平成20年8月29日(金曜日)13時2分~16時4分
文部科学省 3階F1特別会議室
柘植主査、鳥居主査代理、伊藤委員、大隅委員、興委員、小野委員、小林委員、所委員、鳥井委員、美馬委員、三宅委員、室伏委員、森下委員、山野井委員、吉見委員
泉科学技術・学術政策局長、岩瀬科学技術・学術総括官、川端基盤政策課長、高比良人材政策企画官、角田総括上席研究官(科学技術政策研究所) 他
午後 1時2分 開会
【柘植主査】
定刻になりましたので、人材委員会第43回を開催します。
それでは、本日の配付資料の確認を事務局のほうからお願いいたします。
【高比良人材政策企画官】
それでは、資料等の確認をさせていただきます。いつものとおり、議事次第、委員名簿、座席表をご確認いただきたいと思います。次に、配付資料の確認でございますけれども、資料1としまして、「大学・公的研究機関等におけるポストドクター等の雇用状況調査」の概要版でございます。資料2としまして、「学校基本調査速報」の関係データでございます。資料3としまして、「審議課題2 社会の多様な場で活躍する人材の養成方策について(論点メモ)」でございます。資料4-1としまして、これは前回にもお配りしましたけれども、「審議議題2の関係資料
」でございます。資料4-2としまして、これも前回もお配りしておりますけれども、「審議議題2の関係資料
」でございます。資料5としまして、「科学技術関係人材総合プラン2009」、資料6としまして、「次回の開催予定」でございます。参考資料1としまして、「大学・公的研究機関等におけるポストドクター等の雇用状況調査」の冊子体でございます。参考資料2としまして、「第42回人材委員会の課題設定と方策について(案)」でございます。参考資料3としまして、「人材育成に関する提言等」をつけさせていただいております。
それから、その他、机上資料といたしまして、関係資料をファイルにとじさせていただいております。また、「人材委員会での今後の議論のための整理ペーパー」「科学技術に関わる人材のイメージ(案)」、それから、4人の委員の方々からいただきました意見を机上配付資料としてお配りしておりますので、よろしくお願いいたします。
以上でございます。
【柘植主査】
ありがとうございました。
それでは、本日の議事の構成について説明をしたいと思います。前回の第42回の人材委員会では、第4期の科学技術基本計画の策定を見据えて審議を進めております6つの議題のうち、審議課題2「社会の多様な場で活躍する人材の養成方策について」の議論をいただいたわけです。本日も、前回に引き続きまして、同じ審議課題についてご議論をいただきたいと思います。この審議課題につきましては特に重点的に議論いただきたいと考えておりまして、委員の皆様方のご協力も得て、いつもより1時間多く時間をとらせていただきました。遅くとも16時には終わりたいと思います。十分な自由討議の時間をとっておりますので、委員の皆様方におかれましては、具体的な方策について活発な議論をいただきたいと思います。
それでは、本日の審議に入る前に、議題の2、その他の(1)と(2)について報告をいたしたいと思います。この2件は、今日審議いただく上で関係の深い事柄であるということで、報告をいただいた後、審議に入りたいと考えております。
まず、その他の(1)でございます。「大学・公的研究機関等におけるポストドクター等の雇用状況調査(2006年度実績)」についてであります。概要の説明を事務局からお願いしたいと思います。
【角田総括上席研究官】
それでは、説明させていただきます。資料は、資料1と参考資料1になります。説明は、主に資料1の概要版のほうでご説明させていただきます。
本調査は、2006年度内に大学・公的研究機関等で研究活動に従事する研究者などのうち、ポストドクターと、それから経済的支援を受ける博士課程在籍者の人数を調べたものでございます。調査方法といたしましては、大学などの研究機関に対して調査票をお送りいたしまして、そのうち回答をお送りいただいたところの情報を集めたものでございます。
1枚目の囲んであるところでポストドクターなどの定義を書かせていただいておりますけれども、基本的には任期つきで任用されている方で、大学などの研究機関で研究業務に従事している方であって、教授や助教授でない方。それから、独立行政法人などの研究機関において研究業務に従事されている方のうち、所属する研究グループのリーダーや主任研究員、いわゆるPIでない方を指してございます。ここではいわゆる満期退学者というカテゴリーの方を含んだものになってございます。
それから、経済的支援を受ける博士課程在籍者でございますが、博士課程に在籍されている方で、大学などからの経済的支援を受けている方でございますけれども、ここで言う経済支援とは給付型のものを指しており、返還義務のある奨学金など、そういったものは除いてございます。
次に、中身でございますけれども、2ページ目をごらんいただきたいのですが、まず『
概況』でございます。「ポストドクター等」の人数は1万6,394人ということで、昨年、1年前の実績から約900人程度増加し、伸び率としては5.8パーセント。一方、博士課程在籍者のうち経済的支援を受ける方が3万8,563人という数字になっておりまして、1年前の実績と比べますと、2,400人程度の増ということで、6.7パーセントの増になってございます。その下の図1で延べ人数の推移をかかせていただいておりますが、「ポストドクター等」と、「経済的支援を受ける博士課程在籍者」、それぞれ人数的には増えておるところでございます。
続きまして、『
ポストドクター等の機関種別の雇用状況』ということで、どんな機関でポストドクターの方が雇用されているかということを調べました。機関別割合で申し上げますと、「大学」が66パーセントと最も多くございまして、その次に「独立行政法人」が31パーセントになってございます。下の図をごらんいただきますと、緑の点線で囲んでおる部分が「国立大学」、「私立大学」等々を含めた大学でございまして、全体で1万743人になってございます。その次が「独立行政法人」、紫色の部分でございますが、全体の人数が5,000人になってございます。
3ページ目に移りまして、『
ポストドクター等の財源別の雇用状況』、ポストドクターの給与のもとの財源は何だったのかということを調べさせていただきました。その結果でございますが、「競争的資金・その他の外部資金」が46パーセント、「運営費交付金・その他の財源」、いわゆる「内部資金」が31パーセントという結果になりました。もう少し詳しく図で見ますと、「競争的資金」が全体の46パーセント、緑色の点線で囲んだところでございますが、内訳は、例えば「21世紀COEプログラム」でございますとか、「科学研究費補助金」でございますとか、「戦略的創造研究推進事業」という競争的資金のプログラムが出ております。それに続きまして、「運営費交付金・その他財源」が31パーセントになっておりまして、このほかに「フェローシップ・国費留学生等」が16パーセント余りになってございます。
続きまして、『
ポストドクター等の分野別の雇用状況』、どんな分野でポストドクターの方が研究をされているかということを調べましたところ、「ライフサイエンス」の分野の占める割合が39パーセントと最も高くなっています。下の図をごらんいただきますと、「ライフサイエンス」が6,459人ということで、青色の部分でございますけれども、割合としては一番高くなっています。この分野というのは科学技術基本計画の重点推進4分野で調べておりまして、その次が「人文・社会」系、あるいはその他といった分野でございます。
4ページ目をごらんいただきたいのですけれども、『
ポストドクター等に占める新規博士課程修了者』、これはドクターを出たばかりの方がポスドクになられた方のうちどのくらいの人数を占めるかということで調査させていただいたもので、これは今回の調査が初めてでございます。結果は、下の棒グラフをごらんいただきたいのですけれども、「国立大学法人」が8,000人のうち1,500人、「公立大学」が26人といった割合になっておりまして、ポストドクター全体の1万6,000人中、2,500人がドクターを出て初めてポストドクターになった方ということになります。これを見ますと「国立大学法人」から「大学共同利用機関」までのいわゆる大学が全体のほとんどの割合を占めておりますので、ドクターを出たばかりの方は最初のポストドクターは大学で実施をされるという傾向が明らかになっております。
以上がポストドクター関係のデータでございまして、
以降は『経済的支援を受ける博士課程在籍者のデータ』になってございます。
『
経済的支援を受ける博士課程在籍者の財源別の支援状況』いうことを集計いたしました。結果でございますが、一番割合が高いのは「運営費交付金・その他の財源」というカテゴリーでございまして、全体の57.9パーセントを占めてございます。一方、「競争的資金・その他の外部資金」の割合は、全体の26パーセントでございます。緑色の点線で囲んでいる部分でございます。「フェローシップ・国費留学生等」というカテゴリーが16パーセントでございますが、この割合は、昨年度と比べますと、1年前のデータが14.6パーセントでございましたので、割合的には伸びているカテゴリーでございます。
続きまして、5ページ目をごらんいただきたいのですが、『
経済的支援を受ける博士課程在籍者の分野別の支援状況』ですが、「ライフサイエンス」が全体の32パーセントで一番多く、続きまして「人文・社会」が19.6パーセントでございます。
『
経済的支援を受ける博士課程在籍者の支給額別の支援状況』は、経済的支援を受ける博士課程在籍者の給与を聞いております。レンジで5万円単位でお伺いしたものですが、1カ月当たりどのくらい支援を受けているかということでございます。結果は、「5万円未満」という方が全体の52.8パーセント、右半分の青いところでございますが、2万300人程度でございまして、続きまして、「5万円以上、10万円未満」が20パーセント、「10万円以上、15万円未満」が5.8パーセントということで、全体の80パーセント近くが15万円未満という結果になってございます。
なお、参考資料1のほうは全体のさらに詳しいデータを掲げさせておりますけれども、ご参考にしていただければと思います。
資料の説明は、以上でございます。
【柘植主査】
ありがとうございました。研究の原動力という目で見るのと、それから人材育成の要強化点という面でも、両方の面で示唆に富んだデータだと思うのですけれども、5分ほど時間がございますので、ご質問がございましたら、どうぞ。
どうぞ、森下委員。
【森下委員】
言われたのかもしれませんが、4ページの経済的支援を受ける博士課程在籍者ですが、これは全博士のうち何パーセントぐらいが経済的支援を受けられているのでしょうか。
【角田総括上席研究官】
博士課程の在籍者数でございますが、学校基本調査上は7万4,000人程度ですので、ここでとらまえられている方々というのは全博士課程在籍者数の半数近くになろうかと思います。ただ、このデータは延べ人数というふうに言っておりますけれども、年度途中で機関を移られた方がいらっしゃれば、その方はダブルカウントになってしまいますので、必ずしも正確な数字が出ているわけではございません。
【森下委員】
もう1点ですが、その中で国立大学法人、公立大学、私立大学の内訳というのはいかがですか。
【角田総括上席研究官】
参考資料1のほうの冊子でございますが、16ページをごらんいただきたいのですけれども、図2-3-1の機関種別内訳というものがございます。このグラフがその内訳になります。国立大学法人が約3万人で全体の78パーセント、私立大学が6,600人ということで全体の17パーセント、続いて、公立大学、共同利用機関という順番になってございます。
【柘植主査】
関連の見方ですけれども、博士課程在籍者トータルで7万4,000人ぐらいと見ると、3年間と考えると1学年2万4,000人ぐらいいて、この4ページの
のポストドクター等に占める新規博士課程修了者全体が5.2パーセントで2,486名というと、毎年、博士課程修了者が大体2万4,000人出て、10パーセントの2,400人がポストドクターに行っていると。そう理解すると、残りの方々は産業界も含めてポストドクター以外の職をしっかり持っているというように理解すると、わりとポストドクター以外の職を得て活躍している人の割合が今までよりも大きいと感じます。私は3割ぐらいあるかなと思ったのですが、1割しかポストドクターがいないという数字の読み方でいいのでしょうか。
【高比良人材政策企画官】
次の、私のほうから説明するデータのほうに載っているのですけれども、資料2の3ページを見ていただければありがたいのですが、大学院の博士課程の修了者の推移というのがあると思うのですが、7万4,000人を単純に3で割ることはできませんので、毎年大体1万6,000人の課程修了者が出てございます。平成20年3月末現在で見ますと、そのうち63パーセント、黄色のところですが、1万人が就職をされている。残り、その他のピンク色のところが4,425名で、少しデータが詳しく整理をされていませんので、このピンク色全部がポストドクターとは申しませんけれども、一時的に就職をされた方等がここに含まれておりまして、その差は少し不明なところがございますが、毎年1万6,000人の大学院の修了者が出ているということでございます。
【柘植主査】
あえてコメントを申し上げると、今の話でピンク色のところの2,000名というかなり大きな数字が、これだけ貴重な人材がよく見えていないという問題と、前から言われていますが、63パーセントの修了者は産業界に行っているのだと。この2つが大きな問題だなと思います。
どうぞ、興委員。
【興委員】
図7で「人文・社会科学」が7,557名と出ていますね。これはいわゆる博士課程在籍者で、他方、ポストドクターにおいては「人文・社会科学系」が大体10パーセント弱の1,600人弱ですけれど、それとあわせて、参考資料の本報告のほうで、その「人文・社会科学系」の方々がどういう財源をもらっていらっしゃるかというのが21ページにございますけれども、ぱっと見た印象としては、「人文・社会科学系」というのも、純粋な「人文・社会科学」ではなくて、ここで言っているのは、自然科学系に近い「人文・社会科学」を言っているのですか。本当の純粋な「人文・社会科学」ですか。
【角田総括上席研究官】
こちらは、一般的に言われる「人文・社会」をとらまえているものと考えていただいて結構だと思います。
【興委員】
そうしますと、財源的に見ますと、「人文・社会科学」は、いわゆる大学の運営費交付金でもらっていらっしゃる方が……。
【角田総括上席研究官】
A-66、後ろのほうにあります。
【興委員】
A-66ですね。A-66の「人文・社会分野」における財源別内訳で、運営費交付金の方からもらっているのは4,900人なのですね。それに相当するポストドクターが270名だとすると、それ以外の競争的資金でもらっている人は圧倒的に博士課程というのがポストドクターに比べて多いのですが、「人文・社会科学」は、一つは博士号が非常に取りづらいという実態がございますので、それを反映しているものと思っていいのですかね。「人文・社会科学」に経済的支援を受ける博士課程在籍者の分野別の支援状況というのを見ると、とても大きなウエートを占めているというような印象を持つのですね。ところが、ポストドクターになってくるとほとんどそれが見えなくなってきて、なぜそうなっているのかなというのがよくわからなくて、そもそも博士号が出ないからポーションが低くなるのかどうか。どうしてでしょうかと思いましたので。
【角田総括上席研究官】
そういったところの分析も今後の課題になるかと思っております。
【柘植主査】
よろしいでしょうか。議論のときにまた引用していただく形で、次へ進んでもよろしいでしょうか。
それでは、報告事項の2つ目で、学校基本調査速報(平成20年度)についてということでございます。学校基本調査の速報が出ておりまして、当委員会に特に関係するデータにつきまして、事務局から報告願いたいと思います。
【高比良人材政策企画官】
資料2をごらんいただきたいと思います。8月7日に速報値が出たものに関して、我々の人材委員会の関連する部分についてデータを取りまとめたものでございます。
1ページ目でございますけれども、ここのところ大体、全体の大学院の在学者数の推移ということであれば右肩上がりになってはいるのですが、特にグレー色の博士課程学生のところを見ていただくと、平成19年をピークに微減という状況になっております。定員そのものは減ってはいないのですけれども微減ということで、やはり修士から博士になかなか進まない状況というのが少し見えてとれるかと思います。
それから、2ページ目でございますけれども、これは修士の修了者の推移でございます。修士も、黒い折れ線グラフのところで平成19年3月よりも平成20年3月のほうが修了者の数が微減しておりますが、これは、高等教育局にもいろいろ尋ねてみましたけれども、この原因はわかっておりません。修士の定員は相変わらず増えておりますけれども、平成20年3月でなぜ微減したのかはわかりませんが、就職状況としては右肩上がりになってきておりまして、75パーセントが就職できておりますし、進学者については、やはり最近については少しずつ微減でございまして、平成20年3月については、進学は10パーセントということになっております。
それから、3ページでございますけれども、これは大学院の博士、いわゆる後期課程でございますが、平成20年3月におきましては、修了者数は若干減ってございます。ただし、就職状況につきましては、先ほども申し上げましたけれども、59パーセントから63パーセントということで、ここは、この後にも少し出てきますが、我々としては少し、大幅に増えたかなと思っております。
4ページをごらんいただきたいのですが、その博士後期課程修了者の就職者数の推移でございます。平成16年を底といたしまして、最近は若干ずつ上がってきていたわけですけれども、数パーセントの世界でございました。ただ、平成19年から平成20年にかけて4.4ポイント増ふえてございます。これは景気がよくなったせいじゃないかということが言われるわけですけれども、ちなみに高校生の就職状況は、1年前と比べて0.5パーセントふえており、大学学部学生については、2.3ポイントの増加です。修士についても2.6ポイントの増加でございますけれども、博士についてのみ4.4ポイント増加しております。我々にとっては非常にうれしいことではございますけれども、その原因は何かということは今のところ判明はしておりませんが、博士の就職者数が近年になく伸びているということが見えてとれます。
その後に、5ページ、6ページと、就職の内訳をつけてございます。5ページ目が平成20年度のデータでございます。これが6ページの平成19年度と比べて4.4ポイント増えているのですが、どこが増えているかといいますと、研究者のところが前年に比べて209名増えております。技術者のところも、前年に比べて309名ふえております。教員のところはほとんど変わりません。その他のところですが、そこのところを見ていただくと、保健の分野がほとんどでございまして、医・歯・薬というような専門職業人でございますけれども、その人たちがどうなったかというところではなくて、そこのところはたまたま平成20年と平成19年は違うのですが、要するに研究者、技術者の就職が格段増えているということです。就職者の中でも、その他というところ、これは一般の営業とか何とかも含むのですが、ここも全体的に増えております。
分野別に見ますと、工学分野が急激に伸びている。工学分野、農学分野、それから一番下のその他の分野の就職者が伸びております。保健のところは若干減っているということですけれども、そういう実態が見てとれるということでございます。
私のほうからは、以上でございます。
【柘植主査】
ありがとうございます。
これは先ほどの議論と交わしていますので、特に今というのがございましたら。どうぞ。
【伊藤委員】
今のご説明の中で、1点確認させていただきたいのですが、例えば3ページ、2ページでもいいのですけれども、一番右端を見ますと、平成20年度、63パーセントが就職者、27パーセントが「その他」ということで、この「その他」の意味ですけれども……。そうか、先ほどから議論があった、就職者というのは企業への就職だけではないわけですね。
【高比良人材政策企画官】
はい、違います。教員も含まれております。
【伊藤委員】
大学等も含めて、とにかく職を得た方。それから、この63パーセントと27パーセントを足しますと90パーセントで、残り10パーセントがあるわけですけれども、「その他」と残りの10パーセント、その違いというのはどういうことなのか教えていただきたいと思います。
【高比良人材政策企画官】
我々もいつもそこが悩むところでございまして、要するに、3ページの「その他」というのは、一時的な就職、アルバイトも含めて一時的に職についたというのが明確に分かっているという方でございます。先ほど申し上げました、あと10パーセントぐらいが分からないのですが、これは、どうなったか分からない。要するに、調べようがないといいますか、追跡できないというか、そういうことでございまして、黄色のところは機関としてしっかりと就職ができたということが把握できている。それから、ピンク色のところは、何らかの形で、アルバイトも含めて、一時的にでも就職ができている。しかし、残りの部分は不明だということです。
【伊藤委員】
「その他」というのは、就職はしているけれども、定職では必ずしもないということでしょうか。
【高比良人材政策企画官】
はい。ただ、今、フォローアップも含めて少し精査しているのですが、実は機関が出すときに、ポストドクターでフルタイムできちんと研究に従事している人を黄色に入れているところもあります。それから、ポストドクターをピンク色に入れているところもあります。これは、今後、調査を実際にするところとも、高等教育局ともいろいろ言っているのですが、きちんと、どちらに入れるのかということも本当はやらないといけないのですが、その精査は別の調査で少しやっておりまして、そこのところはポストドクターが両方に入っている可能性があるというのは、少し見えてきております。
【伊藤委員】
分かりました。
【柘植主査】
興委員、どうぞ。
【興委員】
2ページと3ページとの比較で、2ページは修士課程修了者ですね。それで、博士課程の修了者との関係で、仮に、三、四年のギャップで博士課程の方に影響があると、そう見ますと、2ページの修士課程の進学者というのは、トップの時代が大体9,500人ぐらいで、今は非常に減ってきている。今から三、四年前というと、約9,000人が博士課程に行って、そのまま順調に学位を取ったとすれば、この1,600人のうちのそのぐらいなのですね。多分、そこまでは数字がいっていない。後手を引いている可能性もあるので。そうすると、博士課程の修了者の内訳として、ストレートにドクターに行かれた方のほかに、企業人をもう少しこの中に入れてみないと、実社会に行かれた場合も、企業にそのまま戻られるケースもおありだろうと思うのですね。1つはそこのところの数値を出していただければありがたいというのと同時に、もう1つ重要なのは、マスターを卒業されて直接ドクターに行く方がこれだけ減ってきているという、その重みをもっと具体的な政策課題として取り組んでいく必要があるのではないかなという感じがいたします。それは、今は安定的な職が得られるから、職が得られれば、学位はいずれ自分がチャレンジできるのだということで行かれるケースの方のほうが結構多いかと思いますし、比較的チャレンジングな精神が失われてきているという、そういう問題もあろうかと思います。博士課程の魅力というのは、何が魅力だろうかといういろいろ問題の解析にもつながる可能性はあるのだろうと思います。この10年この方、このグリーン色のところですか、とても低くなっているというのは、憂慮しなきゃいけないのではないかなと思いました。
【柘植主査】
ありがとうございます。
鳥居委員、どうぞ。
【鳥居主査代理】
今、興委員がおっしゃったのは非常に印象的で、2ページ目の青いところの数がずっと減ってきていますね、マスターからドクターに行く。このことを明らかに我々は実感しています。ところが、定員の充足率というのはかなり厳しい指標が存在していますので、各大学につきましては、その差額を何で埋めるかというわけで、アジアのほうからの留学生、それから社会人留学生と称して、実質は来なくても形だけを数合わせに置いているというような、そういう現状があると思うのですね。これはやはり、こうした数値で見せていただきますと、少し考えなくてはいけないなという印象を持ちました。
【興委員】
今の点でもう1つフォローさせていただきますと、私みたいに外から大学に行ったのはなおさらそう思うのですが、大学の教員の責務が今後伸びる可能性があるのかどうか、その見きわめは、一つには教員の役割の重要なところだろうと思っていまして、そういう可能性のある人に対してはチャレンジする機会を与えていく、そういうことも場合によっては大学人の責務じゃないかなという感じがしてございます。
【柘植主査】
それでは、次に進ませていただきたいと思います。議題の審議課題ですが、お手元の机上配付資料1という、「人材委員会での今後の議論のための整理ペーパー」を私も見て少し頭の中を整理しながら今お話ししているのですけれども、反すうしてみますと、この整理ペーパーで一番上の目標の下に書いております「1.知識基盤社会が求める科学技術関係の人材像」については、前々回から議論をしていろんな意見が出て、今日も机上配付資料についていますが、これはそのままに置いておいて、その下の「2.知識基盤社会の多様な場で活躍する人材の養成方策」に前回から議論が入ったわけであります。今の2の命題の中で前回審議いただけなかったのはこの表で言うと「2-
理工系離れの対策」というわけですけれども、この対策として、量的なミスマッチの解消方法や博士課程に進学するインセンティブなど、理工系のキャリアパスを魅力あるものにするための方策について、今日はまず議論をしていただきたいと思います。その後、前回議論いただきました、「2-
企業人としての基礎力不足への対応など、産学をつなぐ人材養成方策」、あるいは「2-
教員の意識改革のための取組」も含めまして、「2.知識基盤社会の多様な場で活躍する人材の養成方策」全体について議論をしていきたいと考えております。
そういう意味で、審議に入る前に、審議課題2-
について、前回の復習になりますけれども、事務局から再度、資料の説明をお願いしたいと思います。
【高比良人材政策企画官】
ご説明させていただきます。その前に、まず資料3をごらんいただきたいと思います。今、主査からご説明がありましたけれども、資料3の下の赤囲のところ、2-
をまず審議していただいて、その後、2-
、2-
も含めて、全体の審議を今日はお願いしたいと思っております。
2-
の説明でございますけれども、審議課題2の関係資料
は3つに分かれておりまして、右下に15ページと書いてあるところからが2-
でございます。審議課題2の関係資料
でございますが、これが今日まず審議をいただく2-
でございまして、多様な場で活躍する人材を養成し、人材の「好循環」を創出するために、第4期「科学技術基本計画」において提言すべき具体的な方策は何かの中の理工系離れの対策で、1つが、大学・大学院の供給とアカデミックの需要、研究機関の需要、産業界の需要との間の量的なミスマッチを解消。それから、博士人材が求められる分野については、優秀な人材が博士課程に進学することを促進するため、博士課程に進学するインセンティブを高めるということでございます。
1枚めくっていただきまして16ページでございますが、これはさまざま今まで出ているデータを引っ張り出して一覧表にしてあるのですが、
が大学教員の本務教員の分野別の構成比、
が博士課程入学定員の分野別構成比、
が公的機関・非営利団体の研究者の分野別構成比、それから、下に行きまして、
が大学、公的研究機関等のポストドクター等の分野別構成比、
が企業等の研究者の分野別構成比で、これらを比較したときにどういうものがあらわれてくるかということでございますけれども、特に、17ページでございますが、入学定員と企業の研究者の専門分野別の構成比を見てみますと、博士課程入学定員の分野別構成比というものが左側のようになっておりまして、「保健」が29パーセント、「工学」が24パーセント、「理学」が9パーセント等々となっておりますけれども、企業等の研究者における分野別の構成比を見ますと、「工学」が我が国においては圧倒的でございまして、76パーセントを占めている。「理学」の16.1パーセントというのはありますが、分野として見たときにこのようなアンバランスが見えるのだけれども、そこのところをどう、社会の多様な場でほんとうに活躍できるようなシステムができるのかどうか。それから、18ページを見ていただいても、左側がポストドクター等の分野別の構成比でございまして、これも先ほどご説明がございましたけれども、「理学」が31パーセント、「工学」が約30パーセント、「保健」が15.1パーセントという分野別の構成比になっているのですが、企業等の研究者の分野別構成比は先ほども申し上げたとおりということになっている。これは我が国の産業構造の特性かもしれないということです。
19ページは米国との比較でございますけれども、まず上の段でございますが、米国との比較がきっちりとできるわけではないのですが、日米の比較ということで、上のほうの箱の中の左側が我が国のポストドクターの分野別構成比でございます。右側が米国のポストドクターの分野別構成比でございますけれども、我が国においては少し細かく分野を分けておりますが、日本も米国もライフサイエンスの分野というのは多い割合を占めておるということはそんなに変わりがないです。しかし、下のほうは日米の企業等の研究者の専門別構成比になっておりまして、上と下とを見てもらうと、先ほども申しましたが、日本では少し企業における研究者の構成比にアンバランスが見える。だけれども、米国においては、「工学」、「理学」、「生物学・農学・ライフサイエンス」のような、こういう分野がある程度均等に産業の中で構成されているというのが見えてきていることでございます。ですから、こういう日米における産業構造の違いも含めて、今後どういう研究を推進するのかというようなことも少し考えないといけないのかもしれないなと思っております。
20ページでございますけれども、これはあくまで暫定的な推計でございますので、これを見てどうこうということはないのですが、ポストドクターが1万6,400人ぐらいいるとして、「キャリアパス多様化促進事業」を委託している8機関の進路動向を調査した結果、大体33パーセントの人たちが同一機関のポストドクターにはもういないということが見えてきたものですから、その数値をもとに、どこにどれくらいの方々がポストドクターから行っているのかというようなことを推計値として整理をしたということでございます。これはあくまで参考でございますから、この数字がすべてだということはございませんが、何となくこういうイメージでポストドクターが進路を変えていっているということを見ていただければと思っております。
21ページにつきましては、多様な場で博士号取得者が活躍をする場がないかということで、1つは、昨年非常に話題になりました秋田県における博士号保有者を対象とした教員採用についてということで、募集の概要、選考の概要、最終的には、6名採用されたということでございます。そこに57名の応募者があって、非常に優秀な方々が今、秋田県の教育委員会のいろんな場で活躍をされているということでございます。
22ページになりますと、これは博士後期課程学生への経済的支援の背景というか、データでございますが、左側の箱を見ていただきますと、博士課程学生の生活状況というのが毎年出るわけですけれども、平成18年度の学生生活調査報告から見てみますと、博士課程学生においてもアルバイト従事学生というのが78パーセントいます。
を見ていただきますと、奨学金の受給者というのも、これは貸与も給付も含んだ総数でございますけれども、65パーセントが何らかの形で支援を受けている。それから、
でございますが、収入総額に占める割合についても、年間大体280万ぐらいかかっておりまして、家庭からの給付、奨学金、それでも足りなくて、アルバイト収入、それから貯蓄等の取り崩しというようなところで学生生活を営んでいるということが見えてきております。
それから、「奨学金貸与額」ですけれども、仮定としまして、大学の学部4年、修士2年、博士後期課程3年、すべて第一種の奨学金、学生支援機構から奨学金を借りるとすると全体で850万円ぐらいの貸与になるということで、これは、今後それを返していかないといけない話になりますので、非常に大きな負担になるということが見えるということです。
それから、右のほうでございますけれども、これは平成17年度に8大学の工学系の博士後期課程学生804人にアンケート調査を行ったものでございますが、「博士課程の教育の中身に魅力を感じているグループ」であっても、やはり奨学金を充実すべきだと。この奨学金というのは、我々としては、貸与型だけではなくて、給付型とか、それから奨学金免除も含めて奨学金を充実すべきと考えているのではないかと思っております。それから、博士課程の教育の中身に魅力を感じないグループにおいても、やはり一番充実してほしいというのは、奨学金を充実すべきというような意見があります。
それから、「高等教育費の学生負担の国際比較」でございますが、日本においてはその学生負担が44.9パーセントあるということで、ほかの国に比べて学生の負担が非常に大きいというのが見てとれます。
23ページでございますけれども、これは日米の比較でございます。先ほども少し説明がありましたが、上の「日米の博士課程学生に対する経済的支援状況」でございますけれども、日本においては、支援をされている方が博士学生の48.3パーセント、まだ半分にも満たっておりません。48.3パーセントで、そのうち、「フェローシップ」(給付型)のものが5.5パーセント。ここはほとんどがJSPSの特別研究員だと考えていただいて結構です。それから、40.9パーセントがRA等の「アシスタントシップ等」ということが見てとれます。米国においては92.9パーセントの方々が支援を受けておりまして、支援なしというのは7.1パーセントでございます。これはアメリカの教育省が調べたものをピックアップしたものでございますけれども、そのうち、「フェローシップ・グラント」については約6割、無償の援助金がございます。それから、RA、TA等の教育補助業務の対価ということも48.9パーセントありますけれども、この両方を受けているという方もダブっておられます。そういう状況が見てとれるということです。
下の図の、右のほうですが、ここでは日米で分野別にどれくらい違いがあるのかというのを見てみますと、どの分野についても日本は非常に経済的支援が遅れているというのが見てとれるということです。
24ページでございますが、上の「1.我が国の博士後期課程学生に対する支給別の支援割合」でございますけれども、先ほども話がありましたが、日本における経済的支援というのは、ほとんどが5万円未満、博士後期課程学生の半分の支援であっても、さらにそのうちの半分以上の人たちが5万円未満の支援しか受けていない。5万から10万を加えても73パーセントぐらいでございまして、15万円以上ということになりますと、7.9パーセントぐらいの方々しか生活費相当程度を受けていないということが見てとれる。
それから、下の「2.米国の博士後期課程学生に対する分野別の平均支給額」のところに行きますと、分野別に見ても、アメリカにおけるライフサイエンス、物理学、それから、工学、コンピュータサイエンス、数学、こういう理工系分野の方々については、平均月額として20万円以上の支援を受けているということが見てとれます。
25ページでございますけれども、そうは言いながらも最近は各大学独自に博士後期課程在学者への経済的支援の取り組みが少しずつあらわれてきておりますが、まだここに掲げられている大学でございますし、これの中身を見ても、ほとんどの大学が授業料相当ぐらいの額が精いっぱい。東京農工大学においては、相当選抜をした上で最高額は年額240万円というのもありますけれども、これは博士後期課程学生全部じゃなくて、ほんとうに選ばれし人でございますし、全体を支援しようとすると、東京大学であっても年間30万円程度を支給するのが精いっぱいというような状況もございます。
そういう非常に負担の大きいところにおいて、どう支援をしていけばいいのか。それから、先ほどもありましたけれども、どう考えれば博士後期課程学生の進学を、要するにインセンティブを持ってできるのか。それから、もっと先は、出口が明確に見えてきて、博士後期課程に進んでも、その先がしっかりと見えて、安心して進学を志望していってということで、どうすればそういう好循環が生まれるのかというのを、ぜひご提案をいただければと思っております。
以上でございます。
【柘植主査】
ありがとうございます。高比良企画官が最後に言いました好循環ですね。好循環を創出するという視点で、これは一つの打ち手では済まないから、幾つかの打ち手が相乗効果でプラスの循環にする策、これが我々に課せられた課題だと思います。そういう観点で20分ほど、理工系離れの対策、人材の好循環を創出する策という点、自由討論に入りたいと思います。
討論に入る前に1つ、資料3で、審議
、赤で書いています2-
ですが、質問というか、不満もあるのですけれども、2-
の理工系離れ対策でマルが2つ書いてありまして、1つは量的なミスマッチを解消するということと、2番目のマルは優秀な人材が博士課程に進学することを促進するインセンティブを高めると、この2つが書いてあるのですけれども、好循環をする中には、1つ目のマルの量的なミスマッチだけではなくて、産業界の要求する質、博士課程修了者の質のミスマッチを解消するという、私は自分の経験から見てもそうですけれども、それが書いてないのは、それはどこかで議論が済んでいたという話だったのでしょうか。そうしないと、私は好循環のメカニズムというのは多分出てこないのではないかと思っているので。
【高比良人材政策企画官】
それは2-
に書いているのですが、産業界が求める人材とアカデミックが輩出する人材の間にある質的なミスマッチのところだと我々は思っておりまして、ここも、前回も少しご議論いただきましたけれども、今日も全体を通してご議論いただければと思っております。
【柘植主査】
今のところも含めまして、ぜひご意見いただきたいと思います。
伊藤委員、よろしくお願いします。
【伊藤委員】
本日の検討課題が理工系離れの対策ということで、私も今ご説明いただいたことでその中身を今改めて認識したのですけれども、ここでは既に理工系に進学した者がさらに自分のキャリアパスとしてその道をたどっていき、そういう人たちがほかの世界に入らないようにするための方策、つまり、まず博士課程へのインセンティブ、それからまた、社会に出ても、理工系というのでしょうか、その世界でなりわいを立てていく、そういうための筋道をつくってはどうかと、そういう話になるわけですね。私、もう少し前の段階を意識していました。理工系離れというのは、やはりその母集団、理工系に関心を持つ生徒たちの母集団、これをどうやって増やすのかということも含めての議論ではないのかと実は思っていました。しかし今のお話ではそれは飛び越えているように思ったので、ここで確認したいのですが、要するにこれは、理工系離れそのものをどうこうするのではなくて、自ら選んだ理工系の中で自分が一生食べていくために、損はしないよという、そういう筋道をつくればいいのだというふうにとれます。その前の段階で、例えば端的な話が、高等学校から大学に進学するとき、自分は理系を選ぶか、人文系を選ぶかと、そういったときにどのような方策をとって理工系の人材を確保するかというのも問題としてあると思います。これは昨年12月のOECDの調査結果でも、要するに、科学は好きだけれども、あるいは理科は好きだけれども、将来、自分は科学者になる気はないよというのが日本は他の国に比べて非常にその割合が高いというのが問題になっているわけでして、私はその点についてもここの場でも議論するのかと思っておりました。しかしそれはないという理解でよろしいわけでしょうか。
【柘植主査】
私の理解は、もし間違っていたら事務局のほうで直してほしいのですけれど、机上配付資料1という横書きのものがありますが、今の伊藤委員の重要な視点は、この審議項目の5ポツの次世代を担う人材育成方策のところで議論しようということを置いていたと思います。それからもう1つ、机上配付資料1の右のほうで中央教育審議会等の、いろいろ改革をしてくれているわけですね。これは進んでいて、我々科学技術・学術サイドから見たときに領空侵犯せざるを得ないと私は覚悟しておるのですが、まず基本的には中央教育審議会の各分科会の初等中等教育も含めた改革も視野に入れながら5ポツのところで議論をしようかと考えていたかと思うのですけれども、事務局、そういう理解でよろしいですか。
【伊藤委員】
分かりました。確かにそれでよろしいのだと思いますが、そうすると、今ここで議論しようとしている「2-
理工系離れの対策」という、私はこの表現がちょっと不的確だというふうに思います。「理工系の人材のキャリアパスの保証」とか、そういったようなことになるのではないかなという気がします。「理工系離れ」なる一般的な言葉を使うと、少し誤解を受けるのではないかなと思います。
【柘植主査】
そうですね。上流までさかのぼってしまいますので、副題のほうがいいのですかね。理工系キャリアパスを魅力あるものにするために。ずばり言うと、量的・質的ミスマッチとインセンティブの高め方と、こういうことですね。事務局、まとめの中で今の理工系離れというのは少し検討していただいて。
ほかに。興委員、どうぞ。それから、小野委員、森下委員、美馬委員、とりあえずそこまで。
【興委員】
私はこれまで2番目のインセンティブを高めるということで何の違和感もなかったのですけど、今日の外国との比較とか何かもずっと見ていて、また、実際上、日本人の修士課程修了の連中が結構実社会に飛び出ている実態。だけど、他方、日本には外国人の留学生でドクターコースにいらっしゃる人は結構多いのですね。産業界の連中も結構多い。というふうなことを見たときに、果たして、修士課程からドクターに行かないのは、大学の先生とも結構話したのですけれど、インセンティブだけではないのかもしれないという、そういう感じがしているのですね。それは、一番上に挙がっております産業界の需要との間の質的・量的なミスマッチとかいうのでもなくて、大学院教育そのものに対する懸念というのですか、何かそういうのもあるのではないかなという感じがしておりますし、もう一つは、社会がそういう博士課程を修了した人たちをどれだけ必要としているかという実態がなかなか見えないのと、現に日本の社会が博士課程の人たちをそんなに必要としていないのだと。むしろ、実利用、実用分野に明るいような、要するに社会をうまく回してくれる、そういう人材であればいいという意識がとてもあって、かつて私がマスターで四十数年前に役所に入ったときは、ほんの一握りしかマスターはいなかったのですね。まだ、行政の世界にマスターなんか要らないという。今の社会も、ドクターは要らなくて、社会に入って自分たちの分野できわめてくれればいいよという風潮。行政の世界にしたって、何にしたってですね。そういうデータが、例えば外国の社会における博士課程の人たちのプレゼンスと日本の社会におけるプレゼンスがどうだというふうな検証をちゃんとした上で、この人材委員会としては、今後の問題を考えれば、社会では博士課程の人たちをもっと大胆に展開していくのが必要だよというメッセージを出さないとこの問題の隘路を開くことにはならないのではないかという感じがしていまして、今あるのはどちらかというと、博士課程の人たちが出て、ポストドクター等1万人支援計画とかずっと出て、彼らの処遇をどうしましょうかということで多様化を図っていくような問題展開をしたのですけれども、どうもそうではなくて、彼らが博士課程に行くだけの意義が本当にあるのかということを示し得るかどうかというところをやっていかないと、この問題の正解を出し得ないのではないかなという感じがしています。
したがって、今おっしゃった量的・質的、それとインセンティブ、もう一つ、インセンティブになる前の何かがあるのではないか。今日もいろいろとお話しして、資料の22ページで、博士課程後期に対する要望ということで、中身に魅力を感じているグループと魅力を感じないグループで、共通点は確かに奨学金の話が圧倒的多数なのですね。だけど、もし仮に全体の1つ1つの質問事項についてのウエートづけも同時に聞いてみるとしたら、意外に奨学金は高くなくて、そうではないところが高い可能性もあるかもしれない。むしろそういうところをちゃんと対策を打たないと、正解を引き出せない。したがって、インセンティブの前にもう一つ何かを見きわめていく必要があるのではないかなと。そう思いました。
【柘植主査】
次のご発言に入る前に、主査として今の興委員の話を具体的に、ぜひ事務局にもお願いしたいのですけれども、あるいは我々の議論の中で、インセンティブの前に何かという、その視点か、インセンティブの要素をもうちょっと分解してみる。お金の問題もあるかもしれません。あるいは、社会に出たときの処遇の問題があるかもしれない。あるいは、処遇をしたくても能力がないというために、結果的にインセンティブの足を引っ張っている。論点は1つですね。インセンティブの前に何かという命題を課題設定するか、インセンティブの因子をもう少ししっかりと分解するかという、その両方の視点で行きたいと思う。
それから、今日の議論を含めて、ぜひ事務局にお願いしたいのは、好循環、これは一種の運動方程式みたいなものですけれども、ダイナミズムを記述する仕方。インセンティブも幾つかの因子がある。それも含めて、量的な面、質的な面というのも含めて、好循環をもたらすダイナミズムのブロック線図みたいなことを、企画官、今日の議論をもとに工夫してみてください。そういう視点で今の議論、これからの議論を聞いていただきたい。そうすると、興委員が今おっしゃった、インセンティブの前にブロック線図で何か一つ要るのか、あるいはインセンティブというブロック線図の中で少し枝分かれしていく考え方でダイナミズムが構成できるのか、このあたりが見えてくるかなということで、好循環のダイナミズムのブロック線図をつくるという、そういう視点で事務局のほうも聞いていていただきたいし、我々、議論もそういう形でしていきたいなと思うのです。
そうしたら、小野委員……。
【美馬委員】
すみません、今のインセンティブの前にというので。
【柘植主査】
では、美馬委員、それから、小野委員、森下委員、山野井委員。では、美馬委員、先に。
【美馬委員】
申しわけありません、今のインセンティブの前にというので私の意見も関係していたものですから。
今回のポストドクターの問題というのは、今こういう問題が起きているから何とかしなくてはというのではなくて、そもそもどうしてこういうものが起こってきたのかというところをもう一回検証する必要があるのではないかと思いました。これは私のすごく狭い範囲の知識から考えたことなので間違っていたらご指摘いただきたいのですけれども、今、ポストドクターの人たちの分野がミスマッチであるというのは、そもそも、科学技術の重点4分野、この分野を国としては進めていきたいというのがあって研究資金がそこに重点的に配分されたのではないかというふうに思います。そのことによってポストドクターの雇用が生まれ、そこから何年かたって、今、この問題が起きている。ということは、先ほど産業構造の問題かもしれないと事務局の方も何回かおっしゃっていたと思うのですけれども、つまり、重点4分野を決めて、それに資金を出したときにこういった問題が起こり得るのだということを、もしこれを反省的にするならば、今後もそういった分野を決めてお金を落とすときにここまで考えていかなければいけないという、そういったことではないかなと思いました。
結局、経済的な問題だけでなくて、お金を配ればみんなそこに来るのか。あと、一時的にそこにとどまったとしても、その後、最終的な就職先として何かがないといけないわけで、そういったときにどうするのか。それを民間に引き取ってもらうというのは何か変な話で、例えば、そういう分野の企業、ライフサイエンスだったらライフサイエンスの会社がもっと大きくなれるような、そういう人たちを雇えるような、あるいは起業できるようなものとか、それから、ほかには、研究者でないキャリアとして、これは今日の次の論点に入っていくと思うのでそれはまた別途議論したいのですが、そういう点があるのではないかなと思いました。
【柘植主査】
ありがとうございます。インセンティブの前の中に、どうして発生したかということの掘り下げ、そして、そこから出てくるレッスンラウンドがある。それを明確にすれば、この好循環のプラスに使えるはずだと、そういうご意見ですね。
小野委員、それから、森下委員、山野井委員という順序で。
【小野委員】
この審議課題2の関係資料
の16ページの、先ほどのミスマッチの問題ですが、
のポスドクと
の企業の研究者の分野別構成比、例えば保健の分野は明らかに、医師とか、そっちのほうに行く人がいるのでしょうから、企業に結びつかないというのは当たり前ですね。単純にこのグラフは工学がやけに多いのではないかということはありますけれども、日本の産業構造で製造業が多分多くて、最先端のいろんな機器をつくる企業が多いからではないかとも思われるので、私は、この構成が単純にミスマッチそのものだとは言えないのではないかと思うのですね。ただ一方で、工学は何でこんな多いのかと思うと、それはむしろ、修士から企業に行く人はたくさんいますから、修士から行っても研究者になっている人はたくさんいるわけだから、単純にはこの比較はできないのかなと思っているのです。一方で、理学なんかは大体バランスがとれて、公的機関等の研究者のバランスもまあまあなのかなと思っているのですが、確かに、工学分野で日本の企業はこれからも発展していかなきゃいけないので、そこが多いというのはわかるのですが、だからといって工学の大学院ドクターをもっと増やせというのもどうかという気がするので、単純には結びつかないのかなと。それが1つです。
もう1つは、こういうことが出てくる背景には日本の大学院の修士課程や博士課程の教育に問題があるので、中央教育審議会ですら大学院教育の実質化ということを言っているので、私は前から反対しているのですけど、大学院教育の実質化ということは大学院教育が形骸化していることを中央教育審議会が公に認めているわけで、それが本当にいいのかということも言っているのですが、大学院の博士課程や修士課程の教育が、例えば教授が自分の研究分野の非常に狭い分野、偏った分野を少々教えるだけして、あとは研究を一生懸命やっているわけで、それだけで良いのか。大学院の修士課程、それからドクターコースの教育課程のカリキュラムは、標準的なスタンダードをつくるべきではないか。それをある程度しっかり示して、どこの大学でも、博士になるためには、物理のこの分野をやった人は最低これぐらいのことは知っているということがある程度、どこの大学を出てもある程度質が保証されるということができれば、そのことは企業にとってもプラスだし、その後のキャリアパスを考える場合にも有益だと思うのですね。日本の場合、初等中等教育のカリキュラムはしっかり学習指導要領で決められているわけですけれども、大学の場合、学問の自由というのがあって、それはなかなか決められないのですが、しかし、ある程度標準的なスタンダードを示して、卒業した人を、例えば私はこの前新聞に書いたのですけれども、修士力とか博士力ということでしっかりと評価していくシステム、そういったものをつくるべきではないかと思うのです。
いずれにしても、修士課程や博士課程の卒業者の学力なり能力というのが日本の国際競争力の中心になっていくわけですから、そこはやっぱり一番大事なので、私は文部科学省に対しても言っているのですが、初等中等教育の学習指導要領も大事だけれども、むしろ大学院の卒業者の標準スタンダードを決めて、それは決して学問の自由を侵すのではなくて、研究の自由は保証しながらも、教授の教える中身については、ある程度方向性を示していく必要があるのではないかと思っているのです。その辺をぜひお考えいただければと思います。
【柘植主査】
まさに負の循環から好循環するところの着眼点をおっしゃったと思いますが、少しコメントをさせていただきますと、今、小野委員がおっしゃった最初の点ですね。量的な話。私も非常に危惧しておりまして、量的なミスマッチを解消するということで、私、総合科学技術会議の議員と少し議論をしたときに、総合科学技術会議の総意だとは思えないのですけれども、やっぱり量を減らそうと。私は産業界の人間だったので、産業界は一体、博士課程修了者は何人いるのですかという命題を出されたのですね。私は、産業をそんなに信用してはいけないと思うのですね。10年後の日本を考えたときに、産業人は、今の数字、ドクターで言ったのに対して、我々がそうしましょうと言ったら、大きな過ちを起こすと思うのですね。まさか産業界が今欲しい博士課程の人数に合わせるなんていう、そんな乱暴なことはしないと信じていますけれども、そういう乱暴な議論が出ているのが、私は気になっています。コメントです。
じゃあ、森下委員、それから、山野井委員、鳥井委員。
【森下委員】
インセンティブ以外にも理由があるというのは、そのとおりだと思うのですが、ただ一方で、インセンティブを軽視するのもまずいかなと思います。修士が終わった学生というのは大体、24歳から26歳ぐらいなのですね。24歳から26歳で収入がないというのは非常に厳しい状況で、かつ授業料が最近だんだん上がっていますから、その授業料を、先ほどの調査でも家庭からの援助が期待できない人が半分近くいる中で、それすら自分で払わなきゃいけないということです。通常、医者等じゃない限りは、アルバイトというのは家庭教師とかなんですね。それで年100万、200万のお金を稼げというのはかなりしんどい話なので、やはりこのインセンティブというのは重きを置くべきだろうと私は思います。具体的には、アメリカ並みにグラントを拡充するのと、それから、理系の競争的資金が圧倒的に多いにもかかわらず、実際には間接経費が必ずしもこの分野で使われているわけではないと、私は思います。そういう意味では、理系の間接経費、いわゆる競争的資金で取った間接経費も、定率的に何パーセントはこういうのに回すのだと決めてもいいぐらいではないかと思います。これは将来的には研究者が減るということにつながりますから、そういう意味では間接経費こそ、大学のインフラだけではなくて人的なインフラにも使うのは、私は、仕組みとして確保すべきじゃないかと1点思います。
もう1点は、これは文部科学省だけのお話では結構難しいのではないかと思っていまして、実際に私どものところに修士の学生は何人もいますけれども、修士の学生、2年間いても、研究するのはせいぜい半年ですね。長くて半年、短い人は3カ月。それはなぜかというと、産業界の青田刈りが激しくて、入ってすぐに面接に行くのですね、皆さん。最初の夏までに決まらない学生は、就職がなかなか難しい学生みたくなっています。ということは、就職が決まってからでないと、皆さん研究しないですね。その状況で、大学院の魅力、博士課程の魅力を教えることは非常に難しい。博士課程に行こうと思う学生というのは、研究が楽しいと思ったら行くので、研究もしないのに、そこから博士に行くというのを分かっている学生というのはまずいらっしゃらないというのは、当たり前だと思うのですね。そういう意味では産業界にも協力してもらって、青田刈りを少し後ろへずらしてもらう必要があるのではないかと思います。
もう1点として、同じ産業界への要請としては、博士課程の学生を採りたがらないというのは確かにあると思います。修士の学生は面接もすぐ受けられますし、大体、面接がいつぐらいの時期にあるというのはほぼ決まっているのですけど、博士を卒業した子は、面接自体決まっていないので、これは卒業時期がずれることもあるのですけれども、基本的に面接も個人で受けにいかなきゃならない。システムとして産業界は受け入れる体制になっていないのですね、現状。ですから、そのあたりも要請をして変えてもらわない限り、博士課程を出た方のインセンティブといいますか、就職に対するインセンティブというのも少し働かないのかなと思っています。そういう意味ではぜひ産業界とも協力してシステムをつくり上げないと、理工系離れはとまらないと考えます。
【柘植主査】
山野井委員の発言の前に、インセンティブの前の話、インセンティブをもう少し因数分解すべきだという話と同じように、ミスマッチというのももう少し因数分解する必要かあるかなと、今、森下委員のご発言で感じました。
山野井委員、お願いします。
【山野井委員】
インセンティブの前にいろいろ問題があるというのは、私もそう感じますけれども、先ほど主査がおっしゃった、インセンティブを因子に分解したらどうなりますかという立場で2点申し上げたいと思うのですね。
いずれもこれは非常に難しいテーマだと思うのですが、1つは、社会として、特に産業界ですけれども、ドクターコース卒、あるいはポストドクターの皆さんに対して何を期待するかということなのですが、どういう人材であるべきかというのは2-
のテーマなので、ここでは企業として、結局、アカデミアにおける研究、この成果は論文として出てくるわけですね。あくまでも真理追求ということがベースで、これは極めて大事な部分、大学にとっては最も大事な部分ですけれども、その中にトランスレートして産業界につながるかどうかという芽は外国人に結構見つけられて先に特許を出されるというケースが今まであるのですね。これがイノベーションに、つまり学術は進むけれども、それを使われた機械なり薬なりが外国から入ってきてしまうというのが産業界にとって非常に頭の痛い問題なので、したがって、国全体として考えたときに、アカデミアの成果をいかにインダストリーにつなげ得るかどうかというところで、それができる人間というのは、基礎的な研究の体系がふえない人間は難しいのです。つまり、それ自体をかなり深く知ってないと――それは自分の分野ですよ。全部ということではないのですが、難しいのですね。私どもはむしろ、そういう人材をどう育成したらいいかという。これは大学の中でそういう人をやるのか、あるいは企業に入ってからやるのかということは難しい点はあるのですけれども、いずれにしても、産業界として、アカデミアの世界とインダストリーの世界をつなぐという人材が、ドクターコースなりポストドクターの人たちに最も期待する部分なのですね。非常に難しいテーマですけれども、そういう目で人材育成を考えたら一体どうなるのかと。これが1点です。
もう1点は、これはまた非常に難しい、全社会的な問題。インダストリーも極めて関係が深いです。産業界の責任も多々あるのですけれども、これは主査が出したんですか、ディファレンシエーターというレベルですね。研究者であろうと、技術者であろうと、とにかくイノベーションなり発見・発明に関係するような力を持った人たち、トップクラスの人たちですね。この場合に、アカデミアの世界に進む方は、自分の専門があって、そこで今言ったように学術的な研究を深めていくということでいいのですけれども、インダストリーなり社会に出た場合に、同じ理系で例えばプロフェッションとして見た場合に、例えば生物系ですと医学があるわけですね。森下先生いらっしゃいますけど、医師という。あるいは文系で言えば、弁護士とか公認会計士という世界があるわけですね。これは非常に社会的にステータスが高いわけです。ところが、会社、あるいはその他に入った技師――技師という言葉があるかどうか。エンジニアですね。トップクラスのエンジニア、これがそういうレベルで評価されているかどうか。これはもちろん会社の中でそれをどう評価するかという問題はあるのですが、社会的に本当にそういう高いステータスとして認められているかどうかという問題については、若い人たちにとってみれば一つのインセンティブになっているのではないかという気がするのですね。これはものすごく難しい問題です。しかし、そういうことを産官学あわせて、とにかく技術者というものの大切さ、有用さ、社会にとっての重要さ、それをどうやってつくっていくか。少し時間がかかると思うのですが、そういうことを、この全体の中でどう組み込むかは難しいですけれども、やっていかないと、なかなか理工離れという問題は難しいのではないかという気がしています。
この2点でございます。
【柘植主査】
ありがとうございます。次のご発言いただく前に、今の山野井委員の話で、私自身も産業出で、今、教育研究のほうにおりまして、今の話の1点目の話で私自身も、これは好循環、今の命題です。特に博士課程の人材育成の好循環をもたらす視点で、教育と研究とイノベーション、これは社会経済的な価値と言っていいと思います。これをそれぞれ独立の議論では解がない。教育と研究とイノベーションの三位一体を回していくということのメカニズムは好循環をつくる中には不可欠だというのを、今の山野井委員のご発言から、私の信念とつながっているなと思って聞いた次第でございます。
じゃあ、鳥井委員、それから大隅委員、よろしくお願いします。
【鳥井委員】
今までご発言になった方の意見と重複したりするようなところがあると思うのですが、まず第1点は、ドクターという肩書を持っていることが社会に出て何か役に立つのかというと、大学の先生になろうと思えば、役に立ちます。それ以外、ほとんど何の役にも立たないというのが実情だと思うのですね。私はドクター持たずに大学に行ったわけですが、「おまえはどうしてドクターを取らないの?」 「いや、そんなものは要らないよ」と、こう言ったわけですが、振り返ってみますと、アメリカ等は転職の社会なのですね。ですから、前にいた職場の推薦状というのが非常に大きな意味を持つ社会ですね。それと同じようにドクターという肩書というのも、自分がある品質にあるよということを証明する手段として役に立っているのだと思うのですね。日本の社会はいまだに転職社会ではないですから、そうすると、ドクターを持っていても、持っていなくても、あまり関係ないですね。ですから、日本の社会は、推薦状って、みんないいかげんなことを書いていますよね。大変いい学生だったと書いているのだろうと思うのですね。つまり、ドクターがほんとうに魅力ある、インセンティブになっているかどうかというのは、かなり社会の風習に依存している。もし、それでもドクターが必要だと、要するにドクターに進む側にとって魅力のないものに対して社会が「おまえたちもっとドクターやってよ」と言うなら、よっぽどのことを考えないと、そこへ行ってくれる可能性というのはあまりないのだと思うのですね。ですから、インセンティブという話になるのでしょうけど、まさに社会に出て役に立つというのが本当のインセンティブでして、奨学金をくれるとか何とかということより、これを持っていればいいのだというのもインセンティブなのだと思うのですね。そういう社会をどうやってつくるかという、根本的なことを考えないと。社会の構成が違うのだというように思います。
そこから少し離れてしまうのかもしれないのですけど、私が昔、大学にいたころは、ドクターの先輩方は常に非常勤講師で私学等に行って講義をしていたのですね。最近は、ドクターの学生が非常勤講師でどこかの大学へ行って講義をするということは、あまりないのでしょうかね。あるのだと思うのですね。ところが、考えてみますと、私も非常勤講師をやったことがあるのですけど、非常勤講師の謝礼というのは信じられない額で、交通費にもならないというような状況なのですね。ですから、せっかく専門を習ってきて講義をすれば、それはそれなりに頭の整理もできて、どこに問題があるかということがよくわかるので、講義をするということは非常に意味のあることだと思うのですが、ドクターコースで言えばそういう権利があって、その非常勤講師の謝礼というのはそれなりに食っていけるという、ただでお金をあげるよりは、きちんと働いてもらってお金を与えるというような、そういう仕組みのほうがいいような気がするという感じがいたします。
もう1点だけ申し上げます。今日いろいろデータをご説明いただいたのですが、こういう問いかけはやっぱりしてみる必要があるというのは、既にお話があったのですけど、「企業が工学以外の博士を採用するようにしたほうがいいのでしょうか」という問いかけがあると思うのですね。逆の見方からすると、「大学院の定員を企業のニーズに合わせたほうがいいのでしょうか」。そんなことないですよね。それから、「博士の教育を産業界の意向に合わせたほうが本当にいいのでしょうか」と、こういうふうに問いかけてくれると、そうじゃないよねという議論を我々はしている可能性が結構あるということを少し申し上げたいと思います。
以上であります。
【柘植主査】
じゃあ、大隅委員、どうぞ。
【大隅委員】
先ほどの森下委員のお話に非常に賛成なのですけれども、青田刈りのメカニズムというのは、さらにもう一つ前のルーツは何にあるかと申しますと、日本では履歴に穴をあけてはいけないと、こういった観念が非常に強いということが、多分一番の問題なのですね。ですから、卒業時点で次の行き先が決まってなければ、それは人間として非常にあるまじきことであるというようなスタンダードが、いろいろなことにすべて弊害をもたらしているのではないかと思います。例えばアメリカの場合でしたら、ドクターを出てその後すぐ就職しようと思う人は、ディフェンスが終わってドクターをちゃんと取ってから、インターンシップとして企業に1カ月ずつ4カ所ぐらい行ってみて、自分はどこに向いているか、あるいは給料とのバランスはどうかとか、そういったことをして、それで、何月か知りませんけれども、始めると。何人もの求人を一遍にやるというスタイルというのは、それは右肩上がりに成長しているとき、人が非常に均質に近い形で産業が進むころにはそれが一番効率がよかったのかもしれないと思いますが、現在、非常に多様な、変化の多い社会を迎えて、だからイノベーションをどうしましょうという話をしているときには、そこのところの根本的なスピリットを変えていくということを例えばこういった委員会から提言などをしていかなければいけないのではないか。もちろんなかなか社会が変わらないだろうということは分かりますけれども、少なくともこの人材委員会が将来イノベーションを創出できる人材を養成するのだということのために置かれているのだとしたら、そこのところは精神としては大事なポイントかなというのが、まず1つです。
もう1つの観点は、先ほど小野委員が、大学院、例えばドクターというもののクオリティーコントロールをどうするのかと。非常に重みのある言葉と、私も思います。ただ、ここで問題だと私が思いますのは、例えば学習指導要領というようなものが大学や学部、あるいは大学院というところに当てはまることができるか、そういったものをつくることができるかというと、これはかなり難しいのではないだろうかと、私自身は思います。唯一できるとしたら、例えば語学に関しては、既存のものを利用して、TOEIC(トーイック)は何点ぐらい取っておくべきでしょうとか、そういったことぐらいでしたらかなりスタンダードになるかもしれないとは思うのですけれども、いろいろなことを標準化するということがまた、イノベーションとどうなのかという問題もあろうかと感じます。
それで、理工系離れの対策というところと少しずれてしまうのですが、私はむしろ、学部の教育あたりのところできちんとリベラルアーツをやっておくことと、それから、理系だったら、理系の中の科目のスタンダードを、例えば生物に行く人間でも、物理や数学、あるいは情報科学ということをある程度知っている。逆でもいいのですけれども、工学に行く方は、生き物というのはどういうものかという基本的な仕組み、生命原理を知っておく。そこがのり代になって、いろいろな分野の融合とか、そういった新しい分野の創出といったことにつながり得るのではないか。現在の教育というのは専門を前倒しにしてしまったということが非常に弊害として出てきていて、ですから、それぞれの人たちが、どこがのり代なのか、話すことができない。それは多分、企業に行く人にとっても、どこが自分が生かせるところなのかというのり代がない。そこが問題かなと思っています。そういった教育を提供していないということが、もしかすると理工の博士に行かないというようなことにつながっている可能性もあると思います。
以上です。
【柘植主査】
ありがとうございます。今、大隅委員がおっしゃった中で、特に最後にご発言なった、学部教育の中でのリベラルアーツ教育あっての理工系教育になってくる。それから、理工系の中での意味でのリベラルアーツ教育という面の着眼点が要るぞと。その辺が結果的に理工系離れ対策にもなってくるよと。これは私も本当に大事だと思って、この点も好循環の中には必要になってくる。多分、インセンティブの重要な因子、学びたいというインセンティブの中の支配要因として非常に大事なことをおっしゃったかなと受けとめました。
それじゃあ、吉見委員、先にどうぞ。
【吉見委員】
ありがとうございます。
今日一番最初に主査が、前回もおっしゃっていましたけど、具体的な施策案、あるいは現実的な話にどんどん振っていきたいのであるとおっしゃっていました。私どもは民間でありますので、現実を踏まえた、少し現実的な話しかできませんから、理論的に云々というのは、正しいかどうかわかりません。今までのお話を伺いながら、なおかつ私の意見ということで、今から少し申し上げてみたいと思います。
最初のころに、こういうご意見がありました。伊藤委員からだったか、もし間違ったらごめんなさい。博士課程を出た人がもっと必要なのだろうかというような問いかけみたいなところから話が始まっているわけです。私は、つまり民間企業においてということで言いますと、必要ですと。じゃあ、ニーズはありますか。あります。どれだけかという定量化は、先ほどおっしゃったようにできません。しかし、あります。あるという前提は幾つか、ここから先が民間的なわけですけど、しかし、ドクターというタイトルを持っているから、イコール要るということにはならないということは申し上げられるのではないかと。つまり、ドクターにふさわしい能力と、能力だけではなく、それをポテンシャルとして持っているだけではなくて、それを企業の中、社会の中で具体的に発揮していただける人であれば、いただきたいと。こういうことに私たちは、少なくとも私の企業はなるのではないかというふうに思うのですね。もう少し補足しますと、したがって、ニーズはありますか。あります。時代はどんどん変わっているわけでもありますけど、工学系か何かという分野は別にして、私は、民間企業でもこれから先、例えば相当な程度で技術革新というのは進んでいるわけでもありますし、我々はもっと要るというふうに思っていますけど、あると。しかし、条件がもしかすると要るのではないかという感じがいたします。需要はあるけれども、修士課程か、大学4年か、あるいはドクターを出た人の一体どれを選ぶのだということになるわけですが、どのレベルも欲しいですね。では、理工系のドクター系といいましょうか、博士号をお取りになった人にニーズはあるけど、多く求めるのだろうかというと、もしかすると、結果的ですけど、あまり多くはないかもしれないなと。優秀で、狙ったことのできる人は幾らでもだろうと思うのですけど、少ないかもしれないぞという、ちょっと悲壮的な言い方をします。
そこから先はあれなのですけど、なぜならばということですね、民間ですから。結局、要員管理というのは厳しいのですよ。つまり、1人の人に、本当に1分の1、もしくは1分の1以上に求めるからです。宙ぶらりんで、あるいは功績や能力発揮もあまりおできにならない人をたくさん抱えられはしないわけです。そうすると、別な言い方をしますけど、あれはこの道だけはすごいのだよねというよりも、この道は大変すごくて、これを主とすると。しかし、この人は主たる専門領域に加えてこういう従もできてねという人をできれば求めたい。これをチームで言いますと、1人の力を1分の1出していただけるよりも、その人がいることによって、例えばプロジェクトチームをリードしていったり、あるいは、だれもが気がつかないこと全体をうまくコーディネートしたりする――能力があるからゆえですよ。することによって1分の1が、ドクターの能力ある人がそういうところを持っていてくれると、その人はぜひ欲しいだろうなと、こういう言い方になると思うのです。
したがって、話が戻りますけど、そういうことができさえすれば、必ずしもドクターでなくて、もしかすると修士でもそういう能力があれば十分ですし、4年でも、ちょっと勉強してもらえばできるようなポテンシャルと姿勢を持っている人であれば、民間というのは多分大喜びだろうと。
しからばどうするかというようなことであるわけですけど、もう1つ、余計なことを申し上げておしかりを受けるかもしれません。おそらく学校や研究機関にはあらまほしきといいましょうか、ありたい研究の仕方・姿勢や勉強の仕方というのが多分あるのではないか。民間企業にも、こうあってほしい、努力の仕方、働き方、貢献の仕方というのは、やはり期待値があるわけです。そうすると、そんなことをいろんな場面で経験をしてもらうということしか、結局はないのではないか。したがって、ではどうするかということになりますけど、いろんな場面で、どこから始めるかは別にして、今日の議論が全体として理工系離れを一体どうするのだということでもしあるならば、場合によっては大学の初めかもしれないし、修士課程段階かもしれない、あるいは博士課程の段階かもしれないけど、要は、私は、民間、学校、研究機関、それから国の支援を受けて、仕組み化するために、結局はそういう学と民との接点の場を一体どれだけ増やしていくかと。しかも、決まった線が一つあるだけでは、多分ここから先は成り立たない。学校、研究機関でずっとおやりになって博士号までお取りになって、実行もできますというレベルまで来たら、一回、企業に来てくださいと。1週間、2週間の実習ではなくて、何年もいてくださいと。その中で、この道で行こうといったら、それが成り立てばいい。この研究成果をもとにいろんな経験を積み重ねて、もう一回学校に戻りましょう。あったっていいのではないか。そういういわゆるあれもこれもありという複線型というのを、多分、国の支援を受けながら仕組み化していくということになるのではないだろうかという感じがいたします。
ちょっと長くなって、すみません。またありましたら、途中でも。
【柘植主査】
今、吉見委員は産業の考え方をおっしゃったと思うのです。私も産業出で、今、吉見委員のおっしゃったことをいかに好循環の中に組み入れていくかということで、吉見委員の発言を2つ、私も受けとめました。1つは、さっき私が言いました、教育と研究と社会経済的価値創出というイノベーションの三位一体を好循環で回していかない限り多分解はないだろうというのを、別の言い方で吉見さんはおっしゃったじゃないかなと。
もう1つは、吉見さんの発言の中で、きょうの資料3のアジェンダセッティングの、今は赤で書いた審議
のところの質的なミスマッチですけれども、後で入ってきます総合討論の中の審議
の質的なミスマッチというものと、量と質の話というのは不可分の話で、質の話に吉見さんは今触れたと思うのですが、しかし、質の話について、後ほど総合討論の中でぜひもう一回議論をしてほしいのは、実は日本の産業人が求めている、博士課程の修了者として認定、クオリファイされた資質と、アメリカの企業が博士課程修了者として認定を求めたものの資質と違うというのが、この間、文部科学省の政策研の中の勉強会の資料で出てきたのですね。端的に言うと、日本の産業界は博士課程修了者に対して専門性を求めていると。アメリカの産業界はむしろ、それは当然であって、その上に立った企画力、先ほどのリーダーシップを発揮されるという、それを求めていると。それがあったらたちまち10万ドルの年俸はすぐ出しましょうというアメリカの企業。この辺なんかも質と量のミスマッチの議論の中でやはり産業界として少しきちんと出さざるを得ないかなと、私も思っています。そんな思いを持って吉見さんのご発言を伺ったわけでございます。
すみません、おくれましたけど、三宅委員、どうぞ。それから、所委員、室伏委員。一ところ大体終わったところで次の全体討論のほうに入っていきたいと思いますけど、とりあえず今ので。
【三宅委員】
同じ話をコインの裏側からすることになるかもしれないので、手短にできればと思うのですが、量をふやすにしても、質を上げるにしても、そのインセンティブの大もとにあるのは、日本の大学院の研究の質が高いことだろうと思います。大学院を終了してゆく人たちに望まれる能力が、大学院を組織している教員・研究者の側に十分にはない、ということが今の現状をつくっている可能性があります。日本の大学院自体が「問題を発見して解決していく力」を強くしないと、量も質も上がるわけがありません。今、中堅私立の大学院で、どこにポテンシャルがあるかというと、実は社会の中で解くべき問題に直面して、でも、この問題を解くのに大学で受けてきた力だけでは足りないという自覚があり、どこかで研究の仕方や知識を身に付けたいという人たちが、その大学院の研究を押し上げてくれていますね。ここには人数はたくさんいます。ただ、こういう人たちをどう大学院の中で引き受けて教育していくかというと、それに対するマニュアルというのは、私たちが大学院でこういう教育を受けてきた、それをそのままやればいいということでは全くないです。本人が持ってくる問題を自分の問題として、私だったらどうやって解くか、あなたが職場だったらどうやって解けるかということを一緒に考えていって、その中で、もしかしたら先ほど小林委員が大枠スタンダード型がいいとおっしゃったことかもしれませんけど、そういうものをどうやって凝縮した形で渡してゆけるかが問題です。向こうはお金も時間もありませんから、2年間とか3年間で現場の問題を解決できる人にどう研究レベルの力をつけるか、ということです。ここではつまり、大学の教育力、研究力、私たちの柔軟性が一番問われているという気がします。ここがうまくいけば、現場の中にある問題を、大学院に来てくれる学生さんを通して、その学生の問題、社会に結びついた問題として捉え直して、研究者との共同作業の中でアカデミックな問題に置き換えてイノベーションを目指して解いていく。それが大学で研究教育職をやっている研究者に求められているフレキシビリティーだと思います。大学院とは何なのか、研究者とは何かという根本的名問い直しが基本的にはないと、どこかでつじつま合わせで量がふえた、質が上がったというような話になりそうな気がしています。
【柘植主査】
ありがとうございます。
所委員、室伏委員、お願いします。それで総合討論のほうに入っていきたいと思いますけれども。
【所委員】
まず、インセンティブ以前の話があるよという、興委員の話から今日始まっているのですけど、それは将来に向けた社会的なニーズは何かというところから本当につながっているかということだと思います。我々の周りだと、重点4分野だとか知識基盤社会というキーワードがすぐに挙がってくる。でも、社会全体から見ていると、脱工業社会だとか、第三次産業化への流れとか、芸術だとか、そちらのほうの人材も重要になってくる。そういう中で、理系人材というところは本当に腑に落ちた上でみんな議論をしているのかなというのが少し僕は心配です。上に設問として知識基盤社会の人材育成とあるから、理系、理系って言っているのかなというようなところも多少なきにしもあらずです。いずれにしてもそういう中で、僕は全く必要がないと言っているわけじゃなくて、理工系というのは大変重要だと思うので、ある程度の限定が加わった上での理工系の人材、理系離れを防ぐ、これは重要だと思います。そのためには、柘植主査が言われたように、全体がつながったような施策になっていなければいけない。そのためにブロックダイアグラムなりチャートなりつくってみようということで、これも大賛成です。そうしますと、あこがれとなるような人材像というのがどうしても必要になります。これはノーベル賞でもいいかもしれないし、社長でもいいかもしれないし、教員だとか、医師だとか、そういうようなところがあって、実質的には生涯賃金がある程度きっちりと確保されていると。
それから、理系の場合に、実はネガティブな要因としては、進歩がものすごく早い。中高年になったときに自分が本当にこれでついていけるのかなというのは、学生さんは結構心配になっている面もあると思います。そういう意味では、キャリアパスというものを、ポスドクのキャリアパスだけじゃなくて、全体のキャリアパスというのも考えていかなければならない。そういうことで目標ができるとすれば、その目標で大学や企業で活躍するということがあって、それが順々に続いていくと思うのです。そういう大きな流れをしっかりと確認した上で、幾つかの具体的な施策というのが必要だと思います。森下委員が言われたように、奨学金の問題、これは絶対に必要で、特に博士課程の奨学金というのは「must」だというふうに思います。5万円で奨学金あげているよというのも、いかがなものかと。これはお小遣いの足しとか本代というものであって、奨学金というところにはほど遠いと思います。ですから、18万円ですか、PDだとか、ああいうところで出ている額ぐらいのものを奨学金というような形で、定義もしっかりそうしたほうがいいと思うのです。
それから、青田刈りの問題、これもゆゆしき問題で、私も産業界におりまして、これは何とかやめるべきだと思うのですが、これは、お隣がやめないとという状況があります。どういう法的なことができるのかどうだか分かりませんけれども、昔はそんなのではなかったですね。10月、11月、12月ぐらいになるとだんだんおしりが浮いてきてというような、私の時代はそうでしたけれど、今は1年以上早くやっている、大学院修士入学と同時というので、これは極めて問題だと思います。
それから、もう1つの問題は、やはり若手ポストをどんどん削ってしまったのではないかと、こういうことで、ポストドクター等1万人支援計画というときに出てきたポストドクターは行くところがないような政策を一方ではしているのですね。アクセル踏んでブレーキ踏むというような、これはとんでもないことです。任期制、任期制ってそのころはやし立てられたのだけれども、実は任期制ってほとんどフリーターのような、精神的にはそういうような状況になっている。ですから、テニュアトラックのポジションを若手に対して大幅にふやすという、これは「must」だと思います。
4つ目は、グローバルなランキングというのをこの前もここで議論をしたと思うのですけれども、常にグローバル視点での大学の立ち位置といいますか、ランキングというのをこれから話していきたい。国内での順番ということではなくて、国際的に何番にいるのか。10位に入っているところもないわけですね。THESで、東京大学17位、京都大学25位、それから、IMDのランキングがありますが、そちらでも必ずしも高くないんですよ。そういう大学から輩出されたところで人材が日本の企業に行くという基本的な考え方でグローバル、もしくはグローバルの競争力というものができるのかというと、決してもうそういう時代はないのです。ランキングなんていうのはどこかインチキくさいところがあるというのは重々承知した上でも、そういうものがしっかりと利用できるようにしていきたい。それをやっていくと、実際には、博士課程のあり方、それから博士と修士の違いだとか、それから、先ほどから出ています基礎、専門、リベラルアーツ、分野横断、そういうようなことの重要性というのは十分理解をしてくると思います。
それから最後に、今のポストドクターの問題と、今後の博士課程、もしくは今後の博士課程からポストドクター、テニュアトラックのあり方というのを少し切り離して考えないといけない。今は緊急事態としてポスドク問題というのが発生しておりますけれども、その問題と、日本が長期的にいい教育をしていく、いい人材を輩出していくという意味での博士課程、ポストドクター、その辺りのあり方というのは、また別の次元であると思いますので、これも一緒くたにしないで議論をしていく必要があると思います。
以上です。
【柘植主査】
ありがとうございます。
室伏委員、どうぞ。
【室伏委員】
今、所委員が私が申し上げたかったことをかなりおっしゃってくださったのですが、一つ考えてみなければいけないことは、社会に対して理工系人材を育成することがいかに大事かということをきちんと理解してもらうということが大事だと思うのですね。先ほどから、学生たちをどのように博士課程に入れるかとか、それから、そこでどのようなインセンティブを与えるかといったことを議論してくださって、それも非常に大事なことではあるのですけれども、私たち、学生と実際にいろいろ対応していて、博士に進みなさいというふうに勧めていたときにも、やはり周りの人たちの理解というか、世の中が、博士課程に進んだところで就職がないだろうとか、何かいろいろなメディアの影響で、特に理工系の場合は、博士課程に進んで、その後の就職やその後の対応が非常に悪いというふうに、社会的に信じられているところがあるのですね。ですから、そういった社会における科学や技術というものが持っているポテンシャルを上げるということも非常に重要なことだと思いますし、理工系の博士課程を終えて、その後、若い人たちがどのような働く場を得て、どのようなキャリアパスのイメージを持てるかということも発信していく必要があるのだろうと思うのですね。どういう形でそういうものを発信するかということはなかなか難しいと思うのですけれども、今は、世の中の人にイノベーションということを言っても、ほとんどの方は分からないと思うのです。ですから、イノベーションとはどういうことか、それを支えるための人材というのはどういう人材であるか。そのために、博士課程、特に理工系のそういう教育がいかに重要で、そういったことを企業がどのように支援してほしいというか、支援するべきというように申し上げると申しわけないのですが、すべきであるかといったことを社会全体へ発信し、社会全体の考え方として何らかのものを持っていかないと、委員会で一生懸命、大学の中、あるいは企業のそういった、本当に先進的なお考えをお持ちの方のことだけを考えていたのでは、きっと国としてのそういう進みは遅いだろうと思うのですね。ですから、そういう一般へのいろいろな働きかけと理解の増進というものをぜひとも進めていきたい。特に、この委員会ではそういったこともしていくことが必要なのではないかなと考えました。
あとは皆さんがおっしゃってくださったようなことと重なりますので、以上です。
【柘植主査】
ありがとうございます。既に全体の審議のカテゴリーに入ってきておりまして、今の2-
の理工系離れ、これは少しリワーディングするということはございましたけれども、ここのところをとりあえず終えまして、本日の主議題でございます審議課題2全般、すなわち「知識基盤社会の多様な場で活躍する人材の養成方策」ということに入りたいと思います。
それでは、この自由討議に入る前に、既に事務局からお送りいたしております課題設定と方策について整理ペーパーが参考資料2としてきょう配られておりまして、これをまず事務局から説明いただいて、議論を始めたいと思います。
事務局、お願いいたします。
【高比良人材政策企画官】
参考資料2というA3判の大きな資料をごらんいただきたいと思います。これは既にメールでも委員の方々には送らせていただきましたが、主査のご下命で少し、前回の最後のところでもご発言がありましたけれども、それぞれ前回ご意見をいだいたた表層の課題設定というご意見の部分に対し、それよりももう少し掘り下げた深層のところでの課題の設定というのも考えられるのではないか。それに向けて解決策への提言というのをいただいたのだけれども、最終的にその課題設定の課題という観点でどういうことが整理できるのかというのを1枚にまとめていただきたいということがありまして、まとめてみたものでございます。
例えば、一番上から行きますけれども、主査のほうからありました、これは審議課題2の全体の議論でございますけれども、表層の課題設定としては、社会と産業界で活躍する人材養成のためのカリキュラムや教育指導体制などがやっぱり不十分なのではないかということで、それよりもう少し掘り下げると、これまでは大学が本来持つ教育研究機能にパッチワーク的に別途付加するような施策で済ませていたのではないか。カリキュラムとか教員体制など、恒常的な教育研究機能そのものを強化することが重要ではないかということで、技術者コースとか研究者コースというカリキュラムの複線化が必要ではないか。技術者コースでは、技術経営的な教育なども行うことが必要なのではないかという解決策への提言について、では、その観点でどういうことが必要なのかということになると、カリキュラムの複線化とか、両コースの協働の場との組み合わせが効果的ではないかというような整理ができるのではないかというようなことでございます。
山野井委員からは、2-
の審議の課題として、みずからの専門分野ではなくて、関連分野やその分野の人々への関心を持つ人材が重要なのではないかというようなご意見に従い、大学の教育は専門分野を深めることに軸足を置き過ぎる。しかし、1人の人に両方の役割を求めるのは非常に難しい。そのために役割分担が必要なのではないかというご意見でございます。そのために、自分の枠を越えて他分野の人材と交流するマインドを持つ人材を養成する仕組みづくりが必要であって、カリキュラムの複線化がやはり必要だという提言でございます。では、それを実践するためにはどのような仕組みが効果的なのかというのを少し皆さんでお考えいただけないだろうかということでございます。
それから、少し飛ばしますけれども、伊藤委員からは、企業が学生を採用する際も、学歴や指導教員などによって選抜しているのではないかという課題。大学は各人の資質を育てていくことが重要な役割であって、企業はその資質を見抜いて採用しているのかが本当に問題ではないかと。大学教員の意識改革とか大学教育の改革だけなくて、企業の意識改革もやっぱり必要だと。では、それを解決するためにどのような具体的な方策があるのだろうかというところをぜひ、もしご意見があればいただければとなっております。
それから、美馬委員のところは、後のほうでもちょっとダブりますけれども、サイエンスコミュニケーションの取り組みから示唆を踏まえるべきではないかというような意見で、その解決策の提言が3つほど出されております。その中で、わかりやすい合言葉をつくって、それに向かって意識改革とかキャリア教育に参加してもらうということがいいのではないかということですけれども、じゃあ、そのわかりやすいキャッチフレーズというのはどういうものがあるのだろうかというようなことでございます。
興委員からは、地方大学では、学生が早く就職することを希望するため、博士課程に優秀な人材を確保することがなかなか難しいという課題があって、学生が早く就職を希望する背景には、博士課程に進学した場合に、人生の見通しが見えない、先が見えないというようなことがあるのではないか。そのために、すぐれた学生に博士課程に進学した場合の人生の見通しを与えることが必要であって、啓発的キャリアパス、それから、出会い・触れ合いの場、国際の観点等々がやっぱり重要なのではないかということですけれども、では、人生の見通しを与える方策というのが具体的に何か考えられるかというようなことでございます。
小野委員からは、具体的に高等教育予算が毎年1パーセント減というのは非常に問題であるということが指摘されておりまして、先ほどもありましたけれども、先日の新聞等でもご提言なさっておられましたが、高等教育局で大学教育振興法などをつくるべきではないか。学生の品質保証をした上で、1パーセント減というのはやめるべきだ。競争的資金を増やす施策も必要なのではないかというようなことがありますけれども、では、競争的資金を増やすための戦略というものは具体的にどのようなものが考えられるのかなということでございます。
それから、所委員からは、先ほども話がありましたけれども、要するにグローバルな視点が重要であって、大学と企業の連携について、日本企業だけではなくて、海外の企業も視野に入れるべきではないか。就職先も世界各国を想定すべきであって、その場合、スキルのチェックリストに「英語で」という文言を追加する必要があるのではないかという提言もいただいておりまして、そのために、グローバルな企業に就職するためにはどのような養成方策が考えられるのかというのも課題かなということでございます。
それから、審議課題2-
、教員の意識改革のための取り組みについては、森下委員から、指導側の問題として、現状では社会の多様な場で活躍する人材の養成へのインセンティブがなかなか働かないと。働かないのは、博士課程学生とかポストドクターが戦力になるので研究室に必要であって、使いやすいから使っていて、これまで自から取り組んでいない教員に働きかけるにはインセンティブが必要だと。そのインセンティブが働くような仕組みがやっぱり必要なのではないかということがあるのですが、教員の意識を変えるためのインセンティブというのはどういうものが具体的に考えられるのかということではないかと思います。
あと、伊藤委員のところは、先ほどのところと少し重なりますので、省略をいたします。
それから、美馬委員のところも、先ほどのところの、解決策のところは申し上げておりませんけれども、そこで美馬委員からあった、すべてを教員に課すのもなかなか負担が大きい等、イギリスでも10年かかっているというようなことから、効果的な取り組みや課題というのは何かというのを少し見出していただければありがたいなと思っております。
それから、裏面に参りますけれども、今回の2-
にも少し関係する部分でございますが、森下委員から、海外にいるポスドクは日本に戻る場所がなくて、難民化している。海外から帰ってくる人材のポジションをつくる必要があるのではないかということがあります。そのために、海外のポスドクについての内容の把握とポジションづくりにどのような具体策があるのかということです。
それから、その下に森下委員、小野委員、興委員の意見がございますけれども、基本的には、若手ポストを増やす方策というものがやはり必要で、そのためには具体的にどういう方策が考えられるのかということで、一応取りまとめをさせていただきました。今日審議課題2の
について相当ご議論いただきましたので、それを今後これに追加していこうと思っておりますけれども、こういう整理ペーパーを参考にしていただいて、全体のご議論でより具体的なご提案をいただければと思って整理をさせていただきました。
以上でございます。
【柘植主査】
ありがとうございます。ただいま企画官が最後に言いましたように、これプラス今日のご発言のものを含めて充実させていくという格好ですが、今日は、残りました40分ほどの時間をいただきまして、ここにも書いてあること、あるいは、これをもう少し深める発言も結構でございます。書いてないものも結構でございますので、具体的な方策、提言に結びつくようなご意見をいただきたいと思います。
初めに、前回の最後に私がお願い申し上げたように、さらに追加の意見ということを申し上げましたら、鳥居委員、室伏委員、美馬委員、小川委員から事前にご意見をいただきましたので、総合討論の前に今の順序で、これは机上配付資料になっていると思いますので、それぞれからご説明をいただきたいと思います。
まず、鳥居委員、よろしくお願いいたします。
【鳥居主査代理】
机上配付資料の後ろから3枚目の裏表が私の資料です。課題設定云々というようなところまでは、枠組みもできておりませんし、ただメモ書き的なもので恐縮ですけれども、平素から考えていること、そして今回改めて大学の仲間に現状について少し個々にインタビューしてみたこと、さらには、今日も傍聴しておられる官僚で、大学に籍を置かれてみて、非常に新鮮な気持ちで大学を見直された方とも話しをして貴重な意見をいただきましたので、少しメモ的に書かせていただきました。
あえて2-
の教員の意識改革という枠組みでこれを書きましたけれども、一言で言えば、意識改革というのはあらゆるところで出てまいりますが、意識改革はまずできない。このままでできるとは、決して思っていません。私も何年かは意識改革のトライはしてみましたけれども、決して満足できるような結果にはならない。それに至るのを少しメモに書いていますけれども、現状の研究成果至上主義では意識改革は困難であると。競争的な資金など研究費の獲得競争に今はなってしまっていまして、第一線の研究者が研究に打ち込む時間は減ってくるし、さらにそれが減ってきますと、研究の質の低下、さらには時間を確保するために教育の時間をなくしていってしまって、最終的には、今、我々が最も重視している教育ということが一番なおざりにされているのではないかという印象です。
次に、あまり話題に出てこないのですけれども、間接経費というのは、上から決まってきて、30パーセントです。これは、大学の執行部にとっては非常にありがたいという印象を持っていたのですけれども、逆に言えば、それの使い方によって大変な負の制度ということにもなりかねないと思います。2行目あたりですが、当該研究リーダーは研究補助者や事務作業員の人件費などに間接経費の使用など、組織レベルから支援を期待する。こういうことを期待して、研究リーダーは申請書も書き、研究費を取ってくるわけなのですけれども、法人化の直後は非常に緊張感があって、この辺の印象が強かったと思っているのですが、これがいつの間にか、先ほどの運営費交付金の問題が出てきていますので、ほとんど研究と関係のない大学組織の維持費的なところに使われつつあるというのが、個人の感想です。そうしますと、結局は10割のうちの3割が飛んでしまいますから、研究リーダーが使えるのは7割しかないというようなことになって、これはむしろ、学長の意識改革だとか、事務の意識改革だとか、その辺のところに問題が帰着してしまうのではないかということになります。
次は研究至上主義ですが、これは、私どもの大学では、ライフサイエンスというか、バイオサイエンス、それから、ナノ、IT、を見ているわけですので、少し医学部とかとは違っているところもあるかも分かりませんので、それは少しお考えいただきたいのですが、やはり研究至上主義になってしまっています。論文作成を目的とするわけですから、当該研究に直接関係のない授業への参加を学生には勧めない。さらに、教員の研究を手伝う学生確保に躍起になります。ここには、学生を教育するというよりも、学生を研究補助者として働く労働力を期待している。この議論は何度かここでも出たことがあると思います。それから、修士論文テーマを4年生の卒論からの継続して授業よりも研究という傾向が強くなり、4年生の確保をねらって、学部卒業から連続的に修士に入学するような学生の囲い込みです。これは大学院しかない大学院大学には顕著に見えるのですけれども、学生の囲い込みというのは、一時期かなり議論の俎上に上がったかと思っているのですが、最近はこれが少し議論されていないようなことになっています。実は単に学生の囲い込みのみならず、教員の純血主義というのもまだ相変わらず残っていまして、何が国際的かどうか、流動性で非常に危惧するところです。だから、研究至上主義と言い出したところが、いつの間にか人事の話に関連してしまうことになってしまいます。
それから、人事のことにつきましては、資料の下のほうですけれども、要するに人事評価で教員の採用・昇任のときにはどうしても研究成果というのが第一義的な指標になっていると思います。ここでやはり論文の至上主義というのが出てくるわけですね。一方で教育の重みというものをもっと出せる方法がなくてはいけないのです。授業評価法につきましては、いろいろな大学の評価でやっています。そこでよく出てくるのが、学生にアンケートをとったものが出てまいります。しかしこれでは、学生にこびを売る先生方の評価が高くなるとか、いろんな弊害もあるということも現実です。例えば、これは単に一例ですけれども、アメリカのある州立大学では学科の中で、これは20人ぐらいのチームですが、1人の先生の評価をする。そのときに、ベテランの先生と若手とがペアになりまして、授業参観も含めて、あるいはシラバスだとか、いろんなものを2人で一緒に評価する。もちろん、だれがやっているかというのも評価される側には見えるわけですね。それは非常にトランスペアレントにやるわけです。お互いに組を組みながらやっていきますので、全員が評価される側にもなりますし、評価する側にもなるということで、2人1組でやっていっている。これは、ベテランの教員が若手に、こういうところが教員評価に影響しているのだということを勉強してもらっていくわけですね。特に最近は、日本で制度が変わりまして、助手というのを助教というのに言いかえ、ほとんど今、学位を持っている以前の助手は助教と言いかえられていて、教壇に立ち始めています。これは、アメリカで言えば、いわゆるアソシエートじゃなくて、アシスタントが教壇に立つことと同じなのですけれども、そこでもやはりきちんとした評価をしてやらないと、彼らはいきなり、この前までは学生の実験助手で終わっていたのに、ある日から授業をやれというようなことになります。先生自身のFDにも関係する話ですが、こういう授業評価だとか教員評価というようなことになるかと思います。
次の話題は少し変わってしまうのですけれども、論文至上主義ということと、学位授与という問題があります。ライフサイエンス系ではインパクトファクターとかサイテーションインデックスを非常に重視されているということがあるのですが、私ども情報系の場合にはインパクトファクターが小さいものですから、のってこないのですね。じゃあ、それを使わないで、学位授与基準というのはどのようにしているかというと、学会に掲載された論文誌が必要で、かつ十分条件であることが非常に多いわけです。言いかえれば学位授与というのは学会論文誌の査読委員の手中にあると言えるわけで、論文が通れば、例えば2件とか3件も通れば、これは学位は出せるねという格好で、指導教官の責任転嫁とも言いかねられません。アメリカなんかはそうじゃなくて、まず学位を出しておいて、それを指導教官の責任で、これならジャーナルに出せるという判断でやっていくわけなのですね。
大体、これが現状の問題です。
それから、次の話題はまた少し変わりますけれども、2-
の企業人との関係の話ですが、産学をつなぐ人材養成ということですが、研究至上主義ということから脱却して、特定の研究テーマに偏ることのないような広い知識を大学院といえども教えていかざるを得ないのです。ところが、先ほども議論ありましたように、就職活動があります。就職活動の面接のときにまず聞かれるのは、どういう研究をやっていますかというのがありますから、大学側は必ず学生には研究テーマを、研究室に配属されて3カ月ぐらいたてば、ほぼ決めてやらなくてはいけない。それを面接のときに説明してくるというようなことになっていまして、広い知識を身につけさせるというようなことではなくて、エセ研究というような、少し皮肉っぽい言い方で恐縮ですけれども、こういう研究をまずさせていることが外向けにも必要で、それを単位取得にもつながっていきます。この人は研究能力があるのですよと、外に見せかけてしまうのですね。
それから、産学の話になりますと、外部からの特別講義という機会が最近はもろに増えてきましたし、いろんな施策もありますので、それでうまくやっていければいいので、この辺はうまく仕掛けはできるだろうと期待しています。
最後、資料のその他のところですけれども、ポストドクターというのは、嘱望されてなるポストであって、自分がなりたい者を安易に採用するべきものでは本来はないはずなのです。残ってほしいというようなポストでなくてはいけない。メモ書きで恐縮ですけど、以上です。
【柘植主査】
ありがとうございます。議論は後で全部やることにしまして、室伏委員、よろしくお願いします。
【室伏委員】
お送りいただいた参考資料2を眺めまして、皆様があまりおっしゃっていないことと思って、産業界で活躍する人材をどう養成するのがよいのだろうかということに的を絞って、ここに私は意見を書いてみました。宿題ということで慌ててやりまして、あまりまとまっていなくて申しわけないのですが、簡単に説明させていただきます。
産業界で有為な人材ということについて考えてみたわけですけれども、まず、そういったことに対して取り組むべき最初の課題というのは、理数教育の充実と、それから社会における科学技術への理解増進だろうというふうに思われます。初等中等教育が大事だということを私はずっと申し上げているのですけれども、そういった中で児童・生徒が理科離れを起こすということは、結局は社会全体の理工系離れを加速させることにもなりますし、大学や大学院で理工系を選ぶ人たちを減らし、最終的には社会で、産業界などで活躍する理工系の人材を不足させるという、そういった状況になってくると思うのですね。
ただ、学校教育によって理工系離れを何とか減らそうという、そういった努力が非常に重要ですし、これから子供たちの教育においても考えていかなければいけない。議論するべきポイントの5の中にございますけれども、もちろんここでいろいろ考えていくわけですが、ただ、学校教育だけではやはり理工系離れが解決できないだろうと思いまして、そのためには、理数教育の成果が産業活動でどのように生かされているのかということ、そこからの発展形であるような科学技術が実社会でどのように活用されて、人々の生活に役立っているかということ。それから、産業界で活躍する理工系人材のキャリアパスについて、こういったものが具体的に示されること。それを実際に目で見たり、一緒に何かしてみることで実感し体験できる、そういう取り組みが不可欠なのではないかと思うのですね。そのためには、産業界から、こういう人が欲しいとか、こういう教育をしてほしいというふうに要望が寄せられるわけですけれども、産業界の方々の力を借りて、つまり産業界が協力をして、そういった教育や理解増進の場に参加をしていただくことが大事なんじゃないかというふうに思います。そういうことによってイノベーションを担う理系人材も育成できるでしょうし、社会において企業活動というものが持つ意味についても、人々の理解につながるのだろうと思っております。
企業人としての基礎力不足への対応など、産学をつなぐ人材養成方策というところで、あまりまとまりがないのですが、書いてみたことを少しご紹介させていただきますが、理数好きの人材を増やすことと一緒に、理工系に対する進路選択後のキャリアパスイメージ、これがとても大事だと思うのですね。進路は選択してみたものの、理工系で学んでみたものの、その後のキャリアパスのイメージがつかめないというのが、今現在、博士課程に進まない、進むことをためらう、そういう原因になっていると思いますので、理工系人材の産業界での活躍に関する情報というものをもっと積極的に産業界から発信していただくということが大事なのではないかなと思っています。
理工系に行くと処遇が悪いというようなことを言われているのですが、文部科学省の「平成14年度民間企業の研究活動に関する調査報告」というのが15年9月に出されていまして、ちょっと古い資料ですけれども、それを見ますと、資本金10億円以上の回答を寄せてくれた1,023社の企業において役員等で理系出身者がどのぐらいいるかということで、これは推定平均となっておりましたが、43.7パーセントというふうに報告されておりました。平成14年度に役員になっているだろうという、若いころ、昭和40年から60年くらいに自然科学系の大学を出た学生の割合が32から33パーセントということを考えますと、決して世で言われているように理工系の人材が評価されていないわけではないと思えるのですね。ですから、このこともぜひ世の中に知らせて、決して理系に進むのは損ではないよということを知らせていくのがよいのではないかと思いました。
産業界で仕事をするということをもっとポジティブに評価して、先ほどどなたかのご意見にありましたけれども、産業界での技術者に対する社会的な評価をもっと上げるような、何らかの施策を考えることが必要なのではないか。そういったことで、産業界で働くということが魅力あるものである、それは自分自身が夢を持って働けるのだというような、そういうキャリアパスをぜひ若い人たちに示してやったらいいと思います。そのために、大学だけでできることではございませんので、産業界から、イノベーション創出に向けた研究開発活動の実態ですとか、そういった技術の企業経営における位置づけですとか、企業経営における理工系人材のキャリアパスなど、ほんとうに具体的に、よい人材を求めたいという思いをもっと前面に出していただいて、学生たちにこういったものを示していただく、そういうことも大事ではないかというふうに思います。
それと、今、女子学生で理工系の職業につく人が少ないですけれども、そういった人たちは将来企業で自分たちがどのような道を歩むかというイメージが描けていない場合が多いので、理工系の女子学生にも魅力的なキャリアパスを示してほしいと思います。そのためには、企業や大学などが協力して、理工系女性企業人のロールモデル、そういった人たちに学ぶ機会を作ったり、それから、女性研究者や女性技術者が活躍している企業を紹介して、そういったところでいろいろ話を聞く、事例を学ぶというようなことも必要なのではないかと思っています。
先ほど企業の要望をどのくらい入れるべきだろうかなどというお話もありましたけれども、どのような能力を身につけたらよいのだろうかということは、大学でも十分考えなければいけませんし、産業界や行政などでも考えていくべきことなのだろうと思います。先ほど大隅委員がおっしゃったように、私もこれは学習指導要領のようなものであってはいけないと思っておりますので、本当にどういう方向を持って、どんな理想を持って進むべきかということを、産学官の人々ができれば定期的な会合などを持つことによって、グローバルな意味での科学技術の将来に向けた設計図づくりといいますか、青写真を描いていくということも非常に大事だろうというふうに思っています。そのときに、日本学術会議ですとか、学会とかいったところに助力を求めることも、有効であろうと考えます。
以上です。
【柘植主査】
ありがとうございます。
引き続きまして、美馬委員、よろしくお願いします。
【美馬委員】
すみません、私のプリントは先ほどの表を埋めるという形で項目をつけ足しただけですので、話の流れとしては、プリントに沿ってではなくて、内容は同じですが、話させていただきたいと思います。
まず、問題の所在というか、要するに人口が減っていて子供の数が減っている中で、科学離れが起きることによって、科学技術人材が減少していると。そういったときに、人材育成としては、大学がどう変わればいいか、大学の中でどうしたらいいのかとか、どうすべきかとか、社会に求められている人材を企業に入ってから育成するにはどうしたらいいかというような、育成責任を大学のみ、あるいは企業のみに負わせるのでは、もうだめではないかと思います。つまり、みんなで育てていくことが必要ということで、そのためには、全く新しい教育手法、あるいは教育機会の提供が必要なのではないかと思います。小学校、高等学校では、最近は、生涯学習施設である博物館とか科学館とか、それから産業界からの講師の派遣というのがありますけれども、そういった以外で何か、大学教育に必要なことというのがあるのではないかと考えました。その中で、やはり大学教育というのは、今までのように変化が激しい社会の中では、言ってみれば銀行貯金型教育というか、大学の中で知識を詰め込んで、社会に出てその引き出しから使っていくというものではなくて、常に学び続けていくような力というものを養成していく必要があると。
そこで、前々回のこの委員会で私が発言させていただいたのは、チーム力という言葉です。そこで今回のプリントに書いてあることになるのですけれども、先ほど、例えば山野井委員が研究の成果をインダストリーにつなげられる目が必要だとか、吉見委員もチーム力ということをおっしゃっていたように思います。それから、三宅委員から、学校外での力、学校外で育ってきた力、あるいはそれがイノベーションの力になっていくというような話もあったと思います。そこで、私が、全く新しい手法、教育機会というふうに一つ自分の経験から思うのは、このプリントにある解決策への提言という中の3つ目のポチですけれども、「たとえば」というところで、大学における教育だけではなく、短期集中型、一、二週間の合宿形式で、異分野の人、あるいは異文化(国際)、それから、ここには企業の若手も入るといいと思うのですけれども、そういった人たちがチームで課題に取り組むような教育的なセミナーというのを実施するということが、今言ってきたような力をはぐくむ上で意味があるのではないかと思います。これは、私自身が、高校・大学生を集めた、理数系に興味がある人のセミナーというのを28年前に受けて、それが今でも、ことしで29年続いているのですが、そこで得てきた成果であるとか、それから、この数年間やっている大学院レベルでの、企業の若手を含めた同世代の人たちの国際セミナー、違う国々からの人たちと一緒にやっているセミナーでの一、二週間の集中型というのは、学校、大学では提供できない機会を提供できておりますと思いますし、それから、社会に合わせた内容にわりあいフットワーク軽く変えていくことができるという意味で、こういったやり方というのを導入していくことを考えてもいいのではないかと思って、ここに書かせていただきました。
以上です。
【柘植主査】
ありがとうございます。
今の資料の最初のほうに、今日ご欠席の小川委員の提出資料がございます。幾つかのご提言がありますので、私がかわりにプレゼンテーションさせていただきたいと思います。見ている資料は、机上配付資料3、小川委員提出資料でございます。
審議課題2のところで、全体として、意見1、博士課程院生・ポストドクターに議論が特化しないようにということで、全体を通して、社会の多様な場で活躍する人材が博士課程の大学院生やポストドクターに焦点化され過ぎていると感じる。イノベーションのリーダー個人の問題だけでなく、イノベーションのチームの問題を考えれば、チーム内の多様な人材にも目配りが必要と。例えば、修士修了者の問題はほとんど議論されていない。産業界への就職状況が好調だからかもしれないが、なぜ修士修了者が産業界で好評なのかを分析する必要がある。また、修士課程を研究者コースと技術者コースに区別せよという提言が出されている背景の分析も必要と。同じく、高専の修了者の修了後の進路に関する情報も見ておく必要がある。今回、パッケージ化されて議論が先送りされた図式に見られる研究支援者などは、どのようなキャリアパスから供給されるのであろうかということで、以上、もう少し全体的な俯瞰の中でこの人材を見ていく必要がある。イノベーション関連部分にだけに焦点化しても同じではなかろうかと。
意見2、博士課程院生・ポスドクは均質集団か? 今回提示された現状に関する資料を眺めていて、博士課程院生・ポスドクには、潜在的な能力、意欲、志向性などの観点から見て、複数のグループが存在するような気がする。博士課程、ポスドクの急速な拡大によって、本来、博士課程進学とはミスマッチな学生たちがかなりの数含まれているのではないか。博士課程に進学してほしい院生は修士課程を終えると就職を選び、いわゆるモラトリアム的な意味でやむを得ず博士課程に進学してくる、覇気のない院生の数はどれぐらいなのか等々ですね。
意見3、米国のプロフェッショナル・サイエンス・マスターズ・プログラムということで、コースを分けろという提言に関連して、前回、口頭で少し紹介した米国のPSMの最近の動向、「アメリカCOMPETES法」のセクション7034がここで紹介されておりまして、PSMを設立・改善しようとする4年制大学にグラントを提供する新しいプログラムを設立。つまり、従来、米国ではほとんど意味がなく、取得者が少なかった理学修士号を、高い付加価値を持つ専門職理学修士号に高める方向に進んでいるということで、これはPhDの多様化の方向ではないということをおっしゃっています。
2-
の視点についての意見4、連携講座、連携大学院のさらなる推進を図るインセンティブということを提案されております。これは、時間の関係で、読んでいただきたいと思います。
裏面のほうに行きますと、意見5、初等中等教育での成果を見直し、確認しておく必要はないかということを触れております。これは読んでいただきたいと思います。
意見6、企業人としての基礎力の開発は正課外でということが提案されております。
意見7、大学院生の日常生活の時間管理を見直せないかということで、3行ほど提案されています。
2-
の教員の意識改革への取り組みの中で、意見8、妨害しないことへのインセンティブ。これは読まさせていただきます、私も理解できてないので。
非常に難しい課題であると感じる。これまでの施策の成果が上がらない場合の多くの背景には、教員の意識改革ができなかった問題がある。教員・研究者の意識改革を図る取り組みという正攻法を考えることも大事だが、短期的に正攻法(キャリアパス多様化事業の中で出てきたポスドクの職務専念義務の免除の仕組みなど)がうまく機能しない可能性がある場合には、別のインセンティブも考え出す必要があるかもしれない。邪道ではあるがということで、幾つか具体的な提案があります。
以上でございますが、残り10分間しかないのですが、ご発言いただいてない残りの方、ぜひ2分ぐらいずつでも、今のペーパー発表に対してでも結構ですし、あるいは参考資料2の既に発言された方の充実でも結構でございますので。
まず、所委員、お願いいたします。
【所委員】
グローバル人材というところに集中して私はお話ししたいと思うのですけれども、なぜグローバル化が必要か、グローバル人材が必要かというところは、必ずしも理解をしていないのではじゃないかと思います。
それと、ものづくり立国、日本はものづくりという話を言われて、みんな、そうだ、そうだと思っているわけですが、なぜものづくりかというと、言葉は要らないからなのですね。ものをつくって売れば、それでビジネスになると言うことです。今、日本の大きな企業でも、製品を売る、工場を建てる、それから、セールスに行く、そこら辺までやっているのですが、そろそろそれだけではビジネスができなくなって、コミュニティーをつくって、ニーズをそこから吸い上げてライフスタイルの中に埋め込んでいくという、そういう作業をしなければならなくなってきた。そうしますと、企業側としてもグローバルな人材が自動的に必要になってくる。もちろん現地の人も必要ですし、日本人もグローバルになっていかなければいけないという、極めて大きなニーズがあります。
それからもう1つは、国内だけで企業と大学でどういう人材をつくろうかということを議論していても実は全くらちが明かなくて、極端に言えば鎖国を強めていくことになる。我々の中だけのロジックで動いてしまう。そうではなくて、海外の企業に勤めるとか、海外の大学を出た学生を日本で雇うとか、そういうようなオープンなことが必要だと思います。もしそういう政策がとれれば、現在、学生が持っているような閉塞感、もしくは内向きな感じでの勉学というところにも風穴があけられるのではないかなと思います。
【柘植主査】
2分間ぐらいでお願いします。
【所委員】
もう終わります。今、調査として、海外のグローバル企業に何人ぐらいの人が、博士、マスター、学部でもいいのですけれども、就職しているか。これは多分ほとんどないと思うのですけれども、こういうことの調査を始めていくということが必要じゃないかと思います。
それからもう1つは、世界のグローバル企業と言われる企業がどういう人材を求めているかというのを調べていく。そしてグローバル人材育成というところに具体的に役に立てていく必要があると思います。
以上です。
【柘植主査】
できたら、今の最後の課題は産業側のほうでまとめていただけるとありがたいのですけれども。国ができるというのもあるかもしれませんけど。
では、小林委員。
【小林委員】
いろいろと途中の話をすると時間がかかるので結論だけ言いますと、そろそろ大学院の日本的位置づけを根本的に考え直す必要が出てきているのではないかと思います。簡単に言うと、日本では博士の学生も教育サービスの消費者という位置づけです。アメリカなどでは普通、大学のスタッフにもなるわけです。要するに、教育サービスを受けると同時に研究等をして給料も受けるという、そういう二重の地位を得るわけです。それに対して日本の場合には教育サービスの消費者なので定員管理という話も出てくるし、あるいは、先ほどの小川委員の資料にもありましたけど、研究費で大学院のプログラムを開発するということもある。あるいは研究費によって「大学院生に給料をあげる」などという話もそういうところから来ているわけです。日本の今の仕組みの中で同じことをやっていくと、例えば、先ほど紹介があった、いろいろな修学支援のための博士後期課程の在籍者に対するインセンティブという話も、実際にやっていくと学生にとっては余分な仕事をさらにさせるという話になるのですね。かえってディスインセンティブになる可能性もあるわけです。そういうことを全部考えてみると、日本の大学院制度のあり方をそろそろ根本的な考えないとどうしようもないのかと思います。それなしでやると、何かやったことが何か別の弊害を生むということをまた起こす可能性かあるのではないかという気がします。これは本格的には4の制度改革のところで議論すべきことかもしれませんけど、制度に結びついていく問題ではないかと思います。
【柘植主査】
ありがとうございます。
じゃあ、大隅委員、それから伊藤委員。
【大隅委員】
では、手短に。私、鳥居委員の提出資料のことに非常に深く賛同する者で、少しそこのところを大学の側から補足させていただきたいと思うのですけれども、まず、1ページ目のところでおっしゃっていたことで、純血主義というあたりのところが言葉としてあったと思うのですけれども、結局、学部から修士というあたりのところで囲い込むということが非常に多いわけですが、可能であれば学部までの教育と大学院の教育というところで大きく分けるべきであり、その中で、同じ大学の研究室に進む、ましてや同じ出身、学部までの出身のところに進むということを大きくそこで変える。そこの純血率を例えば30パーセント程度に下げるというような方針というのが、大きなイノベーションにつながる人材育成になるのではないかなというふうに思います。可能であれば、学部の教育のときに実験をやらせて、それで何か小さな学位論文を書かせるということではなく、その段階ではむしろ、サーベイをして、こういう分野がおもしろそうだから、こういうところに問題設定をして、これをもし解決するとしたらこういう方法があり得て、予測される成果と波及効果は何かというような、非常にバーチャルな、イマジネーションだけで研究のプロポーザルや予測される結果みたいなものを書くというので済ませて、ほんとうの研究、例えば実際に現場で何かやってみないとわからないことというのは、修士以降でやればいいのではないかなというふうに思っています。違う考え方というのはもちろんあり得るとは思うのですけれども、日本の場合には徒弟制度的な教育スタイルというのが学部のころから始まっているという、そこのやり方がグローバリゼーションに合ってないのではないかなというふうなことを感じます。
もう1つのポイントですけれども、やはり鳥居委員のお話につながるのですが、論文至上主義ということと責任転嫁ということですが、これは、結局、国際的な論文をどれだけ出していますかということが大学だったり教員だったりの評価につながってしまったこととまさにリンクしていまして、結局、論文をたくさん出さなければいけない。ですから、それを学位論文ということにみなしましょうということになってしまったのですね。昔ですと、理学部系の学位というのは、ほんとうに何百ページにもわたるような、今でも例えばドイツなどでは、私も外部で査読していますけれども、学位論文というのはものすごくしっかりしたもので、ほんとうに1冊のモノグラムとして出版できるようなレベルのものを書いていたのですが、そんなことはやってられないという現場の教員の数の大学院生の数のアンバランスが生じてしまいましたし、そういったことができなくなってしまったという現実があると思います。
最後に、所委員のお話でものづくりは言葉が要らない分野だったので日本で好まれたというのは、なるほどというふうに感じ入ったのですけれども、そこで求められるコミュニケーションがある人材というのは非常に大事だと思いますし、もしかすると女性の能力なんていうところはそういったところで非常に大きく発揮される可能性があるのではないかなと思います。
以上です。
【柘植主査】
ありがとうございます。
じゃあ、小野委員、山野井委員、興委員と。
【小野委員】
私はやっぱり大学院教育を充実させるべきだと、正攻法で思っておりました。それは、先ほどの鳥居先生のお話にもある、基盤的授業をしっかりやるということも大事だと思いますし、先ほど吉見さんがおっしゃった、企業でも、潜在的能力というか、応用的能力というか、そういったものを最終的に求めていらっしゃることは明らかなので、だから、学習指導要領で決めろと言っているのではないのですけれども、教育のスタンダードをある程度決めて世界標準にきちっと合わせて、日本の大学院を出れば、ハーバードやオックスフォードのマスターと同じだけの、対抗できるスタンダードに達していると。お互いに単位互換ができて、お互いに相互認定ができるような、そういう世界標準にまず合わせる努力をしなきゃいけないと思うのですね。その結果、私が言っている修士力とか博士力というのが本当につく教育を目指すべきではないか。全部の大学院にしろとは言えないのですけれども、少なくとも大学の博士課程を出れば、なるほど博士になっているだけのことはあると評価されるような、そういうものを目指すためには、やっぱり大学院教育を抜本的に改める必要があるのではないかということを言いたい。
【柘植主査】
ありがとうございます。
そしたら、山野井委員、興委員、伊藤委員もですね。
【山野井委員】
前にも申し上げましたが、第1回の提言のときの専門性について、あれは世界レベルの研究者というのがテーマでしたけれども、そうであってもなおかつ専門性プラス知識の幅の広さというのがこれからの専門性の中心であると、この考え方は変わってないと思うのですね。その観点で申し上げますと、私は、まず学部教育においては、現在、産業界に入ってくる人たちは修士が非常に多いわけですね。こういう実態を踏まえて、おそらく今後とも知識基盤社会ではだんだん増えてくると思うのですね、ドクターも含めまして。その場合に、学部段階では、もちろん専門性というのは必要なのです。これは緩めるわけにいかないにしても、もっと教養とか知識の幅を広げるという方向にもう一段軸足を置いていただきたい。
それから、大学院においては、特に産業界等に出る場合には、どうしても1つのディシプリンだけでは難しい点がありますから、プログラムの中に、例えばPBL、Project Based Learningというのですか、Product Based Learningというのでしょうか、複数のディシプリンが絡まないとうまくいかないようなテーマを導入していただきたい。これはアカデミアの世界を目指す人に必要かどうかというのは、私、その点はよく分からないのですが、我々が大学に期待するもう1つの大きなテーマというのは、新しいディシプリンをつくることなのですね。それは多分インターディシプリナリーなところから出てくるのではないかと思いますので、したがって、大学院に進む人も含めて、PBL的な発想のプログラムをぜひ大学院の中に入れていただきたい。
以上です。
【柘植主査】
では、興委員、次は伊藤委員、お願いします。
【興委員】
今の山野井委員がおっしゃったこととか、あるいは先ほど吉見委員がおっしゃったこととよく似ているのですけど、まさにこれからのイノベーションの時代にどういう人材が必要なのかということだと思うのですね。そのときに、今、我々は、ポストドクターがたまたまいろんな意味で大きなウエートを占めているのですけど、そういう意味で、ドクターコースに本当に人が行かなきゃいけないのか、だからそのインセンティブはどうでしょうかと、こういうことではなくて、本当にどういう人材が必要なのかということをまじめに思考していこうとすると、本当にそれが博士課程なのかどうかという議論になってくるのだろうと思うのですね。吉見さんがおっしゃったように本当にクオリファイドされるべき素質とか志向性を持った人であれば、学部学生でいいよ、マスターでも十分だ、むしろそういう人こそ社会としては期待しているのだと、こういうことになってくるとしたら、博士課程に行くインセンティブ、行かなきゃいけないものがなくなってしまうのですね。日本の社会構造から見て、どういう要件を備えた人を社会は必要としているかをもっと検証していく必要があるのではないかなと感じました。
一方、本当にドクターは要らないのかというと、外国の社会では、例えば我々が大使館員といろんな議論をするとか、どこに行っても、人文系であってもみんなそうですけど、当然のことながら博士課程まで行くのですね。ところが、日本の社会は学士で十分で、行政官は学士で十分だと。やっと何とかマスターが入るような、本当にそれが日本の社会として現にあるわけですけど、その社会構造がどうなのかということをまじめに考えていかないといけないのではないか。
最後に、イノベーション時代、イノベーション25とか、いろいろとよく言われますけれども、そうなってきたら、文化を変えるだけのチャレンジができる人材が本当は欲しいのですね。そういう人材を育てていく教育というのは何であるかと考えていくことこそ、今、科学技術・学術審議会の人材委員会のマンデートじゃないかなという感じがしました。
【柘植主査】
では、伊藤委員、三宅委員で終えたいと思います。
【伊藤委員】
よろしいですか。とにかく2分間で簡潔に切り上げますけれども、参考資料2で私の意見が取り上げられています。私が前回申し上げたのは、大学教員の意識改革、あるいは大学教育の改革だけじゃなくて、企業の意識改革が必要ということを申し上げたわけです。それが2-
と
、両方に出てきているわけですけれども、それらは並列という意味ではなくて、大学教員の意識改革というのは大前提にあるということをもとにして、企業の方々にも意識改革をしていただく必要があるのではないかと、そういう趣旨で申し上げたわけで、それを少し補足させていただきます。大学教育という点では、現在、ここでは特に大学院教育が主なテーマになっていますが、学部教育についても時々ご意見がございます。例えば工学系では、今、山野井委員もご尽力なさっていらっしゃるJABEEで、かなりその辺はレールが敷かれてきていると思います。あれは国際的な視点という点でもかなり意味があると思います。一つのスタンダード、模範になろうかとは思うのですが、一方で大学院の教育については、やはり日本はものすごく問題が多いのは事実だと思います。よくアメリカと比較されますが、アメリカとは非常に違う。皆さんよく認識していらっしゃると思いますので違いの中身の詳細は申しませんけれども、日本の大学院としては、アメリカのドクター、大学院制度というのも見習うところが随分あるのではないかなという気がいたします。日本ではなるべく入りやすくして、たくさん集めて、そして、教員にとって自分の研究に資するような学生さんを周りにそろえようと、そういう意向が強いわけですけれども、そうではなくて、入りやすくするのではない、また、目標も持たずに入って得をするものではないと、そういう視点も必要だろうと思うのですね。バリアを高くして、きっちりした能力を持った人を大学院に受け入れる。その結果として、そこから輩出させる人材についてのステータスが備わる。そういうような流れに持っていくべきだろうと思います。
それを評価するのは企業としては大事なことでして、どこの大学院を出たからいいのだよということではなくて、企業で具体的にどういう人材がいるのかというのが課題になるわけです。私、企業のことはあまりよく知りませんが、例えば、採用のときに志願者の経歴等は一切伏した状態で面接官が面接して、それで客観的な評価をするとか、そういったようなことをやれば、どこの大学を出たからいいのだとか、そういった意識に基づく評価ポイントというのはなくなってくるのではないかなという気がいたします。
まとめますと、大学では個人の能力を伸ばす教育、企業としては個人の能力を見きわめる目を育てる、かなり抽象的ではありますけれども、そういったことが必要であろうと私は思っております。
【柘植主査】
ありがとうございます。
それでは、三宅委員、よろしくお願いします。
【三宅委員】
結局、人材を育てるというときに、どうやって多様性を認めていくかということが一つのキーなのではないかと思います。多様性を認めたいというときに競争原理というものが使えないということは、いろいろなところで分かってきていると思います。なぜ競争原理がだめかというと、競争させるためには、一つの同じ物差しをつくって、それではからなくてはいけなくなるからですね。競争をやめることによって1人1人が自分の力を発揮する、そういう形の教育を世界中が求めて、模索して、もう10年、20年になると思います。そこについて日本は特に現在、全く逆行しています。そういうところに今ここの委員会の中で問題になっている解けない問題の原因があるかもしれません。多様性を認めつつ、1人1人の機会の均等性を保証する、それができるんだということを、仮説としてどうやったらいいかということを、すでに試みているところの具体策から学んでいくということはできるんじゃないかというふうに思っています。
【柘植主査】
ありがとうございます。
予定を1時間延ばしていただいたにもかかわらず、時間が来てしまいました。この資料の表題にもありましたように、人材育成の好循環という言い方で事務局はまとめてくれましたけれども、今議論をしていると、むしろ負の循環に今は入っている。そして、それが何で起きたかということのレッスンラウンドを掘り下げない限り正の循環にならないぞという、これがどうも今日の議論の考えるべき視座の基本かなと感じております。しかし、我々のミッションとしては、何とか正の循環、好循環に持っていくための仕組みを提言するミッションを我々は持っているわけでございまして、今日ご発言のものを含めて参考資料2を充実してみるというのは、事務局のほうにお願いをしたいと思います。それから、それを次回の前に各委員にもう一度回して、我々、第4次の提言に持っていくためにはもう少し具体論を書かないといかんというミッションがあるのではないかと感じておりますので、そのための見える化を、今日のご発言をもとに参考資料2を充実していただいて、かなり核心に迫った解決策の提言は随分あったと思いますし、まだ表層の課題設定の段階にとどまりながらも非常に重要な表層の課題設定をされたと思いますので、そういう観点からこの参考資料2を充実していただいて事前に一度送っていただいて、できたら欠けている部分について各委員からも次回の前に充実する記入をしていただけたらと思います。
時間が参りました。実は、議題3の報告事項で平成21年度の概算要求についてございますが、これは資料5を後で読んでいただくと。これから文部科学省の実力で、12月に実力試験の結果を聞かせていただくほうを期待するということで、今日は飛ばさせていただきたいと思います。
最後ですけれども、事務連絡を事務局のほうからお願いしたいと思います。
【高比良人材政策企画官】
今後の開催予定でございます。資料6を配付させていただいておりますけれども、次回は9月29日(月曜日)13時からを予定しております。申しわけございませんが、次回も3時間とらせておいていただきますが、そこは、3時間以内で済むようであれば早く終わるということで、一応、3時間押さえてございます。ここ、同じ場所で行いたいと思います。10月以降も参考のために掲げておりますけれども、よろしくお願いをしたいと思います。
最後に、本日の資料でございますけれども、いつものとおり机上の封筒に入れていただければ、後ほど事務局より送付をさせていただきたいと思います。
以上でございます。
【柘植主査】
ありがとうございます。
大変忙しいところをさらに1時間もプラスしていただきまして、大変ありがとうございました。次回は、審議議題3、世界をリードする研究者の養成方策、それから、人材養成に係る研究資金等の制度改革、これが中心になりますけれども、ぜひとも今日の議論も、参考資料2の充実というものも、時間を割いて反すうする時間をつくってみたいと思います。その上に立った、審議議題3、4という形で進めていきたいと思います。
それでは、本日はこれで終了したいと思います。ありがとうございました。
午後 4時4分 閉会
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