21文科振第6093号
平成21年5月29日
総合科学技術会議議長
麻生太郎 殿
文部科学大臣
塩谷 立
内閣府設置法第26条第1項第2号の規定に基づき、次の事項について、理由及び別添のとおり案を添えて諮問します。
ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針(平成21年文部科学省告示第84号。以下「現行指針」という。)を改正し、ヒトES細胞の使用に関する指針を策定するため案を作成したので、現行指針の附則第2条第2項に基づき、貴会議に意見を聴くことが必要なため。
第一章 総則(第一条—第四条)
第二章 使用の要件等(第五条—第八条)
第三章 使用の体制(第九条—第十二条)
第四章 使用の手続(第十三条—第十九条)
第五章 雑則(第二十条・第二十一条)
附則
第一条 この指針は、ヒトES細胞の樹立及び使用が、医学及び生物学の発展に大きく貢献する可能性がある一方で、人の生命の萌芽であるヒト胚を使用すること、ヒトES細胞が、ヒト胚を滅失して樹立されたものであり、また、すべての細胞に分化する可能性があること等の生命倫理上の問題を有することにかんがみ、ヒトES細胞の使用に当たり生命倫理上の観点から遵守すべき基本的な事項を定め、もってその適正な実施の確保に資することを目的とする。
第二条 この指針において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 胚 ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律(平成十二年法律第百四十六号。以下「法」という。)第二条第一項第一号に規定する胚をいう。
二 ヒト胚 ヒトの胚(ヒトとしての遺伝情報を有する胚を含む。)をいう。
三 ヒト受精胚 法第二条第一項第六号に規定するヒト受精胚をいう。
四 人クローン胚 法第二条第一項第十号に規定する人クローン胚をいう。
五 ヒトES細胞 ヒト胚から採取された細胞又は当該細胞の分裂により生ずる細胞であって、胚でないもののうち、多能性(内胚葉、中胚葉及び外胚葉の細胞に分化する性質をいう。)を有し、かつ、自己複製能力を維持しているもの又はそれに類する能力を有することが推定されるものをいう。
六 分化細胞 ヒトES細胞が分化することにより、その性質を有しなくなった細胞をいう。
七 樹立 特定の性質を有する細胞を作成することをいう。
八 第一種樹立 ヒト受精胚を用いてヒトES細胞を樹立すること(次号に掲げるものを除く。)をいう。
九 第二種樹立 人クローン胚を作成し、作成した人クローン胚を用いてヒトES細胞を樹立することをいう。
十 樹立機関 ヒトES細胞を樹立する機関をいう。
十一 分配機関 第三者に分配することを目的として樹立機関から寄託されたヒトES細胞の分配をし、及び維持管理をする機関をいう。
十二 使用機関 ヒトES細胞を使用する機関をいう。
十三 使用計画 使用機関が行うヒトES細胞の使用に関する計画をいう。
十四 使用責任者 使用機関において、ヒトES細胞の使用を総括する立場にある者をいう。
第三条 ヒトES細胞の使用(基礎的研究に係るものに限る。)は、この指針に定めるところにより適切に実施されるものとする。
第四条 ヒトES細胞を取り扱う者は、ヒトES細胞が、人の生命の萌芽であるヒト胚を滅失させて樹立されたものであること及びすべての細胞に分化する可能性があることに配慮し、誠実かつ慎重にヒトES細胞の取扱いを行うものとする。
第五条 第一種樹立により得られたヒトES細胞の使用は、次に掲げる要件を満たす場合に限り、行うことができるものとする。
一 次のいずれかに資する基礎的研究を目的としていること。
イ ヒトの発生、分化及び再生機能の解明
ロ 新しい診断法、予防法若しくは治療法の開発又は医薬品等の開発
二 ヒトES細胞を使用することが前号に定める研究において科学的合理性及び必要性を有すること。
2 第二種樹立により得られたヒトES細胞の使用は、次に掲げる要件を満たす場合に限り、行うことができるものとする。
一 特定胚の取扱いに関する指針(平成二十一年文部科学省告示第八十三号)第九条第二項に規定する基礎的研究を目的としていること。
二 ヒトES細胞を使用することが前号に定める研究において科学的合理性及び必要性を有すること。
3 使用に供されるヒトES細胞は、ヒトES細胞の樹立及び分配に関する指針(平成二十一年文部科学省告示第 号)に基づき樹立されたものに限るものとする。
4 前項の規定にかかわらず、文部科学大臣がヒトES細胞の樹立及び分配に関する指針と同等の基準に基づき樹立されたものであると認める場合には、使用機関は、海外から分配を受けたヒトES細胞を使用することができるものとする。
第六条 ヒトES細胞を取り扱う者は、次に掲げる行為を行ってはならないものとする。
一 ヒトES細胞を使用して作成した胚の人又は動物の胎内への移植その他の方法によりヒトES細胞から個体を生成すること。
二 ヒト胚へヒトES細胞を導入すること。
三 ヒトの胎児へヒトES細胞を導入すること。
四 ヒトES細胞から生殖細胞を作成すること。
第七条 使用機関は、ヒトES細胞の分配又は譲渡をしてはならないものとする。ただし、使用機関において遺伝子の導入その他の方法により加工されたヒトES細胞を当該使用機関が分配又は譲渡する場合については、この限りでない。
第八条 使用機関は、作成した分化細胞を譲渡する場合には、当該分化細胞がヒトES細胞に由来するものであることを譲渡先に通知するものとする。
第九条 使用機関は、次に掲げる要件を満たすものとする。
一 ヒトES細胞を使用するに足りる十分な施設、人員及び技術的能力を有すること。
二 ヒトES細胞の使用について遵守すべき技術的及び倫理的な事項に関する規則が定められていること。
三 ヒトES細胞の使用に関する技術的能力及び倫理的な認識を向上させるための教育及び研修(以下「教育研修」という。)を実施するための計画(以下「教育研修計画」という。)が定められていること。
2 使用機関は、ヒトES細胞の使用に関する記録を作成し、これを保存するものとする。
3 使用機関は、ヒトES細胞の使用に関する資料の提出、調査の受入れその他文部科学大臣が必要と認める措置に協力するものとする。
第十条 使用機関の長は、次に掲げる業務を行うものとする。
一 使用計画及びその変更の妥当性を確認し、第十三条から第十六条までの規定に基づき、その実施を了承すること。
二 ヒトES細胞の使用の進行状況及び結果を把握し、必要に応じ、使用責任者に対しその留意事項、改善事項等に関して指示を与えること。
三 ヒトES細胞の使用を監督すること。
四 使用機関においてこの指針を周知徹底し、これを遵守させること。
五 ヒトES細胞の使用に関する教育研修計画を策定し、これに基づく教育研修を実施すること。
2 使用機関の長は、使用責任者を兼ねることができない。ただし、前条第一項第二号に規定する規則により前項の業務を代行する者が選任されている場合は、この限りでない。
3 前項ただし書の場合において、第一項、第十二条第一項及び第二項、第十三条第一項、第十四条、第十五条第一項及び第二項、第十六条第一項から第三項まで及び第五項、第十七条並びに第十八条第一項、第二項及び第四項中「使用機関の長」とあるのは「使用機関の長の業務を代行する者」と読み替えるものとする。
第十一条 使用責任者は、次に掲げる業務を行うものとする。
一 ヒトES細胞の使用に関して、内外の入手し得る資料及び情報に基づき、使用計画又はその変更の科学的妥当性及び倫理的妥当性について検討すること。
二 前号の検討の結果に基づき、使用計画を記載した書類(以下「使用計画書」という。)又は使用計画の変更の内容及び理由を記載した書類(第十六条第一項及び第四項第一号において「使用計画変更書」という。)を作成すること。
三 ヒトES細胞の使用を総括し、及び使用計画を実施する研究者に対し必要な指示をすること。
四 ヒトES細胞の使用が使用計画書に従い適切に実施されていることを随時確認すること。
五 第十七条及び第十八条第一項に規定する手続を行うこと。
六 使用計画を実施する研究者に対し、ヒトES細胞の使用に関する教育研修計画に基づく教育研修に参加するよう命ずるとともに、必要に応じ、その他のヒトES細胞の使用に関する教育研修を実施すること。
七 前各号に定めるもののほか、使用計画を総括するに当たって必要となる措置を講ずること。
2 使用責任者は、一の使用計画ごとに一名とし、ヒトES細胞に係る倫理的な認識を有し、ヒトES細胞の使用に関する十分な専門的知識及び技術的能力を有し、かつ、前項各号に掲げる業務を的確に実施できる者とする。
第十二条 使用機関に、次に掲げる業務を行うため、倫理審査委員会を設置するものとする。
一 この指針に即して、使用計画又はその変更の科学的妥当性及び倫理的妥当性について総合的に審査を行い、その適否、留意事項、改善事項等に関して使用機関の長に対し意見を提出すること。
二 使用の進行状況及び結果について報告を受け、必要に応じて調査を行い、その留意事項、改善事項等に関して使用機関の長に対し意見を提出すること。
2 前項の規定にかかわらず、使用機関の長は、他の使用機関によって設置された倫理審査委員会をもって、前項の倫理審査委員会に代えることができる。
3 倫理審査委員会(前項に規定する他の使用機関によって設置された倫理審査委員会を含む。以下同じ。)は、第一項第一号の審査の記録を作成し、これを保管するものとする。
4 倫理審査委員会は、次に掲げる要件を満たすものとする。
一 使用計画の科学的妥当性及び倫理的妥当性を総合的に審査できるよう、生物学、医学及び法律に関する専門家、生命倫理に関する意見を述べるにふさわしい識見を有する者並びに一般の立場に立って意見を述べられる者から構成されていること。
二 当該使用計画を実施する使用機関が属する法人に所属する者以外の者が二名以上含まれていること。
三 男性及び女性がそれぞれ二名以上含まれていること。
四 当該使用計画を実施する研究者、使用責任者との間に利害関係を有する者及び使用責任者の三親等以内の親族が審査に参画しないこと。
五 倫理審査委員会の活動の自由及び独立が保障されるよう適切な運営手続が定められていること。
六 倫理審査委員会の構成、組織及び運営並びにその議事の内容の公開その他使用計画の審査に必要な手続に関する規則が定められ、かつ、当該規則が公開されていること。
5 倫理審査委員会の運営に当たっては、前項第六号に規定する規則により非公開とすることが定められている事項を除き、議事の内容について公開するものとする。
第十三条 使用責任者は、ヒトES細胞の使用に当たっては、あらかじめ、使用計画書を作成し、使用計画の実施について使用機関の長の了承を求めるものする。
2 前項の使用計画書には、次に掲げる事項を記載するものとする。
一 使用計画の名称
二 使用機関の名称及びその所在地並びに使用機関の長の氏名
三 使用責任者の氏名、略歴、研究業績、教育研修の受講歴及び使用計画において果たす役割
四 研究者(使用責任者を除く。)の氏名、略歴、研究業績、教育研修の受講歴及び使用計画において果たす役割
五 使用の目的及びその必要性
六 使用の方法及び期間
七 使用に供されるヒトES細胞の入手先及びヒトES細胞株の名称
八 使用計画完了後のヒトES細胞の取扱い
九 使用機関の基準に関する説明
十 使用に供されるヒトES細胞が海外から提供される場合における当該ヒトES細胞の樹立及びその譲受の条件に関する説明
十一 その他必要な事項
第十四条 使用機関の長は、前条第一項の規定に基づき、使用責任者から使用計画の実施の了承を求められたときは、その妥当性について倫理審査委員会の意見を求めるとともに、当該意見に基づき使用計画のこの指針に対する適合性を確認するものとする。
第十五条 使用機関の長は、使用計画の実施を了承するに当たっては、前条の手続の終了後、あらかじめ、当該使用計画の実施について文部科学大臣に届け出るものとする。
2 前項の場合には、使用機関の長は、次に掲げる書類を文部科学大臣に提出するものとする。
一 使用計画書
二 倫理審査委員会における審査の過程及び結果を示す書類
三 倫理審査委員会に関する事項を記載した書類及び第十二条第四項第六号に規定する規則の写し
四 ヒトES細胞の使用について遵守すべき技術的及び倫理的な事項に関する規則の写し
3 文部科学大臣は、第一項の規定による届出があったときは、当該届出に係る事項を科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会に報告するものとする。
第十六条 使用責任者は、第十三条第二項各号(第二号を除く。)に掲げる事項を変更しようとするときは、あらかじめ、使用計画変更書を作成して、使用機関の長の了承を求めるものとする。
2 使用機関の長は、前項の変更(第十三条第二項第四号及び第十一号に掲げる事項に係るものを除く。)の了承を求められたときは、その妥当性について倫理審査委員会の意見を求めるとともに、当該意見に基づき当該変更のこの指針に対する適合性を確認するものとする。
3 使用機関の長は、第一項の変更の了承をしたときは、速やかに、その旨を文部科学大臣に届け出るものとする。
4 前項の届出には、次に掲げる書類を添付するものとする。
一 使用計画変更書
二 第二項の変更の場合には、当該変更に係る倫理審査委員会における審査の過程及び結果を示す書類
5 使用機関の長は、第十三条第二項第二号に掲げる事項を変更したときは、速やかに、その旨を文部科学大臣に届け出るものとする。
第十七条 使用責任者は、ヒトES細胞の使用の進行状況を使用機関の長及び倫理審査委員会に随時報告するものとする。
第十八条 使用責任者は、使用計画を完了したときは、速やかに、その旨及び使用の結果を記載した書類(次項及び第四項において「使用計画完了報告書」という。)を作成し、使用機関の長に提出するものとする。
2 使用機関の長は、使用計画完了報告書の提出を受けたときは、速やかに、倫理審査委員会及び文部科学大臣にその写しを提出するものとする。
3 使用機関は、使用計画が完了したときは、残余のヒトES細胞を、当該ヒトES細胞の分配をした樹立機関若しくは分配機関との合意に基づき廃棄し、又は、第七条第一項の規定にかかわらず、当該ヒトES細胞の分配をした樹立機関若しくは分配機関に返還し、若しくは譲り渡すものとする。
4 使用機関の長は、使用責任者から使用計画完了報告書の提出を受けたときは、速やかに、ヒトES細胞の分配を受けた樹立機関又は分配機関に対し、使用計画の完了及びその後のヒトES細胞の取扱いを通知するものとする。
第十九条 ヒトES細胞の使用により得られた研究成果は、原則として公開するものとする。
2 使用機関は、ヒトES細胞の使用により得られた研究成果を公開する場合には、当該ヒトES細胞の使用がこの指針に適合して行われたことを明示するものとする。
第二十条 文部科学大臣は、ヒトES細胞の使用が、医療及びその関連分野と密接な関係を持つことにかんがみ、情報の提供を行う等厚生労働大臣及び経済産業大臣と密接な連携を図るものとする。
第二十一条 文部科学大臣は、ヒトES細胞の使用がこの指針に定める基準に適合していないと認める者があったときは、その旨を公表するものとする。
第一条 この指針は、公布の日から実施する。
第二条 この指針の実施の際現にヒトES細胞の樹立及び分配に関する指針附則第二条の規定による廃止前のヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針(平成二十一年文部科学省告示第八十四号)第六十四条の規定により文部科学大臣の確認を受けた使用計画は、第十五条第一項の届出が行われたものとみなす。
第三条 文部科学大臣は、ライフサイエンスにおける研究の進展、社会の動向等を勘案し、必要に応じてこの指針の規定について見直しを行うものとする。
2 前項の見直しは、総合科学技術会議の意見に基づき行うものとする。
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