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生殖補助医療研究専門委員会(第3回)・ヒト胚研究に関する専門委員会(第4回)合同会議 議事録

1.日時

平成18年4月7日(金曜日) 16時~18時40分

2.場所

厚生労働省中央合同庁舎 第5号館 5階共用第7会議室

3.議題

  1. ヒト受精胚の生殖補助医療研究目的での作成・利用に係る制度的枠組みの検討について (1) 現地調査報告 「生殖補助医療実施医療機関(国立成育医療センター)の現地調査」
  2. ヒト受精胚の生殖補助医療研究目的での作成・利用に係る制度的枠組みの検討について (2) ヒアリング 「韓国国家生命倫理審議委員会調査の中間報告及び人クローン胚研究利用作業部会の審議状況について」<文部科学省生命倫理・安全対策室石井室長>
  3. ヒト受精胚の生殖補助医療研究目的での作成・利用に係る制度的枠組みの検討について (3) ヒアリング 「医学研究・ライフサイエンス研究に関する指針の概要について」<文部科学省生命倫理・安全対策室石井室長>「臨床研究に関する倫理指針の概要について」<厚生労働省医政局研究開発振興課廣田課長補佐>
  4. ヒト受精胚の生殖補助医療研究目的での作成・利用に係る制度的枠組みの検討について (4) 生殖補助医療研究における「臨床研究の取扱いについて」
  5. その他

4.出席者

委員

 笹月座長、安達委員、石原委員、位田委員、小澤委員、小幡委員、加藤委員、後藤委員、鈴木委員、高木委員、中辻委員、秦委員、星委員、町野委員、吉村委員

文部科学省

 清水研究振興局長、石井生命倫理・安全対策室長、根本生命倫理・安全対策室長補佐

オブザーバー

厚生労働省
 佐藤母子保健課長、齋藤母子保健課長補佐、廣田医政局研究開発振興課長補佐、野上健康局疾病対策課長補佐

5.議事録

○ 笹月座長
 それでは、時間になりましたので、第4回「厚生科学審議会科学技術部会ヒト胚研究に関する専門委員会」と第3回「科学技術学術審議会生命・倫理安全部会生殖補助医療研究専門委員会」を始めたいと思います。まず、資料の確認を事務局からお願いします。

○ 齋藤母子保健課長補佐
 資料の説明に先立ち、事務局から報告があります。橋本委員が日本医師会の役員の改選に伴い、木下委員へ交代の予定です。委嘱の手続等をこれから進めさせていただきます。本日はご欠席です。また位田先生が少々遅れてご到着と承りました。
 それでは資料の確認をさせていただきます。資料のつづりがありますが、一つ目のつづりに座席表があり、その後に議事次第があります。この議事次第の2枚目に配付資料の一覧がありますので、この一覧に沿って確認させていただきたいと思います。
 まず資料1と資料2がそれぞれ「生殖補助医療研究専門委員会委員名簿」と「ヒト胚研究に関する専門委員会委員名簿」になっております。
 資料3は「生殖補助医療に関する現地調査について」という報告です。こちらの報告の後ろに、委員の先生方がご視察された際に、案内してくださった齊藤先生からご提供いただいた当日の配付資料も付けています。
 続きまして資料4ですが、こちらは韓国のファン・ウソク韓国ソウル大学の倫理問題に関する国家生命倫理審議委員会調査報告中間報告の資料です。こちらは文部科学省からご提供いただいております。
 続きまして資料5ですが、こちらは「人クローン胚研究利用作業部会における未受精卵の入手のあり方に関する審議状況について」で、文部科学省の生命倫理・安全対策室の資料となっています。後ほどご説明がある予定です。
 続きまして資料6ですが、こちらは「医学研究・ライフサイエンス研究」に関するさまざまな国の指針がありますが、その一覧とそれぞれの概要についてまとめられた資料です。
 また資料7ですが、その中でも「臨床研究に関する倫理指針」の概要についてという資料があります。
 続きまして資料8です。本日ご議論いただく「ガイドラインの対象とする研究の範囲について」ということで、「検討のためのたたき台」という事務局メモです。これが資料9の一部を構成しています。資料9は前回事務局の方から用意させていただいた検討事項(たたき台)の全体となっており、その一部について特にメモとしてまとめているのが資料8です。
 最後に参考資料として「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」ということで、これは現在パブリックコメント中で、本日までがパブリックコメントと承っておりますが、参考までにさせ配付ていただきます。資料の方は以上です。

○ 笹月座長
 どうもありがとうございました。本日の委員の中で、大隈委員、奥山委員、木下委員は先ほどご紹介がありましたようにご欠席ですが、全部で15名出席ということです。小澤委員、位田委員は少し遅れるということです。
 早速議事に入りたいと思います。まず第一には、この専門委員会の審議を進める上でいろいろ理解しておいていただきたいということで、前回、実際に生殖補助医療を行っている医療機関の現地調査をするということを申し上げましたが、その報告を事務局よりお願いいたします。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 ご報告申し上げます。資料3です。「生殖補助医療に関する現地調査」でございまして、2月14日および2月28日の2回に分けて厚生労働省の国立成育医療センターに現地調査に参りました。ご参加いただきました委員ですが、2月14日は小幡委員、加藤委員、鈴木委員、高木委員。2月28日は石原委員、後藤委員にご出席いただきました。
 実施内容ですが、国立成育医療センターの生殖補助医療に関して「生殖補助医療の沿革・方針」そして「生殖補助医療の現状(担当医数、胚培養士等の培養体制、カウンセリング体制、患者数等)・プロセス」などについてご説明をいただいた後、施設について調査といいますか、視察をさせていただきました。具体的な内容としては、採卵・移植室、採精室、培養室、それから凍結保存設備、カウンセリングルーム、診察室などの内容についてご案内いただきました。
 結果ですが、これは先生方にまとめていただいたものではなくて、あくまでも事務局としてこういった話をお聞きしたということです。「生殖補助医療に携わる体制については、女性不妊担当医師、男性不妊担当医師、エンブリオロジスト、サイエンティフィックディレクター及び育児心理科医師・心理カウンセラーで構成している」というご説明がありました。「エンブリオロジスト、サイエンティフィックディレクターについては人材確保が大変であり、担当医師が自ら育成している」という説明がありました。また、「不妊治療が複雑になってきている現状より、患者の治療に対する理解を深め、安心して治療を受けられるように、各医師の説明を補足する、不妊コーディネータの必要性が高まっており、この職種に関して充実を図りたい」という説明がありました。
 施設に関しては、「採卵室、授精室、受精・培養室及び相談室(カウンセリング)で構成している」との説明があり、ご案内いただきました。特に採卵室においては、実際に使用している採卵針について採卵針そのものを実際に見せていただいて、ご説明がありました。また、培養室においては「インキュベータ(細胞培養装置)の性能」などについて、その場でご説明いただきました。また、培養液については、過去に自ら研究しながら作成した培養液で行っていたということがあったようですが、近年はある程度標準化されつつあるということで、実際には製品化された培養液を使用するようになっているという説明がありました。以上です。

○ 笹月座長
 どうもありがとうございました。ただ今事務局からご報告いただきましたけれども、実際に参加された委員の方から追加と言いますか、ご感想をお聞かせいただければと思います。加藤委員いらっしゃいますか。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 少し遅れておられるようです。

○ 笹月座長
 高木委員はいらっしゃいますね。

○ 高木委員
 実際の施設等を見せていただきました。多くの質問に答えていただいたので、生殖補助医療の実際というのが私なりに理解できたという気がしています。採卵室、それから凍結するときに、なぜ未受精卵は大変で、受精卵は比較的うまくいくのかというようなことが、私自身はよくわかっていなかったのですが、こういうことなのかと理解できました。
 それぞれが専門的になっており、エンブリオロジストというような人たちが、卵に関するスペシャリストとして体外受精を実際に行っている現場も見学しました。ただ国立成育医療センターという恵まれた場所だったので、実際にすべての生殖補助医療がそうだとは思いませんが、スペシャライズされた施設で全てが行われているという現状も見せていただきました。

○ 笹月座長
 どうもありがとうございました。鈴木委員、何か感想ございますか。

○ 鈴木委員
 私は仕事柄ということと当事者として、今まで他にもあのような現場は見せていただいたことがあるのですが、久しぶりにあのような所に行ったということもあり、システム上も変わってきていることがたくさんあるのだなということが一つありました。それは、培養器などが、以前は一体型というのでしょうか、全員を冷蔵庫のような所に入れる形になっていたのが、最近は個別に一人一人混乱しないようなタイプになっていたということです。
 また、それ以外に、国立成育医療センターは研究所も併設されているということもあり、私としては現場のこともさることながら、研究所における研究と臨床の現場の関係がどうなっているのかということを自分としての質問というか課題として用意して行きました。幸い、研究所から梅澤先生という方に来ていただいており質問させていただきました。例えば、研究所の方でやる研究、つまり、ヒト由来の試料というものを臨床の現場から持ってきて研究所でなさるわけですが、そのときに誰が説明されているかという質問に対しては、研究の方は決して出てこないとのお答えでした。まだ詳細は整理していないのですが、そういったこともお話しいただきました。
 それからもう一つ、今日も聞かれるかと思い持ってきたのですが、体外受精胚移植の患者さん用の説明の資料と、それからそういった研究利用に関する説明の用紙もいただいてきました。例えば「手術検体を使う研究の説明とご提供のお願い」という患者さん向けの資料を読ませていただいて、もし自分がそういった立場であれば、よくできているものであるということを感じて帰ってきました。以上です。

○ 笹月座長
 どうもありがとうございました。それでは後藤委員、いかがでしょうか。

○ 後藤委員
 私も2回目の28日のチームに参加させていただきました。そこで、私は不勉強でガラス化法というのがよくわからなかったのですが、ガラス化法という凍結法は新しい凍結法で、未受精卵が確実に凍結保存できるということ。それから、卵子は卵巣の表面にあると思うのですが、その卵巣の皮膜に近い所をずっと通ってくれば、卵巣からの未受精卵もそのガラス化法によってかなり凍結または解凍する場合もかなり効率よくできる状態になっているということを聞いて驚きました。
 また、そこで話題提供されましたのは、国立成育医療センターでは梅澤先生が中心になってやられていたのですが、現在、各大学などで生殖医療というのは割合と大学で育ち、地方というか民間の方で、クリニックを開いて生殖医療に対応している施設が非常に多いということです。そのバランスは、大学中心であったものが、現在、民間の方もかなり力を入れていろいろな医療が行われており、医療がシフトしているというようなことがそのときに話題になりました。

○ 笹月座長
 どうもありがとうございました。石原委員いかがですか。

○ 石原委員
 私は同業者の目で訪れさせていただいたわけですが、一つ感じましたのは、やはり建物、設備、人員その他含めて、やはり体外受精に代表される生殖医療というのは、ピンからキリまであるということを非常に強く感じました。それこそ私どもの施設に比べるとはるかに充実した設備、建物、人員がナショナルセンターとして完備されているというところがよくわかりました。
 ただ、我々がこういう議論を進めていく上では、やはりそうした部分というのは必ずしも日本中どこの施設であっても均一であるという前提ではなく、かなりバリエーションがあり、その場その場において最も有用である、あるいは有効であると考えられる方法論あるいは考え方に基づいて、さまざまな日常診療が遂行されているのだということを考えつつ、これらの審議を進めなければいけないのではないかということを感じました。以上です。

○ 笹月座長
 どうもありがとうございました。高い評価を得られましたが、国立成育医療センターの秦総長いかがですか。

○ 秦委員
 実は私も見学をする予定にしていたのですが、ちょうど会議が入ってしまい見学できなくて大変残念でした。断片的にはもちろん姿勢、やり方などについては日常的に見ているわけですが、我々は人員的にかなり無理をしており、土日も治療が受けられるような体制を取っています。これは看護師、その他のスタッフの方々の犠牲的な力、というと語弊がありますけれども、そのような力の提供によって土日もやっているわけです。それが果たしていわゆる標準化にできるのかどうかというのは問題があると思っています。特徴としてはそういう点だと思います。

○ 笹月座長
 ありがとうございました。小幡委員、加藤委員も国立成育医療センターを見学されたと思いますが、何か感想をお聞かせいただけますか。小幡委員どうぞ。

○ 小幡委員
 私も初めてこういう施設を見せていただきました。もう既に感想として出ていることだと思いますが、非常に整った所で、時間もじっくりかけて、特に安全性と言いますか、実際に出生した予後がどのぐらいなのか、まだそれほど年数が経っていないわけですけれども、そういうことについてもきちんとした形でインフォームド・コンセントと言いますか、説明がなされていると思いました。それが非常に大事なことではないかと思います。民間で、一度にたくさんのこういった不妊治療をしている所では、その辺が本当に時間をかけて十分話されているのかなと、少しそんなことも思いました。本来は、やはり一つ一つに時間をかけてじっくりやる必要があるのではないかという気がしました。
 それから、卵の方の廃棄について、現実にどのようにされているのかということも具体的な説明を受けて大変よくわかりました。有意義でした。

○ 笹月座長
 ありがとうございました。加藤委員、何かありますでしょうか。

○ 加藤委員
 産婦人科の診察室に入ったのは生まれて初めてなので、いろいろショッキングなことはあったのですが、それは全く無関係です。ただ、こういう所に卵子を置いて顕微鏡で観察するというのを実際に見たということは、今までいろいろな話を聞いていたのでイメージが豊かになりました。
 ただ、患者さんとどういうふうに接触して、どんな話をしておられるのかということを本当は見に行きたかったという気がしました。

○ 笹月座長
 どうもありがとうございました。その他の委員の方から何かご質問ありますでしょうか。
 配付された資料の最後の所に「不妊診療における課題」というのがありますが、これは何か議論がなされたのでしょうか。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 これについては、国立成育医療センターの齊藤医長から、こういうことについてお考えになっているというご紹介があっただけで、特段その中で議論するということではありませんでした。

○ 笹月座長
 実際に実例としてどれぐらいあったかという話ではなかったのですか。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 特別詳しいお話はなかったです。

○ 笹月座長
 吉村先生、この最後の件は何か統計というか、データ、情報はあるのでしょうか。

○ 吉村委員
 これからこういったことを、ということだと思います。

○ 笹月座長
 理論的に考えられるこういうことを考慮しなければいけないという意味ですね。

○ 吉村委員
 おっしゃる通りだと思います。

○ 笹月座長
 どうもありがとうございました。加藤委員がおっしゃいましたように、やはり現場を見ていただくというのがいろいろな議論を進めていく上では意味があったことだと思います。関係の先生方、事務局の方に御礼申し上げます。
 それでは、次に進みたいと思います。韓国のファン教授の研究チームの倫理問題に関して、韓国の国家生命倫理審議委員会の中間報告というものが資料4にあります。それからもう一つは、人クローン胚の研究目的での作成・利用について文部科学省で検討されていますが、作業部会での検討状況が資料5。この両方について石井文部科学省生命倫理・安全対策室長よりご報告お願いいたします。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 それでは資料4及び資料5についてご説明申し上げます。私ども文部科学省では、「人クローン胚研究利用作業部会」において人クローン胚の研究利用についての指針などについての検討を行っているところですが、これに関して、韓国のファン教授の研究チーム、これは人クローン胚研究で行われたことですが、こちらで卵の提供に関する倫理的な問題、それから捏造の問題というのがありました。特に倫理問題に関して、平成18年の2月2日に韓国の国家生命倫理審議委員会において中間報告書が取りまとめられました。その内容について資料4に示していますので、まずその内容についてご説明申し上げた後、「人クローン胚研究利用作業部」における未受精卵の入手のあり方についての審議状況についてご報告申し上げたいと考えております。
 資料4ですが、韓国の国家生命倫理審議委員会、これは韓国の生命倫理及び安全に関する法律に基づく委員会ですが、こちらで2月2日に中間報告書が公表されたところで、主な調査の範囲としては「研究に提供された卵子の個数及び出処」、それから「研究に提供された卵子の受給過程の倫理的問題」、「ファン教授チーム女性研究員の卵子提供の倫理的問題」、それから「研究に対するIRBの倫理的監督の適切性」について調査がなされたということです。
 中間報告における指摘事項について、大きく三つに分けて書いております。特に留意すべきものとして挙げたこの3点についてご説明申し上げたいと思います。まず1点目は、「研究に提供された卵子の受給過程に係る倫理的問題」です。「卵子の提供者と研究に提供された卵子の個数」として、平成14年11月から平成17年12月までに四つの病院から119名の女性から計2,221個の卵子が採取されたということで、それが研究に提供されたということです。この中では、卵子を2回以上提供された方が24名。この24名というのは研究目的と不妊夫婦への提供用という両方が含まれていますが、研究目的のみの方としては15名の方からの提供があり、この中には一人から最大4回卵子を採取して研究に提供されたという事例があったということです。この提供者の約半数である64名については一定の金銭補償を受けて提供しており、研究チームに所属する女性研究2名からの提供もあったということです。詳細については別紙に表の形で最後の紙に付けておりますので、ご参照いただきたいと思います。それから、追加的な調査が必要な事項としては、漢陽大学病院の卵巣が提供されたという疑惑があるということで、これについての調査。また、不妊治療用の卵子が一部研究用として転用されたという事実があったのではないかということで、この事実の有無についてさらに追加的な調査が必要だとしております。
 それから、卵子の受給過程の倫理的問題として金銭の支給の問題があります。補償供与者としては、ミズメディ病院のノ・ソンイル理事長の陳述によると、同病院の患者に卵子供与の話をするということが辛かったノ理事長が、卵子売買ブローカー(DNA Bank)のY社長に接触して、Y社長から卵子提供者の紹介を受けたということです。Y社長は最初200~250万ウォンを補償として要求したのに対し、理事長は研究のためであるから価格を下げて助けてほしいと交渉。最終的には一人当たり150万ウォン、この中に交通費それから生活に支障をもたらした補償として1日当たり10万ウォンずつ15日間の費用として策定したということで、この150万ウォンの現金をY社長に渡して、提供者にはY社長を通じて支給したということです。Y社長はこの150万ウォンのうち一部を紹介料名目で受け取ったかどうかなどの調査がまだなされていないと報告されています。
 それから、ノ理事長は実費名目で金銭を支給したと主張しているということですが、補償供与者が皆、DNA Bankから紹介されていることを考えると、卵子提供者確保の過程で売買経路を経たという疑惑を排除することは難しいとしています。
 このような紹介経路、金銭の授受方法等を総合的に考慮すると、支給された金額の対価性は高いと判断できるとまとめています。
 数度にわたり卵子を採取して提供したという女性が数人おり、1年未満の間に4度も卵子を採取して提供した女性が一人います。また、他の一人は1度の採取で副作用のため入院したということがあったにもかかわらず、それ以降2度採取し再び入院し治療を受けたという点を考慮すると、少なくとも金銭の支給を受け卵子を提供したすべての女性が金銭目的ではなく研究のための「崇高な」気持ちで純粋寄贈したものとは考えられないとまとめています。少なくとも金銭の支給を受けた卵子提供者の一部は、経済的・社会的弱者であったとしています。
 純粋寄贈者についてですが、ノ理事長の陳述によると、ミズメディ病院で実費名目でも費用を支払っていない卵子提供者は、ファン教授の紹介で来院した者と延世大学校を通じて紹介された小児糖尿病患者の母親だけということです。純粋寄贈者の大部分については、生命倫理安全法が施行された後に集中していることから、真の純粋寄贈者であるかという疑問が残っているということです。
 インフォームド・コンセントの問題は、ミズメディ病院等、研究に卵子を提供した機関が使用した「卵子供与施術説明書」には、危険性や副作用、予後等に対する説明の内容が非常に簡略に記述されており、後遺症に対する十分な情報を提供するものではなく、卵子提供者に対する配慮が相当不十分であったと判断されます。そしてIRBの審議を経ていない同意書が使用されたということです。
 卵子提供による副作用発生時の措置について、ミズメディ病院では、79名の卵子提供者(91ケース)のうち15名(16ケース)が過排卵症候群で、この中から2名3ケースが入院治療を受けたということです。また、研究計画に副作用発生時の措置が記載されていない計画がIRBの審議を通過しているということです。卵子採取機関においては、過排卵患者に対する消極的で事後的な治療しか行っておらず、後遺症が発生したことがある患者に対して再び卵子を採取することがあるなど、後遺症に対する配慮が不十分であったとしています。副作用の発生については、IRBに報告されていないということから、研究全般において卵子提供者保護のための措置が不十分であったということです。以上が「卵子の受給過程に係る倫理問題」です。
 2点目は、ファン教授の研究チームの「女性研究員からの卵子提供に係る問題」です。ファン教授の研究チームの女性研究員PとKの2名がそれぞれ1回ずつミズメディ病院で卵子を提供しました。「実費補償も含めて金銭的保証はなかったとみられる」としていますが、その事実は他の種類の代価を提供したかもしれないという蓋然性を残しています。このうちの一人であるP研究員は現在、ピッツバーグ大学で研究員として、K研究員は国内のK医科大学の専任講師として在職しています。K研究員は当該大学に新規採用され直ちに新学期が始まるという一番忙しい時期に卵子提供を行ったという点。また、任用審査時に提出した二つの論文が相当類似した内容であり、研究実績がともに最終審査対象であった者に比べて著しく少なかったにも関わらず採用されたという疑問点について、追加解明が必要としています。
 ファン教授は、この2名の他に、「特別な保護」を要する研究員に「卵子寄贈同意意向書」を配付し、ファン教授の立会いの下で署名を受け取りました。現研究員が7名、前研究員が1名であり、この事実は研究員の自由を制限した一種の強圧と思われます。
 倫理的な問題の3点目は、「IRBの倫理的監督の適切性」です。卵子採取機関である漢陽大学病院のIRBは、卵子採取等の危険性が十分説明される同意書が添付されていない研究計画書を承認しており、また、卵子供与者を拡大する計画の変更について、その場合に発生する恐れのある倫理的問題点に対する議論や検討もなく承認するということがあるなど、研究の倫理性問題を点検するための機能を果たしたとは考えられません。
 ミズメディ病院の卵子提供募集方法についてはどこのIRBでも審議されておらず、卵子売買ブローカーを通じた募集方法や金銭支給方法の倫理性・適法性が事前にIRBによって検討されていませんでした。研究計画書に全く記載されていないミズメディ病院で卵子採取が行われており、IRBに対する報告がきちんとなされていない点を考慮すると、ファン教授の研究に使用された卵子の採取過程は事実上IRBの承認及び監督下でなされたとみることはできません。
 実際に研究を行っていたソウル大学獣医学部のIRBについては、ファン教授の研究チームが委員の選出過程に直接関与し、教授会等の公式な手続きが省略されており、委員長のイ・ヨンスン教授は平成17年10月まで自分自身が委員であるという事実すら知らなかったということなどから、IRBの構成過程が適切であったとみることは難しいとしています。初期のIRBはファン教授研究チームの主導で召集され、会議の議決に関する委任状も同過程でつくられていました。IRB委員長及び幹部委員を含む大部分の委員は、IRBの役割と機能に対する認識と知識がありませんでした。IRBすべての会議でファン教授をはじめとする研究者がともに参加して会議を進行し、意思決定過程まで会議に参加していました。これに対してイ委員長は、意思決定時に委員長が研究者を会議場の外へ退場させるという適切な措置を取る義務があるということを知らず、IRBの運営に対して無知であったと陳述しています。また、IRBの会議録に審議された研究計画書の題名が抜けており、審議対象すら把握されておらず、研究計画が秘密であるという理由により研究責任者が研究計画書を回収していくといったずさんなIRBの運営がされており、審議した研究計画すら保管していませんでした。イ委員長はじめIRB委員は、卵子提供者に関連した倫理問題について、漢陽大学校IRBなどで承認されているのになぜ審議するのかわからなかったと陳述するなど、生命倫理及び安全に関する法律に基づいたIRBの法的義務・倫理的義務に対して認識が足らなかったと判断されます。これによってIRBの審議は形式的になされ、倫理的監視機能を遂行するべきであるIRBが、むしろ研究者たちの意思のままに動いていたものと判断されるとまとめています。
 「韓国国家生命倫理審議委員会調査の中間報告」は以上であり、これも含めて内容については逐次、「人クローン胚研究利用作業部会」で報告しています。こういったものを参考にしつつ「人クローン胚研究利用作業部会」で未受精卵入手の検討をしていますが、資料5の方で現在の審議状況について報告いたします。
 「人クローン胚研究利用作業部会」は参考1に概要を書いているように平成16年10月に設置した作業部会であり、総合科学技術会議意見具申「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」を踏まえて、人クローン胚の研究目的の作成・利用に係る特定胚指針の改正等のために検討しています。これまでに14回検討しており、主な検討資料として人クローン胚研究利用の目的、難病治療の目的で難病等の範囲をどうするかということ、未受精卵の入手のあり方について検討を進めています。未受精卵の入手については、4ページ目の参考2に総合科学技術会議意見具申の抜粋を載せています。この委員会では、ヒト受精胚の中で生殖補助医療研究目的のための未受精卵入手の議論をこれから行うことになります。それについては、参考2の上のほうにアンダーラインが引いてありますが、「未受精卵入手には生殖補助医療目的で採取された未受精卵の一部利用、手術等により摘出された卵巣や卵巣切片からの採取、媒精したものの受精に至らなかった未受精卵の利用とともに、技術の進捗状況にもよるが卵子保存の目的で作成された凍結未受精卵の不要化に伴う利用等も可能な場合があり得ると考えられる」としています。
 人クローン胚については、これと少し違った表現になっており、「未受精卵の入手は、手術等により摘出された卵巣や卵巣切片からの採取が考えられる。また、生殖補助医療目的で採取された未受精卵で同目的には利用されなかったものや非受精卵の利用とともに、技術の進捗状況にもよるが、卵子保存の目的で作成された凍結未受精卵の不要化に伴う利用等も可能な場合がある」としています。大きな違いとして、生殖補助医療目的で採取された未受精卵の一部利用がヒト受精胚の生殖補助医療研究目的には可能な場合があるとしているのに対し、人クローン胚の方ではこれについての記述がないということです。こういった前提の下、「人クローン胚研究利用作業部会」で未受精卵の入手方法について議論をしています。現在までに方向性が概ね確認されたものについて資料5の1から説明したいと思います。
 まず、今の総合科学技術会議意見具申の中で示されたものについて順番に説明していくと、(1)「手術等により摘出された卵巣や卵巣切片から採取された未受精卵の人クローン胚研究への提供について」です。摘出卵巣から採取された未受精卵の利用は、生殖補助医療研究において未成熟卵子の体外成熟技術の実績が蓄積された後、行うものとするとなっています。ただし、人クローン胚研究の一部として未成熟卵子の体外成熟技術に係る研究を行うことは認めるということです。つまり、ここから直接人クローン胚の作成に向かうことについては認めるという方向で議論が概ねまとまっているところです。
1「婦人科疾患、性同一性障害等のため手術等により摘出される卵巣や卵巣切片については、治療におけるインフォームド・コンセントにより手術等により卵巣(またはその一部)を摘出することが決定された後、摘出された卵巣(またはその一部)の廃棄が予定されている場合に、適切なインフォームド・コンセントを受けて利用することについて認める」ということです。
 それから、2「疾患等のため将来の妊娠に備えて凍結保存された摘出卵巣や卵巣切片については、本人の生殖補助医療には利用しないことが決定され、廃棄することが決定された後、適切なインフォームド・コンセントを受けて利用することについて認める」ということです。前提として書いている生殖補助医療研究で未成熟卵子の体外成熟技術の実績が蓄積された後、1.2.の方向で認めるという方向になっているところです。
 それから、(2)「生殖補助医療目的で採取された未受精卵で同目的には利用されなかったものや非受精卵の人クローン胚研究への提供について」は幾つかのケースがあります。5ページ目の別紙は、生殖補助医療で採取された未受精卵のその後のあり得る場合を示しています。まず、左にある採卵され、採取された未受精卵を大きく二つに分けています。形態学的に異常がない(問題がない)ものと形態学的に異常があるものがあります。このうち形態学的に異常があるものについては、媒精せずに利用されなかった未受精卵となることがあります。また、形態学的に異常がある場合であってもそのまま媒精し受精胚になる場合と非受精卵になる場合があります。形態学的に問題がなかった場合でもいったん凍結することが考えられます。もう一つは、そのまま媒精しない形で利用されなかった未受精卵になるケースがあるということです。受精胚にならなかったものとして1.から4.の4つのケースについて検討しました。
 そのうち、媒精したけれども受精しなかった非受精卵について、実際に媒精した後、凍結して保存されているものの提供を受けるときは、本人の受ける生殖補助医療が終了し、非受精卵が廃棄されることが決定された後、適切なインフォームド・コンセントを受けて利用することについては認めるという方向になっています。それから、凍結せずに提供を受ける場合は、生殖補助医療を行っている途中で提供されることになりますが、治療によるインフォームド・コンセントにより体外受精または顕微授精が決定された後、本人から自発的な提供の申し出がある場合に限り、適切なインフォームド・コンセントを受けて利用することについて認めるとなっています。機関内の倫理審査委員会の委員、または指名された者である第三者の面会による、自発的意思の確認を含む適切なインフォームド・コンセントを受けるということです。
 また、注として下に2と書いてあります(1は抜けているので番号は削除してください)が、自発的な提供の申し出がある場合とは、一般的に入手し得る情報に基づき研究者や医療従事者が関与することなく自らの判断により提供を申し出る場合を意味するということであり、例えば誰かの紹介でということはこの中には含まれておりません。こういった条件の場合に限り凍結しない非受精卵の利用を認める方向になるということです。
 それから、2ページ目の形態学的に異常があり利用しない場合の未受精卵です。これについても先ほどの非受精卵と基本的には同様であり、凍結されたものの提供を受ける場合には生殖補助医療が終了し、廃棄することが決定された後、適切なインフォームド・コンセントを受けて利用することについて認めるということです。それから、凍結せずに提供を受ける場合には、治療におけるインフォームド・コンセントにより顕微授精を行うことが決定された後本人から自発的な提供の申し出がある場合に限り、適切なインフォームド・コンセント(第三者の面会による自発的意思の確認を含む)を受けて利用することを認めるという方向になっています。
 3番目として、形態学的に異常がない未受精卵です。先ほどの別紙では、3または4となりますが、顕微授精の場合に精子の数の関係で媒精させる未受精卵の数を限定せざるを得ないことにより、ケースとしては少ないのですが、生殖補助医療に使用されない形態学的にも異常のない未受精卵が出てくるケースがあり得るということです。こういう場合において治療によるインフォームド・コンセントにより顕微授精を行うことが決定された後、本人から自発的な提供の申し出がある場合に限り、適切なインフォームド・コンセント(第三者の面会による自発的意思の確認を含む)を受けて利用することを認めるという方向になっています。
 また、この中でこれ以外に患者本人の自発的意思で媒精させる未受精卵の数を限定することなどにより、形態学的に異常のない未受精卵の提供を受けることについては、医師が患者に何らかの圧力をかける恐れ、生殖補助医療の成功率の低下の恐れ、または過剰排卵をあえて行うという恐れがあるということなど、社会から疑惑を受ける可能性を考慮し、認めないこととするとしています。これは先ほどの総合科学技術会議でいえば、生殖補助医療の中で、生殖補助医療の目的で採取された未受精卵の一部利用の分類になると思いますが、一部利用の中で認められるのはあくまでも顕微受精の場合に精子の数で媒精未受精卵の数を限定せざるを得ないという場合に限って認めるということで、それ以外は基本的に認めないという方向になっています。
 それから、その他として書いていますが、先ほどの(2)の中でいくつが凍結せずに提供を受ける場合ということが出てきました。この資料の中では明確に書いておりませんが、凍結せずに提供を受ける場合に関しては少なくとも一度は体外受精もしくは顕微授精の経験のある方からの提供に限るという方向に今なっています。これは生殖補助医療について十分な理解を得ることが必要であるということからこのようになっています。
 続いて(3)の「卵子保存の目的で作成された凍結未受精卵の不要化に伴う提供について」です。これは疾患等のため将来の妊娠に備えて凍結保存された未受精卵については、本人の生殖補助医療には利用しないことが決定され、廃棄することが決定された後に、適切なインフォームド・コンセントを受けて利用することについて認める方向になっています。
 続いて(4)のその他ですが、「当事者が亡くなった場合」についてです。これは凍結した状態で保管しているケースがありますが、以下の要件を満たす場合に限り、遺族からの適切なインフォームド・コンセントを受けて、凍結保存された卵巣や未受精卵を利用することを認めるという方向になっています。その要件として、提供医療機関において、当事者が亡くなった場合に凍結された卵巣や未受精卵を廃棄することが決められていること。それから本人から生前に、死後の提供について自発的意思による申し出があり、そのことを書類等により確認できることという要件があった場合に、遺族からのインフォームド・コンセントという過程を経て利用することを認めるという方向になっています。
 上記の提供方法について、インフォームド・コンセントの具体的なあり方(例えば、時期や説明者、同意権者、説明方法、説明内容、配慮事項等)、具体的な詳細に関して現在検討しているところです。それ以外に、研究関係者の中からの提供ということがあり得るのではないかということで、その取扱いについても現在検討しているところです。また、今のような提供以外に、総合科学技術会議意見具申の中で無償ボランティアについて原則禁止としていますが、例外的な取扱いということがあり得るのかどうか。仮に例外的な取扱いをするのであればどういう用件がいるのかといった対応について今後検討を行うこととしています。報告は以上です。

○ 笹月座長
 どうもありがとうございました。ファン教授の件と人クローン胚の研究利用作業部会における検討状況を説明していただきましたが、どなたか質問はありませんか。

○ 加藤委員
 韓国国家生命倫理審議委員会調査の中間報告の2ページ目中ほど、「純粋寄贈者」の「純粋寄贈者の大部分が生命倫理安全法施行以降に集中していることから、真の純粋寄贈者であるかという疑問は残っている」ということについて、もう少し詳しく説明してください。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 私たちも報告書を見る範囲でしかわからないのですが、要はそれまでの間は金銭の補償があった形で行われていました。その後、急に純粋寄贈者が増えるというのは、明らかに別の理由があるのではないかと推測されているということです。

○ 加藤委員
 つまりこれは、生命倫理安全法によって金銭授受が違法化されたということですか。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 はい、生命倫理安全法の中で代価の提供は禁止されました。平成17年の1月に施行され、その前については純粋寄贈者はおらず、生命倫理安全法が施行された途端に純粋寄贈者が増えているのは事実としてあるということです。その中身については報告書の中で触れていないのですが、コメントとして真の純粋寄贈者であるのかという疑問が呈せられているということです。

○ 笹月座長
 よろしいですか。他にありませんか。

○ 高木委員
 私は3月下旬に韓国の国家生命倫理審議委員会の委員の方とたまたま話をする機会がありました。そのときの話としては、実費ということに関しては必ずしも否定されたわけではないということでした。ですから、交通費や2週間の補償に関しては否定されたわけではありません。それから、真の純粋寄贈者についてはきちんとした手続きを踏み、インフォームド・コンセントを受けても、列を成すほどだったということでした。研究者たちもなぜそれほど寄贈者がいるのか理解できないので、それについてはさらに調査しているという。

○ 笹月座長
 ありがとうございました。韓国の件に関してどなたか他に質問はありませんか。あるいは何か他の情報をお持ちの方がおられましたら。どうぞ。

○ 石原委員
 一つ確認したいのですが、この中に「何々と思われる」「考えられる」という記載がたくさんありますが、それは報告書の記載がこうであるという意味であり、文部科学省生命倫理・安全対策室で「考えた」あるいは「思った」ということではないわけですね。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 資料4の2の(1)の前に「以下のとおりと考えられる」というのは私どもで整理した内容です。そこから先については基本的には報告書の内容をそのまま抜き出しています。若干抜き出す過程で手を加えているところがありますが、「判断される」、「考えられる」というのは報告書の中のものをそのまま使う形で書いております。以上です。

○ 星委員
 提供者の数あるいは提供の回数については間違いないのですか。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 これについては、まだ幾つか追跡調査をしているような報道が出ております。実際に、この報告書が出るまでにもソウル大学の数字とも異なっていますし、必ずしもこれが最終的な数字かどうかというのは確認ができておりません。

○ 星委員
 ちょっと計算して、138回ぐらい採卵して2,221個の卵子が採取されたということは、1回平均16個ぐらい採れたということですが、ちょっとあり得ないと思うのです。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 私どもの今まで聞いた数からしても多いという印象は持っています。

○ 星委員
 これだけ採るとなると相当排卵を誘発しなければならないでしょう。そうすると事故が起きていても不思議ではないという気がします。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 まさにそういう中で実際に過排卵の症状が出ている人がかなりいて、これは実際病院に来た人であり、それ以外の人がどうであったかということが確認されたものではありません。むしろきちんとしたフォローがそれぞれの採取機関で行われていないという指摘もありますので、それ以外の人がかなりいるということが考えられると受け止めています。

○ 笹月座長
 よろしいでしょうか。それでは二つ目の「人クローン胚研究利用作業部会」に関してどなたか質問はありませんか。
 今説明していただいた資料5の2ページの一番上2.「形態学的な異常により利用されなかった未受精卵について」ですが、「本人の受ける生殖補助医療が終了し廃棄することが決定された後」という書き方をされています。ということは、形態学的に異常のあったものでも、もしかしたら生殖補助医療に利用され得るという印象を受けますが、それでよろしいでしょうか。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 実際に形態学的異常がある場合でもそのまま媒精をするということは通常あり得るということで、媒精した後に受精胚ができて、それを選別して体内に移植する過程であると理解しています。そういうプロセスの途中段階で、例えば顕微授精する場合に、形態学的異常のあるものを、先に選別したケースであると私どもは理解しております。つまり、それは恐らく利用されないであろうということは間違いないと思うのですが、一応、医療の流れの上では、まだその後がある段階であるということから、最終的に生殖補助医療に使わないということがきちんと判断され、廃棄されるというプロセスがなければ使えないので、こういう表現をしています。使うという前提よりも、途中段階であり、まだ最終決定がされていないものであることから、このような表現にしました。

○ 笹月座長
 吉村先生、例えば現実的にはいかがでしょうか。

○ 吉村委員
 あくまでこれは可能性を全部出したということで、1.と2.はケースとしてはほとんどないだろうと思いますが、もしあった場合に利用するということだけです。

○ 笹月座長
 わかりました。他にご質問はありますか。

○ 秦委員
 言葉の問題かもしれないのですが、資料5の2ページの「4.その他」のところで、「凍結せずに提供を受ける場合には、少なくとも1度は体外受精もしくは顕微授精の経験のある方からの提供に限る。(生殖補助医療について十分な理解を得るため)」となっていますが、この意味がよくわからないのですが。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 表現が適切ではなかったと思いますが、卵を提供するにあたり、それがどういったものであるかということをご存じない方が卵の提供を自発的に申し出る(十分理解されていないで卵の提供を申し出る)ということはあり得るので、きちんとそれを理解した上で、卵の提供の自発的な申し出があった場合には受けましょうという意味です。十分理解を得た方からの提供を受けるため、というのが正しい意味です。

○ 笹月座長
 このクローンの作業部会にご出席いただいた委員の方もいらっしゃいますが、位田先生、いかがですか。

○ 位田委員
 この資料5にまとめられた形で議論しておりますので、特にありません。

○ 笹月座長
 町野先生、吉村先生、何かございますか。

○ 町野委員
 ありません。

○ 吉村委員
 ありません。

○ 笹月座長
 その他の委員の方からご質問はございますか。よろしいでしょうか。いつ頃最終的な結論に到達するかという、時間的な問題はどうですか。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 結論につきましては、最終的にいつまでという期限付きの検討ではなくて、きちんと議論を尽くしてまとめたいと考えております。なるべく早くまとめたいということと、議論を尽くしてまとめたいということから、具体的にいつまでという期限は今のところまだ考えていない段階です。

○ 笹月座長
 わかりました。どうぞ。

○ 小幡委員
 適切なインフォームド・コンセントのところで、「凍結せずに」というものについては「(第三者の面会による自発的意思の確認を含む)」と書いてあって、そうでない場合と区別がされていると思うのですが、この「含む」というのは「要する」という意味と理解してよろしいですか。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 その通りです。通常のケースであれば医療機関の方がインフォームド・コンセントを受ければ十分なのですが、凍結しない場合に医療機関の方だけではなく、それに加えて、例えば倫理審査委員会の委員がその内容を面会して確認するというものを含むということでございます。

○ 小幡委員
 私もそうだろうとは思っていたのですが、言葉としては「要する」などにした方がわかりやすいと思います。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 そのようにさせていただきます。

○ 笹月座長
 ありがとうございました。どうぞ。

○ 鈴木委員
 これは先々のことともかかわるので、今すぐにお答えをいただきたいということではありません。「人クローン胚研究利用作業部会」の方も傍聴するのですが、手続き上の問題に関しては、今私たちがやっているものと重なるところがあります。例えば、形態学的に問題の無い卵を使うときに、説明を受ける側は患者本人がいて、どの辺で分岐していくのかというのが、「人クローン胚研究利用作業部会」の議論を聞いていてまだわからないというところがありました。「人クローン胚研究利用作業部会」の委員会の方が、議論がかなり進んでいることもあり、こういったものも出てきていますし、あるいは「人クローン胚研究利用作業部会」での議論を私どもの部会が参考にしていく部分もかなりあるのか。また、将来的にはスケジュールが終わるあたりで、足並みを揃えるということになっていくのか。もう一つは、委員会同士の意見の調整というものも最終的にあり得るのかどうか、というその辺の見通しがあればお伺いしておきたいと思います。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 私どもの検討の中で「人クローン胚の研究利用」というものの検討を今行っているところですが、これが生殖補助医療目的に直結するのかどうかという問題点を指摘されたことはございます。今、私どもの人クローン胚の方の研究では目的を限定して、これは人クローン胚のみの場合であり、この研究をやって得られる成果が医療にすぐつながるもの、または医療に行くまでにかなり段階のあるものに分けなければいけない。それから、生殖補助医療の提供がそのまま生殖補助医療の研究を通じて受益者にかえってくるものと、全く別の研究や、別の分野の医療に役立つというものを一緒にすることはできないという理由から、分けて考えましょうということで検討しています。
 将来的に「人クローン胚の研究利用」をどう調整するかということですけれども、今のところそれを待つという形でやることは考えておりませんので、むしろ必要があれば見直しをするということでいいのではないかという議論が「人クローン胚研究利用作業部会」の方にもございます。もし必要があれば生殖補助医療の状況を見て見直しをしていき、「人クローン胚研究利用作業部会」の方はなるべく早くまとめて、こちらの委員会の方には、今後も引き続き必要な情報や検討の状況を参考として提供させていただきます。こちらの検討でフィードバックすべきものがあれば、その段階で改めて「人クローン胚研究利用作業部会」の方で検討をさせていただくということでどうかと議論をしているところでございます。

○ 笹月座長
 ありがとうございます。他にこの「人クローン胚研究利用作業部会」に関するご質問はございませんか。よろしいでしょうか。
 それでは次へ進みたいと思います。次はこのガイドラインを作成するに際しまして、どのような形で最終的なまとめをするかということがございます。例えば、内容のあり方、あるいは何を規制するのか、あるいは国がどのように関与するのかなど、もろもろのことがございますけれども、一つ大事な問題として研究の範囲についてどのように考えるのかということです。例えば医学研究、あるいは基礎研究、臨床研究、治療研究といろいろな言葉が使われますが、この私どものミッションとしてのガイドラインに際して、どの範囲をカバーすべきか、ということが重要な問題になると思います。そこでまず、医学研究に関する国の指針の概要につきまして石井室長からお話いただきます。さらに臨床研究に関する倫理指針につきまして厚生労働省の研究開発振興課廣田補佐よりお話をいただき、臨床研究・医療ということに関する範囲を議論したいと思います。まず石井室長よりよろしくお願いいたします。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 資料6でございます。「医学研究・ライフサイエンス研究に関する指針の概要」という資料です。今、笹月先生の方からお話がございましたように、今後この委員会の中でどういった形で規制をするかということ。臨床研究と基礎的研究というさまざまな研究段階に応じた規制があるということから、それがどのような状況になっているのかということを、他の生殖補助医療とは別な所の様子をご説明するための資料でございます。
 大きく二つに分けてありまして、規制のあり方で同じガイドラインでも二つの分類の有無で分けてあります。
 最初に挙げていますのは、機関内における審査を必要とするのに加えて、国の審査を必要としている二つのガイドラインです。「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針」と「遺伝子治療臨床研究に関する指針」の二つです。それから、機関内における審査を要求しているだけで国の審査を必要としていないガイドラインとしては、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」、「疫学研究に関する倫理指針」、「臨床研究に関する倫理指針」の三つを挙げています。この他に、先ほどの配付資料の中にございましたが、「ヒト幹細胞治療の臨床研究に関する指針」というものがございまして、これは現在パブリックコメントがちょうど終わったというお話ですが、この内容は「機関内における審査に加え、国の審査を要するもの」として策定作業がされているということでございます。その内容について、簡単に説明させていただきたいと思います。
 第1回のときにも少しご紹介させていただきましたが、次のページに概要がございます。「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針」の概要ということで、この指針は、ヒトES細胞というものが人の生命の萌芽であるヒト胚を滅失して樹立されるということと、人の体のあらゆる種類の細胞に分化する可能性があること等の生命倫理上の問題を有しているということから、これについての取扱いについて定めた指針でございます。指針の中でヒトES細胞の「樹立」と「使用」と二つございますが、このいずれについても「2.主な内容」の「(3)研究実施の手続き」に、樹立計画及び使用計画の科学的妥当性及び倫理的妥当性について、機関内倫理審査委員会で審査した後、国が確認するという二重審査を求めています。それぞれの樹立・使用については、(4)、(5)にありますように、必要な要件を定めていまして、例えばこの指針の「樹立の要件」、「樹立機関の基準」、「樹立機関の業務」、「樹立の用に供されるヒト胚の要件」といったもの、それから、受精胚を提供する医療機関についてもその基準などを定めています。その内容について倫理審査委員会でそれぞれの指針に則して審査をいただき、それをまた国が確認するというような内容になっています。
 続きまして、3ページの「遺伝子治療臨床研究に関する指針」でございますが、これは疾病の治療を目的として遺伝子又は遺伝子を導入した細胞等を人の体内に投与するということです。平成14年3月に策定されております。「3.主な内容」にございます通り、「目的及び対象疾患」については、遺伝子治療臨床研究が「治療」の側面を有することにかんがみ、医療上の有用性及び倫理性を確保するとともに、その社会的な影響等を踏まえ、情報公開や普及啓発の推進等により、社会に開かれた形で適正な実施を図ることを目的としています。また、生命を脅かす疾患が研究対象になることを明らかにするため、重篤な遺伝性疾患等を対象に規定するということです。内容的には、「被験者の人権保護」、「研究及び審査の体制」などを定めていますが、この研究及び審査の体制の中にございますように、実施施設の長が、遺伝子治療臨床研究の進行状況及び結果について、必要に応じ、総括責任者に対して指示を与えるとともに、厚生労働大臣に報告を行う。また、被験者の死亡その他重大な事態等について、速やかに厚生労働大臣に報告するという、まず報告ということがございます。
 4ページの(5)にございますが、この報告に対しまして、厚生労働大臣は、あらかじめ遺伝子治療臨床研究の実施に関し意見を述べる。また、実施施設の長から報告があった場合には、必要に応じて意見を述べる。実施施設が大学等の場合は、文部科学大臣に連絡するということで、これも報告に対する意見という形で、国の審査が実質的に必要になるという枠組みになっています。
 1ページ目に戻りまして、「機関内における審査のみ要するもの」、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」、「疫学研究に関する倫理指針」についてです。ヒトゲノム・遺伝子解析研究においては、特に慎重な対応が求められるヒト遺伝情報等を取扱うことを踏まえ、研究者等が遵守すべき事項を定め、研究の適正な推進を図るということで、個人情報の保護やインフォームド・コンセント等の徹底、遺伝カウンセリングの実施等などについての規定を設けています。それらについて倫理審査委員会が審査をするという枠組みになっています。
 「疫学研究に関する倫理指針」も同様でございます。多数の研究対象者の心身状態や周囲の環境、生活習慣等についての具体的な情報を取り扱うことを踏まえ、研究者等が遵守すべき事項を定め、研究の適正な推進を図るという目的でございまして、個人情報の保護やインフォームド・コンセント等の徹底などについて遵守すべき事項を定め、倫理審査委員会における審査を求めるといった内容になっております。臨床研究については後ほどご説明があるということですので、省略いたします。

○ 笹月座長
 ありがとうございました。続きまして、先ほどご紹介いたしました臨床研究に関する倫理指針につきまして、所管課の厚生労働省研究開発振興課の廣田補佐にお願いいたします。

○ 廣田医政局研究開発振興課長補佐
 ご紹介いただきました、厚生労働省医政局研究開発振興課の廣田でございます。
 今、座長の方からご紹介がありましたように臨床研究に関する倫理指針について、簡単にご説明をさせていただきます。
 お手元の資料7と机上配付の資料7別冊をご覧ください。2枚目に簡単なポンチ絵をお付けしております。これは今、文部科学省の方からもご紹介がありましたが、厚生労働省が所管をしております医学系研究の指針の相関図(概念図)とお考えいただければよろしいかと思います。先ほどの資料6には全体で5本の指針が書かれておりますが、この内の「遺伝子治療臨床研究に関する指針」以下、この四つについての相関図をお示ししております。なお、先ほど事務局の方からもご紹介がありました「ヒト幹細胞を用いた臨床研究に関する指針」も検討中ということで、この図を作りました際に既に話題に上っておりましたので、図の中に入れてございます。これをご覧いただきますと、いわゆる臨床研究、人を対象とする研究について厚生労働省が所管しております4本、「疫学研究に関する指針」、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」、「遺伝子治療臨床研究に関する指針」、並びにこの「臨床研究に関する倫理指針」でございます。さらに併せて薬事法で所管をしております「治験」というものがございますので、これらがその相関図になっております。
 前後しますが、もう1ページめくっていただきますと、「臨床研究に関する倫理指針」というものがございます。実はこの臨床研究に関する倫理指針につきましては、個人情報保護法の制定に合わせて全文改正を行っておりますので、まず改正前の最初に策定した際の概要についてご説明をさせていただきます。
 臨床研究に関する倫理指針につきましては、従前は先ほど申し上げた「遺伝子治療臨床研究に関する倫理指針」ですとか、そういう個別のものを対象とした指針というものは策定されていたのですが、広く全般的に臨床研究を対象とする指針がございませんでした。そのため、被験者の人権尊重ですとか被験者の尊厳が図られていないのではないかという意見がある一方で、全般的にカバーする指針が無いがために臨床研究の倫理性・科学性の担保というものが上手く図られないために、臨床研究が進まないのではないかというご意見がございました。それらのご意見を受けまして策定されたものでございます。この策定の過程は省略させていただきますが、この指針の目的といたしましては、この「1.目的」に書いてありますように、「医学系研究の推進を図る上での臨床研究の重要性を踏まえつつ、個人の尊厳並びに人権の尊重その他の倫理的及び科学的観点から、臨床研究に携わるすべての関係者が遵守すべき事項等を定めることにより、社会の理解と協力を得て、臨床研究の適正な推進が図られること」ということが目的となっております。
 次に、適用範囲でございますが、お手元の資料の別冊の本文の3ページ目をご覧ください。こちらに「適用範囲」となっておりますが、1は今書いてあることでございますが、「ただし」以下の部分をご覧いただきたいのですが、診断及び治療のみを目的とした医療行為、2としまして他の法令及び指針の適用範囲に含まれる研究というものは除外をさせていただいております。先ほどの1ページ目の図に戻っていただきたいのですけれども、この中で臨床研究の倫理指針がカバーする範囲をピンク色の部分でお示ししています。この内、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」、「遺伝子治療臨床研究に関する倫理指針」、現在策定中でございます「ヒト幹細胞を用いた臨床研究に関する指針」がもし策定されればその部分、さらには薬事法で規定されております「治験」、これらは臨床研究の倫理指針の適用範囲から除外させていただいております。
 続きまして、資料7の2ページ目の「3.内容」でございます。ここに簡単に抜粋を示させていただいております。内容は多岐にわたりますけれども、まずは「実施研究者等が遵守すべき基本原則」を策定しております。ここの具体的な内容といたしましては、「被験者に対して説明し、同意を得ること」、「被験者の個人情報の保護に配慮すること」、「倫理審査委員会において、臨床研究の適否やその継続の審査を実施すること」等を定めております。併せまして、その実施研究者だけではなくて「臨床研究機関の長の責務」というものも規定させていただいております。具体的な内容は、倫理審査委員会を設置いたしまして、臨床研究計画の許可等の決定前にその意見をきちんと聞くことということを定めさせていただいています。
 続きまして次の○(まる)ですが、「倫理審査委員会について、委員会の責務、委員構成、委員の守秘義務等」を規定させていただいております。
 次に、○「インフォームド・コンセント等について」です。本文を後でご覧いただきたいのですが、被験者によるインフォームド・コンセントをきちんと文書で取得するということを定めますとともに、一定の条件のもと、代諾者(インフォームド・アセント)等からインフォームド・コンセントを受けることができるという規定も設けております。これは臨床研究の対象となる被験者が幅広でございまして、例えば意思をきちんと示すことができない小児ですとか新生児という方から、インフォームド・コンセントを受けるということは事実上不可能でございますので、それに対する対応ということでこういう条件を付けさせていただいております。
 また、インフォームド・コンセントに関連する部分でございますけれども、説明的な事項の例を具体的に本文中に細則という形で示しております。その具体例としまして、「臨床研究への参加は任意であること」、仮に「参加に同意しなくても不利益を受けないこと」、臨床研究の意義や目的や方法及び期間などについてきちんと説明をしていただきたいということもお願いをしておりますし、この例示として示した最後の部分ですが、当該臨床研究に伴う保障の有無や内容についてもこのインフォームド・コンセントの中にきちんと説明をするようにと、あくまで具体的な事例でございますけれども挙げさせていただいております。簡単でございますが、これが改正前の概要となっております。制定期日は、書かせていただきました期日を持って制定をさせていただいております。
 次のページの「個人情報保護法施行に伴う」という標題のついた資料をご覧ください。最初に申し上げましたように、この臨床研究倫理指針につきましては、実は個人情報保護法というのは3法あるのですが、個人情報保護法と呼ばせていただきます。その完全施行に伴いまして全文改正を行っております。
 「1.改正経緯」をご覧ください。平成17年4月1日から個人情報保護法等が施行になりましたことに伴う改正です。個人情報保護法におきましては臨床研究など医学系研究というのが適用除外になっております。しかしながら、法律案の国会審議での過程におきまして、衆参両院から、医学系研究というのは個人情報の取扱いには特に適切に取扱いを確保すべき分野ということで付帯決議をされました。これを受けまして、平成16年6月から厚生科学審議会科学技術部会のもとに「医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会」というものが設置されまして、この付帯決議に対応すべく見直しについて検討したところでございます。最終報告は平成16年12月24日に行われまして、これを受けて指針を改正しております。
 指針の改正においての基本的な考え方は、「2.基本的考え方」にお示ししております。臨床研究において取扱われる情報は、基本的に医療情報でもありますことから、国民から高いレベルでの個人情報の保護が求められております。このため、個人情報保護法の適用除外分野であるが、同法との乖離がないように整理をすべきであります。さらに、研究というのは当然学問の自由を配慮しなくてはいけないという観点から、個人情報保護関連3法及び「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」というものが別途存在しておりますので、それを踏まえて全体に見直しを行っております。また併せまして、厚生労働省の所管としては3指針でございますけれども、それら他の医学研究関連指針との整合性に配慮した上で見直しを行っております。なお、見直しの対象といたしましては、あくまでも個人情報関連3法の施行に伴うものという観点から、個人情報保護に直接関連する部分についてのみ見直しを行っております。
 3としまして主な改正点をお示ししておりますけれども、一番大きなところは、前文におきまして個人情報保護法等との適用関係を記載したというところでございます。併せて、研究者等が開示、訂正、削除等の権限を有するものを「保有する個人情報」と定義いたしまして、これらの公表、開示、訂正、利用停止等について、個人情報保護法と同等の責務を規定させていただいております。利用制限や適正な取得等について詳細に、さらに規定させていただいております。また、安全管理措置、苦情処理等に係る法人の代表者又は行政機関の長の責務もこの改正において新たに規定させていただいております。
 なお、付帯決議の中に法制化も含めて検討すべきであるというご意見がありましたため、「4.臨床研究における個人情報保護に関する規定の法制化の議論について」ということにつきましても、先ほど述べさせていただきました専門委員会においてご議論をいただいております。そのご議論をまとめましたのがこの部分でございます。委員会においては、医学研究に関してそれぞれの指針について、個人情報を保護するための個別法の必要性について検討しております。個別法の必要性につきましては、指針の遵守に係る実効性や科学の進歩に柔軟に対応できる必要性などについてご議論がありました。確かに法制化をすべきというご意見もありましたが、他方、法制化をすることによって柔軟性が欠けてしまうのではないかというご議論もあり、なかなか結論に至らなかったというのが実際のところでございます。その結果、3番目のところで結論のように書かせていただきましたが、当面は指針の実効性を確保するための各種の対策、特に改正後の指針の遵守状況のフォローアップ等を行いまして、適時、指針の見直しの場を設けることとさせていただきました。
 5番目は、その後のスケジュールでございますが、平成16年12月28日付をもって告示をいたしまして、平成17年4月1日より施行となっております。以上でございます。

○ 笹月座長
 ありがとうございました。いわゆる医学研究・ライフサイエンス研究に関する指針、臨床研究に関する倫理指針の二つのお話を伺いました。これは最初に申しましたように私どもの生殖補助医療研究に関するガイドライン策定にあたって、どこまでを対象領域とするかということを考える上での参考として、ご説明をいただいたわけです。
 はい、どうぞ。

○ 中辻委員
 資料6の審査の体制について私の理解で間違っていないかを確認をしていただきたいのですが、「機関内における審査に加え国の審査を要するもの」の中に、ヒトES細胞と遺伝子治療の二つがあります。ただ、実際に運用が行われるときの研究を行うものにとっては、二つでかなり違いがあるようにも見えるのですが、それをお聞きしたいと思います。
 つまり、ヒトES細胞に関しては、すべての研究計画について文部科学大臣は科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会、実際には専門委員会での審議を求めて、その結果で確認をする。つまり、その承認、実質的な審査が必要であるということ。遺伝子治療に関しては、私は詳しくはないのですが、新規性のあるもについて厚生科学審議会の意見を聞くということ。安全面や有効面について新規のことがある場合は、実質的な審議が行われるけれども、そうでない場合は研究の方が先行して報告するということでよろしいのでしょうか。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 厚生労働省の方での審査は私も詳細に把握しておりませんが、私どもが連絡を取りながらやっている理解では基本的にはその通りの運用になっていると理解しております。

○ 笹月座長
 少し補足いたします。私はその遺伝子治療の、例えば癌の遺伝子治療の主査をおおせつかっております。初めは、すべての遺伝子治療に関してはワーキンググループできちんと審査をしていたのですが、徐々に申請が増えてきて、全く同じベクターを使って全く同じ病気に対して行うというものに関しては、全く新規性がないということで簡便な方になりました。新規性があるかどうかをきちんと検討して、新規性があればそれぞれの申請された課題ごとにワーキンググループを設定し、議論して、最終的には審議会で承認するということです。

○ 鈴木委員
 関連する質問で、全く同じことを聞こうと思っていたのですが、ヒトES細胞の審査のやり方ともう一つの遺伝子治療臨床研究に関するものとがありますが、前者は位田先生も委員をされていて、申請の書類があがってきて委員会がきちんと設置されている。その委員会というのが、特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会ですね。そこで一件ずつ審議がなされていると理解しています。それでよろしいわけですね。もう一つ、後者の方も委員会としては同じレベルのものなのですか。それが一つと、書き方として厚生労働大臣に提出して意見を求めると、もともと書かれていますが、結局、運用は同じになっているのかということの、このレベルの違いがよくわかりません。それから、もう一つは「ヒト幹細胞を用いる臨床研究指針」に関しては、案としては後者の厚生労働省大臣に意見を求めるパターンの案で出てきているので、ここの違いをもう少しはっきり教えていただきたいです。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 ヒトES細胞につきましては、今お話があった通りでございます。基本的には文部科学省で審査を行うにあたり科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会の意見を聞くという中で、指針適合性についての意見を求めるという形で運用しています。
 遺伝子治療の方につきましては詳細を把握していないのですが、この場合は医療上の有用性の問題といったものがあります。そういった点も含めて新規性などの有無をご議論されるのに、委員会の場をお使いになられているということと理解しています。先ほどお話がありましたように、新規性のないものについては、手続上は意見を言うにあたり、その必要がないという包括的な判断がなされ、そういう形で審査を省略しているということです。基本的に、新規性がなければ同様の枠組みで行なわれていたものと理解しています。

○ 鈴木委員
 レベルとして同じなのかということが気がかりなのですが。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 レベルというのはどういう意味ですか。

○ 鈴木委員
 つまり、権限のレベルというのでしょうか。例えば、前者のヒトES細胞に関しては義務付け方が非常に強く、後者の方はややゆるい。つまり、申請しないで厚生労働大臣に意見を聞かないでやってしまった場合はどうなるのかということです。

○ 佐藤母子保健課長
 正直に申し上げますと、今日はそこまで話が進むと思っておりませんでしたので、十分に知った担当課が来ておりません。間違ったことを申し上げても申し訳ないので、担当の課を呼んで、次回以降に報告をさせるということでいかがでしょうか。

○ 笹月座長
 実際にこの遺伝子治療の委員会というのは、安全性と臨床的な有効性の二つを見ています。特に安全性を検定するというのが遺伝子治療の一番の目的でありまして、そのバックグラウンドとして、そのプロポーザルに科学的な妥当性があるかを実験動物などでやられています。倫理性があるのか、個人情報保護法に抵触しないかなどを審査する委員会であります。これに申請せずに遺伝子治療を行うなどということは決してあり得ません。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 今、お話がありましたように指針の位置づけについては基本的には同様でございまして、法律で規制するか、ガイドラインで規制するかという違いがございます。法律は強制力を伴います。ガイドラインはあくまでも自主的に遵守すべき事項として示したものでありますので強制力はありませんが、基本的には指針に反した場合、公表するなどの措置があります。それから、実効性を担保するための措置として、特に国のガイドラインの場合は、遵守しなかった場合、罰則ではございませんが必要な措置として、例えば研究費の助成をしている場合、委託費の委託をしている場合には補助条件や委託契約の条件という中で指針の遵守というものを義務付けています。国費を使う場合、国のガイドラインに従わない場合は、その条件を満足していなかったという形でそれに対する措置を取るということがございます。その強制力という意味では、法律とは全く違いますけれども、実効的にそれを機能するための措置というのは国の中で設けています。そういう意味では、ヒトES細胞の指針と遺伝子治療の指針とは、基本的には同様の位置付けと理解しています。その内容の手続きについては、さまざまな表現がございますけれども、国の審査を要するというものは、これを怠った場合、やはり同様の扱いになります。これはヒトES細胞であろうとも遺伝子治療であろうとも全く同じと理解しています。

○ 笹月座長
 よろしいですか。他にどなたかございますか。

○ 鈴木委員
 二つ質問させていただきます。平成15年にはもう一つ「機関内倫理審査委員会のあり方について」というものが出ていますが、あれは指針でもなく答申のような扱いなのかということが一つ。それから、今度ここの委員会で作る指針よりは、臨床研究に関する倫理指針というのが上位にあたるのかどうか。つまり、上に臨床研究に関する倫理指針があってその細目という形なのかということ。先ほどのお話ですと、それとは全く別のもののような感覚があったのですが。

○ 笹月座長
 最初の方から。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会で「機関内倫理審査委員会の在り方について」という報告書をとりまとめております。倫理審査委員会はいろいろなガイドラインで出ておりまして、その中でさまざまな問題点や課題等が指摘されるものについて考え方を示したものでございます。ガイドラインのような性格であり、守りなさいということよりも、むしろ考え方をきちんと示して、「有効に機能させるために」という報告書としてまとめられたものでございます。内容的には遵守するというよりは、考え方を整理されて当然このようにやっていただき、それぞれのガイドラインの中でそれを参考にきちんと守っていただくという性格のものでございます。

○ 廣田医政局研究開発振興課長補佐
 二つ目のご質問に対するお答えですが、臨床研究倫理指針につきましては、先ほどもお話をさせていただきましたように、他の指針との上位・下位という概念はございません。臨床研究倫理指針というのは、人を対象とする試験については網羅的に対象とするのですが、他の指針もしくは法令等がある場合は、そこは除外をするという形を取らせていただいております。そのため、この場で先生方にご審議いただいて策定するものがどういう名前になるのかわかりませんが、できました暁には、最初に示した図の中にもう一つ丸が増えるというのが、私の今のところのイメージでございます。

○ 笹月座長
 その点が今日これから議論すべき範囲なのですが、既存の臨床研究倫理指針というものでカバーできることなのか。それとも、例えば「遺伝子治療臨床研究に関する指針」のように別途指針を設けて枠の外とするのか。これが一つ議論すべきことであります。現時点では上位なのか下位なのか、あるいは含まれるのかということは、これからのテーマであるということです。

○ 吉村委員
 そもそも用語の定義について書いていないと思います。おっしゃる臨床研究という定義が、疾病の予防や診断、治療法の改善といったことを目的として実施される医学系の研究であり、人を対象とするというと、我々が医療を行う場合にやっているのは、すべて医学的臨床研究になってしまいます。例えば、顕微授精も臨床研究であるということになります。その有効性や効率性、安全性が確保されていない場合に、臨床研究と呼ぶと定義されているのでしょうか。その辺が非常に難しいところだと思うのですが。

○ 廣田医政局研究開発振興課長補佐
 資料7の別冊に細則も含めて全文を示しておりますが、「適用範囲」のところをご覧ください。診断及び治療を目的とした医療行為というものは除外をさせていただいています。今、先生からありました臨床研究の用語の定義というのは、4ページ目の「(1)臨床研究」となっておりますが、このように書かれております。その1ページ前に適用範囲として「この指針は」というところの「ただし」の部分ですが、「次のいずれかに該当するものはこの指針の対象としない」とさせていただいております。診断及び治療のみを目的とした医療行為の部分については適用の除外であるという形で定義をさせていただいております。

○ 吉村委員
 そうすると、適用は何になるのですか。私はそこが非常にわからないのです。言葉上は非常によくわかるのですが。

○ 笹月座長
 それはこういう意味でしょうか。診断及び治療を目的とする医療行為というのは、既に診断法としてあるいは治療法として確立されて、広く行われている行為ということですか。

○ 吉村委員
 そういうことですね。

○ 笹月座長
 もちろんこの外ですと。それを今から開発しようと。安全性や有効性といったものを。

○ 吉村委員
 基本的には安全性、有効性というものが保障されていない医療に関しては臨床研究と呼んでいいという、だいたいの定義はそのような感じでよろしいのですね。私もそのように理解しているのですが、それで本当にいいのかということです。

○ 笹月座長
 その件に関しましては、その他の用語も同様ですが、人それぞれでイメージが違うので、そこをきちんと定義してから議論するというのも一つですし、最後にガイドラインを作るときに、きちんとその定義を明示して、項目をきちんと立ててガイドラインを作るということが大事だと思います。ですから今これを厳密に議論していますと長くなりますので、もう少し議論を進めて、あるコンセンサスに到達すればと思います。

○ 吉村委員
 わかりました。

○ 後藤委員
 私たちの大学の倫理委員会では、いつもこのことが問題になっているものですから。診断及び治療のみを目的とした医療行為というものは、治療を行った臨床的な行為であるものを、後で分析したり統計したりすることについては、適用範囲外であると解釈してよろしいのでしょうか。普通に診断及び治療を行ったものを、後で分析研究することについていつも問題になるのですが、それは適用外ですか。

○ 笹月座長
 例えば、私どものセンターではそういうものも臨床研究倫理委員会に出して審査してもらっています。それは、個人情報が含まれますので、こういう手術をした人、あるいはこういう放射線を当てた人たちがどういう経過をたどり、どちらが良かったかということになりますと個人情報が入りますので、必ず倫理審査委員会を通しています。

○ 後藤委員
 個人情報の点で倫理審査を受けなければいけないということですね。

○ 笹月座長
 そうです。このガイドラインの中には、安全性、有効性、科学的な妥当性、倫理、個人情報保護などのどこかに問題がないかということが含まれています。よろしいでしょうか。

○ 町野委員
 これを作るときにも、他のガイドラインとの整合性を問題にすべきだと思いますが、正直に申しまして、疫学研究にしろ、臨床研究のガイドラインにしろ、すべていろんな問題を混在させておりまして、かなり悪い指針だと思います。
 先ほど先生が整理されましたが、用語の定義の臨床研究の定義のところをご覧いただきますと、そこでは人体の一部も入っておりますから、これはその人の安全性に関するものではないのです。つまり、データなどすべて対象になっておりますから、臨床研究とは全然関係ないものがこの中には入っているのです。臨床研究のときには、個人情報保護も問題になるということで一緒にしてしまっただけで、疫学研究の倫理指針のところも似たようなところを全部やっています。先ほどのご質問ですと、追試や後から調べたりするときは、基本的には疫学研究の倫理指針だろうと思います。しかし、やはりこれで見ると、例えば摘出した組織を調べるということも、こちらの対象になるような書き方になっています。全体を見ないでそれぞれを作ってきていますから、非常にややこしいやり方になっており、これにかかわっていたら全然進まないだろうというのが私の感想です。

○ 笹月座長
 ありがとうございます。参考として今日ご提示いただいたわけです。よろしいですか。
 それでは先に進みます。資料9をご覧ください。ここに前回示した、この委員会を進めていく上での検討事項のたたき台というのを事務局で用意していただいておりましたが、それに少し手を加えたリバイズドフォームがこの資料9です。たたき台の1ページ目は、「1.ガイドラインに定める内容のあり方」で、何を規定するのか、国の関与のあり方について、そして「2.規制対象の範囲」です。2ページ目は「(2)具体的な規制対象の範囲をどのように考えるか」、四角で囲んだ「(3)研究の範囲についてどのように考えるか」、「1.研究と医療の境界について」、「2.基礎的研究と臨床研究の範囲について」です。これをきちんとしていかなければいけないということでありますので、この「研究の範囲について」ということで議論を進めていきたいと思います。佐藤課長のほうから、資料8と資料9についてご説明いただきます。

○ 佐藤母子保健課長
 ただいま笹月座長の方からお話がありましたように、資料9は前回お示ししたものでございまして、たたき台的にこのように議論していただけたらというものです。
 振り返ってみますと、この4回というのは正直申しまして、ほとんど勉強会的に進んできたわけですが、いよいよ今日のこの時間ぐらいからご議論を進めていただくことになります。その際にどこから始めるかというのはいろいろあったわけですが、事務局内で話し合いまして、先ほど笹月座長からもお話がありましたように、2ページ目の黒枠で囲った部分、つまり「研究の範囲についてどのように考えるか」というところからスタートしてはどうかということです。笹月座長からのお話の繰り返しになりますが、資料8として抜き出して、今日準備をさせていただいたわけです。
 最初に前提的なお話をしたいと思うのですが、今日この時点でこの部分について結論を出していただきたいという意味で提示しているわけではありません。これから何回かご議論いただく過程で、きっかけとして、こういうところからご議論いただければと思っております。くどいようですが、今日この場でこの問題について一通りの結論のようなものをいただきたいという意味で提示したのではないということが一つ目です。
 二つ目は、先ほど吉村委員からご発言がありましたように、あるいは町野委員からお話がありましたように、これまで使われていた臨床研究という言葉が、例えばこの委員会の中でも引用されて、整合性を取って議論されるべきなのかどうかということ。それから、臨床研究という言葉があるとするならば、基礎研究という言葉が対になる言葉なのかどうか。そういったことを議論のスタートにあたってお考えいただければと思います。参考までに、資料8の最後のページをご覧ください。これが議論のスタートになるかどうかということはおきまして、行政としても結論を持って臨んでいるわけではないので、ご意見をぜひとも頂戴したいと思っておりますが、総合科学技術会議の「基本的考え方」を素直に読み下すとこのような図になると思い書いたものです。それから、右側に日本産婦人科学会の考える姿、あるいは一般的な医学・医療の世界の研究というのは、このようなものではないのかと書いたものです。これも前提として申しますと、これで決まりですとか、こうしてくださいと言っているのでは決してなく、この考え方自体に問題があるかどうかも含めて議論のきっかけにしていただきたいと思います。
 いよいよ中身の話をいたします。総合科学技術会議の「基本的考え方」というのを仮にバイブル風に読み下すとするならば、非常にシンプルに生殖補助医療と呼ばれるものと生殖補助医療研究を分けているように思われます。それは何かと言うと、母体内に戻すのか戻さないのか、比較的シンプルに申しますとそこで切り分けているように思います。その理由に相当するところをそれぞれ書いておりまして、生殖補助医療はヒト受精胚を必要に応じて体外で培養後に移植する等の文言があります。これは基本的考え方の3ページと8ページにあるものでございます。生殖補助医療研究のところで見ますとヒト胚を損なうことになるうんぬんとあり、例外的に容認される場合にも母体内には戻さないという説明がありますので、何度も申しますが、金科玉条風に杓子定規に読みますと、比較的総合科学技術会議はシンプルに医療と研究を分けているように思います。つまり、戻すか戻さないかということで両者を分けているように思いました。この考え方が正しいかどうかも含めてご議論いただければと思います。
 右側の説明をさせていただきたいと思います。日本産科婦人科学会等でお考えいただいた、あるいは今まで出された会告等を読んで図にしてみますと、全く同じ面積に切れるかどうかはともかくとしまして、研究と呼ばれる分野であっても母体内に戻す部分がありそうだという印象を持っております。もしかすると、医療の分野でも母体内に戻さないということもあるのかと考えました。これは概念図ですから、現実にはこんなことはあり得ないということもあるでしょうが、そういう意味では両者は多少差があるようです。どちらが正しいということもないように思います。もし総合科学技術会議の「基本的考え方」に立つならば、母体内に戻した時点でどんなものであっても医療なわけですから、臨床研究や基礎研究といった言葉で分類すること自体があまり意味をなさなくなってくるわけです。右側の図にありますように、日本産科婦人科学会のような、一般の医療や医学の世界で言われるような比較的普通の考え方で言うならば、グリーンの部分の赤字で囲った部分が、例えば臨床研究であり、赤で囲っていない部分が基礎研究ということで分けられるのかもしれません。このようなことを念頭においていただいた上で、8ページの(1)や(2)のご議論をしていただければと思います。
 ただ、この流れについても私どもとしてみれば、先ほどのシェーマを見ていただいた上で、1ページ目の議論のようなこと自体が無意味だというご意見もあるかもしれません。こんな考えもあるということであれば1ページ目の議論に移っていただきたいと思っております。いずれにしましても、今日この場で全部を一通りやっていただくというつもりはありませんので、自由にご意見を頂戴できればと思います。

○ 笹月座長
 ありがとうございました。

○ 石原委員
 今のご発言に対しまして、少し混乱を招く部分があるのではないかと思います。私は日本産科婦人科学会を代表してきているわけではありませんが、ここに出てまいります研究の一環うんぬんという話の伏線としてありますのは、研究的治療と日常的治療あるいは研究的医療と日常的医療という辺りからきている部分があると思います。いわゆるEBM(Evidence Based Medicine)に基づいて、例えば癌治療ではこういう薬を使い、こういう治療を行うと、疫学データとして明らかに有用性が証明されているものに関しては日常的診療(あるいは日常的治療)として行われるが、そうしたエビデンスの蓄積されていないものは研究的診療(あるいは研究的治療)として行われるわけです。ただ、生殖医療の場合には、そういった意味でのエビデンスを作り上げることは方法論的に不可能な部分が多いので、現実にはできません。従って、特にこういった先進的医療のものにおきましては、日常的医療というのは慣習的なものに基づいて日常的診療(あるいは日常的医療)になっているにすぎないということは否定できません。しかし、そういう状況であるとしても、例えば極めて先進的なものというのは日常的ではなくて、研究的医療(あるいは研究的治療)に過ぎません。そういう文脈の下において使われている言葉であり、基礎的研究と臨床研究という区分けの仕方というのは、少し文脈が違うと思います。それを比較するというのはなかなか難しいのではないかと思うのですが。

○ 佐藤母子保健課長
 まさにそういうところをお伺いしたかったのです。先ほど廣田から説明しましたときにもありましたが、臨床研究という言葉一つとっても、誰がどういう立場でお話になるかによって時々違うことがあるという意見がどなたかから出たと思います。そういう意味で、ここに「日本産科婦人科学会の見解」という形で書きましたが、私どもは通常の癌や内科、外科などの治療でいう臨床研究と、特に生殖補助医療における臨床研究という言葉の意味は違うのではないかと思いました。しかし、差し当たり、たたき台を出してお示ししないといけないといましたので、このように書きましたが、むしろ違いがあるというのであれば、そこを教えていただき、その方向で私どもも言葉遣いを注意しながら、この検討会では今後こういう言葉を使いましょうと言ってお決めいただければと思っております。先生のおっしゃった意味を理解した上で、わざとこういう資料を作ったつもりです。

○ 笹月座長
 石原委員がおっしゃったところで私が理解できなかったのは、生殖補助医療では、他の例えば癌と抗がん剤の話のようなものと違ってEBMが取りにくいとおっしゃったのはどういう意味ですか。

○ 石原委員
 一つの理由はいわゆるコントロールスタディというものをおく場合、おかなければいけないわけですが、その明確で適切なコントロールをおくことが恐らく不可能であろう。つまり、しばしば言われますのは自然に妊娠するという言葉があるわけですが、自然には妊娠しないのです。何もなければ絶対に妊娠しない。そこが何をもって自然であるというところには価値観が入ってきますので、例えばその方の社会的な、あるいは文化的な背景によって何を自然に妊娠と考えるかというのが違いますし、妊娠すること自体が、例えば神さまの思し召しだと思う方にとりましては妊娠しないことというのが不妊ではない。そういう話になってしまう部分があります。

○ 笹月座長
 ですけれども、コントロールが取れないという意味ですと、例えば遺伝子治療臨床研究の点でも同じでありまして、ウィルス由来のベクターに、例えばある遺伝子を挿入して治療研究を行うわけです。本当の意味のコントロールならこの遺伝子の入ってないベクターだけを与えたものと比較すべしということになりますが、そんなことは実際にはできないわけで、ちゃんと遺伝子の入ったものを与えて、その安全性、臨床的な有効性、科学的根拠の有無、倫理性、個人情報、そういうことを問題にするわけです。そして数を蓄積していけば、例えばこういうベクターだとこういうサイドエフェクトがある。白血病が実際に発生したのが11例中3例あったなど、エビデンスが蓄積されて本当にそれが一般的な治療であるかどうかは、治療臨床研究があってこそ成立するわけですから、私は生殖補助医療というものを同じことだと思っています。

○ 石原委員
 先生がおっしゃいますように、例えば有害事象であるということなどの評価については可能だと思うのですが、問題はエンドポイントあるいはアウトカムの評価ということについての規定が非常に困難になる点だと思っております。それは多様な価値観を背景としてしまいますので、唯一のエンドポイントや唯一のアウトカムというのを規定すること自体は方法論的に非常に困難なのです。例えば、5年生存率であるというような形のものを出せるかと言いますとそこが難しいので、我々はどういう話になるかというと、必ず出てきますのは妊娠率なのです。妊娠率がそのアウトカムの評価あるいは、エンドポイントとして出てくるわけですが、その妥当性というのが果たしていいのか、かなり問題がある部分ではないかと私は思っております。

○ 笹月座長
 それはそういうファクターをいくつか増やしていくべきで、例えば妊娠率、正常出産率、あるいは先ほどの資料の最後にありました国立成育医療センターで示されたような、数年たった人たちのこの治療法に由来すると思われる、例えばメチレーション問題に由来するレチノブラストーマ発症率など、いろいろなことをファクターとして挙げれば、何も一つのアウトカムではなくて、そういうことを検証するのがまさに治療研究だと私は思います。このことは特にこのテーマに特有ではなく、もちろん遺伝子治療も特有な問題がありますし、生殖補助医療もたくさん特有なものがありますが、治療研究という点においては私はそう区別する必要はないと思います。

○ 町野委員
 また乱暴な意見を言うと言われるかもしれませんが、「臨床研究」という言葉にこだわることにどれだけの意味があるのかということです。これには臨床研究の倫理指針の適用があることは明らかでしょう。用語の定義の中に、個人を特定できるヒト由来の材料と書いてあるので、卵子とか精子がそうではないという理屈は全然ないわけですから、これは適用があるのははっきりしている。だからどうだというのがここの問題なのです。臨床研究の範囲についてここで議論することにどれだけの意味があるのか。あとから考えればすむことです。もしこちらの方が具合が悪いということなら変える必要があるし、こちらに関係なくこちらの指針を作ればそちらでやるのだという優先順位を作ればすむだけの話ですから、あまり意味がないと思います。そして先ほどの資料ですが、もともとこれがバイブルかどうか知らないし、私にはバイブルを解説するような能力もございませんので、それは位田さんにあとを補ってもらいたいが、基本的にはここでやらなければいけないのはこの参考2というものです。文部科学省の方の資料で書き出してあるその部分の前段のところでしょう。結局生殖補助医療の研究の目的で胚を作る、受精胚を作るということがどのような手続きによって許されるかという問題を議論すれば足りるでしょう。だから、そのときに戻すかどうかにかなりこだわっておられました。例えば着床前診断のときに、受精卵・受精胚を取り出してそれを調べた上でオーケーなら戻すのだから、臨床研究と言えないのではないかと、産科婦人科学会が書いると言われるが、それもたいした問題ではないのです。それはあるというだけの話ですから。あまりその辺を議論する意味が理解できません。どうして最初にそれを議論しようと言われたのか、私はまだ理解のできないところです。

○ 笹月座長
 大事なことは、町野先生がおっしゃるように臨床研究の定義は何だということを言っても意味がない。最終的なところで問題になるのは、このガイドラインはどこまで面倒を見るのかという点です。要するに、遺伝子治療の場合にはベクターを作り遺伝子を導入して、このベクターの安全性や、人から人への感染性など、そのようなところはインビトロ(体外)でやる研究です。ところが、遺伝子治療研究の場合には、これを実際に患者に与えて、有害事象なり臨床的効果なり、そういうこともきちんと検定して、しかも数年にわたってフォローする。そういうことまでそのガイドラインでやっているわけです。ですから、この生殖補助医療をどこまでやるのか。遺伝子治療で言えば、ベクターの安全性あるいはベクターを作るというプロセスだけをやるのか。それとも人に与えるところまでやるのか。そういうことなのです。もしこのガイドラインでそこをやらないとすると、遺伝子治療で言えば、ベクターを一生懸命作ったが少しも先へ進めない。やはり人に戻すところのガイドラインが私は必要になるのではないかと思います。ですからそういう意味で、この臨床研究という言葉でどこまで含めるのか。それはすなわち、臨床研究というよりもこのガイドラインがどこまでやるのかということだと思います。端的に言えば、人に戻すところはやりませんと言えばそれはそれで結構ですが、では人に戻すところは誰がどうやって決めてその安全性を担保するのか、あるいは保障するのか、もう一つガイドラインを作るのかということになるだろうと思います。ですからそこはぜひ決めておかなければいけない。だから言葉の問題ではなくて中身の問題としてということです。

○ 石井生命倫理・安全対策室長
 資料8の1ページ目と2ページ目の説明を省略していましたので、若干補足させていただきますと、町野先生からもお話がありましたように、言葉の定義をするのがこの資料の目的ではなくて、タイトルにありますようにガイドラインの対象とする研究の範囲をどうするのかということです。その研究という言葉も医療という言葉と一緒になっている部分がありますので、研究と医療の両方を持っている部分もあるということもあります。そこを、どこまで見るのかというのを整理したいというのがこの資料の趣旨でございます。
 便宜上、基礎的研究・臨床研究という言葉を使っていますが、どういう議論をするのかというような、その前提が我々もはっきりしないところがあります。むしろ産婦人科の先生方にここで議論するための、言葉の共有をある程度、定義というよりは議論の前提を揃えておく必要があると思うのです。そういう中で、今回議論のある生殖補助医療研究の範囲は何か。何かという中には実際に先ほど総合科学技術会議の意見具申にあったように、体内に戻さないものを研究と呼び、戻すものを医療と呼ぶということであれば、その医療は見ないというのも一つの整理です。しかしながら、今、日本産科婦人科学会の会告に基づいて登録しているものの中には、研究的意味合いをもって医療行為を行っているものもあり、実際に発表されているものもございます。
 それでは、こういったものを外にするのかどうか、それをどうしますかということで、(1)では言葉の上で臨床研究と言っていますが、それをまずどういった分類が可能なのか、どういう定義でここでは議論しましょうか、ということをお伺いしたいということで(1)に幾つかの例をあげています。これをすべて分類してほしいということではなくて、例えばこういうものについてみたときにどういう整理が可能なのか、それがまず一つ目にお伺いしたい点です。
 それから、(2)で「基礎的研究と臨床研究の境界は、医療としての安全面の考慮が必要となる作成した胚の体内への移植を伴う研究」と書いています。これは言葉の問題ではなくて、体外でやる場合は安全面に問題はない。基礎的研究としてそれが倫理的に許されるかどうか。実際の夫婦間以外の配偶子を受精させるという行為をする。そういったものについて提供者に対して、どうインフォームド・コンセントするかという問題が非常にありますが、一方で体内に移植しない以上、安全面の問題はない。ところが、実際に体内に移植する場合のさまざまな問題は別な問題だと思いますが、これは医療上の倫理の問題としての安全面の問題なのかもしれません。そういった面を、例えば今の臨床研究の倫理指針で見るのでここでは必要ないという整理をするのは一つだと思います。それがそういう整理でいいかどうかというものを含めて、こういう線引きができるのかどうかというのが(2)でございます。
 そういう意味で「2.ガイドラインが規定する研究の範囲について、(1)基礎的研究及び臨床研究を対象とすることとするか」と書いてございますが、ガイドラインをどこまで見るのか。そして体内への移植が伴う場合、安全面の問題を検討するのか。あるいはむしろ、そこはここでは抜いて倫理面だけに絞ってやり、倫理面の意味が違うのでそこは整理しましょうということであれば、そういう整理もできるのではないか。臨床研究と臨床応用(医療)も言葉の上でやっていますが、研究的意味合いをどこかで線引いて、先ほどの臨床研究の倫理指針の対象にもならない。医療のみを目的とするものと医療のみではなく研究の意味合いがあるものの境界みたいなものを、仮に臨床研究も対象になるなら、そこも線引きをしなければならない。そういった点についていかがかというのが(1)のあげていることでございます。
 次のページの(2)で、例えば基礎的研究のみを対象とし臨床研究は対象としない、体内に移植しているものはこのガイドラインの対象としないというような場合、どのような考え方で整理をするのか。今私が申し上げましたように、医療の意味合いが強く、倫理的な意味合いも全く異なり、提供者に対するインフォームド・コンセントが全く異質であるということから、それは整理しましょうという考え方があるのかどうか。そうした場合、安全面の問題がないので、二つ目にありますように倫理面の基準についてのみ検討するということでいいのかどうかといった点。この場合、臨床研究についてはなぜ必要ないのか。例えば、他での倫理臨床研究に関する認識に見られるので必要ないですという整理でいいのか、安全面についてどうなのか。こういった点をもう一つ決めたらすべて解決するのかもしれません。順々に検討していかないといけないのかということもあり、とりあえず項目としてあげさせていただいたというのが資料の8の趣旨でございます。以上でございます。

○ 笹月座長
 ありがとうございます。ですから町野先生がおっしゃったので皆さんは了解できていると思うのですが、言葉を定義するのではなくて、このガイドラインはどこまで見るのかということをきちんとして、そのときに基礎研究のところでやめるのか臨床研究まで入るのかという臨床研究の定義は何なのかという問題もありますので、そういう言葉のディスカッションではなくて、本当に母体に戻すところも見るのかどうかということが一番のテーマであり、そのことが最終的な問題なのだろうと思います。本当は、初めは配偶子・精子・卵子それに関する問題点、例えば提供ということを含めて、研究に関する問題点を列挙してきちんとガイドラインにする。今度は胚についてそういうことをやるということを順々にやっていけば、それがすっきりしたやり方だと思うのです。しかし、どこまでそこをやるのかということが常に問題になります。そういうことを議論しているうちに常に言葉の問題が出てきて、不毛とは言いませんが、繰り返し同じ議論が出てくるのを避けるために、我々はそこはちゃんと認識しております、気にしておりますということを皆で了解するためには、最初にこういうことを定義したということが事務局の意図だろうと思います。私もそれが良かろうと考え結果的に今日こういう議論となったと思います。

○ 町野委員
 要するにどこまでやるかということが一番問題だということです。それによってこの委員会のミッションというのは決まっているわけです。つまり、内閣府総合科学技術会議の報告書に基づいてこれをやれということは決まっているわけですから、それはやらなければいけない。そして、それ以外あるいはそれ以上やってはいけないのかという問題ももちろんあります。やる必要はあることはあります。この委員会でやはり決められる問題であろうという観点から申しますと、この報告書自体の考え方というのはとにかく研究目的で、つまり人を出産させる目的ではなくて、研究目的でヒト受精胚をつくることは許されるということから始まっているわけです。これはかなり大きな問題なのであり、そうすると最初に議論すべきなのは、生殖補助医療研究の目的でと書いてあるのですから、生殖補助医療研究がどこまでかということをまず議論するのが先決なのです。その次にその手続きと、そして元に戻すかどうかという一番重要な問題が先ほど出てまいりました着床前診断の問題です。そこまでこのガイドラインでやらなければいけないのかという問題になりますので、その辺を認識していれば大きな問題はないだろうと思います。
 ただ最初に入り口の所で言葉をいろいろ言ってもこれは他のガイドラインでこういう言葉を使われていますとそういうことを言っても、これを作ったときはそんなことを考えないで作っているわけですから。臨床研究なんて言葉は一言もこの中ですることはないでしょう。だから、いちいち何も言っていないことをここで取り上げて議論するよりは、やはり何をやらなければいけないかを議論する方が先だろうというのが私の趣旨です。

○ 笹月座長
 皆さん全員そう思っていると思うのですが、先ほど申しました理由でこういうアイテムが出てきたということでご理解をいただければと思います。

○ 吉村委員
 町野先生のおっしゃることは大変よくわかります。現時点では厚生科学審議会の生殖補助医療部会の結論はまだ全く出ておりません。それも少し関係してくるでしょう。
 それから先ほど出ましたが、着床前遺伝子診断ということがあります。これらは別々に考えていかないと少し難しいところがあります。私が結論を出してはいけないのですが、例えばここに書いてある具体的な研究です。その場合の着床と着床率を上げるための研究、つまり着床のメカニズムと着床率を上げるための研究以外の研究はやはりここの委員会のミッションだと思うのです。ですからこういった研究をどうして、どういう条件下でできるかということを決めていくのは第一のミッションだと思うのです。どうしてかと言いますと、この総合科学技術会議が考えつかないような提言をしたというところがあるのです。
 これは生殖補助医療研究のためのヒト受精胚の作成を許したということが非常に大きな問題です。これは研究ですから、体内に戻さないということを前提にしているとすると、「どんな精子を使ってもどんな卵子を使っても胚を作っていいですよ」、「生殖補助医療の研究であったら使ってもいいですよ」ということを言っているわけです。そうしますと受精率の向上や受精のメカニズム、あるいは胚の発生や、それからその前の配偶子の保存や凍結など、そういった研究ができるようになるわけです。卵子あるいは精子をいただいて、そういった研究ができるのは非常にいいことなのです。それは体内に戻さないということを前提にすれば全然問題ないのではないかなと思います。どういった人からどういう条件でいただくかということが大きな問題となってきます。手続上には大きな問題が残ると思います。今文部科学省でやられているのもそういったところが非常に大きな問題とされています。一方、着床に関しては、これは非常に難しい問題が絡んできます。このヒト胚を体内に戻すということになりますと、今夫婦間では普通に戻しているのですが、非配偶者間の体外受精は許されておらず、胚移植も許されていないのです。厚生労働省の生殖補助医療部会の答申だけは出たが、その結論が出ていない現時点においては、配偶者間でその着床胚を戻すといったことが可能になるかもしれません。要するに、夫婦の精子であり卵子を使えば戻すことができるので、着床の研究ができるかもしれないということになります。着床研究ということになりますと、やはり精子と卵子をもらってつくった胚を誰に戻すのかということが問題になります。他人の卵子を戻すということになりますと、これはまた許されないことになってきますので、その辺の研究ができないのではないかと思います。町野先生がおっしゃいましたが、着床前診断というのは、私どもは産科婦人科学会で唯一臨床研究と呼んでいるものです。例えば顕微授精も臨床研究かもしれないのです。皆さま方から言えば、安全性は完全に確立しているわけではないし、いろいろな点から言うと臨床研究かもしれないが、これだけ臨床応用されてしまいますと、今頃臨床研究というのも不自然です。もう何百万人という人が生まれてきているわけですから。日本でも65人に1人が体外受精で生まれています。そういったことになると今さら何が臨床研究かということになります。
 ところがこの着床前遺伝子診断は全世界で5,000例とか6,000例行なわれていますが、日本ではまだ行われていなかったということから臨床研究にしたのですが、現在問題になっているのは、これが本当に妥当かどうかということです。安全性がどうかということがまだ確証されていませんが、やはりこの日本において着床前診断を行っていいのかどうかという社会的な問題なのです。これは医学的な問題というよりは社会的な問題なのです。そうするとこの委員会で話し合うには私はそぐわない。これはもっと一般の方も入れていただいて、そこで本当に日本として着床前診断を行なっていいのかどうかということを検討すればいいということなります。ここに書いてある研究をやる場合、どのような条件下でやるのかを決めるのがこのミッションであり、着床に関しては胚を戻せないという現実があるわけですから、これは夫婦間でしかできないというような限定をつけるなど、そういったことが必要になってくるのではないかと思います。

○ 笹月座長
 ありがとうございます。今おっしゃった例えば資料8の1の(1)「着床率を上げるための研究」ということになりますと、おっしゃるように体内に戻さなくてはいけないということになり、これまで行われている医療行為の一端まで含むということになります。そういう意味で、そういうところまでやるのかどうかというところが最終的に問題になるのです。ですから最初に私も申しましたように、どこまでやるのかということはそれぞれやっていく過程の中で、ここではっきり決めてしまわずに、議論を進める過程でいろいろなことがわかってくるのではないかと思うのです。ですから茫漠としたときに、あまりかっちりしたことを決めてしまわずに、やれるところについてコンセンサスをきちんと得られる簡単なことから一つずつ詰めていくのがいいのではないかと思います。

○ 小澤委員
 本当に難しい問題で答えに窮するのですが、人の生殖細胞というものを使うという意味合いでガイドラインを作らないといけないということになると思うのです。そうすると基礎研究・臨床研究という区分けは、先ほど議論がありましたが、あまり意味がなく、人の生殖細胞を作る・使う限りにおいて、臨床研究にひとくくりにできると思うのです。それでこの対象とする内容があまりにもいろいろ千差万別で、全部をカバーすると思うと大変な気がするのです。ですから実際に生殖細胞を取るというところは、ある程度共通になるでしょうが、それを母体に戻す研究ともっと基礎的な戻さない研究ですと、だいぶまた議論の仕方が違いますし、それを議論するメンバーも少し違ってくるような気がします。本当にこの研究を一くくりにできるのかどうか。全部カバーするとなると相当な作業が必要になるという印象を受けています。

○ 笹月座長
 先ほど吉村委員がおっしゃったように例えば着床前診断、これはいわゆる遺伝子病の遺伝子診断ということで、全く生殖補助医療から独立しており、まだ種々問題のある、解決していない問題であります。そのためにはまた別のメンバーが必要でありましょう。小澤委員がおっしゃったように、体内に戻すことはまた別のメンバーが必要かもしれないということで、今日ここで列挙していること以外にも、まだまだこんなことも検討すべきだという項目をむしろたくさんあげていただいて、次回からそういうことから少し議論を進めていきたいと思います。この項目についてそれぞれ次回までにお考えいただきたい。それから加えるべき項目があれば、それは今でもあるいは後ほどでも事務局にお伝えいただくようよろしくお願いします。

○ 町野委員
 もちろん何を検討すべきかを皆さんで議論するのは結構だと思いますが、最低限やらなければいけないことがあり、それで実は十分ではないかと思うのは、やはり未受精卵の入手の問題です。これが一つのポイントですからこれはやらなければいけない。これをやらなければサボタージュです。頼まれたことをやらないというわけですからね。
 もう一つは、先ほど言いましたように生殖補助医療の研究の目的で受精胚を作るのなら、生殖補助医療というのは何なのだという問題です。

○ 位田委員
 総合科学技術会議の報告書を作るのに参加しておきながらこんなことを言うのは申し訳ないのですが、一応生殖補助医療研究と生殖補助医療は分けて書いてありまして、先ほど吉村委員がおっしゃったような着床前診断というのは生殖補助医療の方に入っていて研究の方には入っていない。それが一つです。
 文部科学省・厚生労働省にガイドラインを作れとこの報告書で言われているのは、ヒト受精胚の作成及び利用について生殖補助医療研究でどういうふうな問題があるのかということです。それに関しての指針を作りなさいという話でありますので、問題はどこまでが生殖補助医療研究と考えるのかということになります。臨床研究か基礎研究かという話ではなくて、先ほどの資料で言えば、研究と医療とをどこで切るかという話だと思うのです。それは恐らく一般論ではなくて、これから作るガイドラインの対象としてどういったものを生殖補助医療研究として考えるのかということを具体的に議論して、それがこれから作るガイドラインの対象となるのだとすれば、それで問題は解決するのだろうと思うのです。
 着床前診断がどちらに入るかというのは、少なくともこの報告書では研究から除外されております。しかも是非については判断しないということでおいてあるので、我々が議論する範囲から外れているだろうと思います。従って今基礎研究と臨床研究について、どこからどこまでが基礎でどこからどこまでが臨床かという区分けはやらなくてもいいのではないかと思います。
 それからもう一つ、体内に戻すかどうかということについて、体内に戻すことも研究として考えられる場合がありうるとすると、恐らくそれはガイドラインの対象にならざるを得ないと思います。実際よくわかりませんが、例えば着床過程への研究とか着床率を上げるための研究というのは、体内に戻さないと実際には研究にならないと思いますので、それは体内に戻すが、それを生殖補助医療研究であるとここで考えるのであれば、それはガイドラインの対象になるということだろうと思います。恐らく資料8の「臨床研究というものはどのようなものか」という部分の「臨床研究」という言葉は消していただいて、具体例で幾つかあがっていますが、その最後の「着床前診断」も外していただき、それら以外に何かあればこれに付け加えて、それらが全体としてガイドラインの対象になると考えた方が一般的な言葉使いよりはよいのではないかと思います。

○ 笹月座長
 皆さま資料を今お持ちかどうか、「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」で位田委員がおっしゃったことですが、その3ページです。「科学研究と医学応用」というところにアとして「生殖補助医療」それからイとして「生殖補助医療研究」とあります。それから17ページの一番下のところに「本報告書の基本的な考え方に基づいてヒト受精胚の取扱いのための具体的遵守事項として研究に用いたヒト受精胚を臨床に用いないこと」ということをはじめ、17ページの最後まで9項目を掲げておりますから、少なくともそういうことは検討と言いますか盛り込まなければいけないということになるかと思います。実際はその生殖補助医療ということが行われるわけですので、研究した成果が本当に定着した医療として使えるかどうかというと、やはり「人」に戻すというところが入って参りますので、位田委員がおっしゃった着床前うんぬんというものも臨床研究としてやはりここでとらえるかどうか。そういうことを中心に、それまでにお考えいただいて検討したいと思います。
 それと、これも先ほど言いましたが、これ以外に付け加えるべき項目があれば、それもお伝えいただきたい。
 ということで、もう2時間半になりましたので、そろそろ。あるいは、まだぜひこの点をということがあれば。

○ 石原委員
 また話を元に戻すようなことを申し上げて申し訳ないのですが、日本産科婦人科学会が言っているのは、研究の許容範囲というのが、たたき台の資料9の2ページにありますのでご覧いただきますとおわかりになると思うのですが、精子・卵子・受精卵は生殖医学発展のための基礎的研究及び不妊症の診断治療の進歩に貢献する目的のための研究に限って取扱うことができるというのは最初に言っているわけです。今回の議論についても研究の範囲うんぬんについて議論があるにしても、究極的な目的は、やはり患者さんたちの福祉としてどれだけフィードバックできるかというところを、間近にはないにしても、かなり遠くの目標かもしれませんが、それを見据えてやるべきだと思うのです。その場合に、先ほどから出ている胚を戻す、戻さないというところで切ってしまって、胚を戻すことはもう一切考えないという話は、かなり遠い先にある目標から考えると限定的になってしまうので、そういう一律の切り方だけはやめておいた方がよいのではないかというのが私の考えです。これは必ずしも着床前診断うんぬんの話とは同じではありませんが、そういう印象を持っております。

○ 笹月座長
 そういうアイテムに関する議論を次回から行いたいと思いますので、ご検討、お考えいただきたいと思います。

○ 鈴木委員
 私も希望として申し上げます。もちろん、ある程度この委員会の目的とか使命はわかっているつもりですが、例えば、何のためにそういった議論をするのかという、この委員会なりのヒト胚を用いた研究なり卵子・精子を用いた研究に対しての何らかの原則のようなことも話していただければ嬉しいと思っています。というのは、固い話というよりは、少なくともここでの議論は、最終的に不妊の当事者のためになるものであってほしいという希望が大きくあるからです。当事者が、安心と信頼の中で不妊治療が受けられるようなことです。それからもう一つ、そういった中で研究協力ができるようになるように、この話をしているのだというようなことです。そこはどこかでお話しいただければと思っています。

○ 笹月座長
 それは、このヒト胚の取扱いに関する総合科学技術会議でも繰り返し述べられていますが、ヒト胚というのは「人の萌芽」であって、人間の尊厳を重視しなければいけない。しかしながら、一方では不妊治療と言いますか生殖補助医療としての健康、福祉の追求という方向での希望に沿うことも必要であるという、その両面を十分に考慮しながら最終的なガイドラインを作るということです。それは大前提のことだと皆さま了解していただいていると思います。
 よろしいでしょうか。それでは時間もずいぶん経ちましたので、今日は3時間の予定ですけれども、この辺で終わりにさせていただきたいと思います。次回までに、先ほども言いましたように項目の追加等があればご連絡いただき、項目については次回までにそれぞれお考えいただきたいと思います。では事務局からの連絡をお願いします。

○ 齋藤母子保健課長補佐
 事務局よりのご案内ですが、次回、第5回「厚生科学審議会科学技術部会ヒト胚研究に関する専門委員会」及び、第4回「科学技術学術審議会生命・倫理安全部会生殖補助医療研究専門委員会」については、5月12日金曜日を予定しておりますので、よろしくお願いします。また会場などが決まりましたらご案内させていただきます。ありがとうございました。

○ 笹月座長
 どうも遅くまでありがとうございました。(了)

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(研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室)

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