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独立行政法人国立美術館の中期目標

平成18年4月1日
文部科学省

(序文)
 独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二十九条の規定により、独立行政法人国立美術館が達成すべき業務運営に関する目標(以下「中期目標」という。)を定める。

(前文)
 独立行政法人国立美術館(以下「国立美術館」という。)は、我が国における芸術文化の創造と発展、国民の美的感性の育成を使命とし、美術振興の中心的拠点として、1美術に関する作品等を広く国民に紹介するとともに、美術創造活動の活性化を推進し、文化の向上・発展のため、多彩な活動を展開すること、2我が国の近・現代美術及び海外の美術を体系的・通史的に提示し得るナショナルコレクションを形成し、後世に文化を継承していくこと、3我が国の「顔」として海外の主要な国立美術館、作家等と連携し、美術を通じた国際文化交流を推進すること、4調査研究の成果及び国立美術館が有する所蔵作品や人材を活用し、我が国の美術館のナショナルセンターとして、美術館活動全体の充実に寄与することが期待されている。我が国の文化振興において不可欠なそれらの活動の活性化、基盤の整備は国立美術館が課せられた基本的使命である。
 このため、所蔵作品の一層の充実や施設設備の整備充実をはじめとする収集・保管・展示機能及び調査・研究機能の向上を図るとともに、全国的な活動を行っている美術団体等への展覧会会場の提供、人材養成・研修、国際交流や文化発信の拠点としての機能を一層充実していく必要がある。
 各館の役割・任務は以下のとおりとする。
  (東京国立近代美術館)
   近・現代美術に関する作品その他の資料を収集・保管し、鑑賞機会を提供し、あわせてこれに関連する調査研究及び事業を行う。本館のほか、工芸館、フィルムセンターを運営する。フィルムセンターは、我が国における映画文化振興の中枢となる映画に関する総合的な保存・上映・研究機関を目指す。
(京都国立近代美術館)
   近・現代美術に関する作品その他の資料を収集し、保管して鑑賞機会を提供し、あわせてこれに関連する調査研究及び事業を行う。
(国立西洋美術館)
   昭和30年10月8日に日本国政府及びフランス政府間に成立した合意に基づきフランス政府から日本国政府に寄贈された美術に関する作品(松方コレクション)並びに西洋美術に関する作品及び資料を収集し、保管して鑑賞機会を提供し、あわせてこれらに関連する調査研究及び事業を行う。
(国立国際美術館)
   日本美術の発展と世界の美術との関連を明らかにするために必要な美術に関する作品その他の資料を収集し、保管して鑑賞機会を提供し、あわせてこれに関連する調査研究及び事業を行う。
(国立新美術館)
   我が国の美術創造活動の活性化のため、全国的な活動を行っている美術団体等に展覧会会場の提供を行うとともに、新しい美術の動向を紹介するなどを通じて、美術に関する新たな創造活動の展開やアーティストの育成等を支援する。また、美術に関する情報の収集・提供を行い、あわせてこれに関連する調査研究を行う。

 このような役割を果たすため、国立美術館の中期目標は次の通りとする。

1   中期目標の期間
     国立美術館が実施する業務は、計画、準備から成果を得るまでには長期間を要するものが多いため、中期目標の期間は、平成18年4月1日から平成23年3月31日までの5年間とする。

2   国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項

  1   美術振興の中心的拠点として、多様な鑑賞機会の提供、美術創造活動の活性化の推進など、現代の美術を取り巻く状況の変化に対応した多彩な活動を展開し、我が国の美術振興に寄与
     国立美術館は、我が国の美術振興の中心的拠点として、現代の美術を取り巻く状況の変化に対応した多彩な活動を展開していくことが求められている。このため、展覧会等を通じた多様な鑑賞機会の提供、美術創造活動の活性化の推進などに積極的に取り組むこととする。
   
(1)   多様な鑑賞機会の提供
   国立美術館は、美術振興の中心的拠点として、学術的意義、国民の関心、国際文化交流の推進等に配慮しつつ、多様で秀逸な美術作品の鑑賞機会をより多くの国民に提供すること。
 また、展覧会は、次の観点から実施するものとし、中期目標期間全体としてバランスのとれたものとなるようにすること。
(イ)  国家的規模で行う主導的な展覧会の実施
(ロ)  全国の美術館に方向性を示す先導的な展覧会の実施
(ハ)  新しい芸術表現を取り入れた先端的な展覧会の実施
  1  展覧会を開催する際は、企画段階から開催目的、期待する成果、学術的意義等を明確にするとともに、専門家からの意見や入館者の満足度を踏まえた事業評価を行い、それ以降の展覧会の充実に反映させる。
  2  地方における鑑賞機会の確保のため、受け入れ側の要望を十分踏まえつつ、地方巡回展を積極的に行うこと。
  3  個々の展覧会においては、実施目的、内容、良好な観覧環境の確保、過去の入館者数の状況等を踏まえた適切な入館者数の目標を設定し、その達成に努めること。
  4  フィルムセンターにおいては、映画フィルム等の所蔵作品の活用を図った上映展示機能の充実を図ること。

(2) 美術創造活動の活性化の推進
   国立新美術館は、全国的な活動を行っている美術団体等に展覧会会場の提供を行うとともに、新しい美術の動向を紹介することなどを通じて、美術に関する新たな創造活動の展開やアーティストの育成等を支援し、我が国の美術創造活動の活性化を推進すること。
 また、メディアアート、アニメ、建築など世界から注目される新しい芸術表現の国内外に向けた拠点的な役割を果たすことを目指し、その取組みを積極的に進めること。

(3) 美術に関する情報の拠点としての機能の向上
   国民の美術に関する理解促進に寄与するため、国立美術館に関する情報公開を進めるとともに、国内外の美術に関する情報を収集・提供し、美術に関する情報拠点としての機能を高めることとする。
1  ICT(情報通信技術)を活用した積極的な情報発信やホームページの充実を行い、ホームページのアクセス件数の目標を設定し、その達成に努めること。
2  国内外の美術に関する情報の収集、記録の作成・蓄積及びデジタル化を進めるとともに、レファレンス機能を充実させること。

(4) 国民の美的感性の育成
   美術作品や作家についての理解を深め、鑑賞者の美的感性の育成に資するよう、国立美術館における美術教育に関する調査研究の成果を踏まえ、ギャラリートーク、ワークショップ等に取り組むこととする。
1  学校や社会教育施設等との連携により、子どもから高齢者までを対象とした幅広い学習機会を提供すること。
2  ボランティアや支援団体を育成し、相互の協力により美術館における教育普及事業の充実を図ること。
3  フィルムセンターにおいては、映画フィルム等の所蔵作品の活用を図った教育普及機能の充実を図ること。

(5) 調査研究成果の反映
   展示、教育普及活動その他の美術館活動を行うために必要な調査研究を計画的に行い、その成果を国立美術館の業務の充実、文化の振興に反映させること。

(6) 快適な観覧環境の提供
   国民に親しまれる美術館を目指し、入館者の立場に立った観覧環境の整備や利用者の要望を踏まえた管理運営を行い、入館者の期待に応えること。
1  高齢者、身体障害者、外国人等を含めた入館者本位の快適な観覧環境を形成すること。
2  入場料金及び開館時間の弾力化など、利用者の要望や利用形態等を踏まえた管理運営を行うこと。
3  ミュージアムショップやレストラン等のサービスの充実を図ること。

(7)
国立新美術館の開館
 我が国の美術創造活動の活性化を推進するため、平成19年1月の開館に向けて、我が国の5番目の国立の美術館である「国立新美術館」の開館準備を進めること。
 
(8)

 
国立メディア芸術総合センター(仮称)の設置準備
 我が国のメディア芸術の振興を図るため、「国立メディア芸術総合センター(仮称)」の設置準備を文化庁と連携・協力して計画的に進めること。 
 
  2   我が国の近・現代美術及び海外の美術を体系的・通史的に提示し得るナショナルコレクションの形成・継承
     国立美術館は、我が国唯一の国立の美術館として、我が国の近・現代美術及び海外の美術を体系的・通史的に提示し得るナショナルコレクションを形成し、海外の主要な美術館と交流するとともに、これらの貴重な国民的財産を後世に伝え、継承していくことが必要である。このため、国立美術館は、適宜適切な収集を進めるとともに、作品の保管環境の充実に努めることとする。
   
(1)   各館は、美術作品の動向に関する情報収集能力と収集の機動性を高めるとともに、それぞれの役割・任務に沿って収集方針を定め、これに基づき、計画的かつ適時適切な購入と寄贈・寄託の受入れを進め、体系的・通史的にバランスのとれた所蔵作品の充実を図ること。
(2) 収蔵庫等保存施設の狭隘・老朽化への対応を図り、所蔵作品全体を適切な保存と管理環境下に置き、それらを適切に後世へ継承すること。
(3) 各館の連携を図りつつ、所蔵作品についての修理、修復の計画的実施により適切な保存を行い、適切に後世へ継承すること。
(4) 収集・保管・修理等を行うために必要な調査研究を計画的に行い、その成果を国立美術館の業務の充実、文化の振興に反映させること。

  3   我が国における美術館のナショナルセンターとして美術館活動全体の活性化に寄与
     国立美術館が有する調査研究の成果、所蔵作品、人材等を活用し、我が国の美術振興のナショナルセンターとして、公私立美術館を含めた美術館全体の活動の活性化に寄与することとする。
   
(1)   所蔵作品等に関する調査研究の成果を多様な方法により積極的に公表し、広く公私立美術館関係者の知見の向上に資すること。
(2) 国内外の美術館関係者との研究会の開催や研究者の交流等を行い、国際的な美術館の拠点となることを目指すこと。
(3) 国内外の美術館等における修理・保存処理の充実に寄与すること。
(4) 国内の公私立美術館への所蔵作品の貸与については、所蔵作品の展示計画、作品保存に十分配慮しつつ、可能な限り積極的に取り組むこと。
(5) 小・中学生のための美術教育の一翼を担うナショナルセンターとして、モデル的な教材の開発や教員、学芸員等の資質向上のための研修等に重点化して実施すること。
(6) 大学等との機関とも積極的に提携しながら、今後の美術館活動を担う中核的な人材の育成を図ること。
(7) 全国の美術館等の運営に対する援助、助言を行うとともに、関係者の情報交換・人的ネットワークの形成等に努めること。
(8) フィルムセンターにおいては、国際的に我が国を代表する映画文化振興の中枢となる総合的な機関として、国内外の映画関係団体等との連絡を密接に図り、その連携・調整について役割を果たすこと。また、より機動的かつ柔軟な運営を行うため、東京国立近代美術館から独立した一館となることを検討すること。

3   業務運営の効率化に関する事項
     運営費交付金を充当して行う業務については、事務手続きの簡素化や、競争入札等の推進により一層の業務の効率化を進め、中期目標の期間中、一般管理費15パーセント以上、業務経費5パーセント以上の業務の効率化を図ること。ただし、退職手当、特殊要因経費はその対象としない。
 また、「行政改革の重要方針」(平成17年12月24日閣議決定)を踏まえ、平成18年度から5年間において、国家公務員に準じた人件費削減の取組を行うとともに、国家公務員の給与構造改革を踏まえた給与体系の見直しを進めること。

4   財務内容の改善に関する事項
     税制措置も活用した寄付金や自己収入の確保、予算の効率的な執行等に努め、適切な財務内容の実現を図ること。
  1   自己収入の増加
     積極的に外部資金、施設使用料等、自己収入の増加に努めること。
 また、自己収入額の取り扱いにおいては、各事業年度に計画的な収支計画を作成し、当該収支計画による運営に努めること。

  2   固定的経費の節減
     管理業務の節減を行うとともに、効率的な施設運営を行うこと等により、固定的経費の節減を図ること。

5   その他業務運営に関する重要事項
  1  人事管理(人件費、意識改革等)、人事交流の適切な実施により、内部管理事務の改善を図ること。また、効率的かつ効果的な業務運営を行うため、非公務員化のメリットを活かした制度を活用すること。
  2  業務の目的・内容に適切に対応するため長期的視野に立った施設・設備の整備計画を作成すること。