年以降、V字回復しています。これは明らかにリーディング大学院等の施策が功(こう)を奏しています。
 しかしながら、全体で見れば修士で卒業してしまう人が非常に増えています。大学院の学生は随分多様化が進んでいて、外国人、あるいは他大学から来る学生さんも多いので、そういう人たちが博士課程に残らないということなのかもしれません。もう一つ重要な大学院の構造変化は、90年代に起こった大学院重点化です。東大でもかなり定員の規模が大きくなりました。私が今いる理学系の物理では、83名の定員が152名になったのです。その結果、昔の定員80名時代は8割ぐらいが博士に行っていたのですが、現在は50%ぐらいで推移しており、進学率はガタンと落ちております。無から有を生み出すイノベーション人材となるべき人が修士で逃げてしまったようであるため、下のように変えたいと考えてリーディング大学院等を実施しています。
 リーディング大学院はリーダー育成ということですが、制度的には修士、博士一貫の学位プログラム制です。学位を取るために何をやらなければいけないかを明示した上で学位を出し、コース修了を明記するというシステムで、これはリーディングプログラムに限らず、日本の大学院の中で広げていかなければいけないシステムです。今、私たちはこのプログラムを産学連携で進めています。付録の参考16にも書いてありますが、産学共同でやるために、例えば博士課程における長期のインターンシップを3か月ぐらい実施しています。海外の企業、コラボレーションしているベル研、マックス・プランクからスピンアウトしたような会社が学生のインターンシップ先の中心です。ただし、行った学生は非常にハッピーで、非常に多くのことを勉強したとおっしゃるのですけれども、コストがかかり過ぎているのではないか、心配であるという声もあります。
 やはり日本の中で産学共同のプラットフォームが欲しいと考えております。提言案にもそういうものを作ると書いてあるのですが、現在、我々は、濵口先生がビジョナリーチームリーダーをされているCOI STREAM事業に手を挙げて、産学共同のプラットフォームの実装を始めております。例えば理学系の優秀な大学院生は、キュリオシティ・ドリヴンの研究に興味があるのですけれども、それを活用している現場を知らないまま食わず嫌いになっている場合があります。そんな人たちに現場を体験するような場を実装するということで始めたところです。しかし、これはCOI STREAM事業の事業目的とずれている部分もあるので、今かなりそのすり合わせに苦労しています。
 この事業のターゲットに関連して、また付録の方にある図を見ていただければと思います。127人のうち80%がインダストリーに行っております。私の研究室からインダストリーに行った人の中には、本当に能力相応に活躍できている人もいれば、消えていく産業構造のバルーンの中で少し停滞しているという人も、特にここ数年たくさんいます。そういう人たちの業種転換、あるいは産業界が大学等と共同研究しながら次のイノベーションの芽を立ち上げて、それを二、三年後に引き取るというインキュベーションをしながら産業実装していく橋渡しにつながる場が絶対必要だということで、COIの提案をしたのです。これがバックキャストでCOIのスキームとまるで違っていたので、今、すり合わせをやっています。
 ですから、そういう芽を持った人、イノベーティブな人はたくさんいます。例えばソニーのような会社でも、55才ぐらいになると役職定年になってしまいますけれども、40、50代ぐらいにはそういう発明の大好きな人がいっぱいいます。そういう人たちと共同研究し、二、三年後に産業に戻すための活動をしながら、それを横目で見ている学生さんが、知の探求だけではなく、知の活用、あるいは技術の原理を明らかにして信頼性を高めることが学問として非常に社会に役に立つのだということを実践的に学ばせるような場を今作っています。
また、東大の大学院の改革が私の3月までの担当だったのですが、国際化には様々な問題点がありました。例えば、海外の大学を受験する場合、GREやTOEFLの点数を使って、WebでMITやハーバード等にアプライするわけです。東大もグローバル化を進めるに当たり、こうしたアドミッションで学生を本当に採るかどうかというところが大きな問題です。バークレーの現職教授のお話ですと、バークレーのフィジックスのような非常に強いところ大学でさえ、オファーした学生の3割しか来ないということです。東大フィジックスは強いですけれども、どんなに頑張ったところで、このグローバル・スタンダードでやった場合、10%来たらよい方です。そうすると、10人採ろうとしたら100人オファーを出さなくてはいけません。100人オファーを出すためには、多分、七、八百のアプリケーションをさばかなければいけません。そのためのノウハウを築きながらシステムを作っていくということがアドミッションをグローバル化するということになりますが、それをやるのは得か損か、大議論が起こるところです。ただ、私はアドミッションのグローバル化を避けられない方向だと思って、全学的に実装していこうと今進めています。
 具体的なことは資料に書いてありますが、一つ特にやりたいと思っているのは、社会人になってからの博士号取得の推進です。特に工学系分野は、優秀だけれども、ノンディグリー、マスター卒で会社に行っている人がいっぱいいます。その人たちが30歳だとすれば、まだ先が長いので、共同研究等を通じてドクターを一緒に取らせるということを進めたいと考えています。先ほどのCOI拠点は、まさにそのために作りました。大事なことは、大学の先生は、頭の中に、ドクターを持って戦うべき人というデータベースを持っているということです。私だけでも多分20人ぐらいは、そういう人がいます。10人集まれば200人ということですから、時限を設けてでもよいのですけれども、戦略的に大学に呼んで、PhD化を進めながら、その中で産業を興していくということをやりたいと考えています。これがもし定着したら、今度はクオリファイエグザイムです。クオリファイエグザイムをやった人はドクターに行けるという資格を持っているわけです。しかし、今の産業状況だと修士で就職したいという学生もいます。その人はクオリファイエグザイムを通ったというタグを付けて会社に出します。そして、二、三年、あるいは四、五年して大学でディグリーを取りたくなったときに、修士のキャリアを評価して、短縮でドクターを取らせた上で、ドクターとしてきちんと世界に実装させるわけです。多分、途中に会社経験があった方が良い人材が育つ分野も多いだろうと思っており、それを今やろうとしております。
 最後に、まさにこの委員会で議論されている内容とほとんど同じことを日本学術会議の課題別委員会で議論しています。論点は、もう既に全部出尽くしていると思います。労働契約法の問題が最初は重要なイシューでしたが、特例法が出て、落ち着きました。ただ、ポスドクを作り過ぎたら駄目だという論調が多い中で、先日財政審のペーパーなどでも、ポスドクについてネガティブで少し残念な記述になっていました。アカデミアだけでなく、産業界で研究開発をする人から見ても、ディグリーを取った後の数年間、その人の成長の過程としてポスドクを経験するのは世界では普通のことなのです。
 そうすると、今、2万人弱ぐらいというポスドクの規模は、日本の総研究者数から見たとき、日本が抱えるべきポスドクの数として少な過ぎるとは言わないけれども、多過ぎるほどでもありません。それが定常状態となる中で、そういう人たちを活用するようなアカデミアの改革、あるいは産業構造の変革ということを同時にやっていく必要があるのです。そのためにも先ほどのような拠点の活動は非常に実践的で重要だろうと思っています。もちろん雇用の安定性がないと若者が逃げてしまいますが、研究人材の流動性を高めなければいけないことは明らかなので、安定性と流動性をどう両立していくかを考えていかなければならず、そのためにはポスドクという過程が重要です。ポスドクが社会のどこにどうはまって、どのように活動していくのかというキャリアパスを明確化することが必要になります。
 昨今の状況を見たときに、やはり研究が大事だということで競争的資金が流れてくるわけですけれども、そうやってお金が来るとPIの人は必ずポスドクを雇います。しかし、その人は、そこで若者を数年雇用するだけで、その若者が数年年を取るということに対する責任をほとんど感じる仕組みがありません。ですから、例えば、その先生のプロジェクトに入った人がどのようなキャリアパスを描いたかということも情報開示して、教育システムとして可視化していく中で、競争的資金によってポスドクとして雇われる人、雇う人、双方の緊張感を増していくということが必要です。
そういう中で、学術会議の提言の骨子を今作っているところです。特にポスドクのキャリアパス、あるいはポスドクをどのように研究人材のポートフォリオの中に組み入れるかということが極めて重要です。
また、大学院生支援制度の構築は、極めて急務だと思っています。というのも、先ほどリーディング大学院プログラムの話をしましたが、後ろの付録に付けましたように、これまで矢継ぎ早にいろいろな大学院強化事業をやってきました。21世紀COEに始まってG-COE、卓越した大学院拠点形成事業、これは2年で終わりましたけれども、並走する形でリーディングが走っています。しかし、そうした事業ではシステムになりません。この経験をどういかしていくか、あるいはこのときにやった成果を定着させ、財源を作っていくことができるのかを考えていく必要があります。
ただし、財源を作る際には、大学院教育の受益者は誰なのかをよく分析した上で、受益者が負担する仕組みを作らないともたないだろうと思います。現在、大学院生の学費は、博士課程でも親が払っています。しかし、本来、一番の受益者は本人のはずですので、本人が自分に対する投資としてお金、授業料を払いたくなるような大学院でなければいけません。ただし、もちろん本人はお金を持っていないので、奨学金にして、受けた教育のリターンが十分あれば問題なく返済できるというシステムにする必要があります。しかし、今、全然そういう大学院になっていないので、このようなシステムは回りません。そこで、米国型の競争的資金の中で雇用すること、あるいは学振DCは非常に重要なシステムだと思っているので、これらをきちんと充実させていくことが必要になってきます。もう一つ、大学の基礎体力となる財源確保という意味でも、間接経費などをきちんと充実させて、どうしてもフラクチュエーション、不安定になりがちな競争的資金を補いながら、システムとして安定化していくことも重要です。
 問題は、これを個別の大学でやるのか、もう少し大きくして国全体のスケールでやるのか、どちらが効率良いのかというところです。私は、個別にやれるのは数大学だと思っています。これは雇用についても同様で、せっかく多大な科学技術投資が行われている中で、そのかなりの部分が若者の不安定雇用のための経費になっており、誰もハッピーになっていません。そこを抜本的に改革するためのキーワードは、雇用の安定性と流動性です。そういう意味で、法人ごとの単独ではなく、府省横断、あるいは機関連携で、研究員のプールを作って、安定性と流動性をコントロールしながらやっていくシステムが必要ではないかと何回かいろいろな新聞に書いています。
 まとめとしては、30代、40代の盆暮れにはがきをやりとりする卒業生の人たちを見ていると、その活用は急務であり、あと10年ぐらいになっている私の教員人生の中で何とかしなくてはいけない問題です。次の世代を育成するのも大事なのですけれども、30代、40代に重要な資源があると思っています。
 大分長くなってしまいましたけれども、以上です。

【濵口主査】  ありがとうございました。
 それでは、自由討議に移りたいと思います。これまでの御説明を踏まえ、議論いただければと思います。どなたからでも結構ですが、どうぞ、挙手して御意見を頂ければと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ、川端先生。
【川端委員】  ありがとうございました。そのとおりだと思いながらも、若い方々の安定性と流動性を保つよう、先生が最後におっしゃったように、ある程度プールをしてコントロールするということにより、例えば年を取っている人たちを移動させるなどすれば、確かにポストは増えるけれども、結局、フローを考えたら、今たまっているある部分がはけるだけで、その後また同じことになるのではないでしょうか。フローとして考えたとき、一体どれぐらいの数がどういうバランスでいるのがよいのでしょうか。この辺りに関して、何かもし解析等お持ちでしたら教えてください。
【五神教授】  資料の最後のページに、審議会やイノベーション総合戦略2014、財政審の中でどう大学改革がうたわれているかを載せています。また、付録には、私が提唱している「国家雇用研究員制度」について載せております。これは実は2009年から言い続けておりますが、国家雇用という名前がよくなかったのかもしれませんが、具体化は進んでいません。例えば1学年当たりが100人ぐらいだとしますと、400人ぐらいの規模になり、30年勤めるとすると1万2000人ぐらいの規模になります。こういう人たちの雇用財源は、実は今、研究独法あるいは大学の承継ポストなどという形で、既にどこかにあるわけです。そこをある種安定的な雇用のポスト、研究者として目指すべきポストのような形にすることを提案しました。フランスのCNRSに近いと思います。
 そのプールにいる人を招へいしたい大学・研究所は、例えばスペースや若手をこれだけ用意するというような、その研究者を勧誘するための競争を行うシステムを作れば、優秀な研究者が多様な場で活躍することになります。このような研究者は、若者からすると一つのキャリアパスのゴールのイメージのように見えるはずです。そういう人たちを30歳で全員採用してしまうのではなく、40歳、50歳という節目にエントリーポイントを設け、多様化していくという形をとります。こうして、国がパーマネントに雇用している研究者や大学教員の人件費の何割かを充てることはできませんでしょうか。更に私が言いたかったのは、パーマネントポストの財源だけではなくて、競争的資金で投入しているお金のうちの何割かをこの財源に充てたいということです。そんなに大したフラクションでなくて良いと思います。4期まで20年、競争的資金の投資を続け、今後もこれをやめる気がない場合、もっと安定的な使い方をしましょうということを誰かが決め、そういう仕組みを作っていこうという流れになれば、このぐらいの財源規模で実現していくのです。もちろんこのお金を全部足すという話にはならないと思うので、今持っているポストをみんなで出し合いながら進めていったらどうでしょうとかと2009年に提案しました。
 このような制度が進んでいくと、雇用は安定します。問題は、誰がどうやって選ぶか、学術コミュニティが選べる力量を持っているかどうかということです。しかし、今まで非常に硬直化した人事をやり続けているところ、弟子を雇う習慣があるような分野を健全化させ、鍛える効果ももちろん副次効果として期待できます。このアイディアは、大学がどのように大学という場所をみんなで使うようにしようかと考える中で、2009年に出てきました。2009年といえば民主党政権の頃です。このとき、国家雇用研究員の数を考えるに当たって、例えば研発法人や、フランスのCNRS、マックス・プランクなどの研究者数を比べてみたところ、日本の研発法人だけでも結構な数の研究者がいます。これに国立大学を入れたら相当な数になります。
 このように、全体投資として日本はそんなに劣っているわけではないのだけれども、うまく回っていないのではないかという気がしています。ですから、これは工夫次第なのです。やはり、基本的には科学技術基本計画以降、科学技術に対して財源が流れました。それはみんな大学から見ればプロジェクト物で、タイムリミテッドがあり、人を雇用しても安定雇用財源にならないために、安定的なポストが蓄積されないのです。だから、これをやめるという話があれば別ですけれども、やめるという話はもちろんないので、ほかに日本にやりようがないわけです。
 バルーンが消えたら、次のバルーンを作るしかありません。ですから、その作り方として、こういうものを装着するように大転換しなくてはいけないのではないでしょうか。平成28年というのは節目の年になるので、28年を見据え、今議論すべきことではないでしょうか。人材は要です。是非議論をまとめて、実現していく必要があると考えます。ただ、これは大学の中でも危険思想だと思われている部分があります。パーマネント雇用のポストを出すこと自体非常に危険ですし、プールを作れば、プールは削減しやすいため、とても危ないという意見もあります。しかし、そういうことを言っていられないぐらい、人材について深刻化が進んでいますので、是非この委員会でも知恵を出していただきたいと思っています。
【濵口主査】  ほか、よろしいでしょうか。どうぞ。
【渡辺委員】  今の御説明の問題意識は、多分皆さん全く同意されると思います。五神先生から、学術会議の課題別委員会のお話を頂きましたが、同じ学術会議の分野別委員会の物理学委員会から最近提言が出ました。もしかしたら五神先生もメンバーに入っていらっしゃるのかもしれないのですが、そこの問題意識も全く同じところにありました。その提言には、もう少しシンプルな表現で、「競争的資金を減らして運営費交付金を増やすようにすべきだ」ということが書かれています。ただ、それはとても難しいというお話が五神先生から今あったような気がします。元に戻すことがなぜできないのか私はよく分からないのですが、そこを教えていただけますか。
【五神教授】  理想的な運営をするために、例えば大学で言えば運営費交付金を増やしてもらうのが一番良いことだと思います。ただ、現状、国民全員が増やしましょうと言えるほど信用がないということだと思います。つまり、使い方が硬直化されているのでは最適化されず、無駄が出るのではないかという不安があるのだと思います。それで、やはり誰がどういう責任を持って何をやっているかという役割を明確化する中で、お金がきちんと回っていくという構造設計をしないと、実効性がないのではないかと私は思っています。それで、こういう論調にならざるを得なかったということです。
【渡辺委員】  それは国民の理解との関係だと思うのですが、国民が今のこの科学者をめぐる問題を絶対理解しないということはないのではないかと思います。逆に理解をしていただくような努力を科学者コミュニティはしていかないといけないというのが私の認識です。これは本当に国の問題であって、このままいくととても大変なことになるのだということをきちんと国民に理解してもらい、この状況に対して国民としてどのように考えますかということを聞く必要があります。きっと理解してくれないからという前提は外して考えることも必要ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
【五神教授】  きっと理解してもらえると私もずっと思っていますし、理解してもらうための努力は重要だと思っています。ですから、今、基盤的な運営費交付金を増やしてくださいということを主張する前に、活動しているのです。例えば博士人材が産業界と連携して活動する場合、あるいは外国人の留学生を日本で育てる場合、受益者となるのは産業界が大きいわけです。だとすれば、その活動に産業界がアグリーしてくれれば、そこには税金以外の、産業界からのお金も入るはずです。
 そういうものを組み合わせる活動を積極的に進める中で、大学の、もっと長い100年、200年のスケールの活動について理解を高めていくということが必要だと思います。今、言うだけでいいほど安閑としてはしていられない状況になっています。つまり、5年放置したら相当劣化が進んでしまうという状況の中で、やはり現実的な戦略をとらなければいけないというのが私の立場、理解です。
【渡辺委員】  ありがとうございます。確認なのですけれども、先生がおっしゃることは、長期的な取組と短期的な取組が必要で、まずは短期的な取組をきちんとやらなければいけないということですね。
【五神教授】  長期的、要するに100年後には、今の人類と関係ないような学問というものもあるかもしれないということを私の同僚である理学部の先生方は言うわけです。そういうものは確かにあるけれども、みんなが納得して守っていき、永久に、継続的にバトンをつないでいくための仕組みを作るために、今はこういうことをきちんとやらなければいけないと思います。最終的に運営費交付金と外から入るお金の割合をどうするかということは、そのでき上がった形で分かるのだと思います。現在よりも比率は減るかもしれないと思います。
【濵口主査】  どうぞ。
【西口委員】  少し違うことになりますけれども、松尾さんから御説明いただいた人材委員会提言の骨子の2.の我が国を取り巻く環境の変化というところについて、あえて明示的に、付け加えるべきではないかと指摘したい点が二つあります。
 一つは、OECD若しくはアジア各国の文科省に当たるところが、今、初等教育段階からの創造性教育にものすごく力点を置いているという点です。私はたまたま御縁があって、昨年の1月にシンガポールでそのような会議に1週間ほど参加していたのですが、日本の文科省以外の全てのアジアの文科省の方がそこに集まっていて、どのように初等教育を創造性教育にシフトしていくかという議論を、OECD及びイギリスの教育省の方も参加して熱心に議論している場面に遭遇しました。そこである種のフレームワークを持って、どうすれば創造性を子供の頃から育てることができるのか、そこがまさに競争力の原点であるということを既に話していました。つまり、教育の焦点が創造性教育にシフトし始めているという点が一つです。
 あと、多分、それと表裏一体の話なのですが、スタンフォード大学を震源地として、いわゆるCourseraという無料の高等教育が今全世界で広がっています。つまり、ネットにつながることさえできれば、スタンフォードであれ、MITであれ、ハーバードであれ、そこの教育プログラムが無料で受けられます。学位は取れないけれども、教育は受けることができるということがものすごい勢いで広がっているのです。特に途上国の場合は、何もわざわざアメリカに留学しなくても、ネットさえつながれば自分の家で、学位は取れないけれども、知識は吸収できるということで、今急速に広がっています。
 東京大学さんも一部入っていると理解していますが、これは何を意味するかというと、実は大学の役割というのは、既存の知識を単純に伝達するということから、場合によってはかなり違うステージに入っていく可能性があるということです。だからこそ、またさっきのポイントに戻るのですが、何らかの新しい知恵を生み出す創造性を高めていくということがより重要になっていきます。そういった意味で二つのことをまとめて言うと、いわゆる教育の役割は、知識の伝達から知識の創造に向けて、大きく、より変質・革新している真っ最中です。これが今世界中で起こっている教育の一つのトレンドだと思うので、日本の大学の教育が知識を単純に先生から学生に伝達するというものだとすると、これは相当遅れていますよということを環境認識として持つべきではないかと思います。
 以上です。
【宮田主査代理】  五神先生にお尋ねしたいのですけれども、先ほど我が国の人口のパターンをお見せいただきましたが、急落していますよね。最も適切な日本における研究者の人口、あるいはその推移について、先生はどのように考えられていますか。私は、基本的にもう多過ぎるのではないかと実は思っていて、減っていることは悪いことではなく、むしろ絶対的な人数を増やすよりも質を高めるという方向に努力すべきではないかと考えているのですけれども。
【五神教授】  質を高めるためにどう努力するかというのが我々のプランになっていますので、まさにそのとおりです。それで、例えば博士の定員が多過ぎるのではないかという議論があります。現在ですと、多分、理科系、文科系、全部合わせて1学年1万6,000人ぐらいです。ですから、160万人いた時代と120万人いた時代に1学年2万人というのは多いのか少ないかと考えるわけです。1.6万人というのは多いのか少ないのか。ただし、医薬を除いて、理と工で見ていきますと、1学年の定員は6,000人弱です。そうすると、例えば120万人で6,000人というと200人で1人です。ですから、かなり大きめの中学校で一学年に1人ということになります。知識集約で、数学などの能力の高い人が比率的には多い我が国において、理工農でPhDを年間6,000人ぐらい生産するというのは、決して多過ぎる数ではありません。問題は中身なのですね。
【宮田主査代理】  いや、ですから、さっき先生がおっしゃった三つのバルーンがなぜ消えたかというところに実は直結するのですよ。バルーンが大きくなっていれば博士人材が非常に有効性を示し、もっと増やしてもいいのではないかという議論になると思うのですけれども、それはなぜ機能しなかったかという想定はしていらっしゃいますか。
【五神教授】  機能しなかったのはタイムラグがあるためです。つまり、例えば大学院重点化ポスドク1万人計画のときに産業構造が2015年にどうなって、どのように変わっていくだろうかということ、あるいはその産業に直接寄与しないにしても、どこかで新しいバルーンを付けるような人材をどのように育てたらよいかということを戦略的に考えていく必要があるわけです。それにはやはり科学技術の投資と、それに付随して行える高度人材の育成というものをカップルして、研究成果はその場で出していかなければいけないわけですけれども、そこで育てた人がより高い価値を出すのは、更に5年後、10年後ですよね。そういう構造を作りながら、第5期の計画あたりをどう設計するかは、もしこれを続けるのであれば極めて重要です。そういう意味で修正しなければいけない状況であることはおっしゃるとおりで間違いない状況だと思います。
【宮田主査代理】  ただ、一つのイメージとして、これは起業、あるいはベンチャーの在り方とも実は深刻にカップルするのですよ。先ほど博士人材が出ても、そこから産業化するのに5年、10年かかるというイメージを持っていらっしゃいますけれども、今、そこの産業の立ち上げもどんどん早くなっています。日本は実はそこの立ち上げ方、つまり、リスクマネーの供給とアントレプレナーシップの供給、それから、既存の大手企業の整理、再編成という三つぐらいの要素を同時に進行させていかないとミスマッチがうまく埋まらないのですよ。ところが、ここの人材委員会もそうですし、学術審議会もそうですけれども、一方の立場で叫んでいるだけです。何とかうまくステークホルダーを混ぜた形で一つの提言みたいなものをしないと、なかなか動かないのではないかと思います。
【五神教授】  私たちは、この絵を作るときに、1年ぐらい、リーディング大学院のイノベーション・マネジメント講義の中で学生のグループと、アメリカでずっとプロダクトマネジメントや、マーケットマネジメントをやっていた女性の教員のインストラクター、そして日本の大手メーカーの人たちと議論しました。現在の日本の産業構造の中で社会実装することを考えると、ベンチャーを作ってM&Aで社会実装という形のままではすぐには動かないのですね。
 そのときにいろいろなパターンがあります。企業にいる30代の卒業生にゴムひもを付けた状態で大学の拠点に引っ張ってきて、産業化に近づける研究を進め、それをもとの企業で社会実装される場合もあるだろうし、別の会社にトランスファーする場合もあるわけです。そういう知識や技術が交差する仕組みについてある種のモデルとして実践して、示していくということは極めて重要だと思います。それを現在、COI事業でやっている最中なわけです。ですけれども、この図は分かりにくいと言われていて、苦労しています。回り始めればすごく分かりやすい絵だと思うのですが。
【宮田主査代理】  先生、分かりますけれども、例えばアメリカと比べて、こういうことに気が付くのになぜ20年も遅れたのでしょう。そこにどうも我々が議論しなければいけない根本的な問題があるような気がします。
【五神教授】  私は経済学者ではないのですけれども、人材雇用という観点で象徴的なことが一つあります。バークレーの教授と話していたのですけれども、アメリカでは大学のポストはテニュアです。テニュアというのは定年もなく、アメリカという社会の中で最も安定したポストです。アメリカのインダストリーの雇用は極めて不安定で、いつ首になるか分からないから、給料が多少低くてもアカデミアには優秀な人が自動的に集まります。日本は真逆ですね。会社が非常に安定構造を作りました。戦後の高度経済成長のときにキャッチアップの中で非常に安定なビジネスモデルが長続きしたわけです。
【宮田主査代理】  そうです。
【五神教授】  その中から構築された良いモデルだったわけですね。だけど、それが持続しなくなっている状態の中で、外が不安定になるよりも、アカデミアは現在、もっと過激に極めて不安定であるように若者から見えている状況になっています。だけど、こういうものを起こすには優秀な人をここに集めなければいけません。キャリアとして非常に不安定で価値が低そうに見せ続けていたのでは、知識集約の一番良質な知をここに集めることができないので、これを回すことが重要です。そのためには、安定雇用でひも付いている人たちも不満を抱えているので、彼らを巻き込みながら回していこうという仕組みです。
【宮田主査代理】  よく分かりましたけれども、二つ疑問があります。一つは企業であれば、自主的に役に立たない人材の給与をカットしたり、雇用自体をカットする勧奨勧告をしたりすることができますが、本当に自主的にできるのかという疑問です。つまり、そういうイノベーションを起こせないような人たちが今テニュアの状況を独占しているという問題がありますよね。それを今後どうするのかというのが一つです。もう一つは不安定だから来ないのかというところです。知的な刺激がないからではないのでしょうか。
【五神教授】  それは両方あるのかもしれません。私、実は4年前に理学部に戻ったのですが、学生の絶対数は、私が学生の頃よりもはるかに増えています。そしてものすごく優秀です。PhD Thesisで本を出版したり、国際会議で招待講演をしたりするような学生が毎年数人いるのですよ。昔は多分、そういうのは4年に1人ぐらいでした。だから、そういう人たちが、アカデミアにいることは確かなのです。だから、そんなに絶望的ではないと思っています。人は確かにいます。
【濵口主査】  ほか、よろしいですか。問題はドクターを取った人の社会的な雇用や給与が生涯賃金も含めて低いというところだと思います。先生は、どうお考えになりますか。
【五神教授】  やはりイノベーションをけん引するような本当に優秀な人たちをどう活躍させるかという問題に絞って議論します。例えばD1ぐらいのときに、海外の会社に長期インターンシップで出た学生さんを、その海外の企業はすぐにでも雇いたいと言っていました。やはり日本の学生は優秀であるから、10万ドルぐらいは簡単に出せると言っていました。3か月行ったのですけれども、最初の3週間ぐらいは英語がうまく通じなくて心配だったのですけれども、やってみせた途端に周りに人が集まるようになって、優秀だということが分かったとのことです。
 そこは日本の会社が親会社だったので、その現場に日本の会社の人が行ったときに、これなら是非東大とインターンシップをやりたいというような状況になりました。周回遅れですけれども、そこを回す回路さえつなげれば良くなるとは思います。そこの小さい写真です。ですから、そういう中で無から有、雇用も作るし、経済的にも成長するというパターンを作っていかなければいけません。そして、それを急いでやらなければいけません。急いでやるためには、どこにいる人材かというのを全部見て総動員で全世代活用する、つまり、先生たちの持っている財産の中で一番大事な人材データベースを活用し、総動員令を掛けるべきではないかと思っています。
【濵口主査】  ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
【西澤委員】  ありがとうございます。私はドイツにPhDポスドクで、PIとして研究しておりました。先生御指摘のニューヨークタイムズの中で、日本はフレッティングオーバーをずっとしているけれども、ようやく気づいたという記事が2008年に出ていますように、相当日本は認識が遅れてしまったと思いました。ドイツは、私がいた2000年頃からもうエンジニアリング不足が大きな声で言われて、社会でも大きな議論になって、しょっちゅう新聞にその記事が出ていました。結局、ドイツ人のエンジニアリングになる生徒が少なくなったので、外国人を入れることが必然だということが言われて、インド人の留学生のビザを取りやすくすることを始めました。ドイツには、元々トルコ人との文化の摩擦があるものですから、外国人を入れることに対してはやはりある意味文化的に違和感が強い国ですけれども、それでもあえてそこはインド人を今入れないといけないという議論がもう2000年の前半に起きていました。
 それから比べると日本は、もう10年以上遅れています。私はシュトゥットガルトという大学にいたのですけれども、シュトゥットガルトは工業の町で、ダイムラーの本社、ボッシュの本社、ポルシェの本社、そしてヒューレット・パッカードのヨーロッパ本部があり、とにかくエンジニアリングの強い大学です。そこに私は、2000年からいたのですけれども、私がいた当時から中国人の留学生が大量にあえてそのシュトゥットガルト大学に留学していました。つまり、その後のチャンスを狙ってきていたのですよ。私も何人かの優秀な中国人の留学生を知っていましたけれども、結局、今、彼はダイムラーに勤めて、中国の市場で中心人物となっています。もちろんドイツ語もできますし、やはりすごいなと思います。ドイツは、そこの大学と産業の長期的なビジョンに基づいて、そういうことをあえてやっていました。
 だから、そういう意味では相当日本は遅れてしまっています。先生のお話の中で外国人の優秀な人材をどう日本で活用していくかというお話が、最後の方で余り聞こえてこなかったのですけれども、私がPhDをイギリスで取って日本に帰ってきて、日本の大学に入ることを考えたとき、我々のような外国でPhDを取った者は非常にハードルが高く感じました。アメリカなどでは結構面接試験に呼ばれるなど、積極的にそういう人を採ろうとしていることがわかるのですけれども、日本はどうもリジェクトされてしまうのです。私の資質の問題もあるかもしれませんが、私の周りを見ても結構そういう人が多いのです。外国でPhDを取ってきた人、若しくはポスドクをやった人がなかなか日本の大学に入れないというのが正直実情だと思うのですよ。そういう面を含めて幾つかの質問と意見になったのですけれども、先生はどのようにお考えでしょうか。
【五神教授】  実はこのイノベーション拠点を回すときに、海外の産学連携のようなところが中心ですけれども、ベンチマーキングをやっています。その重要なターゲットがドイツです。ドイツはフラウンホーファーが研究所をたくさん持っており、産学連携も非常にうまくいっています。特に企業との連携が非常に実践的にできています。1989年にベルリンの壁が崩壊したとき、東ドイツは知としてかなり高いレベルにあったのですが、産業が遅れていました。それを融合することによってどのようにドイツ全体を成長させていくかということを非常に戦略的かつ、私たちが調べたところでは根気よくやっています。私たちの分野に近いところの研究所長さんは、実は20年間ディレクターをやり続けています。最初の10年はものすごく苦しかったのですけれども、後半10年で非常に強い産業を作っています。
 もう一つは、台湾のITRIというのを調べています。ITRIの人と話していて象徴的だったのは、基礎研究をやらないということです。だから、そこを潔く最初に切れるので、ある意味効率がよいのです。では、なぜ基礎研究をやらないのかというと、基礎研究をやる意義を納税者に説明できないからということです。つまり、30年、50年後の国家というものを考えるということができないのです。ですから、10年、20年後、せめてこのあと20年ぐらいの経済をどう活性化するかを考えるわけです。
そこで、日本はどういう立ち位置かというと、高度経済成長以降、安定雇用の中で非常に優秀な人たちを自動的に産業が吸い込んで、消えたバルーンはありますけれども、バルーンは消えていても、その優秀な人たちはその会社に雇用され続けている状態です。そういう資源がある状態で、国際ブランドと言えるような企業がこれだけの国土に林立している国は少ないわけです。
 そういうところは優位性として今なら使えます。そういうのを使いながらドイツモデルとも、台湾モデルとも違うような形できちんと伸ばしていくことを、この優位性の資源が大きく目減りしないうちにやらなければいけません。そのためには30代、40代の活用と、高度人材、優秀層の人たちをいかに幅広い分野に展開させていくかということ、そしてそういうものを若者に見せつけることが極めて重要です。ですから、例えば理学部にいる優秀な学生の中には、ともすれば食わず嫌いで応用研究に近づかない人もいるのですけれども、実践授業で、液晶プロジェクターの中身を、ふたを開けて触らせると、民生技術は実はすごいと驚いて、そういうものについても興味を持つようになります。そういう多様な教育が欠けていたことは確かだと思うのです。
 そういう実践授業をやりながら、人材としては今まだ十分にあると思うのです。もちろん、外国人の優秀層をたくさん日本に取り込むことは極めて重要です。例えば中国やアジア地域を考えると、中国にいる、北京大学や清華大学のようなエリートコースに乗っている人たちだけを相手にするのでは不十分です。そこから少し外れているけれども、1,000人に1人ぐらいすごい人がいるとしたとき、日本の企業とタイアップして人材育成をして、その人の新たなキャリアを開くような仕組みを日本がもし作ることができれば、これはかなり長期的な資源になるのだと思います。そういうことをやるためのインフラは、実は日本の大学にあるのです。博士の定員があるということは、それだけ育てる入れ物が過去の投資によってできているということですから、それを活用するということが極めて重要です。
 日本人の中の優秀層が、友達と比べると優秀だから7割ぐらいの努力で人生何とかなると思われるのが一番まずくて、そうではない刺激はもちろん、アカデミックな刺激を我々のところではどんどん与えています。それは昔よりはるかに刺激的になっているということは確かです。出入りする研究者のレベルも非常に上がっていますし、それを産業実装するために協働すること、一緒に作ることが極めて重要になっています。台湾の話は学生にとっても非常にインパクトがあるようで、だから、台湾の人たちは、東大と連携したいと言ってきているのです。我々の拠点と連携したいと言うのです。つまり、基礎研究がないとイノベーションは起きないのですね。最後、社会に技術を本当に広げる際には原理を調べなければいけません。基礎研究は社会的価値が大きいということを今まで余り理学部では語られなかったのです。今、私は理学部長ですけれども、冒頭挨拶で語ったら、工学部長に先を越されたといって非常に悔しがられましたが、要するに技術に信頼を与えるための基礎研究は極めて重要だということです。
 それからあともう一つ、学理を教えるだけではなくて、作り直すことも基礎研究としては極めて重要です。そういう中で産業活動というのは両立するはずです。でも、これは理学だけの話ではなくて大学そのもののミッションだと思っています。理学でやったので分かりやすく、際立ったという話ですけれども、全体で進めていく話です。そういうことを1990年代の真ん中辺りで気がついて本格的にできれば、もちろん極めて先進的だったはずですが、多分、そういうところになかったのだと思うのです。
【西澤委員】  ありがとうございます。あとやはり私は、日本の大学が海外で研究をやってきた人、若しくはある一定の期間、ある文化の中でやってきた人をもう少し受け入れるようにしてほしいと思います。風通しをもう少しよくすれば、恐らくいろいろな刺激になると思います。私はPhDが終わった後、どうしようかと思ったとき、アジアの同僚たちは、みんな国がポストを用意して待っていて、ものすごく羨ましいと思いました。シンガポールも中国も韓国もそうですが、日本はそういう話を聞いたことがなく、逆に敬遠されるので、すごく残念だと思いました。それが今どうなっているのか、私は存じ上げないのですけれども、やはり外国人も含めて海外である一定期間を過ごした人間をもう少し受け入れる柔軟な環境ができると私はいろいろな意味で刺激になってよいのではないかなと思います。
【濵口主査】  この間調べたのですけれども、海外に渡航している日本人が今、欧米関係で120万ぐらいいるのです。そのうち24万人が研究者人口ですが、驚いたのはこのうちの6割が女性なのですよ。
【西澤委員】  すごい。
【濵口主査】  日本国内の研究者の比率から見るととても多いです。
【西澤委員】  多いですね。
【濵口主査】  日本をもう諦めたというか、そういう見捨てた人がいっぱいいます。
【西澤委員】  私は帰ってきました。
【濵口主査】  いや、これ、本当です、だから、もう少しインテグレートしていくようなことを考えないといけないということは感じています。
 どうぞ。
【宮田主査代理】  となると、先生に伺いたいのですが、先ほど卓越した人材を採用するというところが一番重要になると思うのですけれども、その採用の観点が重要になりますよね。それともう一つ、安定的な雇用というのが実は排他的な組織になってしまうという問題もあります。そこはどのようにお考えになりますか。
【五神教授】  おっしゃるとおりで、卓越した人をきちんと安定的に雇用する、例えばさっきのある種の研究者サークルのようなものを作るという話になりますと、日本版CNRSのようになりますよね。それでは駄目ではないでしょうか。やはりシステムの作り方だと思います。それで、あのような大きなプールを作ることの良いところは、アファーマティブ・アクションとして、例えば女性や外国人を増やしたいというポリシーをメッセージとして出して実現しやすいということです。そういうものをある規模感で持つことが大事であり、そのためにあれはやるべきだと私は思いました。それから、コミュニティとしてオープンで公正な人事ができないところは、人を選びようがないので、こういうものには乗れないわけです。そういうもののレベルを緊張感の中で上げていく仕組みとしても使えます。
 この構想はなかなか実行というステージにはいきませんが、こういう思想を共有することが極めて大事であります。例えば今、国立大学の改革をもっとやれということが叫ばれていますが、法人ごとの短冊の中での最適化ということで、例えばトップダウンマネジメントをするという議論は、本質からずれていると思います。つまり、日本は世界から見れば小さな国ですから、そこの短冊、その更に細部の短冊で競争させてみたところで、大きな構造を変化させること、要するに世界の中でランキングがじわじわとずり落ちている状況をどう直すかということは、今まで経験のないフェーズですから、難しいと思います。もちろん濵口先生はプロ中のプロですから、私以上に痛感されているのではないかと思うのですけれども、その議論からいかに脱却しなければいけないかということが大事なのです。
ちょうど平成28年は、第5期の科学技術基本計画のスタート年であると同時に、第3期の国立大学中期計画のスタート年なわけですから、そのときにどうすれば大きく、意味のある方向に改革が進むかということが大事です。人材の切り口は極めて分かりやすく、重要なので、このタイミングでそこから大きなメッセージを出していただくことは重要だと思います。今ならできるかもしれないと私は思っていますが、H28で不発に終わるといよいよしんどいと思います。例えば日韓の政府間協定で、韓国の優秀な学生を東大で受け入れるというプログラムを随分前からやっています。最初の1期は2007、8年頃に終わったのですけれども、韓国の全国トップ10ぐらいの学生が東大に来ていました。ところが、今日も午前中の議論の中で、その学生さんのレベルが落ちていて、同じコースの東大生についていけないという話が出ました。最初は家庭教師を付けるなどしていたのですけれども、これからはどうしたらよいものか、という議論です。このことから、韓国の若者から見たとき、日本の大学、あるいは日本という国のステータスが随分変わってきたということが否定できないと思います。そういう状況の中で今何をやるべきかが重要だと思います。
【濵口主査】  先生のおっしゃっている意味は、若い人口がどんどん減ってくる中で、その分外国人を採ろうとしても、かつての魅力を日本も失っているということに我々がリアリティーを持って感じていない部分があるということですね。経済大国であった時代の残り香の中で生きているということですね。
【五神教授】  ただ、外から見れば国際ブランド企業がいっぱいあるわけです。
【濵口主査】  あります。
【五神教授】  これだけ林立している国はありません。例えば中国の若者にとって、そういうちゃんとした企業に就職でき、日本で活躍できるというのは一家を支えるような魅力のあるキャリアです。ですから、そういうところを戦略的にやれば、まだやり方はあり得るだろうと思います。
【濵口主査】  日本の就職率が9割を超えているというところは彼らにとって驚異的なのですよね。中国だと6割いかないですし、韓国は、今年ものすごく低く、50%を切っている状態になっていますから、そこは日本が勝負をかけられる部分だろうと思うのです。
【五神教授】  ええ。人材を見つけてきて育てるという意味で言うと、やはり大学が働くべき部分が相当あるわけだと思います。
【濵口主査】  ありますね。
 どうぞ。
【鷲見委員】  北大の鷲見です。私も5年前まで30年間企業にいて、過去5年間は大学で人材の育成、特に博士課程、ポスドクの育成をしていたのですが、この4月から産学連携本部に変わりまして、今度は産学連携でイノベーションを起こそうと取り組んでいます。過去の経験三つをまとめると、産学連携の企業的な、産業的なアプローチの場に教育として大学院生、ポスドクを入れてイノベーションを起こすことは、産学連携と教育は別のものなので、難しいのではないかと感じますが、どのようにお考えでしょうか。
【五神教授】  例えば3か月の海外インターンシップをやってきた学生は、まさに会社の現場にいたわけです。あのインターンシップが非常に象徴的だと思ったところは、学生を送り込むから引き受けてくださいと言っても、彼らはノーという点です。ちゃんと国際電話でインタビューをして、レベルが達していると思った人しか採用してくれません。東大の優秀な学生が5人いて、そのうち採用されるのは2人という感じです。そういう中に3か月入ってみて、最初は言葉が通じなくてどうしようと思ったのだけれども、そこで実体験してアプリシエートされることが分かったという状況を作ることが、ものすごく大きな教育効果になるのですね。
 そういうものを実践させることは極めて重要です。それをコストエフェクティブにやろうとすると、やはり大学の中にそういう仕組みを作ることが重要になります。知財の問題なども、座学で教えるより、何を言ってはいけないかということは、一緒にやっている人たちが何を真剣にやっているかを見ながら学べば分かるわけです。そういうものをやろうとしています。それを大学の中に持ち込もうとすると、いろいろなシステムを整備しなければいけなくなります。大学は秘密を嫌う場所ですので、下手にやると、それ自身が教育の効果を劣化させてしまいます。しかし、そうではないという教育をきちんとシステマティックにやりながら、プロフェッショナルとしてイノベーションを生み出せる人材を作るという実践を大学が作っていくことは極めて重要だと思っています。まだ我々もやり始めて悪戦苦闘している段階であり、やろうとしているだけなので偉そうなことは言えないのですけれども、これで成果が出れば一つのモデルになるだろうと思っています。
【鷲見委員】  ありがとうございました。私たちも3月までインターンシップをずっとやっていて、補助金がなくなっても継続しているのですけれども、今年度は、そのインターンシップを経て企業に就職した人を今度は教育側に招いて、講師として後輩を教えるというエコ循環システムを作りたいと思っているところです。今日はどうもありがとうございました。
【濵口主査】  ありがとうございます。
 ほか、よろしいですか。どうぞ。
【長瀬委員】  すみません、少し話が戻るのですが、先生のお話の中で、ポスドクの数やドクターの数について、2万人、あるいは1万5,000人ぐらいというのはそんなにおかしい数ではないとおっしゃったのですが、参考資料の中でポスドクの内訳を見ますとライフサイエンス系が多いですよね。松尾課長のお話の中でも結局、分野のミスマッチというのはある程度あり、逆に言えば、それが結構問題になっていると思います。そういう中で分野間の移動というのはこれから非常に必要になるのではないかと考えているのですが、先生はその辺りどのようにお考えでしょう。例えば分野間の移動でしたら、ポスドクの場合、企業に行くとしたら早めのうちに移動しないとなかなか転職ができないということはあると思うのですが、そういうことも含めてお考えをお聞かせいただければと思います。
【五神教授】  重要なポイントですね。実は学術会議で議論したときにポスドク問題というのは二つあるという話になりました。一つは過去の科学技術投資の中である種十分なケアとコントロールのない状態で、かなりのポスドクを作っていて、上はもう40才ぐらいになっているのだが、その人たちの人生をどうするか、あるいはその人たちは貴重な人材であるが、どう活用していくかという問題です。つまり、キャリアパスを示さない状態の中でそういう人たちをたくさん抱え込んでしまって、ため込んでいるという問題と、今、フローさせる規模としてどのようにやっていくかという問題を同時に同じスキームで解決することは多分無理だと思いました。これはもうかなりシビアな議論をしたのですけれども、そこは非常に難しいです。でも、ここにいる人たちの人的資源としての価値をどう日本の中に活用していくかということを考えていかなければいけません。
 その一つの方策として、例えばURAのような研究を立案企画するという仕事への転換や、物理療法士のような形でフィジックスをやったのだけれども医学に役に立つようなことをやるということが考えられます。高度な人が欲しいという新しい分野はあるので、そういうところに転換していくためのプログラムをたくさんやっていかなければいけないと思います。
 しかしながら、やはり基本的にはそういう構造、そういう人たちを再生産しないようにしなければいけなくて、そういう意味でPIの人たちがきちんと、人材育成の一部であるという自覚を持ってポスドクを雇用することが重要です。ファンディングの場合でも、例えばIT、ナノテク、バイオ、環境など、大事だと言われる分野にドッとお金を付ければ、必ずそこにポスドクが新規に発生しますので、それが構造として正しいかどうかをチェックする仕組みを装着しないと、間違ったことが次々起こると思います。そういう意味で、20年後の雇用や産業の議論とリンクなしにはできないので、その両方をやる必要があります。ただ、今、停留してたまっている人を例えば二、三年以内に皆さんハッピーにできるかというと、それは結構難しいと思います。これは深刻です。
【長瀬委員】  ありがとうございました。
【濵口主査】  どうぞ。
【高橋委員】  お話、ありがとうございました。私自身は大学院生のとき、ポスドク問題なども少しちら付く中で起業をして、いわゆるアントレプレナーやベンチャーという文脈の中でここにいるのだと認識をしているのですけれども、実際、自分が学生時代に起業しようと思って一番困ったことは、もちろんお金や技術がないなどいろいろありますが、一番は、アントレプレナーシップ教育というのがその当時、大学・大学院の中ではやはり不十分であって、全くの手探り状態であったということです。それこそこれから企業がどうキャリアを作っていくかという話もありましたが、そういう中でアントレプレナーをいかに輩出するかというのも大学・大学院の一つの求められる機能になってくるのではないかと私は思っています。
 そういう中で、大学の中に人材とともにあるものとして、例えば知財があると思うのですけれども、そういうものや、今活用されていないものと、若手人材を接続し、事業化のためのトレーニングをすることが考えられると思います。実際、場合によっては大学のキャピタルからお金を入れて、その事業化のチャレンジをすることや、あのバルーンがどんどん移っていく中で、それを後追いしていくのではなく、作っていくということも考えられます。大学はこうした価値を生み出せる場所だと思っているのですけれども、そういうアントレプレナー教育や、アントレプレナーシップの部分で先生が何かアイディアや、今、トライされていることがございましたら教えていただければと思います。
【五神教授】  我々は、例えばベンチャーのようなものを作って、それを社会に出していくことで社会実装するというモデルだけではなくて、企業との連携の中で企業内ベンチャーみたいなものを機能させるというモデルの両方が必要だと思っています。ただし、御存じのように24年度の補正で六つの国立大学に出資金というのが投入されて、それをどう活用するか今盛んに議論されていますが、そのお金を死に金にしないためにどうするべきかしっかり考えていく必要があります。しかし、ベンチャーを作ればよいという話では多分なくて、いかに社会実装されるようなモデルを作っていくかが重要になります。そのためには、大きな企業もビジネス展開の中でM&Aなどを日本を舞台としてもやる必要が出てきます。そうすると例えば、カリフォルニアにオフィスを作って、そこでサーチするという話になってしまうと思うのですけれども、それが日本でも起こるような文化を作りながらやっていくということになります。
 我々が例えばCOI拠点でやろうとしている参画企業は、そういうことも視野に入れて、産業構造の中にそういうものをどう活性化するかという議論と大学での改革をマッチさせながら、そこが一方通行にならないようにする仕組みを作っています。大学はそういうトライをするという意味では最適の場です。それは法人化によって非常に自由度が増したと思います。そこを活用することが極めて重要なポイントになります。今、十分にできているかというと、まだ非常に硬直化されているところがたくさんあって、何がいいか悪いかの議論も十分できていないと思うのですけれども、そこはかなり頭がほぐれてきたので、見えかかってきてはいます。だから、是非そういうインプットや、強いメッセージを出していただければと思います。今まさに28年の節目に向かった改革設計プランをやっているところなので、意味のある形での企業エンカレッジメントが必要になります。今までやってきたことは必ずしも当たっていないような部分が多いと思うのです。
【宮田主査代理】  実は私は、慶應で客員教授をやっており、今、山形県の鶴岡でバイオクラスターを立ち上げているところです。慶應の学生を見ていると、元々自営業をやっていた人のお子さんたちが多くて、飲み会をやっていると、「俺は絶対事業化する」というすごいアントレプレナーの遺伝子を持っている人たちが結構多いのです。でも、東大はそうではなく、官学で官僚を作るための学校でした。そういう意味ではそれぞれの大学に持ち味があるのではないかと実は思っています。採用のときから考え方を変えないとなかなか難しく、たった4年か8年ぐらいの教育でマインドセットは変わらないのですが、そういう人たちが次々と慶應から出てきて、今、勝手に起業しているのです。
 だから、アントレプレナーシップ教育というのは、実は家庭教育でなされていたのではないかと思います。それとハイテクノロジー、我々の場合はメタボロームや、システムバイオロジーをくっつけることによって、例えばクモ糸のベンチャーができてしまうのですが、大学で教えられることと教えられないことをもっと明確に認識すべきではないかと思います。東大の教官がアントレプレナーを教えるといった場合、大体うまくできません。だから、カリフォルニアの「俺はアントレプレナーだ」という借り物を持ってくるのだけれども、本当の日本的アントレプレナーということを考えたら、そこら辺の中小企業のおじさんたちってすごいのです。
 だから、それから学んだり、もっとオリジナリティのある考え方をしたりしないと勝てないのではないかと思います。さっきおっしゃっていましたけれども、後追いのコピーモデルだけをやっていいのかという問題があります。東大は元々そういうところだったという話もあるので、東大が堂々とそれをやって、ほかの大学は違うことをやればよいのかもしれないのですけれども、その辺りに関してどう思いますか。私は東大出身なのですけれども、慶應で教えていて、その違いに本当にびっくりしているのです。
【五神教授】  実は私たちもそこは十分感じているところがあります。例えば先ほど御紹介した演習で、修士の学生に民生品のふたを開けたらどんなにすごいかという実習をやるときのインストラクターは全員現場の企業の技術者です。そのプログラムは東大だけでやっているのではなくて、単位互換制度を作って東大と電通大と慶應とでやっており、慶應の学生も来ています。それから、私たちの拠点長は企業の方をスカウトしたのですけれども、そう言えば気が付いてみたら慶應出身でしたね。
 やはり人を混ぜるということは極めて重要です。東大生は考えることに関しては優秀なのですけれども、小宮山さんが総長のときに「他者を感じる力」と言っていたように、相手の立場に立って物を考えるところが一番弱いです。しかし、こういうものを作ってしまうと人が混ざるので、そこを補正するのに非常によい仕組みになっています。せっかくインフラや、いろいろな知が集中しているので、それをもっと有効な形で活用しなければいけないのですが、確かにそこは多様な人を混ぜる場になります。中にいないので、必要な人材を探そうということにおのずとなると思います。ありがとうございました。
【宮浦委員】  クロス・アポイントメントについて教えていただきたいと思います。一番考えやすいのは混合給与で、独法と大学で給料をシェアして、その分、ポスト若手の人件費を作るというのが典型的な例だとは思うのですけれども、例の中に企業との混合給与の例がなかったものですから、企業との混合給与というのは大きな視点としてお考えかどうかお聞きしたいです。そこが結構重要ではないかと思っております。あと、シニアが混合給与になって、若手の教員のポストを作るというイメージが固まっており、私も一応、基本そうなのかと思っていたのですが、例えば逆に若手を混合給与にして、若い人が産業界でやっていくべきか、あるいはポスドクの方が大学に残るべきか考えられるシステムはいかがでしょうか。産業界を見てみたいなどと考えている、いろいろな若手に対して、クロス・アポイントメント、混合給与を実施することで、ミスマッチを防ぎ、考えの固執から脱却するのによいのではないかと思います。こうした、産業界のシニアのクロス・アポイントメント、あるいは若手のクロス・アポイントメントあたりいかがお考えでしょうか。
【五神教授】  説明を省略しましたが、この一連の人事制度改革の中でスプリット・アポイントメントというのがこの4月からできました。この相手先は民間、インダストリーです。これも実例が出ています。
若手のスプリット・アポイントメント、あるいはクロス・アポイントメントをどう考えるかですが、研究室を主宰する人は多くの場合、教授です。私たちの物理学科では准教授の人もPIなのですけれども、そのレベルであれば、きちんとクロス・アポイントメントということは運用できると思います。ただ、問題はその主宰する先生のスタッフの中にどのように新しい人材雇用制度を持ち込むかということです。いわゆる労務管理的なセンスをきちんと先生たちに定着させないと極めて危険な制度になる可能性があって、まだそこまではできていないと思います。最終的にそれを全体の雇用秩序をきちんと守りながらやらないといけません。現在、競争的資金で取っている人たちが短期雇用で不安定というのは、まさにその弱点が出た格好になっているわけです。
【宮浦委員】  そのあたり少し柔軟に考えて、例えば産業界から大学の教員になっていただく場合、まず論文の数は幾つですか、D丸を付けますか、という条件が出てきます。逆に若い人のインターンシップですと、何か月いて、いつ帰るのですかという画一的なことが問われてきます。学生はインターンシップ、若手は最大6か月などで、通常の教員に入っていただく場合には教員審査の規定はこうですと非常に画一的に示されるので、労務管理も含めて若手のクロス・アポイントメントとシニアのクロス・アポイントメントをうまく両方動かすことによって、大学に見切りを付けて産業界に出ていく若者も増えるかもしれません。逆に40代でも、今後15年は産業界でやっていこうと考える中堅の教員もいるかもしれませんし、ポストもあきます。段階別のクロス・アポイントメントがあると、もちろん労務管理など難しいと思うのですけれども、そのあたりを少し全体で柔軟化する必要があります。縛りがあると、これは駄目という話になってしまうので、その仕組みを作ってザーッと動かすようなことをやらないと、3人はやったけれども、30人はできないということになると思うのですが、そのあたりいかがですか。
【五神教授】  それは国全体の雇用のポートフォリオや、その構造をどう考えるかという中で、社会保障や、さっきも申しましたように日本の産業界における雇用は、かなり安定性が高いという実績がある状況なわけですが、そういう状況とどう整合させるかということになります。社会保障の部分などは、例えば東大と理化学研究所なら問題なくできるのですけれども、産総研だと今でも難しいという状況です。そのレベルです。しかし、その問題を解決するということと産業界と行き来しやすくするというのは実はそんなにレベルの違わない問題かもしれないので、そこは全体的にきちんと直していかないといけません。
【宮浦委員】  ダイバーシティという意味では、外国人や女性など、生涯にわたってここで働いて年金をもらおうと思っている人は意外といなくて、柔軟な考えで、どんどん移っていこうという人も多いと思うのです。ですから、そういうターゲットになる外国人も含めて、20年先よりも今有効に活動したいという人をピックアップして、そういう船にどんどん乗せていくような仕組みを考える必要があるかと思うのですが。
【濵口主査】  それをここで提案していかないといけません。五神先生に請求するのではなくて、私たちがその責任を持っています。
【宮浦委員】  はい。
【五神教授】  ありがとうございます。

【濵口主査】  私の不手際で時間が来てしまいましたが、今日は実はもう一つ大事な発言を控えておられる方がおります。最後に学術研究の推進方策に関する総合的な審議についての中間報告を研究振興局振興企画課学術企画室、中野室長より説明をお願いしたいと思います。資料3をお願いしたいと思います。
【中野学術企画室長】  学術企画室の中野と申します。少しだけお時間を頂きまして、今、主査から御紹介のありました科学技術・学術審議会の学術分科会、これは平野眞一先生に分科会長をしていただいているもので、当委員会の濵口主査にも参画いただいておりますけれども、こちらで2月より特別委員会を設けて学術研究の推進方策について総合的な審議をしていただいており、中間報告が5月26日にまとまっておりますので、この御報告をさせていただきたいと存じます。資料は何種類かございますが、本日は、3-1という概要資料でごく簡単に御説明をさせていただければと思います。
 この中間報告でございますが、5章からなっております。まず1.といたしまして危機に立つ我が国の学術研究ということで、日本の強みであるべき、また、これまでは日本の強みであった学術研究が現状として危機に立っているという問題意識の下、また、一番下の丸にありますように、学術研究による知の創出力と人材育成力の回復・強化が喫緊の課題であり国と学術界が一体となって学術研究を推進していくことが急務という問題意識の下、この審議がされております。
 2.ではイノベーションの源泉としての学術研究ということで、学術研究とイノベーションの関係について整理をしております。3.では社会における学術研究の様々な役割として1ページから2ページにかけまして、(1)から(4)といった整理をした上で、2ページに入っておりますけれども、学術研究をこの分科会では国力の源という位置付けをしてございます。そして、この国力の源としての役割を果たすために現代的に求められていることとして、挑戦性、総合性、融合性、国際性の四つのキーワードを挙げてございます。そして、この人材委員会にも非常に関わることですが、特にこういった観点から次代を担う若手研究者を育成することが極めて重要としてございます。
 第4章の我が国の学術研究の現状と直面する課題におきましては、いろいろな分析をしておりますが、中ほどに、今申し上げたような挑戦性、総合性、融合性、国際性という部分で我が国の学術研究は現状、ぜい弱な面があるのではないかという問題を認識して、その根底にある課題として、国と学術界双方の資源配分における戦略不足があるのではないかという分析をしてございます。
 そして、最後に5章といたしまして、そういった課題を克服して学術研究が社会における役割を十分に発揮するためにということで、(1)として改革のための基本的な考え方を4点ほど挙げてございます。そして3ページに参りまして(2)ですけれども、具体的な取組の方向性として6点ほど挙げてございますが、本日は特に人材委員会の関係ということで、3ページの下ほどですが、その2番目の若手研究者の育成・活躍促進について少し御紹介させていただきたいと思います。学術分科会の議論におきましても、この人材委員会での御審議の状況などを事務的にも紹介させていただいて、それを踏まえて御議論いただきました。
 まず、若手研究者が主体的に課題を設定し、挑戦的な研究に取り組むことが極めて重要とした上で、若手の自立を促しつつ適切にサポートする体制の構築が必要としております。特に二つ目は国際という観点から、若手研究者による国際的なネットワークの形成を積極的に促進するということで、若手が将来的に国際的な学術コミュニティのリーダーとなるように育てていくこと、そしてただ単に海外に行くということではなくて、実質的にシンポジウム等の主催等に関わっていくということを提言しております。また、3番目にシニア研究者を含めた人材の流動性を図りつつということで、若手研究者の安定的なポストの確保の必要性を述べております。また、四つ目に博士課程学生やポストドクターの経済的支援の充実、あるいは4ページ目に参りますと多様なキャリア開発を促すことが重要といった提起をしております。
 そして次の項目ですけれども、こちらも人材ということで多様な人材の活躍促進を挙げております。一つ目の丸は女性研究者の活躍促進ということで、特別研究員(RPD)の拡大や、女性リーダーの活躍促進、システム改革の推進といったことを書いております。また、次の丸は外国人、あるいは先ほども議論がございましたけれども、海外で活躍する優秀な日本人研究者を戦略的に受け入れること、海外での活動、活躍を促進するといったことの重要性についても書いてございます。その他、分科会で非常に多岐にわたる御議論を真剣にしていただきまして、本文の方にいろいろ詰まっておりますので、是非御一読いただけばければ幸いに存じます。今回、中間報告ということで、これからも学術分科会は審議が続いてまいります。まさに先ほどもお話にありましたターニングポイントとなると思われる28年からの第5期科学技術基本計画もにらみ、引き続き審議する予定ですので、是非人材委員会の審議とも一緒になって進めていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【濵口主査】  ありがとうございます。
 今日は、もうお時間がございませんけれども、この内容をよくそしゃくしていただいて、この人材委員会の意見としてしっかりしたものをまとめて、最初に松尾さんの方から紹介していただきました人材委員会提言骨子、これを今年度しっかりまとめ上げるということが大きな作業になります。それは五神先生が言っておられる28年に向けて、我々が社会的責任を果たす形になります。多分、私たちはとても大事なことを議論しています。ここでしっかりした意見を出すということは、この28年に向けて大きな影響があり得ると思いますので、しっかりこれからも御意見を頂いて提言骨子をまとめる作業に入っていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 それでは、最後に事務局から次回日程等について連絡をお願いしたいと思います。
○事務局より次回の日程等について説明。

【濵口主査】  どうもありがとうございました。
 五神先生、中野さん、どうもありがとうございました。それでは、本日はこれにて閉会させていただきます。

── 了 ──

お問合せ先

科学技術・学術政策局 人材政策課

人材政策推進室
電話番号:03-6734-4021
ファクシミリ番号:03-6734-4022
メールアドレス:kiban@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局 人材政策課)

-- 登録:平成26年08月 --