平成21年4月21日(火曜日)10時~12時
文部科学省東館3階 1特別会議室
柘植主査、平野主査代理、有賀委員、有信委員、井上委員、大島委員、小川委員、興委員、小野委員、小林委員、菅委員、フクシマ委員、室伏委員、森下委員、吉見委員
泉科学技術・学術政策局長、土屋政策評価審議官、岩瀬科学技術・学術総括官、戸渡政策課長、川端基盤政策課長、柿田科学技術・学術政策局計画官、坪田科学技術・学術政策局企画官、星野人材政策企画官
午前 10時00分 開会
(柘植主査) おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから科学技術・学術審議会人材委員会の第49回を開催いたします。
本日の会議につきましては冒頭より公開となっておりますので、よろしくお願いいたします。
新任の委員のあいさつをいただきたいと思います。前回の人材委員会では、第5期の最初の委員会ということでありまして、第4期に作成した中間まとめのおさらいをした後に、中間まとめを踏まえた上での科学技術政策について、新任の委員の方々を中心に、俯瞰的な議論から始めました。今回は、まずその続きとしまして、新任の委員の中で前回欠席された菅委員から、科学技術政策全般について、3分を目安にご意見をいただきたいと思います。それでは菅委員、よろしくお願いいたします。
(菅委員) どうもありがとうございます。何かコメントを最初に述べさせていただくということですので、実は私は内閣府の「大学院における高度科学技術人材の育成強化策検討ワーキング・グループ」のメンバーで、本日同じ時間帯で同じような議論をしているのですが、今回はこちらに出席させていただいております。基本的に同じようなことを申し上げるのですが、これは多分コンセンサスな意見だと思いますが、資源のない日本において、科学技術が唯一の立国の糧であるということは皆さん同意なされると思います。一方で、日本の学生さんたちの理系離れが進み、またポスドク問題や、若手研究者の減少など、そういったアカデミックな問題だけではなくて、社会的な問題としていろいろなことが最近話題になっています。例えば、理系でありながら、文系企業に就職していく学生もかなり増えてきております。実際、私自身もそういう経験をしております。グローバル化が現在進んでいるわけですが、そういった中で、博士学位を持つ人材の輩出は今後日本の大きな課題であろうということは目に見えたことでありまして、私自身も現役で研究しながら、さまざまな教育の現場でそういう可能性についていろいろ実践してまいりました。私は今から5年前にアメリカから帰ってきて現在のポストに着任しているのですけれども、まずやらせていただいたことは、私は東京大学先端科学技術研究センターに所属していますが、そこで持っています先端学際工学専攻のカリキュラムをかなり変えていきました。アメリカ的にプロポーザルを導入したり、英語のプレゼンテーションを導入したりなど、そういった形の授業を増やしてきたわけですが、そのようなカリキュラムの改革に加えて、私自身がやってきたことは、博士の学生にできるだけ経済支援を出そうということで、今、幸運なことに科学研究費補助金(科研費)ではわりと比較的簡単に学生への支援が出せます。こちらをあまり理解していない大学の先生もいらっしゃるのですけれども、実際、非常に簡単に問題なく学生へ借金という形でありますし、そういった形ではありますけれども、経済的支援が出せます。
私自身はそういう支援をずっとしてきたのですけれども、結果的に感謝はされるのですが、かといって修士に入ってきた学生が博士課程に行くということはないのです。なぜかといいますと、学生と話をすると、博士課程をとった後のキャリアパスが全く見えない。つまり、博士を取った後、会社に行くのか、企業に行くのか、アカデミックのキャリアを進むのか、博士を取ったことによって何のメリットがあるのだろうということが常に彼らの頭の中にある。修士のときには基本的には就職すると、みんなキャリアパスがおぼろげにも見えているのですけれども、博士に行くとなると、途端にキャリアパスが見えなくなるというところが日本の大きな問題だと思っています。
アメリカでは、修士の学位を持っている人は、就職しますと研究補助職につきます。それから博士を持っている人が研究開発職につけると、これは「企業に就職する」、「アカデミアに行く」は関係なく、博士を持っている人は研究開発に携わっていくというキャリアパスがアメリカの大学院生にはクリアに見えているということが私の感じるところであります。アメリカではそういう博士、研究者に対する社会的地位が高いということです。要するに研究開発職につくことによって、給料が高いなど、そういったことで学生は博士学位を取ることに魅力を感じて、それがモチベーションになっているということです。アメリカの大学院生を見ますと、TA、RA、経済的支援がインセンティブとして約束されて、経済的支援があって、社会に出ると、博士学位を持った人間としての待遇を受けるということで、キャリアパスをイメージしやすいというのがアメリカの現状だと思います。つまり、インセンティブがあって、それでモチベーションが保たれるという、インセンティブとモチベーションの両方があって、初めていい人材が育っていくのだろうというのが私自身の考えであります。日本でも経済的支援を、今、GCOEなど私自身もやっておりますが、そういうインセンティブを与えても必ずしも学生にモチベーションがわいてこない。それはキャリアパスが見えないからです。
一方で、今までの話はどちらかというと企業に行く人の話でしたけれども、アカデミアを目指す学生というのも当然いるわけです。博士を取った後、ポスドクをするなり、場合によっては助教に直接なる人もいらっしゃるでしょうけれども、その後、PIというか、自分で研究室の運営をするというキャリアパスがクリアに見えないと思います。実は、アメリカでもどこでも保証はないわけです。キャリアパスをイメージできるかどうかが問題であって、保証はどこの国に行ってもないわけですが、日本の場合はキャリアパスのイメージすらあまりしにくい。それが微妙にポスドク問題に絡んできているということだと思います。
最後にテニュア・トラックに言及したいと思うのですが、私自身もアメリカでテニュア・トラック教員になって、テニュアを取ってきたわけですけれども、アメリカではテニュア制度が定着しています。これは、定着しているということはその大学で定着しているのではなくて、国全体で定着している、要するにお互いにポストがテニュアをどこかの大学が与えることによって、どこに移動してもテニュアとして認められるというような、国全体として認められているということです。当然のごとく、ポスト獲得競争というのは非常に激しいです。実はテニュア獲得ということは自分自身の評価だけなので、人と競争するわけではないというのが、少し皆さんテニュア制度を考える上で誤解しやすいところですけれども、ポストを獲得するときは競争が起きるのですが、テニュア獲得のときには競争は起きない。もちろん研究費をとるときの競争は起きるのですけれども、大学内でテニュアを取ることに対する他人との競争はないわけです。自分との競争にしかすぎません。そういうところでモチベーションをテニュア・トラック教員の人は保ちながら、自分の力で成果を出して、競争的資金を獲得してテニュアを目指すというモチベーションがクリアにあります。アメリカのテニュア制度というものは、結局、インセンティブ、最初のスタートアップファンドとか、そういうことがあって、モチベーションが保たれているということです。
日本でもテニュア制度が今、導入されて、文部科学省主導で動いています。これは大学主導じゃないということが少し物足りないところではあるのですけれども、それに手を挙げた大学もたくさんあります。私自身もそういう大学のシンポジウムとかに呼ばれて講演とかをしたことが何度かあるのですけれども、基本的に私はテニュア制度の導入ということは必要だと考えています。ただ、今の時点で問題を指摘するとすれば、予算を受けた大学は、テニュア・トラック教員との間にうまくコミュニケーションがとれていない、例えば評価の基準がわからないとかというような若干の考え方の違いがあるということです。
ただし、私が申し上げたいのは、テニュア制度というものはアメリカでも一刀両断にぱっとできたわけではございません。これは何十年もかかってようやく確立したもので、今、テニュア制度を日本の大学に導入すると、これは元年になっているのだと思います。したがって、今すぐテニュア制度が、失敗だ、成功だということではなくて、長い目でテニュア制度を見ていかないといけないと思いますし、そうでなければ、日本のアカデミックも化石化する可能性もあると、要するにほかのアジア諸国も含めて、多くのところがテニュア制度的なものを導入しているにもかかわらず、日本がそれをしないということは、やはり化石化するのではないかという危惧が私はあります。
ですが、一番重要なことは、日本の現在のシステムというものはそれなりに動いています。したがって、そのシステムをいかに生かして日本に健全に動くシステムをつくるかということが重要だと思います。要するに、アメリカのコピーではだめだと、いいところは導入していけばいいと思うのですが、必ずしっかりとその心を知って、後ろに一体どういう背景があって、こういう制度ができ上がっているのかということを知った上で、日本にそぐうように制度を考えていくということが重要だと思っていますし、それが本委員会の大きな役割ではないかなと思います。
それから、人材育成というものは数年の成果で出るものではなくて、長い間かけてつくっていくものですので、そういった意味からも、本委員会ではそのような大きな視点から、日本社会における理系人材の育成とか、研究者のキャリアパスとか、そういったものを前向きに議論していただいたら、私としては非常にうれしいと思っております。以上です。
(柘植主査) ありがとうございます。貴重なご意見をありがとうございました。
それでは、本日の配布資料の確認から始めたいと思います。お願いいたします。
(星野人材政策企画官) 事務局におきまして、人事異動による異動がございましたのでご報告申し上げます。
基盤政策課の人材政策企画官といたしましてこの4月に着任いたしました星野でございます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、資料等の確認をさせていただきます。まず、お手元に議事次第、委員名簿、座席表がございますかご確認をいただけますでしょうか。それぞれ1枚紙でございます。
次に、資料番号の振ってある資料類の確認をしたいと思います。まず、資料1といたしまして、これはホチキスでとめた2枚紙ですけれども、「審議テーママル1」と書いているものでございます。それから資料2といたしまして、「審議テーママル2」と書いている、これもホチキスどめの2枚紙でございます。それから1枚紙で資料3「次回の開催予定」、それから参考資料1といたしまして、これは1枚紙ですが、「最終提言に向けた具体的施策のテーマ」、それから参考資料2といたしまして、「基礎科学力強化委員会」についてという1枚紙でございます。それから参考資料3といたしまして、A4横長のものでございますが、「審議テーマ1 参考資料」、ホチキスでとめたかなり分厚いものです。それから参考資料4といたしまして、「審議テーマ2 参考資料」ということで、ホチキスでとめた厚目のものでございます。
以上、7点でございます。机上の資料といたしまして、関連のものをドッチファイルの中にとじさせていただいております。以上でございます。
(柘植主査) ありがとうございます。
それでは、本日の議題につきまして説明をいたします。本日の委員会では、第4期の科学技術基本計画、平成23年度から5年間でございますが、これに向けて、今年の秋をめどに予定しています最終提言において、施策として打ち出すべき具体的な方策について焦点を絞って議論をしていきたいと考えております。ぜひとも委員の皆様方におかれましてはご協力いただきたいと思います。
それでは本日の議題に入ります。事務局から資料の説明をお願いします。
(星野人材政策企画官) 最初に、お手元の資料で申しますと参考資料1を見ていただければと思います。最終提言に向けた具体的施策のテーマということで、本日の審議テーマといたしまして、「基礎科学力強化のための若手研究者の養成、理数教育の充実」というところを中心に議論をしていただければと考えております。これは第4期に作成した本人材委員会の中間取りまとめにおきまして、大学や、それから研究機関での人材、それから大学が輩出する人材、こういった人材が社会の多様な場で活躍しているというようなことが重要であると、そのための人事システム改革や研究環境整備に努めるといったことが取りまとめられてございますけれども、その観点で、まずはこういった若手研究者を子供のころから、さらに社会で活躍するところまで、いかにつないで活躍していただくのかといったような観点で議論をしていただければと思います。
また、次回に、「社会の多様な場で活躍する科学技術関係人材の養成」ということで、さらにポストドクターを含めた博士課程修了者の社会での活躍促進のための方策や、大学教員の人材養成に係るための意識改革といったテーマにも議論を進めていただければと考えてございます。
そういった観点から、まずは「若手研究者のアカデミアにおける活躍促進のための方策」や「創造的人材を育成するための方策」について掘り下げて議論をいただければと考えます。
それから参考でございますけれども、参考資料2のところに、基礎科学力強化委員会というものについての文部科学大臣決定の紙をつけてございますが、こちらは文部科学大臣のイニシアチブで、基礎科学力強化のための戦略構想というものを検討しているところでございますが、こちらでも科学技術関係の人材についての議論は、当然ながら大所高所に立ってなされるところでございます。本人材委員会につきましては、こういった基礎科学力強化委員会での議論でありますとか、他の府省等でも人材関係の議論が行われますが、こういったものとも連携をしながら、特に第4期の科学技術基本計画を見据えた個別の具体的施策といった観点で審議を進めていきたいと考えてございます。この基礎科学力強化委員会のメンバーの中には、参考資料2の裏側でございますけれども、人材委員会の柘植主査もメンバーということでございまして、本人材委員会とも密接に連携をとりながら、また基礎科学力強化委員会での審議の状況なども適宜、次回以降の人材委員会でもご紹介しながら進めてまいりたいと考えてございます。
いよいよ本題でございますけれども、資料1の審議テーマ1、「若手研究者のアカデミアにおける活躍促進のための方策」をまずご説明をさせていただきたいと思います。
まず、若手研究者の活躍の機会を拡充するための方策といたしまして、これはどういった方策があろうかというところでございます。まず1つ大きな方法論といたしまして、テニュア・トラック制、これは現在トライアルで科学技術振興調整費(振興調整費)によって進めているところでございますけれども、こういったものの普及・定着をさらに図っていく、あるいはこういったものを普及・定着させるためにも、2番目にありますとおり、若手研究者ポストを拡充していく、こういった方策を考えていく必要があるのではないかと考えます。
まず、テニュア・トラック制の普及・定着というところにつきましては、参考資料3にデータがございますのでご参照いただければと思いますが、参考資料3の7ページ、8ページあたりのところを見ていただければと思います。参考資料3の7ページのところ、これは若手研究者の自立的環境整備促進プログラム、これは振興調整費によって進めているテニュア・トラック制のモデル事業でございます。この中で、現在、テニュア・トラックの若手研究者として393人がこの課題の中で活躍をし始めているというところでございます。この若手研究者採用総数として393人、現状でございますけれども、この資料の10ページに図1-9がございますが、実際にテニュアポストとしてどれだけ枠が用意されているのかというところがオレンジの棒グラフのものでございますけれども、これを全部合計いたしますと、現状のところは376人のポストが用意されているという状況になってございます。これは現状の393人に対して376のテニュアポストが用意されているというところでございます。
他方で、我が国におけるポストドクター等の総数としては1万6,000人を超える人数がいると言われていまして、その中でテニュアの枠として400人弱といったような状況、これは3カ年分の合計の人数でございますから、1年当たり120人ずつぐらいのテニュアポストが用意されつつあるという現状で、極めて、ポストドクター等の総数に比べると、テニュアのポストはまだまだ小さいというような状況でございます。
こういった現状を踏まえつつ、資料1に戻らせていただきますが、テニュア・トラック制をどういった形で普及・定着を効率的に支援することができるだろうかといったことを考えていく必要があろうかと思っています。ただ、あくまでも事務局として議論の端緒ということで例示でございますけれども、例えばテニュアポストの確保とか、テニュア・トラック教員の雇用に取り組むようなための、そういった普及・定着をさせていこうという意思のある大学に何らかの形でインセンティブを付与していくということが重要かなと考えております。スタートアップ資金、現状では研究費にわりと限定されているものでございますけれども、そういったものをよりいっそう拡充することや、あるいはテニュアポストにつけないような研究者についても、別の進路を模索するようなためにかかわるセーフティーネット的な予算を措置する、あるいはテニュア・トラック教員になろうというような、特に外国から日本に来るような方について、生活の立ち上げにかかわるような、教員の機関移動とここを表現しておりますけれども、そういった経費などを支援するといったような、テニュア・トラック制が広まりやすいようなインセンティブといったようなことを考えることもできるのではないかと思います。
また、マル2のところにございますように、競争的資金制度とも連携していくということもあり得るのではないかと考えます。具体的には、例えば組織に対しての大型の競争的資金制度、これは例えばグローバルCOEのような事業が現在も組織に対する大型の競争的資金としてございますけれども、こういったものの採択要件の中にテニュア・トラック制の導入みたいなものも盛り込んでいくという、採択要件の中に含めていくといったような方法も普及のための方法としてあり得るのではないかと考えております。
下のところの※印でありますとおり、テニュア・トラック制は日本の中でまだまだ根づいてはおりません。手をつけ始めたところでございますけれども、こういったものの普及・定着に向けて、ある程度、どのくらいの普及を図ればいいのかといった観点での数値目標みたいなものも、時には議論をしていく必要があるではないかと考えます。実際、そういった若手研究者がどれぐらいの可能性を持って、こういったテニュア・トラック制にチャレンジし、テニュアのポストがとれるのかといったところの予測可能性、こういったものを見せるということがキャリアパスの明確化といったようなものにもつながってくるのかなと考えるところでございます。
次のページでございますけれども、こういったテニュア・トラック制を普及するということともリンクしていると思いますけれども、若手研究者ポストをより拡充していくということも当然ながら必要になってこようかと思います。
このためには、マル1のところにございますとおり、大学等における人事制度改革、こういった取り組みが円滑に行われていくということが重要であろうと考えます。ちょうど団塊世代の大学教員の大量退職というような時期に今、差しかかっているわけでございますけれども、これは若手研究者のポストを拡充するためのチャンスというようにとらえることもできるのではないかと考えているところでございまして、例えばでございますけれども、民間企業の状況ということで申しますと、参考資料3の中の17ページ目のところに、大学の教員や、民間の研究者の給与を、若いころの指数を1として指数化してあらわしたグラフを出していますが、こういったところを見ていただきますと分かりますとおり、17ページの右の民間の自然科学系研究者、これは従業員5名以上の小さな企業も含めてでございますけれども、研究者というふうに登録されている方々の給与の状況で見ますと、大体40代の半ば過ぎぐらいのところに大体のピークがある。これは民間の給与は、実は年によってかなり大きく変動している、特にシニアな方ほど変動の幅が大きいということもあって、5年の平均で換算をしているものでございますが、いずれにしろ、ピークがちょうど働き盛りぐらいのころに来ているという状況でございます。左に国公私立の大学教員、これは統計の性質上、教授と准教授又は助教授しか5年分のデータがなかったので、ポストとしては准教授以上の大学教員の平均値でございますけれども、それで見ますと、大学教員の場合はかなり60代に至るまでは、リニアに給与が伸びているといったような状況が読み取れるかと思います。
こういったところで、民間企業のことについて申し上げますと、定期的な審査を行って、業績に見合うような給与の見直し、これは資料1の2ページのところの真ん中ぐらいに書いてあるところでございますけれども、あるいはある一定の年齢から基本給といったものを据え置くでありますとか、あるいは実際、単に据え置いているというだけではなくて、一定の年齢以上になりますと、研究指導でありますとか、研究補助といったような業務への移行といったようなものもあるようでございます。あるいは社会の需要に合わせて大胆に組織の改編というものを行っているといったような人事制度の改革というものが行われているところでございます。このようなところも、今後、大学等における人事制度改革のための取り組みを考える上で参考になるのではないかと考えるところでございます。
また、こうした大学において人事制度改革を促進するために、どういうインセンティブがあり得るだろうかというところでございますけれども、それはマル2のところでございますけれども、例えば若手研究者のポストを増やした場合に、その増加させたポストにつく若手研究者にスタートアップの資金、研究費、これらを支援するでありますとか、あるいは、当然ながら大学等の基盤的な経費、国立大学におきましては運営費交付金等の、こういった基盤的経費というものを確実に措置した上で、競争的資金の拡充を図りつつ、競争的資金から人件費の充当ができるような、そういう研究者の対象といったものを拡大していくといったような方策もあろうかと思います。
これはあくまでも事務局としてのたたき台、議論の端緒としてのものでございますので、先生方からさまざまなご意見をいただければと存じます。
審議テーママル1につきましては、私からの説明は以上でございます。
(柘植主査) 今、事務局から説明がありまして、今日は審議テーマが2つありまして、今、審議テーママル1のほうの若手研究者のアカデミアにおける活躍促進のための方策ということで、後ほど審議テーママル2の創造的人材を育成するための方策について、最終提言において打ち出すべき具体的な方策も審議いたしたいと思います。なお、蛇足でございますけれども、この秋に向けてつくります最終提言におきましては、参考資料1、それから後ほどの、資料1と2ですね、今日の2つの議題に限らず、第4期に作成しました中間まとめにおける主要な諸点を盛り込みたいと考えておりますことをご理解いただきまして、本日は、今の説明がありました審議テーママル1、それから後ほど説明があります審議テーママル2について焦点を当てたいと考えております。
それでは、今、説明のありました審議テーママル1の若手研究者のアカデミアにおける活躍促進のための方策について、事務局が提案している方策、あるいはそれ以外のことも含めて、ぜひ活発な意見を交換していただきたいと思います。どなたからでも結構でございますが、いかがなものでしょうか。小野委員、よろしくお願いします。
(小野委員) ありがとうございます。参考資料3の14ページと15ページをごらんいただきたいのですが、14ページは大学における、国公私全体ですけれども、若手研究者の割合を比較しているのですが、平成10年度と比べて全体の教員数は増えている、この薄いグレー色の14万6,153人が16万7,971人に約2万人増えているのですけれども、若手教員は減っているのです。37歳以下ですけれども。これがドクターコースの学生がなかなかパーマネントなポストにつけないということの原因の1つだと思います。
それから次のページを見ていただきたいのですが、15ページの図2-2の左の図でございますが、大学の教員の年齢構成の割合の図があります。少し見にくいのですが、赤色が平成19年度で最近のものでございます。それから青色が平成13年度と、6年前と比べているのですが、これをご覧いただいてもわかりますように、高齢の60歳から65歳の教員は非常に増えているわけですけれども、30歳から35歳の教員は非常に減っているわけでございます。ここに一番問題があると私は思っておるわけでございまして、大学教員の年齢構成が、いわゆる寸胴しりつぼみ型になっているのです。本当はある程度ピラミッド型で競争の上、准教授になったり、教授になったりして残っていくということが組織全体の活性化につながると思うのでございますけれども、残念ながら、逆に、頭でっかちで寸胴しりすぼみ型、これが若い人に希望を与えていない最大の原因だと思っております。
特に審議テーママル1では、例えば研究費の中から人件費を出すことを考えるということももちろんあり得ると思うのでございますけれども、一方で人文社会系の分野のことも考えますと、なかなか研究費から人件費を出すのは難しいわけでございまして、これはどう考えても将来の日本の学術、科学技術を考えた場合に、若手研究者を意図的に政府が増やしていく政策をとらないと、今のままでは優秀な方がドクターコースに進まない、特にアカデミアを目指す優秀な人がドクターコースに進まない原因になっていると思いますので、これはやはり政策的にでも、若い人をとにかく雇用をすると、しっかりと雇用をすると、そしてその後で、もちろん競争制度を導入することは構わないのですけれども、とりあえず30歳から35歳、あるいは35歳から40歳未満の若い助教の数を増やすということを政策として打ち出していく必要があるのではないかと思います。
(柘植主査) ありがとうございました。今の関連でもなにかございますか。興委員どうぞ。それから森下委員。
(興委員) 今の小野委員のご発言は、大学の現場からいいますと、若手の教員の方々の採用については、採用したいのです。しかし、なぜできないかというと、人件費の縮減ということが大きな制約要件になっており、特に平成22年度、平成23年度までに5ないしプラス1%、6%縮減ということが制約要件でございますので、新しく人材を登用できないのです。そうすると、結局、年齢層は世代が段々上がってくる。ですから今日の話にもございますように、そういう人がリタイアされた後に、かなりドラスチックな新規参入者で若手の登用が期待されると思うのですけれども、当分、平成23年度ぐらいまでは先がなかなか見えないから登用できない。大学の現場ですと、どういうことかというと、リタイアされた後は補充もできないで、非常勤職員で処遇しなければいけないという状況に来ているのです。
ただ、この数字でよくわからないのは、今、小野委員が言われた14ページのところで教員の数が増えているのですけれども、これは常勤の方々だけで本当に増えているのかが私はよく分からなくて。
(小野委員) 本務教員ですから、これは常勤です。
(興委員) 常勤になっていますよね。常勤で本当にこんなに増えているというような実態がなかなか見えないのですけれども、現場は本当に教員を当分補充できない状況です。おっしゃるように、若手をこれから思い切って登用しなければいけない、また、おそらくそういう環境はできつつあるのではないかと期待しております。今のお話についての関連なのでございますが。
ただ1点、菅先生がおっしゃったところで、ご質問と議論が進むとありがたいという話があるので、今日のお話で、実は私も前回の会議の議事録にもテークノートしていただいているのですが、日本の社会は、いわゆる学士であろうが、修士であろうが、別にドクターを取らなくたって企業は優秀な人を欲しいという、それが日本の社会なのです。今日お話がございましたように、マスターの方々は、出ても、結局は研究補助職だと、こうおっしゃいまして、ドクターでないと研究開発職というようなステータスを与えられないとおっしゃったのですが、質問は、大学のコミュニティー、いわゆる高等教育機関のコミュニティーと産業のコミュニティーも同様な、そういうように位置づけられると思ってよろしいと私は思うのですが、そうでしょうかというまずご質問をさせていただいて、日本でなぜドクターに対する期待感がないか、先ほど菅委員が繰り返しおっしゃったのは、要するにインセンティブが何だろうかというところですけれども、日本でドクターを取っても先が見えないということは、雇用される先で、別にドクターである必要は全くないよという環境が現実にあるのではないかと思います。ということは、そこの見通しをそれは大学だけではなくて、民間企業も含めて、そこの道を切り開いていかないと、この隘路というのは断てないのではないかと、そう思っているのです。菅委員のお話に対して、かねてこの場でもかなり議論されていて、そこのところの議論が十分尽くされていないので、今日のお話を聞いてそういう感じを特に強くしました。
(柘植主査) 菅先生、何か今の点でございますか。
(菅委員) アメリカに限って言いますと、企業であろうと、アカデミアであろうと、ドクターを取らないと研究開発職には行けないということになると思います。私はMITでPh.Dを取ったのですけれども、実を言うと私の同級生でアカデミックに行っている方はもうほとんどいません。ほとんど企業に行っています。つまり、MITのようなところというのは、むしろ企業に向かって就職していくという方々が集まるところで、一方、ハーバードに行きますと、全体の30%以上がアカデミックにつくという、大学によって風習が多少違う、キャラクターが違うというようなことはあると思うのですけれども、いずれにせよ、アメリカの場合は、ドクターに入ることによって、自分は研究職、Ph.Dというものを持って職につくのだという意思と意図がものすごくクリアにあります。先日も実は内閣府の会議の際に、たまたま文部科学省の方が私が作成した図をもとにもう1つ日本の図を作成してくださったのですけれども、アメリカの場合はそういうラインがしっかりと書けているのです。日本は修士、学士、すべてがいろいろなところに矢印が行って、ある意味、もうめちゃめちゃです。ですから、要するにそういう状況で、学生たちがクリアに自分が修士に行くことによって自分はどういう道を選ぶのか、それからドクターに行ったときにどういう道を選んでいくのかということがあまり見えない。また、日本の学生はどうしてもドクターに行くとアカデミックに行くというような考え方がとても強いのですが、実際は、世界で見るとそんなことはなくて、企業に行くがはるかに多いという点も1つ重要だと思います。それから、基本的にキャリアパスというものがクリアでないとだめということで、大体質問には答えられていると思います。
(柘植主査) ありがとうございます。今、小野委員、興委員のお話から菅委員のご説明から、論点は2つあると思います。1つ目は、この審議テーママル1で、小野委員がおっしゃったように、若手教員の割合が減っている、あるいは大学教員の高齢化が進行していると、これをこういうように変えられない構造的な障害、これをもう少し今日の資料1である程度掘り下げているように見えますが、真の原因まで掘り下げていかないと、なかなか政策的、予算的な打ち手というものが、迫力のある、説得力のある施策までできないと、そういう点を引き続きご審議いただきたいと思います。
2つ目は、博士課程修了者の話については、前回第1回でも議論され、中間まとめにおいても触れられておりますが、私の理解は、明らかに、1つは、米国の産業トップの、あるいは人材育成責任者の士課程修了者に対する、「白紙に絵を描く企画能力」を求めていることに対して、日本の経営者、人材育成トップの認識が世界からおくれていると、私も産業から来た者でございますが、本当にそう思います。でも一方では、日本の大学が、アメリカの大学と比較して、そういう人材を、博士課程修了者の人材を世界レベルにまで上げて出しているかという観点から見ても劣っていると、その両方の原因があるということは中間まとめにおいても書かれておりまして、前回でも確か少し議論があったかと思います。
ぜひとも今の点、1つ目の話はもうちょっと掘り下げたいのですけれども、後の話は、審議テーママル1はアカデミアにおける活躍となっていますので、今回の審議の中で、産業界で活躍し、世界的なレベルで活躍できる博士課程の活躍促進という2つ目の話はいつ出てくるのでしたか。それを聞いてから安心して1つ目の話に戻りたいと思います。
(星野人材政策企画官) 説明が至らなくて申しわけございません。参考資料1にございますように、アカデミア以外のところでの活躍については、次回、6月1日にさせていただければと思います。今日は、まずはアカデミアということでの議論に絞っていただきたく存じます。
(柘植主査) 今の2点目は安心して次回まで置いておくということで、審議テーママル1に戻りますが、今の小野委員、興委員の話に引き続いて、何でも結構です。森下委員、室伏委員、有賀委員、それからフクシマ委員。
(森下委員) それでは、1つの問題というのは、先ほどありました運営費交付金が減っているという問題と、もう1つは、大学院大学に移行するときに、当時、助教のポスト2つをなくして1つ教授をつくるということが各大学で行われたので、かなり教授ポストが増えた分、助教ポストが倍の割合で減ってきているということがベースとしてあると思うのです。実際、我々のところを含めて、おそらく多くのところでは、寄付講座、あるいは任期つきの教員雇用という形で助教の形で若手を登用していると思うのですが、その後の行き先が、5年を過ぎた後というのが実質上はっきりしない。既存のポストが以前に比べてかなり減っていますので、そこのポジション自体が空かない限りは、結局のところ移れない、テニュアのポジションが出てこないという状況になっていまして、しかも講座がかなり細分化されたので、以前のように講座間でやりくりをしていくという方法もかなり難しくなっている、そういう意味では人事制度全体が緩くなった部分と硬直化した部分というものが出て、今、若手が減っているということは硬直化した部分の弊害ではないかと思っています。
その意味では、思い切ってテニュアのポジション自身も、かつて減った分をある程度増やすことと、それから運営費交付金以外の競争的資金の中でも、5年という期限を区切った形にしても、次の何らかの形での延長なりを何か別の方策で担保するなどしない限りは、ポスドクの方からすると、助教になれたとしても、もう3年を過ぎると研究を続けるのか、それとも就職をするのか、あるいは別の道を探すのかを含めて、かなり短期的な視点というものが求められていると、こういう状況の中では、ポスドクになろうということ自体も非常に苦痛を感じますし、そこから先のキャリアパスが形成されないということが、以前と比べると非常に不透明になってきていると思います。
この状況を解決するためには、提案にありましたように、思い切ったコースを新設していって、キャリアパスをつくるという中で若手のテニュアの問題というものも解決する必要があるのではないかと思います。先ほど、もうすぐかなり多くの教授の方がやめられる時代に入ってくるという話がありましたけれども、ただ、その後、その教授ポジションを元のように分割して助教ポストをつくるかというと、現状ではあまりそういう動きはなくて、どちらかというと、人事的な制度そのものが硬直化された状態で次の教授を選んでいるということがほとんどではないかと思いますので、そうした意味でも、もともとの人事制度のところから少し考え直して、テニュアポジションを増加させるということが必要ではないかと思います。
もう1点は、大学の設備そのものが、かなり建物がいっぱいになってきていまして、例えば寄付講座なり、あるいは競争的資金なり、科学技術振興調整費なりでポジションをつくったとしても、資金はスタートアップの資金等が科研費にも用意されていますが、場所がないという問題があって、新設そのものが難しい状況になってきます。そういう意味では、建物の問題は、既存のところが持った場所をなかなか手放さないということがあって、ポジションは出たとしても研究の場所が出てこなかったりしますので、このあたりも、若手に研究するスペースを与えるというところから議論しないといけないのではないかなとも思っています。そういう意味では、お金と場所と、それからポジション、3つとも議論の対象にすべきではないかと思います。
(柘植主査) ありがとうございます。それでは室伏委員、それから有賀委員、次、お願いします。
(室伏委員) 今、森下委員がおっしゃったことと重なる部分も多いのですが、問題は、運営費交付金が減少することで、教員がどんどん削減されてしまうことです。そこで新たな競争的資金のプログラムを動かして、その資金で若い人がたくさん雇用されてくることになります。競争的資金ですから、若い人たちが長期的に働くことができないことが多いので、プログラムの期限が来ると、その若い人たちが職を失うと言う状態になります。その人たちを大学として全部受け入れるだけの体力がないものですから、そこでまた雇用問題が生まれることになると思うのです。ですから、若手の雇用拡大のためには、競争的資金だけを拡充するのではとても無理だと思いますので、まずは大学自体の体力をつけるための運営費交付金が確実に措置されなければいけないと思います。また、アカデミアで活躍する研究者には、すぐれた研究者であるのと同時に、すぐれた教育者であることが要請されます。でも、自分自身の将来が3年、5年で切れてしまうために、必死になって自分の実績だけを挙げようとしている人たちが、すぐれた教育者に育つはずもないと思うのです。もちろん最初の時点で将来性のある人材を雇用するということが大事ですが、その人たちに、かなり長期的な視点で、自分自身が業績を挙げるのと共に、自分よりも若い人たちを指導して、そういう人たちを立派な研究者や教育者に育てていくという、それだけのゆとりのある状況をつくっていくことが必要だと考えます。そうでないと、将来の日本の大学は下降線をたどるばかりだろうと思いますので、ぜひ基盤的なところをもっときちんと見直す必要を、本委員会で提言して行けたら良いのではないかと思っています。
(柘植主査) ありがとうございます。それでは有賀委員、それからフクシマ委員、よろしくお願いします。
(有賀委員) 森下委員と室伏委員の意見と重なるところが多くて、あと小野委員が最初におっしゃったこととも絡まるのですけれども、構造自体が頭でっかちになっている人事構造では、とても若い人たちがそこを目指そうという感じにはなかなかならないと思うのです。昔のPIを増やそうという動き自体はよかったと思うのですけれども、昔でも、リベラルな教授の下のこういうピラミッド構造というものが一番よかったかなと思っています。若い人たちに自由にやらせるような教授のもとで、下が多いという状況が一番よかったのではないか、だからそれをまた築けないかなといつも思っています。競争的資金で、先ほどからスタートアップ資金とか、そういうものがインセンティブとしてとかと言われても、人件費がないと、それだけいただいてもどうしようもないというところがあるので、基盤的な人件費が大学に増やすことができるかということが一番大きいのではないかと思っています。
それから、森下委員がおっしゃったように、重点化のときのあの振りかえが、今思うと本当に重くのしかかっているなと思うのです。変な頭でっかちな構造になったのもそのときですし、大学にいると、学部教育が本当にひどくなっていくということはものすごく感じています。それは、親の立場としても、何か大学院まで行かないと、大学に入ってもどうしようもないといって、こんなに長く何かどんどんかかっていくようになるのということはすごくやるせない感じです。だから、大学は、学部のところにきちんとした教育を施すことができなければ大学ではないと思いますので、大学院の定員に合わせて教員が配置されているとか、大学院における研究が活性化するための教員配置ということはとてもおかしくて、室伏委員がおっしゃったように、教育の場であるということが大学の大きな顔ですから、そこに教育をきちんと安定した状況でできる教員を配置する、それには学生に一番近いところで、特に科学技術分野で実験をするところで現場に一緒にいることのできる助教や准教授あたりが多いという、教授はたまにいるみたいなものがいいかもしれないぐらいに思っています。
任期制のこともすごく問題ですけれども、競争的な環境ということは大事だと思いますが、すべてが競争的資金で成り立っていく、頑張るところにお金が行くということはいいのですが、大学全体が任期つきになっているという状況になっていて、教育プログラムも研究プログラムもすべて任期で動いているという気がするので、少なくとも教育に関しては、もう少し長いビジョンで取り組めるような人員配置、つまり運営費交付金などの拡充が最も大事なのではないかと考えます。
(柘植主査) ありがとうございます。今、有賀委員のおっしゃった話で、中間報告のまとめの中でも議論して、結果的に少しマイルドな表現になったのですけれども、もともとの議論が、しっかりとした教育をするためには、しっかりとした研究をせねばならない、しっかりとした研究をせねばならないということは、社会的な価値、経済的な価値を生み出す研究、必ずしもお金だけの話ではないのですけれども、それを言いかえて、議論の途中ではイノベーションといっていますが、つまり、教育と研究とイノベーションというものが本当にリンクして、それが結果的に生きた教育に生かされていくメカニズムが日本は弱いのではないかという議論が第4期の人材委員会でありまして、中間まとめでは少しマイルドにしまして、教育と研究と社会貢献を一体的に進化させると、そういう表現になって、そのあたりが今の教育、要は若手研究者のアカデミアによる活躍という形で研究の場を充実していく、ポストも充実する、お金も、建物もという中で、今の有賀委員のおっしゃった教育と絡んでいくメカニズムについても、私は何か具体的な施策が要るかなと思い、第4期の議論を思い出しておりました。
フクシマ委員、少々お待ちください。有賀委員が、補足があると思います。
(有賀委員) すいません。あと、アメリカのテニュア・トラック制度との違いというところを先ほど冒頭にご説明いただいたのですけれども、資格取得であってポスト獲得ではないということをおっしゃったのですが、本当は日本の中で、ドクターを取ったら、それで資格になるという話だったのが、ドクターを取ってもどうにもならないから、またテニュア制度という新しいものをつくってというように今動いてきているように私には思えていて、それは今のテニュア・トラック制度一般、動き始めたことはとてもいいと思いますけれども、大学でポストが保証されていないと、それはおかしいのではないのかという、テニュア・トラックになっていないのではないかといって、それがお金がおりないとか、だから、おっしゃられたような、まだアメリカまでの道のりはきっと遠いのかもしれないですけれども、うまく資格取得って、この人は研究能力があると認められたら、どこかで活躍できる場があるというように見えてくるということはどうすればいいんだろうというのは、すごく案じています。そうなればいいなと思っています。それはドクターを取るということは、本当はそうだったのではないのと私は思っています。
(柘植主査) フクシマ委員、よろしくお願いします。
(フクシマ委員) 私は、特に科学教育は門外漢ですので、1つ質問をさせていただきたいのと、テニュア・トラックの件についてコメントがあります。まず、先ほどの14ページのデータで「非常に高齢化している」というお話がありましたが、このデータの定義がよく分かりません。そこで、まず1点は、定年の時期について確認をさせて頂きたいと思います。 大学の定年は、おそらく企業とはかなり違って、70歳ぐらいまではよろしいのではないかと思うのですが、この点をご確認頂ければ幸いです。以前70歳ぐらいと聞いたことがあるのですが、知識がなくて恐縮です。 あともう1つは、先ほどデータは常勤の数字とおっしゃいましたが、最近かなり産業界からリタイアをされた方たちが大学で教鞭をとっていると思うのですが、(それは多分、主査もそうでいらっしゃると思うんですが)、その方々が入っていて年齢が上がっているということはないでしょうか。そういう他の業界からの異動というものによって人数が増え、年齢が上がっているということはないのでしょうか。そこについて教えていただければと思います。
(小野委員) これは文部科学省のデータですから、これは本務教員ということなので、兼務ではない、ほかの仕事を持っている人ではなくて、研究が本務である人のデータでございます。したがって、ほぼ常勤職員であろうと思われると思います。
(フクシマ委員) なるほど、その場合はもう企業をリタイアされて、あるいは最近、官庁からリタイアされた方が随分大学にいるということですね。
(小野委員) もちろん、民間や官庁から常勤職員で入っている人はみんなこの中に入っております。
(フクシマ委員) なるほど。最近、それが非常に増えているような気がするのですけれども、ある意味ではいい知識のトランスファーができているということですね。それもデータに入っているとすると……。
(小野委員) 特に私立大学、それから国立大学も民間から教授を迎えることはかなりございます。それも全部入っているのですが、定年は各大学が自主的に今、決めているのですが、国立大学法人は63から65歳に延長する動きが少しございまして、それも若手の採用を阻害する原因にもなっているのです。それから私立大学の場合は定年が70歳など、大学によって違いますので、かなり高齢まで教授が働ける大学はあります。それは、ただ私立大学ごとに違います。
(フクシマ委員) はい。それが多分、若い人たちをどのようにして伸ばしていくかといった課題について検討する際に、先ほどのお給料の問題等に関しても、これを単純に比較することは、国立と私立にそういう制度的な違いがあると、少しミスリーディングだと思ったのですが。
(小野委員) はい、ですから国立大学法人の場合は、運営費交付金が全体で人件費が抑えられていますから、その中で人を増やすことができない、そして、先ほどおっしゃった教授がやめられても、またそのポストを教授で埋められると、若い人が採用できない。したがって、仮に、例えば理工学部で教授が30人いらっしゃると、その中でことし3人やめられるというような場合には、その講座を維持するという趣旨ではなくて、その講座はなくなっても仕方ないから、必ず助教2人を雇うというような方策を学部全体で決めていただければ、若い人の採用につながると思うのです。そういうことを政府がプッシュしないといけないと思います。これが既得権のようになって、この講座は新しくできた講座だけれども、絶対死守するというので、そこの教授がやめられてせっかくのチャンスを、またその助教を埋められると、必要でない学問分野はないのですけれども、より必要性の高い学問分野を増やすということをある程度政策的にやらないといけないと思います。
(フクシマ委員) 難しいということですね。
(小野委員) その辺は人材委員会等で強く意見を出していくことが必要ではないかと思います。
(フクシマ委員) ありがとうございます。
(柘植主査) 今のフクシマ委員のご質問で、少し私もよく理解できなかったことがあります。14ページの本務教員の総数が増えている中で、産業界からの、特に競争的な資金をとるときに、特任教授のような形で専任される産業界からの人材、これはそれなりにフクシマ委員もおっしゃったように意味があるのですが、それがこの本務教員にカウントされていると、その中の陰には競争的資金が、産業界からの高齢者を増やしているけれども、若手を生かすほうの割合が効いていないのではないかという質問にとったのですけれども、どうですか、事務局、今のところは、この本務教員というものは100%専任していて、かつ、特任教授も、つまり競争的資金で雇用される産業界からの特任教授もカウントされている数字と理解していいのでしょうか。
(星野人材政策企画官) はい、そのとおりでございます。本務ということは常勤的に勤務しているという意味でございまして、特任教授等を含んでございます。
(柘植主査) そうすると、今のような構造があると、競争的資金の獲得力を強くするということで、産業界のOBの実戦力を持った者を巻き込んで、それはそれなりに効果があるけれども、この数字上、そこが入っていて、結果的に若い人たちの競争的資金という割合が減ってきているという構造があるのではないかということですが。
(フクシマ委員) おそらくそれはこれからもっと増えていく、産学協同等々が進めば増えると思いますので、そのあたり、どこに資金を回すかということで、先ほどかなりご苦労されているというお話がありましたので、何らかの形の提言があってもいいかなという気はします。
(柘植主査) 今の関連ですか。では、平野主査代理。
(平野主査代理) 今、ちょうど議論されているところで、私も質問といいますか、確認をしなければいけないと思っているのは、14ページの図についてであります。確かにこれは、以前、私が大学の教員数は減っているはずだと、これは国立大学を見ていたものですから、そのように考えていました。私はつい31日まで名古屋大学にいましたので、明らかに運営費交付金を含めて教員数が増えるような段階ではない、少なくとも承継職員については増えることはあり得ないということ、あるとしたら、特任等の職員、教員が増えていることは事実だと思うのです。ここの図でぐっと人数が増えるのは、これは分析をいただきたいのですが、私立短期大学が4年制になっているので、その方々が本務教員として当然カウントされますから、その分が重なっていると思います。それも非常に重要でありますが、設置審で見てみますと、かなり年上の方が国立大学を退職して私立大学に行かれているのです。これが年齢の上昇に関係しているのではないでしょうか。
(小野委員) おそらく私立大学は設置認可で増えていることもあると思います。
(平野主査代理) その部分がここに入って、残念ながら若手の人の割合は、数字上は減ってきていると思います。しかし、2つのピークがあると思うのです。これも分析が必要だと思うのですが、特任の助教、これは助教が入っていないのですが、准教授などが増えているのです。これは競争的資金で増えております。ということは、言ってみれば、任期が決まった、3年なり5年なりの方が非常に多くなっていると思います。これはポスドクを何とかしようということでテニュア・トラック制度を設けられて、何とか夢を与えようと努力されていますが、またここで、下手をすると、もう一段、1つ次のステップをつくっただけで終わるかもしれないということで、先ほど来お話が出ておりますように、本務教員として教育をしっかりとするような教員の数が減ってきているのをどうやって改善するか考えねばなりません。例えば基盤的な運営費交付金等を要求するのは非常に難しい環境ですが、そこを改善しませんと、本当の意味の若い人は増えづらいと懸念します。ここが根幹ではないかなと思うのです。非常につらいところであります。
(柘植主査) 14ページの図2-1をもう少し分析する必要があるというご指摘ですが、それで、今の件で興委員ですね。それからまたフクシマ委員に戻りますので。
(興委員) 平野委員がおっしゃったところで、やっぱりこの14ページは実数の例えば16万7,971というのは、実態を全部データを出していただいて解析をしたほうがいいと思います。
(小野委員) 国公私立大学で比較すれば、かなり違いがあります。
(興委員) そうですよね。それで、その1つ1つのデータの意味を共有した上で議論したほうがいいと思います。
それと今おっしゃったところで、特に国立大学ですけれども、運営費交付金の人件費を縮減する方向ですと、絶対数として増えないのです。それで、今、最初に冒頭、小野委員がおっしゃった教育の問題だということになると、教育カリキュラムを抜本的に本来見直しをしなくてはいけないけれども、場合によってはそこのところはほとんどしないで、既存の先生方だけで教育プログラムを提供しようとすると、本当に教育の荒廃を招く可能性がある。だから、人件費がこれだけ縮減されるんだったら、大学としてどういう教育プログラムを提供すべきなのかというような議論を本当はしなくてはいけない。そういう意味で、実は冒頭、菅委員のほうで新しい制度をいろいろと教育というか、そういうものを導入されたようにお話がございましたので、そのあたりもあわせて、人件費改革と教育プログラムをどう提供するかということは、単なる研究のみならず、教育プログラムの提供という観点からも同時に議論をしていく必要があるのではないかと思っています。
(柘植主査) ありがとうございます。フクシマ委員の2点目のポイントに入る前に、今のポイントで答えはなくてもいいのですけれども、少し分析の方針だけでも。
(川端基盤政策課長) ご参考ですが、お手元のドッチファイルの8という耳がついているところですが、ここにデータ集がありまして、その8というものの中の27ページです。26ページ目が、今、お手元にお配りしているもので、27ページが国公私立大学別の内訳の表になっております。27ページをごらんいただきますと、今、ご議論にありましたように、私立大学において相当程度本務教員が増えているということがわかります。一方で、この統計は本務教員かどうかということでしか判断されておらず、その教員が特任かどうかとか、継承職員かどうかとか、私立大学においてはどういう契約形態かということまでは見られません。そういう意味では、今のご議論のうち、やや分析ができないところがあるということであります。
(柘植主査) ぜひそこを少し、特に国立大学について本務教員が特任教授か、特にそれが、もちろんプラスの意味があると思うのですけれども、競争的資金で雇用される産業側のベテラン、それのほうも分析すると、今の若手の話に対してももう少し迫力のある、説得力のある今日の提言のベースになるのではないかと思いますので、少し分析をしていただきたいなと思います。
フクシマ委員の2点目をお願いいたします。
(フクシマ委員) テニュア・トラックに関してですが、2点お話をさせていただきたいと思います。最初に、私自身の視点ですが、もともとは日本語を一生教えようと思いまして、ICUの大学院に行って、その後、ハーバード大学の教育学部で修士を取って、ハーバード大学で日本語を6年間教えていました。それからビジネスの世界に移り、スタンフォード大学のMBAを取りビジネス界でキャリアを積んできました。したがって、先ほどのケースとは逆に、私の場合は、アカデミックスからビジネスに行ったという視点からの発言と理解をしていただけると助かります。
まず1点目としては、そういう経緯を通った人間として見ますと、先ほど菅委員からもお話があったのですが、アメリカのテニュア・システムの厳しさを指摘したいと思います。アメリカのテニュア制度は教員の方たちにとって大変厳しいシステムだと思います。特にビジネススクールの場合には、必ず学生の評価というものがテニュアの合否に反映されますので、先生方は教えることもしっかりとしなければいけない。しかし、同時に研究もしっかりと成果を出していないといけないという厳しい立場です。特にスタンフォードの場合には研究と学生からの評価が5割5割で判断されますので、非常に厳しい要件だと言えると思います。教授の方も必死で勉強して、必死で教えるという雰囲気がありました。学生も大変意識が高い。「これだけ払って来ているのだから、その分は当然学ぶべきだ。しっかり教えてもらわないと困る。」という意識がありました。領域によっては、実務の経験上、学生のほうがよく知っているような領域もありますので、先生方は大変で、時々ハーバードのビジネススクールは自殺をする先生も出るというような状況で、かなり厳しいと思うのです。
ですから、今、お話を伺っていると、日本の教育界の中でも、本当にいろいろな制限がおありになって、大変な状況でいらっしゃるなということはよく理解できたのですが、そういった意味での、品質に対する要求の厳しさというものが今の日本の教育の中にどのくらいあるのかなということは、私は門外漢なものですので、少し見えないというところがあります。そのあたりについて教えていただければと思います。
これは評価制度の徹底ということにつながっていると思います。学生による評価というものを私もさんざん受けて大変参考になる評価がありました。これは、なぜ参考になったかというと、2点目のポイントですが、学生のほうも意識が高いという、この前提条件があったからだと思います。日本の場合、現状では、評価制度を入れても、結局、学生の不満窓口のような評価になってしまい、結果的に学生を楽しませるエンターテイニングな授業でないと先生が評価されないというようなことになる危険があるようです。 学生が学ぶという意識の少なさにかなり問題があるのではないかと思います。私がお話ししているのは、どちらかというと人文科学系の傾向だと思うのですが、これが科学的な研究で、かなり専門性の高い領域であれば、問題が少ないのかも知れません。科学の領域では、更に学生の質が大きく問われると思いますが、質の評価は選抜をして入れる際に、どの程度厳しくされているのか、そのあたりも大変興味があります。
もちろん、質が問われるのは学生だけでなく、大学も明らかに質を問われる時代となっています。私は実は1978年に、以前、『孤独な群衆』という本を出されたデイヴィッド・リースマン先生の著書『オン・ハイアー・エデュケーション(高等教育論)』という、高等教育に関する本の翻訳をお手伝いしたことがあるのですが、その中で先生がおっしゃっていたのは、学生が消費者化して「大学が認定を受けるだけの質のある大学か」ということを非常に厳しく見ているということでした。アメリカの場合は、それによって自然に学生が消費者化して、学校に対して評価を下し、当然、人気のないところは需要と供給の関係でぶれ、淘汰され、良い大学だけが残るであろうというロジックでした。それと同じで、日本の大学も、これは私学がたくさん設立されていますが、そこがどこまで本当の意味で高い教育のレベルを提供しているのかというあたりも、私自身、中に入っていないものですから、大変関心があるところです。そうして点から、もう少し今回の場合に質というところの問題にも触れた方が良いのではないかと思います。例えば今、お金が出ない、若い人たちが行かないという議論の際に、本当に行くべき人たちが行っているのか、本当にそこまで厳しく選んでいるのか、なおかつ育成をするときに、先生のサイドも、研究も教育も両方しっかりするような評価制度が整っているのかどうか、そのあたりは大変関心があるところです。
(柘植主査) 非常に重要なポイントで、この提言に向けて行政側に対する要求と同時に、アカデミアみずからに対する提言の中に今のご発言の趣旨は生かしていきたいなと私も思っております。
1番目の議題で予定した時間が過ぎかかっておりますが、そうしたら有賀委員と、それから菅委員、お二人で打ち切らせていただきます。2番目の議論で、また時間ができたら1も含めたいと思いますが、お二人でとりあえず1番目の議題を打ち切らせていただきます。
(有賀委員) すいません、ありがとうございます。今のフクシマ委員のご発言はすごく大事なことで、先ほどの大学院重点化のことと絡んでいるところですけれども、結局、大学院に人を行かせない、先ほどのドクターまでぜひ行ってほしいという人を行かせるということとは全然違うのです。大学院に行く方がいないと、また先生の数を減らされるから、とにかくお願いして入っていただいて、またそこでしっかりと学位をつけて出さないと、評価でバッテンがつくとまた減らされるということで、とにかくお願いして入っていただいて、頼むから勉強してくれといって、これでもいいからといっておいでいただくというようなことが、恥ずかしいけれども、大学の中では今、結構行われていると思います。ドクターまで行かないのをマスターで水増しして、だからとにかくマスターでしようがない、入ってよといってお願いして、入っていただきではないけれども、それで学位をつけてお出しするというようなことがあって、だから、とてもそこは不毛な感じがするわけです。その次のテーママル2にもこれはかかわってくることで、出る杭をいかに育てるかということは、出ていないのに一生懸命引っ張り上げて、引っ張り上げることも大事ですけれども、何かびゅーんと伸ばしてぷちんという感じがするのです。
しかし、大学自体がそこにお金の出どころを頼っているということが問題なわけで、大学入試は、入試制度の問題ももちろんありますけれども、入るところは厳しいけれども、出るところが緩やかだということは日本の教育の一番いけないところだと思うのですけれども、だから東京大学や、北海道大学に入ったということが大事なのではなくて、「出たの?すごいね」と言われるような大学にならなければいけないよくみんなでは言うけれども、実はそうはなっていなくて、そこで学位を取ったなら、それは、それこそ先ほどのテニュアと同じように、ここで学位を取ったのなら間違いないといって企業も採る、あるいはアカデミアも採るというふうに持っていかなければいけないので、あるところの選抜というのが、大学院に入るところというのは、本当は選抜がきちんとされていて、選ばれた人にはしっかりと経済的な保証もされて、伸ばしていけるというようになっていくことが理想だと思います。そのところに教員の数がどうこうとか何とかといってかかわってくるとよくないので、学部のいっぱい、キャンディデートを一番最初に発掘するところ、そこに教員の数が設定されるべきだと、選ばれた人のところで設定されるのではないという状況に持っていくことが大事ではないかと思っています。
(柘植主査) ありがとうございます。最後に菅委員、よろしくお願いします。
(菅委員) 若干議論が拡散したようなので、本来の議論のところにコメントしたいのですが、まずテニュア制度のとても重要なポイントは、テニュアというのは任期制とは違うのだということをしっかりと打ち出さないといけない。任期制度は切ることを前提にして話をつけているのです。テニュア制度というものは、いい人材を残すためにテニュア制度があるのです。ですので、テニュア制度に乗っかる人たちというのは、自分は残る権利を持っているということを本人も確信しないといけないでしょうし、だからこそモチベーションがわくわけで、大学も残すつもりでテニュア制度を運営しないといけないということがとても重要です。
それゆえにテニュアのトラックにいる人というのは、やっぱり冠をつけなくてはいけない。要するにテニュア・トラックを普通の教員と同じように取り扱ったのではだめで、テニュア・トラックはテニュア・トラック教員であるという冠をしっかりとつけてあげる、要するに名刺などでもテニュア・トラック教員と書ける、書いて、それをみんなが社会や、アカデミックのコミュニティーで、テニュア・トラック教員なのだというような認識を持ってもらわないといけないというところが、とてもテニュア・トラック制度を運営していく上でとても重要なポイントだと思います。
アメリカでもテニュア・トラックとノンテニュア・トラックとあります。テニュア・トラックというのは教育が入っています。したがって、今、私がいろいろなテニュア・トラック制度のところのシンポジウムなんかに行って思うのは、助教の方がテニュア・トラックに入っていると、これは私自身はおかしいと思っているのです。なぜかというと、助教というのは教育を基本的にすることの任務を大きくはしょっていないのです。アメリカでもノンテニュア・トラックというのは、それは教育ではなくて研究に特化した人たちです。したがって、テニュア・トラックという以上は、やはり准教授の肩書きを持ち、教育にもコントリビューションし、自分の研究を1人で運営するということで評価をしていかなくてはいけないと思います。
そして、評価ですが、手元の資料の5ページを見ますと、今、幾つかテニュア・トラック制度を動かしているところがあります。テニュア・トラック制度というものは、1つの大学では動きません。必ず複数の大学でテニュア・トラックが動いていないと人材が流動しないので、アメリカでもテニュア・トラック制度が動くのは、ある1つの大学でのテニュア制度がほかの大学のテニュア制度とで移動が可能であるというところがとても重要なのです。したがって、必ず大学間でのテニュア制度の、競争ではないのですが、相互の評価、切磋琢磨する環境をテニュア制度の中で組み込んでいかないと、テニュア制度が一大学の内部だけで終わってしまって、絶対に定着もしないし、普及もしないということになると思うのです。よって、ぜひ評価のときには必ず大学間でやってほしいと思います。
最後に、アメリカで私は、先ほど言いましたけれども、MITの同級生はほとんどアカデミックに行っていないのですが、なぜかというと、彼らが言う理由は、そんなたくさんいろいろなことをおれにはできないと、アカデミックというものは、基本的に、私も研究も教育もせずにこんなところにいるということはとても後ろめたいことではあるのですけれども、結局、アカデミックというのはオールマイティーです。研究費も申請しないといけない、論文も執筆しないといけない、それからそのほかの大学の業務もしないといけない、もちろん授業もあるし、それでもってその中で研究していかないといけない、オールマイティーです。そんなにたくさんのことはおれにはできないという方々は、やはり研究で、目的意識をしっかり持って研究をしたいという人はむしろ企業に行くべきだという意識がアメリカの学生たちにはあって、自分はこんないろいろなことはできないから、企業に行って研究をし、それからステップアップしていけばマネジャーになっていくというようなキャリアパスを持っているということだと思います。ですから、アメリカと比べて日本の学生たちにそういう、例えば今、ポスドクをやっている人たちも、いまだに本当はそういうオールマイティーな能力がないのに、アカデミックに行きたいと思っている方が結構多いです。それをどうやって我々が分からせるかということがとても重要な教育のポイントですので、そこら辺も今後、次のテーマになると思うのですが、人材育成のときには盛り込んでいかないといけないと考えます。
(柘植主査) ありがとうございます。
時間の関係で、テーママル1については打ち切らざるを得ないのですが、ぜひ事務局、今日の議論を少し以下の点で仕分けしてほしいと思います。1つの視点は、アカデミアにおける活躍促進のための方策ということからいきますと、特に資料1の例として書いていますのは、逆にアカデミア側から、行政なり、産業に対する要求というか、要望というか、こういう打ち手、これは多分、予算的な話の裏づけになってくると思います。
そういうものと、一方では今日の議論は、アカデミア自らが変わっていく、変革する、そういうものもやろうとすると、場所や人、お金も必要になってくるかもしれませんが、そういう2つの視点、視座が今日議論されたと思います。
もう1つの視点は、前回の資料1でも一部書いてございますけれども、中間まとめの中でもこのあたりは議論をされたと思います。しかし、中間まとめをさらに今日の議論で生かして、つまり先鋭化していく、あるいは中間まとめになかった視点も今日の議論の中にあったと私は思います。その2つの視点で、ぜひ少し今日の有効なご発言を整理して、最終まとめに少し苦吟をしていきたいと感じております。
それでは時間の関係で、審議テーママル2に移ります。事務局から資料の説明をお願いします。
(星野人材政策企画官) ありがとうございました。今、審議テーママル1でドクターコースからアカデミアというようなキャリアパスに関しての議論を中心にしていただきましたけれども、次の審議テーママル2につきましては、これは関連する資料は資料2と参考資料の4でございますけれども、そもそも大学院までどういった形で子供の段階から一貫してつないでいくのかといったような観点でのご議論をしていただければと存じます。創造的人材を育成するための方策というようなテーマでまとめさせていただきましたが、大きくポイントとしては3つあるのではないかと考えてございます。
まず1つ目ですけれども、理科や算数・数学、こういったものにすぐれた資質、才能を有する児童生徒、これは小学生からというようなイメージですが、に対しての教育を充実させていく、それから2点目といたしまして、同じですけれども、初等中等教育の段階から、研究者、技術者の養成まで、これは大学院までの一貫した教育の充実、それからこういったものを支えていくために、3点目ですけれども、企業といったところ、あるいはNPOとか、あるいはボランタリーな活動、こういったところと学校や教育委員会との連携を進めていくといったようなこともあるのではないかと考えております。
その中で、まず1点目ですけれども、理科や算数・数学にすぐれた資質や才能を有する児童生徒に対しての教育の充実という観点では、大きく2つ見方があるのではないかと思います。
1というところにございますけれども、まずそういった資質や才能を有する児童生徒、これをいかにして見出して、これは出る杭、これを見つけ出す、こういったような方策を考えていく必要があるのではないか、これは例示として出ておりますけれども、既に学校での理科クラブへの活動の支援でありますとか、それから地域の科学コミュニケーションの活動の振興、それから国際科学オリンピック等の国内大会というものが行われていますけれども、こういった場を活用して、才能を有する児童生徒といったような者を見出していくことができるのではないかと考えます。
参考資料4の4ページのところを見ていただくと、実際、国際的に活躍する研究者が子供時代に影響を受けたものとして、これは科学技術政策研究所で調査研究をしていただいたものの中にあるわけですけれども、好奇心を引き出して興味を伸ばすような教育、これは課外活動などを通じて、かなり専門的な深い内容を第一線の研究者からじかに教わるような、そういった機会があって影響を受けたといったようなケースが非常に多いというようなこともございます。ですから、こういったような場を活用して、出る杭を見つけ出す。
また、資料2に戻りますけれども、資料2の2にございますように、理科や算数・数学にすぐれた資質や才能を有する児童生徒が、せっかく見出された出る杭ですから、それをうんと伸ばしていくような、そういう方策といったものも考えていく必要があるのではないかと思います。これも既に取り組まれているようなことの例示ではありますけれども、学会、研究所、大学、こういったところの研究者や教職員のネットワーク、こういったものを上手に活用していく、また、そういったネットワークづくりを支援していく、こういった第一線の研究者が児童生徒と触れ合うような機会を増やしていくといったことでございます。あるいは、スーパーサイエンスハイスクールなどの取り組み、こういったもので生まれてきました教材、指導方法、こういったものをさらにブラッシュアップして普及させていくといったようなこともあるのではないかなと思います。
続きまして次のページでございますけれども、初等中等教育から研究者・技術者の養成まで一貫した教育の充実といったような観点では、まずマル1のところにございますように、初等中等教育段階で、科学者や技術者に至るキャリア教育を充実させていくロールモデルみたいなものを明確に意識をさせていくといったような方策が重要ではなかろうかとも考えます。
これは参考資料4でいいますと、13ページのところに図2-4というグラフがございますけれども、これは理工系の専攻の大学生に、理工系を選んだという進路選択に影響を与えた要因としてどういうものがあるのかということを、これはスーパーサイエンスハイスクールでの意識調査という三菱総研への委託調査の結果で出ているものでございますけれども、これによりますと、これはもう高校生の段階で、大学や研究機関の専門家による特別講義や実験・実習、こういったものに非常に影響が大きかったと、これは赤枠で囲んでおりますけれども、それから、実際にそういった現場、大学とか研究所、こういったところでの見学でありますとか、こういった場での学習の機会への参加といったような、まさに第一線の研究の現場とのかかわりというものが非常に重要であるというところが見てとれるところでございます。
こういったところから、例示のところにありますように、大学院生でありますとか若手の研究者、これは中高生に非常に近いような、コミュニケーションをとりやすい年齢をイメージしてですけれども、こういったところの方々が、職業観でありますとか、科学技術と生活、それから社会といったもののつながりといったものを伝えていくような教育を充実させるでありますとか、あるいは教育委員会と企業との連携で、企業の研究の現場、あるいは物づくりの現場といったようなところの見学とか、出前型の授業といったものを一層盛んにしていくというようなこともあるのではないかなと、これは既に行われているところでありますけれども、こういった取り組みをさらに拡大をしていくということが必要ではないかと思います。
また、高校から大学への接続、こういったものをよりスムーズなものにしていくというような方策も考えられるのではないかと考えます。これは2のところにございますとおり、例示としてですけれども、高校生が大学の単位を先取りで取れるような、そういった取り組み、これも一部の私立の学校などではやっているようですけれども、こういったものを更に推進していくなど、あるいは国際科学オリンピック等の科学コンテストの成果みたいなものが大学入試の判定材料の中に含まれてくるといったようなことも考えられるのではないかと思います。これ以外にもいろいろなアイデアがあろうかと思いますけれども、そういった高校と大学との接続をよりスムーズにしていくような方策もあるのではないかと思います。
また、先ほど企業との連携での工場、研究所等の見学、それから出前型の授業といったような話をしましたけれども、3番目のポイントといたしましては、そういった企業でありますとかNPO、こういったようなところが学校教育活動にかかわるような活動、これをさらに振興していくような方策、これも検討していく必要があるのではないかと思っております。例示といたしまして、こういった学校教育活動に成果を上げていただいている企業等の検証をするとか、あるいはこういった企業と学校との連携を効果的に進めるためのコーディネーターの配置をしていくといったような取り組みも考えられるのではないかと思います。
いずれにしましても、児童生徒から研究者・技術者まで一貫した教育、出る杭を見出して、それを引き上げて、そして研究者・技術者への道筋をつけていくといったような観点についてご議論をいただければと存じます。
(柘植主査) ありがとうございます。11時55分まで、約25分残っておりますが、ぜひ、今、事務局が提起しました方策、あるいはそれ以外のことを含めて、ご意見をいただきたいと思います。有信委員、よろしくお願いします。
(有信委員) 今、非常に広範な範囲での説明をしていただいたのですけれども、注意しなければいけないのは、イノベーションを先導するような人材をどう育成していくかということだと思うのです。柘植主査はイノベーションを極めて広い範囲で先ほど説明をされましたけれども、中でも重要なのは、やはり技術革新に先導されるイノベーションに私たちは期待をしているという点でありまして、ここで一般的にすぐ理科教育、あるいは数学教育と、理科と技術というものが一緒にされてしまうのですけれども、全然違う話だと思うのです。例えば、よく言う話ですけれども、サイエンティフィックな発見がダイレクトにイノベーションに結びついた例はない。これをイノベーションに結びつけるにはさまざまな技術が必要なのです。しかし、技術をやるためにはサイエンスの素養が必要だし、その中ですぐれた資質を育てるためには、中間報告にまとめられていますように、イノベーターとしての資質を育成しなければいけない。この辺の議論をできるだけクリアに仕分けをしてやらなければいけない。ですから、初等中等教育のときに必要なのは、一番ベースとしては、将来の技術にとって不可欠である理数教育をきちんと身につけさせる、しかし、あるところから先の方向性の選択についていうと、やはり技術がイノベーションに結びつくという意味で、今、ほとんど中学・高校で技術の話がされていないことが問題。ここの部分で技術というものをしっかりと教えなければいけないということだと思うのです。
ですからこの辺のところをしっかりと仕分けをしながら人材を育てていかないといけない。今の大学の志望で見ると、理科系と文化系の志望の比率は基本的には昔から変わっていない。だけど、工学部の志望は急速に落ちているのです。極端な勢いで工学部の志望率は落ちている。ここの原因が何であるかということをよく考えなければいけなくて、工学部の志望率がこれほど急激に落ちているということは、イノベーションに技術が不可欠であるということを考えると、極めて重大な問題だということであります。現実には各学会はかなりいろいろなことに気がついていて、既にさまざまな動きをしています。ですが、その動きそのものが全体としてハーモナイズしているとは言えないということで、限られた範囲の学会では、取りまとめ役である日本工学会に取りまとめをお願いして、具体的な動きをやろうとしています。一番最後のところに学会と書いてありますけれども、ぜひそういうところもうまく使うような形で、行政もバックアップしながら、工学ということに対する小さいときからの興味をいかに涵養していくかということについての施策もあわせてとる必要があると思います。
(柘植主査) ありがとうございます。この分野に特にご関心のあります大島委員、ご発言いただけますか。
(大島委員) 有信委員からもご指摘がありましたが、テーママル2が創造的人材ということなので、3つ素養が必要だと思います。まず、「読み・書き・そろばん」となる基礎が必要だということと、創造的人材に値する人には、それを総合的に見て、それらを組み合わすことのできる能力が必要だということと、それをきちんと相手に伝え、コミュニケーションできるということです。そしてそれらをまた「読み・書き・そろばん」という基礎にフィードバックするというループがうまく自分でつくり上げるようなことができる人が、創造性を養うことができるのではないかと思っています。
そのような人材をどのように見つけて、育てるかということですが、まず、見つけるとことに関しては、私は出張授業など、いろいろアウトリーチ活動の経験を通して、一番のキーは、中学校、高校生と子どもたちと一番接している教師ではないかと思います。教師が積極的で熱心であれば、学生もそれに感化されて非常に熱心になるという傾向が見られます。子供が自ら自発的にいろいろ参加するということは、よっぽど好きでない限りはないという傾向が見られます。このことは資料の2番目にも書いてありますように、周囲の大人からの知的な刺激を受けたということ、特に教師からの影響ということはやはり大きいという裏付けだと思います。今、教育現場、現場の先生は非常に忙しく、忙しいという事情は分かりますが、子供をよく見て、そのような資質を持っている学生を見出すということを、教師側から取り組むということが大事なのではないかと思います。
そのようにして見出された学生を受け入れる皿としては、例えば大学、企業という、この3番目の視点である連携ということが大事になるかと思います。そういう意味でいうと、中学校、高校の現況のフォーマルエデュケーションとインフォーマルエデュケーションという形で、例えば大学、企業、科学館などがうまく連携しながら、そういう素質を持っている子を育てていくということが必要なのではないかと思っています。
(柘植主査) ありがとうございます。先ほどご発言がない方を特に、小林委員、井上委員、それから室伏委員、よろしくお願いします。
(小林委員) 今までこういった議論をしてきた中で、初中から技術者養成・研究者養成まで一貫したという話だったのですが、最近気づいたのは、実は大学入学後、二、三年の間の部分の対策が全く抜けているということに気がついたのです。というのは、いろいろ聞いてみますと、最近本当に出前授業とか、スーパーサイエンスハイスクールとか、さまざまな施策の中で非常に関心を持つ高校の生徒さんも増えてきている。そういう人たちが、まさに先ほどの資料にあったように、理工系を志願して大学に入ってくれるわけです。しかし、いろいろ関係者に聞いてみると、大学入学後に一気に先端的な研究に対する関心から離されて、基礎をやれという話になっちゃうわけです。もちろん基礎は大切なわけですが、そこで突然モチベーションが途切れるような状況が起きているらしいのです。
アメリカでいいますと、この部分というのはアンダーグラデュエートリサーチということで、NSFなんかが資金的にも援助しています。日本とアメリカで大学の制度が若干違うので一概に言えないのですけれども、日本だとアンダーグラデュエートリサーチというものは卒業研究のことを指します。つまり逆に言うと、アメリカの場合にはアンダーグラデュエートリサーチというものは、学部生に対して先端的な研究に触れる機会を与えようという、ある種の理解増進活動の一環、アウトリーチの一貫なのですけれども、日本の場合は、卒業研究までそれがない形になっているのです。つまり、SSHとか、いろいろな形で関心を持っている学生がほうっておかれる状況が、今、出始めていて、せっかく高校まで一生懸命いろいろな施策でやってきたのが、この部分だけ対策が抜けてしまっているのです。ここは考えたほうがいいのかなということに最近気がつきまして、ぜひとも機会があれば考えていただきたいなと思います。
(柘植主査) 少し質問があります。今の高校まで伸びてきた子が、大学1年~3年の中にまた基礎に戻ってしまうという、質問の趣旨は、伸びる子をどんどん伸ばしていく話で今のような話と、もう1つは、中間まとめで創造的人材という中には、必ずしもノーベル賞をとるという創造的な話だけではなくて、社会の価値を生み出していく創造的人材という視点も議論されたのですけれども、後者の視点でも、今の大学の1年~3年の教育に、教育の欠陥という言葉を使うのはあえていけないかもしれませんけれども、改善点があると理解したのですけれども。
(小林委員) はい、そのとおりだと思います。今、一部の大学であるのは、せいぜいロボコンとか、その程度の課外活動的なものに対する支援というものはあるのですけれども、いろいろなものに対するチャレンジとか、モチベーションがあったときに、モチベーションを持続させるようなチャンスがなくなっているという問題なのです。別にこれはすぐれた人をどんどん上に引っ張り上げるというだけではなくて、実は非常に大きい問題で、せっかくモチベーションがあって入ってきた人間が途切れてしまうことになっているところは少し考えたほうがいいのではないかという趣旨です。
(柘植主査) ありがとうございます。大島委員。それから井上委員、室伏委員。
(大島委員) 今のコメントに関してのコメントですけれども、私の所属している東京大学生産技術研究所では、UROP(Undergraduate Research Opportunity Program)というものを全学自由研究ゼミナールの形でやっています。教養の1、2年生を対象に行っていますが、非常にモチベーションの高い学生が来ます。授業の枠内なので、1学期間15週掛ける90分という枠組みがありますが、それにもかかわらず、非常に高いモチベーションを持ってやりますので、それを超えてきちんと研究をして、しかも研究発表を最後に課しているのです。しっかりとパワーポイントをまとめて、学期の最後に発表するということをやっています。なかには大学院の修士の学生の発表よりもよかったりすることがあります。したがって、非常にモチベーションの高い学生に関しては、そういう授業なり、何かの枠組みでリサーチオポチュニティーを若い学部の学生に与えるということは非常にいいことだと思います。ぜひそういう取り組みを推進していくことが大事かと思います。
(柘植主査) ありがとうございます。それでは井上委員、よろしくお願いします。
(井上委員) 私の個人的な経験を通して幾つかお話をさせていただきたいと思うのですが、たまたま私の研究室にSSHの高校から入ってきた学生が2人おりまして、1人は今、4年生ですけれども、修士の新1年生で、今度、アメリカの留学の希望をしているというモチベーションの高い学生で、もう1人は高校生のときに生物オリンピックというもので北京に行った初めての学年だと言っていました。彼に「高校生のときにどういう授業を受けたの」と聞いたら、とにかく土曜日はたとえ自分の興味のないテーマもすべて行くようにと、彼は生物が興味があったのですけれども、化学にも物理にも行って、それはそれなりに彼にとって、その当時は苦痛だったのかもしれません。けれども、今にして思えば非常にいい経験をしたということで、今、彼は4年生ですけれども、非常に研究意欲のあるモチベーションの高い学生であると考えています。
あと、少し話は飛ぶのですけれども、学部の当時、2年生と3年生の後期にたまたま私が分野長(学科長)をしていた時に、対象の学生は数十人と少ないのですが、学生に就職ナビみたいなものの進路適性試験というものが、「無料で受けませんか」と企業から依頼されて、学生にどれくらい希望者がいるかと聞いたら、ほとんどの学生が受けたいと言ったのです。受けさせると、自分の進路適性、農学部ですけれども、農学部であっても就職で文系に行ったり、理系に行ったりできるわけで、ある程度自分のことが分かったということと、一般常識試験というものもあって、自分が何十人中何番かということが分かったということで、それなりに刺激を受けたみたいで、それから何か目の色が変わったようです。もちろん私は成績を把握せずに彼らに全部データを渡したのですけれども、そういう無料の何とかナビとかいうものを使う方法というのもあるのではと考えます。例えば大学に入って1年生のときに一度そういうものを受けさせてみて、あと3年生と、2回ぐらいそういう経験をすると、自分自身を少し客観的に見詰めることができるではないかと、母数が大きいほうが、ある程度自分の位置というものを知ることができますので、そういうことを思いました。
それから、卒論の指導を通して思うのですけれども、卒論をやっと書き上げた段階で日本語がしっかりと書けるようになったなということを、何回も何回も学生たちとやりとりして思います。理系の教育をする上で日本語というものは少しおざなりというのでしょうか、それほど大事ではないと農学部の学生も思っているようなところがあって、卒業する段階でやっと文章が自分自身で書けるようになったという自信がつくということを目の当たりにしていますと、例えば小学校から高等学校までの国語教育というものは理系に進むにしても大事だということを、改めてもう一度考えてもらいたいなと思います。 以上です。
(柘植主査) ありがとうございます。室伏委員、興委員。それから菅委員。
(室伏委員) 幾つか申し上げます。先ほど大島委員のお話にもありましたけれども、学校現場の教員との連携と、教員の資質の向上は、とても重要だと思います。ヨーロッパの大学などで見てきた経験から申し上げますと、理科の教員が、必要に応じていつでも大学に戻って学び直しができるようなシステムを備えているところが大変多いのです。日本でも、休職して大学院に入るといった大仰なことまでは必要ないので、もっと簡単に、教員たちが、ちょっと大学に行って学び直しをしてくるといったことができるような、余裕のある環境を作ることが作ることが必要だろうと思っています。
それからSSH、SPP、地域の活動など、最近、大きな成果を挙げていると思うのですが、こういったプログラムに学校や地域などが取り組んでも、資金が切れたところで継続できなくなるというような状況も散見されますので、指定校や指定地域に採択されているときのようには豊かではなくても、継続した活動が可能になるような仕組みが必要だろうと思っています。継続がうまくいっている学校や地域の試みを共有することも必要です。もちろんそれぞれの自助努力は必要不可欠ですが、継続した活動が可能になるようにしないと、せっかく盛り上がった活動がそこでしぼんでしまうという心配がありますので、今後、考えていくべきことではないかと思います。
小林委員からもお話がありました伸びた子どものモチベーションが切れてしまうといった問題は確かにあると感じていますので、モチベーションを維持するために何か施策が必要だろうと思います。各大学に任せて、それぞれの工夫のもとで行うこともよいのですけれども、人材委員会から何らかの提言をすることも意味のあることだと思います。私たちの大学でも、各研究室が学生あるいは高校生などを研究の場に受け入れて、一緒に何かやってみようねというような試みも行っておりますけれども、そういったことを多くの大学等で推進するような提言があっても良いのではないかと思います。
それから私は、アメリカの大学をモデルにとお考えの方が多くいらっしゃるのが実は気になって居ります。アメリカの大学は確かにすぐれたところがたくさんあるのですが、でも、落ちこぼれる学生などが非常に多くて、いろいろな問題を抱えていることを、アメリカの大学を訪問するたびに聞いております。ヨーロッパ各国の大学教育は、アメリカのように効率的ではないかもしれないのですが、学生たちをきめ細かに教育して、小さな国でもノーベル賞学者を輩出するなど、すぐれた実績を挙げているところがあります。日本ならではの教育、日本独自の研究をつくり上げるためには、アメリカにばかり目を向けずに、もっとヨーロッパや、アジア―アジアでも今とても頑張っているところもありますので―、そういう多様な文化を持つところからよい点を取り入れて、日本の研究・教育を発展させたらどうかという気がいたします。 以上です。
(柘植主査) ありがとうございます。それでは興委員、それから菅委員。
(興委員) 審議テーマの2の創造的人材を育成するための方策とずっと出ているのですが、今日のお話が出たように、特に大島委員からインフォーマルエデュケーションとおっしゃったのですかね。それで、この中の方策の中に入っていないのは、資質を見出そうとする、資質を持っている人を見出して、それを伸ばそうとするようなことは、実はこの中には入っていないので、そういう資質を持っている人に対してどういう教育をやるか、出てきている人に対して教育をやることは入っているのです。いろいろな、日本の社会はどこでもそうですけれども、関心を持っている方々はいらっしゃるのですけれども、それを積極的に発掘して土俵の上に出してやるというプログラム、それが私、少し勘違いかもしれませんけれども、大島委員のほうですと、インフォーマルエデュケーションなのかなと思ったのですが、何かそういう取り組みをこのプログラムの中にもう少し強調して入れて取り扱っていただけないかなという感じがします。
それと、実は資料の2もプログラムとしては非常に多く、十分いろいろと提案されているのです。それで、いろいろな予算も講じられているのですけれども、一度、投資に対して、その後、どういうプログレスが出てきたのかということを、定性的ではなくて、むしろ定量的な形であれ、何かそういう解析の結果を出して、それでインパクトのある取り組みをもっと強調させることが必要ではないかという感じがして、もうそろそろそういう時代に来ているのではないかなと思います。私自身も世界物理年をやって、最初に物理のオリンピックに人を出し、生物のオリンピックにも最初人を出すときにずっと参画してきたのです。また、現場で科学教育や、科学館活動もずっとやってきたのですが、ああいうところに来る方々というものは、少なくとも関心があるから、そういう人をどうやって引き上げるかということが一番手っ取り早いのです。ところが、それに加えて、先ほどもお話がございましたように、個々の現場で教員の方々が直面する子どもたちを見て、幼稚園に入る前の世代が一番輝いている可能性があるのですよね。そういう人をその気にさせる、チャンスを与えることがとても重要なので、いわゆる小学校教育のもっと前の段階からそういう発掘をしようとすることを少し戦略的にやるべきではないかなという感じがいたします。
また、教育の問題では理科教育と技術教育の話をなさったのですけれども、これは、教育の現場では理科教育、技術教育に参画されている、タッチされている先生方の戦いというのでしょうか、プレゼンスというのはそれぞれ違うかと思うのです。そういう意味で、何とかこの2つのチームがいい意味でコラボレーションを図れるような、そういう取り組みが考えられるとありがたいなという感じがしています。
(柘植主査) 大島委員、今の件で何かコメントはございますか。
(大島委員) インフォーマルと申し上げたのは、いわゆる中学校、高等学校の正規課程の授業に対してエキストラカリキュラムというのでしょうか、課外活動的に例えば大学、企業、もしくは科学館とかの正規の授業の枠以外で教育の機会を与えるということをさしています。1点申し上げるのを忘れたのですが、比較的地域に密着しているということが大事だと思います。比較的距離があったりすると、なかなか連携がはかどらないことがありますので、それがいわゆる学校を取り巻く地域として取り組みが行われることがまず必要だということです。
(興委員) 分かりました。
(柘植主査) 時間が限られていますので、最後お二方、菅委員、それから有賀委員。
(菅委員) 私は実は6ページの科学館で学習する機会の頻度を見てショックを受けたのですけれども、ほとんどゼロ回という、何かびっくりしたのですが、これは皆さん、上野の国立科学博物館に最近行かれたことがあるかどうかは私は存じませんが、私はほとんど毎週行っています。それは息子が行きたがるので一緒に行っているのですが、すばらしいです。世界で多分ナンバー1かもしれないくらい、スミソニアンと比べても全然劣らないすばらしいところです。こういうところを、関西のほうにもあるのか、九州のほうにあるのか私は存じませんが、ある程度、今、そういう施設がかなり整っていると思いますので、ぜひ小学生、中学生に行く機会を増やす何か手段を講じるべきだなということは、この実際の数字を見て思いました。
高等学校はそういう理科に特化したようなプログラムが走ったりしていいのですけれども、大学について言いますと、大学院の重点化をしたときに、本来はカリキュラムの重点を変えるべきだったのです。それとあわせて学部もちゃんとカリキュラムを変更して、教育を考えるべきだったのです。大学院を重点化すると、そこに研究の重きがぐっと行くので、先生の時間がとられて、また教育がおろそかになる、学部の教育もおろそかになるというところが多少あったと思いますので、今、改めて考えなくてはいけないのは、学部の教育のカリキュラムももう一度考え直すということと、それとうまく今度は連携して、高等学校、中学校とどう連携をとるかということを政策的に考えていく必要があるのかなという気がしました。
(柘植主査) ありがとうございます。それでは最後に有賀委員、よろしくお願いします。
(有賀委員) 私も理科教育のことでは未来の科学者養成講座とか、それから女子中高生の理系進路選択支援事業のことで、あらゆる所にアウトリーチをやったりしていますけれども、先ほど興委員がおっしゃったように、見出すというところは結構とても難しいところだと思います。大島委員がおっしゃったように、中高の先生のように毎日見ている人というのがすごく大事だと思いますけれども、科学館のこともそうですけれども、東京とか大阪とか、大都市はそういうことがわりとやりやすいし、いろいろなプログラムが用意されているけれども、地方はそういうものがないです。ですから北海道も、私たちは一生懸命やっていますけれども、本当に広く目を向けるということ、それをどうやってスクリーニングしていくかということはぜひ考えていただきたい。
それから2ページ目のところにあるのですけれども、高等学校と大学との接続というところで、別に高校生が大学の単位を前倒しで取る必要は全然私はないと思っていますが、ただ、せっかくやりたいと思っているときに、受験があると、目端のきく子はというか、優秀な子は、そんな何か未来の科学者なんかで時間をとられているよりは、一生懸命勉強をして東大に入ったほうがいいと、こういうふうになるので、どうやって本当に出る杭というのを伸ばしてやるかということはすごく大事で難しいと思っています。中学3年生とか高校1年生ぐらいのところでやって、その後、先ほどの大学に入ってからのことと同じですけれども、受験期にどうやってモチベーションを維持したまま、出てきた興味を維持できるかということで、それは同窓会みたいなことをやってもいいのかもしれないけれども、そこでいかに保っていくかということがとても大事だと思っています。高校生は忙しいので、いいイベントをやっても、来てくださいと言っても、なかなか来ない。せっかく未来館があんなにすばらしくても利用率が低いということと同じで、こちらから積極的に出かけていって、そこで出てくる芽とか、出そうな杭を見つけるということもとても大事だと思うし、そこから出てきた杭をどう育てるかという2つの視点、ですから最初のスクリーニングのところと、それからそれを維持していくかということと2点、違う視点で考えていかなくてはいけないのではないかと思っています。
(柘植主査) ありがとうございます。
残念ながら時間が迫ってまいりましたので、審議テーマ2についてもこのあたりで打ち切らざるを得ないと思います。審議テーマ1のときの総括でも申し上げましたように、今日の議論をぜひとも創造的人材という、この人材像においても、先端科学技術を将来引っ張ってくれる創造的人材と同時に、技術を介して社会的な価値に結びつけていく創造的な人材、広くとらえた上で、今日のいろいろなご発言がありました。中間まとめの中でも触れたもの、それから十分に触れていなかったもの、そういう視点に立って事務方で少し整理していただいて、最終提言に向けての構築を努力していきたいと思っております。
時間が参りましたので、最後の事務連絡に移りたいと思います。星野企画官、よろしくお願いします。
(星野人材政策企画官) 次回の人材委員会につきましてご案内させていただきます。資料の3にありますとおり、次回第50回の人材委員会は、6月1日月曜日14時から、文部科学省の3階1特別会議室で開催する予定でございます。議題など詳細につきましては後日事務局より案内をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
また、本日お配りしている資料につきましては、机上に置いていただければ、後ほど事務局より郵送させていただきます。 以上でございます。
(柘植主査) ありがとうございました。
それでは、委員の皆様方におかれましては活発なご議論を大変ありがとうございました。本日はこれにて終了したいと思います。どうもありがとうございました。
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