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人材委員会(第37回) 議事録

1.日時

平成19年7月26日(水曜日)10時~12時

2.場所

丸の内東京會館エメラルドルーム

3.議題

  1. 科学技術関係人材をめぐる最近の動向について 人材育成に関する提言等について
  2. 科学技術関係人材をめぐる最近の動向について 教育振興基本計画について
  3. 若手研究者の自立的環境整備促進事業の現況について(名古屋大学・九州大学)
  4. その他 ポストドクター等の雇用状況調査(平成18年度調査)について
  5. その他 今後のスケジュール(案)について

4.出席者

委員

柘植主査、鳥居主査代理、伊藤委員、小川委員、興委員、小野委員、小林委員、所委員、鳥井委員、鳥養委員、平野委員、美馬委員、三宅委員、室伏委員、山野井委員

文部科学省

森口科学技術・学術政策局長、吉川科学技術・学術総括官、川上生涯学習政策局政策課長、戸渡科学技術・学術政策局政策課長、山脇基盤政策課長、佐藤総括上席研究官(科学技術政策研究所) 他

オブザーバー

(報告機関)
名古屋大学 近藤高等研究院長、奥村副院長、九州大学 村上理事・副学長、上瀧教授

5.議事録

午前10時 開会

【柘植主査】

  おはようございます。
  ただいまから科学技術・学術審議会の人材委員会(第37回)の会合を開催いたします。お暑いところをご参集いただきましてありがとうございます。本日の会議については、冒頭より公開ということになっております。それでは、議事に入る前に前回開催(3月14日)より異動がございましたので、事務局から紹介をお願いします。

【高比良人材政策企画官】

  それでは、ご紹介させていただきます。
  まず、委員のご逝去についてご報告いたします。去る5月6日に西野文雄委員がご逝去されました。心からご冥福をお祈りいたします。なお、西野委員の後任につきましては、しばらくの間空席とさせていただきます。
  また、事務局基盤政策課の私、高比良でございます。4月1日付で北尾の後任でまいりました。よろしくお願いいたします。

【柘植主査】

  続きまして、本日の委員の出席状況について事務局お願いします。

【高比良人材政策企画官】

  本日は、委員18名中、15名が出席でございます。定足数である過半数の出席をいただいております。以上でございます。

【柘植主査】

  それでは、議題に入る前に、事務局より配付資料等の確認をお願いします。

【高比良人材政策企画官】

  それでは、資料等の確認をさせていただきます。
  (配付資料の確認)
  なお、その他、机上資料として参考資料をファイルに閉じさせていただいております。以上でございます。

【柘植主査】

  ありがとうございます。今日の議題は議事次第に3つ掲げてございます。
  当人材委員会は、次の第4期の科学技術基本計画の策定も視野に、今年の末ぐらいまでは論点の整理を進めていくという位置づけで動いております。そのために今、時間的にはまだまだかかりますけれども、状態を見て、第3期基本計画に基づいて実施している事業の効果の検証をしていくということでございます。
  それと、科学技術関係人材施策の全般の状況についても、これは私どもの科学技術学術審議会のスパンだけではなく、関係する人材施策全般の状況と課題の把握と、両面から行っていく必要があると認識しております。
  前回の委員会開催から大分経っているわけですけれども、前回も人材施策全般につきまして各委員から有益なご意見をいただいたということです。これを踏まえまして、今申し上げた科学技術関係人材施策の全般の現状と課題の把握に反映していきたいと考えているところです。
  そういうことで、本日の委員会では、人材施策の全般の現状と課題の把握の視点から、議題1は報告事項として、科学技術関係人材をめぐる最近の動向について報告していただきます。
  そして議題2におきまして、若手研究者の自立的環境整備促進事業の現況について、事業の効果検証の一環として、今日議題に上げまして議論をしていただきたいと思います。そして時間がとれれば、議題3のその他で、ポストドクター等の雇用状況調査、エビデンスベースでの議論に資するためのものを用意しておりますので、これのカバーと、今後当面1~2年ぐらいのマスタースケジュールをお諮りしたいと思う次第でございます。
  以上が今日の議題の設計思想であります。
  それでは、議題1に入りたいと思います。最近の科学技術関係人材に係る提言など最近の動きを報告しまして、人材施策の現状把握に資するという位置づけでございます。事務局より説明をお願いいたします。

【高比良人材政策企画官】

  それでは、資料1をご覧いただきたいと思います。一応、日付順に整理しております。
  (資料1を説明)
  さまざま人材関係について3月以降いろいろなところで提言がなされているということでございます。今後の審議の参考にしていただきたいと考えております。以上でございます。

【柘植主査】

  ありがとうございます。
  教育再生会議も含めました教育と、それから科学技術という面での総合科学技術会議、あるいは社会経済的価値創造というイノベーション25、あるいは経済財政諮問会議、さらには閣議決定という形で、人材育成に関する提言のかなりきちんとしたものが出つつあると思います。
  一方では、今申し上げた教育と研究と社会経済価値創造すなわちイノベーションという大きな三要素を一体的にとらえていく政策設計という面で、まだ何が必要かとかそういうような観点が、我々科学技術・学術審議会としての人材育成の面で、深化型といいますか、少し掘り下げた見方が必要なんじゃないかなと思って聞いたわけでございます。
  そういう面で、何かご質問なりご意見、今後の論点の見方・進め方について何かご指摘がございましたらぜひご発言いただきたいと思います。いかがでしょうか。
  小川委員どうぞ。

【小川委員】

  以前から気になっていたことで、私は理数教育が専門なのですが、全体としてすごくベースアップを図られてきているんですけれども、一つだけ今後問題になりそうなことは、理系のキャリアの路線に乗せる方法というのが全く手がついていないんですね。小学校、中学校、高等学校で興味を持たせるということはかなり広くやられるようになってきた。高等学校までの教育に関してもかなり手厚いファンドが入ってきている。だけど、興味や関心を持っている子の多くが理系のキャリアに乗らない。だからそこを解決するために、理系の教育に対する投資だけではなくて、キャリアに乗ってもらうという、その決断をしてもらうためにはどのような施策が必要なのかということもぜひお考えいただきたいということだけコメントさせていただきます。

【柘植主査】

  ありがとうございます。大変重要なことですね。
  ほかに何か発言ございますでしょうか。後の方の議題でも十分今の話は振り返れますが、今ぜひという方。どうぞ。

【美馬委員】

  ポスドクや博士課程の学生に経済的な支援をということは分かるんですけれども、その後どうするかという話もこの委員会でずっと議論されてきたことで、例えば企業へポスドクの人たちが入りやすいようにするにはどうしたらいいかという議論もあったと思うんですね。
  今日のお話の中から一つ、もう少し問題点で関連づけられるものがあるんじゃないかというのがこれからお話するご提案です。
  理科教育、科学教育が重要であって、教員の再教育というのがありますけれども、一方で、理科系で博士課程までいったある意味のプロフェッショナルの人たちが余っている。その人たちをどうするか。一方で理科教育を充実させなきゃいけないといったときに、そういった何人かの人はやっぱり教育に興味を持つ人たちがいるであろうと。そういう人たちが実際に一つのキャリアのパスとして学校の中に入っていって、きちんとした教師として生きていくということで、もう少し道を広げられるのではないかというふうに考えます。
  今いろいろご説明いただいた資料の中では、教員を研修すればよいというところがありますけれども、実際には、そういった研究者あるいはポスドクまでいった人たちが教師になるという道もあるのではないか、そこも検討の課題に入れていただければと思います。以上です。

【柘植主査】

  それぞれの論点というかイシューの関連づけで新しい施策ができるんじゃないかと。例えば、ポスドクからの教師への道というような例は非常に大事な観点でございますね。
  はい、どうぞ。

【三宅委員】

  もう少し全般的な話になるかもしれませんが、先ほど小川委員からは全体の底上げがねらわれているのが見えるというご発言があったんですけれども、全体的に使われている言葉を見ますと、最初から意欲のある子、少しできる子、例えばスーパーサイエンスハイスクールで頑張って何かやって、そこで先生たちがいるところ、そういうところから国際競争力がありそうな院生を引っ張ってきて、その人たちがいい研究をしたらそこにお金をつぎ込んでいけばいいじゃないかというような発想のように見える表現がほとんどです。実際に今の日本の理系大学生の国際競争力を本当につけていくためには、かなり抜本的な底上げから理科教育そのものを変えていくというようなことをしないと、ゆとり教育がだめで基礎にすればいいというような話では全然ないところに来ているはずだと思うんですけれども、そこに対する、本当に日本の理科教育をどうするのかというところが、資料の赤字部分にはほとんど見えないというのが大変気になりました。

【柘植主査】

  それは、次の教育振興基本計画についての報告の中でも論じられるべき非常に大事な指摘だと思いますね。どうぞ。

【伊藤委員】

  今のご発言にちょっと啓発されたんですけれども、やはり今まで日本の教育というのは、概してオールに視点を置いた教育だったわけですね。今説明いただきましたけれども、今日本の教育は大きく方向転換している。フォーエクセレンスの教育にだんだん重点を置いてきていると、これは当然のことだと思うんですね。
  ところが、そのつなぎ目、今のご発言のとおりなんですけれども、フォーオールからフォーエクセレンスにどうつないでいくかというところが欠落していると思うんです。それについては、そう簡単にうまい手だてが見つかるわけではないと思いますけれども、これからそこを真剣に議論していかなければ、やはり浮いたものになってしまうという懸念を私も感じております。

【柘植主査】

  多々あると思います。小野委員どうぞ。

【小野委員】

  幾つかあるんですが、最初に、先ほどの大学院の博士課程を出られた方に教員の道を開くということについて、実は今、小・中学校の教員は団塊の世代が退職を迎えて採用が拡大している時期なんです。しかし、理科系の先生というのはなかなかそういう採用試験を受けに来ない面も正直あるんですよね。だから博士課程まで出て、小・中学校や高校で理科を教えるということを、それをメリットだと思うといいますか、何か大学の先生になり損ねてしようがなく小・中学校の先生になるというのではなくて、やっぱり次代を担う子供たちにきちんとした高いレベルの理科教育を教えるんだという意識で、前向きにもっともっとうまくPRして、マッチングしていくことが必要じゃないかと思います。
  私は教育再生会議の委員でもありますが、教育の再生を図ろうということで、本当にレベルの高い教員を採用しようじゃないかということが議論になっています。特別免許状という形で一般の免許を持っていなくても採用できるシステムはあるんですけれども、なかなか現実には機能していない面があります。だから特別免許状で本当にレベルの高い人を、若干給料を高くしてもいいから採用できるような、そういうことを少し積極的に進めていく必要があるのかなというのが一つです。
  それから、もう一つは、理科教育の中身の改革ですけれども、これも私どもは文部科学省に申し上げているんですが、今の学習指導要領による理科教育の中身が、大学・大学院の最先端の世界でどんどん動いて、ものすごく進歩しているものを吸収できているのかと。教育学部系の先生方とか指導主事の先生方がやっている理科や化学の教育は、最先端の研究と少し乖離が生じていることも確かなんですよね。ここは学習指導要領改訂もお願いなきゃいけないし、それから、教科書自体も今のように薄っぺらなものじゃなくて、アメリカなんかは高校でも非常に分厚い教科書を使っていることも事実なので、能力のある子供たちがもっともっと学ぶ意欲を持つような教科書にしていかなきゃいけない。教科書の改革も必要だということもございまして、それも再生会議ではぜひ強く文科省や教育界に提案していこうじゃないかということを言っているわけです。
  そういういろいろな形で、理科系のキャリアが本当に生きるような社会にしなきゃいけない。ポスドクが終わった後、ちゃんとしたパーマネントなポストが比較的少ないとかがあって、やっぱり大学院に行く人たちの意欲をそいでいる面も確かにあるんです。これは大学全体にお願いして、若い人をもっと助教で採用してくださいということもお願いしていかなきゃいけないんです。
  私はいつも申し上げているんですが、大学の教授は60歳過ぎたら給与を8割にしてはどうですかと。60を過ぎればそうお金は要らないわけで、ただ研究室があって研究ができればいいはずなので。定年が65まで大体延びているわけですから、その浮いたお金で若い人を採用するシステムをつくっていかないと。国大協でもそういうことをぜひ考えていただければというふうに思っています。

【柘植主査】

  ありがとうございます。
  今の議論は次の教育振興基本計画についての報告を受けて、時間のある限りしたいと思います。今まさに非常に本質のところに入ってきたと思うので。
  それでは、事務局、教育振興基本計画についての報告をお願いします。

【高比良人材政策企画官】

  前回のこの委員会におきまして、理科教育をどのように振興していくのか、理科系の人材をどのように育成するかについて、教育振興基本計画中にしっかり盛り込むべしというようなご意見があったことから、主査とご相談をさせていただきまして、5月10日開催の中央教育審議会教育振興基本計画特別部会において、人材委員会として柘植主査にご出席いただき、資料2-1の「教育振興基本計画に盛り込むべき「科学技術関係人材の育成・確保」に関する施策について」を発表していただきました。
  これにつきましては、各委員に既にご案内しているとおりでございますけれども、その後、当該部会において取りまとめつつあるものが資料2-2と資料2-3でございます。
  ご説明をさせていただきます。
  まず、資料2-1でございますけれども、これが当日、5月10日に委員の方々に配付をさせていただき、柘植主査から説明をしていただいた資料です。
  (資料2-1を説明)
  そして現在この特別部会で、これまでのさまざまな部会での議論、それからいろいろな方々の意見発表を取りまとめたものが資料2-3「これまでの主な意見(案)」でございます。
  この中で柘植主査から意見発表があったものが網羅されておりまして、資料2-3の6ページからでございます。ここの「理数教育の充実」というところできちんと取り上げられています。
  それから、9ページの一番下から、「奨学の措置(教育の負担軽減)」という大項目の中で、若手研究者のフェローシップ等経済的支援を充実すべきと言われております。14ページの「大学等について」というところでDifferentiaterIntegraterの育成が必要であるということとか、フェローシップ、TA・RAなどの経済的支援の充実が盛り込まれてございます。次のページも柘植主査の意見発表が反映されております。
  この「主な意見(案)」をさらに意見の概要としてまとめたものが資料2-2になっております。資料2-2は、この資料2-3をもう少し大きくまとめたものですので、ボリュームは少なくなっていますけれども、主要なところは盛り込まれておりまして、3ページ(6)「理数教育」というところに、裾野の拡大と人材の育成と卓越した科学技術関係人材の育成について盛り込まれております。
  それから、5ページに、奨学金とか若手研究者へのフェローシップ等の経済的支援を充実すべきとあります。7ページ(5)「大学等について」のイノベーションの源となる多様な人材を育成すべきというところで、人材委員会として意見発表した主要な項目が盛り込まれているということでございます。
  なお、人材委員会としては、今後の当該部会の審議の動向等を注視してまいりたいと思っております。以上でございます。

【柘植主査】

  ありがとうございます。
  先ほどの議論の続きの時間をできるだけとりたいと思います。私の方からちょっとコメントさせていただきますと、資料2-1で、皆さん方と十分なすり合わせをせずに提言をせざるを得なかったのですけれども、特に、いわゆる本当の意味のエリート教育と同時に、裾野の拡大についても実際に教育基本計画特別部会の中でもきちんと取り込んでいただいているということです。あともう一つ、資料2-1の最後のページで横書きのこの三角形の絵がかいてございます。これは私の個人的な意見でございますけれども、提言に使いました。表題を「イノベーション創出に必要な能力と育成人材像」としており、フロントランナー型イノベーションの構造を模式図にしております。
  この中で、いわゆるType-D型の人材、これはかなり充実してきているということに対して、Type-B型といいますか、幅広い基礎技術の理解と基盤技術人材、場合によっては、技能という言葉まで使う人材、このところが忘れてはならないことと、もう一つ、非常に今の施策で余り議論されていないのは、右下に書きましたType-Σ型人材、すなわちこのピラミッドの縦と横をいわゆるインテグレーションしていくという、これが本当の社会経済的価値創造の最後の仕上げなんですが、こういうtype-Σ型人材というのは意外と論じられておらず、初等教育でどういう観点でこの価値を教えるか、あるいは高等教育でどうするのかというのがちょっと見えていないのですが、先ほどの資料2-3ではこの表現も生かして取り入れていただいたことを非常に私は心強く感じております。
  先ほどの議論の続きという位置づけで、ご発言がなかった方を中心にぜひお話を続けていただきたいと思います。
  山野井委員、それから室伏委員、お願いいたします。

【山野井委員】

  先ほどの論議の、今のご説明との関連も含めてですけれども、集団主義的にあるレベルの人材がそろっていくというのは、これはこれで非常に大事なことなんです。底上げという面でもそれは一つのターゲットになるんですが、ただし、これは産業界の方から言うと、この体制はいわゆるキャッチアップ型に対しては非常に適していますが、フロントランナー型になった場合は、やっぱり一歩先を行く人材がどうしても必要になってくる。そう数は多くなくていいと思うんですが、どうしてもリーダー的な人材が必要になってくるんです。
  そこで、今主査が提言されました中で言いますと、このType-D型の人材とType-Σ型の人材は、従来これは別であると。育成も別で、能力も違うんだという形で、どちらかというと、今までType-D型中心の部分がずっと来ておりまして、今おっしゃられたように、Σ型というのはどちらかというと非常に難しいので、やや発揮していなかった点があるんですが、私は恐らく今後絶対に必要となってくると思うのは、少数かもしれませんが、このDとΣを兼ねた人材です。恐らくこのΣ型の発想を持った人材の方がDにとってもプラスになるというふうに思っている点があるものですから、今後の内容の中では、このDとΣという2つを、どう一人の人間の中で持っていくかということが焦点になると思います。
  実は、なぜこれを申し上げるかというと、たしかこの人材委員会の最初の提言の中に、今後の新しい世界における専門性というのは、従来どおり一つのディシプリンを深めると同時に幅を広げるべきだと、場合によってはダブルメジャーとかあるいはπ字型というんですか、そこまでいくかどうかは別にしても、そのくらい幅を持った形の方がこれからの専門性においても大事だという議論があったわけです。
  その考え方は多分今でも全く変わっていないわけであって、私はこのDとΣを今後兼ねた人材を、小・中・高を含めて若いときからどうやって育成するかということを重要な焦点として取り上げるべきじゃないかと思います。以上でございます。

【柘植主査】

  ありがとうございます。室伏委員どうぞ。

【室伏委員】

  今までの皆様のご意見にほとんど賛成です。2つだけ簡単に申し上げたいのですが、1つは、今、山野井委員がおっしゃったことで、やはり一つのディシプリンにとらわれない広い教養、そういった基盤を持った人間を育てることが非常に重要だと思います。一つの分野だけに突出しているだけでなく、その前に、人間としての基盤、そういったものを備えるための教育というのは非常に必要だと思っていますので、その辺の施策ももう少し真剣に取り組むべきではないかなと思います。
  もう一つは、ポスドクを教員というキャリアパスに誘導するような施策をというお話、これには大変賛成で、すぐれた能力を持った人たちが教員になることは重要なんですけれども、それと一緒に教員の教育と学びの環境をもっと何とかしないといけないと思います。今の教員は非常に疲弊した状況にあるんですね。例えば、北欧の例をまねしてというようなことも書いてあったと思うんですけれども、私は北欧に行って調べてきたことがあるんですが、あちらでは非常に教員の環境が整っておりまして、例えば、大学を出た後で大学に戻って、そこで先端的な研究に触れるとか、そこでいろいろなことを学ぶということがほとんど日常的にできる、そういう状況があるんです。
  ですから、日本の教員にもちろんその研修機会とか、それから活動支援ということを一生懸命やろうとすることは非常によいことなんですが、それが十分生きるだけの教員の環境改善を考えないと、せっかくの施策が十分に成功しないのではないかという気がしております。地方に財源が移譲されてしまって、そこで教育のための資金がどこかに吸収されてしまうようなことがないように、もう少し国として責任を持った施策をお願いしたいなというふうに思っております。以上です。

【柘植主査】

  ありがとうございます。では所委員、興委員、それから鳥井委員というようにお願いします。

【所委員】

  今ご説明いただきました資料はいろいろな政策が出てきていて大変すばらしいことです。どういう部分が遅れている、どういう部分が問題がある、だからこうするべきだということで、その後にこれが予算につながっていくと思います。第4次提言に向けて我々が議論をしていく中で、まだ多少時間がありますので、もし可能であればこういう時間もとっていただきたいということをお話したいと思います。
  いろいろな施策に応じていくような提言をしたときに、そういうことが本当にインセンティブになっているのか。予算をとってきてその予算で何かをするだけでは、予算の効率的な運用とはならないわけで、それがインセンティブになって何か皆さんそれに基づいて動いていくという、それが学生にとっても、企業にとっても、大学にとってもインセンティブになるということが必要だと強く思っているんです。いろいろな提言が、具体的にインセンティブになっていくのかどうかというところを議論もしくは確認をして、そして戻って最終的な提言にまとめていくような時間があるかどうかということです。
  もう少し具体的に言うと、ある政策をとった場合、現状はこうだ、10年後にはきっとどうなるだろう、20年後にはどうなるだろうというところまで、一度シミュレーションをしてみることが大事ではないか。特に人材育成に関してはすぐに結果が出ることではないので、ある意味難しいですが、だからこそ、このことは大変重要だと思うんですね。
  ですから、ぜひそういう時間を議論の中でとっていただいて、幾つも幾つも出てくるものを少し整理して、こういう方向でやると10年後にはどういうふうに実るねというところまで議論ができたらいいなという希望でございました。よろしくお願いします。

【柘植主査】

  大変大事な話ですね。施策に具体化するときに、参加する人たちがどういうインセンティブを持つか、そのインセンティブで10年間やったらどうなるのかというシミュレーション、そういう時間を設けたらと、これは大変大事だと思います。
  では、興委員どうぞ。

【興委員】

  繰り返しいつも話題が出ますのは、ポスドクの方々のキャリアアップから社会に重要視されるような役割をという、このあたりの議論。あとじゃあ産業界にとってはどうなのかというふうな話もしょっちゅうありますね。私も大学の現場に行っていろいろと感じますのは、やはり現場では、学位取得だとかそこに本当に時間をとられていて、その人たちの全人教育というんでしょうか、ダイナミックな教育が本当にできる状況にあるのかという懸念が非常にあるんです。時間に追われて、少なくとも学位は取ってもらいたいという、そういう状況で、先ほどのD型とかΣ型とかいう話がございまして、従来はどちらかというとΣ型は産業界が担って、大学はどちらかというとD型だけで来たわけであって、そうだとすると、今度はΣ型に対する大学の投資の額を大幅にふやすような努力が本当は必要なんだと思います。
  それが途端に、今の時代ですと、競争的資金でというような話になるんですけれども、そこは政策の甘さであって、競争的資金ももちろん重要ですが、本当に思い切って大学を活性化させるには、ベースを支える基盤的な投資が本当にあってほしいというのが偽らざるところです。それをどのように社会が納得した形でうまく投資できるかということを、人材と絡めて何かメッセージを出す方法論をいろいろと考えてみますと、いつも書かれていてなかなか話が掘り下げられない問題というのは、資料2-2の7ページの下の方にもある、優秀な人材を惹きつける魅力ある教育研究環境の整備が必要だということ、それと大学のインフラ、特に施設整備に投資すべきだというようなことです。いわゆる国立大学などの施設整備5か年計画という話があるんですけれども、世界に冠たる魅力あるようなものに本当になり得るのかどうか。何か特別な研究と密着しない限り、なかなかその予算ができないという状況です。
  それと、あともう一つなかなか出てこないのは、日本の非常に脆弱な環境の一つである研究補助者・支援者の問題で、世界の中で日本は大体4分の1ぐらいでございます。本当に優秀なドクターの方がいるとプロフェッサーとかその周りの方々がとにかくそれにとられてしまって、本当は彼らを支える研究補助者だとか支援者がいて、十分それでできるであろうけれども、それがないために、下手をするとティーチングアシスタントといって、むしろドクターの学生がマスターの学生や学部生をケアするというような状況なんですよね。アメリカでは受託された企業軍団がそれをきちんと支えている。また、その受託された企業軍団はみんな優秀な人材がそろっている。日本の社会がそこを底上げする努力を人材とマッチングしてやっていくことが必要で、人材委員会も直接的人材じゃないそういう社会のインフラ整備をむしろメインとして取り上げていただくように私はお願いをしたいと思います。それが一点。
  それと、先ほど小野委員がおっしゃって、私もとてもそう思って、ぜひ小野委員にいろいろな機会にご発言をしていただきたいと思うのは理解教員の問題です。実は大学で、例えば農学部で理科の資格をとろうとすると、時間の制約があって取れるのはせいぜい高等学校理科の教員免許だけなんです。中学校の理科の教員免許をとろうとすると、科目数の問題とかさらに加えて実習の時間があってまず無理なんです。ですが、学校メンバーから言うと、中学校理科の先生がほしいんです。どうやって追加的にそういう資格を取るためのチャンスを与えるかということを、よほどのことをやらなければいけないと思っています。私は大学の中でそれを民間資金を使ってできないかと今考えているんですけれども、ともかく、それを小野委員がおっしゃるような大胆なことがもしできればとても私はありがたいので、そういう免許状取得のいろいろなバックアップ措置というか補完措置を今後お知恵を出してくださるとありがたいなと思ってございます。
  その他もいろいろとありますけれども、とりあえず以上です。

【柘植主査】

  ありがとうございます。非常に大事な各論に入ってきまして、核心に入ってきまして15分ほど予定を延ばしております。鳥井先生と平野委員どうぞ。

【鳥井委員】

  ありがとうございます。
  最初に、三宅委員がおっしゃった話は極めて重要な話で、私もこの施策を見ていまして、どうも教育に関してまでクリーム・スキミングをやろうとしているのではないかという感じが非常に強くしているし、やはり全体にとっての魅力があるということがとても大事なことだと、これは今の興委員のお話にも共通することだと思うんですね。
  それから、例えば科学技術リテラシーなんてことを考えますと、理科教育をやれば済むかというと全然そんなことなくて、実は高校教育が極めて大事だったりするんですね。例えば、今のお話があった資料を見ますと、文化芸術・歴史のところで国語が大切だと書いてあるんですけれども、これはもうひどい認識でして、全般にとって国語教育はすごく大事だという、そこはよくよく考えなくちゃいけない。
  つまり、我々は理科教育が大事だと考えるときに、理科教育の中でだけ言えば済むのかというとそうではなくて、やっぱりその周りの教育のことも少し考えないと、ちゃんとしたことは言えないだろうというわけです。それが1番目の議論であります。
  2番目の議論として、理科の分野だけがこうやって、人材のことを一生懸命考えているんだろうかということを考えてみると、スポーツなども一生懸命考えていると思うんですね。けれども、スポーツはこんなにみんなが知恵を集めて何かやらなくても人が自然に集まる構造を持っている。例えば、プロゴルファーにしてもプロサッカーにしても持っている。それと我々とは何が違うんだろうということを考えると、こっちへ入ってくるインセンティブというのは全然違うところにあるのかもしれないという気もする。ここは少し他分野というものも参考にしてみる手があるよねというのが2番目の考え方です。
  それから3番目、資料2-1に柘植先生が書かれた三角形の図、大変いい三角だと思うんですが、これはある一つの教育をやると、自然発生的にこの4つのタイプの人間が出てくるのか、それともそれぞれのタイプを育てるためにあえて別のやり方をしなくちゃならないのかというのは、これよく実はわからないところでありまして、本当は多分うまいことやると、4つが自然発生的に出てくるようなメカニズムがつくれるかもしれないということですが、それはどういうものか、少しこの絵をもとにどういうプロセスの教育をやるとどういうことが起こるのかというようなことを少し検討してみる必要があるかなと思います。
  以上であります。

【柘植主査】

  ありがとうございます。それでは、最後に平野委員、よろしくお願いします。

【平野委員】

  時間が追ってきているようですので簡単にしたいと思いますが、特に理科の教育については、今、中学校というお話がありましたが、私は小学校だと思うんです。私も時々学校について、知り合いのところの話を聞いたり訪問したりしますと、小学校高学年くらいから、本来は理科らしい教育をすべきなのに、その教育を受けた先生方が10パーセントぐらいしかいないと。ここは本当にゆゆしき状況で、もし理科のことに注目するのならば、きちんと試験制度や資格制度を変えていくべきだと思います。もちろん大学も、今ドクターの学生さんやポスドクの方々がそれぞれの専門分野と関連した上で、どういうキャリアを積めるかということをシンポジウムなども開いて指導しておりますが、教員の方面へ行くときの問題もやはり国として考えなきゃいけない。
  申し訳ない言い方かもしれませんが、今の教員の資格試験で、あれでいいんでしょうかと。それらが反映されて今の一部の教育問題が起こっているんじゃないかと、ここは大問題にすべきだと、私は前からお話ししているところであります。
  それからもう一つは、柘植委員のおっしゃるD型あるいはΣ型というのを、私以前はI型とT型と言っておりました。できればπ型にいきたいけれども、π型で二兎を追って何もできず終わったらいけないからせめてI型とT型だと。私どもの責任でもありますが、やはり大学院教育が少しタコつぼのようになり過ぎていますから、今度のグローバルCOE事業でどこまでうまくいけるかなと。名古屋大学はかなり大きい分野でコアを持ちながら仕切り直すようにしましたけれども、そこのところが今後大学の務めとしてあるだろうと思います。
  要望はいっぱいありますが、また追々制度設計も含めてお話ししたいと思います。以上でございます。

【柘植主査】

  ぜひまだまだご意見があると思いますが、ぜひとも残りのご意見は書いて事務局に出していただければ。今皆さん方の頭の中に、人材委員会の本質にかかわる話がまだたくさん残っているはずなので、ご発言いただいた部分は議事録に残すようにきちんとまとめますが、言い足りないところがあったらぜひ事務局に後ほどメールでもいいから出していただきたいと思います。
  20分ほど時間超過をしておりますので、議題2に移らざるを得ません。本日は、実施機関の中から、名古屋大学、九州大学の出席をいただいております。
  まずは事務局から簡単に背景事業の説明をしていただいてから、よろしくお願いします。

【高比良人材政策企画官】

  資料3-1を配付しておりますけれども、いわゆるテニュア・トラック制を今モデルとして導入をしております。科学技術振興調整費で行っております。中身については、それぞれの大学の方から詳しい説明があると思いますので、説明は簡略化させていただきます。よろしくお願いします。

【柘植主査】

  名古屋大学の近藤高等研究院長、それから九州大学の村上理事副学長に続いて説明いただきます。それでは各々15分ほどぐらいでお願いいたします。

【名古屋大学近藤高等研究院長】

  今日はお呼びいただきましてありがとうございます。名古屋大学の近藤です。
  名古屋大学の高等研究院というところが中心になりまして、今ご紹介のありました自立的若手研究者の育成のための振興調整費のプログラムをスタートさせております。それについてご説明させていただきます。
  まず、高等研究院についてご説明しなければいけないんですけれども、高等研究院は2002年に野依先生を初代の院長として、名古屋大学の内部機関としてつくられた組織で、一方で教養教育院という教育の組織をつくって対応させることで、研究の組織として、研究を特に推進する形で位置づけられています。
  ミッションとしては、名古屋大学トップクラスの研究を推進するというものと、若手の研究を推進するという2つのミッションがあるかと思います。そういった2つのミッションを続けてきた中で、振興調整費の自立研究環境整備促進事業でこのプログラムを採択していただいて、これまで進めきたわけです。
  体制としては、私ともう1名の副院長、専任教員2名、その他パテンの方々等で行われております。実際には、学内の選考で選ばれた高等研究院教員と呼ばれる方が各部局及びここにあります建物で研究を展開している、そういう状況であります。
  本日は、どのように今回の事業がデザインされ、これまでどのように実行されてきたか、今どんな問題を抱えているのかといったことをお話できればと思います。
  プログラムの概要はここに書いてありますように、テニュア・トラックの候補者を国際公募し、選考し、自立した研究を支援し、研究倫理の教育も実施してテニュアを賦与するというものです。そのためのプロセスとして、国際公募をして公正な選考を行う、その後自立した研究の支援を行って評価して、その一連の過程で高等研究院と部局が一致して若手の支援に当たる、そういうデザインで考えられています。
  国際公募の状況ですが、『Nature』、『Science』に掲載し、遅くになって学位を取った方を考慮せずに年齢で区切るのは必ずしも適当でないということで、博士課程取得後10年というのを若手の定義といたしまして、ウェブで公募を行いました。応募は非常に多く、我々の予想を上回る386件の応募がありました。この中の3分の1程度は外国からの応募で、レベルに関しても我々の予想を上回る高さでした。
  選考は、応募者の書類を、まずその応募者の希望によって部局、学部に振り分けます。応募者は、ホームページで大学でどんな研究が行われて、どんな部局があるかとサーベイすることができて部局を選択するわけです。各部局の中では、その部局に振り分けられたリストの中からテニュア・トラック教員として推薦できる人材を何名か選んでもらう。その人材に対して、外部評価委員のレビューもいただいて、最終的には高等研究院の選考委員会で選定する、こういう形で行いました。
  私自身は、この時期は高等研究院に所属しておりませんで、むしろ部局の方で、生命系のスクリーニング、評価、人事選考に関わったんですけれども、これは私がかつて名古屋大学に来てから教授も含めて公募した中で、最もハイレベルな応募がありました。何人かの若手教員はまだ30代ですが、もうこれはこのまま教授だなというような方もたくさん含まれておりました。そういう方々も含めて選考し、10月に正式に発表しまして研究を進めていただいているところです。
  残念ながら、外国人で研究のレベルから採択された人は数名にとどまり、現在は異動等もあって1名だけということになってしまいましたけれども、外国からの応募は非常に多かったということです。高等研究院は幸い独立した建物を持っておりますので、実際に自立して研究を進めるというところで、3分の1ぐらいの方はそこに研究室を実際に整備して、コモンルーム、共通のそれぞれの実験室、それから各1人当たり100平米ぐらいの実験室、それからカンファレンスホールとか共通のルーム等もつくりまして、研究を推進していっています。全員はちょっと難しいという事情もありますし、部局との緊密な連携が必要な分野の方もおりますので、残りの方は各部局で研究を推進されています。
  今後の状況ですが、我々のプログラムでは、採択から3年後の2008年に中間評価を行うことにしています。これは、プログラム5年間のうち3年目ですが、ここで実質的にかなりシリアスな評価を行います。高評価を得れば最終評価に至って、さらに高評価を得れば部局でお約束したようにテニュア・トラックの教員として通常の教員採用ということになります。
  それぞれの教員についてケアをする委員会がつくられておりまして、3人の高等研究院のメンバーと、部局のメンバー、研究の内容がわかる方、その3名の方で構成する推薦委員会が引き続き審査も行う、そういう形で体制ができております。
  先ほども申しましたように、非常に高いレベルの応募がありましたので、我々はその成果に関しては非常に順調に進展することを期待しております。しかし、すべてに問題がないわけではなく、幾つかの問題もあるかと思います。しかしいずれにせよ、実際に先ほどの選考のプロセス、それから今後の研究の支援、さらには最終的な評価に当たりまして、部局と高等研究院が密接に連携していく体制ができていると思っております。
  研究者としての教育としては、高等研究院レクチャー、それからフォーラム、セミナー等に参加・発表していただく。それから研究倫理というのは最近非常に問題になっていますので、倫理教育に関することもやっていただく。多分一番大事なのは、研究者間の自由闊達な議論で、年に数回は高等研究院のメンバーに集まっていただいて、部局を超えた研究の交流をしていただくといったことも考えております。
  このプログラムの達成目標は、採用した若手が推薦部局の教員になって、将来、名古屋大学を担う教員として活躍していただくということですが、テニュア・トラック制度の一つのモデルケースとして、今後どのような形でこれが広まっていくかのモデルを提供する、あるいは問題点も一方で検討するといったことかと思っております。
  実際に採用された方々の名前のリストを資料の最後につけておきましたけれども、理学系、医学系、工学系、農学系とそれぞれですが、どの方々も恐らく、私の見た感じでは普通に応募されたら少なくとも助教もしくは講師に採用されるような方ではないかと思います。非常にいい方に来ていただいて、むしろこれらの方々がよその大学に引き抜かれないことを祈っているというのが、一部の現状だと思います。
  最後のところに幾つかの問題点を書いておきましたけれども、一つは研究費の支援の問題です。アメリカのテニュア・トラックは7年がスタンダードですけれども、本事業は5年間ですし、しかも立ち上げまでに一年近くを要しています。なおかつ3年目で評価しなければいけない。後ろの方はエクステンションの可能性が少ないものですから、そういったときに自分で研究費を稼いできて立ち上げなさいというようなことは言っておりませんので、セットアップの費用はある程度補助できると思うんですけれども、必ずしも十分とは言えない。それから、研究を推進していく上でチームを組まなければいけないという分野が多いんですが、やはりそのポスドク等を十分措置できるだけの必要性があるだろうと。
  一方で、一応彼らは高等研究院教員という位置づけで、私が形の上では上司になっております。部局の方では部局の教員としての権利というか、そちらの方をぜひ確立してほしいと。ですから、学位を出す立場になることも含めて、そういった位置づけを部局の方に私の方からお願いしているところです。
  もう一つ問題となるのは、独立性と部局との共同研究というか、独立性と孤立、独立はしなきゃいけないけれども孤立してはいけないというたぐいの問題です。部局の方でお世話になっている研究者も多いんですが、そこでの独立性、テーマは自分でお考えくださいとか、そのようなことはお願いしているところです。
  それから、競争的資金に応募するというのは研究者の基本的人権の一つだと思いますが、それをとにかく実現させてほしい、そういうことが今考えている幾つかの課題かと思います。すべてが見通しがあるわけではありませんが、できるだけ実現していきたいと思っているところです。
  私自身は理学部の生命系におりまして、そこでの経験等からもう少し幅広い意味でテニュア・トラック制度が根づくためにはどうするかということを、部局の生命生物学教室の同僚といつも議論していますけれども、やはり若手育成のためのテニュア・トラック制度というのはアメリカでは基本的には成功していると思いますし、非常に重要な制度かと思います。ただ、この制度は、基本的には今まだ多くの大学でメジャーになっている、いわゆる小講座制、研究室グループ制、教授を中心にした3名程度のグループを骨格する制度と矛盾いたします。そのため、やはり部分的には小講座を解体しなければいけない。全面的に解体するのが、日本の科学の戦略としては正しいかどうかは別問題ですが、少なくとも若手が入る何分の1かは解体しなければいけないんですけれども、この議論はまだまだなかなか容易ではありません。
  それに伴って、スペースの問題もついてきますし、一方でテニュア・トラックの方々の将来も考えますと、全国レベルでの教員の流動性がやはり非常に重要なファクターになってくるだろうと思っています。
  今回は振興調整費でこういう形でスタートいたしましたけれども、この小講座制の部分解体というような形で、新しい方法を例えばデパートメントに、専攻に導入したいといったような企画があったときには、そういったものが定常的にできるようにぜひ経常的に支援していただきたい。そういったことを実際に専攻で行いますと、なかなかさっきのセットアップマネーあるいは研究支援の面、スペースの面も含めまして困難を伴います。そういったものに対する制度が一つあったらいいかなと思います。
  実は、私もこのテニュア・トラックの前に、生命理学専攻を中心にした若手育成の研究推進を行おうと思ってあるプログラムをつくったことがありますけれども、一つ肝要なことは、優秀な方を世界から集めるためには、部局にあるいは専攻に魅力がなくてはいけません。若手が集まるかどうかはそこがキーポイントだと思います。もちろん研究レベルをベースにいい条件が必要なわけですけれども、そういったプログラムを動かしていかなきゃいけない。私は今グローバルCOEの拠点リーダーもしているところなんですが、グローバルCOEにもこのアイデアは含まれておりますが、現実問題としては、グローバルCOEのプログラムは大学院の教育育成の方が主体になっておりまして、とてもそこまで手が回らない状況です。そういった面でテニュア・トラック制度のような形のグローバルCOEに相当するようなものをまた考えていただけるとよろしいかと思います。
  以上です。どうもありがとうございました。

【柘植主査】

  ありがとうございます。引き続きまして、九州大学の村上理事副学長よろしくお願いいたします。

【九州大学村上理事・副学長】

  九州大学の村上でございます。
  同じ事業で、九州大学のテーマは「次世代研究スーパースター養成プログラム」、略してSSPと私たち九州大学では呼んでおります。
  この事業の趣旨というのは、テニュア・トラック制に基づき若手研究者に自立性と活躍の機会を与える仕組みの導入ということであります。ここが一番大事だと思いますので、時間の関係もありまして、特にこの辺について、九州大学のモデルをご紹介し、細々したことはちょっと省略させていただきたいと思います。
  私の個人的な思い入れもありまして、申請時に、この仕組みの導入というところに一番強い思いを込めて申請をしました。ところが、申請の時とかヒアリングの時、必ずしも九州大学は評判がよくなかったと漏れ聞いております。その一つの理由は、私たちはこういう分野で何人採用しますということを書きませんでした。採択されたら、大学内で、どの分野のどういうプロジェクトをやりますからという形で部局に競争させますと言っておりました。
  というのは、そうしないと私たちはこの仕組みの導入ができないと考えたからです。実は審査をする方からしますと、決まっていないことは審査し難いということと、文科省としては財務省に予算の折衝をするときの根拠がはっきりしないので大変困るというようなことは後でお聞きしました。
  先ほどの近藤先生のお話にもありましたけれども、小講座制の問題というのがあり、依然として講座制がたくさん残っておりまして、その弊害があります。大学によって程度はいろいろでしょうけれども、ひどいところは先々代、ひいおじいさんの時代から脈々と続いております。コピーがコピーを生むと、コピーをするたびに質が落ちますので、こういうことを続けておりますと、日本の大学生には優秀な人が多いですが、学生のときは優秀なのに、そのうち、本人も先生もわからないうちに期待したほど伸びなくなる。それがこの講座制の弊害ではなかろうかとずっと私は考えていたわけです。
  私自身は、自分の学生をどうしているかといいますと、全部外に出しました。私の弟子は私全員よその大学で活躍しております。私自身もそういうことを実行しないといけないと思ってやってきているわけです。この問題では、大先生がいい仕事をしたからぜひそれを続けさせたいということが続きますので、長期的に研究分野が固定されることになり、それによって若手研究者の自立性が阻害される。ある意味では、先生の仕事を続けるあるいは先生から使われるということになります。そうしますと、時代が変わっているのに新しい分野が開拓されないことがあちこちで起こってくるわけです。
  そこで、九州大学のSSPが目指すものとしましては、テニュア・トラック制というものを導入するということ、それからそれに組織改革を絡ませるということと、新領域を開拓すること、この3点をセットにしようということになり、現在推進しているところです。
  部局からいろいろなプロジェクトを提案してもらい、そのプロジェクトが先ほどの3つの条件を満たしているのであれば、その部局のプロジェクトを採用します。若手の自立性、それからテニュア・トラックといいますと、例えば5年後にポストを用意しないといけないわけです。例えば3つ、4つのポストを用意するというのは、企業であればトップの指示でさっとできるかもしれませんけれども、大学では、2つ、3つ、4つでも各部局で用意するとなると、どこかの講座のポストを5年後に空けないといけません。そうすると、(当事者は)猛反対するわけで、総論がよくてもみんな反対します。なぜ私のところのポストを出さないといけないかということになります。それをやらないといけなかったんですね。
  申請時には部局からプロジェクトの提案を出させますと言いましたが、もし、部局から提案が出なかったらどうしますかということを言われましたけれども、幸い14プロジェクトが部局から出てきました。
  それで、審査をして結果的には6プロジェクト、6部局のプロジェクトを採用しました。あとの8プロジェクトはどうなったかといいますと、提案するにあたって、5年後にポストを準備するという大激論を毎夜やるわけです。講座制を壊さないといけませんから。大激論をしまして、やっと決着がついてプロジェクトを学内で提案して、不採択になるわけです。どうしてくれるんだということになります。しかし、その議論は私は無駄にはならないと思います。一度そういう議論をやった経験がみんなあれば、それで今度は自分たちでそういうことをやるようになると今期待しているところです。
  そういう議論があったということを総長に報告しましたら、それでは総長の裁量経費をこれに加えてもっと増やそうということで今動き出しておるところです。資料には、採用されたプロジェクトと応募されたものを全部書いております。黄色が科学技術振興調整費によって採用されたプロジェクトで、グリーンが総長裁量経費で平成19年度からの予算で採用したプロジェクトです。
  総長裁量経費のものは文系も入れて、文理融合も含めようとしています。科学技術振興調整費では自然科学系に限られておりますけれども、これは組織改革なので、総長は文系も入れようという考えで今進んでいます。何も色がついていないのが落選したプロジェクトですが、それぞれの部局で激論を闘わせた経緯がありますので、今後に生きるのではないかと考えております。
  次に学内の組織をどうするかということです。まず、国際公募をやり、それからプロジェクト毎に厳しい審査の上SSP学術研究員を採用して、5年以内に(業績を)審査して准教授に採用します。ただ、5年待たなくても優秀で資格がある人がいれば准教授に採用してもよいことにしています。
  自立性を考えまして、このSSP学術研究員は全学の組織(若手研究者養成部門)に所属することにしまして、外部有識者委員会、それから全学の研究戦略委員会が、部局の干渉が無いようにウオッチしているという仕組みにしております。
  組織としましては、SSP学術研究員は科学技術振興調整費で採択された16人と総長裁量経費で採用された8人ですが、これを全学研究戦略委員会と事務支援室でサポートしています。外部の有識者委員が、自立性が保たれているかのヒアリングを行うほか、SSP学術研究員に対して研究者のものの考え方・研究の仕方等の指導、あるいはメンターとしての役割もお願いするようにしています。委員はそれぞれ有名な先生方ですが、若いときにそういう先生方といろいろお話し、指導を受けたということは年をとってからも随分心に残るものですから、そういう役割もお願いしております。
  先ほどの名古屋大学と同じように国際公募いたしまして、373名の応募がありました。年齢によって多少違いますけれども、給与が年間600万から750万です。それから研究費を年間600万円程度措置して、ほかの教授などが使うことができないようにしております。
  今、運営費交付金で私たち教授、准教授が手にする研究費は大体100万から200万程ですから、部局からも事務からも干渉されないこの600万があるということは、もう周囲からうらやましく思われていて、非常に条件がいいのです。しかし余り甘やかさないようにしないといけないかとも思っております。
  当初ヒアリングの場では、このプログラムが終了する5年後から総長裁量経費でこの制度を拡充して学内に浸透させていきますと申し上げましたけれども、学内の激論があってこれは改革のチャンスだと総長と相談しまして、19年度からすでに8名を採用して前倒しで始めているということでございます。
  資料11枚目はプロジェクトの内容ですが、黄色が科学技術振興調整費によって採択されたプロジェクト、一部には総長裁量経費と合わせたプロジェクトもございます。
  2月にはスタートアップシンポジウムも開催致しましたが、そのときの学内外の有識者委員の先生方にお集まり頂きまして、いろいろな問題点の指摘をしていただきました。大学のかかわり方、予算の使い方、それから現場の研究室を見たり、あるいはどういう施設が使われるかというのも見ていただきまして、なかなか厳しいご意見もございました。
  SSP学術研究員の方からも、予算の使い方が難しいとか、エフォート率の問題とか、いろいろな問題が出されております。
  SSPで採用した外国人の方は、非常に優秀で、日本語と英語と母国語ができ、学生にとっても非常にいい指導者になれると思っております。この方が開発途上国にITを導入して生活環境を改善するアイデアをご自分で出されて活躍されています。また、京都大学からも活躍されている方に来ていただきました。
  九大モデルの達成目標はテニュア・トラック制と教員流動性促進、あるいは新分野からの研究組織改革であり、プログラム自体は5年間ですが既に総長裁量経費でも前倒しで実行しておりますので、この方式は他大学に参考にしていただけるのではないかと考えております。以上でございます。

【柘植主査】

  ありがとうございます。
  貴重な研究教育現場のお話2ついただきました。質疑に移りたいと思います。所委員どうぞ。

【所委員】

  2つの大学は大変すばらしいことをやられていると思いますが、テニュア・トラックとは本来あるべき姿がこうなんだろうと僕は思います。それを着実に実行されているというのは大変心強く思います。
  今日お伺いした中では、やはりこのプログラムといいますか、この方式の基本的なポイントは、やはり将来に向けての安定的なポジションが一応確保されていると。それが最大のインセンティブになり、もちろんそのほかいろいろな予算の措置とかもあると思うんですけれども、そういう意味ではシーズマネーがインセンティブを生んで、いい人を世界から集めてきて、そういう人ができる限り定着してくれると。どこか他のところに行ってしまうかもしれないですけれども、それはそれでまた次の人と。そこら辺のところがうまく回るポイントかと思います。ポスドク問題は幾つか出ていますけれども、ポスドクのときには、ポスドクをふやすという政策自体は大変重要だったんですけれども、同時にあの時点で固定枠を減らしちゃったわけですよね。ですから、そのように片方で一生懸命やっているときに片方で違ったことが行われると、その施策自身がいいことをやっていても結果的には回らないということがあるわけです。個々に見るとすべていい施策でも、全体を見たときに本当に回るかのどうかというところの辻褄を、できるだけチェックしていきたいというのがさっきの話であり、今の2つの話は大変うまくいくんじゃないかというふうに思いました。

【柘植主査】

  ありがとうございます。
  平野委員、何か現場の方から何かコメントございませんか。それから小林委員。

【平野委員】

  私は大学の責任者でもありますが、特にこのテニュア・トラックの制度そのものについては、よい制度を入れていただいたと、ある意味のシーズなり刺激になったと、こう思っております。
  大学として今後どうするかということは、これまた重要なことだと思うんですが、私どもの場合は、高等研究院できちんと研究者のあり方を含めた教育を全体についてしながら、部局との連携をとるというふうにしております。特に、今後のことを考えますと、大学内で5パーセント全学的運用定員を持っておりますが、90名ぐらいになります。それに加えて、私は今プラス2パーセントは大学の組織改編を含めた戦略人事にするとみんなに宣言をしています。つまりあと約30名私の方にいただいて、この2パーセントの戦略人事を含めて大学の今度の組織改革、あるいはこういうテニュアの支援等もきちんと枠の中で使っていく必要があろうかと、こういうように今考えているところであります。
  同時に、その元になるもう一段階若いドクターの人たちを支援しなければいけない。いろいろ政策を出していただいていて大変結構ですが、いつお金がつくかわからないということから、先陣を切ってまず動こうということで、大学で今年度から約1億円、博士課程の学生につけるようにいたしました。これは、芽になる人を育てたいということで、200名は一人30万円、学術奨励賞としてこの間表彰してお渡しました。さらに、ドクターの2年生については、2年のうちの一か月以上、必ず自分の関係する海外の大学等の研究機関で、自分のドクター論文のトレーニング、研修をしてくることということで、一人40万円ぐらい出すことにしております。
  国全体がテニュアの結びつき、あるいは支援をする制度を設けてくれるのがもっと早く欲しいんですが、大学としてもこのような努力をしているという状況であります。

【柘植主査】

  では小林委員、それから興委員。

【小林委員】

  こういう競争的な資金でやる研究がいろいろな助成活動の場合、とかく消耗的になってしまうということがあるんですね。多分お分かりだと思うんですけれども、つまり、いい成果を出すということばかりに集中してしまって、消耗して終わってしまうということがありがちだと思います。
  テニュア・トラックの問題、テニュア制度の問題というのは、多分それだけではいけないというところが一番のポイントだと思いますので、そういう意味では、ぜひ消耗しないように、将来の日本の社会、あるいは日本の科学技術を担っていくような方になっていただくことを考えていただきたいと思います。両大学とも資料等で大学院の指導との関係のことを触れられていましたけれども、日本の今の競争的資金、外部資金の場合に、大学院指導に関して制度的に問題があるんじゃないかなと思っています。
  例えば一般的に、普通はアメリカ等では外部資金で雇用されている人であっても研究指導はできるわけです。要するに、リサーチプロフェッサーであっても、大学院の活動にも関わることが標準なわけです。けれども、日本の場合には、それが場合によってはできない。この資金が制度的にどうなっているかはよく分からないんですが、競争的資金によってはできないことがあるわけです。そういう点も、競争的資金が大学に対しての投資になっていない、消耗的になってしまっている一つの原因ではないかなという気がします。ぜひその辺を考えていただきたいと思うんですが、このプログラムでは、大学院教育への関与などは可能なんでしょうか。

【柘植主査】

  機関のお二方お願いします。

【名古屋大学近藤高等研究院長】

  このテニュア・トラックの特任教員、特任准教授、特任講師の方が大学院の指導担当となれるかということに関しては、高等研究院としては非常に気を遣っておりまして、各部局の方にそのようにしていただきたいとお願いしているところです。ただ、その風土というかカルチャーもありまして、すべての部局が今そういう形になっているというわけではありません。ほとんどの部局では、そういう形でその大学院の指導教官になれる、場合によっては学位を出す主査ともなれるというように位置付けていただいています。それは一つにやっぱりこの立場の研究者の基本的人権かなと思っております。
  本来はあいたポストでテニュア・トラックはやればいいわけですが、そのテニュア・トラックを運営する資金がかなり厳しいといった形だと思います。普通ですとそういう形でそのテニュアのポジションを使えば、それまでは正規の教員ですからそういう問題はもともと発生しないんですが、今回そういう形でお願いしているところです。

【柘植主査】

  村上さんお願いします。

【九州大学村上理事・副学長】

  基本的には名古屋大学と同じですが、この科学技術振興調整費は委託費でございまして、私たちもよくわからない決りがあります。先日JSTのプログラムオフィサーお二人に2時間ぐらいでしたか、SSP学術研究員を集めて解説していただきましたが、それでも完璧に理解できないぐらい非常に複雑です。
  要するにこのプログラムで教育にかかわっていいかどうかというのは、その人のやっている研究と教育がリンクしていればいいようです。ところが全く違うことをやるということは許されないとか、非常に複雑です。私も何度か聞いたのですけれども完璧には理解しておりません。
  ただ、5年後には関わらないといけませんし、私たちは教育にももちろん関わってもらうようには是非進めます。我々がそれよりも心配しているのは、部局の関与と干渉、むしろ悪い意味での干渉です。当初、本プログラムを立ち上げている時、部局の議論の中に本部の改革の作戦に乗るのかという、そういう議論があったというのを後で聞きました。私たちは善かれと思ってやっていることが、部局ではこの講座制を崩すためにやっている本部の改革の作戦だと思われてしまう。それで議論がありましたけれども、結局はこのままじゃいかんという人がかなりいまして、新分野を開拓しないといけない、やっぱり積極的に考えようじゃないかということで出てきたということがございます。

【柘植主査】

  議論はちょっとこの場では打ち切りまして、むしろ今後の人材委員会の論点の中に登録するということで、今の点は特に質疑はしませんが非常に大事なことですね。
  鳥井先生お願いします。それから鳥居先生。時間の関係上お二方で打ち切りたいと思います。

【鳥井委員】

  簡単に申し上げます。実はテニュア・トラックの審査ワーキンググループにおりまして、そのときに、非常に皆さんの大学から出てきている話で注目したのが、やっぱり団塊の世代の一斉退職です。これが実は大学人事を非常に柔軟にする大変大きなチャンスだということが明確でありまして、それをどう生かしていくのかということ、生かすプログラムをどう支援していくのかということを、この場としてもやはり千載一遇のチャンスとしてしっかり議論する必要があるというふうに思っております。

【柘植委員】

  では鳥居先生。

【鳥居主査代理】

  せっかく現場の先生がいらっしゃいますので申し上げますが、小林先生が座長をされているキャリアパス多様化促進事業の連絡協議会のときにも、教員の意識改革の問題は各大学から出てまいりました。この教育の教員の意識改革というのは、簡単にはできない、しかもトップダウンでやらなくちゃいけないという、ここはやはり法人化されてからよほど頑張っていただかないといけないと思います。何かこのごろ少しだれているというか、法人化された頃はもう少し緊張感があったような印象を受けるんです。
  両大学のご説明の中でキャリアパスの話がありまして、ポストが準備されないということがあったんですけれども、多分法人化されましたときには、ポストベースではなくて人件費ベースに変わったはずなんですね。名古屋大学でもやはり学長裁量経費でやっておられるということなので、考えていることは同じだと思うんですけれども、当初からそのポストベースというのは気になりました。
  それから、これは教員採用のことですから研究の成果で評価なさるようなんですけれども、どこの大学でもそうなんですけれども、最近の改正で、助教になると教壇に立てるということになります。そうしますと、この前までは助手だった人がいきなり教壇に立てるということになってしまって、教育の経験がない人たちが教壇に立ち始めているんです。こういうプロジェクトを通して教育のトレーニングもやっていただくことをお考えいただけないかなというお願いです。以上です。

【平野委員】

  すみません、誤解があるといけませんのでお話をいたしますと、確かに費用で考えることはできます。しかし、継承人員については、これご存じのように退職金のところはそのスロットがありますので、そのところは今の制度では大変慎重にやらざるを得ないんです。
  名古屋大学は何をやっているかといいますと、年棒制度が別枠で設けてありまして、これは、今のスロットとは別の人事構成を取れるようにしております。大学改革のためにもう1回、来年度から2パーセントの戦略人員をもうけると私が言ったのは、もう一度組織改革をねじ込むということで、2パーセント引き上げて戦略人事に付するという、これは今の継承人員で特に退職金を伴うところの部分については教育研究組織強化としてそれを動かさざるを得ないという今の制度設計はちょっとご理解いただきたいと思います。

【九州大学村上理事・副学長】

  九州大学のポストと人件費について、結局は人件費になるんですが、一気に生首を切るわけにいきませんから、教授と准教授と助教はポイントを変えまして、部局で現状のポイントで設計しなさいということにしました。
  ですから、一人一人、例えば定年でお辞めになりますとポイント1というのがなくなるので、そのポイント1を今度はどういうふうに使うかというのは、総人件費を考えながら設計をしてくださいということにしました。ただ、一方で、5年間で1年ごとに1パーセント減の総人件費削減計画がございますから、部局としましては全体の持っているポイントも減らしていかないといけない。その中で、例えば今のようなテニュア・トラックでの自分たちの持ち分を提供しないといけないので激論が出てくるという、そういうことです。もちろん簡単ではないですけれども、改革は進みつつあるというようにご理解いただければと思います。

【柘植主査】

  ありがとうございます。
  最後に、近藤院長、何か今の議論の中でご発言があればどうぞ。

【名古屋大学近藤高等研究院長】

  九州大学からもお話があったとおり、やっぱりテニュア・トラックを根づかせる根幹は小講座制の問題だと思います。私も随分小講座制の部分解体というのを研究室の中の講座で説いたんですが、賛同は得られませんでした。部分的に3分の1ぐらいは講座をばらしたらどうだろうということを言ったんですけれども、先ほど九大の話がありましたけれども、この議論はやっぱりトップダウンではなくて、各選考の方でニーズに応じて理解してやっていくという形が、やっぱり今後も根づかせるためには非常に重要なことかと思っておりますので、そういった方面でもこれからも頑張っていきたいと思っております。

【柘植主査】

  ありがとうございます。
  時間がまいりましたので、この議題はそろそろ打ち切りたいと思いますが、今日のこの議題は、今後の若手研究者のさらなる育成の課題であり、報告整理に資するだけではなく、人材委員会全体の話のところまで視点が広がり始めてきたというふうに認識しております。
  非常に貴重な時間だったと思います。本当に両先生ありがとうございました。それでは講師の方、ご退席いただけますでしょうか。
  それでは、本日の議題の3番目でございます。ポストドクター等の雇用状況調査について、これは今日は報告という形にさせていただきたいと思います。議論はまた必要に応じまして、次回からの議事に乗せたいと思います。

【佐藤科学技術政策研究所総括上席研究官】

  政策研でございます。資料4に基づきまして簡単に説明させていただきます。
  このポスドク等雇用状況調査でございますけれども、これは政策研と文部科学省基盤政策課が連携して実施した2回目の調査になります。ポスドクとか博士課程の在籍者等にほぼ悉皆的に調査をいたしまして、その状況を調べてみるということでございます。
  資料に調査方法等が書かれておりますけれども、調査依頼先としては大学、独法、民間企業、ポスドクとか博士課程の学生がいると思われるところにつきましては、ほぼ悉皆的に調査させていただいております。
  ただ、資料3ページ目に調査対象が書かれてありますが、分類として経済的支援を受ける博士課程の在籍者、それからポストドクター等、その他という形で調べております。特にポスドクの定義というのは、非常にあいまいなところもありまして、今回この調査では「博士の学位を取得後、大学等で研究業務に従事しているものであって、教授、助教授、助手等の職にない者」、それから、「独立行政法人等で研究に従事している者のうち、任期を付して委任をされている者で、研究グループのリーダー・主任研究員等でない者」、博士課程を満期で退学されるという方もこれに含めるということで、ここでのポスドクの定義とさせてもらっています。
  それから、資料4ページの調査結果です。まず、全体でいくらぐらいこういったポスドク等がいるかという棒グラフが出ております。平成17年度実績では博士課程のうち支援を受けている者が3万6,154名いると。それからポスドクにつきましては1万5,496名、それから、その他1万2,411名という形になっております。平成16年の実績と比較しますと、いずれもこの数がふえているように見えます。ただ、実際に長期的にトレンドがないと、本当に毎年ふえているのかどうかということはこの2年間だけではわかりませんので、今後の分析にゆだねないといけないかなと考えております。
  それから、5ページになりますが、ポスドクの雇用状況について調べました。ポスドクがどういった機関に存在しているかということですが、やはり大学が非常に62パーセントと多い。それから、独立行政法人が35パーセントで続いているという形になってございます。
  それから6ページでございます。
  ポスドクはどういったところから収入を得ているかというところで見てみますと、やはり競争的資金、その他の外部資金、これが多く、約半分程度になっており、続いて運営費交付金をもらうポスドクが多いという形になっております。これは博士課程の場合と若干異なる様子を示しています。
  それから、7ページに年齢構成が載っておりますけれども、ポスドク全体で35歳から39歳が17.8パーセント、それから40歳以上が10.3パーセント、合計で28.1パーセント、これが35歳以上になっております。大体4人に1人以上が35歳以上ということで、やや高齢化している傾向が見られるんじゃないかと思われます。
  女性の割合については、全体で女性の割合が21パーセントですけれども、若手からだんだん年齢が加わるに従ってだんだん割合が増しているという現状が見てとれます。
  ちょっと飛ばしまして9ページに分野別の雇用状況が載っておりますが、ポスドクでは、理学分野と工学分野がほぼ30パーセントで同じぐらいの値を示します。これも若干、博士課程の結果と少し異なっているところです。
  それから、次に11ページ、ここから博士課程在籍者に対する状況を見た結果でございますけれども、博士課程の在籍先は皆さん予想どおり大学が大部分を占めており、98パーセントが大学と大学共同利用機関になっております。
  それから、12ページに財源別の比率を示しております。博士課程の学生は先ほどのポスドクと違い、やはり大学独自の運営費交付金等で雇用しているというのが最も多く、半数以上を占めております。
  次ページに、博士課程学生の男女別の年齢構成が載っておりますけれども、これも先ほどのポスドクと同じように、男性よりも女性の方がだんだん年齢をふえるに従って多くなってきているということで、女性のポスドク割合が年齢が高くなるにつれて増えるというのは、もしかしたらもともと博士課程学生の時点で、こういった年齢構成になっているということも原因ではないかというふうに思います。
  それから、14ページの博士課程学生の進路状況を分野別に見てみますと、ポスドクの場合は理学関係と工学関係はほぼ同じだったんですけれども、博士の場合は工学が一番多いく、それに次いで保健の分野が多いということは一つの特徴になっております。
  16ページに、今回初めて設けた調査項目としまして、実際に博士課程在籍者はどの程度の金額を支給されているかということを調べております。博士課程在籍者の2割程度が生活費相当額を受給できることを目指すということが基本計画にも載っておりますが、今回の調査結果では、5万円未満が52.5パーセントと半数を占めています。それから、5万円以上10万円未満が21パーセント。合計しても10万円未満のケースは全体の74パーセントにも達し、逆に10万円以上もらっている方は26パーセントということで、余り経済的支援というのはなされていないんじゃないかというふうに考えます。
  以上でございますけれども、こういった調査というのはトレンドを追って調べていくことが大切なことだと思いますので、今後とも文部科学省本省と連携しながら続けていきたいなと考えております。以上です。

【柘植主査】

  ありがとうございます。
  これは今日は報告ということでありまして、必要に応じてまた議論のアジェンダとして取り上げていきたいと思います。
  少し時間オーバーを許していただきまして、今後のスケジュールの案について事務局の方からお願いします。

【高比良人材政策企画官】

  資料5に「人材委員会のこれまでの経緯と今後のスケジュール案」ということで、時系列に少し整理をしております。
  第1期基本計画の後の第2期基本計画が2001年から始まった直後、2001年の10月にこの人材委員会は設置されています。現在第3次提言まで出ておりまして、2005年7月には「検討の整理」ということで、「多様化する若手研究人材のキャリアパスについて」という報告書が出されています。
  2006年4月から第3期基本計画が始まっておりまして、この2007年3月から2008年3月までの一年については、冒頭に主査からもお話がありましたけれども、一つとしては、第3期基本計画に基づき実施している事業の紹介及びその効果の検証というものをきちんとやっていきたい。それから2つ目としまして、科学技術関係人材施策全般の現状の課題等々の整理をしていきたい。二、三か月に一度のペースで年間四、五回を予定したいと思っております。
  2008年の4月、来年度に入ってからは、第4期科学技術基本計画の策定に向けた論点整理を進めていき、2009年中に中間まとめができればと考えております。それから、2010年に提言をまとめて、2011年4月からの第4期科学技術基本計画に反映をさせればいいかなということで、ちょっと長期のスパンで検討をした次第でございます。
  次回は現時点では10月ごろの開催予定でして、議題もまだまだ予定でございますけれども、平成20年度の概算要求、それから第3期までの人材委員会提言及びその取り組み状況整理ということも主査から宿題としていただいておりまして、ここをきちんと整理をして皆様にお見せしたいと思っております。また、先ほど説明がありました雇用状況調査に加えて、キヤリアパス多様化促進事業に採択された機関にご協力をいただきまして、ポストドクターの進路の動向調査をやっておりますので、それも含めてご紹介をして、いろいろ審議を進めていきたいと思います。それから、次回には女性研究者の支援モデル育成事業の現況について、効果の検証等を行っていければと思っている次第でございます。
  事務局からは以上です。

【柘植主査】

  ありがとうございます。
  このスケジュールを見ますと、我々委員会としては、来年の春ぐらいまでは今までのような課題の論点の摘出・整理という作業のための比較的自由な時間を持てそうであります。
  来年春ごろからは、少し次期基本計画を視野に入れたまとめ、施策提言まで行うという作業に入っていくと、そういうことを覚悟せねばならないなというのが、このスケジュール案から出ました。
  最後に事務局の方から何かございますか。

【高比良人材政策企画官】

  次回の日程につきましては、後ほど事務局からご案内をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。以上でございます。

【柘植委員】

  今日は本当に時間が足りず、かなり議題1、2で本質的な議論が出かかっていて、多分、各委員は言い足りないところがあったんじゃないかと思いますので、ぜひとも忘れないうちに事務局の方にメールで出していただいて、来年の春までの間にこれを整理していく作業に乗せていきたいと思います。
  それでは、時間が過ぎてしまいましたけれども、本日の委員会は閉会としたいと思います。

午後0時8分 閉会

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