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資料8−1
科学技術・学術審議会
総会(第10回)
H.15.6.2

科学研究費補助金制度の評価について - 概要 -

【平成15年5月27日   科学技術・学術審議会学術分科会研究費部会】

   学術研究は、研究者の自由な発想と研究意欲に基づき、研究者自らがテーマを設定し、研究を実施することにより、新しい法則・原理の発見、方法論の確立、新しい知識や技術の体系化、先端的な学問領域の開拓等を目指した、人文・社会科学から自然科学までの幅広い学問分野における知的創造活動である。

   その成果は、人類共通の知的資産を形成するとともに、産業、経済、教育、社会などの諸活動及び制度の基盤となるものであり、また、人間の精神活動の重要な構成要素を形成し、広い意味での文化の発展や文明の構築に大きく貢献するものである。

   科学研究費補助金は、これまで我が国の大学等の研究活動を支える基幹的研究費として中心的役割を担い、国家・社会の発展の基盤となる学術研究を活化させるとともに、我が国の高い学問水準の維持向上に大きな役割を果たしている。

   研究費部会では、平成15年2月より6回にわたり、制度及び運営全般について検討を行い、必要な改善方策について、総合科学技術会議がまとめた「競争的研究資金制度改革について」を考慮しつつ審議を行った。

   科学研究費補助金制度の趣旨・目的
   
 
(1) 制度の概要
 
   科学研究費補助金制度は、学術研究を振興する観点から不可欠な要素を勘案し、研究者のニーズに応えつつ効果的に研究費助成。
   目的・対象、申請規模等により階層的にいくつかの研究種目を設定。
   研究者が、自らの研究計画に適合した研究種目を選択する仕組み。
   年間申請件数約8万5千件。約2万1千件が公正な審査を経て採択。
   大学等の研究者にとって不可欠のかつ信頼性の高い研究資金。
   審査は、文部科学省及び日本学術振興会において実施。
   極力早期に補助金を交付。「基盤研究」等は、11月に研究計画調書受付、4月中旬に採否決定し、6月上旬に補助金交付。
   
(2) 制度の趣旨・目的
 
   科学研究費補助金は、学術研究の振興そのものが目的。
   限られた財源の中で、幅広く学問分野全体の振興を最も効率的・効果的に進めるための仕組み。
   人文・社会科学から自然科学までの各学問分野の第一線の研究者によるピアレビューを根幹とするシステム。
   
(3) 制度の特徴及び効果   他の競争的研究資金制度にはない特徴
 
   自由なテーマ設定
   新しい学問分野の創出
   長期的視点に立った研究者の育成
   研究者相互の共通基盤の形成
   研究の相互評価機能

   科学研究費補助金制度の評価に当たっての視点
   
 
      
   1趣旨・目的に照らした制度となっているか、2この制度により学術研究は活性化しているか、3学問分野の多様性が十分に保たれているか。
   目的・対象、申請規模等の異なる各研究種目の性格に応じた審査が行われているか。
   学術研究のすそ野を広く保ち、層の厚い研究者群の育成に対する貢献についても視野に入れ評価。

   科学研究費補助金制度の評価
   
 
(1) 科学研究費補助金制度の見直しの状況
 
   研究費部会において改善策を審議し、定期的に見直しを実施。
   今後とも学術的・社会的要請等を勘案しつつ、不断に改善を図る。
   
(2) 研究種目等の設定について
 
   分科細目表は5年毎に見直し。学問分野の融合・細分化に対応。学術研究の最新の動向を踏まえて、新しい学問分野への対応を含め、多様性が確保。今後とも、定期的な見直し。
   時限付き分科細目は、新しい学問分野の創出への有効な方策としてより一層の活用を検討。
   「特定領域研究」は、新しい学問分野の創出や研究者層の厚みを充実していくために極めて重要な役割を果たしており、今後とも充実。
   
(3) 研究費等の配分について
 
ア) 研究費配分の状況:   学術研究はその内容・規模等において多様化。研究者のニーズや審議会の報告を踏まえて申請金額の上限を引き上げるなどの改善を実施。今後とも、一課題あたりの配分額を充実していくことが適当。
   
イ) 「基盤研究」等の研究期間:   制度改善により長期の研究課題に対応。研究期間が4年以上のものは、終了年度の1年前から申請することが可能となり、継続的・安定的な研究遂行について改善。
   
ウ) 採択件数の状況:   「基盤研究」は、比較的少額で実施可能な研究から中規模程度の研究に対応。採択件数は、近年9千件前後で推移。引き続き維持拡大。
   申請件数の年齢別の割合は、20〜30歳代が全体の1/3を占め、採択件数の年齢別の割合は、30歳代後半の割合が19.0%と最も高く、若手研究者の研究に配慮。学術研究の将来を担う若手研究者に配慮する方向が望ましい。
   
エ) 採択率の状況:   平均採択率は、近年は24%前後。欧米の採択率30%を一つの目安として採択率を上げていく必要。
   「若手研究」の採択率は30%前後であり、他の研究種目よりも高くなっているが、若手研究者向けの研究資金は、引き続き予算の拡充に配慮。
   
オ) 各学問分野への配分状況: 人文・社会科学の振興により、人文・社会系の割合は増加しており、今後とも配慮が必要。
   各分野へ配分する方式には、学問的要請や社会的要請を第一線の研究者が総合的に判断して分野間調整を図るタイプ(分野調整型)と、分科細目ごとの申請件数・申請金額に応じて算出するタイプ(試算型)がある。全体として、配分方法の組み合わせは、広く学問的な動向や社会的ニーズへの対応が可能なシステムとなっていると評価。
   
カ) 配分方法の改善:   多様な学問分野を発展させることが最も重要な課題の一つ。双方の配分方式を組み合わせた全体の配分の在り方については、今後とも継続的に検討。
   
キ) 資金の管理形態:   研究機関が補助金の交付申請の事務を行い、交付を受け、執行管理をする制度。
   
ク) 間接経費の拡充
   
ケ) 年度間繰越:   平成15年度より繰越明許制度導入。この制度の活用のため事務手続の簡素化・合理化が望まれる。
   
(4) 審査評価体制について
 
ア) 審査の重要性
   
イ) 審査体制:   幅広い学術研究の分野の振興を効果的に進めるために第一線の研究者によるピアレビューを導入。審査及び中間・事後評価は、研究種目の目的・性格、規模等に応じて審査評価体制を工夫。
   今後とも、審査を充実した制度とすべき。
   
ウ) 中間評価、事後評価:   「特別推進研究」及び「特定領域研究」の中間評価及び事後評価の結果は、文部科学省のホームページ等を通じて一般に公開。
   「基盤研究」等の事後評価は、次の新規申請の審査を、さきの研究の事後評価と併せて行う方法。効率的な評価の仕組みであり、今後とも事後評価と新規申請の審査を連結する仕組みを維持。
   
エ) 学術調査官等のプログラム管理者の充実による審査評価体制の整備:   審査評価の公平性・透明性を高め、審査評価の充実や研究者のニーズを踏まえた一層のサービスの向上を目指すべき。日本学術振興会の学術システム研究センターの充実、学術調査官の適切な配置により審査評価体制の一層の充実を図る必要。
   
オ) 独立した配分機関体制の構築:   審査体制等制度の一層の充実、研究者へのサービス向上を図る観点から、文部科学省において行っている審査交付業務について、将来的に条件が整えば、日本学術振興会へ移管する方向。
   
カ) 審査員の決定:   「基盤研究」等の審査員の選考は、日本学術会議から定数の2倍以上の候補者の推薦を得た上で、日本学術振興会において実施。審査員の選考規程に基づき、学術参与等が中心となって審査員の構成の調整。
   ピアレビューを効果的に機能させるためには、審査員の候補者情報を多数蓄積し、適切なレビューアを選任することが必要。常に新たな候補者情報の追加や更新を行っていくことが必要で、日本学術会議や学会等の協力が必要。そのような協力も得つつ、蓄積した情報をもとに日本学術振興会において審査員を選考。
   
キ) 研究計画調書:   英語による研究計画調書の記載は従前より可能。制度においては、各研究種目の性格に応じて、研究計画・方法と研究実績のバランスを考慮した研究計画調書の項目を工夫し、内容構成は概ね適当。今後、さらに適切な審査に資するために、より具体的な計画の記載を求めることについて検討。
   
ク) 科学研究費補助金の応募対象:   応募対象は、その目的にかなう限り広くするよう運用の徹底を図る必要。大学以外でも、国公立、独立行政法人、公益法人等の研究機関にその対象範囲を拡大。これまでも民間企業の研究者が共同研究者に加わることは制度上可能であり、実際、年間1,000件(平成14年度)の実績。現在の仕組みについて、さらに周知徹底を行い、この制度の積極的な活用を図ることなどが大切。
   
ケ) 年複数回申請:   解決すべき課題も多く、引き続き十分な検討が必要。
   
コ) 電子システム化とデータベース化:   可能なところから電子システム化を図ることが望ましいが、研究計画調書の受付から書面審査、交付までの一貫したシステムとしての検討が不可欠。情報セキュリティの徹底を含め、十分な検討が必要。
   
(5) 研究成果について
   現在の我が国の大学等における研究ポテンシャルは国際的にも高く、ここ10年以上にわたりこの高い学問水準を維持向上させていることは、科学研究費補助金により得られた研究成果の累積の結果といえる。

   学術研究は公開前提の研究。成果は、国内外の学界における研究者相互の評価という形で常に厳しい専門家の眼にさらされ、適正に評価された研究成果は、次の研究に発展する。
   本制度には、同様の仕組みが内在している。一定の研究成果を得たものは、次の新規申請の際に評価され、継続的な支援が得られる仕組みとなっている。結果として、世界最高水準の研究が推進され、新しい学問分野が創出されている。

   学術研究の成果が評価され、顕彰あるいは実用化されるまでには一定の期間が必要である。本制度が長期にわたり運営され、その過程で優れた研究を継続的に支援してきた。学術研究がその健全性を維持しつつ、発展してきたことは、本制度の一つの成果である。

   本制度が大学院教育等の場を通じて、実質的な研究者養成及び研究者の資質向上に果たしてきた役割についても高く評価できる。
   
(6) 中長期的観点からさらに検討すべき課題
   
 
ア) 科学研究費補助金制度の全体像:   制度改革の検討に当たっては、競争的研究資金の観点だけでなく、我が国の研究資金全体という観点にも留意する必要。
   
イ) 研究と教育の関係:   補助金は、大学院学生や若手研究者に対する教育機能を有する。教育と研究を明確に分離することは困難。様々な競争的研究資金を充実し、大学における多様な研究を促進していくことは大切。しかし、それが大学院教育に要する経費を圧迫するようなことになってはならない。
   
ウ) 競争的な給与・人事システムの構築:   補助金から研究者本人の給与を支出することは、我が国の研究者の雇用システムの根幹にも関わる問題。直接的な研究経費が圧迫されることとなるものであり、研究費補助金の在り方として適当であるかなど、慎重に検討する必要。
   
エ) 我が国における研究のコスト:   我が国の研究費は、国際的に見ても割高。研究現場の状況把握に努める必要がある。我が国の学術・科学技術の国際競争力の維持・向上の観点から問題改善のための努力が払われるべき。

   評価の結果と今後の方向性
 
   科学研究費補助金制度は、これまでの長い歴史の中で、審議会の答申・建議や研究者の意見等を踏まえ、制度として自律的に改善を図ってきた。研究費部会においては、引き続き、具体的な改善案の検討を進めていく。

   科学研究費補助金は、我が国の学術研究の振興を図るための制度として大きな役割を果たしている。我が国の大学等の研究基盤を支える長期的な研究者の育成や新分野創出機能等、他の競争的研究資金にはない様々な特徴や効果も有している。

   科学研究費補助金が、我が国の学術研究を推進するための基幹的研究費であり、かつ我が国を代表する競争的研究資金であることに鑑み、第2期科学技術基本計画の趣旨に沿って、その一層の拡充が図られるべきである。


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