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人材委員会(第60回) 議事録

1.日時

平成25年6月14日(金曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省 東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 「我が国の研究開発力の抜本的強化のための基本方針」に基づく人材育成方策について
  2. その他

4.出席者

委員

濱口主査、宮田主査代理、大島委員、川端委員、北原委員、鷲見委員、高橋委員、谷川委員、塚本委員、豊田委員、長瀬委員、西口委員、西澤委員、林委員、堀井委員、宮浦委員、山口委員、渡辺委員

文部科学省

土屋科学技術・学術政策局長、伊藤科学技術・学術政策局次長、磯谷科学技術・学術総括官、斎藤基盤政策課長、佐藤人材政策企画官他

5.議事録

【濱口主査】  おそろいになりましたので、科学技術・学術審議会人材委員会第60回を開始いたします。
 本日は全委員が御出席ですので、科学技術・学術審議会第8条第1項に規定されているとおり、定足数は満たしております。
 まず議論に入る前に、前回御紹介できなかった委員の方を事務局より紹介いただけますでしょうか。

【佐藤人材政策企画官】  それでは、机上に名簿を配付いたしておりますが、前回御紹介できなかった方についてのみ御紹介いたします。大島委員でいらっしゃいます。
【大島委員】  東京大学の大島といいます。よろしくお願いいたします。
【佐藤人材政策企画官】  鷲見委員でいらっしゃいます。
【鷲見委員】  北海道大学人材育成本部の鷲見と申します、よろしくお願いいたします。
【佐藤人材政策企画官】  谷川委員でいらっしゃいます。
【谷川委員】  九大の谷川でございます。よろしくお願いします。
【佐藤人材政策企画官】  西口委員でいらっしゃいます。
【西口委員】  産業革新機構の西口でございます。よろしくお願いします。
【佐藤人材政策企画官】  森委員でいらっしゃいます。
【森委員】  名古屋大学の森です。よろしくお願いいたします。
【佐藤人材政策企画官】  以上でございます。

【濱口主査】  はい、ありがとうございました。
 それでは次に事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
○事務局より配付資料及び机上にある参考資料の説明。

【濱口主査】  はい、ありがとうございます。
 それでは早速議事に入ります。まず冒頭に土屋局長より一言お願いいたします。
【土屋科学技術・学術政策局長】  科学技術・学術政策局長、土屋でございます。各先生方には大変お忙しい中、この人材委員会の委員に御就任いただき、また御検討のために本日もこうやって集まっていただきまして、ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
 今日から具体的な御検討をお願いしたいと思っているのですが、それに関連して私どもは「科学技術白書」というのを毎年度このタイミングで取りまとめております。今年は6月25日に閣議決定して公表する予定でございますが、テーマは「イノベーションの基盤となる科学技術」ということで、特に論文数が減っている、相対的に世界の中の地位を落としているような状況の中でどういうふうに進めたらいいかというところを書いているところです。やはりこの人材委員会で御検討いただく人材問題は極めて重要なものということで、いろいろな取組等について整理をしております。
 白書の中で我々は、いわゆるイノベーションを起こす人材の満たすべき要件というものを、人材委員会の御検討も踏まえながら整理しようと考えてみました。最初はなかなかうまくいかなかったわけですが、今日来られている九州大学の谷川先生のところの取組や、堀井先生のi.schoolも入れさせていただきまして、国内外におけるそれぞれの取組の共通項を整理いたしました。
 これは、後で資料を提出したいと思うのですが、イノベーションを起こす人材の満たすべき要件というのは、どうも最大公約数的に言うと、社会的課題の解決に向けて、特定の専門分野にとらわれない幅広く自由な発想を持ち、自らリーダーシップを発揮して戦略的思考で創造的な解決策を構築することにより社会に変革を起こす人材ということです。キーワードをつなげただけで、なかなか論理的につながっていかないのですが、このようなイメージかと思っております。この委員会ではこれをよりシャープに整理いただき、また夏には来年度の概算要求もありますので、そういうものにも反映させていきたいと思っております。
 事務方の方で一生懸命作業等をいたしたいと思っておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。どうも失礼いたしました。

【濱口主査】  どうもありがとうございました。
 それでは続きまして、先般総会において、今後の議論の方向性について取りまとめられた「我が国の研究開発力の抜本的強化のための基本方針」が決定されました。これに基づき各分科会等で検討を行うことが求められており、人材委員会としても基本方針全般にわたり、幅広く議論していきたいと考えております。
 この基本方針では特に人材育成について多く触れられており、全般にわたり議論するには、一、二回ではとても議論を尽くせないと思われますので、今日を含め年末にかけて数回にわたり議論を行っていきたいと思っております。
 その際、議論を円滑に進められるよう、委員の方から、あるいは外部の方をお招きして、関連する内容についてプレゼンテーションを行っていただき、それを踏まえながら意見交換を行いたいと存じます。
 その前に、事務局より、基本方針に関してこれまでの経緯や最近の動きも含めて説明をお願いいたしたいと思います。
○事務局より資料1等に基づいて基本方針及びこれまでの審議の経緯等について説明。

【濱口主査】  よろしいでしょうか。はい、ありがとうございます。
 それでは先ほども申し上げましたように、今後、当委員会では基本方針に基づき、その全般にわたり幅広く議論を進めていきたいと思います。
 そこで今回の北海道大学理事・副学長である川端先生よりプレゼンテーションをお願いしたいと思います。文部科学省では、これまでも人材委員会の提言等に基づき、テニュアトラック制やキャリアパス支援等、様々な事業を進めております。これらも含め、北海道大学では若手研究者育成・支援に幅広く取り組んでおられるところであり、こうした取組の御紹介も頂きながら人材育成についてお話しいただけたらと思います。それでは川端先生、お願いいたします。
【川端委員】  少しずつお話をさせていただきたいと思います。
 先ほど建議やイノベーションという言葉がいっぱい出ておりましたけれども、これを本当にやろうとしたら、大学の中でどんな形でやっていくのがよいのか、ということが全てになると思います。それを今からスタートとするのは少し違います。実は7年前ぐらいから大学の中では、キャリアパス多様化促進事業など、ドクターコースの学生やポスドクを社会にどうやって活躍するかというような問題意識を持って取組をスタートしています。
 スタートしたときは、ドクターコースの学生や博士の研究者に対して、アカデミアにはそんなにポストがないのだから社会に出て頑張りましょう、活躍の場はいっぱいあるのだということを一生懸命訴えた途端に、私は理学部系の人間だったのですが、頼むから言わないでほしいと学内から猛反発を受けました。ポストがないなんて言ったら、ドクターに行く人が誰もいなくなる、だからあなたたち、そういうことを言わないでほしいというような話を言われ続けていました。スタート時の絶対零度と言われる時代から7年たって、今ではようやく、ドクターコース自体にカリキュラムが必要だ、人材育成に関するカリキュラムやキャリアパスに関するカリキュラムを必修化しなければならないという話まで来ているという状態です。
 それからもう一つは、日本型テニュアトラックです。これはポスドクやドクターの学生ではなくて、大学の中に就職した若手の研究者をどのように採用して育成するかというシステムです。今までラボの中で完結していたとものを、どうやって新しい形にするかということで出てきたのが、日本型テニュアトラック。名前はテニュアトラックですが、中身は全然違っています。この2つについて、今日は私どもの大学での取組についてお話しいたします。
 今、出ています建議やイノベーションというものをベースにどうジャンプするかというのが次のステージになっていきますが、このシステムを使ってどうジャンプするかというのが問題になってくるかと思います。
 この辺の話は皆さんも御存じのとおりの話かと思います。北大における理学系大学院の博士の数を見てみますと、私がドクターの頃はこの辺ですけれど、びゅーんとドクターの数が増えて、今は大体フラットになっています。スタートしたのが大学院の重点化の時代であり、増えた段階でポスドク1万人計画が出て、次のレベルではポスドクの数がびゅーんと増えて、今では北大の場合ポスドクが五、六百名いるという状態です。
 一方では、キャリアパス多様化事業をしなければならないと言われております。職員数を見てみますと、職員数、特にパーマネントな職員数は基本的に増えるわけもなく、一方で博士だけはがんがん増えていきました。そして、ポスドクも増えました。そこで、キャリアパス問題のスタートとなったところです。
 これは文科省からの話ですが、現在ポスドクは15000人程度おられて、学内資金というよりは基本的には外部資金で雇われています。単発的に集中投下されるお金をどのように研究に活用させるかというとき、装置や運営費に使うよりは人を雇うというのが大半なので、そういう意味でポスドクが雇われていきます。
 今日のお話の中で、キャリアパスやテニュアトラックを考えるときは、ターゲットをはっきりさせて議論しないといけません。
 このグラフは、横軸が研究者の年齢です。学部、修士課程、ここを修了した段階でどさーっとみんなが就職します。その後博士課程に進んで頑張った人の中からまたちょろっと企業に行きます。その後ポスドクとなり、ポスドクの途中で企業に行く人間がいます。一方で、最近無視できないのは、ポスドクではなく特任助教という名前がついた任期付きの助教の若い先生たちです。40歳ぐらいまでには安定的な職に就くものの、繰り返しポスドクをやる人もいます。そこで、修士課程も一部入りますがドクターコースの学生やポスドク、特任助教が産業界に行くようにするのがキャリアパス多様化促進事業、多様化キャリアパスです。中身として違うのは、授業料を払っている人と、給料をもらっている人がいるというところです。給料のもらい方もポスドクと特任助教はまた違います。
 そういう意味で、誰がターゲットの話なのか、途中から混乱し始めます。ですから、分けながら前に進める必要があります。
 それからもう一つはテニュアトラックです。テニュアトラックというのは、大学の中の若手の研究者を育成するという部分があるのですが、基本的に今テニュアトラックで採用する人のゾーンの中に、博士課程修了後直接入る人はまずいません。大体ポスドクを通っています。ポスドクあるいは特任助教になって、テニュアトラックに入り、テニュアトラックの後で准教授や講師等パーマネントのポストに入っていくという形が、テニュアトラックを大学全体に普及させていこうという今のイメージです。そういう話が7年ぐらい前から始まっています。
 今の話の中で、もう一点考えなければならないのは、どのゾーンを議論するのかというところです。横軸を研究者の質、縦軸を人数としたガウシアン分布を考えます。すごい人々がいて、大した人々がいて、そこそこの人々がいて、まあ残念という人々がいるという状態です。
 一般に残念という人々をどうにかしようとするのがボトムアップになります。すごい人々をどうにかしようとするのがトップを引っ張り上げるということです。一番人口の多いのはそこそこ、あるいは大したもの、という状態です。どこをターゲットにするかで、どう育成するのかという話は変わってきます。
 それからもう一つ、横軸を大学・研究機関の規模、縦軸を機関数とします。機関の規模というのはポスドクの数で考えた方がいいかもしれません。そうすると、理研、産総研、東大、京大というのは、ポスドクがいっぱいいます。1000人以上いるようなゾーンです。それから私たち北大のような大学は、500名ぐらいいるゾーンに入ります。その下が100名以下のゾーン、そして数名しかいないゾーンとなります。それぞれのゾーンでポスドクやドクターに対してどういうケアをするのかは、また変わってきます。
 ということから、このようなゾーンというのを考えながら議論をしていかないとかみ合わなくなります。私が今からお話しするのは、ここのそこそこあるいは大したものというゾーンです。どうしてかというと、すごい人々は、放っておいてもキャリアパスを開拓します。何もする必要ありません。残念という人々はもう無理だと思った方が早いのです。ということは、真ん中の一番人口が多いところの人々をどう上に上げるかという考え方で前に進めるということを私たちがやらなければならないと思って進めてきたという話です。
 次に人口分布を見てみます。先ほどの話にもありますが、どうしてもポスドクはなくせません。教授、准教授、助教、ポスドクというのは1・1・1・1です。さらに、私どものところでは特任教員も同じ数だけいます。横軸が年齢、縦軸が人数というグラフを見ると、35歳以下からずずーっと減っているゾーンが特任の助教です。だからこの人たちがいなくなったら、35歳以下の研究者はいなくなってしまいます。
 5年ぐらい前から、この後どうにかして若い層を増やしていかなければならないと議論してきた結果、人口分布は少し下にシフトしました。しかし、そのシフトした中身は何かというと、教授です。助教が増えたのではなくて、若い教授が増えたという状態になりました。
 では、こうしたポスドクシステム自体が存続する理由は何でしょうか。何でポスドクはいなくならないのか、不満なら辞めればよいのではないかという話ですが、指導者側からすると、今の話のとおり、基礎分野は特に、研究の担い手がポスドクです。外部資金で研究するとき、ともかくお金を集中投下させるのがポスドクの雇用部分です。基礎研究部門ですとドクターが研究の担い手になります。ドクターがいるかいないかで死活問題の部門が出てきます。
 それでは研究者側、要するにドクター側は、なぜドクターに進むのかというと、やはり基本的にはサイエンスが好きだというところではありますが、新しい技術を手に入れたい、あるいは大学研究職に憧れているという理由があります。
 また、ポスドク、特任助教にはどうしてなるのかというと、やはり大学、アカデミアでポストを取るための途中経過の道だからということです。ここで業績さえ上げれば次が待っていると思っています。少し考え方が偏ると、もう研究以外は何もしない、外なんて見たくもないという世界に入っていくという状況です。
 ドクターコースの学生に、就職どうなりましたかと聞いたら、半分ぐらいは就職しています。産業界は25%ぐらいです。過去10年間のドクターのデータを集め、どれぐらいの割合でどこに就職したか見てみますと、やはり半分ぐらいがアカデミアに行っているという状況です。
 では、ドクターコースの学生がキャリアパスを開拓し、社会に出ていくに当たって一体何が問題でしょうか。基本的には幾つか挙がっていますけれども、ドクターコースの学生が修士課程の学生と違っている点が幾つかあります。一つは、やはり彼らは専門性というものをしっかり持っており、いろいろな議論もでき、あるレベルの能力は持っています。真ん中のゾーンにいる人の話ですけれども。企業もそこをやはり買ってきます。最近は、ジェネラリストが欲しいという議論もありますけれども、企業担当者としっかり話すと、やはり専門性を最低限持っていてほしいという話が出てきます。
 次に受け入れ体制です。今はウェブサイトで修士課程も含めて、ドクターコースの学生にも展開します。しかし、企業側からすると、今のウェブサイトを使った就活システム自体では、何万人という件数の応募があり、その中からいい人を探し出せるとは思えないという状況です。逆に言うとドクターコースの学生向けのリクルートシステムのようなものを、大学が中心となって考えなければならないのだろうという思いがあって、前に進めているというわけです。
 キャリアパスとして北大としてやっていることは、大きく分けて4つぐらいのゾーンがあります。まず意識改革です。意識改革をしない限り、彼らは企業に行かないでしょう。行かせるのであれば、先ほど出ていた、例えば対話型や、課題解決型、MBA型のものも含めて、それなりに実践的なプログラムやセミナーをある規模で与える必要があるでしょう。
 それから動向調査と就活支援です。普通キャリアパスの整備というと就職の世話みたいな話を想定されるかもしれませんが、世話というよりは自分で探すというのを基本的なスタンスとして動いています。こうした就活支援に登録する企業の数や学生の数も非常に増えてきて、ようやく認知度が上がってきました。意識改革としては、よく企業と学生さんたちが40対40名ぐらいで集まって、一日中話し合うことで進められています。
 また、先ほどの課題解決型では、分野の違うドクターが5~6名、それに企業の人と研究者が入って、ブレーンストーミングをし、新しいテーマを出すということを行っております。テーマを出してそれを、例えばこの場合帝人さんの本社の執行部に持って行き、プレゼンをしに行きます。そうすると、そこでぼこぼこにやられ、それが土俵際の経験になります。このような演習や、MBA型のマネジメントセミナーというものをドクター向けにやっています。
 修士とドクターを混ぜないでドクターだけにゾーンを絞り、ドクターだけでこういう話をやると、かなり面白い話がいろいろ出てくるというのが現状です。また、インターンシップとして外へ出すという話もあります。7年ぐらいの実績があると、常に出続けた企業の人たちというのがいらっしゃいます。基本的にこういう話は、その人たちに集まっていただいて、あれはどうする、これはどうするというのを言いたい放題言ってもらっています。
 ちょっと時間がなくなってまいりまして、次にテニュアトラックについて説明いたします。今度は若手の研究者をどう採用してどう育成するかということです。これは日本版テニュアトラックで、ゾーンとしては大体ポスドク、任期付きで、そこを上に上げるというところです。なぜテニュアトラックか。先ほどの話のどこかにもあったかもしれませんが、ノーベル賞の件数が全てを象徴するわけではないでしょうけれど、とにかく若手の研究というのは非常に独創的でパワフルであって、ノーベル賞にもつながります。そういうものを大切にしましょう。そのためには、自立的な研究環境を整えましょう。いろいろなところから採用するというのが今までのタコつぼの体制ではなかなかできないため、それをもっと広い公募にし、育成していきましょう、というような意味で、テニュアトラック事業というものが文科省の方で推進されてきました。現在51機関、採用者も670名ぐらいという非常に大きな展開になって、テニュアトラックという単語もようやく定着し始めたというところです。
 いわゆるテニュアトラックの中身は何かといいますと、テニュア職に就く准教授や講師が中心として、テニュア職、パーマネントな職に就く前に5年間の試用期間を入れましょう。ただし、この試用期間のための公募の段階で、国際公募をし、できるだけ広く客観的に審査されるようにしましょう。大学の採用というのは、どうしてもその専攻の中の講座の教授が、俺はこれだと言えばこれに決まってしまうという世界なので、世界をできるだけ広げ、いろいろな人が意見を出せるようなシステムにしていきましょうというものです。
 もう一つの特徴としては、評価をし、場合によっては首を切ることができるということがあります。これもほとんど今までの大学の中にはないシステムです。また、この期間の人材の育成を、教授の背中を見て育てという昔のやり方ではなくて、もうちょっと広い意味で、例えば海外に留学させることなども含めて考えられています。
 今お話ししたのは私の大学の形ですけれど、これは全国にもかなり広がってきています。例えば公募の際、部局側から上がってきた人をもう一回面接をし、それをもって最終的なテニュアトラック教員を決めるシステムや、部局からはがして、全学の共同利用施設のようなところに置いて、自由に研究をさせ、その5年が終わったときには、本来の部局の中に戻っていけるようなシステムをようやく構築して、広げました。
 特に、採用に関してはかなり斬新な形になっています。今年度、例えば全学でテニュアトラック教員を5名募集するとしたときに、各部局に手を挙げさせます。7部局が手を挙げれば、では7部局それぞれで審査してくださいとします。そうすると各部局で公募を行い、委員会を立てて、それぞれ一番いいと思う人を選んでもらいます。一番いい人を選んだら、それぞれの部局から1名ずつ出てきますから、2次審査として、この部局と関係のない人たちが人物評価だけ行います。そうして、7名のうち5名に絞り込みます。人物がよくなかったらもっと落とすこともできます。その後、通りました、あるいは駄目でしたと、部局に投げかけます。
 これは強烈でして、部局の方は自分たちのメンツを潰されたという状態に陥ります。そのため、どういう人を大学側、あるいは国が必要としているのか、どういう審査をするべきなのかということがだんだん部局に浸透し始めます。今、こういうループをしながら進んでいます。
 こういうことを進めますと、競争倍率は30倍を超えますし、来た人間たちというのも非常に多彩となります。外国人もいますし女性も当然ながらいます。こうして、外部資金を一般助教の6倍ぐらいは稼ぐような人たちという集団が出来上がってきます。
 海外のテニュアトラックと全然違っているのは、この期間、5年間のうちに育成をする、育成プログラムのようなものをつくっているところです。先ほどの課題解決型のように、テニュアトラック教員の中でチームを組んで、例えば総長に対して一つの提言をさせるというプログラムを行い、彼らの中の連動あるいは調査能力を高めるということもやっているというわけであります。
 このような話が今の取組です。以上です。ありがとうございました。

【濱口主査】  先生、ありがとうございました。
 それでは以上の発表を迎えまして、フリーディスカッションに移りたいと思います。なお、先ほども申し上げましたように、基本方針は幅広く提言を行っており、議論の際、必ずしもテーマを限定するものではありませんので、ただいまのプレゼンを基にしながら、基本方針全般に沿って自由に御意見を頂ければと存じます。どなたからでも結構です。挙手していただいてお話しいただければと思います。いかがでしょう。
 はい、どうぞ。
【渡辺委員】  ただいまの発表、ありがとうございました。私は実は日本の大学で働いたことがないのですが、今の説明でとてもよく分かりました。
 何回か出てきました大学の中でどういう職に移っていくかという図が、皆さんで認識を共有するのはとてもいい図だと思います。この図をもっとよくするために、例えば、企業のところが1本の矢印になっていましたが、当然ながら企業のところも他と同じような図が描けるはずなので、加えてもよいかと思います。例えば、五十何歳のところで企業から大学の方にいっぱい移っておられました。ここ以外はみんな大学から企業なのですが、企業から大学は唯一の矢印でした。それは、企業には役職定年というものがあるので、どうにか大学に行きたいという事情があります。企業の中で、どういう人材がいつ、どうなるという同じような図を描くと、とても分かりやすくなると思うのです。かつ、今の状況に対して、どういう流れを作るべきだという提案をする設計図が作れるようになると思うのです。ここの中には産業界の方もいらっしゃるので、是非、そこをやっていただいて、大学の人材をどうするかだけではなく、社会全体として研究開発人材をどうしていくかということを考えていただきたいです。もし可能であれば、私としては、府省にもどういう人材が流れているのかを示し、社会全体として人材の流動性の可能性がどこにあるのかということまで議論できたら、とてもすばらしいですし、現実的な提案ができるのではないかと思います。是非そういう検討をしていただけたらよいのではないかと思いました。
【濱口主査】  すばらしい提案ですね。先生、いかがですか。今のお話は。
【川端委員】  いや、おっしゃるとおりです。55歳だけ突然企業から大学への人の流れが起きているのは、ここしばらく起きている産業イノベーションの流れの中で、大学の中の人材ではとてもやれそうもないことがたくさんあるためです。産業界の中に非常にいい方がいっぱいおられるので、積極的に獲得して大学のマネジメントやガバナンスの中に入れていきましょうという流れがございます。ただし、途中に関しては、私どもは余りよく分かりません。私自体、企業から戻ってきたのですが、偶然の重なりみたいなものなので、是非教えていただきたいという気がします。
【濱口主査】  どうぞ。
【鷲見委員】  北大の鷲見です。
 さっきの55歳から特任教授の一例は私のことかもしれません。特に役職定年があったわけではないのですが、50歳ぐらいから、ギブ・アンド・テークについて考えるようになりました。産学連携で企業にいましたので、テークばかりだったところ、ギブするものはないかと川端先生と話をしているうちに、ブレーンストーミングをやるようになりました。そうしているうちに、ミイラ取りがミイラになり、大学に着任することになりました。
 もう一つ、北大と話を進めている間、私が所属していた企業のオフィスがたまたま文科省と同じビルでした。その縁で、ノウハウがあるので政策提言をやりましょうかということになり、文科省の政策研の客員になったのが50代ぐらいだったということです。
 では、もっと若い人はどうかというと、さっき川端委員のお話の中でありましたけれども、一つはインターンシッププログラムで育っていって、インターンシップを経て企業に行った人が挙げられます。企業に行った人材が、実は4年目の今年の2月に、企業側の人間として大学のプログラムに参加してくれました。つまりそのプログラムで育った人が、即企業側の立場で大学と付き合ってくれる、あるいは講演会をしてくれるということがあります。
 それからもう一つ、テニュアトラックの話がありましたけれど、私は北大のテニュアトラックの評価委員もやっておりました。そこで、テニュアトラック教員を経て准教授になった外国人の先生を今度、私のやっているインターンシッププログラムの委員にして、どんどん海外のインターンシップを出そうということで働いてもらっています。
 このように、今まで進めてきた制度で育った人たちを、今度はこの制度の実施側に持ってくるということにより、30代の人にも関わってもらっております。
【濱口主査】  そのとき、ちょっと聞きにくい話なのですけれど、給与体系が全く違いますよね。
【鷲見委員】  私の場合? まあ、ちょっと違いましたね。
【濱口主査】  相当我慢されたと思うのですけれど、そういう問題というのはいかがでしょうね。
【鷲見委員】  やはり、企業でできる新事業には、私のいられるあと5年10年でできることとできないことがあります。そうしたとき、若い研究人材に託そうという事業の中には、例えば再生医療やニューマテリアルなど、一企業にいてはできないこともあります。しかしながら、大学側にいれば、やれる企業とやれます。そこで、僕が大学に移ることで、やれる企業に人材を出そうと思ったのが一番大きな理由です。
【濱口主査】  参考になります。渡辺先生、どう思われます? 給与体系の差というのはかなりあると思います。
【渡辺委員】  そこはやはり一つの課題だと思います。いろいろな方がいていろいろなケースがあるとは思いますけれども、やはりどういうケースが多いのかということも知っておくべきだと思います。
 給与体系の話をすると、企業が役職定年なり給料が下がるというときに、企業から大学に抜けやすいという事情も多くの場合にはあると思います。それで今の状況になっているのだと思います。
 しかしながら、先ほどおっしゃっていたように、必ずしも年収だけで科学者が動くわけではないとも思います。途中で企業から大学に行かれる方はそれなりの数、いらっしゃると思うのですけれども、その人たちは必ずしも年収が最重要ではありません。むしろ教育や研究など自分たちのやりたいことをやるために動かれる方も十分いらっしゃいます。特に科学技術分野の研究者はそういう方が多くいらっしゃると思うので、そこをうまくつないでいくようなシステムをつくれば、当然給与も無視はできないのですけれども、それを乗り越えるような施策になるのではないかと思います。
【濱口主査】  ありがとうございます。ほかにも御意見いただければと思います。
 もうちょっと深めてみると、ケースも少ないことから、敷居を越えるためは精神的にも決断が要るかと思うのですけれど、この敷居を低くするためにはどんな政策があればよいか、何かアイデアはございますか? 鷲見先生、何か御意見ございますか?
【鷲見委員】  敷居というよりも、やはりイノベーションをやろうという意志が重要です。制度的には、例えば文科省のNISTEPの場合は、兼任という形ができましたので、東ビルと西ビル、歩いて4分で肩書を変えることができました。だから2つデスクを持って、月火水はこちら、木金はこちらと兼任することができました。北大に移ってからはちょっと不可能になり、客員になりましたが、専門研究官として兼任できました。今も兼任の方がいらっしゃるし、2年の任期で集中的な業績を上げて、また企業に戻るというシステムが文科省にはあります。
【濱口主査】  いかがでしょう。
【渡辺委員】  よろしいですか。私、長年企業におりまして、大学の先生がすごくうらやましいなと思う部分がたくさんありました。年収は多分平均すると企業の人間の方が高いと思うのですけれども、やはり社会的な名誉や認知度は大学の先生の方がはるかに上だと思うのです。
 ですから、名誉はもちろん高いので、企業から大学に移るというときには、何のために働くかということによって最終的に決めると思います。年収のために働くのであれば絶対高いところにどんどん流れていきますけれども、やはり必ずしも年収のためだけではないかと思います。
 いろいろな人にお話を聞いてみますと、例えば女性は年収のために働いている方が結構少ないという印象を持っています。その辺りも何か調査が必要かもしれないのですが、例えば年収のために働く女性が少ないということには、家計を全部背負っている男性より、年収が下がることに対してバリアが低いということも考えられるのではないかと思います。
【濱口主査】  ありがとうございます。
 イノベーションを進めるために、どういうフレキシブルなシステムを人事面でつくるかということだと思うのです。
 谷川先生。
【谷川委員】  私も企業からといいますか、ビジネス界から十何年前に大学に来た者ですので、そのバリアということから申し上げますと、渡辺委員がおっしゃったように、給与という問題はバリアにならないと思うのです。私は日本政策投資銀行というところに27年間おりましたけれども、そのビジネス界で得たいろいろな知識や知見、経験を何らかの形で教育なり大学というパブリックな場で生かしたいという気持ちがだんだん生まれてくるもので、私の同僚も随分たくさん大学に転身しています。
 それはまさに給料というよりも、名誉というか、とにかくもう50、60近くなったので、社会貢献をしたいという気持ちが出てきたからだと思います。お金は生きていくための最低限さえあればいいということで出て行くのです。
 むしろ入るときのバリアというのは、基本的に私は大学側にあると思っています。最近は大分変わってきましたけれども、大学の方に、やはり外部人材・大学人以外の者を入れるということに対する文化的な抵抗がものすごくあるような気がします。
 私は社会科学、ビジネスの人間ですので、産学連携というフィールドで大学に入って、九大で産学連携の新しいシステムを構築しています。今はちょっと転身して教育の方へ行っていますけれども。しかし、大学にとって、研究以外の人間が入ってくるということはものすごく抵抗があるため、そういうポジションは極めて少ないのです。たまたま私は前総長のときに、産学連携の組織をつくるのは大事だということでポジションを空けていただいたので入れましたけれども、それは極めてまれなことです。
 大学人が、大学の中のポストがあいてそれを埋めようとするときには、とにかく博士号を持っている研究人材でないと受け入れたくないというカルチャーがものすごくあります。私のように産学連携とかイノベーションなど、学生に、専門だけではなくて、社会でどういうことが求められているのだろうかということを教えたいと思っているような人間は、余り大学の方では歓迎されない雰囲気がものすごくあるので、そもそもポストがあいても新しいポストを用意しようとしないし、中に入ったとしても余り居心地がよくありません。たまたまそのときのトップが大変前向きの人であれば働きどころがあるのですけれども、恐らく大多数の大学にはそういう文化はないのではないかと思います。ですから、私はむしろバリアは大学の方にあるのではないかと思っております。
【濱口主査】  ありがとうございます。
 はい、どうぞ。
【西口委員】  西口でございます。
 今の大学のお話に関連して、私は大学の外にいる人間でございますけれども、御参考になるかと思い、お話しいたします。私は、経済産業省で民間側から関わっておりました。まさにイノベーションのエコシステムに関わる研究活動に関して、最近対外発表いたしましたが、その中で、実は研究報告には入れていない事項があります。それがイスラエルの産学連携のイノベーションエコシステムです。どういう工夫を大学側でやっているか、直接テルアビブやイスラエルの関係者等にヒアリングした内容が御参考になるかもしれないので、共有します。
 前提条件として、イスラエルの大学及び企業、特にスタートアップ企業は、一緒に何かやりましょうという方向性があります。では、どのようにやっていくかいろいろ聞いたところ、面白い前提条件として、大学の先生はそもそも授業をやろうと思っているわけではないということです。別に企業に勤めたくないので大学の教授をやっているのだと、事実かどうかは別にしまして、まずはっきりそう言っておりました。
 その上で、知財を生み出して事業化するというプロセスの中で、知財を生み出すところは大学で、事業化するのは企業ということです。日本では、時々大学の先生が知財を生み出して事業化まですればよいのではないかという議論があると伝えると、それは無理だ、そういうものではないと言われます。企業が事業化するに値するような知財を生み出すことが、大学の先生方に少なくともイスラエルでは期待している内容であるということです。
 でもそれでは面白くないのではないかと聞き返したところ、いやいや、それが実は面白いのだということです。なぜかというと、大学と企業の間の連携に、2つの特色があるためです。一つは、事業化に値するような知財を生み出した教授と大学に対しては、一定のお金が支払われるようになっていることです。意味のある知財が出るとお金がちゃんと企業から入るように、少なくともイスラエルでは設計をしております。
 もう一つは、大学教員の方の昇進の評価基準に、論文の数も数えるけれども、そのような知財を生み出した人には、確実にいわゆるテニュアに向かって加点されるようにしてあるということです。企業にとって意味のある知財を生み出すということも、いわゆる大学教員としての出世コースの重要な評定にしてあります。だから論文も書くけれども、企業から見て意味のある知財を生み出すということに、教員としてのインセンティブが働きます。
 それでもどうしても自分で事業をやりたいという人は、勝手にやればいいのであって、全部事業化まですることが教員の仕事だとは思われない。それは企業がやればよい。そのように役割分担をしつつ、かつ役割分担を果たすと、大学の先生は教授として評価が上がり、出世できるように設計してあるので、比較的産学連携の中から事業化に向けての動きが加速するようになっている。自分たちはこのように国の設計をしているという説明がありました。実は彼らは大学の中のイノベーションのエコシステムと企業のエコシステム、そしてその全体をつなぐエコシステムというような考え方で見ています。単に連携の契約書を書いただけでは何も生まれないだろうと言われて、そのとおりだと思ったのが今年の3月ぐらいのことだったのですが、ひょっとして御参考になるかと思いまして、共有いたしました。
【濱口主査】  ありがとうございます。
 イスラエルでは、大学と企業の連携がかなりうまくいっている。逆に、日本では少し価値観のそごがあるのではないかと思われます。先ほど谷川委員の御意見でも、大学側が求めるキーポイントは博士号があるかないかだけれども、企業では逆にドクターを採用していないという歴史的な経緯が日本にはあるところ。これらにはかなり連動したような問題がありますが、その辺り、もう少し議論をいただけないでしょうか。ポスドク、大学院の企業への活用というのができない背景に、やはり日本的な特徴があるのかどうか。先ほどの北海道大学ではポスドクは大分増えていますけれど、就職は確実にできているのでしょうか。
【川端委員】  今までの議論は、ドクターコースに行った学生を、産業界などいろいろなところに行かせましょうというものです。しかし、7年前は大体産業界に行く人は落ちこぼれと大学の中では言われていたのです。今は、産業界で活躍するのも良い道なのだという理解が広がりましたが、問題は、産業界に行くなら修士を出て行った方がいいと考えている人が大半だということです。修士の方が、企業が採っている人数も多く、選択肢も多いという話です。
 そうすると、ドクターに行く人間は、基本的に企業に行くよりはアカデミアに行きたいと思って入ります。まず出発点が違っているのに、それを産業界に行かせるという話になっています。第1希望がアカデミアの人間を、途中から、ではあなたは産業界ね、という話になっているのが問題であって、企業に行きたいのだけれどもドクターに行きますという人をいっぱい増やせばよい話なのです。
【濱口主査】  それを実現するためにはどういう教育システムが必要なのでしょうね。これは私もすごく悩んでいるところなのですが。
【川端委員】  みんな悩んでいます。ただ、修士、ドクターの場合、目の前にいるのはアカデミアの人だけで、企業の人ががんがん稼いでいるというのを見る機会が非常に少ないのです。
 そこを変えるべきだと考えています。だから、目の前に企業の人がいっぱいいて、一緒に産学連携など進めていく機会をカリキュラムの中に入れられるとよいです。そのような中で、ドクターに行っても不安ではないことが示せると思います。今のドクターのキャリアパスがしっかり整備されれば、もっと増えていくでしょう。
【濱口主査】  どうぞ、先生。
【北原委員】  ちょっと論点を整理すると、渡辺さんがおっしゃったのは、20代、30代のばりばり研究している年代で、企業とアカデミア間をもっと行き来してよいのではないかという話ですよね。そこを何とかできないでしょうか。
【濱口主査】  はい、鷲見委員。
【鷲見委員】  今、川端理事がお話したのは全体像なのですけれども、その具体的な取組を4年前に北大は人材育成本部で始めました。人材育成本部という横串をつくって、これだけたくさんのポスドク、博士を抱える大学であるため、博士課程後期の学生とポスドクにターゲットを集中させ、修士はキャリアセンターに行ってくださいとして、3つの取組をしております。1つは授業、2つ目がインターンシップ、それからマッチングです。
 授業に関しては、今、博士、ポスドクのためにセットアップした授業を単位化してみました。すると今はもう受講生の96%が修士という状況になってしまいました。しかし、それでよいと思うのです。なるべくMOTのようなことは早めに教え、専門以外のいわゆるT字形の横串、どこの職場に就いても必要なネットワーキング力やコミュニケーション力の授業を行います。それはもう修士で構いません。
 博士に対しては今のところ、インターンシップがよいと考えております。そして、文科省のイノベーション若手、今のポストドクターインターンシップ事業のために、まずマッチングの機会を作ろうとしました。これはさっき川端先生がお話しされた。赤い糸会、緑の会というものです。この3つを通していったとき、就職率は、博士、ポスドクで八十数%なのです。北大はまだ四十何人かしか支援できていないのですけれども。
 そして、そういうものを定着化していくと、ドクターに行っても就職できると考える大学院生が増えてきます。北大では、Hi-SystemというSNSをつくって、産業界に興味のある人に会員登録してもらっています。
こうした取組が一そろいあれば、どの大学でも成功するのではないかというのが、この4年間文科省からのお金を頂きながら事業をやってみた感触です。
【宮田主査代理】  先生、いいですか。
【濱口主査】  どうぞ。
【宮田主査代理】  今まで話を聞き、大学の実情も大分分かりました。また、先ほどのポスドクキャリアの多様化から始まって、ずっとそういった事業の審査や評価と長く付き合ってきました。そうした中で得られた結論は、大学だけではこの問題は解決できないということです。だから、社会、企業も含めてですけれど、イノベーション人材は大学だけではできないということをもっと明確にここの委員会で打ち出していただきたい。
 それを前提にして、それでは社会としてどう対応するかという議論をした方がよいのではないでしょうか。そうでないと、大学という一面にすぎないところに全部責任を押し付けて、漸進的な改革だけでうまくいきましたと言われても、本当にうまくいっていると思えません。
 それからもう一つ、暗黙の了解として、終身雇用制が日本を強くした、だから終身雇用制を尊重すべきだという話がありますけれど、それが本当に21世紀のイノベーションにとって適しているのかと議論しなければいけないのではないでしょうか。私たちが所得倍増した池田内閣のときの話ともう諸般の事情が変わっているので、むしろ人材を流動化して、あるテーマにおいてプロフェッショナルが流動的に集まって、そこにお金も流れてくるという仕組みの方がよい場合もあるのではないかと思っています。
 そういう意味では大学の教員を流動化したいと考えています。一つのアイデアとして、お給料は10か月しかやらない。あとの2か月は、自分たちがコンサルタント契約などを行い、企業とお付き合いいただく、というのがあります。そういったことが本当にできるかどうかです。
 大学の先生というのは、個人的な興味における研究をずっとやっていて、そのために国家が投資していていると私は思っています。先ほど企業との収入格差の話がありましたけれども、仕事の喜びや自由度を勘案すると、大学の方が高いと思っているのです。
 ですから、そういう意味では、給料は10か月分あるいは9か月分でよいのではないかと思っています。あとの3か月分は自分たちが働いて取ってきてくださいと。このようにして、社会との結び付きを持たなければいけなくなる必然性を作るべきではないかと思っています。今、このままだと大学の教員は本当にタコつぼの中でゆだっていく感じがあります。そんな中、どうやって大学の教員に社会に出ていただくインセンティブを与えるか。
 もちろん、ここにいらっしゃる大学の教員のように進んだ方はいるのですけれど、2割ぐらいしかいません。あとの8割は、ほとんどタコつぼの中にいます。これをどう追い出すかということも含めて考えなければいけません。
 それからもう一つ、企業にも学位授与権を与えるべきだと思っています。日本には、学位授与機構というのが存在していて、防衛大学校などいろいろなところが学位認定施設として認定してされ、学位を取れるようになっていますけれども、そろそろ大学だけではなく、企業にも学位授与権というものを与え、企業が教育に対してコミットする仕組みをつくった方がよいのではないかと思っています。
 そういう意味では、大学の先生が企業に行って、学位を授与するということもあってもよいのではないでしょうか。
 議論を聞いていると、どうも政府の今までのイノベーション施策は、今までの枠の中の漸進的な改革だけに終わっているので、この委員会ではもう少し頭を緩くして、みんなで議論したいです。最終的にはつまらないレポートになってしまうかもしれないのですけれど、もう少し皆さん御自身の立場を離れて議論した方がよいのではないでしょうか。
 イノベーション人材は大学だけでは無理で、社会全体で育成する仕組みをつくるべきだという一言があるだけで、我々は相当いい仕事をしたと、100年後言われるのではないかと思います。
【濱口主査】  どうぞ。
【北原委員】  それで思い出したのですけれど、私、1980年代にドイツの研究所で研究しておりました。そこでは学生の学位、研究指導を企業の研究所にやらせていました。そのときにその研究指導に関して一応資格審査はするのですけれど、基本的に研究者に任せて、その研究所で学位を授与する。そんな仕組みをつくっていました。日本の大学ではそういうことは今、可能なのでしょうか。
【濱口主査】  ここに医学部は私だけかもしれませんが、医学部はやっています。
【宮田主査代理】  そうなのですか。
【濱口主査】  論文博士というのがこれに当たります。民間企業どころか病院で働いていて、そこで症例をまとめて何か新しいことを発見し、主任教授ときちっと議論をして論文を出せば、それで論博を取れるのです。これはもう明治からずっと続いています。
 企業に関しても、どれぐらいのパブリケーションがあるか、あるいはどういうドクターがいるかなどの条件をクリアしていると名古屋大学が認定され、そこでの研究を紹介論文として出せます。
【宮田主査代理】  おお、なるほど。
【濱口主査】  だから今おっしゃっていることは、我々はもう20年ぐらい前からずっと、紹介論文という形でやっております。
【宮田主査代理】  分かります。しかし、名古屋大学から学位が出るのではつまらないです。
【濱口主査】  あ、そうか。企業側から。
【宮田主査代理】  企業から学位を出せないかということです。その仕組みは学位授与機構が既に防衛大学校でやっておりますので、その防衛大学校の代わりに東芝や日立のような企業が認定されるとよいです。学位授与機構がその企業を審査して、ここだったら学位を学生に与えられるだけの資格があると認定した上で、その権限を与えるという形になります。
【濱口主査】  そこは文部科学省の発言を求めない方がよいかと思います。
【宮田主査代理】  これはジャストアイデアですから。ただ、企業が主体的にコミットするという筋道がそろそろ見えてもよいと考えております。
【濱口主査】  そうですね。企業の研究投資や、新人の教育の投資が非常に減っているというデータがあります。そこに、今のお考えはある意味でモチベーションになると思います。
 森先生、うなずいておられますが。
【森委員】  濱口総長、それはちょっと違うのではないかと、今、申し上げようと思っておりまして。
 副主査が言われたことは、リーダーシップをとってインセンティブを与えるのが企業であってほしいということです。だから、もちろん医学部でもほかの学部でも、全部論博というシステムがありますが、それは東大に出さなければいけません。それを完全になくしてしまうという考え方ですよね。
【宮田主査代理】  そうです。東大ではなく、日立などの企業に出すということです。
【森委員】  例えば、10年から20年、現場を離れていて、企業でずっと研究をされていた方が、昔の先生を頼って学位を取るというのが、今、論博で問題になっております。全然知らないけれど頼まれちゃったから学位を出すという感じになっているので、そこをもう根本的に直そうということが御意見ですよね。
【宮田主査代理】  はい、そうです。学位授与機構みたいなところがコミットすると、博士のクオリティーもコントロールできるのではないかと思うんです。
【森委員】  そうですよね。今日は来て、すごくよかったです。いろいろな問題が見えてきて。川端先生のお話も、うなずきすぎて首が痛いぐらいになってしまいました。
 ドクターコースに入ってくる学生が、そもそもアカデミアに残りたいがためというのが、何かバリアのようになっているのです。名古屋大学理学部の話で恐縮ですけれど、この2~3年、学生が博士課程に進学しないのです。その理由は、アカデミアの先生たちを見ていて、自分たちはああなれない、あんなに働けないと思うからのようです。大学の運営も、学部の教育も、大学院生のトレーニングもやっていて、その上で、一流の論文を書くことも課せられていて、もう24時間働いている状態です。それは無理だということで、まず来ないのです。
 そうなると、トップジャーナルに論文を書きたい場合に、大学院生に頼ることができません。となると、大型のトップダウンであるERATO、CRESTを取り、優秀なポスドクをとにかく全国国際公募して採るしかありません。となると、またこの悪循環に入っていくのですが、この状況をどうしていくかということなのです。すみません、意見がないのですけれど。
【濱口主査】  すごくよく分かります。アリ地獄のような部分があるのですね。
 どうぞ。
【大島委員】  今の話にも関係するのですけれども、今の学生が一番求めているのは安定性なのです。なので、やはり大学の先生がいろいろ大変だということもあるのですけれども、今、大体工学系、理科系は修士まで行きますので、そのときにドクターに行ったらその先の就職がなく、あったとしてもポスドクをつないでいくのみであり、退職金が毎年契約になっていて、生涯賃金にかなりの差が出てくるという状況を目にしているのです。そういう給与も含めた安定性を見て、やはり24歳のときに会社に勤めた方がいいという判断を皆さん下されるのです。なので、それをどうするかということが一つ。これは多分社会的な問題なので、大学が解決できる話ではないと思うのです。やはり社会的に何らかの形で取り組むことが大事かなと思います。
 あともう一点、大学の先生が社会に出ていろいろ交流するということは非常に大事なのですけれども、日本の大学の大学院は24歳から28歳の学生しかいないということも問題です。私はアメリカの大学院にもいましたけれども、やはり一旦皆さん就職して、目的意識を持って学び直しています。そういう目的意識を持った学生と交流することによって、自分が学生として、高等教育を受ける目的がはっきりするのです。
 私たちの研究室にも社会人ドクターの方がいらっしゃるのですけれども、22歳から入ってきて大学しか知らない学生にとっては、非常に刺激的になるのです。そういうことを通して、企業も結構青田刈りをするのです。24歳の大学の優秀な学生が、必死に就職活動をしている中、私の企業はこういうところがいいから是非来ないかと声を掛けるのです。
 こうして、22から28歳しかいないという大学院の状況を多様化させることが重要になってくるかと思います。多様性とは、女性・外国人はもちろんですが、年齢の多様性が必要です。いろいろなバックグラウンドを持った人が大学と社会を行き来できる状況があったらよいです。日本の場合はどうしてもそこが雇用状況のために非常に制限されていて難しいと思うのですけれども、そこが短期でも可能になったら望ましいです。特に今、会社は新人研修が減っていますので、そういう新人研修の代わりに短期間に大学に来ることも考えられます。また、今は学生がインターンシップで企業に行くということが多いのですけれども、例えば企業の方、特に研究職の人が大学に入って、一緒に研究するというのもよいです。このような制度を作るなど、もう少し大学と企業の行き来を大学院レベル、大学レベルで円滑にできるようなシステムがあると、少しは情報交換も兼ねてできるのではないかなと思っています。
【濱口主査】  はい、どうぞ。
【長瀬委員】  よろしいですか。
 大学と、いわゆるアカデミアの博士後期課程、ポスドク、それと企業との関係なのですけれど、これは分野によって全く違います。というのも。私は化学をやっていましたが、日本化学会などで調べますと、企業における技術系の採用数の10%が博士ということになっています。それで大学の先生に聞きますと、ドクターの就職は問題がなく、ポスドクも企業に行きたい人は行けるので、むしろマスターからドクターに行くいい人をもっと増やしたいとおっしゃるのです。
 ですから、逆に企業にとって意味のある人が出ていれば、今、そんなに問題になっていないのではないかと思います。やはり今、ポスドクの最大の問題はバイオ分野ですね。結局、産業構造と大学の研究構造の間の隔たりが非常に大きいのです。大学はある程度未来を見つめますからある程度隔たりがあるのは当然なのですけれど、その差が余りにも大きいのです。つまりバイオ系の産業は何も育っていないのではないかという状況です。これは、ポスドクで優秀な方が出てきても就職ができないということにつながっていると思っています。
【濱口主査】  どうぞ。
【大島委員】  私は工学系で機械系ということもありますので、やはりドクターの就職率はそんなに悪くありません。なので、分野によって違うということはおっしゃるとおりかと思います。企業と大学でやっている研究に関しては、大学はどうしても学術的な意義のある最先端の研究をやりますので、ギャップがあるとよく言われています。ただし、それが今までずっと平行線で来ているというのも確かだと思います。
 そこはやはり人材が交流しないと、ギャップがなかなか埋まらないのではないかと思います。私も企業といろいろな共同研究をしていますが、やはり企業によってスタンスは大きく違います。非常に長期的なビジョンを持って研究に投資し、共同研究していただける企業もあれば、本当にもう2~3か月で成果を出さないといけないが、共同研究を申し込んでやるという企業もあります。共同研究は、企業のニーズがあって、それに大学も応える形でやるということにはなっているのですけれど、何らかの人材交流があることによって初めて、企業にはこういうニーズがあるのだということが分かってくると思います。
 同様に、次世代を担う若手研究員も、それに携わることによって分かるのです。なので、やはり何らかの形での交流がない限りは平行線になってしまうのかなと思います。
【濱口主査】  ちょっと伺いたいのですけれど、博士人材をたくさん採用していただいているということを、化学系は割と前からよく聞くのですが、機械系もその傾向はあるのですか。分野によって随分採っていただけないかと思いますが。例えば宇宙系は駄目ですよね。
【豊田委員】  市場がない。
【濱口主査】  ないですよね。そういう宿命的な分野の問題と、それから例えば構造の問題、もう一つよく言われるのは、オールラウンド型と呼ばれる、幅広い知識や教養を持った人が少ないからドクターは採りづらいという問題がございます。ところが化学ではそれは全然問題になっていないのですよね。ここはどう考えられますか。
 どうぞ。
【川端委員】  少し私ども現場の感覚から言いますと、もともと化学系や機械系のように、産業界に非常に近く、コミュニケーションもしっかりとれているところに問題はほとんどありません。情報系もそうですね。自分たちの世界の中だけで、問題なく回せているから大丈夫と言うのです。しかしながら、こういう私たちがやっているキャリアパス事業は、できるだけ分野を広げたいと考えています。だから、例えば数学が専門である人は、数学に関係するところに行くのではなく、全然違うところに行きます。例えば、化学や生物が専門であった人が金属に行きます。そういうことを進めないと、大学全体が動きません。一方で企業としても、そういう人材が欲しいという動きも出てき始めました。
 だからその動きがもし機械分野にも波及したら、機械の方はまだマスとしてバランスがとれていないので、マスとして機械側の方が減っていきます。そうすると、機械が今そうだというわけではありませんが、バリアを持つ分野もあるのです。自分たちの世界に入ってくるな、自分たちは自分たちで何とかなっているのに、外に出したくないという集合体です。
 それを大学の中でも壊すべきだと思います。イノベーションは基本的にクロスするところから出てきます。面白い人材が面白いところへ行くから面白くなってくる。そこを分かってほしいというのが、我々の企業に向けてのメッセージであり、そういう動きをしています。
【濱口主査】  今年のディスカッションのポイントとして、イノベーション人材をいかに育成するかが挙げられます。特にドクターで育成するというとき、今の日本では、ドクターの違う分野の人を、違う分野の企業に就職させるというところにかなりボトルネックがあるということが一つ言えます。
【長瀬委員】  先ほど先生がおっしゃったようにトップクラスの人間は幾らでも動けるのです。ですから、イノベーションを本当につくるような人というのは、放っておいても何とかやります。
【川端委員】  放っておく方がいいのですよ。
【長瀬委員】  放っておく方がいいのですよね。ただ私どもは中間の人のことを考える必要があります。そこで一番問題になるのは、大学で例えばサイエンスをやっていると言っても、バイオだけやっている人は、バイオ以外できないということです。つまり社会学部系を卒業した人と余り変わりません。そうすると研究はやらせられませんということになるのです。そういう意味で、大学入試の問題もあるのですけれども、数学や物理をちゃんとやってほしいと思うのです。そういう基本素養は必ず持っておいていただいた上で、バイオを研究してほしいのです。
 逆に言えばバイオ関係の人に基本素養は大事なのです。例えば実験系学部には数学がどうしても必要です。数学ができない人間がバイオに行くという状況がつくられていることが問題ではないかと私は思っています。
【濱口主査】  はい、どうぞ。
【宮田主査代理】  長瀬さんの話はおっしゃるとおりということが半分、しかし長瀬さんに言っていただきたくないという気持ちも半分あります。それは、日本の化学産業も製薬産業も、バイオ産業に乗り遅れたというところが、バイオ分野におけるポスドク問題の最大の原因だからです。何でこんなことが起こったかというと、実は産学連携の中で、今後の社会がどうなるか、あるいは今後の技術トレンドがどうなるかという情報交換が十分ではなかったためです。
 それともう一つは、短期間で社長がころころ変わるような仕組みであるため、10年以上掛かるような産業に出ていけないことが日本の大きな問題だと思います。
 ですから、これから産業でイノベーション人材をつくっていっても、イノベーション人材は常に砂漠に放されるような状況にあるだろうと考えています。そういう意味では、さっき申し上げたとおり大学だけでも駄目、企業だけでも駄目。その中間的なイノベーションを起こすエコシステムというものをつくらなければいけないと思います。
 今ある日本の大企業や終身雇用の企業が生き残るとは全然思っていないので、あと10年後、皆さんの大学がそういう企業のための人材をつくったら、また砂漠に放すことになります。
 だからその辺りはもう少ししっかり考えなければいけません。現在の大学の養成課程が悪いのはもう明白ですけれども、それだけではなく、産業界の方の戦略的な判断ミスという問題もあります。イノベーション人材を本当に幸せにするためには、産業政策と人材政策が両輪になって、うまくかみ合うような政策を決定していく仕組みが重要になります。残念ながらここだけではそこまで議論できないのですけれども。大きな一文として、そういうことも入れておかないといけないと思います。
【濱口主査】  どうもありがとうございます。
 どうぞ。
【西口委員】  産業界の方で何が問題かというと、企業の中において、縦割り、横割りがものすごく細かく、自分の専門分野あるいは担当分野以外のことには余り関わらないことです。いわゆる横串発想をする人間というのが極端に減っています。その結果、社内ですらいろいろな知恵の組合せをすることが非常に下手になっているという現状が実際にあります。もちろん例外の会社もあると思いますが、日本の一般的な傾向としてはそうなっています。
 一方、大学と企業の関係というとき、単に企業が求める人を大学が輩出するというよりは、恐らく企業の二歩あるいは三歩先ぐらい先を行っているような人材を大量に大学が輩出するということが重要になってくると思います。
 そういう人には、2つの軸が必要です。まず一つ目は、イノベーションです。新しい付加価値は、ある発想があって、それを実現できて初めて生まれます。つまり発想力と実現力の組合せだろうと私は思っています。これができる人というのが一つの理想型です。もう一つは、発想と実現という2つのプロセスの中で、縦割りでない動き方、縦割りでない発想、つまり横串を通して動き、発想できる人が必要です。
 これは何人かの委員の方もおっしゃっていたことではありますが、自分の専門分野を持ちつつも、それだけでない軸を幾つも持っている、いわゆるT字型と言われている人たちを大学が大量に輩出しており、その人たちがいろいろな発想力や実現力を持っていれば、その人たちは企業における今の状況の一歩先、二歩先の人材になるのです。そうすると、そこに当然需要と供給の関係が生まれ、中長期的には需給の関係がある種、落ち着いてくるのだろうと思います。
 一方、逆に、今の組織のような、縦割り中心で、目の前のことを考えることが至上命令になっている状況に合致した人をつくろうと思うと、これは企業の後追いになってしまうので、本質的には付加価値にならないという気がします。
 だから、産学連携といったときは、むしろ企業の二、三歩先を行くような人材を大学が輩出するということが重要ではないかと思います。
【濱口主査】  大事なポイントですね。
 発言されるような方。どうぞ。
【宮浦委員】  私どもは工学部におりますが、工学部の教員にはかなり企業の方が入っていらっしゃいます。また、イノベーション人材を育成する、イノベーション推進機構などをつくっておりまして、横串の教育もやっております。そこで、やはり企業から入ってくる方はフルタイムで雇用され、教員として大学に勤務されることになるのですけれども、先ほど少しお話があったように、学生だけでなく教員側にも、企業と3年間くらいのエクスチェンジ制度、行って帰れる兼任制度があると来ていただきやすいかと思います。そうしないと、大学に就職していただく形ということになるわけです。
 そういう雇用形態が固まってしまっているために、産業界から来ていただいても、大学の雇用形態に入っていただく、あるいは任期付き3年でやっていただくことになります。ただし、任期付きの場合、3年後は白紙になってしまうので、制度的に非常にやりにくい部分があります。例えば若手教員が、テニュアトラック期間中に1年は企業活動をさせていただいてまた戻ってくるようなことを義務付けるなど、サバティカルな形を制度化していかないとなかなか動けません。恐らく、先ほどお話があったように、イノベーション人材をつくると言いながら、目の前に並んでいるのはみんなアカデミアの教員という状況になってしまいます。それぞれの専攻の中にも産業界から教員が入ってきているというのが本来の姿だと思うのですけれども、なかなか現状の人事制度ではそれができません。学生だけマルチ人材になれと言っても難しいです。まず教員がマルチでないといけません。ですから、今話題になっております年俸制など、人事制度改革も含めて、少し流動的にやるような仕組みを作らないと難しいかと思います。
【濱口主査】  すみません、お時間が押してきましたので、手短にお願いします。
【高橋委員】  私はバイオ系で、しかも今35歳なので、まさにここに当てはまる当事者的な人間で、それで挙げ句の果てに起業した人間なのですけれども、やはり就職するとき、あるいは博士に行くとき、既存の、いわゆる企業の人事の方が採用ツールとしている枠組みに、博士を出てしまうと乗れないのではないかというのが悩みとしてあり、不安になっていました。当然その中には、大学の指導教官の方々がなかなか就職に対して理解を示していただけないという悩みもありました。
 その中で、今、私が会社を始めてから試しているものがあります。企業の人事の方々に、いわゆる採用ツールで、技術者、研究者、優秀な人を雇えますかと聞いたら、ほとんどの方がノーと言います。母集団はとても大きいけれども、そこから選ぶプロセスを持っていないためです。それでは、就職してほしい人を集めるのではなく、研究してほしい人を集めるために声を掛けて、その中から優秀な人を選びませんかと提案し、50万円ぐらい一口で、民間の研究費のようなものを借りて運営してみました。
 そうしたら、優秀な若者がこれで集まってくるならば知り合いたいと言って、どんどん人事の方が集まりました。これまでの5年間で、既に今年で100名ぐらい採択者を出すような形になってきています。そして審査のプロセスなどを通じて、プチ産学連携のような形になっています。産学連携というのは、本来人材育成の取組だと思っています。どうしても企業が大学にお金を出すとすると、知財などの話が先に立ち、若者のキャリアを考える人材的な側面はどうしても後ろに入ってしまいます。しかし、実は、私たちが今やっていることは、小さい規模ですけれども、研究費を通じて、草の根的に企業の方と、それこそ修士の1年生ぐらいから採択者が出るのですけれども、採択された学生の間のコミュニケーションの場を作るということなのです。一つ面白かったのが、鹿児島県肝付町という自治体です。自治体もそれに乗りたいと言って、研究費を自治体のお金で出したのですが、そのプロセスを通じてつながった博士の方が、実際Iターンして就職するという動きも出てきたのです。そういう意味では、こうしたコミュニケーションを通じて若者の方に入っていくことが、大学だけでは解決できないこの問題に、産業界側からアプローチできる一つのヒントになるのではないかと思っています。
 まだまだ小さい動きですので、是非そういう仕組みがもっと大きくなるようなことができたらいいなと思っています。以上です。

【濱口主査】  すみません、まだ議論を続けたいのですけれど、お時間が来てしまいまして、申し訳ございません、今後引き続き議論をさせていただくということで終わらせていただきたいと思います。今日、発言いただかなかった方も何人かお見えになりますが、是非次回も出席していただいて、御発言をお願いしたいと思います。大変申し訳ございません。
 先ほども御説明がありましたように、中教審との連携に関して意見交換を行うことになっており、この後、私も出席いたしますので、今日の人材委員会の議論について紹介しながら意見交換を行い、その状況も適宜御報告させていただきたいと思います。

 最後に事務局から事務連絡をお願いいたします。
○事務局より次回の日程等について説明。
【濱口主査】  どうもありがとうございました。本日はこれにて閉会いたします。どうも今日は活発な御議論ありがとうございました。

── 了 ──

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-- 登録:平成26年08月 --