科学技術・学術審議会(第58回) 議事録

1.日時

平成29年7月25日(火曜日)13時30分~15時30分

2.場所

東海大学校友会館「阿蘇の間」

3.議題

  1. 各分科会等の審議状況について
  2. 基礎科学力の強化について
  3. オープンイノベーションの推進について
  4. 科学技術・学術協力強化に向けた国際展開について
  5. 最近の科学技術・学術の動向について
  6. その他

4.出席者

委員

濵口会長、庄田会長代理、青木委員、安西委員、浦辺委員、大垣委員、小縣委員、甲斐委員、春日委員、岸本委員、栗原和枝委員、栗原美津枝委員、五神委員、白波瀬委員、鈴木委員、辻委員、平田委員、松本委員、宮浦委員

文部科学省

水落文部科学副大臣、伊藤文部科学審議官、佐野科学技術・学術政策局長、関研究振興局長、田中研究開発局長、加藤科学技術・学術政策研究所長、中川総括審議官、藤野サイバーセキュリティ・政策評価審議官、山下大臣官房文教施設企画部長、信濃大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、渡辺振興企画課長、勝野科学技術・学術総括官、伊藤科学技術・学術政策局企画官、ほか関係官

5.議事録

【濵口会長】  お時間になりましたので、ただいまから科学技術・学術審議会の第58回総会を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、御多忙中にもかかわらず御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、水落文部科学副大臣に御出席いただいております。それでは水落副大臣から御挨拶を賜りたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【水落文部科学副大臣】  御紹介いただきました文部科学副大臣の水落敏栄でございます。第58回科学技術・学術審議会の総会の開会に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。
 科学技術・学術は、新たな知を創出し、持続的なイノベーションの源泉になるものであり、科学技術・学術分野における我が国の国際競争力の向上を図ることは、喫緊の課題であると考えております。また、我が国の社会経済が発展を続けていくためには、国を挙げた産学官連携の拡大により、オープンイノベーションを加速させることが必要不可欠であると認識しております。
 文部科学省では、松野大臣の指示の下、基礎科学力の強化、オープンイノベーションの推進、科学技術・学術分野における国際的な展開に関して、必要な施策の議論を行ってまいりました。これらの施策については、予算措置や制度改正が必要なものも含まれており、文部科学省としては、関係各位の御意見も踏まえ、実効性のある施策の実現に取り組んでまいりたいと考えております。
 本日の審議会におきましても、忌たんのない御意見、御提言を賜りますようお願い申し上げまして、開会の御挨拶とさせていただきます。本日はよろしくお願いいたします。

【濵口会長】  ありがとうございました。水落副大臣は、公務の都合上、ここで御退席されます。副大臣、どうもありがとうございました。

【水落文部科学副大臣】  ありがとうございました。どうぞよろしくお願いします。

【濵口会長】  それでは次に、事務局に人事異動がありましたので、事務局から紹介をお願いいたします。

【伊藤企画官】  前回3月の総会以降、事務局に人事異動がございましたので、御紹介申し上げます。
 文部科学審議官の伊藤でございます。

【伊藤文部科学審議官】  よろしくお願いいたします。

【伊藤企画官】  科学技術・学術政策局長の佐野でございます。

【佐野科学技術・学術政策局長】  佐野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【伊藤企画官】  科学技術・学術政策研究所長の加藤でございます。

【加藤科学技術・学術政策研究所長】  加藤です。よろしくお願いいたします。

【伊藤企画官】  総括審議官の中川でございます。

【中川総括審議官】  中川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【伊藤企画官】  サイバーセキュリティ・政策評価審議官の藤野でございます。

【藤野サイバーセキュリティ・政策評価審議官】  藤野でございます。よろしくお願いします。

【伊藤企画官】  科学技術・学術政策局担当審議官の信濃でございます。

【信濃科学技術・学術政策局担当審議官】  信濃です。よろしくお願いいたします。

【伊藤企画官】  研究振興局振興企画課長の渡辺でございます。

【渡辺振興企画課長】  渡辺です。よろしくお願いします。

【伊藤企画官】  科学技術・学術総括官の勝野でございます。

【勝野科学技術・学術総括官】  勝野です。よろしくお願いいたします。

【伊藤企画官】  以上でございます。

【濵口会長】  ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは続きまして、配付資料の確認について、事務局からお願いいたします。

【伊藤企画官】  紙でお配りしております配付資料一覧を御覧いただきたいと思います。資料1から資料7まで、本日は御用意をさせていただいておりまして、前回と同様にタブレットPCも御用意させていただいてございます。配付資料一覧に※印を付したものにつきましては、紙でも御用意をさせていただいてございますが、※印を付していないものにつきましては、タブレットPCで御確認いただければと思います。過不足等ございましたら、お申し付け下さい。
 以上でございます。

【濵口会長】  ありがとうございます。それでは、早速議事に入ります。
 本日の議題は議事次第のとおりでございます。
 最初に、議題1「各分科会等の審議状況」について、お諮りします。事務局から説明をお願いいたします。

【伊藤企画官】  資料1でございます。こちらにつきましては、タブレットPCで御確認いただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 まず1枚目でございますが、本審議会の組織図でございます。6つの分科会、3つの部会及び3つの委員会を総会直下に設置してございまして、その下に様々な部会、委員会等を現時点でこのような形で設置させていただいてございます。
 次の2枚目でございますが、それぞれの分科会等の長と代理の名簿でございます。
 3枚目でございますが、各分科会等の審議状況でございます。総会直下に置かれます分科会、部会、委員会の12の会議体につきまして、主な検討事項と開催状況について記してございます。第9期が始まりましてからそれぞれ1回程度開催をしてございます。一部開催できていないものもございますが、今後精力的に議論を進めていきたいと考えてございます。
 4枚目以降は、各分科会等の開催実績でございまして、こちらにつきましては御覧いただければと思います。
 以上でございます。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 それでは続きまして、文部科学省として、科学技術・学術政策の重要な方向性を示す報告書がまとまっております。本審議会としても意見を述べたいと思いますので、議題とさせていただきました。
 まず、議題2「基礎科学力の強化」について、お諮りします。事務局から説明をお願いします。

【渡辺振興企画課長】  振興企画課長の渡辺です。それでは、お手元の資料2-1に基づいて説明させていただきます。本文はタブレットPCに資料2-2として入っておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 この「基礎科学力の強化に向けて―「三つの危機」を乗り越え、科学を文化に―」という報告書でございますが、これは、昨年12月から本年3月まで6回、田野瀬大臣政務官を座長とする検討会を文科省内に設けまして、検討を行いました。検討の過程では、大隅東京工業大学栄誉教授及び外部の有識者の方々にも御意見を賜りながら検討を進めてまいりました。そして、本年4月24日に検討結果を取りまとめて、既に公表済みでございます。
 まず資料2-1の1枚目でございますが、経緯を記載しております。釈迦(しゃか)に説法でございますが、基礎科学は、新たな知を創出、蓄積し、持続的なイノベーションによる社会経済の発展の源泉となる。こうした重要性については当然のことながら認識をしているものの、「日本の基礎科学力の揺らぎ―三つの危機」として出しておりますが、今、日本で論文数の伸びは停滞し、国際的なシェア・順位は低下している、あるいは新たな学際領域への参画の遅れ、ないしは国際共著論文数の割合も小さく、日本の存在感が低下しているという、こうした背景を踏まえて、今我々が直面している危機については、三つの大きな危機があるのではないかというふうに整理をいたしました。研究の挑戦性・継続性をめぐる危機、次代を担う研究者をめぐる危機、そして「知の集積」をめぐる危機、こうした三つの大きな危機に対して、具体的な対応策を検討したものがこの報告書として取りまとめたものでございます。
 さらには、科学は文化として我が国では根付いていないのではないか、こうした点についても検討を加えて、取りまとめております。
 2枚目を御覧ください。最初の研究の挑戦性・継続性をめぐる危機への対応策でございます。現状・課題といたしましては、基盤的経費や自主的・自立的な研究を支える研究費が減少している。これは、国立大学法人の運営費交付金あるいは私立大学経常費補助金、国立研究開発法人の運営費交付金、これらそれぞれが大きく減少しているという現実がございます。また、長期的な視野に立った独創的な研究への挑戦や自主的・自立的な研究に専念することが困難であるという声が研究者から聞こえていますし、研究者の研究時間が減少しているということもデータとして裏付けられております。
 こうした背景等を踏まえて、取組の方向性として、若手をはじめ個々の研究者が、国境や分野の壁を超えて、より自由かつ大胆な挑戦を行うことができるよう支援を強化すること。それから、当然のことながら、基盤的研究費の適切な措置に向けた基盤的経費、科研費をはじめとする競争的研究費の助成規模の拡充に努める。こうした取組の方向性の下で、具体的な対応策として、大きく3点に分類して記載しております。資料中、赤丸は、直ちに取り組むべき事項、これは今年度から既に取り組んでいるものも含みます。それから白丸が、平成30年度以降に速やかに取り組むべき事項、これは概算要求等において具体的にこれから整理をして要求していこうというものでございます。
 まず、知のブレークスルーを目指した科研費改革。第5期の科学技術基本計画でも位置付けられております新規採択率30%の達成に向けた量的な充実を行うとともに、科研費の若手支援プランを実行してまいります。また、来年度に向けては、特に若手研究者による海外での新たな課題探索を支援する「グローバルチャレンジファンド」というようなものの創設に向けても検討を進めてまいります。
 また、真ん中のイノベーションの創出に向けた戦略的な基礎研究の推進でございます。これはJSTの戦略創造事業等が該当いたしますが、研究テーマの設定段階から産業界との連携を深めた、民間投資を呼び込む仕組みについての検討・構築を進めてまいりたいと考えております。また若手研究者の支援については、指導的立場にある優れた研究者との協働等を通じた取組を強化していきたいと考えております。
 また、右の研究をめぐる制度やルールの見直しでございますが、これは研究費の使い勝手を改善するための使用ルールの合理化・標準化等について、引き続き周知を図ってまいりたいと考えております。また、科研費の審査におきましても、独創的・挑戦的な研究提案を過去の実績のみにとらわれずに評価する仕組み、これを科研費改革の一環として進めてまいります。
 3枚目でございます。次代を担う研究者をめぐる危機への対応策でございます。これは、若手研究者でございますが、現状・課題としまして、若手研究者の雇用が不安定化しているという現実がございます。
 右の棒グラフが2つ付いております。これは、上が平成19年度、下が平成25年度のRU11の大学における任期付きと任期なしの教員の人口ピラミッドのようなグラフとして示しております。赤丸を付しておりますが、平成19年度に比べて平成25年度では、若手研究者の任期付き教員の割合が極めて高くなっています。
 こうした現状、更に研究者が短期の業績作りや事務作業に追われて、独創性を発揮しづらい。キャリアパスの不透明さ、経済負担などへの不安。こうしたことから、優秀な学生が研究者の道を躊躇(ちゅうちょ)・断念する率が増えている。つまり、修士課程修了者の大学院博士課程への進学率が過去10年間で3%も減少しているという状況がございます。
 こうした中で、取組の方向性としては、優秀な者が博士後期課程や研究者を目指せるようサポートを行うとともに、若手研究者が安定かつ自立して研究に打ち込める環境を実現する。
 こうしたことに対応するために、最初に、左側でございますが、優秀な者が研究者を目指すための支援の充実。ここで、例えば若手研究者が海外にチャレンジするための若手研究者海外挑戦プログラムを新たに今年度から実施を既にしております。また、特別研究員事業においても、支援対象者の範囲の見直しでありますとか、共同研究・インターンシップなど、多様な経験を積む機会の確保等の制度改善を行ってまいりたいと考えております。また、博士後期課程修了者に対する産業界等へのキャリアパスを開く機会を作る取組を支援してまいります。
 また、真ん中の優れた若手研究者が安定かつ自立して研究できる環境の創出としましては、もちろん、まずは基盤的経費を充実することに注力いたします。また大学等におきまして、若手研究者へのポストの振り替えを支援するような仕組みも既に導入しております。さらには、卓越研究員制度の改善・拡充、クロスアポイントメント制度のポストの奨励、こうしたことも進めてまいりたいと考えております。
 さらに、人材システム全体に係る取組としましては、これまでなかなか取り組まれていなかった科学技術・学術審議会と中央教育審議会とが連携しました新たな検討会を設け、研究人材育成総合プランを、仮称でございますが、今年度末を目途に設定することも検討を進めております。
 4枚目を御覧ください。これは「知の集積」をめぐる危機への対応策でございます。現状は、繰り返しとなりますが、論文数の伸びが停滞し、国際的なシェア・順位が大幅に低下している。これは、例えば日本の場合、世界トップレベルの研究拠点を形成し、それについては一定の成果は上がっておりますが、これが我が国全体に与える影響は限定的ではないか。我が国全体の研究力強化のためには、「知の集積」の場となる研究拠点群の厚みが不十分ではないか。
 こうした問題点に対して、取組の方向性として、現状で既に進めております世界トップレベル研究拠点プログラム等の充実により、世界と競争できる研究拠点の形成を支援する。研究情報基盤の整備や、優れた研究環境・研究基盤を支える施設整備の充実を図る。こうした取組の方向性の下で、具体的な対応策としましては、世界トップレベル研究拠点プログラムについて、引き続き充実をしていく。特にWPIプログラムにつきましては、強い基礎科学力を梃(てこ)に産業界からの大規模投資を呼び込むような取組も強化してまいります。また、WPI発の優れた成果をプログラムの枠を超えて、同じ学内あるいは違う大学等に対しても展開・波及させるための取組にも着手をしております。さらには、基礎研究のポテンシャルと産業界のニーズ・支援を踏まえた新たなトップサイエンスと産業の発展を両立するような国際研究拠点の構築についての検討も進めてまいります。
 真ん中でございますが、こうしたWPIのような大きな拠点以外に、特定の研究分野で我が国をリードし、世界と競争できる研究拠点、こうしたものも支援するための取組を行ってまいります。具体的には、右上のグラフがございますが、こちらはピンクとブルーで示しておりますが、ピンクが日本、ドイツがブルーということでございますが、日本の場合は、特定のトップ大学に様々な研究者やリソースが集中しているために、7番目、8番目、9番目ぐらいからはTop10%補正論文数についても急激に減少しているということがございます。このために、この中堅クラスの大学の厚みを増すための取組として、この特定分野で卓越した研究力を有するような拠点を支援する新たな取組を行ってまいります。
 また、研究情報基盤につきましては、情報ネットワークの強化、あるいは多様なユーザーニーズに応えるコンピューティング・インフラの充実等を継続してまいります。
 最後の5枚目でございますが、科学を文化として根付かせるための対応策でございます。現状、どうしても日本人一般の方々は、研究の価値を、すぐに役に立つか否かで考える価値観が根強く、真理探究の営みそのものに十分な価値を認めるには至っていない。また、基礎科学への関心も、日本人研究者が過去3年連続ノーベル賞を受賞しており、一時的に高まっておりますが、それは本当に一時的なもので止まってしまっている。こうした中で、科学を文化として位置付けて、日常的な関心の対象にする。こうしたことを通じて、優れた素質を持った生徒の発掘・才能の伸長が必要ではないか。さらには、現状、国費、国家の財政が逼迫(ひっぱく)している中で、学術研究・基礎研究や科学に関係する取組に対する寄附の意義等について広く国民の理解・関心を獲得していくことが必要ではないかということが指摘をされております。これらに対して、科学を文化として育む機運の醸成、大学等への寄附の促進、こうしたことを進めていくべきではないかという方向性が示され、それに対しまして、具体的に国民の科学に関する意識の向上のための機運を醸成する取組としまして、例えば理化学研究所は今年、「科学道100冊」というような独自の取組で、特に子供たちに対して本を紹介することで科学に対する関心を高めるような取組を進めておられますが、例えば「科学の名所100選」というものを創設して、より一般の方々が身近に科学に触れられるような取組を進めてはどうかという視点でありますとか、あるいは科学に関する国民との対話等を支える人材の育成・支援、地域に根差した継続的な科学的コミュニケーション活動を牽引(けんいん)できる人員の派遣・活動支援。さらには、寄附の促進としまして、文部科学省寄附フォーラムというものを毎年開催しております。本年度も既に今月当初に開催しておりますが、こうした寄附フォーラム等を通じて、社会全体の寄附意識の向上。あるいは寄附のポータルサイトの開設。こうしたことを通じて、多くの方々に対して、科学に関心を持っていただき、寄附等の形で科学に対する支援を促してまいりたいと考えております。
 以上、検討結果について概要を御説明いたしました。今後これに基づきまして文部科学省では概算要求等を行ってまいりますが、更に先生方の前向きな御指摘、御助言等を賜れれば幸いに存じます。よろしくお願いします。

【濵口会長】  ありがとうございました。

 それでは、ただいまの説明について、御意見等がありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。どうぞ。

【安西委員】  御説明ありがとうございました。
 基礎科学力の強化に向けて、「三つの危機」というのは、おっしゃるとおりだと思います。その中で、特に2番目の次代を担う研究者をめぐる危機、若手研究者の雇用・研究環境の劣化につきまして、若手研究者の雇用が不安定化していることは、一般的にはそのとおりですが、2つのポイントを申し上げておきたいと思います。
 1つは、若手研究者といっても、例えばポスドクを取り上げたときに、ポスドク問題というのはよく話題にはなりますが、ポスドクといってもいろいろな雇用形態がございまして、例えば、日本学術振興会の特別研究員、あるいは海外特別研究員につきましては、将来大黒柱となる研究のリーダーを養成するための一種の登竜門として非常に大きな役割を果たしております。実際、常勤の研究職への就職率も非常に高く、90%以上が常勤の研究職に就職しています。そのことと、全体が不安定化していることとを一緒にして考えられると、ややもすると、全体を変えていかなければいけないような議論になっていくかと思いますが、やはり将来大黒柱になっていく若手の研究リーダーの養成自体は非常に大事であり、むしろそのような本当の大黒柱を育てていくことをもっと充実させていくべきだと考えております。
 2点目は、若手研究者といっても分野は様々で、分野によってその状況が異なります。したがって、一般論としては全体が不安定であることは事実ですが、やはりある程度きめ細かく、分野によって対応していただければ有り難いと思います。以上2点、特に前者の、これから研究を支えていく、あるいは将来のイノベーションを支えていく若手の研究者人材の養成は、いわばまっしぐらに行われなければいけないことで、これを充実させることが本当に日本にとっては肝要なことだと思いますので、一言申し上げさせていただきました。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【濵口会長】  ありがとうございます。本当に御指摘のとおりだと思います。何か御意見はございますか。よろしいですか。どうぞ。

【岸本委員】  岸本でございます。「三つの危機」を乗り越えてという形で、すごくいいものができつつあるなと思いました。少しコメント的になってしまうかもしれませんが、最初のところ、科学は文化として根付いているかという中で、真理の探究の営みそのものに十分な価値を認めていない、というのは違っていて、本当は皆さん認めているのではないかと思います。むしろ、そう思っていても、なかなかそのだいご味をうまく伝えられていないので、その中でギャップがあって、科学が日本ではなかなか文化になっていないのではないかと思います。最初からこのような言い方で進めていくのは、余り良くないのではないかなと思いました。
 もう1点は、工学部の立場からしますと、科学もそうですが、ここに「技術」という言葉も入れていただきたいなと思います。技術もやはり文化になっていくということで、日本全体として伸びていくのではないかと思いますので、できればどこかに「技術」というキーワードを入れつつ、皆さんに技術のだいご味も分かっていただきたいなと思います。
 以上です。

【濵口会長】  ありがとうございます。科学技術振興機構として、同意見でございます。松本先生。

【松本委員】  理化学研究所の松本でございます。渡辺課長、どうもありがとうございました。
 2点ほど申し上げたいのですが、1点は、ここに御指摘のように、若手が自分でテーマを探す、安西委員が今おっしゃいましたが、そういう人を育てるということは大変大事だと思っております。しかし、大きなグラントを取る研究者がおりますので、そこで雇われる若手がどうしても増える。ですから、大きい方のグラントも同時にお考えいただかないと、若手だけでは駄目だと思っています。
 もう1点は、海外チャレンジ。これは大変良いことで、どんどん押し出してほしいところですが、「帰ってきた人たちが就く職がないので、私は行きません」という方を何人も見てまいりました。ですから、もう一つは、海外で3年なり5年なり頑張った人を受け入れるという、そういう施策を是非お考えいただきたいと思っております。理化学研究所で少しやってみようかと思っていますが、組織としてはそんなに大きくありませんので、全国的に展開していく必要があるのではないかと思って申し上げました。

【濵口会長】  日本版のウミガメ政策です。五神先生、お願いします。

【五神委員】  この三つの問題は、いわば私の最近20年間のライフワークのようになっています。若手研究者の雇用や研究者の時間の劣化といった問題は、10年前から議論されています。しかし、国際的な競争は厳しく、また社会システムが大きく変わろうとしている中で、日本がいかに存在感ある形で貢献していくか、という議論を、これまでの10年間の議論の反省を踏まえて、もっとスピーディーに行う必要があります。ここは科学技術・学術審議会の総会ですので、俯瞰(ふかん)的に日本の基礎科学力を支えるポートフォリオをどのように組み替えていくか、産業界との関わりなどの構造も大きく変わっている中で、そのために何ができるのか、何をすべきか、ということを議論しなければなりません。
 まず、いつまでに取り組む必要があるかを考えてみます。一つのポイントは、日本社会の超高齢化が現在の財政状況のまま進んでしまうと、基礎科学力がどんなに大事でも、そこに資金を投入することが今より一層難しくなることです。例えば、8年後には団塊世代の方が後期高齢者になります。そのときに団塊ジュニア世代が総じて介護離職という状況に陥らないよう、それまでに今まで培ってきた科学技術を活用しながら、例えば健康寿命の延伸など、未来が明るい形になるということを特に若者に伝えられるように社会変革を図らなければなりません。今後8年間でできることについて考える際には、過去8年間でできたことだけにとらわれてはいけません。その発想を転換するために、何よりも大事なことは、民間をエンカレッジして一緒にやるべきことと、国でやらなければいけないこととを見極めて、大事なところは国としてしっかり守り、民間を活用して活性化できるところはどんどん進めていくことです。最近2年間の産業界の方々の発言を見ますと、そういった方向に大きく変化していると私は実感していますので、是非その流れをこの場での議論にも活用して、8年以内に成果を出すための方策について、スピーディーに、かつ実効性のある形で議論していただきたいと思います。

【濵口会長】  ありがとうございます。栗原先生。

【栗原(和)委員】  この中で一つすごく問題なのは、ドクターコースに行く学生が減っているということで、基盤として非常に憂うべきことだと思います。これについて、どの分野でも同じように減っているのか、あるいは特定の分野で非常に減っているのか。私が聞いているところでは、本当かどうかは分かりませんが、従来、例えば理学部系ではドクターに行きたがる学生が多いが、工学部系では就職したがる学生が多いとか、そのようなところがどのように変わってきているのかということを、もう少しきめ細かく見て、対応を考えるべきではないかと思います。
 今回の提言の資料を拝見しますと、最近、産業界でドクター修了者の雇用の割合が全然増えていないというデータがありますが、どうしてドクターの雇用が増えないのか。学生の方により進学してもらうためには、産業界の雇用というのは一つの重要な要素だと思います。そのあたりの状況をもう少し具体的に把握して、研究者としてアカデミアに残ってもらうことも重要ですが、全ての学生がアカデミアに残れるわけではないと思いますので、進学率の向上にはやはり産業界での雇用は非常に大事なのではないかと思います。是非そのあたりを御検討いただき、共に考えさせていただければと思います。
 それから、先ほどの文化の点ですが、先の連休の日曜日に仙台でNPOが主催したサイエンス・デイという催しがありました。大学の研究室や小・中・高のいろいろな科学クラブが全部で100グループほど出展して、大学のキャンパスでそういう催しをしまして、子供から大人まで市民の方が1万人以上来られました。これは11年目になるそうですが、これを始められたのはNPOの本当に小さなグループです。出展の部屋を回りますと、皆さんすごく楽しんでおられたので、やはりサイエンスは楽しいんだということを表に出してみんなで楽しむような機会を、それこそ先ほどおっしゃった民間の活用ではないですが、みんなの力でそういうものをうまく表に出していく機会を作るということが大事なのではないかと考えております。
 そういう意味では、理化学研究所の皆さんが作ってくださった「科学道」という本も、非常にシンプルな小さな冊子ですが、誰でもが手にとれるようなもので、大変貴重なものだと感謝しております。

【濵口会長】  ありがとうございます。庄田委員、お願いします。

【庄田会長代理】  今、栗原委員がおっしゃった産業界における博士人材のお話ですが、これは産業分野によって随分違うのではないかと思います。私が所属している産業においては、研究部門はほぼ100%、博士課程修了者です。ですから、必ずしも一律に産業、民間ということだけではないのかと思います。
 博士人材に関しては、私は、卓越研究員事業は大変重要な事業だと思います。平成28年度に始まって、産業界と大学と研究開発法人で約300のポストが準備されましたが、そのうち3分の1が、産業界が提示をした各企業のポストであったと思います。しかし、結果として、産業界のポストに決定したのは5人の研究員の方だけでした。産業界側の説明不足による部分もあるかとは思いますが、平成29年度も4分の1が産業界からのポストですから、なぜ博士課程の皆さんが産業界に関心を持たないのかについて、もう少し議論が必要なのではないかと思います。

【濵口会長】  ありがとうございます。それでは宮浦委員、お願いします。

【宮浦委員】  御説明、ありがとうございます。宮浦です。
 今の若手人材の件につきましては、特に産業界と連携したマルチキャリアパスについては、人材委員会でかなり議論をさせていただきました。分野別のデータもかなり解析してみたのですが、確かに分野別の状況の違いというのはございます。
 その一方で、アカデミアのポストとポスドクあるいは博士後期課程の新卒の数字を見ますと、アカデミアのポスト、いわゆるパーマネントのポストは、絶対的に数が不足している。どう考えても吸収できない。ということで、その数の問題がまずありますので、そこの部分をどう考えるかと。先ほど来話題にありましたように、優秀な若手をアカデミアに残して、あるいは海外に一時出して育成していくことは極めて重要で、そこの部分はもう絶対に譲れない部分ですが、では全員にそこを目指していただくと、8割、9割はポストがないわけです。その現実に目を向けますと、一方で、産業界におけるイノベーション創出における若手の博士の活躍が十分でないという現実があり、セクター間でいかに人が動かないかという問題もあります。10年、20年動いていません。したがって、動いた方がいいというような議論をしていただけでは動かないということが恐らく明白で、具体的なアクションを実行する時期だと考えています。
 人材委員会ベースで少し産業界の方ともお話をさせていただいて、一部、コンテンツも含めて具体的なアクションをやりたいと思っております。全国どこでも、産業界に博士あるいは若いポスドクがアクセスできるような専用のサイト等が必要です。そういうものを作らないと、恐らく2、3年たっても全く動いていないだろうと推測されますので、そういう具体的なアクションにつなげる時期だと思っております。
 卓越研究員も産業界に思いのほか入らないのは、産業界側のポストをもっともっと出していただきたい一面と、一度アカデミアに向かったポスドクの方、研究経験のある方にもう一回産業界に目を向けてもらうのは、何らかの仕組みがないと、応募しにくい現実があると思います。
 あと1点、話題が若干ずれますが、研究拠点の厚みを増すことについて委員会で議論させていただきました。特定の研究分野をリードするという部分はもちろん重要ですが、現状として数字を見ますと、全国の8番から23番ぐらいの大学の層が極めて薄くなってきているという議論がかなりありました。もちろん研究分野の特色で引っ張るというのも重要ですが、8番から23番を引っ張るぐらいの施策を考えていただくのが有効ではないかと思っております。
 以上です。

【濵口会長】  ありがとうございます。かなり具体的な御指摘を頂きました。もうお1人ぐらい、いかがですか。どうぞ。

【白波瀬委員】  雇用の問題とも関係しますが、三つの課題で時間の劣化に関連する話です。具体的に時間の劣化を改善するために何が必要なのかと言えば、結局、学術における新たな雇用の創出があります。今までにはないような形のマネジメントをする方、ファシリテーターというような形の雇用が重要だということが1つあります。あともう一つは、政策議論が最近あって、ビッグデータ云々(うんぬん)ということもありますし、文系も無関係ではないと思いますが、統計処理をしっかりできるような方で、かつ政策議論ができるような専門職を積極的に作っていただけるような仕組みを考えていただきたいと思います。ここで何を申し上げたいかと言うと、どうしてもこの学術の中での雇用と、労働市場における雇用、特に役割としては厚労省になってきますが、非常に縦割りのような気がします。やはり本気で雇用を積極的に学術の外でも創っていただいて、連動するような仕組みを作るためにも、府省横断的な議論を積極的に創っていただきたいと思います。
 以上です。

【濵口会長】  ありがとうございます。議論は尽きないと思いますが、渡辺さんの方で本当に重要課題をきっちりとまとめていただいたので、時間的にもう余り余裕がない中でどう具体化していくかというのを更に一段、二段掘り下げていく作業をお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 よろしくお願いいたします。
 それでは、次の議題に移りたいと思います。議題3「オープンイノベーションの推進」について、お諮りします。事務局から説明をお願いいたします。

【竹之内産業連携・地域支援課課長補佐】  産業連携・地域支援課の竹之内と申します。続きまして、オープンイノベーション共創会議における検討結果について御説明申し上げます。
 お手元の資料3-1から資料3-3になりますが、資料3-1、資料3-2につきましては紙の資料、資料3-3につきましては、タブレットPCで御確認をいただければと思います。
 文部科学省では、オープンイノベーションの加速に向けた具体的な改革方策を検討するため、オープンイノベーションの第一線で活躍する各界の有識者の方々の参画を得まして、本年1月にオープンイノベーション共創会議を設置いたしまして、7月まで4回にわたり議論を重ね、報告書を取りまとめました。ここでは、時間の制約もございますので、概要資料に基づきまして御説明をさせていただきます。
 まず資料3-1を御覧ください。検討の背景でございますが、資本集約型から知識集約型への産業構造の転換に伴い、大学・国立研究開発法人が先進的な知識集約型産業創出のプラットフォームとなることを要求されているということに触れております。もう1点は、2025年までに大学・国立研究開発法人への民間投資を3倍に拡大するという政府目標の達成に向け、大学等のイノベーション創出力を強化することの必要性を挙げてございます。
 続く第2章でございますが、我が国の産学官連携の現状認識といたしまして、1点目には、米国の例との比較などに基づきまして、日本における大型の共同研究の件数が依然として低調、また大学発ベンチャーにつきましても低調に留(とど)まっているという点などを挙げまして、社会的な期待の大きさに比して伸び悩む産学官連携の現状を分析しております。
 2点目といたしましては、資金の好循環という観点から現状を掘り下げまして、間接経費の低さ等により産学連携に対する大学等の組織的インセンティブが十分に働いていないこと、また自己財源を生み出そうとする際に制度的な限界が存在することを挙げてございます。
 このような現状認識でございますが、その課題の背景にある阻害要因を整理する視点としまして、3つございます。1つが民間投資導入拡大と柔軟な資産運用、2点目が事業化の観点から研究成果の質的向上、またイノベーション人材の育成強化の3つに着目をいたしまして、具体的な改革方策を検討してまいりました。
 1点目の民間投資導入拡大と柔軟な資産運用でございますが、これにつきましては資料3-2、「要点」というもう一つの紙の資料でございますが、こちらに概要をまとめておりますので、御覧いただけますでしょうか。
 ここでは、産業界、大学・国立研究開発法人のそれぞれから見た産学官連携拡大の阻害要因を分析しております。産業界から見た阻害要因といたしましては、企業にとって大学等の研究内容・技術シーズが見えづらく、またマネジメント体制も不十分であるという点が挙げられております。一方、大学等から見た阻害要因でございますが、産学官連携が組織的なベネフィットにつながっていない、また経営トップのリーダーシップが発揮されていない、大学・国立研究開発法人の資産運用に制限があることなどがございます。
 これらの阻害要因を克服するための改革方策といたしまして、次ページ以降に示してございます。それでは、2ページを御覧ください。初めに、マネジメント改革として挙げられておりますのが、オープンイノベーション機構の整備でございます。産業界からは、特に大型の共同研究を実施する上での問題点といたしまして、企業に対する提案力の不足ですとか、部局横断的なチーム編成などを可能にするための連携の柔軟性の不足、財務管理、知財管理等に関するマネジメント体制の脆弱(ぜいじゃく)さが指摘されております。
 これらの阻害要因に対する改革方策といたしまして、現在検討を進めているオープンイノベーション機構につきましては、1つ目として、事業化や知財管理、営業秘密管理等の専門人材の結集、またあわせて、優れた研究者の部局を超えた機動的な編成、こういったものを集中的に支援することを検討しております。このような要件を満たすオープンイノベーション機構を立ち上げ、運営を文部科学省が5年間集中的に支援し、事業終了時には間接経費、特許料収入等の自主財源を基に、大学等が一定程度の自立的な運営をすることを目指しております。これによりまして、国内外からこれまでにない大型の共同研究を呼び込み、企業との緊密な連携を通じた研究者の意識改革等を進めることを検討しております。
 続きまして、3ページを御覧ください。ここからは制度改革に関する事項でございます。大学等発ベンチャーへの支援でございます。研究成果の社会還元のチャンネルとして、近年重要性が増しておりますが、ベンチャー支援の対価によって効果的に自己財源を目指そうとする際に、制度的な課題が存在します。具体的には、国立大学では自己収入拡大に大きな可能性を持っている株式等の取得できる範囲が現状、寄附・ライセンスの対価のみに限定されております。また、取得した株式については、特段の事情がない限りは、換金可能になり次第直ちに売却するということが求められておりまして、自己収入の最大化が見込めないような状況になってございます。
 こうした課題に対する改革方策といたしまして、平成29年度内を目指しておりますが、株式等の取得・保有期間に関する通知を発出することを検討しております。具体的には、国立大学がベンチャー等から株式等を対価として取得できる範囲を、例えば施設の使用料ですとかコンサルティング料などにも拡大するということを検討しております。また、寄附等で取得した株式の保有期間を柔軟化することにより、適切な時期での売却を可能とするということも検討しております。
 続いて、4ページを御覧ください。国立研究開発法人の研究成果の最大化に向けては、その研究成果を活用したベンチャー企業への出資というのは有効な手段の一つとなっております。一方で、現在ベンチャー等に出資できる国立研究開発法人は、法律により、JST、産総研、NEDO、この3法人に限定されております。このうち、金銭出資ができるものはJSTのみとなっております。このため、国立研究開発法人の研究成果を速やかに社会に還元するために、ベンチャー企業等に出資できる国立研究開発法人の範囲の拡充を検討してまいります。これによって、国立研究開発法人の産学官連携機能の強化や、研究開発成果の活用を促進するとともに、事業化に成功したベンチャー企業からの利益還元の拡大を図ることによって、国立研究開発法人の財務基盤の強化を後押しすることができます。
 次に、5ページを御覧ください。国立大学・国立研究開発法人におきましては、安定的な業務運営が求められる法人が投資リスクを回避するという趣旨から、資産運用についての制限がございます。具体的には、国立大学は一定の元本保証のない金融商品を運用することは現在可能ですが、その原資は寄附金等に限定されてございます。また、国立研究開発法人については、国立大学と同様のこのような措置が認められておりません。
 このような課題への改革方策としましては、国立大学における元本保証のない金融商品の運用を行うに当たっての原資の範囲を、産学連携による特許料収入や財産貸付料収入等に拡大する措置を、省令改正によって対応することを検討してまいります。また、国立研究開発法人についても、その実態を踏まえつつ、精査した上で、不動産の貸付けですとか、自己収入の運用に関して、国立大学と同様の措置の必要性を検討してまいります。
 ここで、再度資料3-1の構成の方に戻っていただければと思います。ここまでは、第3章1の民間投資導入拡大と柔軟な資産運用についての御説明をいたしましたが、続いての検討項目として、2の事業化の観点からの研究成果の質的向上についてでございます。将来の産業構造の変革を見越した中長期的な産業競争力の維持発展のために、国の研究開発ファンディングにおいて、克服すべき課題、そして将来ビジョンの共有が産学官の中で行われ、それを起点とした事業内容やマネジメント体制の設計が必要でございますが、現状ではそのような取組が十分に行われていないという御指摘がございます。また、基礎研究と成果展開との連携、とりわけベンチャー創出企業との共同開発へつなぎ込むための支援の重要性についても強く認識されてございます。
 他方、知財の取扱いにつきまして、オープンイノベーションにおける大学等の役割を一層高度なものにするためには、大学等の知財が将来の幅広い活用の可能性を見据えて行われるように、企業と緻密に契約交渉が行われることが必要となっておりますが、これまで共同研究が創出される知財に関しまして、取りあえず共同出願・共有特許とされるケースが多く、実際にその事業化につながっているか不透明であるというような御指摘がございました。このような事態に対処するための適切な共同研究の成果の取扱いが大きな課題となっております。
 こうした課題に対応する施策としまして、一つは、国が主導して、継続的に将来の投資を誘発するような社会経済のニーズを踏まえたファンディングを行うことによって、非連続イノベーションを効率的に創出するシステムを確立するということを考えております。具体的には、大学等の成果を将来のイノベーション創出につなげる機能、要するにJSTのファンディングについて、産学官による将来ビジョン設定の場の設置ですとか、段階に応じたマネジメント、ベンチャー立ち上げ支援等の改革を行いつつ、基礎研究から実用化まで一貫して支援するための検討を進めております。あわせて、投資家・企業等の投資意欲を高めるために、研究成果の概念実証促進を含めた関係プログラムの充実を図ることとしております。
 また、共同研究による知財の機動的活用、死蔵回避のためのモデルケースの構築につきましても、共同研究成果を大学又は民間企業の単独帰属とする選択肢なども含めた複数の契約書モデルの中から、研究への寄与度や技術の成熟度合いに応じて適切なモデルを選択できるようなツールを提供するということを考えております。
 続いて、3のイノベーション人材の育成の強化でございます。現状の課題といたしまして、産学共同研究における学生の関わりが依然弱く、産学共同研究を通じた人材育成、特に博士課程の学生でございますが、これが十分になされていない。また依然として起業に挑戦する人材、中でも世界市場を見据えた新事業展開を担う人材の増加が求められておりますが、国際的な事業化展開のノウハウを持ったメンターの不足など、人材育成の体制が脆弱(ぜいじゃく)といった課題が挙げられております。
 こうした課題に対応する改革方策といたしまして、1つは、非競争領域の研究コンソーシアムの形成を支援する事業により整備した共同研究の体制を、卓越大学院プログラムをはじめとする博士課程の教育へ活用することを奨励することを検討してございます。
 もう1点は、民間団体・企業と我が国の起業家育成の中核大学との協力によって、起業を志す学生・若手研究者に対して、海外の大学等での武者修行を行いまして、その後の起業挑戦まで一貫して支援する体制を構築するということを考えております。
 このほか、報告書におきましては、産業界と大学等のクロスアポイントメント制度の活用・拡大ですとか、ベンチャー経営者候補の人材プールの形成、また国立研究開発法人によるベンチャーの技術の活用促進といった点についても言及してございます。
 以上がオープンイノベーション共創会議における報告書の概要でございます。
 なお、この報告書の内容につきましては、未来投資会議等にも報告したところでございますが、今後、大学等の本部、研究現場、産業界をはじめとする各方面から意見を随時聴取いたしまして、さらなる検討を経まして、平成30年度の概算要求ですとか、制度改正に適切に反映して、改革方策を実行してまいることとしております。先生方には、是非御意見を賜れればと存じます。
 以上で説明を終わります。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 それでは、ただいまの説明について、御意見等ございましたらお願いいたします。どうぞ。

【小縣委員】  御説明ありがとうございました。私どもが思っていることと一致しているところもありますし、いろいろな課題が出されていると思います。全て大事だと思いますが、恐らくこういったいくつか提起されている課題は、すべて連関性があると思います。ですから、全体の中で連関性を考えていくことがとても大事だと思いました。
 私どものような業態の企業でも、オープンイノベーションというのは、もう当然のことであり、以前、科学技術・学術政策研究所の方から日本企業全体のデータをご説明いただいたときは、オープンイノベーションを余りやっていない企業が多いということに驚きました。ただ、少なくとも私どものような会社でも、ここ5年はオープンイノベーションをしていかないと、産業自体が衰退するという意識を持って臨んでいます。ですから、ニーズは絶対的にありますので、今日の課題は是非一つでも二つでも解決して欲しいと思います。その際、連関性がそれぞれありますので、一つだけ解決しても根っこが他のところで残ると、全部の課題は解決できないと思います。
 それから資料3-1の上の真ん中にある国内大学との案件ですが、私どもはどちらかというとすごくやっています。ただ、この右側に出ていますように、もっとウイン・ウインの関係にしていかなければいけないと思っています。
 そして、我々がオープンイノベーションをどことやっているかというと、結構、海外の大学、それから海外の同業者とやっています。更に言えば、近年はシリコンバレーのような海外のベンダーと直接やっているわけです。成果があるかないかと言えば、成果はあります。なぜならば、短期ではなく、中期的・長期的な視野で、しかも現実的に中期的にお付き合いして成果を出していくからです。
 ですから、資料3-1の2.1.に書かれている金額が結果的に低いというのも、究極的には、ビジョンをどこまで共有してどのぐらいの期間でやっていくのかとか、それから成果が現実にどれだけ出るのか、というところに起因すると思います。
 2.1.の表の「国内大学との共同研究の個別契約額」は、確かに大事だと思います。しかし、課題を設定して結果が出ると1期、2期と続く場合もありますが、課題の答えが出てくればそこでおしまいという部分もあるので、そういうところをどうしていくかという問題ではないかと思います。現実に我々は海外と中期的・長期的にやって、しかもプラクティカルな結果がちゃんと出ているという事例が結構ございます。ニーズとしては、我々も国内大学とそれを是非どんどんやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 日本の大学はどこに問題がありますか。海外の大学と比較したときに、ここを変えなければいけないというようなところを具体的に感じるところはございますか。

【小縣委員】  例えば、海外ですと、私どもと一緒にやりましょうとなると、まずニーズは固定されません。いろいろなニーズが時間軸とともに変化するのに合わせて、学内で学際的に組織を作ってくれます。プロジェクトチームを作ってくれて、どこの学部ということだけではなく、我々のニーズに合わせてチーム編成していただいて、その課題をまず解決しましょうということになります。そして、そのときに成果が出なければ、なぜ成果が出なかったかということを明らかにして、次のチームに移行していきます。例えば3年間でこの課題を終わりにしましょうみたいに、始まったときから3年間で終わりになるというようなことではありません。ある程度中長期的に、私どもが持っているニーズとか課題とか問題点を解決する、解決型というか、そういうことであります。もちろん、専任の教授も置いてもらうので、それぞれ専門チームはいますけど、窓口となる教授自体が本当にしっかりしていて、こちらのニーズを常に考えてくれているというところがあります。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 どうぞ、栗原先生。

【栗原(美)委員】  現在の計画には、一部構想かもしれませんが、大変重要ないろいろなポイントが織り込まれていると思います。その中で、大学、国立研究開発法人と、もう一方の企業をどう繋げていくかが大変重要だと思います。大学や国立研究開発法人の問題だけでなく、企業側にも多々問題があると思いますので、大学や国立研究開発法人がこれだけ努力しますとか、こういう制度改革をしますということも重要ですが、企業側もより積極的に取り組んで頂きたい。例えば、先ほどありましたように海外の大学に研究費を出したり、海外のベンチャー企業に投資していますが、日本の大学、日本のベンチャーにも投資対象はあるはずで、企業側の問題として、R&Dの部署だけでなく、経営戦略として、日本にある技術やリソースに目を向けるアライアンスの部署などが、意識して取り組んで頂きたいと思います。
 それがある上で、今回こういう改革をする際に、人とお金がどう流れるかということがとても重要です。ここで書かれていることは、良い意味でふだん発想していることと逆のことを言っているのではないかと思いますが、何かというと、お金を企業から大学の方にどう寄附するかではなく、大学や国立研究開発法人がいかに事業化に出資できるかという逆の発想です。自分たちが持っている研究シーズをどのように次のプロセスに繋げていくかという視点を持つことは重要で、出資の形態によって成果を見ていくことも1つの有用な方法だと思います。
 それから、人材についても、先ほど研究者が民間企業に就職できないということがありましたが、お互いにミスマッチがあるのではないでしょうか。その場合、無理に企業組織に就職させるのではなく、研究所や大学の中にいながら活かせる道も必要ではないかと思います。民間企業でも、自社ではできない研究とか人材というのを大学や国立研究開発法人の施設や人材を活用して、あるいはそこに人を派遣して研究するということも必要ではないかと思います。その際に、是非企業側から大学や国立研究開発法人だけでなく、中間を結ぶベンチャー企業も活用し大学と民間から人と資金がジョイントできるような仕組みを考えていただけると大変良いかと思います。
 企業は、今ベンチャーに大変関心があります。ようやく日本でもその動きが活発になってきましたので、今こそ、大学や国立研究開発法人と企業の間にベンチャー企業が存在し、そこで事業化がトライされる、繋がっていくという仕組みができる良い環境になったと思います。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 五神先生、お願いします。

【五神委員】  このまとめは非常に包括的で、現在の状況を良い形で示していただいていると思います。特に今の栗原委員のご意見にもありましたように、ポイントは、大学あるいは研究所が、民間企業にとって投資の対象になるようなものをどう用意していくのかということです。そのために、例えばマネジメントあるいは法務的な契約を適切に行える体制を整備するようなことが必要で、そこに補助金等による国からの支援があれば効果的だと思います。
 現在、具体的な施策として提案されているのは、オープンイノベーション機構整備のための補助金事業のようなイメージだと思いますが、そのために用意できる金額は、現在の財政状況に鑑みれば多くはありません。しかし大事な公的資金ですので、呼び水として何十倍もの効果がでるように、効果的に使う仕組みが必要です。それはアピール力のある、いろいろなパターンのグッドプラクティスを、それを見た人たちが自分たちにもできると思うような形で作っていくのが良いはずです。
 そのために一番大事なことは、このような事業を具体化するときに、多様な場面に応じた創意工夫を可能とすることです。例えば、地方であれば地方銀行や地方自治体の長などとの連携なども大事でしょう。多様な取組みを認めるようなフレキシブルな事業にしなければ、いくら資金を投入しても十分な効果が得られません。フレキシブルでないために、余分なマネジメントコストがかかってしまっては、スピーディーな改革が行えません。良いプランだと思うので、フレキシビリティーを担保することと、公平・公正な補助金運用との両立について、まさに行政のプロとして力量を発揮していただきたいと思います。

【濵口会長】  ありがとうございます。ほか、いかがでしょうか。どうぞ。

【辻委員】  大変うまくおまとめいただいているのではないかと思います。私は通信関係の研究所におりまして、その中でオープンイノベーションということも随分進めているところです。その中で感じておりますのが、国内の大学さんといろいろ一緒にやらせていただくときには、割と技術に特化した形で、この技術であれば、この先生のところと組んでやりましょうという形が多いです。一方で、もっとビジネスに近いところですとか、もう少し大きなプロジェクトをやろうというときには、大学さんというよりは、ベンチャーやいろいろな異業種の会社さんとやることが多々ございます。そのときの違いが何だろうというところですが、やはり専門に特化した形でいろいろお考えになっている方が、国内の大学さんと話をさせていただいている中では多いのかなというところを強く感じております。通信ですと、特に昨今は異業種連携をしていかないと、どんどん通信を使って新しいビジネス創出というところを狙っておりますので、そうしたときに専門プラスアルファ、少し御自分の専門から一歩出たぐらいのところまでを含めて見ていただけるような形の教育であったり視点であったりといったところがあると、大変有り難いのかなと思いました。
 それともう1点は、例えばオープンイノベーション機構等を御提案いただいているわけですが、そのときに、そこでいわゆるコーディネートをしていただくプレーヤーにつきましては、研究力・技術力のある方、かつやはりマネジメント力がある方というのが必要になってきます。例えば我々企業のところで何かプロジェクトをやりましょうというときに、実際、そのコーディネートをしている人間の中にはドクター出身者もおります。ですので、必ずしもドクターイコールその専門に特化したというよりは、専門プラスアルファ、T字型の人材といいましょうか、そういうところの人材育成も必要になってくるのではないかなという気がいたしました。
 以上でございます。

【濵口会長】  ありがとうございます。本当にポイントを突いた指摘です。どうぞ。

【岸本委員】  1点だけですが、大学の経営努力をということが書かれている中で、大学の方で資金運用をしようとしたときに、年度ごとの会計をきちんとしなければいけないというのが非常に支障になっていまして、間接経費にしても何にしても、年度を超えて資金を蓄えた上でまた投資するというような仕組みを作っていかないと、大学としてはいろいろなことが動けないのではないかと思います。大学の会計をもっと柔軟にできるようなことを導入していっていただきたいなと思います。

【濵口会長】  ありがとうございます。松本先生、どうぞ。

【松本委員】  いろいろな取組を進めていただきまして、大変うれしく思っております。私は今現在、国立研究開発法人の立場でお話を聞かせていただいています。国立大学も国立研究開発法人も産学連携を進めてまいりましたが、なかなか大規模になりません。ですから、こういう取組を始めていただいて、とりわけ今回、資料3-2の4ページにありますように、ベンチャーへの出資、技術移転機関等への出資ができるようにという工夫をしていただいたことは、大変力強いと思っています。これは、国立研究開発法人とか国立大学というのは国立系ですので、どうしても公務員的な体質があります。研究が主体でございますので、各研究者の思いも完全に一本化できない。そういう意味で、この外側に産業界とつなぐような子会社みたいなものを作っていかないといけないと強く感じておりますので、こういう法整備を進めていただきますと、大変有り難いと思っています。

【濵口会長】  庄田委員、お願いします。

【庄田会長代理】  大学・国立研究開発法人の、特にベンチャーへの出資について制度改革のお話がありましたが、関連してコメント致します。資料3-3「オープンイノベーションの本格的駆動に向けて」に日本の大学発ベンチャーの5つの事例が載っております。一番大きなベンチャーの場合には、時価総額で3,000億円ですので、仮に、このベンチャーに大学が10%出資をしているとすると、株式価値は300億円になります。上場企業ですので、株価の上下により、年度によっては評価益が出たり、評価損が出たりします。企業会計ではこれに対処していますが、大学法人会計の中でどう扱うのかというのが一つです。
 それから、ここに出ている5つのベンチャーはまだ配当を出していないと思いますが、出資の見返りの一つは配当であり、一つは株価が上昇して売却益を上げることです。その観点でいくと、出資をしたからすぐに自己財源創出に結び付くというように余り短絡的にならずに、時間軸をしっかり捉えないといけないのではないかと思います。
 逆にライセンスに関しては、いわゆる知財を譲渡し、一時金としてライセンス収入を得るケースが多いように思います。しかしながら、最終的には、社会実装されて、その実施権料を継続的に得るというのが、本来の自己財源創出であろうと思います。大村智先生の講演によると、大学の中で、職務発明の発明者と大学側の取り分がしっかり決められていて、大学にもライセンス料が継続的に入ってきているとのことです。社会実装によるライセンスを通じた自己財源創出が非常に重要で、現状は一時的な譲渡が多いのではないかということが二つ目です。

【濵口会長】  ありがとうございました。JSTは実際にこういうことをやっていて、実情としては、やはり収益が上がるまでに10年はかかる。その間赤字を耐えていかなければいけない状況があります。だから、案外単純ではないです、確かに。それから、配当はなかなか出てこない現実がございます。特にベンチャーの系統は、売り抜ければいいですが、そこら辺の問題は、五神先生、東京大学はかなり成功していると思いますが。

【五神委員】  今の庄田委員の指摘は極めて重要です。ベンチャー企業の株価の評価額はいわゆる期待値です。大学や国立研究開発法人は、長期的な目標を担うところなので、ベンチャー企業の株価について参照する場合には、双方の役割を見極めた上で利用する必要があります。
 特許取得についても、庄田委員ご指摘は重要です。大学も国立研究開発法人も、安定的なフロー財源が足りない状況の中で、その時々で財源確保に動く傾向があるので、長期的な視点で適切な制度設計を行うことが必要だと思います。
 法人会計についてもご指摘がありましたが、法律が改正されて裁量が拡大した中では、管理会計的な要素を加えるような形で会計状況をチェックする仕組みに変える必要があります。資金を運用するところが責任を持ってチェックする体制を整えなければいけないという観点を含めて、東京大学では改革を進めているところです。
 以上です。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 かなり議論が深まってまいりましたが、ポイントはやはり、会計に関しても、このシステムの中で専門的な人材をいかに導入するか。それから、全体のコーディネーターとして、実践力、マネジメント能力のある人材をどう採ってくるか。正直なところ、大学の先生というのは社会体験がないので、専門については強いですが、マネジメント、いわゆる実社会で通じるようなプロジェクトをどう動かすかというのは、一般的には弱いと思います。そういう人材をどう育成するかという、結局これは人材育成がコアの課題になってくるようなことを少し感じております。
 引き続き分析していただいて、議論を進めさせていただければと思いますので、よろしくお願いします。次の議題に移らせていただきたいと思います。
 議題4「科学技術・学術協力強化に向けた国際展開」について、お諮りします。事務局から説明をお願いします。

【山田科学技術・学術戦略官(国際担当)付企画官】  科学技術・学術戦略官(国際担当)付の山田といいます。私の方から、資料4-1で説明させていただきます。
 第8期国際戦略委員会ということで、昨年10月から1月まで計4回、この委員会を開催いたしました。この中で科学技術・学術協力強化に向けた国際展開について取りまとめておりますので、本日はその概要を説明いたします。
 最初の「はじめに」のところにありますが、科学技術・学術力強化というのは日本にとってとても重要であり不可欠であるというのがあります。その上で、今回、科学技術イノベーションの国際展開を進めるに当たって、国際化自体が目的というわけではなくて、科学技術・学術力強化のために必要な方策のうち、この国際的展開に関するもの、国際化というのをどのように行えばいいかという観点で検討を行っております。
 まず現状の課題というところですが、これも今日のいろいろなお話の中でも出てきたところもあると思いますが、まず一つ、研究者の流動性が不足しているのではないかというところが言われております。実際に、国際ネットワークから取り残されているのではないかというようなお話も出てきております。
 もう一つのポイントが、我が国の国際的な地位の低下というところで、こちらについては、トップ10%論文、これもよく見る数字になっていると思いますが、国際シェアが年々低下しているということが挙げられます。
 その下のIII番のところで原因というところがありますが、一つ、流動性不足の原因というところに関しましては、特に若手研究者の帰国後のポスト確保の懸念や海外へ挑戦する機会が不足しているのではないかということが言われております。もう一つ、中国、インド等、成長激しい新興国が出てきて、そういうところにおいて、特に欧米におけるポストの獲得競争が激化しているのではないかということが言われています。
 今ここで少し話した流動性不足の原因のマル1のところですが、ポスト確保の懸念や海外挑戦の機会の不足については、この委員会の中でもいろいろと話はありましたが、事務局としましても、もう少しエビデンスベースでしっかりと議論していかないといけないというのがありますので、こちらについては引き続き実際の数値等をもう少し精査して進めるようにしたいと思っています。
 もう一つの方の国際的な地位の低下の原因というところで、これも本日既にもうお話に出てきているところがありますが、国際共著論文数が伸び悩んでいるというのが挙げられます。特に海外の先進国、イギリスやドイツは大きく伸びているにもかかわらず、日本は国際共著論文数が伸び悩んでいるというのが実際の数値として表れております。
 こういうことから、特に必要な対応というところで、「国際研究ネットワークの重要な一角をなす」ということのために、国際共著論文数をどう伸ばすかというところ、あとは海外の研究機関等と日本人の研究者の派遣・受入れ、そういうのをどう伸ばすかというところが重要なところになってくるということを話しております。
 実際に、2ページ目になりますが、具体的な方策、主な取組というところで、今後どうするかというところで3つ出しております。
 一つが、研究の国際化というところになります。今も国際共同研究のプログラムというのは何本か走っているところではありますが、実際にその予算等も考えると、それだけでは不足するのではないかというのもありまして、他のいろいろなプログラムに関しても、研究者のマインドを変えるという観点からも、必要なものにおいては国際共同研究ができるような仕組みを取り込む必要があるのではないかというところを議論しておりました。
 もう一つ、2つ目のところですが、国際共同研究を行う若手研究者等の育成。特に今後のことを見据えた上では、若手研究者を育成するのが重要というところがあります。先ほどもお話に出てきましたが、博士課程の学生ですとか、ポスドクも含めた若手研究者をどのように国際共同研究を行う機会に取り込んでいくかということがとても重要になってくるということがあります。こちらも今回のこの委員会の中でもお話がいろいろと出てきましたが、実際に若手研究者を積極的に海外に派遣して、国際的な経験を得るというところは、研究者にとっても重要なものというのがありますので、こういうものに関しては、引き続き推進していくように取り組んでいきたいと考えております。
 それ以外に、他にもいろいろプログラムがある中で、例えば、ここに記載していないところもありますが、若手枠を創設するとか、そういうことに関してもいろいろとできるのではないかというところで、これは2国間のプログラムにおいては相手の国のこともありますので、相手国とも話し合いながら、そういう必要において若手を優先する、若しくは若手を対象としたプログラムに位置付けようということで、話合いは引き続きやっているところです。
 3番目、その他のところになりますが、こちらの方は、最初の研究の国際化と若手研究者の育成というもの以外ということでまとめております。丸が3つある中の1つ目のところですが、「国際共同研究の更なる進展に資するため」というところで、このLead Agency Modelの導入を検討するというのがあります。実際に、ファンディングエージェンシー間では、このようなLead Agency Modelということを既に導入しているところもありますし、更に導入していこうということを考えています。これは実際にどういうことをやるかといいますと、先方のファンディングエージェンシーと日本のファンディングエージェンシーが話し合って、どちらかがリードするということになります。簡単に話をしてしまいますと、例えば日本とイギリスが共同研究しますという場合に、では日本側の方で全ての審査等を行いますという例もありますし、その逆の場合もあると。もちろんメリット、デメリットも出てくるところはあるとは思いますが、片方がリードするということによって審査が速くなるということもありますし、お互いにそれぞればらばらで行っていた審査の委員会を一つにまとめることにより完結されることもあります。日本と海外の評価者が一緒になるということもあって、どのような評価の仕方をしているかということ、実際の評価のやり方も分かってくる。今も海外の評価者を入れているところはあると思いますが、そういう機会をより増やすことによって、その審査に関するスキル等も上げることもできるのではないかということも副次的な効果として考えているところです。
 このような1、2、3の主な取組がある中で、今後の課題というところになります。1番は、国際化をする上でいろいろ原因になっているところがありますが、先ほども申し上げたように、ポストが足りなくて、日本人の研究者が内向き志向だと言われているところ。ただ、この委員会の中では、そこまで細かい分析はできていないというところがありました。実際にエビデンスベーストで、例えば分野ごとですとか、年齢別ということも考えて、いろいろな、もう少し詳細な分析をした上で現状の要因分析を進めて、更に見直し等を進めていきたいと考えております。
 それ以外にも、先ほども申し上げましたように、予算とか人材等は限られていますので、国際研究ネットワークの形成・強化による政策効果を最大限高めるように、まずは目標や期限を設定して、リソースの選択と集中を行うことが必要ということを考えております。
 それ以外にもいろいろあって、先進国、新興国等、それぞれの国によって、どういう分野でどういう組み方をしたらいいかということがあるかと思います。そういういわゆる国別の戦略というのが、今は少し欠けているところがありますので、そちらのところに関してもより詰めて、国別戦略というのを設定する必要があると考えております。
 最後ですが、今SDGsとかオープンイノベーション等の国際的な潮流というところの議論に積極的に加わっていくことによって、科学技術における国際的な存在感を高めていくということを考えております。
 今回はこのような委員会を開きましたが、この後、本日は報告できないところがありますが、水落副大臣の下でこの国際化に関するタスクフォースというものを開いております。今、最終報告書を取りまとめ中です。そういうものも踏まえて、また今年度も国際戦略委員会を開催することも考えていますが、国際戦略をどうするべきか、ということは、引き続きいろいろ議論して、施策等に反映していきたいと考えております。
 以上になります。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 ただいまの報告に御意見がございましたらお願いいたします。大垣先生。

【大垣委員】  大垣でございます。大変よくまとまっていると思いますが、1ページ目の悲観論は方々で出てくるので、悲観論ではなくて、2ページ目に書いてある、今後の展開の日本の強みを出すべきであろうという意味で1つコメントをさせていただきたいと思います。2ページ目の最後、今後の課題の4つ目の◎に、SDGsやオープンイノベーション等の国際的な潮流にある議論に積極的に加わり、最後の方で、科学技術における国際的存在感を高めていく必要があるとあります。正にそのとおりでありまして、その具体的な例を申し上げると、例えば、地球環境問題あるいは地球全体の観測データの問題等は、日本は非常に強くて、かつ政治的にもいろいろな意味で中立的な立場にあるので、国際的な取扱いといいますか、積極的に諸外国に働き掛けることがやりやすい立場ではないかと思います。そういう意味で、是非日本のこの強みを、大きな科学技術国際政策として打ち出す仕掛けを文科省が大学や各省庁あるいは民間企業、それから、これが重要ですが、諸外国の研究機関あるいはSDGsに関わる機関等を巻き込んで、データをお互いに公開しながら国際的な環境政策を進めていくというような形もあるので、是非そういう積極的な展開も図っていただければと思います。

【濵口会長】  ありがとうございます。甲斐先生、どうぞ。

【甲斐委員】  大変よくまとめていただきまして、ありがとうございます。最初の「はじめに」のところに書いてありましたように、「国際化自体を目的とすることなく、科学技術・学術力強化のために必要となる方策のうち、国際的展開に関するもの」というふうに最初に入れていただいたのは、大変重要だと思います。ありがとうございます。
 そこで、現状の課題はよく耳にしていますが、その原因の1つが、研究者の流動性不足。これは直近の原因であります。その前に、例えば現状の課題2の国際的な地位の低下。これは、実際には論文数などは少しずつ増えているのですが、諸外国の伸びに比べて日本がそうでもないからシェアとして減っているというのが本当でありますので、それが何故かというところを最初に書いていただきたいなと思います。中国が圧倒的に伸びているのは、科学に対する投資力が全然違います。欧州の日本と似たような先進国にも少しずつ抜かれていますが、科学研究費への国家としての投資額がやはり日本の2倍、3倍であることをどこかに書いていただきたいと思います。日本の研究者が頑張っていないみたいに書かれますが、この科学予算および環境の中では頑張っていると私は感じています。表面的なトップ10%論文のシェアは確かに落ちていますが、きちんと投資すれば日本の競争力は高いと考えております。
 次に、2ページ目にいろいろな方策を書いていただいて、直近の課題の解決方法としては、一つ一つ良い方策かなと思いますし、是非進めてほしいと思います。ただ、若い人を送るとか、若い人たちを呼ぶとかという方策だけではなくて、既にある国際共同研究強化についても加えていただければと思います。現実に、今や日本には国際共同研究をしているシニアの研究者はたくさんいます。それに対する特別なファンドがないというのが問題です。科研費にほんのわずかにありますが、それでは全く大きな展開ができない。国際的展開のための新たな方策をというと、すぐ若い人を送るためのとか、若い人を呼ぶための、若い人のポストのということになりますが、それでは重要なことが抜けていると感じられます。現実に動いている多国間の共同研究を育てられるような新たな国際共同研究強化とか、何か1つ2つ考えていただけたら有り難いと思います。
 現実に私も、国際的な共同研究を幾つか持ち掛けられて、走っていますが、それぞれの国ではそれぞれに特化してファンドを得ようと思うと、何かあります。でも、日本にはない。特に個人研究から発したボトムアップ型研究で海外共同研究のための経費を継続して得ることは極めて難しいです。日本はただ単に若い人達を先進国に送って学ぶ段階ではなく、先進諸国と対等に国際共同研究を推進している状態にあるのですが、その状況にグラント制度が合っていないなと思うことが多々あります。そういうことの記載がどこにもなかったので、そういうことも考慮して加えていただけると、より良い方策となるかなと思いました。ありがとうございます。

【濵口会長】  ありがとうございます。そのとおりかなと思います。春日先生。

【春日委員】  ありがとうございます。私の方からは、日本が国際研究プログラムの大枠をきちんと支援しているということもお伝えしたいと思います。International Council for Science、国際科学会議、ICSUというふうに略して言っていますけれども、こちらには各国のアカデミーや、それから分野別のユニオンがメンバーとして加わっているわけですが、ICSU全体に対しても、それからユニオンに対しても、またICSUが主として母体となっている幾つかのプログラムに対しても、日本は全体としてアメリカに次ぐ2位の拠出をしております。それに加えて、私が事務局の方で手伝っておりますフューチャーアースに関しては、文部科学省からナショナル・コントリビューションということで拠出していただいています。そういうことが実際に具体的な一つ一つの国際共同プロジェクトを回す上での基盤となっているということは、一つ認識した方がいいと思います。
 もう一つは提案ですが、ヨーロッパにはEUとしてのまとまった研究ファンドの仕組みがあります。それに対してアジアは、まだアジアとしてまとまったファンディングのスキームがありません。今年の10月にICSUの総会を機にJSTの方も参加されて、アジアの研究助成機関がRegional Information Dayということで一堂に会する機会があります。是非そういうことを機会に、日本がリーダーシップをとって、アジアとしてのまとまった研究助成の仕組みを提案していただけると、リージョンとしての将来的な研究の振興に役立つのではないかと思い、御提案申し上げます。

【濵口会長】  ありがとうございます。安西先生、どうぞ。

【安西委員】  一般論としては、国際共著論文数のシェアの伸び悩みといった課題があるのはそのとおりですが、例えば、日本学術振興会の海外特別研究員については、国際共著論文の割合やトップ10%論文の割合は非常に高くなっています。このように、多少きめ細かく、どのような事例が成功していて、どのようなところがなかなかうまくいっていないのかということは是非把握していただきたいと思います。現在、海外特別研究員の絶対数が減少しておりますが、それは、先ほどご発言があったように、科学技術予算全体の問題や、運営費交付金が減ってきているといったいろいろな背景があります。研究費につきましても、科研費において国際共同研究の支援を始めております。やはり独創的で自由な発想を基に研究をしていくということが一番基本にあって、その上で国際共同研究のプラットフォームの上で活躍していくということが大事でありますので、その点は是非申し上げておきたい。誤解のないようにお願いしたいと思っております。

【濵口会長】  ありがとうございます。栗原先生。

【栗原(和)委員】  ここで出ていない視点で、もちろん国際共同研究は日本の優れた研究の国際的なプレゼンスを増やすという意味で非常に大事ですが、あともう一つ、国内の研究の多様性が少ないと言われている中で、共同研究によって、より幅の広い研究テーマに取り組めるとか、あるいは少し小さなグループがより強固な基盤を持って研究を続けられるとか、国際的にもっと強く出ていけるとか、そういうこともあると思いますので、その多様性という視点も是非大事にしていただけたらと思います。

【濵口会長】  ありがとうございます。いろいろ貴重な点を御指摘いただきましたので、よろしくお願いします。
 それでは続きまして、議題5に移りたいと思います。「最近の科学技術・学術の動向について」でございます。「科学技術・学術政策をめぐる最近の動向」について事務局から説明をお願いします。

【勝野科学技術・学術総括官】  科学技術・学術総括官の勝野でございます。資料5-1を御覧いただきたいと思います。本年3月以降の科学技術・学術政策をめぐる政府の中での議論を中心に御紹介させていただきます。
 まず1つ目でございますが、総合科学技術・イノベーション会議における議論の動向でございます。大きく2つ、次年度以降に向けての方針というものが決定されております。
 1つは、「Society5.0の推進と政府研究開発投資目標の達成に向けて」という決定が4月21日に行われました。これは、現在、第5期科学技術基本計画の2年目ということになりますが、これまで第2期から第4期まで政府研究開発投資目標が達成できていないという現状を踏まえまして、第5期におきましては、政府研究開発投資目標であります対GDP比1%の達成に向けた具体的な道筋を決めたというものでございます。これによりまして、今後残り3年間で科学技術関係の当初予算を飛躍的に増額していくという方針でございます。
 具体的には、そこに記載いたしましたように、30年度の概算要求に向けては、各府省に対して科学技術イノベーション事業の積極的な検討を要請するということ。これは、新規の事業だけではなくて、記載のように、既存の事業に科学技術イノベーションの要素を新たに導入することにより、科学技術イノベーション転換というように言っておりますが、こういう形での事業の見直しも積極的に求めるということが一つでございます。
 こういう形で各省の検討を踏まえまして、総合科学技術・イノベーション会議の方において、科学技術イノベーションに資することが見込まれるものを特定し、この特定された事業については、予算編成過程において重点が置かれるよう財務省とも連携するという方針がここで決定されたところでございます。
 この21日の会議におきましては、こうした政府の方針を踏まえて、産業界からも、この決定を歓迎するとともに、民間におかれても研究開発投資の対GDP比3%を目指すという意見が表明されたところでございまして、これにより官民合わせて対GDP比4%の達成をこの期間中に目指すという方向が確認されたところでございます。
 2つ目が、官民研究開発投資拡大プログラム、PRISMというふうに通称で言っておりますが、これを創設することと、30年度におけるそのターゲット領域というものが決定されたというものでございます。
 このPRISMにつきましては、経済財政諮問会議と総合科学技術・イノベーション会議の下に経済社会・科学技術イノベーション活性化委員会という委員会が設置されまして、昨年12月に「科学技術イノベーション官民投資拡大イニシアティブ」という報告を取りまとめました。この報告の中において、特に民間の投資誘発効果の高いターゲット領域というものを設定しまして、その領域に関わる研究開発プロジェクトを各省が企画立案し、総合科学技術・イノベーション会議と産業界がその中から選定した事業については、各省の予算にプラスして、総合科学技術・イノベーション会議からも事業推進費を投資する。それによりまして民間における研究開発を促進していこうというのが、このプログラムの特徴でございます。
 この新しいPRISMの創設を踏まえまして、4月21日に、当面、30年度には以下の記載のような3つの領域についてターゲット領域が設定されたところでございます。革新的サイバー空間、革新的フィジカル空間、建設・インフラ、防災・減災、この3つの領域について決定されましたので、今後、各省におきましてこの領域に関わる研究開発プロジェクトの検討が行われていくということになろうかと思います。
 こういった決定を踏まえまして、(3)にありますように、科学技術イノベーション予算戦略会議という、担当大臣を座長とする政府内の会議におきまして、5月に担当大臣から各省への積極的な検討の要請が行われた後、先日、7月に各省におけるこのイノベーション転換とPRISMの対象施策候補についてのヒアリングが行われました。今後、8月の概算要求を踏まえまして、9月に改めてこの予算戦略会議での意見聴取が行われるという予定になっております。以上がまず1つ目でございます。
 それから、2つ目になりますが、次年度に向けての概算要求に関わる動きでございます。まず1つは、「経済財政運営と改革の基本方針2017」、いわゆる骨太の方針でございますが、6月9日に閣議決定されております。今申し上げましたような総合科学技術・イノベーション会議における決定なども踏まえまして、今回の骨太の方針におきましては、「イノベーションの推進」という項目の中で記載のように、政府研究開発投資について、「経済・財政再生計画」との整合性を確保しつつ、対GDP比1%にすることを目指し所要の規模の予算を確保するということ、また、Society5.0の実現に向けた研究開発投資の促進ですとか、人材投資あるいは研究開発投資を強化するといったような記載が盛り込まれたところでございます。同様の記載については、同じ日に閣議決定をされました未来投資戦略2017にも盛り込まれたところでございます。
 その後、先日でございますが、「平成30年度予算の概算要求に当たっての基本的方針」が閣議了解をされております。各省の概算要求に当たっての基準になる基本方針でございますが、その中におきましても、予算編成過程において、民間需要や科学技術イノベーションなどの誘発効果が高いものを重視するという記載が昨年度に引き続き盛り込まれたところでございまして、今後、こういった政府全体の方針を踏まえまして、文部科学省としても、必要な施策の検討、概算要求等を行っていく予定でございます。
 以上でございます。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 それでは続きまして、「科学技術・学術政策研究所からの報告」を科学技術・学術政策研究所所長からお願いいたします。

【加藤科学技術・学術政策研究所長】  ありがとうございます。加藤でございます。それでは、お手元の資料6-1と6-2につきまして、最近の当研究所の成果2件について御説明したいと思います。
 まず資料6-1ですが、科学技術の状況に係る総合的意識調査、通称「定点調査」と呼んでおります定点調査2016です。1ページおめくりいただきますとありますように、これは科学技術基本計画上の重要事項について現場の状況変化を定性的に把握する調査であります。科政研としての調査は、基本計画の第3期からこれを行うことにしたわけでございまして、今回は第5期基本計画に合わせて、当研究所としては第3ラウンドのものを行うということです。
 今回は、回答いただく方々、産学官の第一線の研究者、有識者ですが、この方々の人数を増やすということ、それから質問する事項の中で、2ページの紫色のパートが6つありますが、その中の5番目、「大学改革と機能強化」という新しいパートを追加しています。
 調査対象をどのように増やしたかというのは、3ページ目に詳しくございますが、大学の数を増やしたこと、それから各大学・公的研究機関グループの中では、実際に各機関でマネジメント実務の担当に当たる方、またSIP、ImPACT、COIなどに関わっている大学・公的研究機関側あるいは企業側の責任者に新たに入っていただいたということであります。
 全体で63の毎年同じ質問を毎年同じ集団に対して行って、回答の変化によって現場の状況がどう変わってきているかを見ていくというものであります。そういう意味では今回は最初の調査でありますので、変化ではなくて、最初の状況、いわば発射台がどういう状況かというのを把握するということです。
 それから、今ラウンドで新しく取り入れたやり方として、6ページにありますが、回答の状況を、大学・公的研究機関グループの人、それからイノベーション俯瞰グループの人と、グループ別に表すということに加えて、各グループの中で属性ごとの回答状況の違いというものも見えるようにしているということでございます。
 それでは中身ですが、実は最初の議題の3つの危機を端的に表した状況がそれぞれ出てきておりますので、細かい説明は時間の都合で省略させていただきたいと思いますが、幾つか、こういったグループの違いなどが見えているものがありますので、御紹介したいと思います。14ページを御覧いただきますと、学術研究・基礎研究と研究費マネジメントの状況というのがありますが、ここにございます3つ目のQ305「基礎研究をはじめとする我が国の研究開発の成果はイノベーションに十分につながっているか」については、大学・公的研究機関側とイノベーション俯瞰グループ、民間企業の方が多いですけれども、ここの間で結構開きがあるという、民間企業の方がより不十分であるというように見ているという状況がございます。
 それから、次の16ページもそうです。これもイノベーションに関係したものですが、大学・公的研究機関が十分な取組を行っているかということで3つ聞いております。大学・公的研究機関側は、問題がないですというところに位置しておりますが、イノベーション俯瞰グループ側はもう少し低いところに行っているというような状況であります。
 それから、20ページが大学改革と機能強化の状況です。ここは、まず一つは、やはり大学・公的研究機関のグループとイノベーション俯瞰グループの間での違いというのと、大学・公的研究機関の中での属性による回答傾向の違いというのが見えています。その点について言いますと、学長・機関長などは、よくやれているという傾向の回答が強いわけですが、現場の方は必ずしもそうでもないというように見ているということであります。
 最初に申し上げましたように、今回は発射台の状況を確認したわけでございまして、来年以降、同じ調査対象者に対して引き続き答えていただいて、前の年と比べて変化があったとお答えいただく場合はその理由もお答えいただいて、実際の状況の変化をつぶさに御報告するということになります。
 それから、次が資料6-2でございます。「論文を生み出した研究活動に用いた資金と人的体制」で、「論文実態調査」という通称を付けてございます。これは、科政研としては今回初めて取り組んだものであります。従来、研究の関係ではいわゆるインプット側の指標、研究者の数でありますとか、投入した研究費、それから一方アウトプット側では論文数ですとか被引用回数、そういったものをそれぞれ出してきたわけですが、今回はそれをつなぐ状況を見てみようということで、論文の責任著者を対象にしまして、当該論文を生み出した研究活動の実態、資金源や、その研究を行ったチームの構成を答えていただくという形で行っております。
 3ページにフレームーワークがございますが、トムソン・ロイターのWeb of Scienceの論文データベースを使いまして、2004年から2012年の間に出た論文であって、責任著者の住所が日本であるものをまず抽出しまして、それぞれの論文の責任著者に対してメールを送ってお答えいただくという形にしました。メールを実際に送った件数が約3万件で、実際に到達したのが2万件、そのうち約1万1,000人の方から回答を頂いております。1万1,000件の論文についてのデータが得られたわけであります。責任著者の属性ですとか研究活動の特徴、資金、チームがどうだったかというデータを得まして、それをいろいろな形で集計したものです。
 まず、5ページを御覧いただきますと、どんなお金を使ってその研究を行ったかということですが、内部資金と外部資金との組合せという形が非常に重要になってきています。ここは国公私大学・公的研究機関別に示しておりますが、赤で囲ったところが内部資金と外部資金が財源になっているということです。
 それから、7ページでは、大学を論文シェアで幾つかのグループに分けていますが、それぞれのグループにおいて、やはり内部資金と外部資金を合わせたものが重要であるという状況が見えています。
 それから、次に論文を書いた著者の構成で、これは9ページからでございます。多くの研究活動にジュニア研究者、ここでは学部学生・大学院生、ポストドクターをそう言っていますが、これが参加しているという状況であります。下にグラフがありますが、一番左の青いところがジュニア研究者の参画なしということです。私立大学や公的研究機関は多いですが、国公大学、それから下の各大学グループで見ますと、むしろジュニア研究者が入った様々な組合せの方が多いという状況であります。
 また、10ページを御覧いただきますと、このジュニア研究者の参画状況、特に右側のグラフですが、経時変化を示してございます。どの大学グループにおいてもジュニア研究者の参画した論文割合というのが徐々に増えてきているという状況であります。
 それから、資金源あるいは研究チームの構成と論文のQ値です。Q値というのは、論文全体のうち被引用数トップ10%が占める割合、いわば質を表しているとお考えいただければと思います。13ページを御覧いただきますと、資金源とQ値の関係でありまして、内部資金だけですと3.4%、3種類の外部資金のみですと14.4%ということで、外部資金の数とQ値には正の関係があることが示唆されますが、これの因果関係までは今回の調査ではまだ分からないという状況であります。
 それから、一方、14ページでございますが、研究チームの構成とQ値の関係であります。表の一番上の2行を御覧いただきますと、ジュニア研究者の参画なしの場合は4.9%、ジュニア研究者の参画ありの方が6.3%で、ジュニア研究者が入った方が、Q値が高い傾向が見られる。ただ、ジュニア研究者の参画状況はいろいろありまして、Q値には様々なばらつきがあります。例えば一番下のシニア研究者と学部生あるいは大学院の修士ですと、Q値は4.5%で、ジュニア研究者の参画なしの4.9%より低いというような状況であります。
 まとめとしてございますが、大学グループなどによって、研究資金あるいは研究チームの構成はいろいろ違いがございます。そういったものをよく踏まえた対応が必要ではないかということと、あとジュニア研究者の確保・育成が重要であるということがやはり出てまいります。また、今日も出ましたが、研究者の雇用や、研究資金、特に基盤的経費の継続維持が重要ではないかということはあります。
 附属資料は幾つか付いてございますが、19ページを御覧いただきますと、今回、個々の教員ごとにどれだけ所属大学から基盤的研究経費が配分されていますかということを聞いています。2000年、2005年、2013年と数字が3つ並んでいますが、徐々に減ってきているという状況であります。特に教授クラスですと、2000年に180万円あるいは国立大学で150万円だったものが、2013年では100万円になっているというような状況でございます。
 それでは、時間もございますので、以上でございます。

【濵口会長】  ありがとうございます。なかなか面白いいろいろなデータを出していただきましたが、今の発表に何か御意見、御質問がございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。甲斐先生、お願いします。

【甲斐委員】  大変興味深い調査をありがとうございました。資料6-1の8ページと9ページですが、若手研究者の状況というのが、最近私が切に感じている危機感と合っていると感じました。今、私が将来の日本の学術の発展に最も心配なのは、博士課程に来る学生が減っているということです。特に優秀な学生が減っているということに危機感を持っています。自分だけの感覚かなと思ったのですが、周りの方に聞いてみると結構同じように感じている先生方が多数おられます。優秀な研究者は大学に残らないのです。もともと博士課程に進学して来ないのに、来ても修了すると企業に行ってしまう。そうすると、将来の大学を担う優秀な人材が残らなくなってしまいます。これに、すごく危機を感じています。その一番大きな原因というのは、若手の研究費が足りないのではなくて、その安定的なポストがないことです。
 先ほど資料2-1の3ページに任期付き研究者の割合というのがありました。このグラフはよく見ますが、任期無しの若手研究者がこの6年で極端に減っているというのは、別に自然に起こったことではなくて、助教を任期制に誘導したのは国からの圧力でした。我が大学でも、それまで助手には任期がなかったのですが、助教という名称に変更する際に、助教を選択する場合には任期付きにするとなりました。国が大学を評価するときにも、若手の任期付き制度をとっているか、とっていないかと問う項目がありました。その当時流動性を推進するためにも任期付きにした方が良いという議論もあり、やむなくそうしたということはあったのでしょうが、そのような変更を行うときに若手助手がすごく反発し、私は彼らと随分ディスカッションをしました。これでは落ち着いて研究ができないということで、私も同感いたしました。諸外国では若手は任期付きのポストが多いからという議論はありましたが、日本人に本当に合っていたのかなというのを少し反省する時期ではないかと思います。その後の若い優秀な博士課程の学生に聞いてみると、大学に残って任期付きの5年のポストに残るのは怖いと言います。ゆっくり研究できない。大学院を出てあと5年単位で最長10年間もそんなところにいなければならないというのはかなりのプレッシャーで、それより優れた会社の研究所があるなら、そっちの方に行きたいと。自然な気持ちかなと思います。そろそろ結婚のような、安定したことも考えたい、長期の人生を考えたいときに、5年、5年で頑張れよと強制しても、日本人のメンタリティに合っているのかなと疑問に思います。
 ですから、もちろんいいところはあったのだろうと思いますが、任期のないテニュアポストの助教というのを大学が独自に作ったり増やしたりしてもいいのではないかと考えます。もちろん、それは運営費交付金が限られた中で、大学の運営としては大変厳しいのだと思いますが、次代を担う可能性のある優秀な人にもっとテニュアのポストをというのは大事なのではないかと常々感じておりました。自分の個人的な考え方かなと思っていましたが、9ページの自由記述の例に書いてありますように、優秀な若者が研究者離れをきたしている原因の一つであるという御意見があって、非常に同感です。そういう制度設計も含めて、少し考えなければいけない時期ではないかなと痛感しております。

【濵口会長】  ありがとうございます。これはいい知恵が欲しいところです。どうぞ。

【栗原(美)委員】  資料5の方です。こういった投資を拡大するのは歓迎することで、しかもめり張りをつけるというのは大変重要だと思うのですが、官は官、民は民でセパレートしてそれぞれ投資額を増やしていっても仕方がないと思うので、Societyと言われる以上は、社会全体がバリューチェーンとして、あるいは共同プロジェクトとして、資金を増やしていっていただきたいと思います。その仕組みがあるのかというところが心配になるので、是非、共同プロジェクト的な視点を持って両者で資金を付けていただきたいと思います。

【濵口会長】  ありがとうございます。それでは、浦辺委員。

【浦辺委員】  私も資料5についてです。こういうSociety5.0というような大きな方針が出るというのは、なかなか良いことだと思うのですが、必ずしも産業活動に結び付かない大きなイノベーションとして、やはり海洋や宇宙を含む地球規模の問題の解決ということが非常に重要ではないかと思います。先ほど大垣委員からもSDGsの話がありましたが、こういうようなことは文科省として是非取り組んでいただきたいと思います。
 以上です。

【濵口会長】  ありがとうございました。
 大変恐縮ですが、お時間が来ましたので、本日の討論はこれでひとまず締めにさせていただきたいと思います。
 最後に、事務局から連絡事項をお願いします。

【伊藤企画官】  本日の議事録でございます。後ほど皆様に御確認をしていただいた上で、公表をさせていただきたいと考えてございます。
 以上でございます。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 それでは、本日は閉会とさせていただきます。どうも長時間、ありがとうございました。

お問合せ先

科学技術・学術政策局政策課

学術政策第1係
電話番号:03-5253-4111(内線3848)
ファクシミリ番号:03-6734-4008
メールアドレス:shingist@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局政策課)