ここからサイトの主なメニューです

生殖補助医療研究専門委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成18年1月20日(金曜日) 14時~16時2分

2.場所

経済産業省別館 8階 825会議室

3.議題

  1. ヒト受精胚の生殖補助医療研究目的での作成・利用に係る制度的枠組の検討について 1.生殖補助医療研究専門委員会の運営について
  2. ヒト受精胚の生殖補助医療研究目的での作成・利用に係る制度的枠組の検討について 2.総合科学技術会議意見具申「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」を受けた文部科学省における検討について
  3. ヒト受精胚の生殖補助医療研究目的での作成・利用に係る制度的枠組の検討について 3.厚生労働省における検討について
  4. ヒト受精胚の生殖補助医療研究目的での作成・利用に係る制度的枠組の検討について 4.ヒアリング「ヒト胚の研究体制に関する研究」<吉村泰典委員>
  5. ヒト受精胚の生殖補助医療研究目的での作成・利用に係る制度的枠組の検討について 5.ヒアリング「精子・卵子・胚研究の現状」<久慈直昭 慶應義塾大学産婦人科学教室 講師>
  6. その他

4.出席者

委員

 笹月主査、石原委員、位田委員、大隅委員、後藤委員、高木委員、中辻委員、星委員、町野委員、吉村委員

文部科学省

 藤田審議官、石井室長、根本補佐、厚生労働省齋藤補佐 他

オブザーバー

 久慈直昭 慶應義塾大学産婦人科学教室講師

5.議事録

【石井室長】
 定刻となりましたので、ただいまから第1回生殖補助医療研究専門委員会を開催いたします。
 本日は、お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。私、文部科学省の生命倫理・安全対策室長の石井でございます。よろしくお願い申し上げます。僣越ではございますが、まず、事務局の紹介をさせていただきたいと思います。
 研究振興局担当の大臣官房審議官の藤田でございます。
 それから、生命倫理・安全対策室長補佐の根本でございます。
 それでは、ここで、事務局を代表いたしまして、大臣官房審議官の藤田より、一言ご挨拶を申し上げます。

【藤田審議官】
 ただいまご紹介をいただきました、文部科学省の藤田でございます。本日は、先生方、大変お忙しい中、本専門委員会にご出席をいただきまして、大変ありがとうございます。一言ご挨拶を申し上げます。
 体外受精によります生殖補助医療につきましては、徐々に普及してまいっておりまして、今日では、この方法によります出生児が年間1万人強、約64人に1人という割合になっているというふうにお聞きをしております。また、新しい生殖補助医療技術の開発も進められておりまして、生殖補助医療研究につきましては、こういった分野での医療技術の維持・向上でございますとか生殖補助医療の安全性の確保などといった観点から不可欠のものでございまして、今後この研究に対するニーズというのがますます高くなってくるんではないかというふうに考えております。
 そういうような状況の中で、一昨年の7月になりますけれども、総合科学技術会議の方で、「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」が出されております。この考え方の中におきましては、ヒト受精胚の研究目的での作成・利用につきましては生殖補助医療研究に限って認めるというふうな方向性が示されるとともに、文部科学省につきましては、厚生労働省とともに、そのためのガイドラインの作成と研究審査を行う枠組みを整備するよう求められているところでございます。そのようなことを踏まえまして、文部科学省におきまして科学技術・学術審議会の生命倫理・安全部会のもとに本専門委員会を設けさせていただきまして、本日、その第1回目の会合となった次第でございます。
 先生方よくご承知だと思いますけれども、先ほども述べさせていただきました総合科学技術会議の基本的な考え方の中では、ヒトの受精胚につきましては、人そのものではないけれども、人の生命の萌芽として位置づけられ、特に尊重すべきものであるというふうな考え方が示されておりますと同時に、いいヒト受精胚の作成に使用されます未受精卵につきましては、提供者への負担でございますとか、それから、人間の道具化だとか手段化といったことに対する懸念に鑑みまして、入手制限や提供女性保護のための枠組みの整備というのが求められているところでございます。これらの考え方を踏まえまして、生殖補助医療研究のためのヒト受精胚の取扱いにつきまして、生命倫理上の問題を生ずることなく、社会的にも適正に行われるよう、この委員会におきまして、精力的にご審議、ご検討のほど、お願いをいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願いをいたします。

(人事案件)

【笹月主査】
 ただいまご紹介いただきました、笹月でございます。一言ご挨拶申し上げたいと思います。
 既に、先ほどの藤田審議官からのご挨拶にありましたように、この生殖補助医療研究あるいは生殖補助医療ということは、数々の問題を含んでおりますけれども、逆に言えば、もう確立した医療になっているというのも事実であります。しかしながら、もちろん、それは改善の余地もあろうし、進化させなければいけないということで、生殖補助医療を目指した研究はどうあるべきか、何が問題でどのようにそれを解決するのか、人は人としての尊厳、人間としての尊厳あるいは個人としての尊厳、それから、次世代への影響と、さまざまな問題を含んでおりますので、なかなか難しい委員会だと思います。けれども、それぞれご専門の方々にお集まりいただいておりますので、存分に議論を尽くし、議論を深め、拙速ということがないように、十分な議論の後に、与えられたミッションとしての方針といいますか報告ができればと思っておりますので、どうぞ、委員の先生方、よろしくご協力をお願いいたします。
 それでは、まず、この委員会にはさまざまなバックグラウンドの委員の方々にお集まりいただいておりますので、あるいは、初めてお会いになる方もあると思いますので、委員の方々から、お名前、所属、それから、簡単なバックグラウンドをご紹介いただければと思います。中辻先生、お願いします。

【中辻委員】
 京都大学再生医科学研究所の中辻です。よろしくお願いします。
 研究のバックグラウンドについては、発生生物学で哺乳類の発生のことをやっていますけれども、現在はヒツジ細胞株の樹立をやっておりますので、そちらの方でいろんな苦労をしております。よろしくお願いします。

【高木委員】
 日本大学総合科学研究所の高木美也子です。よろしくお願いします。
 バックグラウンドは生命倫理ということで、現在、さまざまな文部科学省関係の委員を務めさせていただいております。よろしくお願いいたします。

【後藤委員】
 名古屋大学医学部保健学科の後藤節子といいます。よろしくお願いします。産婦人科学とそれから母性看護学が専門です。
 倫理委員会は医学部の方で少し務めさせていただいていますが、生殖生理については初めてです。

【大隅委員】
 東北大学の大隅典子です。
 自分の専門は脳の発生・発達というところですけれども、科学者としての市民へのアウトリーチを積極的に進めていきたいという方針でこの活動をいたしておりますので、こういったことも非常に重要な社会問題と思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

【石原委員】
 埼玉医科大学の産婦人科の石原と申します。
 専門は、産婦人科、生殖内分泌学、不妊症治療学でございます。現在、日本不妊学会の倫理委員長をさせていただいております。よろしくお願いいたします。

【吉村委員】
 慶應の産婦人科の吉村と申します。
 専門は生殖生理学で、こういった問題についてはいつも、招聘されても時間がなくて困っているんですけど、なるべく、会を統合していただきたいなと、いつも思っております。よろしくお願いします。

【星委員】
 山梨大学の附属病院長をしております、星と申します。附属病院長は専任のために臨床はちょっと外れておりますけれども、専門は産婦人科でございます。
 私は、東北大学にいたころから、体外受精、顕微授精をずっとやってきておりますので、そういった意味でこの委員になったものと思っております。よろしくお願いいたします。

【町野委員】
 上智大学法学研究科の町野と申します。現在、上智のロースクールで法律を教えております。専門は刑事法及び医事法ということでございます。
 先ほどお話にありました総合科学技術会議の生命倫理専門調査会が出しました報告書に関与した委員でございました。それから、生殖補助医療部会におきましても、委員としてその審議に参画したことがございました。どうぞよろしくお願いいたします。

【笹月主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、審議に先立ちまして、まず出欠の確認、それから、配付資料の確認をお願いいたします。

【石井室長】
 今ほどご紹介ありました委員のほかに、総合母子保健センター愛育病院の産婦人科部長をされております安達先生、上智大学大学院の法学研究科の小幡先生、それから、社団法人日本医師会常任理事の橋本先生が委員でございますが、本日は欠席というご連絡をいただいております。また、京都大学の位田先生につきましては、15時過ぎごろからご出席予定というふうに伺っております。
 また、本日は、このほかに、厚生労働省から齋藤補佐にご出席いただいております。また、本日の議事に関するご説明をお願いしております慶應大学の久慈先生にもご出席いただいております。
 それでは、資料の確認の方に移らせていただきます。

(配布資料確認)

【笹月主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、早速、議事に入りたいと思います。
 本日は、1回目でありますので、この委員会がスムーズに運営できますように、運営に関しまして、資料1-3につきまして、事務局よりちょっとご説明をお願いいたします。

【石井室長】
 資料1-3でございます。生殖補助医療研究専門委員会の運営について(案)でございます。
 本委員会の運営に関する規則といたしまして、お決めいただければというふうに考えてございます。
 生殖補助医療研究専門委員会の運営については以下のとおりとするということで、まず、会議及び会議資料の公開についてということでございますが、「委員会の会議及び会議資料は、原則として公開する。ただし、審議の円滑な実施に影響が生じるものとして、委員会において非公開とすることが適当であると認める案件を調査審議する場合は、非公開とする」というふうにしてございます。それから、2つ目は議事録の公開についてということでございますが、「委員会においては、原則として会議の議事録を作成し、各委員の了解を得た上でこれを公開する。ただし、1のただし書きの場合には、議事概要を公開する」というふうにしてございます。
 以上でございます。

【笹月主査】
 どうもありがとうございます。
 委員会の会議及び会議資料の公開、それから、議事録の公開ということでありますが、どなたかご意見ございませんか。

(なし)

【笹月主査】
 特にございませんようでしたら、この資料1-3のように、運営については決めさせていただきたいと思いますので、以後よろしくお願いいたします。
 この委員会は、先ほどもご説明ありましたように、総合科学技術会議の意見具申、「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」を受けて設置されたものであります。そこでこの意見具申の内容、これを踏まえまして本委員会で議論すべき検討事項、それから、同じこの生命倫理・安全部会の中で設置されております「人クローン胚研究利用作業部会」というものが既にありますので、これの紹介も含めまして、それから、作業部会の説明ということを事務局からお願いいたします。

【石井室長】
 それでは、ご説明させていただきます。資料といたしましては、資料1-2-1、それから、資料1-2-2、それから、順番がちょっと飛びますけれども、資料の1-7、及び、参考としてお配りしております参考1-1の、4つの資料についてご説明をさせていただきます。
 まず、参考1-1でございます。総合科学技術会議の「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」でございます。先ほどから何度もお話が出ていますとおり、こちらの意見具申に基づいて本検討をお願いしているところでございます。
 この意見具申でございますが、まず2ページ目をお開きいただきたいと思いますが、この報告書の取扱う範囲といたしまして、「クローン技術規制法に規定されているヒト受精胚のみならず、人クローン胚等を含めたヒト胚全体について、胎外での研究における取扱いを中心に検討した」ということでございまして、こういった内容についての意見具申でございます。
 具体的な内容に入っていきまして、1枚めくっていただきまして、5ページでございます。上の方でございますが、(2)ヒト受精胚の位置付けに関する生命倫理専門調査会としての考え方ということが示されてございます。
 内容のポイントだけ申し上げますと、現行の法体系では、ヒト受精胚を「人」として扱っていないということでございますけれども、ヒト受精胚につきまして、これは人そのものではないとしても、人の尊厳という社会の基本的価値の維持のために特に尊重されるべき存在であり、かかる意味で「人の生命の萌芽」として位置付けられるべきものと考えられるということでございまして、この考え方に基づいて、そのヒト受精胚の取扱いの基本原則というのが記述されているところでございます。
 具体的な内容といたしましては、その次のところでございますが、取扱いの基本原則として、「『人』へと成長し得る『人の生命の萌芽』であるヒト受精胚は、『人の尊厳』という社会の基本的価値を維持するために、特に尊重しなければならない」というふうにした上で、次の6ページ目でございますけれども、ヒト受精胚尊重の原則の例外というふうに挙げてございまして、このところ、6ページの上の方になりますけれども、「一定の条件を満たす場合には、たとえ、ヒト受精胚を損なう取扱いであるとしても、例外的に認めざるを得ない」ということを挙げてございまして、その次のウのところで、その例外が許容される条件を挙げてございますけれども、「そのようなヒト受精胚の取扱いによらなければ得られない生命科学や医学の恩恵及びこれへの期待が十分な科学的合理性に基づいたものであること、人に直接関わる場合には、人への安全性に十分な配慮がなされること、及びそのような恩恵及びこれへの期待が社会的に妥当なものであること、という3つの条件を全て満たす必要があると考えられる」ということを挙げてございます。
 その上で、ヒト受精胚の取扱いの検討というのを目的別に行っておりまして、(1)の研究目的のヒト受精胚の作成・利用ということで挙げてございますが、こういった、例外的に容認される場合であっても、「ヒト受精胚は、体外にあって胎盤を形成しない限り、発生の過程が進んでも『胚』として扱われるため、研究目的での作成・利用については、その取扱いの期間を限定する必要がある」ということを言ってございまして、一番最後のところになりますけれども、「研究目的でのヒト受精胚の作成・利用においては、その取扱い期間を原始線条の形成前までに限定すべき」というようなことを挙げた上で、個々の目的についての考察の結果が7ページの一番上のところにあります。
 本委員会の関係でございます生殖補助医療研究目的での作成・利用につきましては、「生殖補助医療研究は、これまで体外受精の成功率の向上等、生殖補助医療技術の向上に貢献しており、今後とも、生殖補助医療技術の維持や生殖補助医療の安全性確保に必要と考えられる。こうした研究成果に今後も期待することには、十分科学的に合理性があるとともに、社会的にも妥当性がある。このため、生殖補助医療研究のためのヒト受精胚の作成・利用は容認し得る」という、こういった考察がなされてございます。これを受けて、具体的に生殖補助医療の研究についての規制についての話が出てまいります。
 続きまして、1枚めくっていただきまして8ページでございますが、8ページの一番下のところの(3)、未受精卵等の入手の制限及び提供女性の保護という項目がございます。「ヒト受精胚を作成し、これを利用する生殖補助医療研究では、必ず未受精卵を使用するが、未受精卵の女性からの採取には提供する女性の肉体的侵襲や精神的負担が伴うとともに、未受精卵の採取が拡大し、広範に行なわれるようになれば、人間の道具化・手段化といった懸念も強まる。このため、未受精卵の入手については個々の研究において必要最小限の範囲に制限し、みだりに未受精卵を採取することを防止しなければならない。また、いわゆる無償ボランティアからの未受精卵の採取については、自発的な提供を望む気持ちは尊いものとして尊重するとしても、一方で、関係者等である女性に未受精卵の提供が過大に期待される環境が形成され、本当の意味での自由意思からの提供とならない場合も考えられるため、原則、認めるべきではない」と、こういった未受精卵の取扱いについての考え方が示されてございます。
 こうした上で、「未受精卵の入手には、生殖補助医療目的で採取された未受精卵の一部利用、手術等により摘出された卵巣や卵巣切片からの採取、媒精したものの受精に至らなかった非受精卵の利用とともに、技術の進捗状況にもよるが卵子保存の目的で作成された凍結未受精卵の不要化に伴う利用等も可能な場合があり得ると考えられる」とした上で、こうした入手について、「提供する女性に精神的・肉体的負担が生ずることも考えられるため、その利用は個々の研究において必要最小限の範囲に制限されるべきであり、そのための枠組みの整備が必要である」ということを挙げてございます。
 そのあとの(4)でございますが、ヒト受精胚の取扱いに必要な枠組みの考え方ということで、こういった考え方をもとに、具体的にどのような制限をしていくかということでございまして、(4)の2つ目のパラグラフでございますが、「現在、研究目的のヒト受精胚の作成・利用のうち、ヒトES細胞の樹立の際の利用については、国はES指針を整備しているが、これ以外については、日本産科婦人科学会が会告により自主規制を行なっているだけである。このため、研究目的のためにヒト受精胚を作成しないという原則を徹底するためには、制度的枠組みとして、国内全ての者に対して適応し、かつ国としての規制が必要である」ということで、国としての規制の必要性が挙げられてございます。その具体的な内容についてでございますが、17ページでございますが、その制度的なものについての記述がございます。
 17ページのところで、制度的な枠組みについての議論の、制度の内容ということでございまして、その中の生殖補助医療研究についての記述でございます。(1)の中の2つ目のパラグラフの後段になります。下から10行目ほどのところにございますが、「ヒト受精胚の生殖補助医療研究における作成・利用については、新たにガイドラインを整備する必要がある。具体的なガイドラインの内容としては、本報告書の基本的考え方に基づいて基準を設け、これに基づいて、個別の研究について審査した上で実施を認める枠組みが必要である。本報告書の基本的考え方に基づいたヒト受精胚の取扱いのための具体的な遵守事項として、研究に用いたヒト受精胚を臨床に用いないこと、未受精卵の入手制限及び無償提供、ヒト受精胚や未受精卵の提供の際の適切なインフォームドコンセントの実施、胚の取扱い期間の制限、ヒト受精胚を取扱う研究についての記録の整備、研究実施機関の研究能力・設備の要件、研究機関における倫理的問題に関する検討体制の整備及び責任の明確化、ヒト受精胚や未受精卵等の提供者の個人情報の保護、研究に関する適切な情報の公開等を定める必要がある」。こういったことを挙げてございまして、次の18ページでございますが、こういったものについて、18ページの2つ目のパラグラフでございますが、「国は、生殖補助医療研究のためにヒト受精胚の作成・利用を計画している研究がガイドラインの定める基準に適合するかを審査するための適切な枠組みを整備する。文部科学省及び厚生労働省は、これらを踏まえてガイドラインの具体的な内容を検討し、策定する必要がある」と、こういった意見具申がなされてございまして、この意見具申を踏まえた対応として、厚生労働省と私ども文部科学省の方で具体的な検討を始めるというふうに至ったということでございます。
 具体的な検討ということで、今度は資料1-2-1でございますが、ヒト受精胚の生殖補助医療研究目的での作成・利用に係る制度的枠組みの検討についてということでございまして、この意見具申を受けて、本専門委員会でございますが、科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会に生殖補助医療研究専門委員会を設置し、検討を行うということにしたものでございまして、2ページ目のところに、生命倫理・安全部会の委員会の設置として生殖補助医療研究専門委員会を設けたということでございます。
 具体的な検討事項として、6つほど挙げてございます。主な検討事項でございますが、研究の目的について、研究実施機関の要件、胚・配偶子の入手のあり方、胚・配偶子の管理の要件、審査のあり方、その他ということでございまして、委員の構成としては、研究者、医療関係者、人文・社会科学分野等の有識者から構成するということでございます。
 その他ということで、後ほどご説明いただきますが、本年7月13日に厚生科学審議会科学技術部会に設置された「ヒト胚研究に関する専門委員会」でこのヒト胚研究についてのガイドラインの策定を始めるということで、検討が既に始まってございます。この委員会とも密接な連携を図りつつ検討を行うということにしてございまして、具体的には、本日第1回の委員会でございますけれども、第2回から合同開催をいたしまして、合同での検討を行いたいというふうに考えております。
 それから、続きまして、資料1-2-2でございます。先ほどの主な検討事項の中で挙げてございます検討事項をもう少しブレークダウンしたものを、この一枚紙に用意してございます。
 具体的にこれからどういったことを検討するかということで、まだ、検討事項の例ということですべてを網羅しているものではございませんが、最初にこういったことから議論していってはどうかということで作った、たたき台の資料でございます。  まず、総論的な事項でございますが、1としまして、指針(ガイドライン)に定める内容のあり方として、ガイドラインはいろんな性格を持ちますけれども、まずは研究実施に当たって研究機関及び研究者が遵守すべき事項というものについて定めるものという部分と、それからもう一つは、研究実施のための手続、いわば、機関の中での審査または国としての審査に関する手続といったものを検討していくのではないかというふうに考えてございます。
 それから、2つ目は規制対象の範囲でございますが、まず、規制の考え方として、なぜ規制をするかということでございまして、今の意見具申の中にも胚についての考え方が示されているところでございますが、あわせて卵子についての道具化への懸念といったことが挙げられてございます。このほかに、じゃあ、精子というものについてどう取り扱うかといった点について整理をして、考え方を示していく必要があるのではないかというふうに考えてございます。その上で、(2)でございますが、具体的な規制対象の範囲として何を規制するのかということでございますが、1つは胚の作成を伴う研究または余剰胚を使用する研究といったものが今の意見具申の中から読み取れることでございまして、これ以外にも、それとの関係で、卵子を単独で使用する研究をどうするのか、精子を単独で使用する研究をどうするのかといったことを検討していく必要があるのかというふうに考えてございます。特に、卵子・精子を単独で使用する研究については、クローン技術規制法という中で、特定胚の作成に係るものについてはこちらで規制されることになりますので、場合によってはそれとの関係の整理が必要になってこようかというふうに考えております。
 続きまして、研究の範囲についての議論でございますが、今回のガイドラインで定めるには基礎的研究と臨床研究といったものがあろうかと思います。それらの全体を規制するのか、臨床研究について何らかの線を引いた形でガイドラインを定めるのか。2にございますが、研究と医療の境界というのをどうとらえるのか。こういった点についての議論も必要になってこようかと考えております。
 続きまして、検討事項の例として挙げてございます。これはガイドラインの中で何を定めるかということに入っていた各論的なものになろうかと思いますが、研究の目的についてということで、認められる研究の範囲または研究実施の要件といったものがあるのではないかというふうに考えてございます。
 それから、2つ目は禁止事項についてということで、研究のために作成した胚の取扱い。例えば、胎内への移植とか、培養期間等についての禁止事項というのがあろうかと考えております。または、研究で得られた配偶子に加えてはならない操作といったものにどういったものがあるのかといったことは検討事項になろうかと考えております。
 3番目として、研究実施機関の要件というものがございます。意見具申の中にもございましたが、実績であるとか設備であるとか能力、それから、倫理審査委員会の設置などについての要件があるのではないか。または、研究の体制として、機関の長であるとか研究責任者の役割といった点についての議論があるんではないかというふうに考えております。
 続きまして、4番目でございますが、胚・配偶子の入手のあり方ということで、その入手方法についてのあり方、または、その提供に係るインフォームドコンセントのあり方。さらには、提供者の個人情報の保護についてどういった形の配慮が要るのか。こういったことが議論としてあるのではないかと考えております。
 それから、5として審査のあり方でございますが、まずは、機関における倫理審査委員会の審査はどうあるべきか。または、国による審査、これはどういった関与をするのかというのがまだ具体化しておりませんが、その関与のあり方に応じてどういった審査がなされるべきなのかといった点が議論としてあろうかと思います。また、そのほか、こういった倫理の問題共通でございますが、やはり国民の理解を得て進めていくということが必要だと思いますので、情報の公開についてどのようなことを定めていく必要があるのかといった点が、論点としてあるのではないかと考えております。
 検討事項としては以上でございまして、この生殖補助医療との関連で、今の意見具申の中で、説明は省略いたしましたが同じようにクローン胚研究について意見具申がされているところでございますが、これらの中で未受精卵の取扱いについて非常に共通的なものがございます。クローン胚の作業部会については、生命倫理・安全部会の中で作業部会を設けて検討してございまして、それらの状況について資料1-7に簡単にまとめてございますので、それらについてご報告申し上げます。
 人クローン胚研究利用作業部会における検討状況ということで、経緯のところにございますように、総合科学技術会議の意見具申の中で、「人クローン胚の研究目的の作成・利用を限定的に容認するに当たり、必要な枠組みを整理するため、『クローン技術規制法に基づく特定胚指針を改正するとともに、必要に応じて国のガイドラインを補完すること』」と、それから、「人クローン胚から樹立したヒトES細胞の使用については、『現行のES指針を改正することにより、対応すべきであること』」ということを受けまして、平成16年の10月に、人クローン胚研究利用作業部会を設置して、特定胚指針の改正等に向けた検討を開始しました。この中で、2の審議経過にありますように、各有識者からのヒアリング等を行っているところでございますが、この中では、主に研究の目的について、ほかに治療法のない難病の治療のための再生医療技術の研究ということを行うということと、それから、未受精卵の入手についてのあり方というのが大きな論点でございますが、これらの中で、特に未受精卵の取扱いについてのヒアリングなどを行っているところでございます。
 具体的には、2ページ目に参りまして、第5回の回でございますが、平成17年7月の際に、最近、非常に問題となっております韓国の関係でございますが、韓国ソウル大学のムン・シンヨン教授から、韓国の現状についてお話を伺ったことがございます。それから、第6回、平成17年8月の際には、後ほどお話しいただきます厚生労働省の「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」を受けたヒト胚研究に関する専門委員会の設置と、それから、これも後ほどご説明いただきますが、吉村委員からヒト胚の研究体制に関する研究のご説明をいただいたところでございます。また、第7回、平成17年9月でございますが、卵提供について提供者がどのように考えているかというのを、北里大学の齋藤先生からご説明をいただいたところでございます。また、3ページ目に参りまして、鈴木良子さん、フィンレージの会の会員の方から、体外受精を受ける女性からの卵子の提供について、広島HARTクリニックの高橋院長からは、人クローン胚研究に必要な卵子入手の可能性についてということでの考察をお話しいただきました。また、第9回、平成17年11月になりますけれども、こちらにご出席いただいています石原委員から、人クローン胚研究のための卵子提供者について、お話をいただきました。こういったお話を受けまして、具体的に、どういった卵子の入手といいますか提供というのがあり得るのかということで、これまで議論を重ねてまいりまして、第8回の会合からこの1月の第12回の会合まで、未受精卵の入手についてケースを分類しまして、具体的に検討を進めているという状況でございます。具体的なケース分類などについては、こちらの委員会での卵子の提供についての議論の際に、またご説明をさせていただきたいと思います。
 以上でございます。

【笹月主査】
 どうもありがとうございました。
 まず、総合科学技術会議の具申、これが一種の憲法みたいなものになるわけですが、これをもとにどのような項目について検討すべきかということをここにまとめていただきました。それから、人クローン胚の作業部会の議論の現状ということがございましたが、どなたかご質問ございましたら、あるいはコメントがございましたらどうぞ。
 総合科学技術会議の、憲法に相当するところは、十分にお読みいただいて吟味していただければと思います。それから、検討項目につきましては、もちろん、検討を進めていく中で、必要なことは幾らでも追加していただきながらこれを骨子として検討を進めていきたいというものでございます。
 総合科学技術会議の議論に参加された町野先生から、何か追加かコメントはございますか。

【町野委員】
 今はございません。

【笹月主査】
 そうですか。
 よろしいですか。

(なし)

【笹月主査】
 それでは、次に、同じその総合科学技術会議の意見具申「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」ということで、文部科学省だけではなくて厚生労働省にもこの検討が委嘱されておりまして、厚生労働省でもこの取扱いに関する議論がスタートしております。このことにつきまして、厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課の齋藤補佐から、厚生労働省での議論の現状をご紹介いただければと思います。

【厚生労働省・齋藤補佐】
 厚生労働省母子保健課の齋藤慈子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 説明の方は、失礼します、座って、やらせていただきます。お手元の資料の、お配りしておいた資料1-4に沿ってご説明させていただきたいと存じます。
 ただいま、事務局の石井室長それから座長の方からご説明がございましたとおり、厚生労働省の方では、厚生科学審議会科学技術部会ヒト胚研究に関する専門委員会といったものを立ち上げております。こちらの方は、昨年の7月13日に第26回厚生科学審議会科学技術部会において、その専門委員会の設置が決定されたものでございます。
 その際の設置の趣旨がこちらにお示ししたとおりでございまして、先ほどご説明のございました総合科学技術会議から、文科省そして私ども厚生労働省に対しまして、「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」の報告書の中で、ヒト受精胚の研究目的の作成・利用に関するガイドラインの作成と、それから、研究の審査体制の整備についての検討が求められたところでございます。これを受けまして、厚生労働省の方では、先行いたしまして、まず、平成16年度中は、厚生労働科学の特別研究の枠組みの中で研究を進めまして、この問題、ガイドラインの作成に当たって、さまざまな論点整理を研究班の方にお願いをして、させていただいたところでございます。そういった形で、論点整理を先行して、いたしました。
 引き続きまして、この厚生科学審議会科学技術部会におきまして専門委員会が立ち上げられまして、そして、ここにございますような検討課題について検討を進めるということで合意がなされたところでございます。こちらのヒト胚研究に関する専門委員会、厚生労働省の方の専門委員会の委員の構成でございますが、こちらは同じ資料1-4の2枚目の方にございますとおりでございまして、きょうお集まりの先生方もご参加をいただいている方々が入っておられます。このとおりでございます。
 現在までのところ、第1回目につきましては9月29日に開催いたしまして、そこで総合科学技術会議の、先ほどバイブルというお話がございましたように、文科省、厚生労働省に対してどういったことを求められたのかといった経緯、それから、視点の説明から始まりまして、そういったバックグラウンドに関する共通認識の構築といったことで、バックグラウンドに関しての検討を進めていただいてきているところでございます。
 第2回目につきましては12月13日に開催をしたところでございまして、それでその際には、今度は事務局の方から、文科省と厚生労働省での2省庁の専門委員会の合同開催についてご提案をさせていただき、それについて専門委員会でのご了承をいただいたところでございます。その経緯といたしましては、やはり、先ほどご案内のとおりでございますけれども、2省に対しまして課せられた宿題の中で、密接に、文科省、厚生労働省で連携を図りながら進めていくということが求められてきたところであるということ、また、厚生労働省といたしましては、医療機関であるとか、それから、所管する研究機関で行われる基礎研究・臨床研究といったものについての内容について検討を進めるということを当初は考えておりましたんですけれども、検討を進めるに従いまして、文科省で所管されている研究領域といったものとの重なりが非常に大きいということを理解いたしまして、また、何よりも、やはり研究の現場で運用がしやすいような形でのガイドラインの作成を重視いたしまして、合同開催ということで文科省からお申し入れを、ご提案をいただきまして、それを受けた形で合同開催を専門委員会の方に提案をさせていただきまして、ご了解をいただいたところでございます。
 といったことで、以降、ぜひ、文科省とご一緒に、厚生労働省といたしましても、第3回目の厚生労働省ヒト胚研究に関する専門委員会、そして、第2回目のこちらの文科省の方の専門委員会から、合同で開催をさせていただきまして、その上で2省連名でのガイドラインの作成という方向でお願いできればということでございます。
 以上でございます。

【笹月主査】
 どうもありがとうございました。
 どなたか、ご質問ございますか。

(なし)

【笹月主査】
 それでは、先ほど事務局の石井室長から、それから、ただいま厚生労働省からもお話がありましたように、次回以降は文部科学省と厚生労働省の合同で委員会を開催して議論を進めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、次に、ヒアリングに入りたいと思います。今回は文部科学省の委員会としては第1回目でございますので、ガイドライン作成に関しまして、委員の皆様方の共通の認識といいますか、バックグラウンドを共有して議論を深めるということが重要だと思いますので、まず、平成16年度の厚生労働科学研究費「ヒト胚の研究体制に関する研究」ということで、その主任研究者を務められました吉村委員から、この研究成果と申しますか検討の概要をお話しいただきまして、その後、各論的に久慈先生にお話を伺い、質疑応答をしたいと思います。
 では、吉村委員、ひとつよろしくお願いいたします。

【吉村委員】
 はい、わかりました。それでは、説明をさせていただきます。
 もう、私の話、三度聞かれた方もお見えになるかと思いますが、今度合同になるということでこれは大変いいことだと思いますので、まだ1回もお聞きになっていない方もお見えになりますので、ご紹介をさせていただきたいと思います。
 私は、厚生労働科学研究費をいただきまして、平成16年度に「ヒト胚の研究体制に関する研究」、こういったテーマで、研究を1年間させていただきました。その報告でありますが、やはり生殖補助医療に関して、まだ、あまり知識のない方もお見えになると思いますので、現状の日本の今の状況などをご説明申し上げながら、胚の研究体制についての報告をさせていただきます。
 これが我が国の生殖補助医療の歩みでございまして、昭和24年でございますが、非配偶者間の人工授精が我が国でなされた。AID児が誕生したということでございます。その後あまり大きな問題がなかったわけでございますが、83年に、我が国においても体外受精児が誕生した、イギリスから遅れること、5年でございます。91年に日本人の夫婦が渡米をいたしまして、アメリカ人の女性に子宮を借りて代理出産したということが90年代ぐらいから起こっております。93年には卵子提供を受けたということも起こっております。我が国におきましては、98年に、妹さんの卵子をいただいた、それから、弟さんの精子を使って体外受精がされたと、2例が報告されたわけであります。そして、2001年になりまして代理出産、2003年には、夫の義理のお姉さんに代理出産をしていただいたと、こういったことが起こってきたわけでございます。
 生殖補助医療に関しましては、我が国においては法律はございませんで、日本産科婦人科学会の会告という形で、会員に対して遵守を求めるといったことを学会は要求してきたわけでございます。この会告も、体外受精の会告といいますと、昭和58年ということでございまして、もう、全く現代に合わないところも出ているというところもございまして、この中から、体外受精に関して、研究に関して、登録に関して、パーコールに関して、顕微授精、それから、AID、こういった6つの会告について、現在、改正を行っておりまして、今、会員にご意見を聞いているところでございます。恐らく、今年の4月ぐらいには新しい会告が出るのではないかなと思っているわけであります。
 これは体外受精の方法ですが、通常は1個しか排卵しないわけでございますが、卵をたくさんとるために排卵誘発剤を使用いたしまして、このように針を膣の方から刺しまして、超音波で見ながら卵をとってくるわけでございます。卵をとってまいりまして精子をかけることを、媒精と申します。そして、媒精して受精卵ができまして、4細胞とか2細胞とか、こういった時期に子宮の中に戻すという方法であります。現在では、こういったものをもう少し培養いたしまして、胚盤胞と申しまして、128細胞とか、そういった多くの細胞にいたしましてから、質のいい、クオリティーの高い卵をできる限り少なく、1個ないし2個、子宮の中に戻すことによって多胎を防止するような試みがなされています。
 これが日本産科婦人科学会に登録されている施設数でございまして、青いのが登録の施設数、ピンクが実施の、行っている施設数でありまして、実に、2003年になりますと、登録している施設は590施設ぐらいありまして、もう600を完全に超えています。この数をアメリカと比較してみますと、施設数としては圧倒的に日本が多いということでございます。アメリカは恐らく日本の1.5倍から2倍ほど体外受精が行われておりますが428施設、イギリスなどは100施設に満たないということを考えますと、我が国は体外受精を行っている施設を世界で一番多く有しているということになるわけであります。
 ところが、日本の特徴でございますが、この実施の周期と施設数の関係を見てみますと、ピンクでありますが50施設、1年間に50周期ですから50回やるということですが、これ以下の施設が非常に多いということでありまして、6割以上は50周期以下であると。クオリティーを担保するためには、私は思うんですが、やはり1年間に100周期以上はされている方がよいのではないか。そういうことを考えてみますと20パーセント内外、要するに20パーセント弱であるということでございます。
 これが妊娠率でございます。青いバーで示してございますが、当初やり出したころは、妊娠反応が出れば妊娠ですということを言っていたんですが、90年ぐらいからは、GSといいまして子宮の中に赤ちゃんの袋ができてくるわけでございますが、この胎嚢ができてきたものを妊娠ということになっております。現在のところ、大体20パーセントから23パーセントぐらいという感じでございまして、簡単に申しますと、5回やりますと1回妊娠できるという状況でございます。ブルーが生産率、これが大事な、一番大切なものでありまして、胚を戻しまして、どのぐらいの割合で赤ちゃんをお家に連れて帰れることができるかと申しますと、やはり20パーセントをまだ切っている状況であるということでございます。
 今までは体外受精のお話でございますが、これは顕微授精でございまして、これが人間の卵でございますが、100ミクロンちょっとありますが、0.1ミリぐらいですから、よく見えます。人間の細胞の中では一番大きな細胞でありまして、肉眼で見える細胞です。針をこのように刺しまして、ここに精子がございますが、精子1匹を打つ。これが顕微授精という方法であります。これは93年に、ベルギーのパレルモという方がされまして、この10年間で、瞬く間に世界に広がったわけでございます。顕微授精の成績も、日本の成績もあまり良くなかったのでありますが、もう、94年、95年になりますと、ほぼ20パーセントのところで大体プラトーに達しているということでありまして、技術はそれほど難しい技術ではないということでございます。
 この顕微授精による出生児の数もこのように青で描いてございますが、右肩上がりに上がってきているということであります。これが1年間の出生児数を書いてございますが、平成15年のこの出生児数が1万7,400人であるということでございます。ところが、このデータは、完全に産まれたというデータかどうかということについては、疑問なところがありまして、正しい出生児数を示しているとは必ずしも言えないといったところに大きな問題点があるわけであります。
 それはどうしてかと申しますと、ART、生殖医療をやっている病院というのは、子供さんを最後までフォローしていないところが多い。ということになりますと、14週までぐらい、産まれた、14週目まで育って、産科のどこかの病院に行かれたということになりますと、それは、やはり産まれてしまったというふうにカウントされることの方が多い。その中には、例えば赤ちゃんが奇形であったために中絶される方がお見えになるかもしれないし、早産で亡くなるという方もお見えになるかもしれない。そういったことがわかっている場合は報告するんですが、そういう不明なことがあるということを考えますと、この出生児数は、全く正確であるかというと、少し疑問点が残っているわけであります。
 精子数との目安を言ってみますと、大体、人工授精と申しますと、1ミリリットル当たり精子の数が1,000万個以上は必要なんではないか。WHOの基準では正常が2,000万個ということになっておりますが、一般に、正常の方というのは5,000万から1億ぐらいの数を持っておられます。目安ですが、体外受精と申しますと、やはり500万個ぐらいが必要であろうと。しかし、顕微授精ということでありますと、精子1個をどこからか探してくれば、妊娠することが理論的にはできるということでございます。精巣上体精子とか精巣精子を使うこともございます。これは無精子症であっても、精液中に精子がなくても、精巣の中、精巣上体の組織を一部とってまいりまして、精巣上体の液をまたとってくるとか、そういうことをいたしまして精子を探し出して、それを顕微授精してあげるといったこともできるわけでございます。
 これが総出生児数に対するART出生児数の割合でございますが、先ほどのご報告もございましたが、2003年にはついに1.55ということになりますと、これが65人に1人という時代であります。現在は恐らく50人に1人ぐらいではないかと。あと10年も経ちますと、25人から30人に1人の時代は必ずや来るだろうと。それを示しておりますのがこのデータでございまして、このとき、ちょっと日本のデータは1.55の前のデータでございますが、欧米を見てみますと、日本がこれだけ体外受精児が多いかということではありません。イギリスと大体同じ程度でございますが、例えばアイスランドとかデンマーク、こういった都市というのは30人に1人の時代になっている。そういった状況であるということを理解していただければよろしいかと思います。
 今回のテーマでございますが、私は、受精卵といいますと大きく2つに分けられる、と。これは母体に戻されてヒトになる予定の受精卵。こういったものを今まで研究に使っていたわけでございます。
 外国におけるヒト胚研究の規制状況を調べてみますと、胚の研究はほとんどが認められております。要するにできた胚を使うという研究はどこの国でも認められておりますが、研究のために胚を作るということを認められている国は、極端なことを申しますと、イギリスのみであります。ですから、精子・卵子をどこからかいただいてまいりまして、それを胚を作って研究のために使うといったことが許されているのはイギリス、ということであります。ですから、どういった条件下で、あるいはどういった施設で行っていいかということを決めていくということがこの委員会の使命であろうと、私は理解しております。
 イギリスという国は非常にすばらしい国といいますか、もう、1984年の時代からこういったことが起こるのではないかと。これ、Warnock委員会の議論ですが、前提として、研究目的での胚の作成禁止により、医学の発展が妨げられるのではないかといったこと。あるいは、偶発的に利用可能となっただけ――これはいわゆる使わないということが決定された胚、いわゆる余剰卵ですか、こういったものだけでは研究自体が難しいのではないかと。さらなる研究の発展を望めないのではないかといったことが前提となって、こういったことが議論をされているわけであります。慎重意見は当然のことながらあります、それから、推進意見、さまざまなものがありますが、これは見ていただければよろしいかと思います。すなわち、84年、もう20年も前にこういったことをイギリスは考えていたということであります。
 こういった研究施設数がここに書いてございますが、申請数はこの程度でありまして、終了したプロジェクトは2002年の段階で77ぐらいであるということでございます。この胚の研究の実施状況を見てみますと、この赤いところで書いた3つを見ていただきたいんですが、他者へ提供のための保存された胚といいますか、これは恐らく、胚の提供に当たると思います。臨床応用をして、例えば、卵のない方に対してこの余剰胚が使われている。そして、赤ちゃんにつくるために使われた胚だろうと思います。それから、治療周期から研究に提供された胚というのは、我が国でも使っておりますが、もう、これ以上妊娠する必要はなくなったクライアントに対しまして、胚をいただいて研究に使っている。書面による同意を得た上で使っている。これがイギリスでも4,000個ぐらいあるということでございます。それから、これは日本ではないんですが、治療周期から研究に提供された卵子ということであります。採卵をいたしまして治療していたんですが、一部を研究に使わせていただく。こういったものも、イギリスでは2,000個ぐらいあるということでありまして、我が国においてはこれはほとんど存在しません。
 それで、我が国におきましてはどういうことを決めているか。精子・卵子・受精卵の取扱いに関する研究、これは13年の12月に改定もしておりますが、どういった研究の許容範囲、これは、生殖医学の発展のための基礎的研究、及び、不妊症の診断治療の進歩に貢献する目的のための研究に限って利用するということを決めていたわけでございます。ところが、平成13年のころにES細胞に対して、要するに受精卵を使いたいといったことが起こってまいりまして、当時、文科省などと検討いたしまして、受精卵をES細胞の樹立のためにも提供できるといった改定を行ったわけでございます。研究の条件は、イギリスでもすべてそうですが、一般的には大体2週間となっております。この2週間というのは原始線条ができてくる時期でありまして、すなわち、ヒトの場合は、内胚葉、中胚葉、外胚葉に分化する時期であろうと。ですから、それまでは使ってよろしいということであります。現在は、こういった研究に対して、所定の書式に従いまして日本産科婦人科学会に報告するようにしております。今年ぐらいから、要するにどういった研究成果が得られているかといったことも報告していただくようにしております。
 その研究でございますが、当初から86研究が登録されていたんですが、昨年7月1日ぐらいに再登録の書類を提出いたしまして、選出していただきました。そういたしますと、48研究が再登録されて、現在、48研究、行われているということでございます。
 これは後から久慈先生が話されると思いますが、胚研究の現状を見てみますと、扱った細胞の種類とか、胚の作成の有無とか、研究実施施設、主たる研究科ということが書いてございますが、やはり圧倒的に精子が多い。これは非常に利用しやすいということもございます。それから、手に入れやすいということもございます。こういった精子が多いということ。実施の施設としては、大学とか研究所が多い。新たな胚の作成ということは、ほとんど行われておりません。行われたとしても、夫婦間のものが多いということでございます。
 予想される、これからどういった研究に胚の研究を、例えば胚を作成する、胚を使うということと作成するということはかなり違った問題がありまして、胚を作成するというような必要のある研究というのはどういうものがあるだろうか。やはり、受精のメカニズムに関する研究、これはあると思います。顕微授精を行いましても受精できないという方は、一定の割合でお見えになるわけでございます。そういうこと。それから、胚の発生に関する研究。いい受精卵ができたとしても、なかなか妊娠に結びつかないといったこともございます。こういった研究にも使えるだろう。着床のメカニズムも同じでございます。それから、遺伝的異常の発生の機序。それから、配偶子・胚の凍結保存に関する研究。これはどういうことかと申しますと、胚の凍結保存というのはもうルーティン化して、それによって赤ちゃんは何人も産まれておりますが、卵子の凍結に関しましては、まだ百数例しか赤ちゃんが産まれていないということで、卵子の凍結は、まだ困難です。精子の凍結に関しましては、これはもう十分、昔から行われているということでありますが、こういった研究も必要であろうということであります。
 これはご参考までで結構ですが、イギリスのHFEAにおいて、どういった精子を使うかということに関してはこういったことが書いてございます。卵子に関しましても書いてございますが、私たちは研究で予想される提供者ということを考えてみました。そういたしますと、総合科学技術会議でどういうことをおっしゃっているかということは置いておきまして、我々が医学的にどういった精子の提供者が考えられるかと申しますと、やはり初めに考えられるのが、何といいましてもボランティアでございます。この際には、やはり、韓国も問題があったのは、これは無償のボランティア、無償のボランティアを使うということが問題になってきた。それによって、パワーハラスメントがあったんではないかとか、さまざまなことが問題になったわけでありますから、今後はやはり有償のボランティアということも真剣に考えていかなければならないと、私は思います。特に精子ではなくて、卵子の場合には、やはり一定の割合で有償のボランティアということを考えていかないと、必ず無理が出てくる。きれいごとだけでは済まされないと思います。
 どんなお薬の治験におきましても、一定のお金を払って患者さんに来ていただいて採血をしているということの現実があるわけでございます。そういった現実を考慮すると、卵子を提供していただくのに、かなりの犠牲が伴います。恐らく、10日間から2週間ぐらいの制約がございます。毎日、病院に来ていただかなくてはいけない。ということを考えますと、そういったことをもう真剣に考えてもいい時期ではないかなと思います。精子に関しましては、AIDをした場合、体外受精をした場合、これは一部しか使えませんので、こういったものを無償で提供していただくということは十分にあり得ると思います。それから、精巣の病気で治療を受けた男性、それから、精巣性女性化症候群と、そういった例もあると、こういったときには精巣をとり出しますので、手術的にとっていたします、そういった精巣を用いるとか。卵子に関しましては、体外受精を受けた女性なども、やはり1つのキャンディデートであろう。それから、卵巣の手術を受ける人。それから、中絶胎児ということもどうするかといったことが予想される提供者でございます。
 研究の条件でございますが、これは医学的な研究の条件だけでございますので、この専門委員会で話すこととは少し違いますが、用いてよい配偶子は、やはり精祖細胞、精子のもとになる細胞、卵祖細胞以降であろうということ。それから、遺伝子改変が起こるような研究は行ってはいけないだろうと。それから、作成した胚の培養期間は2週間以内であろうということでございます。この特別研究で同意書を作成したわけでございますが、精子と卵子に関しましては、これは提供者だけでよいのではないかという、一応の結論に達しています。これは必要に応じて、配偶者からもいただかなければならないということもあると思います。受精卵に関しましては、やはり、妻、夫、両方から同意書をいただく必要があるだろうということでございます。これがHFEAの胚の研究の申請用の書類でございまして、詳しいことは述べませんが、こういったことでやっているということであります。
 研究をしていく場合に、卵子の場合には極めて困難がある。ということはどういうことかと申しますと、これは凍結の現状であります。凍結が非常に難しい。精子に関しましては、凍結は比較的容易でございます。十分に凍結することに耐え得るわけですが、卵子に関しては、絶対的に無理ということを言っているわけではございませんが、非常に難しい。卵子は、やはり、とり出したものをすぐに使わなくちゃいけないということに非常に大きな問題点が出てくる。研究に関しても、そういった、もし凍結ができるようになりますと、これを保存しておきまして、研究に使用することができます。その方法には、一般的には、成熟した卵子です、排卵前の卵子をとり出しまして、これを凍結しておいて妊娠したという例は、100例ちょっとでございます。でも、最近では、ガラス化法という方法ができてまいりまして、今後はこういった卵子の凍結ができるようになるだろうと。胚の凍結は、すでに確立しております。それから、卵巣凍結ということも考えられます。卵巣の一部を凍結しておく。こういったこともできるようになると、研究がより進んでいくだろうと思いますが、まだ1例しか子どもが産まれていないということでありまして、今後、研究としてやっていかなければならないだろうということであります。
 まとめでございますが、胚の研究、作成を行う研究に対する、やはり規制の必要性はある程度あるだろうと思います。余剰胚の利用とは、これは異なるんではないかと。もう要らなくなりましたからどうぞお使いくださいと言われた胚とは、胚を作るということが違うのではないかということであります。それから、提供卵子の入手の難しさであります。やはり、ボランティアというものをどういうふうに考えていくかということが、極めて大切な問題になってくるだろうということであります。それから、研究を進めるためには、やはり未受精卵、卵巣凍結ということも、ヒトのマテリアルを用いて研究していかなくちゃいけないだろうと。それからまた、もうちょっと将来的な問題もありますが、未成熟な卵子を体外で成熟させて、あるいは未成熟の卵子を凍結しておいて、これを体外で成熟させて、こういったものの研究のために使うということができれば、より、道は広がるだろうということでございます。
 以上でございます。

【笹月主査】
 どうもありがとうございました。厚労科研費でご検討いただいたことを、わかりやすくご説明いただきました。
 委員の先生方から、どうぞ、ご質問ございましたらお聞かせください。どうぞ。

【高木委員】
 いいですか。イギリスでだけ胚作成というのが認められているというお話でしたけれども、その提供に関しては、金銭の授受というのはどういうことになっているんでしょうか。

【吉村委員】
 金銭の授受は、行われていないと思います。

【高木委員】
 一切。

【吉村委員】
 はい。その明記はございません。

【石原委員】
 追加ですが、昨年の10月に、英国ではSEED Reportというのが出まして、Sperm,Egg and Embryo Donation Reportというのが出まして、その結果、臨床の応用を含む配偶子の提供者に関して、上限を決めて補償、コンペンセーションが可能になりました。現在、その金額については、ちょっと私、詳細は覚えていません、一日当たり五十何ポンドですから1万円ぐらいなんですが、その決定された理由は、日本でも今度裁判員制度が始まるそうですが、陪審員の日当に準じて、一日当たりの拘束のお金を参考として、それを上限として決定されたと。ただ、トータルが250ポンドまでということになっております。それがこの研究に関しても同様かどうかは、ちょっと私、存じませんですが、完全に無料ではなくなりました。それ以外に、実際の、例えばトラベルコストとかそういうものは、以前から支払われております。

【笹月主査】
 よろしいですか。
 ほかに、どなたかございますか。どうぞ。

【後藤委員】
 いいですか。現在、65人に1人はARTによる出産というふうに言われましたが、外国では50人とか30人に1人というふうなことを言われましたが、そのバックグラウンドというか、それは技術的なものなんでしょうか。どのようなものなんでしょう。すみません。

【吉村委員】
 技術的なことでということ。

【後藤委員】
 30人に1人がARTによる出産の国があるというふうに先ほど説明いただきましたが、そのバックグラウンドは技術的なものなのか、それとも……。

【吉村委員】
 技術的な問題ではないと思います。我が国も欧米も、ほぼ、今、同等と申しますか、技術的な差異ではないと思いますが。やはり、体外受精をされるという方が欧米では多いという理解でよろしいんじゃないでしょうか。

【笹月主査】
 出産率、これが大体、もう、20パーセント程度で頭打ち、プラトーに達しているみたいな図をお示ししてありましたが、これは欧米ではどんなものなんでしょう。

【吉村委員】
 欧米も、やや高いところ、低いところございますが、同じような。そんなに、この3.7パーセントを説明できるようなものではございません。

【笹月主査】
 技術的にそれだけのことをやって、逆に言えば、20パーセントしか、まだ成功していないという……。

【吉村委員】
 そういう理解で結構だと思います。

【笹月主査】
 そうすると、それは何が一番問題点あるいは乗り越えるべきことだということに関しては、何かございますか。

【吉村委員】
 やっぱり、一番の問題点は卵子のクオリティーだと思いますね。これは人によってももちろん異なりますし、年齢的なファクターは一番多いわけです。38歳以上になりますと、圧倒的に受精率が低くなりますし、妊娠率が低くなりますので。ですから、我が国におきましても、だんだんだんだん、要するに体外受精の年齢というのは高年齢化しているということになりますと、技術がある程度進歩しても、20パーセントから25パーセントぐらいで頭打ちになっているだろうと。施設によってももちろん異なりますが、その差よりも、そういった年齢的な卵子のクオリティー、そういったものがやはり限界なのではないかと思います。

【中辻委員】
 健康な女性が体内で正常な受精をしたときでも、何パーセントと推定されるんでしょうか。

【吉村委員】
 それは当然のことながら、これ、年齢的な統計をとっておけばいいわけですが、20代と30代の35歳以下では、年齢の低い方のほうが妊娠率は圧倒的に高いと思います。

【中辻委員】
 それは絶対値として、例えば、70なのか50なのかは……。

【吉村委員】
 そんなところまでは多分恐らくいかないと思いますが、例えば40パーセントとかそういった値を示して、データを出している病院もございます。

【石原委員】
 追加、よろしいでしょうか。

【笹月主査】
 どうぞ。

【石原委員】
 例えば、外国との違いを説明する1つの理由として、日本は提供卵子を用いた体外受精のできない、数少ない国なんですね。外国におきましては、例えば、米国では10件に1件、英国では20件に1件は、提供卵子による体外受精です。北欧の国を初めとして、三十七、八歳を限度に、保険でやる、ご自身の卵子を用いる体外受精を認めなくなるという国が多い。そのこともありまして、卵子を第三者からもらって、特に若い方からの卵子提供の多い国では、例えば今一番多いのはスペインと言われておりますが、スペインでは20代の女性から卵子提供を受けた場合の妊娠率というのは40パーセント以上であるというふうに報告されております。
 追加して、申しました。

【笹月主査】
 それは、今度は受け取る母体側の年齢はどうでしょうか。着床率とかあるいは妊娠の継続、そういうことにはあんまり年齢の影響はないんですか。

【吉村委員】
 それは卵子を提供していただいた場合ということでよろしいですか。

【笹月主査】
 ええ。

【吉村委員】
 それは問題ないと思います。実際において40代の方でも十分に妊娠されますし、私の考えでは、これはひとえに、卵のクオリティーだと思いますけれども。

【笹月主査】
 どうぞ。

【大隅委員】
 日本の場合、例えば、卵子の提供を受けて妊娠したいという方がどれだけ多いかというのは、また、メンタリティーの違いというのがあるかもしれないと思うんですけれども、例えば、将来的に卵子の凍結保存の技術が非常に進むことによって、自分が若い時期の卵子を凍結保存しておいて、それを自分がそろそろ子供を産みたくなったというようなときに、もし自然妊娠ができなかった場合に使うというようなことで、例えば少子化を防ぐといいますか、そういった可能性ということは考えられる、あるいは、そういった研究というのがそれのために資することができるという可能性があるということでしょうか。

【吉村委員】
 それは非常に難しい問題だと思いますが、それをよしとするかどうかということは、個人のフィロソフィーによっても私は随分違うと思います。技術的には、卵子の凍結ができてくると、そういったことを希望される女性は増えてくるだろうと私は思います。ただ、現時点におきましては、まだそこまでの、成熟卵子の凍結技術が進んではいないだろう。しかし、例えば白血病になった場合に、こういった卵子をとっておいて、あるいは卵巣をとっておいて、そういった人が病気が治ってから赤ちゃんをつくるといったことは医学的にも必要になってくるので、こういった技術というのは早く確立しなければいけないというふうには思っています。
 ただ、社会的な理由のような感じですが、そういったことに関しては、やっぱりいろんなお考え方があるんではないかなと思います。

【高木委員】
 先ほどの例で、凍結成熟卵子ですか――による妊娠が世界で100例ほどということだったんですけど、日本では何例ほどあるんでしょうか。

【吉村委員】
 日本では報告されていることは、数例あるんじゃないでしょうか。数例。

【高木委員】
 10以下ということですか。

【吉村委員】
 10以下だと思いますね。

【笹月主査】
 ほかによろしいでしょうか。
 石原委員もこの班で検討されたと伺っておりますが、何か追加はございますか。

【石原委員】
 大体申し述べたとおりでございます。

【笹月主査】
 そうですか。ありがとうございます。
 それでは、続きまして、この研究班で行われた検討の中で、特に実際の研究現場でどのような研究が行われているかということにつきまして、分担研究者であられます久慈先生からご報告をお願いします。

【久慈氏】
 慶應大学の久慈と申します。このスライドも、厚労省で発表させていただいたのとほとんど同じですので、二度目の先生方もいらっしゃると思うんですけれども、僕の立場としては、毎日、不妊症の患者さんを見ているのと、それから、たまたま、今、大学という研究機関におりますので、卵を使って研究をするということについて、どういう必要性があるのかというのは、臨床とそれから研究の立場と、両方から、一応、僕の考え方にしか過ぎませんが、現場に近いところから説明をさせていただきたいと思います。
 先ほどいろんなところからお話がありましたけども、生殖補助医療研究に限定してヒト胚の研究目的の新たな作成と利用を認めたということで、これは現場の方から言いますとよかったという感じなんですけれども、海外には、これは要するにヒトの個体を発生させることになるわけですから、要するに、例えばお父さんとお母さんが実験のために胚を作りたいと、自分たちが子供を作りたいために実験をしたいからやりたいと思っても、できた胚は人格を持つという考え方もあるので、実験目的で新たな胚作成を認めないという国もあります。ですが、先ほどいろいろ議論がありましたけども、患者さんは、体外受精という方法ができて、不妊症に対する考え方が大分変わってきまして、体外受精をすれば、逆に言うと、もう、できるのが当たり前というふうな考え方に変わりつつあります。そうすると、どうしてできないのかと。例えば、どうして受精しないのか、あるいは、受精しているのにどうして着床しないのかということをどうしても知りたいと。患者さんの方のニーズがこちらの方にも伝わってきまして、やっぱり、この研究というのはどうしても必要になってきてしまっているんですね。
 なぜ必要なのか、どうして動物実験ではいけないのかということを、下に幾つか書いてありますけれども、今、研究の必要性と、それから、2番目として、先ほど吉村先生から簡単にご紹介がありましたけれども、精子・卵子・胚に関する研究の現状調査、それからあと、去年だけですけれども、海外で一体どういう研究が行われているかということと、それからあと、これは凍結保存の話になるんですけれども、新たな受精を起こし得る精子とか卵子とかというのが今後増える可能性があるかどうか。それからあと、技術水準の維持に必要な新たな受精という、これは要するにトレーニングとか教育目的での研究というのも必要ですので、そのこともちょっとお話ししたいと思います。
 これも先ほど出てきたスライドですけれども、研究目的での胚作成禁止により、医学の発展が妨げられるというのは、もう1984年に出ているんですけれども、それが一体どういうことかということを、まず最初にお話ししたいと思います。
 まず、新たな胚の作成、ヒトの胚の作成ですけれども、それが必要な理由。特にこの生殖補助医療研究についてですけれども、大きく2つあると思うんですが、1つは、ヒトの精子とか卵子の構造とか受精の過程が動物と異なる場合が多いので、動物への代用が難しいということ。それから、2番目は、精子とか卵子の機能というのは、受精して胚を形成することということになりますから、最終的に受精をして胚発生を正常にするということでしか、機能を証明できないわけですね。後でも出てきますけれども、例えば受精過程そのものも、ヒトの受精過程、マウスの受精過程、ともにですけれども、動物であっても受精過程がどういうふうに分子的に行われているのかというのは、全部わかっているわけではありません。だから、例えば、顕微授精をして、ちゃんと子供は産まれますけれども、じゃあ、細胞の中でどういう分子がどういうふうに動いているのかというのはわからない状態で、この治療を行っているわけですね。それでも、一応、最低限の安全性を担保して研究を行って、あるいは臨床に応用しているわけですけれども、そうすると、上の1番の動物によって異なるということが、この夫婦で受精が起こらないけれどもこれは動物実験をして解明できるのかと言われると、ヒトと動物が違う可能性があるために、それからあと、ヒトの受精過程がよくわかっていないために、どうしてもヒトで受精過程を起こさないとわからない研究というのが発生します。
 例えば、構造の違いとしては、1番に書いてありますけれども、精子の核のタンパクというのが、ヒトでは2種類あるんですけれども、ウシとか多くの動物では1つしかありません。それからあと、精子の格好も違いますし、3番目、例えば、マウスというのは、一番、卵は手に入りやすいんですが、ヒトの卵とマウスの卵というのは、かなり硬さとか壊れやすさというのが違いまして、マウスの方が逆に顕微授精の方が難しくて、後から成功したという事実もあります。それから、受精過程そのものについても、幾つか違いがあります。
 これは1つの例なんですけれども、精子と卵の染色体が1つになって受精卵を形成するわけですが、ヒトの場合は、入った精子がこの精子から糸みたいなものが伸びていきまして、この卵子の染色体を引っ張ってきて、1つになって、染色体が合体して分裂を起こします。
 ところが、こちらがヒトなんですけれども、明るくてちょっとよくわからないかもしれませんが、大体同じようにこれが対応していると考えてください。こちらがマウスです。ヒトの場合は、ここにMと書いてあるのは、これ、精子なんですけれども、精子の方から、今、糸みたいなのが伸びて、この卵子の方の核を引っ張ろうとしているところなんですけれども、マウスの場合は、最初から、この糸の中心にあるようなもの、中心体――正確に言うと中心体ではないんですけれども、中心体に類するものが幾つもあるんですが、ヒトの場合は精子が持ち込む1つしかないんですね。そうすると、マウスの場合には精子が持ち込んだ中心体がなくても受精は起こるんですけれども、ヒトの場合は精子の中心体が正常に機能していないと起こらない。これだけでも機能が違うだろうということは、何となくわかっていただけると思います。
 精子・卵子は受精・胚発生をすることで初めて正常機能を持つと証明されるということは、精子とか卵子の研究ということは、要するに残りの解明されていないすべての段階が正常に作動するものが必要なので、例えば、顕微授精は精子の侵入のみは改変することはできるかもしれませんけども、あと、どうやって児が発生するかということは、その事実でしか検証ができない。ところが、この成体への薬物投与による治療とかは、異常となっている疾病の一段階だけができれば、そこを正常化できれば臨床的に役に立つわけで、例えば、月経困難症、産婦人科医なのでこういう例が出てくるんですが、鎮痛剤を投与して、要するに子宮で痛みが起こるメカニズムだけが解明されれば、あとの全身的なところは目をつぶっても、なくなればそれは使えるということになります。精子・卵子の研究でも、例えば避妊薬の開発みたいなものは一段階だけブロックすればいいので、ですから、これは、どちらかというと、こちらに属するんですね。だから、要するに、長い一続きのものの、よくわかっていないところの一段階だけを検証しなければいけない。それで、その長い一続きのものは動物によってみんな違うということで、少なくとも不妊症研究については、この精子・卵子研究は、ヒトの精子とヒトの卵子で行うしか、方法が今のところはないということです。
 例えば、これは顕微授精法の成功ですけれども、体外受精では普通は寄せただけで精子が勝手に入っていって受精を起こして、分割を起こして、それで赤ちゃんの出生まで至ります。顕微授精というのは、最初、針を刺して精子を入れていたんですけれども、確かにここまで発生するんですけれども、ここ以上発生しないという時代は随分続いたんですね。なぜだかよくわからなかったんですが、ある人が、これは要するに、普通は細胞膜と細胞膜が融合して、この細胞の中身同士が交通をして発生するんだから、だから精子に傷をつけてみたらどうかということで、今ではこれ、もう、ほとんど100パーセント行われていますけれども、非動化とか不動化とか言いますが、精子の細胞膜に少し傷をつけてから入れるようになったんですが、これがどうして本当に分子的に関係しているのかよくわかりませんが、これで出生率はもう圧倒的に上がってしまったんです。これをもし、だから、例えばマウスとかウシとかでやってうまくいくかどうかは全くわからないということになります。
 先ほども吉村先生からお話がありましたけども、必要な研究の例として、例えば、特にこれがあると思うんですが、受精機能の判定、それからあと、受精機構の研究。受精というのは割と研究されていない分野なんですけれども、その機構の判定にはどうしてもこれが必要です。それから、未熟な精子、例えば、しっぽの生えていないまだ丸い精子細胞とか、そういうものを使った研究も、これ以降、また、こういう精子しか持っていないような男性が子供を持ちたいといって体外受精に来ると思いますので、どうしても必要になってくると思います。それからあと、これも大事な研究だと思うんですが、精子と卵子の体外での形成。特に、未熟卵の体外培養、要するに卵巣からとった卵子を外で培養して、その後受精させる。こういう場合に、体外で培養した卵が本当に正常な卵なのかどうか、あるいは赤ちゃんが発生するかどうかということは、これもやはり、精子と受精させてみないからにはわからないわけですから、これにもどうしても、新たな受精というのは必要になります。それ以降いろいろありますが、凍結保存のことは後でまたお話しします。
 ということで、何となく、精子とか卵子を新たに受精させないと不妊症の研究は進まないだろうということはわかっていただいた、それから、代替が少ないだろうということはわかっていただいたと思うんですけれども、実際に、まず、研究班でやりました2000年から2004年末までの研究のまとめですけれども、これは繰り返しになりますので、簡単に。
 それで、精子が確かに多いんですね。それからあと、卵子をそのまま使うという研究もあります。これは例えば卵子の中の分子がどういうものがあるかとか、それからあと、卵子だけを何か薬で処理したときにどういう発生が起こるかということを、受精をさせないで行う研究というのは19パーセントで、受精させるとか受精卵を使った研究というのは7パーセントぐらいしかなかったみたいです。
 それからあと、例えば、精子の形を見るために固定というのを行いますけれども、こういうふうに死滅させて実験を行うというのが半分ぐらいありまして、あと、観察のみで新しい手法をするというのが1パーセント。だから、半数近くは、もう実験を始めた途端にこの細胞は死滅して、もう発生するのはなくなってしまうということです。妊孕性を持ったものを実験したのが、半分ぐらいは、残り、ありました。
 実験の施設としては、これは筆頭の発表者あるいは著者がどこに属しているかということで見たんですけれども、大学と研究所が7割ぐらいなんですが、やはり先ほど吉村先生からもお話がありましたけれども、今、日本の現状では、不妊のクリニックというのはものすごく多くなっておりまして、大学と研究所以外に体外受精をやっているところがすごく多いんですね。ですから、病医院単独で研究をやっているというところも30パーセントあります。
 主たる研究科というのは、これは管理をする上ではやはりどこで行われているかというのは問題になると思うんですが、産婦人科が圧倒的に多くて、これは精子も含んで、産婦人科が多かったようです。逆に泌尿器科、これもやっぱり、男性側ですから多く思われるかもしれませんけれども、今の体外受精の方法では、やはり卵をとって体外受精をさせる産婦人科の方で研究が行われることが多くて、泌尿器科で行われる研究というのは、精子そのものの運動性とかあるいは機能とかということを精子のみで行っていることが多かったようです。
 それから、新たな受精ですけれども、夫婦間以外で受精をさせるというのは、非常に少なかったです。
 一応、ちょっと注意していただきたいのが、ヒトと動物の受精というのが10パーセントぐらいあったんですが、これはどういうことかといいますと、例えば、これが1つの研究の例なんですけれども、ハムスターの卵にヒトの精子を入れますと、この精子の核の中の染色体というのはばらばらになりまして、この染色体は解析しやすくなります。この状態では、一体、何色の染色体が何本あるかというのは全くわからないので、それから、染色体に傷があるかどうかもわからないんですけれども、こうやってばらばらにしますと、例えばここには青が2本あって、普通、1本ずつしかないものであれば、これは異常があるということがはっきりわかります。ただ、これ、考え方によっては、ハムスターとヒトの精子を受精させているということになりまして、ここに書いてありますけれども、クローン規制法ではヒト動物交雑胚ということになるんですが、これは雑種個体に成長する可能性はありますけれども、まず、可能性として、ないだろうということは、その答申にも書いてあります。着床行為はクローン規制法によって規制されているんですけれども、受精そのものは特に規制されていないんですが、こういう研究は、特に精子の染色体とかの正常性を見るときには、日常、臨床に割と行われている方法ですし、大事な研究法になります。去年から今年にかけてのコマンドラインで、オーサイトをシソーラスでヒトと掛け合わせてみたんですけれども、体外受精の臨床の研究は大体85例ぐらい、それからあと、卵子と卵巣の凍結が30例、それから、卵子の体外成熟が15例、それから、染色体の解析、これは、例えば体外受精で染色体というのが増えるかどうかとか、それから、先ほどの精子の染色体に異常があるかどうかというのは13例、それからあと、ES細胞、これは特に多かったのは昨年の韓国なんですけれども12例、それからあと、卵の分子生物学的解析が12例、それから活性化が5例と、こんなような内訳で、大体、今、僕らが考えているようなのが、これが発表された、それも原著論文になったものだけですけれども、行われているようで、題しか見なかったんですが、非常に先鋭的で何か遺伝子改変を行うような論文は、見られませんでした。結果としては、今お話ししたとおりですけれども、ちょっと覚えておいていただきたいのは、動物の配偶子との融合というのは、実験的にある程度の期間内で行われていることがあるようです。
 それから、3番目ですけれども、先ほどからも話が出ていた、研究に供される卵子が増加する可能性ですけれども、予想される提供者として、ボランティアがありますように、先ほどとちょっと違うのは、卵子とか卵巣の凍結を希望した女性が、例えばその後普通に子供が産まれて、凍結した卵子とか卵巣が要らなくなったという場合に、先ほどもお話がありましたけれども、例えば悪性腫瘍の場合に卵子・卵巣凍結をすることがあるんですけれども、50パーセントぐらいの人は月経周期が回復して、自分で普通に子供を持つことができます。そうすると、そういう人たちが凍結しておいた卵子・卵巣というのはもう要らないので、もしよかったら研究に使ってくださいということはあり得ると思うんですね。ところが、今までは、この卵子・卵巣凍結、どちらも、非常に技術的に未熟で、実際に子供になる可能性が少なかったんですね。未成熟卵子は1例のみ、成熟卵子も100例ということだったんですが、おととしにこの卵巣の凍結で出産が1例あったという報告があって、脚光を浴びて、それで、特に成熟卵子、要するに排卵した卵子を凍結するという方法が少し、技術的にはよくなってきています。
 従来の凍結法というのは何が問題だったかといいますと、まず、卵子というのは、非常に刺激を受けやすい。刺激を受けますと、勝手に分割をして、卵子だけで育っちゃうんですね。精子が入らなければ、本当は卵子は育つはずはないんですけれども、何か刺激があるとスイッチが入ってしまう。そのスイッチというのが例えば凍結であってもスイッチが入ってしまうわけで、これ、活性化というんですけれども、それが起こりますと、もう精子を受け付けなくなってしまう。要するに、この凍結をした後でもう精子が入っていけなくなるからうまくいかないということはあったんですけれども、今、顕微授精という方法で無理やり入れることができます。これができるようになったので、受精率は改善しています。それからあと、もう一つは、卵子の染色体というのは、従来の凍結法ではその染色体の構造――正確に言うと紡錘糸なんですけれども、染色体を分配するための構造というのが、この凍結によって壊れてしまうので、それで染色体異常が卵子に起こって、発生停止が起こる、あるいは流産が起こるということがあったんですけれども、この染色体の分配の構造というのも、ガラス化法という新しい方法で、正常に残すことができるようになりつつあります。
 この染色体の方は、小さくてちょっとよくわからないかもしれませんが、これは普通の卵です。46本、染色体があって、この46本の染色体が23本と23本、要するに極体という細胞を1つ出して23本になってくれれば、精子に23本ありますから、この2つで46本の、元の普通の体細胞になって受精卵になるんですけれども、よく見ていただくと、ここら辺にちょっと傷があるんですけれども、こういう傷が凍結をするときに卵子に起きます。そうすると、例えば、こっち側に24本、こっち側に22本しか染色体がないとすると、この卵が精子と受精したときに、こっちは46本ですけれども47本になってしまうわけで、例えば、これが、染色体が1本多いということで、ダウン症みたいなものを起こす。染色体によっては、これが発生しなくなるとか流産になるんですけれども、こういう異常が凍結をしたときに起こったんですが、これが新しい凍結法ではこっちの卵ができるようになりやすくなっています。だから、これは技術革新なんですが。
 もう一つは、先ほど言いましたように、精子が2匹くっつかないように、精子が1匹くっつきますと、膜の状態が変わって、次の精子が入ってこないようになる。だから、2つ。これが起こらないと、精子が2匹くっついちゃうと、46本が正常なのに69本になってしまうということなんですが、これが凍結をすると、卵子だけでこの膜の状態が変わってしまいます。そうすると、1匹目の精子もくっつかなくなるということなんですけれども、これを顕微授精することによって受精率を改善するということで。この2つで、卵子の凍結保存というのは、少し、まだ完全ではないですけれども、技術的にはよくなっています。
 卵子というのは、1回にとれるのがたかだか5個から10個ぐらいなんですけれども、もし今度、卵巣を凍結することができれば、これは例えば1万個とか、そういう卵子を一遍に凍結することができます。ですから、この卵巣の凍結というのは、僕らにとっては夢みたいな技術なんですけれども、これも一応、卵巣をあらかじめ、例えば癌になった患者さん、骨髄移植をしなきゃいけないので、このまま体に残しておいては、卵巣の中の卵子細胞が非常にダメージを受けてしまう。ですから、治療が始まる前に卵巣を液体窒素中で凍結しておいて、融解してから使うという方法があったんですけれども、いろんな方法があります。
 自分の体に移植する方法と、それから、例えばマウスに植えて、この中で育ってくれる方法、それからあと、これを体外受精みたいに体外で培養して卵を作るという方法。卵巣の凍結保存で、今、1例――まあ、2例と言われているんですけれども、本当は多分1例じゃないかと思うんですが――成功している方法というのは、この凍結した卵巣を自分の卵巣のところに植えて、それで子供を作るという方法なんですけれども、問題点は、結局、もともと、癌の人なわけですから、癌細胞をそのまま移植する可能性があります。それから、成功率もあんまり高くないんですね。
 それ以外の方法は、今のところ全部うまくいっていませんけれども、例えば、これはちょっとよくわからないと思いますけれども、卵巣を腕のところに埋めるという方法。これもやっぱりうまくいっていませんし、動物に植えれば癌細胞を自分の体にまた持ち込むということはなくなるんですが、例えば動物からの感染とか、今、狂牛病とかいろいろ問題になっていますし、それ以外の未知の感染、あるいは、動物に植えることで起こる卵の異常というのが問題になると思うんですが、それがあります。それで、実際に成功例はないんですね。
 ですから、一番いい方法というのは、やはりこの体外培養という方法なんですが、ヒトの卵というのは、大体70日ぐらい、外でというか卵巣の中で育つのに時間がかかると言われていますので、70日間、正常の卵胞を育てるという技術は今までなかったんですが、それが、ここには書いていないんですけれども、2000年ぐらいから、マウスで非常に未熟の小さい卵、卵巣の中の卵を外にとり出して、これを大きくして受精させて子供を作るという技術がアメリカとかで行われています。だんだん技術がよくなってきて、少し、もしかしたらマウスではある程度の確率で子供が産まれるんじゃないかと言われているので、ヒトでも多分、これからこの技術は進んでくると思います。ですから、卵巣を凍結して、凍結した卵巣をシャーレの中に入れて、何日間培養するかわかりませんけれども、ある程度成熟した卵にして、これに精子をかけて子供を作るという技術がこれから、まず、これは先ほどの卵子の凍結と違って、実験段階ですけれども必ず進んでくるはずなんですね。この場合には、先ほどお話ししたように、どうしてもこの、できた卵というのが本当に子供を作る可能性があるのかというのは、精子と掛け合わせてみなければわかりませんし、それを使うためにも、新しい胚形成というのは、これからどうしても必要になってくる技術だと思います。
 それからあと、今、不妊症の世界では体外培養というのが非常にもてはやされているのは、卵巣の中ではこういうふうにうまく育ってくれない卵があるんですね。例えば、この未熟卵まではいっても、これを成熟卵まで卵巣の中で持ってこようとすると、ここで何かうまくいかないことが起こる。これ、例えば多嚢胞性卵巣とかいう病気なんですけれども、この場合に正常な未熟卵をまず体外にとり出しちゃって、それを適当な方法で培養することによって、これがうまくいかないのに、体外で培養することで正常な成熟卵ができるという方法が生まれています。さっきのお話と違うのは、これは小さい卵から長く培養するんですけれども、これはたかだか24時間とか36時間とか、一日以内しか培養しないんですね。この方法は、もう臨床には使われていますが、まだ、そんなに確率がいいわけではありません。これも、でも、先ほどと同じように、この成熟卵が正常かどうか、あるいは、どのぐらい正常に近いのかというのは、新しい受精を起こさなければ検証できないということになります。

【笹月主査】
 時間がオーバーしましたので申し訳ありませんが少し急いで下さい。

【久慈氏】
 すみません。
 じゃあ、あと1つだけお話しさせていただきたいのは、生殖補助医療で発生する卵子は、お話は大体、受精させて4細胞とか8細胞になって、それを子宮に入れて子供ができるというところなんですが、それ以外にも、これで発生しない卵というのが幾つも出てきます。人によっては全然受精しないとか、あるいは、受精してもどこかで発生が止まってしまうとか、結局、どうして赤ちゃんができないのかわからないということになるんですけれども、こういう卵というのは、患者さんの治療のため、それからあと、不妊症研究のために、廃棄するんですけれども、これを例えば固定してみるとかそれから染色してみるとかいうことで、なぜ卵が発生しないかということを見るということは、日常臨床では行われているんですね。例えば、発生しないときに、精子が2つ入っちゃったから発生しないのか、それとも、全然入っていないから発生しないのかということを見ることは、その患者さんにとっては、次にどういうふうに治療したらいいのかということにもなりますし。それからあと、このスライドには出ていませんけれども、こういう卵というのは、この卵とほとんど同じような姿、形それから硬さを持っていますので、例えば、顕微授精というのは、まだ、今は機械ではできませんので、技師さんが練習をするときに、患者さんの同意を得てこういう卵をいただいて、これに針を刺してみて死なないとか、それから、ちゃんと受精するとかいうことを確かめて、自分のトレーニングで次の患者さんのために役立てる。そういう教育目的でも実際は使われているので、これも新しい受精と言えないことはないんですけれども、まず一番違うところは、もう、廃棄させる予定で、要するに発生しないということがわかった卵だということですので、こういう個体に発生する可能性がある卵と、それから、もう、発生しないことがある程度科学的にあるいは実験的に予想できる卵というのを、全く同じに扱っていいのかどうかというのは、患者さんへのフィードバックということも考えて、もし、考えていただければ、その方が臨床には、実情として合うと思います。
 ということで、まとめですけれども、新たな胚の作成を必要とする研究は、治療効果改善のために必要であるとは思います。5年間で我が国で行われた研究というものは単独で研究するものが多くて、新たな胚を作成するものはほとんどが夫婦の精子・卵子を用いていたということ。それから、凍結の保存法の進歩により、これは、本当にそうなるかどうかはわかりませんが、研究で提供される卵子とか卵巣は今後増加する可能性はあります。それからあと、不妊の治療の目的で採卵された卵子の一部、発生しないことが確認された卵子とかそれから受精卵ですけれども、研究のほかに、患者の不妊の原因の解明に検査されたり、それから、患者の同意を得て、教育にも使用されております。
 以上です。

【笹月主査】
 どうもありがとうございました。少し質疑応答もしたいために、ちょっとせかして、申し訳ございませんでした。
 それでは、どなたか委員の方からご質問ございましたら、よろしくお願いします。
 星委員からも、何か現場でのことでご追加ありましたら。

【星委員】
 いや、特に、今、お二人のお話を聞きましたから、特に問題はないと。
 先ほどご質問がありました体外受精の成績についてですけれども、二十数パーセントで止まっているじゃないかということなんですが、それは僕はそんなに悪い数字ではないと思っているんですね。と申しますのは、健常な男女が、本当に排卵日、要するに受精しやすいときに性行為をしたからといって100パーセント妊娠するわけじゃありませんし、恐らく50パーセントいかないと僕は思っているので、そういった意味から言うと、体外受精の二十数パーセントというのは結構いい数字ではないかと、私は思っております。

【笹月主査】
 先ほど中辻先生からのご質問がこの、まあ、なかなかそれは難しいでしょうけれども、本当に自然なときにはどれぐらいの確率かというご質問と思いますが、そういうことですね。
 どうぞ。

【位田委員】
 遅れてきて申し訳ないんですけど、2つほどお聞きしたいんですが、卵そのものが正常かどうかというのは、つまり胚になり得るかそれから発生が続くかというのは、受精をしてみないとわからないというふうにおっしゃったと思うんですが。そうすると、受精してしまえばその卵は正常だったと結果的にわかるんですけど、受精する前に、ある卵が正常かどうかというのは、現在のところはわかりようがないということなんでしょうか。

【久慈氏】
 ちょっと説明が足りなかったんですが、それだけでわかるように、努力はします。
 例えば、中の分子が正常な卵と違うかどうかとかいうことは、PCRなりタンパク解析なりで、することはするんですけれども、でも、それはあくまで受精現象の一面を見ているだけで、それが本当にそれだけが原因なのか、あるいは、こういうことをしたら正常に発生するかどうかというのは、ほかのことがわかっていないので、最終的にはやっぱり新たな受精を起こさせてみないとわからない部分が残っちゃうんです。ですから、もちろん、卵だけでその卵が正常かどうかということは、例えば染色体の解析とかタンパク分子の解析をして、起こすようにはします。

【位田委員】
 それで、2つ目の質問なんですけど、そうしますと、ある卵を例えば染色体を調べてみるとかする際には、その卵は結局、破壊されるわけですか。ですよね。

【久慈氏】
 ほとんどの場合は。

【位田委員】
 そういうことですよね。そうすると、例えば、染色体を調べてみて、この卵は正常であるとわかっても、その卵を使って受精をさせることは、現実的にはできない。そうしますと、Aさんという女性から採取された卵は、ほとんど同じ特性を持っているんでしょうか。それとも、卵によって、やっぱりそれぞれ違うんでしょうか。

【久慈氏】
 卵によって違います。それは一番端的に言いますと、例えば、体外受精のときに採卵をするんですけれども、排卵誘発をしますから、10個の卵が同じ人からとれるんですが、それに同じ精子を振りかけても、大体6割ぐらいしか受精しないんですね。ということは、4割受精しないというのは、何か違いがあるということになります。

【位田委員】
 そうしますと、すみません、卵そのものだけを用いて研究するというのは、あまり、意味がないとは申しませんけれども、生殖補助医療という点に関してはそんなに大きな部分ではないというふうに考えた方がよろしいですか。

【久慈氏】
 今のところは、それよりも受精をさせるということの方が、研究を進めるという意味では非常に助かるんですね。

【笹月主査】
 どうぞ。

【大隅委員】
 ヒトとそれからほかの動物が非常に違うのでヒトの卵子や精子を使わないと研究が進まないということをおっしゃっていたと思うんですけれども、例えばほかの霊長類、あまりそれも、動物愛護とかいろんなところの問題も関わってくるかもしれませんけれども、あと、割とサイクルの短いマーモセットとか、そういったものを使われた研究というもので代替できるということはないんでしょうか。

【久慈氏】
 それも体外受精の世界では随分前からみんながやっているんですけれども、どうしても、例えばマーモセットとかアカゲザルというのは、決まった研究機関でしか持てないんですね。そうすると、ウシとかマウスとかいうのは、ある程度、卵の数も、それから、どういうふうに育てたらいいか、その卵の特性というのもわかっているんですけれども、例えば、マーモセットそれからアカゲザルの体外受精というのは、それは成功するだけでも、結構、研究発表になっちゃうぐらいなので、そちらの方が人間より進んでいないんですね。

【笹月主査】
 どうぞ。

【町野委員】
 この委員会のミッションと関係するのですが、これは生殖補助医療研究の目的での受精胚の作成ですよね。クローン胚の方とは、ちょっと違います。先ほどのお話では、生殖補助医療研究においては、ヒト受精胚の作成及び研究も、部分的にではあるけれども既に日本で行われていて、その際、ほとんどパートナーからの提供ということで、問題がないということでした。しかし、クローン胚の方ではボランティアによる問題とかいう問題は生じますが、こちらの方では、そのような問題はあまり生じないと理解して、よろしいんでしょうか。

【久慈氏】
 そうとも言えないと思います。先ほど同じ個体から卵子が出ても違う特性があるというお話がありましたけれども、例えば、受精をさせようと思ったんだけど全く受精が起こらない人がいたとして、そうすると、受精をしないという、何かデフェクトみたいな障害を持っているわけですよね。ところが、パートナー同士で受精しないのは、精子に原因があるのか、それとも卵子に原因があるのかというのは、これも最終的には、正常だと思われる精子を使ってみるとか、あるいは正常だと思われる卵子を使ってみることでしか、どちらに異常があるかということは、今のところはわからないんです。ですから、受精のメカニズムあるいは受精に関係する分子とかという研究で、パートナー以外のものを使った研究は、実際にあります。

【笹月主査】
 将来の大事な議論の1つとして、ボランティアの問題、それから、これに対する、先ほど既に吉村委員からの金銭的な補償というのも必要じゃないかという、ご意見もありました。そういうことを議論するための基礎知識として、精子は簡単にとれますということで、あまり問題にならない。そうすると、卵子の場合の提供者における侵襲の程度、身体的な侵襲の程度、あれは非観血的と言っていいのかどうか。

【吉村委員】
 観血的ですか。

【笹月主査】
 ですから、その辺の侵襲の程度をちょっとお話しいただけると、それが将来のボランティアに関する議論の基礎になると思うんですけれども。

【久慈氏】
 今、自分の子供を作るということで体外受精を行う方が大体どんな感じで来るかというと、生理になる前から補助的な薬、点鼻薬なんですけれども、これを2週間なり3週間なり使って、その後、生理になった後で、要するに卵子をたくさん作った方が可能性が高くなりますので、卵巣刺激剤、排卵誘発剤というのを、これはHMGとかFSHとかいう薬なんですけど、それを毎日注射に、病院に来なきゃいけないんですね。今のところ、自己注射というのは認められていませんので、だからこれは、ボランティアであっても、多分、病院でするしかないことになります。それとあと、この注射自体に卵巣過剰刺激症候群という合併症がありますので、それを監視するためにも、どうしても毎日来てもらわなきゃいけない。それで成熟させて、HCGという、これは排卵の引き金を引く薬なんですけど、それを最初と最後に注射した後で、採卵は卵巣から穿刺をして行います。ですから、経膣的に、超音波で見ながらなんですけれども、体に針を刺すことになるんですね。
 卵を傷めないように、普通の採卵針の多分5倍ぐらいの太さの針を刺して、それでとることになりますので、ほとんどの施設では麻酔をかけています。静脈麻酔でやっているところが多いんですけれども、痛がる患者さんには脊髄麻酔とか、そういうことをして、一日入院しているところが普通だと思います。だから、卵子をとるためには、ちょっと、精子をとるのとは全く違うような負担がかかります。

【笹月主査】
 はい。その場合、よく比較され――まあ、比較する必要もありませんけど、骨髄移植の場合のボランティアとしての骨髄の提供者ですね。これもやはり入院して、この場合はもう、必ず全身麻酔で採取する。ですから、それと比較してこれがこうだからこうというような議論もありますけれども、どの程度の身体的な侵襲があり、時間的な制約がありというようなことが、将来、これから議論すべきボランティアに対する配慮といいますか、そういうことにつながると思うんですけど、それでちょっとお伺いしました。議論はまた、これからのことになると思いますが。
 時間ももうなくなりましたが、石原委員、何か特にございますか。

【石原委員】
 今、最後に笹月先生がおっしゃられました、ほかの技術、ほかの医療的な、第三者の関わる医療についての技術との比較という議論は、比較的いろいろなところで、外国などで行われているかと思います。特に、骨髄移植あるいは臓器移植のドナー、そのあたりのことというのは、やはり1つの議論の伏線としては重要なポイントだと思いますので今後進めていく必要があると思いますが、もう一つは、ただ、それらが統一的にコントロールされている国が、これまでないんですね。全く別物として扱われています。ただ、そのあたりが、イギリスでは、HFEAを改組して、臓器移植その他のと全部一まとめのオーガナイゼーションにしようとする動きが今ありますので、今後そちらの方向へ進むことを考慮してのことだと思います。したがって我々の議論の中でも必ずしも分離して考える必要はないんじゃないかということをつけ加えさせていただきます。

【笹月主査】
 ぜひ、広く全体を眺めながら、やはり議論を進めていかなければいけないだろうと思います。
 それでは、もう時間になりましたので、お二人の先生方、どうもありがとうございました。
 それでは、一応、本日の予定の議事は以上でありますけれども、事務局から今後の予定など、その他ございましたらお願いいたします。

【石井室長】
 はい。次回の開催でございますが、先ほども申し上げましたように次回からは厚生労働省と合同で開催するということにしてございまして、来週でございますが、1月27日金曜日、16時から19時の予定でございまして、場所が東京八重洲ホールというところで開催いたします。正式な開催案内は追って送付いたしますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【笹月主査】
 それでは、今日はこれですべて終わりました。お忙しい中お集まりいただきまして、大変ありがとうございました。

─ 了 ─

お問合せ先

研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室

(研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室)

-- 登録:平成21年以前 --