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特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会 人クローン胚研究利用作業部会(第4回) 議事録

1.日時   平成17年6月22日(水曜日)10時~12時30分

2.場所   経済産業省別館1014会議室

3. 出席者
 
  (委員) 豊島主査、赤林委員、石井委員、石野委員、位田委員、岡野委員、小倉委員、齋藤委員、笹井委員、高木委員、町野委員、吉村委員
  (事務局) 石井室長 他

4. 議事
 
  (1) 人クローン胚の取扱いに係る検討について
   
1 ヒアリング
「骨髄間質細胞を用いた細胞移植治療における問題点と展望」
<出澤 真理 京都大学大学院医学研究科生体構造医学講座機能微細形態学 助教授>
2 ヒアリング
「厚生労働省の難病施策について」
<菊岡 修一 厚生労働省健康局疾病対策課 課長補佐>
3 総合科学技術会議「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」(平成16年7月23日)について
4 クローン技術等に関する規制(法令・指針)について
  (2) その他

5. 配付資料
 
資料4-1   科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会人クローン胚研究利用作業部会(第3回)議事録
(※第3回へリンク)

資料4-2   骨髄間質細胞を用いた細胞移植治療における問題点と展望
(出澤 真理 京都大学大学院医学研究科生体構造医学講座機能微細形態学 助教授 提出資料)

資料4-3   特定疾患治療研究費補助の概要(平成17年6月22日厚生労働省健康局疾病対策課)
参考 難病情報センターHP掲載資料


資料4-4   総合科学技術会議「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」(平成16年7月23日)全文

資料4-5   総合科学技術会議生命倫理専門調査会 議事概要抜粋

資料4-6   「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」(総合科学技術会議意見具申)の概要について(平成16年7月23日内閣府政策統括官(科学技術政策担当))

資料4-7   ヒトに関するクローン技術等に関する規制体系について
参考1   ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律(PDF:51KB)
(※生命倫理・安全に対する取組のページへリンク)
参考2   ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律施行規則(PDF:25KB)
(※生命倫理・安全に対する取組のページへリンク)
参考3   特定胚の取扱いに関する指針(PDF:35KB)
(※生命倫理・安全に対する取組のページへリンク)
参考4   ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針(PDF:31KB)
(※生命倫理・安全に対する取組のページへリンク)
参考5   クローン技術規制法に基づく特定胚の取扱い手続きの流れ(PDF:20KB)
参考6   特定胚の作成、ES細胞の樹立・使用に係る申請・規制等の流れ(PDF:22KB)

参考資料   (緑色の紙フォルダ)
(ピンク色の紙フォルダ)
(ベージュ色の紙フォルダ)

6. 議事
 

【豊島主査】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第4回人クローン胚研究利用作業部会を開催いたします。お忙しい中、ご出席いただきまして、どうもありがとうございます。
 本日は、清水研究振興局長、それから小田審議官、今、まだちょっとおいでになっていませんが、小田審議官はおいでになる予定です。
 それから、本日の議事を進めるに当たりまして、配付資料の確認をさせていただきたいと存じます。それでは、事務局からよろしくお願いいたします。

【根本補佐】 それでは、ご確認させていただきます。

〈配布資料確認〉

【豊島主査】 どうもありがとうございます。では、皆さん、これ、よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、続きまして、資料4-1、前回第3回作業部会の議事録案につきまして、委員の皆様に既に内容の確認をお願いしているところでございますけれども、事前に委員の方々からいただいたご意見に基づき、修正しております。いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、承認ということにさせていただきます。
 それでは、本日の議事に入りたいと思います。本日は、骨髄間質細胞を用いた細胞移植治療の研究に知見を有する専門家の方からのヒアリングを行い、また、厚生労働省から難病に関連してお話をいただきたいと思っております。その後、前回いただいたご意見を踏まえまして、この作業部会の検討を行うに当たってのベースとなる総合科学技術会議の報告書の内容と、それからクローン技術に関する法令・指針等の内容について、この作業部会で改めて確認をさせていただきたいと思います。
 それでは、議題の1に入りたいと思いますが、まずヒアリングから入りたいと思います。本日は、京都大学大学院医学研究科機能微細形態学の出澤 真理助教授にお越しいただいております。
 第2回の作業部会では、ほかの委員より組織幹細胞の研究の現状についてお話をいただいたところでございますけれども、同じ細胞移植治療に使われる細胞として研究が進められている骨髄間質細胞について、出澤先生よりお話を伺いたいと思います。
 それでは、出澤先生、よろしくお願いいたします。

【出澤助教授】 ご紹介ありがとうございます。きょう、私は、骨髄間質細胞の現状、それから将来性、可能性についてまとめてお話をするようにと仰せつかりました。私、京都大学の大学院医学研究科の出澤と申します。よろしくお願いいたします。
 それでは最初に、骨髄間質細胞とはどういう細胞かという、そのお話から入りたいと思います。骨髄といいますと、最初に皆さんが思い浮かべられるのは、造血系の細胞だと思います。この骨髄間質細胞というきょうの主役は、その造血系の細胞とは全く異なりまして、骨髄にありますけれども違う細胞です。どういう細胞かというと、間葉系の細胞です。間葉系というのは、ここに定義が書いてありますけれども、イメージしやすいとすれば、皮下組織などにあります線維芽細胞のような接着性の細胞です。培養系では見るとこういうものであるということです。日ごろは骨髄の中にありまして、このマーカーの矢印で付したような細胞、造血系の細胞を支持する働きをする間葉系の細胞です。
 この細胞は、特にヒトの細胞ですと、採取が容易でありまして増殖力が旺盛であるという、利点があります。採取する場合には、骨髄に針を刺して骨髄液をとってくれば、それで簡単に培養できるということです。ですから、患者本人から採取が可能であるという、メリットがあるわけです。
 この骨髄間質細胞は、現在のところ研究が進められてきまして、いろんな細胞に分化転換するということが報告されています。その背景をここで少しサマライズいたします。もともと30年ほど前から、同じ間葉系同士の、脂肪、軟骨、骨への分化というのは知られておりました。
 例えば骨折をすると、骨折は治るわけですが、そのときに骨の細胞と同時に、この骨髄間質細胞も軟骨や骨に分化転換をいたしまして、骨折の損傷治癒にかかわる。あるいは我々は加齢とともに骨髄の中が脂肪に置きかわるわけですけれども、この脂肪髄の脂肪細胞は、骨髄の間質細胞が加齢とともに脂肪細胞に分化転換して、それで脂肪髄になるのだろうというふうに言われていたわけです。
 このような現象はかなり前からわかっていたわけですけれども、1999年に非常に注目を浴びる論文が発表されました。ピッテンガーたちが出してきた論文ですが、ヒトの骨髄間質細胞からいろんな系列の細胞が分化誘導できるという論文です。それに続いて、2000年から報告がふえてくるわけですが、メゼーたちが、骨髄間質細胞を移植後、生体において神経やグリア細胞に分化するという、こういう研究が皮切りに、一挙に骨髄間質細胞の分化誘導能に関する研究が促進されてきます。
 2002年のこれはジャーンとキャサリン・ベルファイリーたちの研究からですけれども、骨髄間質細胞はESのような性質を有するだろうと、非常にESに近くて、いろんな細胞に分化誘導できる可能性が高いという、こういう報告もされてきます。そこで一気に生体への移植、後の分化転換や培養系での分化誘導という研究が一気に行われてきます。その研究をまとめたのがこれですが、骨髄間質細胞を、何も分化誘導しないでそのまま静脈注入などで生体に投与します。そうすると、生体内で投与された間質細胞はどのようなものに分化するかというのをまとめてあるのがこれですが、実に多くの臓器に入っていって、神経系あるいは心筋、血管、気道系、それから内臓は肝臓であるとか骨、軟骨はもちろんのこと、血液、骨格筋、このような非常に多種多様のものになるということが報告されてきております。
 ただし、生体に間質細胞をそのままで入れますので、このような分化転換能が極めて低いと。非常にめずらしいケースに近いぐらい、中には非常に低率であるという報告もあるくらいです。
 一方、これらのそのまま投与する実験とは別個に、培養系でも分化誘導を図るという研究も同時に並行して行われてきました。骨であるとか軟骨、脂肪、これはもちろんのことですが、そのほかに心筋、あるいはグリアと神経が混合の形で誘導されると報告されています。これらの誘導は、低効率を含んだ報告もありますが、このような培養での分化誘導、それから生体での分化転換という、このような研究がされてきたわけです。
 これらのことから、骨髄間質細胞は非常にポテンシャルの高い細胞であろうということで、細胞移植治療と再生医療への期待が高まってきたわけです。
 ところが、2002年に1つの論文が発表されました。これは、骨髄間質細胞の分化転換というものに疑問を投げかけてきた論文ですが、今まで生体で、投与後分化転換するというこれらの報告は、実際は分化転換ではなくて、細胞融合なのではないかということが言われてきたのです。つまり、移植された細胞が生体の組織には入っていくのだけれども、そのドナーの組織のもともとある神経なり筋肉と融合して、一見、分化したように見えているのではないかという疑問が投げかけられてきました。
 そこで、一気に骨髄間質細胞はほんとうに分化するのかということが議論として持ち上がってきたわけですが、しかし、去年、ハリスたちがまた大きな論文を出しました。これは、やはり骨髄間質細胞において分化転換能は存在するであろうということです。実際に間質細胞を移植した場合に、細胞融合だけでは実際の現象を説明しきれない、生着率が非常に高いということが1点、それから彼らは、クレロックスシステムというちゃんとした分子生物学的な手技を用いまして、骨髄間質細胞はちゃんと分化転換をして上皮性の細胞になるという論文を発表しています。これに続きまして、また今年『PNAS』、『サイエンス』等で続々と、骨髄間質細胞はやはり分化転換するという論文が出てきています。
 ですから、間質細胞が本当に分化転換するのかというのは、まだ多少の論議はあります。けれども、これまでのところを総括してみますと、おそらく骨髄間質細胞には多分化能ないしそれに相当する能力はほんとうにあるだろうということは言えるかと思います。
 しかし、間質細胞をそのままに生体に移植した場合には、先ほど出ましたように、細胞融合を起こす危険性もありますし、また、分化転換能は、これは非常に低率です。ただし、すぐれた分化誘導システムさえ開発されれば、この骨髄間質細胞は再生医療に用いる上で非常に大きなポテンシャルがあると、期待できるわけです。
 ES細胞、あるいは体性幹細胞、これは現在、基礎的に非常に研究がよく進められてきております。しかしながら、樹立方法であるとか入手方法、それから供給源、こういったところに問題がありますと同時に、分化誘導法の確立であるとか、特定の細胞への効率的な分離などに多少の課題が残っているわけです。
 一方、骨髄間質細胞は、入手が容易でありますし、細胞の維持などには比較的問題が少ないわけですけれども、ES細胞など同様に、分化誘導法の確立であるとか、やはり特定細胞の効率的な分離などに問題が残っているわけです。もしも骨髄間質細胞でここの懸案が解決されれば、この細胞が実際に医療に役立つ可能性は極めて大きいと考えられるわけです。最近、この分化誘導法の確立という件に関しまして、いろんな大きな前進がありました。ポテンシャリティーを生かす可能性が現実になりつつあると期待できるわけです。
 ここでちょっと我々の研究報告も短くまとめさせていただきます。我々は、パーキンソン病、脳梗塞、脊髄損傷などの神経変性、それから損傷疾患、それと同時に筋ジストロフィーなどの筋変性疾患、これらの根本治療のない疾患に対する細胞移植治療を目的としまして、骨髄間質細胞から大量に短期間に、そして効率的に、目的とする細胞を選択的に誘導する系を開発してきました。
 これが我々の研究の概要ですけれども、我々はヒト及びラットの骨髄間質細胞から、ここにありますシュワン細胞、これは末梢神経にあるグリア細胞ですけれども、神経の軸索伸張を誘導するという非常に大きなメリットを持つ細胞です。この細胞の他に、そして骨格筋細胞、これらが選択的にほかの要素を含むことなく非常に高い効率で誘導されるという系を見出してきました。ここにその誘導方法の概要が示されております。それぞれの細胞を誘導いたしまして、ここにありますような疾患モデルに移植をいたしまして、その多くの研究報告が論文の形で発表されております。
 最初に、シュワン細胞の分化転換からお示しいたします。シュワン細胞は、先ほど言いましたように、末梢神経にあるグリア細胞で、末梢神経のミエリンを形成して、神経の大事な機能であります跳躍伝導を助けている細胞です。このシュワン細胞は、中枢、それから末梢、要するに神経系全ての神経線維を再生させる、そして再伸張させる、こういう非常に大きな作用があります。実際にこの骨髄間質細胞からミエリン形成能を有する機能的なシュワン細胞を、非常に高い効率で、九十五、六パーセントですが、誘導してくるという方法を最初に私たちは報告いたしております。
 このシュワン細胞を用いまして、実際に末梢神経、それから脊髄損傷に移植をいたしまして、機能回復を認めております。これがそのシュワン細胞の誘導ですが、骨髄間質細胞というのは、このような平たい、繊維芽細胞に似たような細胞の形状をしております。還元剤であるとかレチノイン酸で処理いたしますと、この細胞がこのような形質に大きく変わってきます。さらに、最終段階に、ここにありますような4種類の薬剤を投与いたします。これらはサイトカインですが、そうしますと、ほぼ本来のシュワン細胞と極めて形質の似た細胞を誘導することができます。
 この誘導したシュワン細胞が、どれぐらいほんとうのシュワン細胞と似ているかということをマーカーで比較しましたが、この上の列が本物のシュワン細胞です。下の列が、これは骨髄間質細胞から誘導してきたシュワン細胞ですけれども、ほぼ本物のシュワン細胞と同等にマーカーを発現してくるということがわかっております。
 このシュワン細胞を、末梢神経に移植いたしました。これは、ラットの坐骨神経といって足の神経ですが、1.2ミリから1.5ミリほど切り出して欠損をつくります。そこに、ここからこの長さに当たりますけれども、先ほど誘導いたましたシュワン細胞を入れた人工的な移植片を移植して架橋します。そうしますと、半年後にはこの何もなかった部分に見事にこの神経線維が再生されてきて組織が形成されます。また、この緑色の蛍光、GFPといわれるもので標識いたしました移植細胞によって、神経線維はちゃんとミエリンをかぶり、しかもランビエ絞輪も認められます。そしてシュワン細胞特有のマーカーでありますプロテインゼロも発現します。しかも、再生した神経線維は、ゲルだけを与えたコントロールに比べまして、優位に神経の伝導速度が回復しているということを生理学的にも確認をとっております。
 また、これは脊髄損傷への移植ですけれども、この矢印で付したここの部分、脊髄の胸髄の7番ですが、そのレベルで完全に1節分を除去して、切除してしまいます。このように、脊髄が欠落するという、モデルをつくりまして、そこに誘導したシュワン細胞を詰めたこの人工的な移植片でこの脊髄を架橋いたします。半年ほどたちますと、細胞が入っていなくてゲルだけのものですと、脊髄は切れたままであって、中にはほとんど再生した組織は認められないわけですけれども、一方でシュワン細胞を移植したものですと、組織は見事につながっています。形成されているということです。この組織の再形成だけでなくて、実際にBBBスコアといわれます行動機能でも、優位に回復が認められるということがわかっております。
 このように、シュワン細胞は、マーカーだけでなくて形質がほとんど同等であって、しかもシュワン細胞と同じような神経軸索の再生機能を持つ、こういうものが骨髄間質細胞から大量に誘導してこられるということです。
 次に、神経細胞誘導ですけれども、これは機能的な神経細胞に非常に高い効率で分化誘導されてきます。その率は、約九十五、六パーセントです。この系は、グリア細胞が一切含まれない、ここは神経幹細胞と大きく違っている特異的な点です。それから、ひとたび神経細胞に誘導したものを、さらにGDNFというサイトカインを加えることによって、ドーパミンニューロンに分化させていくことができるということです。
 これが誘導されてきた結果ですけれども、骨髄間質細胞から誘導された最終産物の神経細胞です。このような細胞が、例えば10センチなら10センチの培養皿一面に神経細胞ができてくるわけです。しかも、ニューロフィラメントやMAP-2などの神経特有のマーカーがちゃんと発現されております。また、これらは、マーカーに陽性であるというだけでなくて、ほんとうに機能的に神経細胞ができたのかということを電気生理学的にパッチクランプを用いて判定いたしますと、ちゃんと活動電位も認められる神経細胞ができてきたということです。
 また同時に、このグリア細胞のマーカーは、最終産物から検出されないということで、神経細胞は、先ほどのシュワン細胞と同様に、特異的に選択的に誘導された系であるということです。
 この細胞を、さらにサイトカインの処理をしてやりますと、30パーセントぐらいの割合でドーパミンニューロンにさせてやることができます。これはヒトから、それからこちらはラットから誘導したものですが、このヒトから誘導したドーパミンニューロンをラットのパーキンソンモデルに移植してやります。免疫抑制剤を加えていって、観察をいたしますと、このヒトから由来したドーパミンニューロンを入れたものでは、対象群、即ちコントロール群に比べまして、優位に異常回転運動が減少して、症状が改善されていくということが認められます。
 また、その移植された脳内を見てみますと、緑で標識した移植細胞のほとんどは神経細胞であって、中にはこのドーパミンニューロンのマーカーをちゃんと出しております。培養でもともとグリア細胞はありませんので、生体に入ってもそれはほとんどないということで、神経細胞が大量に短期間に機能的なものがつくれるというわけです。
 また、パーキンソンモデルだけではなくて、ラットの脳虚血モデルにおいても、移植をし機能評価いたします。そうしますと、脳内幅広く移植細胞は分布するのですが、同時に海馬にも入ってきまして、記憶改善などの認知行動における改善も確認いたしております。
 骨格筋の誘導系ですけれども、我々の開発したこの誘導系からできてくる最終産物は、3つの構成要素からできるファイナル・プロダクトです。1つ目は、成熟した骨格筋細胞で、長い多核の骨格筋細胞です。それと、これらの単核の細胞で、2種類ありますが、筋芽細胞と筋衛星細胞です。この筋衛星細胞といいますのは、骨格筋の幹細胞と考えられている性質のものです。それと同等の性質のものも出来てきます、この3者がある一定の割合で誘導されてくるというシステムです。実際に、これらの骨格筋は、骨格筋特有のマーカー、例えばミオディーであるとかミオシン・ヘビー・チェーンといわれるこういうたんぱくですね、これらを発現しまして、培養化で収縮能力を持つ筋細胞にちゃんと分化するということが認められております。
 また、この3つの構成要素のうち、単核の筋芽細胞、それから筋衛星細胞、即ち幹細胞ですね、これらをクローン化することによって、骨格筋細胞を純化し、不要の細胞を除去することができます。誘導操作の過程で、中には数パーセント骨格筋になり損なった細胞が当然出てくるわけですけれども、この骨格筋細胞の場合には、旺盛に増殖いたしますので、単核の細胞をクローン化してやれば、ほかの要素を除いた形で純化できるという大きなメリットがあります。
 このヒトから誘導した骨格筋細胞を緑の蛍光のGFPで標識をいたしまして、カルディオトキシンといわれる薬剤で、ラットの足の筋肉である、前脛骨筋を変性させてやりまして細胞を移植いたしました。もちろん免疫抑制剤を投与しておりますけれども、非常に高い率で骨格筋細胞は生体に生着していくということが認められました。
 また、この誘導細胞には、先ほど申しましたように、筋衛星細胞という、骨格筋の幹細胞が含まれておりますが、これらの細胞は、Pax7といわれますマーカーを発言しております。また、cMetRといわれるマーカーも出しています。これらは生体に移植いたしますと、実際に筋衛星細胞そのものとして生着いたします。この筋線維と筋線維の辺縁に、このPax7陽性細胞があります。
 これは実は筋ジストロフィーなどの変性疾患に適用するときに非常に大きなメリットがありまして、筋ジストロフィーなどの患者さんでは、日々、筋肉の崩壊が起きているわけです。そういう患者さんにこの幹細胞としての性質を持つ筋衛星細胞が大量に入ることができれば、これは幹細胞ですから、生体に入っていった後で繰り返しおこる筋肉の変性に対して、この幹細胞がふえていくことができるということです。実際に我々はそれも実験で確認しておりまして、1回移植をすれば、引き続き繰り返し行われる筋肉変性に対して、移植することなく、最初に移植したものが筋肉再生に貢献するということを確認しております。ですから、この筋肉の誘導系は、非常に大きなメリットがあるということであります。
 我々は、自己細胞移植治療の実現ということを目指しております。患者さん本人から骨髄間質細胞をとってくる、そして今お示ししましたような神経、シュワン、骨格筋などに誘導いたしまして、各種の変性疾患にそれぞれ戻してやるという、自分の細胞を使った自分の治療ということが可能になろうということです。また、特に筋ジストロフィーなどのように、遺伝性の疾患であるような場合には、自分の細胞が使えません。そういう場合には、HLAを合わせた骨髄バンクなど、自己細胞バンクあるいは汎用性の高い移植治療用のバンクを確立して、患者さんに供給するということも、この技術を用いれば可能であろうというふうに考えております。
 骨髄間質細胞の持つ利点ですが、ES細胞や組織幹細胞に伴う問題点はさまざまありますけれども、間質細胞の場合には、患者本人から採取は可能です。また、腫瘍化の報告は、現在のところまでは生体に移植した限りではほとんどありません。採取は容易でありますし、増殖力もヒトの細胞の場合には旺盛です。それから、中には我々示したような選択的な誘導系が可能であります。自分の細胞を使いますので、自家移植が可能でありますし、それができない場合には既存のバンクが利用できるという利点があります。
 現在までのところで、今、我々が示したような選択的な分化誘導系、あるいはそれに極めて近い、非常に効率が高くて現実性のある誘導系に限って、骨髄間質細胞からどのようなものができるかというのをサマリーいたしますと、今言いましたような骨格筋、神経、シュワン細胞とともに、以前よりわかっておる、骨、軟骨、脂肪、こういうものもできます。さらに、慶応の福田先生のグループは、心筋細胞を誘導する方法を見出しておられますし、また現在、肝臓の細胞も非常に高い効率で誘導してくるということができます。この辺は日本の研究者がオリジナルに発表してきた領域ですが、同時に海外のほうからも例えばインシュリン産生細胞であるとか、気道系の細胞、あるいは血管内皮ができるという報告もあります。これも非常に選択的、あるいは高い率に誘導系に限りました。これらの細胞が骨髄間質細胞から誘導できてくるということになりますと、ここに示したような非常に多くの範疇の疾患がその適用に入ってくるのではないかと考えられます。
 次なる課題といたしまして、骨髄間質細胞から機能的な細胞を誘導した後に、これらの細胞の精製をどうするかという問題ですが、分離方法として、誘導した細胞を特異的に認識する抗体、あるいは細胞表面に対する抗体をつくって、セル・ソーティングFACSなどにかけて精製するか、あるいは選択的な誘導方法を用いまして、ほかの要素を含まない、目的とする細胞をできるだけ高い率で誘導する系を開発する。あるいはクローン化するなどが考えられます。先ほどの骨格筋のように増殖性の細胞であれば、これは可能であろうと考えられます。
 細胞移植治療、それから臓器再生に向けた骨髄間質細胞の現状ですけれども、ヒトの骨髄間質細胞を臨床レベルで実施した移植例というのは、現時点では実は極めて少ないというのが現状です。例えば膝蓋軟骨の欠損などには既にケース・レポートとして報告されているものが一、二件あります。その程度です。ですから、本格的にはこれからスタートすると考えてよいと思いますし、現時点では基礎的研究が主流であります。
 検討すべき今後の課題としては、やはり何はともあれ安全性、それから特に腫瘍性の有無です。それから細胞の管理です。特に、今年に入ってですが、1年以上にわたる骨髄間質細胞の長期培養によっては、変異を起こし、腫瘍化が認められると、こういうことが長期培養においては報告されてきておりますので、この点は十分に検討することが必要であろうと思われます。それから、効率のよい分化誘導系の開発、基礎研究を推進することは、この骨髄間質細胞の安定供給につながるだろうと思います。そのことも含めまして、大型の哺乳類を用いた安全性、有効性の検討は、ぜひにも必要であろうと思います。また、分化誘導機構の解明が必要であると思います。特に、ES細胞、それから体性の幹細胞における分化誘導の研究は、非常に大きく役立つものと思われます。またES細胞や組織幹細胞の分化誘導をもってして、また骨髄間質細胞のいろんな可能性が開けてくると思います。これと並んで、骨髄間質細胞の分化転換の研究は、相互の発展をもたらすであろうと考えられると思います。
 最後に、提言ですけれども、再生医学の多くは、欧米がリードしている状況であります。しかし、骨髄間質細胞の分化誘導に関しましては日本が進んでおります。日本の研究者が世界に先駆けて発表していっている論文は実に多いということです。骨髄間質細胞は非常にポテンシャルの高い細胞であるということは、これまでの研究からうなずけると思います。この領域の研究を早急に発展させれば、世界に先駆けた独自の再生医療技術が確立できて、この分野を日本がリードできる可能性があると思います。それは我が国の国際貢献であって、また、国益にかなうことであろうと考えております。
 ご清聴、ありがとうございました。

【豊島主査】 どうもありがとうございました。
 それでは、今のご説明に関しまして、質問あるいはコメント、ございますでしょうか。

【小倉委員】 改めて見たら、非常にすばらしい研究なんですが、この技術の移転性というんですか、再現性というか、例えば先生のところで編み出された技術がほかのラボでもすぐに再現できるものか、やはりある程度の時間がかかるもの、どのくらいのレベルの技術のものかちょっと教えていただけますでしょうか。

【出澤助教授】 これは、やはり細かなノウハウがあります。骨髄間質細胞という間葉系の細胞が、神経であるとか全く系統の違うものになるわけですから、それ自身が簡単にたやすくいくものではもちろんありません。ですから、骨髄間質細胞の初期の段階の培養、初動操作にかなりの鍵があると思います。その他に非常に気を使った細かなノウハウがあります。それを含めた形での技術移転をしなくては、なかなか高い再現性は得られないだろうということと同時に、個体差というのはあると思います。例えば年齢であるとか性差であるとか、それからそれと同時に、どのようにその細胞を培養して扱ってきたかという細かな操作によって、この分化転換能というのは大きく上がったり下がったりいたします。現在、我々は、マイクロアレイのレベルで、どういう因子が分化転換能に直接かかわってきているかということを調べておりまして、キーとなるファクターが今、かなり挙がってきておりますが、そういうものの基礎的な研究のベースをつくることによって、この分化転換の技術の安定供給ということにつなげていけるのではないかと考えております。

【石野委員】 先ほど、骨髄バンクのことについて触れられたんですけれども、現在の骨髄バンクというのは造血細胞ですよね、そのときに、今とられているときに、この間葉系の細胞まで一緒にとって保存しているんですか。それとも全然そういうことはされていないんですか。

【出澤助教授】 間葉系の細胞そのものを保存しているということはおそらくしていないと思うんですね。白血病などを目的としていますから、多くは造血系の細胞をとることを目的としていると思います。これは現在、我々はアメリカのほうと共同して、実際に骨髄バンクと同じ処理をしたものから骨髄間質細胞を確立して、そこから分化誘導できるかという研究を開始しようとしておりますけれども、動物レベルでは骨髄液そのものがあれば間質細胞が十分に確立できますので、研究を進めれば、期待できるという可能性はあると考えております。

【位田委員】 私は科学者ではないので、変な質問をするかもしれませんが、お教えください。
 今のご発表を聞いていると、非常にポテンシャルの高い研究だなということを思うんですが、ただ、この場は一応人クローン胚からES細胞をつくって、それで再生医療に使うという、その方向の議論をしているわけですけれども、先生の今ご発表になった骨髄間質細胞の研究を進めていけば、クローン胚からのES細胞、要するにES細胞というのは必ずしも必要ではないというふうにお考えでしょうか。それとも、骨髄間質細胞に何らかの限界みたいなものがあるんでしょうか。

【出澤助教授】 それは、現時点でこうだということをちょっと結論づけるのは難しいと思うんです。今示してきたように、確かにいろんなものには分化できる可能性があります。しかし、それがES細胞と同等の万能であるかということは、これはまだ議論の対象になっていると思うんですね。もうちょっと時間をかけた、いろんな研究者による再現が必要であると思いますし、そういう意味で、ES細胞の研究というのはぜひにも私は必要ではないかと思うんですね。
 また、ES細胞の分化誘導の研究、先ほど提言の中にも入れましたけれども、このES細胞の基礎的な事実というのは、実にたくさんの示唆があるわけですね。
 それを利用して、あるいはその知識に基づいて、骨髄間質細胞のもっと有効な、そして基礎的な原理・原則に基づいた分化誘導系の開発も、確実になると思うんです。ですから、それはES細胞の研究は、私はぜひにも推進をして、同時に、骨髄間質細胞の可能性も開発を進めていくと、この同時並行は必要になると思います。そして、それぞれの得られた研究結果は、必ずES細胞の研究にも戻ります。それから骨髄間質細胞の研究にもフィード・バックできると考えております。

【位田委員】 それで、仮に骨髄間質細胞を用いて、例えば脊髄損傷の治療にも利用できるであろうという話でしたけれども、今のご研究のレベルでは、どの程度まで機能回復、「機能回復」という言葉をお使いになったんですが、ある程度の機能回復は今のグラフなんかでわかるんですけど、それがどの程度のものであるのかということと、それからもう1点、最後のほうで、検討すべき課題ということで、長期のレベルでは腫瘍化が見られるという話でしたが、これはまだ研究が必要だということなんですか。つまり、腫瘍化を何らかでとめる研究をこれからまたおやりになるということなんでしょうか。

【出澤助教授】 最初の、脊髄損傷へのご質問ですけれども、これはもちろん非常に手荒な方法といいますか、脊髄そのものを1分節を取り除いてしまうという、極めてシビアな重症なモデルをつくっておりますので、もちろん完全回復には当然至りません。我々が移植した動物も、機能的には例えば足で立てるとか、そのレベルになるわけですが、それでも完全に取り除かれてしまった分節がつながって、後ろ足が損傷された以下の部分が筋力はある程度回復してくるということは、これは非常に大きな目覚しいものではないかと思います。
 実際の脊髄損傷の患者さんですと、その損傷にいろんなレベルがあると思うんですね。きれいに傷だけでなくなくて、複雑な損傷になってしまったりとか、複雑なケースがあると思います。そういう場合も含めて、この細胞を移植すればある程度は見込まれると思いますが、もちろんそれは完全に元どおりになるというふうには我々は考えておりません。
 それから、第2点の腫瘍化ですけれども、これはおそらく骨髄間質細胞に限ったものでなくて、どんな細胞も長期間に培養すれば、それは培養条件の中で遺伝子の変異、ミューテーションということが起こってくるわけです。先程申し上げた報告というのは、おそらくそのレベルに近いと思います。1年以上というものすごく長い期間、培養系の中で飼っていて、そしてたまに腫瘍化するということは、これはおそらく頻度としては、ほかのいろんな細胞を培養していても、1年以上そういうことをやれば起きてくることなので、特に骨髄間質細胞が腫瘍性がものすごく高いということではないと思います。
 ただ、もちろんそういう危険性からほかの細胞と同様に逃れるわけではないので、どのように細胞を供給するか、あるいはどのように細胞を扱うかということは、ちゃんと慎重に検討しないと、実際の人の応用には行きませんよと、そういう警鐘であると考えていいんではないかと思います。

【位田委員】 その脊髄損傷、ラットでやられたんでしょうか、そこへ移植したときに、長期間観察をしている間に腫瘍化するという例はまだないんですね。

【出澤助教授】 ないですね。脊髄損傷はラットのモデルです。今言いました腫瘍化というのは、培養で見られたということです。生体に移植をして腫瘍になったという報告は、骨髄間質細胞に限っては現在のところないんですね。ただ、それは期間が足りないかもしれないですし、あくまでネズミなどの哺乳類ですから、これをサルであるとかもっとヒトに近い動物に持っていくということが必要であろうと考えております。

【豊島主査】 ほかにいかがでございますか。

【齋藤委員】 私も科学者ではないので、事実関係のところの質問なのですが、今、先生のお話を伺っていて、動物での実験と、あとヒトの骨髄間質細胞を使った基礎研究もされているという理解でよいでしょうか。

【出澤助教授】 そうです。ヒトを要するに供給源として、扱いやすいネズミ、ラットと、それからヒト細胞からもそれが再現できるか、これはヒトに応用するとき大事です。ラットとヒトから、両方からすべて誘導しております。ただし、移植をする対象は、ヒト細胞は動物にしかできませんので、免疫抑制剤を加えた形で、免疫拒絶がなるべく少ないようにして、ヒト細胞を動物に移植して、その評価をするという形になります。

【齋藤委員】 今、ヒト細胞は提供者というか供給元は、患者さんになっているんですか。どういう方たち。今、将来治療の対象となる可能性がある疾患すべての患者さんにご協力いただくことになっているのか、ある程度、誰からというのが決まっていらっしゃるんでしょうか。

【出澤助教授】 2つのソースがありまして、我々が使った細胞は、1つはアメリカの会社からコマーシャル、売っているものですね、そこから購入したのが1系列と、それからあとは京都大学の倫理委員会の承認を得まして、手術で余った余剰の骨を患者さん、それから家族の同意を得て、「研究に使ってよろしいでしょうか」という、インフォームド・コンセントをとった上で培養し、間質細胞を樹立いたしまして、その細胞を研究に使っております。

【齋藤委員】 口蓋裂とかだと、かなり小さいお子さんの骨細胞ということになるんでしょうね。

【出澤助教授】 若い細胞もありますと同時に、ほかのケースもありますから、四十数歳の方の細胞もございます。
 それから同時に、この研究の一部分はアメリカと共同でやっておりますけれども、アメリカの場合には、有料で謝礼を払えばいろんなボランティアの方から間質細胞、骨髄提供していただくことができると、そういう形で、現在、我々は六、七十のクローンを集めておりますし、いろんな年齢、それからいろんな人種ですね、バックグラウンド、それから性差のものをふやしていっておりまして、そこからこの実験を再現していっているということです。
 ですから、我々のやったソースは、コマーシャルで買ったもの、それから京大の倫理委員会を得たものと同時に、アメリカとの共同に関しましては、ボランティアの方々の提供を受けた細胞を使っているという、こういう研究の現状です。

【齋藤委員】 ありがとうございます。
 もう1点、よく今までクローン胚の研究の話とかで伺っていると、提供された細胞がフレッシュである、新鮮であったほうがいいとか、年齢が若いほうがいいというようなお話はときどき伺うんですが、骨髄のこの研究に限っては、そういう何か提供元の細胞の年齢とかそういうことに関しては、差は出てきていないんでしょうか。

【出澤助教授】 我々が現在、何回も実験した感触によりますと、年齢はある程度は若いほうがいいと。ただ、七、八十の方の細胞はちょっと間質細胞そのものがもうとれなくなって、骨髄の中が脂肪に置きかわってしまっているので、細胞数がとれないという問題があると思うんですね。そうでない限りは、40代の細胞からも分化誘導できましたし、さりとてものすごく若い場合、例えばラットなんかで非常に若い4週齢とかのですと、細胞が非常に弱いためか、むしろ分化誘導できなくて操作の途中で死んでしまうということもあります。ですから、必ずしも若ければよくて年齢が上だとだめだというわけでもなさそうなんですね。むしろこの分化転換という機構は、ある程度の枠内の年齢の細胞であれば、初動操作つまり、最初にどのようにして培養操作をしてやったかという、そのことでかなり大きく分化転換能が規定されるというのが我々の現在まで得ている経験です。それがどういう分子背景があるかという科学的なメカニズムは、今、かなり候補を絞り込んできておりまして、候補となる分子はわかってきております。

【齋藤委員】 どうもありがとうございました。

【豊島主査】 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして本日は厚生労働省健康局疾病対策課より菊岡課長補佐にお越しいただいております。
 人クローンのクローン胚の作成・利用の目的について、総合科学技術会議の報告書では、「再生医療研究に関して、臨床応用を含まない、難病等に関する治療のための基礎的な研究」と記載されておりますが、前回の資料3-4「審議の進め方等について」にもありましたとおり、この「難病等」の範囲につきましては、今後の議論の1つのポイントになろうかと存じます。
 そこで、きょうはいわゆる「難病」に関連して、厚生労働省の方からお話を伺いたいと思います。そのことについて、事務局からご説明を。

【石井室長】 今回、厚生労働省さんのほうにお願いするに当たりまして、「難病」という定義が必ずしもはっきりしていないということで、とりあえず総合科学技術会議の報告書でいわれている「難病等」の非常に近いところということで、今回、特定疾患についてのお話をお願いしております。
 今日、お話いただいた上で、その中で今回の議論の対象になり得る再生医療の研究に関連するものを今度は絞り込みまして、少しまた研究の状況をお伺いしたいということで、その入り口として、きょう厚生労働省さんのほうにご説明をお願いしているところでございますので、よろしくお願いいたします。

【豊島主査】 それでは、よろしくお願いします。

【厚生労働省(菊岡補佐)】 厚生労働省の疾病対策課で課長補佐をしております菊岡でございます。本日は、お時間をいただきまして、難病についての行政的な考え方について、簡単にではございますが、説明をさせていただきたいと思います。
 説明に入ります前に、今、ご紹介の中でもございましたが、その「難病」という言葉が、なかなかしっかりした定義がないと私どもも認識しております。一般的に「難病」といわれている、そういう難病と、あと私どもが行政的にいわゆる「難病」という形で使っている難病、そういったものが、今、どのように使い分けられているのかとか、そういったことについて、資料を使ってご説明させていただきます。
 今回、用います資料は、お手元にございます資料4-3、それから参考という形で、難病情報センターという厚労省関係のホームページ上のセンターなんですが、この難病情報センターによってこの資料を2つ用意していただきましたので、こちらを使ってご説明をさせていただきます。
 それでは、申しわけございませんが、まず参考のほうの2になります。ページでいうと3枚目になると思うんですが、難病対策要綱というものがございます。こちらを使って、まずご説明させていただきます。
 実はこの難病対策要綱というのは、昭和47年になりますが、当時、厚生省が総合的な難病対策を推進するという観点から、その範囲の考え方を示すということで出したものでございます。実はこの考え方、今も生きておりまして、現在の厚生労働省の難病対策の中でも、この考え方を中心に、省全体としての難病対策が進められているところでございます。
 こちらをちょっと簡単に読ませていただきますと、まず(1)でございます。原因不明、それから治療法未確立、そしてかつ後遺症を残す恐れが少なくない疾病、こういった疾病がまず1つあるだろうと。または、(2)にございますように、経過が慢性にわたって、単に経済的な問題のみならず、介護等に著しく人手を要するために家族の負担が重く、また精神的にも負担が大きい疾病と、こういう2つの考え方が打ち出されておりまして、私どもよくお話をさせていただくのが、(1)の部分がいわゆる医学的な難病、そして(2)がいわゆる社会的な難病というような形で、ご説明をさせていただいております。
 実はちょっと細かい話になりますが、下のところにございますように、施策の体系でございますので、実はこの当時、寝たきりのご老人ですとか、あと、がん、こういったものについては、既に個別の対策がとられておりまして、こういったものはこの考え方から除外するというようなことを添え書きで書かれております。
 これが昭和47年、厚生省の考えました難病でございますが、この中で、現在、国がいわゆる難病として指定している病気がございます。これが今回、資料の4-3にお示しさせていただきました分でございます。
 まず、病気のイメージのほうからちょっとつかんでいただきたいので、最後のページから見ていただきたいんですが、3枚ございます3ページ目でございます。こちらの病気が、「難治性疾患克服研究事業の対象疾患」と書いてございます。実はこの難治性疾患克服研究事業というのはどういうものかと申しますと、厚生労働省のほうで持っております厚生労働科学研究費補助金、この中で、難治性疾患克服研究事業という研究費の補助事業を持ってございます。この研究の対象疾患でございまして、血液系、それから免疫系、内分泌系等、ずっと書いてございますが、すべてで121疾患ございます。まずこのような病気が厚労省の研究費の補助金の対象疾患となっております。
 そして、この中で、ちょっと色のついているものは今あれですけれども、丸のついているものがございます。小さく丸のついている、例えば再生不良性貧血の初めにちょっと丸がついておりますが、この丸がついているものが幾つかございます。この丸のついているものが、2ページに戻っていただきますが、こちらの病気になります。つまりは、この難治性疾患克服研究事業の121の対象疾患から、45番まで番号をつけてございますが、ある病気だけがまた違うカテゴリーという形で45番まで病気が分けられている、こういう状況でございまして、これが何かと申しますと、特定疾患治療研究の対象疾患ということになってございます。ちょうどその実施年月日、ベーチェットのほうにもちょっと書いてございますが、先ほどの難病対策要綱が出されました昭和47年と時を同じくするような形で、この事業の対象になっているという、こういう状況でございます。
 それでは、今の難治性疾患克服研究、それからこの特定疾患治療研究、この2つの研究の対象疾患というのがどのように選ばれているのかというのが、まさに現在いわれておりますいわゆる難病の1つの要件に当たるわけでございます。これが資料4-3の最初のページにまとめてあるものでございます。
 こちら、目的のほうは、3行ぐらいで簡単に、原因が不明であって治療法が確立していないいわゆる難病のうち、治療が極めて困難であり、かつ医療費も高額である疾患について、医療の確立、それから普及を図ると、こういうふうな文言が入ってございます。
 ただ、イメージ的には、これ、どういうイメージかと申しますと、非常に病気の中でもいわゆる難病対策要綱で示した難病というのは、非常に範囲が広うございます。医学的な難病とか社会的な難病とか、非常に広い範囲のものが示されておりますが、そういった中で、まず患者さんの数が極めて少ないとか、そういった理由で、十分に研究の取り組みが進まない、そういった疾患について、特に国が特定疾患という形で病気を指定しまして、研究を進めると、こういう考え方に基づきまして、この事業ができております。
 実施主体とか自己負担の状況とかそういったものは、きょう関係ございませんので、5番の、対象疾患というところをごらんいただきます。こちらにつきまして、先ほどの121疾患の難治性疾患克服研究事業、それから特定疾患治療研究事業の対象疾患の要件の考え方が示されてございます。ここにありますように、次の4要素、1から4からということでございまして、まず1つ目が希少性ということで、患者数が有病率から見ておおむね5万人未満の疾患であるということ、それから原因が不明であるということで、ここにございます原因、それから発症機序が未解明の疾患、そして効果的な治療法が未確立である疾患、そして生活面への長期にわたる支障、こういった4つの要件をすべて、「また」ではなくてすべて満たした疾患の中から、今、こういった121、それから121の中の45という病気を選定しているという、このような状況でございます。これが、難病という考え方の中で、特に厚生労働省が行政的に特定疾患として示しているいわゆる難病の範囲ということでございます。
 最後に、ちょっとこの3枚目のほうに戻っていただきますと、大体、今121の病気の概要がわかりますが、この中では当然、今、再生医療の研究として取り上げられている病気、あとそうではないような病気も含まれておりまして、これはおそらく色のついているものが多分研究というような形で、ある程度、これはちょっと私、すみません、正確にはわからないんですが、ある程度の取り組みが進められているものなんかに当てはまるんではないかと思いますが、同時に、厚労省のほうで再生医療の研究も、実は疾病対策課のほうで今、私どもやっておりまして、実はその再生医療の中で取り上げている対象疾患と、このいわゆる難病、特定疾患とか難治性疾患克服研究事業で取り上げている病気と、必ずしも一致しているかというと、実はそういうわけではございません。ですので、いわゆる難病として取り上げている疾患の範囲と再生医療とは、また別の観点で実は事業としてやっているわけでございますが、当然、こういったいわゆる難病の中にも、再生医療という形で取り組みがなされている疾患がかなり多く入っていると、こういう状況でございます。
 当然、最後にちょっと蛇足ではございますけれども、本日、こういうような形で私どものほうから行政的な難病の範囲というようなことでお示しさせていただきましたのは、1つの目安というふうに考えていただければと思っております。実際、厚生労働省のほうで、今後の難病対策というような議論が実は行われた中で、難病の定義とか難病の範囲という問題が厚生科学審議会の疾病対策部会の中に難病対策委員会という委員会が実はございまして、そちらのほうでも議論されておりますが、やはりなかなかいわゆる「難病」という形での範囲を定めるのは難しいという中間報告が実はなされております。現状としてはそういう状況でございます。
 以上でございます。

【豊島主査】 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまのご説明に関して、質問あるいは何かコメント、ございましたらどうぞ。

【笹井委員】 今、菊岡課長補佐のほうから非常にわかりやすくご説明いただいたと思います。それで、実際、おっしゃるように、国策としての特定疾患という考え方と、今回、例えばこのクローン胚を含めた考え方におけるところの難病というものに対して、かなり見地の違いというのがあると。特定疾患ということについては、いわば国が、あるいは厚生労働省が、医学的な開発あるいは社会的な観点から、ある意味の補助が必要だということを、そして予算の執行、あるいは環境、施設の整備が必要だというふうなことを対象としたものであって、それに対して、ここで多分問題になる難病というのは、もう少し幸せな生活を追求する権利を著しく損なうような病気あるいは外傷、あるいはその後遺症というものを多分考えるものであって、そこに対して、国策としてのどういう例えば予算の入れ方をするかとかということとは関係のないものというものもあるように思います。
 それで、特にこれは研究補助金の補助ということで、対象疾患の5.にあるところで、資料4-3の5.なんですが、この中で多分、非常に関係の強いものは、3の効果的な治療方法が未確立である、つまりほかの有効な方法があれば、わざわざ多分クローン胚等を使ったようなものを必要とするとは思えないというところがありますし、また、生活面の長期にわたる支障、社会福祉的観点から見て非常に問題が大きいものというものは含まれる、非常に関係が強いと思うんですが、それに対して、希少性とか原因不明であるということについていうと、間接的にしか関係がないのかなと思います。
 例えば、脳卒中後後遺症みたいなものを考えた場合、これは非常に人数は多くなります。また、原因不明であるということからいえば、例えば脊髄損傷などというものは明らかに原因がわかっています。これらは含まれていませんし、また、厚生労働省の特定疾患は、その性格上、外傷を含んでないと思います。疾病という場合に外傷を含んでいませんし、また、感染を含んでいません。それから、虚血後の後遺症などを含んでいませんし、中毒後の後遺症なども含んでいません。したがって、相当、対象として考えられるようなものがたくさんあるもの、例えば脳炎後の後遺症であったり、脊損であったり、脳卒中後後遺症、心筋梗塞後後遺症、あるいは例えば水俣病の後遺症等みたいなものがすべて入っていないということになります。
 したがいまして、当然、厚生労働省の難病あるいは特定疾患というものは、ここで対象とする難病に内包はされるものでありましょうが、それよりもう1つ広い定義が必要であろうと思われます。

【豊島主査】 それは確かにそうだろうと思いますし、今、ご説明のあった中でも、再生医療はまた別のカテゴリーで考えているとおっしゃっていますので、多分その辺で1つオーバーラップが出てくるんではないかと思いますが、多分、総合科学技術会議で使われた意味も、もう少し広いほうのじゃないかと思います。

【町野委員】 総合科学技術会議のときの議論は、この点、深くはされておりませんで、おおむねイギリスにおける法律改正のときの難病がイメージにあったように思います。

【位田委員】 ワーキング・グループでやったときに、難病とはどんなものかということを定義をしてはどうか、もしくは種類をリスト・アップしたらどうかという話がありました。けれども、実際には全部をリスト・アップするのは極めて困難であるということもありましたし、一般的な定義は、これはもう実際にも難しいという話で、今、おっしゃったように、イギリスの例はこういうものがあるという、その程度でとどまってしまっている状況だったかと思います。
 ちょっと質問してよろしいでしょうか。先ほど、再生医療の対象になる疾患は別だとおっしゃったんですが、ここにある121疾患というのは、医療費が高額であるので、患者の負担の低減を図るというのはかなり大きな理由だと思うんですけれども、再生医療の場合には必ずしもそういう考慮はないということですよね。そうであるとすると、これよりは広いものを対象にしているのか、もしくは集合が重なっている部分と離れている部分があるんでしょうか。

【厚生労働省(菊岡補佐)】 すみません、ちょっと再生医療のほうの説明を補足させていただきますと、再生医療の研究費については、特段、難治性疾患のようにもともと研究の対象疾患を絞るような性質の研究費ではございません。ですので、手法とかそういったものでむしろ判断をしているというものでございますので、一方の再生医療研究費のほうの範囲があるかどうかというと、むしろ疾病がどこまでという意味ではもうほとんどないというふうに考えていただいたほうがいいと思います。むしろ手法に絞っていくものであるということでございます。
 あと、これはほんとうに補足でございますが、先ほど言いました医療費の補助とか、そういった経済的な問題も含めてというお話、ございましたけれども、45疾患のほうには、全部または一部、医療費の補助が出るような仕組みになっております。これは、どういう枠組みかと申しますと、ここに書いてございますように研究事業でございまして、この45の対象になっている患者さんにつきましては、臨床調査個人票という診断書のようなこういうペーパーを申請のときに出していただきまして、ご許可の得られた方のデータは、先ほどの難治性疾患の枠組みの中でそのデータを利用させていただくと、そういう枠組みで研究をさせていただいていると、こういう状況でございます。

【石井委員】 121疾患の中の4要素ということですけど、この4要素が複合的に適用する場合もあると思いますが、大体、割合はどうなんでしょうか。4つの要素で選定されておりますね。大体で結構ですけど、どのような状況になっているんでしょうか。

【厚生労働省(菊岡補佐)】 現在考えられておりますのは、すべての要素が該当した中から選ぶというふうに考えております。もちろん、30年やっている事業でございますので、経過の中で当然状況が変わっている疾患というのはその中にございます。ですが、今、そのあたり、我々のほうで選定として考えているのは、4つの要素をすべて満たしているもの。

【豊島】 よろしゅうございますでしょうか。
 多分、今、再生医療に関して使われている難治性疾患というのは、笹井委員の言われたように、研究対象として再生医療が適していそうなものというのを研究者のほうからむしろプロポーズしているというふうな感じに、今のところはなっているんじゃないかと。それを基本的に総合科学技術会議で討論されたときに、その範囲を限るということじゃなくて、そういう対象として考えられるような疾患をどういうふうに扱うかというふうなことになるか、それとも対象を絞ると、今のような話でそごが出てきて、非常に、例えば脊髄損傷なんかがその対象に入らないとか、そういうふうなことになりかねないので、そういうことではなくて、むしろどういう疾患を対象にして再生医療をやっていくのが適切かということを考えるという1つのポイントになっているんじゃないかなと思いますが。

【位田委員】 すみません、先ほど申し上げたワーキング・グループは、私が座長をしておりましたので、私の記憶している範囲でお話ししますと、難病というのが一番問題になったのは、クローン胚ではなくて、ヒト受精胚の研究をして、難病治療に役立たせるというのが最初の問題でありました。その対象になるような難病というのは一体何だろうかという話で議論をして、しかしなかなかそのリストをつくるのは難しいし、一般的な定義をするのは難しいと、そういうことになったと思うんです。
 クローン胚の場合の深めた議論というのは、ワーキング・グループのほうではあまりやっていませんでしたので、クローン胚からのES細胞を用いて再生医療の対象にするべき難病という形ではあまり議論をしてこなかったと思っています。
 ただ、先ほど出ましたように、イギリスではこれこれこういうものを難病として考えて、したがってクローン胚、もしくは受精胚の研究からその治療方法を見出すと、そういう方向は出ているんだという話はございました。

【笹井委員】 1つよろしいでしょうか。主査のおっしゃったように、この特定疾患の発想と、それから再生医療の研究対象としての難病的な発想と、それに加えてもう1つここではより重要な発想としては、例えば薬師寺レポートの精神からいっても、安易に生命の萌芽を滅するようなことの代償として、対象とまでするようなものじゃないものを除外するというんでしょうか、安易に対象としないための難病という発想というのがあると思うんですね。主査のおっしゃったように、あんまり私自身も病気は特定しないほうがいいと思いますし、また、今後の研究の発展によっても変わってくると思うので、例えば文面としては「日常生活における重篤な障害、または著しい苦痛を不可逆的に、または長期にわたり引き起こす予後不良の疾患、または外傷及びそれらの後遺症であり、有効な抜本的治療が未確立であるもの」程度で議論を進めても、安易にということをはずすということでは十分じゃないかと思うんですが。

【位田委員】 これはクローン胚からのES細胞ではなくて、いわゆるヒトのES細胞の議論をしているときからも出ていたと思うんですが、ES細胞を用いなければ治せないような病気を対象に考えるんだということだったと思うんですね。それは先ほど申し上げたように、受精胚の研究をして治療するということについては、受精胚を用いる場合には、いわゆる通常の医療では治せなくて、受精胚を用いた治療方法もしくはクローン胚であればクローン胚からのES細胞を用いた治療方法でなければ治せないものというのが基本的に対象になるんだと。再生医療だから何でもかんでもES細胞なりクローン胚からのES細胞なりを使っていいという話ではないよというのは、多分前提にあったと思いますので、どういうふうに限定するかというのは問題ですけれども、基本的な理念としてはそうではなかったかと思っております。

【豊島主査】 よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、今の厚生省の特定疾患とそういうことに関して、特にご質問がございましたら。よろしゅうございますか。もしなければ、先へ進ませていただきたいと思いますが。
 それでは、次の議題に移らせていただきたいと存じます。前回の作業部会でいただきましたご意見を踏まえて、本日は、本作業部会の検討を行うに当たってのベースとなる総合科学技術会議の報告書の内容と、クローン技術等に関する法令・指針の内容につきまして、各委員の共通の理解を得るため、この作業部会の場で確認をさせていただきたいと存じております。
 まず、総合科学技術会議の報告書の内容につきまして、事務局よりご説明いただきたいと思います。

【石井室長】 それでは、ご説明させていただきます。資料4-4、4-5、4-6と、3種類用意してございます。このうち、4-6については、これは内閣府で総合科学技術会議の報告書が出た時点でお使いになられていた概要という資料でございます。今回の趣旨は、むしろ本文をきちっとご説明して理解を得るということなので、一応お配りさせていただきましたが、これは説明には用いません。ご参考までということで配らせていただきました。
 それで、資料の4-4、これが本文でございまして、報告書の冊子のほうはお手元にある緑色のファイルの中にございますが、一応、今回は説明のため、その中の本文部分のみ抜き出しをして配っておりますのが資料の4-4でございます。
 それから、資料の4-5は、この4-4の中で幾つか総合科学技術会議のほうで議論があった項目で、我々の検討に関係ありそうな項目の議事を少し抜き出して書いてございます。全部というわけにはなかなかいきませんので、少しこちらのほうで抜き出しておりますので、不十分な点あろうかと思います。その点はもう先ほどもご議論ありましたけれども、位田先生、町野先生から事実関係を補足いただければと思います。
 それでは、説明に入らせていただきます。資料の4-4でございます。1ページ目は目次でございまして、報告書のページが2つ書いてございます。左側の、括弧がついていないほうが、本文の報告書のページでございまして、右側の括弧書きのほうがこの資料の4-4のページ数が書いてございます。
 それでは、1枚めくっていただきまして、2ページ目でございます。第1.はじめにでございますが、これは報告書の目的、1でございます。ここは、本報告書の目的として、2つ目のパラグラフにございますが、ヒト受精胚、人クローン胚等のヒト胚について、最新の情勢に基づいてそれらの位置づけ及び取り扱いについて、研究における取り扱いを中心に検討し、今後のヒト胚の取り扱いに関する社会規範の基本的考えを示すものとなることを意図しているということ、そして、この報告書というのが、クローン技術規制法の附則第2条が規定する「ヒトの受精胚の人の生命の萌芽としての取扱いの在り方に関する総合科学技術会議等における検討」に資するべく、検討を行った結果であるということが書いてございます。
 それから2.検討の背景でございます。これは、これまで我が国では、人へのクローン技術の応用、ヒト胚性幹細胞の樹立及び使用等、生命科学の発展に伴い生ずるヒト胚に関する倫理的課題について、その都度個別に検討してきたこと、しかし、こうした対応に対しては、ヒト胚の取り扱いに関してより一般的・包括的に議論するべきとの指摘がなされており、クローン技術規制法の附則2条は、こうした指摘を踏まえた規定であると考えられるというふうにしてございまして、その後、過去の旧科学技術会議の検討、それから総合科学技術会議になっての特定胚指針、それから答申、それらの経緯が書いてございます。
 それから、3.報告書の取り扱う範囲でございますが、本報告書は、これらの検討背景等を踏まえ、クローン技術規制法に規定されているヒト受精胚のみならず、人クローン胚等を含めたヒト胚全体について、胎外での研究における取り扱いを中心に検討したということが書いてございます。
 それから、検討の方法のところでは、これまでの検討の経緯で、平成13年8月から32回の審議でありますとか、19人の有識者、1団体からのヒアリングを行ったこと、それから事務局が47人の有識者及び3団体からヒアリングを行ってきたということ、それから最終的な結論を出す前に、両論併記の中間報告書を取りまとめ、パブリック・コメントで国民の意見を求め、東京及び神戸で2回のシンポジウムを開催したという経緯が書かれてございます。
 4ページ目にまいりまして、第2.ヒト受精胚の項目でございます。この項目は、人クローン胚研究について、直接書いたところではございませんが、関連部分がございますので、そこの部分をご説明させていただきます。
 1番目、ヒト受精胚の研究等の現状ということで、ここは(1)に定義、(2)に科学的性質、それから(3)科学研究の医学応用として、生殖補助医療、生殖補助医療研究、それからヒトES細胞研究、それから着床前診断、その他ということで、現状を書かれているところでございます。
 それから、ヒト受精胚の位置づけでございます。ここは非常に関係があるところでございますが、現在のヒト受精胚の法的・制度的位置づけとして、これは(1)に書いてございます。それから、(2)ヒト受精胚の位置づけに関する生命倫理専門調査会としての考え方でございますが、これまでの社会実態を踏まえて定められた我々の社会規範の中核である現行法体系は、ヒト受精胚を「人」として扱っていないこと、ヒト受精胚を「人」として扱う考え方を採用することは、この現行法体系を大幅に変更し、受精胚を損なうことを殺人と同義に位置づけることを意味するが、人工妊娠中絶手術が行なわれ、また、生殖補助医療において余剰胚等の一部の受精胚を廃棄せざるを得ない現在の社会実態を考えれば、そのような制度変更は現実的とは考えられないこと、また、そのような制度変更については、社会的合意を得る見通しもないと考えられること、他方、ヒト受精胚は、母胎にあれば胎児となり、「人」として誕生し得る存在であるため、「人の尊厳」という社会の基本的価値を維持していくためには、ヒト受精胚を特に尊重して取り扱うことが不可欠になるということが書かれてございます。
 それで、次の6ページ目にまいりまして、このため、ヒト受精胚を「人」と同等に扱うべきではないとしても、「人」へと成長し得る「人の生命の萌芽」として位置づけ、通常のヒトの組織、細胞とは異なり、特に尊重されるべき存在として位置づけざるを得ないのである。すなわち、ヒト受精胚は、「人」そのものではないとしても、「人の尊厳」という社会の基本的価値の維持のために特に尊重されるべき存在であり、かかる意味で「人の生命の萌芽」として位置づけられるべきものと考えられるとしてございます。
 その後、(3)でございますが、ヒトの受精胚の取扱いの基本原則ということで、これがクローン胚のところでも共通の考え方が用いられてございます。
 アとしまして、「人の尊厳」を踏まえたヒト受精胚尊重の原則でございますが、既に述べたとおり、「人」へと成長する「人の生命の萌芽」であるヒト受精胚は、「人の尊厳」という社会の基本的価値を維持するために特に尊重しなければならない。したがって、ヒト胚研究小委員会の報告に示されたとおり、「研究材料として使用するために、新たに受精によりヒト胚を作成しないこと」を原則とするとともに、その目的いかんにかかわらず、ヒト受精胚を損なう取り扱いが認められないことを原則とする。
 それから、イ、ヒト受精胚尊重の原則の例外でございますが、しかし、人の健康と福祉に関する幸福追求の要請も、基本的人権に基づくものである。このため、人の健康と福祉に関する幸福追求の要請にこたえるためのヒト受精胚の取り扱いについては、一定の条件を満たす場合には、例えヒト受精胚を損なう取り扱いであるとしても、例外的に認めざるを得ないと考えられる。
 ウ、ヒト受精胚尊重の原則の例外が許容される条件、イに述べた例外が認められるには、そのようなヒト受精胚の取り扱いによらなければ得られない生命科学や医学の恩恵及びこれへの期待が十分な科学的合理性に基づいたものであること、人に直接かかわる場合には、人への安全性に十分な配慮がなされること、及びそのような恩恵及びこれへの期待が社会的に妥当なものであることという3つの条件をすべて満たす必要があると考えられる。また、これらの条件を満たすヒト受精胚の取り扱いであっても、人間の道具化・手段化の懸念をもたらさないよう、適切な歯どめを設けることが必要であるということを挙げてございます。
 それから、3番目、ヒト受精胚の取り扱いの検討ということで、これは受精胚の取り扱いの個別・具体的な検討を挙げてございます。
 (1)として、研究目的のヒト受精胚の作成・利用として、ここではアとして生殖補助医療研究の作成・利用、イとして先天性の難病に関する研究目的での作成・利用、それからウとしてヒトのES細胞の樹立のための作成・利用、エとしてその他の研究ということを挙げてございます。
 それから、(2)医療目的でのヒト受精胚の取り扱いでございますが、ここでは、同じように生殖補助医療、それから着床前診断、遺伝子治療について挙げてございます。
 そして、8ページ目の、(3)でございますが、未受精卵等の入手の制限及び提供女性の保護ということで、これは直接クローン胚研究のことではありませんが、未受精卵の入手については、後で全く同様の議論がなされますので、ここについては読み上げさせていただきます。
 (3)未受精卵等の入手の制限及び提供女性の保護。ヒト受精胚を作成し、これを利用する生殖補助医療研究では、必ず未受精卵を使用するが、未受精卵の女性からの採取には提供する女性の肉体的侵襲や精神的負担が伴うとともに、未受精卵の採取が拡大し、広範に行われることになれば、人間の道具化・手段化といった懸念も強まる。このため、未受精卵の入手については、個々の研究において必要最小限の範囲に制限し、みだりに未受精卵を採取することを防止しなければならない。また、いわゆる無償ボランティアからの未受精卵の採取については、自発的な提供を望む気持ちは尊いものとして尊重するとしても、一方で、関係者等である女性に未受精卵の提供が過大に期待される環境が形成され、本当の意味での自由意思からの提供とならない場合も考えられるため、原則、認めるべきではない。
 未受精卵の入手には、生殖補助医療目的で採取された未受精卵の一部利用、手術等により摘出された卵巣や卵巣切片からの採取、媒精したものの受精に至らなかった非受精卵の利用とともに、技術の進捗状況にもよるが、卵子保存の目的で作成された凍結未受精卵の不要化に伴う利用等も可能な場合があり得ると考えられる。しかし、こうした未受精卵の入手には、提供する女性に精神的・肉体的負担が生ずることも考えられるため、その利用は個々の研究において必要最小限の範囲に制限されるべきであり、そのための枠組みの整備が必要である。
 さらに、通常、未受精卵を提供する女性は、患者という自分の権利を主張しにくい弱い立場にあることから、自由意志によるインフォームド・コンセントの徹底、不必要な侵襲の防止等、その女性の保護を図る枠組みの整備が必要であるということが書かれてございます。これは後にまた出てまいります。
 それから(4)ヒト受精胚の取り扱いに対する必要な枠組みの考え方ということが書かれてございます。
 それから、10ページ目にまいりまして、ここが一応、本題でございます人クローン胚等の特定胚ということで、1番目、人クローン胚の位置づけでございます。我が国においては、クローン技術規制法により、人クローン胚の胎内への移植が罰則をもって禁止されており、また、現在の技術では、受精という自然の発生過程で作成される受精胚と、核移植及び核の初期化という人為的操作によって作成されるクローン胚とでは、生物学的性質の相違があることが報告されている。このように、人クローン胚には、法律上の取り扱いや科学的性質において、ヒト受精胚との間で明確な差異があるものと考えられる。
 しかし、ヒト受精胚について、母胎内に移植すれば人になる可能性があることを理由に、「人の尊厳」との関係でその尊重が必要であるとした以上、母胎内に移植すれば人になる可能性を有する人クローン胚についても、「人の生命の萌芽」としてヒトの受精胚と倫理的に同様に位置づけられるべきであり、これを基本方針にするということで、先ほどのヒト受精胚のところと同様の基本方針を挙げてございます。
 それから、2番目として、人クローン胚の研究の背景と現状ということで紹介してございまして、(1)が人クローン胚の研究の背景、それから(2)が人クローン胚の研究の現状としまして、我が国における現状、諸外国における現状、それから(3)で関連する研究の現状として、動物ES細胞を用いた再生医療の治療効果に関する研究、それからイとしてヒトES細胞の分化及び再生医療の治療効果に関する研究、そしてウとして動物クローン胚作成に関する研究、エとして動物クローン個体の研究、オとして動物クローン胚からのES細胞の樹立と分化に関する研究、カとして動物クローン胚から樹立したヒトES細胞を用いた再生医療の治療効果に関する研究、キとして体性幹細胞の研究の現状、これらが紹介されているところでございます。
 12ページにまいりまして、3番目、人クローン胚の取り扱いの検討でございます。(1)が基本的な考え方でございまして、人クローン胚がヒト受精胚と倫理的に同様に位置づけられることから、その取り扱いについては、ヒト受精胚における基本原則が適用されるべきである。したがって、人クローン胚の研究目的での作成・利用については、原則認められないが、人々の健康と福祉に関する幸福追求という基本的人権に基づく要請に応えるための研究における作成・利用は、そのような期待が十分な科学的合理性に基づくものであり、かつ社会的に妥当であることと等を条件に、例外的に認められ得る。また、この場合も、人クローン胚の取り扱い期間は、ヒト受精胚と同様に原始線条形成前までに限定されるべきである。医療目的での人クローン胚の作成・利用は、その安全性が十分に確認されておらず、現時点で認めることはできないと考えられるということで、ここで人クローン胚の作成利用について、原則的に認められないとしつつ、一定の条件のもとで例外的に認められ得るという基本的な考え方が示されてございます。
 (2)で、その例外的に人クローン胚の作成・利用が認められる研究の検討ということで、我々の議論に一番関係があるところが書かれてございます。
 現在、他に治療法が存在しない難病等に対するヒトES細胞を用いた再生医療技術の研究において、多くの研究者から、拒絶反応の問題の解決策としてSCNT-ヒトES細胞の利用の可能性に期待する声がある。このような難病等に対する再生医療の研究のための人クローン胚の作成・利用は、人としての「尊厳ある生存」へのぎりぎりの願いに応えるためのものであり、健康と福祉に関する幸福追求という基本的人権に基づく要請によるものであると認められる。個々の事例については、それぞれ十分に検討する必要があるが、こうした要請が科学的合理性に基づくものであるか、また、こうした期待が社会的に妥当であるかどうか等、ヒト受精胚の取り扱いの基本原則における例外的容認の条件等を満たすかどうかについて、一般的考察結果は、以下のとおりであるということで、まず、アとして、科学的合理性等でございます。
 ヒトES細胞を用いた再生医療が、現在の治療法がないあらゆる難病等に対して有効な手段になるとの確証がないにしても、いくつかの疾患に対して動物モデルでの有効性が示唆されており、有力な候補であることは否定できない。また、体性幹細胞の利用などのほかの手法についても、確実な方法とは認められない現状である。
 しかし、ヒトES細胞研究の成果を再生医療技術として実現するためには、拒絶反応の問題を避けて通れないことから、当面の将来においては、SCNT-ヒトES細胞の利用がこうした再生医療技術の実現を左右することとなる。この問題に関し、動物における生物学的知見が必ずしも人においてそのまま適用できるとは限らず、現在の医療研究の実情を踏まえれば、少なくとも動物モデルで得た知見の適応検証等のために、人もしくは人の組織等を使用しなければならないことから、人クローン胚を用いた研究が必要となると考えられる。このため、再生医療技術の研究に関して、臨床応用を含まない、難病等に関する治療のための基礎的な研究に限定して、人クローン胚の作成方法、培養法、SCNT-ヒトES細胞の分化等に関する研究を行うことについては、科学的合理性が認められると考えられる。
 他方、比較対照となる動物での研究、ES細胞の研究が、臨床応用まで十分検証されているとはいえないことから、臨床応用についてはさらなる知見の集積を待ち、安全性の十分な確認の後に開始する必要があると考えられると。
 それから、イとして、社会的妥当性でございますが、パーキンソン病、1型糖尿病や脊髄損傷等、現在は根治療法がないさまざまな疾患や障害を抱え苦しむ多くの人々に治療法を提供することは、十分な社会的妥当性が認められると考える。
 問題は、体性幹細胞の利用等、人クローン胚を用いない方法にも可能性がある段階で、あえて人クローン胚の作成・利用を行うことに社会的妥当性があるかという点である。この点に関して人クローン胚の作成を可能な限り回避し、人クローン胚を用いない方法の可能性を追究した上で、人クローン胚の研究に着手しなければならないことも考えられるが、治療法を提供できる時期がその分遅くなることも考えられ、患者のより早期の救済という社会理念に照らせば、望ましい選択とは考え難い。これに対し、人クローン胚の研究について、臨床応用を含まない、難病等に関する医療のための基礎的な研究に限って扉を開き、必要な規制を整備するとともに、その時代の生命倫理観等への社会的影響を慎重に検討しつつ段階的に研究を進めることとすれば、患者のより早期の救済への期待にこたえつつ、人クローン胚の作成・利用に対する社会の懸念にも応え得る。中間報告書に対するパブリック・コメントの結果等をも踏まえれば、このような社会選択には、十分な社会的妥当性が認められると考えられるということで、先ほども少しご議論のあった難病のところについて、考え方が示されているところでございますが、ここの部分で、難病等の範囲で、資料の4-5のところで少し議論の内容を紹介してございますので、ここで触れさせていただきます。
 資料の4-5の1の難病等の範囲でございます。これは、総合科学技術会議での議論の中の一部をピック・アップしたものでございますが、36回の調査会での議論でございますが、まず、事務局案で、パーキンソン病、糖尿病、精髄損傷等、現在は治療方法がないさまざまな疾患や障害を抱え苦しむ多くの人々の治療法を提供することには、十分な社会的妥当性が認められると考えられるというものが出たのに対しまして、「パーキンソン病、糖尿病と書いていますが、糖尿病に治療法がないという表現はおかしい。入れるとすれば、1型糖尿病、あるいは重症糖尿病」というコメントがあったということでございます。
 それから、「具体的な名前を出すのはあまりにも限定的であって、変性疾患全部に当たるわけですから、何か例が必要であっても、あまりこういう名前を書かなくてもいいような気がしたんですけれども」というご意見があり、会長のほうで「わかりました」というようなご議論があったということでございます。
 それから、37回の会議でございますが、「パーキンソン病、1型糖尿病等の変性疾患や、脊髄損傷など」というような表現を事務局案で出しましたところ、「1型糖尿病は変性疾患になるのですか、代謝疾患だと思ったんですけれども、広くいえば変性疾患なんでしょうか」というコメント。これに、今度は「1型糖尿病は変性疾患ではない。自己免疫疾患です」というコメントがあり、これについて、「具体的な病気の名前を出すのは、ちょっと限定し過ぎているのではないかと私も思いました。広くくくるのか狭くするのかというところはちょっと議論が必要だと思います」というコメントがありまして、この変性疾患というのは多分間違いだということで、最終的に38回は、社会的妥当性のところで、「変性疾患」、これを削除したということになったということでございます。それが一応難病等に関する議論の状況と伺っております。
 それから、先ほどの資料の4-4に戻りまして、特に考慮すべき事項、(3)のほうに移らせていただきます。先ほどの受精卵の取り扱いのところでありました議論と同様でございますが、未受精卵等の入手の制限及び提供女性の保護ということでございます。人クローン胚の作成・利用では、必ず未受精卵を使用するが、現在の核移植技術では、ヒト受精胚の場合に比べてより多くの未受精卵が必要である。このため、人クローン胚の作成・利用のための未受精卵の採取や入手は、その影響がヒト受精胚の場合より大きいものと考えられ、人間の道具化・手段化の懸念をもたらさないよう特に留意する必要があり、より厳しく制限されるべきである。
 いわゆる無償ボランティアからの未受精卵の採取については、これを認めた場合、提供する女性の肉体的侵襲や精神的負担が伴うだけでなく、人間の道具化・手段化といった懸念も強まることから、原則、認めるべきではない。
 未受精卵の入手は、手術等により摘出された卵巣や卵巣切片からの採取が考えられる。また、生殖補助医療目的で採取された未受精卵で同目的には利用されなかったものや、非受精卵の利用とともに、技術の進捗状況にもよるが、卵子保存の目的で作成された凍結未受精卵の不要化に伴う利用等も可能な場合がある。しかし、受精胚の場合と同様に提供する女性には肉体的・精神的負担が生ずることが考えられるため、個々の研究において必要最小限に制限されるべきであり、その点を十分に考慮した枠組みの整備が必要である。
 さらに、自由意志によるインフォームド・コンセントの徹底、不必要な侵襲の防止等、その女性の保護を図る枠組みについても、これらを踏まえてヒト受精胚の場合よりも厳格な枠組みを整備する必要があるということを挙げてございます。
 この中で出てまいりました無償ボランティアについて、やはり生命倫理調査会のほうでご議論がありましたので、資料の4-5に基づきまして、紹介をさせていただきますと、2の、原則認められるべきではないとされている無償ボランティアの解釈といたしまして、34回の調査会におけるコメントとして、「脊髄損傷の子どもがいて、母親が子どもの脊髄損傷を治すために、自分の卵子を提供したいというケースがあらわれないとは限らない」というコメントがあったということでございます。
 それから35回で、「臓器移植、骨髄移植を考えましても、母親からとか自分の姉妹からの採取も可能であるということ。これは臓器移植の中で十分成立している事実でございます。場合によって女性の患者であれば、自己未受精卵も1つの入手の経路だと思います」というコメントがあったそうでございます。
 それから、36回の会でございますが、「骨髄に比べれば、卵子の提供のほうが侵襲はずっと少ないので、家族からの提供ということは十分あり得ることだと考えます。ボランティアの中に家族が含まれるなら、家族からの提供が希望してもできないということになると、問題だと思います」というコメントがありました。
 それから、厚生労働省が生殖補助医療の部会でまとめた報告書で、「配偶子、特に卵子の提供というのは、提供者がいないときは、第三者の中に姉妹も含めるということも一応出ていることも事実ですし、現実にも医療現場で、臓器移植もそうです、骨髄移植もそうですけれども、肉親間の臓器等の提供は進んでいる」というコメントがあり、その後、厚生労働省の部会の報告書では、「精子、卵子、胚の提供について、近親者からの提供は、ほかに提供者がいない場合に認めるという話がありましたけれども、旧厚生省の案ではそうだったと思いますが、検討した結果、それは当分の間、認めないとなったと思います。やはり、ほかにいないとなると、提供せざるを得ないという圧力になってしまう危険性を一番考えなくてはいけない」というコメントがここであったということでございます。
 それから、次の36回のところでございますが、「ある病気の婦人が自分の卵子をそういう研究に提供することも、やはり1つのボランティアになると思うのです。そこまでも、ボランティアについて、我々はもうちょっとワイドに考えていかなければならないと、私は思います」というコメントがあったということです。
 それから、36回で、「ここは、当分の間、これを認めるべきでないということを書いています」と、これは薬師寺先生からありまして、こういった議論を踏まえて、「当分の間、原則これを認めるべきではないということとして、細かな例外はしてはいないわけですけれども、余韻を残すという方法もある」と、事務局のほうで説明があって、これに対して今度は、「認めるべきではないということを、あえて書く必要はないのではないかと考えます。認めるとも書かないが、認めないとも書かないというのが私の提案です」というコメントがあり、次は、「未受精卵の話のボランティアのところは、削除してしまっていいのではないかと思います」というコメントがあり、「書かないと、読みようによってはボランティアからやってもいいんだというふうに読める可能性も出てきますので、やはり専門調査会の立場としては、ボランティアからの未受精卵の採取は、当分の間というより、むしろ原則としてこれを認めるべきではない。その理由なんですが、確かに侵襲性はもちろん大きな要素ですが、こういうことを認めていると、人の道具化、商品化につながる恐れがあるから、原則としてこれを認めるべきではないと。ただし、個々の事例で、例えば本人がずっと不妊であるので、したがって私の卵を使って研究してくださいと言われたときに、これもだめだと言うのはなかなか難しいと思いますし、家族は、確かに、家族からの提供を認めてしまうとプレッシャーがかかることもよくわかります。しかし、プレッシャーではなくて、純粋に提供しようという家族もあり得ると思いますので、一律に当分の間というよりは、むしろ原則としてというふうにしておいて、どういう場合に認め、どういう場合に認めないかというのは、むしろ制度論のほうに持っていくべきかと思いますが」ということで、最終的に今の表現になったということでございます。これが未受精卵の入手の議論でございます。
 それからまた資料の4-4に戻りまして、13ページの一番下、人クローン個体の作成の事前防止というところでございまして、人クローン胚は人クローン個体を産み出すために用いられるおそれがあるため、クローン技術規制法により、胎内への移植が厳しい罰則をもって禁止されているとしても、その事前防止を徹底するための枠組みが必要であり、その整備もまた研究を認めるための要件とすべきであるということを挙げてございます。
 そして、(4)人クローン胚取り扱いに必要な枠組みの考え方でございますが、以上を踏まえ、社会選択として、人クローン胚の作成・利用については、再生医療の実現に向けた研究における利用を念頭に、扉を開くことは認めるが、臨床応用の段階に至らない基礎的な研究に限り、慎重かつ段階的に研究を進めることとする。このため、人クローン胚のヒト胚としての尊重を確保し、人クローン胚の胎内への移植の事前防止のため等の枠組みや未受精卵の提供者である女性を保護するための枠組みをあらかじめ整備する必要がある。
 また、現在の科学的知見は、人クローン胚を用いて基礎的な研究を進めることは支持するものの、今後の研究の進展や新たな科学的知見により、さらに研究を進めることに科学的合理性が認められなくなる場合もあり得る。例えば、将来的に、人クローン胚由来でないヒトES細胞を利用した際の拒絶反応の完全抑止や、体性幹細胞の多様性の確保と採取法や培養法の確立等により、SCNT-ヒトES細胞を利用することなく治療することが可能になれば、その時点で人クローン胚の作成・利用を中止すべきこともあり得ると考える。このため、この研究の意義について、動物を用いた研究や体性幹細胞の研究の成果も含めた広範な知見により、継続的に科学的検証を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずる枠組みをあらかじめ整備する必要がある。また、当分の間、人クローン胚の作成・利用に関し、SCNT-ヒトES細胞の樹立及び配布を国が適切に管理する必要性から、研究能力や設備、研究の管理や倫理的な検討を行う体制等が十分整った限定的な研究機関において実施されるべきであるというふうにしてございます。
 続きまして、4の、その他の特定胚でございますが、これは、過去のクローン法の中でいっている特定胚についての一応整理をしたところでございまして、ヒト胚核移植胚、ヒト胚分割胚及びヒト性融合胚、それからヒト集合胚、ヒト動物交雑胚、ヒト性集合胚及び動物性融合胚、それから唯一認められている動物性集合胚についての一応議論の結果を書いてございます。
 それから、第4、15ページ、制度的枠組みでございますが、まず1番目が、基本的考え方でございます。本報告書においては、ヒト受精胚の取り扱いの基本原則を、ヒト胚の取り扱いについて共通の基本原則とし、これに基づいた考察の結果、ヒト胚を損なうことになる研究目的の作成・利用は原則認められないが、例外的に容認される場合もあるとした。また、ヒト胚は胎内に戻さず、取り扱いは原始線条形成前に限ることとしている。
 ヒト胚の取り扱いの基本原則は「人の尊厳」という社会の基本的価値を堅持しつつ、人々の健康と福祉に関する幸福追求の要請に応えるために、研究目的でヒト胚を作成・利用することが可能な範囲を定めるものである。「人の尊厳」という社会の基本的価値に混乱をもたらすことなく、ヒト胚の研究目的での作成・利用が行われるためには、この基本原則を社会規範として具体化する必要がある。
 人クローン胚については、人クローン個体が生み出されることを防止する必要がある。また、人クローン胚を用いた再生医療の研究は、社会的影響の懸念や臨床応用を想定した場合の安全性の問題を認識しつつ、社会選択として、慎重かつ段階的に進めることとしたものであるため、これを担保する枠組みも必要である。ヒト受精胚及び人クローン胚は、ヒト胚として同等に尊重を受けるべき存在であるが、このように、それぞれ考慮すべき事情が異なるため、これらの取り扱いに関する社会規範は、実態を踏まえて適切な規範形式により整備すべきであるとしてございます。
 それから、制度の内容でございますが、(1)としまして、ヒト受精胚の研究目的での作成・利用、それから(2)で人クローン胚の研究目的での作成・利用が挙げられてございます。ヒト受精胚の研究目的の作成・利用も、内容的に関連しますので、これも読み上げさせていただきます。ヒト受精胚の尊重を求める社会規範は、「人の尊厳」という社会の基本的価値を維持していくための枠組みとして重要である。したがって、具体的に受精胚の尊重の原則を踏まえた取り扱い手続き等を定めたルールづくりが必要であるが、ヒト胚をどのように取扱うかは、個々人の倫理観や生命観を反映して、国民の意識も多様であり、今すぐ強制力を有する法制度として整備するのは容易ではないと考えられる。他方、ヒト受精胚尊重の趣旨から、強制力を伴わない国のガイドラインとして整備されたES細胞指針について、これまでの運用上、実効性の点で特に問題を生じていない。したがって、かかる社会規範は、当面は国のガイドラインとして整備すべきであるが、当ガイドラインの遵守状況等を見守りつつ、国は新たな法整備に向けて、今後とも引き続き検討していくものとする。なお、ヒト受精胚の研究目的での作成・利用は、前述した未受精卵の使用・採取という極めて重い問題を伴っている。
 今回の検討において、ヒト受精胚の研究目的での作成・利用は、生殖補助医療研究での作成・利用及び生殖補助医療の際に生じる余剰胚からのヒトES細胞の樹立の際の利用に限定して認め得ることとした。後者については、既にES指針の枠組みが整備されているが、ヒト受精胚の生殖補助医療研究における作成・利用については、新たにガイドラインを整備する必要がある。具体的なガイドラインの内容としては、本報告書の基本的考え方に基づいて基準を設け、これに基づいて、個別の研究について審査した上で実施を認める枠組みが必要である。
 本報告書の基本的考え方に基づいたヒト受精胚の取り扱いのための具体的な遵守事項として、研究に用いたヒト受精胚を臨床に用いないこと、未受精卵の入手制限及び無償提供、それからヒト受精胚や未受精卵の提供の際の適切なインフォームド・コンセントの実施、胚の取り扱い期間の制限、ヒト受精胚を取り扱う研究についての記録の整備、研究実施機関の研究能力・設備の要件、それから研究機関における倫理的問題に関する検討体制の整備及び責任の明確化、ヒト受精胚や未受精卵等の提供者の個人情報の保護、研究に関する適切な情報の公開等を定める必要がある。
 このうち、特に未受精卵の入手については、提供する女性への不必要な侵襲を防止するとともに、提供への同意に心理的圧力がかかることがないよう、女性の保護を図る必要があるため、既に述べたとおり、個々の研究において必要最小限の範囲に入手を制限するとともに、自由意志によるインフォームド・コンセントの徹底等を義務づける必要がある。
 この際、国は、生殖補助医療研究のためにヒト受精胚の作成・利用を計画している研究がガイドラインの定める基準に適合するかを審査するための適切な枠組みを整備する。
 文部科学省及び厚生労働省は、これらを踏まえたガイドラインの具体的な内容を検討し、策定する必要があるということで、挙げてございます。
 それから(2)人クローン胚の研究目的での作成・利用でございますが、クローン技術規制法は、人クローン個体が生み出されることのないよう、人クローン胚の胎内への移植を、罰則をもって禁止している。同法はさらに、人クローン個体が生み出されることの事前防止の枠組みとして、人クローン胚の作成について届出義務を規定した上で、人クローン胚が人クローン個体を産み出すために用いられることのないよう、人クローン胚の作成及び取り扱いの要件等の遵守事項を特定胚指針として定めることを規定し、間接的ながらも、この特定胚指針に法的拘束力を与えている。
 今回、人クローン胚の研究目的の作成・利用を限定的に容認するに当たって、このクローン技術規制法に基づく特定胚指針を改正するとともに、必要に応じて国のガイドラインで補完することにより、本報告書の基本的考え方を踏まえて必要な枠組みを整備すべきであるということで、ここの部分がこちらの作業部会に対する包括的な宿題を示したところでございます。
 基本的枠組みとしては、本報告書の基本的考え方に基づいて人クローン胚の作成・利用が認められる基準を設け、これに基づいて個別の研究について、審査した上でその実施が認められる枠組みが必要である。この報告書の基本的考え方に基づいた人クローン胚の取り扱いのための具体的遵守事項としては、ヒト受精胚を取り扱う際と同様の内容の遵守事項とともに、人クローン胚の特性を踏まえ、人クローン胚の譲渡・貸与の制限といった厳格な管理、SCNT-ヒトES細胞の樹立・配布の条件、研究実施機関の研究能力・設備の要件、研究管理を検討する体制や研究機関倫理審査会(IRB)等の倫理を検討する体制、ヒト受精胚の場合よりも厳格な未受精卵の入手制限等を定める必要がある。
 このうち、特に未受精卵の入手制限については、生殖医療の現場における知見も踏まえ、文部科学省及び厚生労働省において、具体的な手続きの検討に当たるべきである。
 また、SCNT-ヒトES細胞の使用については、基本的には余剰胚由来のES細胞に対する規制の考え方や手続きの適用が適当であるため、現行のES指針を改正することにより対応すべきであるが、SCNT-ヒトES細胞及びそれ由来の細胞等については、限定的に人クローン胚の作成・利用を認める本報告書の基本的考え方を踏まえ、当分の間、その輸出及び輸入を行わせないことを規定すべきである。
 また、特に人クローン胚については、社会選択として、慎重かつ段階的に進めることとしたものであるため、人クローン胚を用いた再生医療の実現に向けた研究を進める科学的合理性について、動物を用いた研究や体性幹細胞研究の成果等も含めた広範な知見に基づいて、科学的検証を継続的に行う必要がある。このため、上記の制度的枠組みの整備を踏まえつつ、総合科学技術会議を中心として、科学的検証を行うための体制を整備する必要がある。この科学的検証についての検討の結果、人クローン胚を用いた研究を進める必要がなくなったと判断された場合や、特に研究を中止すべき事情があると判断された場合等には、研究の中止の勧告も含めた措置を講ずるものとする。また、人クローン胚を作成し、または利用すること及びSCNT-ヒトES細胞を用いて再生医療を行うことについて、社会的妥当性が失われたと判断された場合にも同様であるとしてございます。
 このうち、科学的検証と社会的妥当性については、資料の4-5の3と4に議論を少し紹介してございます。科学的検証のところは、資料の4-5の2ページ目でございますが、「この科学的検証は、人クローン胚に関する研究成果のみならず、動物を用いた研究や体性幹細胞研究の成果も含めた広範な知見に基づいて行うものとする。また、この結果に基づいて必要な場合には、研究中止の勧告も行い得るものとする」というのが、薬師寺会長が配付した提案の中に書かれてございまして、36回の中で、「現在の科学的知見は、人クローン胚を用いて基礎的な研究を進めることは支持するものの、今後の研究の進展や新たな科学的知見により、さらに研究を進めることに科学的合理性が認められなくなる場合もあるということを会長提案は述べているわけでございます。このため、研究の意義について、動物を用いた研究や体性幹細胞の研究の成果を含めた広範な知見により、継続的に科学的検証を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずる枠組みをあらかじめ整備する必要があり」ということで事務局が説明をしてございます。
 第37回に、薬師寺会長のほうから「私は科学的なあれは非常に重要だという今までのご議論を踏まえて、それは――それから研究機関に関しましても、勝木先生がおっしゃったような、やはりある種の、きちんとモニターができるようなところでやる必要がある」というふうに述べられてございます。
 第38回でございますが、「科学的検証を継続的に行う必要があるということでありましたけれども、どこがやるのかということが不明確だったため、上記の制度的枠組みの整備を踏まえつつ、総合科学技術会議を中心として科学的検証を行うための体制を整備する必要があるというふうに述べております」と事務局からご説明がございました。
 それで、「「上記の制度的枠組みの整備を踏まえつつ、総合科学技術会議を中心として、科学的検証を行う」云々、それから最終行の「研究の中止の勧告も含めた措置を講ずる」のこの全体をどの機関が行うかということを、やはりここではっきりさせてこの報告書を閉じていただきたいと思います。やはり「総合科学技術会議を中心として」という表現も、これはいろいろな考え方ができるかと思いますので。それからまた、中止の勧告も「この会議を中心として」を受けているかどうか、主体がはっきりしないということです」というコメントがあり、「「総合科学技術会議を中心として」と書いたのは、総合科学技術会議が責任をもってこれをやるということでありまして、この総合科学技術会議には意見具申権があるわけでございます。それによって省庁が動くということで、大きな意味で研究推進の、あるいは中止の勧告を行うということでございます。ただ、「中心として」と書いてあるのは、上記の制度的枠組みの整備を踏まえつつということでありまして、具体的には厚生労働省の厚生科学審議会であるとか、または文部科学省の科学技術学術審議会であるとか、そういうところとの連携も視野に入れる必要があるということでございまして、決して引っ込んでいるとか、そういうことではございません」と、これは事務局の説明でございます。
 最後に、事務局のほうから「科学的検証については、これは非常に次元の高い話なので、総合科学技術会議が意見具申権という内閣府設置法に基づく権能に基づいて執行すると、こういう枠組みになっておりまして、不明確だということにはなっておりません」という説明があったということです。
 それから、社会的妥当性でございますが、第38回で、「つまり社会選択をするという以上は、もちろん科学的な知見は重要ですが、それに基づいて社会がそう選択したということですから、やはり社会的に妥当だという判断をそこで下しているわけです。しかし、それが崩れれば、やはり中止せざるを得ないという意味で、「社会的妥当性が失われる場合にもまた同様である」と、そういうふうにすればどうか」というコメントがあり、「SCNT-ヒトES細胞を用いる再生医療について、社会的妥当性が失われる場合には、また同様である」というコメントがあり、最後に、「「なくなる」というのは非常に無責任な言い方であって、要するに検討してそれがなくなったと判断するということですから、「妥当性が欠如すると判断されたときには」というのが……ご趣旨だろうと思います」というようなご説明があったということでございます。
 一応、資料4-5は以上でございまして、4-4の最後、結びにのところで、最終的にまとめているところでございます。
 一応、読み上げでございましたけれども、以上でございます。

【豊島主査】 どうもありがとうございました。今のご説明に対しまして、質問に移るところでございますが、その前に一言だけちょっと私のほうから別のことでご連絡させていただきたいと思います。
 実は、先ほど出澤先生からご説明のありました現状につきまして、未発表のスライドもコピーが皆様のところに回っておりますので、退席されるときには、それを事務局のほうへお渡しいただいて、これはお持ち帰りにならないようにお願いしたいと思います。これは回収した後で、きょうご出席の皆様には出澤先生のほうからこれは渡してもいいというのを整理していただきますので、それをまた事務局のほうから送らせていただきますということで、どうぞご了承、お願いしたいと思います。何卒、その点、よろしくお願いします。
 それでは、ただいまのご説明につきまして、いろいろなポイントがあると思いますが、まず、これから特に検討していかなきゃいけないと思われるポイントその他につきまして、ご質問とともにご議論をいただきましたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

【町野委員】 先ほどからのご議論、出発点の整理ということなんですが、まず、受精胚研究が、ESを含めての問題ですが、難病研究に限られているということは全然ないということを確認していただかなきゃいけない。ES指針にも、そのような限定はない。問題なのは、この報告書、資料版ですと6ページのところにありますとおり、研究目的でのヒト受精胚の「作成・利用」というようになっておりまして、わざわざ研究目的のために受精胚をつくって、それを利用するという観点での規制です。その点に絞られているということです。
 この報告書の立場は、クローン胚もヒト受精胚と倫理的に同等の地位を有するという前提でございますから、人クローン胚をつくるというのも、ヒト受精胚をつくるのと倫理的に同じ問題である。したがって、人クローン胚をつくって治療クローニングを行うということは、ヒト受精胚をつくってそれを作成、研究するというのと同じ考え方を適用しなければいけないということになっている。そして、その観点で、難病の研究目的でヒト胚を作成することの問題が出てきているわけでございます。そういう論理になっておりますから、この「難病」の中には、これをつくったときの考え方では、基本的には再生医療が頭の中にあったということでございます。
 私の記憶では、このような考え方、再生医療が中心だというのはかなり後のほうになって出てきたものでございまして、起草グループの中で、出たという記憶はあまりないんです。
 そして、今のように難病目的での治療用クローニングを認めるという考え方、つまりクローン胚をその目的のためにつくって、それを研究するということがある範囲で許されるというようなこの結論なんですが、他方では、クローン胚でないヒト受精胚については、このような目的での作成は、排斥されております。その理由は、現在のところ、このような研究の必要性がないからというのですが、それが7ページのところにあるわけでございます。倫理的に、これはおよそ許されないということではなくて、その必要性がないのだ、そういうところでこれを行うことは、倫理的には許されないんだと、そういう並びになっている。
 それに対して、治療用クローニングについては、拒絶反応の回避だとかそういうことのために人クローン胚は必要とされるので、これは行うことが許される。それが論理的な構造になっているということでございます。

【豊島主査】 どうもありがとうございました。今のご説明、よくわかると思いますが、基本的にはそういう考え方のポイントでよろしゅうございますでしょうか。
 それでは、位田先生、何かコメントございますでしょうか。

【位田委員】 今の町野先生のご発言に若干補足しておきますと、ワーキング・グループで難病とは何かという議論はいたしました。受精胚の研究という点について、特に具体的に名前が出たのは、ミトコンドリア異常症なんですが、これは受精胚の段階で治療しなければどうしようもないと。例えばミトコンドリア異常症のような難病の治療の研究に受精胚をつくって研究をする、そういう可能性がある。じゃあ、ほかの病気はどうなのかというところで、幾つか名前が出ました。町野先生はそのときご欠席だったのかなという気がするんですが、今、おられないのでしょうがありませんけれども。私は座長でしたので、記憶しておりますが。
 ただ、具体的にミトコンドリア異常症をどうするか、もしくはそのほかの先天性の難病に関してどうするかということについては、どの病気をどういうふうに受精卵をつくって研究をしてというのは非常に難しいので、現段階では「必要性がない」と書いてあります。必要性は十分あるんだけれども、しかし現段階ではなかなか具体的にどうするかというところまで踏み込みづらいので、この報告書の時点では、ヒト受精胚をつくって先天性の難病の治療の研究というのは、今のところはペンディングにしておこうと、そういう趣旨であったと思います。
 あと、前回の笹井先生がおっしゃった、どの点についてこの報告書をつくる際に議論があったか、もしくはその反対論があったかという点なんですが、総合科学技術会議のホームページを見ましても、実はこの報告書の本文以外に、個別意見がもともとついているんですが、ホームページにはそれはついた形では出ておりませんので、本文しかありませんが、反対意見というか個別意見、私と勝木先生、島薗先生、鷲田先生、石井先生の5人で書いた共同意見では、ごく簡単に論点だけ申し上げますと、現状ではクローン胚を作成して研究する、クローン胚からES細胞を取り出して研究をする、そのためにクローン胚を作成するというのは、少し待つべきだというのが共通した意見であったかと思います。
 その理由は、安易にクローン胚を作成することを認めてしまうと、クローン個体ができる懸念がなおぬぐえないというのが1つあります。それから、2つ目に、これが一番大きな問題だと思うんですが、受精胚の作成・研究と並んで、こういう形で範囲を生殖目的以外に研究目的で作成するということになれば、それは人体の商品化につながる危険性があるというのが大きな理由でもございました。
 それから、女性の保護の観点というのが、この専門調査会では必ずしも十分に議論されていないし、かつこの報告書の中では十分に述べられていないのではないかと。未受精卵をとるという観点から述べられていて、提供する女性の側からの観点というのが少し薄いのではないかという懸念でございます。
 それから、もう1つやはりこの報告書の立場と違うのは、これは届出制で、要するに指針でやれというのが基本なんですけれども、こういう、受精胚もクローン胚も含めて、ヒトの胚の作成という問題については、法律による規律を行うべきだという、そういう反論でございます。
 それから、そういう今申し上げたような幾つかの理由で反対をしたことの背景としましては、ヒトのES細胞の研究を余剰胚を用いて行うということについて道は開けたけれども、そのES細胞の研究がほんとうにこれまで十分に行われておりその結果、次にクローン胚に進むべきだというところまで科学的に解明されているか、という点で、疑問があるということです。そういう意味で、科学的適時性といいますか、それがまだ早いのではないかというのが、この反論の背景に1つありますし、同時に、社会的な受容性の問題で、やはりヒトの胚を作成するということに、国民の中で必ずしも十分に理解がなされ、もしくは合意ができあがっていないのではないかという観点でございました。
 しかし、前回、町野先生がおっしゃいましたけれども、個別意見を共同で出しました5人とも、ES細胞の研究についてはもう道を開いたので、それが実際に再生医療を行う上では、当然、患者さん本人のES細胞が要るであろうと。そうなれば、クローン胚を用いる必要があるということは認識をしておりましたので、最終的にES細胞の研究がかなり進んできて、これはクローン胚を用いて再生医療ができるんだという方向性がもっと明らかになったときには、クローン胚の研究を開きましょうと、そういう立場でありました。同時に、ES細胞の研究をやっている途上で、いわゆる体性幹細胞の研究が進んできて、先ほどの骨髄間質細胞でしょうか、ああいう話はそのときには聞いたこともございませんでしたので、そのようなES細胞以外の幹細胞もしくはそれらの多能性のある細胞の研究が進んできて、ES細胞を用いなくても再生医療ができるのであれば、そちらに動くべきだということでございました。
 そういうことが反対論の中心的な枠組みでありますが、しかし、一たんこの報告書が採択されたわけですから、この報告書の中のさまざまな項目に基づいて、適切に規則をつくっていくということであろうかと思います。その点からいいますと、事務局にもう少し箇条書きのような形でこういうことがこの報告書の中に書かれているというのを用意していただきたい。このベージュ色のものには大体主な論点でかなり挙げてあるのですが、これをもう少し我々のほうも考えながら、1つずつ議論を尽くしていくべきであろうかなと思っております。

【豊島主査】 どうもありがとうございました。
 ほかに何かご議論。どうぞ。

【笹井委員】 これ、議論の進め方の上で非常に重要なことだと思うんですが、今、位田先生のおっしゃったことも大変よくわかりますし、また、極めて妥当あるいは常識的な1つの見解だと思うんですね。でも、位田先生がおっしゃったように、最後、もうこれが一応薬師寺レポートとして報告されていて、ここの作業部会のミッションとしては、これをスタートにしてやるということしかないわけで、例えば個別意見というのは、これは非常に1つの見地として重要で尊重すべきであり、今後の議論でも参照等はしていくにしても、要するにスタート・ポイントがはっきりして、エンド・ポイントであるところの指針の変更ということの、このいわば枠組みというものをやっぱりある意味で堅持していかないと、平行議論になってしまうだろうと思うんですね。その意味においては、例えば科学的な適時性というのは先生のおっしゃるとおりヒトへの応用がまだほんとうに実証されていないときに、何でやる必要があるのかと、クローン胚まで考える必要があるのかという点においても、例えばこの申請要件に対しての実証レベルというんでしょうか、あるレベルまで達した研究じゃないと、事前研究がないといけないような意味で、バーを上げることで適時性を実効的に担保できるような知恵の入れ方とかもあると思うので、一応、ここの文章として書かれていることの上に指針をつくっていくということでよろしいんでしょうかという、確認なんですけど。

【位田委員】 今おっしゃったような形で、私は結構だと思います。私自身が個別意見を書いた立場から逸脱するというつもりではありませんけれども、しかし法律家としては、一たんこの報告書に立脚してこのグループができている以上は、この報告書の趣旨に従って規則をつくるということです。私は個別意見を書いたからこれには反対だと申し上げるつもりはありません。いかにして良いかつ実効的な規則をつくっていくかと、そういう話だと思っております。

【笹井委員】 そうであるんでしたら、ひとつこれは事務局にお願いなんですけれども、また集中的な総論、あるいは各論の議論を、この扱いは実際にきょうぐらいから始まりだしているんだと思うんですけれども、その際に、やはり位田先生がおっしゃったように、これだけのものをいつも頭に入れておくのは大変なので、次の2点で箇条書き的にまとめていただけたらすごく助かるなと思うところがあります。
 資料4-6はあまりにもまとめ過ぎちゃっているので、むしろちょっとパラフレージングがあると思うので、パラフレーズしない形で、1つには指針、内容にかかわることで、「何々すべきである」とか、「何々すべきでない」とか、「何々する必要がある」というものを、内容のくくりごとに箇条書きしていただけたらと思うんです。あまりに総論的な、例えば「ガイドラインをつくるべきである」みたいな、そんなのは要らないと思うんですが。
 もう1つは、この基本的考え方の中に、たくさん憂慮すべき点や懸念すべき点、それが「何々すべきである」とか「すべきでない」というものの理由になっているように思うんですが、そのものについても、別個箇条書き的に抜いておいていただいたら、今後、議論していく上で、もうそこで決まっているようなこととかいうことはもうそれ以上議論そんなにする必要がないと思うので、そのベースに使いやすいと思うので、そういう資料がもしもわりと楽にできるものでしたら、つくっていただけたら助かるなと思います。

【豊島主査】 具体的な提案ですけれども実際の……。

【石井室長】 事務局のほうで、報告書からの抜き出しをした上で整理をして、ご趣旨に合うように努力させていただきます。

【豊島主査】 ほかに。

【位田委員】 これは若干テクニカルな話なんですが、資料のこのベージュのほうの3-5のところにも書かれておりますように、意見具申への対応というところで、1つは特定胚指針を改正するということと、もう1つはES細胞指針を改正するというところがあるので、それぞれの項目に、総合科学技術会議のどれが当たるのかというのを少し対照表のような形でつくっていただくとわかりやすいかなと思うんですが。このベージュの3-5で大きな論点は挙げられているとは思いますが、規則をつくるときにはやはりここは変えないといけない、ここは変えなくてもいいという議論をしていく必要があると思いますので、これからの議論の進め方でどういうふうに進められるのかはわかりませんけれども、その辺の若干テクニカルなことは考えていただければ助かるかと思いますが。

【石井室長】 一応、その検討事項との関係ということでいいますと、資料の2-5というのが先ほどのベージュのファイルの後ろについてございまして、ちょっとここはあくまでもまだ論点等の対応関係のみで、変えるかどうかというところまで挙げてございませんが、一応、その指針の該当するところに対して挙げてございますので、ここを例えばもう少し報告書のベースで掘り下げた形でやるような形でよろしゅうございますか。

【位田委員】 はい。

【石井室長】 わかりました。そのように作業させていただきます。

【豊島主査】 ほかにいかがでございましょうか。
 それでは、きょうは進める方向の基本線というのは確認されたと思うんですが、きょうも出澤先生のお話のまとめのほうにもありましたように、補完的なところというのはかなりあるので、やはり研究自体はきちっと進めていったほうがいいと。ただ、その研究を進めていくに当たっての注意事項というのを十分にこれから検討するということになるんじゃないかなと思いますが、基本線としてはそういう方向でよろしゅうございますでしょうか。
 それでは、かなり予定の時間も近づいてまいりましたが、ほかに何かございますでしょうか。
 クローンに対する法律、お願いします。

【根本補佐】 それでは、資料の4-7と参考の6を中心に使わせていただきまして、ご説明申し上げたいと思います。
 まず、ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律についてでございます。その法律の制定の経緯でございますが、資料の4-7の1枚目にございますように、平成11年11月に科学技術会議の生命倫理委員会の中にクローン小委員会がございまして、「クローン技術による人個体の産生等に関する基本的考え方」という報告書が出されてございます。その中で、四角でくくってございますが、成体の体細胞の核移植による人クローン個体の産生については、法律により罰則を伴う禁止がなされるべきであること、他方、人クローン胚に関する研究は、移植医療等に有用性が認められるが、人の生命の萌芽であるヒト胚の操作につながる問題や、人クローン個体の産生につながるという問題があることから、やはり、何らかの規制は必要であるが、罰則を伴う法律による規制よりも柔軟な対応が望ましいこと、人と動物のキメラ胚及びハイブリッド胚からの個体産生は、人クローン個体の産生を超える問題を有することということ、がここで指摘されてございます。
 また、平成12年3月に同じ科学技術会議の生命倫理委員会の中のヒト胚研究小委員会「ヒト胚性幹細胞を中心としたヒト胚研究に関する基本的考え方」の報告の中で、個体産生に至らないクローン胚、キメラ胚及びハイブリッド胚の取り扱いについて、クローン胚等を作成・使用する研究は原則禁止であるが、厳格な審査による個別審査の余地を残し、クローン胚等を作成・使用する場合にも、クローン胚等の適切な取り扱いが行われることを法律により国として担保することが必要であることという指摘がなされてございます。
 それらを受けまして、平成12年10月の通常国会におきまして法案を提出いたしまして、「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」が平成12年11月30日に成立いたしまして、同年の12月6日に公布されたものでございます。
 2枚目以降でその法律の内容につきましてご説明申し上げたいと思います。1枚めくっていただきまして、先ほどの4-4の報告書の中の16ページの中段でもその法律の概略的なものが触れられておったわけでございます。まず法律の目的でございますが、一番上に書いてございますように、ヒトまたは動物の胚または生殖細胞を操作する技術のうち、クローン技術ほか一定の技術が、その用いられ方のいかんによっては特定の人と同一の遺伝子構造を有する人もしくは人と動物のいずれかであるかが明らかでない個体をつくり出し、またはこれらに類する個体の人為による生成をもたらす恐れがあり、これにより人の尊厳の保持、人の生命及び身体の安全の確保並びに社会秩序の維持に重大な影響を与える可能性あることにかんがみ、クローン技術等のうちクローン技術または特定融合・集合技術により作成される胚を人または動物の胎内に移植することを禁止するとともに、クローン技術等による胚の作成、譲受及び輸入を規制し、その他当該胚の適正な取り扱いを確保するための措置を講ずることにより、人クローン個体及び交雑個体の生成の防止並びにこれらに類する個体の人為による生成の規制を図り、もって社会及び国民生活と調和のとれた科学技術の発展を期することを目的とするということを目的とされたものでございます。
 2条は定義でございますので、参考1の2ページから8ページにかけて書いてございます。この法律で使われている用語について説明されているものがございますので、後ほどごらんいただければと思います。
 その法律の中で、禁止している行為でございます。これは、3条と8条で規定してございます。一つは、人クローン胚、ヒト動物交雑胚、ヒト性融合胚、またはヒト性集合胚を人または動物の胎内への移植を禁止しております。これが3条でございまして、違反につきましては、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金または併科ということで罰則が設けられてございます。
 二つめは、届出の受理日から60日以内、後ほどご説明申し上げたいと思いますが、その60日以内に届出に係る特定胚の作成・譲受・輸入または届出に係る事項の変更の実施をすることは禁止するということでございまして、これにつきましても、6月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金ということで、罰則規定がございます。
 指針につきましては、この法律におきまして文部科学大臣が特定胚の取り扱いに関する指針を定めなければならないことがこの法律で規定されておるわけでございます。
 その際には、定めあるいは変更しようとする場合には、関係行政機関の長に協議するとともに、総合科学技術会議の意見を聞くこととされておるわけでございます。また、定め、変更したときは、遅滞なく公表ということになっておるわけでございます。
 法律でその遵守を定めている事項といたしましては、そこに書いてございます6つの事項でございまして、まず一つめは、第5条でございますが、特定胚の取り扱いは、指針に従って行わなければならないということでございます。二つめが、特定胚の作成・譲受・輸入しようとする者は、特定胚の作成・譲受・輸入、これらの行為後の取り扱いについて文部科学大臣に届出をするということでございます。三つめが、文部科学大臣への届出事項を変更するときも、文部科学大臣に届出を出すと定められてございます。また、偶然の事由によりその届出に係る特定胚から別の特定胚が生じたときも、速やかに文部科学大臣に届出をなすということが定められてございます。その例外としては、直ちに廃棄する場合はこの限りではないということもここで定められておるわけでございます。四つめでございますが、届出者は、届出に係る特定胚について、記録を作成しなければならないということになっておりまして、五つめでございますが、それを保存しなければならないということもここで定められておるわけでございます。また、届出に係る特定胚を譲渡・輸出・滅失または廃棄したときは、遅滞なく文部科学大臣に届出をするということとなってございます。六つめでございますが、届出者は、届出に係る特定胚の作成に用いられた胚または細胞の提供者の個人情報の漏洩の防止その他個人情報の適切な管理のために必要な措置を講ずるよう努めると、努力規定になってございますが、そこで定められておるわけでございます。
 この法律に基づきましての手続きについてでございますが、6条の第1項あるいは7条、第14条、第12条及び第15条ということで定められているわけでございますが、まず、先ほどの遵守のところでも二つめにございましたように、特定胚の作成・譲受・輸入をしようとする者は、特定胚の作成・譲受・輸入・これらの行為の取り扱いについて、文部科学大臣に届出をなされるわけでございます。この際のここの「届出」の定義でございますが、そこの下の星印に書いてございますように、一定の事柄を公の機関、この場合は文部科学省の代表者である文部科学大臣に知らしめれば、それだけで一応完結する行為ということでございまして、届出をなした瞬間にその行為が完了しておるということの行為でございます。
 2番目の手続きでございますが、文部科学大臣は、その届出に係る特定胚の取り扱いが指針に適合しないと認めるときは、届出受理日から60日以内に限り、届出者に対して当該特定胚の取り扱いの方法に関する計画の変更または廃止その他必要な措置を命ずることができるということがここで定められておるわけでございます。
 1枚めくっていただきます。3つ目の手続きでございますが、そのような届出がなされた後でどのようにその特定胚の取り扱いについて把握をするかということで、3番目と4番目の手続きに関する規定がございまして、まず3つ目のものでございますが、法律の施行に必要な限度において、届出者に対し、届出に係る特定胚の取り扱い状況その他必要な事項について報告を求めることができると、報告を求めるということで把握をすると。
 2つ目でございますが、法律の施行に必要な限度において、事務所もしくは研究施設への立ち入り、書類その他必要な物件の検査ということで、立ち入り検査ということで把握をするということで取り扱いについて把握するということでございます。
 また、その立ち入り検査あるいは報告等におきまして、届出者の特定胚の取り扱いが指針に適合しないものであると認められるときには、届出者に対しまして特定胚の取り扱いの中止またはその方法の改善、その他必要な措置をとるべきことを命ずることができるということもここで規定をされておるわけでございます。
 さらに、この罰則規定の中の罰金刑につきましては、当該届出者だけではなくて、その届出者の所属する法人あるいはその代理人、代理人の場合にはその人に対しても科するということで、両罰規定になっておるわけでございます。
 その他でございますが、総合科学技術会議等における検討の結果を踏まえて、この結果に基づいて必要な措置を講ずることということがございますので、今回、当部会でその特定胚指針の改正に向けて検討を行っているということでございます。
 また、この法律による違反に関しましては、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の、いわゆる組織犯罪ということで適用されるということで、附則で書いてあるわけでございます。
 続きまして、特定胚の取り扱いに関する指針につきましてでございますが、まず、制定の経緯でございますが、経緯は先ほど申し上げましたように、平成12年12月6日に公布されましたこの「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」が公布されたことを受けまして、13年、翌年の8月30日に文部科学省から総合科学技術会議に特定胚の取り扱いに関する指針について諮問をいたしまして、同年11月2日に答申を受け、それから12月5日に特定胚の取り扱いに関する指針を策定し、告示として出したものでございます。
 この指針の位置づけでございますが、5ページの一番上でございますが、特定胚の取り扱いに関する指針につきましては、先ほどの法律の第5条で特定胚の取り扱いにつきましては指針に従って行わなければならないこと、あるいはその取り扱いが指針に適合しないと認めるときは、60日以内に文部科学大臣が、計画の変更または廃止その他必要な措置をとるべきことを命令できること、あるいは同じように適合しないと認められたときは、取り扱いの中止あるいはその方法の改善その他必要な措置をとるべきことを命ずることというものの根拠となるものでございます。
 その指針の内容についてでございますが、まず指針で禁止する行為は、現在の指針では動物性集合胚のみ取り扱いを許可しておりますので、それを除く特定胚の作成については禁止しているということでございます。あるいは、動物性集合胚の作成にヒト受精胚またはヒトの未受精卵を用いること、特定胚の輸入・輸出、先ほどの法で禁止している胚以外の特定胚の人または動物の胎内への移植、あるいは特定胚を作成の日から起算して14日を経過する日までの期間内に原始線条があらわれない特定胚についての取り扱いを行ってはならないということを禁止しております。
 また、指針で遵守を定めている事項は、まず、当該特定胚の作成に必要な細胞の提供者の同意を得ること。その同意の仕方につきましては、その次に書いたものが当たります。
 さらに、ヒトの細胞の提供は、輸送費その他必要な経費を除き、無償で行われるものとするということを遵守することとなってございまして、もう1枚めくっていただきまして、文部科学大臣に届出を行う前には、機関内の倫理審査委員会の意見を聞くものとするということが遵守事項として定められておるわけでございます。
 指針で定めている要件等といたしましては、特定胚の作成は、動物の胚または細胞のみを用いた研究その他特定胚を用いない研究によっては得ることができない科学的知見が得られること。特定胚を作成しようとする者が、当該特定胚を取り扱う研究を行うに足りる技術的能力を有することということが現行の指針では要件となりまして、それに適合した場合に限り行うことができるとされております。
 特定胚の譲受は、これもその下に書いてございますように、まず特定胚の指針に適合して作成されたもの、あるいは動物の胚または細胞のみを用いた研究その他の特定胚を用いない研究によっては得ることができない科学的知見が得られることに適合し、かつ人に移植することが可能なヒトの細胞に由来する臓器の作成に関する研究を目的とするもの、譲受者が当該特定胚の取り扱う研究を行うに足りる技術的能力を有すること、譲受が輸送費その他必要な経費を除き無償で行われることという要件に適合する場合に限り行うことができるということを定めております。
 作成または譲受の取り扱いにつきましては、当該特定胚の作成から原始線条があらわれるまでの期間に限り行うことができると定めております。
 作成・譲受・輸入しようとする者は、取り扱い内容及び成果の公開に努めるという努力規定がございます。
 その他、その届出等に関する様式、必要な書類につきましては、参考の2におつけしておりますヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律施行規則で規定をしておるわけでございます。
 続きまして、ヒトES細胞に関する取り扱いでございますが、まず、ヒトES細胞に関する指針の制定の経緯でございます。平成12年3月に出されました、先ほどご説明申し上げましたヒト胚研究小委員会報告の「ヒト胚性幹細胞を中心としたヒト胚研究に関する基本的考え方」におきまして、ヒト胚性幹細胞を扱う研究は、その樹立の過程でヒト胚という生命の萌芽を扱うという倫理的な問題があるものの、ヒト胚自体は現在のところ法的な権利主体とまではいえないこと、ヒト胚性幹細胞それ自体は個体の産生につながることはなく、その樹立及び使用に際して重大な弊害が生じるとはいえないことから、罰則を伴った法律による規制が不可欠なものではない。また、ヒト胚性幹細胞の研究は、まだ端緒についたばかりであり、実績もほとんどない分野であることから、技術的な進展に適時に対応していくことが必要であり、研究者の自主性や倫理観を尊重した柔軟な規制の形態を考慮することが望ましいと指摘されてございます。
 この考え方を受けまして、平成13年4月に文部科学省から総合科学技術会議に「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針」についてを諮問いたしまして、同年8月に答申を受け、9月に「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針」を策定し、告示として出し、運用を開始したところでございます。
 この指針の性格でございますが、まず本指針、どのようなことを定めているものであるかということで、(2)の1)でございますが、ES細胞の取り扱い、それからES細胞の樹立及び使用に当たっての基準、ES細胞の樹立及び使用に関する審査の基準、手続き等について定めたものでございます。また、本指針におきましては、先ほど申し上げましたヒト研究胚小委員会の報告の指摘を踏まえて、本指針の違反に対する罰則は規定しておりませんで、指針違反につきましては公表するのみとなっておるわけでございます。
 (3)で、ES細胞の樹立、指針の内容についてでございますが、指針の目的は、まさに「ヒトES細胞の樹立及び使用において、人の尊厳を侵すことのないよう、生命倫理の観点から遵守すべき基本的な事項を定め、もって適正な実施の確保を図ること」ということが目的とされております。これにつきましては、取り扱いの配慮が指針の3条で、まさに生命萌芽であること及び人ES細胞がすべての細胞に分化する可能性があることに配慮し、人の尊厳を侵すことのないよう、誠実かつ慎重に取り扱うことというのが定められておりますし、指針上の禁止行為としては、ヒトES細胞・ヒトES細胞由来の細胞の人体適用の臨床研究、その他医療、関連分野使用の別基準が定められるまでの間の使用の禁止。ヒトES細胞を使用して作成した胚の、人または動物への胎内移植、個体生成。ヒト胚へのヒトES細胞の導入。ヒト胎児へのヒトES細胞の導入。ヒトES細胞からの生殖細胞作成。使用機関のヒトES細胞の分配・譲渡。他の使用機関における研究の再現性確認のために使用機関加工ES細胞の分配、使用機関加工ES細胞の樹立機関への基礎的研究進展のための譲渡は除外されておるわけでございます。
 また、それから、樹立に当たりましての要件等が、4)から16)まで、例えばヒト胚の無償提供、あるいはヒトES細胞の樹立の使用の要件でございますね、樹立の際の要件、あるいは樹立機関内ヒト受精胚の取り扱い、分配、樹立機関の基準、樹立の責任者、樹立機関の倫理審査委員会の基準、あるいは樹立の手続きの基準、規定協力機関の基準、提供医療機関内の倫理審査委員会、あるいはインフォームド・コンセント、インフォームド・コンセントの際の説明の記載事項等が定められておるわけでございます。
 また、17)につきましては、個人情報保護につきましては、樹立と使用に両方にかかっておるわけでございます。
 使用につきましては、18)から25)までが定められておるわけでございまして、その中には、使用の際の要件として、ヒトの発生、分化及び再生機能の解明に資する基礎的研究、新しい診断・予防法、もしくは治療法の開発または医薬品等の開発に資する基礎的研究の目的に限定と、科学的合理性及び必要性を有することということが要件とされております。
 その使用の要件としましては、分化細胞の取り扱いとか使用機関の基準、使用責任者の基準、使用機関倫理審査委員会の基準、あるいは使用の手続きの基準等が定められておるわけでございます。
 (4)は、それぞれ樹立の機関、あるいは樹立機関長、以降につきましてはインフォームド・コンセント、説明者あるいは樹立責任者、樹立機関倫理審査委員会、提供医療機関、提供医療機関の長、提供医療機関内の倫理審査委員会、あるいはヒトES細胞樹立・使用に携わる者、使用機関の長、使用責任者、あるいは使用機関の倫理審査委員会につきまして、(4)の1)から12)まででその業務につきまして定めております。
 また、樹立機関の特例といたしましては、複数の機関の連携も可としておりまして、手続きとしましては、まず指針において樹立・使用等を行う上において満たすべき要件を提示しておりますし、それにしたがいまして樹立・使用に当たりましては、指針の適合性についてすべて文部科学大臣の確認を得る必要があるということが定められておるわけでございます。文部科学大臣の確認の際には、科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会の意見を求め、当該意見に基づき確認をするということになっておるわけでございます。また、樹立あるいはその分配、使用となった際には、報告書の写しによって現状の把握をするということになっておりますし、指針の違反に関しましては、先ほど申しましたように公表をするということになっておるわけでございます。
 その他として、最後のページでございますが、ヒトES細胞の樹立及び使用等が医療及び関連分野と密接な関係を持つことにかんがみ、情報の提供等、関係省であります厚生労働大臣・経済産業大臣と密接な連携を行うということが定められておりまして、また、指針の見直しにつきましては、施行後3年以内に、ライフ・サイエンス研究の進展、社会の動向等を勘案し、指針の施行状況について検討を加え、また、その結果に基づく必要な見直しを行うということで、総合科学技術会議の意見に基づき行うことということがなされておるわけでございます。
 以上でございます。

【豊島主査】 どうもありがとうございました。それでは、何かご質問ございますか。
 どうぞ。

【赤林委員】 事務局の見通しで結構なんですが、今回、特定胚指針とES指針の改正のみで対応できるのか、それともさらに新たなガイドライン等のものが必要になりそうなのか、そこら辺の見通しはいかがでしょうか。

【石井室長】 まだ我々のほうで確定的にどうこうということは考えておりませんが、今のところ特定胚指針とESの指針でカバーし得るのではないかということで、今のところ作業を、検討用の資料の作成は考えておりました。ただ、もちろんこれからのご議論によって、補足的に何かもう1つ必要かどうかということになれば、それはまた対応させていただきたいと思います。

【豊島主査】 ほかに。
 どうぞ。

【笹井委員】 前回の部会の議論の中で、少し何人かの委員やあるいは事務局からのニュアンスが微妙に違ったんで、今回、特に確認したかったのが、届出ということで、今、非常に室長のほうから明確に言っていただいたのでよくわかったんですが、こういう解釈でいいんでしょうか、届出というのは、基本的にはこのフォームに合ったものが文部科学省に提出された段階で、届出の受理というふうになって、そこから60日以内に省内で審査をして、変更命令を出す、あるいは廃止の命令を出さない限り、それは有効になるということですね。

【石井室長】 そのとおりでございます。したがって、いわゆる審査とかというように、申請してそれに対して例えば許可とか確認とか、そういうのがない限り有効にならない手続きと違いまして、届出で手続きは完結していまして、60日以内にこちらが命令を出さない限り、それはもう有効になってしまうということです。

【笹井委員】 ですから、これは事前審査も事前ヒアリングもこの形では合わないわけですね。

【石井室長】 本来、事前審査というのは何かという議論はあるんですが、例えば届出するときに様式の問題とかそういうのについてご相談があれば、ご相談することはできますけれども、それが完全なものがいきなり出てきて、その時点で我々初めて知るということも手続き上は十分あり得ることでございます。事前審査を義務づけるということはできませんから、それは法律の趣旨を逸脱することになりますので。

【笹井委員】 またヒアリングも例えばこれを義務づけることはできないわけですね、この60日以内に。

【石井室長】 ヒアリングというのは届出内容について説明を聞かせていただくということは、これは義務づけるというよりも我々、その内容を把握する上で必要であればもちろんやらせていただくことになると思いますし、それは届出内容を我々、不十分であればそれを説明を求めるというのは当然一般的にあり得る話だと思っています。ただ、それを義務づけるというのは、ほかの許認可でも基本的に同じでございます。

【笹井委員】 ですから、結論としては、いわゆる個別審査ですね、それぞれの事情に適応した審査をできる時間というのは60日しかないということで、実際的にはかなり指針のほうできっちり申請要件を決めている必要があるというふうに理解したらいいんでしょうか。

【石井室長】 今まさに笹井先生がおっしゃったように、これは実質的に審査的なことはやれるとしても、これは審査ではありませんので、届出が出てきた時点で一番短い我々の与えられた時間を短く見るとすると、届出時点で初めて知って、それから中身を検討して、私どもはそれについて、科学技術・学術審議会の生命倫理安全部会の意見を聞くということ、これは指針とか法令上義務づけられていませんが、検討するに当たって聞くという方針をとっておりますので、そういった方々の日程を抑えて話を聞くという手続きをとらなければいけないとなると、相当時間的に、60日をかなり下回る日数しか実質的にとり得ないんだろうと思っています。

【笹井委員】 そうすると、これは実際には申請した申請書の中に記載されていることで判断して、それが指針に適合しているかということを、できるだけ効率的にわかるようにする必要があって、それに対する法律的な意味での担保になるところというのは、クローン技術規制法の第6条にある届出というところにおける第1項の第3、作成・譲受または輸入目的、及び作成の場合においてはその方法及びその6、前各項に掲げるもののほか、文部科学省令に定める事項、これらに記載されている内容が指針に適合しているかどうかということがわかる必要があるわけですね。

【石井室長】 そういうことです。

【豊島主査】 笹井先生のご質問の感じはよくわかるんですが、基本的には、これは部分的にでも適合していないと考えるからヒアリングしなきゃいけないとか、あるいは可能性があるからヒアリングしなきゃいけないとか変更しなきゃいけないということがあるわけで、そのときに60日以内にそれが十分行える可能性がなければ、一度それはストップをかけることはできますね。命令はできるわけですよね。だから、審査じゃないけれども、書類審査ですよね。文科省でこういう審査をするんじゃなくて、書類を適合しているかどうかということを審査するわけですよね。

【石井室長】 はい。形式要件がそろっていないものについては、届出されても、それが実質的に届出が完結していないという意味で、それを、手続きとして正確にどういうことがあるかわかりませんが、受け付けられないといいますか、そういう形での処理は可能だと思います。
 ただ、形式要件が全部そろっていた場合は、今度は内容について変更命令をする根拠がない限りは、変更命令はかけられません。そこで、まさに指針との適合性ということが一番のポイントになってくると。

【豊島主査】 例えば、4-4の13ページに書いてある個体作成の事前防止とかそういう項目というのは、ここに出てきていて、具体的なポイントをやはり規定の中に入れていかなきゃいけない。だから、それに適合しているかしていないかというのは、ある意味では非常に難しい判断が必要な場合があって、それをどこまでクリアに書くか、あるいはどこまでそれ、例えば問題があるかもしれないと思ったときに、ストップかけられるかというところが、最後つくっていくときの問題になるかと思うんですが。だから、そういう意味で、今度の作成というのはかなり変更にしても難しい点もあるんじゃないかなという気がいたします。

【笹井委員】 それで、そこに関して、今、豊島主査のほうから要は待ったみたいなものが実質的にかけられるかという議論もあったんですが、そのときの解釈として、第7条のほうに、「指針に適合していないと文部科学大臣が認める場合」、あるいはその疑義がこの場合具体的には生じた場合ということですが、「当該特定胚の取り扱い方法に関する計画の変更」、変更という場合はかなり具体性をもって「こう変更しろ」ということを言わないといけないと思うんですが、「廃止」、これは明確ですね、「その他必要な措置をとるべきことを命ずることができる」の、「その他必要な措置」の中にいわば今のより詳細な個別審査とかヒアリングとか、いわば待った的なものというのがかけられると解釈できるのかどうかというのを、できればかなり法律的に法制局でも何でもいいですけど、この「その他必要な措置」の中にそういうものが解釈できるかによって、相当含みが違ってくると思うんですが、どうでしょうか。

【石井室長】 確認しないといけないと思いますけれども、少なくとも待った的なものというのを入れてしまいますと、これは60日以内という趣旨をかなり逸脱することになりますので、それは多分、あり得ないと思います。

【笹井委員】 つまり、具体的な措置じゃないとだめだということですね。

【石井室長】 具体的な措置、変更は伴わないまでも、こういった点についてちゃんと措置をとりなさいという、計画の変更は伴わないけども、追加的に措置をとることを命ずるようなことを想定して書いているものだと思いますので、手続き的なものを延ばすということになりますと、これは法律の趣旨からいくとかなり拡大解釈し過ぎるような形になってくると思います。難しいと思います。

【笹井委員】 結論としては、個別事情でどうこうというより、やはり指針の中にイエス・ノーでわりと適用が判断できるような記載が必要だということですね。

【石井室長】 一般的にいうと、審査的には、判断基準に相当するものがないといけませんし、それがよりクリアであればクリアであるほど、形式的にすぐ判断ができると思います。

【位田委員】 私、行政法の専門家ではないので、確定的な答えではありませんけど、基本的に、人クローン個体をつくることは法律で禁止するからやっちゃいかんと。しかし、クローン胚については、指針に従っていればやってよろしいという立場であるので、したがって、条件が満たされていれば、届出をして60日以内に文部科学省が何らかの変更命令をするか、その他の措置を命じなければ、「待った」はできない。「待った」というのは一般的禁止をしたときにやっていいかどうかという判断をする話だと思います。ですから、例えば60日の間でこれは変更させたほうがいいよね、という議論を仮にやっていたとしても、60日以内に判断が出なければ、そのままやってよろしいと、そういう話だと思うんですね。それが1つと、だから、許可の場合には禁止が前提で、この場合はやってよろしいという制度ですけど、この届出のほうは、基本的にやってよろしいという立場でやりますので、「待った」というのはないと思うんです。計画そのものについて「待った」というのはなくて、やるんだったら「こう変えなさい」というのは言ってもいいけれども、それも60日以内にやらなければいけない。60日以内に何も言わなければ、それはその計画が自動的に、認められたという言い方はちょっといけないんですけど、それはやってよろしいという判断。つまり、届出が受理されて、60日たったからやっていいんだということになると思うんです。
 ただ、先ほど事務局からお話があったように、届出があったときに、それが要件を完全に整えているかどうかについて、事務局が判断をして、そこで受理するかどうかを決めるので、その届出が例えば1月5日に届出があったとしても、何日かはやっぱりそれなりにほんとうに様式に整っているかどうかという判断があるので、整っていなければ、そこでもう1回差し戻して、ちゃんと書類をつくってきなさいという話になると思うんです。
 それからもう1点、確かに基準をできるだけ細かく具体的につくっておいたほうがいいんですけど、ルールである以上はなかなか個別の状況に具体的にフィットするように指針の内容をつくるというのは極めて難しい。できるだけ具体的に細かな規則はつくったほうがいいと思いますけど、あんまり細かくし過ぎると、そこから逸脱して、禁止されていないからいいじゃないかという話にもなり得るので、その辺はつくるときにはかなりややこしい話になるかなという気はします。

【豊島主査】 1つ考えられるのは、非常にファジーなところもあるのは、やっぱり倫理問題なんですよね。これが一番問題なんです。例えば、未受精卵の提供に関する根拠において、例えば疑義があるからこれはもう一度おたくの倫理審査委員会でその根拠を明確に記した上で再提出しろというふうな変更というのはあり得るわけですよね、例えば。

【笹井委員】 いわゆるIRB差し戻しでいいんですね。

【豊島主査】 そうですね。それは変更命令でもう一遍、そういうふうにおたくの倫理審査委員会でその点を明確に記した上で再提出しなさいという変更は、命令としてはあり得るわけですね、例えば。

【石井室長】 前提は、指針に適合しないという内容があった場合、それはやり方として、今のではだめですよという形で、いわば今の中止命令をかければ、もう1回は実質的に修正して出し直さなければいけなくなるということになると思います。もう1回審査しなさいというのはむしろ中の手続きの話ですから、法律上の私どもの行政庁と申請者の関係でいくと、中身の話はあまり関係がないとは思いますけれども。

【笹井委員】 もう1つ、これは非常に現実的な問題として、今回の場合、薬師寺レポート自体も核移植によるES細胞をつくることが前提のような形での――どこまで前提かは厳密論は別として――クローン胚の作成ということが前提になっているので、申請要件の中にヒトES細胞のクローン胚からの樹立というのを、今後の議論の中で指針、それを前提としたときしかできないと。すなわち届出の中に人クローン胚をつくるだけではなくて、ヒトES細胞の樹立というものまで各書かれる可能性がありますね。そのときに、この表の上の特定胚というものの流れと、下のヒトES細胞のほうの審査の流れだと、大分時間的なものが違ってきますね。つまり、片方、確認申請で、時間的なある意味でのリミットがないと。これはどうなるんでしょう。

【石井室長】 日にちの根拠というのが60日はこれは法律で決まっているものですけれども、ESのほうはちょっと法律とは違って、ガイドラインとしてやっている関係で、特にそこは明確に比較できるものではないと思うんですけれども。

【笹井委員】 具体的には、例えばAさんがヒトES細胞をクローン胚からつくって、それがちゃんとがん化しにくいかを調べるという研究を提出したとしますね。そのときに、特定胚をつくるということでは、届出してから60日以内に変更命令がなければ、そこで発効してしまうわけですけど、ヒトES細胞のほうの部分に関していうと、僕は樹立したことはないですけど、これまでの樹立のことからいってもう少し時間のかかるような手続きがありますよね、そうすると、60日たつと、クローン胚はつくっていいけど、ヒトES細胞をつくってはいけないという状態になっているのか、それともヒトES細胞のものまで終わって初めてクローン胚のほうもセットだから発効するようになるのかということなんですが。

【石井室長】 そこはこれからご議論いただかなければいけないところだと思っていますが、特定胚からESを樹立するというのは、今のESの指針の樹立機関の確認が必要になってくることだと思っています。特定胚の手続きも必要になってまいります。そのときに、両方の規制をかけるのか、法律ではもう特定胚しかかかっていませんが、プラスでガイドラインでやっている部分のESをさらに上乗せでかけて、実質的にストップするというようなことをやるとなると、非常に法律と指針で不整合が起こる可能性がありますので、やはりそこはきちんと整理した形で、特定胚の手続きに合わせて、そのESのまさに樹立のところの審査をどのようにするのかというのが、今度の指針の見直しの中でクローン胚由来のES細胞の手続きをどう書くのかという意味で、整理をしなければいけないことだと思っております。

【小田審議官】 補足的に、先ほどから法律に基づく規制と、国のある意味の行政指導的なガイドラインとの間の考え方の少し違いといったようなのがあるというふうに思うわけですけど、なぜ法律のほうは60日という期間を設けたのかということは、これまでの許可も含めて、規制についてはだらだらと、要するに規制する側が一方的に時間とか何とかということを考えずにやっていたら、やっぱり今の経済、国民のものとの流れに対しておかしいということで、基本的に枠をはめて、一般法的にたしか許可も行政審査法か何かで60日以内というのを原則的にするという流れの中で、特にこの届出という、基本的には届出と先ほどの許可とは違う、基本的に禁止されている事項じゃない届出、基本的には許されている事項を届出という形で少し担保しようというものについては、できるだけ期間をきちんと守って、規制する側もちゃんとそこのところを時間内に判断してくださいということが基本になっているわけです。
 一方、先ほどのヒトES細胞は、時間的な概念があまりないんですが、本来このガイドラインも当然法律の法的な姿勢がそういう姿勢なんで、本来はほんとうES細胞がそういう形にするべき、我々もその60日というのを頭に描きながら、迅速にできるだけの十分な判断をするというのが理想で、ES細胞だけでは、法の原則に時間の流れという概念ではなくて、我々もできるだけ速い判断でやらなきゃいけないというのがまず原則にあると思うんです。
 それから、それがもう1つと、届出というのは、先ほども言いましたように、本来は研究の自由は保障されているという考え方が根底にあって、そういった形で、ただその判断の中で60日ということで限定を設けて、その間は実質、実施を禁止して、その間に迅速な判断をすると。したがって、できるだけ指針、基準等は具体的に判断できるようにしようというのが根底にあるんですが、ただ、世の中、ほんとう初のことがあるんで、そこのところの兼ね合いをどうしていくかといったことはあるかと思っておりますが、そういった点で、先ほどの第6条ですか、変更を命ずることができる中に、計画の変更、これは例えばこういうことをやる明確な根拠を示すということが例えば指針にあれば、そういう根拠が不明確だから計画を変更してこいということを、たしかそこから、命じた場合に、そこから60日がさらに延びることになるんで、むやみに命ずる権限を乱発するのはおかしいかもしれませんが、そういった点での我々の審査の時間、基本的にはぎりぎりの時間は担保されていると認識しております。

【齋藤委員】 時間がもうないのかもしれませんが、ちょっとだけ今までの流れの中で、やっぱりかなり込み入ったことをやらなきゃいけないのかなと思いましたのは、先ほど事務局の方が特定胚の指針とESのガイドラインを触るところで何とかやれるかもしれないという見通しを伺って、今のお話の中でも、ESの樹立機関での審査の部分と特定胚の研究の申請の届出の部分だけの今、お話なんですが、ESの場合、提供の同意を得る以前に、こういう計画でこういう手続きで同意を得てやりますという、そこから審査が始まるんですね。となると多分、ESの細胞の審査のほうが早目に始まるのかなと。といいますのは、特定胚の指針では、同意を取得した後から届出と、この一連の規制の流れ図では、細胞提供者がいて、その後倫理委員会があってという表になっていまして、そうすると時間的なものがどういう形になるのか。卵子提供者はどの指針とかどのガイドラインを根拠にまず審査にかかっていくのかなと。ダブルでかかるのかというあたりがちょっと今少し混乱しています。特定胚の指針とESの指針両方に提供者の保護規定が盛り込まれていくのかというところが、ちょっと最初、お聞きしたい1点です。
 それからもう1つは、薬師寺先生の報告書の中で、例えば今日つくっていただいた資料の13ページの未受精卵等の入手の制限及び提供女性の保護というところで、下から5行目に、さまざまなことを踏まえて、ヒト受精胚の場合よりも厳格な枠組みを整備する必要があるということが確認されているんですね。そうしますと、ESでの受精胚、余剰受精胚の提供以上に厳格な枠組みで受精卵の入手の制限及び提供女性の保護をしなさいということが、これ、あるのかなと。

【豊島主査】 基本的にはおっしゃるとおりで、そこのところがここの今度の指針に盛り込まなきゃいけなくて、今までは、未受精卵ということはなかったんです。受精卵しかなかった。ですから、そこのところが全く変わるので、新しくできていくところというふうに判断しています。

【齋藤委員】 そうしますと、短か目に言います、ES細胞で決めていたものよりさらに厳格な何かが両方の指針なり規定なりに入り込んでいくんですね。それはだから同意手続きだけではなく、もしかしたら審査手続きにまで及ぶ可能性さえあるとか、まで含まれているのかどうかという、すみません、その点。

【豊島主査】 基本的にはここで審査することはあり得ない。だから、基本的には、それぞれの機関の倫理委員会が病気のいろいろな倫理的なことを審査するなり何なりのときに審査していただくのがスタートになる話だろうと思います。そういうことが、ここで規定しているような考え方を満たしたことが書かれてきた上で、ここに挙がってくるのは、そのクローンのところ以降の話になるだろうと。基本線としては、そこをここで一々審査するという枠組みにはなっていないと考えています。

【齋藤委員】 ここでというのは、指針の変更に、ということですか。

【豊島主査】 文科省のこういう委員会で審査するんじゃなくて、それぞれの病院なりあるいは大学なりのそういう審査委員会でそれが適合しているかどうか審査されて、それの具体的な、なぜこれが適合すると考えるかということまで書いたものがついたものが、そのクローンの申請書類に一緒に上がってくるということになるというふうに判断しております。

【齋藤委員】 すみません、私の説明が足りなかったのだと思います。今の質問はそのレベルのお話ではなくて、それ以前にここの審議内容ですね、この部会での、の中で、例えば国による二重審査とかいろいろそういうものがある、その審査の枠組み、それぞれの規定にもある枠組みが今まで以上に、今までは余剰受精胚だけだったのが、未受精卵はもっと厳格にしなきゃいけないので、これは例えですけど、三重審査にしましょうとか、そういう審査の枠組みまで触っていくという可能性も、この「厳格に」という中にはあるのかどうかという点が、すみません、1点と。
 もう1点先に言ってしまいますと、その次の、今日配っていただいた15ページの下のほう、一番下の欄に、生殖補助医療研究についてはガイドラインでまた別途規定するということが書いてあって、そうしますと、未受精卵提供者の立場から見ていくと、特定胚の指針にかかる細胞提供と、それからES細胞の指針にかかる、未受精余剰胚も持っている方はESのドナーになる可能性もあるので、同じ人が、目的別に違うガイドライン、違う指針、違う規定がかかって、その中で、未受精卵提供者の保護というのを全体的にアンバランスにならないように図るということをしなきゃいけないとすると、その生殖補助医療ガイドラインという、今まだ全く真っ白な白紙のものを除外して、この特定胚とESの規定をきっちりすれば、この未受精卵提供女性の保護が図れるという、そういう認識でここが動いていいかどうか。生殖補助医療ガイドラインの動きについて、どういうふうにお考えかというのがちょっと必要かなと思います。すみません、長くなりました。

【石井室長】 1点目のところですけれども、インフォームド・コンセントというか、特定胚の指針の中で、クローン法に基づいた特定胚の使用の届出をするに当たって、政令の中で、特定胚の作成に用いる細胞の提供者の同意の取得とかそういったものがきちんと届出事項の中に入っております。この内容について、これから今度クローン胚を入れるときに、政令見直しまでいくかどうかわかりませんが、内容的に今のままであったとしても、届出事項について、当然指針に基づいて適合しない場合、変更命令をかけられるわけですから、そういう意味で、法律に基づく、指針よりも法律のほうがそういう意味では非常に上位であるわけですから、その中で、厳格なものを規定することによって、必要な措置は講ずることができるという枠組みになっております。
 先ほどの流れのところで出ていたところは、そういう意味で、若干、今のご説明でいくと順番が変になっていまして、特定胚の同意を、届出の前に何かやるということではなくて、こういうことでやりますよということをちゃんと計画の中に入れなければいけないという意味で前に書いていましたが、実際に同意を得るのは、届出が出て、認められて、その後ですから、この絵では我々のほうもあまり適当ではなかったんで、実質的に期間がかかるということではございません。むしろそれは届出で60日たって使えるようになって初めて有効になるわけですから。
 それで、厳格にやる、やらないのところについては、その議論は私も正確に存じ上げませんが、基本的に内容でやるという趣旨で私たちは理解していまして、通常のものより厳しくするんであれば、これは法律による特定胚指針でそこについている規定はできるわけですから、そこできちっと決めたものをきちんとやると。過剰な手続きというのは、厳格というよりはむしろかなり負担をかけるだけになりますので、むしろ決まった手続きの中で、常にこの中でも機関内の倫理審査委員会で見て、さらに国が見るという、二重の体制になって、国も関与するという、かなりESも含めてそうですが、厳格な手続きになっている、それをさらに重ねていくことの有効性というのがない限りは、今のままでやるのだろうと、私たちは理解しています。
 それから、2つ目のご質問ですが。

【齋藤委員】 生殖補助医療ガイドラインの件です。

【石井室長】 生殖補助医療のガイドラインの件は、今、厚生労働省のほうで研究班で今、検討をやっていまして、ある程度方向が出たところで、あちらのほうも具体的な検討に入るところですが、私どももそこは非常に密接に関係があると思っていますので、当然、今もう既にご相談しながらやらせていただいていますし、そこの動きによって、もちろん関係があるところは整合性を取る必要がありますし、場合によってはこちらにフィード・バックをかけることもあると思っています。ただ、ガイドラインをどうつくるかという話は、対象別に分けることもありますし、一本化してそこの部分で見るというやり方もあります。そこの整合性をどうとるかは、向こうの進捗を見ながら考えていく必要があるとは思っております。ただ、今のところそれを待っていたんでは、ここはできなくなるわけですから、ここはここできちんと議論をさせていただいて、こちらの状況も、厚生労働省に当然連携とりながらやっておりますので、その中で一緒に、最終的に総合科学技術会議に諮問をする形に、意見を聞く形になるわけですので、その段階で整合をとらせていただきたいと思っています。
 以上でございます。

【齋藤委員】 すみません、ありがとうございます。

【位田委員】 若干、手前みそですけど、だからヒト胚について、一般法をつくったほうがいいというのは私の主張だったんです。それは今ここではやりませんけれども、基本的にはそれぞれ別の制度が今動いている、もしくは動こうとしているので、それに適切な形でルールがつくられるということだろうと思うんですね。いつかの時点でそれが統合的に何か基準がつくられるのであれば、それはそのときの話なので、今はしかしクローン胚について、かつクローン胚からES細胞をつくるということについての問題なので、その目的に関して厳格なルールをつくればいいんではないかと思っています。
 それから、さっきの笹井先生のご質問と絡むんですけど、現在の特定胚指針というのは、特定胚を作成するということについての指針なので、特定胚を使って何かを研究するということについては、何ら書かれていない。少なくとも法律を見ても、特定胚の取り扱いとは書いてあるんですけど、ES細胞指針のように、樹立と使用というふうには分けられていないので、今の特定胚指針と、それからES指針の区分けからすると、特定胚の研究として出してくる1つの計画の中で、特定胚の作成と、それからそこからのES細胞の樹立というのは、多分、計画を出してこられるときに分けて取り扱って、前のほうは特定胚指針に従って研究計画を出していただく。それからもう1つ別に、作成された特定胚からES細胞を樹立する及びそれを使用するという話は、今度はES細胞指針に従って計画を出してもらうと、そういう形で切っておかないと、1つの計画で特定胚をつくってES細胞を樹立して使用するというところまで全部書かれると、さっきのような、時間的にどうなのかという問題が出てくると思うんです。だから、これはこれからどう決めるかという問題ではあるんですけど、そこで区分けしないとなかなか難しいんではないかと。

【豊島主査】 いろいろ問題はあるかと思いますが、例えばES細胞の樹立に関して今まで許可されたところにしかクローン胚は認めないというふうなやり方だって1つはあると思うんですね。だから、そのことも含めて、これから議論が進んでいくというふうになるんだと思いますんで、きょうはそういう意味で、この作業部会でどういうベースで議論を進めていくかということの了解が一応できるということが一番の目的でございましたので、そういう意味では、何を議論するべきかということは大体了解できたと思いますので、一応、きょうのご議論はこのあたりで打ち切らせていただきたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。
 それで、その他の議題ですが、事務局から何かございますでしょうか。

【石井室長】 その他の議題については特にございませんが、次回の日程でございます。既に委員の先生方にご連絡さしあげておりますが、7月25日月曜日を予定してございます。
 以上でございます。

【豊島主査】 よろしゅうございますでしょうか。25日はご説明いただくと、韓国から来ていただくということになっております。
 それでは、これで終わらせていただきたいと存じます。ほんとうに、本日は暑いところ、また、お忙しいところありがとうございました。

─ 了 ─

(研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室)