資料3-2-2 「東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の検討の視点」を踏まえた各分科会等における検討状況(概要)

視点1 東日本大震災についての科学技術・学術の観点からの検証

(1)的確に機能した面

  1. 緊急地震速報の実用化による鉄道の緊急停止(計評)
  2. 都市ガス等のマイコンメータ普及による火災の減少、耐震化による倒壊の減少(計評)
  3. 放射線モニタリングや物資輸送等における航空機の貢献(計評)
  4. 陸上での高密度の地震観測点やGPS等による、今回の地震で何が起きたかの把握(測地)

(2)機能しなかった面、想定が十分でなかった面、

  1. 海溝付近の地殻変動に関する情報やプレート間固着に関する知見の不足、地震発生モデルの過度の単純化等により、事前に超巨大地震の発生を追究できず(測地)
  2. 古文書や地層によって検証される長期的な視野での分析が不十分(計評)
  3. 海域の地震観測網の未整備、通信回線の途絶等により、津波の高さ等の正確な情報がリアルタイムで把握できず(計評)
  4. 津波警報(初期段階における地震や津波の規模の過小評価)(測地)
  5. 広域複合災害への対策不足(情報通信及びライフラインの長期途絶等の発生)(計評)

(3)改善すべき点、取り組むべき点、新たにルール化すべき点

  1. 東日本大震災の科学的な調査・検証において、自然科学、人文・社会科学双方の専門的知識を結集し、その研究活動や知見を統合して状況認識を統一する枠組みの構築(計評)
  2. これまでの地震発生モデルの再検討と、多様な地震発生モデルの研究の推進(測地)
  3. 地震後に観測される地殻変動や誘発された地震活動等に関する調査、海域モニタリングの充実、長期予測手法の高度化、モニタリングデータを用いた即時的津波予測手法の研究開発の推進、海溝付近の大深度海域における海底地殻変動技術の開発、「歴史学」や「地震考古学」「津波考古学」等との連携の推進(測地)
  4. 巨大海溝型地震に関する基礎研究の強化、過去の地震活動の評価の見直し(計評)
  5. 人文・社会科学分野を中心とする歴史の検証に耐えうる大震災に係る学術調査の実施(学術)
  6. 地震調査研究推進本部などの国の施策や防災対策との連携を意識した観測研究の推進(測地)
  7. 各種委員会における議論を公開し、地震調査研究・火山噴火予知、防災に関する施策について、学協会においても議論される環境の構築(測地)
  8. ハード面に加え、防災・危機管理教育等のソフト面が連携した総合的な研究の推進(計評)
  9. 災害等に強いITシステム、被害軽減のための高度シミュレーション、IT統合システムの防災オペレーションへの応用、風評被害等を避けるためのリアルタイムメディア解析技術の構築(計評)
  10. 緊急時に備えた施設・設備等のリスク分散のための考え方等の明示(先端)
  11. 震災により、計画の変更を強いられた者に柔軟に対応(特に日本の研究機関で研究活動を行う外国人研究者)(国際)
  12. 我が国の研究環境がレジリエントな(resilient:困難な状況から回復力のある)ものである旨積極的に発信(国際)
  13. 災害発生後、直後、復旧期、復興期といった時間の経過に応じ、適切な相手に向けて的確な情報発信(国際)

 

視点2 課題解決のための学際研究や分野間連携

(1)課題解決のための学際研究や分野間連携を行うための取組

  1. 学術の世界において学際研究や分野間連携を進めるための政策誘導的なメカニズムの構築。学問が1カ所に集まることによって新しい分野や領域を形成し、それが学術を先導していくという方向性が必要。単なるネットワークではなく強制的な融合も必要(学術)
  2. 社会課題に寄与しようとする研究を大括りにしたプロジェクト型研究の設定と、実務家を含めたピアレビューの実施(学術)
  3. 多様な先端研究施設・設備、基盤技術等を俯瞰的、包括的に捉え、全体としての効果、効率を上げるとともに、新たな価値を生み出す「研究開発プラットフォーム」の構築(先端)
  4. 産学官の分野横断的な人的・知的交流の促進、社会連携型の研究コミュニティの構築、成功事例の蓄積や情報交換、ニーズとシーズのマッチング(計評、学術、海洋)
  5. 人文・社会科学領域との連携・融合、分野横断型の研究プロジェクトの実施(計評、海洋)

(2)人材育成

  1. 研究機関や研究代表者による、雇用する若手博士研究員への、異分野を含めた研究活動へ主体的に参加することの推奨(研究機関や研究代表者に求められる取組として「文部科学省の公的研究費により雇用される若手の博士研究員の多様なキャリアパスの支援に関する基本方針」(平成23年12月20日)に明記)(人材)
  2. 分野横断の研究科等による自然科学と人文・社会科学の文化等を理解する人材の育成、多様な視点や発想を取り入れる能力の向上のための実践的な演習等の充実、博士論文を書いた分野とは異なる分野を含めて勉強する若手研究者に対する評価の実施(計評、学術、測地)
  3. 既に行われた学際的な人材育成プログラムの大学での検証と定着化、このような取組を担う教員の適切な評価の実施(人材)
  4. 学際研究や分野間連携を支える人が活躍できる場やシステムづくり(人材)
  5. 国際的な人材交流の活性化によるグローバルかつ分野横断的なリーダーの育成、産学官連携によるイノベーション創出人材の育成、先端研究基盤を支える人材のキャリアパスの検討(計評、先端)
  6. 「学」の成果を「官」が設定する課題につなげる人材の育成。研究者が自分の専門分野から出て、長期的に政策をみるシステムの構築とキャリアパスの検討(学術)
  7. 研究プロジェクトにおける若手人材の育成機能の強化(計評)
  8. 研究プロジェクトへの幅広い分野からの若手研究者の参画(海洋)

 

視点3 研究開発の成果の適切かつ効果的な活用

(1)研究開発の成果が、課題解決のために適切かつ効果的に活用されるための取組

  1. 目標設定段階から、応用分野の研究者や人文・社会学者との連携の場を設け、問題意識、社会的効果、実用化の際の課題等を把握し、妥当性について共通理解を得る。(計評)
  2. 研究成果のユーザー等との連携強化。活用側のニーズと研究開発側のシーズを把握し、それを研究課題の選定等に反映する仕組みの構築(計評)
  3. 政策決定の際、研究成果の活用が十分に行われていない。研究機関側が政策判断を助ける科学的知見を提供し、研究活動に政策及び社会的ニーズを反映することが必要。また、研究成果を政策にフィードバックするための情報交換システムが必要(計評)
  4. 新産業・新規マーケットのための大学発日本型イノベーションモデルの構築(産連)
  5. 被災地自治体主導の地域の強みを生かした科学技術駆動型の地域発展モデルの構築支援(産連)
  6. 全国の大学等の研究成果と被災企業のニーズをマッチングさせる取組の推進(産連)
  7. 研究開発成果の事業化のため、地域の金融機関等との連携を促進(産連)
  8. 最先端施設の戦略的活用や、最先端の研究開発とそれに必要な研究基盤を結びつける高度な連携の在り方の検討(先端)

 

視点4 社会への発信と対話

(1)海外を含めた社会へ発信し、対話できているか

  1. 地域の特性に応じ、住民等がリスクをどのような考えのもとに受容していくかの合意形成が十分でなかった。(計評)
  2. 地震や火山分野では基礎的研究の成果は地震調査研究推進本部や火山噴火予知連絡会により分かりやすく使いやすい形で直接国民に提供されている。(測地)
  3. 被災地域の復興状況の進展や成果を国内外へ発信することが、投資や需要を喚起する上で重要であり、その点を考慮した発信を行うべき。(産連)
  4. 大学、独法等が有する先端研究施設・設備等に関し、共用取組が着実に定着してきているが、産業界をはじめとする利用者から見て未だ敷居が高く、利用システムも多種多様となっている。(先端)

(2)社会への発信や対話を一層促進し、国民の科学リテラシーを向上するための取組

  1. 専門分野の異なる科学者同士が有機的に情報を交換し、重要な国家事項に科学的な観点からの助言を国に行っていくことができるシステムづくりが必要。そのため、自然科学者と人文科学者が一体となり、科学的・倫理的視点から価値判断できるネットワークの構築が必要(計評)
  2. 東日本大震災の際、別々の研究者がマスコミで発言したことが混乱を招いたため、英国の主席科学顧問のように、緊急時に情報を正確にまとめて発表する組織が必要(学術)
  3. 科学者・技術者への信頼回復のため、いかに社会に説明していくか議論が必要。特に、中高生に、科学技術・学術研究がどう役立つかについて説明が必要(学術)
  4. 科学者は情報発信をしているが社会にうまく伝わっていない。科学者と社会をつなぐ媒介者と協力して文科省で情報をまとめ、科学者のコメントとして発信することも必要(学術)
  5. 研究者や学協会は、情報発信に関して、一般の人が理解できるよう情報を選別して解釈を整理する役割を担っており、そういった認識を持つことが必要(学術)
  6. 地域住民のリクスリテラシーの向上、従来の「説得」に基づく合意形成から、コミュニケーションや熟議を通じた「納得」に基づく政策形成プロセスへ転換、自治体職員や地域のステークホルダーの研究開発への参画(計評)
  7. 「安心文化」の構築のため、評価体制を整え、社会に及ぼす影響について科学界から社会へ常に説明を行う。また、「情報開示→分析・解析→討議→あるべき方向性の模索」というサイクルが機能するコミュニケーションシステムの設置(計評)
  8. 専門家によるコミュニケーション活動を普及し、効果や潜在的リスク等について国民と認識を共有(計評)
  9. 自然現象に関する細やかな情報提供、学校教育を含めた国民の「地学リテラシー」の向上(測地)
  10. 防災研究を行政機関や自治体との連携の下、一般市民への普及・啓発活動を行いつつ実施(計評)
  11. メディアや自治体等の防災担当者との継続的な勉強会を通じ、地震や火山に関する基礎的知見から最新情報までを伝達(測地)
  12. 社会科学的な側面から、不安の心理について分析を行い、風評被害防止等に活用(計評)
  13. 国・自治体・大学・研究機関・企業等が参画した防災に関するデータベース構築(計評)
  14. 外国人研究者が情報弱者とならないよう多言語による複数媒体での情報提供が必要(国際)
  15. 健全かつ責任を持って科学技術を推進する国であることを伝えるため、世界の研究者コミュニティや大使館を通じて、我が国の状況を発信(国際)
  16. 情報発信やワンストップサービスの窓口となる中核的機関の整備、利用システムに関する考え方の明確化等により、数多くの研究者が先端研究施設・設備等を利用できるための環境を構築(先端)

 

視点5 復興、再生及び安全性の向上への貢献

(1)復興、再生、安全性の向上及び環境変化に強い社会基盤の構築のための貢献

  1. 安全・安心を念頭に置いた研究開発の推進(停電時に必要最低限の電力確保を可能とする蓄電システム、未利用エネルギーを電気エネルギーに変換するデバイスの開発等)(計評)
  2. 社会の防災力向上のための研究開発の推進(災害に対する物理的環境や社会・人を強くする研究開発、リスクやハザードを予測する研究開発)(計評)
  3. 放射線計測に関して、行政ニーズ、現地ニーズ等が高い、高度な技術・機器及びシステムの開発の実施(先端)
  4. 地球観測・予測、統合解析システム等の技術を、社会を支える基盤的情報として位置づけ、地球環境の変動を正確に把握し適切に対応(計評)
  5. 東北メディカル・メガバンク構想(被災地域の医療復興に貢献するゲノムコホート研究等)の推進(計評)
  6. 全国の海洋関連研究者のネットワークとしてのマリンサイエンス拠点の形成(海洋)
  7. 様々な分野の研究者が、被災者の生活再建等に現場でコミットしていく体制作り(学術)
  8. 全国の大学等の研究ポテンシャルを、被災地の復興に役立てるため、産学官の枠を越えた、全国のコーディネーターのネットワークの強化(産連)
  9. 防災や復興に関する分野やそれを支える基礎分野に関する科学技術を我が国の強みとして積極的に情報発信するとともに、強みである科学技術を生かし国際共同研究を進めることにより科学技術外交を推進(国際)

 

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科学技術・学術政策局政策課

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(文部科学省科学技術・学術政策局政策課)