ここからサイトの主なメニューです

生殖補助医療研究専門委員会(第2回) 議事録

1.日時

平成18年1月27日(金曜日) 16時~18時40分

2.場所

東京八重洲ホール 大ホール

3.議題

  1. ヒト受精胚の生殖補助医療研究目的での作成・利用に係る制度的枠組の検討について 1.ヒアリング「ヒトの発生について」<中辻憲夫委員>
  2. ヒト受精胚の生殖補助医療研究目的での作成・利用に係る制度的枠組の検討について 2.ヒアリング「不妊治療、ARTへの流れとARTの臨床」<安達知子委員>
  3. ヒト受精胚の生殖補助医療研究目的での作成・利用に係る制度的枠組の検討について 3.クローン技術規制法に規定される特定胚について
  4. ヒト受精胚の生殖補助医療研究目的での作成・利用に係る制度的枠組の検討について 4.ヒアリング「ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に係わる日本産科婦人学会会告基づく規制の状況について」<齊藤英和社団法人日本産科婦人学会倫理委員会登録・調査小委員会委員長(国立成育医療センター周産期診療部不妊診療科)>
  5. ヒト受精胚の生殖補助医療研究目的での作成・利用に係る制度的枠組の検討について 5.今後の検討事項について
  6. その他

4.出席者

委員

 笹月主査、安達委員、石原委員、位田委員、小澤委員、加藤委員、後藤委員、鈴木委員、高木委員、中辻委員、秦委員、星委員、吉村委員

文部科学省

 研究振興局長、大臣官房審議官(研究振興担当)、大臣官房審議官(雇用均等・児童家庭担当)、母子保健課長、生命倫理・安全対策室長、母子保健課長補佐、生命倫理・安全対策室長補佐 外他

5.議事録

【笹月主査】
 それでは、時間になりましたので、ただいまから厚労省第3回「ヒト胚研究に関する専門委員会」、それから文部科学省の第2回「生殖補助医療研究専門委員会」を開催したいと思います。
 本日の委員会は、第3回厚生科学審議会科学技術部会「ヒト胚研究に関する専門委員会」と、文部科学省第2回科学技術・学術審議会生命倫理安全部会「生殖補助医療研究専門委員会」の合同の開催となっております。事務局より簡単に、この合同開催に至ります経緯についてご説明をお願いいたします。

【佐藤母子保健課長】
 初めてお目にかかる方もいらっしゃいますが、私、厚生労働省母子保健課の課長で佐藤と申します。どうかよろしくお願いいたします。
 ただいま主査からお話がございましたように、合同開催に至る経緯について私どもの方から簡単にご説明いたします。
 既にご案内のとおり、平成16年7月の内閣府総合科学技術会議の「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」の報告書を受けまして、厚生労働省としては第3回目に当たりますけれども、この専門委員会を設置いたしました。また文部科学省では、同様に生殖補助医療専門委員会を設置したところでございます。
 当初、両省の役割分担といたしましては、厚生労働省はその所管する医療機関、例えば国立病院でございますとか、ナショナルセンターのようなところ、そういったところで行われる生殖補助医療研究を中心にガイドライン等について検討を行う、ということにいたしましたし、また文部科学省については、ほぼ同様の形で同省の所管しております大学でありますとか、研究機関でありますとか、そういったところでの研究への対応、こういったものを中心に検討を進めるということにしておりました。
 しかし、先般、もう去年になってしまいましたけれども、文部科学省の方からご提案がございました。それぞれの設置する専門委員会について、内容が相当似通っていると申しますか重複する部分もあるので、この際合同で開催することとしてはどうか、このような申し入れがございました。これを受けて、厚生労働省といたしましても、それぞれの検討すべき内容を再度精査いたしましたけれども、繰り返しになりますが、両省切り離して議論する必要は必ずしもないだろうし、簡単でもないということがわかってまいりましたので、事務局としての結論をこの場で申し上げれば、このような形で厚生労働省と文部科学省とが合同で、合同委員会を開催することといたしまして、最終的な結論につきましても、厚生労働省と文部科学省との2省の連名で、ガイドラインの策定と公表を行ってはどうかということになりました。主査も含めまして委員の先生方におかれましては、前回、それぞれが、文部科学省におかれましては20日に開催されたと聞いておりますが、前回のそれぞれの両専門委員会において合同開催について、おおむねご了解いただいておりましたので、きょうも含めまして、今後はこういう形、つまり両省の合同開催ということで進めさせていただきたいと考えております。どうかよろしくお願いいたします。

【笹月主査】
 どうもありがとうございました。
 ただいまご説明いただきましたように、文部科学省、厚生労働省の専門委員会合同で、今後開催するということにいたしましたので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それぞれ委員の方々、ご存じと思いますけれども、きょうは第1回でありますので、各委員の先生方から、所属とお名前をということで自己紹介をお願いできればと思いますが、石原先生から、こちらに回ります。

【石原委員】
 埼玉医科大学の産婦人科の石原でございます。前回から科学技術・学術審議会の委員を務めさせていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

【位田委員】
 京都大学大学院法科研究科の位田隆一でございます。よろしくお願いいたします。

【小澤委員】
 自治医科大学の血液学部門の小澤敬也と申します。よろしくお願いします。

【加藤委員】
 京都大学を退職して、次の大学も退職して、職業のない加藤と申します。本当の研究者としての仕事は、ドイツ観念論のヘーゲル研究というのが本職でありますけれども、生命倫理や環境倫理をやっております。

【後藤委員】
 名古屋大学医学部保健学科の後藤といいます。専門は産婦人科学及び母性看護学です。よろしくお願いします。

【鈴木委員】
 鈴木良子と申します。本業はフリーの編集者、原稿を書いたりするライターなんですけれども、プライベートで、不妊の当事者として、自助グループに長年参加してまいりました。よろしくお願いします。

【高木委員】
 日本大学総合科学研究所の高木美也子と申します。生命倫理の方をやっております。よろしくお願いいたします。

【笹月委員】
 国立国際医療センター、笹月でございます。主査を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【安達委員】
 愛育病院産婦人科の安達知子と申します。よろしくお願いいたします。

【中辻委員】
 京都大学再生医科学研究所の中辻です。よろしくお願いします。

【齊藤氏】
 国立成育医療センターの不妊診療科の齊藤です。きょうは、産婦人科学会の会告について説明をするために参りました。よろしくお願いします。

【秦委員】
 国立成育医療センターの秦と申します。専門は病理学です。よろしくお願いします。

【星委員】
 山梨大学医学部の星でございます。専門は産婦人科です。よろしくお願いいたします。

【吉村委員】
 慶應大学の吉村と申します。専門は生殖生理学というところでございます。よろしくお願いします。

【笹月主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、事務局、厚生労働省、文部科学省、ご紹介をお願いいたします。

【佐藤母子保健課長】
 先ほどごあいさつをいたしました厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課の課長で佐藤と申します。よろしくお願いいたします。

【斎藤母子保健課長補佐】
 同じく母子保健課の課長補佐をしております斎藤慈子と申します。よろしくお願いいたします。

【清水研究振興局長】
 文部科学省の研究振興局長の清水でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【石井生命倫理安全対策室長】
 文部科学省生命倫理安全対策室長の石井でございます。よろしくお願いいたします。

【根本生命倫理・安全対策室長補佐】
 生命倫理・安全対策室長補佐の根本と申します。よろしくどうぞお願いします。

【笹月主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、出欠の確認をお願いいたします。

【石井生命倫理安全対策室長】
 本日の出席状況でございますけれども、大隅委員、小幡委員、橋本委員、町野委員がご欠席でございます。それから、現在の委員については、資料1、資料2に厚生労働省、それから文部科学省の委員の名簿がございますが、文部科学省の委員の名簿の中に、まだ記載がございませんけれども、大阪大学医学部の泌尿器科の奥山明彦教授に委員の就任をお願いしてご了解いただいていまして、今、手続に入っているところでございます。以上でございます。

【笹月主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、本日の議事に入りたいと思います。本日は3人の方々からお話をいただいて、質疑応答をするということがございますし、その他、検討すべき事項もあります。3時間の時間をいただいておりますので、少し長くなりますけれども、てきぱきと進めたいと思いますので、どうぞよろしくご協力のほどをお願いいたします。
 最初のヒアリングですけれども、本来、総合科学技術会議の意見の具申の中で、「ヒト胚の取り扱いに関する基本的な考え方」というところで、いわゆる「人へと成長し得る人の生命の萌芽」というのが、このヒト受精胚に対する位置づけということでありますので、本日は、胚、ヒト胚というものに関しまして共通の認識、特に「人の生命への萌芽」ということを委員の先生方、共通の認識といいますか、ご理解いただきたいということで、中辻委員から、お話を伺って十分な質疑応答をしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

【中辻委員】
 私の、きょうお話しする資料としましては、資料3とありますプリントアウトと、コンピュータグラフィックでのビデオがあります。CGの方は京大の医学研究科の塩田教授が監修された映像ですが、その前に理解していただくために、プリントアウトを見ていただきますと、もちろんここには産婦人科の先生だとか随分エキスパートの方がおられるんですけれども、資料を最初にめくっていただくと、卵子が出てきます。卵母細胞または卵子と呼ばれますけれども、左上にある小さい細胞が取り巻いているのが、排卵された本来の姿で、卵丘細胞とかが周りを取り囲んでいますので、卵子自体は明瞭には見えないわけですけれども、周りの細胞を取り除いたものが、丸いきれいに見える卵子で、周りを透明体、保護するためのカプセルが取り巻いていますし、こういうふうに直径が大体100ミクロン程度、1ミリの10分の1程度の大きさのこういうものが最初の卵子で、これが受精していくわけです。
 その後、初期の状態がどういうふうになるかというのが、その次のページをめくっていただきますと、この本は非常にきれいな写真がたくさん載せられていますので、着床前だけですけれども、Figure5.18というのが初期の時間経過に沿ってどうなるかということで、最初が受精の瞬間で、D1、1日目に2細胞になっていますし、D2で、2日目に4細胞、細胞分裂、卵割が進んでいって、4日目、D4に、細胞同士が密着した桑実胚と呼ばれる状態になって、その後、内部にスペース、空間が生まれて、胚盤胞へと育っていく。D5くらいになりますと、立派な胚盤胞の、ボールの中に内部細胞塊があるという状態になります。内部細胞塊の、内部の細胞のごく一部が、将来胎児をつくるもとになるわけです。そこから、ハッチングと称しますが、上の大きな写真が、人工的に穴をあけて出てきているところで、ここから出た後、これが子宮の中で着床していくということになります。
 その次のが、かなり古い本ですが、教科書の3カ月目あたりまでの経過を示しています。大きさも、これは表示がないんですが、さっき言いましたように、卵子あるいは胚盤胞というのは、大ざっぱにいうと直径1ミリの10分の1程度の大きさで、発生第3週から4週あたり、子宮壁に着床してから、頭がどこで、背中がどこで、ということがようやくわかるような形になってきているのが、これは長さでいいますと1ミリぐらい、10倍にふえているわけです。体積にすれば1,000倍とかそうなりますけれども、その後、主な臓器ができてきて、発生第7週になりますと、こういうふうに、いかにも赤ちゃんの将来になるような形ができてくる。このときに、長さとしては多分5ミリないしは10ミリ程度というぐあいなんです。この後、ひたすら大きくなっていくということになります。このあたりのところをコンピュータグラフィックで映像的にどうなるかということをつくったのが、今からお見せするところです。
 芸術的につくってあって暗いですけれども、これはイントロダクションで、精子が卵子に向かっていくところから撮っていますので、これは医学教育用になります。ですから、後の方では実際の胎児をスライスにして、解剖学のサンプルから横断面がどうなるかというようなことが出てきますので、ちょっとぎょっとされるかもしれませんが、コンピュータグラフィックですけれども、これが精子が卵子に向かって突き進んでいくところを、少し芸術的につくったものです。
 たくさんの精子が卵子を取り巻く卵丘細胞の表面から入って、それを溶かして、中に1個だけが入るということになります。
 これは、最初、受精から4日目という、細胞分裂が開始しているところで、1日に1回、そんなに早くなく進みます。このあたりの細胞は実験的にというか、動物胚を用いた実験をしますと、各々の細胞が等価というか、性質が変わらなくて、例えばこの段階を2つに分けますと、一卵性双生児ができるという状態になっています。ただ、これはその後、細胞同士が密着した後、内部に空間ができて、胚盤胞になりますと、この時期には細胞の分化が始まりますので、外側は胎盤とかをつくることに特化して、その内部、内部の細胞塊の一部からだけ胎児ができてくるという、哺乳類の場合、カエルのように卵全体がオタマジャクシになるのではなくて、周りの細胞は胎児の育つのをサポートする組織ができるということです。
 これは子宮壁にもぐり込んでいく状態を示していまして、着床の段階は動物種によってかなり違いますけれども、ヒトの場合はこういうふうに内部にはっきりと入り込むという状態になります。
 このディスク上のものに、これが原条あるいは原始線条と呼ばれますが、この線が入って、これは体軸の中心、背骨になりますが、この原条の始まるところが14日目ということで、具体的な分化が始まって、神経管ができて、体節ができ、頭と、胴体、そして心臓ができて、手と足の突起ができて、ということで、このぐらいが1ミリ程度の大きさのヒト。ヒト以外の動物ともよく似たようなところから、だんだんと脳が大きくなっていって、人らしくなってくるわけですけれども、これで解剖学の教科書ですので、こういうふうに、脳の構造が非常に大きくなるわけです。
 これが内部で、心臓とか肝臓が、脳以外に、それが大きな臓器となっています。2カ月目、3カ月目でほとんどの臓器はでき上がってきていて、あとは成熟して大きくなっていくということになります。
 これが、塩田先生が、解剖学で先天異常とかを研究されていますので、そういうサンプルのたくさんの中から、こういう像をつくって、コンピュータグラフィックの専門家がつくったということです。大きさは10ミリ、5ミリ、これぐらいの状態になります。塩田浩平先生が監修しています。
 こんなところです。

【笹月主査】
 どうもありがとうございました。
 コンピュータグラフィックスで、実観してきたことということですが、どなたか何かご質問ございませんか。よろしいでしょうか。
 それでは、先生、どうもありがとうございました。
 それでは、次のヒアリングに移りたいと思います。次のヒアリングですけれども、このガイドライン策定のための検討を行うわけですけれども、生殖補助医療研究が生殖補助医療の発展に資するということで研究というものをとらえているわけですが、そのベースといたしましては、生殖補助医療の現状ということ、それから医療と研究ということの境といいますか、そういうことも非常に重要になろうかと思いますので、安達委員から生殖補助医療研究あるいは生殖補助医療、それから医療と研究ということに関しましてお話を伺いたと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【安達委員】
 きょうは、産婦人科の専門の方もたくさんいらっしゃいますので、よくご存じな方もいらっしゃると思いますけれども、基本的な不妊治療、そしてARTへの流れと、ARTの臨床というものについて、お話しいたします。
 正常の性機能を持つ男女のカップルが定期的に性生活を持っておりますと、大体3カ月で50パーセント、6カ月で70パーセント、1年で85パーセント、2年以降、約90パーセントに妊娠が成立するといわれております。そこで不妊期間が2年以上たったものを、日本では不妊症と定義しています。しかし、現在は、晩婚化の時代でして、この2年たって不妊症と診断が確定してから、不妊治療をするというようなことよりは、もっと早くから、例えば1年でも希望が強かったり、年齢が高齢であったりすれば、不妊治療に入っているという状況です。
 不妊症の種類を示します。いろいろな分類がありますが、ここに絶対不妊、相対不妊とありますが、どんな治療をしても絶対に妊娠が不可能なものを絶対不妊と定義します。しかし、これも時代の流れといいますか、医学の進歩によりまして、絶対不妊というものがどれに当たるかというのは、どんどん変化してきているのではないかと思います。
 男性不妊と女性不妊の割合は1対1といわれています。産婦人科の医師は、大体1対1よりは、女性不妊が少し多いのではないか、泌尿器科医師は、男性不妊の方が多いのではないかというふうにいっていることもありますので、大体1対1ぐらいというふうに思っていただきたい。
 これは妊娠の成立機序で、よくご存じだと思うのですが、ちょっと説明に時間をかけさせていただきます。これは精子ですけれども、精子と卵子の受精の場は卵管の先端ですね。これが排卵された卵子、そして精子とここで受精するのです。卵管の中を子宮へ向って受精卵が分割していきますが、先ほど説明がありましたように、排卵をして5日目ぐらいに桑実胚となって、子宮の中に入ります。そして子宮内膜に着床するのが7日目ぐらいで、このときは胚盤胞になっています。
 精子は、普通の性生活では腟の中に入るわけですけれども、その時の精子の数は大体平均的に2億ぐらいです。また通常妊娠するためには卵管先端で精子の数は200以上必要なのですが、そうしますと大体100万分の1ぐらいに、卵管先端に行くまでの間に精子の数が減っているということになります。精子はpH7.2以上の精液の中にいまして、精液は、弱アルカリ性なんですね。ところが、腟の中というのは酸性でございますので、この中に入りますと、精子は非常に運動しづらい状態になってくるんですね。先ほど、100万分の1に減ってしまうお話をしましたが、精子が腟から卵管の先端まで運動して行くときの非常に大きな関門としては、頸管が知られています。
 正常精液所見を示しますが、正常といっても、これは最低ラインを書いてあるというふうにご理解いただきたいと思います。精液量2ミリリットル以上、精子濃度2,000万/ミリリットル以上、精子運動率50パーセント以上、こういうふうに書いておりますが、これを下まわりますと通常の性生活では妊娠しづらくなります。例えば精液量が2ミリリットル未満である場合、これを乏精液症といい、先ほどお話ししましたように、腟の中のpHの酸性を中和するのに足りない量ですので、妊娠しづらくなります。精子濃度が2,000万/ミリリットルを切りますと、乏精子症、運動率が50パーセントを切りますと、精子無力症、こういった名前があるわけです。
 ここに不妊症の原因を挙げてみましたが、男性因子として4つ書いてあります。この男性不妊の原因の9割が、この1番目の、造精機能障害、十分に精子がつくれないことによります。そのほかに精管などが閉塞するような精路通過障害、性交障害、射精障害等があります。
 女性不妊の因子を見てみますと、排卵因子、卵管因子、着床因子、頸管因子、原因不明、これは機能性不妊といいますが、このように分けられます。この中で、卵管因子が、原因の中では約30パーセントくらい占めており、比較的高率といわれています。この原因不明のものというのは、原因が特に同定されない場合といわれています。例えば年齢がある程度いき、40歳になってきますと、排卵も起きていますし、卵管も通っていますし、ホルモン分泌もまあまあなんだけれども、なかなか妊娠しづらくなってくる。こういうようなものは原因不明なのですが、卵子の質の低下なども関係しているのではないかとも言われています。また、子宮内膜症というような病気がある場合は、それはいろいろな不妊原因を持つとは言われているんですけれども、確定できないことが多いので、原因不明に分類されることが多いです。子宮内膜症があっても妊娠する方もいらっしゃるんですが、できない方も多く、子宮内膜症を治療すると妊娠なさるというような方もいらっしゃいます。他にもいろ書いてありますが、頸管因子、先ほど頸管は非常に大きな関門と言いましたが、子宮の中に元気な精子が進入していかないというような場合です。
 ここに治療の流れを書きましたが、グリーンで書いたところが大きな治療の流れです。もしも大きな不妊の因子がないか、あるいは治療によって、妊孕性がある場合、ホルモン異常や卵管通過障害、こういったものに対していろいろ治療で、妊孕性が回復したと考えられた場合には、排卵日を推定しまして、その時期に性交のタイミングを指導します。大体6周期ぐらいタイミングを指導しても、妊娠に至りませんと、次の治療へステップアップしていくわけです。ステップアップのタイミングは本人のご希望によって少し時間的な差があります。
 配偶者間人工授精(AIH)、ここにちょっと模式的な絵を入れたのですけれども、排卵日に子宮の中に精液を注入するという治療法です。これは先ほど言いましたように、頸管というのが非常に大きな関門ですから、精液を直接子宮内に注入すれば関門を突発して、より多くの元気な精子が入るということになるわけです。これは先ほどいった性交のタイミング指導で妊娠しない方のほかに、性交後試験陰性、つまり、性行為を持った後に、子宮の中に元気な精子が見られないような方、運動している精子が見られないような方に適用されます。AIHも、何回行うかというきまりはありませんが、大体6回ぐらいの間に、この治療で妊娠する方の9割ぐらいの方は妊娠するわけですので、6回ぐらいAIHを行っても妊娠なさらない方は、次のステップであります生殖補助医療、ARTの方へ向かうということになります。ここでちょっと、「人工授精」は「授」と書くことに注意しておいていただきたいと思います。
 生殖補助医療ARTですけれども、ARTは体外受精・胚移植、IVF-ETに代表されます、体外に配偶子を取り出して行う不妊治療というふうにご理解していただきたいと思います。ここに大きく3つのARTを書いてみましたが、他にいろいろなバリエーションもあります。まずは、卵子と精子を体外に取り出しまして、一緒に合わせて卵管に戻す、特に培養したりいろいろな操作はなく、卵管に戻すという操作ですが、これをGIFT法といいます。
 それに対しまして体外受精・胚移植は、卵子の周囲に、精子を置いて、一緒に培養いたしますと受精卵になるわけです。そして一緒に培養してから48時間ぐらいしますと、先ほども説明がありましたように4細胞胚ぐらいになります。これを子宮の中に戻すという方法です。
 ところで、体外受精・胚移植というのは、卵子1つに対して精子の数が大体5万から10万ぐらい必要なんです。でも、5万から10万の良好な運動精子が得られないような方とか、あるいは、この治療をやっても全然妊娠なさらない方は顕微授精を行います。顕微授精は、極端に精子の数が少なくてもできる操作です。こちらでも注目してほしいのですが、体外受精・胚移植のこの「受精」は、体外で受精卵をつくるという意味で「受」です。「顕微授精」と先ほどの「人工授精」もそうですけれども、「授」の意味は、「卵子のなるべく近いところに精子を置く」という意味で「受精」とは違うことを理解していただきたいと思います。
 体外受精・胚移植の適応を示します。卵管性不妊、男性不妊、免疫性不妊、子宮内膜症性不妊、機能性不妊、こういったものが体外受精・胚移植の適応です。そのほかに平成10年10月に日本産科婦人科学会で示されましたが、「重篤な遺伝性疾患の着床前診断を行うためにIVF-ETをする」ということも加わります。6番目のこれは、いわゆるIVF-ETを不妊治療以外へ臨床応用したということで注目されるもので、これ以前のものは、すべて不妊のための治療法ということになります。
 体外受精・胚移植の実際ですけれども、通常、排卵誘発、過排卵刺激を行いまして、たくさんの卵が排卵できる状態にします。そして、排卵直前の卵を採取し、2~4時間程培養いたします。精液をとってもらいますが、採取した精液中の精子というのは、受精能力、受精能、キャパシテーションといいますが、これをまだ獲得できていませんので、精液と分離しまして培養し、受精能を獲得した精子と先程の卵子を合わせます。その合わせることを、媒精・授精といいます。先ほどいいましたように、大体1つの卵に5万から10万の精子を媒精し、そして48時間くらい培養してから、初期胚を子宮の中に移植します。移植した後は、黄体ホルモンなどの投与を行って黄体機能をサポートする。これが一連の流れです。
 ここに実際の超音波で見たときの自然周期と、過排卵刺激周期のときの卵巣の状態を示しました。自然周期ですと、当然、片方の卵巣だけに、卵胞が1つ見えています。これは大体2.4センチ径の卵胞です。一方、排卵誘発剤等を使いますと、両側の卵巣からたくさんの2センチぐらいの卵胞が発育しています。発育する卵胞数の平均は、年齢や個人差があるんですけれども、10個ぐらい発育する方が多いです。しかし、加齢とともに数は減りますし、また、若い方はもっとたくさん卵胞が育ちます。そして、後で話が出ますけれども、多襄胞性卵巣症候群というような、特殊なホルモン環境にある方は、こういうような排卵誘発を行いますと、30個ぐらい卵胞が育ってくることがよくあり、卵巣は非常に腫れます。ということで、腟壁から針を刺して、それぞれの卵胞から1つずつ卵をとりまして、そうしますと複数の卵がとれるわけですが、それにそれぞれ体外受精を行いますと、複数の受精卵、胚ができるわけです。しかし、多胎妊娠等、いろいろなことから3つまで胚移植する、戻せるということになっておりますので、最大3つまで戻します。例えば、10個の卵胞が発育したら10個必ず卵がとれるというわけではなく、そして、10個卵がとれたら必ず10個受精卵ができるというわけではないですが、3個胚移植しても残った良好な胚があれば、本人の同意を得て、凍結して保存するということになります。そして、今回、妊娠に不成功であれば、次のときに、今度は排卵誘発剤等を使わないで、排卵日に合わせて胚を子宮の中に移植する、あるいはいろいろ人工的にホルモンによる月経周期をつくってちょうどいい環境に持っていって、タイミングを合わせて胚を子宮に戻すということで、凍結胚を用いまして、胚移植を行うことができます。しかし、もうこれ以上、お子さんは要らないというような形になりますと、凍結胚はいわゆる余剰胚になります。
 顕微授精について簡単に説明しますと、これが卵子です。そして卵子のまわりに透明帯があります。先ほど、この周辺に排卵したときは、卵丘細胞というたくさんの細胞がついていましたが、顕微授精の場合には、この卵丘細胞を除いてしまいますので、透明帯と卵、そして第一減数分裂が終わっておりますので、第一極体があります。
 顕微授精には大きく分けますと3つの方法がありますが、この透明帯というのは、やはり精子にとってかなりの関門です。ということで、この透明帯に穴をあけて、この外側に精子を複数置くと、そこから侵入しやすくなりますので、受精しやすくなってきます。この透明帯を少し切って外に置くという方法、透明帯切開法といいます。それから、その下の方ですけれども、卵の細胞膜と透明帯との間、囲卵腔というんですが、囲卵腔の中に精子を入れるSUZI法があります。それから、これが現在一番やられている方法ですけれども、精子を1つだけつかまえまして、卵の細胞質の中に注入する方法、ICSIでございます。しかし、このICSIも、精子を入れたらすべて受精卵ができているということではないのです。精子を入れただけで、まだ受精卵になっているわけではありませんので、ICSIもふくめて、顕微授精では「授」を使います。このICSIの世界の一番最初の成功例が1992年ということで、現在2006年ですから、一番最初に生まれたお子さんでも、ことし14歳というようなレベルでございます。
 現在、生殖補助医療の登録施設のうち、体外受精・胚移植を登録している施設が650余りでしょうか、そしてこの顕微授精を許可されている施設が、その半分ぐらいです。ですから、その三百幾つかの施設では、今まで話した不妊治療をなさっているわけです。
 もちろん、ARTは、すべて成功するわけではなく、成功させるためのいろいろな工夫が日々行われているわけです。その工夫をすることと、プラスARTをすることによるいろいろな問題点、副作用とか合併症を軽減させるためのいろいろな新しい技術の開発を行っているわけです。これが臨床研究と呼ばれるものにつながっています。
 ARTをやっている施設では、ほとんど日常的に行われている技術、あるいは皆さんにコンセンサスが得られている手技を、簡単に説明させていただきます。排卵誘発法。これは、通常、排卵誘発をしておりますと、勝手な時期に排卵が起きてしまう、早発LHサージというのが起きやすいんですが、これを防止するような方法をとります。これを含めまして、排卵活発法には、いわゆるなかなか卵胞が育たないpoor responder、排卵誘発をし始めると、過剰にたくさんの卵胞が育ってしまうhigh responderといった問題があります。こういうものに対して、上手に発育卵胞数を調節するような研究や、より胚に対するダメージの少ない凍結法、融解法の研究というのが行われています。それから、通常、胚移植しても、なかなか妊娠しない方に、2段階胚移植というのをしますと、妊娠する症例があることがわかってきました。これは最初の胚移植は通常の大体媒精後48時間ぐらいの4細胞胚のときに胚移植するんですけれども、それからもう少しおくれて、またもう一つ移植するわけです。2回目は、胚盤胞の胚移植をすることが多いです。その最初の移植胚は、むしろ着床を期待するということよりも、この移植胚から何かシグナルが出て、2回目の胚盤胞の胚移植を成功させているんじゃないかというような研究があるわけです。そうしますと、体外でより長期の胚盤胞のところまで培養できるような、体外培養の工夫というということが必要になってきます。それから、閉塞性無精子症というような、精巣では精子はつくっているけれども、その後の精管などの精路で閉塞しているために、採取した精液中に精子がいないわけですが、こういうときに精巣上体から精子を吸引したり、精巣の一部を採取して、そこから精子を取り出したりするような、MESAとかTESEというような方法も、最近かなり一般的になってまいりました。
 そして、孵化補助法。透明帯を薄くしてあげることによって、いわゆるハッチング、孵化をしやすい状態にする方法です。きれいな胚を移植したり、胚盤胞を移植しても、なかなか着床できない、すなわち、妊娠しない方に、孵化しやすくするように補助する、こういうような方法もやっています。
 臨床上のARTの問題点と対応を示します。社会的、倫理的な問題を省いてみますと、卵巣過剰刺激症候群というのが、排卵誘発を行う時の一番怖い合併症です。これをなるべく起こしたくないわけですけれども、一つの方法としては、体外受精した周期に胚移植しないで、全部凍結してしまうという方法です。また、現在、試みられつつあるものですが、in vitro maturation:IVMという方法もあります。これは、卵子の体外成熟を行う、つまり排卵誘発剤を使わない、未熟な卵胞の段階で針を刺して卵を外に取り出して、未熟な卵子を体外で培養していって、精子と合わせて受精卵をつくるというような方法です。この方法で幾つか成功例はあるんですけれども、まだ、非常に成功率は低く、採卵方法も培養方法も含め、いろいろな研修や研究が必要です。また、そういう胚を特定して、実際、妊娠に成功している例はあるんですけれども、生まれたお子さんたちが、将来どんなふうに成長していくかについては、まだ全然わかっていません。
 それから、多胎妊娠の抑制に対しては、先ほど言いましたように、なるべく移植胚数を減らすということが有効です。胚盤胞を1~2個移植すると、妊娠成功率が高いといわれていますので、そのための培養法等のいろいろな工夫が必要です。
 また、高年女性に対しては、これは本当に成功率が低いわけです。特に40代になってきますと非常に低い状態になります。そういうこともあって、例えば、将来は子供を欲しいけれども現在欲しくないというような方や、近い将来卵巣の腫瘍で手術するとか悪性腫瘍の治療をするかもしれない、そういうような方が、若いときに卵巣や卵子を凍結しておくという考え方も当然出てくるかもしれません。それからまた、高年女性では卵子の遺伝子を改変していくような試みもあります。
 異常妊娠、奇形発生の可能性もあります。あるいは不妊因子の継承、特に絶対、通常だったら妊娠しないような精巣の中にやっと動いているかどうかの、やや未熟にみえる精子を1つつかまえてきてICSIしても、今、妊娠が成功する例も出てきていますが、そういうお子さんが何かの不妊因子を継承している可能性もあるかもしれません。これらに対しても、今後、受精能力や胚発育を改善させるような研究が進められていくべきかと思います。
 最後もスライドには、今まで言ったこと等を、簡単にまとめてみました。今、着床前診断というものが始められてきておりますが、実際、このARTの技術が完成して初めてできてきた方法といえます。本法には、いろいろなステップが必要ですが、例えば8細胞胚のところから、1つまたは2つの割球を外へ出して遺伝子などの診断をした後、その残った細胞の胚を子宮に戻すわけです。実際には胚移植後の成功率等も通常よりは低いと考えられるわけで、いろいろな今後の技術的なものもふくめて研究が進むと思います。
 卵子の体外成熟は、先ほど話したとおりです。
 遺伝子の改変は、この手技が今、臨床的に認められているわけではありません。しかし高齢女性では有効な治療法になる可能性があります。高齢女性の卵子には、もう既に、最初の減数分裂終了前に問題がおきていることが多く、第三者の女性の卵核をとりのぞいた卵子を用いて、ここに高齢女性の卵核胞の中を移植する。あるいは、若い女性の卵子細胞質の一部を
 ICSIのときに一緒に入れる、というような方法も試みられたこともありました。これにはいろいろな問題点がありましたが。
 卵子または卵巣の凍結やICSIにおける受精の改善などもあります。先ほどから申し上げていますけれども、ICSIをしたときに、精子を卵子の中に注入してすぐに受精卵になるわけではありません。注入された精子の核が雄性前核に、また卵子の核が雌性前核にならないというようなこともあるわけです。それには卵の活性化というものが必要といわれていますが、こういうようなことも研究されてます。
 以上、簡単に不妊治療の流れと、今のARTでの問題点をまとめさせていただきました。

【笹月主査】
 どうもありがとうございました。
 産婦人科ご専門の委員の方々もいらっしゃいますが、吉村委員、星委員、石原委員、何かご追加ございませんでしょうか。その他の委員の方々から、どうぞご質問ございましたら、どうぞ。

【中辻委員】
 最後のスライドで、「遺伝子改変」という言葉を使っておられたんですが、私たち生物学者でいいますと、遺伝子改変というのは、ある生物個体、人間でいうとある人間の遺伝子の一部を変化させるというふうに理解していまして、そうすると、これは人間に当てはめると非常に大きなことになるので、この場合は、そういう意味ではなくて、例えば若い女性の核と入れかえるなり、細胞質の中のファクター因子を追加する、補助するとかということだと思うので、遺伝子改変という、少なくとも生命科学の分野では、その一部を人工的に変えることになりますので、それは誤解を生むかもしれないという気がしました。

【安達委員】
 はい。どうもありがとうございました。

【笹月主査】
 どうぞ。

【秦委員】
 今の質問とも関係するんですが、やはり最後のスライドで、「卵の活性化」という言葉があったと思うんですけれども、卵の活性化というのは、何となくわかるような気もするんですが、活性化というのは何か卵の若返りだとか、そういうようなことともつながると思うんですが、どういう分子とか、物質レベルで、どういうものを活性化すると卵の活性化になるのかということがわかっているんでしょうか。

【安達委員】
 一部はわかっています。例えば正常の受精の場合には、精子の膜が卵子の膜と融合して、精子の核が頭部から脱核して卵子の中に入るのですが、そのときに、卵子の細胞質の中のカルシウムイオンの濃度が変化することで、活性化等が起きると言われています。そして、精子の核が膨化していて前核をつくるといわれます。もちろん、いろいろな解明できていない点があります。ICSIですと、ごらんのとおり精子は細胞膜ごと卵子の中に入ってしまうわけですので、通常と全く違うルートを通るわけです。最終的にはもちろんカルシウムイオンの濃度の変化等が起きるんですけれども、その機構でまた解明できていない点はたくさんあります。

【笹月主査】
 どうぞ。

【後藤委員】
 教えていただきたいんですが、いろいろな原因があると思うんですが、IVF-ETを選ぶについては、加齢がむしろ主たる原因になるというか、そういうふうな場合に、加齢が主たる原因でIVF-ETを行うというのは、どれぐらいの割合なんでしょうか。

【安達委員】
 高齢だからすぐにIVF-ETという考え方は、本来はないはずですね。ただ、当然いろいろな細かい時間のかかる検査があって、いろいろなことをしていますと、本格的に治療に入るまでに、かなり時間がかかるわけです。そういう意味で、なるべく自然で、自然でと任していきますと、治療がどんどんおくれてきます。40歳でいらした方がいろいろな検査をしますと、41に近くなってくるんですね。タイミングを見て、6回ぐらいやって、それから配偶者間人工授精をやって、というふうにしていきますと、なかなか妊娠しないうちに、確かに四十二、三歳になってしまうというようなことがあります。ご本人とお話しして治療方針を決めますが、なるべく早めに体外受精をしてほしいとか、初めから体外受精を考えているんですよ、とおっしゃる方もいらっしゃいます。
 それから、あと物理的に、セックスの回数なんかも高齢になってくると、だんだん回数が減ってきます。どうしてもここのタイミングと言っても性交はなかなか無理とか、そういうようなこともありますので、普通の若い方よりはARTに早く行く可能性は高いと思います。
 ただ、加齢だけが原因でIVF-ETに行く方の人数は、と言われると、ちょっとそれはなかなか出てこないかなと思います。

【笹月主査】
 副作用といいますか、合併症の中で、我々の委員会として大事なことは、卵の採取、ボランティアなんていう話も将来出てくるかもしれませんが、卵の採取、排卵誘発剤を使うこと、実際に採取すること、そのことによる何か副作用といいますか、合併症といいますか、何か具合の悪い事件が起こるとか、そういうことはありませんか。

【安達委員】
 頻度の少ないものも全部入れれば、いろいろなことが出てまいりますね。排卵誘発剤を使うことの一番の副作用は、先ほど言いましたように卵巣過剰刺激症候群というのがあるわけです。これを仮に通常の排卵誘発よりは、もうちょっと違った方法をとるとか、ボランティアでとる場合に、自然周期でということもあり得るんでしょうか。排卵誘発剤の種類を経口薬に変更すれば、リスクはきわめて低くなることではあるんですが。他に、生命的に問題があるというのであれば、麻酔をかけて採卵をするわけですから、麻酔薬でアレルギーを起こす人もいれば、麻酔がうまく効かなくて痛い思いをする人もいるかもしれませんし、針を腟からお腹の方に刺すわけですが、当然、出血の問題、それから細菌感染の問題もあります。そういうような低い頻度のことを全部入れれば、都合の悪いことが起きることに関しては、かなりの可能性はあります。
 ただ、そうしますと、前にも吉村先生の講演にありましたように、今、生まれた赤ちゃんの65人に1人が、体外受精・胚移植であるということを考えますと、その方たちはすごい人数なんですけれども、あるいは成功してなかった方はもっとたくさんいらっしゃいますが、その方たちが生命のリスクを非常に感じていらっしゃるかというと、ほとんどそういうことはないわけです。ですから、当然、かなりのしっかりした管理と、いろいろな注意をして行えば、リスクとしてはそれほど頻度的に高いものではないはずです。しかし、私たちの分野では絶対大丈夫とか、そういうことは言えないということはあります。

【笹月主査】
 ありがとうございました。
 ほかにご質問ございませんか。では、安達先生、どうもありがとうございました。
 ただいまお話を伺いましたけれども、この委員会としては、もし委員の先生方でご希望があれば、この生殖補助医療の現場を見せていただくということを企画いたしました。委員の先生方、もしご希望があれば事務局の方にお伝えいただいて、どうせ行うとすれば、早い時期に行いたいと思いますので、事務局の方からよろしくお願いいたします。実際には事務局の方から個人的に問い合わせをしていただく、ということで行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それから、次に、この前慶應大学の久慈先生からお話をいただきましたが、そのときに、例えばヒトの精子と動物の卵子を用いた研究という話が出ましたけれども、これは動物とヒトとの交雑胚に関しましては、いわゆる特定胚として既にクローン技術規制法により規制されております。この点に関して、誤解とか、あるいは十分に理解が行き届いていないと、この委員会での議論を進める上で支障になりますので、事務局の方で、この規制に関して、もう一度ご説明いただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【石井生物倫理・安全対策室長】
 それでは、資料6でございます。「クローン技術規制法に規定される特定胚について」という資料のご説明をさせていただきます。
 本委員会との関係でいいますと、胚または配偶子を用いることについての規制として、既にある法律上の規制のご説明ということになります。「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」というのがございます。平成12年に制定されたものでございますが、この中で以下の9種類の胚を特定胚として規定し、その取り扱いを規制しているところでございます。
 この法律における胚の定義といたしましては、小さい文字で書いてございますが、「一の細胞または細胞群であって、そのまま人または動物の胎内において発生の過程を経ることにより一の個体に成長する可能性のあるものののうち、胎盤の形成を開始する前のものをいう」ということで、9つの胚を挙げてございます。
 胚の具体的な内容は、次のページの参考1のところに出てございますので、これに沿いまして1つずつご説明申し上げます。
 まず、人クローン胚でございます。これについては、ヒトの未受精卵の核を取り除きまして、ヒトの体細胞を移植したものを発生したものでございまして、これは人クローン胚というふうにいっております。これは配偶子、卵子を用いたものということになろうかと思います。
 それから、ヒト動物交雑胚でございますが、これは先ほどのお話にも出ましたが、久慈先生のお話で出てきた、人と動物の配偶子の間での交配ということで、例えばヒトの精子と動物の卵子を受精させて発生したものということでございます。
 続きまして、ヒト性集合胚でございますが、これはヒトの胚と動物の胚を混合させたものでございます。これがヒト胚を用いたものということの中で規制になるものでございます。
 それから、本委員会では直接関係ございませんが、4のヒト性融合胚ということでございまして、これは動物の未受精卵にヒトの細胞を移植するというものでございます。これはヒト性融合胚ということでございます。
 それから、次のページに参りまして、ヒト胚分割胚というのがございまして、これはヒト胚を分割したものでございます。先ほど着床前診断の話がありましたが、そういったものがこれの関係のものかと思います。これもヒト胚を用いたものでございます。
 それから、ヒト胚核移植胚というのがございまして、これはヒト胚のほかの未受精卵に核移植をするということでございまして、これも胚を用いたものということで規制対象になっているものでございます。
 それから、ヒト集合胚でございまして、ヒトの胚とヒトの細胞を混合させたものでございます。ヒトの胚を用いたもので、規制の対象になります。
 それから、動物性融合胚でございますが、これはヒトの未受精卵に動物の細胞を核移植するというものでございまして、動物性融合胚ということになります。
 それから、最後の9つ目ですが、動物性集合胚ということで、これは動物の胚にヒトの細胞を混合させたものでございます。
 以上、9つが法律上の特定胚として規制対象となっているものでございまして、1ページ目に戻りまして1.の2つ目の〇でございますが、具体的にはこの法律において特定胚の取り扱いは、「特定胚の取り扱いに関する指針」に従って行わなければならないということを規定しております。また特定胚の作成等に当たっては文部科学大臣に届け出ることとするというような規定がございます。
 2番目の胎内の移植の禁止ということでございますが、これら9つの特定胚のうち、人クローン胚、ヒト動物交雑胚、ヒト性集合胚及びヒト性融合胚については、法3条の規定により人または動物の胎内に移植することが禁止されております。
 それから、残りの5から9の特定胚については、これは法律上ではございませんが、指針の中で当分の間、人また動物の胎内に移植することが禁止されているところでございます。
 続きまして、特定胚の取り扱いに関する規制ということで現状でございますが、指針の第2条の規定により作成することのできる特定胚は、当分の間、ヒトに移植することが可能なヒトの細胞に由来する臓器の作成に関する研究を目的とする動物性集合胚、9でございますが、この動物性集合胚のみに限定されております。ほかの特定胚は、現在の指針上は作成することが認められておりません。しかしながら、人クローン胚につきましては、16年7月の総合科学技術会議の意見具申の中で、研究利用することについて限定して認めるという方針が出されておりまして、文部科学省の作業部会で、指針の改正に向けた検討を行っているところでございます。
 また、動物性集合胚につきまして、これは認められているところでございますけれども、今のところ特定胚の作成の届出が行われた事例はございません。
 また、先ほどお話がありました久慈先生のお話にあった動物の卵子にヒトの精子を受精させるという例で、ハムスターの卵子を用いたヒトの精子の受精能力試験につきましては、それは法に定める胚の作成に該当しません。これはヒトまたは動物の胎内において発生の過程を経ることに一の母体に成長する可能性があるという定義からいって、ハムスターとヒトの場合は、一の母体に成長する可能性があるということにはならないということで、これはヒト動物交雑胚の作成に当たるものとはされていないということでございます。
 以上でございます。

【笹月主査】
 どうもありがとうございました。
 これが平成12年度に規定されました「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」で定めたところでありますが、どなたかご質問、どうぞ。

【鈴木委員】
 先ほど、安達先生のお話にも出てきましたいわゆる卵子の若返り、卵の核置換ですけれども、私はずうっとヒト胚核移植胚に入るのかなとずうっと思い込んでいたのですが、確認させてください。

【石井生命倫理安全対策室長】
 私も正確に若返りの話、存じ上げませんが、一応、ヒト胚核移植胚の中で、そういったものが含まれるものがあるというふうに理解しております。

【鈴木委員】
 つまり、今現在は、指針による規制の対象になっているということですね。

【石井生命倫理安全対策室長】
 はい、そういうふうに理解しております。

【笹月主査】
 ほかによろしゅうございますか。ほかの委員の方々、よろしいでしょうか。
 それでは、この研究はまた後ほど、ご質問していただくということにして先へ進みたいと思います。
 次は、第3のヒアリングですけれども、国立成育医療センターの齋藤英和先生においでいただいております。委員の先生方、ご存じと思いますけれども、ヒトの卵子・精子あるいは受精卵を用いた研究ということが、私どもの委員会で議論すべきテーマの中に含まれますけれども、これに関しましては、既に産科婦人科学会が会告をつくっておりまして、それを用いた研究に関する登録、報告、そういうことを規定しております。
 そこで、本日は、日本産科婦人科学会の倫理委員会登録調査小委員会の委員長をされております齋藤先生から、ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する会告の内容、それからそれに基づく登録の仕組みなどにつきまして、お話をいただいて質疑応答をしたいと思っております。齋藤先生、ひとつよろしくお願いいたします。

【齊藤氏】
 よろしくお願いします。
 私、日本産婦人科学会で、倫理委員会の登録・調査小委員長をさせていただいている関係で、きょうお話しさせていただくんですが、倫理委員会の倫理委員長は吉村先生ですし、登録調査小委員会には石原先生がいらっしゃいますので、もっと詳しくは何回も2人の先生方から登録についてお聞きできると思います。きょうは、登録・調査の方法を、今までどのように産科婦人科学会で行ってきたかをお話ししたいと思います。
 きょうは、机上に2つの資料を持ってきましたけれども、こちらの綴じられた資料の中にもあるんですが、日本産婦人科学会で冊子にしたものが1つございます。これは日本産婦人科学会が今までにいろいろな会告を、その都度決めてきたものを一括して、毎年雑誌の1月号に、会員に注意を促すためにまとめて掲載したものです。これが1つ。
 それからあと、去年の8月号に掲載したものですが、これは表裏刷りになっておりますけれども、「会員へのお知らせ」として、この生殖医療に関して特に会員に注意を喚起するために、書かれてあります。
 この2つの資料をよく読んでいただくと、きょうお話しすること、すべて載っておりますので、私の拙い話がわからなければ、もう一度ここに戻っていただけると全部わかると思います。それでは、始めさせていただきます。
 きょう、ここでお話ししろと言われた題が、この4つの題です。登録のための提出に必要な資料はどういうものがあるのかということ、それから、倫理委員会、登録小委員会における審査方法と、その基準などはどうなっているのか、それから、会告に登録されている研究の内容はどういうものがあるのか、そして最後に、日本産婦人科学会が把握している範疇、この研究に対してどの程度把握しているのかということについて話してくれ、と言われました。この順序に従って話を進めていきたいと思っております。
 まず、最初に、きょう持ってきた資料にもございますけれども、我々は「ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する見解」というのを一番最初に昭和60年3月の会告で出しております。そして、平成14年1月にさらに会告を改編しておりますけれども、これは特にES細胞をつくるために、少しこういうような項目を変えようということの趣旨だったと思います。少し改定が行われていますけれども、一番最初に出されたのは昭和60年です。
 細かい内容になってまいりますけれども、後で、資料5にすべてのスライドのコピーがありますので、ゆっくり読んでいただけると、内容はご理解いただけると思います。研究の許容範囲、それからこういうような精子・卵子・受精卵の取り扱いに関する条件、研究後の処理の仕方、精子・卵子・受精卵を取り扱う者の資質を提出したり、最後、研究の登録と報告などを規定した見解を出して、このような研究に対して登録と報告を義務づけております。
 登録のために提出が必要な資料ですけれども、ここに書きました登録申請のための申請用紙があります。後で具体的な申請書はごらんになれると思います。それから、研究実施責任者の履歴書、研究実施者の履歴とか、非医師協力者の履歴書、それから、この研究の目的とか方法の内容について、詳細に書かれた文章も提出していただきます。それによって審査します。
 それから、体外受精とか、顕微授精には倫理委員会は要らないんですが、研究に関しては施設内に倫理委員会をつくって検討していただくことをお願いしております。それの許可書の写し、及び委員の名称、役員、役職名なども必ず記載して出し、それに使用する精子・卵子の提供者の同意を含めたインフォームド・コンセントの用紙、それから研究に関する説明のための文書も出していただいて、これをもとに審査してまいります。
 これが申請用紙ですけれども、こういうような内容で出していただいております。それから研究者の責任者の履歴なども、このところに挙げて、どのような研究をしてきたのかということも調べて検討の内容とさせていただいております。
 同様に研究実施者の履歴とか、非医師の協力者におきましても、どのような仕事をしてきたのかということまでを含めて、この研究に携わる方の技術的な資質を一応チェックさせていただいております。
 さらに、それを補足する意味で、去年の8月号に載っているんですが、「会員へのお知らせ」で、またさらに注意を喚起しております。その中で、体外受精、顕微授精、いろいろな項目に関して注意を喚起しています。その中でヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関しても、一応重要な項目に関してピックアップして注意を喚起しております。そして特に注目していただきたいことは、これをゆっくり読んでいただけると、その内容はうなずけると思うんですけれども、この研究の実施状況を把握するために研究登録施設は毎年度末に研究成果の報告書を提出していただくということで、一応やっている内容はどの程度の進行をしているのか、どのような状況にあるのかを、毎年、チェックさせていただくようにしております。
 「会員へのお知らせ」の中には倫理委員会の規定もつけている。特に生殖医療を行うほど大きな施設では、しっかりとした倫理委員会ができて十分討議されているんですけれども、この生殖医療を取り巻く環境では、個人医院、または数名の方で行っているところが結構多くなってきて、そこで研究を行う方も多くなってきています。ですので、そこでも、ある程度の倫理委員会の中立性を保つために、基本的なことなんですけれども、書面で会員にお知らせして、そのような方向で倫理委員会をつくって審議していただきたいということも、注意を促しております。
 特に、先ほどの申請書のところで漏れていたと思われるんですが、倫理委員会の審査記録を添付することということで、こちらの方も記して注意を促してあります。
 我々はいろいろな施設からの登録を審査してまいりました。そうすると、いろいろなところで、いろいろな不備がございました。特に、審査委員の先生、私を含めて石原先生方なんかも、よく気づきましたが、不備があることを会員の皆様にも理解していただきたいと考えています。不備のあるインフォームド・コンセント、説明の中には、本当に患者さんが理解して、それに同意しているのかというのを疑いたくなるような複雑な文章が多くみうけます。この要点をまとめて、今後、会告、お知らせの中に載せて、会員に注意を促していきたいと考えております。
 その内容は、読んでいただければ、もう本当に常識的なことなんですけれども、例えば「説明を受ける人が容易にわかるような平易な文章である」、こんなのは当たり前のことなんですが、我々審査させていただいている中で、どうしても複雑に書かれている、本当に素人の方がすぐ理解できるような言葉で書かれていなかったことが多いようです。今まで審査した中での経験を生かして、文章としてお知らせの中に載せて、会員の皆さんが、研究をするときに、こういうように説明書をつくっていただきたいという項目を挙げました。
 特に、説明書の7番ですが、カウンセリングの機会も結構充実させていかなければいけないということで明記しましたし、また、我々の学会に報告していただくということを義務づけておりますので、いろいろな説明をとるときに、学会への報告に関するインフォームドの記載なども含めて書くようにと、注意を喚起して書いてございます。
 審査方法でございますけれども、このように申請されたものを審査して、承認するか、不受理にして検討しております。承認された場合には、実施していただいて実施報告書を出していただき、それをまとめて機関誌に掲載します。または報告の義務を怠った場合には、登録の抹消ということがございます。
 これもお知らせの中に書いてある文章なんですけれども、最後のところです。「正当な理由なく、3年以上の報告義務があった場合には、登録を抹消することもある」。これは、ただ3年待って来なかったから、ぱっと登録を抹消するのではなくて、何回か催促して、出していただくことをお願いしてもだめな場合には、こういうことを行う場合があるということであります。
 我々、登録調査委員会の大体審査の基準的な考え方ですけれども、臨床研究みたいなものの中でも、従来の治療の範囲の中で、患者の不利益がないものは、審査の必要性はないと考えておりますけれども、それ以下の場合、例えば臨床研究の中で、従来の治療範囲の中でも患者への不利益がある場合は、一応審査させていただきたいと考えております。また、一般の治療を外れた新しい考え方なんかの治療でも、それが不利益がなくても、一応審査させていただきたいというようなことで、これが従来の治療範囲以外であり、不利益であれば、もちろん審査を考えております。また、ヒトの卵子・精子などを使う基礎的な研究はすべて、やはり審査の必要性と考えております。
 現在、この1月までの登録数でございますけれども、体外受精は658、凍結とか顕微授精とかは、こういうような数値でありますけれども、ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する登録は、現在55研究となっております。
 去年の1月に、今まで登録された研究を再調査、再登録をお願いいたしまして、そのまま継続しているのか、もう終了したのかどうか、ということを検討する調査をいたしました。そのときには86が登録されていましたけれども、10月の時点では49研究が継続しております。
 その内容の一例ですけれども、いろいろな研究があるのでございますけれども、特に体外受精、顕微授精に関連した臨床研究に近いものが、かなり大半を占めております。ここでも挙げたようなヒト体外受精・胚移植の基礎的、臨床的研究、中身はこれだけではわかりませんけれども、そういうような臨床に関係したようなテーマが、かなり多く含まれているのが実情でございます。それ以外、いろいろな研究がありますが、幾つか挙げてみました。
 最後に、私たち登録調査委員会で、このような審査、登録などを行ってますが、問題点を常に考えながら、今後どうしたらいいかとかと考えております。それにはどういうことがあるかといいますと、我々は申請された案件のみを審査していること。実際、申請されない方もあり得ることです。我々、申請されたものに関しては一生懸命審査しているんですが、そうでない部分があるということ、どうしたら全員に申請してもらえるのだろうかというのを、悩んでいるのでございます。
 それから、その審査は書類のみであること。書類で、なるべくその人の資質とか、術者の技術の資質とか、研究予算とか、その施設の設備がよくわかるようになればいいわけなんですけれども、必ずしも、書面だけだと、実際を把握できない部分もございます。
 それから、その審査で研究が施行された場合でも、どの程度、正確に実行されているのかが、書面ではなかなかわかりにくいというような問題点もございます。この辺が、限界かなと考えているのです。この解決法として、審査体制をのようなことに対して充実すること。我々、今、6名の審査委員で審査しておりますけれども、もっと人的な充実を図らなければいけないし、これに対する経済的なサポートも必要だろうと考えますが、学会一つでできるか、なかなか難しいところもございます。そのように考えておりますし、できれば、この資質とか、研究の状態を見るために査察などができれば一番いいだろうなと考えております。それには人的、例えば医学に精通した方と、事務に精通した方がタイアップして、査察していくようなシステム、またはそれをサポートする経済的な支援が必要と考えます。それから、こういう問題は短期間、例えば何とかの研究といって二、三年の研究だけでは難しい問題で、10年、20年、できれば30年、50年というような長さで継続していくことが大切であろうと考えております。
 そして、また登録する施設も、罰則をつけるのか、また逆に登録することにかえってメリットが出るような方向にすることも考えるのが必要と考えながら、このような検討をしております。
 以上です。

【笹月主査】
 齋藤先生、大変ありがとうございました。この委員会には、日本産科婦人科学会の倫理委員長を務めておられます吉村委員、それから不妊学会の倫理委員長の石原委員がいらっしゃいますが、お二人から何かお追加、ございませんでしょうか。
 それでは、その他の委員の方から、どうぞ、ご質問いただけますか。どうぞ。

【加藤委員】
 毎年、どのくらい提出書類が出てくるんですか。書類をつくって、登録のために提出が必要な場合というのが幾つかあるわけですね。毎年どのくらい件数があるんですか。

【齊藤氏】
 新しい研究に限ってでよろしいでしょうか。大体約10件前後ぐらいが出てきております。

【笹月主査】
 どうぞ。

【高木委員】
 ヒトの精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に、ある産婦人科の病院が提供する場合、産婦人科学会に報告をすることになるのでしょうか。

【齊藤氏】
 産婦人科学会の方も報告いたしますし、その研究施設の方でも、それなりの倫理委員会で、しかるべきところに報告をしているはずです。

【笹月主査】
 研究をする機関は、その機関のIRBでの審査を受けるとか、そういうことはこの規定では決められていますか。

【齊藤氏】
 この規定では、施設内での行う範疇に関して、その施設で行うことを倫理委員会で……。ですから、例えば別のところ、提供されたところは、また提供されたところにもよりますけれども、その方が提供する産婦人科施設の倫理委員会の中に来られて、説明している。その研究の内容を把握しなければいけないわけですから、両方の施設で行っている。

【笹月主査】
 研究を実施する機関の倫理委員会には、当然かけられているわけですね。

【齊藤氏】
 はい、かけられています。

【笹月主査】
 どうぞ。

【小澤委員】
 保存施設における設備基準とか、あるいは品質というのはおかしいですけれども、感染がないかどうかとか、いろいろな検査項目の基準とか、そのようなものは決められているんでしょうか。

【齊藤氏】
 体外受精とか、顕微授精とかの場合、どういうものが必要なのかということに関しては十分決められております。クリーンルームが必要だとか、そういうようなことです。ただ、研究に関しての基準というのは、1枚の紙に挙げられた裏側に書いてあるような、「望ましい登録施設基準」の中に書いてある程度ぐらいです。これは体外受精と顕微授精含めての話なんですけれども、こういうような基準の中では、例えば採卵室の場合、その他の設備での場合、こういうようなものが必要だとか、そのぐらいのことが決まっています。研究だけに特化したものというのはありません。

【笹月主査】
 ほかにどなたか、どうぞ。

【鈴木委員】
 一つ、ちょっと確認なんですが、先生、7ページのスライドの「倫理委員会-登録・調査小委員会における審査方法・基準1」という、これの内容というのは研究のことではなくて、ARTの登録施設の話ではないですか。

【齊藤氏】
 ARTもそうですし、研究もすべて含めて、この基準でやっております。

【鈴木委員】
 では、登録抹消ということもあるわけですね。それが罰則ということになるんでしょうか、先ほど最後のお話に少しありましたが。

【齊藤氏】
 実際はないんですが、そういうような規定を設けて、とにかく、なるべく皆さん、やったことに関しては学会に報告してください、という方向性を持っていっていることであります。

【鈴木委員】
 あと一つ、二つ、関連でよろしいですか。

【笹月主査】
 どうぞ。

【鈴木委員】
 基本的には、前も現在も、まず施設内倫理委員会を通ったものしか受け付けていない、ということになっているわけですよね。それは施設内倫理委員会のレベルというか中身にも、当然よるわけですけれども、かなりきちっとした倫理委員会を設けている施設で、とりあえずオーケーが出たものを学会が審査あるいは登録することの、今日的意義というのはどこにあるんですか。

【齊藤氏】
 学会としても、各施設がどのようなことをやっているのか、まとめて登録しておかなければいけないというのが一番の目的で、その内容に関してやってはいけないとかいうようなことではない。学会として、全国のこういうようなことを治療している方が何を行っているのかを把握しておくというのが一義的です。ちゃんとやっている施設に関してはですね。やっていない施設に関しては、もうちょっといろいろなことをお願いして、ちゃんとした倫理委員会をつくってくださいとかということも言っていくことはありますが。

【鈴木委員】
 もう一つ最後の質問ですが、登録しないことによるデメリット、つまり、研究登録をしていなければ、恐らく学会誌とか学会での発表はできない、ということはあるかもしれませんが、いきなりサイエンス誌に発表するということは可能なわけですよね。

【齊藤氏】
 もちろんそうだと思います。

【鈴木委員】
 ありがとうございます。

【笹月主査】
 位田委員、どうぞ。

【位田委員】
 今の鈴木委員のご質問は、登録制度の実効性という話なんだろうと思うんですけれども、私もそれで五つ、六つ続けてご質問したいと思うんですが、1つ目は、この資料の5ページ目、「会員へのお知らせ」の倫理委員会に関するところで、「倫理委員会を設置することが望ましい」と書いてあるので、「設置しなければならない」とは書いていない。したがって、ある施設で研究をするときに倫理委員会がなくても、登録をすることはできるのではないかと思いますので、その点がどうか。これが質問です。
 2つ目は、この横長の紙の表側の登録申請制度のところで不受理というご説明があったのですが、これまで、かなり多くの件数のある、不受理になった件数というのは、実際、幾つぐらいあったか。先ほど10件ぐらい新しい研究が出てくるとおっしゃいましたが、出てくるのが10件で、例えば8件ぐらい受理をして、あと2件は審査をしてだめだというふうにするのか、その辺の数字をちょっと教えていただきたいと思うんです。
 それから、3つ目に、多くの研究の中で、実際に胚を作成しているであろうと思われる研究というのは、具体的に何件とは申しませんが、どの程度あるものでしょうか。先ほどの最後の方のスライドでしたでしょうか、研究題目一覧を見ると、必ずしもすべてがすべて、胚をつくっているわけではないように思いますので、その辺がどうかなというふうに思います。
 それから、あと2つあるんですが、1つは、説明、インフォームド・コンセントだと思うんですけれども、資料の6枚目のインフォームド・コンセントに関する下側のスライドですが、この説明書というのは、治療法の位置づけとか書いてあるんですけれども、確かに、例えば体外受精をするときに説明をされる、これはよくわかるんですが、登録されようとしている研究についての説明については、どういうふうにやられているのか。ちょっと研究のときには治療法の位置づけとかいう話ではないと思いますので、それでどうなのかということでございます。
 それから、最後の質問は、資料の7ページですが、審査のときに患者に対する不利益がある場合には、審査の必要があるというふうにおっしゃっているんですけれども、その場合の不利益というのは、どういうものを、不利益があるないという判断の、利益・不利益というのは、どういうふうな基準でされているのかということをお尋ねしたいと思います。すみません、たくさんですが。

【齊藤氏】
 では、最初からお答えしたいと思います。まず一番目の、「倫理委員会があることが望ましい」と書いてありますけれども、研究の場合には必ずつくっていただくということでお願いしております。ですので、ないところは受け付けておりません。
 それから、研究の受理率ですけれども、特に多いのが、どうしても臨床研究が多いので、受理率というのはかなり高いと思います。それで、このヒトの卵を研究に提供するというのは、かなり何回か行き来して照会とか、返却とかいうのを繰り返しておりますので、内容にもよるんですけれども、臨床応用的なものはかなり多くて、単に受理率といったら8割、9割ぐらいにはなってしまうんです。内容的には、基礎のものはかなり何回も行き来しております。
 それから、胚の作成に関する研究はどのぐらいあるのか。胚というのは、治療のための胚ということでよろしいんでしょうか。

【位田委員】
 いや、研究の中で。

【齊藤氏】
 研究のための胚というのは、かなり少ないです。治療関係のために、先ほど2番目でも言いましたように、治療目的の研究が多いために、大体8割前後ぐらいはこういうようなことで、単に研究のためだけに胚を作成しているというのは、本当に1割あるかないかだと思います。そういうようなときには、いろいろな問題点に関して何回も照会を出して、1回で通るということは、まずないことの方が多い。
 それからあとは、4番目は研究のための説明。申しわけないんですが、この6番の説明はすべて治療も研究も含めております。こんなところがいつも欠けていると、網羅した形で書いておりますので、治療の位置づけという書き方で書いており、研究の場合は治療の位置づけはないわけですので、研究の場合はこれは抜いて考えていかなければいけないと思っております。
 そして、最後に、患者への不利益に関してですが、特に一番多く思うことは、精子は余り問題にされることが少ないのですが、卵子が何らかの形で使われるときに不利益が出てこないだろうか、ということが一番問題で、患者にとって治療に使える卵が減ることがあり得ないだろうか、そのようなところを見ることが、一番多いと思います。

【笹月主査】
 今の議論の中で、研究と治療というところは非常に仕分けが必ずしも容易でない。純粋な基礎研究あるいは臨床応用のための研究、あるいは臨床応用そのもの、さらには治療、その辺の区分けが非常に難しいと思うんですけれども、産科婦人科学会としてはその辺の考え方、区分けというのはどういうふうにしておられるのか、考えておられるのかを、ちょっとお聞かせいただければ参考になると思いますが。

【吉村委員】
 治療となりますと、夫婦間で卵子を使ったり、精子を使ったりという治療が研究に結びついていくということがあるんですが、厳密な意味で、治療と研究ということについては、夫婦間以外では余り考えにくいと考えています。治療が研究に結びついていく場合はですね。

【位田委員】
 今の点で、そうしますと、AさんとBさんというカップルがいて、先ほど臨床研究とおっしゃったのは、AさんとBさんの精子と卵子を使って受精の研究をする……。

【吉村委員】
 臨床研究というのは、どういうものを臨床研究というかが非常に難しいところで、着床前診断を臨床研究としてやっていますね。その辺の定義が非常に難しいんですけれども、齋藤先生がおっしゃったことは、要するに治療を目的とした研究というのは、夫婦間と考えてくださって、今のところはいいのではないかというふうに思います。極めて珍しい例外はあるかもしれませんが。
 それから、受精卵と胚をつくるということに、先ほどご質問がありましたが、胚をつくるということについても、使う卵子というのは恐らく非受精、文科省でよく言っています非受精。未受精ではなくて非受精というものを使うことがほとんどですので、それ以外の新しい卵子を使うということはありません。ちょっと温度差があるかもしれませんが、非受精というものしか使わないというご理解でいいと思います。

【位田委員】
 そうすると、臨床研究と基礎研究と、さっきおっしゃったんですが、基礎研究というのは、具体的にはAさん、Bさんというカップル以外の研究というふうに考えた方がよろしいんでしょうか。

【吉村委員】
 ちょっと、もう一度お願いします。

【位田委員】
 要するに、カップル、ご夫婦。

【吉村委員】
 基礎研究と申しますのは、例えば卵を遺伝子レベルで調べるとか、そういった研究になっていく。受精に対する研究ということは比較的少ない。例えば受精後に発現してくる遺伝子を調べるとか、そういうことはありますけれども。ですから、そのカップルに役立つという基礎研究というのは比較的少ない。将来的には役立つかもしれないけれども、個々の例を挙げますと、1例1例、検証していかなければいけない点は幾らでもあると思うんですけれども。

【笹月主査】
 例えば、精子だけをターゲットにした研究というのも恐らくあると思うんですけれども。

【吉村委員】
 そういう基礎研究というのは結構多いと思います。精子は非常に使用しやすいということもありますから。

【笹月主査】
 逆に言えば、精子だけをターゲットにした研究は、もう自由でいいじゃないかみたいな、そういう考えはありませんでしたか。

【吉村委員】
 自由でいいのではないかというのは……

【笹月主査】
 そう思っているのではなくて、議論の中で……

【吉村委員】
 70パーセント以上は精子を使った研究が多いんですね。ですから、そういう意味ではこういった研究をしてはいけませんよ、というようなものは余りないというご理解で結構だと思います。

【笹月主査】
 そうすると、精子だけ、あるいは卵子――卵子の場合には、またどうやって卵子を手にするかということが問題になりますけれども、精子だけをターゲットとした研究も、やはりこういう一括した中に含ませるということで、初めからスタートされたものですか。

【吉村委員】
 そうですね。

【笹月主査】
 わかりました。

【高木委員】
 2ページ目の、ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する見解で、研究の許容範囲のところなんですが、「なお、受精卵はES細胞の樹立のためにも使用できる」ということが書いてあります。今、クローン胚からのESということもありますよね。それは、研究の許容範囲なのか、今検討されているのか、どうなんでしょう。

【吉村委員】
 これは私が答えた方がいいと思いますので……。
 平成14年1月に、樹立機関が中辻先生のとろでされる。私どもも提供機関になったんですが、その際に、日本産科婦人科学会としては、そこの前に書いてございますが、「生殖医学発展のための基礎的研究並びに不妊症の診断治療の進歩に貢献する目的のための研究に限って」と書いてありますので、こうなりますと、ES細胞の樹立のために受精卵を提供することができないだろうと、できないという解釈も成り立つということで、当時、文科省から言われまして、日本産科婦人科学会はこのように会告を改定いたしました。このときにはクローン胚による
 ES細胞の樹立は全く考えておりませんでした。ですから、これでも恐らく拡大解釈しても、クローン胚によるES細胞の樹立のために使用できるという解釈にはならない。ですから、できない。改めてそういったことをつくらないとできないだろうと。

【笹月主査】
 ほかに、どなたかご質問ございますか。どうぞ。

【小澤委員】
 先ほど、細胞質の入れかえで、カルシウム云々のお話もありましたけれども、ミトコンドリアを入れかえるということに関する議論は、何か学会の方ではされていますか。

【齊藤氏】
 ないです。まだしておりません。

【笹月主査】
 星委員、どうぞ。

【星委員】
 先ほど、齋藤先生もちょっとお話ししたと思うんですが、アメリカで、体外受精や顕微授精を行っても受精・初期発生がおこらないケースがおりまして、たまたま同時に若いカップルの顕微授精が行われており、その余剰卵の細胞質を、前述の卵に入れたところ、見事に受精して子どもが生まれたという報告がありました。それ以来、アメリカでは30人くらい子どもが、そういう方法で生まれているはずです。しかしそれらの児のミトコンドリアDNAを調べたところ、ヘテロプラスミーであった、要するに移植した細胞質の中のミトコンドリアが残っているということがわかりました。従来の生物学的見解からは考えられない個体ができてしまったということで、アメリカでこの方法を使った体外受精は禁止されております。もう今はアメリカではやっていないと思いますが、台湾では、本人の他の細胞からとられたミトコンドリアを卵の中に入れて、体外受精や顕微授精を行って子どもをつくっています。本人の他の細胞のミトコンドリアですからミトコンドリアDNAはホモプラスミーになるということで許されるんではないかと思います。しかし、日本ではまだ、このような臨床応用の論文は見たことがありません。

【笹月主査】
 ありがとうございます。
 先ほどもちょっと話題になりましたけれども、こういう会告の登録制度の効果と実効性とが常に問われると思うんです。国内のレベルで、全く勝手にやる、あるいは学会員が行うということに、もちろんこれは何も効果を発揮しないわけで、そういう実効性ということに関して、何か特に学会として工夫しておられるようなことがあれば、今後、国のものをつくる場合にも参考になるかと思うんですが。

【吉村委員】
 おっしゃることは非常によくわかるんですが、私たちとしても、これは自主規制のみであります。例えば以前にも、今から五、六年ほど前に、こういった研究に対する登録をしてなくて新聞に載ったということが多々ございました。ですから、そういったときには、そういった研究者を呼んで、なぜ登録しなかったのか、というようなことはやりましたけれども、あくまで自主規制ですので、やっていなかったからどうだと学会が言うようなものではないと、私は思います。ですから、もしこういったところでガイドラインをつくり、ES細胞と同じように考えていくという立場をとるということであるならば、それはそういったガイドラインでよいと思います。学会としては、先ほど齋藤先生もおっしゃいましたが、すべての研究を把握しているわけではない。ただ、自主的にこういった研究をしたいということを登録してくださったところは把握している、というご理解で結構だと思います。

【笹月主査】
 それともう一つ、もっと根源に戻れば、そういう新しい治療法、あるいは治療法のための研究ということに関して、いろいろな問題が当然あるわけでしょうけれども、そのときに、今先生がおっしゃった、これは何も批判、クリティシズムとかそういうことじゃなく、単に物の考え方としてちょっとお伺いしたいのは、そういうときに自主規制で行きましょうということなのか、それとも初めから、国に働きかけて、何か国としてガイドラインをつくるべきではないか、あるいはつくってほしいという働きかけとかに関して、そもそものところで議論はあったんでしょうか。あるいはそういうことは全然お考えにならなかったんでしょうか。

【吉村委員】
 これはあくまで私の個人的な意見として述べさせていただきますと、非常に難しい問題だと思います。総合科学技術会議のお考え方を言いますと、「緩やかな規制」というふうに書いてありまして、要するにガイドラインよりももっと緩やかな感じを、私はそういうイメージを持って新聞を読んでおりました。総合科学技術会議がどのようなご判断をされるか、本来でありますと、緩やかななガイドラインがいいのではないかなと、私は思うんですが。学会としては、あくまで自主規制にしていただくという方向でしか、まだ今のところは出ておりません。とにかく規制していこうとか、発表していなかったらだめ、要するに、報告していなければだめだとかいうようなことはしていない。

【笹月主査】
 例えば移植のようなときにも、まず医療が先行して、そのための基礎研究が登場して、それらについての、何かガイドラインが必要だろうということで、だんだんガイドラインなり法律が整備されるような感じですが、法の専門家として位田委員から、私の個人的な疑問というか、非常に素朴な疑問なので、ちょっとその辺、解説していただくと有難いのですが。

【位田委員】
 私も笹月先生と同じような質問をしようと思っていたのですが、つまり、これまで産科婦人科学会が任意団体として自主規制をされている。それはそれでワークしていると思うんですけれども、今度、国がガイドラインをつくったときに、先ほど「緩やかな」とおっしゃった、その意味が、若干微妙なので、それは余り問い詰めないことにいたしますが、国がガイドラインをつくれば、少なくとも生殖補助医療に関しては、法律はありませんし、クローン技術規制法はヒトとヒトでやっている分には、恐らく関係がないでしょうから、今までの産科婦人科学会でやっておられる限りは、余り問題ないと思うんですが、しかし、国でガイドラインをつくるとすると、罰則で、何らかの不利益、処分ではなくて事実上の不利益が生ずる可能性があり得る。そういう形で、つまり国がガイドラインをつくることによって、何らかの、現在、産科婦人科学会が行われているような規制よりも、強い規制がかかる可能性があるということについて、産科婦人科学会の吉村先生の個人的なご意見で結構ですが、どうお考えなのか。それはやはり、規制の実効性という問題だと思うんですね。

【吉村委員】
 初めから核心に入ったような感じなんですが、私、ES細胞を提供させていただいたときに、これは本当、大変だったんですね。もし、研究にこのようなものが当てはまるとすると、ほとんど研究はできなくなるくらい大変さで、中辻先生のところの樹立機関も極めて大変だったと思います。私ども提供するだけでも、あれだけ大変だったということになりと、例えばこういった研究をする場合に提供機関も出てくる可能性もありますし、中辻先生から頼まれましたから、私どもは日本の医学のために、犠牲的精神を発揮して提供機関にならせていただいたんですけれども、これはかなり大変ではないかなと思うんです。ですから、私はいいかげんにやりなさいということを言っているわけでは決してなくて、ああいった厳しい規制だと、研究というのはやる人がなかなかいなくなってしまうのではないかな。我々は臨床医ですし、臨床が主ですから、研究は主ではなくて従ということになります。ここまで規制がかけられますと、なかなか難しいところがあるのではないかな、というのが私の本音でございます。

【位田委員】
 私は反対意見を書いた側としては、実効的な制度でないと、余り意味がないと思って、本来なら法律をつくるべきだと思っているんですが、それは今、申し上げないことにして、ひとり言と思っていただいて……。
 ただ、少なくとも総合科学技術会議で議論していたときに、産科婦人科学会のこれまでのような自主規制では、実効性がないとは申し上げませんが、産科婦人科学会の方で罰則があるとしても、つまり登録が抹消されるとしても、無視してしまえばできないわけではありませんし、最終的に退会処分がなされても、産科婦人科をやめないで済むわけですね。実際にそちらの方がはやるという可能性も全くないわけではない。それは余り褒められたことではありませんけれども。そういう状況があるので、もちろん生命倫理専門調査委員会の中には、産科婦人科学会に任せるのがいいんだとおっしゃる先生もありましたが、当時議論していたその近辺の何年かで生じた第三者からの卵子提供とか、そういう問題のことを考えて、産科婦人科学会に完全に任せてしまうというわけにはいかないだろう。そういう意味を込めて結局国の、ガイドラインというところで落ちついたんだろうと思うんですが。

【吉村委員】
 先生、日本産科婦人科学会で研究に対する登録調査をやりたいということは、私は全然思っていなくて、私たちは手を放したいと思っているんですね。物理的にすごい大変ですし、だから、公の機関でやっていただけるのならば、やっていただいて結構です。しかし、その手続論として、緩やかなガイドラインにしていただきたい。そういう意味なんです。ですから、私たちは日本産科婦人科学会でこういうことをやるということについては、本来なら余りやりたくないと、私自身は思っています。物理的に結構大変ですから、こういった機関は国の機関とか、第三者機関とか、そういったところでやっていただければありがたい。ただ、手続上のことについては、もう少しES細胞の提供とか樹立よりは、緩やかななガイドラインにしていただきたい。学会を離れることについては、大賛成であると、私たちは思っていますけれども。

【笹月主査】
 緩やかか厳しいかというのは今後のテーマですので、ここでは論じませんが、先生に伺った疑問は依然として解けていないんですけれども、先生からごらんになると、それほど大事なことで厳しく、法律でもつくるぐらいだというようなことが、法律云々はやめにして、今、出てきたというのは、そういうことに関しては、学会としてはやらなくてもいいんだということなのか、あるいは私が最初に質問しましたように、学会の方から、これは学会のテーマではなくて、国でそういうガイドラインをつくってほしいとか、先ほど伺ったのはそういう意味なんですが、そういうことは考えられなかったのかということです。あるいは当事者からではなくて、社会から見て、これはガイドラインを早急につくるべきだというふうなことが、今まで出てこなかった。だから、一般論としてそういうものが、どのような形で本来登場すべきなのか、結局、いろいろな問題が起こって初めて出てくるのかもしれませんけれども、そういうことを、さっきちょっと伺ったわけなんです。

【位田委員】
 私が法律と申し上げたのは、いろいろな種類がありますので、法律をつくって処罰しろという趣旨では必ずしもなくて、人の生命の初めから終わりまでに関する限り、基本原則を書いた法律はあった方がいいだろうという意味の法律です。具体的な規制のやり方については、その法律をもとにしてガイドラインをつくっていけばいいのではないか、という話なので、私自身は、どうしてもガイドラインじゃなくて法律で全部縛れと言っているつもりはないんです。
 なぜ産科婦人科学会の会告ではだめで、国が、という話なんですが、それは恐らく、例の第三者からの卵子提供とか、着床前診断の問題とか、そういうのが、ある意味では立て続けだと思うんですけれども、何度も出てきて、では産科婦人科学会が実際に倫理委員会を開かれ、もしくは制裁について議論をされた結果、どういうことが起きたかというと、実は最大の制裁が、退会させるだけであって、我々、法律側から言わせると、ほとんど何の規制にもなっていないではないか、本当にそれでいいのかという話が、ESの話とクローン胚の話が、ずうっと上がってきた段階で出てきたので、やはりこれは産科婦人科学会に全部お任せするわけにはいかないだろう。そうすると、では、国が何らかの形で枠組みをつくる必要があるのではないかと、そういうふうになってきたんだと、私は理解しております。

【笹月主査】
 総論的にはこれまでにしたいと思います。いろいろヒアリングもこれまでいたしましたし、勉強会もいたしましたので、次回から実際の審議に入ることになると思うんですけれども、その審議の進め方、どういう項目について考えなければいけないのかという項目立てに関しまして、事務局で少し整理をしていただいておりますので、これについて事務局からご説明いただけますか。

【石井生命倫理安全対策室長】
 それでは、資料7でございます。今、笹月主査の方からお話がありましたように、今後の検討を進めると当たって、具体的にどのような項目を検討していくのかというのを、前びろに拾い出したものが、この資料7でございます。前びろにということで、この資料に記載しているものが、すべてガイドラインに盛り込まれるというような趣旨ではございませんで、こういったことを入れるのか入れないのかということも含めてご検討いただくのではないかと、私どもの方で考えているものを挙げております。
 まず、総論的事項でございますけれども、1として、指針(ガイドライン)に定める内容のあり方ということでございまして、ガイドラインで何を規定することとするか。ガイドライン、ほかにもいろいろございますが、いろいろな種類のガイドラインがございます。研究者が守るべきことを単に決めるのみ、というものもあれば、具体的に研究実施のための手続、中の倫理審査委員会の手続であるとか、さらには国に対する申請手続などを定めるものもございます。このガイドライン、何をどこまで提出するのかということが検討事項ではないかというふうに考えます。
 それから、2つ目は、国の関与のあり方でございます。もう今ほどかなりご議論がございましたけれども、研究実施のための手続について国が何らかの形でかかわることとするかどうか。また、かかわる場合、どのような関与のあり方が適当かという議論でございまして、ガイドラインは国が作成し、かつ国が審査を行うというやり方、またはガイドラインは国が作成しますが、審査は、例えば機関内で行わせる、または何らか別な第三者的な機関に審査をお願いするというようなやり方があるのかどうか。または、今、遺伝子治療の指針のように、必要に応じて国の方から意見を述べるというような手続のやり方もあろうかと考えております。また、逆に研究実施のための手続に、国がかかわらないということも考え方としてあろうかと思います。ただ、今ほどのご議論がありましたように、総合科学技術会議との関係では、国が何らかのかかわりを持つという前提で書かれているのかと思いますので、そういった点の整合性をどうするかという点を検討する必要があろうかと思っています。
 それから、2.規制対象の範囲でございます。(1)として規制の考え方でございます。どういう考え方に基づいて規制をするのかということでございまして、1として、ヒト受精胚についてでございますが、ヒトの受精胚は、総合科学技術会議の意見具申の中に示されているヒト胚の取り扱いに関する基本的考え方において、「人」そのものでないとしても、「人の生命の萌芽」として位置づけ、特に尊重されるべきものであるという考え方が示されております。ヒト受精胚の取り扱いを伴う研究についての規制が必要と考えられるという、こういう考え方で規制を行ということでよろしいのかどうか。
 それから、2つ目は、ヒト卵子についてでございます。ヒト卵子はヒト胚とはまた別ということになろうかと思いますが、総合科学技術会議の意見具申の中では、採取に伴う肉体的侵襲や精神的負担、人間の道具化・手段化といった懸念があること等にかんがみ、入手制限、または提供女性保護のための枠組みの整備というのが求められております。こういった考え方に基づいて、ヒト卵子のみを取り扱う研究についても規制が必要という考え方でやるのがよろしいのかどうか、こういった点が検討事項として考えられると考えております。
 それから、一方、ヒトの精子の方でございますが、ヒトの精子については総合科学技術会議の意見具申の中では、特別の言及はされておりません。一方、先ほどの齋藤先生のお話もありましたとおり、現在の産科婦人科学会の会告によっては、ヒト精子を取り扱う研究についても登録というのを求めているところでございます。ヒト精子のみを取り扱う研究について規制の対象とすべきどうか。そういった点について議論することが必要と考えてよろしいかどうか、これも検討事項かと考えております。
 それから、若干、異質のものでございますが、生殖補助医療研究の性質について整理をしておく必要があるのではないかと考えております。胚・配偶子の提供者が、生殖補助医療の場合、過去の生殖補助医療研究の成果による恩恵を受けている受益者であるケースがほとんどであるというふうに考えられますので、規制のあり方を考えるに当たって、こういった点を考慮する必要があるかどうか、この点について、ご議論いただく必要があろうかと考えています。
 これは、具体的に申し上げますと、現在、クローン胚の関係の作業部会で、卵子の提供の議論をしております。クローン胚の場合、最終的な受益者になるというのは難病の治療の患者の方に対して、研究の成果が、いずれ行く。その難病の治療の患者という方と、卵の提供という集団が、必ずしも一致していないのに対しまして、生殖補助医療研究の場合、提供者と受益者がほぼ同じ集団、時期の問題があるにしても、ほぼ同じ集団であるということを考慮して、特に胚・配偶子の提供について考えるというようなことでよろしいのかどうか、こういった点について、ご議論いただくのはどうかというふうに考えてございます。
 その後に、若干の参考資料で総合科学技術会議の意見具申の抜粋、それから、もう既にご説明がありました産科婦人科学会の会告がございますが、これは省略させていただきます。
 続きまして、2ページ目の(2)でございますが、今ほどの規制の考え方に基づいて、ガイドラインの中で具体的に、どのようなものを規制対象にしていくのかという問題でございます。私どもで考えておりますのは、まず、配偶子を用いて胚の作成を伴う研究というのが1つあろうかと思います。それから、既に生殖補助の中で余剰胚、凍結したものが不要になったということで、余剰胚となったもの、これを使用する研究というのがあり得るのではないかと考えてございます。それから、卵子を単独で使用する研究、または精子を単独で使用する研究というのがあろうかと思います。これら、いずれもクローン法との関係についての整理が当然必要になってまいりまして、クローン法の規制がかかるものについては、法律でございますので、そちらで見られるという前提で考えていくのかと思いますけれども、こういった規制の対象範囲をどのように考えるのか、というのが論点になろうかと考えております。
 それから、(3)でございますが、研究の範囲についてどのように考えるか。これも先ほど、特に基礎的研究と臨床研究の範囲についてご議論がございましたが、これを区別する必要があるのかどうか、または区別できるのか、区別する場合に何が基準となるのか、という問題があろうかと思います。そもそもこのガイドラインで基礎的研究、臨床研究、いずれも規制対象にするのか、またはどこかで線を引いて規制するのかという問題も、この中で出てこようかと考えております。また、研究と医療の境界というもので、どこまでが研究で、どこからが医療かということも含めて考える必要があるのかと考えております。具体的には、例えば胚の胎内への移植を伴うか否かということを1つの境界として規制の考え方を整理するのかどうか、こういった点についてご議論いただく必要があるのではないかというふうに考えております。
 続きまして、3.の指針(ガイドライン)の実効性の確保ということでございまして、これは指針の実効性の確保を図るために、どのような方策が必要かということで、定期的な審査の必要性でありますとか、定期的な報告の必要性でありますとか、国による調査の必要性でありますとか、こういったこともご検討いただく必要があるのではないかと考えております。
 続きまして、3ページ目に参りまして、これはガイドラインを作成する際の各論的な事項になろうかと思いますが、検討事項として考えられるものを挙げてございます。まず研究の目的でございます。1.でございますが、認められる研究の範囲はどのようなものか。または研究実施の要件としてどういったものがあるのか、こういったものが議論いただくものとしてあるのではないかと考えております。
 それから、2番目は禁止事項でございます。研究のため作成した胚の取り扱いについて、胎内の移植であるとか、または培養期間などについての禁止事項というので、何かあるかどうか。または研究で得られた配偶子に加えてはならない操作というので、何か具体的なものがあるかどうか。研究に用いてはならない配偶子の分化段階などについて、具体的に何か決めるものがあるかどうか、こういった点について、ほかにもあるかと思いますが、ご議論いただく必要があるのかと考えております。
 それから、3.研究実施機関の要件でございますが、具体的には機関のこれまでの研究などに関する実績でありますとか、設備、能力などについて要件があるかどうか。それから、先ほどもご議論ありました倫理審査委員会の設置が要るのかどうか。設置するとした場合、どういった体制にする必要があるのか。また研究の体制、機関の長、研究責任者の役割などについて、何か要件が必要かどうかということでございます。
 ここのところには、参考として、吉村先生から大分厳しいというお話がありましたが、ES細胞の樹立及び使用に関する指針として、実際に要件を挙げております。詳細については省略いたしますが、こういった要件を何らかの形で決めるかどうかという点が、ご議論いただくこととして考えております。
 続きまして、4ページ目でございます。4.胚・配偶子の入手のあり方でございます。まずは胚・配偶子の入手方法として、どういったものが入手可能なのかといった点のご議論があろうかと思います。それから、胚・配偶子の提供に当たってのインフォームド・コンセントでございますが、説明者に求められる要件とか、説明内容といったものがあろうかと考えております。それから、カウンセリング体制、提供者の自由意思を担保する環境の整備として、具体的に何か定めるものがあるかどうかをご議論いただく必要があろうかと思います。それから、提供者の個人情報の保護として、配偶者間の配偶子を用いて胚を作成する場合、どうするか、または非配偶者間の配偶子を用いて胚を作成する場合、どうするか。また、胚・配偶子の提供と、それらを用いた研究が、同一機関内で行われる場合、どのようにするのかといった、細かい点でも幾つかご議論いただくことがあろうかと考えております。
 それから、5.の研究審査体制でございますが、これは総論の中でも国の関与というのがございましたので、そことの関係で、かなり具体的に方針が決まってこようかと思いますが、それらのほかに、機関における倫理審査委員会の審査のあり方として、例えば倫理審査委員会の構成でありますとか、特に構成として、こういったものについて、女性の割合について、生殖補助医療の特性を踏まえる必要があるのかどうか。または一般の立場に立って意見を述べられる者でありますとか、そういったものについて、生殖補助医療の特性を踏まえる必要があるのかどうか。それから、倫理審査委員会の規模として、研究実施機関の規模によって何らかの考慮が必要かどうかといったもの、あと専門分野でありますとか、そういった点について検討事項があろうかと思います。ここでもヒトES細胞の指針を参考として載せてございますが、ヒトES細胞の場合は、かなり細かく決めてございます。内容については省略させていただきます。
 5ページ目に行きまして、その他でございますが、あとガイドラインで定めておくべき事項として、どのようなものがあるか、例えば情報の公開でありますとか、記録の保存でありますとか、総合科学技術会議との関係、または、先ほどのクローン法の関係で要望がいろいろ出てまいりますが、ES細胞でも要望の定義がございますが、このガイドラインでの要望について、きちっと最初に定義が必要なのではないかと思います。そういった点の整理が要るのかどうか、そういった点についてご議論いただく必要があるのではないかということで挙げさせていただきました。
 以上でございます。

【笹月主査】
 どうもありがとうございました。
 非常によく論点をまとめていただいて、1番のフレームワークについて、それから各論について、ということで広く挙げていただいたと思います。もし、このほかにも、まだこういう論点もあるじゃないかというようなことがございましたら、ぜひご指摘いただければと思います。どうぞ。

【石原委員】
 今、先生がおっしゃったことと少し違うことで申しわけないんですが、先ほどからの議論を聞いておりまして、特に位田先生のお話で感じましたのは、要するに臨床的な話と基礎研究的な話が、少し混乱しているようなことがありまして、先ほど位田先生方が問題点として二、三の当事者能力というか、管理能力で問題があるとおっしゃられたのは、あれはすべて臨床応用に関することについての問題が起こって、いろいろもめたことなわけです。正直な話、研究関連のことで問題化していることというのは、着床前診断の問題があります。これはむしろ臨床的な話でありまして、そういう視点から行きますと、今回議論をしようとしているのは、主に基礎研究にかなり寄った部分の話を議論しようとしているわけでありますので、そのあたりのところを、ひとつご配慮いただく必要があるとのが第1点でございます。
 それから、第2点として、そうでありますと、今、事務局の方からご提案いただきました検討事項というのは、非常によく論点整理されたものであると思います。この検討事項の対象としているものが、基礎的なところに絞り込んで対象としているのか、それとも、もっと、それこそ卵子とか提供してもらうわけですから、臨床的に将来、第三者の精子や卵子を用いた体外受精などを可能にするというような方向も含めて、卵子・精子を研究に提供する、あるいは第三者に提供するということを議論しようとしているのか、それとも研究だけに絞り込んでいるのかというところを明確にして、議論を始めていただいた方がよろしいのではないかと思います。

【笹月主査】
 両省の専門委員会共通して、1つはヒト胚に関する研究、ヒト胚研究に関する専門委員会、もう一つは生殖補助医療研究の専門委員会ということで、あくまでも研究、生殖補助医療を、より改善するための基礎研究といいますか、「臨床研究」と「基礎研究」という言葉の使い分けは、どこでも問題になるんですが、そういう医療をよりよいものにするための研究ということでいいと思います。

【中辻委員】
 今の点で、全体の検討の目的なんですけれども、今、多分議論になっているのは、基礎研究であろうとも生殖補助医療を改善するためという目的を想定しているんですが、それだけではない気がするんです。どういうのがあるかというのは、また変化してくると思うんですけれども、ヒトの配偶子なり精子卵子を使うのだけれども、生殖補助医療の向上ではない研究も行われるとしたら、そのための国の指針なりガイドラインはどこにあるのか。ひょっとしたら、ここがそういうことを考える場なのではないかという気がするんです。

【笹月主査】
 幅広く、一方ではヒト胚研究に関する専門委員会ということですので、極端なことを言えば、それは病気ごとに、そういうものが必要ではないかということになりますので、ここでは生殖補助医療ということを掲げていますけれども、先生おっしゃるようにターゲットは、最終的にそれを応用した医療行為というものは、その延長線上にはあるかもしれませんね。そうしないと、一つ一つについての、脳神経疾患に関する何とか再生医療を目指したヒト胚研究みたいな……

【中辻委員】
 ヒト胚または配偶子を使う基礎研究があって、それの想定している目的が不妊治療でなくとも、そういうものを含めたものをつくることをしているんでしょうか。

【笹月主査】
 総合科学技術会議がそもそも言い出したのは生殖補助医療で、難病がまたそこに出てきたりして……。――どうぞ。

【石井生命倫理安全対策室長】
 総合科学技術会議の意見具申の中で、ヒト受精胚の取り扱いの検討というのがなされてございます。具体的に申し上げますと、緑色のファイルがございますが、この中の一番頭のところに、総合科学技術会議の意見具申があります。その中で、6ページ目から7ページ目にかけてでございますが、研究目的のヒト受精胚の作成利用についての検討がなされてございます。この項目の中では、本来、ヒト受精胚の研究目的での作成利用は、ヒト受精胚を損なう取り扱いを前提しており、認められないという原則の中の例外の条件を満たす場合として、認められたものは容認するという考え方になっていまして、具体的な個々の事例の検討では、7ページ目の中にございます。この中で、ア、イ、ウ、エというのがございまして、それぞれ検討がなされています。
 現時点で研究が認められておりのは、この中のアの生殖補助医療研究目的での作成利用と、ウのES細胞の樹立のための利用と、この2つでございまして、生殖補助医療の目的については、この場合に限定してということでございます。それから、ウのES細胞は既にES細胞の利用は認められて、指針もできているということでありまして、例えば、イの中にあり先天性の難病に関する研究目的の作成利用については、将来の課題として必要性が生じた時点で改めて検討するということになってございますので、この委員会の場では、基本的にはアの生殖補助医療目的での内容に限定してご議論いただくものと、私ども理解しております。

【笹月主査】
 ヒト受精卵の研究目的での作成利用に関しての限定ですので、例えばヒトの卵子や精子を使って受精胚をつくることがないような研究であれば、この限定には入らないのでしょうか。

【石井生命倫理安全対策室長】
 卵子の利用のことについては、この中では直接的に書かれておりませんが、この考え方で言いますと、今、この検討会の場でやろうとしているのは、卵子の利用についての総合的な検討ではありませんので、ここで検討するという趣旨ではないと思います。
 それから卵子について、例えばクローン胚のように、別な場で議論されているものも、当然そこで考慮されているものを考えなければいけないわけですから、いいというよりも、個別に検討しなければいけないという理解でございます。

【笹月主査】
 この点が、これまでの委員会でも何度も問題になって、繰り返し、常に、ややベーグなまま終わったんですが、今、ご説明がありましたように、意見具申の中の文言で、生殖補助医療のための研究ということで検討します、ということでよろしいですね。

【鈴木委員】
 全然、私、今のお話が理解できていないようなんですけれども、先ほど中辻先生がおっしゃったのは、ヒト胚研究というか、ヒトの胚なり配偶子を用いた研究に関して議論をしていくのかなと、むしろ思い込んでいたというふうに、今、言っておきますけれども、逆にいうと、生殖補助医療目的だけであれば、きょう、合同になっているところの意味というのを、もう一度確認させてください。文科省と厚労省で合同になっていることの意味、役目を。

【石井生命倫理安全対策室長】
 はい。私どもの理解は、生殖補助医療目的でのヒト胚と配偶子の利用した研究についてのガイドラインを策定すること、ということでございまして、その他の目的でヒト胚とか配偶子を研究に利用することを、この場でご議論しようという趣旨ではないという理解をしています。そういう意味で、内容的には厚生労働省さんの方のヒト胚というふうにいっていますけれども、内容的にはヒト胚と配偶子を生殖補助医療目的に使うことについての検討をやられているということで、名前は違いますが、内容的にはほぼ一致しているとというふうに、私どもは理解しています。

【笹月主査】
 そして、そのための国としてのガイドラインなり、規制、規定をつくるということが、文部科学省にも厚生労働省にも、総合科学技術会議から宿題が出されましたので、別々にやるよりは共通に議論して、最終的に共通のお答えを出しましょうというために、2つが一緒になった合同会議をしたんですが。――どうぞ。

【位田委員】
 今、室長がおっしゃったページの、もう少し後の17ページに、制度の内容というところがあって、2.の(1)の2つ目の段落ですが、「今回の検討においてヒト受精胚の研究目的での作成利用は生殖補助医療研究での作成・利用及び生殖補助医療の際に生じる余剰胚からのヒトES細胞の樹立の際の利用に限定して認めることとした」、これ以外のことは、実は何も触れていないので、いいとも悪いとも言っていない。それが1つあると思うんです。それで、この議論をしているときに、何が問題であったかというと、要するに、ヒトの胚がつくられて、それが破壊されるなら破壊される、もしくはそれを観察しながら研究が行われることが問題なのです。ヒトの胚というのは、本来は生命の萌芽だから、本来は子どもを生むためにつくられるにもかかわらず、研究に用いられることが問題なので、ヒトの胚、とりわけ受精胚について、どういう場合であれば研究が認められるかという制度をつくってくださいという、そういう趣旨だと思うんです。
 したがって、それ以外の研究については、もともと配偶子だけだと人間はできないというところから始まっているわけですから、それは総合科学技術会議で正面から議論をした問題ではない。ESは既に指針がありますので、残るのは生殖補助医療研究で、18ページの第2段落のところで、国がそういったヒト受精胚の作成・利用を計画している研究が基準に適合するかどうかを審査するための適切な枠組みを整備するんだと書いてあって、その次の段落に、文部科学省及び厚生労働省が、そういうガイドラインの具体的な内容を検討し、策定する必要がある、そういうちゃんと宿題がある。

【笹月主査】
 それが宿題ということ。

【中辻委員】
 そうすると、受精胚をつくるということが、人の萌芽をつくるということで規制があると。そうすると、配偶子を提供してもらって、受精胚をつくることはなくて、その配偶子を使って、いろいろな研究があり得る、ゲノムの研究なり何なりと。そういうのはこういう国のレベルでの規制を、今、提案されていることではなくて、通常の今までのさまざまな医学的な研究と同じような枠組みでやっていけばいい、というふうなことなんですね。

【石井生命倫理安全対策室長】
 基本的には個々の細胞とか、ヒトの資料を使う場合に必要なものというのは、最低限必要かと思っていますし、その上で、生殖細胞を使う場合、特に胚ができるという問題についての考慮が要るという部分がございます。そこについては、胚については、今、総合科学技術会議でやられた方針で検討するということになります。
 それから、具体的に明示されているところでいいますと、未受精卵の使用については、また別な重い問題を伴っているということから、これは当然、それなりの制約がなされるべきであるという考え方でございます。それについて、ガイドラインをつくって規制するのかという問題については、基本的には具体的な問題が出て、それがこういった形で規制から外れた形で利用されることになるのであれば、それは明示的に議論することになりますが、例えば受精卵について、生殖補助医療ですら、非常に厳しい利用しか認めていない状況で、何ら別な目的で、今、具体的に想定されるものを、私はよく存じ上げないんですが、それについては、ガイドラインに書いてないからいいということにはならない。むしろ、ガイドラインは基本的には生殖補助医療目的に限定したとしても、それ以外のものは、逆にそれを上回る正当性を有しているかどうかということで、具体的な正当性があるものであれば、当然議論の対象になろうかと思いますが、ここに出るものがない限りは、今の生殖補助医療に限定した議論で十分じゃなかろうかと考えております。

【中辻委員】
 あくまで受精胚をつくるというか、受精胚を使う場合には限定があるのはわかります。ですから、受精胚、配偶子も議論になっていますので、精子の提供とか何とかの研究が既に行われているわけですね。ですから、受精胚をつくるのではない、配偶子のみの利用に関して、少しいろいろな新しい研究が始まってきたときに、どういう対応があるのかということです。

【笹月主査】
 恐らく、生殖補助医療改善のための研究として、精子そのものの研究、卵子そのものの研究というのも当然必要で、そういうものもターゲットになろうかと思います。ですから、胚といっていますけれども、当然、精子・配偶子も含んで検討するということでよろしいんじゃないですかね。そして、それが、ターゲットの病気が別になるからガイドラインが変わるということも考えられませんし、ですから、生殖補助医療を目指した研究におけるヒト・精子、ヒト・卵子、ヒト・受精卵胚に関する検討ということでよろしいんじゃないかと思いますが。
 それと、あとは、こういうことを検討していく上で、先ほど来、例えばクローン胚の検討というのが行われていますし、それから、ES胞というのもありますので、その辺、一度ヒアリングといいますか、説明を伺うというのも意味があると思いますので、それも次回か何かに計画していただければと思います。
 もし、まだ何かお気づきの点が後であれば、事務局の方に、こういうことも検討すべきだという項目について、ぜひお伝えください。
 それでは、その他ということですが、事務局からよろしくお願いします。

【石井生命倫理安全対策室長】
 資料8でございます。本検討とは直接のつながりはないんですけれども、韓国ソウル大学調査委員会による調査結果という資料でございますが、卵子の提供に関して倫理的な問題があった件でございますが、この件について、本年1月10日に韓国のソウル大学調査委員会で報告がございましたので、それについてご報告させていただきます。
 18年1月10日、ソウル大学の調査委員会がファン・ウソク教授を中心とした研究チームが行ったクローン胚の研究についての研究成果の捏造疑惑と、それから卵子提供にかかる経緯等について調査結果を取りまとめたということでございまして、内容は以下のとおりということで、(1)の研究成果の捏造疑惑でございますが、これについては2つの論文がございまして、1つは平成16年2月にサイエンスに発表された、最初にヒトクローン胚からES細胞を樹立したという発表でございます。
 それから、その後に出たのが、平成17年5月にサイエンスに発表された論文でございまして、全部で11株のES細胞をヒトクローン胚から樹立したという内容でございました。
 これらについて、まず、17年5月に発表された後の方の論文でございますが、11株のうち、論文提出時点で存在した細胞株は2株であり、残りの9株のデータは、具体的な実験結果なしに捏造されたものであるということでございます。
 それから、実際にその時点で存在した2株もクローン胚由来ではない、受精卵由来のES細胞であり、患者の体細胞核を移植したクローン胚から樹立されたES細胞は存在しないという内容でございます。
 また、核移植に使用された卵子個数が、実際に使ったものに比べて縮小して報告されておりまして、実際には、273個の卵子を使用したにもかかわらず、185個というふうに書かれて報告されていたということでございまして、その中で言われた胚盤胞形成成功率は17パーセントというのは誇張されたものであるということでございます。
 また、その前の年の平成16年2月の最初にクローン胚からES細胞を樹立したという論文については、この細胞核はヒトクローン胚から樹立されたものではなく、核移植の過程で不完全だったことによって誘発された処女生殖過程で樹立されたES細胞である可能性が高いということでございまして、論文は捏造であるというふうにまとめられています。
 それから、2つ目は卵子提供にかかる経緯ということで、ファン教授チームに提供された卵子は、平成14年11月から17年11月までの4つの病院で、129名から採取それた総数2,061個の卵子であったということでございまして、ファン教授チームに卵子を提供した病院は、漢陽大のIRBが承認した同意書様式を使用せずに、ほとんど卵子採取による合併症等の危険性に対する記述がない略式の同意書を使用したということでございます。
 また、この研究計画書の承認の際のIRBの審査では、卵子採取による合併症等危険性に対する記述が不十分な同意書様式の問題点を指摘していないということ、合併症等の危険性を記述した同意書様式と、それに伴う比較的厳格な手続が適用されたのは、平成17年1月以降ございまして、6名についてのみしかやられていないということでございます。
 2ページ目に参りまして、4でございますが、卵子採取機関が同意以前に提供者に卵子採取の危険性に対して十分な説明を行ったかどうかといった点、または卵子等を採取した人の中から卵巣過剰刺激症候群等で診療を受けた人が何人いるのかといった点、それから排卵誘導のためのホルモン投与量が適正であったのかといった点については、調査の中で資料が確保されずに、これからさらに正確な調査が必要であるという指摘がなされております。
 また、卵子採取の状況でございますが、1名の方からは最大で43個の卵子が採取されたということでございまして、また5名の方は2回、1名については3回にわたって卵子を提供した場合もあるということでございます。また4つの病院のうちの1つのミズメディ病院では、卵子提供者のほとんどに金銭が支給されていたということでございます。他の卵子採取機関において実費補償の次元を超えた金銭支給があったかどうかは、把握されていないということでございます。
 6でございますが、ファン教授の研究チームの中のうち、研究者1名による卵子提供がございまして、これは卵子の不足問題等により実験が不振であるということに悩んだ研究員が自身の意思により申し出て、ファン教授が承知した上で行われたということでございまして、その後、研究チームでは女性研究員に対して卵子提供に関する同意書を配布し、合計で8名、現在の研究員のうち7名と、かつていた研究員1名から署名を受けたということでございます。
 また、ソウル大学の獣医学部のIRBについては、研究を行っているファン教授が主導で委員を選定するなど、その構成や運用面において多くの問題点が所在しているという指摘がございました。
 また、報道等によりますと、本件については検察が捜索を行っているということでございまして、卵子提供にかかる問題については、またこれとは別に国家生命倫理審議委員会における調査も行われているということでございます。
 また、韓国では現在、「生命倫理及び安全に関する法律」の中で、卵子の有償提供が禁止されております。これは平成17年1月に施行されたものでございますが、この法律の施行後も卵子の提供に伴う金銭の授受があったかについても、調査が実施されているということでございます。
 以上、本件にかかる生命倫理上の問題については、主に3点あるというふうに考えてございまして、1つ目は、医学研究の倫理上留意すべきとされている強制下で同意を求められるおそれのある部下の研究員からの提供というのが、これは研究責任者が承知した上で行われているということでございます。
 2つ目は卵子提供に伴う金銭の授受があったが、明確な基準に従って実費として支払われたどうかが明らかでなく、必ずしも卵子提供に対する報酬でないとは言い切れない部分があるということでございます。
 それから、3つ目は、卵子提供について同意を受ける前に、卵子採取に伴う合併症等のリスクの説明を十分に行っていないということ、また、インフォームド・コンセントの手続を含めた研究計画書について、IRBにおける審議が不十分であったということが問題かと考えております。
 以上でございます。

【笹月主査】
 どうもありがとうございました。
 新聞やテレビでご存じと思いますけれども、これらのことに関して、どなたか特段のご意見、コメント、あるいは追加とかありましたら、どうぞお聞かせください。
 それでは、以上でありますが、事務局から何か事務的な連絡がありましたら、お願いします。

【石井生命倫理安全対策室長】
 次回の日程でございますが、3月に開催を予定しておりますが、改めて日程を調整の上、ご連絡を差し上げたいというふうに考えてございます。
 以上でございます。

【笹月主査】
 どうもありがとうございました。
 本日は長時間にわたりまして、ご議論いただきましてありがとうございます。それから、ヒアリングをお願いした先生方にも御礼を申し上げます。
 次回もまた、合同で行うことになりますが、必要なヒアリングがあれば、ご希望などありましたら事務局の方へ。それから、検討事項に関しましても、追加その他ありましたら、ご意見をお寄せください。
 本日は長時間にわたりまして大変ありがとうございました。

お問合せ先

研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室

(研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室)

-- 登録:平成21年以前 --