学校法人制度改善検討小委員会(平成14~15年度)(第14回) 議事要旨

1.日時

平成15年9月29日(月曜日) 16時~18時

2.場所

文部科学省別館9階 特別会議室

3.議題

  1. 学校法人制度の改善方策について(最終報告)案
  2. その他

4.出席者

委員

石山卓磨、黒田壽二、高祖敏明、佐野慶子、田中雅道、田村哲夫、八田英二、山内昭人、和田義博

文部科学省

加茂川私学部長、久保私学行政課長、栗山私学助成課長、石井参事官、濱参事官付企画官、平野私学行政課課長補佐、後藤私学行政課課長補佐、早坂参事官補佐、徳岡参事官付調査官、井戸参事官付専門官

5.議事要旨

(1)事務局から資料についての説明があり、最終報告案について自由討議を行った。

○:委員 ●:事務局

○: 中間報告では財務情報を公開しないこととできる仕組みを検討すべき場合として、「例えば、小規模な学校法人で、そのまま公開すると個人の給与や退職金等が特定されてしまう場合、係争中の訴訟事件で個人名がわかってしまう場合等」という例示が示されているが、最終報告案では、「個人名記載事項など」と修正が提示されている。これでは財務情報の公開に関して、小規模法人へ配慮する記述が本文からなくなってしまうので、残しておくべきではないか。

○:前回の会議では、プライバシー保護の問題は小規模法人に限ったことではないという議論になり、その趣旨から修正されたと思うが、どうか。

○:財務情報の公開について小規模法人へ配慮する表現を入れると、大規模法人ではプライバシーは保護されないのかと解釈されかねないので、ここでは、「小規模な学校法人」を入れない原文の方がよいと思う。

○:小規模法人では退職者がいるとしても一人であるので、人件費の中の退職金の項目が公開されてしまうと個人の退職金額がわかってしまうという問題がある。

○:それは大規模法人においても同じ問題がある。幼稚園部門など、部門に分けて記載すると結局個人の退職金額はわかってしまう。記述を小規模法人に限定しないほうがこういった大規模法人の問題にも対応できるのではないか。プライバシーの問題は法人規模に関わらないという記述にしたほうがよい。

○:「個人名記載事項などのプライバシー保護の観点等から」という記述のみだと、個人名さえ記載されていなければ公開しなければならない、という解釈をされかねないと思う。

○:財務書類の中で個人名を記載するものはほとんどないので、「個人名記載事項など」という報告書中の文言は意味を持たないのではないか。また、退職金の金額が黒塗りになったとしても、人件費支出総額から他の人件費を差し引きすれば結局退職金額はわかってしまう。そうすると総額または他項目も黒塗りしなければならなくなってしまう。

○:個人の退職金がわかってしまうと、地方の小規模法人の場合、それが噂になり当人は困る場合があり得る。報告書の記述からその問題への配慮が読み取れないと、個人のプライバシーは守れないと思う。

○:幼稚園法人など小規模法人については公開するのは人件費総額のみにするべきではないか。

○:大規模でも学校部門に分けて公開すれば同じ問題が起きるので、法人規模に関わらない問題であると思う。もし退職金が個人のプライバシーだとすれば、やはり小規模という限定はとった上で対処すべきである。

○:株式会社では退職金は総額で表されているのか。

○:株式会社の場合、役員報酬については定款で枠が定められているか、又は総会での決定事項である。総額は公開されるが個人の金額は公開されない。

○:やはり、小規模法人という限定は除き、「例えばそのまま公開すると個人の給与や退職金等が特定されてしまう場合」という記述のみを残すべきではないか。

○:何をプライバシーとするかは難しい問題だと思う。

○:「例えばそのまま公開すると個人の給与や退職金等が特定されてしまう場合」という記述を残し、また、「個人名記載事項などの」という例示を取るべきではないかという意見が出たがどうか。

○:大企業は退職金についても公開すべきだという意見もあると思う。もらいすぎているからそういう議論になるのだと思うが、幼稚園でも同じことが言えるのか。

○:都会の感覚とは違い、地方の小さいところではそういったことが噂になって問題になることがあるということである。

○:公立の幼稚園では個人の退職金額も公開しているのか。

○:人件費総額は出るのではないか。

○:公立は公表を義務付けられず、私立のみ義務付けられれば反対意見も出てくるのではないか。

○:幼稚園のみ設置の小規模法人は地域に根ざしているという特徴があり、同じ幼稚園を持っていても広域に渡って活動する大規模な大学法人などとは微妙に性質が違うのではないか。

○:小規模法人の退職金がわかることまで公開するというのは、この報告書の趣旨ではないと思う。

●:公立との比較をされたが、公立は自治体や教育委員会の予算で人件費を公開するので、そこで情報公開について担保されていると考えてよい。実際に制度設計をする際、他の公益法人や社会福祉法人制度との比較が必要だが、そのためには都道府県認可の他の法人がどのように情報公開を行っているかを参考にしながら制度設計する必要がある。学校法人においては、省令で定められている会計基準によって作成されたものをそのまま公開するとすれば、会計基準の中で工夫する方法もある。そういう事情もあり、報告書では少し幅を持たせた表現となっている。

○:はっきりと退職金額がプライバシー保護の対象であるとわかるような表現にしてほしい。ここでの議論が都道府県まで伝わるようにまとめてほしい。

○:会計基準の検討の中で、例えば、人件費総額だけを示しその中に退職金を含め、明細は公開しないという方法に変更することでも対応できるのではないか。計算書類の中から退職金の項目だけ消しても意味がないと思う。

●:財務書類が法的に公開のための書類であるという位置付けとなると、会計基準もそのように変わっていくのではないか。

○:では、報告書の記述については検討することとする。

○:本来事業報告書は財務書類を補完するためのものという議論だったはずだが、事業報告書の様式の中に「財務の概要」という項目があるのは、2重に財務書類を作ることになってしまわないか。具体的にはどういうことを書く意味なのか。

○:株式会社や公益法人の事業報告書の例を見ても、財務状態の経年比較ということに意味があると思うのでそういう内容を書く趣旨だと思っている。

○:同様である。事業報告書の財務の概要というのは今後財産目録の様式や会計基準の見直しの動向によって位置付けが変わっていく可能性があり、確かに今の基準だと重複しているような印象も受ける。ただ、公認会計士協会としてもそこまで詳しい情報を書くようには求めていない。あくまで概要としての経年比較であり、学校が単年度の財務諸表を公開して誤解を招かないよう、こういう状況の中での一会計年度であるということが示されていた方がわかりやすいという趣旨なので細かい内容は要求していない。

○:今の記述では誤解を招くので、括弧書きで「(経年比較も含めて)」とするのではなく、例示として「経年比較等」と書けばよいのではないか。

○:そこはそういう記述でよいか。

(一同異議無し)

○:例えば法人が債務保証をしている場合、財産目録に記載されるのか。

○:現在の基準では記載されない。公認会計士協会としては注記で記載すべきと意見を申し上げているところである。今後の会計基準の見直しで検討されるかどうかというところだと思う。

○:そこは会計基準の改正で対処すべき問題だと思う。次に、財産目録の様式についてはどうか。

○:貸借対照表を基にした様式のほうが学校法人としては作りやすいのではないか。

○:貸借対照表を基にする様式であるが、収益事業については財産目録は別立てでつくるのか。収益事業の元入金というのがあるが、この元入金に対して収入がどれだけあるのかが事業が拡大していった場合わかるようにしなければいけないのではないか。

○:収益事業については計算書類の中でも企業会計で別立てで行っている。収益事業部門の財産目録も作成されるのが妥当ではないか。
  また、収益事業部門の財務書類についても公開対象と考えてよいのか。収益事業会計は学校法人会計基準の中にも位置付けられている。学校法人の総財産と言えば学校法人会計が適用される教育財産と、企業会計が適用される収益事業財産を合わせたものである。公開といえば当然両方だと思う。収益事業財産についての財務書類も当然公開対象になるので、報告書の本文に明記した方がよい。

●:収益事業部分も区別されず公開の対象となっている。

○:社会福祉法人も収益事業は行えるのか。

○:その他の事業として財務書類には記載される。

○:学校法人が社会福祉法人を作っている場合はどうなるのか。

○:財務書類は連結していないから別法人の分は学校法人会計としては公開されない。認可保育所を法人内に作った場合は対象になる。

○:学校法人が出資して株式会社を作っている場合はどうなるのか。

○:商法上の別法人なので公開対象とはならず、注記情報と有価証券として反映されるのみである。

○:本報告書においても、外部資金の導入等のところで収益事業を行うことが望ましいとしているし、学校法人の出資による株式会社についても述べているので、収益事業に関する財務書類の公開について触れないのは問題があると思う。別法人のものなら公開対象にはならないが、学校法人が行っている収益事業については公開情報に含めるということについて本文にも書き加えていただくことでよいか。

(一同異議無し)

○:財産目録の様式案についてだが、例示にあるように預金としてどこの銀行の支店に何円とまで細かく書かないといけないのか。

○:一般的には、普通預金や定期預金の総額だけでよいと思う。また、定期預金は特定資産に入っている場合もあるので配慮する必要がある。

○:報告書で財産目録については作成例を示すことが必要とあるが、誰が示すこととなるのか。

●:様々な示し方があると思うので今後検討したい。

○:財務情報の公開について他に何かないか。

●:資料の検討事項のうち、公開すべき財務書類の範囲や財産目録の取り扱い、また事業報告書に記載すべき内容についてはご了解いただけたと思うが、小規模法人への配慮の問題や残りの検討事項についても順次検討していただきたい。

○:では最終報告案に沿って順次確認することとしたい。

(中間報告からの変更点について順次確認)

○:7ページ7行目において、「理事長の常勤化、専任化が困難な場合も考えられることから、そのような場合には、学校法人において、常務理事等理事長に代わって常時法人の業務を担当する者を置くようにすることが必要である」とあるが、幼稚園法人については理事に役員報酬は出せないため、理事も他の役職との兼職が基本である。理事が園長などを兼ねている場合、その理事を常務理事として置くということでよいのか。

●:理事長に代わって常時法人の業務を行う者がいればよいという趣旨なので、園長だからだめだということはない。

○:その場合、登記上常務理事と記載するのか。

●:常務理事の名称は登記の対象ではない。代表権の制限をした場合に登記を行う。

○:外部の者から見ると、表現を常務理事ではなく「常勤の理事」としてもらったほうがわかりやすいと思う。

○:下の方に非常勤の理事という言葉もあるので「常勤」という言葉のほうが適切かと思うがどうか。

○:報告書の「常務理事」という言葉は、理事長の代わりに毎日来る「常勤の理事」という意味で使われているのではないのか。

○:小規模の法人は財政的に常勤の理事をおくのは厳しいため、例えば週3回来る常務理事が半年に1回しか来ない理事長のかわりに法人の業務を行っている場合もある。

○:常勤と限定されるとかえって難しいのか。

○:週3日では「理事長に代わって常時法人の業務を担当する」というところでの「常時」とは言えないように思う。

○:では、報告書の表現は「常勤の常務理事」で「常勤」の意味は各学校法人で判断すればいいのではないか。

○:「常勤」と入れなくても、「常務」のままにし、解釈については学校の規模によって幅を持たせてもいいのではないか。

○:では、ここでは常務理事「等」という例示であるので、常時法人の業務を担当するところに力点があるという解釈で、原文どおりでいくこととする。

○:10ページで、監事が理事会・評議員会に出席することが必要であるとあるが、監事が出席しない理事会での議決の効力はどうなるのか。

●:報告書でも監事に議決権はないとしており、会議の定足数には入らないと考えている。

●:法律としては、「理事会は理事と理事長によって構成し、議決は理事の過半数の議決とする」とし、それとは別に、「理事会には監事が出席して意見を述べるものとする」というような表現になるのではないかと思う。いずれにせよ、法案化の作業の中で監事が必ず出席しないと理事会が成立しないということにはならないようにしたい。

○:株式会社ではどうなっているのか。

○:今年の商法改正により、監査役の取締役会への出席は今までは「出席することができる」であったが今年から義務規定になった。

○:取締役会の効力には影響しないが、監査役が出席しなかった場合、監査役の任務懈怠となり、また、取締役会の決定が不適切でそれに対して監査役が意見具申しなかった場合、監査役に対し罰則が課される。

○:あくまで監事の業務監査の一環としての規定になるということか。

○:監事の役割についてだが、外部評価システムとの関連についてはそれぞれ別の観点から行われるものということのなのでこれでよいか。

(一同異議無し)

○:11ページ3行目の「当該法人の役員」の中には、監事も含めるのか。含まれるとすると監事は再任できないことになってしまう。

●:「当該法人の理事」と改めることとしたい。

○:最後の検討事項である、準学校法人への適用についてはどうか。

○:同じだと困るというのが準学校法人の意見である。同じ規制をかけるのなら補助金等他の制度も同じにすべきだとの意見である。

○:準学校法人に関する様々な問題について、今の段階でこの報告書の中に全て書きこむのは難しいと思う。報告書の中に、準学校法人等に関する様々な問題についても同様に考えていかねばならないことを重要な課題である旨記述しておき、改めて議論するというのが現況においては賢明ではないか。いずれこれについてはどこかで議論しなければならない時期が来ると思う。

(一同異議無し)

○:次に、検討すべき事項の4つ目、外部理事の導入のあり方についてはこのとおりでよいか。また、次の理事の同族制限については中間報告では両論併記だったが、それを修正し、現状どおりで行くこととしたがこれでよいか。また、評議員については14ページのように同族の者が評議員総数の3分の1以内とするという表現でよいか。
  また、次の公認会計士の会計監査の充実についてはどうか。

○:補助金の有無に関わらず、会計監査を義務付ける件については報告書の中に記述があるのか。

●:意見募集の際にそのようなご意見があったものである。補助金の有無に関わらず会計監査を義務付けたり、学校法人出資の株式会社についても会計監査を義務付けたりすることは現在の報告書案では記述していない。

○:確認したいが、補助金をもらっていない法人は会計監査を入れる義務はないというのが現状なのか。

●:その通りである。

○:大規模な法人でも補助金を受けていないため会計監査が入っていないところもある。財務書類が公開になったとき、その情報の適正を外部の目で担保する必要があるのではないか。会計監査についても一定規模の法人については私学法上で義務付けるべきではないかということで提案しているのだと思う。

●:情報が公開になったときその適正をどう担保するかということは、もう一段階踏み込んだ問題ではないかと思う。

○:法人の規模によっては、公認会計士の監査料を負担できるところとできないところがある。

○:補助金の有無にかかわらず財務書類を作成し、公開するのが望ましいという議論になっていると思う。その数字の信頼性を担保すべきという意味で、やはり監査は必要ではないか。

●:やはり義務化による負担は大きいのではないか。財務情報の公開に関しては、少し作業は増えるとしても基本的には備付けてあったものを公開し、最低限の新たな義務の負担で済むという説明をしてきた。公認会計士の監査を義務にしてしまうと、費用負担を含めた新たな負担が今の段階では大きく、抵抗があるかも知れない。とりあえず財務書類の公開を進め、不十分なところは次の課題とすることが適切ではないか。

○:確かに実務的には難しいかもしれない。

○:財務書類の公開を義務付けることによって、先ほどの財産目録の様式の問題や、今の会計監査の問題など、時間をかけて議論していかなければならない問題は当然たくさん出てくると思う。

○:最初のステップとしてまず大規模法人について会計監査を義務づけるのか、または世間の要請があってから義務付けるのか、いろいろ方法はあると思う。

○:公益法人については、総務省が用いた文言は、一定規模以上の法人については公認会計士等の監査を「要請する」ということだった。それにならって、義務付けは難しいと思うが、ある一定規模以上の法人については監査を要請するという表現はあってもいいのではないかと思う。

○:これからの展開を考えると、そういった内容を1文でも入れておいたほうがいいのではないか。

○:会計監査を要請するのは文部科学省所轄の学校法人とするなど、規模により限定すべきではないか。

○:当面は「一定規模以上の法人」という表現にしておき、詳細は検討していくべきではないかと思うが、どうか。

(一同異議無し)

○:13ページにおいて、「評議員会の位置付けの明確化」とあるが、評議員会を諮問機関だと位置付けるためには42条を改正するということか。

●:42条の改正までは考えておらず、理事会を私学法上規定するところで両者の役割をはっきりさせたいと考えている。

○:会計基準の検討会についてだが、例えば小規模法人への配慮を会計基準の見直しの中で行って欲しいとか、当委員会からの要請を報告書の中で書くことが必要ではないか。

○:財務書類の公開を前提とした見直しであることもはっきり書いたほうがよいと思う。

○:検討会において、本来の趣旨と異なった見直しをされてはいけないので、そういった指摘を入れるのがよいと思う。
 今回の指摘を加え、最終報告を修正することとする。修正については○に一任するということでよいか。
 しかるべき修正の後、10月10日の学校法人分科会で報告することとする。

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高等教育局私学部私学行政課

(高等教育局私学部私学行政課)

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