科学技術・学術審議会人材委員会・中央教育審議会大学分科会大学院部会合同部会(第3回) 議事録

1.日時

平成30年4月26日(木曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省15階 15F特別会議室

3.議題

  1. 研究人材を巡る課題について
  2. 理化学研究所の若手研究人材の育成について
  3. 科学技術・学術政策研究所からの報告及びこれまでの合同部会における議論を踏まえた討議
  4. その他

4.出席者

委員

宮浦主査、長我部委員、川端委員、髙橋委員、沼上委員

文部科学省

佐野科学技術・学術政策局長、松尾大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、勝野科学技術・学術総括官、坂本人材政策課長、石丸人材政策推進室長 他

オブザーバー

坪井科学技術・学術政策研究所長、山崎理化学研究所研究政策審議役、村上早稲田大学政治経済学術院教授 他

5.議事録

科学技術・学術審議会人材委員会・
中央教育審議会大学分科会大学院部会 合同部会(第3回)


平成30年4月26日


【宮浦主査】  科学技術・学術審議会人材委員会・中央教育審議会大学分科会大学院部会合同部会の第3回を開催させていただきます。
 本日の会議は、冒頭より公開となっておりますので、よろしくお願いいたします。
 本日は、室伏委員と湊委員が御欠席ですが、現時点で5名の委員が出席でございますので、定足数を満たしております。
 まず、事務局に人事異動がございましたので、御紹介をお願いいたします。
【広瀬基礎人材企画係長】  事務局でございます。御紹介申し上げます。
 本年4月1日付けで人材政策課長に坂本が着任しております。
【坂本人材政策課長】  人材政策課長に着任しました坂本です。
 日頃から我々の政策につきまして、様々な形で御協力いただきまして、本当にありがとうございます。改めて感謝を申し上げます。今後とも、是非、引き続き御指導をお願いしたいと思います。
 私、このポストに着任する前に、産学連携を3年半担当しておりましたけれども、その中で、今、知識社会と――本日、村上先生の御発表にも書かれているところでございまして、後で詳しく御説明を頂けるかと思いますけれども、知識社会と言われている中で、知識が社会における最大の資源であるということが、今言われているところでございます。それによって、いかに価値を生み出していくかというところが、これは産業的な意味でもそうですし、学問の領域においても、新しい知識を価値に転換していくというところが、今、世界的な競争になっているということを、私は、産学連携を担当していても非常に強く感じたところでございます。
 そういった活動の中で、やはり最も重要なのは人材であると。産業界に求められるイノベーションを起こすにしても、あるいは、新しい学問領域を作っていくにしても、人材というものをいかに育てていくか。そこに求められるコンピテンシーというものはどういうもので、それを若い人、あるいは子供たちに培っていただくために、どのようなシステム、カリキュラムというものが必要になるか、あるいは、育成の制度が必要になってくるかというところを、我々、文部科学省は是非、ここにお集まりの専門家の皆様と共に考え、そして、その必要な手立てというものを一つ一つ積み上げていきたいと思っております。
 是非とも、御指導をよろしくお願いしたいと思います。ありがとうございます。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 それでは、議事に入ります前に、事務局より、本日の資料の確認をお願いいたします。
【広瀬基礎人材企画係長】  
 委員の先生方のお手元に、資料1から4及び参考資料1、2を配付させていただいております。本日は、村上早稲田大学教授及び山崎理化学研究所政策審議役よりヒアリングを行うことを予定してございますが、村上先生、山崎先生に御提出いただいた資料につきましては、参考資料2にございます「科学技術・学術審議会人材委員会・中央教育審議会大学分科会大学院部会合同部会の公開について」第3条ただし書きの規定に基づきまして、一部を非公開とさせていただいております。資料につきましては、適宜投影させていただきますので、傍聴の皆様におかれましては、前方のスクリーンを御覧いただきながら議論を追っていただけましたらと思います。
 また、委員の先生方のお手元には、研究人材の育成・確保に関する主要な資料に関してのファイルに挟みまして配付させていただいております。
 議事進行の過程で不備等ございましたら、事務局までお知らせ願います。
 以上でございます。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 それでは、早速議題1に入らせていただきます。
 研究人材の育成がテーマでございますけれども、特に若手研究者が海外の各種研究機関において研究の研鑚を積む機会を得ることが、非常に国際経験ということで重要だということが指摘されているところでございます。本日は、高度人材、研究人材の国際の移動、人の移動とイノベーションについて、早稲田大学教授の村上由紀子先生をお招きしてお話を伺いたいということでお願いをいたしました。本合同部会の議論の参考とさせていただき、国際的な人の動きということを議論とさせていただきたいと思っているところでございます。
 御略歴を簡単に御紹介申し上げます。村上先生は、早稲田大学大学院経済学研究科を修了されまして、大阪外国語大学専任講師、早稲田大学助教授をお務めの後に、平成11年より現職、早稲田大学政治経済学術院教授をお務めでございます。また、カリフォルニア大学バークレイ校・オックスフォード大学・マサチューセッツ工科大学等の客員研究員も歴任されておられます。また、先生の著書につきまして、『人材の国際移動とイノベーション』、あるいは、『頭脳はどこに向かうのか』など、人材の国際移動に関して多数御執筆をされておられます。
 それでは、村上先生、30分程度でよろしくお願いいたします。
【村上教授】  ただいま御紹介いただきました、早稲田大学の村上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 私が2015年に出した『人材の国際移動とイノベーション』という本に基づいて、知識創造、国際移動、国際共同研究という観点でお話をし、最後に、国際化の観点からみた研究人材の育成・確保・活躍に関する日本の課題ということについて、私が考えていることをまとめてお話しさせていただきたいと思っております。
 イノベーションは、利用しうる範囲のものや力の新結合によって新しい経済的・社会的価値を生み出すことでありますが、新しい経済的・社会的価値が生み出されるまでの間に、数多くの知識の質的・量的な発展があります。そこで、イノベーションを一連の知識創造のプロセスと考えて、知識創造を単位に議論をすることにいたします。
 知識創造は、これまでにつながりのなかった知識の新しいコンビネーションをつくることです。その新結合までのプロセスを分解しますと、第1ステップとして、新しい知識源を認識し、知識を獲得・吸収する。次に、吸収した知識を個人や組織のコンテキストに変換する。最後に、変換された知識を他の知識と結合するという3段階のプロセスからなっています。
 複雑化・高度化した科学技術と専門化したビジネスプロセスを考えますと、この全てのプロセスを一個人が成し遂げるというのは簡単なことではありません。そこで、組織を単位として知識創造が行われます。
 その次の図は、個人と組織の知識創造図ですけれども、ここでいう組織というのは、数人のチームもあれば、一企業、一研究所、一大学という単位もあれば、国という大きな単位を考えることもできます。いずれにしても、大きな真ん中の楕円、これが組織を表しています。その組織の中に、ここではAさんとBさんという個人を、単純化のために二人だけ書いてあります。新しい知識源というのは、組織の外にあることが多いので、Aさんは、組織の外部の人とインフォーマルなネットワーク等を通じてつながり、そこから外部の知識を吸収します。自分の能力やモチベーションを使って、自分が既に持っている知識と新結合を起こして、新製品・新サービス、論文・特許などを作り出す、生み出すというプロセスを実行します。ただし、一人でこれを全て行うのは非常に困難ですので、組織の中にBさんがいるとBさんとの間で対話や観察を通じて、知識をお互いに移転・交換したり、変換・結合したりして、共同で新製品・新サービス、論文・特許等を生み出すということを行います。
 この過程で、個人の能力、モチベーションが重要であるのは言うまでもありませんが、上に書いてある組織環境も非常に重要であると思います。すなわち、協調を促すような組織文化があるとか、各個人に資源が十分与えられているとか、あるいは、対話・観察、知識の移転・交換を促進するようなマネジメントが行われているとか、そういうようなことも全て関わってきて、最終的なアウトプットになります。ここの知識創造のマネジメントをどうするかという研究は、国際的にも盛んに行われています。
 そのことを考えますと、知識創造に関する人材の課題として、今ここで3つのポイントが挙げられます。
 1つは、そもそも高い能力、モチベーションを持った人材を獲得するということです。それは、組織が採用の段階で選抜をすることで、その中には、海外の人材をリクルートするということも含まれています。さらに、外部の知識を吸収するというプロセスがあり、これには、個人の、研究者自身のインフォーマルネットワークも利用され、組織の介入できない部分でもあります。あくまでも個人ベースの信頼関係に基づいた、社会学でギフト交換と呼ばれているものになります。そうすると、もともとそういう豊かな人的ネットワークを持った人を採用することが1つのポイントになります。
 それから、高い能力、モチベーションを持った人を組織は十分に活用しなければならないので、適所に配置したり、必要な資源を与えたり、マネジメントを工夫したりすることが重要になります。
 それから、そもそも獲得するだけではなくて、育てる、育成するという場面も大事です。小学校から博士課程までの学校教育に加えて、専門職と言われている人たちの場合は、職業に就いてからも不断に能力開発をしなければならず、所属している組織や国が能力開発の機会を与えることも重要です。その中には、海外留学と派遣等も含まれています。
 次に、高度人材の国際移動に入ります。
 最初のスライドには、高度人材の国際移動のメリットとデメリットが書かれています。それぞれ送り出し国側のメリット、デメリット、受け入れ国側のメリット、デメリットが分けて書かれています。まず送り出し国側のポイントとしては、いわゆる貴重な人的資源が流出してしまい、その人的資源に対して、高等教育の機会を与えていたのならば、その高等教育投資が無駄になるということがデメリットとして挙げられています。
 しかし、海外に移住をした人というのは、やはり母国への関心を持ち続けていますので、海外で落ち着いた段階で、知識や技術、情報などを母国に提供したり、母国の人たちと国際共同研究を行ったり、あるいは、送金をしたりというような形で、母国に貢献することはよく行われています。
 さらに、最近では、頭脳流出だけではなくて、行き来をする頭脳還流もよく起こっていますので、海外で人的資本を高めた人が帰国すれば、その人たちの能力や知識を活用することができるというメリットもあります。
 一方、右側の受け入れ国側ですけれども、こちらは貴重な人的資源を獲得することができます。しかも、先進国はやはり共通に人口減少や高齢化という課題を抱えていますので、学生数や労働力を確保するというメリットもあります。それから、移民が起業してくれれば、雇用機会が生まれるというメリットもあります。
 その一方で、やはり移民によって仕事の機会が奪われるとか、賃金の上昇が抑制されるという面が懸念されたり、あるいは、技術の流出の危険があったりというようなことも言われています。
 アメリカでも、アカデミアのポジションが移民によって奪われているのではないかというような議論があり、いろいろ実証研究も行われています。その一つの結果に、ポスドクポジションではアメリカ人が移民に代替されているが、テニュアのポジションではそういうことは起きていないという結果があります。また、大学に外国人が多く入学すると、アメリカ人が閉め出されてしまうのではないかという議論があって、それについても、一般的に言えばそういうことは起きていないけれども、トップクラスの大学で外国人学生が増加することによって、白人男性がクラウディングアウトされたというような実証研究もあります。
 いずれにしても、ここに書かれているのは、起こり得るプラスの効果やマイナスの効果であって、実際そういうことが起きているかどうかは、いろいろな実証研究をしていかなければならない問題であると思います。
 次は、ネットワークの構造です。左側は中心のあるネットワークで、Aさんが真ん中にいて、Aさんは、B~Fまでの人たちと直接ネットワークのタイを築いています。それに対して、Aさん以外の人たちは、Aさんとは直接つながっていますが、お互いに他の人とはつながっていないという特徴があります。Aさんは、残りの5人から直接知識や技術を吸収できるというメリットがあり、同時に、自分の持っている知識や技術を素早く広めることができます。Aさんはそういう中心のポジションにいる人です。
 それから、右側は構造的隙間(structural holes)のあるネットワークと言われているもので、大きくネットワークが左側と右側に分かれています。左側のネットワークを見ますと、Pさんは、多くの人とネットワークのタイを築いていますが、Pさんが右側のネットワークにつながるためには、必ずQさんを通さなければいけないという状況にあります。右側のネットワークでは、Sさんが中心に位置しています。Sさんは、右側のネットワークの中では、直接技術や情報、知識を吸収できる立場にありますが、左側のネットワークとつながるためには、必ずRさんを通さなければいけないという関係にあります。したがって、左側と右側のネットワークの間に隙間があり、これが構造的隙間と言われている部分で、そこをつなぐポジションにある、ブリッジを架けるポジションにいるのが、QとRです。左側と右側のネットワークが、それぞれ違う知識のネットワークであるとすると、QやRのポジションにいる人たちは、新しい知識を獲得することができて、知識の新結合を起こしやすいというアドバンテージをもっています。
 国際移動を経験した人たちは、まさにQやRというポジションに位置しやすいという特徴があります。すなわち、母国側のネットワークとホスト国側のネットワークがあって、そこの両方とつながっているというアドバンテージをもっています。
 それから、左側の中心のあるネットワークですけれども、今はFまでしか書かれていませんが、例えば、Fの先に点があって、Gさんという人がいるとすると、GはAとつながるためには、必ずFを通さなければいけないという状況になります。しかし、Gが国際移動をして、直接Aさんとつながることができれば、それだけ中心に近くなり、いろいろな知識や情報を早く吸収できるポジションに移ることができます。そこで、ネットワークを広げたいとか、あるいは、中心のネットワークとつながりたいというようなことが、研究者の国際移動にとって大きなインセンティブになっています。
 その次が、少し見にくく、ややこしい図になっていますが、タイトルは、引用論文の空間的時間的広がりです。これは、ノーベル賞を受賞された利根川進先生の引用論文に関することです。利根川先生は、2008年までの間に308本の論文を発表され、2011年の時点で一番引用された論文は、1992年に発表された遺伝子組換えに関する論文でした。その論文を仮にX論文とすると、そのX論文は、1,494本の論文に引用されていました。その論文がどういう国で出されているのかということを示したのが、その図であります。右側の凡例にあるように、赤丸とか、青い円とか、緑の円は、そのX論文を引用した論文が初めて出版された年を表しています。
 X論文は1992年に発表されています。その同じ年に既にそのX論文を引用する論文が、アメリカ、イギリス、ドイツ、スイス、日本、カナダという、この内側の太い赤い円の中に入っている6か国で出されています。X論文が活字になった年に、もうそれを引用する論文を出しているということは、研究会とか、セミナーとか、研究者同士のソーシャルネットワーク等で、もうその情報が既に流れているということです。そういう情報にアクセスできるということが、ネットワークの中心にいることの意味です。アメリカが1992年から2010年の間に863本の引用する論文を出し、ドイツは、それに次いで126本であったということを示しています。
 右上がヨーロッパを表し、そこを見ていただくと分かるように、ヨーロッパでは、ヨーロッパの中心国から周辺国へ次第に研究が展開しています。それに対して、アジア・オセアニアとか、アフリカ・中東では少なく、例えば、アジアでは、日本とオーストラリアを除くと、論文の合計は17本で、そのうち国際移動を契機とする国際共同研究が7割以上を示しています。アフリカ・中東では、全部で8本論文が出ていて、国際移動を契機と確認されたものは、その中で5本あります。つまり、国際移動は、周辺から中心へのポジションを変える手段になっていて、知識が伝わりにくい国や地域にも知識を伝える機能を持っているということが言えます。
 それでは人材の国際移動はどういう要因で起きているのかということは、次のスライドで説明されています。この国際移動のプッシュ・プル要因として、雇用機会の有無、賃金水準、キャリア発展の可能性、生活環境というのは、研究者にかかわらず、一般的な職業でも当てはまる要因であります。さらに、研究者の場合には、やはり研究環境が非常に重要になってきます。ただし、研究環境だけあればよいということではなくて、特に欧米の人たちは、家族同伴でなければ移動しない傾向がありますので、やはり家族のことも考えると、生活環境は非常に重要になってきます。
 一番下にハンプ仮説というのがありますが、ハンプというのは、ラクダのコブという意味です。これは、経済発展水準を横軸に取って、海外移住率を縦軸に取ると、その関係がラクダのコブのような関係になるということです。経済発展水準が低いときは、海外に行くお金を工面できない人が多いわけですが、だんだん豊かになると、海外に行かれる人が出てきます。しかし、さらに豊かになってくると、国外によりよい環境、あるいは、より魅力的な国が段々となくなり、自国の中で満足するという状況が起きてきます。アメリカや日本からは海外移住は少ないわけですけれども、国内でほぼ満足している人が多いということが言えると思います。
 ただし、アメリカの場合には、出ていく人は少なくても、海外から来る人が多いので、国内の中ではかなり国際化が進んだ状況になります。それに対して、日本は、入ってくる人が少なく、しかも、出ていく人も少ないということになると、蚊帳の外に置かれるような状況になりがちです。
 次に、国際共同研究に入ります。
 日本は国際共同研究が少ないということは、よく知られています。そして、国際共著論文の方が国内論文よりも被引用回数が多く、したがって、クオリティが高い論文が多いということは、様々な実証研究で明らかにされています。ただし、共同研究のパートナーの国や研究機関によって国際共同研究の成果は異なっています。例えば、アメリカは、国内の共同研究で、かなり質の高い研究を成し遂げることができるので、国際共同研究を行うプレミアムは非常に小さく、むしろ、国際共同研究の方が引用されないという分野もあります。日本は、それに対して、国際共同研究から得るベネフィットが大きいということも、実証研究で明らかにされています。ここでいうベネフィットは、被引用回数で論文のクオリティを測ったときに、よりクオリティの高い論文が出やすいという意味です。つまり、日本は、国際共同研究は少ないけれども、国際共同研究をするとベネフィットが大きいという状況にあります。
 次に、国際共同研究のチームがどのように形成されているのかということに関して、重力モデルがあります。これは、物理学の万有引力の法則のアイデアを借りています。万有引力の法則では、2つの物体間に働く力は、それらの物体の距離の二乗に反比例しますが、2国間の貿易や2国間の国際共同研究などにこの重力モデルを応用することが、社会科学では行われています。
 この場合に、分母にくる距離は何なのかというと、2国間の物理的距離や社会的距離で測られます。物理的距離は地理的距離ですけれど、社会的距離というのは、言語の共通性とか、同じ宗教であるとか、あるいは、何らかの文化を指数化した尺度で、それが近いか遠いかということを測ったものです。
 そのような分析方法によると、2国間の国際共同研究の確率は、物理的距離や社会的距離が長くなると低下します。ヨーロッパは、地理的にも文化的にも近いので、そこではかなり国際共同研究は行われています。物理的に離れると、やはり出会う機会が少なくなりますし、相手の置かれているコンテキストがよく分からないので誤解が生じやすくなります。それから、社会的距離が長いと、やはり相手を理解するのが難しくなり、そのために、相手の信念とか態度に関する信頼が十分形成されず、国際共同研究が行われにくいということも言われています。
 実際にどういうことを契機として海外の研究者と国際共同研究が行われているのかという実証研究を見ますと、過去の同僚であった、過去に指導教授と学生・ポスドクの関係であった、学会で知り合って意気投合したというようなことが多く挙げられています。特に地理的に離れ、国境を隔てると、信用を形成することが重要になってきますので、かつては場を共有して信頼関係を築いている同僚とか、あるいは、師弟関係にあるような人たちの間で、国際共同研究は行われやすくなっています。
 国際共同研究のメリットを調べた研究では、知識や能力が補完できるとか、高価な設備を使えるとか、マテリアルを融通してもらえるとか等に加えて、研究成果が普及するということも挙げられています。一流の研究者と一緒に国際共同研究をして、その人の名前が論文などに載っていると人目を引きやすいとか、ジャーナルに載りやすいというようなことがあるのかもしれません。そして、いろいろな国から来ている人がいると、それらの国の中でローカルに広めやすいという効果もあって、研究成果が国際的に広まりやすいということがメリットに挙げられています。
 次のスライドへ行きますと、結局、国際移動を経験した人の方が国際共同研究を行う確率が高いという実証研究があります。その場合に、海外に移住した研究者が、母国の研究者と国際共同を行うケースがあります。そのケースですと、学生の時期よりも、ポスドクも含む就職後に移動する方が国際共同研究の確率が高いということが見出されています。これは、母国である程度研究者ネットワークを築いていて、いろいろな人を知っていないと、海外に移住して国際共同研究をできる機会があったとしても、誰とチームを組めるかわからず、コネクションもないということになるからです。
 それから、海外で既に自立した研究の機会を与えられている人、PIになっているような人でないと、国際共同研究をする場合でも、誰とチームを組むかということについて権限がありません。そこで、海外にいる研究者が自立しているということも重要になります。
 その下のJinさんたちの研究は、中国人家系で中国本土外に住んでいる人々をエスニックチャイニーズと呼んでいて、そのエスニックチャイニーズが中国本土に住む中国人と国際共同研究をするようになったおかげで、中国の国際共同研究は増加していることを見出していて、エスニックチャイニーズの存在が大きいということを述べた論文です。
 その下の、海外から帰国した研究者がホスト国の研究者と国際共同研究を行うというケースもあります。それは、機関レベルの論文集中度は低下しているけれども、スター研究者の論文生産が急増しているということにも表れています。つまり、例えば、アメリカなどで研究をした人が、自分の国に帰ったときに、そこの所属機関で研究を行うわけですので、論文を生み出す研究機関は世界中に分散するという形になって、機関レベルの論文集中度は下がります。しかし、その人たちは独立して研究をしているわけではなく、アメリカにいたときの共同研究者と一緒に研究をしていて、その共同研究者の多くはPIであったり、かつてのボスであったり、指導教授であったりするわけです。その人たちは、色々な国からポスドクや博士課程の学生を集めることができるスター研究者で、スター研究者は海外の人との国際共同研究を増やしているので、彼らに論文が集中していく傾向が見出されています。
 それから、帰国してからも国際共同研究を続けるには、海外に住み研究している間に、かなりの信頼関係を築いていなければならないということが言えます。去る者日々に疎しで、帰国すると、だんだん海外とのネットワークが途切れていくということもあり得るわけですが、そこで途絶えないようにネットワークを維持するためには、海外滞在中に信頼関係を形成しておくことが大事になります。それから、帰国した人が自立的に研究できる立場にないと、かつてのホスト国の共同研究者と研究を続けることもできないので、帰国した人たちに必要な自立性や資源を与えることも重要であることが見出されています。
 最後に、今までお話をしてきましたいろいろな先行研究の結果を踏まえて、私が国際化の観点からみた研究人材の育成・確保・活躍に関する日本の課題ということで思っていることを、簡単にまとめさせていただきます。
 まず1つは、海外の高度人材を受け入れるということです。やはり能力、モチベーションの高い人というのは、いろいろな国に分散しているわけですから、そういう人たちをうまく集めることが重要です。ただし、そのときに、アメリカでも、イギリスでも、自分たちは本当に真のThe Best and the Brightestを受け入れることができているのかということは常に問うているので、そこはきちんと意識していく必要があると思います。真の高度人材なのかどうかということです。ですから、受け入れた人たちがどういうふうに活躍しているのか。日本国内の人たちと実際にどう違うのかというような実証研究も必要であると思います。数値目標が先行すると、目標を達成して人数を埋めるために、必ずしもThe Best and the Brightestでない人も入ってくるということもありますので、真の高度人材を獲得することを意識した方がいいと思います。そのためには、やはり来日のインセンティブ(研究開発環境、起業の環境、生活環境など)を整えていくことは大事です。
 2番目に、日本人研究者に関して見ますと、海外での研究機会を特に若手に与えるということは重要だと思います。私は、以前に学振の若手海外派遣の審査員を務めたことがありますが、そのときに二次審査に来て面接を受けた人たちは、皆さん非常に優秀で、志の高い人たちでした。枠は限られているので、どうしてもその中から選ばなければいけないということですが、優秀で志の高いような若手にもう少し研究機会を与えることも必要だと思います。
 それから、海外在住の日本人研究者を活用するということも大事です。国際共同研究やネットワークの形成もそれに該当します。やはり海外へ行っても、みんな母国のことは忘れてはおらず、何らかの形で貢献したいと思っている人はたくさんいます。またいずれは日本に帰りたいと思っている人たちもいます。そういう人たちと日本との間のつながりが途切れないようにしていくということは大事だと思います。
 それから、海外で活躍できる日本人研究者を育成するということです。これは必ずしも科学技術のレベルだけの話ではありません。海外の一流の研究者たちは、自分の専門分野だけではなく、政治、経済、社会、文化、歴史等にも幅広い教養を持っていて、そういう分野について学会の後のパーティー等で話をしますが、なかなか日本人はその中に入っていけないということを何人かの人たちから聞いたことがあります。そういうようなことを考えると、専門分野だけではなく、幅広い多様な知識を持った人材、コミュニケーションスキルや英語力というような点も含めて、世界で活躍できる人材の育成は重要だと思います。
 帰国した日本人の活躍を促進するという意味で、やはり適材適所に配置するということと、十分な資源を与えたり、彼ら自身の持っている資源も活用したりするということも大事だと思います。
 最後に、多様性についてですが、例えば、国際共同研究チームもそうですが、国際化するとチームの中での多様性が高まってきます。多様性は諸刃の剣と言われていて、議論が活発化するとか、刺激を受けるというようなポジティブな面がある一方で、ミスコミュニケーションなど、衝突の原因にもなっています。多様性が実際にどのような面に効果があるのかということは、これから実証研究をしていかなければならない分野であると思っています。いずれにしても、そういう多様なチームをマネジメントすることのできるリーダーがなかなかいないと言われていて、そういうリーダーを育成していくことも課題として挙げられるのではないかと思います。
 以上です。
【宮浦主査】  村上先生、ありがとうございました。国際的に人が動くということの重要性、また、科学技術分野のいわゆる国際共同研究の推進に向けて様々な視点があるということ、また、課題、メリット、デメリットについて御発表いただきました。
 それでは、ここで少々お時間を頂きまして、質疑応答、討論をさせていただきたいと思います。幾つか話題がございましたので、人が動くということ、あるいは、最近動かなくなってきたという課題もございますので、そのあたりから、委員の皆様から、今の御発表に対する御質問でも結構です。長我部委員。
【長我部委員】  納得性の高い御発表、どうもありがとうございます。
 最後の処方箋にあるように、海外経験をした方がその後の研究の活性化につながるという分析は実感があります。しかし、ハンプ仮説によれば日本は海外移住者が減少するフェーズにあり、言語が社会的距離の要素とすると諸外国と社会的距離が長いという難しい状況にあると理解しました。例えば、ハンプ仮説の図に世界の国をプロットしたときに、日本と同じような状況にありながら、それでも海外に出ているというようなモデルケース国というか、例えば日本がモデルにできるような国というのはあるのでしょうか。少し本論からずれた質問かもしれませんが。
【村上教授】  大変難しい御質問で、そういうことを意識して今まで見ていたことはなかったのですけれども。
 言語の特殊性というのは非常に大きいです。それこそお隣の韓国なども言語の特殊性はあると思いますし、ただ、韓国の国内でどのくらいの研究環境が整っているのかということは、私もはっきりしたことは分かりませんが。
 私が勉強している過程で目にした文献の中で語られていたことは、日本は日本語という言語だけで、いわゆる大学院博士課程までの教育を完結できる、それもただ一つの分野ではなくて、いろいろな領域において完結できる非常に少ない国、要するに、日本語の教科書を使って大学院博士課程まで教育できるような非常に珍しい国だということです。それはある意味、中にいる人たちにとっては居心地が良いということになります。それができない国では、どうしても、博士課程の教育とか高い教育を受けようと思えば、外に出ていかざるを得なかったかもしれませんが、日本は幸か不幸かそういう環境にあった国ですから、英語をそんなに勉強する必要も感じない、海外に出ていく必要も感じないというところはあったと思います。
 ただ、今やこれからというのは、国内で教育が全部受けられるから、国内で完結していいということではなくて、今、私がご説明してきたように、やはり世界の研究の枠の中にどんどん入っていかなくてはなりません。今、大学で実施されているように、英語で授業をする等のことも必要です。本当は日本語の教科書だけで、日本語だけで説明できるけれども、あえてそういうことはしないで、どんどん英語を使うことは高等教育でも必要だと思いますし、より小さいうちから、英語教育を行うのは大事ではないかと思います。
 余り適切なお答えではなくて申し訳ございません。
【長我部委員】  ありがとうございます。
【宮浦主査】  川端委員、どうぞ。
【川端委員】  ありがとうございました。
 2つぐらいお話をお聞きしたくて、最初のネットワークの構造、スター型とstructural hallと言われている。極めてリアルに知っているやつと話したいみたいな、そういう感覚は非常に分かりやすくていいですけど、一方で、今のICTも含めて、ネットワーク、情報関係の発達とか発展というのは、この構造を変えていくものなのかどうかというのがまず1点。
 それから、今のレベルでしたら、まだそんなに壊れていないかもしれませんけど、これからあと10年経ったときに一体どうなっていくのだろうかという気が1点。
 それから、もう1点は、おもしろいと思ったのは、国際移動で国際共同研究と言われたときに、学生よりも就職後のポスドクになってから国際共同研究の確率は高くなるそうです。タイミングという意味で言えば、効果的なタイミング、要するに、国際交流だ、学生のうちから海外へ行け、もっと若い頃から行くべきだとか言っている今の動きよりは、先生のおっしゃられている話というのは、もうちょっと年齢が上がった方がもっと効果的と、こんなふうにも読めるのですが、その2点をお聞かせいただければ。
【村上教授】  ICTの発達は、非常に大きなテーマで、それによって、外部知識の吸収源が格段に増えてきています。特に、今はネットでいろいろなことを検索できますし、ネット上のフォーラムでは顔も知らない人たちとやり取りすることも行われています。
 そのような中でも、やはり研究者の個人ベースのインフォーマルネットワークの価値は失われてはいないという研究は幾つもあります。ネット上の情報はかなり玉石混交で、信用性が必ずしも保証されているものではありません。それに対して、個人のソーシャルネットワークを介した情報というのは、お互いの交換なので、もし意図的に誤ったような情報を流すようなことがあれば、交換関係は切れてしまいます。自分がギブしないと、相手からのテークを得られません。個人ベースのインフォーマルネットワークは、いわゆる互恵的なギフト交換的な関係で成り立っている世界であるということです。
 そこで流れている情報について、研究者には守秘義務があるということが言われますが、その守秘義務というのは一般的なことであって、どこからが守秘義務で、実際の情報が守秘義務の範囲なのかどうかは各自の判断に任されています。これは日本のことを言っているわけではなくて、海外の論文に書かれていることです。それから、組織の側が、これは守秘すべきことだと言っていても、専門家の中ではすでに知られた情報だというようなこともあるそうです。
 そういうような観点から言うと、どういう情報をやり取りするかというのは、もう個人のベースで、個人間関係に任されているということになります。そこでやっぱり信頼関係のある人たちの間でやり取りされている情報は確かなものであると思われます。
 特に、自分がギブすることによって、将来、信頼の置けるような情報をきちんと確実に返してくれるような人との関係は続き、そういうソーシャルネットワークを通した情報の普及も行われています。特に、リスクに直面したときは、ネット上の関係ではなく、ソーシャルネットワークが役立ち、それがソーシャルネットワークの意義だとする研究もあります。
 私が知っているのはこの範囲で、私は今、研究者のそういうパーソナルなインフォーマルネットワークに関して調査をしようとしていて、そのためにいろいろな方に御協力いただきたいと思っています。
 それから、2点目の海外へ行く時期ですが、さきほどの話は、国際共同研究をするためには、既に国内でネットワークを築いている方がいいということです。しかし、必ずしも国際共同研究のために海外へ行くわけではないので、例えば、純粋に研究者としての教育訓練のために行くとか、英語力向上のために行くとかということであれば、若い時がいいということもあると思います。ですから、そこのバランスをどう保つのかというのは課題かもしれません。
【宮浦主査】  そうですね。早く行く意義と、国際共著のように、ある程度パブリッシュした人材になってから行くという、両方の意義があるかなと思います。
 髙橋委員。
【髙橋(修)委員】  御発表ありがとうございました。
 幾つか質問があるのですけど、1つは、日本の国際共同研究というのが少ないというデータがあったんですけれども、例えば、これの原因というのが、ネットワークの構造のところの図を見ていて考えたんですけど、例えば、海外へ行く人間がそもそも少ないのか、行った先で日本の研究者と共同研究する人間が少ないのか、あるいは、戻ってきた人がもともといた留学先と研究するのが少ないのか、このQ・P・R・Sのような図の中で、どこがそのネックになっているとか、そういうのがもしデータ的に見えているものがあれば教えていただきたいなというのが1点。
 あとは、これは日本と海外の話を中心にきょう御紹介いただいたのですけれども、例えば、アカデミアと産業界とか、そういうボーダーがあるあっちとこっちというので同じような構造って成り立つのではないかなというのを思いまして。もし、そういうところでも何か御示唆がありましたら、教えていただきたいなというのが1点です。
 あと最後、これはコメントになってしまうかもしれないんですけど、先ほどインフォーマルなネットワークという話があった中で思ったのが、最初の個人と組織の知識創造というスライドを見ながら考えていたのですけど、一番大きい楕円の部分の、このボーダーって何だろうなというのを結構考えていまして、会社とか大学とか、いろんなルールで縛られている組織に確かに所属しているわけですけれども、基本的に研究者は一人一人独立していたり、あとは、私、ベンチャー企業をやっている者でして、そうなってくると、契約上どうこうとは違う、インフォーマルなネットワークの中で1個のグループになっていたりするのですよね。だから、そういうような、ボーダーというものが何をもってこれなのだろうというのを考えていて。つまり、それは知識創造の主体は何なのだというのを考えるのに近い話かもしれないのですけれども、そういうところに関しても、先生のお考えがもしございましたら、答えというよりは、先生のお考えが聞けたらなと思って質問させていただきました。
【村上教授】  御質問ありがとうございます。
 まず、日本の国際共同研究はなぜ少ないのかということで言うと、やはり日本から出ていく人が少ない、それと、逆に、日本に入ってくる人も少ないという、その両方向の移動の少なさが1つの原因であろうと思います。
 また、海外に出ていけば、そういう国際共同研究を行うような人間関係が形成されるかというと、それは違うと思います。海外に出ていっても、あまり現地の人となじまなかったり、一緒に研究をしなかったり、あるいは、行っても日本人同士の研究グループの中にだけいるというようなことであると、国際共同関係が築けません。移動した先の研究室の中にいかに溶け込むかが重要です。英語力がネックになったりシャイなところがあったりすると、うまく溶け込めないという現実も少なからずあります。
 それと、私が、海外から帰国した日本人が、どの程度国際共同研究を続けているのかということを調べたときに、続けているケースは1割くらいしかなく、そのうち半分以上は、3年以内に消滅しているということがわかりました。
 そのような中で、どういう関係は残っていくのかを調べたときには、海外にいた時点での共同研究の数が多い場合と、成し遂げた共同研究がたくさん引用されていて、共同研究が成功すると、帰国してからもそのネットワークを継続する確率が高いことがわかりました。
 あとは、日本人同士の関係もあります。いわゆる社会的距離が近いということです。海外に行ったときに、行った先の国で研究をしている日本人と共同研究をするというパターンがあります。自分が帰国した後も、その海外に残っている日本人とずっと研究を続けると、所属組織の側から見れば、国際共同研究になるわけです。例えば中国は、そういう関係を大いに活用しています。そういう活用の仕方の国際共同研究が悪いというわけではなく、こういう社会的な距離の近い人たちの間での国際共同研究というのはかなり行われやすく、切れにくい関係であることが分かっています。
 それから、先ほどの知識創造図で、この組織の枠が何かということについて、私は、数人のチームでも、研究所単位でも、国レベルでもいいという説明をいたしました。もし国レベルということであれば、この個人というのは、必ずしも同じ研究所の人たちではなくて、産学連携のようなパターンもあり得ます。私は、そこのところはここでは全く議論していませんが、御指摘があったように、これから考えていかなくてはいけないことだと思います。先ほどは、一人ではなし得ず、共同でやっていく上では何が必要なのかを問題にする際の一番シンプルな形を説明しただけですので、この組織の枠ということはあまり考えてはいませんでした。
 これが国際共同研究ならば、所属組織はそれぞれ違うし、また国も違うけれども、チームなのだというような形も出てきます。そうすると、そういう中での知識創造のマネジメントは、同じ組織の中での知識創造――同じ組織というのは、この場合では、例えば、同じ企業とか研究所ですが、そこでの知識マネジメントの在り方とはまた違うと思います。
 今、日本だけではなく、世界レベルで、チームを単位にした研究、そのチームというのは、国際的なメンバーが集まっているものも含まれますが、そのチームを単位とした研究がすごく少ないということが言われていて、実証研究をこれから進めていかなければいけない分野です。例えば、国際共同研究をしたときに、成功しているチームもあれば、失敗しているチームもあって、それは個人のメンバーの能力の問題なのか、あるいは、チームの何らかのマネジメントの問題なのか、あるいは、それこそメンバーの組合せが、社会的な距離の近い人が集まればうまくいくのか等は、これから研究しなくてはいけない領域です。
 ですから、まだ十分お答えできるような材料はなくて、申し訳ありません。
【宮浦主査】  沼上委員。
【沼上委員】  御発表どうもありがとうございました。
 3年で大体移動の効果が消えるというお話は、昔、企業内の人事異動も大体2年から3年でネットワークの効果が切れるという研究があったので、なるほどと思いました。
 その中で、多分、今までは同じ企業の中での人事異動でシナジーを作っていくという時代から、国境を超えて世界レベルでシナジーを作っていく、そういう時代に変わってきたのだというのを感じさせる御内容だったと思っております。
 簡単な質問と、もう一つ、簡単にお伺いしたいことがあるのですが、簡単な質問は何かというと、ポスドクの方が帰ってきた後に共同研究が多いというお話はあったのですが、例えば、向こうに行って、帰ってきたら日本企業に勤めた場合はどのぐらい共同研究が残って、帰ってきたときにやっぱり大学のポスドクにいた方が共同研究が多くできるのかどうかという、その差を見た研究というのはないかどうかということですね。
 つまり、もし一回でも海外に出て、共同研究が結構できるというのがおもしろい状況になっているときに、会社に行ったら切れてしまうのだと、それは会社に行かないで、むしろポスドクを選ぶという選択になるかもしれない。あるいは、会社から行って会社に戻るというやり方だと共同研究が残るのであれば、むしろ海外に出るのは会社に行ってからの方がいいという議論になるのかもしれないので、国際的な移動をするときに、会社に行く前なのか、会社に行った後なのかとか、あるいは、ポスドクはポスドクのままの方が共同研究はしやすいのかどうかとか、そのあたりが分かると、企業と大学の間の人材の交流の部分の示唆が得られるかなと思います。それがもしあれば、教えていただきたい。
 もう一つ、きょう、お話の中では、ベスト・アンド・ブライテストを集めることでいい研究成果が出るというお話が前提にあるように思うのですが、それはそれで確かにそのとおりなのですけど、組織の力というのは、個人の能力の足し算では必ずしもない。そういうふうに考えると、例えば、イノベーションは辺境からと言われたりすることがあります。
 それというのはどういうことかというと、これは歴史学の世界の話ですので聞き流していただければと思いますが、ローマからガリアに向かって、ローマの影響力とか文化がだんだん薄くなっていくのです。ガリアの中心地からローマに向かって、また影響力がだんだん少なくなって、文化が薄くなっていくのです。辺境からイノベーションが起こるというのは、ローマとガリアの中間地点から起こるという、そういうことです。2つの文化が交わって、両方からの影響力がやや弱まって、しかしながら、2つの文化が交わって新しいアイデアが出るところは、そういうところなのだと。それがイノベーションは辺境からという議論が出てきた背景にある話なので。
 その意味で言うと、国際的な共同研究というのが、どういう意味で、人材が実はその中で育つのだとか、2つの文化が交わるところで新しい情報が生まれやすくなると、必ずしもベスト・アンド・ブライテストを集めるということではなくても、2つの研究領域がちょうど交わるところだとか、そういうところで国際研究をするというのも1つの手になってくる可能性はあると思います。
 また、国際共同研究というのが、実は、向こうの文化とこちらの文化のちょうど中間の辺境を一人の人間の心の中に作っていくのだというふうに考えるという考え方もあり得るのだろうと思うのですけど、その種の発想での研究というのは、この領域ではどのぐらいあるんだろうかというのが、個人的な関心でお伺いしたいということで。
 すみません、ちょっと長くなりました。
【村上教授】  どうもありがとうございました。
 私は、MITで一時期研究したことのある日本人研究者の、時系列の研究情報を集めたことがあります。Web of Scienceというデータベースに載っている範囲内で調べたことがあるのです。民間企業から派遣された人たちは、2年とか一定の期間MITにいて、民間企業に戻っていきます。その人たちの論文は幾ら探しても、結局、MITにいた時期にしか出てきませんでした。恐らく、民間企業に戻ったときには、もう論文を書くような、そういうポジションにはいないのだと思います。特許を書くような部署に行っているかもしれませんが、ほとんどすべての人が論文を書くようなことはしなくなっていました。
 最近はその研究から離れているので、時期はよく覚えていませんが、確か1980年代くらいだったと思います。民間の研究者がかなりMITに来ていて、数としては結構いましたが、みんな同じような状況でした。恐らく、企業とMITの研究所の関係があって、帰国した人の代わりに、また別の研究者が民間企業から送り込まれ、2~3年くらいのサイクルで人が入れ替わりながら、その企業とMITの共同研究自体は続いていると思われましたが、個人のベースで見ると、その後は論文のデータベースから姿を消しているという状況でありました。
 次に、辺境の話は、恐らく、構造的隙間の位置にある人のケースだと思います。その辺境は、2つのネットワークの狭間にあるということのために、一番イノベーティブであり得る状況ではないかと思いました。
 また、必ずしもThe Best and the Brightestである必要はないのではないかというご指摘については、もちろんそう言えると思います。ただし、このスライドの、個人の能力、モチベーションはものすごく重要な部分であるので、能力の高い人を採る、モチベーションの高い人を採るということは重要であるといえます。でも、それが必ずしもthe Bestである、the Brightestである、一番である必要はないということは言えると思います。
 それと、このことは多様性の問題とかかわっています。海外から研究者がチームの中に入ってくることは最後に言った多様性の問題です。多様性には、タスク型の多様性とデモグラフィー型の多様性があります。タスク型というのは、職能とか専門性などの意味での多様性で、その多様性は研究成果に影響するといわれています。自分にないスキルや知識を持っている人たちとチームを組むと、お互いに補い合って良い結果が生まれるという研究はあります。そうすると、例えば、インド人の数学のように、国によって得意分野があると、そのような得意分野を持った人たちを集めることが、お互いに補完し合って、良い効果を生むことになります。
 一方、デモグラフィー型の多様性については、性別であるとか、国籍であるとか、年齢であるとか、そういうことが多様になると、考え方が多様になりコンフリクトが起きるという研究があります。多様性研究というのは、実はまだまだこれからの部分があるので、今言ったことが全てだとは思いませんが、今のところそういうことが言われています。ですから、国によって得意な分野が違い、そういう中でいろいろな国の人を集めることによって、必ずしもThe Best and the Brightestの人たちが集まらなくても、組織としては良い成果を生み出すということはあり得ると思います。
【宮浦主査】  議論は尽きないのですけど、お時間になりましたので、村上先生、非常に貴重なお話を頂き、ありがとうございました。
 人材育成全体において、海外に出る、あるいは、戻るということの位置付け、意義、最大効果にするにはどうするかということについて考える非常に大きなきっかけを頂戴したと思っております。
 特に若手研究者が出るときのポストをどうするか、あるいは、帰ってくるときのポストが、国際共同研究の最大化に非常に影響するという点ですとか、人材育成全体を見たときに、出て、あるいは、戻るということをいかに生かしていくかというあたりを今後の議論に生かさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、議題2、理化学研究所様の若手人材の育成についてに入らせていただきます。
 研究人材、若手人材の育成につきましては、大学、企業のみならず、国立研究開発法人等の研究機関も非常に大きな役割を担っておられます。本日は、理化学研究所政策審議役を務めておられる山崎泰規上席研究員に来ていただきまして、理研の若手人材育成の取組について御紹介いただきたいと存じます。
 御略歴を観点に御紹介いたします。山崎先生は、大阪大学大学院工学研究科応用物理学専攻を修了された後、東京工業大学の原子炉工学研究所、東京大学教養学部教授、また、総合文化研究科教授を経て、理化学研究所に移られておられます。平成26年より現職を務められておられます。
 山崎先生、お時間は限られて恐縮でございます。20分程度で、どうぞよろしくお願いいたします。
【山崎研究政策審議役】  どうも御紹介ありがとうございました。こういう場に呼んでいただきまして、ありがとうございます。村上先生と違いまして、私のしゃべることは私の専門ではありませんで、専門は物理屋ですので、お手柔らかにお願いします。
 それで、ただいま私は理研で若手人材の育成、本当の名前は長いのですけど、若手研究者育成制度推進委員会というところの委員長をやっておりまして、そういう関係で話させていただいております。
 このお話を伺いましたときに、この合同部会の設置についてという文書を読ませていただきまして、非常に共感を覚えたというか、危惧の念の部分で非常に共感を覚えました。なかなか日本は難しいところにあるなと思っております。それで、特にグローバリゼーションの中で、どうやって人材を確保するかというのは、理研にとっても非常に大きな問題になっております。
 それで、これは簡単に理研の歴史ですが、これは10秒ぐらいで終わります。去年100年を迎えまして、制度としては紆余曲折があったのですけど、一応100年を生き延びて、あと次また100年という話は最近よく出ています。
 それで、理研というところの簡単な御紹介をさせていただきます。自然科学の総合研究所ということになっておりまして、自然科学全般は何でもいいよと言っている研究所は、日本では理研。それで、とりあえず、そこに書きましたように、物理、化学、数理科学、医科学、生物学、工学とかいうような分野があって、最近ですと、人工知能とかいう話になっていまして、それに加えて、新領域の話はやりたいなというような、何でもありですので。もちろん、人工知能とか数理科学というのは自然科学かというのはちょっと難しいところなのですけれども、こういうところが守備範囲になっております。
 それで、理研の特徴の一つ、これは後でも話が出てきますが、分野間の障壁が非常に低いということが特徴になっていると我々は考えております。
 それで、まず理研全体のことを見ていただきますために、理研の人員がどういうふうに変化したかというのを、これは30年ぐらい前から書いてありますが。当初、これですと、600人ちょっとで、内訳は、研究系も事務系も全て定年制でほぼ始まっております。それが2000年のミレニアムあたりから急激に増えまして、2005年ぐらいから、全体の常勤の研究者数3,500ぐらい、大体平衡に達して、その増えた部分は、ほぼ任期制になっております。これは普通の大学と随分違う構造です。それで、定年制はもうほとんど変化なく、任期制が研究系も増えて現在に至っていると、そういう構造を持っております。
 これは、もともとの考え方が、こうやって任期制が多いですので、必ずキャリアパスの途中に入ってくる人がいて、それがもっと安定した地位に出ていくというのが、もともとのシナリオのはずだったのですが、今も半ばそういう運営をしておりますが、例の労働契約法というやつで、これも、ここでどういう話をしたらいいのか、ちょっと難しいですが、運営方針を考えないといけないという難しいことになっております。
 それで、特に、そういうこともありまして、あるいは、新しい理事長のイニシアティブの下に、無期雇用の研究員を採用しようということになりまして、昨年度あたりから、無期雇用系の人たちが増え始めております。今年の4月1日段階で、無期雇用、このグリーン、167名ぐらいがあります。
 それで、この無期雇用をどう使うかというのが、しかも、労働契約法の下でどう使うかというのがなかなか難しくて、今のところ、2系統あります。1つは、若いときに無期雇用だよということを売りにして、できるだけいい人を採って、いい人を採りますと、そういう人は大学に引き抜かれますので、それで、その循環をキープするという1つの考え方と、もう一つは、任期制で採った人で、いい人を無期雇用にして、ずっといてもらう。今のところ、そのフローが2つございます。これをどういうふうに整理するかというのは、まだこれからの議論かなと私は理解しております。
 それで、次に理研というところはどういう強みがあるかということを考えようというわけですが、私、大学にもおりまして、それから理研に移ったので、両方のいいところ、悪いところというか、違いが分かるのですが、1番目に書かせていただきましたのは、研究支援、研究推進、それぞれ技術者による支援と、事務からの研究推進という側面が理研は非常に強くて、ちょっとここは勉強したのですけど、理研は、特殊法人というのは1958年から始まったのですが、1959年、もうその次の年には、主任研究員研究室という、当時の研究単位ですが、そこを支えるための研究調整課という事務組織ができ上がっておりまして、それは85年まで続きまして、その後、センターが増えてきたときに、各センターに研究推進室というのを付けまして、予算の話であるとか、それを使う話であるとか、非常に多岐にわたって、レビューに関しても、そこまでも含めてサポートがあるというところが非常に大きな特徴になっております。その分、言っていったら、ここでも問題にされておりました、研究者の研究時間をどうやって確保するかという意味で、非常にいい例になっているように思います。
 2つ目が、先ほどちょっと申し上げました、異分野の垣根が低い。これは多分、必ずしも確認できる話ではないのですが、理研の作られ方自身が、もともと主任研究員研究室という、多分野の研究室がそれほど多くないところから始まっていまして、したがって、必然的に違う分野が交流するということが、そっちの方が普通でした。それが次第に大きくなっていって、私が赴任したときも、主任研究員研究室間の交流というのはほぼ自動的にありまして、それから、センターがずっと増えていったのですが、最近ですと、理研科学者会議という全所的な組織、研究者だけの組織を作りまして、その間で意見交換する。それは、サイエンスポリシーに関わることも含め、新しい主任研究員を採ることも含め、全所で考える。だから、そのときには全分野の人が関わっているというようなことになっておりまして、これで垣根が低い。これも大学とちょっと違うところかなと思っております。そのために、これは半分期待が入っておりますが、新領域、学際領域開拓への展開がより促進されると考えています。
 3つ目の特徴は、1つの研究室が中規模、チームリーダー、主任研究員につき、研究員が数名付く。だから、大学で言うと、2講座ぐらいというような、そういう規模のものになっておりまして、その分、比較的長期、比較的大型のプロジェクトができる。これは、どっちがいいというのではありませんが、最近、大学は割と研究室単位の教授、助教というペアで、小回りが効いて、すぐ対応できるけれど、なかなか大型はしにくいというので、これはメリット、デメリットが両方あって、ちょうど互いにコンペンセートできて、いいのではないかなと考えます。
 それで、4つ目ですが、大型施設があって、その開発が自前でできる。装置を買ってきて何かしますというのではなくて、自分のところでちゃんと開発する能力があります。それを運用して、共用しています。ただし、これは理研のメリットというよりは、全国・全世界的なメリットで、利用に関しては、理研の中の人が得をしているということはあまりありません。それは、一般的な意味では非常にいいことだと考えております。
 次に、この4月1日から今期の中期計画が始まったのですが、そのときの理研の構造というのをお示ししております。研究体制、大きくここに3つ丸と1つ楕円がありますけれども、こういう構造になっておりまして、開拓研究本部というところに主任研究員研究室群がありまして、ここは比較的自分でテーマを決めて、外部資金も取ってきて研究するというような立場。あとは、基盤センターといいまして、先ほどの大型施設に関わっているようなところ。それから、戦略センター、これは目的的なセンターです。目的的なセンターが、ここでは9つあるのですかね。その中で、今赤線を引いてある部分というのが、先ほどの大型施設に関わっている部分です。例えば、計算科学センターというのは、「京」コンピュータですね。それから、放射光というのは、Spring-8。右側へ行って、仁科加速器センターというのは、多分、これ、世界で最大のサイクロトロンを持っているところです。4つ目に科技ハブ産連本部というのがありまして、これが産業界、外部とのつながりの部分、ハブになろうとしているところ、こういう構造になっております。
 それで、それぞれの組織に関わる人数が書いてありまして、例えば、一番上ですと、40バーサス280とありまして、40というのがPIの数、その次が、研究員と技術員を足した数、そういうふうな書き方をしてございます。
 こういう構造の中ですので、例えば、若手の育成と言いましても、各センターそれぞれやっているのですが、きょう御紹介しますのは、一番下に書きましたが、全所に関わるような制度に関して御説明をさせていただきたいと思っております。
 それで、理研がよって立つといいますか、どういう根拠の下に存在しているかというのが、科学技術基本計画であるとか、イノベーティブ総合戦略2017であるとか、特定国立研究開発法人による研究開発等を促進するための基本的な方針とか、こういうところに赤線で引きましたような幾つかのキーワードが入っております。全部やっていると時間がないかもしれませんが、例えば、キャリアの段階に応じて高い能力と意欲を発揮できるようにちゃんと制度を整備しなさいとか、優れた若手、女性、外国人研究者を積極的に登用しなさい、それで、博士課程の学生やポスドクも含めて若手の育成をしなさいとか、そういう幾つかキーワードというか、やるべきことが書かれておりまして、それに沿いまして、理研科学力展開プランというのがあり、世界最高水準の成果を生み出すための経営方針ということで、これが現理事長が赴任したときに、5つ項目を挙げたんですが、これの下2つが、きょうのお話に関わる部分であると考えております。
 それで、その展開プランに基づきまして、どういうふうに人材育成をしましょうかというのが、やっぱり数項目ございまして、1つが、先ほどちょっと申し上げました、無期雇用制度、法律で決まったわけですけれども、積極的にポジティブに、どういうふうに活用すればいいかというのを、無期雇用制度を導入する。
 あとは、4つ目に、ダイバーシティの推進というのがございます。
 それから、最後に、これはもろですが、優秀な若手研究者・学生の支援プログラムを充実させましょうというような、こういうことが人材育成プランとなっております。
 それで、それに基づきまして、やっとこの辺から本論ですが、第4期中期、この4月から始まった中期計画ですが、そこにおける若手研究者育成ということで、人材育成に関しまして、どういう制度があるかというのがここに書かれています。
 若手研究人材の育成と書いてありまして、これは幾つかにカテゴライズできまして、若い順番に書いてございまして、最初、研修生・実習生というのは、学部学生・博士課程前期に関わる人たちで、これを受け入れる制度は持っております。特別なことをしているわけではないのですけど、存在することができるように制度を作っております。
 それから、その次に書きましたのが割と中心的なもので、大学院生リサーチ・アソシエイトという制度を持っておりまして、それと、もう一つ、国際プログラム・アソシエイトというのを持っておりまして、これが博士課程後期です。博士課程後期の人たちをどういうふうに理研で活躍してもらうかという制度です。これは後で御紹介いたします。
 それで、その次のポスドクレベルが、基礎科学特別研究員というレベルです。
 それで、その次に、これは昨年度から始めたのですが、理研白眉フェローというのを始めまして、これは若手で、かつPIにするような、だから、世界的に飛び抜けたタイプの人たちを確保して、活躍してもらおうと、こういう、言ってみましたら、三段階建ての構造になっております。
 それで、それ以外にも、産業界、あるいは他の研究機関等から来てもらうために、研究者で、研究生、あるいは、客員研究員、委託研究員といったような名前の立場、ポジションも作ってございます。
 それで、その中で、先ほど申し上げましたように、まず博士課程後期の育成制度について御説明いたします。
 これは2つありまして、先ほども申し上げましたが、大学院生リサーチ・アソシエイトというので、これは主に国内の大学と連携させていただいて、優秀な博士課程後期の学生さんを採用し、理研の装置も使っていただいて、学位取得に関わる研究活動をしていただく、そういう立場のものです。期限は3年。これは後期課程が3年だということで、3年になっておりまして、例えば、医学系で4年掛かるところは、4年の任期になっております。それで、大体年間60名ぐらい確保していまして、基本的に立場は非常勤ですが、給与は、この程度の給与を払っております。こういう大学院リサーチ・アソシエイト、JRAと呼んでいます。
 あとは、国際プログラム・アソシエイトといいまして、対象は、外国籍の博士課程後期の方です。これは、国内の大学の人でもいいし、国外の大学あるいは研究機関の人でもいいですが、そういう人たちを受け入れる制度。これは1~3年となっていまして、両方合わせて、大体210人、200人前後の在籍者がおります。こちらは、滞在費という名目で、日額5,200円払っている、そんなことですね。
 こういう手当ての仕方がどういうものかというのは、調べてみましたが、その下に、例えば欧州ではと書いてありますが、博士課程コース、大体これはサラリーとして渡しているようですけれども、1,200~1,600ユーロぐらい。なので、コンパラブルです。ちょっと向こうがいいかもしれませんけれど、コンパラブルです。
 ただし、これ、問題だと思いましたのは、その次の赤字で書きました授業料ですが、ドイツは200ユーロ・パー・イヤーです。払わなくても博士コースにいることができる。2万円ぐらいですので、どっちでもいいのですけど。ところが、これは日本では54万円になりまして、しかも、入学金も掛かりますので、これは外国から呼び寄せようとしたときに、かなりのバリアですね。これも言いたいことがあるのですけど、ちょっと飛ばしまして。
 あとは、博士課程後期、例えば、ドイツで聞いた話では、大体1研究室、2枠ぐらい自動的に付いてくるようですね。マックス・プランクなんかですと、どうかすると、20枠ぐらい付いてくることもある。そういうところを相手に競争しないといけないというのは、なかなか大変かなという印象を持っております。これが博士課程後期です。
 その後、ポスドクレベルに関しましては、基礎科学特別研究生という制度がございます。これは、全公募制で、分野を限らず公募いたします。それで、所内外の先生方に審査をやっていただきまして、人を選ぶということをやっております。公募して何を書かせるかというと、自らどういう研究をしたいかということを書かせまして、それで、それをするためには、どの研究室を使うかという、そういう立場でプロポーザルを書いてもらいます。それで、研究室側には、そういうことを提案している人がいるが、そういうテーマで受け入れることができるかということを聞きまして、それがオーケーの場合に審査する、そういう構造ですね。
 それで、これは、狙いは、将来的に国際的に活躍できる研究者を育成するということで、所属長は、基本的には、必要な場合に助言を与えることができるということになっています。研究費が大体100万円ぐらい。これはお気付きかと思いますが、実験系の研究室で100万円あっても、ほとんど実験できませんので、基本的には研究室から持ち出しになります。なので、先ほど申し上げましたことが完全にクリアに学生の言うとおりにできるかというと、必ずしもそうではございませんで、それなりにグレーゾーンのある話です。ですけれど、学生、院生側の自立性を非常に重要視しております。審査員の先生方には、それはお願いしておりまして、実際、そういうふうに審査されているということが、最近、私は分かりました。これは30年ぐらい運用している制度でございまして、大分定着してきました。ある程度の時間をやるということが非常に大事だなと感じております。
 それで、その成果といいますか、これはどんな結果になっているかということを申し上げますと、競争率は大体7.3倍ですね。割と安定して。採用者全体、今に至れば、この30年間ほどの間で1,500名ぐらいを採用いたしまして、准教授、教授になられた方が500名、3分の1の方は大学で活躍しておられます。
 それで、その下に書きましたのは、科研費の採択率ですが、いろんな項目がありますけれども、例えば、研究スタート支援で言いますと、大体40%ぐらいの採択をしていただいておりまして、比較するのに書いてある25%というのは全国平均です。だから、採択率もいいように、それなりの人に来ていただいています。
 国際化が促進されまして、これは外国籍を今選んでいるわけではないのですが、自動的に3分の1ぐらいは外国籍の方になっております。
 それと、1つ言い忘れましたが、7.3倍の横に書いてありますが、男女比もちょっと気になっていたのですが、応募する際の男女比と採用の男女比は、ほぼ同じ比率になっています。この辺に関しては、あんまりアンコンシャスバイアスはないかなというのが、我々の現在の理解です。
 あと、大学が500名ぐらいですが、理研も含めて研究機関、それと、助教とかを入れますと、研究職に就いている方は、大体3分の2ぐらいに達しています。というのが、基礎科学研究、ポスドク制度ですね。独立性の高いポスドク制度。
 次は新しい制度で、先ほど申し上げました、若手でのPIポジション。これは、どういうふうにするかということを随分いろんな方と議論して、理事長とも議論して、理事長の肝いりで始めたのですが、基本的にPIにすると。だから、独立して研究をしてもらう。将来的に国際的なリーダーになる人、新しい分野を拓く人というようなことを念頭に置きましてセレクションする。長期的視野から評価する。分野としましては、数理科学を含む自然科学、それと、あとは、人文科学との境界領域が必要ではないかなと考えまして、それも入れてあります。特に最近、理研はAIも始めましたので、その辺の倫理とか、そういうことにも注目したいと考えております。任期7年で、比較的長くて、先ほど申し上げましたように、短期で評価せずに、落ち着いて、それなりに高い成果を出してほしいなと。これ、財源がなかなか大変なので、数名と言って、ゼロも含めた数名にしておりまして、いい人が来なかったと思ったら、ゼロにするつもりで審査しています。
 それで、研究費は、ここに書いてあるようなオーダーで、これは研究の種類によって、ポスドク1人必要な人だったら1,000万ぐらいでいける、大きな装置が必要だったらもうちょっと高くなるだろうということで、そういうふうにやっています。給与は、これは年間1,000万ぐらいの話です。
 博士の学位は、特にいろんな分野を考えておりますので、博士を持っていなくてもいいということにしました。というような、いろんなそういう制限をできるだけ撤廃して、いい人に来てもらえないかなということを考えて、昨年度やりました。最終的に3名を採用したのですが、競争率は70数倍ぐらいです。というような、それで、非常におもしろい方に来ていただくことができました。
 ですが、これ、1つの問題は、女性の応募率が非常に低くて、10%を切っておりまして、それもあって、今年度から、加藤セチ女性プログラムというふうに、この理研白眉フェローも女性枠を設けて、女性獲得にもう一歩踏み出そうという決意をいたしました。というようなところで、これは成果というのはまだありませんで、始まったばかりです。
 それで、最後ですが、産業界との連携についてどんなことが行われているかと言いますと、連携センターというのを今年度から作れるようにいたしまして、会社と連携センターを理研内に作って、比較的長期的な課題で、決まった課題で取り組む。あるいは、理研が持っている技術なり何なりを民間企業に、この場合は、理研の方が技術を指導できるような立場にあるものですが、技術指導というようなこともやっておりまして、あとは、それに関わって来ていただく方のポジションを、委託研究員というような位置付けにして受け入れているというような、これはかなりの人数でやっております。
 それで、それもこれも全部含めまして、最後、まとめです。理研全体でやっております若手研究者育成という意味では、ここに書きましたように、下から大学院生リサーチ・アソシエイト、国際プログラム・アソシエイトというのが博士課程後期、基礎科学特別研究員、理研白眉フェローとなっておりまして、それで、紫色の矢印は、キャリアパスといいますか、人の流れですね。こういうふうな流れになっておりまして、日本全体、あるいは、世界の中のこういう研究人材のフローの一部を理研が担っていこうと考えております。
 ということで、私のプレゼンテーションを終わらせていただきます。ありがとうございました。
【宮浦主査】  ありがとうございました。理研の新たなお取組について、非常に詳細に御説明いただきまして、ありがとうございます。
 理化学研究所様は、特に若手人材のインキュベーション施設として、各大学に優秀な人材を輩出していらっしゃるという特色もお持ちですので、また、企業や大学の人材育成とはひと味違ったシステムということをお持ちだと思います。
 委員の皆様。川端先生。
【川端委員】  ありがとうございました。
 ポスドク1万人計画のあの辺から、ずっと理研さんの動きを見ながらきたのですけれども、幾つかの点で大きな改革をされているところがあるので、ちょっとお聞きしたいのですが。
 1つは、最初の理研の人員と書いていて、常勤職員と書いていて。理研さん、やっぱり研究支援ということが非常にしっかりされているというのをお聞きしていて。その中で、ここで任期制の職員が一気に2,700人とかいう数字まで増えていったときに、この人たちを支援する人たちの人数は一体どれぐらいまで増えていったのかという。
【山崎研究政策審議役】  それが赤ですね。
【川端委員】  ということは、ここに書かれている方で支援をしていると思えばよろしいですか。
【山崎研究政策審議役】  そうです。もちろん、非常勤の方も入れないのですが、基本的にはこれですね。
【川端委員】  やっぱり非常勤の方がかなりおられるのではないかなと思うのですけど。大学だと、正規の事務職員より非常勤の方が多くて、これはそういうパターンにはなっていないですか。
【山崎研究政策審議役】   非常勤を入れたら4,000人だそうです。
【川端委員】  何を足したら4,000までいくのですか、これ。
【山崎研究政策審議役】  非常勤を足すと4,000で、だから、あと500名非常勤がいます。
【川端委員】  あと500ぐらいが。だから、事務職員が倍ぐらいおられるという。
【山崎研究政策審議役】  そうですね。テクスタ系の非常勤の方もおいでになるという。
【川端委員】  あと、もう1点は、こちらの中でもよく話題になっているのは、博士後期課程向けの育成制度という、JRAとかIPAと言われている、こういう支援、大学でも是非やりたいけど、財源がなくて、みんなきいきい言っているという状態ですけど。これはドクターを、全体の中の何割という状態でしょうか。それとも、来られるドクター全員がこういう状態になっているという。
【山崎研究政策審議役】  全員とは違います。
【川端委員】  多分、かなり選抜されて、この人数になっていると見た方がいいのですか。それとも、かなりな割合が、もうこれを。
【山崎研究政策審議役】  まずはアプライしてもらうのですが、今のところは競争率が1.3倍とかではないですか。
【川端委員】  やっぱりそんなものですか。
【山崎研究政策審議役】  はい。
【川端委員】  分かりました。
【山崎研究政策審議役】  アプライしてもだめだと思った人が出さないという側面もあるのですが。
【川端委員】  ありがとうございました。
【山崎研究政策審議役】  ありがとうございます。
【宮浦主査】  ほか、御質問いかがでしょうか。よろしいですか。
 私から1点質問させていただきます。理研白眉、7年で、ゼロから数名って、非常にすばらしいシステムで、期待しているところですけれども。ここの7年を理研白眉で出られたら、まず年齢層はかなり若手で設定されているのですか。
【山崎研究政策審議役】  そうですね。若手を狙ったという1つの側面が、博士号なくていいよということですが、実際、ふたを開けてみましたら、一番若い人で32歳。若いですね。非常に優秀な方でしたね。
【宮浦主査】  その出口としては、理研のPIとして、理研で活躍していただきたいというのはある程度想定していらっしゃるのか、あるいは、基本、外に出て活躍していただきたいのか。
【山崎研究政策審議役】  そこも随分議論いたしました。例えば、これ、本当に先ほど無期雇用、若いうちに採って、そうすると、いい人は出ていくだろうという話をいたしましたけれども、そういうやり方もあるのではないかと思って、無期雇用系で採れないかなという議論もしたのですが、やっぱり新しい分野を創るような方で、理研にとっても、どういうふうに化けられるか分からない、その先に理研で残られるようなのがいいのか、外へ出られた方がいいのかも分からないということがありまして、こういう任期制でやることにいたしました。それは、その人次第になるところもあるのではないでしょうか。それと、理研の無期雇用のポジションがどれぐらいあるかという話になります。
【宮浦主査】  そうですね。
 ほか、いかがでしょうか。
【沼上委員】  関連で。
【宮浦主査】  沼上先生。
【沼上委員】  すみません、簡単なことを1つだけお伺いしたいのですけど、先ほど、ポスドクの競争率7.3倍のところで入ってくる人たちの、出ていく人1,500人のうちの500人が大学に職を求めて、またあと500人ぐらいが研究職に就いてというお話だったですけど、その残りのあと500人。
【山崎研究政策審議役】  そうです。500というか、670という数字を私は今持っていまして。だから、1,500のうちの1,200ぐらいは、研究系の職に就いております。
 それで、これは30年もやっておりまして、出た直後にどこへ行ったかということは全部把握しているのですが、だんだん分からなくなります。それで、一応事務局がかなり頑張ってアンケートを取っているのですけれども、不明者がこの分からない部分ぐらいあるのではないでしょうか。連絡が取れない人ですね。
【沼上委員】  じゃ、これは連絡が取れていないだけで、どこかで研究者をやっているかもしれないし。
【山崎研究政策審議役】  そうです。だから、これは最低数です。
【沼上委員】  その研究者をやっているとかの中には、企業で研究者をやっている人もいるんですか。
【山崎研究政策審議役】  企業で研究している方の、我々が把握できているのは、120名です。それは先ほどの数字に入っております。
【沼上委員】  ありがとうございました。
【宮浦主査】  ほか、いかがでしょうか。髙橋委員。
【髙橋(修)委員】  1点質問があるのですけれども。企業での研究職というものも当然キャリアの一つとして考えられると思うのですけれども、具体的に、例えば、それを促進するような取組とか、場合によっては、会社自身を創る方の起業とか、そういうものを促進するような取組というのをもし理研の中でやっておられましたら、御紹介ください。
【山崎研究政策審議役】  起業の方は、創る方ですね。先ほど科技ハブ産連本部というのが中にできたという話をいたしましたが、この関係で、外付けで支援法人というのを作るのかな。というようなことも今年度から始めております。
 それは、だけど、必ずしも若い人というわけではなくて、研究者とその出口に近い間にイノベーション・アドバイザーとかいうのも入れまして、政策的に、外へ役に立つような研究成果の使い方を展開させようというようなことも始まっております。
 ただ、それがどれぐらいうまく展開するかというのは、これは理研がそういう支援法人を作ること自身も、法律を変えないといけないのですが、まだ国会がもめていまして、今年通るかどうか分からないという、そういう状態です。
【宮浦主査】  まだまだお伺いしたいことは多々あるのですけれども、司会の不手際で残り時間が少なくなってまいりまして、理化学研究所様には、今後、本合同部会といたしましても、またいろいろお伺いしたい点も出ると思いますので、そのあたり、書面ででも意見交換をさせていただけると大変ありがたいなと思っておりますので。
【山崎研究政策審議役】  ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。
【宮浦主査】  是非よろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。
【山崎研究政策審議役】  どうもありがとうございました。
【宮浦主査】  本日は、科学技術・学術政策研究所から、5分程度、所長からお話を提供していただけるということでございますので、5分程度で恐縮でございますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
【坪井所長】  科学技術・学術政策研究所の坪井です。それでは、資料3に基づき、最近取りまとめた人材関連の3つの報告について御紹介します。
 最初に、3ページになりますが、ポストドクター等の雇用・進路に関する調査を大体3年おきにやっており、ポスドクを採用する大学や公的研究機関を対象に、全数調査をしています。ポスドクの全体人数は少し減ってきており、1万5,910人、男女の比は大体7対3、平均年齢が36.3歳です。
 次ページ以降ですが、この中で外国人の割合が大体3割いること、前職が博士課程の学生が約3割、前職もポスドクという方が3割強であること、また、次のページでは、2015年度に調査したポスドクの方が、2016年4月1日現在どこにいたかという調査になりますが、7割はポスドクを継続されていることなどが分かりました。また、結構不明の方もいたという結果です。
 2つ目は、博士人材の追跡調査で、8ページをご覧いただきますと、これは特定の年度に博士課程を修了した全数の方を調査して、更に、間を置いてまた追跡調査をしていくもので、今回取りまとめた報告書は、2012年度に卒業された方の3.5年後と、2015年度に修了された方の0.5年後の調査になります。
 これに関しては、次の9ページ以降、非常に細かい内容がございますが、博士取得率が増加している状況や、特に2015年度の卒業生に関して、10ページは、リーディングプログラムへの評価、11ページは、博士課程修了後の雇用先、これが1.5年後と3.5年後との変化も見てとれます。また、12ページは、任期制雇用の状況、また13ページでは、1.5年後と3.5年後の所得の変化の状況なども分かります。14ページでは、社会人学生の状況、また、15ページでは、出身大学と現在の所属地が三大都市圏と地方圏の間でどのような移動等があるかという状況です。
 あと、18ページですが、これは、特定の年の修了生の全数調査とは別に、博士人材データベースというものを構築して、今、42大学の参加を得ており、これは毎年度、正確に言いますと、博士課程在籍時から登録いただく形で進めており、20ページですが、今、42大学に参加していただいており、特に、博士課程教育リーディングプログラムには全部参加いただいているということと、今、ちょうど募集が始まった卓越大学院についても、この博士人材データベースへ、採択大学は是非ここに入っていただきたい、入っていただく必要があるということで、高等教育局の方で進めていただいている状況です。21ページは、今、大体1万3,000人弱が登録されているということです。
 また、22ページ以降は、これは定点調査ということで、一線級の研究者、有識者への意識調査を行い、いろいろな状況変化を定性的に把握するためのアンケート調査でございます。23ページにあるように、6つの質問パートのうち、1つ目の紫色のマル1が人材関係で、全体63問のうちの14問、人材関係の質問を聞いております。
 この人材関係が左側にあります。特に大学や公的研究機関グループの2,100名、24ページにはその内訳もありますが、大学の学長の方などの140名、また現場の研究者の方1,600名など、そういった方々へのアンケート調査、基本的に科学技術基本計画の5年に合わせて、5年間、同じ質問を同じ方々にして、変化を知ろうというものです。
 25ページですが、昨年の9月から12月に実施して、回答率92.3%と、非常に高い回答率です。また、これは自由記述の欄もあり、約9,000件の具体的な文章を頂いています。これはデータベース化もしており、ウェブサイト上からQR検索での抽出も可能となっていて、人材という語で検索してみましたら、556件の意見があったという状況でした。
 また、人材関係の結果のポイントは、26ページと27ページですが、割と厳しい見方、不十分だという認識のところが多いですが、27ページを見ていただくと、Q102と103、自主的な研究開発を実施している若手研究者の数とか、実績を積んだ若手研究者への任期なしポストの拡充に向けた組織の取組は、不十分との強い認識です。
 その次には、望ましい能力を持つ人材が、博士課程後期を目指しているかどうか、Q104などの環境整備とか、105や106のような、多様なキャリアパスを選択できるようになっているか、そのあたりが非常に厳しく、やはり不十分という認識があるという状況です。
 一方、割と評価が上がっているのは、学部学生に対する社会的課題や動機づけを行う教育では、主に産業界からの方々の見方は上がっているということ、また、女性研究者への支援制度は、比較的問題がないという回答も増えてきている状況があります。
 あと、より細かい分析は、28ページ以降等もございますが、ここでは回答者を属性別に分けることもできまして、平均値は青い三角印のところにありますが、いろいろ幅がありまして、割と大学の学長や機関長の方は問題ないという回答が多い一方、そうでない方はより低い回答があって、回答に幅があるという結論も得られています。
 あと、人材関係以外も後ろに付けているので、非常に厚い資料になっておりますが、この調査、最後のページにもあります通り、調査委員会の助言も頂いておりまして、こちらの川端先生にも入っていただいています。 短い説明になってしまって恐縮ですが、以上です。
【宮浦主査】  ありがとうございました。
 特に博士人材データベースにつきましては、継続的にずっとやっていただいて、今後も継続することによって、見えてくるものが大きいと思いますので、非常に期待させていただいているところです。
 また、同じ方に間を置いてアンケートしていただくようなシステムも、やはり考え方の違いですとか、あるいは、施策が生きているところ、まだまだのところが非常に分かりやすく、今後も是非よろしくお願いしたいと考えております。
 今後とも情報提供いただきます。よろしくお願いいたします。
 以上、時間になりまして、最後の方、時間が押しまして大変申し訳ございませんでした。
 最後、事務局から、スケジュール等の確認をよろしくお願いいたします。
【広瀬基礎人材企画係長】  合同部会の当面のスケジュール(案)と書かれた資料を御覧いただければと思います。
 本合同部会の当面のスケジュールにつきまして、記載させていただいております。次回、第4回合同部会におきましては、小林信一元筑波大学教授及び国立大学協会をお招きいたしまして、ヒアリングを行うことを予定しております。
 次回、第4回合同部会の日時につきましては、5月15日10時から12時の開催を予定しております。委員の皆様におかれましては、開催場所も含めまして、改めて事務局で御連絡させていただきたいと思います。
 また、本日の会議の議事録につきましては、作成次第、委員の皆様にお目通しいただいた上で、主査に御確認の上、文部科学省のホームページを通じて公表させていただきます。
 本日の資料につきまして、机上に残していただきましたら、追って事務局より郵送させていただきます。
 事務局より、以上でございます。
【宮浦主査】  それでは、本日は閉会とさせていただきます。ありがとうございました。


── 了 ──

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